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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20250303BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20250303BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
B01J20/26 D
B01J20/30
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023106112
(22)【出願日】2023-06-28
(65)【公開番号】P2025005769
(43)【公開日】2025-01-17
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】518305565
【氏名又は名称】臺灣塑膠工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100209060
【弁理士】
【氏名又は名称】冨所 剛
(72)【発明者】
【氏名】陳忠毅
(72)【発明者】
【氏名】林郁珊
(72)【発明者】
【氏名】鄭秉鈞
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-510045(JP,A)
【文献】特表2009-519356(JP,A)
【文献】特表2021-509688(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03235856(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0114192(US,A1)
【文献】特開2019-116636(JP,A)
【文献】特開2017-206646(JP,A)
【文献】特開2015-168824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08J 99/00
B01J 20/00-20/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和モノマー水溶液と、重合開始剤と、フリーラジカル重合反応架橋剤とを含む吸水性樹脂組成物にフリーラジカル重合反応を行って、コロイドゲルを得る工程と、
前記コロイドゲルを粉砕して篩にかけて、複数の吸水性樹脂粒子を得る工程と、
前記吸水性樹脂粒子を、表面架橋剤と応ポリマーと表面架橋反応させて、吸水性樹脂を得る工程と、
を含み、
前記表面架橋反応は、150℃~210℃の温度で熱処理することを含み、
前記反応ポリマーは、エチレンアクリル酸共重合体であり、前記エチレンアクリル酸共重合体は、下記式(1)で表されるポリエチレンセグメントと、下記式(2)で表されるポリアクリル酸セグメントとを含み、
【化1】
式(2)において、MはIA族元素又はIIA族元素であり、
前記反応ポリマーにおける前記ポリエチレンセグメントの重量を100wt%としたとき、前記ポリアクリル酸セグメントの重量は8wt%~20wt%である、吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記吸水性樹脂粒子の重量を100wt%としたとき、前記反応ポリマーの添加量は0.01wt%~10wt%である請求項1に記載の吸収性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記吸水性樹脂のT20値は180秒以下である請求項1に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記吸水性樹脂の液体流動伝導率は30×10-7cm-s/g以上である請求項1に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記吸水性樹脂の保持力は20g/gより大きい請求項1に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂の製造方法に関し、特に、優れた液体流動伝導率を有する吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、例えば、農業又は園芸における水保持剤、建築材料における防露凝結剤、石油から水分を除去する材料、ケーブルにおける外層防水被覆剤、個人衛生用品(例えば紙おむつ、婦人衛生用品及び使い捨てタオル等)等、幅広い用途に使用され、その中でも紙おむつを主とする。
【0003】
