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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20250303BHJP
【FI】
B60Q1/14 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022578262
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2022001552
(87)【国際公開番号】W WO2022163432
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2024-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2021014011
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】北澤 達磨
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】村松 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】綿野 裕一
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007093(JP,A)
【文献】特開2014-040177(JP,A)
【文献】特開2014-186874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービームの配光パターンを変更可能な灯具ユニットと、
前記ロービームが照射される領域において蒸発現象が生じる要件を満たす蒸発領域を検出する検出部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記検出部によって前記蒸発領域が検出される場合に、前記蒸発領域が検出されない場合と比べて、前記ロービームの配光パターンのうち前記蒸発領域の少なくとも一部と重なる所定領域に照射される前記灯具ユニットからの光の全光束量が少なくなるように、前記灯具ユニットを制御する
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記所定領域は、前記蒸発領域の全体と重なる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記所定領域は、前記蒸発領域の少なくとも一部を左右方向に横切る
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記所定領域は、前記ロービームのカットオフラインの一部を含む
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記所定領域は、前記ロービームの配光パターンの下縁と離隔している
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記検出部は、左右方向において所定の輝度値以上の明部領域によって挟まれ、左右方向の幅が所定の範囲内である暗部領域を含む領域を前記蒸発領域として検出する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
ロービームの配光パターンを変更可能な灯具ユニットと、
少なくとも一部が前記ロービームより上方に位置し前記ロービームのカットオフラインに接続される領域に照射される光の配光パターンを変更可能な別の灯具ユニットと、
対向車を検出する検出部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記検出部によって前記対向車が検出される場合に、前記対向車が検出されない場合と比べて、前記ロービームの配光パターンのうち上下方向において前記対向車と重なり前記ロービームの前記カットオフラインの一部を含む所定領域に照射される前記灯具ユニットからの光の全光束量が少なくなるように、前記灯具ユニットを制御し、前記対向車が検出されない場合と比べて、前記別の灯具ユニットから出射する光の配光パターンのうち前記対向車と重なり前記所定領域に接続される特定領域に照射される前記別の灯具ユニットからの光の全光束量が少なくなるように、前記別の灯具ユニットを制御する
ことを特徴とする車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ヘッドライトに代表される車両用前照灯では、出射する光の配光パターンを変更可能なものが知られている。下記特許文献1には、出射する光の配光パターンをロービームの配光パターンと市街地用の配光パターンとに変化させることができる車両用前照灯が開示されている。この市街地用の配光パターンは、ロービームの配光パターンが左右方向に引き延ばされたような配光パターンである。
【0003】
【文献】特開2012-146621号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、自車両の前照灯からの光と対向車の前照灯からの光とが交錯する位置に人等といった運転者が注意すべき対象物がある場合、運転者が当該対象物を視認し難くなることがある。この現象は、蒸発現象と称されることがあり、自車両の前照灯から出射する光がロービームや上記特許文献1に記載される市街地用の配光パターンの光であっても生じることがある。このため、運転者が人等の注意すべき対象物を蒸発現象によって視認し難くなることを抑制したいとの要請がある。
【0005】
そこで、本発明は、蒸発現象に起因する自車両の前方の視認性の低下を抑制し得る車両用前照灯を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的の達成のため、本発明の車両用前照灯は、ロービームの配光パターンを変更可能な灯具ユニットと、前記ロービームが照射される領域において蒸発現象が生じる要件を満たす蒸発領域を検出する検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記検出部によって前記蒸発領域が検出される場合に、前記蒸発領域が検出されない場合と比べて、前記ロービームの配光パターンのうち前記蒸発領域の少なくとも一部と重なる所定領域に照射される前記灯具ユニットからの光の全光束量が少なくなるように、前記灯具ユニットを制御することを特徴とするものである。
【0007】
上記の蒸発領域は、ロービームが照射される領域において蒸発現象によって視認し難い対象物及び当該対象物の影の少なくとも一方と重なる領域である。この車両用前照灯では、所定領域に照射される灯具ユニットからの光の全光束量が少なくならない場合と比べて、蒸発領域の少なくとも一部が暗くなり、自車両の運転者が蒸発領域の少なくとも一部を視認し易くし得る。従って、この車両用前照灯によれば、上記の場合と比べて、蒸発現象によって視認し難い人等の対象物を視認し易くし得、蒸発現象に起因する自車両の前方の視認性の低下を抑制し得る。
【0008】
前記所定領域は、前記蒸発領域の全体と重なることとしてもよい。
【0009】
このような構成にすることで、蒸発領域の全体を視認し易くし得る。
【0010】
前記所定領域は、前記蒸発領域の少なくとも一部を左右方向に横切ることとしてもよい。
【0011】
例えば、道路を横断する歩行者が蒸発現象によって視認し難くなっている場合、当該歩行者に対応する蒸発領域の自車両に対する相対的な位置は左右方向に変化する傾向にある。この車両用前照灯では、自車両に対する蒸発領域の相対的な位置が左右方向に変化したとしても、所定領域と蒸発領域とが重なるようにし得、例えば道路を横断する歩行者のように左右方向に移動する対象物が視認し難くなることを抑制し得る。
【0012】
