IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヨコオの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】車載用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20250303BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20250303BHJP
   H01Q 5/378 20150101ALI20250303BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
H01Q1/22 B
H01Q1/32 Z
H01Q5/378
B60R11/02 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022509906
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2021009775
(87)【国際公開番号】W WO2021193094
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020053910
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】曽根 孝之
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 聖
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 悠平
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-538623(JP,A)
【文献】特開2003-133842(JP,A)
【文献】国際公開第2015/107983(WO,A1)
【文献】特開2003-008326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 1/32
H01Q 5/378
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載用アンテナ装置であって、
グランド上に配置され、少なくとも一部分が第1の垂直面に沿って位置する第1アンテナエレメントと、
前記グランド上に配置され、少なくとも一部分が第2の垂直面に沿って位置する第2アンテナエレメントと、
を備え、
前記第1の垂直面及び前記第2の垂直面は、前記車両の左右方向に互いに離間しており、
前記第1アンテナエレメントの前記少なくとも一部分と、前記第2アンテナエレメントの前記少なくとも一部分と、が容量結合している、車載用アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1アンテナエレメントは、給電部を有し、
前記第2アンテナエレメントは、前記グランドに短絡した短絡部を有する、請求項1に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項3】
前記第1アンテナエレメントは、前記第2アンテナエレメントの一方の側に位置する第1領域と、前記第2アンテナエレメントの前記一方の側の反対の他方の側に位置する第2領域と、を有し、
前記第1アンテナエレメントの前記第1領域の少なくとも一部分は、前記第2アンテナエレメントの少なくとも一部分と容量結合されており、
前記第1アンテナエレメントの前記第2領域の少なくとも一部分は、前記第2アンテナエレメントの少なくとも一部分と容量結合されている、請求項1又は2に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項4】
前記第1アンテナエレメントは、第1端と、前記第1端よりも前記グランドから離れた位置にある第2端と、を有し、
前記第2アンテナエレメントは、第3端と、前記第3端よりも前記グランドから離れた位置にある第4端と、を有し、
前記第1アンテナエレメントの前記第2端の少なくとも一部分と、前記第2アンテナエレメントの前記第4端の少なくとも一部分と、が容量結合している、請求項1~3のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項5】
前記第1アンテナエレメントの幅は、前記第1端から前記第2端にかけて、段階的に又は漸次的に大きくなっている、請求項4に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項6】
前記第2アンテナエレメントの幅は、前記第3端から前記第4端にかけて、段階的に又は漸次的に大きくなっている、請求項4又は5に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項7】
前記第1アンテナエレメントの前記第2端は、前記グランドに対して斜めに傾いている、請求項4~6のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項8】
前記第1アンテナエレメント又は前記第2アンテナエレメントの少なくとも一部分に誘電体を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項9】
前記第1アンテナエレメントの長さと前記第2アンテナエレメントの長さとの差が前記第1アンテナエレメントの長さ又は前記第2アンテナエレメントの長さの±25%以内である、請求項1~8のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LTE(Long Term Evolution)、4G(第4世代移動通信システム)、5G(第5世代移動通信システム)等の周波数帯域を用いての通信の需要が高まっている。また、広帯域、例えば、698MHz~6GHz、617MHz~5GHz、5.9GHz~7.1GHzの周波数帯域に亘って、安定的に高い放射効率で使用可能な小型のアンテナが求められている。
【0003】
特許文献1には、グランド側の下辺が上辺よりも短い多角形の導体板を有するアンテナについて記載されている。導電板は、当該導電体の下辺の給電点の近傍に開放端を有するスリットを備えている。このアンテナでは、748MHz~960MHzの周波数帯域、1450MHz~2175MHzの周波数帯域及び2490MHz~2690MHzの周波数帯域において-5dB以下のリターンロスが得られている。
【0004】
特許文献2には、三角形状の導体を有するアンテナについて記載されている。このアンテナでは、約700MHz~1000MHzの周波数帯域及び約1500MHz~3000MHzの周波数帯域において5以下のVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/191811号
【文献】米国特許第10305162号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一例は、アンテナを広帯域に亘って安定的に高い放射効率で使用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
グランド上に配置された第1アンテナエレメントと、
前記グランド上に配置された第2アンテナエレメントと、
を備え、
前記第1アンテナエレメントの少なくとも一部分と、前記第2アンテナエレメントの少なくとも一部分と、が容量結合している、車載用アンテナ装置である。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントとの間の容量結合が、低周波数帯域における低VSWR及び高放射効率に寄与する。したがって、アンテナを広帯域に亘って安定的に高い放射効率で使用可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る車載用アンテナ装置の斜視図である。
図2】比較形態に係る車載用アンテナ装置の斜視図である。
図3】実施形態1に係る車載用アンテナ装置及び比較形態に係る車載用アンテナ装置のVSWR特性を示すグラフである。
図4】実施形態1に係る車載用アンテナ装置及び比較形態に係る車載用アンテナ装置の放射効率特性を示すグラフである。
図5図1の変形例を示す図である。
図6】変形例に係る車載用アンテナ装置及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置のVSWR特性を示すグラフである。
図7】変形例に係る車載用アンテナ装置及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置の放射効率特性を示すグラフである。
図8】実施形態2に係る車載用アンテナ装置の斜視図である。
図9】実施形態2に係る車載用アンテナ装置及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置のVSWR特性を示すグラフである。
図10】実施形態2に係る車載用アンテナ装置及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置の放射効率特性を示すグラフである。
図11】実施形態2に係る車載用アンテナ装置の全体の第1例の斜視図である。
図12図11に示した車載用アンテナ装置の全体の第1例の左側面図である。
図13図11からアンテナケースを取り除いた図である。
図14】実施形態2に係る車載用アンテナ装置の全体からアンテナケースを取り除いた第2例の斜視図である。
図15図14に示した車載用アンテナ装置の第2例の左側面図である。
図16図14に示した第1ブロック及び第2ブロックの機械的接合の一例を説明するための断面図である。
図17】実施形態2に係る車載用アンテナ装置の全体からアンテナケースを取り除いた第3例の斜視図である。
図18図17に示した車載用アンテナ装置の第3例の左側面図である。
図19】実施形態3に係る車載用アンテナ装置の斜視図である。
図20】実施形態3に係る車載用アンテナ装置及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置のVSWR特性を示すグラフである。
図21】実施形態3に係る車載用アンテナ装置及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置の放射効率特性を示すグラフである。
