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特許7642765決済管理装置、決済管理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】決済管理装置、決済管理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/06 20120101AFI20250303BHJP
【FI】
G06Q20/06 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023193211
(22)【出願日】2023-11-13
【審査請求日】2023-11-13
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519110124
【氏名又は名称】PayPay株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 将良
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直良
(72)【発明者】
【氏名】大塚 千壽子
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-083377(JP,A)
【文献】特開2023-146590(JP,A)
【文献】特開2007-141055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の端末装置で動作するアプリケーションプログラムとの協働により、前記利用者に電子決済サービスを提供する決済管理装置であって、
前記電子決済サービスを実現する決済処理部と、
前記電子決済サービスの利用者の電子決済口座において前記利用者の由来の異なる資金を電子マネーとして管理するための残高種別であって、それぞれの資金を互いに変換することができない第1の残高種別第2の残高種別とに区別して前記利用者の電子マネーを管理する管理部と、
を備え、
前記管理部は、前記電子マネーの残高種別について、前記電子決済サービスを利用した決済の際に使用する前記残高種別の優先順位の設定を、利用者が前記決済の用途ごとに変更可能な設定として利用者ごとに管理し、
前記決済処理部は、利用者の決済時に支払い方法として電子マネー残高が選択された場合に、前記電子マネー残高を前記優先順位に基づいて使用するものであり、
前記第1の残高種別は、前記利用者の銀行口座に振り込まれた給与の一部または全部が前記電子決済口座に送金された資金を前記電子マネーとして管理するための残高種別であって、前記給与に基づく給与由来の電子マネー残高として管理される残高種別であり、
前記第2の残高種別は、前記給与由来以外の電子マネーを管理するための残高種別であり、
前記第1の残高種別の電子マネーおよび前記第2の残高種別の電子マネーは出金可能な電子マネーである、
決済管理装置。
【請求項2】
利用者の端末装置で動作するアプリケーションプログラムとの協働により、前記利用者に電子決済サービスを提供する決済管理装置であって、
前記電子決済サービスを実現する決済処理部と、
前記電子決済サービスの利用者の電子決済口座において前記利用者の由来の異なる資金を電子マネーとして管理するための残高種別であって、それぞれの資金を互いに変換することができない第1の残高種別第2の残高種別とに区別して前記利用者の電子マネーを管理する管理部と、
を備え、
前記管理部は、前記電子決済口座で管理される前記利用者の電子マネーの残高種別について、前記電子決済サービスを利用した決済の際に使用する前記残高種別の優先順位の設定を、利用者が前記決済の用途ごとに変更可能な設定として利用者ごとに管理し、
前記決済処理部は、利用者の決済時に支払い方法として電子マネー残高が選択された場合に、前記電子マネー残高を前記優先順位に基づいて使用するものであり、電子マネー残高を使用した電子決済により、予め登録された送金先に自動的に送金する自動送金機能を備え、
前記管理部は、前記自動送金機能による送金に適用する前記残高種別の優先順位の設定を、前記利用者ごと且つ前記送金先ごとに、前記利用者が変更可能な設定として管理する、
決済管理装置。
【請求項3】
前記電子決済サービスは、加盟店への支払いを電子マネーで決済する第1機能と、利用者間において電子マネーで送金する第2機能と、利用者の電子マネーを前記利用者の銀行口座に出金する第3機能とを提供するものであり、
前記管理部は、前記第1機能、前記第2機能、および前記第3機能で使用する残高種別の優先順位の設定を、前記第1機能、前記第2機能、および前記第3機能で共通の設定として管理する、
請求項1または2に記載の決済管理装置。
【請求項4】
前記電子決済サービスは、加盟店への支払いを電子マネーで決済する第1機能と、利用者間において電子マネーで送金する第2機能と、利用者の電子マネーを前記利用者の銀行口座に出金する第3機能とを提供するものであり、
前記管理部は、前記第1機能、前記第2機能、および前記第3機能で使用する残高種別の優先順位の設定を、前記第1機能、前記第2機能、および前記第3機能のそれぞれについて個別の設定として管理する、
請求項1または2に記載の決済管理装置。
【請求項5】
前記電子決済サービスは、加盟店への支払いを電子マネーで決済する第1機能と、利用者間において電子マネーで送金する第2機能と、利用者の電子マネーを前記利用者の銀行口座に出金する第3機能とを提供するものであり、
前記決済処理部は、利用者が前記第1機能、前記第2機能、および前記第3機能のいずれかを使用した取引が作成され、且つ前記取引が実行される前に、前記アプリケーションプログラムを介して、前記優先順位の設定変更手段を前記利用者に提供する、
請求項1または2に記載の決済管理装置。
【請求項6】
前記管理部は、前記第1の残高種別および前記第2の残高種別に加えて、利用者が出金することができない第3の残高種別により電子マネーの残高を管理するものであり、
前記優先順位は、前記第1の残高種別と前記第2の残高種別との間で変更可能であり、
前記第3の残高種別の優先順位は、前記第1の残高種別および前記第2の残高種別よりも上位の優先順位に固定され変更不能である、
請求項1または2に記載の決済管理装置。
【請求項7】
前記管理部は、前記利用者に付与されるポイントであって、前記電子決済サービスにおいて現金相当の価値として使用可能なポイントの残高である第4の残高種別をさらに管理するものであり、
前記第4の残高種別の優先順位は、前記第1の残高種別、前記第2の残高種別、および前記第3の残高種別よりも上位の優先順位に固定され変更不能である、
請求項6に記載の決済管理装置。
【請求項8】
前記決済処理部は、電子マネー残高を使用した電子決済により、予め登録された送金先に自動的に送金する自動送金機能を備え、