前記所定領域は、前記ロービームのカットオフラインの一部を含むこととしてもよい。
【0013】
前記所定領域は、前記ロービームの配光パターンの下縁と離隔していることとしてもよい。
【0014】
このような構成にすることで、所定領域がロービームの配光パターンの下縁を含む場合と比べて、自車両の直前の視認性の低下を抑制し得る。
【0015】
前記検出部は、左右方向において所定の輝度値以上の明部領域によって挟まれ、左右方向の幅が所定の範囲内である暗部領域を含む領域を前記蒸発領域として検出することとしてもよい。
【0016】
例えば、対向車の前照灯からの光に起因する蒸発現象によって視認し難くなっている対象物の一部は、左右方向において対向車の前照灯からの光によって明るくなっている領域で挟まれた暗い領域として自車両の運転者によって視認される傾向にある。また、対象物が対向車の前照灯からの光を遮ることで路面等に形成される影も、対向車の前照灯からの光によって明るくなっている領域で挟まれる傾向にある。また、これら暗い領域の左右方向の幅は、例えば、対向車の左右方向の幅よりも小さくなる傾向にある。このため、この車両用前照灯では、上記の明部領域が対向車の前照灯からの光によって明るくなっている領域となり、上記の暗部領域が蒸発現象によって視認し難くなっている対象物の一部や当該対象物の影の一部となるように、上記の所定の輝度値及び所定の範囲を設定し得る。つまり、上記の暗部領域が蒸発領域となるようにし得る。このため、この車両用前照灯では、例えば、検出部は、車両の前方が撮像された画像データを画像処理することで、蒸発領域を検出し得る。
【0017】
また、本発明の車両用前照灯は、ロービームの配光パターンを変更可能な灯具ユニットと、対向車を検出する検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記検出部によって前記対向車が検出される場合に、前記対向車が検出されない場合と比べて、前記ロービームの配光パターンのうち上下方向において前記対向車と重なり前記ロービームのカットオフラインの一部を含む所定領域に照射される前記灯具ユニットからの光の全光束量が少なくなるように、前記灯具ユニットを制御するものである。
【0018】
自車両の運転者の視点において、ロービームの配光パターンのうち上下方向において対向車と重なる領域は、概ね対向車の前の領域と重なる。また、対向車の前照灯からの光と自車両のロービームとによる蒸発現象によって自車両の運転者が視認し難くなる人等の対象物は、運転者の視点においてロービームのカットオフラインを横切るように位置する傾向にある。この車両用前照灯では、ロービームの配光パターンうち上下方向において対向車と重なりロービームのカットオフラインの一部を含む所定領域に照射される灯具ユニットからの光の全光束量が少なくなる。このため、対向車の前の領域に歩行者等の対象物が位置するとともに対向車の前照灯からの光と自車両のロービームとによる蒸発現象によって当該対象物を自車両の運転者が視認し難くなったとしても、所定領域に照射される灯具ユニットからの光の全光束量が減少しない場合と比べて、対象物の視認性が低下することを抑制し得る。従って、この車両用前照灯によれば、蒸発現象に起因する自車両の前方の視認性の低下を抑制し得る。
【0019】
上記の車両用前照灯は、少なくとも一部が前記ロービームより上方に位置し前記カットオフラインに接続される領域に照射される光の配光パターンを変更可能な別の灯具ユニットを更に備え、前記制御部は、前記検出部によって前記対向車が検出される場合に、前記対向車が検出されない場合と比べて、前記別の灯具ユニットから出射する光の配光パターンのうち前記対向車と重なり前記所定領域に接続される特定領域に照射される前記別の灯具ユニットからの光の全光束量が少なくなるように、前記別の灯具ユニットを制御することとしてもよい。
【0020】
上記のように、特定領域は、対向車と重なるため、別の灯具ユニットからの光によって車両の前方の視認性を向上しつつ別の灯具ユニットからの光によって対向車の運転者が眩惑することを抑制し得る。また、特定領域は、カットオフラインの一部を含む所定領域に接続される。上記のように、蒸発現象によって視認し難くなる対象物はカットオフラインを横切るように位置する傾向にある。このため、この対象物の一部が特定領域と重なるようにし得、別の灯具ユニットからの光と対向車の前照灯からの光とによる蒸発現象によってこの対象物の一部が視認し難くなることを抑制し得る。
【0021】
以上のように本発明によれば、蒸発現象に起因する自車両の前方の視認性の低下を抑制し得る車両用前照灯が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態における車両用前照灯を備える車両を概念的に示す平面図である。
図2図1に示す第1灯具ユニットを概略的に示す上下方向に沿った断面図である。
図3図2に示す光源部及びシェードを概略的に示す正面図である。
図4図1に示す第2灯具ユニットを概略的に示す上下方向に沿った断面図である。
図5図4に示す配光パターン形成部を概略的に示す正面図である。
図6】ロービームの配光パターンを示す図である。
図7】第1実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
図8】カメラによって得られる画像データに二値化処理を施した画像データの一例の一部を模式的に示す図である。
図9】第1実施形態における配光パターンの一例を示す図である。
図10】第2実施形態における配光パターンの一例を示す図である。
図11】第2実施形態における配光パターンの別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る車両用前照灯を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態における車両用前照灯を備える車両を概念的に示す平面図である。図1に示すように、本実施形態の車両100は、車両用前照灯1と、カメラ110と、ライトスイッチ120とを備える。本実施形態の車両用前照灯1は、自動車用の前照灯とされ、左右一対の灯具部5と、制御部COと、検出部30と、一対の電源回路40と、を主な構成として備える。本明細書において、特に明示のない限り、「右」とは自車両である車両100の運転者の視点における右側を意味し、「左」とはこの運転者の視点における左側を意味する。
【0025】
本実施形態では、一対の灯具部5は、車両100の左右方向において互いに概ね対称な形状とされ、車両100の前方に向かって変更可能な配光パターンの光を出射する。また、一方の灯具部5の構成は、形状が概ね対称であることを除いて、他方の灯具部5の構成と同じとされる。このため、以下では、一方の灯具部5について説明し、他方の灯具部5についての説明は省略する。
【0026】
本実施形態の灯具部5は、第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20を備える。第2灯具ユニット20は、第1灯具ユニット10より車両100の中心側に配置される。
【0027】
図2は、図1に示す第1灯具ユニット10を概略的に示す上下方向に沿った断面図である。図2に示すように、第1灯具ユニット10は、光源部12と、シェード13と、投影レンズ15と、筐体16とを主な構成として備える。
【0028】
筐体16は、ランプハウジング17、フロントカバー18、及びバックカバー19を主な構成として備える。ランプハウジング17の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー18がランプハウジング17に固定されている。また、ランプハウジング17の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー19がランプハウジング17に固定されている。ランプハウジング17、フロントカバー18、及びバックカバー19によって形成される空間は灯室10Rであり、この灯室10R内に光源部12、シェード13、及び投影レンズ15が収容されている。
