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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】塞栓形成のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/12 20060101AFI20250303BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20250303BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20250303BHJP
   A61L 31/18 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 35/02 20150101ALI20250303BHJP
【FI】
A61L31/12
A61L31/02
A61K33/00
A61K38/39
A61P9/00
A61P7/04
A61P43/00 105
A61P43/00 107
A61P17/02
A61P17/14
A61P13/02
A61P1/04
A61P9/14
A61P35/00
A61P1/16
A61P15/00
A61P13/08
A61P13/12
A61P17/00
A61P1/18
A61L31/16
A61L31/18
A61K49/00
A61K35/02
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2023515184
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2021048821
(87)【国際公開番号】W WO2022055785
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/075,598
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(73)【特許権者】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】オクル、ラフミ
(72)【発明者】
【氏名】カデムホッセイニ、アリレザ
(72)【発明者】
【氏名】ジャバルザデ、エフサン
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第98/003203(JP,A1)
【文献】米国特許第5614204(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0144068(US,A1)
【文献】Journal of Biomaterials Applications,2019年,Vol.33, No.10,pp.1427-1433
【文献】International Society on Thrombosis and Haemostasis,2015年,Vol.13 (Suppl.2),p.625 PO323-TUE
【文献】Adv. Funct. Mater.,2018年,Vol.28, 1704452,pp.1-9
【文献】Journal of Conservative Dentistry,2013年,Vol.16, No.4,pp.284-293
【文献】Oral Maxillofac Surg,2019年,Vol.23,pp.381-386
【文献】Journal of Oral Implantology,2011年,Vol.37, No.6,pp.681-690
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0.1重量%~10重量%の多血小板フィブリン(PRF)又は白血球-PRF、及び(b)4重量%~20重量%の1つ以上のナノクレイ材料を含み、シアシニング組成物である、組成物。
【請求項2】
前記PRF及び前記白血球-PRFを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
.1重量%~10重量%の前記PRFを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
.1重量%~10重量%の前記白血球-PRFを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
.4~0.8重量%の前記PRFを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
.2~1.6重量%の前記PRFを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
.2~2.6重量%の前記PRFを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
重量%~15重量%の前記ナノクレイ材料を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
.4~6.8重量%の前記ナノクレイ材料を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ナノクレイ材料はフィロケイ酸塩ナノクレイである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
放射線不透過性造影剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
.1重量%~90重量%の前記放射線不透過性造影剤を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
~40重量%の前記放射線不透過性造影剤を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記放射線不透過性造影剤は、エチオ化油、イオヘキソール、ガドブトロール、酸化鉄ナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化マグネシウム粒子、及びタンタル粒子からなる群から選択される、請求項11~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物の粘度は、1-21/秒のせん断速度下で低下する、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、85kPa~200kPaの置換圧を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
哺乳動物内の血管の塞栓形成のための方法に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は前記組成物を前記血管に送達することを含む、組成物。
【請求項18】