紙おむつの吸収性能は、吸収速度、吸収量及びさらさら性によって決まる。近年、紙おむつは薄型化を目指し、パルプ(親水性繊維)の使用量を低減し、吸水性樹脂の使用量を増やすことで、紙おむつの吸収体構造における吸水性樹脂の割合を高めることにより、紙おむつの薄型化を達成する。しかしながら、親水性繊維の使用量が減少すると、短時間で貯水スペースが少なくなり、液体の浸透速度が遅くなり、液体が吸収される前に漏れてしまう。また、吸水性樹脂は、優れた吸収速度に加えて、液体に対して高い浸透性を有する必要がある。液体の浸透性が悪いと、吸水性樹脂が液体を吸収する際に粒子間の空隙を塞いで、コロイドブロッキング現象が発生して液体が紙おむつの吸収体から流出し、それにより紙おむつの吸収性能が低下する。
【0004】
したがって、吸水性樹脂の吸収速度及び浸透性を向上させることは、現在、この分野における研究の主な焦点の一つである。従来の方法では、吸水性樹脂の液体流動伝導率を向上させるために、多価の金属カチオン(polyvalent metal cation)で表面改質を行ったり、ジヒドロキシアセテートアルミニウムを使用したりすることができる。吸水性樹脂の液体浸透性を向上させるために、熱処理工程において、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性ポリマーを使用したり、酸基含有モノマー水溶液に発泡剤としてのアミノ基含有アゾ化合物を添加したりすることもできる。また、酸基含有モノマー水溶液に、内包発泡剤(encapsulated blowing agent)や水溶性アルコキシシラン化合物を添加することにより、製造された吸水性樹脂に優れた吸収速度や高いコロイド安定性を持たせることができる。更に、水溶性多価金属粉末、粘着剤及び吸水性樹脂を混合することにより、吸水性樹脂が液体を吸収した後の拡散性及び液体浸透性を向上できることが知られている。
【0005】
また、従来の吸水性樹脂は、吸収速度の向上、コロイド強度の向上、抗ケーキング性及び液体浸透性の向上等の効果を達成するために、表面架橋処理を行って、吸水性樹脂の表面に更なる架橋を形成する。例えば、従来の方法としては、吸水性樹脂と架橋剤を有機溶媒に分散させて表面架橋処理すること、無機粉体を吸水性樹脂に混入させて架橋処理すること、架橋剤を添加した後にスチーム処理すること、有機溶媒、水及び多価アルコールを用いて表面処理すること、有機溶媒、水及びエーテル系化合物を用いて表面処理すること等が挙げられる。しかしながら、従来の表面処理方法は、吸収速度及び圧力下での吸水倍率を向上させることができるが、吸水性樹脂の保持力が大幅に低下するおそれがあり、それにより実用効果が低くなる。
【0006】
これに鑑みて、吸水性樹脂の液体流動伝導率と圧力下での吸水倍率の両方とも向上させ、且つ高い保持力を維持できる吸水性樹脂及びその製造方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様は、得られる吸水性樹脂の液体流動伝導率を向上させるために、表面架橋反応に反応ポリマーを関与させる吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0008】
本発明の別の態様は、上記態様によって製造される吸水性樹脂を提供する。
【0009】
本発明の一態様によれば、不飽和モノマー水溶液、重合反応開始剤、及びフリーラジカル重合反応架橋剤を含む吸水性樹脂組成物にフリーラジカル重合反応を行ってコロイドゲルを得る工程と、次に、コロイドゲルを粉砕して篩にかけて、複数の吸水性樹脂粒子を得る工程と、吸水性樹脂粒子を、表面架橋剤と、ポリエチレンセグメント及びポリアクリル酸セグメントを含む反応ポリマーと表面架橋反応させて、吸水性樹脂を得る工程と、を含む吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の一実施例によれば、上記反応ポリマーはエチレンアクリルポリマーであり、エチレンアクリルポリマーは下記式(1)で示されるポリエチレンセグメントと下記式(2)で示されるポリアクリル酸セグメントとを含む。
【化1】

Mは水素原子、IA族元素又はIIA族元素である。エチレンアクリルポリマーを100wt%としたら、ポリエチレンセグメントは80wt%~99wt%、ポリアクリル酸セグメントは1wt%~20wt%である。
【0011】
本発明の一実施例によれば、反応ポリマーにおけるポリエチレンセグメントの重量を100wt%としたら、ポリアクリル酸セグメントの重量は8wt%~20wt%である。
【0012】
本発明の一実施例によれば、上記吸水性樹脂粒子の重量を100wt%としたら、反応ポリマーの添加量は0.01wt%~10wt%である。
【0013】
本発明の別の態様によれば、上記方法によって製造され、且つT20値が180秒以下である吸水性樹脂を提供する。
【0014】
本発明の一実施例によれば、上記吸水性樹脂の液体流動伝導率は30×10-7cm-s/g以上である。
【0015】
本発明の一実施例によれば、上記吸水性樹脂の保持力は20g/gより大きい。