【0029】
図3は、図2に示す光源部12及びシェード13を概略的に示す正面図である。図2図3に示すように、本実施形態の光源部12は、複数の発光素子12aと、複数の発光素子12aが実装される回路基板12bとを有する。複数の発光素子12aは、マトリックス状に配置されて上下方向及び左右方向に列を形成し、前方に向かって光を出射する。また、これら発光素子12aは、出射する光の光量を個別に変更可能とされている。発光素子12aとしては、例えばLED(Light Emitting Diode)を用いることができる。なお、発光素子12aの数、及び発光素子12aの列の数、それぞれの発光素子12aの列における発光素子12aの数、発光素子12aが配列される方向、発光素子12aの種類は特に限定されるものではない。
【0030】
このような光源部12は、光を出射させる発光素子12aを選択することで所望の配光パターンを形成することができる。また、光源部12は、それぞれの発光素子12aから出射する光量を調節することで所望の配光パターンにおける光の強度分布を調節することができる。このため、光源部12は、複数の発光素子12aから出射する光の光量に応じた配光パターンを形成することができる。
【0031】
シェード13は、遮光部13aと固定部13bとを有する。本実施形態では、遮光部13aと固定部13bは、板状部材を曲げ加工することで一体に成形されている。遮光部13aは、光源部12より前方において左右方向に延在しており、下端部には固定部13bが接続されている。固定部13bは、遮光部13aの下端部から後方に向かって延在しており、固定部13bの後端部が回路基板12bに固定される。遮光部13aの上方側の縁は、第1縁部13e1、第2縁部13e2、及び第3縁部13e3から成る。第1縁部13e1は概ね水平方向に延在する。第2縁部13e2は第1縁部13e1の一方側の端から第1縁部13e1側と反対側かつ下方に向かって直線状に延在する。第3縁部13e3は第2縁部13e2の第1縁部13e1側と反対側の端から第1縁部13e1側と反対側に向かって概ね水平方向に延在する。このような遮光部13aは、光源部12から出射する光の一部を遮る。
【0032】
投影レンズ15は、入射する光の発散角を調節するレンズである。本実施形態では、投影レンズ15は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされ、シェード13よりも前方に配置される。投影レンズ15の後方焦点は、遮光部13aにおける上方側の縁またはその近傍に位置している。上記のように、光源部12から出射する光の一部は遮光部13aによって遮光され、光源部12から出射する光の他の一部が投影レンズ15に入射し、遮光部13aの形状に応じた所定の配光パターンの光が投影レンズ15から出射する。このように投影レンズ15から出射する所定の配光パターンを有する光がフロントカバー18を介して第1灯具ユニット10から車両100の前方へ向けて出射する。なお、この所定の配光パターンは、遮光部13aによって一部の光の遮光された際の配光パターンが上下左右に反転した配光パターンである。
【0033】
図4は、図1に示す第2灯具ユニット20を概略的に示す上下方向に沿った断面図である。図4に示すように、第2灯具ユニット20は、配光パターン形成部22と、投影レンズ25と、筐体26とを主な構成として備える。筐体26は、第1灯具ユニット10の筐体16と同様の構成とされ、ランプハウジング27、フロントカバー28、及びバックカバー29を主な構成として備え、筐体26によって形成される灯室20R内に配光パターン形成部22及び投影レンズ25が収容されている。
【0034】
図5は、図4に示す配光パターン形成部22を概略的に示す正面図である。図4図5に示すように、本実施形態の配光パターン形成部22は、光を出射する光出射部としての複数の発光素子23と、複数の発光素子23が実装される回路基板24とを有する。複数の発光素子23は、マトリックス状に配置されて上下方向及び左右方向に列を形成し、前方に向かって光を出射する。これら発光素子23は、出射する光の光量を個別に変更可能とされている。このような配光パターン形成部22は、光源部12と同様に、複数の発光素子23から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成することができる。本実施形態では、発光素子23はLEDであり、配光パターン形成部22は所謂LEDアレイである。なお、発光素子23の数、及び発光素子23の列の数、それぞれの発光素子23の列における発光素子23の数、発光素子23が配列される方向、発光素子23の種類は特に限定されるものではない。
【0035】
投影レンズ25は、投影レンズ15と同様に、入射する光の発散角を調節するレンズである。投影レンズ25は、配光パターン形成部22よりも前方に配置され、配光パターン形成部22から出射する光が入射し、この光の発散角が投影レンズ25で調節される。投影レンズ25は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされ、投影レンズ25の後方焦点は、配光パターン形成部22におけるいずれかの発光素子23の光の出射面上またはその近傍に位置している。配光パターン形成部22から出射する光が投影レンズ15に入射し、複数の発光素子23から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンの光が投影レンズ15から出射する。このように投影レンズ25から出射する所定の配光パターンを有する光がフロントカバー28を介して第2灯具ユニット20から車両100の前方へ向けて出射する。なお、この所定の配光パターンは、投影レンズ15に入射する前の配光パターンが上下左右に反転した配光パターンである。
【0036】
次に、図1に示す制御部COは、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置から成る。また、制御部COは、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。後述するように、制御部COは、第1灯具ユニット10、及び第2灯具ユニット20を制御する。
【0037】
制御部COには、ライトスイッチ120が接続されている。本実施形態のライトスイッチ120は、ロービームの出射、ハイビームの出射、光の非出射のいずれかを選択するスイッチである。例えば、ライトスイッチ120は、選択された状態を示す信号を制御部COに出力するものの、光の非出射が選択された場合には制御部COに信号を出力しない。詳細については後述するが、本実施形態では、第1灯具ユニット10から出射する光によってロービームの配光パターンが形成され、第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20から出射する光によってハイビームの配光パターンが形成される。
【0038】
本実施形態のカメラ110は、車両100の前部に取り付けられ、所定の時間間隔、例えば1/30秒間隔で車両100の前方を撮影し、得られる画像データを検出部30へ出力する。カメラ110として、例えば、C-MOS(Complementary metal oxide semiconductor)カメラ、CCD(Charged coupled device)カメラが挙げられる。
【0039】
