(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】燃料電池排ガス装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20250303BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20250303BHJP
H01M 8/04291 20160101ALI20250303BHJP
B60L 50/72 20190101ALI20250303BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20250303BHJP
H01M 8/00 20160101ALN20250303BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04014
H01M8/04291
B60L50/72
B60K13/04 Z
H01M8/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023082806
(22)【出願日】2023-05-19
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10 2022 112 680.3
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520050956
【氏名又は名称】プーレム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Purem GmbH
【住所又は居所原語表記】Homburger Strasse 95, 66539 Neunkirchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン ハマー
(72)【発明者】
【氏名】マークス ビアグラー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ヴィンク
(72)【発明者】
【氏名】パトリック シャーラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴァッカー
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-288924(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0020517(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0111421(US,A1)
【文献】特開2008-130477(JP,A)
【文献】特開2002-008693(JP,A)
【文献】特開2005-171874(JP,A)
【文献】特開2004-199971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04- 8/0668
B60L 50/70-50/72
B60K 11/00-15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムのための燃料電池排ガス装置であって、燃料電池排ガス(B)が通流可能な燃料電池排ガス管路(12)と、前記燃料電池排ガス(B)が通流可能なコンデンサユニット本体(90)を備えたコンデンサユニット(31)と、を備え
、
前記コンデンサユニット(31)の下流側に、液体分離ユニット(45)が配置されており、
前記液体分離ユニット(45)が、上流側の分離管路部分(48)、下流側の分離管路部分(50)および前記下流側の分離管路部分(50)と前記上流側の分離管路部分(48)との隣接領域に設けられた開口領域(64)を有している、燃料電池排ガス装置。
【請求項2】
前記コンデンサユニット本体(90)
が完全に金属材料で構成されている、または/および、前記燃料電池排ガス(B)が通流可能、かつ外面において冷媒(M)が周囲を流れることができる
、少なくとも1つのコンデンサユニット管路要素(92,94,96)を備えている、請求項
1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項3】
前記コンデンサユニット本体(90)が、前記燃料電池排ガス(B)が通流可能かつ外面において冷媒(M)が周囲を流れることができる、扁平な流れ横断面を有する少なくとも1つのコンデンサユニット管路要素(92,94,96)を備えている、請求項2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項4】