【0016】
本発明の吸水性樹脂及びその製造方法は、表面架橋反応に反応ポリマーを関与させることにより、吸水性樹脂の液体流動伝導率及び圧力下での吸水倍率を向上させる効果を奏するとともに、吸水性樹脂の保持力を高く維持することができ、実用性を兼ね備える。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において使用される「およそ(around)」、「約(about)」、「おおよそ(approximately)」又は「実質的に(substantially)」は、一般に、その数値又は範囲の20%以内、又は10%以内、又は5%以内を表す。
【0018】
前記のように、本発明は、表面架橋反応に反応ポリマーを関与させることにより、吸水性樹脂の液体流動伝導率及び圧力下での吸水倍率を向上させる効果を奏するとともに、吸水性樹脂の保持力を高く維持することができ、実用性を兼ね備える吸水性樹脂及びその製造方法を提供する。
【0019】
本発明によって提供される吸水性樹脂の製造方法は、吸水性樹脂組成物にフリーラジカル重合反応を行ってコロイドゲルを得る工程を含む。幾つかの実施例において、吸水性樹脂組成物は、不飽和モノマー水溶液、重合反応開始剤及びフリーラジカル重合反応架橋剤を含む。
【0020】
幾つかの実施例において、吸水性樹脂組成物中の不飽和モノマー水溶液は、不飽和二重結合を有する酸基モノマー、例えばアクリル酸を含む。幾つかの実施例において、不飽和モノマー水溶液は、メタクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、マリン酸(シス-ブテニル酸)、シス-ブテニル酸無水物、フマル酸(トランス-ブテニル酸)、及びトランス-ブテニル酸無水物であってよい。不飽和モノマー水溶液は、一種のモノマーを含んでよいが、これに限定されず、二種以上の上記モノマー水溶液を選択してもよい。
【0021】
幾つかの実施例において、上記不飽和モノマー水溶液の濃度は、20wt%~55wt%、好ましくは30wt%~45wt%であってよいが、これらに限定されない。一般的に、酸基モノマー水溶液の濃度が20wt%~55wt%である場合、重合後の生成物の粘度が適度であり、機械加工を容易に行い、且つフリーラジカル重合反応を行う際の反応熱も制御しやすい。
【0022】
他の実施例において、不飽和二重結合を有する他の親水性モノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸-2-カルボキシエチル、メタクリル酸-2-カルボキシエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ジメチルアミンアクリルアミド、塩化アクリルアミドトリメチルアミンを選択的に添加してよい。しかしながら、上記親水性モノマーの添加量は、吸水性樹脂の物性(例えば、保持力や吸収速度)を損なわないことを原則とする。
【0023】
幾つかの実施例において、酸基モノマー水溶液は重合反応を直接行ってもよく、又は、酸基モノマー水溶液を中性又は弱酸性にするように、中和剤で部分的に中和してから、重合反応を行ってもよい。これらの実施例において、中和剤は、アルカリ金属族又はアルカリ土類金属族の水酸化物又は炭酸化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アミン化合物、及びそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施例において、酸基モノマー水溶液の中和濃度は45モル%~85モル%である。酸基モノマー水溶液の中和濃度が前述の範囲にある場合、酸基モノマー水溶液は、フリーラジカル重合反応に適したpHを有し、誤って人体と接触した場合の被害を軽減することができる。補足説明として、本明細書における中和濃度とは、酸基モノマー水溶液のモル数に対する塩基性溶液のモル数の比として定義され、酸基モノマー水溶液の酸基が中和された百分率とされてもよい。
【0024】
幾つかの実施形態において、酸基モノマー水溶液のpH値は、5.5以上、好ましくは5.5~7.0、より好ましくは5.5~6.5である。酸基モノマー水溶液のpHが5.5~7.0である場合、重合後の水溶液に未反応モノマーが多量に残存しにくく、後続で製造される吸水性樹脂の物性がよく、吸収量が大きい。
【0025】
幾つかの実施例において、製造コストを削減するために、吸水性樹脂組成物に水溶性高分子を選択的に添加してよい。幾つかの実施例において、水溶性高分子は、部分けん化又は完全けん化ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、澱粉又は澱粉誘導体(例えば、メチルセルロース、アクリル酸メチルセルロース、エチルセルロース等)を含み、好ましくは、澱粉及び部分けん化又は完全けん化ポリビニルアルコールを単独又は組み合わせて使用する。前述の実施例において、水溶性高分子の分子量は制限されず、不飽和モノマー水溶液の使用量を100wt%としたら、水溶性高分子の添加量は、吸水性樹脂の物性を低下させないことを原則として、一般に0wt%~20wt%、好ましくは0wt%~10wt%、より好ましくは0wt%~5wt%である。