哺乳動物内の血管内の血流を減少させる方法に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は前記組成物を前記血管に送達することを含む、組成物。
【請求項19】
前記血管内の前記血流が1mL/秒未満に減少する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
哺乳動物内で血液凝固を誘導するための方法に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は、前記組成物を前記哺乳動物に送達することにより、送達部位で凝固を誘導することを含む、組成物。
【請求項21】
前記凝固が前記送達後10分未満で誘発される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記哺乳動物は、抗凝固哺乳動物又は凝固障害哺乳動物である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
哺乳動物内でコラーゲン沈着を誘導するための方法に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は、前記組成物を前記哺乳動物に送達することにより、送達部位でコラーゲン沈着を誘導することを含む、組成物。
【請求項24】
哺乳動物内で血管新生を誘導するための方法に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は、前記組成物を前記哺乳動物に送達することにより、送達部位で血管新生を誘導することを含む、組成物。
【請求項25】
哺乳動物内で細胞増殖を誘導するための方法に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は、前記組成物を前記哺乳動物に送達することにより、送達部位で細胞増殖を誘導することを含む、組成物。
【請求項26】
哺乳動物内の創傷を治療するための方法に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は前記組成物を前記創傷に送達することを含む、組成物。
【請求項27】
前記創傷は皮膚創傷である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記創傷は、潰瘍、褥瘡、外科的皮膚創傷、火傷、及び脱毛症からなる群から選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
出血性疾患を有する哺乳動物を治療するための方法に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は前記組成物を前記哺乳動物に送達することを含む、組成物。
【請求項30】
前記出血性疾患は、非外傷性出血、外傷性出血、破裂した動脈瘤、嚢状動脈瘤、尿道皮膚瘻、動静脈瘻、腸皮膚瘻、及び腸管瘻からなる群から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
腫瘍を有する哺乳動物を治療するための方法に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は、前記腫瘍に栄養を与えている前記哺乳動物内の血管に前記組成物を送達することを含む、組成物。
【請求項32】
前記腫瘍は良性腫瘍である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記腫瘍は悪性腫瘍である、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
前記腫瘍は、肝腫瘍、子宮筋腫、良性前立腺肥大症、前立腺腫瘍、腎腫瘍、乳がん腫瘍、黒色腫、胃がん腫瘍、及び膵臓がん腫瘍からなる群から選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項35】
前記哺乳動物はヒトである、請求項17~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記送達はカテーテル誘導送達を含む、請求項17~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記送達は、1cc~10ccの前記組成物を含む、請求項17~36のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦資金に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたHL140951及びHL137193の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
技術分野
本開示は、1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)の塞栓形成のための方法及び材料に関する。例えば、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)の塞栓形成のためのバイオマテリアル組成物(例えば、血液由来塞栓物質(blood-derived embolic material:BEM)組成物)を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景情報
1970年代初頭、インターベンショナルラジオロジストであるCharles Dotterは、患者自身の血液に由来する血塊を使用して、急性に出血している胃の動脈を治療するためのカテーテル誘導塞栓術を初めて実施した(非特許文献1;非特許文献2;及び非特許文献3)。しかし、自然血栓溶解により数時間から数日以内に再疎通が起こり、再出血が生じるため、塞栓用の自己血塊はすぐに断念された。現在は、出血している動脈を塞栓するために、カテーテルを通して金属製のコイルを、動脈内のコイルの塊が流血を遅らせ、凝固させるまで繰り返し押し込んでいる。しかし、これらのコイルには多くの欠点がある。例えば、抗凝固患者又は凝固障害のある患者では効果が限られていること、隣接する軟部組織の評価を制限する重大な画像アーチファクトが生成されること、配置されると、それらは回収できるように設計されておらず、費用対効果が高くないことである(非特許文献4;非特許文献5;及び非特許文献6)。例えば、動脈瘤を塞栓するために、多くのコイルが使用されることがよくある。実際、ある研究では、動脈瘤の塞栓術の費用が15万ドルを超える可能性があり、医療に大きな費用負担を課していることが示された(非特許文献7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Lubarsky et al.,Intervent.Radiol.,26:352(2009)
【文献】Poursaid et al.,J.Controlled Release,240:414(2016)
【文献】Hu et al.,Adv.Mater.,31:el901071(2019)