前記コンデンサユニット本体(90)は、前記燃料電池排ガス(B)が通流可能な互いに平行な複数のコンデンサユニット管路要素(92,94,96)を備えている、請求項
2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項5】
少なくとも1つ
のコンデンサユニット管路要素(92,94,96)の前記外面に、複数の熱伝達リブ(98)が設けられている、請求項
2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項6】
各コンデンサユニット管路要素(92,94,96)の前記外面に、複数の熱伝達リブ(98)が設けられている、請求項5記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項7】
前記コンデンサユニット(31)が、前記燃料電池排ガス管路(12)に前記コンデンサユニット(31)を接続するための、前記コンデンサユニット本体(90)に結合された上流側のコンデンサユニット接続要素(100)を備えており、または/および、前記コンデンサユニット(31)が、前記燃料電池排ガス管路(12)に前記コンデンサユニット(31)を接続するための、前記コンデンサユニット本体(90)に結合された下流側のコンデンサユニット接続要素(102)を備えている、請求項1
または2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項8】
前記上流側のコンデンサユニット接続要素(100)が、プラスチック材料で構成されている、または/および、前記下流側のコンデンサユニット接続要素(102)が、プラスチック材料で構成されている、請求項
7記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項9】
前記燃料電池排ガス管路(12)が、前記液体分離ユニット(45)に向かって案内される上流側の管路区分(16)と、前記液体分離ユニット(45)から離れる方向に案内される下流側の管路区分(24)とを有しており、前記コンデンサユニット(31)が、前記上流側の管路区分(16)内に配置されている、請求項
1または2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項10】
前記下流側の分離管路部分(50)の上流側の端部区分(62)が、前記上流側の分離管路部分(48)の下流側の端部区分(60)内に、前記下流側の分離管路部分(50)の前記上流側の端部区分(62)と前記上流側の分離管路部分(48)の前記下流側の端部区分(60)との間に前記開口領域(64)の液体分離開口(66)が形成されているように、係合して位置決めされている、請求項
1または2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項11】
前記開口領域(64)が、液体集合チャンバ(70)に対して開放している、請求項
1または2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項12】
前記開口領域(64)の上流側に、渦流発生ユニット(68)が設けられている、請求項
1または2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項13】
前記渦流発生ユニット(68)が、流れ中心軸線(S)に関して周方向で連続する、排ガス主流方向に関して角度付けされた複数の流れ変向要素(69)を備えている、または/および、前記渦流発生ユニット(68)
が完全にプラスチック材料で構成されている、請求項12記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項14】
前記開口領域(64)が、液体集合チャンバ(70)に対して開放しており、消音器ユニット(14)が設けられており、該消音器ユニット(14)が、
-燃料電池排ガス流入領域(18)と燃料電池排ガス流出領域(22)とを備えた消音器ハウジング(20)であって、前記燃料電池排ガス管路(12)の前記上流側の管路区分(16)が、前記燃料電池排ガス流入領域(18)に接続しており、前記燃料電池排ガス管路(12)の前記下流側の管路区分(24)が、前記燃料電池排ガス流出領域(22)に接続している、消音器ハウジング(20)と、
-前記消音器ハウジング(30)内に形成された少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)と、
