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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】リチウム金属ホスファート電極の製造
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20250303BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20250303BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20250303BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20250303BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
C22B7/00 C
C22B26/12
H01M4/58
H01M10/54
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023133718
(22)【出願日】2023-08-19
(65)【公開番号】P2024054072
(43)【公開日】2024-04-16
【審査請求日】2023-08-19
(31)【優先権主張番号】17/937963
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520490406
【氏名又は名称】リヴィアン アイピー ホールディングス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】リアン,グオシャン
(72)【発明者】
【氏名】タレビースファンダラニ,マジド
(72)【発明者】
【氏名】ハイナー,カリー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パーク,キ テイ
(72)【発明者】
【氏名】プラジャパティ,ヴィクター
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-292308(JP,A)
【文献】国際公開第2021/174348(WO,A1)
【文献】特表2008-532910(JP,A)
【文献】特表2021-514030(JP,A)
【文献】特開2022-135547(JP,A)
【文献】国際公開第2022/167662(WO,A1)
【文献】特表2022-528969(JP,A)
【文献】国際公開第2022/140461(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/45
C22B 7/00
C22B 26/12
H01M 4/58
H01M 10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
リチウムイオン電池ブラックマスをリサイクルして、金属ホスファートリチウムサルフェートを含む溶液を形成することであって、前記金属ホスファートを形成させることが第1の廃棄物を生成することと、
ホスファート含有物質を使用して前記溶液からリチウムホスファートを沈殿させることであって、前記ホスファート含有物質を使用して前記溶液からリチウムホスファートを沈殿させることが第2の廃棄物を生成することと、
更なる処理のために前記第1の廃棄物と前記第2の廃棄物とを組み合わせることと、
前記金属ホスファートを前記リチウムホスファートと混合して、リチウム金属ホスファート前駆体を形成することと、
前記リチウム金属ホスファート前駆体を処理して、リチウム金属ホスファートを形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記リチウム金属ホスファート前駆体を処理することが、前記リチウム金属ホスファート前駆体を粉砕すること、前記リチウム金属ホスファート前駆体を焼成すること、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リチウム金属ホスファートが、リチウム鉄ホスファート(LFP)、リチウム鉄マンガンホスファート(LMFP)、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属ホスファートが、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属ホスファートを鉄源と混合することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記鉄源が、鉄オキサレート、鉄シトレート、鉄オキシド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記リチウム金属ホスファート前駆体が、550~750℃で2~12時間焼成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ホスファート含有物質が、ナトリウムホスファート、リン酸、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
スポジュメンを焙焼することと、前記焙焼されたスポジュメンを硫酸で浸出させて、リチウムサルフェートを含む第2の溶液を取得することと、前記ホスファート含有物質を使用してリチウムホスファートを沈殿させる前に、前記第1の溶液とリチウムサルフェートを含む前記第2の溶液とを組み合わせることと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属ホスファート及びリチウムサルフェートを含む前記溶液を形成することが、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することを含み、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することが、固気反応においてリチウムイオン電池ブラックマスを酸化ガスと反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化ガスが、NOx、Cl、又はSOを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
リチウム金属ホスファートを含むリチウムイオン電池ブラックマスのSOとの反応が、第二鉄ホスファート、リチウムサルフェート、又はこれらの組み合わせを形成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記金属ホスファート及びリチウムサルフェートを含む前記溶液を形成することが、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することを含み、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することが、前記リチウムイオン電池ブラックマスを硫酸及び過酸化水素又は酸素ガスで浸出させて、少なくとも前記金属ホスファートを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記金属ホスファートを硫酸で溶解することと、溶解した金属ホスファート溶液中の鉄対ホスファートの比、マンガン対ホスファートの比、鉄の酸化状態、マンガンの酸化状態、又はこれらの組み合わせを調整することと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記鉄対ホスファートの比、前記マンガン対ホスファートの比、前記鉄の酸化状態、前記マンガンの酸化状態、又はこれらの組み合わせが、鉄、マンガン、マンガンサルフェート、鉄サルフェート、又はこれらの組み合わせを使用して調整される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶解した金属ホスファートから、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを沈殿させることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
粉砕された混合物を噴霧乾燥することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
方法であって、
リチウムイオン電池ブラックマスをリサイクルして、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせと、リチウムサルフェートを含む第1の溶液とを形成することであって、前記第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを形成させることが第1の廃棄物を生成することと、
ホスファート含有物質を使用して、リチウムサルフェートを含む第1の溶液からリチウムホスファートを沈殿させることであって、前記ホスファート含有物質を使用して前記溶液からリチウムホスファートを沈殿させることが第2の廃棄物を生成することと、
更なる処理のために前記第1の廃棄物と前記第2の廃棄物とを組み合わせることと、
前記第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを、前記リチウムホスファートと混合して、リチウム金属ホスファート前駆体を形成することと、
前記リチウム金属ホスファート前駆体を粉砕することと、
前記リチウム金属ホスファート前駆体を焼成して、リチウム鉄ホスファート(LFP)、リチウム鉄マンガンホスファート(LMFP)、又はこれらの組み合わせを形成することと、を含む、方法。
【請求項19】
リチウムイオン電池ブラックマスを、NOx、Cl、又はSOを含む酸化ガスと反応させて、前記第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせ、及び前記リチウムサルフェートを形成することによって、リチウムイオン電池ブラックマスをリサイクルすることと、
前記リチウムサルフェートを溶媒と混合して、リチウムサルフェートを含む前記第1の溶液を形成することと、を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の廃棄物および第2の廃棄物は、ナトリウムサルフェートを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、電池及び電池を調製する方法、より具体的には、リチウム金属ホスファート製造システム、及びかかるリチウム金属ホスファートを使用して、電池を調製する方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
リチウム金属ホスファート、特に、鉄含有リチウム金属ホスファート電極は、典型的には、鉄ホスファートをリチウムカーボネートと混合し、続いて固体反応を行うことによって生成される。鉄ホスファート相及びリチウムカーボネートは、通常、別個のプロセスから生成され、これらのプロセスの各々は、処理されるべきそれら自体の廃棄物流を有し、それによって、追加コストを追加する。加えて、リチウムカーボネートはまた、リチウム金属ホスファート生成のための原料として使用するために高価である。
【0003】
本明細書では、リチウム金属ホスファート、例えば、リチウム鉄ホスファート(lithium iron phosphate、「LFP」)及び/又はリチウムマンガン鉄ホスファート(lithium manganese iron phosphate、「LMFP」)を生成するシステム及びプロセスが開示される。より具体的には、本明細書において開示されるシステム及びプロセスは、相乗効果を達成し、かつ/又はコストを低減するために、リチウム抽出、リチウム金属ホスファート合成、及びリチウムイオン電池(lithium ion battery、「LIB」)リサイクルを含むことができる。
【0004】
