(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】ウェアラブルセンサデバイス及び感知方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0531 20210101AFI20250303BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
A61B5/0531
A61B5/16 110
(21)【出願番号】P 2022535106
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2020084562
(87)【国際公開番号】W WO2021115937
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-12-01
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】アウウェルケルク マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ぺニング デ ヴリース ヘンドリクス テオドルス ゲラルドゥス マリア
【審査官】村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/073756(WO,A1)
【文献】特開2001-104270(JP,A)
【文献】特開平11-034688(JP,A)
【文献】特開平07-204169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の発熱性及び/又は精神性ストレス反応用のウェアラブルセンサデバイスであって、前記ウェアラブルセンサデバイスが、
前記対象者の第1の無毛でない皮膚部分に接触する第1の電極と、
前記対象者の第2の無毛でない皮膚部分に接触する第2の電極と、
前記対象者の無毛の皮膚部分に接触する第3の電極と、
正入力端子と負入力端子との間に電圧信号を供給し、出力端子において皮膚コンダクタンス信号を測定する皮膚コンダクタンスセンサと、
前記第1の電極から前記第3の電極と、前記皮膚コンダクタンスセンサの前記正入力端子及び前記負入力端子との間の接続を、少なくとも3つのスイッチング状態間で切り替えるスイッチング装置であって、各スイッチング状態において、前記第1の電極から前記第3の電極のうちの2つが前記負入力端子に接続され、前記第1の電極から前記第3の電極のうちの他の電極が前記正入力端子に接続され、又は各スイッチング状態において、前記第1の電極から前記第3の電極のうちの2つが前記正入力端子に接続され、前記第1から第3の電極のうちの他の電極が前記負入力端子に接続される、スイッチング装置と、
前記少なくとも3つのスイッチング状態中に、測定
されたコンダクタンス信号から発熱性及び/又は精神性ストレス反応を決定する処理ユニットと
を含む、ウェアラブルセンサデバイス。
【請求項2】
前記スイッチング装置が、前記第1の電極から前記第3の電極と、前記皮膚コンダクタンスセンサの前記正入力端子及び前記負入力端子との間の接続を、6つのスイッチング状態間で切り替え、3つのスイッチング状態の各々において、前記第1の電極から前記第3の電極のうちの2つが前記負入力端子に接続され、前記第1の電極から前記第3の電極のうちの他の電極が前記正入力端子に接続され、他の3つのスイッチング状態の各々において、前記第1の電極から前記第3の電極のうちの2つが前記正入力端子に接続され、前記第1の電極から前記第3の電極のうちの他の電極が前記負入力端子に接続される、請求項1に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項3】
前記スイッチング装置は、前記第1の電極から前記第3の電極と、前記皮膚コンダクタンスセンサの前記正入力端子及び前記負入力端子との間の接続を、前記少なくとも3つのスイッチング状態の後、前記第1の電極から前記第3の電極がすべて前記負入力端子又は前記正入力端子に接続されるDCフリースイッチング状態に切り替える、請求項1又は2に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項4】
前記スイッチング装置が、3つのスイッチを含み、各々が、前記第1の電極から前記第3の電極のそれぞれの1つに接続された第1の端子と、前記皮膚コンダクタンスセンサの前記正入力端子及び前記負入力端子に接続された2つの第2の端子とを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項5】
前記スイッチング装置が、6つのスイッチを含み、3つのスイッチが各々前記第1の電極から前記第3の電極のそれぞれの1つに接続された第1の端子と、前記皮膚コンダクタンスセンサの前記正入力端子に接続された第2の端子とを有し、他の3つのスイッチが各々前記第1の電極から前記第3の電極のそれぞれの1つに接続された第1の端子と、前記皮膚コンダクタンスセンサの前記負入力端子に接続された第2の端子とを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項6】
前記処理ユニットが、測定された前記皮膚コンダクタンス信号の立上りエッジの高さを評価することによって、発熱性ストレス反応及び/又は精神性ストレス反応を決定する、請求項1から5のいずれか一項に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項7】
前記処理ユニットは、立上りエッジの高さが無毛の皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号よりも無毛でない皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号において高い場合、皮膚コンダクタンスの増加が発熱性ストレスから生じていると決定し、及び/又は立上りエッジの高さが無毛でない皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号よりも無毛の皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号において高い場合、皮膚コンダクタンスの増加は精神性ストレスから生じていると決定する、請求項1から6のいずれか一項に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項8】
前記スイッチング装置が、測定された前記皮膚コンダクタンス信号のサンプリングレートの整数分の1のスイッチングレートで前記接続を切り替える、請求項1から7のいずれか一項に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項9】
前記第1、第2、及び第3の電極が、単一のデバイスに統合されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項10】
前記第1、第2、及び第3の電極が、前記対象者の体に別々に配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項11】
前記処理ユニットが、異なるスイッチング状態で測定された前記皮膚コンダクタンス信号の評価を同期させる、請求項10に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項12】
前記対象者の手首に巻かれるストラップと、前記ストラップによって保持され、前記スイッチング装置、前記皮膚コンダクタンスセンサ、及び前記処理ユニットを収容するハウジングとをさらに含み、
前記第1の電極及び前記第2の電極は、前記ウェアラブルセンサデバイスが前記対象者によって着用されたとき、前記手首の背側に面する前記ハウジングの底面の中に又は底面に配置され、
前記第3の電極は、前記ウェアラブルセンサデバイスが前記対象者によって着用されたとき、前記手首の掌側に面する前記ストラップの位置の中に又は位置に配置される、請求項1から11のいずれか一項に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項13】
前記スイッチング装置が、個々に又は平均して等しい期間を有するスイッチング状態を適用する、請求項1から12のいずれか一項に記載のウェアラブルセンサデバイス。
【請求項14】
対象者の皮膚コンダクタンスを測定して発熱性及び/又は精神性ストレス反応を決定するためのウェアラブルセンサデバイスの感知方法であって、前記ウェアラブルセンサデバイスが、前記対象者の第1の無毛でない皮膚部分に接触する第1の電極と、前記対象者の第2の無毛でない皮膚部分に接触する第2の電極と、前記対象者の無毛の皮膚部分に接触する第3の電極とを含み、前記感知方法が、
皮膚コンダクタンスセンサの正入力端子と負入力端子との間に電圧信号を供給するステップと、