前記管理部は、前記自動送金機能による送金に使用する1つの電子マネーの残高種別の設定を、前記利用者が変更可能な設定として管理する、
請求項1または2に記載の決済管理装置。
【請求項9】
前記利用者が利用可能な電子マネーの残高種別のうち、出金可能な残高種別が複数存在する場合、
前記管理部は、複数の前記残高種別について、出金の際に使用する前記残高種別の優先順位の設定を、前記変更可能な設定として利用者ごとに管理し、
前記決済処理部は、利用者が電子マネーを出金する際、複数の前記残高種別の残高を前記優先順位の設定に基づいて出金する、
請求項1または2に記載の決済管理装置。
【請求項10】
利用者の端末装置で動作するアプリケーションプログラムとの協働により、前記利用者に電子決済サービスを提供する決済管理装置が、
前記電子決済サービスを実現する決済処理を実行し、
前記電子決済サービスの利用者の電子決済口座において前記利用者の由来の異なる資金を電子マネーとして管理するための残高種別であって、それぞれの資金を互いに変換することができない第1の残高種別第2の残高種別とに区別して前記利用者の電子マネーを管理する、
決済管理方法であって、
前記決済管理装置が、
前記電子マネーの残高種別について、前記電子決済サービスを利用した決済の際に使用する前記残高種別の優先順位の設定を、利用者が前記決済の用途ごとに変更可能な設定として利用者ごとに管理し、
利用者の決済時に支払い方法として電子マネー残高が選択された場合に、前記電子マネー残高を前記優先順位に基づいて使用するものであり、
前記第1の残高種別は、前記利用者の銀行口座に振り込まれた給与の一部または全部が前記電子決済口座に送金された資金を前記電子マネーとして管理するための残高種別であって、前記給与に基づく給与由来の電子マネー残高として管理される残高種別であり、
前記第2の残高種別は、前記給与由来以外の電子マネーを管理するための残高種別であり、
前記第1の残高種別の電子マネーおよび前記第2の残高種別の電子マネーは出金可能な電子マネーである、
決済管理方法。
【請求項11】
利用者の端末装置で動作するアプリケーションプログラムとの協働により、前記利用者に電子決済サービスを提供する決済管理装置が、
前記電子決済サービスを実現する決済処理を実行し、
前記電子決済サービスの利用者の電子決済口座において前記利用者の由来の異なる資金を電子マネーとして管理するための残高種別であって、それぞれの資金を互いに変換することができない第1の残高種別第2の残高種別とに区別して前記利用者の電子マネーを管理する、
決済管理方法であって、
前記決済管理装置が、
前記電子決済口座で管理される前記利用者の電子マネーの残高種別について、前記電子決済サービスを利用した決済の際に使用する前記残高種別の優先順位の設定を、利用者が前記決済の用途ごとに変更可能な設定として利用者ごとに管理し、
利用者の決済時に支払い方法として電子マネー残高が選択された場合に、前記電子マネー残高を前記優先順位に基づいて使用するものであり、
電子マネー残高を使用した電子決済により、予め登録された送金先に自動的に送金する自動送金機能について、前記自動送金機能による送金に適用する前記残高種別の優先順位の設定を、前記利用者ごと且つ前記送金先ごとに、前記利用者が変更可能な設定として管理する、
決済管理方法。
【請求項12】
利用者の端末装置で動作するアプリケーションプログラムとの協働により、前記利用者に電子決済サービスを提供する決済管理装置に、
前記電子決済サービスを実現する決済処理を実行させ、
前記電子決済サービスの利用者の電子決済口座において前記利用者の由来の異なる資金を電子マネーとして管理するための残高種別であって、それぞれの資金を互いに変換することができない第1の残高種別第2の残高種別とに区別して前記利用者の電子マネーを管理させる、
ためのプログラムであって、
前記決済管理装置に、
前記電子マネーの残高種別について、前記電子決済サービスを利用した決済の際に使用する前記残高種別の優先順位の設定を、利用者が前記決済の用途ごとに変更可能な設定として利用者ごとに管理させ、
利用者の決済時に支払い方法として電子マネー残高が選択された場合に、前記電子マネー残高を前記優先順位に基づいて使用させるものであり、
前記第1の残高種別は、前記利用者の銀行口座に振り込まれた給与の一部または全部が前記電子決済口座に送金された資金を前記電子マネーとして管理するための残高種別であって、前記給与に基づく給与由来の電子マネー残高として管理される残高種別であり、
前記第2の残高種別は、前記給与由来以外の電子マネーを管理するための残高種別であり、
前記第1の残高種別の電子マネーおよび前記第2の残高種別の電子マネーは出金可能な電子マネーである、
プログラム。
【請求項13】
利用者の端末装置で動作するアプリケーションプログラムとの協働により、前記利用者に電子決済サービスを提供する決済管理装置に、
前記電子決済サービスを実現する決済処理を実行させ、
前記電子決済サービスの利用者の電子決済口座において前記利用者の由来の異なる資金を電子マネーとして管理するための残高種別であって、それぞれの資金を互いに変換することができない第1の残高種別第2の残高種別とに区別して前記利用者の電子マネーを管理させる、
ためのプログラムであって、
前記決済管理装置に、
前記電子決済口座で管理される前記利用者の電子マネーの残高種別について、前記電子決済サービスを利用した決済の際に使用する前記残高種別の優先順位の設定を、利用者が前記決済の用途ごとに変更可能な設定として利用者ごとに管理させ、
利用者の決済時に支払い方法として電子マネー残高が選択された場合に、前記電子マネー残高を前記優先順位に基づいて使用させるものであり、
電子マネー残高を使用した電子決済により、予め登録された送金先に自動的に送金する自動送金機能について、前記自動送金機能による送金に適用する前記残高種別の優先順位の設定を、前記利用者ごと且つ前記送金先ごとに、前記利用者が変更可能な設定として管理させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、決済管理装置、決済管理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子マネーを会社と従業員の資金移動業者の口座間で移動させることにより賃金(給与)を支払うデジタル給与(給与デジタル払い)が制度化されたことを受け、利用者にデジタル給与のサービスを提供する方法が検討されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7330412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、デジタル給与によって受け取った電子マネーの利便性が低い場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、給与デジタル払いに対応した電子決済サービスにおいて、電子マネーの利便性を向