いくつかの実施形態では、方法は、金属ホスファート及びリチウムサルフェートを含む溶液を形成することと、ホスファート含有物質を使用して溶液からリチウムホスファートを沈殿させることと、金属ホスファートをリチウムホスファートと混合して、リチウム金属ホスファート前駆体を形成することと、リチウム金属ホスファート前駆体を処理して、リチウム金属ホスファートを形成することと、を含む。いくつかの実施形態では、処理することは、リチウム金属ホスファート前駆体を粉砕すること、リチウム金属ホスファート前駆体を焼成すること、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファートは、リチウム鉄ホスファート(LFP)、リチウム鉄マンガンホスファート(LMFP)、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、金属ホスファートは、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、方法は、金属ホスファートを鉄源と混合することを含む。いくつかの実施形態では、鉄源は、鉄オキサレート、鉄シトレート、鉄オキシド、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート前駆体は、550~750℃で2~12時間焼成される。いくつかの実施形態では、ホスファート含有物質は、ナトリウムホスファート、リン酸、ナトリウムヒドロキシド、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、方法は、スポジュメンを焙焼することと、焙焼されたスポジュメンを硫酸で浸出させて、リチウムサルフェートを含む第2の溶液を取得することと、ホスファート含有物質を使用してリチウムホスファートを沈殿させる前に、第1の溶液とリチウムサルフェートを含む第2の溶液とを組み合わせることと、を含む。いくつかの実施形態では、金属ホスファート及びリチウムサルフェートを含む溶液を形成することは、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することを含み、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することは、リチウムイオン電池ブラックマスを酸化ガスと反応させることを含む。いくつかの実施形態では、酸化ガスは、NOx、Cl、又はSOを含む。いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池ブラックマスのSOとの反応は、第二鉄ホスファート、リチウムサルフェート、又はこれらの組み合わせを形成する。いくつかの実施形態では、金属ホスファート及びリチウムサルフェートを含む溶液を形成することは、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することを含み、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することは、硫酸及び過酸化水素又は酸素ガスを用いてリチウムイオン電池ブラックマスを浸出させて、少なくとも金属ホスファートを形成することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、金属ホスファートを硫酸で溶解することと、溶解した金属ホスファート溶液中の鉄対ホスファートの比、マンガン対ホスファートの比、鉄の酸化状態、マンガンの酸化状態、又はこれらの組み合わせを調整することと、を含む。いくつかの実施形態では、鉄対ホスファートの比、マンガン対ホスファートの比、鉄の酸化状態、マンガンの酸化状態、又はこれらの組み合わせは、鉄、マンガン、マンガンサルフェート、鉄サルフェート、又はこれらの組み合わせを使用して調整される。いくつかの実施形態では、方法は、溶解した金属ホスファートから、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを沈殿させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、粉砕された混合物を噴霧乾燥することを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、方法は、ホスファート含有物質を使用して、リチウムホスファートを、リチウムサルフェートを含む第1の溶液から沈殿させることと、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを、リチウムホスファートと混合して、リチウム金属ホスファート前駆体を形成することと、リチウム金属ホスファート前駆体を粉砕することと、リチウム金属ホスファート前駆体を焼成して、リチウム鉄ホスファート(LFP)、リチウム鉄マンガンホスファート(LMFP)、又はこれらの組み合わせを形成することと、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、リチウムイオン電池ブラックマスを、NOx、Cl、又はSOを含む酸化ガスと反応させて、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせ、及びリチウムサルフェートを形成することによって、リチウムイオン電池ブラックマスをリサイクルすることと、リチウムサルフェートを溶媒と混合して、リチウムサルフェートを含む第1の溶液を形成することと、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、方法は、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせをリチウムホスファートと化学量論比で混合して、リチウム金属ホスファート前駆体を形成することと、リチウム金属ホスファート前駆体を粉砕することと、リチウム金属ホスファート前駆体を焼成して、リチウム鉄ホスファート(LFP)、リチウム鉄マンガンホスファート(LMFP)、又はこれらの組み合わせを形成することと、を含む。
【0007】
上記で開示された実施形態は、例であり、本開示の範囲は、これらに限定されない。特定の実施形態は、上記で開示された実施形態の構成要素、要素、特徴、機能、作動、若しくは工程の全て、いくつかを含んでもよく、又はいずれも含まなくてもよい。本発明による実施形態は、特に、方法、システム、及び電極物質を対象とする添付の特許請求の範囲において開示され、1つの請求項カテゴリ、例えば、方法において言及される任意の特徴は、別の請求項カテゴリ、例えば、システムにおいても同様に特許請求され得る。添付の特許請求の範囲における従属関係又は後方参照は、形式的な理由でのみ選択される。しかしながら、請求項及びそれらの特徴の任意の組み合わせが、開示され、かつ添付の特許請求の範囲において選択された従属関係にかかわらず特許請求され得るように、任意の先行請求項に対する意図的な後方参照(特に、多項従属関係)から生じる任意の主題も、同様に特許請求され得る。特許請求され得る主題は、添付の特許請求の範囲に記載される特徴の組み合わせだけでなく、特許請求の範囲における特徴の任意の他の組み合わせも含み、特許請求の範囲において言及される各特徴は、特許請求の範囲における任意の他の特徴、又は他の特徴の組み合わせと組み合わせることができる。更に、本明細書で説明又は描写される実施形態及び特徴のいずれも、別個の請求項において、及び/又は本明細書で説明又は描写される任意の実施形態若しくは特徴との、若しくは添付の特許請求の範囲の特徴のいずれかとの任意の組み合わせにおいて、特許請求され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による、リチウム金属ホスファート生成プロセスに関する例示的なフローチャートを例解する。
図2図2は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による、リチウム金属ホスファート生成プロセスに関する第2の例示的なフローチャートを例解する。
図3図3は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による、典型的な電池セル製造プロセスに関するフローチャートを例解する。
図4図4は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による、円筒形電池セルの断面図の例示的な例を描写する。
図5図5は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による、角柱形電池セルの断面図の例示的な例を描写する。
図6図6は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による、パウチ電池セルの断面図の例示的な例を描写する。
図7図7は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による、電池モジュール及びパックを形成するためにフレームに挿入されている円筒形電池セルを例解する。
図8図8は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による、電池モジュール及びパックを形成するためにフレームに挿入されている角柱形電池セルを例解する。
図9図9は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による、電池モジュール及びパックを形成するためにフレームに挿入されているパウチ電池セルを例解する。
図10図10は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による、少なくとも1つの電池パックを含む、電気車両の断面図の一例を例解する。
【0009】
図面において、同様の参照番号は、本明細書において特に明記しない限り、同様の構成要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
リチウム金属ホスファートの例としては、リチウム鉄ホスファート(「LFP」)、リチウム鉄マンガンホスファート(「LFMP」)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。リチウム鉄ホスファートは、還元剤の存在下、高温において、FePOとLiCOとの固体反応などの多くの異なるプロセスによって製造することができる。LFPはまた、圧力下の温和な温度におけるFeSO、HPO、及びLiOHの水熱反応によって合成することもできる。LFPを生成する第3の方法は、ゾル-ゲルプロセスであり、LFPは、Fe、PO、及びLi源(例えば、Feナイトレート、HPO、及びLiOH)を液体形態で混合し、続いて高温で焼成することから形成される。
【0011】
本明細書において説明されるのは、リチウム金属ホスファート生成、リチウム抽出、及びリチウムイオン電池リサイクルを相乗的に行うことができるリチウム金属ホスファート生成システム及びプロセスである。スポジュメンからの典型的なリチウム抽出は、スポジュメン精鉱を高温(約1000℃)で焙焼することと、焙焼されたスポジュメンを硫酸で酸浸出させて、LiSO溶液を取得することと、LiSO溶液を精製して、不純物(例えば、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムなど)を除去することと、溶液を更に濃縮することと、次いで、蒸発及び沈殿の複雑なプロセスによってリチウムカーボネートを沈殿させることと、を含む。本明細書において開示されるシステム及び方法は、リチウムカーボネートの代わりにリチウムホスファート(LiPO)を使用することができる。リチウムホスファートは、リチウムカーボネートよりもはるかに低い溶解度を有し、したがって、蒸発による更なる濃縮なしに容易に沈殿させることができ、それによって、エネルギー及びコストを節約する。
【0012】