を備え、
前記少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)が、前記消音器ハウジング(20)のハウジング底部(72)により前記液体集合チャンバ(70)から分離されており、前記ハウジング底部(72)に、少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)を前記液体集合チャンバ(70)に液体交換のために接続する少なくとも1つの液体通流開口(74,76)が設けられており、前記消音器ハウジング(20)に
、少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)から液体を導出するための少なくとも1つの液体導出開口(80)が設けられている、請求項
9記載
の燃料電池排ガス装置。
【請求項15】
前記消音器ユニット(14)
が完全にプラスチック材料で構成されている、請求項14記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項16】
前記燃料電池排ガス管路(12)
が完全にプラスチック材料で構成されている、または/および、前記液体分離ユニット(45)
が完全にプラスチック材料で構成されている、請求項1
または2記載の燃料電池排ガス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池排ガス装置であって、この燃料電池排ガス装置を介して、燃料電池から放出されたプロセスガスを燃料電池排ガスとして周囲に放出することができる、燃料電池排ガス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に電動モータで運転される車両において、走行用電動モータと、この種の車両における電気エネルギのその他の消費器とを運転するためのエネルギを提供することができるようにするために、燃料電池を使用することが知られている。このような燃料電池の作動時に、アノード領域に水素または著しく水素に富むアノードガスが供給される。カソード領域には、カソードガスとして酸素または酸素含有の空気が供給される。水素および酸素を水に変換しながら電流が引き起こされる。水素に富むアノード排ガスおよび著しく水を含むカソード排ガスは、燃料電池排ガスあるいはプロセスガスとして燃料電池を出る。燃料電池作動中は、少なくともカソード排ガスが周囲に放出される。様々な運転段階において、例えば燃料電池作動の開始前の特にアノード領域のパージ時に、アノード排ガス、またはこのような作動段階においてアノード領域を通って案内されるガスも、周囲に放出することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、特に車両における、燃料電池システムのための燃料電池排ガス装置であって、燃料電池排ガス中で連行される液体、特に水を燃料電池排ガスから効率的に抽出することができる、燃料電池排ガス装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この課題は、特に車両における、燃料電池システムのための燃料電池排ガス装置であって、燃料電池排ガスが通流可能な燃料電池排ガス管路と、燃料電池排ガスが通流可能なコンデンサユニット本体を備えたコンデンサユニットとを備えている、燃料電池排ガス装置によって解決される。
【0005】
コンデンサユニットにより、燃料電池排ガスから液体が凝縮される。したがって、特に水蒸気に富む燃料電池排ガスが周囲に放出されることが阻止されるので、特に燃料電池排ガス装置の端部管の領域における霧の形成を回避することができる。燃料電池排ガスから引き出された液体は、需要に応じて再び燃料電池プロセスに戻すことができる。また、凝縮された液体を、例えばウィンドウ洗浄水として使用、特に自律走行用の車両においてセンサを洗浄したり、空調装置における空気加湿などに使用したりすることも可能である。
【0006】
コンデンサユニットの下流側に、液体分離ユニットが配置されていてよい。液体分離ユニットの上流側にコンデンサユニットを配置することにより、凝縮された液体、つまり液滴を、さらに下流側に配置された液体分離ユニットにおいて燃料電池排ガスから効率的に分離することができ、場合によっては例えば車両における様々なプロセスのために再び利用することができ、または液体の形態で周囲に放出することができるようになっている。
【0007】
