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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】ベクター及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20250303BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20250303BHJP
   C12N 15/70 20060101ALI20250303BHJP
   C12N 15/73 20060101ALI20250303BHJP
   C12N 15/74 20060101ALI20250303BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20250303BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20250303BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/09 110
C12N15/70 Z
C12N15/73 Z
C12N15/74 Z
C12N7/01
C12N1/21
A61K35/76
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P1/00
A61P1/04
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023068379
(22)【出願日】2023-04-19
(62)【分割の表示】P 2020520722の分割
【原出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2023103248
(43)【公開日】2023-07-26
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】1710126.2
(32)【優先日】2017-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517386055
【氏名又は名称】エスエヌアイピーアール・テクノロジーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SNIPR TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ジャスパー・クリューブ
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0333348(US,A1)
【文献】Molecular Microbiology, 2010年,Vol.77, No.6,p.1380-1393,doi:10.1111/j.1365-2958.2010.07315.x
【文献】Current Opinion in Microbiology, 2017年3月,Vol.37,p.1-7,http://dx.doi.org/10.1016/j.mib.2017.02.004
【文献】Cell, 2017年1月,Vol. 168,p.150-158,http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.12.009
【文献】mbio, 2014年,Vol.5, Issue1,e00928-13 (p.1-9),doi:10.1128/mBio.00928-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 7/01
C12N 1/21
A61K 35/76
A61K 45/00
A61P 43/00
A61P 1/00
A61P 1/04
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物対象における疾患又は状態を治療する又は予防する医学的な使用のための宿主細胞への導入のための核酸ベクターであって、宿主細胞が、対象によって含まれ、細胞が、細胞における抑制因子によって抑制されたCRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌクレオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチド配列;及び
(b)細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイ;及び/又は細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、
各cRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり、宿主細胞ゲノムのそれぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロトスペーサー配列を改変し、及び
ヌクレオチド配列(a)が、宿主細胞における配列の発現のための構成的なプロモーター若しくは強力なプロモーターを含む、及び、
ヌクレオチド配列若しくはアレイ(b)が、宿主細胞における配列若しくはアレイの発現のための構成的なプロモーター若しくは強力なプロモーターを含む、
ベクター。
【請求項2】
(a)及び(b)が、同じオペロンによって含まれる若しくは細胞において作動可能な共通プロモーターの制御下にある、請求項1に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項3】
宿主細胞が野生型宿主細胞である、及び/又は、宿主細胞が、細菌若しくは古細菌細胞である、又は、細胞が、大腸菌、ストレプトコッカス若しくは、サルモネラ細胞、任意選択で、EHEC大腸菌若しくはS.エンテリカ血液型亜型チフィムリウム細胞である、請求項1又は2に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項4】
1つ又は複数のCas配列の転写が抑制され、任意選択で、タイプI CRISPR/CasシステムのCasA、B、C、D及びEのうちの1つ又は複数の転写が抑制される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項5】
宿主細胞ゲノムのCas改変が、
(a)宿主細胞を死滅させる;
(b)細胞又はエピソームの成長又は増殖を減少させる;
(c)細胞又はエピソームの成長又は増殖を増加させる;
(d)前記プロトスペーサー配列を含む又はそれに隣接する、ヌクレオチド配列の転写を減少させる又は防止する;又は
(e)前記プロトスペーサー配列を含む又はそれに隣接する、ヌクレオチド配列の転写を増加させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項6】
抑制因子がH-NS、StpA、LRP若しくはCRPである、又は、抑制因子が、acr、acrIIA2及び
acrIIA4、aca1及びaca2遺伝子若しくはそのオルソログによってコードされる、又は、抑制因子が、AcrIIAタンパク質、任意選択で、AcrIIA2及び/若しくはAcrIIA4である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項7】
(i)脱抑制因子がLeuO若しくはLysRである、あるいは、
(ii)脱抑制因子は、抑制因子をコードする宿主細胞遺伝子によって含まれるヌクレオチド配列に相補的なサイレンシングRNA(siRNA)である、請求項1から6のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項8】
発現可能なhtpG配列を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項9】
細胞が、Cascade及びCas3を含むCRISPR/Casシステムを含み、Cascadeが、宿主細胞において抑制され、ベクターが、
(i)前記Cascade抑制の脱抑制因子をコードする発現可能なヌクレオチド配列;及び
(ii)宿主細胞における脱抑制Cascadeと共に機能できる、Cas3をコードする発現可能なヌクレオチド配列を含み;ヌクレオチド配列が、宿主細胞において発現可能であり、
任意選択で、(i)及び(ii)のヌクレオチド配列が、細胞において作動可能な1つ又は複数の構成的なプロモーターの制御下にある、請求項1から8のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項10】
細菌又は古細菌宿主細胞への導入のための、請求項1から9のいずれか一項に記載の核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑制因子によって天然で抑制される、内因性CRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌクレオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチド配列;及び
(b)細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイ;及び/又は細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み;
各cRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり、宿主細胞ゲノムのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロトスペーサー配列を改変し、
ここで、
(c)抑制因子が、細胞ゲノムによってコードされるH-NS、StpA、LRP若しくはCRPであり;
(d)ヌクレオチド配列(a)が、宿主細胞における配列の発現のための構成的なプロモーター又は強力なプロモーターを含み;及び
(e)ヌクレオチド配列又はアレイ(b)が、宿主細胞における配列の発現のための構成的なプロモーター又は強力なプロモーターを含み、
任意選択で、脱抑制因子が、LeuO;又は抑制因子をコードする宿主細胞によって含まれるヌクレオチド配列に相補的なsiRNAである、医学的な使用のためのベクター。
【請求項11】
プロトスペーサー配列が、染色体配列、内因性宿主細胞配列、野生型宿主細胞配列、非ウイルス染色体宿主細胞配列であり、外因性配列及び/又は非ファージ配列ではない、請求項1から10のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項12】
(i)CRISPR/CasシステムがCas3及び抑制Cascadeを含み、脱抑制因子が細胞におけるCascadeを脱抑制可能であり、ヌクレオチド配列又はアレイ(b)が脱抑制CRISPR/Casシステムと共に作動可能なCRISPR反復配列を含み、反復配列が配列番号49~52から選択される配列又は前記選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む又はそれからなり、
任意選択で、Cas3が、配列番号58又は60から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む、並びに/あるいは、
(ii)Cas3が、ヌクレオチド配列AWGを含む又はそれからなるPAMと共に作動可能である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項13】
Cascadeが抑制CasAを含み、脱抑制因子がCasAを脱抑制可能であり、CasAが配列番号66若しくは68から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少なくとも90%同一で
ある配列を含む、請求項12に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項14】
(i)細胞がS.エンテリカ細胞であり、CRISPR/Casシステムが抑制されたタイプE(Cse)Casを含み、脱抑制因子がCasを脱抑制可能であり、任意選択で、脱抑制因子がLeuOである、
及び/あるいは、
(ii)CRISPR/CasシステムがCas3及び抑制Cascadeを含み、脱抑制因子が細胞におけるCascadeを脱抑制可能であり、ヌクレオチド配列又はアレイ(b)が脱抑制CRISPR/Casシステムと共に作動可能なCRISPR反復配列を含み、反復配列が配列番号53又はそれと少なくとも90%同一である配列を含む又はそれからなる、任意選択で、Cas3が、配列番号56若しくは64から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む、及び/あるいは、
Cascadeが抑制CasAを含み、脱抑制因子がCasAを脱抑制可能であり、CasAが配列番号70若しくは72から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項15】
ヌクレオチド配列又はアレイ(b)が、細胞において脱抑制CRISPR/Casシステムと共に作動可能なCRISPR反復配列を含み、反復配列が細胞のCRISPR/Casシステムによって含まれる宿主アレイにおける反復と少なくとも90%同一であり、ベクター又は配列又はアレイ(b)が、宿主CRISPR/CasシステムのCasヌクレアーゼによって認識されるPAMを含まない、請求項1から14のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項16】
CasA、B、C、D及びEヌクレオチド配列からなる群からの配列を含まない、若しくは、前記群の配列の全てを含まない、並びに/又は、
Cas1、Cas2、Cas5及びCas6配列からなる群からの配列を含まない、並びに/又は、
Cas3ヌクレオチド配列を含まない、
請求項1から15のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクター。
【請求項17】
求項1から16のいずれか一項に記載の医学的な使用のためのベクターであって
記ベクターが、ヒト又は動物マイクロバイオームにおいて、前記宿主細胞を死滅させるための又はその成長若しくは増殖を減少させるための、医学的使用のためのものであり、
任意選択で、マイクロバイオームが、複数の前記宿主細胞を含み、宿主細胞の種又は株とは異なる種又は株の更なる細胞を含み、更なる細胞がプロトスペーサー配列を含まない、医学的な使用のためのベクター。
【請求項18】
任意選択で、ベクターが同一である、請求項1から17のいずれか一項に記載の医学的な使用のための複数のベクターを含む複数のバクテリオファージ又はファージミド。
【請求項19】
複数の請求項1から18のいずれか一項に記載のベクター、バクテリオファージ又はファージミドを含み、任意選択で、ヒト又は動物における疾患又は状態の治療又は予防において使用するための、1つ又は複数の医療薬又は抗生物質を更に含む組成物であって、
任意選択で、前記組成物が細菌又は古細菌細胞への導入のための医薬であり、
(a)各細胞が、細胞におけるH-NS及び/又はStpAから選択される抑制因子によって抑制される、CRISPR/Casシステムを含み、
(b)ベクターが、細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、任意選択で、強力な及び/又は構成的なプロモーターの制御下で脱抑制因子を産生するために、細胞において発現可能である、組成物。
【請求項20】
Cascade Cas、Cas3又はCas9が抑制される、請求項1から19のいずれか一項に記載の使用のための、ベクター、複数のバクテリオファージ、ファージミド、又は、組成物。
【請求項21】
(i)システムが、
(a)配列番号58、60、66及び68から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、又は配列番号49~52から選択される配列を含む反復、及びAWGを含む又はそれからなるPAMと共に作動可能な、そのオルソログである、Cas;又は
(b)配列番号56、64、70及び72から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、又は配列番号53を含む反復と共に作動可能な、そのオルソログである、Cas;又は
(c)配列番号62から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、又はNNAGAAW、NGGNG又はAWを含む又はそれからなるPAMと共に作動可能な、そのオルソログである、Casを含む、
並びに/あるいは、
(ii)システムが、
(a)配列番号49~52から選択される配列(又は前記選択される配列と少なくとも90%同一である配列)を含む反復、及びAWGを含む又はそれからなるPAM;
(b)配列番号53(又は前記選択される配列と少なくとも90%同一である配列)を含む反復;又は
(c)NNAGAAW、NGGNG又はAWを含む又はそれからなるPAMを含む、
並びに/あるいは、
(iii)システムが抑制Casを含み、Casが、
(a)AWGを含む又はそれからなるPAM(任意選択で、Casヌクレアーゼは、配列番号58、60、66及び68から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む);又は
(b)NNAGAAW、NGGNG又はAWを含む又はそれからなるPAM(任意選択で、Casヌクレアーゼは、配列番号62から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む)と共に作動可能である、
並びに/あるいは、
(iv)抑制因子が、
(a)配列番号17、19、21、23、25及び27から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;又は
(b)配列番号29、31、33及び35から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、
並びに/あるいは、
(v)脱抑制因子が、
(a)配列番号3、5、7、9、11、13及び15から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;又は
(b)配列番号37、39及び41から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;又は
(c)配列番号43、45及び47から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、
請求項1から20のいずれか一項に記載の使用のためのベクター、複数のバクテリオファージ、ファージミド、又は、組成物。
【請求項22】
該又は各ベクターが、Casコードヌクレオチド配列又はシステムの抑制Casをコードするヌクレオチド配列を欠く、請求項1から21のいずれか一項に記載の使用のためのベクター、複数のバクテリオファージ、ファージミド、又は、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宿主細胞においてCas又はCascadeを脱抑制するための、ベクター及び方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
大腸菌(Escherichia coli)のタイプI-E CRISPR-Casシステムは、CRISPR RNAプロセシン
グ並びに標的DNAの切断及びデグラデーションに要求される2つのオペロンに6つのCas遺伝
子(casABCDE及びcas3)をコードする。casABCDEオペロンは、K-12等の大腸菌株においてH-
NSによって抑制される。
【0003】
Gomaaらは、全て6つの大腸菌Cas遺伝子を誘導的に発現する、2つのプラスミド(pCasA-E
及びpCas3)からなるシステムを使用した。加えて、Gomaaらは、操作されたスペーサー配
列の挿入を収容する、大腸菌K-12において内因性CRISPR1アレイの変化バージョンをコー
ドする、第三のプラスミドを生成した。操作され、ゲノム-ターゲティングスペーサーを
コードする、pCRISPRプラスミドを、T7ポリメラーゼ(BW25113-T7)及び2つのCas-発現プラ
スミド(pCasA-E及びpCas3)の誘導性発現で前操作された大腸菌K-12亜株BW25113細胞に形
質転換した。代替的に、著者らは、hns遺伝子の欠失によって染色体性にコードされたCas
遺伝子の発現を強制させた。
【0004】
Citorikらは、外因性ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9
及びCRISPR座位をコードするヌクレオチド配列の大腸菌への送達のための接合プラスミド
又はファージの使用を開示している。
【0005】
US20160333348(SNIPR Technologies Limited)は、特に混合細菌集団における種をター
ゲッティングするための、細菌における活性内因性Casヌクレアーゼの利用を開示してい
る。
【0006】
Gomaaら等の最先端技術は、外因性CRISPR/Casシステムを導入することによって抑制さ
れた内因性Casの問題に対処しているが、これには、CRISPRアレイ、Cas3、CasA、B、C、D
及びE等の成分をコードする全ての配列を収容する複数のベクターの構築が要求される。
したがって、導入が要求される大量の外因性配列は、標的細菌細胞に入る多くの異なるベ
クターを要求し、成功の確率が減少し、プロセスの効率が減少する。例えば、天然ヒト、
動物、植物又は環境マイクロバイオームのターゲティングは、それらに外因性CRISPR/Cas
システムの1つ又は複数の成分をコードする外因性配列を装備させる標的宿主細胞の前操
作を許容しない。加えて、宿主細胞におけるCRISPR/Cas活性(例えば、死滅)に作用する、
標的細胞に入ることが要求される核酸ベクターの数を(好ましくは、1つに至るまで)減少
させることが好ましいであろう。
【0007】
最も一般的に採用されるCas9は、4.2キロベース(kb)と測定され、S.ピオゲネス(S pyog
enes)に由来する。分子の長さは、ベクター(例えば、バクテリオファージ)がどれだけの
遺伝物質を収容することができるかという限界を押し上げ、様々な設定において、CRISPR
を使用することに対する障壁を作り出す(Ranらを参照されたい)。S.サーモフィルス(S th
ermophilus)Cas9(UniProtKB-G3ECR1(CAS9_STRTR))ヌクレオチド配列は、1.4kbのサイズを
有する。
【0008】
活性内因性Casヌクレアーゼ(例えば、US20160333348に記載される)を採用する等の解決
策は、これが宿主において天然で活性のCasである場合に一般に有用である。これらの解
決策により、かさ高い外因性Cas配列を使用するとの必要性が回避されるが、宿主におい
て天然で抑制された内因性Casの利用を可能にし、それによって、他の天然に存在する細
菌種に対処することが望ましいであろう。これを、例えば、ヒト、動物又は環境に天然で
見出されるマイクロバイオームに対処するために、野生型細胞、例えば、細菌又は古細菌
細胞においてなすことができることも望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】US20160333348
【文献】GB1609811.3
【文献】PCT/EP2017/063593
【文献】WO2017/118598
【文献】USSN15/478,912
【非特許文献】
【0010】
【文献】Gomaaら; MBio. 2014 Jan 28;5(1):e00928~13. doi: 10.1128/mBio.00928~13、「Programmable removal of bacterial strains by use of genome-targeting CRISPR-Cas systems」.
【文献】Citorikら、Nat Biotechnol. 2014 Nov;32(11):1141~5. doi: 10.1038/nbt.3011. Epub 2014 Sep 21、「Sequence-specific antimicrobials using efficiently delivered RNA-guided nucleases」.
【文献】Chirwa NT及びHerrington MB、Microbiology. 2003 Feb;149(Pt 2):525~35
【文献】Pulら、Mol Microbiol. 2010 Mar;75(6):1495~512. doi: 10.1111/j.1365~2958.2010.07073.x. Epub 2010 Feb 1、「Identification and characterization of E. coli CRISPR-cas promoters and their silencing by H-NS」
【文献】Westraら、Mol Microbiol. 2010 Sep;77(6):1380~93. doi: 10.1111/j.1365~2958.2010.07315.x. Epub 2010 Aug 18、「H-NS-mediated repression of CRISPR-based immunity in Escherichia coli K12 can be relieved by the transcription activator LeuO」
【文献】Liangら、Int J Infect Dis. 2015 Jan;30:1~6. doi: 10.1016/j.ijid.2014.09.015. Epub 2014 Nov 5、「Inhibiting the growth of methicillin-resistant Staphylococcus aureus in vitro with antisense peptide nucleic acid conjugates targeting the ftsZ gene」
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的で、本発明は、以下を提供する:
【0012】
第一の態様において、
宿主細胞への導入のための核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑制因子によっ
て抑制されたCRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b)任意選択で、各crRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり
、宿主細胞ゲノムのそれぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれ
るエピソームのプロトスペーサー配列を改変する;細胞における1つ又は複数のcrRNAの産
生のためのCRISPRアレイ;及び/又は細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単
一ガイドRNA)を各々コードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む、ベクター。
【0013】
第二の態様において、
細菌又は古細菌宿主細胞への導入のための核酸ベクターであって、細胞が、細胞における
抑制因子によって天然で抑制された内因性CRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b)任意選択で、各crRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり
、宿主細胞ゲノムのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソー
ムのプロトスペーサー配列を改変する;細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのC
RISPRアレイ;及び/又は細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA
)を各々コードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み;
ここで、抑制因子は、細胞ゲノムによってコードされるH-NS、StpA、LRP若しくはCRP又
はそのホモログ、若しくはオルソログ又は機能的な均等物である;及び