本実施形態の検出部30は、カメラ110によって得られる画像データに基づいて、ロービームが照射される領域において蒸発現象が生じる要件を満たす蒸発領域を検出する。この蒸発領域は、ロービームが照射される領域において蒸発現象によって視認し難い対象物及び当該対象物の影の少なくとも一方と重なる領域である。対象物としては、例えば、人等の運転者が注意すべきものが挙げられる。なお、検出部30による蒸発領域の検出方法については、後述する。検出部30は、蒸発領域を検出した場合に、蒸発領域の存在、車両100に対する蒸発領域の位置といった蒸発領域に係る情報を示す信号を制御部COに出力する。つまり、検出部30による蒸発領域の検出は、カメラ110によって得られる画像データに応じて場合分けをして出力する信号を変化させることである。
【0040】
本実施形態の検出部30は、カメラ110によって得られる画像データに基づいて、対向車を検出し、車両100から対向車までの距離を演算する。そして、検出部30は、対向車の存在、車両100に対する対向車の位置、車両100から対向車までの距離といった対向車に係る情報を示す信号を制御部COに出力する。つまり、検出部30による対向車の検出は、カメラ110によって撮影される画像に応じて場合分けをして出力する信号を変化させることである。検出部30の構成としては、例えば、制御部COと同様の構成が挙げられる。
【0041】
なお、検出部30による対向車の検出方法、車両100から対向車までの距離の演算方法、検出部30から制御部COに出力される対向車に係る情報は、特に限定されるものではない。例えば、対向車が存在する場合、カメラ110によって得られる画像には対向車の前照灯から出射される光による白色系の一対の光点が映り込む。このため、検出部30は、この一対の光点の映り込みの有無によって対向車を検出してもよい。また、検出部30は、画像における一対の交点間の距離等に基づいて、車両100から対向車までの距離を演算してもよい。また、車両100の前方に位置する物体を検出可能なセンサ装置が車両100に備わる場合、検出部30は、カメラ110によって得られる画像及びセンサ装置から入力される信号の少なくとも一方に基づいて、対向車の検出及び車両100から対向車までの距離の演算を行ってもよい。センサ装置としては、ミリ波レーダ、ライダー等が挙げられる。また、検出部30とは別の演算部によって車両100から対向車までの距離を演算してもよい。
【0042】
一方の電源回路40は一方の灯具部5に対応し、他方の電源回路40は他方の灯具部5に対応している。それぞれの電源回路40は、ドライバを含んでおり、制御部COから信号が入力すると、このドライバによって第1灯具ユニット10の各発光素子12a、及び第2灯具ユニット20の各発光素子23に供給される電力が調節される。こうして、これら発光素子12a,23のそれぞれから出射する光の光量が調節される。なお、電源回路40のドライバは、PWM(Pulse Width Modulation)制御によってそれぞれの発光素子12a,23に供給される電力を調整してもよい。
【0043】
メモリMEは、情報を記憶し、当該記憶した情報を読み出し可能に構成される。メモリMEは、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体記録媒体が好適であるが、光学式記録媒体や磁気記録媒体等の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、「非一過性」の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く全てのコンピュータで読み取り可能な記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。
【0044】
本実施形態では、メモリMEには、第1灯具ユニット10から出射する光によって形成される配光パターンに係る情報、例えば、各発光素子12aに供給される電力に関する情報と、検出部30によって検出される蒸発領域に係る情報が関連付けられたテーブルが記憶される。また、メモリMEには、第2灯具ユニット20から出射する光によって形成される配光パターンに係る情報、例えば、各発光素子23に供給される電力に関する情報と、検出部30によって検出される対向車に係る情報が関連付けられたテーブルが記憶される。
【0045】
次に、車両用前照灯1から出射するロービームについて説明する。
【0046】
制御部COは、ライトスイッチ120からロービームの出射を示す信号が入力する場合、車両用前照灯1からロービームが出射するように、第1灯具ユニット10を制御し、第2灯具ユニット20を駆動させない。具体的には、制御部COは、メモリMEに記憶される情報を参照し、ロービームに対応する信号を電源回路40に出力する。これにより、電源回路40のドライバによって、ロービームとなる光が第1灯具ユニット10から出射するように各発光素子12aに供給される電力が調整される。
【0047】
図6は、本実施形態におけるロービームの配光パターンを示す図である。図6において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービームの配光パターンPLが太線で示される。また、図6において、第2灯具ユニット20からの光が照射可能な領域HAが破線で示されている。配光パターンの外形は、例えば、当該配光パターンにおける光の最大強度値に対して光の強度が所定の割合の値となる点の集まりによって形成される等強度線によって定義される。本実施形態の配光パターンの外形は、当該配光パターンにおける光の最大強度値に対して光の強度が1.5%の値となる点の集まりによって形成される等強度線によって定義される。
【0048】
本実施形態のロービームの配光パターンPLの上縁は、カットオフラインCL1,CL2,CL3から成る。カットオフラインCL1は、水平線Sより下方かつ鉛直線V上またはその近傍に位置するエルボー点EPから右側に水平方向に延在する。カットオフラインCL2は、エルボー点EPから左側に斜め上方に向かって延在し、カットオフラインCL2におけるエルボー点EP側と反対側の端は、水平線Sより上方に位置している。カットオフラインCL3は、カットオフラインCL2におけるエルボー点EP側と反対側の端から、左側に水平方向に延在する。このような、ロービームの配光パターンPLの上縁は、遮光部13aの上端の形状に対応している。なお、車両の右側通行が運用されている国や地域では、ロービームの配光パターンは、図6に示すロービームの配光パターンPLと概ね左右対称の形状とされる。
【0049】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、ロービームと第2灯具ユニット20から出射する所定の配光パターンの光とによってハイビームが形成され、この所定の配光パターンの光の外形は、領域HAの外形と同じとされる。
【0050】
本実施形態では、検出部30による蒸発領域の検出に応じて、第1灯具ユニット10から出射する光の配光パターンが蒸発領域に応じた配光パターンに変化し、検出部30による対向車の検出に応じて、第2灯具ユニット20から出射する光の配光パターンが対向車に応じた配光パターンに変化する。このため、例えば、ライトスイッチ120でロービームの出射が選択されている状態では、検出部30によって検出される蒸発領域に応じて、車両用前照灯1が出射する光の配光パターンがロービームの配光パターンPLと蒸発領域に応じた配光パターンとに切り替えられる。また、ライトスイッチ120でハイビームの出射が選択されている状態では、検出部30によって検出される蒸発領域及び対向車に応じて、車両用前照灯1が出射する光の配光パターンがハイビームの配光パターンと蒸発領域及び対向車に応じた配光パターンとに切り替えられる。
【0051】
次に、本実施形態の車両用前照灯1におけるハイビームの配光パターンと蒸発領域及び対向車に応じた配光パターンとの切り替え動作について説明する。図7は、本実施形態における制御部COの制御フローチャートの一例を示す図である。図7に示すように、本実施形態の制御フローは、ステップSP11~ステップSP17を含んでいる。