前記皮膚コンダクタンスセンサの出力端子において皮膚コンダクタンス信号を測定するステップと、
前記第1の電極から前記第3の電極と、前記皮膚コンダクタンスセンサの前記正入力端子及び前記負入力端子との間の接続を、少なくとも3つのスイッチング状態間で切り替えるステップであって、各スイッチング状態において、前記第1の電極から前記第3の電極のうちの2つが前記負入力端子に接続され、前記第1の電極から前記第3の電極のうちの他の電極が前記正入力端子に接続されるか、又は各スイッチング状態において、前記第1の電極から前記第3の電極のうちの2つが前記正入力端子に接続され、前記第1の電極から前記第3の電極のうちの他の電極が前記負入力端子に接続される、切り替えるステップと、
前記少なくとも3つのスイッチング状態中に、測定された前記皮膚コンダクタンス信号から発熱性反応及び/又は精神性ストレス反応を決定するステップと
を有する、感知方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムがコンピュータで実行されるとき、請求項14に記載の感知方法のステップを前記コンピュータに実行させるためのプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の発熱性及び/又は精神性ストレス反応を決定するためのウェアラブルセンサデバイス及び感知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発汗には2つの主要な原因、すなわち、体温調節及び感情的ストレスがある。第1のタイプの発汗は発熱性発汗と呼ばれ、第2のタイプの発汗は第2の精神性発汗と呼ばれる。発熱性発汗は、交感性自律神経系からの信号による汗腺の活性化の結果である。この信号は1Hzを超える周波数で発生することが報告されており、それは、個々の皮膚コンダクタンス反応を示すには速すぎる。発熱性発汗の結果として、皮膚コンダクタンスレベルは、識別可能な個々の皮膚コンダクタンス反応なしに上昇する、すなわち、皮膚コンダクタンスは、階段を上るなどの激しい活動の結果として人が発汗しているとき、個々のピークなしに急激に上昇する。そのような発汗は、体温調節によって引き起こされる。
【0003】
ウェアラブルセンサデバイスを使用して、皮膚コンダクタンスを測定することによって、汗腺の活性化が測定される。ライフスタイルの用途では、感情的又は生理的ストレッサへの人の反応を知ることは有利である。皮膚コンダクタンスデータは、この情報を含むが、さらに、上述のような体温調節によって引き起こされる皮膚コンダクタンス変動を含む。例えば、M. Ouwerkerk、P. Dandine、D. Bolio、R. Kocielnik、J. Mercurio、H. Huijgen、J. Westerink、Wireless multi sensor bracelet with discreet feedback、Proceedings of Wireless Health 2013、Baltimore、USA、paper A6に記載されているような、知られているウェアラブルセンサデバイスは、手首の掌側(下側とも呼ばれる)で皮膚コンダクタンスを測定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
汗腺の活性化は、全く異なる刺激への体の反応である。熱又は身体活動は中核体温を高め、それにより、体温調節プロセスがトリガされ、とりわけ、汗腺が活性化される。心理的又は痛み刺激は、汗腺を活性化する他の知られている誘因である。しかしながら、皮膚コンダクタンスの測定から、汗腺活動への2つの寄与を定量化及び分離する方法はまだ分かっていない。
【0005】
本発明の目的は、人の熱的及び/又は感情的ストレスの影響を決定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様において、対象者の発熱性及び/又は精神性ストレス反応を決定するためのウェアラブルセンサデバイスであって、ウェアラブルセンサデバイスが、
対象者の第1の無毛でない皮膚部分に接触するように構成された第1の電極と、
対象者の第2の無毛でない皮膚部分に接触するように構成された第2の電極と、
対象者の無毛の皮膚部分に接触するように構成された第3の電極と、
正入力端子と負入力端子との間に電圧信号を供給し、出力端子において皮膚コンダクタンス信号を測定するように構成された皮膚コンダクタンスセンサと、
第1の電極から第3の電極と、皮膚コンダクタンスセンサの正入力端子及び負入力端子との間の接続を、少なくとも3つのスイッチング状態間で切り替えるように構成されたスイッチング装置であり、各スイッチング状態において、第1の電極から第3の電極のうちの2つが負入力端子に接続され、第1の電極から第3の電極のうちの他の電極が正入力端子に接続されるか、又は各スイッチング状態において、第1の電極から第3の電極のうちの2つが正入力端子に接続され、第1から第3の電極のうちの他の電極が負入力端子に接続される、スイッチング装置と、
少なくとも3つのスイッチング状態中に、測定された皮膚コンダクタンス信号から発熱性及び/又は精神性ストレス反応を決定するように構成された処理ユニットと
を含む。
【0007】
本発明のさらなる態様において、対応する感知方法、コンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムがコンピュータで実行されたとき、本明細書で開示される方法のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム、並びにプロセッサによって実行されたとき、本明細書で開示される方法を実行させるコンピュータプログラム製品を格納する非一時的コンピュータ可読記録媒体が提供される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、従属クレームにおいて定義される。特許請求される方法、コンピュータプログラム、及び媒体は、特に、従属請求項で定義され、本明細書で開示されるような特許請求されるウェアラブルセンサデバイスと同様及び/又は同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0009】
本発明は、人の熱的及び/又は感情的ストレスの影響を測定するウェアラブルセンサデバイス及び感知方法を提示するという着想に基づく。これは、例えば手首の上側及び下側の無毛の皮膚部分及び無毛でない皮膚部分の皮膚コンダクタンスの準(又はほぼ)同時測定によって行われる。皮膚コンダクタンスは、ストレスの結果として活性になる自律神経系の交感神経枝による汗腺の活性化をモニタする手段である。手の両側の発汗挙動と類似して、熱的ストレスは、手首の上側(又は別の無毛でない皮膚部分)の大多数の汗腺を活性化し、感情的ストレスは、手首の下側(又は別の無毛の皮膚部分)の大多数の汗腺を活性化する。これらの準同時測定は、クロストークの影響を受けるが、提案するコミュテーション方法を用いて、このクロストークを除去することが可能である。電極と皮膚コンダクタンスセンサとの間の接続を切り替えることにより、平均電極電流の流れがゼロに近づくように、電極の極性が固定パターンに従って切り替えられる。
【0010】
測定値は準同時であるが、その理由は、測定値が、同時に得られるのではなく、互いに短い遅延の後に続くからである。測定間の遅延は、短くすべきであり、測定される信号の帯域幅との関係で、コンダクタンス信号の信号変化の速さよりもかなり短くすべきである。
【0011】
適切な変換を使用して、各電極-皮膚接触の抵抗又はコンダクタンスが計算され、それに基づいて、皮膚コンダクタンス信号への発熱性発汗及び精神性発汗の寄与が導き出される。
【0012】
一般に、対象者に適用可能な単一のコンダクタンス値はないが、測定されるコンダクタンスは、対象者自身と、その上に、実際の測定位置並びに対象者のストレス及び活動レベルとに依存する。したがって、本発明により提供されるように異なる位置で準同時に測定することにより、ストレス源及び活動源からのコンダクタンスへの寄与を分離することが可能になる。
【0013】
精神的ストレスによって引き起こされるコルチゾールの上昇は、米国特許第10085695号に記載されているメンタルバランス法を使用して計算される。身体活動に対するコルチゾール反応は、心理的刺激に対するコルチゾール反応よりもかなり小さいことが発明者らによって見いだされた。知られているメンタルバランス法を正確に実施するには、汗腺活性化への発熱性寄与と精神性寄与の両方が定量化されなければならない。本発明は、これを可能にし、それにより、知られているメンタルバランス法で使用して、ストレッサに対するコルチゾール反応をより正確に決定することができる。
【0014】