【0026】
予備重合反応は、重合反応開始剤の分解によるラジカルの発生から開始する。幾つかの実施例において、不飽和モノマー水溶液の使用量を100wt%としたら、重合反応開始剤の適切な使用量は0.001wt%~10wt%、好ましくは0.1wt%~5wt%である。重合反応開始剤の使用量が前述の範囲にあると、フリーラジカル重合反応の速度が適切であり、経済的にも有益であり、反応熱を制御しやすく、過度の重合によるコロイド状固体の形成を回避できる。
【0027】
幾つかの実施例において、重合開始剤は、熱分解開始剤、レドックス開始剤、及びそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施例において、熱分解開始剤は、過酸化物[過酸化水素、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、過酸化アミド又は過硫酸塩(アンモニウム塩及びアルカリ金属塩を含む)]、及びアゾ化合物[例えば、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス(N,N-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩]を含む。幾つかの実施例において、レドックス開始剤は、酸性亜硫酸塩、アスコルビン酸又は第一鉄塩を含む。重合反応開始剤は、熱分解開始剤とレドックス開始剤とを併用するのが好ましく、それはレドックス開始剤を反応させてフリーラジカルを発生させ、フリーラジカルがモノマーに移動すると、重合反応の進行を開始し、重合反応によって放出される大量の熱が反応系の温度を上昇させる。反応系が一定の温度に達すると、熱分解開始剤を更に分解させて、重合反応をより完全にすることができるため、過剰な未反応モノマーの残留を回避することができる。
【0028】
吸水性樹脂組成物中のフリーラジカル重合反応架橋剤は、吸水性樹脂組成物に適度な架橋度を持たせ、吸水性樹脂組成物の重合反応後の加工性を向上させることができる。幾つかの実施例において、フリーラジカル重合反応架橋剤は、2つ以上の不飽和二重結合を含む化合物、例えば、N,N-ビス(2-プロペニル)アミン、N,N-メチレンビスアクリロイルアミン、N,N-メチレンビスメタクリロイルアミン、アクリル酸プロピレン、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、グリセリンにエチレンオキシドを付加したトリアクリレート又はトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、N,N,N-トリス(2-プロペニル)アミン、エチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチレントリアクリレート、ジエチルポリオキシエチレントリアクリレート、ジプロピレントリグリコール等を選択してよい。幾つかの実施例において、フリーラジカル重合反応架橋剤は、2つ以上のエポキシ基を含む化合物、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等を選択してよい。フリーラジカル重合反応性架橋剤は、単独で又は二種以上のものを組み合わせて使用してよい。
【0029】
幾つかの実施例において、酸基モノマー水溶液を100wt%としたら、フリーラジカル重合反応架橋剤は0.001wt%~5wt%、好ましくは0.01wt%~3wt%である。フリーラジカル重合反応架橋剤の添加量が前述の範囲内にあると、反応後のポリマー水溶液の粘度が適度であり、機械加工しやすく、且つ後続で製造される吸水性樹脂の吸収量が大きく、即ち吸水性樹脂の性能が良好である。
【0030】
幾つかの実施例において、上記フリーラジカル重合反応は、バッチ反応容器又はコンベア式反応器の中で行ってよい。
【0031】
幾つかの実施例において、コロイドゲルを、選択的に粉砕機で20mm以下の粒径、好ましくは10mm以下の粒径に粉砕してから、篩にかける工程を行ってよい。幾つかの実施例において、篩にかける工程は、粒径が2.0mm以下、好ましくは0.05mm~1.50mmのコロイドゲルを選別してから、粒径が2.0mmより大きいコロイドゲルを、再び反応器に戻してもう一回粉砕することである。後続のプロセスで大量の微粉が発生することを回避し、且つ良好な熱伝導性を持たせ、完成品に残存モノマーの量が高くなることを回避するために、粒径を前述の範囲に制御する必要がである。一般的に、コロイドゲルの粒子の大きさの分布が狭いほど、物性がよくなり、後続の乾燥プロセスに有利になる。