図22】実施形態4に係る車載用アンテナ装置の斜視図である。
図23】実施形態4に係る車載用アンテナ装置及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置のVSWR特性を示すグラフである。
図24】実施形態4に係る車載用アンテナ装置及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置の放射効率特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
本明細書において、「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞は、特に断りのない限り、同様の名称が付された構成を単に区別するために付されたものであり、構成の特定の特徴(例えば、順番又は重要度)を意味するものではない。
【0012】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10の斜視図である。
【0013】
図1において、第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zは、それぞれ、車載用アンテナ装置10の前後方向、左右方向及び上下方向を示している。詳細には、第1方向Xを示す矢印の方向である第1方向Xの正方向は、車載用アンテナ装置10の前方向を示している。第1方向Xを示す矢印の反対方向である第1方向Xの負方向は、車載用アンテナ装置10の後方向を示している。第2方向Yを示す矢印の方向である第2方向Yの正方向は、車載用アンテナ装置10の左方向を示している。第2方向Yを示す矢印の反対方向の第2方向Yの負方向は、車載用アンテナ装置10の右方向を示している。第3方向Zを示す矢印の方向である第3方向Zの正方向は、車載用アンテナ装置10の上方向を示している。第3方向Zを示す矢印の反対方向の第3方向Zの負方向は、車載用アンテナ装置10の下方向を示している。
【0014】
本実施形態の第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zに関する「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」は、車載用アンテナ装置10が搭載される自動車によって決定されている。すなわち、前方向とは、自動車の前進方向であり、後方向とは、自動車の後進方向である。また、左方向とは、自動車の後側から前側に向けて見たときの左方向であり、右方向とは、自動車の後側から前側に向けて見たときの右方向である。また、上方向とは、自動車の上方向であり、下方向とは、自動車の下方向である。しかしながら、第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zは、自動車の前後方向、左右方向及び上下方向とそれぞれ異なっていてもよい。例えば、車載用アンテナ装置10は、第1方向Xが自動車の左右方向に向けられ、かつ第2方向Yが自動車の前後方向に向けられるように、使用されてもよい。或いは、例えば、車載用アンテナ装置10は、第1方向Xの正方向が自動車の後方向に向けられ、かつ第1方向Xの負方向が自動車の前方向に向けられるように、使用されてもよい。
【0015】
以下、必要に応じて、第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zを、それぞれ、車載用アンテナ装置10、又は第1アンテナエレメント100、第2アンテナエレメント200等の車載用アンテナ装置10を構成する部材の前後方向、左右方向及び上下方向として称する。また、必要に応じて、第1方向Xの正方向、第1方向Xの負方向、第2方向Yの正方向、第2方向Yの負方向、第3方向Zの正方向及び第3方向Zの負方向を、それぞれ、車載用アンテナ装置10、又は第1アンテナエレメント100、第2アンテナエレメント200等の車載用アンテナ装置10を構成する部材の前方向、後方向、左方向、右方向、上方向及び下方向として称する。
【0016】
車載用アンテナ装置10は、第1アンテナエレメント100及び第2アンテナエレメント200を備えている。第1アンテナエレメント100及び第2アンテナエレメント200は、グランド20上に配置されている。グランド20は、例えば、自動車のルーフである。
【0017】
第1アンテナエレメント100は、板金を折り曲げることで形成されている。しかしながら、第1アンテナエレメント100の形成方法は、これに限定されない。
【0018】
第1アンテナエレメント100は、第1端102及び第2端104を有している。
【0019】
第1アンテナエレメント100の第1端102は、第1アンテナエレメント100の基端となっている。第1端102は、給電部102aを有している。給電部102aは、グランド20に形成された貫通孔を通過する接続部材を介して、給電可能になっている。第1アンテナエレメント100の第2端104は、第1アンテナエレメント100の先端となっている。また、第1アンテナエレメント100の第2端104は、第1アンテナエレメント100の第1端102よりもグランド20から離れた位置にある開放端となっている。本実施形態において、第1端102は、第2端104に対して第1方向Xの正方向側に位置しており、第2端104は、第1端102に対して第1方向Xの負方向側に位置している。また、第1端102は、第2端104に対して第2方向Yの負方向側に位置しており、第2端104は、第1端102に対して第2方向Yの正方向側に位置している。また、第1端102は、第2端104に対して第3方向Zの負方向側に位置しており、第2端104は、第1端102に対して第3方向Zの正方向側に位置している。
【0020】
第1アンテナエレメント100は、第2方向Yの正方向又は負方向から見て、略L字形状を有している。具体的には、第1アンテナエレメント100は、第1部分112、第2部分114及び第1段差部116を有している。第1部分112、第1段差部116及び第2部分114は、第1端102から第2端104にかけて、この順に並んでいる。第1部分112は、第1アンテナエレメント100のうち第1端102から第1段差部116までの部分である。具体的には、第1部分112は、第1端102から第2方向Yの正方向側に向けて延在している部分と、第1アンテナエレメント100の前側から第1アンテナエレメント100の後側、すなわち第1段差部116にかけて延在している部分と、を含んでいる。また、第1部分112は、第1部分112のうち第1端102から第2方向Yの正方向側に向けて延在している部分と、第1部分112のうち第1アンテナエレメント100の前側から第1アンテナエレメント100の後側にかけて延在している部分と、の間で折れ曲がっている。これによって、第1部分112のうちの第1段差部116側の端は、第1部分112のうちの第1端102側の端よりも、第2方向Yの正方向側に位置している。第1段差部116は、第1部分112から第2部分114にかけて、第2方向Yの正方向側から第2方向Yの負方向側に向けて延在している。第2部分114は、第1段差部116から第2端104にかけて、第3方向Zの正方向側に向けて延在している。第1段差部116が設けられている場合、第1段差部116が設けられずに第1部分112及び第2部分114が直接接続されている場合と比較して、第1アンテナエレメント100の第1端102と第2端104との間の全長を長くすることができる。
【0021】
第1アンテナエレメント100の幅は、第1端102から第2端104にかけて、段階的に又は漸次的に大きくなっている。したがって、第2端104の近傍における第1アンテナエレメント100の幅は、第1端102の近傍、すなわち給電部102aの近傍における第1アンテナエレメント100の幅より広くなっている。このようにして、第1アンテナエレメント100は、自己相似形状を折り曲げた形状にしている。
【0022】
なお、自己相似形状のアンテナとして、バイコニカルアンテナやボウタイアンテナといった、スケール(サイズ比)を変えても形状が相似形状になるアンテナがある。自己相似形状のアンテナの前提として、アンテナの電気的特性は、アンテナサイズ又は周波数が変わっても原理的には同じ特性を示す。実際の設計では、インピーダンスの調整等のため、バイコニカルアンテナやボウタイアンテナ等の二等辺三角形の放射素子の形状を変形させ、本実施形態における第1アンテナエレメント100のような形状とすることができる。このような場合であっても、自己相似形状により得られる一定の電気的特性を利用することができる。本実施形態においては、自己相似形状の1つの放射素子の一部としての第1アンテナエレメント100がグランド20に対向するように配置されることにより、疑似的にテーパードスロットアンテナやボウタイアンテナと略同様の作用効果を得られ、グランド20によって、仮想的に反対側にもう1つの放射素子が対向配置されているかのような作用効果を得られる。
【0023】
第2アンテナエレメント200は、板金によって形成されている。
【0024】
第2アンテナエレメント200は、第3端202及び第4端204を有している。
【0025】
第2アンテナエレメント200の第3端202は、第2アンテナエレメント200の基端となっている。第3端202は、短絡部202aを有している。短絡部202aは、グランド20に短絡している。本実施形態において、第3端202及び短絡部202aは、第1端102及び給電部102aより後方に位置している。しかしながら、第3端202及び短絡部202aは、第1端102及び給電部102aより前方に位置していてもよい。すなわち、第1端102及び給電部102aと、第3端202及び短絡部202aとは、互いに離間している構成であればよい。第2アンテナエレメント200の第4端204は、第2アンテナエレメント200の先端となっている。また、第2アンテナエレメント200の第4端204は、第2アンテナエレメント200の第3端202よりもグランド20から離れた位置にある開放端となっている。本実施形態において、第3端202は、第4端204に対して第1方向Xの正方向側に位置しており、第4端204は、第3端202に対して第1方向Xの負方向側に位置している。また、第3端202及び第4端204は、第2方向Yにおいてずれずに揃っている。また、第3端202は、第4端204に対して第3方向Zの負方向側に位置しており、第4端204は、第3端202に対して第3方向Zの正方向側に位置している。