【文献】Buell et al.,J.Neurosci.Rural Pract.,5:109(2014)
【文献】Sodhi et al.,J.Neurosci.Rural Pract.,5:118(2014)
【文献】Zhu et al.,Adv.Mater.,31:el805452(2019)
【文献】Simon et al.,J.Neurointerv.Surg.,2:163(2010)
【発明の概要】
【0005】
本開示は、1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)の塞栓形成のための方法及び材料を提供する。例えば、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)の塞栓形成(例えば、可逆的塞栓形成)のための組成物(例えば、BEM組成物などのバイオマテリアル組成物)を提供する。
【0006】
本明細書で実証されるように、バイオマテリアル組成物(例えば、多血小板フィブリン(PRF)(及び/又は多白血球及び多血小板フィブリン(白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物))は、腎動脈や腸骨動脈などの一次動脈の塞栓術を達成するために、臨床カテーテルを使用して迅速に調製及び送達され得る。また、本明細書で実証されるように、放射線不透過性BEM組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)、1つ以上のナノクレイ材料、及びエチオ化油などの1つ以上の放射線不透過性薬剤を含むBEM組成物)を使用する塞栓術を哺乳動物(例えば、ヒト)患者に投与し、in vivoで可視化することができる。
【0007】
PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物を送達することにより、哺乳動物(例えば、ヒト)の血管内で塞栓形成を行う性能を有することは、哺乳動物内の1つ以上の血管の止血を安全かつ迅速に達成するための特有かつまだ実現されていない機会を提供する。例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物は、出血(hemorrhage)及び/又は創傷などの出血(bleeding)を治療するために使用することができる。例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含む、塞栓形成のために本明細書で提供されるBEM組成物を送達するために臨床カテーテルを使用することは、ポイントオブケアで(例えば、患者自身の血液を使用して)調製することができ、かつ効率的、効果的、安全、及び/又は費用対効果が高い。
【0008】
さらに、哺乳動物(例えば、ヒト)に送達された、PRF(及び/又は白血球-PRF)、1つ以上のナノクレイ材料、及び1つ以上の造影剤(例えば、放射線不透過性造影剤)を含むBEM組成物を視覚化する性能を有することは、哺乳動物内のBEM組成物の位置及び有効性をモニタリングするための特有かつまだ実現されていない機会を提供する。
【0009】
総じて、本開示の一態様は、(a)多血小板フィブリン(PRF)又は白血球-PRF、及び(b)1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を特徴とする。組成物は、PRF及び白血球-PRFを含み得る。組成物は、約0.1重量%~約90重量%のPRFを含み得る。組成物は、約0.1重量%~約90重量%の白血球-PRFを含み得る。組成物は、約0.4~約0.8重量%のPRFを含み得る。組成物は、約1.2~約1.6重量%のPRFを含み得る。組成物は、約2.2~約2.6重量%のPRFを含み得る。組成物は、約0.5重量%~約90重量%のナノクレイ材料を含み得る。約6.4~約6.8重量%のナノクレイ材料を含み得る。ナノクレイ材料はケイ酸塩ナノクレイであり得る。組成物は、放射線不透過性造影剤も含み得る。組成物は、約0.1重量%~約90重量%の放射線不透過性造影剤を含み得る。組成物は、約10~約40重量%の放射線不透過性造影剤を含み得る。放射線不透過性造影剤は、エチオ化油、イオヘキソール、ガドブトロール、酸化鉄ナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化マグネシウム粒子、又はタンタル粒子であり得る。組成物の粘度は、約10-21/秒のせん断速度下で低下し得る。組成物は、約85kPa~約200kPaの置換圧を有し得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達であり得る。送達は、約1cc~約10ccの組成物を含み得る。
【0010】
別の態様において、本開示は、哺乳動物内の血管の塞栓形成のための方法を特徴とする。この方法は、(a)PRF又は白血球-PRF及び(b)1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を哺乳動物内の血管に送達することを含むか、又は本質的にそれからなるものであり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達であり得る。送達は、約1cc~約10ccの組成物を含み得る。
【0011】
別の態様では、本開示は、哺乳動物内の血管内の血流を減少させる方法を特徴とする。この方法は、(a)PRF又は白血球-PRF及び(b)1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を哺乳動物内の血管に送達することを含むか、又は本質的にそれからなるものであり得る。血管内の血流は、約1mL/秒未満に減少させることができる。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達であり得る。送達は、約1cc~約10ccの組成物を含み得る。
【0012】
別の態様において、本開示は、哺乳動物内で血液凝固を誘導するための方法を特徴とする。この方法は、(a)PRF又は白血球-PRF及び(b)1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を哺乳動物に送達することを含むか、又は本質的にそれからなるものであり得、組成物は送達部位で凝固を誘導するのに有効であり得る。凝固は、送達後約10分未満で誘発され得る。哺乳動物は、抗凝固哺乳動物又は凝固障害哺乳動物であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達であり得る。送達は、約1cc~約10ccの組成物を含み得る。
【0013】
別の態様において、本開示は、哺乳動物内でコラーゲン沈着を誘導するための方法を特徴とする。この方法は、(a)PRF又は白血球-PRF及び(b)1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を哺乳動物に送達することを含むか、又は本質的にそれからなるものであり得、組成物は送達部位でコラーゲン沈着を誘導するのに有効であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達であり得る。送達は、約1cc~約10ccの組成物を含み得る。