上させることができる決済管理装置、決済管理方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、利用者の端末装置で動作するアプリケーションプログラムとの協働により、前記利用者に電子決済サービスを提供する決済管理装置であって、前記電子決済サービスを実現する決済処理部と、前記電子決済サービスにおいて利用者が電子マネーとして使用可能な残高を、第1の残高種別と、第2の残高種別とに分けて管理する管理部と、を備え、前記管理部は、前記電子マネーの残高種別について、前記電子決済サービスを利用した決済の際に使用する前記残高種別の優先順位の設定を、利用者が変更可能な設定として利用者ごとに管理し、前記決済処理部は、利用者の決済時に支払い方法として電子マネー残高が選択された場合に、前記電子マネー残高を前記優先順位に基づいて使用する、決済管理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、給与デジタル払いに対応した電子決済サービスにおいて、電子マネーの利便性を向上させることができる決済管理装置、決済管理方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子決済サービスが実現されるための構成の一例を示す図である。
図2】電子決済の大まかな流れを例示したシーケンス図(その1)である。
図3】電子決済の大まかな流れを例示したシーケンス図(その2)である。
図4】第1実施形態に係る決済サーバ100の構成図である。
図5】利用者情報172の内容の一例を示す図である。
図6】加盟店/店舗情報176の内容の一例を示す図である。
図7】デジタル給与設定を行った利用者について、残高種別優先順位を適用した電子決済を実現する処理の流れの一例を示すシーケンスチャートである。
図8】残高種別優先順位の設定内容の一例を示す図である。
図9】残高種別優先順位を取引の作成よりも前に事前設定する場合における画面遷移の一例を示す図である。
図10】電子決済の用途ごとに残高種別の優先順位を設定する場合における、残高種別優先順位の設定内容の一例を示す図である。
図11】電子決済の用途ごとに残高種別の優先順位を設定する場合における画面遷移の一例を示す図である。
図12】残高種別優先順位を取引の作成時(取引の実行直前)に設定する場合における画面遷移の一例を示す図である。
図13】電子決済を使用した送金において、予め登録された送金先に電子マネーを使用して指定額を自動的に送金する自動送金機能について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の決済管理装置、決済管理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。以下に登場する「サーバ」、「管理装置」「情報提供装置」などの、利用者にサービスを提供したり内部解析を行ったりするための各種装置は、分散化された装置群によって実現されてよく、それぞれの装置を運用する事業者は異なってもよい。また装置のハードウェアの保有者(クラウドサーバの提供者)と実質的な運用を行う事業者も異なってよい。アプリケーションプログラムと決済サーバは、協働して電子決済サービスを提供する。以下の説明ではアプリケーションプログラムを決済アプリと称する。電子決済サービスは、店舗における商品やサービスの購買に係る決済をサポートするサービスである。店舗とは、例えば、現実空間に存在する物理的な店舗(実店舗)であるが、電子商取引の仮想店舗を含んでもよい。仮想店舗は、電子決済サービスの運営者とは異なる主体によって提供されるものを含んでもよい。その場合、仮想店舗における買い物の決済の際に、電子決済サービスのインターフェース画面に遷移するように制御される。電子決済サービスにおいて、店舗は、例えば加盟店(ブランド)に属するものとして扱われ、店舗において購買行動が行われた際の決済などの処理は、主として利用者と加盟店の間で行われる。これに代えて、決済などの処理が利用者と店舗との間で行われてもよい。上記の決済機能(第1機能)に加えて、電子決済サービスは、利用者間において電子マネーで送金する機能(第2機能)と、利用者の電子マネーを(例えば当該利用者の銀行口座などに)出金する機能(第3機能)とを提供することができるものである。
【0010】
[電子決済サービス]
図1は、電子決済サービスが実現されるための構成の一例を示す図である。電子決済サービスは、決済サーバ100を中心として実現される。決済サーバ100は、例えば、一以上の利用者端末装置10、一以上の第1店舗端末装置50、及び一以上の第2店舗端末装置70のそれぞれとネットワークNWを介して通信する。ネットワークNWは、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、無線基地局、プロバイダ装置などを含む。
【0011】
利用者端末装置10は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の可搬型端末装置である。利用者端末装置10は、少なくとも、光学読取機能、通信機能、表示機能、入力受付機能、プログラム実行機能を有するコンピュータ装置である。以下の説明では、これらの機能を実現するための構成をそれぞれカメラ、通信装置、タッチパネル、CPU(Central Processing Unit)等と称する。利用者端末装置10では、CPU等のプロセッサにより決済アプリ20が実行されることで、決済サーバ100と連携して電子決済サービスを利用者に提供するように動作する。決済アプリ20は、例えば、アプリケーションストアから利用者端末装置10にインストールされ、カメラ、通信装置、タッチパネルなどを制御する。
【0012】
第1店舗端末装置50は、例えば、店舗に設置される。第1店舗端末装置50は、少なくとも、商品価格取得機能、光学読取機能、プログラム実行機能、通信機能を有するコンピュータ装置である。第1店舗端末装置50は、いわゆるPOS(Point of Sale)装置を含み、POS装置によって商品価格取得機能や光学読取機能を実現してもよい。店舗コード画像60は、店舗に置かれ、QRコード(登録商標)等のコード画像が紙やプラスチックの媒体に印刷されたものである。なお、店舗コード画像60は、店舗に置かれたディスプレイ(スマートフォンなどの端末装置のディスプレイでもよい)によって表示されてもよい。
【0013】
第2店舗端末装置70は、加盟店の運営者によって使用される。第2店舗端末装置70は、スマートフォンやタブレット端末、パーソナルコンピュータ等である。第2店舗端末装置70では、加盟店向けインターフェース72が動作する。加盟店向けインターフェース72は、加盟店向けアプリであってもよいし、ブラウザであってもよい。加盟店向けインターフェース72は、加盟店の運営者によるクーポンの設定等を受け付け、決済サーバ100に送信する。スマートフォンである第2店舗端末装置70は、加盟店向けアプリを実行することで、店舗コード画像に相当するコード画像を表示したり、利用者端末装置10が表示するコード画像を読み取ったりする機能を有する。