一実施形態では、スイッチング装置は、第1の電極から第3の電極と、皮膚コンダクタンスセンサの正入力端子及び負入力端子との間の接続を、6つのスイッチング状態間で切り替えるように構成され、3つのスイッチング状態の各々において、第1の電極から第3の電極のうちの2つが負入力端子に接続され、第1の電極から第3の電極のうちの他の電極が正入力端子に接続され、他の3つのスイッチング状態の各々において、第1の電極から第3の電極のうちの2つが正入力端子に接続され、第1の電極から第3の電極のうちの他の電極が負入力端子に接続される。
【0015】
理想的なオフセットフリーコンダクタンスセンサが使用され、対象者の皮膚コンダクタンスが純粋な受動電気ネットワークとしてモデル化される場合、第1の3つのスイッチング状態及び第2の3つのスイッチング状態での測定から、ほぼ同一の結果が予想される。しかしながら、コンダクタンスセンサのオフセットが小さい場合、これらの結果の差異が予想されるが、それは、オフセットの影響を抑制し、測定精度を改善するために有用である。さらに、6つのスイッチング状態からの測定では、例えば電圧源を含むより複雑な皮膚コンダクタンスモデルが解かれる。一般に、N個の独立した測定により、N個のモデルパラメータが解かれる。補償を適用するための正確な式は、皮膚コンダクタンスセンサの電子機器の設計に依存する。
【0016】
別の実施形態では、スイッチング装置は、第1の電極から第3の電極と、皮膚コンダクタンスセンサの正入力端子及び負入力端子との間の接続を、少なくとも3つのスイッチング状態の後、第1の電極から第3の電極がすべて負入力端子又は正入力端子に接続されるDCフリースイッチング状態に切り替えるように構成される。さらに、DCフリー動作では、すべての電極が短絡されていないすべてのスイッチング状態が、等しい期間を有していなければならない。このようにして、DCフリー測定が実行され、DC電流が測定対象者に流れ込むことが防止される。加えて、各測定サイクルが同じ期間を有する場合、DCフリー動作(平均)がさらに保証される。最も簡単な測定サイクルは、上述の3つ又は6つのスイッチング状態で測定を繰り返す。特定の実施態様では、DCフリー挙動を乱さない3つのスイッチング状態の後にDCフリースイッチング状態が使用されるように、4つの測定の繰り返しサイクルを有することが望ましい。
【0017】
スイッチング装置は3つのスイッチを含み、各々は、第1の電極から第3の電極のそれぞれの1つに接続された第1の端子と、皮膚コンダクタンスセンサの正入力端子及び負入力端子に接続された2つの第2の端子とを有する。さらに多くの柔軟性を提供する別の実施形態では、スイッチング装置は6つのスイッチを含み、3つのスイッチは、各々、第1の電極から第3の電極のそれぞれの1つに接続された第1の端子と、皮膚コンダクタンスセンサの正入力端子に接続された第2の端子とを有し、他の3つのスイッチは、各々、第1の電極から第3の電極のそれぞれの1つに接続された第1の端子と、皮膚コンダクタンスセンサの負入力端子に接続された第2の端子とを有する。
【0018】
一実施形態では、処理ユニットは、測定された皮膚コンダクタンス信号の立上りエッジの高さを評価することによって、発熱性ストレス反応及び/又は精神性ストレス反応を決定するように構成される。特に、処理ユニットは、立上りエッジの高さが無毛の皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号よりも無毛でない皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号において高い場合、皮膚コンダクタンスの増加が発熱性ストレスから生じていると決定するように、及び/又は立上りエッジの高さが無毛でない皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号よりも無毛の皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号において高い場合、皮膚コンダクタンスの増加は精神性ストレスから生じていると決定するように構成される。
【0019】
したがって、立上りエッジ(無毛の皮膚領域及び無毛でない皮膚領域から測定された異なる皮膚コンダクタンス信号に同時に現れる)の高さが、無毛でない皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号でより高い場合、これらの高さは、発熱性ストレス反応、すなわち、熱的ストレスから生じているものと考えられる。したがって、スイッチング周波数は、皮膚コンダクタンス信号の変化のレートと比較して速くすべきである。スイッチング速度が遅すぎる場合、様々なスイッチング状態の信号で同時の立上りエッジを検出することが不可能になる。立上りエッジ(無毛の皮膚領域及び無毛でない皮膚領域から測定された異なる皮膚コンダクタンス信号に同時に現れる)の高さが、無毛の皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号でより高い場合、これらの高さは、精神性ストレス反応、すなわち、感情的ストレスから生じているものと考えられる。
【0020】
したがって、熱的ストレスレベルの決定は、ただ単にこれらの立上りエッジを使用して行われる。熱的ストレスレベルは、皮膚コンダクタンスピークを識別し、識別された皮膚コンダクタンスピークの正規化されたパラメータに基づいてユーザの精神性ストレスレベルを決定することによって計算される。感情的ストレスレベルは、熱的ストレスレベルと同様に決定される。
【0021】
累積のストレス負荷は、コルチゾールレベルへの寄与にリンクされる。立上りエッジの高さからコルチゾールレベルを計算する方法は、例えば、米国特許第10085695号に記載されており、それによれば、刺激応答が皮膚コンダクタンス信号で決定され、推定のコルチゾールレベルトレースが、刺激応答から決定される。次いで、メンタルバランス又はインバランスの推定のレベルが、推定のコルチゾールレベルトレースから決定される。熱的な立上りエッジにリンクされたコルチゾール生成と感情的な立上りエッジにリンクされたコルチゾール生成の比率が定量化される。典型的な比率として、1/3.6の値が使用される。
【0022】
別の実施形態では、スイッチング装置は、測定された皮膚コンダクタンス信号のサンプリングレートの整数分の1のスイッチングレートで接続を切り替えるように構成される。
【0023】
信号品質次第で、フルタイムのコンダクタンス測定を実施する必要がない場合がある。測定電流は、個々の測定をデューティサイクルすることによって減少する。そのような実施形態では、個別の測定期間の後に、「すべて電極が短絡される」サイクルが続く。DCフリー動作を保持するために、すべての電極を短絡させないコンダクタンス測定サイクルの「アクティブ」期間は、等しく保持されなければならない。
【0024】
1つの実施形態では、第1、第2、及び第3の電極は、単一のデバイスに統合される。したがって、電極はすべて対象者の体に一度に装着される。
【0025】
別の実施形態では、第1、第2、及び第3の電極は、対象者の体に別々に配置されるように構成される。これにより、対象者の体の望ましい位置に電極を装着するというさらに多くの柔軟性が提供される。そのとき、処理ユニットは、異なるスイッチング状態で測定された皮膚コンダクタンス信号の評価を同期させるように構成されることが好ましい。
【0026】
有利な実施態様では、ウェアラブルセンサデバイスは、対象者の手首に巻かれるように構成されたストラップと、ストラップによって保持され、スイッチング装置、皮膚コンダクタンスセンサ、及び処理ユニットを収容するハウジングと、をさらに含み、第1及び第2の電極は、ウェアラブルセンサデバイスが対象者によって着用されたとき、手首の背側(上側とも呼ばれる)に面するハウジングの底面の中に又は底面に配置され、第3の電極は、ウェアラブルセンサデバイスが対象者によって着用されたとき、手首の掌側に面するストラップの位置の中に又は位置に配置される。このように、ウェアラブルセンサデバイスは、手首に着用される時計又はフィットネスデバイスのように構成される。
【0027】
別の実施形態では、スイッチング装置は、個々に又は平均して等しい期間を有するスイッチング状態を適用するように構成される。例えば、アクティブスイッチ状態(例えば、すべての電極が短絡されていない状態)の(長期間平均)期間は、DCフリー動作を可能にするために、等しくすべきである。
【0028】
1つ又は複数のさらなる実施形態では、さらなる情報を得るために、対象者の体に配置するための温度センサ及び/又は加速度計が用意される。温度センサは、体温調節の発生に関連する追加の情報を提供する。3D加速度計は、身体活動に関連する追加の情報を提供する。したがって、そのような実施形態は、活動又はサウナに座っていることが発汗を引き起こすという普遍的な知識を使用して、そのような状況において、測定が誤って解釈されないこと、又はそれどころか測定が避けられることが確実になるようにする。さらに、開示するデコンボリューション法は、活動のノウハウ又は雰囲気に関係なく機能する。追加の情報は、人の体温調節の閾値についての知識をもたらす。寒い気候から暑い気候に長期間に移動していると体温調節の閾値がシフトし、逆の場合も同じであることが分かっている。したがって、気候順応の程度をモニタし、皮膚コンダクタンス信号の評価において考慮に入れられる。