燃料電池排ガスからの液体の特に効率的な分離のために、コンデンサユニット本体が、実質的に完全に金属材料で構成されている、または/および、燃料電池排ガスが通流可能、かつ外面において冷媒が周囲を流れることができる、好適には扁平な流れ横断面を有する少なくとも1つのコンデンサユニット管路要素を備えることが提案される。
【0008】
コンデンサユニットと冷媒との熱的な相互作用のためにできるだけ大きな表面積を得るために、コンデンサユニット本体は、燃料電池排ガスが通流可能な互いに平行な複数のコンデンサユニット管路要素を備えていてよい。
【0009】
この場合、増幅された熱放出のために、少なくとも1つの、好適には各コンデンサユニット管路要素の外面に、複数の熱伝達リブが設けられていてよい。
【0010】
コンデンサユニットを燃料電池排ガス管路内に組み込むために、コンデンサユニットが、燃料電池排ガス管路にコンデンサユニットを接続するための、コンデンサユニット本体に結合された上流側のコンデンサユニット接続要素を備え、または/および、コンデンサユニットが、燃料電池排ガス管路にコンデンサユニットを接続するための、コンデンサユニット本体に結合された下流側のコンデンサユニット接続要素を備えることが提案される。
【0011】
軽量かつ廉価に製造可能なかつ特に耐腐食性の構造のために、上流側のコンデンサユニット接続要素が、プラスチック材料で構成されていてよく、または/および、下流側のコンデンサユニット接続要素が、プラスチック材料で構成されていてよい。
【0012】
燃料電池排ガス管路は、液体分離ユニットに向かって案内される上流側の管路区分と、液体分離ユニットから離れる方向に案内される下流側の管路区分とを有していてよい。コンデンサユニットは、上流側の管路区分に配置されていてよい。
【0013】
コンデンサユニットの下流側で燃料電池排ガス流から液体を放出するために、液体分離ユニットが、上流側の分離管路部分、下流側の分離管路部分および下流側の分離管路部分と上流側の分離管路部分との隣接領域に設けられた開口領域を有していてよい。
【0014】
液体分離ユニットの領域においても定義された、燃料電池排ガスのための流れ特性を保証するために、下流側の分離管路部分の上流側の端部区分が、上流側の分離管路部分の下流側の端部区分内に、下流側の分離管路部分の上流側の端部区分と上流側の分離管路部分の下流側の端部区分との間に開口領域の液体分離開口が形成されるように、係合して位置決めされていることが提案される。
【0015】
この開口領域は、液体集合チャンバに対して開放されていてよく、この液体集合チャンバを介して、液体集合チャンバ内に集められた液体を、次いで周囲に放出することができるか、または必要に応じて燃料電池プロセスに戻すことができる。
【0016】
開口領域の上流側に、渦流発生ユニットが設けられていてよい。燃料電池排ガス流に渦流を発生させることによって、凝縮された液体に作用する遠心力が生じ、この遠心力は、液体に半径方向外方に向かって負荷を加え、したがって開口領域において主として、半径方向外方に向かって搬送される液体または燃料電池排ガス流の、このような液体により著しく富んだ部分が引き出されるようになる。
【0017】
渦流発生ユニットは、流れ中心軸線に関して周方向で連続する、排ガス主流方向に関して角度付けされた複数の流れ変向要素を備えていてよい。渦流発生ユニットも、極めて軽量な構造を提供するために、実質的に完全にプラスチック材料で構成されていてよい。
【0018】
燃料電池の領域において発生する騒音を減衰させるために、消音器ユニットが設けられていてよく、消音器ユニットは、
-燃料電池排ガス流入領域と燃料電池排ガス流出領域とを備えた消音器ハウジングであって、燃料電池排ガス管路の上流側の管路区分が、燃料電池排ガス流入領域に接続しており、燃料電池排ガス管路の下流側の管路区分が、燃料電池排ガス流出領域に接続している、消音器ハウジングと、
-消音器ハウジング内に形成された少なくとも1つの消音器チャンバと、
を備えており、少なくとも1つの消音器が、消音器ハウジングのハウジング底部によって液体集合チャンバから分離されており、ハウジング底部に、少なくとも1つの消音器チャンバを液体集合チャンバに液体交換のために接続する少なくとも1つの液体通流開口が設けられており、消音器ハウジングに、少なくとも1つの液体集合チャンバから液体を導出するための少なくとも1つの液体導出開口が設けられている。
【0019】
消音器ユニットも、軽量で廉価に実現可能な耐腐食性の構造を得るために、実質的に完全にプラスチック材料で構成されていてよい。
【0020】
同様に、燃料電池排ガス管路または/および液体分離ユニットは、実質的に完全にプラスチック材料で構成されていてよい。
【0021】