ここで、脱抑制因子は、それぞれ、H-NSの複合体を形成可能であるLeuO又はそのホモロ
グ、若しくはオルソログ若しくは機能的な均等物;又はH-NS、StpA、LRP若しくはCRP抑制
因子との複合体を形成可能であるH-NS、StpA、LRP若しくはCRPの変異体とである、ベクタ
ー。
【0014】
第三の態様において、
いずれかの先行する態様に記載の複数のベクターを含む医薬であって、任意選択で、ヒト
又は動物における疾患又は状態を治療する又は予防するための、1つ又は複数の医療薬(例
えば、抗がん医薬)又は抗生物質(例えば、プロトスペーサー配列は、宿主細胞抗生物質耐
性遺伝子によって含まれる)を更に含む医薬。
【0015】
第四の態様において、
ヒト又は動物対象における疾患又は状態を治療する又は予防する方法であって、いずれか
の先行する態様のベクター又は医薬を対象に投与する工程を含み、対象のマイクロバイオ
ームによって含まれる宿主細胞は、細胞の内因性の脱抑制Casによって改変され、治療又
は予防が実施される、方法。
【0016】
第五の態様において、
野生型の細菌又は古細菌細胞(例えば、大腸菌又はサルモネラ(Salmonella)細胞)を死滅さ
せる方法であって、細胞が、Cas3及びCascadeタンパク質をコードするヌクレオチド配列
を含む内因性CRISPR/Casシステムを含み、Cas3及び/又はCascadeが、細胞において天然で
抑制され、方法が、
(a)前記Cas3及び/又はCascadeを脱抑制する工程及び
(b)(i)細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のための、CRISPRアレイ;又は(ii)それ
ぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)を各々コードする1つ又は複数のヌクレ
オチド配列を細胞に導入する工程を含み;
各crRNA又はgRNAが、Cas又はCascadeをガイドして、宿主細胞ゲノムのそれぞれのプロト
スペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロトスペーサー配列
を改変する、方法。
【0017】
第六の態様において、
宿主細胞への導入のための核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑制因子によ
って抑制されたCRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b)(i)細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のための、CRISPRアレイ又はCRISPRスペ
ーサー配列;又は
(ii)細胞におけるガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコードするヌクレオチ
ド配列の導入のための部位を含み;
前記crRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり、宿主細胞ゲノム
のそれぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプ
ロトスペーサー配列を改変する、ベクター。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、spCas9及びリボソームRNAサブユニット16sをターゲティングする自己ターゲティングsgRNAの発現を制御する調節因子を示す。
図2図2は、外因性のCRISPR-Casシステムによる大腸菌株の特異的なターゲティングを示す。sgRNAは、大腸菌TOP10のようなK-12由来大腸菌株のゲノムを標的とするが、試験した他の株は影響されなかった。
図3図3は、CRISPR-Cas9システムの誘導なしの、TH寒天における、本研究で用いた個々の細菌種及び混合培養の段階希釈でのスポットアッセイを示す。
図4図4は、異なる選択培地における103倍希釈のスポットアッセイを示す。2.5gl-1のPEAを有するTHは、枯草菌(B.subtilis)単独のための選択的培地である。マルトースを補充したMacConkeyは、グラム陰性菌と腸内桿菌を選択的に単離し、それらをマルトース発酵に基づいて区別するように設計された、細菌用の選択的且つ鑑別的な培養培地である。したがって、TOP10ΔmalK変異体は、プレート上に白いコロニーを形成し、一方Nissleは、ピンクのコロニーを形成する;Aは大腸菌ΔmalK、Bは大腸菌Nissile、Cは枯草菌、DはL.ラクティス(L lactis)、Eは混合培養である;MacConkeyが-のBとEの画像はピンクに見える;MacConkeyが+のBとEの画像はピンクに見える。
図5図5は、異なる培地及び選択プレート上の、本研究で使用される細菌の選択的増殖を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、とりわけ、ベクター、複数の前記ベクターを含む組成物、方法及び使用を提
供する。本発明は、飲料及び食糧(又はこれらを製造、加工又は保存する装置)によって含
まれる環境(例えば、水又は水路、冷却又は加熱装置における、農業用植物中の又は農業
用植物上における、土壌における)に天然に見られる野生型細菌集団又はヒト又は動物微
生物相(例えば、腸、肺における又は皮膚における)によって含まれる野生型細菌集団のタ
ーゲティングに有用である。それ故、本発明は、宿主細胞の前改変により死滅又は成長阻
害に、それらを受容性(receptive)とすることが不可能である又は望ましくない状況で有
用性が見出される(例えば、対象の腸又は他の位置の微生物相のインサイチュでの治療が
望まれるとき)。他の適用において、本発明は、宿主細胞が原因である又は媒介する疾患
又は状態の治療又は予防のためにヒト又は動物対象に投与する医薬のエクスビボでの産生
(例えば、腸細菌移植)に有用性が見出され、ここで医薬は、改変混合細菌集団(例えば、1
つ又は複数のヒトドナーの糞便又は腸内微生物相から得た)を含み、これは本発明の使用
又は方法の産物であり、ここで集団は、宿主細胞の種又は株と異なる種又は株の細菌の亜
集団を含む。前者の亜集団細胞はプロトスペーサー標的を含まず、故に本使用又は方法に
より改変されない。それ故、例えば、本方法は、例えば、本明細書に開示される代謝性の
、又はGIの状態(例えば、大腸炎)又は疾患の治療又は予防のための医薬の生産のために、
混合集団において、バクテロイデス門(Bacteroidetes)の特定の亜集団の割合を減少させ
、温存するために使用することができる。この様式で、本発明は、このような使用又はヒ
ト又は動物における前記治療又は予防のための改変細菌移植(例えば、改変糞便移植)医薬
を提供することができる。例えば、方法は、医学的使用(例えば、代謝状態(例えば肥満又
は糖尿病)又はGI管状態(例えば、大腸炎、IBD、IBS、クローン病又は本明細書に言及され
る任意のこのような状態)又は癌(例えば、GI管癌又はメラノーマ)の治療又は予防)のため
の、又は化粧品又は個人衛生使用(例えば、ヒトの腋窩又はヒトの他の関連位置に局所適
用することによる腋窩又は他の体臭の軽減のための、例えば、ヒトの局所使用)のための
、ヒト又は動物に投与する
ための細菌の改変コレクションを産生するために、インビトロでの1つ又は複数の微生物
相の改変に使用することができる。別の例では、本発明のベクターをヒト又は動物に投与
し、宿主細胞はヒト又は動物に保持され、例えば、ヒト又は動物の微生物相(例えば、腸
内微生物相又は本明細書に開示する任意の他のタイプの微生物相)によって含まれる。こ
の様式で、宿主細胞により媒介される又は引き起こされる疾患又は状態を治療又は予防す
ることができる。一例では、宿主細胞形質転換はインビトロで実施され、任意選択で、ベ
クターは宿主細胞に電気穿孔されるプラスミド又はファージミドであり;代替的に、ベク
ターは、宿主細胞に感染し、脱抑制因子及びアレイ又はgRNAコード配列を宿主細胞に導入
するウイルス(例えば、バクテリオファージ)によって含まれる。一例では、核酸はRNA(例
えば、gRNAのコピー)である。別の例では、ベクターは、DNAベクター又はRNAベクターで
ある。
【0020】
一例では、生物は、植物若しくは動物、例えば、脊椎動物(例えば、本明細書に開示す
る任意の哺乳動物若しくはヒト)又は作物若しくは食用植物である。
【0021】
一例では、方法、使用、ベクター又は組成物は、医科学又は歯科学又は眼科学使用(例
えば、生物における感染の治療若しくは予防又は生物における感染拡大制限)のためであ
る。
【0022】
一例では、方法、使用、ベクター又は組成物は、化粧品使用(例えば、化粧品製品、例
えば、メイクアップにおける使用)又は衛生使用(例えば、衛生製品、例えば、石鹸におけ
る使用)のためである。
【0023】
一例では、組成物は、以下の任意のとおりである:一例では、組成物は、医科、眼科、
歯科又は医薬組成物(例えば、抗宿主ワクチンによって含まれる)である。一例では、組成
物は、抗微生物組成物、例えば、抗生物質又は抗ウイルス、例えば、薬、殺菌剤又は口腔
洗浄剤である。一例では、組成物は化粧品組成物(例えば、顔又は体のメイクアップ組成
物)である。例えば、組成物は除草剤である。一例では、組成物は殺虫剤(例えば、宿主が
バチルス(Bacillus)(例えば、チューリンゲンシス(thuringiensis))宿主であるとき)であ
る。一例では、組成物は飲料(例えば、ビール、ワイン又はアルコール飲料)添加物である
。一例では、組成物は食品添加物(例えば、宿主が大腸菌、サルモネラ、リステリア(List
eria)又はクロストリジウム(Clostridium)(例えば、ボツリヌム(botulinum))宿主である
とき)である。一例では、組成物は水添加物である。一例では、組成物は、水生動物環境(
例えば、魚用水槽における)のための添加物である。一例では、組成物は石油又は石油化
学工業組成物である又はこのような組成物に含まれる(例えば、宿主が硫酸還元細菌、例
えば、デスルホビブリオ(Desulfovibrio)宿主であるとき)。一例では、組成物は石油又は
石油化学添加物である。一例では、組成物は化学添加物である。一例では、組成物は殺菌
剤(例えば、ヒト又は動物使用のための、例えば、外科的又は医学的使用又は新生児の食
物摂取のための消毒装置のための)である。一例では、組成物は、ヒト又は動物使用のた
めの個人衛生組成物である。一例では、組成物は環境使用、例えば、土壌処理又は環境除
染のための組成物(例えば、汚水又は石油、石油化学又は化学から、例えば、宿主が硫酸
還元細菌、例えば、デスルホビブリオ宿主であるとき)である。一例では、組成物は植物
成長刺激因子である。一例では、組成物は、石油、石油化学、金属又は鉱物抽出において
使用するための組成物である。一例では、組成物は布処理又は添加物である。一例では、
組成物は動物皮革、革製品又はスエード処理又は添加物である。一例では、組成物は染料
添加物である。一例では、組成物は飲料(例えば、ビール又はワイン)醸造又は発酵添加物
(例えば、宿主がラクトバチルス(Lactobacillus)宿主である
とき)である。一例では、組成物は紙添加物である。一例では、組成物はインク添加物で
ある。一例では、組成物は接着剤添加物である。一例では、組成物は抗ヒト又は動物又は
植物寄生虫組成物である。一例では、組成物は空気添加物(例えば、エアコンディショニ
ング装置における又はそれにより産生される空気のための、例えば、宿主がレジオネラ(L
egionella)宿主である場合)である。一例では、組成物は凍結防止添加物(例えば、宿主が
レジオネラ宿主である場合)である。一例では、組成物は洗眼又は眼科組成物(例えば、コ
ンタクトレンズ流体)である。一例では、組成物は乳製品食品(例えば、組成物はミルク又
は乳製品である又はこれに含まれる;例えば、宿主はラクトバチルス、ストレプトコッカ
ス、ラクトコッカス(Lactococcus)又はリステリア宿主である)によって含まれる。一例で
は、組成物は家庭用又は工業用洗浄製品(例えば、宿主が大腸菌、サルモネラ、リステリ
ア又はクロストリジウム(例えば、ボツリヌム)宿主である場合)である又はこれによって
含まれる。一例では、組成物は、燃料によって含まれる。一例では、組成物は、溶媒(例
えば、水以外)によって含まれる。一例では、組成物は、ベーキング添加物(例えば、食品
ベーキング添加物)である。一例では、組成物は研究室試薬(例えば、生命工学又は組換え
DNA又はRNA技術における使用のための)である。一例では、組成物は、繊維浸漬剤によっ
て含まれる。一例では、組成物は、ビタミン合成プロセスにおける使用のためである。一
例では、組成物は穀類枯死(anti-crop)又は植物腐敗組成物(例えば、宿主が腐生栄養性細
菌であるとき)である。一例では、組成物は、例えば、金属腐食を防止又は減少させるた
めの、抗腐食化合物(例えば、宿主が硫酸還元細菌、例えば、デスルホビブリオ宿主であ
るとき、例えば石油抽出、処理又は封じ込め装置、金属抽出、処理又は封じ込め装置又は
鉱物抽出、処理又は封じ込め装置の腐食の減少又は防止に使用するため)である。一例で
は、組成物は農業又は畜産組成物である又はこのような組成物に含まれる。一例では、組
成物はサイレージ添加物である。本発明は、この段落に記載する組成物のいずれかの使用
又はこの段落に記載する適用のいずれかにおける使用のための、本明細書に記載するCRIS
PRアレイ、gRNA
コードヌクレオチド配列、ベクター又は複数のベクターを提供し、例えば、宿主細胞は細
菌又は古細菌細胞である。本発明は、この段落に記載した適用のいずれかのための方法を
提供し、方法は、CRISPRアレイ、gRNAコードヌクレオチド配列、ベクター又は複数のベク
ターと宿主細胞(例えば、細菌又は古細菌細胞)を組み合わせる工程を含む。一実施形態で
は、宿主細胞は、ヒト(又はヒト胚)又は動物中又は動物上に存在しない。
【0024】
アレイ、ベクター、組成物、使用、又は方法等の本発明の態様のいずれも、産業用又は
家庭用使用のためであるか、又はこのような使用のための方法に使用される。例えば、そ
れは、農業、石油又は石油産業、食品又は飲料産業、衣料品産業、包装産業、電子機器産
業、コンピューター産業、環境産業、化学産業、航空宇宙産業、自動車産業、生命工学産
業、医療産業、健康産業、歯科産業、エネルギー産業、消費財産業、製薬産業、採鉱産業
、清掃産業、林業、漁業、娯楽産業、リサイクリング産業、化粧品産業、プラスチック産
業、パルプ又は紙産業、繊維産業、衣料品産業、革製品又はスエード又は動物皮革の産業
、タバコ産業又は製鋼産業用である又はこれらで使用される。
【0025】
本発明は、宿主細胞への導入のための核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑
制因子によって抑制されたCRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b)各crRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり、宿主細胞ゲ
ノムのそれぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソーム
のプロトスペーサー配列を改変する;細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRI
SPRアレイ;及び/又は細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)
を各々コードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む、ベクターを提供する。
【0026】
(a)の配列は、それが、脱抑制因子の発現に関して細胞において作動可能である、プロ
モーターに作動可能に連結されうるので、発現可能である。
【0027】
任意選択で、本明細書の任意の宿主細胞は、細菌又は古細菌細胞である。一例では、細
胞は、定常期にある。一例では、細胞は、指数期にある。一例では、細胞は、誘導期にあ
る。一例では、細胞は、例えば、ヒト、動物、植物、土壌、水、海、水路又は環境の、天
然に存在するマイクロバイオームによって含まれる、野生型細胞又は天然に存在する細胞
である。一例では、細胞は、人工的に遺伝的に改変されている。一例では、CRISPR/Casシ
ステムは、人工的に抑制され、脱抑制因子が前記抑制を除去する又は減少させる。
【0028】
一例では、本発明の複数のベクターは、複数の前記宿主細胞に導入され、宿主細胞は、
例えば、エクスビボ、インビボ又はインビトロで細菌集団によって含まれる。一例では、
宿主細胞は、生物又は環境(例えば、水路微生物相、水微生物相、ヒト又は動物腸内微生
物相、ヒト又は動物口腔微生物相、ヒト又は動物膣微生物相、ヒト又は動物皮膚又は毛微
生物相又はヒト又は動物腋窩微生物相)によって含まれる微生物相集団によって含まれ、
集団は、生物又は環境と相利共生又は片利共生である第一細菌を含み、第二細菌は前記宿
主細胞を含み、宿主細胞は、生物又は環境に有害(例えば、病原性)である。一実施形態で
は、集団はエクスビボにある。一例では、第一細菌亜集団の第二細菌亜集団に対する比は
増加する。一例では、第一細菌は、バクテロイデス(例えば、B.フラジリス(B fragalis)
及び/又はB.シータイオタミクロン(B thetaiotamicron))細菌である。任意選択で、バク
テロイデスは、カッカエ(caccae)、カピロスス(capillosus)、セルロシリティカス(cellu
losilyticus)、コプロコラ(coprocola)、コプロフィルス(coprophilus)、コプロスイス(c
oprosuis)、ディスタソニス(distasonis)、ドレイ(dorei)、エガーシイ(eggerthii)、フ
ァエシス(faecis)、ファインゴールディー(finegoldii)、フルクサス(fluxus)、フラジリ
ス(fragalis)、インテスティナリス(intestinalis)、メラニノゲニカス(melaninogenicus
)、ノルディイ(nordii)、オレイシプレヌス(oleiciplenus)、オラーリス(oralis)、オバ
ータス(ovatus)、ペクチノフィルス(pectinophilus)、プレベイウス(plebeius)、ステル
コリス(stercoris)、シータイオタオミクロン(thetaiotaomicron)、ユニフォルミス(unif
ormis)、ブルガタス(vulgatus)及びキシラニソルベンス(xylanisolvens)から選択される
、1、2、3又はそれ以上のバクテロイデス種を含む。例えば、バクテロイデスは、B.シー
タイオタオミクロンである又はそれを含む。例えば、バクテロイデスは、B.フラジリスで
ある又はそれを含む。
【0029】
一例では、宿主、第一又は第二細胞は、US20160333348、GB1609811.3、PCT/EP2017/063
593及び全ての米国の同等の出願に開示されている任意の細菌種である。これらの種の開
示(特に、PCT/EP2017/063593の表1を含む)は、それらの全体において、そこで開示される
1つ又は複数の開示の、本願の1つ又は複数の請求項における潜在的な包含のために、本明
細書に組み込まれる。
【0030】
一例では、宿主細胞又は細菌集団は、ヒトが消費する飲料又は水(例えば、水路又は飲
料水)に保持される。一例では、宿主細胞又は前記集団は、その腸内又は口内微生物相の
定植及びリバランスのためにヒト又は非ヒト動物に投与するための組成物(例えば、医薬(
例えば、細菌腸移植)、飲料、口内洗浄剤又は食糧)によって含まれる(例えば、医薬の前
記使用は、ヒト又は動物における疾患又は状態を治療する又は予防することである)。一
例では、宿主細胞又は前記集団は、固体表面にある又はバイオフィルム(例えば、腸バイ
オフィルム又は工業用装置におけるバイオフィルム)によって含まれる。一例では、ベク
ター、方法又は使用は、工業又は医療の流体、固体表面、装置又はコンテナ(例えば、食
品、消費財、化粧品、パーソナルヘルスケア製品、石油又は石油製品)のインビトロ処理
のためである;又は水路、水、飲料、食糧又は化粧品の処理のためであり、宿主細胞は、
流体、表面、装置又はコンテナ、水路、水、飲料、食糧又は化粧品にある又はそれによっ
て含まれる。
【0031】
一例では、本発明は、使用又は方法の集団又は産物を含む、医学又は栄養学的な使用の
ためのコンテナを提供する。例えば、コンテナは、例えば、吸入器又はシリンジ若しくは
IV針に連結された滅菌容器である。一例では、使用又は方法の産物集団は、疾患又は状態
(例えば、本明細書に列挙される疾患又は状態)を治療する又は予防するために、そのマイ
クロバイオームを生息させるための、ヒト又は動物への投与に有用である。本発明は、本
発明の使用又は方法のための集団産物を含む、ヒト又は非ヒト動物消費用の食糧又は飲料
を提供する。
【0032】
一例では、ベクター、組成物は、粘膜、腸、経口、鼻腔内、直腸内、腟内、眼又は頬側
投与による、ヒト又は非ヒト動物への投与のためである(又は、投与される)。
【0033】
任意選択で、ベクターは、Cas(例えば、Cas3及び/又はCas9)ヌクレアーゼコード配列を
欠く。一例では、システムは、抑制された宿主細胞Cascade、Cas3、CasCas9又はcpf1活性
を含む。
【0034】
例えば、宿主細胞は、野生型(例えば、操作されていない)細菌細胞である。別の例では
、宿主細胞は、(例えば、外来性ヌクレオチド配列を染色体に導入するために又は、例え
ば、宿主細胞の染色体又はプラスミド上の内在性ヌクレオチド配列を改変するために)操
作される。一例では、前記宿主細胞の細菌コロニーの形成は、宿主細胞へのベクターの導
入後に阻害される。一例では、宿主細胞の増殖は、前記導入後に阻害される。一例では、
宿主細胞は、前記導入後に死滅させられる。
【0035】
任意選択で、各宿主細胞は、ヒト微生物相に見られる株又は種のものであり、任意選択
で、宿主細胞は、異なる株又は種の細胞と混合され、異なる細胞は、ヒト(例えば、ヒト
腸における)とプロバイオティク、片利共生又は相利共生にある腸内細菌科(Enterobacter
iaceae)又は細菌である。一例では、宿主細胞は、大腸菌又はサルモネラ細胞である。
【0036】
本発明は、任意選択で、ヒトの微生物相におけるバクテロイデス門細菌(例えば、バク
テロイデス、例えば、フラジリス及び/又はシータイオタミクロン)、ファーミキューテス
門細菌及び/又はグラム陽性又は陰性細菌の比率の変更のため等の、細菌集団成長阻害又
は混合細菌集団中の第一細菌及び第二細菌の亜集団の相対比率の変更、例えば、ヒト又は
動物マイクロバイオームの変更のためである。例えば、本発明のある実施形態は、以下を
提供する:
ヒト又は動物対象における疾患を治療する又は予防する方法における使用のための抗微
生物組成物、ここで、対象の腸が混合細菌集団を含み、方法が、抗微生物を対象に投与し
て、対象の腸によって含まれる混合細菌集団の宿主細胞を改変し、腸集団の片利共生又は
相利共生バクテロイデス門細菌を支持し、それによって、対象の腸におけるバクテロイデ
ス門細菌の比率を増加させる工程を含み、ここで、前記治療又は予防が成立し、ここで、
組成物は本発明の1つ又は複数のベクターを含み、宿主細胞は腸集団において天然で抑制
されたCRISPR/Casシステムを含む。
【0037】
対象の片利共生又は相利共生バクテロイデス門細菌を利用することは、既に腸にいる内
因性片利共生者及び相利共生者の活性による疾患修飾効果を活用することにとって有利で
ある。これにより、当技術分野において教示されているように潜在的に病原性である外因
性バクテロイデス門細菌を投薬するリスクが回避される。更に、患者自身の腸細菌を活用
することによって(例えば、他の腸細菌、例えばグラム陽性、例えばクロストリジウム属
細菌をターゲティングすることによって、拡大のために患者の腸マイクロバイオームにニ
ッチを生み出すことによって)より持続的な効果を発生させることが可能でありうる。内
因性の患者細菌の有用な利用に関する可能性により、細菌調製物又はその抽出物を使用す
る製剤の投薬の考慮及び維持の必要性も回避される。
【0038】
加えて、バクテロイデス、例えば、B.フラジリス及びB.シータイオタミクロンは厳密な
嫌気性菌であり、嫌気性環境中の組成物の産生、貯蔵及び投与は厳しく制限される。本発
明は、それを腸の適合する嫌気性環境中に停留する、患者自身のバクテロイデス門細菌を
利用することによって回避する。
【0039】
更に、腸における患者自身の内因性バクテロイデス門細菌及び患者の免疫システム及び
他の相互作用因子は、共に進化し、適合して効果的に働き(例えば、疾患に対処するため
に有用な免疫応答を刺激する)、本発明は、例えば、対象における免疫応答を刺激するた
めに、内因性腸バクテロイデス門細菌を利用することによって本利点を活用することがで
きる。加えて、それには、外因性に投与されたバクテロイデス門細菌(又はそのペプチド)
を必要とせず、これが(投薬問題を)幾分か取り除く可能性があり、有益な使用のために正
確に腸陰窩区域に効果的にコロニーを作る、それらの様式が何らかの形で見出される必要
がある。代わりに、本発明におけるエフェクター細菌は、患者において既に所定の位置に
あり、直ちに有用である。
【0040】
一例では、本方法は、炎症性陽疾患(IBD)を治療する又は予防するためである。一例で
は、本方法は、医療目的で肥満を治療する又は予防するためである。一例では、本方法は
、糖尿病を治療する又は予防するためである。一例では、本方法は、バクテロイデス門細
菌のファーミキューテス門細菌に対する相対比を増加させることを含む。一例では、バク
テロイデス門細菌は、B.フラジリス及び/又はB.シータイオタミクロンである。一例では
、バクテロイデス門細菌は、B.ユニフォルミスである。
【0041】
一例では、本発明のベクターは、US20160333348、GB1609811.3、PCT/EP2017/063593及
び全ての米国の同等の出願に開示されている任意の方法における使用のためである;一例
では、本発明のベクターは、US20160333348、GB1609811.3、PCT/EP2017/063593及び全て
の米国の同等の出願に開示されている任意のベクターに従う。US20160333348、GB1609811
.3、PCT/EP2017/063593及び全ての米国の同等の出願の開示(これらの特定の開示を含む)
は、その全体において、そこで開示される1つ又は複数の開示の、本願の1つ又は複数の請
求項における潜在的な包含のために、本明細書に組み込まれる。
【0042】
一例では、本発明のベクター又は組成物は、宿主細胞溶解のためのエンドリシンを宿主
細胞において発現させるためのヌクレオチド配列を含み、任意選択で、エンドリシンは、
ファージphi11、ファージTwort、ファージP68、ファージphiWMY又はファージKエンドリシ
ン(例えば、MV-Lエンドリシン又はP-27/HPエンドリシン)である。
【0043】
脱抑制因子は、細胞におけるCRISPR/Casシステムを活性化可能である、活性化因子とし
て作用し得、活性化因子は、抑制因子の存在下で前記システムを活性化する。例えば、抑
制因子は、システムの核酸(例えば、プロモーター)に結合し得、活性化因子が、抑制を無
効にし、抑制因子がシステムの要素に結合するときに、システムを活性化する。
【0044】
一例では、プロトスペーサー配列は、宿主細胞の染色体によって含まれ、例えば、配列
は、宿主細胞の抗生物質耐性遺伝子、ビルレンス遺伝子又は必須遺伝子によって含まれる
。一例は、本発明のベクターを抗生物質(例えば、ベータラクタム抗生物質)と組み合わせ
て提供し、例えば、ベクターは、宿主細胞ゲノム又はエピソーム(例えば、宿主細胞によ
って含まれるプラスミド)によって含まれる抗生物質耐性遺伝子によって含まれるプロト
スペーサー配列を標的とする。一例では、エピソームは、プラスミド、トランスポゾン、
可動遺伝要素(mobile genetic element)又はウイルス配列(例えば、ファージ又はプロフ
ァージ配列)である。
【0045】
一例では、標的配列は染色体配列、内在性宿主細胞配列、野生型宿主細胞配列、非ウイ
ルス染色体宿主細胞配列であり、外来性配列及び/又は非ファージ配列ではなく(すなわち
、これらの1つ又は複数又は全て)、例えば、配列は宿主細胞染色体によって含まれる抗生
物質耐性遺伝子又は必須遺伝子配列等の野生型宿主染色体細胞配列である。一例では、配
列は、宿主細胞プラスミド配列であり、例えば、抗生物質耐性遺伝子配列である。
【0046】
任意選択で、該又は各宿主細胞プロトスペーサー配列は、NGG、NAG、NGA、NGC、NGGNG