【0032】
幾つかの実施例において、後続の操作を行う前に、選択的にコロイドゲルに乾燥プロセスを行ってよい。幾つかの実施例において、乾燥プロセスは100℃~180℃の温度で行われる。前述の温度範囲において乾燥プロセスを行えば、乾燥時間を効果的に制御することができ、架橋度を効果的に制御して、大量の未反応モノマーの残留を回避することができる。
【0033】
次に、吸水性樹脂の製造方法は、コロイドゲルを粉砕して篩にかけて、吸水性樹脂粒子を得る工程を含む。幾つかの実施例において、吸水性樹脂粒子の粒径は、0.06mm~1.00mm、好ましくは0.10mm~0.85mmに選別したものである。吸水性樹脂粒子の粒径を前述の範囲に制御することにより、完成品の微粉量を低減することができ、吸水性樹脂の吸収性能をよくすることができる。同様に、吸水性樹脂粒子の大きさの分布が狭いほど、物性がよくなる。
【0034】
その後、吸水性樹脂粒子を表面架橋剤及び反応ポリマーと表面架橋反応させて、吸水性樹脂を得る。吸水性樹脂が溶解しない親水性ポリマーで、樹脂内部に均一な架橋構造があるため、吸収速度、コロイド強度、抗ケーキング性及び液体浸透性等の特性を向上させるために、樹脂の表面に更に架橋させる必要がある。表面架橋反応は、酸基と反応できる官能基を有する表面架橋剤で行われる。また、本発明は、製造される吸水性樹脂の液体流動伝導率を更に高めるために、例えばアイオノマー(ionomer)の反応ポリマーを添加することで、共に表面架橋反応を行う。
【0035】
幾つかの実施例において、表面架橋剤は、ポリオール、ポリアミン、2つ以上のエポキシ基を有する化合物、及びアルキレンカーボネートを含み、ポリオールは、例えば、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールであってよく、ポリアミンは、例えば、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、及びトリエチレンジアミンであってよく、エポキシ基を含む化合物は、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びジグリセロールポリグリシジルエーテルであってよく、アルキレンカーボネートは、例えば、エチレングリコールカーボネート、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、及び1,3-ジオキセパン-2-オンであってよい。反応は表面架橋剤を単独で又は二種以上のものを組み合わせて行ってよい。また、選択される表面架橋剤によって、表面架橋剤を直接添加してもよいし、表面架橋剤を水溶液や親水性有機溶液に調製してから添加してもよい。親水性有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、アセトン、メチルエーテル、及びエチルエーテル等を含むが、これらに限定されない。
【0036】
幾つかの実施例において、吸水性樹脂粒子の使用量を100wt%としたら、表面架橋剤の添加量は0.001wt%~10wt%、好ましくは0.005wt%~5wt%である。表面架橋剤の添加量が前述の範囲にあると、吸水性樹脂表面に架橋構造を持たせることができ、それにより良好な吸収性能を得ることができる。
【0037】
吸水性樹脂と反応ポリマーを、本発明の効果を効果的に奏するために均一に混合する必要があり、そのために混合効果の高い混合装置を用いる必要がある。幾つかの実施例において、混合装置は、V型ミキサー、カラムミキサー、高速撹拌ミキサー、螺旋式ミキサー、フローミキサー、ダブルアームニーダー、ダブルアームコーンミキサー、スクリューミキサー、密閉式ミキサー、粉砕ニーダー、回転ミキサー、又はスクリュー押出機であってよい。
【0038】
上記アイオノマーは、電気的に中性の繰り返し単位の高分子中にイオン性単位からなる繰り返し単位を含むポリマーであり、イオン性基は実際のポリマー主鎖の一部である。幾つかの実施例において、イオン性基は、例えばカルボン酸基であってよい。これらの実施例において、アイオノマーは、下記式(1)のポリエチレンセグメント及び下記式(2)のポリプロピレンセグメントを含む化合物であるエチレンアクリル化合物(ethylene-acrylic acid copolymer;EAA)であってよい。
【化2】

Mは、水素原子、IA族元素(例えば、リチウム、ナトリウム、又はカリウム)、又はIIA族元素(例えば、カルシウム又はマグネシウム)である。本実施例において、エチレンアクリルポリマーを100wt%としたら、ポリエチレンセグメントは80wt%~99wt%、ポリアクリル酸セグメントは1wt%~20wt%である。
【0039】
他の実施例において、アイオノマーは、下記式(3)で表されるエチレンアクリル化合物であってよい。
【化3】