本発明を以下に添付の図面に関連して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図1に示す燃料電池排ガス装置の詳細部IIを示す拡大図である。
【
図3】詳細部IIに図示されたコンデンサユニットを示す縦断面図である。
【
図4】
図1に示す燃料電池排ガス装置の消音器ユニットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、燃料電池排ガス装置10を示しており、この燃料電池排ガス装置10は、車両において電気的なエネルギを生成するために使用される燃料電池システムに対応して設けられていてよい。
【0024】
燃料電池排ガス装置10は、概して参照符号12で示される、燃料電池排ガスBが通流可能な燃料電池排ガス管路12と、燃料電池排ガス管路12内に組み込まれた消音器ユニット14とを備えている。燃料電池排ガス管路12の上流の管路区分16は、消音器ハウジング20の燃料電池排ガス流入領域18において消音器ユニット14に接続している。消音器ハウジング20の燃料電池排ガス流出領域22において、燃料電池排ガス管路12の下流側の管路区分24が消音器ユニット14に接続している。例えば、燃料電池排ガス管路12の下流側の管路区分24を介して、燃料電池システムの1つまたは複数の燃料電池から放出される燃料電池排ガスBを周囲に放出することができる。燃料電池排ガス管路12の上流側の管路区分16の上流側の端部領域26は、様々な燃料電池排ガスをプロセスガスとして放出する、1つまたは複数の燃料電池、または燃料電池スタックのシステム領域に接続されるように形成されていてよい。例えば、アノード領域を出るプロセスガスまたは/およびカソード領域を出るプロセスガスを燃料電池排ガスBとして定義して燃料電池排ガス装置10内に導入するために、上流側の端部領域には、1つまたは各燃料電池のアノード領域または/およびカソード領域を接続することができる。さらに、例えば、周辺に対して開放した管路領域を介して、周辺空気を燃料電池排ガス装置10内に導入することができる。
【0025】
燃料電池排ガス装置10において形成された背圧または背圧内に導入されるガス流を調節するために、ガス流調整弁28が、例えば、燃料電池排ガス装置12の上流側の管路区分16の上流側の端部領域26の近傍に配置されていてよい。下流側の管路区分24には水素センサ30が設けられていてよく、これにより、下流側の管路区分24を通って流れる燃料電池排ガス流の水素濃度に関する情報を提供することができる。燃料電池作動の開始時または開始前に、アノード領域がパージされ、このアノード領域から導出されるプロセスガスが、燃料電池排ガス装置10を介して周辺に放出される場合、この燃料電池排ガス流は特に水素を含み得る。水素センサ30によって生成された信号が過度に高い水素濃度を示唆している場合、例えばガス流調整弁28を対応して制御することにより、燃料電池排ガス装置10を通って案内される燃料電池排ガスBに、上述した管路領域を介して空気割合または高めた空気割合を加えることができ、これによって、より低い水素濃度を達成することができる。
【0026】
消音器ユニット14の上流側には、概して参照符号31で示されるコンデンサユニットが設けられていてよい。このコンデンサユニットは、燃料電池排ガスB中で搬送される液体または蒸気、一般的に水蒸気の凝縮を促進する。消音器ユニット14において、以下に記載するように、このような凝縮された液体を燃料電池排ガスBから引き出し、集め、燃料電池プロセスに戻すことができる。
【0027】
図4に基づき、以下に消音器ユニット14の構造または機能を詳細に説明する。
【0028】
消音器ハウジング20は、消音器ハウジング長手方向軸線Lの方向に細長く延びていて、上流側の端部領域32において、燃料電池排ガス管路12の上流側の管路区分16に接続するように形成されている。下流側の端部領域34において、消音器ハウジング20は、燃料電池排ガス管路の下流側の管路区分24に接続するように形成されている。例えば管路区分16,24は、管クリップまたはこれに類するものを使用して、消音器ハウジング20の対応する管片に結合することができる。
【0029】
消音器ハウジング20の内部には、2つの消音器チャンバ36,38と、液体分離チャンバ40とが形成されている。上流側の消音器チャンバ36は、分離壁42によって液体分離チャンバ40から分離されており、下流側の消音器チャンバ38は、分離壁44によって上流側の消音器チャンバ36から分離されている。燃料電池排ガス管路12の下流側の管路区分24は、下流側の消音器チャンバ38に対して開放している。概して参照符号45で示される液体分離ユニットの液体分離チャンバ40内に配置された分離管路区分46を介して、燃料電池排ガス管路12の上流側の管路区分16が、両消音器チャンバ36,38に対して開放している。