、NNGRRT又はNNAGAAWプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)、例えば、AAAGAAA又はTAAGAAA
PAM(これらの配列は5'から3'記載されている)に隣接する。一実施形態では、PAMは、プ
ロトスペーサー配列の3'端に直接隣接する。一例では、Casは、S.アウレウス(S aureus)
、S.サーモフィルス又はS.ピオゲネスCasである。一例では、CasはCpf1である及び/又はP
AMはTTN又はCTAである。
【0047】
任意選択で、システムは、タイプI(例えば、タイプI-A、I-B、I-C、I-D、I-E、又はI-F
) CRISPR/Casシステムである。任意選択で、システムは、タイプII CRISPR/Casシステム
である。任意選択で、システムは、タイプIIII CRISPR/Casシステムである。任意選択で
、システムは、タイプIV CRISPR/Casシステムである。任意選択で、システムは、タイプV
CRISPR/Casシステムである。任意選択で、システムは、タイプVI CRISPR/Casシステムで
ある。
【0048】
任意選択で、CRISPRアレイは、プロトスペーサー配列をターゲティングするための、複
数コピーの同じスペーサーを含む。任意選択で、本発明のベクター又は複数のベクターが
提供され、ベクターは、宿主細胞プロトスペーサー配列ターゲティングのための、前記gR
NAコード配列の複数のCRISPRアレイを含む。任意選択で、該又は各ベクターは、crRNA(例
えば、gRNA)をコードする、2、3又はそれ以上のコピーの核酸配列を含み、コピーは、宿
主細胞配列(例えば、ビルレンス、耐性又は必須遺伝子配列)のターゲティングのための同
じスペーサー配列を含む。
【0049】
一例では、少なくとも2つの標的配列は、Casによって改変され、例えば、抗生物質耐性
遺伝子及び必須遺伝子である。この様式での複数のターゲティングは、エスケープ変異体
宿主細胞の進化を減少させるのに有用でありうる。
【0050】
一例では、Casは、野生型内因性宿主細胞Casヌクレアーゼである。一例では、プロトス
ペーサー標的改変又は切断は、dsDNA Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9、例えば、spCas9又
はsaCas9)によって実施され、切断の修復は非相同末端連結(NHEJ)による;代替的に、Cas
は、エキソヌクレアーゼ又はCas3である。一例では、Casは、切断するためのCasヌクレア
ーゼ、妨害するためのdeadCas(dCas)又は標的を活性化するための転写活性化因子にコン
ジュゲートしたdCas(例えば、dCas3又はdCas9)である。
【0051】
一例では、アレイ、gRNAコード配列又はベクターは、アレイ又は、gRNAコード配列の反
復配列と共に細胞において天然で見出されるCasエンドヌクレアーゼコード配列と組み合
わされない。
【0052】
例えば、tracrRNAを使用しないタイプのCasシステムに関して、tracrRNA配列を本発明
のアレイ又はベクターから省略してもよい、又は内因性tracrRNAは、ベクターによってコ
ードされたcrRNAと共に使用されてもよい。
【0053】
一例では、宿主プロトスペーサー配列は、少なくとも5、6、7、8、9、10、20、30又は4
0連続ヌクレオチドを含む。
【0054】
一例では、該又は各ベクターは、宿主におけるcrRNA又はgRNAの転写に関して機能的な
外来性プロモーターを含む。
【0055】
一例では、該又は各アレイ反復は、宿主のCRISPR/Casシステムによって含まれる宿主ア
レイにおける反復と同一(又は少なくとも90、95若しくは98%同一)であり、ベクターアレ
イは、宿主CRISPR/CasシステムのCasヌクレアーゼによって認識されるPAMを含まない。こ
れは、gRNAの反復配列に準用される。これは、CRISPRアレイが、宿主標的配列を標的とす
るのに内在性宿主Casを使用することを単純に可能とするため、有利である。次に、これ
は、アレイが宿主機構による使用のために合わせられ、故に、宿主細胞において機能する
ことを助けるため、能率的である。これは、加えて又は代替的に、ベクターコード化アレ
イ配列を内因性コード化tracrRNAと組み合わせることを可能とし、その理由は、CRISPRア
レイ反復が、プレ-crRNAの産生及び宿主標的配列にハイブリダイズする成熟crRNAへのプ
ロセシングのために、内因性tracrRNAにハイブリダイズするからである。後者の複合体は
、次に内因性Casヌクレアーゼ(例えば、Cas3)をガイドすることができる。この実施形態
は、それ故に、CRISPRアレイを含有しているが、tracrRNA-及び/又はCasヌクレアーゼ-コ
ード配列を含まないベクター(例えば、パッケージ化ウイルス又はファージ)の単純な構築
の柔軟性を提供する。これは、ベクター構築にとってより簡単であり、またベクター、特
にウイルスベクター(例えば、ファージ)の容量制限を考慮して有用であり、ベクター(例
えば、ウイルス又はファージ)における有用な空間も解放する。更なる空間が、例えば、
宿主遺伝子不活性化又は宿主における発現のための所望の非宿主配列における取り込みの
ために、例えば、改変のために宿主ゲノムを標的とするために、例えば、アレイにおいて
より多くのスペーサーの包含を可能にするために、有用でありうる。追加的に又は代替的
に、空間を、ベクターにおける複数のCRISPRアレイの包含に使用できる。これらは、例え
ば、第一アレイが第一CRISPR/Casタイプ(例えば、タイプII又はタイプII-A)のものであり
、第二アレイが第二タイプ(例えば、タイプI又はIII又はタイプII-B)のものである場合の
配置であり得る。追加的に又は代替的に、アレイは、宿主における異なるCasヌクレアー
ゼを使用できた(例えば、一方のアレイは宿主Casヌクレアーゼと共に作動可能であり、第
二アレイは外来性Casヌクレアーゼ(すなわち、ベクターコード化ヌクレアーゼ)又は異な
る宿主Casと共に作動可能である)。これらの態様は、一旦ベクターが導入されたら宿主に
おけるターゲティングのための機構を提供し、これは、宿主がその後に広範囲の要素を標
的とする必要がありうるため、ベクターの宿主耐性減少に有益である。例えば、宿主が第
一CRISPRアレイ配列に基づく新しいスペーサーを獲得できたとしても、第二CRISPRアレイ
はなお宿主において宿主細胞におけるそれぞれの標的配列の標的として機能できる。それ
故、この実施形態は、ベクターへの宿主適応の減少に有用である。
【0056】
任意選択で、本発明のベクターは、宿主標的配列にハイブリダイズするための複数(例
えば、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100又
はそれ以上)のコピーのスペーサーを含む、1、2、3、4、5、6又はそれ以上の本発明のCRI
SPRアレイ又はgRNAコード配列を含む。これは、全てのこれらのスペーサーが宿主細胞に
おいて組換えにより喪失される機会を減少させる。この態様の更なる適用において、CRIS
PRアレイは、1つ又は複数(例えば、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、
55、60、70、80、90又はそれ以上)のスペーサーコピーを含む第一アレイ及び1つ又は複数
(例えば、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90又は
それ以上)の同一スペーサーコピーを含む第二アレイを含み、第一アレイにおけるスペー
サーコピーは、各々第一反復に隣接しており、第二アレイにおける同一スペーサーコピー
は、各々第二反復に隣接しており、第一反復は、第二反復と異なる。これは有益であり、
第一反復が選択されて第一(例えば、脱抑制された)宿主Casヌクレアーゼによって認識さ
れうる及び第二反復が第二Cas(例えば、ベクターコード化又は宿主Cas)によって認識され
て1種を超えるアレイが関与する宿主適応の機会を減少させる。
【0057】
任意選択で、本発明のベクター又は複数のベクターが提供され、各ベクターは、プラス
ミド、コスミド、ウイルス、ビリオン、ファージ、ファージミド又はプロファージである
。例えば、本発明は、本発明の複数のベクターを含む複数のバクテリオファージを提供し
、例えば、ベクターは同一である。一例では、ベクターは、ウイルスベクターである。ウ
イルスベクターは、特に限られた外因性DNA挿入容量を有し、故に、ウイルスパッケージ
ング容量を考慮する必要がある。コートタンパク質及びポリメラーゼを発現させるため等
の、必要不可欠なウイルス機能をコードする配列のために余地を残す必要がある。一例で
は、ベクターは、ファージベクター又はAAV若しくはレンチウイルスベクターである。フ
ァージベクターは、宿主が細菌細胞である場合に有用である。一例では、ベクターは、古
細菌宿主細胞に感染可能なウイルスである。
【0058】
任意選択で、ベクター成分(a)及び(b)は、宿主細胞内及び/又は宿主細胞間を伝達可能
なトランスポゾンによって含まれる。トランスポゾンは、US20160333348、GB1609811.3及
び全ての米国の同等の出願に記載されるトランスポゾンであってもよく;これらの開示(こ
れらの特定のトランスポゾンの開示を含む)は、その全体において、そこで開示される1つ
又は複数の開示の、本願の1つ又は複数の請求項における潜在的な包含のために、本明細
書に組み込まれる。
【0059】
一例では、該又は各ベクターは、ナノ粒子によって又はリポソーム中に提供される。
【0060】
一例では、CRISPR/Casシステムの1つ又は複数の成分の転写が抑制される。例えば、1つ
又は複数のCas配列(例えば、Cas3、Cas9又はCpf1)の転写が抑制される。例えば、タイプI
CRISPR/CasシステムのCasA、B、C、D及びEのうちの1つ又は複数の転写が抑制され、例え
ば、CasA及び/又はCas3が抑制される。
【0061】
任意選択で、宿主細胞ゲノムのCas改変は、
a. 宿主細胞を死滅させる;
b. 細胞又はエピソームの成長又は増殖を減少させる;
c. 細胞又はエピソームの成長又は増殖を増加させる;
d. 前記プロトスペーサー配列を含む又はそれに隣接する、ヌクレオチド配列の転写を減
少させる又は防止する;又は
e. 前記プロトスペーサー配列を含む又はそれに隣接する、ヌクレオチド配列の転写を増
加させる。
【0062】
一例では、宿主細胞集団増殖阻害は、本発明のベクターに曝されていない前記宿主細胞
の増殖と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍又は10倍である
。例えば、増殖阻害は、宿主細胞の第二サンプル(単独又は混合細菌集団)のコロニー数と
比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍又は10倍宿主細胞の第一
サンプル(単独又は混合細菌集団)より低い細菌コロニー数により示され、細胞の第一サン
プルは前記ベクターにより形質転換されているが、第二サンプルは前記ベクターに曝され
ていない。一実施形態では、コロニー数は、第一サンプルが本発明のベクターに曝されて
から、12、24、36、又は48時間後に決定される。一実施形態では、コロニーは、インビト
ロで(例えば、ペトリ皿にて)固体寒天上で増殖する。したがって、増殖阻害が、標的配列
を含む細胞又は集団の増殖の減少(非処理、すなわち、対照サンプル増殖と比較して<100%
増殖)により示すことができる又はこのような増殖の完全排除であり得ることが理解され
る。一例では、宿主細胞集団の増殖は、所定期間にわたり(例えば、宿主細胞においてcrR
NA又はgRNAを組み合わせた後24時間又は48時間)少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60
%、70%、80%、90%又は95%減少され、すなわち、宿主細胞集団の増殖は、前記ベクターに
曝されていないが、それ以外は前記所定期間、同じ条件下に維持されている対照宿主細胞
集団の増殖より、少なくともこのようなパーセント少ない。一例では、増殖のパーセント
低下は、前記期間の終わり(例えば、対照サンプルの指数増殖期中期の時点)に各集団のサ
ンプルのコロニー数を比較することによって決定される。例えば、テスト集団を、0時間
にベクターに曝した後、テスト集団及び対照集団のサンプルを採取して、各サンプルを寒
天プレートにプレーティングし、前記所定期間、同一条件下でインキュベートする。期間
の終わりに、各サンプルのコロニー数をカウントして、パーセンテージ差を計算する(す
なわち、テストコロニー数を対照コロニー数で除して、次に100を掛け、次にその結果を1
00から引いて増殖低下のパーセンテージを得る)。倍数差は、対照コロニー数を、テスト
コロニー数で除して、計算する。
【0063】
集団増殖の阻害は、それ故に、集団における宿主細胞数の増殖の減少により示され得る
。これは、脱抑制又は活性化CRISPR/Casシステムによる及び/又は宿主細胞における標的
プロトスペーサー配列におけるシステムの作用による宿主細胞増殖(例えば、分裂及び/又
は細胞増殖)のダウンレギュレーションによる細胞死滅に起因し得る。本明細書中に開示
される方法、使用、治療又は予防の一実施形態では、ヒト若しくは動物対象又は環境の宿
主細胞負荷が減少され、それによって、疾患又は状態が、治療される(例えば、減少され
る又は排除される)又は予防される(すなわち、疾患又は状態を発症する対象のリスクが減
少される又は排除される)又は環境が処理される。
【0064】
一例では、成分(a)及び(b)は、代わりに、前記Cas改変が起こる宿主細胞へのベクター
の導入のために、異なる第一及び第二ベクターによって含まれる。
【0065】
一例では、脱抑制因子は、タンパク質又はRNAである。例えば、脱抑制因子は、抑制因
子をコードする宿主細胞遺伝子によって含まれるヌクレオチド配列に相補的なサイレンシ
ングRNA(siRNA)であり、例えば、配列は、ORF又は調節エレメント、例えば、遺伝子のプ
ロモーター又はエンハンサーの配列である。
【0066】
一例では、抑制因子は、抗CRISPR又は抗Cas(例えば、抗Cas3又は抗Cas9)タンパク質、
核酸又はRNA(例えば、宿主細胞によって含まれるプロファージによってコードされる)で
ある。例えば、抑制因子は、acr、acrIIA2及びacrIIA4、aca1及びaca2遺伝子又はそのオ
ルソログ、ホモログ若しくはパラログによってコードされる;並びに任意選択で、脱抑制
因子は、宿主細胞における脱抑制因子遺伝子配列に相補的であり、それによって、遺伝子
の発現をサイレンシングする、siRNAである。一例では、抑制因子は、AcrIIAタンパク質
、例えば、AcrIIA2及び/又はAcrIIA4である。
【0067】
H-NSは、しばしば他の核様体関連タンパク質(NAP)との組合せで作用するので、関連す
る調節タンパク質、例えば、StpA、LRP及びFISの結合が分析されている(Luijsterburgら
、2006;Dorman,2009)。抑制因子は、H-NS(核様体構造化タンパク質)、StpA、FIS、LRP((
ロイシン応答性調節タンパク質)又はCRP(cAMP受容体タンパク質);又は宿主細胞において
抑制因子として機能する、そのオルソログ、若しくはパラログ、ホモログ若しくは機能的
な均等物であってもよい。例えば、抑制因子は、大腸菌H-NS、StpA、FIS、LRP又はCRPタ
ンパク質のオルソログ、又はパラログ、ホモログ又は機能的な均等物であってもよい。一
例では、CRISPR/Casシステムは、1種を超える、このような抑制因子、例えば、H-NS及びL
RP;又はH-NS及びCRPによって抑制される。
【0068】
脱抑制因子は、宿主細胞において、それぞれ、H-NS、StpA、LRP又はCRP抑制因子(例え
ば、野生型宿主又は大腸菌H-NS、StpA、LRP又はCRP)との複合体を形成可能であり、CRISP
R/Casシステムの抑制を防止する又は減少させる、変異体H-NS、StpA、LRP又はCRPであっ
てもよい。脱抑制因子は、(例えば、インビトロで又は宿主細胞若しくは大腸菌において)
、それぞれ、野生型宿主又は大腸菌H-NS、StpA、LRP又はCRPとの複合体を形成可能である
、変異体H-NS、StpA、LRP又はCRPであってもよい。
【0069】
一例では、抑制因子はH-NS又はStpAであり、脱抑制因子はLeuOである。
【0070】
一例では、エピソームは、プラスミドである。
【0071】
以下の定義を適用する:
ホモログ
・ 共通の祖先DNA配列から遺伝する第二遺伝子又はタンパク質に関連する、遺伝子又は
タンパク質。用語「ホモログ」は、種分化のイベントによって分離された遺伝子又はそれ
らのタンパク質産物の間の類縁関係(オルソログを参照されたい)又は、遺伝的な複製のイ
ベントによって分離された遺伝子の間の類縁関係(パラログを参照されたい)に適用され得
る。
オルソログ
・ オルソログは、種分化によって共通の先祖遺伝子又はタンパク質から進化した異なる
種における遺伝子又はタンパク質である。通常、オルソログは、進化の過程で同じ機能を
保持している。
パラログ
・ パラログは、ゲノム内での複製によって血縁関係にある遺伝子又はタンパク質である
。オルソログは、進化の過程で同じ機能を保持しているが、一方、パラログは、たとえ、
これらが当初のものと血縁関係にあるとしても、新しい機能を進化させる。
【0072】
抑制因子又は脱抑制因子自身のホモログは、宿主細胞における抑制因子又は脱抑制因子
としての活性を有する。抑制因子又は脱抑制因子自身のオルソログは、宿主細胞における
抑制因子又は脱抑制因子としての活性を有する。抑制因子又は脱抑制因子自身のパラログ
は、宿主細胞における抑制因子又は脱抑制因子としての活性を有する。
【0073】
一例では、細胞は、細菌又は古細菌細胞である。一例では、細胞は、環境、土壌、植物
、哺乳動物、ヒト、マウス、ラット、ブタ、イヌ、霊長類、サル、ヒツジ、雌ウシ、ウマ
、ネコ、反芻動物、家畜、昆虫又はトリ、例えば、ニワトリ若しくはシチメンチョウによ
って含まれ、例えば、そのマイクロバイオームによって含まれる。マイクロバイオームは
、植物の葉、植物の幹、土壌、腸、皮膚、口、肺、眼球、耳、舌、腋窩、膣、直腸、陰嚢
、陰茎又は毛髪マイクロバイオームでありうる。一例では、細胞は、脊椎動物、無脊椎動
物、哺乳動物、ヒト、げっ歯類、マウス、ラット、魚類又は昆虫細胞である。
【0074】
一例では、宿主細胞は、大腸菌細胞であり、例えば、
・ 志賀毒素産生大腸菌(STEC)(STECは、ベロ毒素産生大腸菌(VTEC)又は腸管出血性大腸
菌(EHEC)とも称されうる。この病原型は、食品媒介の大流行と関係するニュースについて
最も一般的に耳にするものである);
・ 腸内毒素原性大腸菌(ETEC);
・ 腸管病原性大腸菌(EPEC);
・ 腸管凝集性大腸菌(EAEC);
・ 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC);及び
・ 散在性付着性大腸菌(DAEC)から選択される。
【0075】
2011年にヨーロッパにおいて大きい大流行を引き起こした志賀毒素産生大腸菌O104:H4
株は、頻繁にEHECと称された。北アメリカにおいて最も一般的に同定されるSTECは、大腸
菌O157:H7である。一例では、細胞は、大腸菌O104:H4又は大腸菌O157:H7である。
【0076】
内因性CRISPR/Casシステムは、細胞が高密度にパックされるときに、例えば、ファージ
侵入又はプラスミド水平伝播と戦うために、定常期に宿主細胞において、幾分か脱抑制及
び/又はアップレギュレートされ得ることが観察されている。本発明のベクターの一例で
は、成分(a)及び/又は(b)は、定常増殖期中の宿主細胞における発現のためのプロモータ
ーに作動可能に連結される。高密度にパックされた細胞はバイオフィルムに存在しうる、
故に、本発明のベクターの一例では、成分(a)及び/又は(b)は、バイオフィルム(例えば、
環境における又はヒト若しくは動物体における、例えば、肺又は腸バイオフィルム)によ
って含まれる宿主細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結される。
【0077】
またプロトスペーサーターゲティング、又は代替的に、指数増殖期(例えば、内因性CRI
SPR/Casシステムが抑制されうる)を可能にするために、本発明のベクターの一例では、成
分(a)及び/又は(b)は、指数増殖期中の宿主細胞における発現のためのプロモーターに作
動可能に連結される。本発明のベクターの一例では、成分(a)及び/又は(b)は、誘導期中
の宿主細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結される。
【0078】
転写調節因子CsgDは、バイオフィルム形成に中心的なものであり、curli構造及びエク
スポートタンパク質及びジグアニル酸シクラーゼadrA(これは間接的にセルロース産生を
活性化する)の発現を制御する。Chirwa NT及びHerrington MB、Microbiology. 2003 Feb;
149(Pt 2):525~35、「CsgD、a regulator of curli及びcellulose synthesis、also reg
ulates serine hydroxymethyltransferase synthesis in Escherichia coli K-12」は、
相同的なCsgD及びAgfDタンパク質が、FixJ/UhpA/LuxRファミリーのメンバーであること並
びにそれぞれ大腸菌及びサルモネラ・エンテリカ血液型亜型チフィムリウム(Salmonella
enterica serovar Typhimurium)によってcurli(薄い凝集性線維)及びセルロース産生が調
節されると提唱されることを説明している。CsgDがglyAをアップレギュレートしてcurli
の合成を促進することが提唱される。本発明のベクターの一例では、成分(a)及び/又は(b
)は、宿主細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結され、プロモーター
は、CsgD又はAgfD、例えば、大腸菌CsgD又はAgfDによって制御される。これは、例えば、
バイオフィルム中の宿主細胞における又はバイオフィルムの生物発生に関与するベクター
成分の発現を促進させるのに有用でありうる。任意選択で、宿主細胞は、大腸菌及びサル
モネラ・エンテリカ血液型亜型チフィムリウム細胞である。
【0079】
遺伝子rpoS(RNAポリメラーゼ、シグマS)は、大腸菌における37.8kDのタンパク質である
、シグマ因子シグマ-38(σ38、又はRpoS)をコードする。シグマ因子は、細菌における転
写を調節するタンパク質である。シグマ因子は、異なる環境の状態に応答して活性化する
ことができる。rpoSは指数期後期に転写され、RpoSは定常期遺伝子の一次調節因子である
。RpoSは、一般ストレス応答の中心的な調節因子であり、逆行性及び順向性様式の両方で
作動し:それは、細胞が、困難な環境(environmental challenges)で生存することを許容
するばかりでなく、引き続くストレスに対して細胞に準備もさせる(干渉効果)。本発明の
ベクターの一例では、成分(a)及び/又は(b)は、宿主細胞における発現のためのプロモー
ターに作動可能に連結され、プロモーターは、シグマ因子、例えば、RpoS、例えば、大腸
菌RpoSによって調節される。これは、例えば、シグマ因子及びRpoS調節がアップレギュレ
ートされる増殖期中の宿主細胞におけるベクター成分の発現を促進させるのに有用であり
うる。任意選択で、宿主細胞は、大腸菌及びサルモネラ・エンテリカ血液型亜型チフィム
リウム細胞である。大腸菌におけるrpoSの転写は、染色体rpoSpプロモーターによって主
に調節される。rpoSpは、rpoS mRNAの転写を促進し、リッチ培地で成長する細胞において
定常期に入る際に誘導される。それ故、一例では、ベクターによって含まれる該又は各前
記プロモーターが、操作して、定常期中に宿主細胞において、その成分(a)又は(b)の転写
をアップレギュレートする、例えば、該又は各プロモーターはrpoSpプロモーターである
【0080】
防御機構として、細菌宿主環境は、病原体、例えばファージの侵入に敵対的である。し
たがって、感染は、病原性細菌にとってストレス性のイベントであり得、ビルレンス遺伝
子の制御は病原体による感染のタイミングと時間的に相関し得る。サルモネラにおけるRp
oS-依存的なビルレンス遺伝子の発見は、ストレス応答の一般的な調節因子としてのRpoS
と一貫性があり:この細菌中のビルレンスプラスミド中に見出されたspv遺伝子はRpoSによ
って制御される、また興味深いことに、脾臓及び肝臓等の深リンパ組織中での増殖に要求
される。それ故、一実施形態では、ベクターは、宿主細胞(例えば、大腸菌又はサルモネ
ラ細胞)に感染可能なバクテリオファージ等のウイルスであり、成分(a)及び/又は(b)は、
宿主細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結され、プロモーターは、Rp
oS、例えば大腸菌RpoSによって調節される。任意選択で、宿主細胞は、ヒト又は動物によ
って含まれる脾臓又は肝臓細菌集団によって含まれる。任意選択で、ベクターは、状態又
は疾患、例えば脾臓、肝臓又は免疫関連疾患又は状態を治療する又は予防するための前記
ヒト又は動物に対する投与のためである。一例では、該又は各プロモーターは、ビルレン
ス遺伝子、例えば、宿主細胞ビルレンス遺伝子、例えば、spv遺伝子のプロモーターであ
る。
【0081】
任意選択で、ヌクレオチド配列(a)は、宿主細胞における配列の発現のための構成的な
プロモーター又は強力なプロモーターを含む。
【0082】
任意選択で、ヌクレオチド配列又はアレイ(b)は、宿主細胞における配列又はアレイの
発現のための構成的なプロモーター又は強力なプロモーターを含む。
【0083】
任意選択で、(a)及び(b)は、同じオペロンによって含まれる又は細胞において作動可能
な共通の発現制御(例えば、同じプロモーター)の制御下にある。
【0084】
任意選択で、プロモーターは、宿主細胞における発現のための強力な及び/又は構成的
なプロモーターである。
【0085】
任意選択で、宿主細胞は、野生型宿主細胞であり、例えば、ベクターは、天然環境又は
ヒト若しくは動物マイクロバイオームにおける使用のためである。
【0086】
任意選択で、ベクターは、発現可能なhtpG配列を含み、例えば、宿主は、例えば、ヒト
又は動物マイクロバイオームによって含まれる大腸菌宿主である。HtpGは、大腸菌におけ
る定常状態Cas3タンパク質レベルを37℃で増加させる。したがって、この実施形態は、ヒ
ト又は動物によって含まれる(例えば、その腸マイクロバイオームによって含まれる)大腸
菌等の宿主細胞を改変するため特に有用である。一例では、抑制されるCasは、Cas3であ
る。
【0087】
一実施形態では、以下が提供される
宿主細胞への導入のための核酸ベクターであって、宿主細胞は、Cascade及び Cas3を含
むCRISPR/Casシステムを含み、Cascadeは、宿主細胞において(例えば、H-NSによって)抑
制され、ベクターは、
(i)前記Cascade抑制の脱抑制因子(例えば、LeuO)をコードする発現可能なヌクレオチド
配列;及び
(ii)宿主細胞における脱抑制Cascadeと共に機能できる、Cas3をコードする発現可能な
ヌクレオチド配列を含み、;ここで、ヌクレオチド配列は、宿主細胞において発現可能で
あり、それによって、脱抑制因子は、Cascadeを脱抑制又は活性化し、それによって、Cas
cadeは、脱抑制因子の存在下で、Cas3と共に機能して、宿主細胞ゲノムのプロトスペーサ
ー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロトスペーサー配列を改変す
る、ベクター;
或いは
Cascade及びCas3を含むCRISPR/Casシステムを含む、宿主細胞への導入のための核酸ベク
ターであって、Cascadeは、宿主細胞において(例えば、H-NSによって)抑制され、ベクタ
ーは
(i)前記Cascade抑制の脱抑制因子(例えば、LeuO)をコードする発現可能なヌクレオチド
配列;及び
(ii)宿主細胞における脱抑制Cascadeと共に機能できる、Cas3をコードする発現可能な
ヌクレオチド配列を含み;ここで、ヌクレオチド配列は、宿主細胞において発現可能であ