【0052】
(ステップSP11)
ライトスイッチ120からハイビームの出射を示す信号が制御部COに入力され、車両用前照灯1からハイビームが出射しており、図7では、この状態がスタートの状態である。本ステップでは、制御部COは、検出部30から入力する信号に基づいて、検出部30によって対向車が検出されるとともに車両100から当該対向車までの距離が所定の距離以下であるか否かを判断する。この所定の距離は、例えば、150mとされるが、特に限定されるものではない。上記のように、検出部30は、対向車を検出する場合には、対向車の存在、車両100に対する対向車の位置、車両100から対向車までの距離といった対向車に係る情報を示す信号を制御部COに出力する。制御部COは、車両100から対向車までの距離が所定の距離以下であることを示す信号が検出部30から入力する場合には、制御フローをステップSP12に進め、この信号が入力しない場合には、制御フローをステップSP13に進める。このため、制御部COの判断は、このように入力する信号に応じて場合分けをして次に進むステップを変更することである。
【0053】
(ステップSP12)
本ステップでは、制御部COは、第2灯具ユニット20から出射する光の配光パターンが検出部30によって検出された対向車に応じた配光パターンとなるように、第2灯具ユニット20を制御する。そして、制御部COは制御フローをステップSP14に進める。
【0054】
(ステップSP13)
本ステップでは、制御部COは、ハイビームを形成する際の所定の配光パターンの光が第2灯具ユニット20から出射するように、第2灯具ユニット20を制御する。そして、制御部COは、制御フローをステップSP17に進める。
【0055】
(ステップSP14)
本ステップでは、制御部COは、検出部30から入力する信号に基づいて、検出部30によって蒸発領域が検出された状態であるか否かを判断する。上記のように、検出部30は、蒸発領域を検出する場合には、蒸発領域の存在、車両100に対する蒸発領域の位置といった蒸発領域に係る情報を示す信号を制御部COに出力する。制御部COは、この信号が検出部30から入力する場合には、蒸発領域が検出された状態であると判断して、制御フローをステップSP15に進める。一方、制御部COは、この信号が入力しない場合には、蒸発領域が検出されていない状態であると判断して、制御フローをステップSP16に進める。
【0056】
本実施形態の検出部30による蒸発領域の検出方法について説明する。本実施形態の検出部30は、カメラ110によって得られる画像データに所定の輝度値を基準とした二値化処理を施した画像データに基づいて、蒸発領域を検出する。図8は、カメラ110によって得られる画像データに二値化処理を施した画像データの一例の一部を模式的に示す図である。具体的には、図8は、対向車の前方に人が位置する場合にカメラ110によって得られる画像データに二値化処理を施した画像データを示す図であり、対向車の前方に位置する人及び当該人の影は対向車の前照灯からの光と車両100の車両用前照灯1からの光とによる蒸発現象によって視認し難い状態である。図8には、このような人90が点線で示され、対向車の前照灯からの光に起因する当該人90の影91が二点鎖線で示され、ロービームの配光パターンPLが太線で示されている。そして、蒸発領域は、人90及び影91と、ロービームが照射される領域とが重なる領域である。
【0057】
対向車の前照灯からの光に起因する蒸発現象によって視認し難くなっている対象物の一部は、左右方向において対向車の前照灯からの光によって明るくなっている領域で挟まれた暗い領域として自車両の運転者によって視認される傾向にある。また、対象物が対向車の前照灯からの光を遮ることで路面等に形成される影も、対向車の前照灯からの光によって明るくなっている領域で挟まれる傾向にある。また、これら暗い領域の左右方向の幅は、例えば、対向車の左右方向の幅よりも小さくなる傾向にある。本実施形態における上記の二値化処理では、このような対象物の一部及び対象物の影が、左右方向において明部領域によって挟まれる暗部領域として抽出されるように、上記の所定の輝度値が設定される。このため、明部領域における輝度値は所定の輝度値以上であり、暗部領域における輝度値は所定の輝度値未満であり、所定の輝度値は、例えば3.0cd/mとしてもよい。
【0058】
なお、理解を容易にするため、図8において、明部領域51には斜め線から成るハッチングが施され、明部領域51以外の領域が暗部領域52である。また、明部領域51のうち領域51aは、対向車の前照灯からの光によって所定の輝度値以上となっている領域であり、領域51bは、路面で反射した対向車の前照灯からの光によって所定の輝度値以上となっている領域であり、領域51cは、センターラインで反射した光によって所定の輝度値以上となっている領域であり、領域51dは、車道外側線で反射した光によって所定の輝度値以上となっている領域である。本実施形態の検出部30は、暗部領域52のうちロービームが照射される領域内に位置し、左右方向において所定の輝度値以上の明部領域51によって挟まれ、左右方向の幅が所定の範囲内である領域55を、蒸発領域として検出し、当該領域55に係る情報を示す信号を制御部COに出力する。図8において、この領域55には複数の点から成るハッチングが施されている。この所定の範囲は、例えば、対向車の左右方向の幅以下とされるが、対向車の一対の前照灯間の幅以下であってもよく、領域51aの左右方向の最大の幅以下であってもよい。なお、検出部30は、この領域55を含む領域、例えば、領域55の外縁の全体を囲う領域を蒸発領域として検出してもよい。
【0059】
なお、検出部30による蒸発領域の検出方法は、特に限定されるものではない。上記のように、蒸発領域は、ロービームが照射される領域において蒸発現象によって視認し難い対象物及び当該対象物の影の少なくとも一方と重なる領域である。このため、例えば、車両100の前方に位置する物体を検出可能なセンサ装置が車両100に備わる場合、検出部30は、カメラ110によって得られる画像及びセンサ装置から入力される信号の少なくとも一方に基づいて、対向車の前方に位置する物体を検出して、車両100の運転者の視点においてロービームが照射される領域とこの物体とが重なる領域を含む領域を蒸発領域として検出してもよい。
【0060】
(ステップSP15)
本ステップでは、制御部COは、第1灯具ユニット10から出射する光の配光パターンが検出部30によって検出された領域55に応じた配光パターンとなるように、第1灯具ユニット10を制御する。具体的には、制御部COは、領域55に係る情報を示す信号に基づいて、メモリMEに記憶されたテーブルを参照し、領域55に応じた配光パターンにおけるそれぞれの発光素子12aに供給される電力に基づく信号を電源回路40に出力する。これにより、電源回路40のドライバによって発光素子12aに供給される電力が調整され、第1灯具ユニット10から領域55に応じた配光パターンの光が出射する。そして、制御部COは、制御フローをステップSP17に進める。
【0061】
(ステップSP16)
本ステップでは、制御部COは、第1灯具ユニット10からロービームが出射するように、第1灯具ユニット10を制御する。そして、制御部COは、制御フローをステップSP17に進める。
【0062】
(ステップSP17)
本ステップでは、制御部COは、ライトスイッチ120からの信号に基づいて、ライトスイッチ120の選択が変化したか否を判断する。ライトスイッチ120からの信号がスタート時の信号と同じ場合、制御部COは制御フローをステップSP11に戻す。一方、ライトスイッチ120からの信号がスタート時の信号と異なる場合、制御部COは、車両用前照灯1からの光を非出射とし、この制御を終了する。なお、制御部COの制御フローは、図7に示す制御フローに限定されるものではない。例えば、ステップSP13において、制御部COは、制御フローをステップSP14に進めてもよい。