【0026】
短絡部202aによって第3端202とグランド20とが短絡している場合、第3端202が電気的に開放されている場合と比較して、低周波数帯域における良好な特性を確保することができる。しかしながら、第3端202は、短絡部202aを有していなくてもよい。例えば、第3端202は、グランド20に対して電気的に開放されていてもよい。
【0027】
第2アンテナエレメント200は、第2方向Yの正方向又は負方向から見て、略L字形状を有している。具体的には、第2アンテナエレメント200は、第3部分212及び第4部分214を有している。第3部分212は、第3端202から第3方向Zの正方向側に向けて延在している。第4部分214は、第3部分212のうちの第3端202の反対側の端から第4端204にかけて、第1方向Xの負方向側に向けて延在している。
【0028】
第2アンテナエレメント200の幅は、第3端202から第4端204にかけて、段階的に又は漸次的に大きくなっている。したがって、第4端204の近傍における第2アンテナエレメント200の幅は、第3端202の近傍、すなわち短絡部202aの近傍における第2アンテナエレメント200の幅より広くなっている。このようにして、第2アンテナエレメント200は、自己相似形状を折り曲げた形状にしている。
【0029】
本実施形態において、第1アンテナエレメント100の少なくとも一部分と、第2アンテナエレメント200の少なくとも一部分と、は容量結合している。具体的には、第1アンテナエレメント100の第2端104の少なくとも一部分と、第2アンテナエレメント200の第4端204の少なくとも一部分とは、第2方向Yにおいて重なっており、容量結合している。また、第1アンテナエレメント100の第2端104と第2アンテナエレメント200の第4端204とは、互いに離間している。
【0030】
第1アンテナエレメント100の第2端104は、グランド20に対して、すなわち、XY平面に平行な面に対して、斜めに傾いている。より具体的には、第2端104は、第1方向Xの正方向側から第1方向Xの負方向側に向かうにつれて、第3方向Zの正方向側に向けて斜めに傾いている。第2端104の傾き、すなわち第2端104の形状によって、第1アンテナエレメント100の第2端104と第2アンテナエレメント200の第4端204とが第2方向Yにおいて重なり合う面積を調整することで、第1アンテナエレメント100の第2端104と第2アンテナエレメント200の第4端204との間の容量成分を調節することができる。また、第4端204の形状によって、第1アンテナエレメント100の第2端104と第2アンテナエレメント200の第4端204とが第2方向Yにおいて重なり合う面積を調整することで、第1アンテナエレメント100の第2端104と第2アンテナエレメント200の第4端204との間の容量成分を調節することができる。さらに、第1アンテナエレメント100の第2端104と第2アンテナエレメント200の第4端204との間の容量成分は、第2端104と第4端204との間の距離によっても調整することができる。
【0031】
第1アンテナエレメント100及び第2アンテナエレメント200は、第1端102の近傍部分、第3端202の近傍部分、第2端104の近傍部分及び第4端204の近傍部分を除いて、第2方向Yに重なっていない。
【0032】
第2アンテナエレメント200の第3端202と第4端204との間の長さは、第1アンテナエレメント100の第1端102と第2端104との間の長さと略等しいことが好ましい。例えば、第1アンテナエレメント100の第1端102と第2端104との間の長さと、第2アンテナエレメント200の第3端202と第4端204との間の長さと、の差は、第1アンテナエレメント100の第1端102と第2端104との間の長さ、又は第2アンテナエレメント200の第3端202と第4端204との間の長さの±25%以内にすることができる。このようにすることで、アンテナを広帯域に亘って安定的に高い放射効率で使用可能にすることができる。ここで、第2アンテナエレメント200の第3端202と第4端204との間の長さとは、第2アンテナエレメント200のうちの第3端202と第4端204との間の外縁の長さであってもよいし、又は第2アンテナエレメント200のうちの第3端202と第4端204との間の内縁の長さであってもよい。同様にして、第1アンテナエレメント100の第1端102と第2端104との間の長さとは、第1アンテナエレメント100のうちの第1端102と第2端104との間の外縁の長さであってもよいし、又は第1アンテナエレメント100のうちの第1端102と第2端104との間の内縁の長さであってもよい。或いは、第1アンテナエレメント100及び第2アンテナエレメント200の各々の幅の中心線の長さであってもよい。
【0033】
本実施形態に係る車載用アンテナ装置10は、以下の原理にしたがって動作すると推定される。
【0034】
車載用アンテナ装置10の動作周波数帯域の高周波数帯域から中周波数帯域においては、第1アンテナエレメント100の第1部分112は、自己相似形状又はこれに準じたテーパードアンテナとして機能し、第1アンテナエレメント100の第2部分114は、第1部分112が伝送路として機能した状態で、モノポールアンテナとして機能する。
【0035】
車載用アンテナ装置10の動作周波数帯域の中周波数帯域から低周波数帯域においては、第1アンテナエレメント100の第2部分114は、第1部分112が伝送路として機能した状態で、モノポールアンテナとして機能し、第1アンテナエレメント100の第2部分114と、第2アンテナエレメント200とは、第1部分112が伝送路として機能した状態で、ループアンテナ又はスプリットリングアンテナとして機能する。
【0036】
以上により、第1アンテナエレメント100及び第2アンテナエレメント200は、広帯域、具体的には少なくとも698MHz~6GHzに亘って動作可能になっている。なお、本実施形態では、698MHz~6GHzに亘って動作可能となるように第1アンテナエレメント100及び第2アンテナエレメントを設計しているが、以降に説明する図3-4などより、第1アンテナエレメント100及び第2アンテナエレメント200は、698MHz~6GHzに加えて、又は698MHz~6GHzに代えて、617MHz~5GHzや5.9GHz~7.1GHz等の他の周波数帯域に亘って動作可能であることが推測できる。したがって、さらに広い周波数帯域や、さらに高い周波数帯域への要求にも耐えうる設計であるといえる。
【0037】
図2は、比較形態に係る車載用アンテナ装置10の斜視図である。比較形態に係る車載用アンテナ装置10は、第2アンテナエレメント200が設けられていない点を除いて、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10と同様である。
【0038】
図3は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10及び比較形態に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示すグラフである。図4は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10及び比較形態に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示すグラフである。
【0039】
図3のグラフの横軸は、周波数を示している。図3のグラフの縦軸は、VSWRを示している。図3のグラフ内の実線は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示している。図3のグラフ内の破線は、比較形態に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示している。
【0040】
図4のグラフの横軸は、周波数を示している。図4のグラフの縦軸は、放射効率を示している。図4のグラフ内の実線は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示している。図4のグラフ内の破線は、比較形態に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示している。
【0041】
図3に示すように、おおよそ700MHz~1750MHzの比較的低周波数帯域において、実施形態1のVSWRは、比較形態のVSWRより低くなっている。また、図4に示すように、おおよそ700MHz~1750MHzの比較的低周波数帯域において、実施形態1の放射効率は、比較形態の放射効率より高くなっている。このことから、第1アンテナエレメント100と第2アンテナエレメント200との間の容量結合が、比較的低周波数帯域における低VSWR及び高放射効率に寄与しているといえる。
【0042】
図3に示すように、実施形態1のVSWRは、700MHz~6500MHzの広帯域に亘って3.5未満と低くなっている。また、図4に示すように、実施形態1の放射効率は、700MHz~6500MHzの広帯域に亘って60%超と高くなっている。これに対して、特許文献1のアンテナでは、約960MHz~1450MHzの周波数帯域においてリターンロスが-5dB以上となっている。また、特許文献2のアンテナでは、約1000MHz~1500MHzの周波数帯域においてVSWRが5以上となっている。したがって、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10は、特許文献1及び2のアンテナと比較して、広帯域に亘って安定的に高い放射効率で使用可能になっている。
【0043】
図5は、図1の変形例を示す図である。変形例に係る車載用アンテナ装置10は、以下の点を除いて、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10と同様である。
【0044】
車載用アンテナ装置10は、誘電体150をさらに備えている。詳細を後述するように、車載用アンテナ装置10は、第1アンテナエレメント100又は第2アンテナエレメント200の少なくとも一部に誘電体150を有している。
【0045】