【0014】
決済サーバ100は、利用者端末装置10または第1店舗端末装置50から受信した決済情報に基づいて電子決済を実現する。第1店舗端末装置50は、POS装置と加盟店サーバを含む場合があり、その場合、POS装置から加盟店サーバを介して決済情報が決済サーバ100に送信される。以下の説明では、これを特に区別せず、第1店舗端末装置50から決済情報が送信されるものとする。
【0015】
図2および図3は、電子決済の大まかな流れを例示したシーケンス図である。電子決済には、パターン1とパターン2の二つが存在してよい。
【0016】
図2に示すパターン1(以下、ユーザスキャンと称する)の場合、決済アプリ20が起動した状態の利用者端末装置10が、光学読取機能によって店舗コード画像60をデコードする(S1)。店舗コード画像60には、店舗URL(Uniform Resource Locator)の情報が含まれている。この店舗URLは、電子決済サービスのドメインに対して店舗を識別可能な情報が付加されたものであり、決済サーバ100において加盟店IDや店舗ID等との対応付けがなされている(後述)。決済アプリ20は、店舗URLとアカウントIDを含む第1決済情報を決済サーバ100に送信する(S2)。決済サーバ100は、店舗URLに対応する加盟店ID、店舗IDから、店舗情報(後述)を検索して加盟店名と店舗名の情報を取得し(S3)、決済アプリ20に送信する(S4)。利用者は、加盟店名や店舗名が表示された画面において、決済金額を利用者端末装置10に入力する(S5)。そして、利用者端末装置10は、少なくとも決済金額を含む第2決済情報を生成し、決済サーバ100に送信する(S6)。決済サーバ100は、受信した第2決済情報に基づいて電子決済を行う(S7)。そして、決済サーバ100は、決済完了通知(決済完了画面を表示するための情報)を決済アプリ20に送信し(S8)、決済アプリ20は決済完了画面を表示する(S9)。なお、店舗コード画像60が店舗に置かれたディスプレイによって表示される場合、店舗コード画像60には、店舗URLだけでなく決済金額の情報が含まれる場合がある。この場合、利用者が決済金額を入力する手順が省略され、第1決済情報に決済金額の情報が含められて決済サーバ100に送信される。加盟店名や店舗名の情報は、決済完了画面に含めて表示されてよい。
【0017】
図3に示すパターン2(以下、ストアスキャンと称する)の場合、決済アプリ20の起動時、決済アプリ20において支払う操作が行われたとき、自動更新のタイミング(例えば1分おき)になったとき、およびその他のタイミングで、決済アプリ20はワンタイムコードの発行要求を決済サーバ100に送信する(S11)。決済サーバ100はワンタイムコードを生成し(S12)、決済アプリ20に送信する(S13)。決済アプリ20は、ワンタイムコードに基づいて生成した、QRコードやバーコード等のコード画像を表示する(S14)。利用者は利用者端末装置10の表示面を第1店舗端末装置50に翳し(提示し)、第1店舗端末装置50は、光学読取機能によってコード画像をデコードし、ワンタイムコード等を取得する(S15)。そして、第1店舗端末装置50は、ワンタイムコード、決済金額、加盟店ID、店舗ID等を含む決済情報を生成し、決済サーバ100に送信する(S16)。決済金額の情報は、予めバーコード読み取りや手入力等によって取得されている。決済サーバ100は、受信した情報に基づいて、ワンタイムコードに対応する利用者を特定し、電子決済を行う(S17)。そして、決済サーバ100は、決済完了通知を決済アプリ20に送信し(S18)、決済アプリ20は決済完了画面を表示する(S19)。
【0018】
なお、上記のいずれか一方のみのパターンで電子決済が行われてもよい。また、図2で説明した「アカウントID」は、利用者の識別情報として用いられ得る他の情報(例えば電話番号)であってもよい。また、ストアスキャンにおいてワンタイムコードの発行が省略され、決済アプリ20は、利用者のアカウントIDに基づいて生成したコード画像を表示してもよい。その場合、決済サーバ100は、ワンタイムコードに対応する利用者を特定するのに代えて、アカウントIDに対応する利用者を特定する。
【0019】
[給与デジタル払い]
決済サーバ100は、上述した電子決済サービスの基本機能に加えて、給与の一部または全部を電子決済サービスで利用可能な電子マネーとして受け取る給与デジタル払いのサービス(以下「デジタル給与サービス」という。)を提供する機能を有する。決済サーバ100は、デジタル給与サービスの利用登録を行った利用者について、電子マネーとして使用可能な残高を第1~第4の残高種別で管理する。ここで、電子マネーとして使用可能な残高とは、現金相当として使用可能な価値の残高のことであり、ポイント等の価値を含む。以下では、簡単のため、電子マネーとして使用可能な残高を総称して「電子マネーの残高」という。なお、電子マネーの残高に関し、その残高種別は厳格に維持・管理される。より具体的には、電子決済サービスにおいて、残高種別ごとの電子マネーは、互いに変換することができない残高として管理されるものである。
【0020】
第1の残高種別は、給与由来の残高である。給与由来の残高とは、利用者が勤務先等から支給される給与を電子マネーで受け取った場合に管理される残高である。第2の残高種別は、非給与由来の残高のうち銀行への送金が可能な残高である。第3の残高種別は、非給与由来の残高のうち銀行への送金ができないように制限された残高である。第4の残高種別は、電子決済サービスにおいて利用者に付与/還元されるポイントの残高である。第1の残高種別および第2の残高種別は、電子決済サービスにおいて本人確認を行った利用者が使用可能である。第1の残高種別は、第2の残高種別と同様に銀行への送金が可能な残高である。利用者は、電子決済サービスにおいてデジタル給与サービスの利用申し込みを行うことで第1の残高種別を利用できるようになる。一方、デジタル給与サービスの利用登録を行っていない利用者は、第2~第4の残高種別を使用可能である。なお、給与由来の残高は第1の残高種別の一例であり、第1の残高種別は利用者が利用申し込みをすることによって利用可能となる電子マネーの残高であればよい。
【0021】
このように、実施形態の電子決済サービスにおいて、利用者が利用可能な残高種別は利用者ごとに異なり得るものであり、決済サーバ100において利用者ごとに利用者可能な残高種別が管理されるものである。このため、例えば、利用者が利用可能な残高種別であって銀行等に出金可能な残高種別が複数ある場合、当該複数の残高種別に対して、出金の際に適用する使用の優先度が利用者ごとに設定されてもよい。例えば、ある利用者について当該複数の残高種別としてA、B、Cの3つがあり、A、B、Cの順に優先度を設定した場合、当該利用者は、残高種別をA、B、Cの順に使用して電子マネーを出金することができる。