り、それによって、脱抑制因子は、Cascadeを脱抑制又は活性化し、それによって、Casca
deは、脱抑制因子の存在下で、Cas3と共に機能して、宿主細胞ゲノムのプロトスペーサー
配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロトスペーサー配列を改変する
、ベクター。
【0088】
任意選択で、(i)及び(ii)のヌクレオチド配列は、同じオペロンによって含まれる又は
細胞において作動可能な共通の発現制御(例えば、同じプロモーター)の制御下にある。
【0089】
任意選択で、配列(i)及び(ii)並びにCRISPRアレイ又は前記gRNAをコードする配列は、
宿主細胞における一緒の脱抑制因子、Cas3及びアレイ又はgRNAの発現のために、宿主細胞
への導入のための、2つ以上の異なるベクターによって含まれる。
【0090】
一態様は、以下を提供する:
細菌又は古細菌宿主細胞への導入のための、(任意選択で、本発明の任意の他の配置、例
、実施形態又は態様に従う)核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑制因子によ
って天然で抑制された内因性CRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b)各crRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり、宿主細胞ゲ
ノムのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロトス
ペーサー配列を改変する;細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイ;
及び/又は細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)を各々コー
ドする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み;
ここで、抑制因子は、細胞ゲノムによってコードされるH-NS、StpA、LRP又はCRP又はそ
のホモログ、又はオルソログ又は機能的な均等物(例えば、大腸菌K12 H-NS、StpA、LRP又
はCRPのホモログ、オルソログ又は機能的な均等物)である;及び
ここで、脱抑制因子は、抑制因子又は大腸菌K12 H-NS、StpA、LRP若しくはCRPとの複合
体を形成可能である、LeuO又はそのホモログ、若しくはオルソログ若しくは機能的な均等
物(例えば、大腸菌K12 LeuOのホモログ、オルソログ若しくは機能的な均等物);或いは、
抑制因子との複合体を形成可能である、H-NS、StpA、LRP又はCRPの変異体(例えば、大腸
菌K12 H-NS、StpA、LRP又はCRPの変異体)である、ベクター。
【0091】
一例では、抑制因子は、CRISPR/Casシステムの1つ又は複数の配列(例えば、プロモータ
ー配列、例えば、抑制Casのプロモーター)を阻害、立体的にブロック又は結合して、細胞
におけるCasの転写を減少させる又は予防する。例えば、プロモーター配列は、Cas(例え
ば、CasA又はCas3)遺伝子プロモーターである。一例では、抑制因子は、タイプI CasA(cs
e1)プロモーターに対する結合に関して前記H-NS、StpA又はCRPと競合可能である。一例で
は、抑制因子は、タイプI(例えば、タイプI-B又は-F)Cas3プロモーターに対する結合に関
して前記H-NS、StpA又はCRPと競合可能であり、例えば、これは、標準的な競合アッセイ
、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)又はELISAを使用してインビトロで決定することがで
きる。一例では、抑制因子は、σ70-依存性プロモーター配列、Pcispr1プロモーター配列
、Pcasプロモーター配列及び/又は抗Pcasプロモーター配列を阻害、立体的にブロック又
は結合し、例えば、宿主細胞は大腸菌細胞である。
【0092】
一例では、脱抑制因子は、LysR-タイプ調節因子タンパク質である。一例では、脱抑制
因子は、タイプI CasA(cse1)又はCas3プロモーター(例えば、大腸菌K12からのプロモータ
ー)に対する結合に関してLeuOと競合可能である。例えば、これは、標準的な競合アッセ
イ、例えば、SPR又はELISAを使用してインビトロで決定することができる。一例では、抑
制因子はH-NSであり、脱抑制因子はH-NSG113Dである。
【0093】
一例では、抑制因子は、宿主細胞種のCRISPR/CasシステムのCRISPRアレイによって含ま
れるCasAプロモーターに結合し、casは、前記抑制Cas、例えば、CasA又はCas3である。
【0094】
σ70-依存性プロモーターは、大腸菌において、タイプIアレイの第一CRISPR反復配列か
らの第一(最も5')ヌクレオチドの約50bp上流で観察されている。DNaseフットプリントは
、-40から-90位の間に位置するσ70-依存性プロモーターの存在を実証しており、これはP
crispr1と呼ばれる。それ故、一例では、抑制因子は、宿主細胞のCRISPR/CasシステムのC
RISPRアレイによって含まれるσ70-依存性プロモーターの結合の配列に結合する。一例で
は、抑制因子は、宿主細胞のCRISPR/CasシステムのCRISPRアレイのσ70 RNAポリメラーゼ
転写を阻害する。
【0095】
一例では、脱抑制因子は、下記で更に論じられているようなもの等の、H-NSパラログで
ある。
【0096】
58%アミノ酸同一性を有するH-NSのパラログであるStpA(Zhang及びBelfort、1992)は、H
-NSと非常に類似するDNA結合特性を示し、その標的結合部位に同じ大きさのDNase I保護
の領域を作る。DNAに対する一般的に高い親和性と一致して(Zhangら、1996)、StpAは、H-
NSよりも幾分か低い濃度で完全な保護に到達する。LRP及びFISは、DNase I切断からのよ
り弱い保護の原因になる。一例では、抑制因子は、核様体関連タンパク質(NAP)である。
一例では、脱抑制因子は、核様体関連タンパク質(NAP)の変異体であり、その変異体は、
宿主細胞種のCRISPR/CasシステムのCRISPRアレイによって含まれる結合部位等のNAPの標
的結合部位(例えば、IGLB配列)に対する結合についてNAPと競合し、Casは、前記抑制Cas(
例えば、Cas3又はCasA)である。一例では、NAPは、StpA、LRP、FIS又はH-NSである。一例
では、抑制因子はH-NSであり、脱抑制因子は、例えば、宿主細胞における発現に関して強
力な又は構成的なプロモーターの制御下でベクターから発現されるLRP及び/又はFISであ
る。この様式で、脱抑制因子は、過剰に発現され、標的結合部位に対する結合についてH-
NSと競合排除(out-competes)しうる、更に脱抑制因子は宿主細胞におけるCas又はCascade
活性を抑制しない又はわずかに弱く抑制しうる。プロモーター(又は本明細書中の任意の
他のプロモーター)は、例えば、細菌性の構成的なプロモーターOXB17、OXB18、OXB19又は
OXB20であってもよく、好ましくは、最も強いので、後者である(http://www.oxfordgenet
ics.com/Products/Plasmids/Details/Bacterial/pSF-OXB18/OG561を参照されたい)。一例
では、宿主細胞における発現のために、プロモーターはT7プロモーターであり、ベクター
はT7 RNAポリメラーゼをコードする。
【0097】
H-NSサイレンシング及びアンチサイレンシングに影響する多数の因子が、過去に記録(N
avarreら、2007;Stoebelら、2008)に残されており、一例を挙げるとSlyA(Lithgowら、200
7;Perezら、2008)が含まれる。SlyA(いくつかの他の関連タンパク質のように)は、それら
自体、DNA標的部位と相互作用する調節因子として作用しないが、むしろH-NSとDNA結合欠
陥性ヘテロ二量体を形成し、それによって、H-NS-媒介性サイレンシングに対抗する。し
たがって、一例では、脱抑制因子は、SlyAを含む。一例では、脱抑制因子は、PhoP、PhoQ
、Crp及び/又はFnrを含む。種々の抗サイレンシング機構が観察されており、(i)局所DNA
構造のレベルを操作する、タンパク質非依存性プロセス、(ii)DNA結合タンパク質、例え
ば、Ler、LeuO、RovA、SlyA、VirB、及びAraCに関連するタンパク質、及び(iii)H-NSが、
StpA、Sfh、Hha、YdgT、YmoA又はH-NST等の完全長又は部分的パラログとヘテロマーのタ
ンパク質間複合体を形成する調節機構が関与している。RovAタンパク質は、当初、温度に
応答して、エルシニア(Yersinia)の増殖期に、インベーシンをコードする遺伝子であるin
vの陽性制御因子として同定されたSlyAのホモログである(Cathelynら、2007)。RovAは、i
nvのようにH-NSタンパク質による抑制に対する対象である遺伝子のレギュロンの転写を制
御することが現在知られている。エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocoliti
ca)におけるRovAの主要な機能が、H-NS-媒介性転写サイレンシングのアンタゴニストとし
て作用することが提唱されている(Cathelynら、2007)。したがって、一例では、脱抑制因
子は、1、2、3若しくはそれ以上のLer、LeuO、RovA、SlyA、VirB、AraC、StpA、Sfh、Hha
、YdgT、YmoA及びH-NST;又はそのホモログ、オルソログ、パラログ若しくは機能的な均等
物を含む。
【0098】
アジア型コレラの病原学的な因子である、V.コレラ(V cholerae)の主要なビルレンス因
子は、A+T-リッチな水平に伝達可能な遺伝要素内で遺伝子によってコードされる(Davis及
びWaldor、2003;McLeodら、2005;Murphy及びBoyd、2008)。これらの遺伝子がいくつかの
環境シグナルによって調節されて、それらの産物が細菌が宿主中の適切な部位に到着する
とき、発現されること及びそれらが他で抑制されることが保証される(Leeら、1999;Schil
dら、2007)。V.コレラによって発現される主要なビルレンス因子は、コレラ毒素、CTX、
及び毒素共調節ピリ線毛、Tcpである(Skorupski及びTaylor、1997)。H-NSは、それらのA+
T-リッチなプロモーターをターゲティングすることによって、これらの主要なビルレンス
因子をコードする遺伝子の転写をサイレンシングする(Nyeら、2000)。このサイレンシン
グは、ToxT調節タンパク質、AraC-様DNA結合タンパク質と対立し、これはV.コレラにおけ
る幾つかのビルレンス遺伝子プロモーターの転写を脱抑制する(Yu及びDiRita、2002)。そ
の機構は、H-NSの置き換えばかりでなく、ToxTによる転写の活性化も関与すると考えられ
る(おそらくToxTとRNAポリメラーゼの間の直接的な相互作用に起因する)(Hulbert及びTay
lor、2002;Yu及びDiRita、2002)。したがって、一例では、脱抑制因子は、ToxT(例えば、
V.コレラ ToxT)を含む。したがって、一例では、脱抑制因子は、AraC又はそのホモログ
、オルソログ、パラログ若しくは機能的な均等物を含む。後者の例は、AppY、CfaD、GadW
、GadX、HilC、HilD、PerA、RegA、Rns、UreR及びVirFである。
【0099】
DNAと核タンパク質フィラメントを形成する能力は、H-NS-媒介性転写サイレンシングに
おいて重要な役割を担う。LeuOは、遺伝物質に沿ったH-NSの重合に限界を設定することが
できるタンパク質として同定されている。サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella Typh
imurium)中のleuABCDオペロンの発現を支配するプロモーターリレーにおける転写活性化
因子として同定されたのがLysR-様DNA結合タンパク質である(Chen及びWu、2005;Chenら、
2005;Fang及びWu、1998)。したがって、一例では、脱抑制因子は、LysR又はそのホモログ
、オルソログ、パラログ若しくは機能的な均等物を含む。
【0100】
他の核様体関連タンパク質は、DNAに対するH-NS結合をアンタゴナイズすることができ
る。磁気ピンセット及び原子間力顕微鏡法での実験により、大量のHUタンパク質が、DNA
中の同じ結合部位に対してH-NSと競合し、H-NS-凝縮プロモーター領域を開放できること
が示唆されている(van Noortら、2004)。Fisタンパク質は、例えば、rRNA遺伝子プロモー
ターでのH-NS抑制をアンタゴナイズするとも報告されており、ここでは、その結合部位が
、H-NSの結合部位の中に分布する(Schneiderら、2003)。Fisレベルが低いときの増殖の後
期に、H-NSが、rRNA遺伝子プロモーターを抑制する(Afflerbachら、1998)。核様体関連タ
ンパク質HU並びにRNAポリメラーゼのRpoSストレス及び定常期シグマ因子は、大腸菌にお
けるH-NS-抑制proUプロモーターで陽性に調節する役割を有すると記載されており(Manna
及びGowrishankar、1994)、H-NSとRpoSレギュロンの間のより広い重複が記載されている(
Barthら、1995)。これは、ストレスを受けている細菌においてH-NS-媒介性抑制を克服す
ることにおけるRpoSに関する役割を示しうる。したがって、一例では、脱抑制因子は、HU
、RpoS及び/若しくはFis;又はそのホモログ、オルソログ、パラログ若しくは機能的な均
等物を含む。
【0101】
ある魅力的なタンパク質のグループは、H-NSのオリゴマー化ドメインに対して相同性を
有する小さいポリペプチドで構成されている。このドメインに最も近いアミノ酸配列類似
性を有するものは、H-NSTファミリーのメンバーであり、そのように呼ばれる理由は、そ
れらが核酸結合及びリンカードメインを欠くH-NS切断型に似ているからである(Williamso
n及びFree、2005)。これらの切断型をコードする遺伝子は、腸管病原性大腸菌(EPEC)及び
尿路疾患性大腸菌を含む様々な病原性腸内細菌の病原性アイランド(pathogenicity islan
ds)中に検出されている。EPEC、H-NST(EPEC)からのタンパク質は、H-NSと同時精製される
。このタンパク質がH-NSの能力に干渉して大腸菌におけるproUオペロンを抑制することが
できる。したがって、一例では、脱抑制因子は、H-NST;又はそのホモログ、オルソログ、
パラログ若しくは機能的な均等物を含む;例えば、抑制因子は、H-NS又はStpAである。
【0102】
H-NSと直接的に相互作用する小さいタンパク質をコードする遺伝子は、祖先の染色体及
び水平方向で獲得されたアイランドに見出される。エルシニアのYmoAタンパク質は、Y.エ
ンテロコリチカにおいてビルレンス遺伝子発現の制御因子として当初認識されていた(Cor
nelisら、1991)。それは、Hhaタンパク質(大腸菌における溶血素遺伝子発現のモジュレー
ターとして最初に発見された)に関連し、2つのタンパク質は、互いに機能的に置き換える
ことができる(Balsalobreら、1996;Mikulskis及びCornelis、1994)。Hhaタンパク質は、
その効果を溶血素遺伝子発現に発揮するためにH-NSと相互作用しなければならない;YmoA
もH-NSと相互作用し、この関係性は、エルシニアからのH-NSタンパク質の単離に活用され
た(Nietoら、2000 、2002)。YmoAの溶液構造は、核磁気共鳴分光学を使用して解明され
た(McFeetersら、2007)。結果は、YmoA(及びHha)が、H-NSの独立オリゴマー化ドメインと
認めるべきであるとの観点に重きをおく。潜在的に、そのタンパク質が、オリゴマー化し
てYmoA-H-NS及びHha-H-NSヘテロマーを産生しうる。YmoA及びHhaパートナーにおける核酸
-結合ドメインの非存在は、抑制複合体の構造を損なわせる(又は少なくとも改変する)、D
NA-タンパク質-DNA架橋に参加するヘテロマーの不全をもたらしうる。Hha-様タンパク質
のパラログの発見により、一層の複雑性が加えられることになった。ydgT遺伝子は、大腸
菌及びサルモネラにおいてHha-様タンパク質をコードし、H-NS及びH-NSパラログ、StpAタ
ンパク質と相互作用することができる(Paytubiら、2004)。したがって、一例では、脱抑
制因子は、YmoA及び/又はHha及び/又はydgT;或いはそのホモログ、オルソログ、パラログ
若しくは機能的な均等物を含む;例えば、抑制因子は、H-NS又はStpAである。
【0103】
全てのH-NSパラログが、H-NSとの直接的なタンパク質間相互作用によって作用すると考
えられるわけではない。LerDNA結合タンパク質は、腸管出血性大腸菌(EHEC)及びEPECのLE
E(腸細胞消滅の座位)病原性アイランドによってコードされる。それが、アイランドにお
ける主要なビルレンスオペロンの転写を、37℃でH-NSのサイレンシング活性と対立させる
ことによって活性化する(Barbaら、2005;Bustamanteら、2001;Haackら、2003;Umanskiら
、2002)。Ler及びH-NSは部分的にパラログであり、そのオリゴマー化ドメインが高度に発
散型のコイルドコイル(divergent coiled-coils)であり;Ler及びH-NSがヘテロ二量体を形
成するとの証拠は存在しない。代わりに、Lerは、H-NSを置き換えると考えられる(Haack
ら、2003)。それはまた、LEE外側で遺伝子発現に作用する(Elliottら、2000)。例えば、L
erは、EHECにおけるlpfオペロンでH-NSのサイレンシング活性に対抗し、長い極性の海馬
采をコードする(Torresら、2007)。それ故、そのH-NSに対する相同性にもかかわらず、Le
rはむしろVirB又はSlyAのように作用する。したがって、一例では、脱抑制因子は、Ler;
又はそのホモログ、オルソログ、パラログ若しくは機能的な均等物を含む;例えば、抑制
因子は、H-NS又はStpAである。
【0104】
バクテリオファージT7からのgp5.5タンパク質は、H-NSに結合し、不活性化し、それに
よって、ファージの繁殖を支持することが知られている(Liu及びRichardson,1993)。した
がって、一例では、脱抑制因子は、gp5.5;又はそのホモログ、オルソログ、パラログ若し
くは機能的な均等物を含む;例えば、抑制因子は、H-NS又はStpAである。
【0105】
誰かが、なぜCRISPR-casシステムは隠れている(cryptic)のか問うかもしれない。その
理由は、Casタンパク質が外来のDNAスペーサーの組み込みに関与するので、細胞は、宿主
DNAエレメントが誤って組み込まれることを回避しなければならないからである。cas遺伝
子の定常発現は、細胞に対して確実に有害でありうる。したがって、cas遺伝子発現を必
要とされるまでサイレントに維持する、機構が存在しなければならない。本発明者らのデ
ータは、H-NSが、この種の制御を担う少なくとも1つの重要な成分であることを示唆して
いる。それ故、1つの態様において、本発明は、本明細書に開示される任意のベクター(又
はそのようなベクターを使用する使用又は方法、又は組成物)を提供する、但し、ベクタ
ーがcrRNA又はgRNAをコードするヌクレオチド配列を含まない或いはCRISPRアレイを含ま
ないが、ベクターが1つ又は複数の前記脱抑制因子をコードする(例えば、抑制因子はH-NS
である)ものを除く。この態様において、細胞における脱抑制因子の発現は、宿主細胞に
おける内因性Cas発現(例えば、Cas3及び/又はCascade Cas、例えば、CasA)を脱抑制又は
活性化し、そのような発現は、改変(例えば、宿主DNA、例えば、染色体DNAの切断)を引き
起こし、これが細胞を死滅させ又は細胞成長又は増殖を減少させる。それは、宿主細胞に
おける発現のための強力な及び/又は構成的なプロモーターからのベクターにおいてコー
ドされる各脱抑制因子にとって有利でありうる。高レベルの脱抑制因子発現は、抑制因子
、例えば、H-NSを置き換え、内因性Casに宿主細胞の染色体又は他のDNAの切断を引き起こ
させ、それによって、宿主細胞を死滅させ又はその成長若しくは増殖を減少させうる。
【0106】
例えば、ベクターは、細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイを
含まない;及び細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)を各々
コードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含まない。例えば、ベクターは、crRNA又は
gRNAをコードしない。これは、脱抑制が、宿主細胞における内因性Casヌクレアーゼ活性
を十分に活性化する場合に、有用であり得、それによって、ヌクレアーゼ活性は、宿主細
胞を死滅させる或いは宿主細胞成長又は増殖を阻害する。例えば、抑制因子はH-NS又はSt
pAであり、脱抑制因子はLeuO又は本明細書に開示される任意の他の脱抑制因子である。例
えば、脱抑制因子の発現は、宿主細胞における発現のための強力な及び/又は構成的なプ
ロモーターの制御下にある。
【0107】
一例では、本発明は、以下を提供する:
ヒト又は動物対象における疾患又は状態を治療する又は予防する方法であって、ベクター
を対象に投与する工程を含み、対象のマイクロバイオームによって含まれる宿主細胞(例
えば、大腸菌、サルモネラ、又はS.エンテリカ血液型亜型チフィムリウム)は、細胞の内
因性の脱抑制Casによって改変され、治療又は予防が実施され;ここで、
(i)各細胞は、細胞における抑制因子(例えば、H-NS及び/又はStpA)によって抑制される(
例えば、Cascade Cas、Cas3又はCas9が抑制される)、CRISPR/Casシステムを含み、
(ii)ベクターは、細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子(例え
ば、LeuO)をコードするヌクレオチド配列を含み、配列は、(例えば、強力な及び/又は構
成的なプロモーターの制御下で)脱抑制因子を産生するために、細胞において発現可能で
あり;及び
(iii)ベクターは、細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイを欠い
ており;及び細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコード
する1つ又は複数のヌクレオチド配列を欠いている、方法。
ヒト又は動物対象における疾患又は状態を治療する又は予防する方法であって、ベクター
を対象に投与する工程を含み、対象のマイクロバイオームによって含まれる宿主細胞(例
えば、大腸菌、サルモネラ、又はS.エンテリカ血液型亜型チフィムリウム)は、細胞の内
因性の脱抑制Casによって改変され、治療又は予防が実施され;ここで、
(i)各細胞は、細胞におけるH-NS及び/又はStpAから選択される抑制因子によって抑制され
る、CRISPR/Casシステムを含み、Cascade Cas、Cas3又はCas9が抑制され、
(ii)ベクターは、細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコー
ドするヌクレオチド配列を含み、配列は、強力な及び/又は構成的なプロモーターの制御
下で脱抑制因子を産生するために、細胞において発現可能であり;及び
(iii)ベクターは、細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイを欠い
ており;及び細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコード
する1つ又は複数のヌクレオチド配列を欠いている、方法。
野生型の細菌又は古細菌細胞(例えば、大腸菌又はサルモネラ細胞)を死滅させる方法であ
って、細胞が、Cas3及びCascadeタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む内因性C
RISPR/Casシステムを含み、Cas3及び/又はCascadeが、細胞において天然で抑制され、(i)
細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のための、CRISPRアレイ;又は(ii)それぞれのガ
イドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を
細胞に導入することなく、前記Cas3及び/又はCascadeを脱抑制する工程;又は宿主細胞を
操作することなく、crRNA又はガイドRNAをコードする工程を含む、方法。一例では、方法
は、宿主細胞に核酸ベクターを導入する工程を含み、ここで、
(i)細胞は、細胞におけるH-NS及び/又はStpAから選択される抑制因子によって抑制され
る、CRISPR/Casシステムを含み、Cascade Cas、Cas3又はCas9が抑制され、
(ii)ベクターは、細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコ
ードするヌクレオチド配列を含み、配列は、強力な及び/又は構成的なプロモーターの制
御下で脱抑制因子を産生するために、細胞において発現可能であり;及び
(iii)ベクターは、細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイを欠
いており;及び細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコー
ドする1つ又は複数のヌクレオチド配列を欠いている。
本明細書に記載の宿主細胞への導入のための複数の核酸ベクターを含む医薬であって、任
意選択で、ヒト又は動物における疾患又は状態を治療する又は予防するための、1つ又は
複数の医療薬(例えば、抗がん医薬)又は抗生物質(例えば、プロトスペーサー配列が、宿
主細胞抗生物質耐性遺伝子によって含まれる)を更に含み;ここで、
(i)各細胞は、細胞におけるH-NS及び/又はStpAから選択される抑制因子によって抑制さ
れる、CRISPR/Casシステムを含み、Cascade Cas、Cas3又はCas9が抑制され、
(ii)ベクターは、細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコ
ードするヌクレオチド配列を含み、配列は、強力な及び/又は構成的なプロモーターの制
御下で脱抑制因子を産生するために、細胞において発現可能であり;及び
(iii)ベクターは、細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイを欠
いており;及び細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコー
ドする1つ又は複数のヌクレオチド配列を欠いている、医薬。
【0108】
一例では、該又は各宿主細胞(又は第一及び/又は第二細菌)は、グラム陽性細胞である
。一例では、該又は各宿主細胞は、腸内細菌科、例えば、サルモネラ、ペスト菌(Yersini
a pestis)、クレブシエラ(Klebsiella)、シゲラ(Shigella)、プロテウス(Proteus)、エン
テロバクター(Enterobacter)、セラチア(Serratia)、又はシトロバクター(Citrobacter)
細胞である。任意選択で、該又は各細胞は、大腸菌(例えば、大腸菌K12)又はサルモネラ(
例えば、S.エンテリカ血液型亜型チフィムリウム)細胞である。任意選択で、該又は各宿
主細胞(又は第一及び/又は第二細菌)は、グラム陰性細胞である。
【0109】
任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、マイコプラズマ(mycoplasma)、ク
ラミジア(chlamydiae)、スピロヘータ(spirochete)又はマイコバクテリウム(mycobacteri
um)である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、ストレプトコッカス(例
えば、ピオゲネス又はサーモフィルス)宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又