図1は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態による、リチウム金属ホスファート生成プロセス1に関する例示的なフローチャートを例解する。具体的には、リチウム金属ホスファートは、リチウム抽出プロセス2、リチウム金属ホスファート合成プロセス3、及び/又はリチウムイオン電池(「LIB」)ブラックマスリサイクルプロセス4を含むことができる。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート生成プロセスは、閉ループ統合プロセスであり得る。本明細書において更に説明されるように、リチウム金属ホスファート生成プロセスは、スポジュメンから新しいリチウム塩(例えば、LiPO)を抽出し、リチウム金属ホスファートの合成中にリチウム及び/又はホスフォラスの供給源として塩を使用することができる。加えて、使用済み又は廃棄されたLIBからの物質(すなわち、ブラックマス)は、リチウム金属ホスファート生成プロセスにおいてリサイクル及び再利用することができる。かかる統合されたリチウム金属ホスファート生成プロセス(すなわち、リチウム抽出、リチウム金属ホスファート合成、及びLIBブラックマスリサイクル)は、典型的なリチウム金属ホスファート生成プロセスよりも大きい相乗効果及びコスト低減を達成することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、リチウム抽出プロセスは、5つのスポジュメンを提供すること、及び/又は取得することを含むことができる。いくつかの実施形態では、スポジュメンは、リチウム、アルミニウム、シリコン、及び/又は酸素を含むことができる。いくつかの実施形態では、スポジュメンは、LiAl(SiO及び/又はLi2O.Al.4SiOを含むことができる。いくつかの実施形態では、スポジュメンは、Fe、Mg、Ca、K、Na、又はこれらの組み合わせなどの天然不純物を含むことができる。いくつかの実施形態では、スポジュメンは、スポジュメン精鉱であり得る。LiAl(SiOを含むスポジュメンでは、リチウム含有量は、理論的に約3.75重量%、又は約8重量%のLiOである。天然鉱物の場合、リチウム含有量は、約1~2重量%である。採掘選鉱プロセスを通して、スポジュメン精鉱中のLi2O含有量は、約5~6重量%増加し得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、リチウム抽出プロセスはまた、スポジュメンを焙焼すること6を含むことができる。スポジュメンを焙焼することにより、スポジュメンアルファ相をベータ相に変換することができ、これは酸によってより容易に溶解され得る。いくつかの実施形態では、スポジュメンは、ロータリーキルン内で焙焼することができる。いくつかの実施形態では、スポジュメンは、少なくとも約800℃、少なくとも約850℃、少なくとも約900℃、少なくとも約950℃、少なくとも約1000℃、又は少なくとも約1050℃の温度で焙焼することができる。いくつかの実施形態では、スポジュメンは、最大で約1200℃、最大で約1150℃、最大で約1100℃、最大で約1050℃、最大で約1000℃、又は最大で約950℃の温度で焙焼することができる。いくつかの実施形態では、スポジュメンは、約700~1300℃、約750~1250℃、約800~1200℃、約850~1150℃、約900~1100℃、約950~1000℃、約960~990℃、又は約970~980℃で焙焼することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、焙焼されたスポジュメンは、リチウム抽出プロセスにおいて浸出7され得る。いくつかの実施形態では、焙焼したスポジュメンを、酸で浸出させて、リチウム塩を含む抽出溶液8を取得することができる。スポジュメンからリチウムを抽出するために、硫酸を伴うプロセスが、商業的に利用されている。スポジュメンからリチウムを抽出するために、他のプロセス、例えば、カルシウムカーボネート及び/又はカルシウムサルフェートの混合物と、それに続く水浸出を伴うプロセスも可能である。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、リチウムサルフェート、リチウムヒドロキシド、及び/又はリチウムカーボネートであり得る。いくつかの実施形態では、酸は、硫酸、HCl、HPO、又はこれらの組み合わせであり得、抽出溶液は、リチウムサルフェート(例えば、LiSO)を含み得る。いくつかの実施形態では、浸出は、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、少なくとも約200℃、又は少なくとも約250℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、浸出は、最大で約400℃、最大で約350℃、最大で約300℃、又は最大で約250℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、浸出は、約50~450℃、約100~400℃、約150~350℃、又は約200~300℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、スポジュメンと酸との反応に関する酸過剰率は、30%超であり得るが、140%ほどの高さである可能性がある。
【0016】
いくつかの実施形態では、浸出から形成された抽出溶液は、リチウム抽出プロセスにおいて精製することができる。いくつかの実施形態では、抽出溶液の精製は、抽出溶液のpHを上昇させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、pHは、約8~13.5、約8.5~13、約9~12.5、約9.5~12、約10~12、約10.5~11.5、又は約11に上昇させることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、リチウム抽出プロセスは、ホスファート含有物質を使用して抽出溶液からリチウムホスファートを沈殿させること11を含む。次いで、リチウムホスファートは、リチウム金属ホスファート合成プロセスのための原物質供給原料であり得る。いくつかの実施形態では、ホスファート含有物質は、ナトリウムホスファート(例えば、NaPO)、リン酸、及び/又はナトリウムヒドロキシドを含むことができる。いくつかの実施形態では、リチウムホスファートを沈殿させることにより、廃棄物12を作成することができる。いくつかの実施形態では、廃棄物は、ナトリウムサルフェート(NaSO)を含み得る。いくつかの実施形態では、ホスファート含有物質を使用して抽出溶液からリチウムホスファートを沈殿させることは、以下の式:3Li2SO4.H2O+2H3PO4+6NaOh=>2Li3PO4+3Na2SO4に基づくことができる。
【0018】
典型的なリチウムイオン電池(「LIB」)ブラックマスリサイクルは、多くの場合、乾式製錬又は湿式製錬プロセスを通して行われる。リチウムは、湿式製錬プロセスにおいて、LIBブラックマスから酸浸出によって抽出することができる。これは、酸及び大量の廃棄物の使用、並びに更なる精製を必要とするリチウム溶液へのFe、Cu、Alなどの望ましくない金属の溶解を伴う可能性がある。
【0019】
いくつかの実施形態では、LIBブラックマスリサイクルプロセスは、LIBブラックマスを提供すること、及び/又は取得すること13を含み得る。例えば、リサイクルのための電池パックは、機械的に解体、破砕、及び/又は細断され得る。電池を機械的に解体した後、プラスチック及びアルミニウムなどのいくつかの構成要素がろ過され得る。残っているのは、リチウム、鉄、マンガン(NCMカソードではニッケル、コバルト)を含有する、LFP、LFMP、NCM、又はNCAなどの大量の電池の活物質を含有するブラックマスである。ブラックマスは、多量のリチウム、マンガン、コバルト、及びニッケル金属を含む。次いで、これらの金属を抽出することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、LIBブラックマスは、リチウム金属ホスファート(例えば、LFP又はLMFP)ブラックマスである。LIBブラックマスは、使用済み又は廃棄されたLIB電池から抽出することができる。いくつかの実施形態では、ブラックマスは、無機酸中に溶解(例えば、完全に溶解)され得るか、若しくは溶液に混合され得、又はリチウムは、本明細書において説明されるように酸及び/又は酸化剤を追加することによって選択的に浸出され得る。いくつかの実施形態では、LIBブラックマスリサイクルプロセスは、LIBブラックマスからリチウムを抽出して、金属ホスファート(例えば、鉄ホスファート、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせ)及び/又はリサイクル溶液を形成することを含み得る。いくつかの実施形態では、金属ホスファートは、MnHPO、MnPO、FeHPO、FePO、(Mn1-xFex)3(PO4)2.xH2O、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、このリサイクル溶液は、リチウムサルフェートを含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、LIBブラックマスリサイクルプロセス(すなわち、LIBブラックマスからリチウムを抽出して、金属ホスファートを形成すること)は、LIBブラックマスを浸出14させて、浸出溶液を形成することを含み得る。いくつかの実施形態では、LIBブラックマスは、酸(例えば、硫酸、HNO、及び/若しくはHCl)並びに/又は酸化剤(鉄溶解を抑制するため)で浸出され得る。いくつかの実施形態では、酸化剤は、過酸化水素及び/又は酸素ガスであり得る。いくつかの実施形態では、浸出溶液は、リチウム塩(例えば、リチウムサルフェート、リチウムヒドロキシド、リチウムクロリド、リチウムナイトレート、及び/又はリチウムカーボネート)、鉄物質、マンガン物質、ホスファート物質、マンガンホスファート物質、鉄ホスファート物質、及び/又は鉄マンガンホスファート物質を含むことができる。例えば、HCl又はHNOなどの無機酸を使用することによって抽出が実施されるとき、LiCl及び/又はLiNOが形成され得るが、溶液中で解離され得る。いくつかの実施形態では、LiOH及び/又はLiCOは、特定の条件でNaOH及び/又はNaCOを追加することによって形成することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、浸出溶液は、鉄ホスファート、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、浸出溶液は、MnHPO、MnPO、FeHPO、FePO、(Mn1-xFex)3(PO4)2.xH2O、又はこれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、鉄物質、マンガン物質、ホスファート物質、マンガンホスファート物質、鉄ホスファート物質、及び/又は鉄マンガンホスファート物質は、浸出溶液中の固体及び/又は残留物であり得る。
【0023】