【0022】
提携銀行サーバ200は、電子決済サービスの運営者と提携して、電子決済サービスの利用者にデジタル給与サービスを提供する銀行(以下「提携銀行」という。)のコンピュータシステムである。提携銀行は、電子決済サービスの運営者が運営するものであってもよい。提携銀行サーバ200は、1以上のコンピュータにより構成され、ネットワークNWを介して決済サーバ100および支払元サーバ300と通信可能である。提携銀行サーバ200は、デジタル給与サービスの実現に必要な機能のみを有するものであってもよいし、当該機能に加えて、入出金や振り込み、送金等の一般的な銀行サービスを提供するための機能を有するものであってもよい。
【0023】
より具体的には、提携銀行サーバ200は、支払元サーバ300の指示に基づいて、利用者の給与のうち所定額を決済サーバ100へ移動させる。決済サーバ100は、提携銀行サーバ200から移動した給与由来の資金を電子マネーの態様で管理する。提携銀行サーバ200は、利用者の給与のうち決済サーバ100への移動分を差し引いた金額を予め利用者によって指定された銀行口座に移動させる。
【0024】
支払元サーバ300は、利用者に対して給与を支払う事業者が、利用者に給与を支払うための資金を管理するための口座を有している銀行のコンピュータシステムである。支払元サーバ300は、1以上のコンピュータにより構成され、ネットワークNWを介して提携銀行サーバ200と通信可能である。支払元サーバ300を運営する銀行は、提携銀行であってもよいし、提携銀行以外の銀行であってもよい。
【0025】
[決済サーバ]
図4は、第1実施形態に係る決済サーバ100の構成図である。決済サーバ100は、例えば、通信部110と、決済コンテンツ提供部120と、決済処理部130と、情報管理部140と、記憶部170とを備える。通信部110および記憶部170以外の構成要素は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0026】
記憶部170は、HDDやフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)などである。記憶部170は、決済サーバ100がネットワークを介してアクセス可能なNAS(Network Attached Storage)装置であってもよい。記憶部170には、利用者情報172、決済コンテンツ情報174、加盟店/店舗情報176などの情報が格納される。
【0027】
通信部110は、ネットワークNWに接続するための通信インターフェースである。通信部110は、例えばネットワークインターフェースカードである。
【0028】
決済コンテンツ提供部120は、例えば、Webサーバの機能を有し、電子決済サービスの各種画面を表示するための情報(コンテンツ)を利用者端末装置10に提供する。決済コンテンツ提供部120は、決済コンテンツ情報174から適宜、必要なコンテンツを読み出して利用者端末装置10に提供する。利用者端末装置10は、決済アプリ20によってコンテンツが再生された状態で利用者による各種入力を受け付け、前述した決済情報などを決済サーバ100に送信する。
【0029】
決済処理部130は、利用者端末装置10または第1店舗端末装置50により送信された決済情報に基づいて、決済処理を行う。決済処理部130は、利用者情報172を参照しながら決済処理を行う。
【0030】
図5は、利用者情報172の内容の一例を示す図である。利用者情報172は、利用者の登録情報の一例である。利用者情報172は、例えば、利用者URL、アカウントID、電話番号、パスワードの他、メールアドレス、利用者ID、氏名・住所・生年月日、登録日、チャージ残高、後払い設定、後払い枠、後払い利用額、後払い利用可能額、決済方法設定、銀行口座、クレジットカード番号、チャージ履歴情報、決済履歴情報、支払い優先順位設定、支払い優先順位、デジタル給与設定、残高種別優先順位などの情報が対応付けられたものである。利用者URLは、利用者間の送金処理に使用される。電子決済サービスへの新規登録時には、電話番号およびパスワードの登録が必須となる。アカウントIDは、決済サーバ100によって利用者に発行されるものであり、利用者IDは、利用者が任意に設定できる(設定しなくてもよい)IDである。メールアドレス、および氏名・住所・生年月日も同様に、利用者が任意に設定できる(設定しなくてもよい)情報である。登録日とは利用者が電子決済サービスに登録した日(アカウントを作成した日)である。以下、これらの情報が対応付けられた利用者のインスタンス(電子決済口座)のことをアカウントと称する。
【0031】
チャージ残高は、利用者が予めアカウントに送金することで設定された電子マネーの残高を示す情報である。送金の手段としては、指定業者(銀行)のATM(Automatic Teller Machine)からの送金、登録された銀行口座からの送金などがある。後払い設定は、後払いによる電子決済を可能とするための設定が済んでいるか否かを示す情報であり、「済」と「未」のいずれかに設定される。後払い枠は月ごとに利用可能な後払いの限度額であり、後払い利用額は、当月に既に利用された後払いの金額であり、後払い利用可能額は、後払い枠から後払い利用額を差し引いて求められる、当月に利用可能な後払いの金額である。図では後払い枠を一つだけ示しているが、実際には更に日ごとの上限額などが存在し、それらの低い方が後払い枠に設定されてよい。後払いの更なる詳細については後述する。決済方法設定は、その時点において利用者がチャージ残高による電子決済を行うのか、後払いによる決済を行うのかを示す設定情報である。銀行口座とクレジットカード番号のそれぞれは、電子決済サービスに入金可能な銀行口座またはクレジットカード番号の情報(口座番号、カード番号)である。チャージ履歴情報は、利用者が予め電子決済サービスに送金してチャージ残高を増加させた履歴である。決済履歴情報は、利用者が行った決済の内訳(日時、購買行動が行われた店舗の店舗ID、決済金額、決済方法など)を、決済ごとに示す情報である。
【0032】
支払い優先順位設定は、電子決済の支払い方法を優先順位に基づいて自動的に選択する機能を利用可能とするための設定が済んでいるか否かを示す情報であり、「済」と「未」のいずれかに設定される。支払い優先順位は、利用者によって設定された支払い方法の優先順位である。支払い優先順位は、支払い優先順位設定が「済」である利用者が設定可能である。デジタル給与設定は、デジタル給与サービスによる給与の受け取りを可能とするための設定が済んでいるか否かを示す情報であり、「済」と「未」のいずれかに設定される。残高種別優先順位は、利用者によって設定された残高種別の優先順位である。残高種別優先順位は、デジタル給与設定が「済」である利用者が設定可能である。
【0033】