誘電体150は、第1アンテナエレメント100の少なくとも一部分に取り付けられている。具体的には、誘電体150は、第1アンテナエレメント100の第1部分112の内側の面に取り付けられている。なお、誘電体150は、第1部分112の内側の面及び第1部分112の外側の面の少なくとも一方に取り付けられていてもよい。また、誘電体150は、第2アンテナエレメント200の少なくとも一部分に取り付けられていてもよい。例えば、誘電体150は、第2アンテナエレメント200の第2方向Yの正方向側の面及び第2方向Yの負方向側の面の少なくとも一方に取り付けられていてもよい。また、誘電体150の少なくとも一部分は、第1アンテナエレメント100の少なくとも一部分と、第2アンテナエレメント200の少なくとも一部分と、に跨って設けられていてもよい。
【0046】
図6は、変形例に係る車載用アンテナ装置10及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示すグラフである。図7は、変形例に係る車載用アンテナ装置10及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示すグラフである。
【0047】
図6のグラフの横軸は、周波数を示している。図6のグラフの縦軸は、VSWRを示している。図6のグラフ内の実線は、変形例に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示している。図6のグラフ内の破線は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示している。
【0048】
図7のグラフの横軸は、周波数を示している。図7のグラフの縦軸は、放射効率を示している。図7のグラフ内の実線は、変形例に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示している。図7のグラフ内の破線は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示している。
【0049】
図6に示すように、変形例及び実施形態1のVSWRは、700MHz~6500MHzの広帯域に亘って3.5未満と低くなっている。また、図7に示すように、変形例及び実施形態1の放射効率は、700MHz~6500MHzの広帯域に亘って60%超と高くなっている。
【0050】
図6に示すように、変形例のVSWRは、1000MHz以上の周波数帯域のいずれにおいても3未満となっている。これに対して、実施形態1のVSWRは、1000MHz以上の周波数帯域の1250MHz近傍において3より大きくなっている。したがって、変形例の誘電体150は、VSWR特性の平滑化に寄与しているといえる。
【0051】
図7に示すように、変形例の放射効率は、1000MHz以上の周波数帯域のいずれにおいても75%より大きくなっている。これに対して、実施形態1の放射効率は、1000MHz以上の周波数帯域の1250MHz近傍において75%未満となっている。したがって、変形例の誘電体150は、放射効率特性の平滑化に寄与しているといえる。
【0052】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10の斜視図である。実施形態2に係る車載用アンテナ装置10は、以下の点を除いて、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10と同様である。
【0053】
第1アンテナエレメント100は、第1端102及び第2端104に加えて、第5端106を有している。第2端104及び第5端106は、第1端102を挟んで互いに反対側に位置している。第1端102、すなわち、給電部102aは、第1アンテナエレメント100の略中心に位置している。
【0054】
第1アンテナエレメント100の第5端106は、第1アンテナエレメント100の先端となっている。また、第1アンテナエレメント100の第5端106は、第1アンテナエレメント100の第1端102よりもグランド20から離れた位置にある開放端となっている。本実施形態において、第1端102は、第5端106に対して第1方向Xの正方向側に位置しており、第5端106は、第1端102に対して第1方向Xの負方向側に位置している。また、第1端102は、第5端106に対して第2方向Yの正方向側に位置しており、第5端106は、第1端102に対して第2方向Yの負方向側に位置している。また、第1端102は、第5端106に対して第3方向Zの負方向側に位置しており、第5端106は、第1端102に対して第3方向Zの正方向側に位置している。
【0055】
第1アンテナエレメント100は、展開された状態で略U字形状を有している。具体的には、第1アンテナエレメント100は、第1部分112、第2部分114及び第1段差部116に加えて、第5部分122、第6部分124及び第2段差部126を有している。第5部分122、第6部分124及び第2段差部126は、第1端102に関して、第1部分112、第2部分114及び第1段差部116と略対称な形状を有している。第5部分122、第2段差部126及び第6部分124は、第1端102から第5端106にかけて、この順に並んでいる。第5部分122は、第1端102から第1方向Xの負方向側に向けて延在している。また、第5部分122は、第1端102と第2段差部126との間で折れ曲がっている。これによって、第5部分122のうちの第2段差部126側の端は、第5部分122のうちの第1端102側の端よりも、第2方向Yの負方向側に位置している。第2段差部126は、第5部分122から第6部分124にかけて、第2方向Yの負方向側から第2方向Yの正方向側に向けて延在している。第6部分124は、第2段差部126から第2端104にかけて、第3方向Zの正方向側に向けて延在している。第2段差部126が設けられている場合、第2段差部126が設けられずに第5部分122及び第6部分124が直接接続されている場合と比較して、第1アンテナエレメント100の第1端102と第5端106との間の全長を長くすることができる。
【0056】
実施形態1で説明した第1アンテナエレメント100の第1端102から第2端104にかけての幅と同様にして、第1アンテナエレメント100の幅は、第1端102から第5端106にかけて、段階的に又は漸次的に大きくなっている。したがって、第5端106の近傍における第1アンテナエレメント100の幅は、第1端102の近傍、すなわち給電部102aの近傍における第1アンテナエレメント100の幅より広くなっている。ここで、段階的に大きくなるとは、例えば階段状のように段差を有しながら大きくなることを意味し、漸次的に大きくなるとは、例えば段差などがなく滑らかに徐々に大きくなることを意味している。
【0057】
第1アンテナエレメント100は、第2アンテナエレメント200の一方の側、すなわち、第2アンテナエレメント200の第2方向Yの正方向側に位置する第1部分112、第2部分114、第1段差部116を含む第1領域110を有している。また、第1アンテナエレメント100は、第2アンテナエレメント200の上記一方の側の反対側の他方の側、すなわち、第2アンテナエレメント200の第2方向Yの負方向側に位置する第5部分122、第6部分124、第2段差部126を含む第2領域120を有している。
【0058】
第1アンテナエレメント100の第1領域110の少なくとも一部分は、第2アンテナエレメント200の少なくとも一部分と容量結合されている。また、第1アンテナエレメント100の第2領域120の少なくとも一部分は、第2アンテナエレメント200の少なくとも一部分と容量結合されている。具体的には、実施形態1と同様にして、第1アンテナエレメント100の第2端104の少なくとも一部分と、第2アンテナエレメント200の第4端204の少なくとも一部分とは、第2方向Yにおいて重なっており、容量結合している。また、第1アンテナエレメント100の第2端104と第2アンテナエレメント200の第4端204とは、互いに離間している。さらに、第1アンテナエレメント100の第5端106の少なくとも一部分と、第2アンテナエレメント200の第4端204の少なくとも一部分とは、第2方向Yにおいて重なっており、容量結合している。また、第1アンテナエレメント100の第5端106と第2アンテナエレメント200の第4端204とは、互いに離間している。
【0059】
実施形態1で説明した第1アンテナエレメント100の第2端104と同様にして、第1アンテナエレメント100の第5端106は、グランド20に対して、すなわち、XY平面に平行な面に対して、斜めに傾いている。より具体的には、第5端106は、第1方向Xの正方向側から第1方向Xの負方向側に向かうにつれて、第3方向Zの正方向側に向けて斜めに傾いている。
【0060】
第1アンテナエレメント100の第1領域110と、第2アンテナエレメント200とは、第1端102及び第3端202の周辺部分と、第2端104及び第4端204の周辺部分と、を除いて、第2方向Yに重なっていない。また、第1アンテナエレメント100の第2領域120と、第2アンテナエレメント200とは、第1端102及び第3端202の周辺部分と、第5端106及び第4端204の周辺部分と、を除いて、第2方向Yに重なっていない。
【0061】
図9は、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示すグラフである。図10は、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示すグラフである。
【0062】
図9のグラフの横軸は、周波数を示している。図9のグラフの縦軸は、VSWRを示している。図9のグラフ内の実線は、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示している。図9のグラフ内の破線は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示している。
【0063】
図10のグラフの横軸は、周波数を示している。図10のグラフの縦軸は、放射効率を示している。図10のグラフ内の実線は、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示している。図10のグラフ内の破線は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示している。
【0064】