【0063】
本実施形態の車両用前照灯1は、このようにして、検出部30による蒸発領域の検出に応じて第1灯具ユニット10から出射する光の配光パターンを変化させ、検出部30による対向車の検出に応じて第2灯具ユニット20から出射する光の配光パターンが対向車に応じた配光パターンに変化させる。
【0064】
図9は、ライトスイッチ120でハイビームの出射が選択されている状態において検出部30によって車両100までの距離が所定の距離以下である対向車及び領域55が検出された場合に出射される光の配光パターンの一例を示す図である。図9において、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターン60が太線で示される。また、図9には、領域55、人90、及び対向車95が記載されている。
【0065】
本実施形態の配光パターン60は、第1灯具ユニット10から出射する光の配光パターン70と、第2灯具ユニット20から出射する光の配光パターン80とによって形成される。なお、図9において、配光パターン70が一点鎖線で示され、配光パターン80が二点鎖線で示されている。理解を容易にするため、これら配光パターン70,80は配光パターン60に対して僅かにずらして示されている。
【0066】
配光パターン70は、ロービームの配光パターンPLの所定領域75における光の強度が低くされた配光パターンである。このため、配光パターン70における所定領域75に照射される第1灯具ユニット10からの光の全光束量は、ロービームの配光パターンPLにおける所定領域75に相当する領域に照射される第1灯具ユニット10からの光の全光束量より少ない。また、配光パターン70における所定領域75内では、光の強度は概ね一定とされる。なお、所定領域75を光が照射されない領域としてもよい。このように、所定領域75では、検出部30によって領域55が検出されない場合と比べて、第1灯具ユニット10からの光の全光束量が減少されている。一方、配光パターン70のうち所定領域75以外の領域における光の強度分布は、ロービームの配光パターンPLのうち所定領域75に相当する領域以外の領域における光の強度分布と概ね同じとされる。この所定領域75は、領域55の少なくとも一部と重なっている。図9に示す例では、所定領域75は、領域55の全体と重なる矩形状とされており、ロービームのカットオフラインCL1の一部を含んでいる。なお、所定領域75の形状は特に限定されるものではなく、所定領域75はカットオフラインCL1,CL2,CL3と離隔していてもよい。
【0067】
配光パターン80は、ハイビームを形成する際の所定の配光パターンの特定領域85における光の強度が低くされた配光パターンである。このため、特定領域85に照射される第2灯具ユニット20からの光の全光束量は、所定の配光パターンにおける特定領域85に相当する領域に照射される第2灯具ユニット20からの光の全光束量より少ない。一方、配光パターン80のうち特定領域85以外の領域における光の強度分布は、所定の配光パターンのうち特定領域85に相当する領域以外の領域における光の強度分布と概ね同じとされる。特定領域85は、概ね矩形状であり、対向車95の全体と重なっている。このため、対向車95の運転者が眩惑することを抑制し得る。なお、対向車95の運転者が眩惑することを抑制する観点では、特定領域85は、対向車の運転者が車外を視認するための視認部、例えばフロントウインドウと重なっていればよい。また、配光パターン80における特定領域85内では、光の強度は概ね一定であっても、一定でなくてもよく、特定領域85を光が照射されない領域としてもよい。なお、本実施形態では、特定領域85は所定の配光パターンの下縁を含んでいるが、当該下縁を含まなくてもよい。また、特定領域85の形状は特に制限されるものではない。
【0068】
なお、本実施形態の車両用前照灯1におけるロービームの配光パターンと蒸発領域に応じた配光パターンとの切り替え動作は、第2灯具ユニット20を駆動させない点で、ハイビームの配光パターンと蒸発領域及び対向車95に応じた配光パターンとの切り替え動作と異なる。そして、この動作における制御部COの制御フローチャートは、例えば、図7に示される制御フローチャートにおいて、ステップSP11,SP12,SP13をなくしたものである。このため、当該動作についての説明は省略する。なお、制御部COの制御フローチャートは、ステップSP11を残し、ステップSP12,SP13をなくしたものであってもよい。また、図示による説明は省略するが、蒸発領域に応じた配光パターンは、図9に示される配光パターン60において、配光パターン80をなくしたものである。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の車両用前照灯1は、第1灯具ユニット10と、検出部30と、制御部COと、を備える。第1灯具ユニット10は、ロービームの配光パターンPLを変更可能である。検出部30は、ロービームが照射される領域において蒸発現象が生じる要件を満たす蒸発領域として領域55を検出する。制御部COは、検出部30によって領域55が検出される場合に、領域55が検出されない場合と比べて、ロービームの配光パターンPLのうち領域55の少なくとも一部と重なる所定領域75に照射される第1灯具ユニット10からの光の全光束量が少なくなるように、第1灯具ユニット10を制御する。このため、本実施形態の車両用前照灯1では、所定領域75に照射される第1灯具ユニット10からの光の全光束量が少なくならない場合と比べて、領域55の少なくとも一部が暗くなり、車両100の運転者が領域55の少なくとも一部を視認し易くし得る。上記のように、蒸発領域としての領域55は、蒸発現象によって視認し難くなっている対象物及び当該対象物の影の少なくとも一方と重なる領域である。従って、本実施形態の車両用前照灯1によれば、上記の場合と比べて、蒸発現象によって視認し難くい人等の対象物を視認し易くし得、蒸発現象に起因する車両100の前方の視認性の低下を抑制し得る。
【0070】
本実施形態の車両用前照灯1では、図9に示すように、所定領域75は、領域55の全体と重なる。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、領域55の全体を視認し易くし得る。
【0071】
本実施形態の車両用前照灯1では、図9に示すように、所定領域75は、領域55の全体を左右方向に横切る。例えば、道路を横断する歩行者が蒸発現象に視認し難くなっている場合、当該歩行者に対応する蒸発領域の車両100に対する相対的な位置は左右方向に変化する傾向にある。本実施形態の車両用前照灯1では、車両100に対する領域55の相対的な位置が左右方向に変化したとしても、所定領域75と領域55とが重なるようにし得、例えば道路を横断する歩行者が視認し難くなることを抑制し得る。なお、車両100に対する領域55の相対的な位置が左右方向に変化したとしても、所定領域75と領域55とが重なるようにする観点では、所定領域75は、領域55の少なくとも一部を左右方向に横切っていればよい。しかし、所定領域75は、領域55を左右方向に横切らず、例えば、所定領域75の全体と領域55の一部とが互いに重なっていてもよい。
【0072】
本実施形態の車両用前照灯1では、図9に示すように、所定領域75は、ロービームの配光パターンPLの下縁と離隔している。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、所定領域75がロービームの配光パターンPLの下縁を含む場合と比べて、車両100の直前の視認性の低下を抑制し得る。なお、所定領域75は、ロービームの配光パターンPLの下縁を含んでいてもよい。
【0073】