本明細書における方法は、リチウムイオン電池用のホスファート系カソード物質の合成及び/又はリサイクルのために使用することができる。格子中の他の遷移金属のカチオン置換の有無にかかわらず、式LiMPO(式中、M=Fe、Mn、Co、Ni、Zn又はこれらの組み合わせ)を有する様々なポリアニオン性オリビン物質は、本明細書において説明された方法によって合成及び/又はリサイクルすることができる。本開示は、非限定的な例として、リチウムイオン電池(LIB)のための合成リチウム鉄ホスファート(LFP)及びリチウムマンガン鉄ホスファート(LMFP)カソード物質を説明する。他のホスファート系カソード物質(例えば、格子中の他の遷移金属のカチオン置換の有無にかかわらず、リチウム鉄ホスファート、リチウムマンガンホスファート、リチウムコバルトホスファート、リチウムニッケルホスファート)は、本明細書において説明された方法により、同様に合成及び/又はリサイクルすることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、リチウム塩を浸出溶液から分離して、リサイクル溶液を形成することができ、このリサイクル溶液14aは、リチウム抽出プロセス2における浸出から形成された抽出溶液8と組み合わせる、及び/又は混合することができる。通常、硫酸は、鉄がLFP中でFe2+状態にあるとき、より低いpHにおいてLIBブラックマスを溶解することができる。過酸化水素及び/又は酸素ガスの追加は、そのpHにおいて鉄をFe3+状態に維持することができる。次いで、Fe3+は、固体/沈殿物として残る-POと組み合わせることができる。これは、金属ホスファート物質からのリチウム塩の分離を可能にし得る。したがって、リチウム塩は、スポジュメンからの抽出によって生成されるだけでなく、リサイクルされたLIBブラックマスからも生成され得る。換言すると、LIBリサイクルからのリチウム塩溶液は、LiPOへの更なる変換のために、スポジュメンのリチウム抽出からのリチウム塩溶液と組み合わせることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、LIBブラックマス浸出からの金属ホスファートは、LIBブラックマスリサイクルプロセスにおいて溶解15されて、溶液15aを形成することができる。いくつかの実施形態では、金属ホスファートブラックマス残留物は、硫酸によって更に溶解され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、溶解金属ホスファート溶液15a中の金属対ホスファート比及び/又は金属の酸化状態を調整16して、調整溶液16aを形成することができる。いくつかの実施形態では、溶解金属ホスファート溶液の鉄対ホスファート比、鉄の酸化状態、マンガン対ホスファート比、マンガンの酸化状態、pH、又はこれらの組み合わせを調整して、調整溶液を形成することができる。いくつかの実施形態では、溶解金属ホスファート溶液の鉄対ホスファート比及び/又は鉄酸化を調整することは、鉄及び/又はFeSOを溶解金属ホスファート溶液に加えることを含み得る。いくつかの実施形態では、溶解金属ホスファート溶液のマンガン対ホスファート比及び/又はマンガン酸化を調整することは、マンガン及び/又はマンガンサルフェートを溶解金属ホスファート溶液に追加することを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、金属ホスファートは、溶解された金属ホスファート溶液及び/又は調整された溶液から沈殿17させることができる。いくつかの実施形態では、沈殿させることができる金属ホスファートは、鉄ホスファート、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、金属ホスファートは、MnHPO、MnPO、FeHPO、FePO、(Mn1-xFex)3(PO4)2.xH2O、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、鉄ホスファート(例えば、Fe(PO4).x.HO)は、塩基性溶液(例えば、NaOH)を使用してpHを6超に上昇させることによって沈殿させることができる。鉄ホスファート(例えば、Fe(PO4).x.HO)は、Hなどの還元条件下で、又は500℃を超える温度でポリマーと混合することによって、脱水されて鉄ホスファートを得ることができる。いくつかの実施形態では、酸化剤(例えば、H)及び塩基性溶液(例えば、NaOH)を追加して、pHを2~4に調整することによって、鉄ホスファート(例えば、FePO.2HO)を調整された溶液から沈殿させることができる。FePO.2HOを、約600℃で脱水して、FePOを取得することができる。いくつかの実施形態では、Mn、Fe含有溶液に関して、鉄マンガンホスファート(例えば、(Mn,Fe)(PO4).x.HO)は、不活性又は還元条件下で溶液を加熱する(最大約400℃)ことを介して溶液を脱水することによって、沈殿させることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、沈殿反応は、3Fe2++3SO 2-+nH+2PO 3-+6Na+nOH→Fe3(PO4)2.8H2O()+6Na+3SO 2-+(n-8)H+(n-8)OHを含むことができる。いくつかの実施形態では、第一鉄Fe2+イオンは、過酸化水素を使用して第二鉄Fe3+イオンに酸化され得る:2Fe2++H+2H→2Fe3++2HO。第二鉄Fe3+イオンは、ホスファートイオンPO 3+と反応して、鉄ホスファート沈殿物を形成し、溶液中にNaSOを残すことができる:Fe3++SO 2-+nH+PO 3-+2Na+nOH→FePO4.2H2O()+2Na+SO 2--+(n-2)H+(n-2)OH
【0030】
いくつかの実施形態では、金属ホスファート(例えば、鉄ホスファート、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせ)を沈殿させることにより、廃棄物が生成され得る。いくつかの実施形態では、廃棄物は、ナトリウムサルフェート(NaSO)を含み得る。このように、この廃棄物は、リチウム抽出プロセス2からの廃棄物に加えることができる。同じ廃棄物流を有することによって、これは、コストを低減し、全体的なリチウム金属ホスファート生成プロセスの効率を増加させることができる。いくつかの実施形態では、ナトリウムサルフェート廃棄物は、電気透析などの様々な手順を使用して、硫酸及びNaOHに変換して戻すことができる。いくつかの実施形態では、回収された硫酸は、次いで、スポジュメン浸出、LIBブラックマス浸出、及び/又は金属ホスファート溶解のために再使用され得る。いくつかの実施形態では、回収されたNaOHは、リチウム抽出プロセスにおけるLiPO沈殿及び/又はLIBブラックマスリサイクルプロセスにおける金属ホスファート沈殿のために使用することができる。これにより、リチウム金属ホスファート生成プロセス全体から排出される廃棄物を著しく低減させることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、沈殿した金属ホスファートは、洗浄及び/又はろ過18され得る。いくつかの実施形態では、沈殿した金属ホスファートは、洗浄液の導電率が約500マイクロシメン(microsimens)未満に達するまで、水洗(例えば、DI水)され得る。いくつかの実施形態では、洗浄された沈殿した金属ホスファートは、フィルタープレス機内でろ過され得るか、又は遠心分離され得る。いくつかの実施形態では、次いで、沈殿した金属ホスファートを乾燥させることができる。いくつかの実施形態では、金属ホスファートは、次いで、リチウム金属ホスファート合成プロセスのための原物質供給原料であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、LIBブラックマスからリチウムを抽出することは、図2のフローチャート内に示されるように、LIBブラックマスを酸化ガスと反応させることを含み得る。これは、固気反応による浸出14cと考えることができる。いくつかの実施形態では、酸化ガスは、NOx(例えば、NO)、Cl、オゾン、及び/又はSO(例えば、SO、SO)を含む。いくつかの実施形態では、LIBブラックマスを酸化ガスと反応させることは、金属ホスファート(例えば、鉄ホスファート、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、若しくはこれらの組み合わせ)、金属オキシド、及び/又はリチウム塩を形成することができる。いくつかの実施形態では、金属ホスファートは、MnHPO、MnPO、FeHPO、FePO、(Mn1-xFex)3(PO4)2.xH2O、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、金属ホスファートは、MnPO、FePO、(Mn,Fe)PO、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、他の要因の中でも、酸化ガスに応じて、LiNO、LiCl、及び/又はLiSOであり得る。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、LiO、LiOH、LiCO、及び/又はLiPOなどの他のリチウム物質を作製するために、(例えば、水によって)洗浄19され、収集され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、LIBブラックマスのSOとの反応は、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、若しくはこれらの組み合わせ、及び/又はリチウムサルフェートを形成する。いくつかの実施形態では、LIBブラックマスのSOとの反応は、MnHPO、MnPO、FeHPO、FePO、(Mn1-xFex)3(PO4)2.xH2O、若しくはこれらの組み合わせ、及び/又はリチウムサルフェートを形成する。いくつかの実施形態では、LIBブラックマスのSOとの反応は、MnPO、FePO、(Mn,Fe)PO、若しくはこれらの組み合わせ、及び/又はリチウムサルフェートを形成する。いくつかの実施形態では、リチウムサルフェート及び金属ホスファートは、互いに分離され得る。いくつかの実施形態では、リチウムサルフェートは、溶媒と混合されて、リチウムサルフェート溶液を形成することができ、これはリチウム抽出プロセスのリチウム塩溶液8と組み合わせることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、LIBブラックマスのNOとの反応は、FePO及びLiNOを形成することができる。LiNOは、水で洗浄19され、続いて乾燥21し、熱分解22して、LiO及びNOにすることができる。LiNOは、約600℃の温度で熱分解して、リチウムオキシド、NO、O、又はこれらの組み合わせを形成することができる。いくつかの実施形態では、NOは、LIBブラックマスとの固気反応による浸出において使用するために戻される可能性がある。いくつかの実施形態では、LiOは、金属ホスファートと組み合わせて、リチウム金属ホスファート合成プロセスのための原物質供給原料として利用することができる。いくつかの実施形態では、Li2Oは、還元条件下でFePOと、又は不活性条件下でFeと反応して、LiFePOを形成することができる:Li2O+2FePO4+CO=→2LiFePO4+CO2及びLi2O+Fe2P2O7→2LiFePO4。
【0035】
いくつかの実施形態では、LiOは、他のリチウム塩23(例えば、LiOH、リチウムサルフェートなど)を作製するために使用され得る。これらの他の塩は、本明細書において開示される方法の任意の他の工程において使用することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、LIBブラックマスのClとの反応は、LiCl及び金属ホスファートを形成することができる。いくつかの実施形態では、LiClは洗浄され、他のリチウム塩(例えば、LiOH、リチウムサルフェートなど)を作製するために使用され得る。これらの他の塩は、本明細書において開示される方法の任意の他の工程において使用することができる。
【0037】
気固反応は、高速であり得、リチウム浸出及び洗浄のための連続プロセスを可能にすることができ、これはより少ない廃棄物につながり、かつ鉄、銅、及びアルミニウムなどの金属の溶解を低減するか又は除去し、それによって、更なる精製工程のコストを回避することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート生成プロセスは、金属ホスファート(例えば、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせ)及びリチウムホスファート25を提供及び/又は取得すること24を含むことができる。いくつかの実施形態では、金属ホスファートは、MnHPO、MnPO、FeHPO、FePO、(Mn1-xFex)3(PO4)2.xH2O、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、金属ホスファートは、本明細書において説明されるLIBブラックマスリサイクルプロセスから取得される金属ホスファートであり得る。いくつかの実施形態では、リチウムホスファートは、本明細書において説明されるリチウム抽出プロセスから取得されるリチウムホスファートであり得る。いくつかの実施形態では、金属ホスファート及びリチウムホスファートは、混合26されて、リチウム金属ホスファート前駆体混合物を形成することができる。いくつかの実施形態では、金属ホスファート及びリチウムホスファートはまた、炭素源、マンガン源、及び/又は鉄源27と混合されて、リチウム金属ホスファート前駆体混合物を形成することができる。いくつかの実施形態では、鉄源は、鉄オキサレート、鉄シトレート、鉄オキシド、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、炭素源は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン及び/若しくは同様のものなど、スクロース、ラクトース、PVA、PVB、カーボンナノチューブ、カーボン繊維、グラフェン、又はこれらの組み合わせなどの有機物質又はポリマー物質であり得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、リチウムホスファート及び金属ホスファート(並びに炭素及び/又は鉄源)は、化学量論比で混合することができる。いくつかの実施形態では、鉄オキサレートは、リチウム、鉄、及びホスファートの比を化学量論量に調整するために金属ホスファート及びリチウムホスファートに追加される。