Mは、水素原子、IA族元素(例えば、リチウム、ナトリウム、又はカリウム)、又はIIA族元素(例えば、カルシウム又はマグネシウム)である。幾つかの実施例において、Mは、好ましくはIA族元素である。
【0040】
幾つかの実施例では、エチレンアクリル化合物において、ポリエチレンセグメント(即ち、式(1))の重量を100wt%としたら、ポリアクリル酸セグメント(即ち、式(2))の重量は8wt%~20wt%である。エチレンアクリル化合物において、ポリエチレンセグメントが疎水基であり、ポリアクリル酸セグメントが親水基であるため、吸水しやすい。したがって、ポリエチレンセグメントが多すぎると(例えば、ポリアクリル酸セグメントの重量が8wt%以下であると)、吸水性樹脂の吸収能力が低下し、逆に、ポリアクリル酸セグメントが多すぎると(例えば、ポリアクリル酸セグメントの重量が20wt%を超えると)、アイオノマー自身が大気中の水分を吸収して凝集体を形成するため、吸水性樹脂粒子との混合効果が低くなり、本発明の所期の効果は達成できない。
【0041】
幾つかの実施例において、吸水性樹脂粒子の重量を100wt%としたら、反応ポリマーの添加量は0.01wt%~10wt%である。反応ポリマーの添加量が前述の範囲にある場合のみ、吸水性樹脂の吸収能力(例えば圧力下での吸水倍率)を向上させる効果を達成することができる。
【0042】
アイオノマーがエチレンアクリル化合物である幾つかの実施例において、上記表面架橋反応は、150℃~210℃の温度で熱処理することを含む。前述の温度で熱処理することにより、エチレンアクリル化合物を完全に溶融させることができ、品質の高い吸水性樹脂、即ち吸水能力の高い吸水性樹脂を得ることができる。
【0043】
以上説明したように、本発明は、液体流動伝導率(saline flow conductivity;SFC)を有する吸水性樹脂を製造することができ、液体流動伝導率は、液体の浸透性を評価するために用いることができる。吸水性樹脂の液体浸透性が高いと、吸収体のリウェット(rewet)、さらさら性の低下、及び漏れの問題を軽減することができる。液体流動伝導率は、液体を吸収した吸水性樹脂が高い圧力での液体浸透性を備えるため、液体がまた吸収体に入ったときに、液体を既に吸収した吸水性樹脂を通して、液体を吸収していない他の吸水性樹脂に拡散しやすいことを表す。本発明の吸水性樹脂の液体流動伝導率は、30×10-7cm-s/g以上、好ましくは40×10-7cm-s/g以上である。
【0044】
更に、吸水性樹脂は、液体を吸収した後に、外部から吸収体に加わる圧力によって破損したり、液体吸収能力に影響を与えたりしないように、良好な保持力(Centrifuge Retention Capacity;CRC)及び圧力下での吸水倍率(absorption against pressure;AAP)を備える必要がある。幾つかの実施形態において、本発明の吸水性樹脂の保持力は、20g/g以上、好ましくは25g/g以上である。幾つかの実施例において、本発明の吸水性樹脂の圧力下での吸水倍率は15g/gより大きく、好ましくは20g/gより大きく、より好ましくは23g/gより大きい。
【0045】
また、乾燥した吸水性樹脂が液体に接触し始めたときに液体を吸収する能力は、T20値で表してよい。吸水性樹脂のT20値が低いと、乾燥した吸水性樹脂が液体を吸収しやすいことを示す。本発明の吸水性樹脂のT20値は、180秒以下、好ましくは160以下である。補足説明として、T20の値は、1グラムの吸水性樹脂が、0.3psiの圧力下で、20グラムの生理食塩水及び0.01wt%のアルコールエトキシ化合物水溶液を吸収するのに要する時間として定義され、アルコールエトキシ化合物は、12~14個の炭素原子を有する。幾つかの実施例において、本発明の吸水性樹脂のT20値は、180秒より小さく、好ましくは160秒より小さい。本発明の吸水性樹脂は、低いT20値及び高い液体流動伝導率を併せ持ち、吸収体のリウェット量を低減し、紙おむつのさらさら性を向上させることができる。
【0046】
吸収体は、本発明の吸水性樹脂及び親水性繊維を用いてシート状に成型したものである。実際に使用する際に、上記吸収体を液体浸透性のないポリエチレン(PE)フィルムに置いて、液体浸透性のある不織布を表層とするか、又は吸水性樹脂をパルプ繊維材(airlaid)及び/又は不織布に固定してよい。パルプ繊維は、粉砕された木材パルプ、架橋セルロース繊維、綿、羊毛、酢酸ビニル繊維等であってよい。一般的に、吸収体を100wt%としたら、吸収体中の吸水性樹脂(又はコア濃度ともいう)の含有量は、20wt%以上100wt%以下、好ましくは40wt%以上100wt%以下、より好ましくは50wt%以上100wt%以下である。これほどコア濃度の高い吸水性樹脂を用いれば、本発明の効果をより一層奏することができる。一般的に、上記吸収体の坪量(単位面積当たりの重量)は、0.01g/cm~0.30g/cmであり、吸収体の厚さは30mm以下である。