【0030】
液体分離ユニット45の分離管路区分46は、消音器ハウジング20の上流側の端部領域32において、燃料電池排ガス管路12の上流側の管路区分16に接続する、上流側の管状の分離管路部分48と、分離壁42に接続するかまたは分離壁42を貫通する下流側の分離管路部分50とを有している。分離管路区分46の下流側の分離管路部分50は、消音器ハウジング12の内部に延びる一部分または複数部分から形成された燃料電池排ガス管52に接続していてよく、またはこの燃料電池排ガス管52に一体的に形成されていてよい。燃料電池排ガス管52の管壁54に形成された複数の開口56を介して、この燃料電池排ガス管52は、上流側の消音器チャンバ36に対して開放している。管壁54に形成された複数の開口58を介して、燃料電池排ガス管52は、下流側の消音器チャンバ38に対して開放している。燃料電池排ガス管52は、両消音器チャンバ36,38を互いに分離する分離壁44を貫通して延びているか、または少なくとも部分的にこの分離壁44と一体に形成されていてよく、消音器ハウジング20の下流側の端部領域34において、燃料電池排ガス管路12の下流側の管路区分24に接続している。
【0031】
この構造では、消音器ユニット14を通って案内された燃料電池排ガスBが、消音器ハウジング20を実質的に流れ変向なしに消音器ハウジング-長手方向軸線Lに沿って直線的に通流することができ、これによって、消音器ユニット14によって著しい流れ抵抗が生じないことが認められる。それにもかかわらず、互いに異なる消音器チャンバ36,38との連通により、反射および吸収によって音を減衰させることが可能である。このために、例えば一方または両方の消音器チャンバ36,38内に付加的に消音性の材料、例えば多孔質の繊維の材料または発泡材料が配置されていてよい。さらに、連続する2つよりも多くの消音器チャンバが設けられていてもよく、または消音器ハウジング20の内室内に、ただ1つのこのような消音器チャンバしか設けられていなくてもよい。さらに、消音器チャンバのうちの少なくとも1つの消音器チャンバが、ヘルムホルツ共振器の共振器チャンバとして作用することができ、かつ消音器チャンバのうちの互いに異なる消音器チャンバは、付加的な燃料電池排ガス管を介して互いに連通することができる。
【0032】
上流側の分離管路部分48は下流側の端部区分60を有しており、この下流側の端部区分60は、排ガス主流方向Hの方向に、流れ中心軸線Sに沿って、例えば実質的に円錐形に拡張するように形成されている。同様に、下流側の分離管路部分は、上流側の端部区分62を有しており、この上流側の端部区分62は、排ガス主流方向Hに、この領域において例えば円錐形に拡張するように形成されており、上流側の分離管路部分48の下流側の端部区分60内に係合するように位置決めされている。排ガス主流方向Hで流れ中心軸線Sに沿って半径方向に拡張する端部区分60,62の間に、分離管路区分46の開口領域64において、実質的に環状の液体分離開口66が形成されている。
【0033】
開口領域64の上流側に、例えば消音器ハウジング20の上流側の端壁を提供するハウジングカバーと一体的に形成された上流側の分離管路部分48内に、または燃料電池排ガス管路12の上流側の管路区分16内に、渦流発生ユニット68が配置されている。この渦流発生ユニット68は、流れ中心軸線Sを中心とした周方向で連続する、排ガス主流方向Hに関して角度付けされた、実質的に半径方向に延びる複数の流れ変向要素69を備えていてよい。渦流発生ユニット68によって、排ガス主流方向Hに案内される燃料電池排ガスB内に渦流が発生させられる。このような渦流と、渦流内で発生する遠心力とに基づいて、燃料電池排ガスB内で搬送される液体割合、例えば水滴またはこれに類するものに、半径方向外側に向かって負荷が加えられて、液体は燃料電池排ガス流の半径方向外側の領域により高い濃度で集まる。燃料電池排ガス流のこの半径方向外側の部分を、少なくとも部分的に液体分離開口66を通って液体分離チャンバ40内に導出することができ、これによって液体分離チャンバ40内に、燃料電池排ガス流から抽出された液体を集めることができる。
【0034】