は第二細菌)は、スタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、アウレウス、例えば、MR
SA)宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、大腸菌(例えば、O15
7:H7)宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、シュードモナス(P
seudomonas)(例えば、エルジノーサ(aeruginosa))宿主である。任意選択で、宿主(又は第
一及び/又は第二細菌)は、ビブリオ(Vibrio)(例えば、コレラ(cholerae)(例えば、O139)
又はバルニフィカス(vulnificus))宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第
二細菌)は、ナイセリア(Neisseria)(例えば、ゴノレー(gonnorrhoeae)又はメニンギティ
ディス(meningitidis))宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、
ボルデテラ(Bordetella)(例えば、パータシス(pertussis))宿主である。任意選択で、宿
主(又は第一及び/又は第二細菌)は、ヘモフィルス(Haemophilus)(例えば、インフルエン
ザ(influenzae))宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、シゲラ
(Shigella)(例えば、ディセンテリアエ(dysenteriae))宿主である。任意選択で、宿主(又
は第一及び/又は第二細菌)は、ブルセラ(Brucella)(例えば、アボルタス(abortus))宿主
である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、フランシセラ(Francisella)
宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、キサントモナス(Xantho
monas)宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、アグロバクテリ
ウム(Agrobacterium)宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、エ
ルウィニア(Erwinia)宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、レ
ジオネラ(例えば、ニューモフィラ(pneumophila))宿主である。任意選択で、宿主(又は第
一及び/又は第二細菌)は、リステリア(例えば、モノサイトゲネス(monocytogenes))宿主
である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、カンピロバクター(Campylob
acter)(例えば、ジェジュニ(jejuni))宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は
第二細菌)は、エルシニア(例えば、ペスティス(pestis))宿主である。任意選択で、宿主(
又は第一及び/又は第二細菌)は、ボレリア(Borelia)(例えば、ブルグドルフェリ(burgdor
feri))宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、ヘリコバクター(
Helicobacter)(例えば、ピロリ(pylori))宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/
又は第二細菌)は、クロストリジウム(例えば、ディフィシル(dificile)又はボツリヌム)
宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、エーリキア(Erlichia)(
例えば、シャフェンシス(chaffeensis))宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又
は第二細菌)は、サルモネラ(例えば、チフィ(typhi)又はエンテリカ、例えば、血清型チ
フィムリウム、例えば、DT104)宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二細
菌)は、クラミジア(例えば、ニューモニエ(pneumoniae))宿主である。任意選択で、宿主(
又は第一及び/又は第二細菌)は、パラクラミジア(Parachlamydia)宿主である。任意選択
で、宿主(又は第一及び/又は第二細菌)は、コリネバクテリウム(Corynebacterium)(例え
ば、アミコラツム(amycolatum))宿主である。任意選択で、宿主(又は第一及び/又は第二
細菌)は、クレブシエラ(例えば、ニューモニエ)宿主である。任意選択で、宿主(又は第一
及び/又は第二細菌)は、エンテロコッカス(Enterococcus)(例えば、フェカーリス(faecal
is)又はフェシウム(faecim)、例えば、リネゾリド耐性)宿主である。任意選択で、宿主(
又は第一及び/又は第二細菌)は、アシネトバクター(Acinetobacter)(例えば、バウマンニ
(baumannii)、例えば、多剤耐性)宿主である。
【0110】
任意選択で、脱抑制Casは、Cas3である。任意選択で、脱抑制Casは、Cas9である。任意
選択で、脱抑制Casは、例えば、宿主細胞が大腸菌細胞であるときに、Cascade Casである
。Cascadeは、抗ウイルス防御のためのCRISPR関連複合体としても知られる。
【0111】
任意選択で、CRISPR/Casシステムは、タイプI(例えば、タイプI-B、タイプI-E又はタイ
プI-F)システムである。
【0112】
任意選択で、プロトスペーサー配列は、細胞によって含まれる必須遺伝子、ビルレンス
遺伝子又は抗生物質耐性遺伝子によって含まれる。
【0113】
任意選択で、ベクターは、CasA、B、C、D及びE(例えば、細胞が大腸菌細胞であるとき)
又はCasABCDE12(例えば、宿主細胞がS.エンテリカ血液型亜型チフィムリウム細胞である
とき)ヌクレオチド配列からなる群からの配列を含まない又はベクターは前記群の全ての
配列を含まない。
【0114】
任意選択で、ベクターは、Cas1、Cas2、Cas5及びCas6配列からなる群からの配列を含ま
ない。
【0115】
任意選択で、ベクターは、Cas3ヌクレオチド配列を含まないベクターからなる群からの
配列を含まない。
【0116】
任意選択で、ヒト又は動物対象における疾患又は状態を治療する又は予防する医学的な
使用のための、本発明のベクター又は任意の他の態様、ここで、宿主細胞は、対象によっ
て含まれる。一例では、宿主細胞は、疾患(すなわち、宿主細胞による対象の感染)である
或いは疾患若しくは状態(例えば、IBD、大腸炎、クローン病、がん、自己免疫疾患若しく
は状態、肥満、糖尿病又はCNS疾患若しくは状態(例えば、アルツハイマー病若しくはパー
キンソン病))と関連する又は媒介する。任意選択で、ヒト又は動物体の治療、予防、診断
の医学的な方法における使用のための、本発明のベクター又は任意の他の態様。
【0117】
任意選択で、環境(例えば、土壌、前記宿主細胞及び酵母細胞を含む組成物)、ヒト、動
物又は植物マイクロバイオームにおける宿主細胞の成長又は増殖を減少させるための、本
発明のベクター又は任意の他の態様。これは、例えば、マイクロバイオームが天然に存在
するとき、有用である。
【0118】
任意選択で、複数の宿主細胞を死滅させるための又はその成長若しくは増殖を減少させ
るための、本発明のベクター又は任意の他の態様。
【0119】
該又は各宿主細胞は、複数の前記宿主細胞を含む及び宿主細胞(例えば、細菌又は古細
菌宿主細胞)の種又は株とは異なる種又は株(例えば、細菌種又は株、又は古細菌種又は株
)の1つ又は複数の細胞を含むマイクロバイオーム(例えば、腸マイクロバイオーム又は環
境マイクロバイオーム)によって含まれ得る。
【0120】
一態様は、本発明による複数のベクターを含む医薬であって、任意選択で、ヒト又は動
物における疾患又は状態を治療する又は予防するための、1つ又は複数の医療薬(例えば、
抗がん医薬)又は抗生物質(例えば、プロトスペーサー配列が、宿主細胞抗生物質耐性遺伝
子によって含まれる)を更に含む医薬を提供する。
【0121】
一態様は、ヒト又は動物対象における疾患又は状態を治療する又は予防する方法であっ
て、本発明のベクター又は医薬を対象に投与する工程を含み、対象のマイクロバイオーム
によって含まれる宿主細胞は、細胞の内因性の脱抑制Casによって改変され、治療又は予
防が実施される、方法。
【0122】
一態様は、野生型の細菌又は古細菌細胞(例えば、大腸菌又はサルモネラ細胞)を死滅さ
せる方法を提供し、ここで、細胞が、Cas3及びCascadeタンパク質をコードするヌクレオ
チド配列を含む内因性CRISPR/Casシステムを含み、Cas3及び/又はCascadeが、細胞におい
て天然で抑制されており、
(a)前記Cas3及び/又はCascadeを脱抑制する工程及び
(b)(i)細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のための、CRISPRアレイ;又は(ii)それ
ぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)を各々コードする1つ又は複数のヌクレ
オチド配列を細胞に導入する工程を含み;各crRNA又はgRNAが、Cas又はCascadeをガイドし
て、宿主細胞ゲノムのそれぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含ま
れるエピソームのプロトスペーサー配列を改変する。
【0123】
任意選択で、工程(b)において、本発明によるベクターが、細胞に導入され、それによ
って、(i)又は(ii)が細胞に導入される。
【0124】
任意選択で、Cas3転写、発現又は活性は、脱抑制される。
【0125】
任意選択で、Cas転写、発現又は活性は脱抑制され、CasはCascade Cas(例えば、CasA、
B、C、D又はE)である。
【0126】
任意選択で、発現可能な脱抑制因子配列が、前記アレイ又はgRNAコード配列と一緒に、
同時に又は連続して、細胞に導入される。
【0127】
任意選択で、脱抑制因子配列及びアレイ又はgRNAコード配列は、同じ核酸ベクター(例
えば、ファージミド、ファージ又はプラスミド)によって含まれる。
【0128】
任意選択で、脱抑制因子配列及びアレイ又はgRNAコード配列は、同じオペロンによって
含まれる又は細胞において作動可能な共通の発現制御(例えば、同じプロモーター)の制御
下にある。これは、宿主細胞におけるこれらの要素の協調的な発現に有利である。
【0129】
任意選択で、工程(a)は、(i)H-NSとの複合体を形成可能である、LeuO又は、そのホモロ
グ、オルソログ又は機能的な均等物;又は(ii)それぞれH-NS、StpA、LRP又はCRP抑制因子
との複合体を形成可能である、H-NS、StpA、LRP又はCRPの変異体を細胞において発現させ
ることを含む。
【0130】
本発明によるベクター又はベクターを含む医薬組成物、食糧、飲料、環境の処理用の組
成物、殺虫薬、除草剤、又は化粧品も提供される。
【0131】
一態様は、宿主細胞への導入のための核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑
制因子によって抑制されたCRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b)(i)細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のための、CRISPRアレイ又はCRISPRスペ
ーサー配列;又は
(ii)細胞におけるガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコードするヌクレオチ
ド配列の導入のための部位を含み;
ここで、前記crRNA(例えば、ガイドRNAによって含まれるとき)又はgRNAが、脱抑制因子の
存在下で、Casをガイド可能であり、宿主細胞ゲノムのそれぞれのプロトスペーサー配列
を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロトスペーサー配列を改変する(例
えば、切断又は変異を引き起こす)、ベクターを提供する。
【0132】
任意選択で、部位(b)は、CRISPRアレイによって含まれ、アレイは、宿主細胞のそれぞ
れのプロトスペーサー配列をターゲティングするための、1つ又は複数の前記スペーサー
配列を収容可能である。これは、ベクターに対する宿主細胞の耐性の発生に先手を打つた
めに有用である。
【0133】
任意選択で、(i)のアレイ又は(ii)の配列は、宿主細胞における発現のための強力な及
び/又は構成的なプロモーターであるプロモーターの制御下にある。強力なプロモーター
は、宿主細胞集団の成長又は存在の任意の又は異なる期の期間の発現の機会を最大化する
ために有用である。
【0134】
任意選択で、(a)の配列は、宿主細胞における脱抑制因子の発現のための強力な及び/又
は構成的なプロモーターであるプロモーターの制御下にある。
【0135】
任意選択で、宿主細胞における発現のための、発現可能なCas3配列及び/又は発現可能
なhtpG配列。htpGによるCas3のアップレギュレートは、標的配列の改変を促進させるのに
有利でありうる。
【0136】
任意選択で、各前記crRNAは、宿主細胞におけるCas(例えば、Casヌクレアーゼ、例えば
、Cas9又はCas3)と共に作動可能である。
【0137】
任意選択で、脱抑制Casがヌクレアーゼ活性を有するとき、Casは、宿主細胞ゲノムの内
因性ヌクレオチド配列によりコードされる。
【0138】
任意選択で、Casは、宿主細胞にそこでの前記Casの発現のために導入されうるベクター
によって又は異なるベクターによって含まれるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0139】
任意選択で、(i)のスペーサー又は(ii)の配列が、そこに挿入されているとき、ベクタ
ーは、宿主細胞に導入されうる本発明のベクターに従う。
【0140】
BglJ-RcsBヘテロマーは、HNS抑制leuO及びbgl座位を活性化することが知られており、
故に、一例では、ベクターは、宿主細胞におけるBglJ-RcsBヘテロマーの形成のために、B
glJ及び/又はRcsBをコードする。
【0141】
一例では、プロトスペーサーは、宿主細胞集団クオラムセンシングを媒介するタンパク
質をコードする遺伝子、例えば、BglJ又はLuxIファミリー遺伝子によって含まれる。LuxI
ファミリータンパク質は、N-アシルホモセリンラクトン(AHL)クオラムセンシングシグナ
ルを生成し、それは有益であり得るので、これらを標的として、宿主細胞集団の成長、生
存度又は増殖を減少させる。
【0142】
本明細書のプロモーターの一例では、プロモーターは、H-NS又はH-NSファミリーメンバ
ーの結合部位を欠いている構成的なプロモーターである。構成的なプロモーターの重大な
特徴は、標準的なTTGACA(-35)-17bp-TATAAT(-10)配列の高レベルの保存性であり、故に、
一例では、プロモーターは、TTGACA及び/又はTATAAT配列を含む。
【0143】
本明細書のプロモーターの一例では、プロモーターは、H-NSプロモーターであり、例え
ば、宿主細胞種のH-NSプロモーターの配列を含む。これは、細胞におけるH-NS抑制因子と
して同じ比率及び/又は回数でのベクター配列発現を提供するのに有用でありうる。
【0144】
H-NSを伴うHhaは、H-NSの抑制能力を増加させる。一例では、ベクターは、宿主細胞に
おける阻害剤の発現のための、阻害剤Hha/H-NS多量体化又はYdgT/H-NS多量体化をコード
する。
【0145】
一例では、宿主細胞は、S.エンテリカ血液型亜型チフィムリウム株LT2細胞である。S.
エンテリカからのタイプE(Cse)cas遺伝子の発現が、H-NS及びLeuOによって調節される可
能性が高いことが提唱されている。例えば、S.エンテリカ血液型亜型チフィでは、casA(S
TY3070)の転写は、H-NS及びLeuOによって影響されるように見えるにもかかわらず(Hernan
dez-Lucasら、2008)、この株における多岐に方向づけられたcas3とcasA遺伝子の間の遺伝
子間領域の保存性は乏しい。
【0146】
一例では、宿主細胞は、大腸菌EPEC、EHEC、K12又は株MG1655細胞である。
【0147】
H-NSは、直接的に、入ってくるファージ又はプラスミドのDNAに結合することが知られ
ているので(Navarreら、2006;Navarreら、2007)、これが、H-NSの再分布をもたらす可能
性があり(Doyleら、2007;Dillonら、2010)、抑制因子の局所濃度の減少に起因するCascad
e遺伝子の発現を許容する。一例では、ベクターは、H-NS又はStpA結合部位を含む。一例
では、ベクターは、H-NS又はStpA結合部位を含まない。
【0148】
leuO発現は、H-NSによって負に調節され、LeuO自身によって正に調節されるので(Homma
isら、2001;Chenら、2005)、これがcas遺伝子転写に関する活性化シグナルを更に増幅す
るであろう。一例では、ベクターは、複数のLeuOコード配列を含む。これが、LeuOタンパ
ク質の存在下で、正のフィードバックを効果的に増幅しうる。
【0149】
宿主細胞のCascade領域、casA遺伝子(ygcL)及びcas3遺伝子(ygcB)の間の遺伝子間領域(
遺伝子間領域ygcL-ygcBに関してIGLB)は、H-NS(例えば、大腸菌における)に対する結合部
位を含んでもよい。それ故、一例では、ベクターは、宿主細胞ゲノムの1つ又は複数のIGL
B領域に対する抑制因子の結合を阻害する阻害剤をコードする。例えば、大腸菌では、以
下のプライマーを使用して、IGLB配列を増幅することができる、
UP-IGLB(IGLB領域のクローニングのための上流プライマーとして使用される)
5'-TTGTTCTCCTTCATATGCTCCGACATTTCT-3'(配列番号1)
DOWN-IGLB(IGLB領域のクローニングのための下流プライマーとして使用される)
5'-CTTCGGGAATGATTGTTATCAATGACGATA-3'(配列番号2)
【0150】
casA-cas3遺伝子間領域(ここではIGLBと表示される)はPcasを含有しており、これに対
して、H-NSは強い結合親和性を有し、また多岐に方向づけられた抗cas3(抗Pcasとして知
られる)プロモーターはPcasの80bp上流に位置し、未知の機能のアンチセンス転写物を生
じさせる(Pulら、Mol Microbiol. 2010 Mar;75(6):1495~512. doi: 10.1111/j.1365~29
58.2010.07073.x. Epub 2010 Feb 1、「Identification and characterization of E. co
li CRISPR-cas promoters and their silencing by H-NS」)。LeuO及びH-NSの両方ともが
、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)によって決定されるように、IGLB断片に結合する
。本発明の一例では、脱抑制因子及び/又は抑制因子は、宿主細胞ゲノムによって含まれ
るCRISPR/CasシステムIGLBに結合する。本発明の一例では、脱抑制因子及び/又は抑制因
子は、宿主細胞ゲノムによって含まれるCRISPR/CasシステムPcas(又はオルソログ若しく
はホモログ)に結合する。本発明の一例では、脱抑制因子及び/又は抑制因子は、宿主細胞
ゲノムによって含まれるCRISPR/Casシステム抗Pcas(又はオルソログ若しくはホモログ)に
結合する。結合部位は、例えば、宿主細胞のタイプI CRISPRアレイによって含まれる。
【0151】
脱抑制因子の一試験(example test)として、脱抑制因子は、例えば、Westraら2010(Wes
traら、Mol Microbiol. 2010 Sep;77(6):1380~93. doi: 10.1111/j.1365~2958.2010.07
315.x. Epub 2010 Aug 18、「H-NS-mediated repression of CRISPR-based immunity in
Escherichia coli K12 can be relieved by the transcription activator LeuO」)によ
って記載され、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)によって決定されるように、IGLB配
列(この配列は宿主種ゲノムによって含まれる)に結合する。前結合(Pre-bound)LeuOは、
インビトロ結合アッセイにおいてIGLB断片に対するH-NSの協同的結合を妨害する。これと
一致して、前結合H-NSは、脱抑制因子がH-NS/LeuO複合体に加えられたとき、IGLBから部
分的に放出させる。IGLB配列内のLeuO又は他の脱抑制因子の結合領域をマップするために
、DNase Iフットプリント分析を行うことができる。IGLB DNAの限定的なDNase I加水分解
に際して、前に示されたように、H-NSは、フットプリントの拡大を引き起こす(Pulら、20
10)。
【0152】
脱抑制因子は、宿主細胞ゲノムによって含まれる抑制因子(例えば、H-NS)に関する結合
部位に相補的であり、例えば、宿主細胞のCRISPR/CasシステムのPcasプロモーター又は抗
casプロモーターのいずれかに相補的であるオリゴヌクレオチドを含んでいてもよく、こ
こで、転写物は、脱抑制因子の存在下で、Pcasプロモーター又は抗casプロモーターから
開始することができる。別の例では、脱抑制因子は、宿主ゲノムによって含まれるLGLB D
NAを結合可能ではない。
【0153】
任意選択で、脱抑制因子は、ドミナントネガティブなH-NS変異体タンパク質G113Dであ
る(Ueguchiら、1996;Pulら、2007)。このH-NS変異体タンパク質はDNA結合活性を喪失して
いるが、野生型H-NSとヘテロマーを形成できる。生じるヘテロマーも、それらのDNA結合
特性を喪失している(Pulら、2005)。例えば、脱抑制因子はG113D又はその機能的な均等物
であり、例えば、宿主細胞におけるG113D又は均等物の発現に関して強力な及び/又は構成
的なプロモーターの制御下にあるヌクレオチド配列によって、ベクター中にコードされる
【0154】
一例では、宿主細胞における脱抑制因子の発現は誘導性であり、例えば、脱抑制因子は
誘導性プロモーターの制御下にあるベクターヌクレオチド配列によりコードされる。例え
ば、誘導は、光による又は化学的な手段による物理的なもの(例えば、熱誘導)であっても
よい。
【0155】
一例では、方法は、宿主細胞のCRISPR/CasアレイにおけるRNAポリメラーゼプロモータ
ー相互作用のH-NS抑制の脱抑制を含み又はベクターはその脱抑制のためであり、Casは前
記抑制Casである。
【0156】
一例では、抑制因子は、宿主細胞のCRISPR/CasシステムのIGLB領域に結合する。一例で
は、抑制因子は、宿主細胞のCRISPR/Casシステムのプロモーターに結合する。一例では、
抑制因子は、宿主細胞のCRISPR/CasシステムのRNAポリメラーゼ結合部位の阻害剤である
。一例では、抑制因子は、宿主細胞のCRISPR/CasシステムからのRNA転写の阻害剤である
。一例では、抑制因子は、宿主細胞のCRISPR/Casシステムによって含まれる転写開始部位
からのRNA転写の阻害剤であり、転写開始部位はシステムのCRISPRアレイの第一CRISPR反
復の第一(最も5')ヌクレオチドの100、50又は30ヌクレオチド上流内にある、或いは開始
部位はシステムのCRISPRアレイのリーダー領域内にある。例えば、抑制因子はH-NH又はSt
pAであり、これが、そのような領域に結合する。
【0157】
大腸菌タイプI-Eシステムでは、PAMは、プロト-スペーサーの(5'の)直ぐ上流に位置す
る5'-AWG-3'配列に対応する。それ故、宿主細胞が大腸菌細胞であるとき、プロトスペー
サーはPAMの直ぐ3'にあり、PAMは5'-AWG-3'、例えば、AAG、AGG、GAG又はATGである。
【0158】
宿主細胞がS.サーモフィルス細胞であるとき、プロトスペーサーはPAMの直ぐ3'又は直
ぐ5'にあり、PAMはNNAGAAW又はNGGNGである。一例では、PAMは、5'-AW-3'、例えば、AA又
はAT、又はAGである。任意選択で、PAMは、S.サーモフィルスのCRISPR4システムのPAMで
ある。例えば、本発明のCRISPRアレイ又はガイドRNAコードヌクレオチド配列は反復配列
を含み、反復配列は5'-GTTTTTCCCGCACACGCGGGGGTGATCC-3'(配列番号74)である。
【0159】
任意選択で、システムは、抑制Casを含み、
(a)Casは、配列番号58、60、66及び68から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と
少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一で
あるアミノ酸配列を含む、又は配列番号49~52から選択される配列を含む反復及びAWG、
例えば、AAG、AGG、GAG又はATGを含む又はそれからなるPAMと共に作動可能な、そのオル
ソログ又はホモログであり、任意選択で、宿主細胞は大腸菌細胞であり;又は
(b)Casは、配列番号56、64、70及び72から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と
少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一で
あるアミノ酸配列を含む、又は配列番号53を含む反復と共に作動可能な、そのオルソログ
又はホモログであり任意選択で、宿主細胞はS.エンテリカであり;又は
(c)Casは、配列番号62から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも70、
75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一であるアミノ酸配
列を含む、又はNNAGAAW、NGGNG又はAW、例えば、AA、AT又はAGを含む又はそれからなるPA
Mと共に作動可能な、そのオルソログ又はホモログであり、任意選択で、宿主細胞はS.サ
ーモフィルス細胞である。
【0160】
任意選択で、システムは抑制Casを含み、Casは、
(a)配列番号49~52から選択される配列を含む反復及びAWG、例えば、AAG、AGG、GAG又はA
TGを含む又はそれからなるPAM(任意選択で、宿主細胞は大腸菌細胞である);
(b)配列番号53を含む反復(宿主細胞はS.エンテリカである);又は
(c)NNAGAAW、NGGNG又はAW、例えば、AA、AT又はAGを含む又はそれからなるPAM(任意選択
で、宿主細胞はS.サーモフィルス細胞である)と共に作動可能である。
【0161】
任意選択で、システムは抑制Casを含み、Casは、
(a)AWG、例えば、AAG、AGG、GAG又はATGを含む又はそれからなるPAM(任意選択で、Casヌ
クレアーゼは、配列番号58、60、66及び68から選択されるアミノ酸配列又は選択される配
列と少なくとも70、80、90、95又は98%同一であるアミノ酸配列を含み、任意選択で、宿
主細胞は大腸菌細胞である);又は
(b)NNAGAAW、NGGNG又はAW、例えば、AA、AT又はAGを含む又はそれからなるPAM(任意選択
で、Casヌクレアーゼは、配列番号62から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と
少なくとも70、80、90、95又は98%同一であるアミノ酸配列を含み、任意選択で、宿主細
胞はS.サーモフィルス細胞である)と共に作動可能である。
【0162】
任意選択で、標的ヌクレオチド配列又はプロトスペーサーは、宿主細胞のゲノム中の前