【0047】
以下、複数の実施例を用いて本発明の応用を説明するが、それは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができる。
反応ポリマーの調製
製造例1
【0048】
1180gのエチレンアクリル化合物(CAS NO.9010-86-0、Aldrich-Sigmaから購入、18wt%のポリアクリル酸セグメントを含む)、118gの水酸化ナトリウム、及び5gの純水を取り、150℃の温度でバンバリーミキサー(Banbury mixer)で30分間混合して、中和のナトリウムイオンを有するエチレンアクリル化合物(A)を得る。
製造例2~3
【0049】
製造例1を繰り返し、製造例1との相違点は、製造例2のエチレンアクリル化合物が15wt%のポリアクリル酸セグメント(CAS NO.9010-77-9、Aldrich-Sigmaから購入、15wt%のポリアクリル酸セグメントを含む)を含み、製造例3では水酸化ナトリウムの代わりに172gの水酸化マグネシウムを用いて、中和のナトリウムイオンを有するエチレンアクリル化合物(B)及び中和のマグネシウムイオンを有するエチレンアクリル化合物(C)をそれぞれ製造することである。
製造例4~5
【0050】
製造例1を繰り返し、製造例1との相違点は、製造例4では10wt%のポリアクリル酸セグメントを含むEscorTM 5080で、製造例5では7.5wt%のポリアクリル酸セグメントを含むEscorTM 5020であるエチレンアクリル化合物(Exxonから購入)を用いて、中和のナトリウムイオンを有するエチレンアクリル化合物(D)及び(E)をそれぞれ製造することである。
吸水性樹脂の製造
実施例1
【0051】
48wt%の水酸化ナトリウム水溶液503.12gを、621.03gのアクリル酸及び670.74gの水を含む2000c.c.三角フラスコに徐々に添加し、水酸化ナトリウム/アクリル酸の滴下比を0.85~0.95の範囲内とし、滴下時間を2時間とし、フラスコ内の中和反応系の温度を15℃~40℃の範囲内に維持して、モノマー濃度が42wt%の不飽和モノマー水溶液を得て、その中で70mol%のアクリル酸は、アクリル酸ナトリウムに部分中和され、pH値が5.69である。
【0052】
次に、不飽和モノマー水溶液に1.36gのN,N´-メチレンビスアクリルアミド(フリーラジカル重合反応架橋剤)を添加し、温度を約20℃に維持する。その後、0.35gの過酸化水素水、4.15gの亜硫酸水素ナトリウム、及び4.15gの過硫酸アンモニウムを重合反応開始剤として添加して、フリーラジカル重合反応を行う。
【0053】
反応によって得られたコロイドゲルをカッターミルで粉砕し、粒径が2mm以下のコロイドゲルを選別する。次に、130℃の温度で2時間乾燥する。更に0.1mm~0.85mmの粒径が一定である篩を用いて選別して、吸水性樹脂粒子を得る。
【0054】
次に、得られた吸水性樹脂粒子200gに、エチレングリコールと硫酸アルミニウムと水とを体積比1:0.5:2で混合した水溶液である表面架橋剤2.5gを添加し、中和のナトリウムイオンを有するエチレンアクリル化合物(A)0.1gを添加し、160℃の温度で1時間熱処理を行い、冷却したら、吸水性樹脂を得ることができる。
実施例2~6
【0055】
実施例2~6の吸水性樹脂は、実施例1と同様のプロセスで製造される。相違点は、実施例2のエチレンアクリル化合物(A)の使用量が1.0gであり、実施例3では0.1gのエチレンアクリル化合物(B)を使用し、実施例4では0.1gのエチレンアクリル化合物(C)を使用し、実施例5では0.1gのエチレンアクリル化合物(D)を使用し、実施例6ではN,N’-メチレンビスプロピレンアミンの代わりに4.63gのポリエチレングリコール600-ジアクリレート(UM82-080、日勝化工製)をフリーラジカル重合反応架橋剤とすることである。
比較例1~6
【0056】
比較例1~6の吸水性樹脂は、実施例1と同様のプロセスで製造される。相違点は、比較例1では、中和のナトリウムイオンを有するエチレンアクリル化合物(A)の代わりに、中和されていないエチレンアクリル化合物(CAS NO.9010-86-0、Aldrich-Sigmaから購入、18wt%ポリアクリル酸セグメントを含む)を使用し、比較例2では0.1gのエチレンアクリル化合物(E)を使用し、比較例3ではエチレンアクリル化合物を添加せず、比較例4では5gのエチレンアクリル化合物(E)を使用し、比較例5では140℃の温度で熱処理を行い、比較例6では250℃の温度で熱処理を行うことである。

評価方法
【0057】
本発明の吸水性樹脂の特性を評価するために、以下のテスト方法で物性を分析するが、特に説明しない限り、下記の測定はいずれも室温23±2℃及び相対湿度45±10%の条件で行う。吸水性樹脂を分析する前に十分に混合させる必要がある。