車両に組み付けられた燃料電池排ガス装置10において、消音器ハウジング20の、鉛直方向Vにおいて下側の領域に、液体集合チャンバ70が形成されている。この液体集合チャンバ70は、好ましくは消音器ハウジング20の全長に沿って、消音器ハウジング20の上流側の端部領域32から下流側の端部領域34にまで延びていて、ハウジング底部72により、両消音器チャンバ36,38から、かつ液体分離チャンバ40からも分離されている。これらのチャンバのそれぞれに対応配置されて、ハウジング底部72にはそれぞれ少なくとも1つの液体通流開口74,76または78が形成されている。消音器チャンバ36,38のそれぞれにおいて、または液体分離チャンバ40において集まった液体は、対応配置された液体通流開口74,76,78を通って液体集合チャンバ40内に到達して、この液体集合チャンバ40内に集まることができる。
【0035】
液体集合チャンバ70に対応配置されて、液体放出弁82を備えた少なくとも1つの液体導出開口80が設けられている。
図4では、車両に組み込まれた燃料電池排ガス装置において、消音器ハウジング20が排ガス主流方向Hで下方に向かって傾けられており、これによって、液体集合チャンバ70の、液体導出開口80が位置決めされている領域が、実質的に、液体集合チャンバ70の、鉛直方向Vで最も低い領域を形成していることが認められる。これは、液体集合チャンバ70内に含まれる液体が、基本的に液体導出開口80または液体放出弁82の領域に集まり、これにより、液体放出弁82が開放されると、液体が重力の作用を受けて液体集合チャンバ70から流出し、例えば液体を燃料電池プロセスに戻すか、または周辺に放出することができることを意味している。
【0036】
液体集合チャンバ70に対応配置されて、
図4に原理的に示されている液体水位センサ84が設けられていてよく、この液体水位センサ84の出力信号は、液体集合チャンバ70内に集められた液体の量を示している。この量が、液体、つまり水を燃料電池動作時に、または車両の別のシステムにおいて使用することができるほどに十分に大きな場合、液体放出弁82を開放することができる。閾値水位を上回り、液体が少なくとも下流側の消音器チャンバ38の最も低い領域から液体集合チャンバ70内にもはや流出することができない恐れが生じた場合も、液体を液体集合チャンバ70から放出するために液体導出弁82を開放することができる。
【0037】
さらに、液体集合チャンバ70に、
図4に原理的に図示されている加熱ユニット86が対応配置されていてよい。この加熱ユニット86は、電気的な励起により、液体集合チャンバ70内に集まった液体を加熱することができ、ひいては液体の凍結を阻止するか、または既に凍結した液体を再び融かすことができる。このことは、いつでもかつ特に周辺温度が比較的低い場合にも、液体を液体集合チャンバ70から放出して、例えば燃料電池作動時に再び利用することができることを保証する。
【0038】
さらに、液体集合チャンバ70に対応配置されて、水素放出管片88により提供される少なくとも1つの水素放出開口89を設けることができる。この水素放出開口89は、液体集合チャンバ70の最も高く位置する領域よりも鉛直方向Vに高く位置するように位置決めされていてよい。したがって、燃料電池作動時またはアノード領域のパージ時に、燃料電池排ガス装置10内に導入される水素は、この水素が液体通流開口74,76,78を介して液体集合チャンバ70内に到達した場合に、液体集合チャンバ70の、液体集合チャンバ70が水素放出開口89を介して周辺に向かって開放している最も高く位置する領域に集まることができる。したがって、液体集合チャンバ70内に到達した水素を、液体集合チャンバ70内における危険な水素濃度が形成される恐れが生じることなしに、実質的に永続的に周辺に放出することができる。
【0039】
コンデンサユニット31は、
図3に縦断面図で図示されたコンデンサユニット本体90を備えており、このコンデンサユニット本体90は、好適には実質的に完全に金属材料で構成されている。図示の実施例では、コンデンサユニット本体90は、相並んで配置された3つのコンデンサユニット管路要素92,94,96を有しており、これらのコンデンサユニット管路要素92,94,96はそれぞれ、燃料電池排ガスBのための流れ通路Kを提供し、燃料電池排ガスBによって互いに平行に通流される。3つのコンデンサユニット管路要素92,94,96は、その内部容積において、これらのコンデンサユニット管路要素92,94,96を通流する燃料電池排ガスBのために、例えばほぼ矩形または扁平にされた円形の横断面幾何学形状を備えた扁平にされた流れ横断面を提供する。結果として、流れ横断面積に関して比較的大きな表面積が熱伝達のために提供される。例えば、3つよりも多くのコンデンサユニット管路要素92,94,96がコンデンサユニット本体90に設けられていてもよいことを示唆しておく。
【0040】