図9に示すように、実施形態2のVSWRは、1000MHz以上の周波数帯域のいずれにおいても2.5未満となっている。これに対して、実施形態1のVSWRは、1000MHz以上の周波数帯域の1250MHz近傍において2.5より大きくなっている。したがって、実施形態2の第1アンテナエレメント100の第2領域120は、VSWR特性の平滑化に寄与しているといえる。
【0065】
図10に示すように、実施形態2の放射効率は、1000MHz以上の周波数帯域のいずれにおいても85%より大きくなっている。これに対して、実施形態1の放射効率は、1000MHz以上の周波数帯域の1250MHz近傍において85%未満となっている。したがって、実施形態2の第1アンテナエレメント100の第2領域120は、放射効率特性の平滑化に寄与しているといえる。
【0066】
図11は、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10の全体の第1例の斜視図である。図12は、図11に示した車載用アンテナ装置10の全体の第1例の左側面図である。図13は、図11からアンテナケース530を取り除いた図である。なお、図11及び図12では、アンテナケース530の左側部分が取り除かれている。
【0067】
車載用アンテナ装置10は、アンテナベース510、基板520及びアンテナケース530を備えている。アンテナベース510は、例えば金属ベース等の導電性ベースである。或いは、アンテナベース510は、導電性ベースと、絶縁性ベースと、の双方を有していてもよい。アンテナベース510は、導電性ベースと、絶縁性ベースと、さらに金属製プレートとを有する構成であってもよいし、金属製プレートと絶縁性ベースとを有する構成であってもよい。基板520は、例えば、PCB(Printed Circuit Board)である。基板520は、アンテナベース510の上面側に設けられている。基板520の上面側には、2つのアンテナ、すなわち、第1アンテナエレメント100A及び第2アンテナエレメント200Aを有する後方のアンテナと、第1アンテナエレメント100B及び第2アンテナエレメント200Bを有する前方のアンテナと、が設けられている。アンテナベース510及びアンテナケース530によって、基板520と、当該2つのアンテナと、を収容する収容空間が形成されている。
【0068】
後方の第1アンテナエレメント100Aは、図8に示した第1アンテナエレメント100と同様にして、第1端102A、第2端104A及び第5端106Aを有している。後方の第2アンテナエレメント200Aは、図8に示した第2アンテナエレメント200と同様にして、第3端202A及び第4端204Aを有している。
【0069】
前方の第1アンテナエレメント100Bは、図8に示した第1アンテナエレメント100と同様にして、第1端102B、第2端104B及び第5端106Bを有している。前方の第2アンテナエレメント200Bは、図8に示した第2アンテナエレメント200と同様にして、第3端202B及び第4端204Bを有している。
【0070】
本実施形態では、第1アンテナエレメント100A及び第2アンテナエレメント200Aを有するアンテナと、第1アンテナエレメント100B及び第2アンテナエレメント200Bを有するアンテナと、が車載用アンテナ装置10の前後方向に並んでいる。これら2つのアンテナの容量結合部分、すなわち、後方のアンテナの第2端104A及び第4端204A、第5端106A及び第4端204Aの容量結合部分と、前方のアンテナの第2端104B及び第4端204B、第5端106B及び第4端204Bの容量結合部分と、では電界が強くなっている。したがって、後方のアンテナの第2端104A及び第4端204A、第5端106A及び第4端204Aの容量結合部分と、前方のアンテナの第2端104B及び第4端204B、第5端106B及び第4端204Bの容量結合部分と、を互いに向かい合う姿勢で近づけて配置した場合、容量結合部分同士が結合してしまい、互いに独立したアンテナ(後方のアンテナ及び前方のアンテナ)として動作しなくなる恐れがある。このため、これら2つのアンテナの容量結合部分は互いに離間させることが望ましい。本実施形態では、これら2つのアンテナが車載用アンテナ装置10の左右方向に並んでいる場合と比較して、各アンテナの容量結合部分の間の距離を大きくすることができる。なお、上述した2つのアンテナは、車載用アンテナ装置10の前後方向と異なる方向、例えば、車載用アンテナ装置10の左右方向に並んでいてもよい。すなわち、各アンテナの容量結合部分の間の距離が大きい配置であれば、どのような配置であってもよく、例えば、後方のアンテナの第2端104A及び第4端204A、第5端106A及び第4端204Aの容量結合部分が後方に向かい、前方のアンテナの第2端104B及び第4端204B、第5端106B及び第4端204Bの容量結合部分が前方に向かうように各アンテナを配置してもよい。
【0071】
第1アンテナエレメント100B及び第2アンテナエレメント200Bを有する前方のアンテナが配置されている領域では、アンテナケース530の高さが低くなっている。第1アンテナエレメント100B及び第2アンテナエレメント200Bの高さは、高いことが好ましい。本実施形態では、第2端104B及び第5端106Bが第1端102Bの後方に位置しており、第4端204Bが第3端202Bの後方に位置している。この場合、第2端104B及び第5端106Bが第1端102Bの前方に位置し、かつ第4端204Bが第3端202Bの前方に位置する場合と比較して、第1アンテナエレメント100B及び第2アンテナエレメント200Bの高さを高くすることができる。しかしながら、第2端104B及び第5端106Bが第1端102Bの前方に位置していてもよく、第4端204Bが第3端202Bの前方に位置していてもよい。
【0072】
図14は、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10の全体からアンテナケースを取り除いた第2例の斜視図である。図15は、図14に示した車載用アンテナ装置10の第2例の左側面図である。図16は、図14に示した第1ブロック310A及び第2ブロック320Aの機械的接合の一例を説明するための断面図である。図14図16に示す第2例に係る車載用アンテナ装置10は、以下の点を除いて、図11図13に示した第1例に係る車載用アンテナ装置10と同様である。
【0073】
第1アンテナエレメント100Aの少なくとも一部分の角は丸みを帯びている。具体的には、図14及び図15に示すように、第2端104Aにおける上端縁と後端縁との間の角、すなわち、第1アンテナエレメント100Aのうち第2アンテナエレメント200Aの少なくとも一部分と容量結合している部分の角が丸みを帯びている。この場合、当該角が尖っている場合と比較して、車載用アンテナ装置10の組み立ての作業者が当該角で傷ついたり、当該角によって他の部材を傷つけたりする等の不都合が生じることを抑制することができる。また、第2端104Aにおける上端縁と後端縁との間の角と異なる角、例えば、第2端104Aにおける上端縁と前端縁との間の角も丸みを帯びていてもよい。
【0074】
図14に示すように、第2端104Aにおける上端縁と後端縁との間の角と同様にして、第1アンテナエレメント100Aの少なくとも一部分の角、例えば第5端106Aにおける上端縁と後端縁との間の角も丸みを帯びている。
【0075】
図14及び図15に示すように、第2端104Aにおける上端縁と後端縁との間の角と同様にして、第2アンテナエレメント200Aの少なくとも一部分の角、例えば第4端204Aにおける上端部と後端部との間の角も丸みを帯びている。
【0076】
図14及び図15に示す例では、前方の第1アンテナエレメント100B及び前方の第2アンテナエレメント200Bも、後方の第1アンテナエレメント100A及び後方の第2アンテナエレメント200Aについて上記で説明した構成と同様の構成を有している。
【0077】
車載用アンテナ装置10は、第1アンテナエレメント100A及び第2アンテナエレメント200Aを有する後方のアンテナに設けられたホルダ300Aを備えている。ホルダ300Aは、第1アンテナエレメント100Aの少なくとも一部分と、第2アンテナエレメント200Aの少なくとも一部分と、の間に位置している。第1アンテナエレメント100A及び第2アンテナエレメント200Aのうちの少なくとも一部分はホルダ300Aによって支持されている。この場合、ホルダ300Aが設けられていない場合と比較して、車載用アンテナ装置10が搭載されている自動車の振動による第1アンテナエレメント100A及び第2アンテナエレメント200Aの少なくとも一方の機械的特性への影響を抑制することができる。また、ホルダ300Aが設けられていない場合と比較して、車載用アンテナ装置10が搭載されている自動車の振動による、第2端104Aと第4端204Aとの間の第2方向Yの距離の変動や、第2端104Aと第4端204Aとのうちの第2方向Yに重なり合う面積の変動が抑制されて、第2端104Aと第4端204Aとの間の容量の変動を抑制することができる。同様にして、ホルダ300Aが設けられていない場合と比較して、車載用アンテナ装置10が搭載されている自動車の振動による、第5端106Aと第4端204Aとの間の第2方向Yの距離の変動や、第5端106Aと第4端204Aとのうちの第2方向Yに重なり合う面積の変動が抑制されて、第5端106Aと第4端204Aとの間の容量の変動を抑制することができる。
【0078】
図14に示すように、ホルダ300Aは、第1ブロック310A及び第2ブロック320Aを有している。第1ブロック310A及び第2ブロック320Aは、例えば、樹脂ブロックである。第1ブロック310Aは、第2アンテナエレメント200Aと、第1アンテナエレメント100Aの第1領域110Aと、の間に位置している。第2ブロック320Aは、第2アンテナエレメント200Aと、第1アンテナエレメント100Aの第2領域120Aと、の間に位置している。
【0079】