【0040】
金属ホスファートをリチウムホスファートと混合して、リチウム金属ホスファート前駆体を形成した後、リチウム金属ホスファート前駆体は、リチウム金属ホスファートを形成するために処理され得る。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート前駆体を処理して、リチウム金属ホスファートを形成することは、リチウム金属ホスファート前駆体を粉砕すること、及び/又はリチウム金属ホスファート前駆体を焼成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート前駆体混合物は、粉砕28され得る。いくつかの実施形態では、粉砕は、湿式粉砕、ビーズ粉砕、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、粉砕されたリチウム金属ホスファート前駆体混合物は、約1マイクロメートル未満、約0.75マイクロメートル未満、約0.5マイクロメートル未満、0.25マイクロメートル未満、又は約0.2マイクロメートル未満の粒子サイズ分布D50を有することができる。いくつかの実施形態では、粉砕されたリチウム金属ホスファート前駆体混合物の粒子サイズ分布D50は、約0.001~1マイクロメートル、約0.01~1マイクロメートル、約0.01~0.75マイクロメートル、約0.01~0.5マイクロメートル、又は約0.01~0.2マイクロメートルであり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、粉砕されたリチウム金属ホスファート前駆体物質は、乾燥29させることができる。いくつかの実施形態では、乾燥は、噴霧乾燥及び/又はフラッシュ乾燥によって達成され得る。いくつかの実施形態では、(粉砕及び/又は乾燥された)リチウム金属ホスファート前駆体は、焼成されて、リチウム金属ホスファート物質を形成することができる。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、リチウム鉄ホスファート、リチウム鉄マンガンホスファート、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、焼成は、少なくとも約400℃、少なくとも約450℃、少なくとも約500℃、少なくとも約550℃、少なくとも約600℃、少なくとも約650℃、又は少なくとも約700℃の温度であり得る。いくつかの実施形態では、焼成は、最大で約900℃、最大で約850℃、最大で約800℃、最大で約750℃、最大で約700℃、最大で約650℃、又は最大で約600℃の温度であり得る。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート前駆体は、約2~12時間焼成され得る。いくつかの実施形態では、焼成されたリチウム金属ホスファート物質は、包装33の前に粉砕及び/又はふるい分け32され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、約0.1~5マイクロメートル、約0.1~3マイクロメートル、約0.1~2マイクロメートル、又は約0.5~1.5マイクロメートルの粒子サイズ分布D50を有することができる。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、少なくとも約0.01マイクロメートル、少なくとも約0.05マイクロメートル、少なくとも約0.1マイクロメートル、又は少なくとも約0.2マイクロメートルの粒子サイズ分布D10を有することができる。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、最大で約20マイクロメートル、最大で約15マイクロメートル、最大で約12マイクロメートル、又は最大で約10マイクロメートルの粒子サイズ分布D90を有することができる。本明細書において使用される際、「D50」は、粒子サイズ分析器(particle size analyzer、PSA)から測定された中央粒子サイズ、又は累積分布中50%における粒子サイズ(直径)を指す。一次粒子は、特にナノサイズの粉末において、互いに凝集する傾向があるので、PSA測定値(例えば、D10、D50、D90、D100)は、必ずしも単結晶粒子のサイズを表すとは限らない。更に、本明細書において使用される際、「D10」とは、累積分布における10%の粒子サイズ(直径)を指し、「D90」とは、累積分布における90%の粒子サイズ(直径)を指す。
【0043】
いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、最大で約150Ω.cm、最大で約125Ω.cm、最大で約100Ω.cm、最大で約75Ω.cm、又は最大で約50Ω.cmの粉末抵抗を有する。いくつかの実施形態では、粉末抵抗は、Mitsubishi MCP-PD51粉末プレス密度及び抵抗率試験機を用いて測定することができる。いくつかの実施形態では、粉末抵抗は、2つの電極を有する絶縁測定セルを介して測定することができる。DC電圧は、電極に印加することができ、電流計によって電流を測定することができる。粉末体積抵抗率は、平均計算抵抗、電極の高さ及び長さ、並びに電極間の空間から導出される。
【0044】
いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、約5重量%未満、約2.5重量%未満、約2重量%未満、又は約1.5重量%未満の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、最大で約0.5重量%、最大で約1重量%、又は最大で約1.5重量%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、約0.1~5重量%、約0.5~3重量%、又は約1~1.5重量%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態では、炭素含有量は、試料の酸化を介して元素分析器によって測定することができる。いくつかの実施形態では、炭素含有量は、Eltra C/S分析器を使用することによって測定することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、少なくとも約5m/g、少なくとも約8m/g、少なくとも約9m/g、少なくとも約10m/g、又は少なくとも約11m/gの比表面積を有する。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、最大で約15m/g、最大で約12m/g、最大で約11m/g、最大で約10m/g、又は最大で約9m/gの比表面積を有する。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、約1~20m/g、約5~15m/g、又は約8~12m/gの比表面積を有する。いくつかの実施形態では、比表面積は、吸着分析(例えば、BET等温線)を介して測定することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、少なくとも約0.1g/cm、少なくとも約0.5g/cm、少なくとも約0.7g/cm、少なくとも約0.8g/cm、又は少なくとも約0.9g/cmのタップ密度を有する。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、最大で約2g/cm、最大で約1.5g/cm、最大で約1g/cm、最大で約0.9g/cm、又は最大で約g/cmのタップ密度を有する。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、約0.5~1.5g/cm、約0.7~1.2g/cm、又は約0.8~1m/gのタップ密度を有する。いくつかの実施形態では、タップ密度は、3000回タッピングする、粉末タップ密度計で測定することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、約2000ppm未満、約1500ppm未満、約1000ppm未満、約750ppm未満、又は約500ppm未満の水分含有量を有する。いくつかの実施形態では、水分含有量は、200℃でカールフィッシャー機器を使用することによって測定することができる。いくつかの実施形態では、水分含有量は、電量滴定によって測定することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、約8.5~9.5又は約9のpHを有する。いくつかの実施形態では、pHは、5gの粉末を100mLのDI水中に入れ、5分間撹拌し、次いでろ過して、上清を固体と分離することによって測定することができる。次いで、pHメーターを用いて上清のpHを測定する。
【0049】
いくつかの実施形態では、LFP物質は、約90~100%、約92~98%、約94~98%、約95~97%、95%超、又は約96%の初期クーロン効率(initial coulombic efficiency、ICE)(0.1Cレートで)を有する。いくつかの実施形態では、リチウム金属ホスファート物質は、約100~300mAh/g、約120~250mAh/g、約150~200mAh/g、約150~170mAh/g、又は約160mAh/gの比容量(0.1C)半電池2.5~3.7Vを有する。ICE及び比容量は、Cレート(例えば、2~3.7Vの間で0.5~1C)を増加させた半電池サイクルを介して測定することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示されるリチウム金属ホスファート物質は、電極物質として使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書において開示されるリチウム金属ホスファートは、カソード及び/又はアノード物質として使用することができる。いくつかの実施形態では、上で説明されたリチウム金属ホスファート物質の特性はまた、電極物質の特性でもある。
【0051】
電池セル、電池モジュール、電池パック、及び電気車両システム
上述したように、リチウム金属ホスファート物質は、電極物質として利用することができる。例えば、本明細書において開示されるリチウム金属ホスファート物質は、本明細書において開示される電池セルの電極層(例えば、カソード又はアノード層)において使用することができる。
【0052】
ここで、電池セル、電池モジュール、電池パックの様々な態様及び変形の実装形態及び実施形態、並びにかかる電池セル、電池モジュール、及び電池パックを作製する方法を参照する。電池セル、モジュール、パック、及びそれらを作製する方法のいくつかの例示的な変形が本明細書において説明されるが、電池セル、モジュール、パック、及び方法の他の変形は、説明される態様の全て又はいくつかの組み合わせを有する、任意の好適な様式で組み合わされた、本明細書で説明される電池セル、モジュール、パック、及び方法の態様を含み得る。加えて、本明細書において説明されたリチウム金属ホスファート材料、電極、構成要素、システム、方法、装置、デバイス、組成物などの任意の部分又はいずれかは、電池セル、電池モジュール、電池パック、並びにこれらの電池セル、電池モジュール、及び電池パックを作製する方法に実装することができる。