本実施形態の車両用前照灯1では、制御部COは、検出部30によって蒸発領域としての領域55及び対向車95が検出される場合に、領域55及び対向車95が検出されない場合と比べて、ロービームの配光パターンPLのうち領域55の少なくとも一部と重なる所定領域75に照射される第1灯具ユニット10からの光の全光束量が少なくなるように、第1灯具ユニット10を制御する。対向車95の車両100までの距離が遠くなると対向車95の前照灯に起因する蒸発現象が生じにくくなる傾向にある。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、対向車95の前照灯からの光と車両100の車両用前照灯1からの光とによる蒸発現象が生じにくい場合においてロービームの配光パターンPLが変化することを抑制し得る。なお、所定領域75に照射される第1灯具ユニット10からの光の減少量は、車両100と対向車95との距離の減少に応じて、段階的に多くしてもよく、徐々に多くしてもよい。このようにすることで、蒸発現象に起因する車両100の前方の視認性の低下をより抑制し得る。
【0074】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の車両用前照灯1は、検出部30が領域55を検出せずに対向車95を検出する点において、第1実施形態の車両用前照灯1と主に異なる。このため、本実施形態の車両用前照灯1の動作は、第1実施形態の車両用前照灯1の動作と異なり、ロービームの配光パターンPL及びハイビームの配光パターンは、検出部30による対向車95の検出に応じて当該対向車95に応じた配光パターンに切り替えられる。
【0075】
まず、ハイビームの配光パターンが対向車95に応じた配光パターンに切り替えられる動作について説明する。
【0076】
本実施形態では、制御部COは、ライトスイッチ120でハイビームの出射が選択されている状態において検出部30によって車両100までの距離が所定の距離以下である対向車95が検出されるか否かに応じて、第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20の制御を変化させる。なお、所定の距離は、例えば150mとされる。本実施形態では、メモリMEには、第1灯具ユニット10から出射する光によって形成される配光パターンに係る情報と対向車95に係る情報とが関連付けられたテーブル、及び第2灯具ユニット20から出射する光によって形成される配光パターンに係る情報と対向車95に係る情報とが関連付けられたテーブルとが記憶される。制御部COは、上記のような対向車95が検出される場合に、これらのテーブルを参照して、出射する光の配光パターンがハイビームの配光パターンから対向車95に応じた配光パターンになるように、第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20を制御する。
【0077】
図10は、ライトスイッチ120でハイビームの出射が選択されている状態において検出部30によって車両100までの距離が所定の距離以下である対向車95が検出された場合に出射される光の配光パターンの一例を示す図である。図10において、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターン160が太線で示される。
【0078】
本実施形態の配光パターン160は、第1灯具ユニット10から出射する光の配光パターン170と、第2灯具ユニット20から出射する光の配光パターン180とによって形成される。なお、図10おいて、配光パターン170が一点鎖線で示され、配光パターン180が二点鎖線で示され、これら配光パターン170,180は配光パターン160に対して僅かにずらして示されている。
【0079】
配光パターン170は、第1実施形態における配光パターン70と同様に、ロービームの配光パターンPLの所定領域175における光の強度が低くされた配光パターンである。配光パターン170における所定領域175内の光の強度分布は特に限定されるものではなく、例えば、所定領域175を光が照射されない領域としてもよい。この所定領域175は、上下方向において対向車95と重なりロービームのカットオフラインCL1の一部を含む。本実施形態では、所定領域175は、上下方向において対向車95の全体と重なる。また、所定領域175は、ロービームの配光パターンPLの下縁と離隔し、所定領域175の左右方向の最大の幅は、対向車95の左右方向の幅より大きい。また、所定領域175の上端部における左右方向の幅は下端部における幅より大きく、所定領域175の幅は、上端部から下端部に向かって小さくなっている。なお、所定領域175の形状は特に限定されるものではない。例えば、所定領域175は、ロービームの配光パターンPLの下縁を含んでいてもよく、所定領域175の左右方向の幅は、対向車95の左右方向の幅より小さくてもよく、所定領域175の幅は上下方向において概ね一定であってもよい。
【0080】
車両100の運転者の視点において、ロービームの配光パターンPLのうち上下方向において対向車95と重なる領域は、概ね対向車95の前の領域と重なる。また、対向車95の前照灯からの光と車両100のロービームとによる蒸発現象によって車両100の運転者が視認し難くなる人等の対象物は、運転者の視点においてロービームのカットオフラインCL1を横切るように位置する傾向にある。本実施形態では、上記のように、ロービームの配光パターンPLうち上下方向において対向車95と重なりロービームのカットオフラインCL1の一部を含む所定領域175に照射される第1灯具ユニット10からの光の全光束量が少なくなる。このため、対向車95の前の領域に歩行者等の対象物が位置するとともに対向車95の前照灯からの光と車両100のロービームとによる蒸発現象によって当該対象物を車両100の運転者が視認し難くなったとしても、所定領域175に照射される第1灯具ユニット10からの光の全光束量が少なくならない場合と比べて、対象物の視認性が低下することを抑制し得る。
【0081】
ところで、対向車95の前照灯からの光が路面に照射される領域の左右方向の幅は、当該対向車95の左右方向の幅より大きい傾向にある。上記のように、本実施形態では、所定領域175の左右方向の最大の幅は対向車95の左右方向の幅より大きい。このため、左右方向の最大の幅が対向車95の左右方向の幅より小さい場合と比べて、対向車95の前照灯からの光が路面に照射される領域と所定領域175とが互いに重なる領域を大きくし得る。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、左右方向の最大の幅が対向車95の左右方向の幅より小さい場合と比べて、対象物の影等の視認性が蒸発現象によって低下することを抑制し得る範囲を広くし得る。
【0082】
配光パターン180は、ハイビームを形成する際の所定の配光パターンの特定領域185における光の強度が低くされた配光パターンである。このため、特定領域185に照射される第2灯具ユニット20からの光の全光束量は、所定の配光パターンにおける特定領域185に相当する領域に照射される第2灯具ユニット20からの光の全光束量より少ない。一方、配光パターン180のうち特定領域185以外の領域における光の強度分布は、所定の配光パターンのうち特定領域185に相当する領域以外の領域における光の強度分布と概ね同じとされる。特定領域185は、対向車95と重なり所定領域175に接続されている。本実施形態では、特定領域185は、概ね矩形であり、対向車95の全体と重なる。また、特定領域185は、第2灯具ユニット20から出射する光の所定の配光パターンの下縁の一部を含み、特定領域185の下端部と所定領域175の上端部とが互いに重なっている。また、特定領域185の左右方向の最大の幅は、所定領域175の左右方向の最大の幅より小さい。なお、特定領域185の形状は特に限定されるものではない。例えば、特定領域185は、配光パターン180の下縁と離隔していてもよく、特定領域185の左右方向の最大の幅は、所定領域175の左右方向の最大の幅より大きくてもよい。