図16に示すように、第1ブロック310Aの第2方向Yの負方向側の面には、凸部330Aが設けられている。凸部330Aは、第2アンテナエレメント200Aに設けられた孔を第2方向Yに貫通している。また、凸部330Aは、第2ブロック320Aの第2方向Yの正方向側の面に設けられた凹部にはめ込まれる等して機械的に接合している。このようにして、第1ブロック310A、第2ブロック320A及び第2アンテナエレメント200Aは一体となっている。この場合、第1ブロック310A及び第2ブロック320Aが凸部330Aを介して機械的に接合しておらず機械的に互いに離間している場合と比較して、第1ブロック310A、第2ブロック320A及び第2アンテナエレメント200Aを一体に組み立てることが容易となる。また、第1ブロック310A及び第2ブロック320Aが凸部330Aを介して機械的に接合しておらず機械的に互いに離間している場合と比較して、車載用アンテナ装置10が搭載されている自動車の振動による、第2端104Aと第4端204Aとの間の第2方向Yの距離の変動や、第2端104Aと第4端204Aとのうちの第2方向Yに重なり合う面積の変動が抑制されて、第2端104Aと第4端204Aとの間の容量の変動を抑制することができる。同様にして、第1ブロック310A及び第2ブロック320Aが凸部330Aを介して機械的に接合しておらず機械的に互いに離間している場合と比較して、車載用アンテナ装置10が搭載されている自動車の振動による、第5端106Aと第4端204Aとの間の第2方向Yの距離の変動や、第5端106Aと第4端204Aとのうちの第2方向Yに重なり合う面積の変動が抑制されて、第5端106Aと第4端204Aとの間の容量の変動を抑制することができる。なお、第1ブロック310A及び第2ブロック320Aは、凸部330Aを介して機械的に接合していなくてもよく、機械的に互いに離間していてもよい。
【0080】
図16に示す例では、第1ブロック310Aに設けられた凸部330Aが第2ブロック320Aに設けられた凹部に機械的に接合している。しかしながら、凸部330Aは、第2ブロック320Aに設けられていてもよい。この場合、第2ブロック320Aに設けられた凸部330Aが第1ブロック310Aに設けられた凹部に機械的に接合する。
【0081】
図14に示すように、第1ブロック310Aの第2方向Yの正方向側の面は、第1領域110Aの第1部分112A、第1段差部116A及び第2部分114Aの凹凸に沿った形状となっている。この場合、第1ブロック310Aの第2方向Yの正方向側の面と、第1部分112A、第1段差部116A及び第2部分114Aと、の間に隙間が形成される等して、第1ブロック310Aの第2方向Yの正方向側の面が第1部分112A、第1段差部116A及び第2部分114Aの凹凸に沿った形状となっていない場合と比較して、車載用アンテナ装置10が搭載されている自動車の走行時の振動による第1領域110Aの振動を抑制することができる。また、第1ブロック310Aの第2方向Yの正方向側の面が第1部分112A、第1段差部116A及び第2部分114Aの凹凸に沿った形状となっていない場合と比較して、車載用アンテナ装置10が搭載されている自動車の振動による、第2端104Aと第4端204Aとの間の第2方向Yの距離の変動や、第2端104Aと第4端204Aとのうちの第2方向Yに重なり合う面積の変動が抑制され、第2端104Aと第4端204Aとの間の容量の変動を抑制することができる。
【0082】
第1ブロック310Aの第2方向Yの正方向側の面と同様にして、第2ブロック320Aの第2方向Yの負方向側の面も、第2領域120Aの凹凸に沿った形状にすることができる。
【0083】
図14及び図15に示すように、第1ブロック310A及び第2ブロック320Aの少なくとも一方の第1方向Xの正方向側の端部には、第1突起342A及び第2突起344Aが設けられている。第1突起342Aは、第1アンテナエレメント100Aの第1端102Aに対して第3方向Zの正方向側に位置している。第2突起344Aは、第1アンテナエレメント100Aの第1端102Aに対して第3方向Zの負方向側に位置している。第1端102Aは、第1突起342A及び第2突起344Aによって第3方向Zに押さえられている。このため、第1突起342A及び第2突起344Aが設けられていない場合と比較して、第3方向Zにおける第1端102Aの位置決め及び固定が容易となる。なお、第1突起342A及び第2突起344Aは設けられていなくてもよい。
【0084】
図14及び図15に示すように、第1ブロック310Aの第2方向Yの正方向側には、第2部分114Aに設けられた孔に引っ掛かる第3突起352Aが設けられている。第3突起352Aは、例えばスナップフィットによって、第2部分114Aに設けられた孔に機械的に接合されている。第3突起352Aが設けられている場合、第3突起352Aが設けられていない場合と比較して、第1ブロック310Aと、第2部分114Aと、の位置合わせが容易となる。また、ホルダ300Aの第3突起352Aが第1アンテナエレメント100Aの第2部分114Aに設けられた孔に引っ掛かる構成は、第1アンテナエレメント100Aとホルダ300Aとの固定手段としても機能する。なお、第3突起352Aは、第2部分114Aに設けられた孔に代えて、第1領域110Aのうち第2部分114Aと異なる部分に設けられた孔に引っ掛かってもよい。さらに、複数の第3突起352Aが第1ブロック310Aの第2方向Yの正方向側に設けられていてもよい。この場合、複数の第3突起352Aは、第1部分112A、第1段差部116A及び第2部分114Aのうちの少なくとも一部分に設けられた複数の孔に引っ掛かるようにすることができる。
【0085】
第1ブロック310Aに設けられた第3突起352Aと同様にして、第2ブロック320Aの第2方向Yの負方向側にも、第2領域120Aに設けられた孔に引っ掛かる突起を設けることができる。
【0086】
図14及び図15に示すように、第1ブロック310Aの第1方向Xの負方向側には、第1領域110Aを支持する支持部362Aが設けられている。支持部362Aは、第1支持体362Aa及び第2支持体362Abを含んでいる。
【0087】
第1支持体362Aaは、第2部分114Aの第1方向Xの負方向側の端の少なくとも一部分に対して第1方向Xの負方向側に位置している。このため、第1支持体362Aaは、第1方向Xの負方向側から第2部分114Aを支持することができる。第1支持体362Aaが設けられている場合、第1支持体362Aaが設けられていない場合と比較して、第1領域110Aの第1方向Xの位置合わせが容易となる。また、第1支持体362Aaが設けられている場合、第1支持体362Aaが設けられていない場合と比較して、車載用アンテナ装置10が搭載されている自動車の走行時の振動による第1領域110Aの機械的特性への影響を抑制することができる。さらに、第1支持体362Aaが設けられている場合、第1支持体362Aaが設けられていない場合と比較して、車載用アンテナ装置10が搭載されている自動車の振動による第2端104Aと第4端204Aとのうちの第2方向Yに重なり合う面積の変動が抑制され、第2端104Aと第4端204Aとの間の容量の変動を抑制することができる。
【0088】
第2支持体362Abは、第2部分114Aの第2方向Yの正方向側の面の少なくとも一部分に対して第2方向Yの正方向側に位置している。このため、第2支持体362Abは、第2方向Yの正方向側から第2部分114Aを支持することができる。第2支持体362Abが設けられている場合、第2支持体362Abが設けられていない場合と比較して、第1領域110Aの第2方向Yの撓みを抑制することができる。また、第2支持体362Abが設けられている場合、第2支持体362Abが設けられていない場合と比較して、車載用アンテナ装置10が搭載されている自動車の走行時の振動による第1領域110Aの機械的特性への影響を抑制することができる。さらに、第2支持体362Abが設けられている場合、第2支持体362Abが設けられていない場合と比較して、車載用アンテナ装置10が搭載されている自動車の振動による第2端104Aと第4端204Aとの間の第2方向Yの距離の変動が抑制され、第2端104Aと第4端204Aとの間の容量の変動を抑制することができる。
【0089】
第1ブロック310Aに設けられた支持部362Aと同様にして、第2ブロック320Aの第1方向Xの負方向側にも、第2領域120Aを支持する支持部を設けることができる。
【0090】
ホルダ300Aの構造は、図14図16に示した例に限定されない。例えば、ホルダ300Aは、第1ブロック310A及び第2ブロック320Aのうちの一方のみを有していてもよい。また、第1アンテナエレメント100Aが、例えば、上述した図1図2若しくは図5又は後述する図19若しくは図22に示す第1アンテナエレメント100のように第1領域110Aのみを有する場合、ホルダ300Aは、第2アンテナエレメント200Aと第1領域110Aの間に位置する第1ブロック310Aのみを有していてもよい。
【0091】
車載用アンテナ装置10は、第1アンテナエレメント100B及び第2アンテナエレメント200Bを有する前方のアンテナに設けられたホルダ300Bをさらに備えている。図14及び図15に示す例において、前方のホルダ300Bは、後方のホルダ300Aについて上記で説明した構成と同様の構成を有している。また、前方のホルダ300Bの第1ブロック310B及び第2ブロック320Bの第3方向Zの高さは、不図示のアンテナケースの形状に応じて、後方のホルダ300Aの第1ブロック310A及び第2ブロック320Aの第3方向Zの高さより低くなっている。
【0092】
図17は、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10の全体からアンテナケースを取り除いた第3例の斜視図である。図18は、図17に示した車載用アンテナ装置10の第3例の左側面図である。図17及び図18に示す第3例に係る車載用アンテナ装置10は、以下の点を除いて、図14図16に示した第2例に係る車載用アンテナ装置10と同様である。
【0093】
車載用アンテナ装置10は、第1アンテナ部410及び第2アンテナ部420をさらに備えている。第1アンテナ部410及び第2アンテナ部420は、第1方向Xにおいて、第1アンテナエレメント100A及び第2アンテナエレメント200Aを有する後方のアンテナと、第1アンテナエレメント100B及び第2アンテナエレメント200Bを有する前方のアンテナと、の間に位置している。第1アンテナ部410は、後方の第2アンテナエレメント200A及び前方の第2アンテナエレメント200Bを第1方向Xに平行に通過する仮想線に対して第2方向Yの正方向側に位置している。第2アンテナ部420は、後方の第2アンテナエレメント200A及び前方の第2アンテナエレメント200Bを第1方向Xに平行に通過する仮想線に対して第2方向Yの負方向側に位置している。