【0053】
図3は、典型的な電池セル製造プロセス1000のフローチャートを例解する。これらの工程は、網羅的ではなく、他の電池セル製造プロセスは、追加の工程、又はこれらの工程のサブセットのみを含む可能性がある。工程1001において、電極前駆体(例えば、結合剤、活物質、導電性炭素添加剤)が調製され得る。いくつかの実施形態では、この工程は、電極物質(例えば、活物質)を追加の成分(例えば、結合剤、溶媒、導電性添加剤など)と混合して、電極スラリーを形成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、この工程は、電極物質自体を合成することを含むことができる。
【0054】
工程1002において、電極が形成され得る。いくつかの実施形態では、この工程は、集電体上に電極スラリーをコーティングすることを含むことができる。いくつかの実施形態では、電極又は電極層は、電極活物質、導電性炭素物質、結合剤、及び/又は他の添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、電極活物質は、カソード活物質を含むことができる。いくつかの実施形態では、電極活物質は、本明細書において開示されるリチウム金属ホスファート物質(例えば、LFP、LMFP)を含み得る。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、高ニッケル含有量(約80%以上のNi)のリチウム遷移金属オキシドを(例えば、その混合物として)含むことができる。かかるリチウム遷移金属オキシドは、粒子状のリチウムニッケルマンガンコバルトオキシド(lithium nickel manganese cobalt、「LiNMC」)、リチウムニッケルコバルトアルミニウムオキシド(lithium nickel cobalt aluminum、「LiNCA」)、リチウムニッケルマンガンコバルトアルミニウムオキシド(lithium nickel manganese cobalt aluminum、「LiNMCA」)、リチウムコバルトオキシド(lithium cobalt oxide、LCO)、リチウムマンガンオキシド(lithium manganese oxide、LMO)、リチウム鉄ホスファート(「LFP」)、リチウム鉄マンガンホスファート(「LMFP」)のような本明細書において開示されるリチウム金属ホスファート、硫黄含有カソード物質、リチウムサルファイド(LiS)、リチウムポリサルファイド、チタンジサルファイド(TiS)、及びこれらの組み合わせを含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、電極活物質は、カソード活物質を含むセルに組み立てられるアノード活物質を含むことができる。いくつかの実施形態では、アノード活物質は、グラファイト状炭素(例えば、sp2混成、人工若しくは天然グラファイト、又は配合物を有する秩序又は無秩序炭素)、Li金属アノード、シリコン系アノード(例えば、シリコン系炭素複合アノード、シリコン金属、オキシド、カーバイド、プレリチウム化)、シリコン系炭素複合アノード、リチウム合金(例えば、Li-Mg、Li-Al、Li-Ag合金)、チタン酸リチウム、又はこれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、アノード物質は、集電体物質内に形成することができる。例えば、電極は、セパレータ又は固体電解質に面する集電体の表面上に原位置形成アノード(例えば、Li金属)を有する集電体(例えば、銅箔)を含むことができる。かかる例では、組み立てられたセルは、非充電状態のアノード活物質を含まない可能性がある。
【0056】
いくつかの実施形態では、導電性炭素物質は、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、スーパーPカーボンブラック物質、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、SWCNT、MWCNT、カーボンナノファイバ、グラフェン、及びこれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、結合剤は、ポリビニリデンフロリド(polyvinylidenefluoride、「PVDF」)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、「PVP」)、スチレン-ブタジエン、若しくはスチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber、「SBR」)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、「PTFE」)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose、「CMC」)、寒天、アルギネート、アミロース、アラビアゴム、カラギーナン、カゼイン、キトサン、シクロデキストリン(カルボニル-ベータ)、エチレンプロピレンジエンモノマー(ethylene propylene diene monomer、EPDM)ゴム、ゼラチン、ジェランガム、グアーガム、カラヤガム、セルロース(天然)、ペクチン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)polystyrene sulfonate、PEDOT-PSS)、ポリアクリル酸(polyacrilic acid、PAA)、ポリ(メチルアクリレート)(poly(methyl acrylate)、PMA)、ポリ(ビニルアルコール)(poly(vinyl alcohol)、PVA)、ポリ(ビニルアセテート)(poly(vinyl acetate)、PVAc)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)、ポリイソプレン(polyisoprene、PIpr)、ポリアニリン(polyaniline、PANi)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリスチレン(polystyrene、PS)、ポリウレタン(polyurethane、PU)、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone、PVP)、デンプン、スチレンブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、タラガム、トラガカントガム、フッ素アクリレート(TRD202A)、キサンタンガム、又はこれらの組み合わせなどの、ポリマー物質を含むことができる。
【0057】
コーティング後、コーティングされた集電体を、乾燥させて、任意の溶媒を蒸発させることができる。いくつかの実施形態では、この工程は、コーティングされた集電体をカレンダ加工することを含むことができる。カレンダ加工は、電極の物理的特性(例えば、結合、導電性、密度、多孔性など)を調整することができる。いくつかの実施形態では、電極は、次いで、電極を適切なサイズ及び/又は形状に切断するために、スリッティング及び/又はノッチング機械を介してサイズ決定され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、固体電解質層の固体電解質物質は、とりわけ、オキシド、サルファイド、ホスフィド、ハライド、セラミック、固体ポリマー電解質物質、ハイブリッド固体電解質、若しくはガラス状電解質物質などの無機固体電解質物質、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、固体電解質層は、とりわけ、ポリアニオン性又はオキシド系電解質物質(例えば、リチウム超イオン伝導体(Lithium Superionic Conductor、LISICON)、ナトリウム超イオン伝導体(Sodium Superionic Conductor、NASICON)、式ABOを有するペロブスカイト、式A(XO、(A=Ca、Sr、Ba及びX=Nb、Ta)を有するガーネット型、リチウムホスフォラスオキシ-ニトリド(LixPOyNz)、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、固体電解質層は、LiPS、Li11、LiS-P、LiS-B、SnS-P、LiS-SiS、LiS-P、LiS-GeS、リチウムホスフォラスオキシナイトライド(LiPO)、リチウムゲルマニウムホスファート硫黄(Li10GeP12)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、NASICON(NaZrSiPO12)、ベータ-アルミナ固体電解質(BASE)、ペロブスカイトセラミックス(例えば、ストロンチウムチタネート(SrTiO))、リチウムランタンジルコニウムオキシド(LaLi12Zr)、LiSiCON(Li2+2xZn1-xGeO4)、リチウムランタンチタネート(Li3xLa2/3-xTiO3)及び/又は式LiPSClのようなLiPSX(X=Cl、Br)を有するサルファイド系リチウムアルジロダイト、又はこれらの任意の組み合わせなどのガラス状、セラミック及び/又は結晶性電解質物質を含むことができる。更に、固体ポリマー電解質物質は、ポリマー電解質物質(例えば、ハイブリッド又は擬似固体電解質)、例えば、とりわけ、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide、PEO)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl-methacrylate、PMMA)、及びポリビニリデンフルオリド(polyvinylidene fluoride、PVDF)、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0059】
工程1003において、電池セルを、組み立てることができる。電極、セパレータ、及び/又は電解質が調製された後、電池セルを組み立てる/調製することができる。この工程では、セパレータ及び/又は電解質層は、アノード層とカソード層との間で組み立てて、電池セルの内部構造を形成することができる。これらの層は、丸巻き又は角/平巻きなどの巻取方法、積層方法、又はZ折り方法などにより組み立てることができる。
【0060】
次いで、組み立てられたセル構造は、セルハウジングに挿入され得、次いで、セルハウジングを部分的に又は完全に封止することができる。加えて、組み立てられた構造は、(溶接プロセスを介して)端子及び/又はセルタブに接続することができる。液体電解質を利用する電池セルの場合、内部に電極構造を有する収容されたセルはまた、電解質で充填され、その後封止され得る。
【0061】
電池セルは、様々な形態因子、形状、又はサイズを有することができる。例えば、電池セル(及びそれらのハウジング/ケーシング)は、とりわけ、円筒形、長方形、正方形、立方体、平坦、又は角柱形の形態因子を有することができる。電池セルには4つの主なタイプ:(1)ボタン又はコインセル、(2)円筒形セル、(3)角柱形セル、及び(4)パウチセルが存在する。電池セルは、例えば、巻線及び/又は積層電極ロール(例えば、ジェリーロール)を電池セルケーシング又はハウジングに挿入することによって組み立てることができる。いくつかの実施形態では、巻取された又は積層された電極ロールは、電解質物質を含むことができる。いくつかの実施形態では、電解質物質は、電極ロールとは別の電池ケーシング又はハウジング内に挿入することができる。いくつかの実施形態では、電解質物質は、限定されるものではないが、カソードとアノードとの間の電荷の流れ(すなわち、イオン輸送)を可能にすることができる、イオン伝導性流体又は他の物質(例えば、層)を含む。いくつかの実施形態では、電解質物質は、非水性極性溶媒(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、又はこれらの任意の2つ以上の混合物などのカーボネート)を含むことができる。電解質はまた、限定されるものではないが、ビニリデンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート、メチルアセテート、エチルアセテート、又はこれらの任意の2つ以上の混合物など、他の添加剤を含み得る。電解質のリチウム塩は、限定されるものではないが、リチウムパークロレート、リチウムヘキサフルオロホスファート、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド、又はこれらの任意の2つ以上の混合物を含む、リチウム電池構成において使用されるもののいずれかであり得る。加えて、塩は、0M超~約5Mで電解質中に存在し得るか、又は例えば、塩は、約0.05~2M又は約0.1~2Mで存在し得る。