【0029】
さらに、発熱性及び/又は精神性ストレス反応をエンドユーザに、又はストレス反応情報を利用するアプリケーション又はデバイスに伝えるために、ユーザインタフェース(例えば、ディスプレイ、通信ユニットなど)が設けられる。
【0030】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に記載の実施形態から明らかであり、そして以下に記載の実施形態を参照して解明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】手首の背側にある2つの電極を使用した皮膚コンダクタンスの測定法を示す図である。
【
図2】発熱性寄与及び精神性寄与を説明するための皮膚コンダクタンス信号を示す図である。
【
図3】本発明によるウェアラブルセンサデバイスの第1の実施形態の概略図である。
【
図4】手首着用デバイスの形態の本発明によるウェアラブルセンサデバイスの第2の実施形態の図である。
【
図5】本発明によるウェアラブルセンサデバイスで使用されるスイッチング装置の第1の実施形態の図である。
【
図6】様々な抵抗を示す手首の断面の概略図である。
【
図7】6つの異なるスイッチング状態で測定された6つの皮膚コンダクタンス信号の図である。
【
図8】本発明によるウェアラブルセンサデバイスで使用されるスイッチング装置の第2の実施形態の図である。
【
図9A】汗腺の精神性及び発熱性掌側活性化の図である。
【
図9B】汗腺の精神性及び発熱性背側活性化の図である。
【
図10】手首の背側及び手首の掌側で測定された皮膚コンダクタンス信号、並びに2つの皮膚コンダクタンス信号の合成信号の図である。
【
図11】本発明による方法の一実施形態の流れ図である。
【
図12】皮膚コンダクタンスピーク又は皮膚コンダクタンス反応の図である。
【
図13】生の皮膚コンダクタンストレース信号、フィルタ処理された皮膚コンダクタンストレース信号、及びそれらの中で識別された皮膚コンダクタンスピークの図である。
【
図14】皮膚コンダクタンストレース信号、前記皮膚コンダクタンス信号トレースからの絶対立上りエッジ高さ及び正規化立上りエッジ高さ抽出を示す図である。
【
図15】皮膚コンダクタンストレース信号、前記皮膚コンダクタンス信号トレースからの絶対立上りエッジ高さ及び正規化立上りエッジ高さ抽出のさらなる図である。
【
図16】皮膚コンダクタンストレース信号、絶対立上りエッジ高さに基づいて決定されたストレスレベル、及び前記皮膚コンダクタンス信号トレースからの正規化された立上りエッジ高さ抽出に基づいて決定されたストレスレベルの図である。
【
図17】皮膚コンダクタンストレース信号、及び絶対立上りエッジ高さの正の一次導関数又は勾配の図である。
【
図18】皮膚コンダクタンストレース信号及び対数変換された皮膚コンダクタンスの正の一次導関数の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、皮膚3、例えば、手首の掌側又は背側に接触するように配置された2つの電極1、2を使用した皮膚コンダクタンスの測定法を説明する図を示す。皮膚を通る電極1、2間の導電性経路4も示されている。汗層5は、電極1、2と皮膚3との間に形成される。
【0033】
発熱性発汗と精神性発汗の比が、毛深い(無毛でない)皮膚と毛深くない(無毛の)皮膚、例えば、手の掌側(手のひら)と背側(上側)に対して決定される。しかしながら、より良好な比が必要とされる。ウェアラブルセンサデバイスが着用される手首の外側の皮膚の毛深い部分では、発熱性発汗が精神性発汗より優位である。この効果が、発熱性寄与T
1及び精神性寄与P
1、P
2を説明するための典型的な皮膚コンダクタンス信号100(2つの電極が手首の背側に接触しているデバイスで測定された)を示す
図2において説明される。そこに示されるように、活動によって生じた発熱性発汗は皮膚コンダクタンス測定より優位である。
【0034】
より詳細には、約13時50分から17時10分までの第1の期間P1(精神性発汗の第1の期間)は、精神性発汗の時間を示しており、ユーザは、温度制御環境におり、精神的作業に集中していたが、身体活動に従事していなかった。この期間P1中の発汗は、精神性発汗に起因する。約17時10分から17時30分の第2の期間T1(発熱性発汗の第1の期間)は、発熱性発汗による期間を示しており、ユーザは激しい身体活動に従事している(17時27分の列車に間に合うように自転車に乗っている)。この期間P2中の発汗は、精神性発汗に起因する。第3の期間P2(精神性発汗の第2の期間)は、再度、身体活動なしの温度制御環境での時間を示す。この期間の皮膚コンダクタンス反応は、再度、精神性発汗に起因する。
【0035】
ユーザの精神性ストレスレベルを決定するために、皮膚コンダクタンス信号は、皮膚コンダクタンス信号内の複数の皮膚コンダクタンスピークを識別し、前記皮膚コンダクタンスピークの各々に対して、それぞれの皮膚コンダクタンスピークの皮膚コンダクタンス値(すなわち、ベースレベル)に基づいて正規化された前記皮膚コンダクタンスピークの正規化されたパラメータを決定し、前記皮膚コンダクタンスピークの前記正規化されたパラメータに基づいてユーザの精神性ストレスレベルを決定することによって処理される。この方法は、身体活動又は気候による発熱性発汗によって引き起こされるものなどの皮膚コンダクタンスレベル変化に影響されない。この方法は影響されないので、立上りエッジ高さを比較する前に正規化することにより、無毛の場所と無毛でない場所との間の差が低減されるか又はさらに無くなる。本発明は、この概念に基づいて構築され、汗腺活動への2つの寄与を定量化及び分離する能力を提供する。
【0036】
図3は、本発明によるウェアラブルセンサデバイス10の第1の実施形態の概略図を示す。ウェアラブルセンサデバイス1は、対象者の第1の無毛でない皮膚部分に接触するように構成された第1の電極11対象者の第2の無毛でない皮膚部分に接触するように構成された第2の電極12、及び対象者の無毛の皮膚部分に接触するように構成された第3の電極13を含む。これによって、3つの電極は一体化される。代替として、それらは、対象者の体に別々に装着される別個の要素であってもよい。
【0037】
皮膚コンダクタンスセンサ14は、正入力端子141と負入力端子142との間に電圧信号Vを供給し、出力端子143で皮膚コンダクタンス信号を測定する。そのような皮膚コンダクタンスセンサは一般に知られている。それは、端子141、142間に電圧を印加するための電圧発生器、端子間の電流を感知するための感知ユニット、及び/又は感知電流に基づいて皮膚コンダクタンスを計算するための計算ユニットを含む。経時的に測定された皮膚コンダクタンスは、皮膚コンダクタンス時間信号(皮膚コンダクタンストレースとも呼ばれる)を形成する。皮膚コンダクタンス信号(又はデータ)は、例えば、ウェアラブルセンサデバイス10のメモリに格納されるか、又は外部ユニットに送信される(無線で、又はワイヤ若しくは信号ラインを通して)。
【0038】
第1の電極から第3の電極11、12、13と、皮膚コンダクタンスセンサ14の正負入力端子141、142との間の接続を少なくとも3つのスイッチング状態間で切り替えるスイッチング装置15が設けられる。各スイッチング状態において、第1の電極から第3の電極11、12、13のうちの2つが負入力端子142に接続され、第1の電極から第3の電極11、12、13のうちの他の電極が正入力端子141に接続される。代替として、各スイッチング状態において、第1の電極から第3の電極11、12、13のうちの2つが正入力端子141に接続され、第1の電極から第3の電極11、12、13のうちの他の電極が負入力端子141に接続される。このように、電極を通る電流の極性は定期的に逆転される。スイッチング装置は、アナログ又はデジタルスイッチング回路によって実装される。実施形態が以下で説明される。
【0039】
処理ユニット16は、少なくとも3つのスイッチング状態中に、測定された皮膚コンダクタンス信号から発熱性及び/又は精神性ストレス反応を決定する。一実施形態の詳細が以下で説明される。処理ユニットは、ハードウェア及び/又はソフトウェアで、例えば、コンピュータ、プロセッサ、又はコンピュータ若しくはプロセッサで作動するアプリケーションプログラムによって実装される。
【0040】