記PAMの直ぐ3'に少なくとも5、6、7、8、9又は10連続ヌクレオチドの配列を含む。任意選
択で、標的ヌクレオチド配列又はプロトスペーサーは、宿主細胞のゲノム中の前記PAMの
直ぐ5'に少なくとも5、6、7、8、9又は10連続ヌクレオチドの配列を含む。一例では、PAM
は、宿主細胞の染色体又はエピソームによって含まれる。
【0163】
任意選択で、抑制因子は、
(i)配列番号17、19、21、23、25及び27から選択されるアミノ酸配列又は前記選択され
る配列と少なくとも70、80、90、95又は98%同一であるアミノ酸配列を含むH-NS;又は
(ii)配列番号29、31、33及び35から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と
少なくとも70、80、90、95又は98%同一であるアミノ酸配列を含むStpAである。
任意選択で、脱抑制因子は、
(iii)配列番号3、5、7、9、11、13及び15から選択されるアミノ酸配列又は前記選択さ
れる配列と少なくとも70、80、90、95又は98%同一であるアミノ酸配列を含むLeuO;又は
(iv)配列番号37、39及び41から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少な
くとも70、80、90、95又は98%同一であるアミノ酸配列を含むLRP;又は
(v)配列番号43、45及び47から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少な
くとも70、80、90、95又は98%同一であるアミノ酸配列を含むCRPである。
【0164】
一例では、宿主細胞(例えば、哺乳動物、ヒト、マウス、細菌又は古細菌細胞)によって
含まれるCRISPR/Casシステムは、抑制Cas、例えば、Cas1、2、3、9、A、B、C、D又はEを
含む。例えば、Casは宿主細胞の内因性ヌクレオチド配列によりコードされ、宿主細胞は
細菌又は古細菌細胞である。別の例では、Casは細胞によって含まれる外因性ヌクレオチ
ド配列によりコードされ、例えば、それは、ベクター(例えば、本発明のベクター)によっ
て導入されている。
【0165】
本発明の特定の実施形態では、宿主細胞は、内因性CRISPR/Casシステムを含む細菌又は
古細菌細胞であり、システムは、宿主ゲノムの1つ又は複数の内因性ヌクレオチド配列に
よってコードされる抑制Cascade又はCas(例えば、Cas1、2、3、9、A、B、C、D又はE)を含
む。有利には、本発明は、Cascade又はCasを脱抑制するために使用でき、それによって、
Cascade又はCasを利用して、宿主ゲノム(例えば、染色体又はエピソームのプロトスペー
サー配列)によって含まれる標的プロトスペーサー配列を改変(例えば、切断)し、例えば
、細胞を死滅させることができる。この態様は、1つ又は複数のベクターを宿主細胞に導
入することが関与し、ここで、crRNA又はガイドRNA(例えば、単一ガイドRNA)がコードさ
れ、脱抑制されると、Cascade又はCasと共に作動可能である。脱抑制は、1つ又は複数の
前記ベクターによって保持される本発明の脱抑制因子の手段によって実施され、脱抑制因
子は、抑制Cascade又はCasを脱抑制するために、宿主細胞の内側で発現される。通例、脱
抑制された内因性Casを利用する能力により、本発明のベクターにおける対応するCasコー
ド配列の省略が可能となる。これにより、ベクター中の有用な空間が開放される(特に、
いくつかのCasコード配列は大きい、例えば、S.ピオゲネスCas9配列は4.2kbであり、これ
は、例えば、ファージベクターのパッケージング容量に近いことが考慮される)。自由な
空間により、更なるスペーサー及び/又はCRISPRアレイ又はgRNAコード配列を含むことを
可能とし、宿主配列の切断のマルチプレックス化を可能とする。これは、宿主に本発明の
ベクターに対する耐性を進化させる機会を最小化するために有用である。ベクターによっ
てコードされる外因性Casに依存するよりむしろ、内因性Casを利用する別の利点は、内因
性Casが、宿主細胞機構にとってネイティブであり、故に、一旦脱抑制されると効率的に
働く可能性が高いことである。大腸菌細胞において発現される外因性Cas、例えば、S.ピ
オゲネスCasは、それが外来のタンパク質であるので下位(inferior)であってもよく、ま
た大腸菌機構と共に非常に効率的に働かなくてもよい。それ故、任意選択で、本発明のベ
クターは、抑制Cas又はCascadeをコードするヌクレオチド配列を欠いており;又はベクタ
ーはCasをコードする任意のヌクレオチド配列を欠く。任意選択で、本発明の方法は、宿
主細胞への抑制Casをコードするヌクレオチド配列の導入を含まない又は宿主細胞へのCas
をコードする任意のヌクレオチド配列の導入を含まない。
【0166】
本発明のこの態様の適用例(example application)は、本発明の1つ又は複数のベクター
の、大腸菌細胞(例えば、大腸菌O157 H7 EDL933(EHEC)細胞)への導入であり、これは抑制
Cas3及び/又はCascade(又はそのCasA)(ここで、H-NSが、Cas及び/又はCascadeを抑制する
)を含む。ベクターは、(a)細胞におけるCascade又はCasを脱抑制可能である脱抑制因子(
例えば、LeuO)をコードするヌクレオチド配列であって、細胞において発現可能であり、
脱抑制因子を産生するヌクレオチド配列;及び(b)各crRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在
下で、Cas又はCascadeのCasをガイド可能であり、宿主細胞ゲノムのそれぞれのプロトス
ペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロトスペーサー配列を
改変する;細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイ;及び/又は細胞
におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコードする1つ又は複数
のヌクレオチド配列を含む。成分(b)は、脱抑制Cas又はCascadeと共に作動可能であるCRI
SPR反復配列を含み、例えば、反復配列は、配列番号49~52から選択される配列を含む又
はそれからなる。一例では、脱抑制Casは、配列番号58又は60のアミノ酸配列を含むCas3
である。一例では、脱抑制Casは、配列番号66又は68のアミノ酸配列を含むCasAである。
任意選択で、標的ヌクレオチド配列又はプロトスペーサーは、宿主細胞のゲノム中のPAM
の直ぐ3'に少なくとも5、6、7、8、9又は10連続ヌクレオチドの配列を含み、PAMはAWG、A
AG、AGG、GAG及びATGから選択される。
【0167】
本発明のこの態様の適用例は、本発明の1つ又は複数のベクターの、S.エンテリカ細胞(
例えば、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血液型亜型チフィムリウム細胞、例えば
、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血液型亜型チフィムリウムLT2細胞又はサルモ
ネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血液型亜型チフィムリウムパラチフィA細胞)への導入で
あり、これは抑制Cas3及び/又はCascade (又はそのCasA)(ここで、H-NSが、Cas及び/又は
Cascadeを抑制する)を含む。ベクターは、(a)細胞におけるCascade又はCasを脱抑制可能
である脱抑制因子(例えば、LeuO)をコードするヌクレオチド配列であって、細胞において
発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチド配列;及び(b)各crRNA又はgRNAが、
脱抑制因子の存在下で、Cas又はCascadeのCasをガイド可能であり、宿主細胞ゲノムのそ
れぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロト
スペーサー配列を改変する;細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレ
イ;及び/又は細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコード
する1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む。成分(b)は、脱抑制Cas又はCascadeと共に作
動可能であるCRISPR反復配列を含み、例えば、反復配列は、配列番号53を含む又はそれか
らなる。一例では、脱抑制Casは、配列番号56又は64のアミノ酸配列を含むCas3である。
一例では、脱抑制Casは、配列番号70又は72のアミノ酸配列を含むCasAである。任意選択
で、標的ヌクレオチド配列又はプロトスペーサーは、宿主細胞のゲノム中のPAMの直ぐ3'
に少なくとも5、6、7、8、9又は10連続ヌクレオチドの配列を含み、PAMはCas3と共に作動
可能である。
【0168】
任意選択で、ベクターは、Casコードヌクレオチド配列又はシステムの抑制Casをコード
するヌクレオチド配列を欠く。
【0169】
任意選択で、代替法においては、ベクターは、成分(a)を含むが、成分(b)を含まなく、
成分(b)(及び、任意選択で、成分(b)も)は、第一ベクターと組み合わされる第二ベクター
によって含まれ;任意選択で、ベクターは、Casコードヌクレオチド配列又はシステムの抑
制Casをコードするヌクレオチド配列を欠く。
【0170】
任意選択で、システムは抑制Cascade(例えば、CasA、B、C、D及びE)を含み、脱抑制因
子は宿主細胞(例えば、大腸菌又はサルモネラ細胞)におけるCascadeを脱抑制可能であり
、任意選択で、各ベクターは、前記抑制Cascadeの1つ又は複数のCasをコードするヌクレ
オチド配列を欠く。
【0171】
任意選択で、システムは抑制CasA、Cas3又はCas9を含み、脱抑制因子は宿主細胞(例え
ば、大腸菌又はサルモネラ細胞)におけるCasを脱抑制可能であり、任意選択で、各ベクタ
ーは、Casをコードするヌクレオチド配列を欠く。
態様:
【0172】
本発明の特定の態様は、以下のとおりである:
1.宿主細胞への導入のための核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑制因子によ
って抑制されたCRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b)各crRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり、宿主細胞ゲ
ノムのそれぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソーム
のプロトスペーサー配列を改変する;細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRI
SPRアレイ;及び/又は細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)
をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む、ベクター。
2.CRISPR/Casシステムの1つ又は複数の成分の転写が抑制される、態様1のベクター。
3.1つ又は複数のCas配列の転写が抑制される、態様1又は2のベクター。
4.タイプI CRISPR/CasシステムのCasA、B、C、D及びEのうちの1つ又は複数の転写が抑制
される、いずれかの先行する態様のベクター。
5.Cas3の転写が抑制される、いずれかの先行する態様のベクター。
6.宿主細胞ゲノムのCas改変が
(a)宿主細胞を死滅させる;
(b)細胞又はエピソームの成長又は増殖を減少させる;
(c)細胞又はエピソームの成長又は増殖を増加させる;
(d)前記プロトスペーサー配列を含む又はそれに隣接する、ヌクレオチド配列の転写を
減少させる又は防止する;又は
(e)前記プロトスペーサー配列を含む又はそれに隣接する、ヌクレオチド配列の転写を
増加させる、いずれかの先行する態様のベクター。
7.成分(a)及び(b)が、代わりに、前記Cas改変が起こる宿主細胞へのベクターの導入のた
めに、異なる第一及び第二ベクターによって含まれる、いずれかの先行する態様のベクタ
ー。
8.脱抑制因子がタンパク質又はRNAである、いずれかの先行する態様のベクター。
9.抑制因子がH-NS、StpA、LRP又はCRPである、いずれかの先行する態様のベクター。
10.脱抑制因子が、宿主細胞において、それぞれ、H-NS、StpA、LRP又はCRP抑制因子との
複合体を形成可能であり、CRISPR/Casシステムの抑制を防止する又は減少させる、変異体
H-NS、StpA、LRP又はCRPである、いずれかの先行する態様のベクター。
11.抑制因子がH-NS又はStpAであり、脱抑制因子がLeuOである、いずれかの先行する態様
のベクター。
12.エピソームがプラスミドである、いずれかの先行する態様のベクター。
13.細胞が細菌又は古細菌細胞である、いずれかの先行する態様のベクター。
14.ヌクレオチド配列(a)が、宿主細胞における配列の発現のための構成的なプロモーター
又は強力なプロモーターを含む、いずれかの先行する態様のベクター。
15.ヌクレオチド配列又はアレイ(b)が、宿主細胞における配列又はアレイの発現のための
構成的なプロモーター又は強力なプロモーターを含む、いずれかの先行する態様のベクタ
ー。
16.(a)及び(b)が、同じオペロンによって含まれる又は細胞において作動可能な共通の発
現制御(例えば、同じプロモーター)の制御下にある、いずれかの先行する態様のベクター

17.プロモーターが、宿主細胞における発現のための強力な及び/又は構成的なプロモータ
ーである、態様16のベクター。
18.宿主細胞が野生型宿主細胞である、いずれかの先行する態様のベクター。
19.発現可能なhtpG配列を含む、いずれかの先行する態様のベクター。
20.いずれかの先行する態様のベクターであって、細胞が、Cascade及び Cas3を含むCRIS
PR/Casシステムを含み、Cascadeが、宿主細胞において(例えば、H-NSによって)抑制され
、(i)前記Cascade抑制の脱抑制因子(例えば、LeuO)をコードする発現可能なヌクレオチド
配列;及び(ii)Cas3をコードする発現可能なヌクレオチド配列を含み、Cas3が、宿主細胞
における脱抑制Cascadeと共に機能でき;ヌクレオチド配列が、宿主細胞において発現可能
である、ベクター。
21.(i)及び(ii)のヌクレオチド配列が、同じオペロンによって含まれる又は細胞において
作動可能な共通の発現制御(例えば、同じプロモーター)の制御下にある、態様20のベクタ
ー。
22.配列(i)及び(ii)並びにCRISPRアレイ又は前記gRNAをコードする配列が、宿主細胞にお
ける一緒の脱抑制因子、Cas3及びアレイ又はgRNAの発現のために、宿主細胞への導入のた
めの、2つ以上の異なるベクターによって含まれる、態様20又は21のベクター。
23.細菌又は古細菌宿主細胞への導入のための(任意選択で、いずれかの先行する態様に記
載の)核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑制因子によって天然で抑制された
内因性CRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b)各crRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり、宿主細胞ゲ
ノムのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロトス
ペーサー配列を改変する;細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイ;
及び/又は細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコードす
る1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み;
ここで、抑制因子が、細胞ゲノムによってコードされるH-NS、StpA、LRP若しくはCRP又
はその機能的な均等物である;及び
ここで、脱抑制因子が、それぞれ、H-NSとの複合体を形成可能であるLeuO又はその機能
的な均等物;又はH-NS、StpA、LRP若しくはCRP抑制因子との複合体を形成可能であるH-NS
、StpA、LRP若しくはCRPの変異体である、ベクター。
24.細胞が、大腸菌(例えば、大腸菌K12)又はサルモネラ(例えば、S.エンテリカ血液型亜
型チフィムリウム)細胞である、態様23のベクター。
25.Casが、Cas3である、態様23又は24のベクター。
26.CRISPR/Casシステムが、タイプI(例えば、タイプI-E又はタイプI-F)システムである、
態様23から25のいずれか1つのベクター。
27.プロトスペーサー配列が、細胞によって含まれる必須遺伝子、ビルレンス遺伝子又は
抗生物質耐性遺伝子によって含まれる、態様23から26のいずれか1つのベクター。
28.CasA、B、C、D及びEヌクレオチド配列からなる群からの配列を含まない又は、前記群
の配列の全てを含まない、態様23から27のいずれか1つのベクター。
29.Cas1、Cas2、Cas5及びCas6配列からなる群からの配列を含まない、態様23から28のい
ずれか1つのベクター。
30.Cas3ヌクレオチド配列を含まない、態様23から29のいずれか1つのベクター。
31.ヒト又は動物対象における疾患又は状態を治療する又は予防する医学的な使用のため
の、いずれかの先行する態様のベクターであって、宿主細胞が、対象によって含まれるベ
クター。
32.ヒト、動物又は植物マイクロバイオームにおいて、前記宿主細胞を死滅させるための
又はその成長若しくは増殖を減少させるための、いずれかの先行する態様のベクター。
33.複数の宿主細胞を死滅させるための又はその成長若しくは増殖を減少させるための、
複数のいずれかの先行する態様のベクター。
34.該又は各宿主細胞が、複数の前記宿主細胞を含む及び宿主細胞の種又は株とは異なる
種又は株の1つ又は複数の細胞を含むマイクロバイオーム(例えば、腸マイクロバイオーム
又は環境マイクロバイオーム)によって含まれる、いずれかの先行する態様のベクター。
35.先行する態様のいずれかに記載の複数のベクターを含む医薬であって、任意選択で、
ヒト又は動物における疾患又は状態を治療する又は予防するための、1つ又は複数の医療
薬(例えば、抗がん医薬)又は抗生物質(例えば、プロトスペーサー配列が、宿主細胞抗生
物質耐性遺伝子によって含まれる)を更に含む医薬。
36.ヒト又は動物対象における疾患又は状態を治療する又は予防する方法であって、いず
れかの先行する態様のベクター又は医薬を対象に投与する工程を含み、対象のマイクロバ
イオームによって含まれる宿主細胞は、細胞の内因性の脱抑制Casによって改変され、治
療又は予防が実施される、方法。
37.野生型の細菌又は古細菌細胞(例えば、大腸菌又はサルモネラ細胞)を死滅させる方法
であって、細胞が、Cas3及びCascadeタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む内
因性CRISPR/Casシステムを含み、Cas3及び/又はCascadeが、細胞において天然で抑制され
、方法が、
(a)前記Cas3及び/又はCascadeを脱抑制する工程及び
(b)(i)細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のための、CRISPRアレイ;又は(ii)それ
ぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチ
ド配列を細胞に導入する工程を含み;各crRNA又はgRNAが、Cas又はCascadeをガイドして、
宿主細胞ゲノムのそれぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれる
エピソームのプロトスペーサー配列を改変する、方法。
38.工程(b)において、態様1から33のいずれか1つに記載のベクターが、細胞に導入される
、態様37の方法。
39.Cas3転写、発現又は活性が脱抑制される、態様37又は38の方法。
40.Cas転写、発現又は活性が脱抑制され、CasがCascade Cas(例えば、CasA、B、C、D又は
E)である、態様37、38又は39の方法。
41.発現可能な脱抑制因子配列が、前記アレイ又はgRNAコード配列と一緒に、同時に又は
連続して、細胞に導入される、態様37から40のいずれか1つの方法。
42.脱抑制因子配列及びアレイ又はgRNAコード配列が、同じ核酸ベクター(例えば、ファー
ジミド、ファージ又はプラスミド)によって含まれる、態様37から41のいずれか1つの方法

43.脱抑制因子配列及びアレイ又はgRNAコード配列が、同じオペロンによって含まれる又
は細胞において作動可能な共通の発現制御(例えば、同じプロモーター)の制御下にある、
態様37から42のいずれか1つの方法。
44.工程(a)が、(i)H-NSとの複合体を形成可能である、LeuO又は、その機能的な均等物;又
は(ii)それぞれH-NS、StpA、LRP又はCRP抑制因子との複合体を形成可能である、H-NS、St
pA、LRP又はCRPの変異体を細胞中に発現させることを含む、態様37から43のいずれか1つ
の方法。
45.態様1から34のいずれか1つに記載のベクター又はベクターを含む医薬組成物、食糧、
飲料、環境の処理用の組成物、殺虫薬、除草剤、又は化粧品。
46.宿主細胞への導入のための核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑制因子に
よって抑制されたCRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b)
(i)細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のための、CRISPRアレイ又はCRISPRスペ
ーサー配列;
(ii)細胞におけるガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコードするヌクレオチ
ド配列の導入のための部位を含み;前記crRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casを
ガイド可能であり、宿主細胞ゲノムのそれぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿
主によって含まれるエピソームのプロトスペーサー配列を改変する、ベクター。
47.部位(b)が、CRISPRアレイによって含まれ、アレイは、宿主細胞のそれぞれのプロトス
ペーサー配列をターゲティングするための、1つ又は複数の前記スペーサー配列を収容可
能である、態様46のベクター。
48.(i)のアレイ又は(ii)の配列が、宿主細胞における発現のための強力な及び/又は構成
的なプロモーターであるプロモーターの制御下にある、態様46又は47のベクター。
49.(a)の配列が、宿主細胞における脱抑制因子の発現のための強力な及び/又は構成的な
プロモーターであるプロモーターの制御下にある、態様46又は47のベクター。
50.宿主細胞における発現のための、発現可能なCas3配列及び/又は発現可能なhtpG配列を
含む、態様46から49のいずれか1つのベクター。
51.各前記crRNAが、宿主細胞におけるCas(例えば、Casヌクレアーゼ)と共に作動可能であ
る、態様46から50のいずれか1つのベクター。
52.Casが、宿主細胞ゲノムの内因性ヌクレオチド配列によってコードされる、態様51のベ
クター。
53.Casが、宿主細胞にそこでの前記Casの発現のために導入されうるベクターによって又
は異なるベクターによって含まれるヌクレオチド配列によりコードされる、態様51のベク
ター。
54.(i)のスペーサー又は(ii)の配列が、そこに挿入されているとき、ベクターが、態様1
から34のいずれか1つのベクターに従う、態様46から53のいずれか1つのベクター。
55.ヒト又は動物対象における疾患又は状態を治療する又は予防する方法であって、ベク
ターを対象に投与する工程を含み、対象のマイクロバイオームによって含まれる細菌又は
古細菌宿主細胞(例えば、大腸菌、サルモネラ、又はS.エンテリカ血液型亜型チフィムリ
ウム)が、細胞の内因性の脱抑制Casによって改変され、治療又は予防が実施され;ここで

(i)各細胞が、細胞における抑制因子によって抑制される、CRISPR/Casシステムを含み、(
ii)ベクターが、細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコー
ドするヌクレオチド配列を含み、配列が、脱抑制因子を産生するために、細胞において発
現可能であり;及び
(iii)ベクターが、細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイを欠い
ており;及び細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコード
する1つ又は複数のヌクレオチド配列を欠いている、方法。
56.細菌又は古細菌宿主細胞への導入のための複数の核酸ベクターを含む医薬であって、
任意選択で、ヒト又は動物における疾患又は状態を治療する又は予防するための、1つ又
は複数の医療薬(例えば、抗がん医薬)又は抗生物質(例えば、プロトスペーサー配列が、
宿主細胞抗生物質耐性遺伝子によって含まれる)を更に含み;ここで、
(i)各細胞が、細胞におけるH-NS及び/又はStpAから選択される抑制因子によって抑制され
る、CRISPR/Casシステムを含み、(ii)ベクターが、細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱
抑制可能である脱抑制因子をコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、任意選択で、
強力な及び/又は構成的なプロモーターの制御下で脱抑制因子を産生するために、細胞に
おいて発現可能であり;及び
ベクターが、細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイを欠いており
;及び細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコードする1つ
又は複数のヌクレオチド配列を欠いている、医薬。
57.Cascade Cas、Cas3又はCas9が抑制される、態様55の方法又は態様56の医薬。
58.システムが抑制Casを含み、 (a)Casが、配列番号58、60、66及び68から選択されるア
ミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99
%(例えば、少なくとも80%)同一であるアミノ酸配列を含む、又は配列番号49~52から選択
される配列を含む反復及びAWG、例えば、AAG、AGG、GAG又はATGを含む又はそれからなるP
AMと共に作動可能な、そのオルソログ又はホモログであり、任意選択で、宿主細胞は大腸
菌細胞であり;又は
(b)Casが、配列番号56、64、70及び72から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列
と少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一
であるアミノ酸配列を含む、又は配列番号53を含む反復と共に作動可能な、そのオルソロ
グ又はホモログであり、任意選択で、宿主細胞はS.エンテリカであり;又は
(c)Casが、配列番号62から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも70
、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一であるアミノ酸
配列を含む、又はNNAGAAW、NGGNG又はAW、例えば、AA、AT又はAGを含む又はそれからなる
PAMと共に作動可能な、そのオルソログ又はホモログであり、任意選択で、宿主細胞はS.