【0062】
図4は、円筒形電池セル100の断面図の例示的な例を描写する。円筒形電池セルは、アノード層10、セパレータ及び/又は電解質層20、並びにカソード層30の層(例えば、シート状の層)を含むことができる。
【0063】
電池セルは、ハウジング/ケーシングの空洞内に配設することができる、少なくとも1つのアノード層を含むことができる。電池セルはまた、少なくとも1つのカソード層を含むことができる。少なくとも1つのカソード層はまた、ハウジング/ケーシング内に配設することもできる。いくつかの実施形態では、電池セルが放電している(すなわち、電流を提供している)とき、少なくとも1つのアノード層は、イオン(例えば、リチウムイオン)を少なくとも1つのカソード層に放出し、一方の側から他方の側への電子の流れを生成する。逆に、いくつかの実施形態では、電池セルが充電されているとき、少なくとも1つのカソード層は、イオンを放出することができ、少なくとも1つのアノード層は、これらのイオンを受容することができる。
【0064】
これらの層(カソード、アノード、セパレータ/電解質層)は、円筒形状のケーシング40(例えば、金属缶)の空洞に挟持され、巻き上げられ、及び/又は充填され得る。ケーシング/ハウジングは、例えば、金属又は硬質プラスチックから作製されたものなど、剛性であり得る。いくつかの実施形態では、セパレータ層(及び/又は電解質層)20は、アノード層10とカソード層30との間に配置されて、アノード層20とカソード層30とを分離することができる。いくつかの実施形態では、電池セル内の層は、セパレータ層(及び/又は電解質層)がアノード層をカソード層から分離するように交互にすることができる。換言すると、電池電極の層は、(順番に)セパレータ層、アノード/カソード層、セパレータ層、他のアノード/カソード層の反対側などであり得る。セパレータ層(及び/又は電解質層)20は、セル内のイオン(例えばリチウムイオン)輸送を容易にしながら、アノード層とカソード層との間の接触を防止することができる。電池セルはまた、少なくとも1つの端子50を含み得る。少なくとも1つの端子は、負荷又は充電器を電池セルに接続するために使用される電気接点であり得る。例えば、端子は、本明細書で更に考察されるように、電池セルから電気車両の構成要素又はシステムなどの電気負荷に電流を運ぶために、電気伝導性物質から作製され得る。
【0065】
図5は、角柱形電池セル200の断面図の例示的な例を描写する。角柱形電池セルは、アノード層10、セパレータ及び/又は電解質層20、並びにカソード層30の層(例えば、シート状層)を含むことができる。円筒形電池セルと同様に、角柱形電池セルの層は、立方体又は長方形の直方体(例えば、超長方形)形状のケーシング/ハウジング40に嵌合するように、挟持され、巻かれ、及び/又はプレスされ得る。いくつかの実施形態では、層は、ジェリーローリングではなく層積層によって組み立てることができる。いくつかの実施形態では、ケーシング又はハウジングは、金属及び/又は硬質プラスチックから作製されたものなど、剛性であり得る。いくつかの実施形態では、角柱形電池セル200は、2つ以上の端子50を含むことができる。いくつかの実施形態では、これらの端子のうちの一方が正端子であり、他方が負端子であり得る。これらの端子は、負荷又は充電器を、電池セルに接続するために使用することができる。
【0066】
図6は、パウチ電池セル300の断面図の例示的な例を描写する。パウチ電池セルは、剛性エンクロージャを有さず、代わりに、ケーシング/ハウジング40のために可撓性物質を使用する。この可撓性物質は、例えば、封止された可撓性箔であり得る。パウチ電池セルは、アノード層10、セパレータ及び/又は電解質層20、並びにカソード層30の層(例えば、シート状層)を含むことができる。いくつかの実施形態では、これらの層は、ケーシング/ハウジング内で積層される。いくつかの実施形態では、パウチ電池セル200は、2つ以上の端子50を含むことができる。いくつかの実施形態では、これらの端子の一方が、正端子であり、他方が負端子であり得る。これらの端子は、負荷又は充電器を、電池セルに接続するために使用することができる。
【0067】
電池セルのケーシング/ハウジングは、様々な電気伝導率若しくは熱伝導率、又はこれらの組み合わせを有する1つ以上の物質を含むことができる。電池セルのケーシング/ハウジングのための電気伝導性及び熱伝導性物質は、とりわけ、アルミニウム、銅、シリコン、スズ、マグネシウム、マンガン、又は亜鉛を有するアルミニウム合金(例えば、アルミニウム1000、4000、若しくは5000シリーズ)、鉄、鉄-炭素合金(例えば、鋼)、銀、ニッケル、銅、及び銅合金などの金属物質を含むことができる。いくつかの実施形態では、電池セルのハウジングのための電気伝導性及び熱伝導性物質は、とりわけ、セラミック物質(例えば、シリコンニトリド、シリコンカーバイド、チタンカーバイド、ジルコニウムダイオキシド、ベリリウムオキシドなど)及び/又は熱可塑性物質(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、又はナイロン)を含み得る。
【0068】
工程1004において、電池セルを完成させることができる。いくつかの実施形態では、この工程は、電池セルのための第1の充電及び放電プロセスが行われる形成プロセスを含む。いくつかの実施形態では、この初期充電及び放電は、電解質と電極との間に固体電解質界面を形成することができる。いくつかの実施形態では、この工程は、セルのうちのいくつかに、電池セルから脱ガスプロセスにおいて除去され得るガスを生成させ得る。いくつかの実施形態では、この工程は、電池セルをエージングすることを含む。エージングは、一定期間にわたってセル特性及び性能を監視することを含むことができる。いくつかの実施形態では、この工程はまた、エンドオブライン(end-of-line、EOL)試験リグにおいてセルを試験することを含むことができる。EOL試験は、電池セルを出荷充電状態まで放電すること、パルス試験、内部抵抗測定値の試験、OCVの試験、漏出に関する試験、及び/又は、任意選択的に、電池セルの欠陥を光学的に検査することを含むことができる。
【0069】
複数の電池セル(100、200、及び/又は300)は、電池モジュール及び/又は電池パックを形成するために、同じハウジング、フレーム、又はケーシング内でともに組み立てられるか、又はパッケージ化され得る。電池モジュールの電池セルは、ある量の電気エネルギーを生成するために電気的に接続され得る。これらの複数の電池セルは、均一な境界を通して、ハウジング、フレーム、又はケーシングの外側に連結することができる。電池モジュールの電池セルは、電池セルの並列、直列、又は直列-並列の組み合わせであり得る。ハウジング、フレーム、又はケーシングは、様々な危険(例えば、外部要素、熱、振動など)から電池セルを保護することができる。図7は、電池モジュール112を形成するためにフレームに挿入されている円筒形電池セル100を例解する。図8は、電池モジュール112を形成するためにフレームに挿入されている角柱形電池セル200を例解する。図9は、電池モジュール112を形成するためにフレームに挿入されているパウチ電池セル300を例解する。いくつかの実施形態では、電池パックは、モジュールを含まなくてもよい。例えば、電池パックは、「モジュールフリー」又はセルtoパック構成を有することができ、電池セルは、モジュールに組み立てることなく電池パックに直接配置される。
【0070】
図7図9に示されるように、複数の電池モジュール112は、別のハウジング、フレーム、又はケーシング内に配設されて、電池パック120を形成することができる。いくつかの実施形態では、複数の電池セルは、電池パック(図示せず)を形成するために、ハウジング、フレーム、若しくはケーシング内に組み立てられ、充填され、又は配設され得る。かかる実施形態では、電池パックは、電池モジュールを含まなくてもよい(例えば、モジュールフリー)。例えば、電池パックは、電池セルを電池モジュールに組み立てることなく電池パックに直接配置することができる、モジュールフリー又はセルtoパック構成を有することができる。いくつかの実施形態では、電池パックの電池セルは、別のシステム(例えば、電気車両)に提供される、ある量の電気エネルギーを生成するように電気的に接続され得る。
【0071】
電池パックの電池モジュールは、別のシステム(例えば、電気車両)に提供される電気エネルギー量を生成するように電気的に接続され得る。電池パックはまた、例えば、電池パック(並びに個々のモジュール及び電池セル)の温度を調節するように構成された熱交換器システム(例えば、冷却システム)、並びに電池パックの電圧を制御するように構成された電池管理システムなどの様々な制御及び/又は保護システムを含むことができる。いくつかの実施形態では、電池パックハウジング、フレーム、又はケーシングは、電池モジュールを外部要素から保護するために、電池モジュールの底部又は真下にシールドを含むことができる。いくつかの実施形態では、電池パックは、少なくとも1つの熱交換器(例えば、熱/温度制御又は熱交換の一部として、電池パック又は冷却板を通して流体を分配するように構成される冷却ライン)を含むことができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、電池モジュールは、電池モジュールを構成する個々の電池セルから電流又は電力を収集することができ、電池パックからの出力として電流又は電力を提供することができる。電池モジュールは、任意の数の電池セルを含むことができ、電池パックは、任意の数の電池モジュールを含むことができる。例えば、電池パックは、ハウジング/フレーム/ケーシング中に配設された1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個、又は他の数の電池モジュールを有することができる。いくつかの実施形態では、電池モジュールは、複数のサブモジュールを含むことができる。いくつかの実施形態では、これらのサブモジュールは、個々の電池モジュールの温度を調節するか又は制御するように構成された熱交換器によって分離され得る。例えば、電池モジュールは、上部電池サブモジュール及び下部電池サブモジュールを含むことができる。これらのサブモジュールは、上部電池サブモジュールと下部電池サブモジュールとの間の冷却板などの熱交換器によって分離することができる。
【0073】
電池パックは、あらゆる形状及びサイズにすることができる。例えば、図7図9は、3つの異なる形状の電池パック120を例解する。図7図9に示されるように、電池パック120は、電池モジュールを位置決めするための複数の領域、スロット、ホルダ、容器などを含むか、又は画定することができる。電池モジュールは、あらゆる形状及びサイズにすることができる。例えば、電池モジュールは、正方形、長方形、円形、三角形、対称形、又は非対称形であり得る。いくつかの例では、単一の電池パック内の電池モジュールは、異なる形状であり得る。同様に、電池モジュールは、複数の電池セルのための複数の領域、スロット、ホルダ、容器などを含むか、又は画定することができる。
【0074】