図4は、手首着用デバイスの形態の本発明によるウェアラブルセンサデバイス20の第2の実施形態の図を示す。ウェアラブル皮膚コンダクタンスセンサ20には、手首の背側(上側)に面するようにデバイス20のハウジング24(又はケーシング)の表面に配置された2つの皮膚接触電極21、22(第1及び第2の電極を表す)が取り付けられている。オプションとして、例えば、光電容積脈波心拍数センサなどの別のセンサを配置するために使用される円形区域が、電極21、22の中間に設けられている。追加の皮膚接触電極23(第3の電極13を表す)が、手首の掌側(下側)で皮膚と接触できる場所でストラップ25に組み込まれている。
【0041】
手首の周長は人によって大幅に異なることが分かっており、その結果、この追加の皮膚接触電極23を適切な(下側の中央の)位置にシフトするか、又は例えば両側でハウジング24にストラップを可変的に取り付けるための手段を提供することが不可欠である。
【0042】
皮膚コンダクタンスは、3つの電極11~13(
図3)又は21~23(
図4)のうちの2つを短絡させた状態で使用するウェアラブルセンサデバイスによって測定される。第3の電極13及び23は、それぞれ、他の2つの電極11、12及び21、22を基準にして0.5V(正又は負)のところにある。
図5は、スイッチング装置30の第1の実施形態の図を示し、スイッチング装置30は、本発明によるウェアラブルセンサデバイスのスイッチング装置15(
図3に示されたような)として使用される。この実施形態では、スイッチング装置30は、3つのスイッチ31、32、33を含み、各々は、第1の電極から第3の電極11、12、13のそれぞれの1つに接続された第1の端子31a、32a、33aと、皮膚コンダクタンスセンサ14の正入力端子141及び負入力端子142に接続された2つの第2の端子31b、31c、32b、32c、33b、33cとを有し、正入力端子141と負入力端子142との間には電圧Vが印加される。電極が装着される体の部分(例えば手首)の抵抗は、抵抗R1、R2、R3として示される。
【0043】
SPDT(単極双投)スイッチが、スイッチ31、32、33で使用される。スイッチ31、32、33は、例えば、マイクロコントローラ又はプロセッサ16(
図5に示されていない)によって、独立して制御される。スイチッング時間は、皮膚コンダクタンス信号17のサンプリングと同期することが好ましい。
【0044】
一実施形態では、すべての電極が短絡される第4のスイッチング状態が追加として使用される。表1は、3つの電極11~13の8つのスイッチング状態A~Hを示す。
【0045】
【0046】
一実施態様では、コミュテータスイッチングレートと、個々のコンダクタンス測定Ra、Rb、及びRcのサンプルレートと、3つの生物物理学的コンダクタンス値R1、R2、及びR3のレポートレートとが区別される。一般に、コミュテーションスイッチングレートをコンダクタンスサンプリングレートと等しくすることが最適である。1つ又は複数の生物物理学的コンダクタンス値を推定するには、少なくとも3つの個々のコンダクタンス測定が行われなければならない。一実施態様では、R1、R2、及びR3のサンプリングレートは、事実上、Ra、Rb、及びRcのサンプリングレートの約3分の1になる。したがって、スイッチング周波数は、皮膚コンダクタンス信号の変化のレートと比較して速くすべきである。スイッチングスピードが遅すぎる場合、様々なスイッチング状態信号の同時の立上りエッジを検出することが不可能になる。追加のダミー状態がコミュテーションシーケンスに挿入された場合、R1、R2、及びR3の実効的なサンプリングレートは、Ra、Rb、及びRcの実効的なサンプリングレートの約4分の1になる。
【0047】
図6は、様々な抵抗R1、R2、及びR3を示す手首の断面の概略図を示す。3つの電極11、12、13はすべて手首の皮膚に接触する。様々なスイッチング状態中に測定される皮膚コンダクタンスは、3つの皮膚抵抗R1、R2、及びR3に関連する。手首の内部は、これらの抵抗に関して、高度に導電性の媒体と考えることができ、それは生物測定の当業者には知られている。したがって、3つの皮膚抵抗R1、R2、及びR3は、
図6に示されるように手首の中央でリンクされていると考えられる。本発明の状況では、電極のうちの2つは、さらに、手首の背側で互いに接続され、したがって、並列の抵抗器であると考えられる。
【0048】
表1の最初の3つのスイッチング状態A~Cで測定された抵抗は、以下のように3つの皮膚抵抗にリンクされる。
スイッチング状態A: Ra=R1+(R2∥R3)
スイッチング状態B: Rb=R2+(R3∥R1)
スイッチング状態C: Rc=R3+(R1∥R2)
【0049】
完全を期すために、スイッチング状態D~Fは、同様の関係を有する。
スイッチング状態D: Rd=R1+(R2∥R3)
スイッチング状態E: Re=R2+(R3∥R1)
スイッチング状態F: Rf=R3+(R1∥R2)
【0050】
変換を使用して、皮膚抵抗R1、R2、及びR3は、Ra、Rb、及びRcから以下のように計算される。
R1=-(2*Ra*Rb*Rc*(Ra*Rb+Ra*Rc-Rb*Rc))/(Ra
2*Rb
2-2*Ra
2*Rb*Rc+Ra
2*Rc
2-2Ra*Rb
2*Rc-2*Ra*Rb*Rc
2+Rb
2*Rc
2)
R2=-(2*Rb*Rc*Ra*(Rb*Rc+Rb*Ra-Rc*Ra))/(Rb
2*Rc
2-2*Rb
2*Rc*Ra+Rb
2*Ra
2-2Rb*Rc
2*Ra-2*Rb*Rc*Ra
2+Rc
2*Ra
2)
R3=-(2*Rc*Ra*Rb*(Rc*Ra+Rc*Rb-Ra*Rb))/(Rc
2*Ra
2-2*Rc
2*Ra*Rb+Rc
2*Rb
2-2Rc*Ra
2*Rb-2*Rc*Ra*Rb
2+Ra
2*Rb
2)
【数1】
ここで、R1、R2、R3は、電極から手首の電気的中心までの皮膚抵抗を表し、Ra、Rb、Rcは、電極11と、短絡された電極12及び13との間の測定された抵抗(Ra)、電極12と、短絡された電極13及び11との間の測定された抵抗(Rb)、並びに電極13と、短絡された電極11及び12の間の測定された抵抗(Rc)を表す。
【0051】
代替として、同様の式が、コンダクタンスに対して書かれる。
【数2】
【数3】
ここで、G1=1/R1、G2=1/R2、及びG3=1/R3、並びにGa=1/Ra、Gb=1/Rb、及びGc=1/Rcである。
【0052】
スイッチング状態A、B、及びCの間で切り替えると、同じ「アクティブな」期間の各スイッチング状態により、すべての3つの電極を通る電流が長期的に平均でゼロになる。同じことが、スイッチング状態D、E、及びFに当てはまる。抵抗器は電圧の極性に影響されないので、Ra、Rb、及びRcに対して、Rd、Re、及びRと同じ値が測定される。両方のグループからの状態を混合することは許容されるが、平均ゼロ電流に向けて、両方のグループが完全に使用されなければならない。一方又は両方のグループを不完全に使用すると、電極ピンを通るゼロでない平均電流がもたらされる。
【0053】
スイッチング状態G及びHは、皮膚コンダクタンス値を測定するのに使用することはできない。それらは、すべての電極を一緒に短絡させ、電極を通して流れる電流をゼロにする。これらのスイッチング状態は、依然として、任意の長さのスイッチングシーケンスを可能にするための「操作なし」として有用である。
【0054】
スイッチング状態の例示のシーケンスは次の通りである。
許可: {ABCABCFDECAB}を繰り返す
許可: {ABCG}を繰り返す
許可: {AGBGCH}を繰り返す
許可: {DEF}を繰り返す
望ましくない: {ABCABCFDECEB}を繰り返す
望ましくない: {ABCC}を繰り返す
【0055】
図5に示されたスイッチング装置は、外側の手首から手首の中央まで3つの抵抗器を備えた簡単な電気回路図を示している。この回路モデルは、静電荷(頭髪、動作)、電気化学的活動、及び/又は神経活動によって誘起される電圧に起因して実生活状況で現れることがある電圧源を無視している。これらの電圧源が、
図5の回路図に追加される。その場合、すべての抵抗器R1、R2、及びR3は、直列の電圧源E1、E2、及びE3を受け取る。これらの6つの未知数(3つの電圧及び3つの抵抗)は、6つのスイッチング状態(A~F)が使用され、適切な変換が、6つの測定された抵抗値Ra、Rb、Rc、Rd、Re、及びRfを入力として用いて適用される場合、一意的に解決される。
【0056】
図7は、順番に使用される6つの異なるスイッチング状態A~Fで測定された6つの皮膚コンダクタンス信号40~45の図を示す。3つのスイッチング状態--+、-+-、及び+--とそれらの逆の状態++-、+-+、及び-++を比較すると、振幅の一貫した小さい(例えば、ほぼ10%の)差が示されている。これらは、静電荷(頭髪、動作)、電気化学的活動、及び/又は神経活動によって誘起される電圧に起因している。
【0057】
最短のスイッチングシーケンスで皮膚を通る平均ゼロ電流を保証するために、2つの短縮された電極が本発明に従って使用される。