本実施形態では、上述の第1~第4の残高種別のうち、第1の残高種別と第2の残高種別との間でのみ優先順位が設定可能であるものとするが、どの範囲で優先順位を設定可能とするかは、関連法規に準拠する限りにおいて、事業方針等に応じて任意に設計されてよい。なお、デジタル給与設定が「未」の利用者については、第2~第4の残高種別についてデフォルトの優先順位が適用されるものとする。
【0034】
図6は、加盟店/店舗情報176の内容の一例を示す図である。加盟店/店舗情報176は、例えば、店舗URLに対して加盟店IDと店舗IDが対応付けられた第1テーブル176Aと、加盟店IDに対して加盟店名と売上金(前述)が対応付けられた第2テーブル176Bと、店舗IDに対して店舗名が対応付けられた第3テーブル176Cとを含む。加盟店/店舗情報176には、これらの情報の他、加盟店または店舗のカテゴリ、店舗の所在地、決済パターン等の情報が含まれてもよい。
【0035】
情報管理部140は、利用者端末装置10や第2店舗端末装置70から取得した情報に基づいて、利用者情報172および加盟店/店舗情報176を管理する。情報管理部140は、利用者情報172および加盟店/店舗情報176について新規レコードの追加、編集、削除などを行う。
【0036】
[電子決済]
決済処理部130は、利用者端末装置10または第1店舗端末装置50から決済情報が取得されると、利用者情報172を参照して当該利用者の「決済方法設定」を取得する。決済処理部130は、「決済方法設定」が「チャージ残高」に設定されている利用者に関して、以下のように電子決済を行う。決済処理部130は、例えば、利用者IDに対応付けて管理しているチャージ残高を減少させ、加盟店の売上金の項目値を増加させることで、電子決済を行う。加盟店の売上金の項目値は、例えば、それ自体が電子マネーとして使用されるものでは無く、加盟店と電子決済サービスとの取り決めに応じたサイクルで、売上金の項目値に対応する金額が銀行口座に送金される。
【0037】
決済処理部130は、「設定情報」が「後払い」に設定されている利用者に関して、以下のように電子決済を行う。後払いとは、電子決済サービスの運営者とは別主体であるクレジットカード会社との連携による「クレジット払い」とは別枠で設定されるものであり、電子決済サービスの運営者が与信者となって、後払い枠の範囲内でチャージ残高に依存しない電子決済を許容するものである。なお後払いサービスを受けるために、電子決済サービスの運営者が提供するクレジットカードの取得が要求されてよい。後払いで利用された金額は、一か月分まとめて翌月の支払日に、例えば銀行口座からの引き落としによって決済される。この場合、決済処理部130は、後払い利用額に決済金額を加算し、後払い利用可能額から同額を差し引くことで暫定決済を行い、締め日になると上記のように当月分の決済を翌月の支払い日に引き落とすための処理を行う、或いはクレジットカード会社の運営者に当該処理を依頼する。なお暫定決済の時点で決済金額が後払い利用可能額を超える場合は、エラー通知が決済アプリ20に返信される。
【0038】
[残高種別優先順位を適用した電子決済の流れ]
図7は、デジタル給与設定を行った利用者について、残高種別優先順位を適用した電子決済を実現する処理の流れの一例を示すシーケンスチャートである。まず、はじめに、利用者が、利用者端末装置10を操作して決済アプリ20を起動させるとともに、起動した決済アプリ20を操作して電子決済サービスにログインする(S310)。例えば、決済アプリ20は、電子決済サービスのアカウント情報(例えばアカウントIDおよびパスワード)の入力を受け付け、入力されたアカウント情報とともに決済サーバ100に対して電子決済サービスへのログイン要求を送信する(S311)。決済サーバ100は、受信されたアカウント情報と利用者情報172をもとに認証処理を行い、認証結果を決済アプリ20に返信する(S312)。
【0039】
続いて、利用者は、決済アプリ20を操作して残高種別優先順位の設定画面を表示させる(S320)。このとき、決済アプリ20は、利用者情報172から残高種別優先順位の現在の設定値を取得して設定画面に表示させる(S321)。利用者が過去に設定変更を行っていない場合、デフォルトの設定値が設定画面に表示される。利用者は、設定画面に表示された現在の設定値を確認し、必要に応じて設定内容の変更を行う。決済アプリ20は、設定内容が変更された場合、変更後の設定内容で利用者情報172を更新する(S322)。ここまでの流れにより、デジタル給与設定を行った利用者は、電子マネー残高を使用する決済において、第1の残高種別と第2の残高種別とのどちらを優先して使用するかを、事前に設定しておくことができる。
【0040】
次に、利用者にとって電子マネー残高を使用して決済すべき取引が発生した場合を想定する。ここで、電子マネー残高を使用して決済される取引とは、決済アプリ20を用いて作成可能な取引であって、電子マネーによる資金移動が許容される取引であれば特定のものに限定されない。例えば、電子マネー残高を使用して決済される取引は、加盟店に対する支払いであってもよいし、他の利用者への送金であってもよいし、銀行口座への出金であってもよい。利用者は、決済アプリ20を操作して、電子マネー残高を使用して決済すべき取引を作成するための画面(以下「取引作成画面」という。)を表示させる(S331)。ここで表示される取引作成画面は、残高種別優先順位の設定画面を呼び出すためのユーザインターフェースが配置される。利用者は、必要に応じて当該ユーザインターフェースを操作する(S332)ことにより、取引操作の実行直前に残高種別優先順位の設定画面を呼び出して設定を変更することが可能である(S321およびS322)。変更された設定内容は、リアルタイムで決済サーバ100に反映されるので、利用者は取引実行の直前に変更した優先順位の内容を当該決済に即時に適用することができる。
【0041】
図8は、残高種別優先順位の設定内容の一例を示す図である。上述のとおり、本実施形態において、デジタル給与設定を行った利用者が利用可能な電子マネー(ポイント含む)の残高は、給与由来の電子マネー残高(第1の残高種別)、銀行口座への出金制限のない電子マネー残高(第2の残高種別)、銀行口座への出金制限がある電子マネー残高(第3の残高種別)、およびポイント残高(第4の残高種別)の4種類の残高種別によって管理される。図8の例は、第1の残高種別、第2の残高種別、第3の残高種別、第4の残高種別に対して、それぞれ第4位、第3位、第2位、第1位の優先順位が設定された場合を表している。また、図8の例は、第1の残高種別および第2の残高種別の間で優先順位を変更可能であり、第3の残高種別および第4の残高種別の優先順位はそれぞれ第2位、第1位に固定された(変更できない)場合を表している。すなわち、この場合、利用者は残高種別優先順位の設定画面において、第1の残高種別および第2の残高種別の優先順位を、それぞれ第3位、第4位とするか、または、第4位、第3位とするかを選択することができる。