図10は、少なくとも1つの電池パック120を含む、電気車両705の断面図700の一例を例解する。電気車両は、限定されるものではないが、数ある可能性の中でもとりわけ、電気トラック、電動スポーツユーティリティ車両(sport utility vehicle、SUV)、電動配送バン、電気自動車、電気車、電気オートバイ、電気スクータ、電気乗用車両、電気乗用又は商用トラック、ハイブリッド車両、又は海上若しくは航空輸送車両、飛行機、ヘリコプター、潜水艦、ボート、若しくはドローンなどの他の車両を含み得る。電気車両は、完全電動又は部分電動(例えば、プラグインハイブリッド)であり得、更に、電気車両は、完全自律型、部分自律型、又は無人型であり得る。加えて、電気車両はまた、人間が作動させるもの、又は非自律型であり得る。
【0075】
電気車両705は、電気車両に電力を供給するための電池セル(100、200、及び/又は300)を有する電池モジュール112を含む電池パック120を搭載することができる。電気車両705は、シャーシ725(例えば、フレーム、内部フレーム、又は支持構造)を含むことができる。シャーシ725は、電気車両705の様々な構成要素を支持することができる。いくつかの実施形態では、シャーシ725は、電気車両705の前部分730(例えば、フード又はボンネット部分)、本体部分735、及び後部分740(例えば、トランク、ペイロード、又はブーツ部分)にまたがることができる。電池パック120は、電気車両705内に搭載されるか又は設置することができる。例えば、電池パック120は、前部分730、本体部分735、又は後部分740のうちの1つ以上の中で、電気車両705のシャーシ725上に搭載することができる。いくつかの実施形態では、電池パック120は、少なくとも1つのバスバー、例えば、集電体要素を含むか、又はそれと接続することができる。例えば、第1のバスバー745及び第2のバスバー750は、電気車両705の様々なシステム又は構成要素に電力を提供するために、電池パック120(及び/又は電池モジュール112若しくは電池セル100、200、及び/又は300)を電気車両705の他の電気部品に接続するか、又は別用に電気的に結合するために電気伝導性物質を含むことができる。いくつかの実施形態では、電池パック120はまた、住宅又は商業ビルなどの建物に電力供給するためのエネルギー貯蔵システムとして使用され得る。
【0076】
別段で定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語、表記法、並びに他の技術的及び科学的用語又は専門用語は、特許請求される主題が関係する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有することが意図される。いくつかの場合において、一般的に理解される意味を有する用語は、明確さのために、及び/又は容易な参照のために本明細書において定義され、本明細書におけるかかる定義の包含は、必ずしも、当技術分野において概して理解されるものに対する実質的な差異を表すと解釈されるべきではない。
【0077】
本明細書における「約」の値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする変動を含む(及び説明する)。例えば、「約X」に関する説明は、「X」の説明を含む。加えて、「未満」、「より大きい」、「最大で」、「少なくとも」、「以下」、「以上」という語句、又は一連の値若しくはパラメータが続く他の同様の語句への言及は、その語句を一連の値若しくはパラメータにおける各値若しくはパラメータに適用することを意味する。
【0078】
本出願は、本文及び図面においていくつかの数値範囲を開示する。本開示は開示された数値範囲全体にわたって実施することができるので、本明細書において正確な範囲の限定が逐語的に述べられていなくても、開示された数値範囲は、端部点を含む、開示された数値範囲内の任意の範囲又は値を本質的に支持する。
【0079】
本明細書において、「又は」は、明示的に別段の指示がない限り、又は文脈によって別段の指示がない限り、包括的であり、排他的ではない。したがって、本明細書では、「A又はB」は、明示的に別段の指示がない限り、又は文脈によって別段の指示がない限り、「A、B、又は両方」を意味する。更に、「及び」は、明示的に別段の指示がない限り、又は文脈によって別段の指示がない限り、共同及び個々の両方である。したがって、本明細書では、「A及びB」は、明示的に別段の指示がない限り、又は文脈によって別段の指示がない限り、「A及びBが一緒に、又は個別に」を意味する。
【0080】
本開示の範囲は、当業者が理解するであろう、本明細書に説明又は図示される例示的実施形態に対する全ての変更、置換、変形、改変、及び修正を包含する。本開示の範囲は、本明細書で説明又は図示される例示的な実施形態に限定されない。更に、本開示は、特定の構成要素、要素、特徴、機能、作動、又は工程を含むものとして、本明細書でそれぞれの実施形態を説明及び図示しているが、これらの実施形態のいずれも、当業者が理解するであろう、本明細書のいずれかに説明又は図示される構成要素、要素、特徴、機能、作動、又は工程のいずれかの任意の組み合わせ又は順列を含み得る。更に、添付の特許請求の範囲における、特定の機能を実行するように適合され、配置され、能力を有し、構成され、有効化され、作動可能であり、又は作用する装置若しくはシステム、又は装置若しくはシステムの構成要素への言及は、その装置、システム、又は構成要素が、そのように適合され、配置され、能力を有し、構成され、有効化され、作動可能であり、又は作用する限り、その装置、システム、若しくは構成要素、又はその特定の機能がアクティブ化され、オンにされ、又はロック解除されるかどうかにかかわらず、その装置、システム、構成要素を包含する。加えて、本開示は、特定の実施形態を、特定の利点を提供するものとして説明するか、又は例解するが、特定の実施形態は、これらの利点のいずれも提供しなくてもよく、一部又は全てを提供してもよい。

本発明は次の実施態様を含む。
[請求項1]
方法であって、
金属ホスファート及びリチウムサルフェートを含む溶液を形成することと、
ホスファート含有物質を使用して前記溶液からリチウムホスファートを沈殿させることと、
前記金属ホスファートを前記リチウムホスファートと混合して、リチウム金属ホスファート前駆体を形成することと、
前記リチウム金属ホスファート前駆体を処理して、リチウム金属ホスファートを形成することと、を含む、方法。
[請求項2]
前記リチウム金属ホスファート前駆体を処理することが、前記リチウム金属ホスファート前駆体を粉砕すること、前記リチウム金属ホスファート前駆体を焼成すること、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
前記リチウム金属ホスファートが、リチウム鉄ホスファート(LFP)、リチウム鉄マンガンホスファート(LMFP)、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項4]
前記金属ホスファートが、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項5]
前記金属ホスファートを鉄源と混合することを更に含む、請求項1に記載の方法。
[請求項6]
前記鉄源が、鉄オキサレート、鉄シトレート、鉄オキシド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の方法。
[請求項7]
前記リチウム金属ホスファート前駆体が、550~750℃で2~12時間焼成される、請求項1に記載の方法。
[請求項8]
前記ホスファート含有物質が、ナトリウムホスファート、リン酸、ナトリウムヒドロキシド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項9]
スポジュメンを焙焼することと、前記焙焼されたスポジュメンを硫酸で浸出させて、リチウムサルフェートを含む第2の溶液を取得することと、前記ホスファート含有物質を使用してリチウムホスファートを沈殿させる前に、前記第1の溶液とリチウムサルフェートを含む前記第2の溶液とを組み合わせることと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
[請求項10]
前記金属ホスファート及びリチウムサルフェートを含む前記溶液を形成することが、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することを含み、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することが、リチウムイオン電池ブラックマスを酸化ガスと反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項11]
前記酸化ガスが、NOx、Cl 、又はSO を含む、請求項10に記載の方法。
[請求項12]
リチウムイオン電池ブラックマスのSO との反応が、第二鉄ホスファート、リチウムサルフェート、又はこれらの組み合わせを形成する、請求項11に記載の方法。
[請求項13]
前記金属ホスファート及びリチウムサルフェートを含む前記溶液を形成することが、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することを含み、リチウムイオン電池ブラックマスからリチウムを抽出することが、前記リチウムイオン電池ブラックマスを硫酸及び過酸化水素又は酸素ガスで浸出させて、少なくとも前記金属ホスファートを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項14]
前記金属ホスファートを硫酸で溶解することと、溶解した金属ホスファート溶液中の鉄対ホスファートの比、マンガン対ホスファートの比、鉄の酸化状態、マンガンの酸化状態、又はこれらの組み合わせを調整することと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
前記鉄対ホスファートの比、前記マンガン対ホスファートの比、前記鉄の酸化状態、前記マンガンの酸化状態、又はこれらの組み合わせが、鉄、マンガン、マンガンサルフェート、鉄サルフェート、又はこれらの組み合わせを使用して調整される、請求項14に記載の方法。
[請求項16]
前記溶解した金属ホスファートから、第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを沈殿させることを更に含む、請求項15に記載の方法。
[請求項17]
粉砕された混合物を噴霧乾燥することを更に含む、請求項1に記載の方法。
[請求項18]
方法であって、
ホスファート含有物質を使用して、リチウムサルフェートを含む第1の溶液からリチウムホスファートを沈殿させることと、
第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを、前記リチウムホスファートと混合して、リチウム金属ホスファート前駆体を形成することと、
前記リチウム金属ホスファート前駆体を粉砕することと、
前記リチウム金属ホスファート前駆体を焼成して、リチウム鉄ホスファート(LFP)、リチウム鉄マンガンホスファート(LMFP)、又はこれらの組み合わせを形成することと、を含む、方法。
[請求項19]
リチウムイオン電池ブラックマスを、NOx、Cl 、又はSO を含む酸化ガスと反応させて、前記第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせ、及び前記リチウムサルフェートを形成することによって、リチウムイオン電池ブラックマスをリサイクルすることと、
前記リチウムサルフェートを溶媒と混合して、リチウムサルフェートを含む前記第1の溶液を形成することと、を更に含む、請求項18に記載の方法。
[請求項20]
方法であって、
第二鉄ホスファート、第一鉄ホスファート、第一マンガンホスファート、マンガンホスファート、マンガン鉄ホスファート、又はこれらの組み合わせを、リチウムホスファートと化学量論比で混合して、リチウム金属ホスファート前駆体を形成することと、
前記リチウム金属ホスファート前駆体を粉砕することと、
前記リチウム金属ホスファート前駆体を焼成して、リチウム鉄ホスファート(LFP)、リチウム鉄マンガンホスファート(LMFP)、又はこれらの組み合わせを形成することと、を含む、方法。
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