【0094】
第1アンテナ部410及び第2アンテナ部420は、例えば、LTEアンテナ、Wi-Fi(登録商標)アンテナ、MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)アンテナである。第1アンテナ部410及び第2アンテナ部420は、互いに同じ種類のアンテナであってもよいし、又は互いに異なる種類のアンテナであってもよい。
【0095】
図11図13を用いて説明したように、第1アンテナエレメント100A及び第2アンテナエレメント200Aを有する後方のアンテナと、第1アンテナエレメント100B及び第2アンテナエレメント200Bを有する前方のアンテナと、は、両アンテナが互いに独立したアンテナとして機能するように、第1方向Xに適当なスペースを置いて配置されている。第1アンテナ部410及び第2アンテナ部420は、当該スペースに配置されている。したがって、第1アンテナ部410及び第2アンテナ部420が当該スペースと異なる領域に配置されている場合と比較して、アンテナケース内の空間を効率的に利用して第1アンテナ部410及び第2アンテナ部420を配置することができる。
【0096】
第1アンテナ部410及び第2アンテナ部420の配置は、図17及び図18に示す例に限定されない。例えば、第1アンテナ部410及び第2アンテナ部420は、第1方向Xに並んでいてもよい。また、第1アンテナ部410及び第2アンテナ部420の一方が設けられていなくてもよい。さらに、第1アンテナ部410及び第2アンテナ部420に加えて、少なくとも1つの他のアンテナ部が設けられていてもよい。
【0097】
(実施形態3)
図19は、実施形態3に係る車載用アンテナ装置10の斜視図である。実施形態3に係る車載用アンテナ装置10は、以下の点を除いて、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10と同様である。
【0098】
第2アンテナエレメント200の第3部分212は、第3端202から第4部分214にかけて、第3端202から第4部分214にかけて第3方向Zの正方向側に向けて延在する部分だけでなく、他の方向に延在する部分も含んでいる。具体的には、第3部分212は、第3端202から第4部分214にかけて、第3方向Zの正方向側に向けて延在する部分と、第1方向Xの正方向側に向けて延在する部分と、第2方向Yの正方向側に向けて延在する部分と、第3方向Zの正方向側に向けて延在する部分と、を順に含んでいる。この場合、例えば図1に示したように第3部分212が、第3端202から第4部分214にかけて第3方向Zの正方向側に向けて延在する部分のみを含む場合と比較して、第1方向Xにおける第2アンテナエレメント200の長さを短くしつつ第2アンテナエレメント200の第3端202から第4端204までの全長を維持することができる。
【0099】
車載用アンテナ装置10は、第1誘電体150A及び第2誘電体150Bをさらに備えている。第1誘電体150Aは、第1アンテナエレメント100の少なくとも一部分に取り付けられている。具体的には、第1誘電体150Aは、第1アンテナエレメント100の第1部分112の内側の面に取り付けられている。なお、誘電体150は、第1部分112の内側の面及び第1部分112の外側の面の少なくとも一方に取り付けられていてもよい。第2誘電体150Bは、第1アンテナエレメント100の少なくとも一部分と、第2アンテナエレメント200の少なくとも一部分と、に跨って設けられている。具体的には、第2誘電体150Bは、第1アンテナエレメント100の第2端104の少なくとも一部分と、第2アンテナエレメント200の第4端204の少なくとも一部分と、に跨って設けられている。
【0100】
なお、本実施形態において、第1アンテナエレメント100の第2端104及び第2アンテナエレメント200の第4端204は、第2方向Yにおいて重なっていない。この場合であっても、第1アンテナエレメント100の第2端104及び第2アンテナエレメント200の第4端204は、近接しているため、互いに容量結合されている。第1アンテナエレメント100の第2端104及び第2アンテナエレメント200の第4端204が第2方向Yにおいて重なっていないことで、第1アンテナエレメント100の第2端104と第2アンテナエレメント200の第4端204との間の容量成分は、第1アンテナエレメント100の第2端104及び第2アンテナエレメント200の第4端204が第2方向Yにおいて重なっている場合における容量成分より小さくなるように調節することができる。
【0101】
本実施形態においては、例えば図11図13に示したように、第1アンテナエレメント100A及び第2アンテナエレメント200Aを有するアンテナと、第1アンテナエレメント100B及び第2アンテナエレメント200Bを有するアンテナと、を車載用アンテナ装置10の前後方向に並べた場合、例えば実施形態1に係る第1アンテナエレメント100及び第2アンテナエレメント200を有するアンテナと比較して、各アンテナの前後方向における長さを短くすることができる。したがって、例えば実施形態1に係る第1アンテナエレメント100及び第2アンテナエレメント200を有するアンテナと比較して、上述したこれら2つのアンテナのアイソレーションをより確保することができる。また、上述した2つのアンテナの間に他メディアのアンテナを配置することができる。
【0102】
図20は、実施形態3に係る車載用アンテナ装置10及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示すグラフである。図21は、実施形態3に係る車載用アンテナ装置10及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示すグラフである。
【0103】
図20のグラフの横軸は、周波数を示している。図20のグラフの縦軸は、VSWRを示している。図20のグラフ内の実線は、実施形態3に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示している。図20のグラフ内の破線は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示している。
【0104】
図21のグラフの横軸は、周波数を示している。図21のグラフの縦軸は、放射効率を示している。図21のグラフ内の実線は、実施形態3に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示している。図21のグラフ内の破線は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示している。
【0105】
図20に示すように、実施形態3及び実施形態1のVSWRは、700MHz~1000MHz、1500MHz~6500MHzの広帯域に亘って3.5未満と低くなっている。また、図21に示すように、実施形態3及び実施形態1の放射効率は、実施形態3の1250MHz付近を除いて、700MHz~6500MHzの広帯域に亘って60%超と高くなっている。
【0106】
(実施形態4)
図22は、実施形態4に係る車載用アンテナ装置10の斜視図である。実施形態4に係る車載用アンテナ装置10は、以下の点を除いて、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10と同様である。
【0107】
車載用アンテナ装置10は、PCB(Printed Circuit Board)等の基板160を備えている。第1アンテナエレメント100は、基板160の第2方向Yの正方向側の面に形成された導電パターンとなっている。第2アンテナエレメント200は、基板160の第2方向Yの負方向側の面に形成された導電パターンとなっている。なお、本実施形態において、第1アンテナエレメント100の第2端104及び第2アンテナエレメント200の第4端204は、基板160の厚み方向、すなわち、第2方向Yにおいて重なっていない。この場合であっても、第1アンテナエレメント100の第2端104及び第2アンテナエレメント200の第4端204は、近接しているため、互いに容量結合されている。第1アンテナエレメント100の第2端104及び第2アンテナエレメント200の第4端204が第2方向Yにおいて重なっていないことで、第1アンテナエレメント100の第2端104と第2アンテナエレメント200の第4端204との間の容量成分は、第1アンテナエレメント100の第2端104及び第2アンテナエレメント200の第4端204が第2方向Yにおいて重なっている場合における容量成分より小さくなるように調節することができる。
【0108】
図23は、実施形態4に係る車載用アンテナ装置10及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示すグラフである。図24は、実施形態4に係る車載用アンテナ装置10及び実施形態1に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示すグラフである。
【0109】
図23のグラフの横軸は、周波数を示している。図23のグラフの縦軸は、VSWRを示している。図23のグラフ内の実線は、実施形態4に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示している。図23のグラフ内の破線は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10のVSWR特性を示している。
【0110】
図24のグラフの横軸は、周波数を示している。図24のグラフの縦軸は、放射効率を示している。図24のグラフ内の実線は、実施形態4に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示している。図24のグラフ内の破線は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10の放射効率特性を示している。
【0111】
図23に示すように、実施形態4及び実施形態1のVSWRは、700MHz~6500MHzの広帯域に亘って3.5未満と低くなっている。また、図24に示すように、実施形態4及び実施形態1の放射効率は、700MHz~6500MHzの広帯域に亘って60%超と高くなっている。
【0112】