保持力
【0058】
保持力(Centrifuge Retention Capacity;CRC)は、欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association;EDANA)が規定したERT441.3(10)のテスト方法に従って試験を行う。吸水性樹脂の保持力試験結果はそれぞれ表1に示される。
圧力下での吸水倍率
【0059】
圧力下での吸水倍率(absorption against pressure;AAP)は、EDANAが規定したERT442.3(10)のテスト方法に従って試験を行い、4.9kPaの圧力下で、0.9%の塩化ナトリウム水溶液に対して圧力下での吸水倍率を60分間テストする。吸水性樹脂の圧力下での吸水倍率の試験結果は表1に示される。
液体流動伝導率
【0060】
液体流動伝導率(saline flow conductivity;SFC、単位:10-7cm-sec/g)は、米国特許5,562,646に記載の方法に従って測定及び計算し、具体的には吸水性樹脂をJayco合成尿液中に60分間置いた後、0.3psiの圧力下で、0.118M塩化ナトリウム水溶液の流動伝導率を測定する。吸水性樹脂の流動伝導率は表1に示される。
T20値
【0061】
T20値(単位:秒)は、米国特許9,285,302に記載の方法に従って測定及び計算し、それは1グラムの吸水性樹脂が、0.3psiの圧力下で20グラムの生理食塩水及び0.01wt%のアルコールエトキシ化合物水溶液を吸収するのに要する時間であり、アルコールエトキシ化合物は12~14個の炭素原子を有する。試験を三回繰り返した平均値の結果は表1に示される。
【0062】
【表1】

吸収体の作製
【0063】
吸収体成形機を用いて、10.0グラムの吸水性樹脂と10.0グラムの粉砕木材パルプとを混合成形し、成形用メッシュは400メッシュ(38μm)の金網であり、吸収体面積は160平方センチメートル(8センチ×20センチ)である。成形した吸収体をポリエチレンフィルム上に置いてから、不織布を置く。次に、吸収体を18.39kPa(面積160平方センチメートル、重量30kg)の圧力で5分間プレスした後、周囲を白色接着剤で接着したら、テスト用吸収体を得る。
実施例7~12及び比較例7~12
【0064】
実施例7~12ではそれぞれ実施例1~6の吸水性樹脂を用いて上記方法で吸収体を作製し、比較例7~12ではそれぞれ比較例1~6の吸水性樹脂を用いて上記方法で吸収体を作製する。吸収体の坪量及び厚さは表2に示される。
吸収体のリウェット性能
【0065】
吸収体のリウェット量(rewet、即ちさらさら性)が低いほど、吸水性樹脂の耐尿性が良いことを示す。試験方法としては、4.8kPa(面積160平方センチメートル、重量7.8kg)の重りを上記実施例7~12及び比較例7~12で作製された吸収体上に置き、中心点に180mLの合成尿液(米国特許公開番号20040106745に記載のJayco合成尿液)を3回に分けて滴下し(毎回30分間隔)、滴下完了してから30分間後に吸収体上の重りを取り除く。その後、総重量W1を予め測定したろ紙(8センチ×20センチ)を吸収体上に30枚置き、そして4.8kPaの重りを直ちに吸収体上に5分間置き、上記ろ紙にリウェット液体を吸収させる。その後、ろ紙30枚の重量W2を測定する。吸収体の合成尿液のリウェット量が(W2-W1)である。試験結果は表2に示される。
【0066】
【表2】
【0067】
上記試験結果によると、実施例1~6は、比較例1~6と比較して、特定の量且つ中和の金属イオンを有するエチレンアクリル化合物を表面架橋反応に関与させることにより、高い液体流動伝導率と低いT20値とを兼ね備えた吸水性樹脂を得ることができる。換言すれば、実施例1~6の吸水性樹脂は、優れた液体流動伝導率を有するだけでなく、乾燥状態での液体拡散性及び伝導能力も良好である。また、実施例7~12によれば、実施例1~6の吸水性樹脂で作製した吸収体は、液体リウェット量が3.0gより低く、比較例7~12の液体リウェット量よりも明らかに低く、それはさらさら性にも優れていることを示す。
【0068】
従って、本発明による吸水性樹脂の製造方法を適用し、反応ポリマーを吸水性樹脂粒子の表面架橋反応に関与させることにより、製造される吸水性樹脂の液体流動伝導率及び乾燥状態での液体拡散性を効果的に向上させることができると共に、吸水性樹脂の保持力を高く維持することができ、実用性を兼ね備える。
【0069】
本発明は、実施形態に基づいて以上のように開示されたが、それは本発明を制限するものではなく、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができ、よって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に定義されたものを基準とする。