【0083】
上記のように、特定領域185は対向車95と重なる。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第2灯具ユニット20からの光によって車両100の前方の視認性を向上しつつ第2灯具ユニット20からの光によって対向車95の運転者が眩惑することを抑制し得る。特定領域185は、カットオフラインCL1の一部を含む所定領域175に接続される。前述のように、蒸発現象によって視認し難くなる対象物はカットオフラインCL1を横切るように位置する傾向にある。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、この対象物の一部が特定領域185と重なるようにし得、第2灯具ユニット20からの光と対向車95の前照灯からの光とによる蒸発現象によってこの対象物の一部が視認し難くなることを抑制し得る。
【0084】
また、車両用前照灯1から出射される光の配光パターンは、図11に示すような配光パターンであってもよい。図11は、ライトスイッチ120でハイビームの出射が選択されている状態において検出部30によって車両100までの距離が所定の距離以下である対向車95が検出された場合に出射される光の配光パターンの別の一例を示す図である。図11では、理解を容易にするため、所定領域175には斜め線からなるハッチングが施されている。図11に示す特定領域185は、図10に示す特定領域185と同じである。一方、図11に示す所定領域175は、図10に示す所定領域175と異なる。本例では、所定領域175の全体と特定領域185の一部とが互いに重なっている。また、所定領域175の左縁と特定領域185の左縁とが概ね同一直線上に位置し、所定領域175の右縁と特定領域185の右縁とが概ね同一直線上に位置し、所定領域175の下縁は特定領域185の下縁と概ね同じであり、所定領域175の上縁はカットオフラインCL1の一部と同じである。なお、所定領域175の下縁は特定領域185の下縁より下方に位置していてもよい。本例の所定領域175であっても、対向車95の前の領域に歩行者等の対象物が位置するとともに対向車95の前照灯からの光と車両100のロービームとによる蒸発現象によって当該対象物が車両100の運転者が視認し難くなったとしても、所定領域175に照射される第1灯具ユニット10からの光の全光束量が少なくならない場合と比べて、対象物の視認性が低下することを抑制し得る。
【0085】
なお、本実施形態の車両用前照灯1におけるロービームの配光パターンと対向車95に応じた配光パターンとの切り替え動作は、第2灯具ユニット20を駆動させない点で、ハイビームの配光パターンと対向車95に応じた配光パターンとの切り替え動作と異なる。このため、当該動作についての説明は省略する。また、図示による説明は省略するが、対向車95に応じた配光パターンは、図10及び図11に示される配光パターン160において、配光パターン180をなくしたものである。
【0086】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
例えば、上記実施形態では、第1灯具ユニット10と第2灯具ユニット20と個別に備える車両用前照灯1を例に説明した。しかし、第1灯具ユニット10と第2灯具ユニット20とが一体に形成されてもよい。このような灯具ユニットの構成として、例えば、第2灯具ユニット20と同様の構成が挙げられる。このような灯具ユニットでは、複数の発光素子23における一部の発光素子23から出射する光によって第1灯具ユニット10から出射する光と同様の配光パターンを形成し、他の一部の発光素子23から出射する光によって第2灯具ユニット20から出射する光と同様の配光パターンを形成する。また、第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20の構成は特に限定されない。第1灯具ユニット10は、ロービームの配光パターンPLを変更可能であればよく、第2灯具ユニット20は、少なくとも一部がロービームより上方に位置しカットオフラインに接続される領域に照射される光の配光パターンを変更可能であればよい。
【0088】
また、第1実施形態では、車両100までの距離が所定の距離以下である対向車95が検出された場合に第2灯具ユニット20からの光の配光パターンを変化させていた。しかし、車両100と対向車95との距離に関係なく、対向車95が検出された場合に第2灯具ユニット20からの光の配光パターンを変化させてもよい。また、第2実施形態では、車両100までの距離が所定の距離以下である対向車95が検出された場合に、第1灯具ユニット10からの光の配光パターンを変化させたり、第1灯具ユニット10からの光及び第2灯具ユニット20からの光のそれぞれの配光パターンを変化させたりしていた。しかし、車両100と対向車95との距離に関係なく、対向車95が検出された場合に第1灯具ユニット10からの光の配光パターンを変化させたり、第1灯具ユニット10からの光及び第2灯具ユニット20からの光のそれぞれの配光パターンを変化させたりしてもよい。また、検出部30は、領域55や対向車95とともに先行車を検出するように構成されてもよい。この場合、制御部COは、先行車が検出される場合に、先行車が検出されない場合と比べて、第2灯具ユニット20から出射する光の配光パターンのうち検出された先行車と重なる領域に照射される第2灯具ユニット20からの光の全光束量が少なくなるように、第2灯具ユニット20を制御してもよい。
【0089】
また、第1実施形態では、車両100までの距離が所定の距離以下である対向車95及び領域55が検出される場合に、所定領域75に照射される第1灯具ユニット10からの光の全光束量が少なくなり、車両100までの距離が所定の距離以下である対向車95が検出される場合に、特定領域85に照射される第2灯具ユニット20からの光の全光束量が少なくなる例を説明した。また、第2実施形態では、車両100までの距離が所定の距離以下である対向車95が検出される場合に、所定領域175に照射される第1灯具ユニット10からの光の全光束量が少なくなり、特定領域185に照射される第2灯具ユニット20からの光の全光束量が少なくなる例を説明した。しかし、制御部COは、車両100と対向車95との距離の減少に応じて所定領域75,175及び特定領域85,185における減光量の少なくとも一方が多くなるように、第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20を制御してもよい。この減光量は、車両100と対向車95との距離の減少に応じて、段階的に多くなってもよく、徐々に多くなってもよい。例えば、この距離が150m以下の場合の第1減光量よりこの距離が50m以下の場合の第2減光量が多くなるように減光量を二段階で多くしてもよい。なお、3以上の段数で減光量を多くしてもよい。つまり、制御部COは、このようになるように、第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20を制御してもよい。このようにすることで、蒸発現象に起因する車両100の前方の視認性の低下を抑制しつつ第1灯具ユニット10からの光量の減少による前方の視認性の低下を抑制し得る。また、対向車95の運転者が眩惑することを抑制しつつ対向車95の視認性の低下を抑制し得る。
【0090】
本発明によれば、蒸発現象に起因する自車両の前方の視認性の低下を抑制し得る車両用前照灯が提供され、自動車等の車両用前照灯などの分野において利用可能である。

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図11