サーモフィルス細胞である、いずれかの先行する態様のベクター、医薬、方法又は組成物

59.システムが抑制Casを含み、Casが、 (a)配列番号49~52から選択される配列を含む反
復及びAWG、例えば、AAG、AGG、GAG又はATGを含む又はそれからなるPAM(任意選択で、宿
主細胞は大腸菌細胞である);
(b)配列番号53を含む反復(宿主細胞はS.エンテリカである);又は
(c)NNAGAAW、NGGNG又はAW、例えば、AA、AT又はAGを含む又はそれからなるPAM(任意選
択で、宿主細胞はS.サーモフィルス細胞である)と共に作動可能である、いずれかの先行
する態様のベクター、医薬、方法又は組成物。
60.システムが抑制Casを含み、Casが、 (a)AWG、例えば、AAG、AGG、GAG又はATGを含む
又はそれからなるPAM(任意選択で、Casヌクレアーゼは、配列番号58、60、66及び68から
選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも70、75、80、85、90、95、96、
97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一であるアミノ酸配列を含み、任意選択で、宿
主細胞は大腸菌細胞である);又は
(b)NNAGAAW、NGGNG又はAW、例えば、AA、AT又はAGを含む又はそれからなるPAM(任意選
択で、Casヌクレアーゼは、配列番号62から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列
と少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一
であるアミノ酸配列を含み、任意選択で、宿主細胞はS.サーモフィルス細胞である)と共
に作動可能である、いずれかの先行する態様のベクター、医薬、方法又は組成物。
61.プロトスペーサーが、宿主細胞のゲノム中の前記PAMの直ぐ3'に少なくとも5、6、7、8
、9又は10連続ヌクレオチドの配列を含む、態様58から60のいずれか1つのベクター、医薬
、方法又は組成物。
62.プロトスペーサーが、宿主細胞のゲノム中の前記PAMの直ぐ5'に少なくとも5、6、7、8
、9又は10連続ヌクレオチドの配列を含む、態様58から60のいずれか1つのベクター、医薬
、方法又は組成物。
63.抑制因子が、
(i)配列番号17、19、21、23、25及び27から選択されるアミノ酸配列又は前記選択され
る配列と少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80
%)同一であるアミノ酸配列を含むH-NS;又は
(ii)配列番号29、31、33及び35から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と
少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一で
あるアミノ酸配列を含むStpAである、いずれかの先行する態様のベクター、医薬、方法又
は組成物。
64.脱抑制因子が、
(iii)配列番号3、5、7、9、11、13及び15から選択されるアミノ酸配列又は前記選択さ
れる配列と少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも
80%)同一であるアミノ酸配列を含むLeuO;又は
(iv)配列番号37、39及び41から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少な
くとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一である
アミノ酸配列を含むLRP;又は
(v)配列番号43、45及び47から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少な
くとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一である
アミノ酸配列を含むCRPである、いずれかの先行する態様のベクター、医薬、方法又は組
成物。
65.ベクターが、Casコードヌクレオチド配列又はシステムの抑制Casをコードするヌクレ
オチド配列を欠く、いずれかの先行する態様のベクター、医薬、方法又は組成物。
66.代替的に、ベクターが成分(a)を含むが、成分(b)を含まない、いずれかの先行する態
様のベクター、医薬、方法又は組成物であって、成分(b)が、第一ベクターと組み合わさ
れる第二ベクターによって含まれ;任意選択で、ベクターが、Casコードヌクレオチド配列
又はシステムの抑制Casをコードするヌクレオチド配列を欠く、ベクター、医薬、方法又
は組成物。
67.システムが抑制Cascade(例えば、CasA、B、C、D及びE)を含み、脱抑制因子が宿主細胞
(例えば、大腸菌又はサルモネラ細胞)におけるCascadeを脱抑制可能であり、任意選択で
、各ベクターが、前記抑制Cascadeの1つ又は複数のCasをコードするヌクレオチド配列を
欠く、いずれかの先行する態様のベクター、医薬、方法又は組成物。
68.システムが抑制CasA、Cas3又はCas9を含み、脱抑制因子は宿主細胞(例えば、大腸菌又
はサルモネラ細胞)におけるCasを脱抑制可能であり、任意選択で、各ベクターが、Casを
コードするヌクレオチド配列を欠く、いずれかの先行する態様のベクター、医薬、方法又
は組成物。
リコンビニアリング
本発明は、以下のとおり核酸リコンビニアリング法も提供する:
69.細胞(例えば、細菌細胞、例えば、大腸菌細胞)において核酸(例えば、DNA)リコンビニ
アリングを実施するインビトロ方法であって、細胞が、抑制因子によって抑制されたCRIS
PR/Casシステムを含み、方法が、
(a)所望の核酸(NOI)を細胞に(例えば、エレクトロポレーションによって)導入する工程
;
(b)(例えば、上記態様又は下記条項のいずれか1つに記載の)本発明のベクターを細胞に
(例えば、エレクトロポレーションによって)導入する工程、ここで、工程(a)及び(b)は、
同時に又は任意の順序で実施される;
(c)細胞において、ベクターによってコードされる脱抑制因子及びcrRNA又はgRNAを発現
させる工程、ここで、脱抑制因子が、CRISPR/Casシステムを脱抑制し、システムのCasヌ
クレアーゼがcrRNA又はgRNAによってガイドされて、NOIによって含まれるプロトスペーサ
ー配列を改変(例えば、切断)する;及び
(d)任意選択で、改変されたNOIを単離する工程を含む、方法。
細胞は、例えば、racプロファージRecE/RecT又はラムダレッドαβδを含む、リコンビニ
アリング-コンピテント細胞である。例えば、細胞は、ラムダレッド組換えシステムを含
む、リコンビニアリング-コンピテント細胞である。一例では、NOIはDNA(例えば、dsDNA
又はssDNA)である。別の例では、NOIはRNAである。単離された改変されたNOIは、Casによ
って産生された改変に加え、改変を含んでいてもよく、例えば、改変は、Casによって作
られた改変の前後に作られる。
本発明のこの態様は、リコンビニアリング方法を制御するため有用である。例えば、Cas
改変(例えば、Cas切断)の開始、タイミング及び/又は持続時間は、脱抑制因子の発現によ
って制御することができる。例えば、NOI及び鋳型核酸又は挿入核酸又はリコンビニアリ
ング方法の他の成分は、最初に細胞に導入され、脱抑制因子の発現が続いてもよく、それ
によって、改変が、Casによって実施され、また鋳型/挿入核酸を使用して、Casによって
改変されたNOIが改変又はコピーされる。例えば、方法は、第二NOIを第一NOIの導入と同
時に又は連続して細胞に導入する工程;脱抑制因子が発現され;Casがプロトスペーサーを
切断し、それによって、第一NOIにおける組換え誘導性末端(recombinogenic ends)を産生
する工程;第二NOIによって含まれるヌクレオチド配列は、第一NOIにおける切断部に又は
それに隣接して挿入され;及び任意選択で、第二NOIの配列と連続する第一NOIの配列を含
む、連続する改変されたNOIが、産生される工程を含む。別の実施形態では、方法は、第
二NOIを使用して、切断部にある又はそれに隣接する第一NOIの配列を取り出す(retrieve)
工程を含む。例えば、本発明の方法に使用することができる配列を挿入する又は取り出す
適切な技術に関し、故に、本明細書中に参照によって組み込まれるWO2017/118598を参照
されたい。
70.ヌクレアーゼがdsDNAヌクレアーゼである、態様69の方法。
71.ヌクレアーゼがssDNAヌクレアーゼである、態様69の方法。
72.ヌクレアーゼがニッカーゼである、態様69の方法。
73.ヌクレアーゼがCas9である、態様69から72のいずれか1つの方法。
74.ヌクレアーゼがCas3であり、任意選択で、抑制因子がCascade(例えば、CasA)を抑制す
る、態様69から72のいずれか1つの方法。
75.単離され改変されたNOIを、第二細胞(例えば、非ヒト脊椎動物、哺乳動物、ヒト、動
物(例えば、雌ウシ、ブタ ヒツジ、ヤギ、家畜、魚類、サケ又はウマ)、げっ歯類、マウ
ス、ラット又はゼブラフィッシュ又はアフリカツメガエル細胞)に導入する工程及び、任
意選択で、そこから子孫細胞を得る工程を含む、態様69から74のいずれか1つの方法。
76.第二細胞が、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS)である、態様75の方法。
例えば、第二細胞は、非ヒト動物(例えば、哺乳動物又は非ヒト脊椎動物)細胞、例えば、
げっ歯類、マウス又はラット細胞である。
77.第二細胞又は子孫細胞を、非ヒト動物(例えば、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、家畜、
魚類、サケ、ウマ、げっ歯類、マウス、ラット、ゼブラフィッシュ又はアフリカツメガエ
ル)に発生させる工程を含む、態様76の方法。
78.動物からタンパク質又は核酸(又はそのヌクレオチド配列)を単離する工程、例えば、
抗体、抗体鎖、抗体可変領域又はその核酸を単離する工程を更に含む、態様77の方法。
79.核酸(又はそのヌクレオチド配列)を発現ベクター又は宿主細胞に、その核酸又はヌク
レオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(例えば、抗体可変ドメイン)を含むタン
パク質の発現のために、挿入する工程、タンパク質を発現させる工程、及びタンパク質を
単離する工程、及び任意選択で、単離されたタンパク質を、ヒト又は動物における使用の
ための医薬に製剤化する工程を更に含む、態様78の方法。
任意選択で、核酸又は配列は、発現ベクターへの挿入の前、途中又は後に、変異される又
は別の核酸又はヌクレオチド配列と融合される。例えば、抗体可変ドメイン配列は、ベク
ター中で、ベクターから抗体鎖を発現させるために、抗体定常領域をコードするヌクレオ
チド配列に対して作動可能に連結することができる。
条項:
本発明の特定の条項は、以下のとおりである:
1.宿主細胞への導入のための核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑制因子によ
って抑制されたCRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b);細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイ;及び/又は細胞にお
けるそれぞれのガイドRNA(gRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、
各cRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり、宿主細胞ゲノム
のそれぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプ
ロトスペーサー配列を改変する、ベクター。
2.ヌクレオチド配列(a)が、宿主細胞における配列の発現のための構成的なプロモーター
又は強力なプロモーターを含む、条項1のベクター。
3.ヌクレオチド配列又はアレイ(b)が、宿主細胞における配列又はアレイの発現のための
構成的なプロモーター又は強力なプロモーターを含む、条項1又は2のベクター。
4.(a)及び(b)が、同じオペロンによって含まれる又は細胞において作動可能な共通プロモ
ーターの制御下にある、いずれかの先行する条項のベクター。
5.宿主細胞が野生型宿主細胞である、いずれかの先行する条項のベクター。
6.1つ又は複数のCas配列の転写が抑制され、任意選択で、タイプI CRISPR/Casシステムの
CasA、B、C、D及びEのうちの1つ又は複数の転写が抑制される、いずれかの先行する条項
のベクター。
7.宿主細胞ゲノムのCas改変が、
(a)宿主細胞を死滅させる;
(b)細胞又はエピソームの成長又は増殖を減少させる;
(c)細胞又はエピソームの成長又は増殖を増加させる;
(d)前記プロトスペーサー配列を含む又はそれに隣接する、ヌクレオチド配列の転写を
減少させる又は防止する;又は
(e)前記プロトスペーサー配列を含む又はそれに隣接する、ヌクレオチド配列の転写を
増加させる、いずれかの先行する条項のベクター。
8.抑制因子がH-NS、StpA、LRP又はCRPである、いずれかの先行する条項のベクター。
9.脱抑制因子が、宿主細胞において、それぞれ、H-NS、StpA、LRP又はCRP抑制因子との複
合体を形成可能であり、CRISPR/Casシステムの抑制を防止する又は減少させる、変異体H-
NS、StpA、LRP又はCRPである、いずれかの先行する条項のベクター。
10.脱抑制因子がLeuO又はLysR又はその機能的な均等物である、いずれかの先行する条項
のベクター。
11.細胞が細菌又は古細菌細胞である、いずれかの先行する条項のベクター。
12.発現可能なhtpG配列を含む、いずれかの先行する条項のベクター。
13.細胞が、Cascade及びCas3を含むCRISPR/Casシステムを含む、いずれかの先行する条項
のベクターであって、Cascadeが、宿主細胞において抑制され、
(i)前記Cascade抑制の脱抑制因子をコードする発現可能なヌクレオチド配列;及び
(ii)宿主細胞における脱抑制Cascadeと共に機能できる、Cas3をコードする発現可能な
ヌクレオチド配列を含み;ヌクレオチド配列が、宿主細胞において発現可能である、ベク
ター。
14.(i)及び(ii)のヌクレオチド配列が、細胞において作動可能な1つ又は複数の構成的な
プロモーターの制御下にある、条項13のベクター。
15.細菌又は古細菌宿主細胞への導入のための、(任意選択で、いずれかの先行する条項に
記載の)核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑制因子によって天然で抑制され
る、内因性CRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b);細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイ;及び/又は細胞にお
けるそれぞれのガイドRNA(gRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み;
各cRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり、宿主細胞ゲノム
のプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロトスペー
サー配列を改変し、
ここで、
(c)抑制因子が、細胞ゲノムによってコードされるH-NS、StpA、LRP若しくはCRP又はそ
の機能的な均等物であり;
(d)ヌクレオチド配列(a)が、宿主細胞における配列の発現のための構成的なプロモータ
ー又は強力なプロモーターを含み;及び
(e)ヌクレオチド配列又はアレイ(b)が、宿主細胞における配列の発現のための構成的な
プロモーター又は強力なプロモーターを含む、ベクター。
16.脱抑制因子が、LeuO又はその機能的な均等物;又は抑制因子の変異体;又は抑制因子を
コードする宿主細胞によって含まれるヌクレオチド配列に相補的なsiRNAである、条項15
のベクター。
17.細胞が、大腸菌、ストレプトコッカス又はサルモネラ細胞、任意選択で、EHEC大腸菌
又はS.エンテリカ血液型亜型チフィムリウム細胞である、いずれかの先行する条項のベク
ター。
18.プロトスペーサー配列が、染色体配列、内因性宿主細胞配列、野生型宿主細胞配列、
非ウイルス染色体宿主細胞配列であり、外因性配列及び/又は非ファージ配列ではない、
いずれかの先行する条項のベクター。
19.CRISPR/CasシステムがCas3及び抑制Cascadeを含み、脱抑制因子が細胞におけるCascad
eを脱抑制可能であり、ヌクレオチド配列又はアレイ(b)が脱抑制CRISPR/Casシステムと共
に作動可能なCRISPR反復配列を含み、反復配列が配列番号49~52から選択される配列又は
前記選択される配列と少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%同一であ
る配列を含む又はそれからなる、いずれかの先行する条項のベクター。
20.Cas3が、配列番号58又は60から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少
なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%同一である配列を含む、条項19の
ベクター。
21.Cas3が、ヌクレオチド配列AWGを含む又はそれからなるPAMと共に作動可能である、条
項19又は20のベクター。
22.Cascadeが抑制CasAを含み、脱抑制因子がCasAを脱抑制可能であり、CasAが配列番号66
若しくは68から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少なくとも70、75、80
、85、90、95、96、97、98若しくは99%同一である配列を含む、条項19、20又は21のベク
ター。
23.細胞がS.エンテリカ細胞であり、CRISPR/Casシステムが抑制されたタイプE(Cse) Cas
を含み、脱抑制因子がCasを脱抑制可能であり、任意選択で、脱抑制因子がLeuO又はその
機能的な均等物である、条項1から18のいずれか1つのベクター。
24.CRIPSR/CasシステムがCas3及び抑制Cascadeを含み、脱抑制因子が細胞におけるCascad
eを脱抑制可能であり、ヌクレオチド配列又はアレイ(b)が脱抑制CRISPR/Casシステムと共
に作動可能なCRISPR反復配列を含み、反復配列が配列番号53又はそれと少なくとも70、75
、80、85、90、95、96、97、98又は99%同一である配列を含む又はそれからなる、条項1か
ら18及び23のいずれか1つのベクター。
25.Cas3が、配列番号56若しくは64から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列
と少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98若しくは99%同一である配列を含む、
条項24のベクター。
26.Cascadeが抑制CasAを含み、脱抑制因子がCasAを脱抑制可能であり、CasAが配列番号70
若しくは72から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少なくとも70、75、80
、85、90、95、96、97、98若しくは99%同一である配列を含む、条項24又は25のベクター

27.ヌクレオチド配列又はアレイ(b)が、細胞において脱抑制CRISPR/Casシステムと共に作
動可能なCRISPR反復配列を含み、反復配列が細胞のCRISPR/Casシステムによって含まれる
宿主アレイにおける反復と少なくとも90%同一であり、ベクター又は配列又はアレイ(b)が
、宿主CRISPR/CasシステムのCasヌクレアーゼによって認識されるPAMを含まない、いずれ
かの先行する条項のベクター。
28.CasA、B、C、D及びEヌクレオチド配列からなる群からの配列を含まない又は、前記群
の配列の全てを含まない、いずれかの先行する条項のベクター。
29.Cas1、Cas2、Cas5及びCas6配列からなる群からの配列を含まない、条項1から28のいず
れか1つのベクター。
30.Cas3ヌクレオチド配列を含まない、いずれかの先行する条項のベクター。
31.ヒト又は動物対象における疾患又は状態を治療する又は予防する医学的な使用のため
の、いずれかの先行する条項のベクターであって、宿主細胞が、対象によって含まれるベ
クター。
32.ヒト又は動物マイクロバイオームにおいて、前記宿主細胞を死滅させるための又はそ
の成長若しくは増殖を減少させるための、医学的使用のための、いずれかの先行する条項
のベクター。
33.マイクロバイオームが、複数の前記宿主細胞を含み、宿主細胞の種又は株とは異なる
種又は株の更なる細胞を含み、更なる細胞が、プロトスペーサー配列を含まない、条項32
のベクター。
34.任意選択で、ベクターが同一である、いずれかの先行する条項の複数のベクターを含
む複数のバクテリオファージ又はファージミド。
35.ファージが、宿主細胞に感染可能であるが、更なる細胞に感染可能ではない、又はフ
ァージミドが、そのようなファージによって含まれる、条項33に従属するときの、条項34
の複数のバクテリオファージ又はファージミド。
36.いずれかの先行する条項に記載の複数のベクター、バクテリオファージ又はファージ
ミドを含み、任意選択で、ヒト又は動物における疾患又は状態を治療する又は予防するた
めの、1つ又は複数の医療薬又は抗生物質を更に含む医薬。
37.ヒト又は動物対象における疾患又は状態を治療する又は予防する方法であって、いず
れかの先行する条項のベクター、複数のベクター又は医薬を対象に投与する工程を含み、
対象のマイクロバイオームによって含まれる宿主細胞は、細胞の内因性の脱抑制Casによ
って改変され、治療又は予防が実施される、方法。
38.野生型大腸菌又はサルモネラ宿主細胞を死滅させる、条項37の方法。
39.宿主細胞への導入のための核酸ベクターであって、細胞が、細胞における抑制因子に
よって抑制されたCRISPR/Casシステムを含み、ベクターが、
(a)細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコードするヌク
レオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチ
ド配列;及び
(b)(i)細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のための、CRISPRアレイ又はCRISPRスペ
ーサー配列;
(ii)細胞におけるガイドRNA(gRNA)をコードするヌクレオチド配列の導入のための部
位を含み;前記cRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Casをガイド可能であり、宿主細
胞ゲノムのそれぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソ
ームのプロトスペーサー配列を改変する、ベクター。
40.(i)又は(ii)の前記部位への挿入が、条項1から33のいずれか1つに記載のベクターを形
成させる、条項39のベクター。
41.細菌又は古細菌宿主細胞への導入のための、複数の核酸ベクターを含み、任意選択で
、ヒト又は動物における疾患又は状態を治療する又は予防するための、1つ又は複数の医
療薬又は抗生物質を更に含む医薬であって;
(i)各細胞が、細胞におけるH-NS及び/又はStpAから選択される抑制因子によって抑制され
る、CRISPR/Casシステムを含み、
(ii)ベクターが、細胞におけるCRISPR/Casシステムを脱抑制可能である脱抑制因子をコー
ドするヌクレオチド配列を含み、配列が、任意選択で、強力な及び/又は構成的なプロモ
ーターの制御下で脱抑制因子を産生するために、細胞において発現可能であり;及び
ベクターが、細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイを欠いており
;及び細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド
配列を欠いている、医薬。
42.Cascade Cas、Cas3又はCas9が抑制される、いずれかの先行する条項のベクター、バク
テリオファージ、ファージミド、医薬又は方法。
43.システムが
(a)配列番号58、60、66及び68から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少な
くとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一である
アミノ酸配列を含む、又は配列番号49~52から選択される配列を含む反復及びAWGを含む
又はそれからなるPAMと共に作動可能な、そのオルソログ又はホモログである、Cas;又は
(b)配列番号56、64、70及び72から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少な
くとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一である
アミノ酸配列を含む、又は配列番号53を含む反復と共に作動可能な、そのオルソログ又は
ホモログである、Cas;又は
(c)配列番号62から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも70、75、8
0、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一であるアミノ酸配列を
含む、又はNNAGAAW、NGGNG又はAWを含む又はそれからなるPAMと共に作動可能な、そのオ
ルソログ又はホモログである、Casを含む、いずれかの先行する条項のベクター、バクテ
リオファージ、ファージミド、医薬又は方法。
44.システムが、
(a)配列番号49~52から選択される配列(又は前記選択される配列と少なくとも70、75、
80、85、90、95、96、97、98又は99%同一である配列)を含む反復及びAWGを含む又はそれ
からなるPAM;
(b)配列番号53(又は前記選択される配列と少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97
、98又は99%同一である配列)を含む反復;又は
(c)NNAGAAW、NGGNG又はAWを含む又はそれからなるPAMを含む、いずれかの先行する条項
のベクター、バクテリオファージ、ファージミド、医薬又は方法。
45.システムが抑制Casを含み、Casが、
(a)AWGを含む又はそれからなるPAM(任意選択で、Casヌクレアーゼは、配列番号58、60
、66及び68から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも70、75、80、85
、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一であるアミノ酸配列を含む);
又は
(b)NNAGAAW、NGGNG又はAWを含む又はそれからなるPAM(任意選択で、Casヌクレアーゼは
、配列番号62から選択されるアミノ酸配列又は選択される配列と少なくとも70、75、80、
85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一であるアミノ酸配列を含む
)と共に作動可能である、いずれかの先行する条項のベクター、バクテリオファージ、フ
ァージミド、医薬又は方法。
46.抑制因子が、
(i)配列番号17、19、21、23、25及び27から選択されるアミノ酸配列又は前記選択され
る配列と少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80
%)同一であるアミノ酸配列;又は
(ii)配列番号29、31、33及び35から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と
少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一で
あるアミノ酸配列を含む、いずれかの先行する条項のベクター、バクテリオファージ、フ
ァージミド、医薬又は方法。
47.脱抑制因子が、
(i)配列番号3、5、7、9、11、13及び15から選択されるアミノ酸配列又は前記選択され
る配列と少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80
%)同一であるアミノ酸配列;又は
(ii)配列番号37、39及び41から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少な
くとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一である
アミノ酸配列;又は
(iii)配列番号43、45及び47から選択されるアミノ酸配列又は前記選択される配列と少
なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%(例えば、少なくとも80%)同一であ
るアミノ酸配列を含む、いずれかの先行する条項のベクター、バクテリオファージ、ファ
ージミド、医薬又は方法。
48.各ベクターが、Casコードヌクレオチド配列又はシステムの抑制Casをコードするヌク
レオチド配列を欠く、いずれかの先行する条項のベクター、バクテリオファージ、ファー
ジミド、医薬又は方法。
【0173】
同じベクターに脱抑制因子コード配列及びcrRNA又はgRNAコード配列を提供することは
、宿主細胞ゲノムのCas媒介性改変を生じさせるこれらの手段が、同時に細胞に導入され
るのを保証するために有用である。それ故、これにより、脱抑制が作用する全ての細胞も
、Cas媒介性改変の手段と共に供給されることが保証される。別々のベクターが様々な成
分の代わりに使用される場合に、これが保証及び制御するのはより困難であろう;いくつ
かの細胞は脱抑制因子を受け取るが、crRNA/gRNAを受け取らない可能性があり、逆もまた
同様である。本発明は、成分が一緒に送達されるのを保証することによって、ゲノムでコ
ードされるcrRNA/gRNAコード配列前改変が可能ではない野生型宿主細胞を扱うのに有用で
ある;そのような細胞は、例えば、ヒト、動物又は天然環境(例えば、土壌又は水路又は水
源)のマイクロバイオームによって含まれうる。脱抑制因子コード配列及びcrRNA又はgRNA
コード配列が同じベクターによって含まれる本発明の態様は、それ故に、ヒト又は動物で
実践される医療の有用な方法である。更に、これらの態様は、標的宿主細胞への配列の同
時伝播(co-transfer)に関する潜在性が、各配列のより予想可能な投薬を可能とするので
、故に、例えば、マイクロバイオームによって含まれる、レシピエント宿主細胞に対する
組成物の医学的な又は他の使用にとって信頼性が高い投薬を許容する。更に、脱抑制因子
コード配列及びcrRNA又はgRNAコード配列が同じベクターによって含まれる態様は、例え
ば、共通プロモーターによって又はベクターを設計することによって配列の発現の同時制
御を許容し、これらの配列を同じオペロンによって含ませる。例えば、誘導性プロモータ
ーは、本発明のベクターが宿主細胞に導入されており、誘発剤の供給(例えば、ベクター
が投与されている又は投与されるヒト又は動物に対する投与)が脱抑制因子及びcrRNA/gRN
Aの同時発現に関するプロモーターのスイッチを入れる際に使用されるであろう。
【0174】
他の実施形態では、構成的なプロモーターの使用は、これが宿主細胞における脱抑制因
子及びcrRNA/gRNAの発現を保証するので、有利であり、これが次に、内因性に産生される
crRNA又はgRNAによってガイドされるというよりむしろ、脱抑制Casが本発明のcrRNA又はg
RNAによってガイドされる(標的プロトスペーサーを切断する又はその他の点で改変する)
機会を増加させる。医学的な使用に関して、例えば、ベクターがヒト又は動物対象(例え
ば、その腸マイクロバイオーム)に投与される場合、それが構成的な発現を保証し、投薬
を制御し、誘導因子が標的細胞に到達するとの見込みのもとに、マイクロバイオームにお
ける脱抑制因子及びcrRNA/gRNAの有効なレベルの有効な誘導及び産生のために有効な用量
で、誘導因子(代わりに誘導性プロモーターが使用される)を投与することによって活性の
スイッチを入れることに頼ることを試すよりむしろ、体内のそれらの標的にベクターが到
達する機会を最大化するのに有用でありうる。同様に、強力なプロモーターは、脱抑制の
機会を増加させることに及び本発明のcrRNA/gRNAの望ましい発現が高い(及びおそらく内
因性にコードされるcrRNA又はgRNAのバックグラウンドレベルを生産量で凌ぐ)状態にある
機会も増加させることに有用である。それ故、強力なプロモーターの使用は、標的プロト
スペーサーの切断(又は他の改変)が宿主細胞において起こる機会を増加させる。
【0175】
本明細書に記載された特定の実施形態は例示として示されており、本発明の限定として