また、実施形態4では、基板160上に導体パターンで第1アンテナエレメント100及び第2アンテナエレメント200を設ける構成であるため、アンテナエレメントを板金で構成する場合と比較して、車両の振動によるアンテナエレメント同士の衝突を防ぐことができ、また、車両の振動や組立作業によるアンテナエレメント同士の間隔の変化を防ぐことができ、容量結合を安定的に一定とすることができる。
【0113】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0114】
例えば、各実施形態及び各変形例では、第1アンテナエレメント100の第2端104は、グランド20に対して斜めに傾いた上端縁を有している。しかしながら、第1アンテナエレメント100の第2端104の上端縁は、例えば、三角形、四角形、半円形又は半楕円形であってもよい。図11図18を用いて説明した第1アンテナエレメント100A、第1アンテナエレメント100B、第2アンテナエレメント200A及び第2アンテナエレメント200Bについても同様である。
【0115】
また、各実施形態及び各変形例では、第1アンテナエレメント100が給電部102aを有しており、第2アンテナエレメント200が短絡部202aを有している。しかしながら、第1アンテナエレメント100が短絡部202aを有していて、第2アンテナエレメント200が給電部102aを有していてもよい。図11図18を用いて説明した第1アンテナエレメント100A、第1アンテナエレメント100B、第2アンテナエレメント200A及び第2アンテナエレメント200Bについても同様である。
【0116】
本明細書によれば、以下の態様が提供される。
(態様1)
態様1は、
グランド上に配置された第1アンテナエレメントと、
前記グランド上に配置された第2アンテナエレメントと、
を備え、
前記第1アンテナエレメントの少なくとも一部分と、前記第2アンテナエレメントの少なくとも一部分と、が容量結合している、車載用アンテナ装置である。
態様1によれば、第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントとの間の容量結合が、低周波数帯域における低VSWR及び高放射効率に寄与する。したがって、アンテナを広帯域に亘って安定的に高い放射効率で使用可能にすることができる。
(態様2)
態様2は、
前記第1アンテナエレメントは、給電部を有し、
前記第2アンテナエレメントは、前記グランドに短絡した短絡部を有する、態様1に記載の車載用アンテナ装置である。
態様2によれば、第2アンテナエレメントがグランドに対して電気的に開放されている場合と比較して、低周波数帯域における良好な特性が得られる。
(態様3)
態様3は、
前記第1アンテナエレメントは、前記第2アンテナエレメントの一方の側に位置する第1領域と、前記第2アンテナエレメントの前記一方の側の反対の他方の側に位置する第2領域と、を有し、
前記第1アンテナエレメントの前記第1領域の少なくとも一部分は、前記第2アンテナエレメントの少なくとも一部分と容量結合されており、
前記第1アンテナエレメントの前記第2領域の少なくとも一部分は、前記第2アンテナエレメントの少なくとも一部分と容量結合されている、態様1又は2に記載の車載用アンテナ装置である。
態様3によれば、第1アンテナエレメントの第1領域と第2アンテナエレメントとの間の容量結合と、第1アンテナエレメントの第2領域と第2アンテナエレメントとの間の容量結合と、が、低周波数帯域における低VSWR及び高放射効率に寄与する。したがって、アンテナを広帯域に亘って安定的に高い放射効率で使用可能にすることができる。
(態様4)
態様4は、
前記第1アンテナエレメントは、第1端と、前記第1端よりも前記グランドから離れた位置にある第2端と、を有し、
前記第2アンテナエレメントは、第3端と、前記第3端よりも前記グランドから離れた位置にある第4端と、を有し、
前記第1アンテナエレメントの前記第2端の少なくとも一部分と、前記第2アンテナエレメントの前記第4端の少なくとも一部分と、が容量結合している、態様1~3のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様4によれば、第1アンテナエレメントの第2端と第2アンテナエレメントの第4端との間の容量結合が、低周波数帯域における低VSWR及び高放射効率に寄与する。したがって、アンテナを広帯域に亘って安定的に高い放射効率で使用可能にすることができる。
(態様5)
態様5は、
前記第1アンテナエレメントの幅は、前記第1端から前記第2端にかけて、段階的に又は漸次的に大きくなっている、態様4に記載の車載用アンテナ装置である。
態様5によれば、第1アンテナエレメントは、自己相似形状を有するアンテナとして機能することができる。すなわち、動作周波数帯域の周波数帯によって、自己相似形状又はこれに準じたテーパードアンテナとして機能したり、モノポールアンテナとして機能したり、ループアンテナ又はスプリットリングアンテナとして機能したりするため、アンテナを広帯域に亘って安定的に高い放射効率で使用可能にすることができる。
(態様6)
態様6は、
前記第2アンテナエレメントの幅は、前記第3端から前記第4端にかけて、段階的に又は漸次的に大きくなっている、態様4又は5に記載の車載用アンテナ装置である。
態様6によれば、第2アンテナエレメントは、自己相似形状を有するアンテナとして機能するため、アンテナを広帯域に亘って安定的に高い放射効率で使用可能にすることができる。
(態様7)
態様7は、
前記第1アンテナエレメントの前記第2端は、前記グランドに対して斜めに傾いている、態様4~6のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様7によれば、第2端の傾きによって、第1アンテナエレメントの第2端と第2アンテナエレメントの第4端とが重なり合う面積を調整することで、第1アンテナエレメントの第2端と第2アンテナエレメントの第4端との間の容量成分を調節することができる。
(態様8)
態様8は、
前記第1アンテナエレメント又は前記第2アンテナエレメントの少なくとも一部分に誘電体を有する、態様1~7のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様8によれば、誘電体によってVSWR特性を平滑化することができる。
(態様9)
態様9は、
前記第1アンテナエレメントの長さと前記第2アンテナエレメントの長さとの差が前記第1アンテナエレメントの長さ又は前記第2アンテナエレメントの長さの±25%以内である、態様1~8のいずれかに記載の車載用アンテナ装置である。
態様9によれば、アンテナを広帯域に亘って安定的に高い放射効率で使用可能にすることができる。
(態様10)
態様10は、
前記第1アンテナエレメントの前記少なくとも一部分の角が丸みを帯びている、態様1~9のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様10によれば、第1アンテナエレメントの当該角が尖っている場合と比較して、車載用アンテナ装置の組み立ての作業者が当該角で傷ついたり、当該角によって他の部材を傷つけたりする等の不都合が生じることを抑制することができる。
(態様11)
態様11は、
前記第1アンテナエレメントの少なくとも一部分と、前記第2アンテナエレメントの少なくとも一部分との間に位置するホルダをさらに備え、
前記第1アンテナエレメント及び前記第2アンテナエレメントのうちの少なくとも一部分が前記ホルダによって支持されている、態様1~10のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様11によれば、ホルダが設けられていない場合と比較して、車載用アンテナ装置が搭載されている自動車の振動による第1アンテナエレメント及び第2アンテナエレメントの少なくとも一方の機械的特性への影響を抑制することができる。また、ホルダが設けられていない場合と比較して、車載用アンテナ装置が搭載されている自動車の振動による、第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントとの容量結合している少なくとも一部分の間の距離の変動や、第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントとの容量結合している少なくとも一部分の重なり合う面積の変動が抑制され、第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントとの間の容量の変動を抑制することができる。
【0117】
この出願は、2020年3月25日に出願された日本出願特願2020-053910号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0118】
10 車載用アンテナ装置
20 グランド
100 第1アンテナエレメント
100A 第1アンテナエレメント
100B 第1アンテナエレメント
102 第1端
102A 第1端
102B 第1端
102a 給電部
104 第2端
104A 第2端
104B 第2端
106 第5端
106A 第5端
106B 第5端
110 第1領域
110A 第1領域
112 第1部分
112A 第1部分
114 第2部分
114A 第2部分
116 第1段差部
116A 第1段差部
120 第2領域
120A 第2領域
122 第5部分
124 第6部分
126 第2段差部
150 誘電体
150A 第1誘電体
150B 第2誘電体
160 基板
200 第2アンテナエレメント
200A 第2アンテナエレメント
200B 第2アンテナエレメント
202 第3端
202A 第3端
202B 第3端
202a 短絡部
204 第4端
204A 第4端
204B 第4端
212 第3部分
214 第4部分
300A ホルダ
300B ホルダ
310A 第1ブロック
310B 第1ブロック
320A 第2ブロック
320B 第2ブロック
330A 凸部
342A 第1突起
344A 第2突起
352A 第3突起
362A 支持部
362Aa 第1支持体
362Ab 第2支持体
410 第1アンテナ部
420 第2アンテナ部
510 アンテナベース
520 基板
530 アンテナケース
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24