【0042】
図7に戻る。利用者は、必要に応じて残高種別優先順位の設定変更を行った後、取引画面に戻り、決済手段として電子マネー残高を指定して、作成した取引を実行する。これにより、当該取引に係る決済要求(支払い、送金、出金など)が決済サーバ100に送信される。決済サーバ100は、決済要求を受け付けると、利用者情報172を参照して当該利用者に設定されている残高種別優先順位を認識する(S333)。決済サーバ100は、S333で認識した残高種別優先順位に基づいて、当該取引に係る決済処理を実行するとともに(S334)、当該取引に関する情報を、適用した残高種別優先順位の設定内容とともに決済履歴に記録する(S335)。例えば、当該取引が加盟店に対する支払いである場合、決済金額が利用者の電子マネー残高から減算され、加盟店の売上金を管理するための電子決済口座の残高に加算される(S341)。加盟店の売上金は、所定のタイミングで、入金先として指定された加盟店の銀行口座に移動される(S342)。
【0043】
また、例えば、当該取引が他の利用者への送金である場合、決済金額が利用者の電子マネー残高から減算され、送金先の利用者の電子決済口座の残高に加算される(S351)。また、例えば、当該取引が利用者の銀行口座への出金である場合、決済金額が利用者の電子マネー残高から減算され、送金先の銀行口座に送金される(S361)。なお、ストアスキャン方式の場合、決済要求は、第1店舗端末装置50から受信される(S371)。この場合、決済アプリ20は、ストアスキャン用の二次元コードを表示する画面において、残高種別優先順位の設定画面(S320)へのリンクを表示してもよい。この場合、利用者は設定変更を行った後にストアスキャンを行うことで、スキャン直前に設定した優先順位の内容を当該決済に即時に適用することができる。
【0044】
図9は、残高種別優先順位を取引の作成よりも前に事前設定する場合における画面遷移の一例を示す図である。例えば、決済アプリ20のメニューバーMBには、利用者がアカウントを管理するための画面(アカウント管理画面)を表示させるためのアイコンC1が配置され、利用者はアイコンC1を操作することにより、アカウント管理画面A1を表示させることができる。例えば、アカウント管理画面A1には、支払い方法の管理画面を表示させるためのアイコンC2が配置される。利用者は、アイコンC2を操作することにより、支払い方法の管理画面A2を表示させることができる。支払い方法の管理画面A2には、支払い方法に関する各種の設定メニューMNが表示される。設定メニューMNには支払い優先順位の設定画面を表示させるためのメニューM1が含まれる。利用者はメニューM1を選択することにより、支払い優先順位の設定画面A3を表示させることができる。支払い優先順位の設定画面A3には、支払い優先順位設定を切り替えるスイッチSW3と、支払い優先順位の設定インターフェースIF3とが表示される。設定インターフェースIF3には、使用可能な支払い方法が現在の優先順位で並べて表示される。例えば、利用者は、変更対象の支払い方法を選択状態に変更(例えば長押し操作による)して上または下に移動(例えばスワイプ操作による)させることにより、当該支払い方法の優先順位を上位または下位に変更することができる。
【0045】
図9は、支払い優先順位が、優先順位の高いものから、提携カードによるクレジット払いP1(クレジット)、残高払いP2、提携カード以外によるクレジットカード払いP3(クレジットカード)の順に設定された状況を表している。これらの支払い方法のうち、残高払いP2は残高種別優先順位の設定画面へのリンクとして構成される。利用者は残高払いP2を選択することにより、残高種別優先順位の設定画面A4を表示させることができる。残高種別優先順位の設定画面A4には、使用可能な電子マネーの残高種別の一覧LS1が現在の優先順位で並べて表示される。図9は、残高種別優先順位が、優先順位の高いものから、第4の残高種別(ポイント残高)、第3の残高種別(銀行口座への出金不可)、第1の残高種別(給与由来の残高)、第2の残高種別(銀行口座への出金可能)の順に設定された状況を表している。本実施形態においては、これらの残高種別のうち利用者が優先順位を変更することができるものは、第1の残高種別および第2の残高種別である。一方、第4の残高種別および第3の残高種別は優先順位が固定されており、変更できない。すなわち、本実施形態において、利用者は、第1の残高種別と第2の残高種別との間でのみ優先順位を入れ替えることができる。例えば、利用者は、変更対象の残高種別を選択状態に変更(例えば長押し操作による)して上または下に移動(例えばスワイプ操作による)させることにより、当該残高種別の優先順位を上位または下位(図9の例では第3位または第4位)に変更することができる。
【0046】
図10は、電子決済の用途ごとに残高種別の優先順位を設定する場合における、残高種別優先順位の設定内容の一例を示す図である。図10に示されるように、残高種別優先順位は、電子決済の用途ごとに設定されてもよい。図10は、支払い、利用者間の送金、銀行口座への送金(出金)ごとに残高種別優先順位を設定した場合の例である。また、図11は、電子決済の用途ごとに残高種別の優先順位を設定する場合における画面遷移の一例を示す図である。図11の画面遷移は、図9の画面遷移において、支払方法の管理画面A2と支払い優先順位の設定画面A3との間に、決済用途を選択させるための画面A23が追加されたものである。紙面の都合上、ここではアカウント管理画面A1を省略している。
【0047】
決済用途の選択画面A23には、例えば、電子決済サービスが提供する決済用途の一覧LS2が表示される。各決済用途は、支払い優先順位の設定画面A3にリンクする。決済アプリ20は、一覧LS2からいずれかの決済用途が選択されると、その選択結果を決済サーバ100に通知して支払い優先順位の選択画面A3に遷移する。決済サーバ100は、残高種別優先順位の設定画面A4で設定された内容を決済アプリ20から取得し、取得した設定内容を、決済用途の選択画面A23で選択された決済用途に紐づけて保存する。これにより、利用者は電子決済の用途ごとに異なる残高種別優先順位で決済を行うことが可能となる。
【0048】
図12は、残高種別優先順位を取引の作成時(取引の実行直前)に設定する場合における画面遷移の一例を示す図である。図12は、決済アプリ20のトップ画面A5の下部にメニューバーMBが表示された状況を表している。メニューバーMBには、決済用の二次元コードを表示する画面(支払い画面)を表示させるためのアイコンC3が配置され、利用者はアイコンC3を操作することにより、支払い画面A6を表示させることができる。例えば、支払い画面A6には、決済に使用される支払い方法として現在選択されている支払い方法PC(すなわち優先順位第1位の支払い方法)が、支払い方法の選択画面へのリンクとして表示される。利用者は現在の支払い方法PCを選択することにより、支払い方法の選択画面A6を表示させることができる。