図8は、スイッチング装置50の第2の実施形態の図を示し、スイッチング装置50は、本発明によるウェアラブルセンサデバイスのスイッチング装置15(
図3に示されたような)として使用される。スイッチング装置50は、6つのスイッチ51~56を含み、3つのスイッチ51~53は、各々、第1の電極から第3の電極11~13のそれぞれの1つに接続された第1の端子51a~53aと、皮膚コンダクタンスセンサ14の正入力端子141に接続された第2の端子51b~53bとを有し、他の3つのスイッチ54~56は、各々、第1の電極から第3の電極11~13のそれぞれの1つに接続された第1の端子54a~56aと、皮膚コンダクタンスセンサ14の負入力端子142に接続された第2の端子54b~56bとを有する。
【0058】
スイッチング装置50は、64個の異なるスイッチ位置を可能にし、そのうちの14個に、意味があることが分かる。これらの14個のスイッチング状態は、状態A~Hに加え、従来のDCベース皮膚コンダクタンス測定又は電極対間のコミュテーション測定を模倣する6つの追加のスイッチング状態を模倣する。スイッチ51及び55を閉じることにより、Rx=R4+R5が測定される。スイッチ51及び56を閉じることにより、Ry=R4+R6が測定される。スイッチ52及び56を閉じることにより、Rz=R5+R6が測定される。
【0059】
この場合、「シングルエンデッド皮膚抵抗」は、別の変換によって推定される。
R4=1/2*(Rx-Ry+Rz)
数学的処理は簡単であるが、電極を流れる平均電流は制御されない。電極の短絡がない場合、ゼロ平均電流は、従来のコミュテーションによって、又は表1の状態のエミュレーションによって保証される。例えば、スイッチ51及び55を閉じた状態での各測定の後、スイッチ52及び54を閉じた状態で実現される逆電流による第2の測定が好ましい。
【0060】
3電極測定では、6つのスイッチング状態のシーケンスを使用して、ゼロ電流を保証する。短縮された電極を使用する場合、スイッチングシーケンスの長さは、3つのスイッチング状態に減らされる。これにより、皮膚コンダクタンス信号の高いサンプリングレートがもたらされる。
【0061】
C.A. Machado-Moreira、N.A.S. Taylor、Thermogenic and psychogenic recruitment of human eccrine sweat glands: Variations between glabrous and non-glabrous skin surfaces、Journal of Thermal Biology 65 (2017)、145~152ページにおいて、発熱性及び精神性汗腺活性化が、手の毛深い(無毛でない)皮膚及び毛深くない(無毛の)皮膚に対して決定されている。発熱性刺激と精神性刺激の両方が存在する場合、活性化される平方センチメートル当たりの汗腺の数は、両方の皮膚タイプに対して約200である。より正確に言えば、比率が、手の掌側(手のひら)及び背側(上側)で測定された。手首では、背側は多くの場合毛深く、掌側は、毛深くないか又は少なくともかなり毛が少ない。精神性刺激では、平方センチメートル当たり活性化される汗腺の数は、両方の熱的条件でほぼ同じであり、掌側で80及び背側で8である。発熱性刺激では、平方センチメートル当たり活性化される汗腺の数は、背側(180)と比較して掌側(50)では非常に少ない。各々の活性化された汗腺は、コンダクタンス経路の抵抗を低下させ、したがって、コンダクタンスを増加させる。これが、汗腺の精神性及び発熱性掌側活性化の図を示す
図9Aと、汗腺の精神性及び発熱性背側活性化の図を示す
図9Bとに示されており、両方とも、7人から10人の参加者の平均である。
【0062】
上述の情報を考慮に入れると、手首の毛深い背側と毛が非常に少ない掌側では、異なる皮膚コンダクタンスが予想される。
図2の測定と同様の条件下で本発明によるウェアラブルセンサデバイスを使用することにより、実際に、手首の背側で測定された(信号60)、手首の掌側で測定された(61)、及び2つの皮膚コンダクタンス信号の合成(信号62)の皮膚コンダクタンス信号60~62の図を示す
図10に示されるように差が観察される。皮膚コンダクタンスは、以下の2つの構成の間で、80Hzで3つの電極11~13の電極極性を切り替えるように構成されたデバイスを用いて測定された。測定信号60では、2つの背側の電極11、12の極性は反対であり、測定信号61では、2つの背側の電極11、12の極性は等しい。測定信号62は、それらの間の差を視覚化する測定信号60と61の合成物である。この結果、合成物は、例えば、信号60-c
*信号61である。合成物は、1つのグラフですべてのデータを示し、スイッチング状態間をジグザグに進む。
図10に示された2つのスイッチング状態は、表1にリストされたスイッチング状態B及びFに対応する。
【0063】
精神性汗腺反応に起因する皮膚コンダクタンスの増加は、例示的な実施態様では、背側と比較して手首の掌側で最大約10倍であると予想される。約10の比率が、到達可能な最大値であると考えられる。
【0064】
発熱性汗腺反応に起因する皮膚コンダクタンスの増加は、例示的な実施態様では、背側と比較して手首の掌側で最大約3.6分の1であると予想される。約3.6の比率が、到達可能な最大値であると考えられる。この比率は、手首ではなく手での測定に基づく近似であることに留意されたい。同様の差が手首での測定で見いだされるが、人によって違いがあり、比率は、一般に、小さくなる傾向がある。
【0065】
これらの比率を指針として利用して、抵抗R1、R2、及びR3(
図5及び
図6に示されたような)の逆数によって表される皮膚コンダクタンスへの発熱性寄与と精神性寄与とを分離する(又はデコンボリュートする)ことが可能になる。
【0066】
1つの実施態様では、無毛でないところに短絡された電極があるスイッチング状態、及び無毛でないところに異なる極性の電極があるスイッチング状態での立上りエッジパラメータが分かった後、同時の立上りエッジは、それらの高さに関して比較される(マイクロジーメンス単位で、したがって、正規化前に)。同時の立上りエッジ高さが、無毛でないところの電極(手首の上側)の異なる極性のスイッチング状態によるトレースでより高い場合、それは、熱的ストレスに起因する。熱的ストレスレベルの決定は、ただ単にこれらの立上りエッジを使用して行われる。逆の場合、立上りエッジの対応付けは、精神性ストレスになる。立上りエッジを2つのストレスタイプに分離した後、正規化などのさらなる処理が実行される。
【0067】
言い換えれば、発熱性ストレス反応及び/又は精神性ストレス反応は、以下でより詳細に説明するように、測定された皮膚コンダクタンス信号の立上りエッジの高さを評価することによって決定される。立上りエッジの高さが、無毛の皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号よりも無毛でない皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号で高い場合、皮膚コンダクタンスの増加は発熱性ストレスから生じていると考えられる。立上りエッジの高さが、無毛でない皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号よりも無毛の皮膚領域から得られた皮膚コンダクタンス信号で高い場合、皮膚コンダクタンスの増加は精神性ストレスから生じていると考えられる。
【0068】
したがって、熱的ストレスレベルの決定は、ただ単にこれらの立上りエッジを使用して行われる。熱ストレスレベルは、皮膚コンダクタンスピークを識別し、識別された皮膚コンダクタンスピークの正規化されたパラメータに基づいてユーザの精神性ストレスレベルを決定することによって計算される。感情的ストレスレベルは、熱的ストレスレベルと同様に決定される。
【0069】
図11は、本発明による方法の一実施形態の流れ図を示す。第1のステップS10において、電圧信号が、皮膚コンダクタンスセンサの正入力端子と負入力端子との間に供給される。第2のステップS11において、皮膚コンダクタンス信号が、皮膚コンダクタンスセンサの出力端子で測定される。第3のステップS12において、第1の電極から第3の電極と、皮膚コンダクタンスセンサの正の入力端子及び負の入力端子との間の接続が、上記で説明したように少なくとも3つのスイッチング状態間で切り替えられる。第4のステップS13において、発熱性及び/又は精神性ストレス反応が、少なくとも3つのスイッチング状態中に、測定された皮膚コンダクタンス信号から決定される、すなわち、ステップS10~S12が、少なくとも3回(異なるスイッチング状態で)実行された後、ステップS13が実行される。
【0070】
図12は、個々の皮膚コンダクタンス反応又は皮膚コンダクタンスピーク150を示す。
図12の曲線は、