示されていないことが理解される。本発明の主たる特徴は、本発明の範囲を逸脱すること
なく、様々な実施形態に採用することができる。当業者は、ルーチンの研究だけを使用し
て、本明細書において記載される特定の手順に対する多数の均等物を認識する又は確認す
ることが可能である。そのような均等物は、本発明の範囲内であると考えられ、特許請求
の範囲によって網羅される。本明細書中で言及されている全ての刊行物及び特許出願は、
本発明が関係する当業者の技術レベルを示している。全ての刊行物及び特許出願並びに全
ての同等の米国特許出願及び特許は、あたかも各々個々の刊行物又は特許出願が参照によ
り組み込まれることが、具体的且つ個別に示されたのと同程度に、参照により本明細書に
組み込まれる。特許請求の範囲及び/又は本明細書において、「を含むこと」という用語
と共に使用されるときの、「ある(a)」又は「ある(an)」という語の使用は、「1つの」を
意味しうるが、また、「1つ又は複数の」、「少なくとも1つの」、及び「1つ又は1つを超
える」という意味とも合致する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、
代替物だけ、又は代替物が相互に排他的であることを指すことが明示的に指し示されない
限りにおいて、「及び/又は」を意味するように使用されるが、本開示は、代替物だけ、
及び「及び/又は」を指す定義を支持する。本出願を通して、「約」という用語は、値が
、値を決定するのに採用されるデバイス、方法についての誤差の固有の変動、又は研究対
象間に存在する変動を含むことを指し示すように使用される。
【0176】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される「含むこと(comprising)」(並びに、
「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」等、「含むこと(comprising)」の任意の形
態)、「有すること(having)」(並びに、「有する(have)」及び「有する(has)」等、「有
すること(having)」の任意の形態)、「含むこと(including)」(並びに、「含む(includes
)」及び「含む(include)」等、「含むこと(including)」の任意の形態)、又は「含有する
こと(containing)」(並びに、「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」等、「
含有すること(containing)」の任意の形態)という語は、包含的又はオープンエンドなも
のであり、列挙されていない、更なる要素又は方法の工程を除外するものではない。
【0177】
本明細書において使用される「又はその組合せ」という用語又は同様の用語は、用語に
先行して列挙された項目についての、全ての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C
、又はその組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCのうちの少なくとも1つを含むこ
とを意図し、特定の文脈において、順序が重要である場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、AC
B、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことも意図する。この例を続けると、BB、
AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等、1つ又は複数の項目又は用語の繰り返しを
含む組合せが明示的に含まれる。当業者は、文脈から他に明らかでない限り、典型的には
任意の組合せにおける項目又は用語の数に制限がないことを理解する。
【0178】
文脈から他に明らかでない限り、本開示の任意の部分は、本開示の任意の他の部分と組
み合わせて読むことができる。
【0179】
本明細書において開示され、特許請求される組成物及び/又は方法の全ては、本開示に
照らして、不要な実験を伴わずに作製し、実行することができる。本発明の組成物及び方
法を、好ましい実施形態の観点から記載してきたが、当業者には、本発明の概念、精神、
及び範囲から逸脱しない限りにおいて、本明細書において記載される組成物及び/若しく
は方法、並びに方法の工程又は工程の順番に、変動を適用しうることが明らかである。当
業者に明らかなこれらの類似の代用及び改変は全て、添付の特許請求の範囲によって規定
される本発明の精神、範囲及び概念の範囲内にあるとみなされる。
【0180】
本発明は、以下の非限定的な実施例において、より詳細に記載される。
【実施例
【0181】
(実施例1):医学的使用
本発明の適用により、ヒト又は動物における宿主細胞細菌感染を治療する、予防する又
は減少させる(例えば、その拡散又は拡大を減少させる)ための、本明細書に記載される複
数のベクター、医薬及び方法が提供される。
【0182】
第一の例では、本発明の(HM)-アレイ及びLeuO-コードヌクレオチド配列を改変する宿主
細胞は、クラスI、II又はIIIスタフィロコッカスパッケージ化ファージ(カウドウイルス
目(Caudovirales)又はミオウイルス科(Myoviridae)ファージ)の集団に含まれる。ファー
ジ集団は、メチシリン又はバンコマイシンと併用して又は併用せずにMRSA感染患者に投与
される。1つの試験では、ファージHM-アレイは、(i)内在性スタフィロコッカス・アウレ
ウスCRISPRアレイのリーダープロモーターの3'の20ヌクレオチドの領域及び(ii)宿主細胞
におけるメチシリン耐性遺伝子を標的とする。バンコマイシンが投与されるとき、常用量
より低用量が患者に投与される。宿主細胞感染がノックダウンされ、ファージ医療に対す
る耐性が確立されない又は通常より低い割合又は重度で確立されると予想される。他の試
験では、これらの試験におけるファージも必須スタフィロコッカス・アウレウス遺伝子ft
sZを標的とする以外、設計は同一である(Liangら、Int J Infect Dis. 2015 Jan;30:1~6
. doi: 10.1016/j.ijid.2014.09.015. Epub 2014 Nov 5、「Inhibiting the growth of m
ethicillin-resistant Staphylococcus aureus in vitro with antisense peptide nucle
ic acid conjugates targeting the ftsZ gene」)。LeuOは、宿主ブドウ球菌細胞におい
て発現され、宿主細胞においてH-NS抑制Casを脱抑制する。ファージベクターは任意のCas
コード配列を欠いているが、代わりにHM-アレイから発現されるcrRNAが宿主ゲノムによっ
てコードされる内因性Casと共に操作する。
【0183】
更なる試験は、ファージKエンドリシンをメチシリンに加えて又はその代わりに投与し
た以外、上記の試験を反復する。
【0184】
(実施例2):異なる微生物相種の混合共同体における選択的細菌集団増殖阻害
本発明者らは、三種の混合集団における特定の細菌種の選択的増殖阻害を実証した。本
発明者らは、ヒト及び動物の腸内微生物相に見出される種を選択した(S.サーモフィルスD
SM20617(T)、ラクトバチルス・ラクティス及び大腸菌)。本発明者らは、2つのグラム陽性
種(S.サーモフィルス及びL.ラクティス)を含めて、これが前者の種の選択的に死滅させる
能力に影響するかどうかを確認し;更に困難性を増加させるために(及び微生物相における
状況をより綿密にシミュレートするために)、L.ラクティスを選択した、その理由は、こ
れが、(二種の間の高い16sリボソームRNA配列同一性によって示されるとおり)S.サーモフ
ィルスに系統学的に関連する種であるからである。S.サーモフィルス及びL.ラクティスは
、両方ともファーミキューテス門細菌である。更に、微生物相をシミュレートするために
、ヒト片利共生腸内種(大腸菌)を含めた。
【0185】
1.材料及び方法
US20160333348の実施例6に示す方法を株に使用した(選択培地が2.5gl-1の2-フェニルエ
タノール(PEA)を補充したTH培地であった以外)。
【0186】
1.1 エレクトロコンピテントL.ラクティス細胞の調製
0.5Mショ糖及び1%グリシンを補充したTH培地中のL.ラクティスの一晩培養した培養物を
、5mlの同じ培地中で100倍希釈し、0.2~0.7の間のOD600まで30℃で増殖させた(播種後約
2時間)。細胞を、7000×g、4℃、5分間で回収し、5mlの氷冷洗浄バッファー(0.5Mショ糖+
10%グリセロール)で三回洗浄した。細胞を洗浄後、それらをエレクトロポレーションバッ
ファー(0.5Mショ糖、10%グリセロール及び1mM MgCl2)にOD600が15~30になるように懸濁
した。エレクトロポレーションバッファー中の細胞は、使用するまで、4℃で保存された(
1時間以内)、又は、エッペンドルフチューブに50μlずつ分注し、それらを液体窒素中で
凍結し、後で使用するために-80℃で保管した。
【0187】
全種のエレクトロポレーション条件は、US20160333348の実施例6に記載のとおりであっ
た。
【0188】
1.2 CRISPRアレイの活性化:共同体実験
S.サーモフィルスDSM20617、L.ラクティスMG1363及び大腸菌TOP10を、S.サーモフィル
スのDNAポリメラーゼIII及びtetAをターゲッティングするCRISPRアレイを含有するプラス
ミドで遺伝的に形質転換した。形質転換後、全ての細胞を単独で、及び、共培養で、37℃
で3時間増殖させ、プラスミド中にコードされた抗生物質耐性を発生させるための回復を
許容した。本発明者らは、CRISPRでコードされた増殖阻害のリードアウトとして形質転換
効率を使用すると決定した。したがって、細胞を回復させた後に、培養物をTH培地にプレ
ーティングし、TH培地にPEAを補充し、MacConkey寒天には全てカナマイシンを補充し、1%
キシロースで誘導した。
【0189】
2.結果
2.0 L.ラクティス、大腸菌及びS.サーモフィルスの間の系統発生的距離
S.サーモフィルス及びL.ラクティスの16S rrNAコード化DNA配列における計算された配
列類似性を、83.3%と決定した。次の16S配列を使用した:大腸菌:AB030918.1、S.サーモフ
ィルス:AY188354.1、L.ラクティス:AB030918。配列を次のパラメータを用いてneedle(htt
p://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/nucleotide.html)でアラインした:-gapope
n 10.0 -gapextend 0.5 -endopen 10.0 -endextend 0.5 -aformat3 pair -snucleotide1
-snucleotide2。US20160333348の図11は、S.サーモフィルス、L.ラクティス及び大腸菌
からの16S配列の最尤推定系統樹(maximum-likelihood phylogenetic tree)を示す。
【0190】
2.1 増殖条件及び選択培地
S.サーモフィルス及びL.ラクティスは、一般的に多くの発酵食品やヨーグルトに一緒に
使用されている。これらが宿主と密接な関係を形成する腸内微生物であることが一般的に
知られていること並びにS.サーモフィルス及びL.ラクティスの16SリボソームRNA領域の以
前の特徴付けで、これらの生物が系統学的に密接に関連していることを示したこと(Ludwi
gら、1995)から、本発明者らは、これらの株を選択した。並行して、本発明者らはまた、
大腸菌が腸微生物共同体で一般に見られるため、本発明者らの混合集団共培養実験におい
てこの生物の増殖も評価した。最初に、本発明者らは、本発明者らが共培養実験に使用す
ることを計画した全ての株の増殖を支持する、細菌株及び培養プロトコールを確立するこ
とに着手した。本発明者らは、全ての株が37℃でのTHブロス中での増殖を支持することが
できることを見出した(US20160333348の図3)。
【0191】
混合培養から異なる細菌を識別することは、異なる種の細胞数を決定するために重要で
ある。MacConkey寒天で大腸菌を選択的に増殖させることが可能であるが、S.サーモフィ
ルスの選択的増殖のための特定の培地は存在しない。PEA寒天は、グラム陰性菌(大腸菌)
からグラム陽性菌(S.サーモフィルス)を単離するために使用される選択培地である。更に
、異なる濃度のPEAが異なるグラム陽性菌種及び株の増殖を部分的に阻害し、これにより
本研究で使用した他のグラム陽性細菌の間の選択が許容される。2.5gl-1のPEAの使用は、
L.ラクティス及び大腸菌の増殖を制限しながら、S.サーモフィルスを選択的に増殖させる
ことが証明された。
【0192】
全ての株を、カナマイシン選択マーカーを有するpBAV1KT5のベクター主鎖を使用したプ
ラスミドで形質転換した;本発明者らは、プラスミドを維持しながら細胞を増殖させるの
に、30μg ml-1のカナマイシンを補充した培地を用いることが十分であることを見出した
【0193】
2.3 混合集団における形質転換及び選択的増殖阻害
本発明者らは、S.サーモフィルス、L.ラクティス及び大腸菌をCRISPRアレイを含むプラ
スミドで形質転換し、当量部で合わせた全細菌種の共同体でこれらを培養し、これは本発
明者らがS.サーモフィルスに特異的に細胞死を引き起こすことができたかを決定すること
を許容した。本発明者らは、全種をpBAV1KT5-XylR-CRISPR-PXylA又はpBAV1KT5-XylR-CRIS
PR-Pldha+XylAプラスミドのいずれかで形質転換した。
【0194】
US20160333348の図12は、pBAV1KT5-XylR-CRISPR-PxylA又はpBAV1KT5-XylR-CRISPR-Pldh
A+XylAプラスミドのいずれかを担持する大腸菌、L.ラクティス及びS.サーモフィルスの共
培養における選択的ストレプトコッカス・サーモフィルス増殖阻害を示す。pBAV1KT5-Xyl
R-CRISPR-PxylA又はpBAV1KT5-XylR-CRISPR-PldhA+XylAプラスミドを担持する大腸菌の間
に増殖の差は観察されなかった(中央カラム)。しかしながら、S.サーモフィルス(2.5gl-1
PEAを補充したTH寒天上で選択的に増殖、最後のカラム)は、本発明者らの予想どおり、p
BAV1KT5-XylR-CRISPR-PxylA(強)又はpBAV1KT5-XylR-CRISPR-PldhA+XylA(弱)プラスミドの
間の形質転換効率の減少を示す。したがって、本発明者らは、細胞の混合集団における標
的とするS.サーモフィルス亜集団の選択的な増殖阻害を実証した。
【0195】
脱抑制された内因性Casを利用することによる混合共同体における大腸菌のターゲティン

本発明のこの例の例示的な適用は、少なくとも3つの異なる細菌種を含む混合細菌集団
によって含まれる大腸菌細胞のターゲティングであり、これは本発明の1つ又は複数のベ
クターの、大腸菌細胞(例えば、大腸菌O157 H7 EDL933(EHEC)細胞)への導入によるもので
あり、これは、抑制Cas3及び/又はCascade(又はそのCasA)(ここで、H-NSが、Cas及び/又
はCascadeを抑制する)を含む。ベクターは、(a)細胞におけるCascade又はCasを脱抑制可
能である脱抑制因子(例えば、LeuO)をコードするヌクレオチド配列であって、細胞におい
て発現可能であり、脱抑制因子を産生するヌクレオチド配列;及び(b)各crRNA又はgRNAが
、脱抑制因子の存在下で、Cas又はCascadeのCasをガイド可能であり、宿主細胞ゲノムの
それぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主によって含まれるエピソームのプロ
トスペーサー配列を改変する;細胞における1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRア
レイ;及び/又は細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコー
ドする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む。成分(b)は、脱抑制Cas又はCascadeと共に
作動可能であるCRISPR反復配列を含み、例えば、反復配列は、配列番号49~52から選択さ
れる配列を含む又はそれからなる。一例では、脱抑制Casは、配列番号58又は60のアミノ
酸配列を含むCas3である。一例では、脱抑制Casは、配列番号66又は68のアミノ酸配列を
含むCasAである。任意選択で、標的ヌクレオチド配列又はプロトスペーサーは、宿主細胞
のゲノム中のPAMの直ぐ3'に少なくとも5、6、7、8、9又は10連続ヌクレオチドの配列を含
み、PAMはAWG、AAG、AGG、GAG及びATGから選択される。
【0196】
脱抑制された内因性Casを利用することによる混合共同体におけるS.エンテリカのターゲ
ティング
本発明のこの例の例示的な適用は、少なくとも3つの異なる細菌種を含む混合細菌集団
によって含まれるS.エンテリカ細胞のターゲティングであり、これは本発明の1つ又は複
数のベクターの、S.エンテリカ細胞(例えば、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血
液型亜型チフィムリウム細胞、例えば、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血液型亜
型チフィムリウムLT2細胞又はサルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血液型亜型チフィ
ムリウムパラチフィA細胞)への導入によるものであり、これは、抑制Cas3及び/又はCasca
de (又はそのCasA)(ここで、H-NSが、Cas及び/又はCascadeを抑制する)を含む。ベクター
は、(a)細胞におけるCascade又はCasを脱抑制可能である脱抑制因子(例えば、LeuO)をコ
ードするヌクレオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生す
るヌクレオチド配列;及び(b)各crRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Cas又はCascad
eのCasをガイド可能であり、宿主細胞ゲノムのそれぞれのプロトスペーサー配列を改変す
る又は宿主によって含まれるエピソームのプロトスペーサー配列を改変する;細胞におけ
る1つ又は複数のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイ;及び/又は細胞におけるそれぞれのガ
イドRNA(gRNA、例えば、単一ガイドRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を
含む。成分(b)は、脱抑制Cas又はCascadeと共に作動可能であるCRISPR反復配列を含み、
例えば、反復配列は、配列番号53を含む又はそれからなる。一例では、脱抑制Casは、配
列番号56又は64のアミノ酸配列を含むCas3である。一例では、脱抑制Casは、配列番号70
又は72のアミノ酸配列を含むCasAである。任意選択で、標的ヌクレオチド配列又はプロト
スペーサーは、宿主細胞のゲノム中のPAMの直ぐ3'に少なくとも5、6、7、8、9又は10連続
ヌクレオチドの配列を含み、PAMはCas3と共に作動可能である。
【0197】
(実施例3):混合細菌共同体における種及び株の選択的増殖阻害のためのベクターコードシ
ステム
本発明者らは、実施例2において、驚くべきことに、異なる種の混合共同体における選
択的集団増殖阻害のために宿主細菌における内因性Casヌクレアーゼ活性を利用する可能
性を確立した。本発明者らは、次に、異なる種の混合共同体における選択的集団増殖阻害
のために、代わりにベクターにコードされたCas活性を使用する可能性を探った。本発明
者らは、3つの異なる種の混合集団における特定の細菌種及び、更に標的細菌に対して代
替的な株を含んだ選択的増殖阻害を実証した。本発明者らは、驚くべきことに、所定の標
的種のうちの標的株のみの選択的増殖阻害を示すことができた。更に、代替的な株は、ベ
クターにコードされたCRISPR/Casシステムによって標的とされず、ヒト又は動物の腸内微
生物相要素を模倣した混合細菌共同体における、このようなベクター媒介性システムの細
かな特異性を確立するのに望ましかった。
【0198】
本発明者らは、ヒト及び動物の腸内微生物相で見出された種を選択した(枯草菌、ラク
トバチルス・ラクティス及び大腸菌)。本発明者らは、ヒト片利共生腸内種である大腸菌
の2つの株を含めた。本発明者らは、密接に関連した株ではあるが、一方の株では標的の
死滅に使用できるが、他方の株では標的の死滅に使用できない配列の差異を有する株を、
区別できるかどうかを確認することは興味深いと考えた。これは、微生物相中の大腸菌の
いくつかの株が望ましく、一方で他の株は望ましくない(例えば、ヒト又は動物に対して
病原性である)、故に、その株をノックダウンするCas改変の標的となり得るため、興味深
かった。
【0199】
1. 材料及び方法
1.1. プラスミド及び株
全ての株を、他に示されない限り、好気的条件下でTodd-Hewittブロス(TH)(T1438 Sigma-
Aldrich社)中、37℃で培養した。株を、25%グリセロール中、-80℃で保管した。
自己標的化sgRNA-Cas9複合体は、それぞれテオフィリンリボスイッチ及びAraC/PBAD発現
システムによって厳密に調節された。大腸菌内で安定に保持されるために、Cas9の厳密な
調節が望ましい。プラスミドは、大腸菌のK-12株をターゲッティングするシングルガイド
RNA(sgRNA)と共に、ストレプトコッカス・ピオゲネスからの外因性Cas9を含有していた。
したがって、K-12由来株TOP10は、システムが活性化されたときに二本鎖自己切断及びそ
の結果としての死を受けやすかった。Nissle等の大腸菌株は、同じ標的配列を有していな
い、それ故に、それらはsgRNA-Cas9活性の影響を受けなかった。使用された配列を示す、
USSN15/478,912(2017年4月4日出願、本明細書中に参照によって組み込まれる)中の表9~1
1を参照されたい。本発明者らは、標的細胞に保存され、複数コピー(7コピー)で存在する
標的配列(リボソームRNAコード配列)を選択し、これにより、宿主細胞ゲノムを複数の場
所で切断する機会が増加し、シングルgRNAデザインを用いた死滅が促進された。
図1は、spCas9の発現及びリボソームRNAサブユニット16sをターゲッティングする自己タ
ーゲッティングsgRNAを制御する調節因子を示す。
【0200】
1.2. 鑑別増殖培地
全ての株を、37℃で20時間、TH培地で増殖させた。枯草菌のための選択培地は、2.5gl-1
の2-フェニルエタノール(PEA)を補充したTH培地であった。PEAを培地に添加し、121℃で1
5分間、15psiでオートクレーブ処理した。寒天プレートを、1.5%(wt/vol)寒天を対応する
培地に添加することにより調製した。
【0201】
1.3. クローニング
大腸菌(One Shot(登録商標)ThermoFisher社 TOP10 Chemically Competent細胞)を、全サ
ブクローニング手順に使用した。PCRを、Phusion(商標)ポリメラーゼを使用して実施した
。製造元のプロトコールに従って、全てのPCR産物を、Macherey-Nagel(商標)のNucleospi
n(商標)Gel及びPCR Clean-upで精製した。精製した断片を、総量34μl中に1μlの酵素を
有する1×FD緩衝液において、制限酵素DpnIで分解した。製造元のプロトコールに従って
、分解反応物を、再び、Macherey-NagelのNucleospin Gel及びPCR Clean-upで精製した。
製造元(New England Biolab)のプロトコールに従って、10μlの反応液中で、Gibsonアセ
ンブリを行った。
製造元の説明書に従い、Qiagenキットを使用してプラスミドDNAを調製した。グラム陽性
株に対する改変は、細胞溶解を促進するために0.5%グリシン及びリゾチームを補充した培
地中で細菌を増殖させることを含んだ。
【0202】
1.4. 形質転換
1.4.1 エレクトロコンピテント大腸菌細胞及び形質転換
市販のエレクトロコンピテント細胞を、クローニング及び実験に使用した(One Shot(登録
商標)Thermo Fisher社 TOP10エレクトロコンピテント大腸菌)。エレクトロポレーション
を、標準設定を使用して実施した: Electro Cell Manipulator(BTX社 Harvard Apparatus
ECM630)を使用する1800V、25μF及び200Ω。パルスの後、1mlのLB-SOC培地を添加し、細
胞を37℃で1時間インキュベートした。形質転換細胞を、対応する抗生物質を含有する、L
B寒天にプレーティングした。
【0203】
1.5. 大腸菌及び共同体実験におけるsgRNA-Cas9の活性化
K-12由来株及び他の細菌のリボソームRNAコード配列をターゲッティングするsgRNAを含有
するプラスミドを有する大腸菌TOP10及びNissleを、3mlのTHブロス中で一晩増殖させた。
翌日、細胞をOD約0.5まで希釈し、次にTH培地中で10倍段階希釈し、96ウェルレプリケー
ター(Mettler Toledo Liquidator(商標)96)を使用して4μLの体積の液滴を、TH寒天、誘
導因子(1%アラビノース及び2mMテオフィリン)を補充したTH寒天、2.5gl-1のPEAを補充し
たTH寒天、及び1%マルトースを補充したMacConkey寒天にスポットした。プレートを、37
℃で20時間インキュベートして、コロニー形成率(CFU)を3回測定から計算した。
【0204】
2. 結果
2.1 外因性のCRISPR-Cas9システムを用いた大腸菌株の特異的ターゲッティング
本発明者らは、大腸菌TOP10及びNissleの両方に死滅システムを導入することにより、該
システムが2つの大腸菌株を区別できるかどうかを最初に試験した。
【0205】
2.1 混合培養における外因性CRISPR-Cas9システムを用いた大腸菌のターゲティング
一晩培養した培養物の段階希釈を、両方の大腸菌株、枯草菌、L.ラクティスについて二回
、混合培養について三回行った。全ての株を、誘導因子の有無で、選択プレートにおいて
、37℃で20時間増殖させた。システムの誘導は、他の細菌は無傷のまま、sgRNA-Cas9のK-
12由来株のターゲッティングを活性化する。
混合培養から異なる細菌を区別することは、異なる種の細胞数を決定し、種の特異的除去
を決定するために重要である。MacConkey寒天は大腸菌を選択的に増殖させ、PEA寒天はグ
ラム陰性菌(大腸菌)からグラム陽性菌(枯草菌)を単離するために使用される選択培地であ
る。更に、本発明者らは、異なる濃度のPEAが他のグラム陽性菌の増殖を部分的に阻害す
ることを見出した。2.5gl-1のPEAは、大腸菌及びL.ラクティスの増殖を制限しながら、枯
草菌を選択的に増殖させることが証明された。
図2は、誘導性の、外因性の、ベクター媒介性のCRISPR-Casシステムによる大腸菌株の特
異的ターゲッティングを示す。sgRNAはK-12由来の大腸菌株、大腸菌TOP10のゲノムを標的
とし、一方試験した他の大腸菌株は影響を受けなかった。
図3は、CRISPR-Cas9システムの誘導なしのTH寒天中の本研究で用いた個々の細菌種及び混
合培養の段階希釈でのスポットアッセイを示す。
図4は、異なる選択培地における103倍希釈のスポットアッセイを示す。2.5gl-1のPEAを有
するTHは、枯草菌単独のための選択的培地である。マルトースを補充したMacConkeyは、
グラム陰性菌と腸内桿菌を選択的に単離し、それらをマルトース発酵に基づいて区別する
ように設計された、細菌用の選択的且つ鑑別的な培養培地である。したがって、TOP10Δm
alK変異体は、プレート上に白いコロニーを形成し、一方Nissleは、ピンクのコロニーを
形成する;Aは大腸菌ΔmalK、Bは大腸菌Nissile、Cは枯草菌、DはL.ラクティス、Eは混合
培養である;MacConkeyが-のBとEの画像はピンクに見える;MacConkeyが+のBとEの画像はピ
ンクに見える。図5は、異なる培地及び選択プレート上の、本研究で使用される細菌の選
択的成長を示す。本発明者らには、明らかに、混合集団において標的大腸菌株(図5のx軸
上の「大腸菌」)を選択的に死滅させ、一方、他の関連株(「大腸菌-Nissle」)は同様には
死滅しないことがわかった。混合集団における標的株の死滅は、本実験において1000倍で
あった。
【0206】
脱抑制された外因性Casを利用することによる混合共同体における大腸菌のターゲティン

本発明のこの例の例示的な適用は、少なくとも3つの異なる細菌種を含む混合細菌集団
によって含まれる大腸菌細胞のターゲティングであり、これは本発明の1つ又は複数のベ
クターの、大腸菌細胞(例えば、大腸菌O157 H7 EDL933(EHEC)細胞)への導入によるもので
あり、これは、抑制Cas9、例えば、spCas9又はstCas9(ここで、H-NSが、Casを抑制する)
を含む。Cas9は、宿主細胞に(例えば、抑制因子コード配列として同じ又は異なるベクタ
ーにおいて)導入される、ベクターによって含まれるヌクレオチド配列によりコードされ
る。ベクターは、(a)細胞におけるCas9を脱抑制可能である脱抑制因子(例えば、LeuO)を
コードするヌクレオチド配列であって、細胞において発現可能であり、脱抑制因子を産生
するヌクレオチド配列;及び(b)各crRNA又はgRNAが、脱抑制因子の存在下で、Cas9をガイ
ド可能であり、宿主細胞ゲノムのそれぞれのプロトスペーサー配列を改変する又は宿主に
よって含まれるエピソームのプロトスペーサー配列を改変する;細胞における1つ又は複数
のcrRNAの産生のためのCRISPRアレイ;及び/又は細胞におけるそれぞれのガイドRNA(gRNA
、例えば、単一ガイドRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む宿主細胞
に導入される。成分(b)は、脱抑制Cas9(例えば、Cas9はS.ピオゲネスCas9である)と共に
作動可能であるCRISPR反復配列を含む。任意選択で、標的ヌクレオチド配列又はプロトス
ペーサーは、宿主細胞のゲノム中のPAMの直ぐ5'に少なくとも5、6、7、8、9又は10連続ヌ
クレオチドの配列を含み、PAMはNGGである。
【0207】
[参照文献]
[1] Zhang、X. Z.、及びZhang、Y. H. P. (2011). Simple、fast and high-efficiency t
ransformation system for directed evolution of cellulase in Bacillus subtilis. M
icrobial Biotechnology、4(1)、98~105. http://doi.org/10.1111/j.1751-7915.2010.0
0230.x
[2] Wegmann、U.、O'Connell-Motherway、M.、Zomer、A.、Buist、G.、Shearman、C.、Ca
nchaya、C.、... Kok、J. (2007). Complete genome sequence of the prototype lactic
acid bacterium Lactococcus lactis subsp. cremoris MG1363. Journal of Bacteriolo
gy、189(8)、3256~70. http://doi.org/10.1128/JB.01768-06.
【0208】
配列表
【0209】
【表1A】
【0210】
【表1B】
【0211】
【表1C】
【0212】
【表1D】
【0213】
【表1E】
【0214】
【表1F】
【0215】
【表1G】
【0216】
【表1H】
【0217】
【表1I】
【0218】
【表1J】
【0219】
【表1K】
【0220】
【表1L】
【0221】
【表1M】
【0222】
【表1N】
【0223】
【表1O】
【0224】
【表1P】
【0225】
【表1Q】
【0226】
【表1R】
【0227】
【表2】
【0228】
【表3】
【0229】
【表4A】
【0230】
【表4B】
【0231】
【表4C】
【0232】
【表4D】
【0233】
【表4E】
【0234】
【表4F】
【0235】
【表4G】
【0236】
【表4H】
【0237】
【表4I】
【0238】
【表4J】
【0239】
【表4K】
【0240】
【表4L】
【0241】
【表4M】
【0242】
【表4N】
【0243】
【表4O】
【0244】
【表4P】
【0245】
【表4Q】
【0246】
【表4R】
【0247】
【表4S】
【0248】
【表4T】
【0249】
【表4U】
【0250】
【表4V】
【0251】
【表4W】
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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