コンデンサユニット本体90の周囲を流れる媒体M、例えば空気への熱伝達のために提供される表面は、コンデンサユニット管路要素92,94,96の外面に、熱伝達リブ98が設けられていることによって、さらに拡大することができる。この熱伝達リブ98は、できるだけ迅速な周囲における流れ、ひいては効果的な熱放出を保証するために、コンデンサユニット本体90の周囲を流れる媒体Mの流れ方向に対して好適には実質的に平行に配向されている。例えば、熱伝達リブ98は、コンデンサユニット管路要素92,94,96の平坦な外面に設けられた、例えば波形に形成されたリブ要素91,93,97,99によって提供されていてよく、これらのリブ要素91,93,97,99は、コンデンサユニット管路要素92,94,96のうちの少なくとも1つに熱伝達接触している。代替的には、熱伝達リブ98は、コンデンサユニット管路要素92,94,96の構造材料における成形部によって形成されていてよく、これらの成形部は、内面にも、つまり燃料電池排ガスBが流れ過ぎる表面にも形成されており、これによって、内面においても熱伝達のための拡大された表面が提供される。
【0041】
空気、すなわち周囲空気が、冷却のために使用される媒体Mとして使用される場合、燃料電池排ガス装置10は、冷却器の場合と同様に、走行風によって搬送される空気がコンデンサユニット31の周囲を効果的に流れることができるように、車両内に組み込まれる。
【0042】
なお、この液体内に熱を吸収し、熱を例えば別の熱交換器内において、車両内室内に導入される空気に伝達することができるようにするために、空気が周囲を流れることに対して代替的に、コンデンサユニット本体の周囲を例えば液体が流れることもできることを示唆しておく。
【0043】
燃料電池排ガス管路12の上流側の管路区分16にコンデンサユニット31を組み込むために、コンデンサユニット31が、上流側のコンデンサユニット接続要素100と、下流側のコンデンサユニット接続要素102とを有している。各プレート状の結合領域104または106により、コンデンサユニット接続要素100,102は、例えばねじ締結により、コンデンサユニット本体90の各プレート状の結合領域108,110に気密かつ液密式に結合されることができる。
【0044】
可能な限り効率的な熱伝達のために、コンデンサユニット本体90は、例えば特殊鋼または銅のような金属材料から製造されているのに対して、実質的に、燃料電池排ガス装置の別の全ての機能領域が、廉価かつ軽量でもあるプラスチック材料で構成されていてよい。このことは、特に管路区分16,24、消音器ハウジング20または消音器ハウジング20の内部に配置されたシステム領域、例えば分離壁42,44、液体分離ユニット45の全ての機能部分および渦流発生ユニット68に関する。これらの構成要素のためのプラスチック材料の使用は、僅かな重量の構造をもたらし、この構造は、さらに廉価にかつ賦形時に大きな自由度で製造することができる。これにより、燃料電池排ガスBが液体、特に水の比較的高い割合を含むという状況に基づいて、燃料電池排ガス装置10の領域における腐食の問題が、実質的に完全に排除される。
【0045】
本発明に係る燃料電池排ガス装置は、この燃料電池排ガス装置の作動のために、または車両における燃料電池システムの作動のために、有利なまたは重要な機能を統合している。一方では、消音器ユニットに設けられた消音機能によって、例えば燃料電池を通じてプロセスガスを案内するコンプレッサにより発生する、燃料電池排ガスの流路における騒音が減じられるか、またはほぼ完全に除去される。他方では、燃料電池排ガス中に連行された液体、特に水の一部を、燃料電池排ガスから抽出する可能性が生じ、これにより、液体の抽出された部分を、液体蒸気として燃料電池排ガスと共に周囲に放出するのではなく、液体の形態で周囲に放出することができ、または需要に応じて燃料電池システムの作業サイクルまたは別のシステムに戻すことができる。特に、消音器ユニットの領域における危険な水素濃度の発生が、水素を周辺に放出する永続的に存在する可能性によって回避される。この機能性には、特に燃料電池排ガスが消音器ユニットをほぼ直線的に通流できることも寄与している。特に、消音器ユニットの内部において燃料電池排ガスを案内する管区分の強い角度付けと、この角度付けにより導入される流れ変向とが回避されている。水または水蒸気および水素を、燃料電池システムの作動中に、燃料電池排ガスから導出し、必要な場合には例えば燃料電池プロセスへ戻すことができるので、このような物質が車両の周囲に過度に負荷を加えることが十分に回避される。
【0046】
なお、このような燃料電池排ガス装置は、定置の燃料電池システムでも、または例えば船舶等に設けられている燃料電池システムでも使用できることを示唆しておく。