図2の皮膚コンダクタンス信号トレース100の(非常に)拡大された一部分として見ることができる。横軸は、再度、時間tを示し、一方、縦軸は、[nS]単位の皮膚コンダクタンスを示す。
図12は約15秒にわたっており、
図2のグラフは約8時間にわたっている。本明細書で使用されるとき、皮膚コンダクタンスピーク150は、単に最大点を指すだけでなく、むしろ、それぞれの皮膚コンダクタンス反応信号100の一部分を指す。精神性刺激は、151で示された瞬間に発生する。前記刺激に応じて、わずかな遅延を伴って、皮膚コンダクタンスは、152で示された開始において増加し始め、皮膚コンダクタンスピーク150が153で最大値に達するまで増加する。遅延は、例えば、手首では約1秒であり、足首では約2秒である。これは、交感神経に沿った信号速度に起因する。開始152の皮膚コンダクタンスレベルと、最大153又はピークの皮膚コンダクタンスレベルとの間の差154は、皮膚コンダクタンスピーク又は皮膚コンダクタンス反応振幅(SCR
amplitude)を提供する。
【0071】
図13は、信号処理の異なる段階中の信号を説明する。グラフの横軸は時間を示し、一方、縦軸は振幅を示す。
図13の上段のグラフに示されるように、皮膚コンダクタンス信号トレース100は、40Hzと60Hzとの間のサンプリング周波数でデバイスによって測定される。
図13の中段のグラフに示されるように、この生の信号は、オプションとして、ローパスフィルタ処理されて、例えば10Hzのサンプリングレートを有する平滑なダウンサンプリングされた信号100’がもたらされる。引き続き、複数の皮膚コンダクタンスピーク150が、皮膚コンダクタンス信号トレースで識別される。例えば、フィルタ処理された信号の立上りエッジは、(オプションとしてフィルタ処理又は前処理された)皮膚コンダクタンス信号100の一次導関数のゼロ交差によって検出される。
【0072】
オプションのさらなる処理ステップとして、追加の処理及びフィルタ処理ステップが適用される。例えば、短いグリッチは除去される。所与の例では、0.8秒よりも長く3.0秒よりも短い期間を有する立上りエッジのみが、皮膚コンダクタンス反応(SCR)に起因する。さらに、3秒よりも長く続く立上りエッジでさえも、又は単に所定の値よりも長く、例えば0.8秒よりも長く続く立上りエッジのすべての立上りエッジをカウントすることが好ましい。激しい感情があるとき、皮膚コンダクタンスレベルは非常に速く上昇するので一次導関数のゼロ交差が観察されないか又はごくわずかしか観察されない(例えば、立上りエッジの単なるリップル)ことが見いだされた。これを考慮に入れないと、激しい感情を見逃すことになる。したがって、オプションとして、処理デバイスは、皮膚コンダクタンス信号トレース(の一次導関数の)の立上りエッジのリップルに基づいて激しい感情的反応を決定するように構成される。皮膚コンダクタンス反応又は皮膚コンダクタンスピークは、例えば、前記の標準的な教科書に記載されているような、知られている技術を使用して識別されることに留意されたい。本発明のコンテキストにおいて、「ストレス反応」という表現は、一般的な処理に対して使用され、「発熱性ストレス反応」又は「精神性ストレス反応」という表現は、それらを区別するときに使用される。
【0073】
しかしながら、一般に受入れられている手順とは対照的に、前記皮膚コンダクタンスピークの各々に対して、それぞれの皮膚コンダクタンスピークの皮膚コンダクタンス値に基づいて正規化された前記皮膚コンダクタンスピークの正規化されたパラメータを決定することによって、発熱性発汗の影響が低減され、それによって、正確なコルチゾール反応を得るために使用される精神性発汗のより正確な定量が行われることを発明者らは認識した。例えば、正規化された皮膚コンダクタンス反応振幅とも呼ばれる正規化された相対的皮膚コンダクタンスピーク振幅は、
【数4】
によって決定され、ここで、ピーク(レベル)値は、前記皮膚コンダクタンスピークのピーク(
図12の153を参照)での皮膚コンダクタンスレベルを示し、開始(レベル)値は、皮膚コンダクタンスピークの開始(
図12の152を参照)での皮膚コンダクタンスレベルを示す。
【0074】
この計算の結果が、
図13の下段のグラフに示されており、それぞれの皮膚コンダクタンスピークの皮膚コンダクタンス値に基づいて正規化された、正規化された皮膚コンダクタンス反応振幅、例として、前記皮膚コンダクタンスピークの正規化されたパラメータが、参照番号150によって示される。
【0075】
皮膚コンダクタンスピークの正規化されたパラメータ、ここでは、SCR
normalized_amplitudeは、それぞれの皮膚コンダクタンス反応の正規化された高さを表す無次元数である。より一般的に言えば、正規化されたパラメータを決定することは、それぞれの皮膚コンダクタンスピークの皮膚コンダクタンス信号トレースの第1の値、例えば、ピークレベル値を、それぞれの皮膚コンダクタンスピークの皮膚コンダクタンス信号トレースの第2の値、例えば、開始レベル値に基づいてスケーリングすることを含む。提案する手法は、皮膚コンダクタンストレースからの意味のあるデータを抽出する手法で通常使用されるものと異なることに留意されたい。前記の標準的な教科書の「精神生理学の技法」では、SCR
amplitudeを得るための標準的な方法は、絶対振幅を提供し、絶対振幅は、
SCR
absolute_amplitude=peak_level_value-onset_level_value
によって決定され、ここで、ピーク(レベル)値は、前記皮膚コンダクタンスピークのピーク(
図12の153を参照)での皮膚コンダクタンスレベルを示し、開始(レベル)値は、皮膚コンダクタンスピークの開始(
図12の152を参照)での皮膚コンダクタンスレベルを示す。言い換えれば、本明細書で提案する解決策とは対照的に、皮膚コンダクタンス反応の振幅を測定するための標準的な方法は、最上部の皮膚コンダクタンスレベルのみを使用し、開始での皮膚コンダクタンスレベルを差し引き、それにより、皮膚コンダクタンス(通常、マイクロジーメンス)と同じ次元を有する数値をもたらす。この(従来の)振幅は、絶対皮膚コンダクタンス反応振幅、又はSCR
absolute_amplitudeと呼ばれる。
【0076】
図14において、上段のグラフは、3.5時間の時間フレームをカバーするPhilipsディスクリートテンションインジケータ(discreet tension indicator)DTI-5を用いて取得された皮膚コンダクタンス信号トレース100を示す。横軸は時間を示す。縦軸は、nS(ナノジーメンス)単位の皮膚コンダクタンスを示す。皮膚コンダクタンス100のレベルは、この時間フレーム内で漸進的に上昇する。
図14の中段のグラフは、複数の皮膚コンダクタンスピークの各々に対して正規化されていないSCR
absolute_amplitude 156を表し、下段のグラフは、皮膚コンダクタンストレース100から抽出された複数の皮膚コンダクタンスピークの各々に対して正規化されたSCR
normalized_amplitude 158を表す。SCR
absolute_amplitude 156は、皮膚コンダクタンスの平均レベルと相関し、一方、SCR
normalized_amplitude 158は、この相関を示さない。それにもかかわらず、提案したピークツーピーク正規化によって、情報量が減少したとしても、提案した正規化は、皮膚コンダクタンスデータからの(精神性)ストレスレベルの抽出から発熱性の影響を除去するか又は少なくとも弱めることが見いだされた。
【0077】
図15において、この手法は、
図15の上段のグラフに示されるように、時間フレームT
1において列車に間に合うように高速で自転車に乗ることに起因する発熱性発汗の影響を含む皮膚コンダクタンストレース100について示されている。
図15の中段のグラフは、再度、複数の皮膚コンダクタンスピークの各々に対する正規化されていないSCR
absolute_amplitude 156を表し、下段のグラフは、皮膚コンダクタンストレース100から抽出された複数の皮膚コンダクタンスピークの各々に対する正規化されたSCR
normalized_amplitude 158を表す。自転車に乗る活動によって引き起こされる正規化されていないSCR
absolute_amplitude 156の増加は、本明細書で提案する解決策によれば、正規化されたSCR
normalized_amplitude 158への影響は無視できることが明確に分かる。したがって、発熱性発汗による皮膚コンダクタンス反応振幅の定量化に関する皮膚コンダクタンスレベル変動の影響は、除去されるか又は少なくとも低減される。
【0078】
図15の中段及び下段のグラフから、自転車に乗る前後の2つの期間において、SCRSCR
normalized_amplitudeのピークの高さが同等であり、ストレスのレベルも同等であることを正しく反映していることも明らかになる。それにより、SCRSCR