【0049】
図12は、支払い方法の選択画面A7が、支払い画面A6の前面にハーフシートの態様で表示される場合の例である。支払い方法の選択画面A7には、現在選択されている支払い方法を視認可能な態様で支払い方法の一覧が表示される。図12の例では、現在選択されている支払い方法が、提携カードによるクレジット払いP1(クレジット)であることがチェックマークCMにより示されている。一方、支払い方法の選択画面A7では、残高払いP2が、残高種別の詳細情報SP、および残高種別優先順位の設定画面へのリンクLKとともに表示される。ここでは、リンクLKは、図9で示した残高種別優先順位の設定画面A4にリンクするものとするが、リンクLKは、取引作成時用に設けられた設定画面へのリンクであってもよい。図12の場合、利用者は、リンクLKを選択することにより、残高種別優先順位の設定画面A4を表示させることができる。利用者は、設定画面A4を操作することにより、取引の実行直前に残高種別優先順位を変更することができる。
【0050】
[事前登録による自動送金機能]
図13は、電子決済を使用した送金において、予め登録された送金先に電子マネーを使用して指定額を自動的に送金する自動送金機能について説明する図である。上述した機能に加え、決済サーバ100は、予め登録された送金先に対して、指定された金額を所定のタイミングで電子決済により送金する機能(自動送金機能)を有する。自動送金機能を使用する利用者は、送金先や、送金のタイミング、送金の金額、使用する残高種別などの設定(自動送金設定)を決済サーバ100に事前登録しておくものとする。例えば、決済サーバ100は、利用者ごとの自動送金設定を利用者情報172において管理するものとする。
【0051】
図13の例は、デジタル給与サービスによる給与の受け取りがあった場合に、各種送金を行う場合を表している。この場合、まず、支払元サーバ300が提携銀行サーバ200に対して利用者の給与を振り込み(S41)、提携銀行サーバ200が振り込まれた給与の一部または全部を電子マネーとして決済サーバ100の利用者アカウントに送金する(S42)。決済サーバ100は、提携銀行サーバ200から送金された金額を第1の残高種別(給与由来)として管理し、第1の残高種別の電子マネーを使用した電子決済を行うことにより、予め登録された各種の送金先に対して指定額の送金を行う(S43)。
【0052】
この自動送金機能において、残高種別の設定は、使用する残高種別の優先順位を指定するものであってもよいし、使用する1つの残高種別を指定するものであってもよい。図13において、自動送金設定CF1(○○カード支払い)は、使用する残高種別の優先順位を指定するものであり、この例では、決済サーバ100は、第4の残高種別(ポイント)、第3の残高種別(銀行口座への出金不可)、第2の残高種別(銀行口座への送金可能)、第1の残高種別(給与由来)の優先順位で電子マネー残高を使用して決済を行う。また、図13において、自動送金設定CF2(△△ローン)は、使用する残高種別を指定するものであり、この例では、決済サーバ100は、第1の残高種別(給与由来)の電子マネー残高を使用して決済を行う。
【0053】
以上説明した実施形態によれば、給与デジタル払いに対応した電子決済サービスにおいて、電子マネーの利便性を向上させることができる。
【0054】
<変形例>
上記実施形態では、電子マネーを使用した決済において、使用可能な残高種別に優先順位を設定可能にすることについて説明した。そして、上記実施形態における優先順位は、優先順位の順に、各残高種別の電子マネーを使い切るものである。このような態様の優先順位に代えて/組み合わせて、各残高種別の優先順位には、使用する金額の割合が設定されてもよい。例えば、第1~第4の残高種別に対し、決済金額に対する割合としてそれぞれ10%、20%、30%、40%の割合を設定したとする。この場合、決済金額が10000円の取引が発生した場合、第1~第4の残高種別からそれぞれ1000円、2000円、3000円、4000円を使用するようにしてもよい。このようにすれば、利用者は、複数の残高種別の電子マネーをまんべんなく使用することができる。
【0055】
また、電子決済サービスにおいて、加盟店への支払いを電子マネーで決済する場合の優先度を、利用者が加盟店ごと(または加盟店の業者ごと)に設定できるようにしてもよい。このような構成によれば、例えば、利用者は、生活費などの支払については給与由来の残高を利用し、旅行の費用などの支払については給与由来以外の残高を利用する、といった残高の使い分けができるようになり便利である。
【0056】
また、決済サーバ100において、利用者の決済履歴を、決済に使用した残高種別に紐づけて管理するようにし、利用者が残高種別に応じた決済履歴を利用者端末装置10から確認できるようにしてもよい。このような構成によれば、利用者端末装置10に決済履歴を表示させる際に、利用者に所望の残高種別を選択させ、選択された残高種別の決済履歴のみを表示させることが可能となる。このような決済履歴の表示により、例えば、利用者は、給与として受け取った電子マネーを何に利用したか一目で把握することができるようになり便利である。表示する決済履歴は、残高種別のほか、決済の用途(例えば、決済、送金、出金など)や、それらの組み合わせでフィルタリングされてもよい。
【0057】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 利用者端末装置
20 決済アプリ
50 第1店舗端末装置
60 店舗コード画像
70 第2店舗端末装置
72 加盟店向けインターフェース
100 決済サーバ
110 通信部
120 決済コンテンツ提供部
130 決済処理部
140 情報管理部
170 記憶部
172 利用者情報
174 決済コンテンツ情報
176 加盟店/店舗情報
200 提携銀行サーバ
300 支払元サーバ
【要約】
【課題】給与デジタル払いに対応した電子決済サービスにおいて、電子マネーの利便性を向上させること。
【解決手段】利用者の端末装置で動作するアプリケーションプログラムとの協働により、前記利用者に電子決済サービスを提供する決済管理装置であって、前記電子決済サービスを実現する決済処理部と、前記電子決済サービスにおいて利用者が電子マネーとして使用可能な残高を、第1の残高種別と、第2の残高種別とに分けて管理する管理部と、を備え、前記管理部は、前記電子マネーの残高種別について、前記電子決済サービスを利用した決済の際に使用する前記残高種別の優先順位の設定を、利用者が変更可能な設定として利用者ごとに管理し、前記決済処理部は、利用者の決済時に支払い方法として電子マネー残高が選択された場合に、前記電子マネー残高を前記優先順位に基づいて使用する、決済管理装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13