normalized_amplitudeの測定は、特に手首の外側での発熱性発汗により大幅に増加している基礎をなす皮膚コンダクタンスレベルに関係なく、精神性のピークに等しい重みが与えられることを保証する。
【0079】
正規化された皮膚コンダクタンス振幅値のストレスレベルへの変換は、知られている技術を使用して実行される。例えば、所定の時間間隔当たりの(正規化された)立上りエッジ振幅の合計が評価される。(正規化された)立上りエッジ振幅の前記合計のヒストグラムに基づいて、異なるストレスレベルが決定され、それにより、ユーザは、対応するストレスレベルに分類又は類別される。所与の非限定的な例では、
図16に示されるように、5つの異なるストレスレベルが用意されている。
【0080】
図16において、上段のグラフは、
図15の上段のグラフの皮膚コンダクタンス信号トレース100の一部を示す。グラフは、再度、身体活動、ここでは、列車に間に合うように高速で自転車に乗ることの時間フレームT
1を含む。
図16の中段のグラフは、従来の正規化されていない立上りエッジ振幅(
図15、中段のグラフを参照)の合計に基づいて決定されたユーザのストレスレベル166を示す。他方、
図8の下段のグラフは、正規化された立上りエッジ振幅(
図15、下段のグラフを参照)の合計に基づいて決定されたユーザのストレスレベル168を示す。
図16の中段と下段のグラフの比較から分かるように、発熱性発汗の影響が、17時20分以降の身体活動中に存在する。鉄道の駅まで自転車に乗っているときの精神的ストレスの低下が、さらに、測定中のユーザの知覚された精神的ストレスレベルを正確に反映していることに留意されたい。
【0081】
図15を再度参照すると、
図15の下段のグラフに表されるような前記皮膚コンダクタンスピークの正規化されたパラメータを評価することに加えて、処理ユニットはまた、正規化されていないパラメータと正規化されたパラメータとの間の差を評価するように構成することができることを発明者らは認識した。例えば、複数の皮膚コンダクタンスピークの各々に対する正規化されていないSCR
absolute_amplitude 156と、皮膚コンダクタンストレース100から抽出された複数の皮膚コンダクタンスピークの各々に対する正規化されたSCRSCR
normalized_amplitude 158との間の差が評価される。正規化されていないSCR
absolute_amplitude 156は、発熱性発汗及び精神性発汗による寄与を含み、正規化されたSCRSCR
normalized_amplitude 158は、一次近似として、精神性発汗(のみ)による寄与を反映するので、2つの間の差は、発熱性発汗(のみ)の影響をもたらす。これは、それ自体、例えば、トップスポーツにおいて、コーチが、普通ならアスリートのパフォーマンスに利用可能なエネルギーを使い尽くすアスリートの精神性ストレスのレベルを知りたいと思っている場合、貴重な情報である。
【0082】
図17及び
図18は、正規化されたパラメータを決定するために皮膚コンダクタンスデータを処理するさらなる実施形態に関するグラフを示す。
図17は、皮膚コンダクタンストレース信号(SC)100([pS]、すなわちピコジーメンス単位)、及び絶対立上りエッジ高さの正の一次導関数又は勾配曲線191([pS/s]単位)の図を示す。
図17において、曲線191は、
steepness
absolute=SC
i+1-SC
i
によって計算される絶対立上りエッジ高さの勾配([pS/s]単位)を示し、ここで、SC
iはポイントiでのサンプル値であり、SC
i+1はポイントi+1でのサンプル値である。対数目盛では、これは、
steepness
absolute=(10log(SC
i+1-SC
i))・f
と書き換えられる。
図17に示された曲線191は、すぐ前の30サンプルにわたる移動平均を示す。所与の例では、ゼロ及び負の勾配値は廃棄された。それにもかかわらず、
図17から分かるように、身体的興奮(ここでは、列車に間に合うように走るか又は自転車に乗る)の時間間隔T
1は、曲線191への強い寄与を示す。オプションとして、複数の皮膚コンダクタンスピークの各々について最大立上りエッジ傾斜が識別される。それによって、ピークごとの立上りエッジの最大を単に見ることによって、格納されるべきデータ量を減少させることができる。勾配及び傾斜という用語は交換可能に使用される。
【0083】
図18は、以下で説明する皮膚コンダクタンストレース信号100([pS]、すなわちピコジーメンス単位)及び対数変換された皮膚コンダクタンス192の正の一次導関数([log10(pS)/s])の図を示す。皮膚コンダクタンスデータ100への発熱性寄与は、さらに、立上りエッジの勾配の大きさを使用することによって削除できることが見いだされた。勾配は、皮膚コンダクタンス測定値i及び測定値i+1の対数値の差を利用することによって計算される。オプションとして、値にサンプリングが乗算され、
steepness
normalized,log=(10log(SC
i)-10log(SC
i+1))・f
ここで、SC
iは、サンプルiの皮膚コンダクタンス信号トレースのサンプル値を示し、SC
i+1は、後続のサンプルi+1の皮膚コンダクタンス信号トレースのサンプル値を示し、fはサンプリング周波数を示す。サンプリング周波数は、前記の式においてオプションである。したがって、例えば、10log(SC)によって対数目盛に変換された後の皮膚コンダクタンス(SC)信号100の(正の)一次導関数が、興奮の推定量として使用される。この推定は、以下の影響、すなわち、発熱性加熱、装着後の微気候の蓄積、又は激しい肉体労働若しくは運動のうちの1つ又は複数に対してそれほど敏感ではないことが見いだされた。そのような対数計算では、すべての負の値はゼロに設定され、皮膚コンダクタンストレースの立上りエッジのみが残される。対数が使用されない場合、熱発生の影響が、
図17に示されるように、勾配曲線191において明確に見える。上述で示された式に従って勾配を計算することによって(すなわち、対数の差を取ることによって)、熱発生の影響は、
図18に示されるように、勾配曲線192においてもはや見えない。勾配の代わりに、それは、一次時間導関数と呼ぶこともできる。オプションとして、複数のそれぞれの皮膚コンダクタンスピークの各々の正規化された最大立上りエッジ傾斜が識別され、さらなる処理で使用される。
【0084】
提案した計算は、再度、それぞれの皮膚コンダクタンスピークの皮膚コンダクタンス値に基づいて正規化された前記皮膚コンダクタンスピークの正規化されたパラメータを得ることと考えられることに留意されたい。前記の式は、さらに、
【数5】
と書き換えられる。
【0085】
前記の式において、サンプルSCi+1はSCi-1と置き換えられてもよく、逆の場合も同様であることが理解されよう。
【0086】
要約すると、本発明は、無毛でない(毛深い)皮膚の場所、及び発熱性発汗の影響が少ない無毛の皮膚の場所のストレス反応測定を提供する。本発明は、体温調節の測定に基づく車両又は部屋の環境制御に適用され、体温調節の測定に基づく衣類へのアドバイスとして使用される。
【0087】
本発明が、図面及び前述の説明において詳細に例証及び説明されたが、そのような例証及び説明は、例証的又は例示的であり、限定でないと考えられるべきであり、本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態への他の変形は、特許請求される発明を実践する際に、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、当業者によって理解され達成される。
【0088】
特許請求の範囲において、「備えている、含んでいる、有している」という単語は、他の要素又はステップを排除せず、単数形は複数を排除しない。単一の要素又は他のユニットは、特許請求の範囲に列挙されるいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が互いに異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に使用できないことを示していない。
【0089】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に供給されるか又は他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体又は固体媒体などの好適な非一時的媒体に格納/分配されてもよいが、さらに、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムなどを介して他の形態で分配されてもよい。
【0090】
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も範囲を限定するものと解釈されるべきでない。