【0014】
別の態様において、本開示は、哺乳動物内で血管新生を誘導するための方法を特徴とする。この方法は、(a)PRF又は白血球-PRF及び(b)1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を哺乳動物に送達することを含むか、又は本質的にそれからなるものであり得、組成物は送達部位で血管新生を誘導するのに有効であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達であり得る。送達は、約1cc~約10ccの組成物を含み得る。
【0015】
別の態様において、本開示は、哺乳動物内で細胞増殖を誘導するための方法を特徴とする。この方法は、(a)PRF又は白血球-PRF及び(b)1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を哺乳動物に送達することを含むか、又は本質的にそれからなるものであり得、組成物は送達部位で細胞増殖を誘導するのに有効であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達であり得る。送達は、約1cc~約10ccの組成物を含み得る。
【0016】
別の態様において、本開示は、哺乳動物内の創傷を治療するための方法を特徴とする。この方法は、(a)PRF又は白血球-PRF及び(b)1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を哺乳動物内の創傷に送達することを含むか、又は本質的にそれからなるものであり得る。創傷は皮膚創傷であり得る。創傷は、潰瘍、褥瘡、外科的皮膚創傷、火傷、又は脱毛症であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達であり得る。送達は、約1cc~約10ccの組成物を含み得る。
【0017】
別の態様において、本開示は、出血性疾患を有する哺乳動物を治療するための方法を特徴とする。この方法は、(a)PRF又は白血球-PRF及び(b)1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を哺乳動物に送達することを含むか、又は本質的にそれからなるものであり得る。出血性疾患は、非外傷性出血、外傷性出血、破裂した動脈瘤、嚢状動脈瘤、尿道皮膚瘻、動静脈瘻、腸皮膚瘻、又は腸管瘻であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達であり得る。送達は、約1cc~約10ccの組成物を含み得る。
【0018】
別の態様において、本開示は、腫瘍を有する哺乳動物を治療するための方法を特徴とする。この方法は、哺乳動物内の腫瘍に栄養を与えている哺乳動物内の血管に、(a)PRF又は白血球-PRF及び(b)1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を送達することを含むか、又は本質的にそれからなるものであり得る。腫瘍は良性腫瘍であり得る。腫瘍は悪性腫瘍であり得る。腫瘍は、肝腫瘍、子宮筋腫、良性前立腺肥大症、前立腺腫瘍、腎腫瘍、乳がん腫瘍、黒色腫、胃がん腫瘍、又は膵臓がん腫瘍であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達であり得る。送達は、約1cc~約10ccの組成物を含み得る。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料を使用して本発明を実施することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されたすべての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含め、本明細書が優先される。さらに、材料、方法、及び実施例は、例示のみを目的とし、限定を意図するものではない。
【0020】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本発明のその他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】経動脈塞栓術のための例示的な血液由来塞栓物質(BEM)の製造。模式図は、2種類のBEMのコンポーネントを示す。選択的処置の場合、PRFは、4℃で長期保存するために凍結乾燥された血液から得ることができる。血管内処置が必要な場合、PRFをナノクレイと混合してBEMを作成できる。応急処置又は救急処置では、精製PRFをナノクレイと混合することで、ポイントオブケアBEMを作成できる。この形態では、迅速に調製してすぐに使用することができる(例えば、腎動脈又は腸骨動脈を塞栓するために)。
図2図2A~2Lは、BEMの特性評価。(図2A)凍結乾燥PRF(L-PRF)、NC、及びBEMの代表的なSEM画像と、それぞれの全体的な外観。(図2B)シアシニング特性を明らかにするNC及びBEMの流動曲線。(図2C)低ひずみと高ひずみの振動下でのゲルの回復性を示すチキソトロピー試験。(図2D)振幅スイープから得られたゲルの貯蔵弾性率G’の概要(n=3)。(図2E)5Fカテーテルを介してNC、BEM、及びBEM-EOによって生成された注入力の概要(n=3)。(図2F)血管閉塞モデル(n=3)でNC、BEM、及びBEM-EOを変位させるために必要な平均圧力のグラフによる概要。黒い点線は生理的圧力(120mmHg)を示す。挿入図は、代表的な変位圧力曲線を示す。(図2G)PRF、L-PRF、NC、BEM、及びBEM-EO抽出物と24時間インキュベーションした後のL-929細胞の相対生存率を示すグラフ(n=12)。(図2H)接種後24時間でも1週間でもBEM-EOに細菌の増殖がないことを示す、600nmでの光学密度に基づく無菌試験の概要。LBブロス単独及び大腸菌を接種したLBブロスを、それぞれ陰性対照及び陽性対照として使用した。(図2I)血液単独と比較して、血液と接触したBEM-EOのΔG’の増強を示すレオロジー研究。(図2J)血液がBEM-EO及び臨床的に使用されるコイル繊維と接触した場合に凝固が促進されることを示す血液凝固研究の画像。(図2K)様々な濃度のエチオ化油を含有するBEM-EO装填シリンジの蛍光透視画像。(図2L)Penumbraシステムを使用した、BEM-EOの完全な除去を示す、3Dプリントされた動脈モデルにおけるBEM-EO回復試験の画像。p値はテューキーの多重比較を使用した二元配置分散分析によって決定した。ns、有意差なし、****p≦0.0001。データは平均±SEMとして表されている。
図3図3A~3Gは、ラットの背部へのNC又はBEM-EOの皮下移植後の組織学的反応の評価。(図3A)移植後3、14、又は28日のNC又はBEM-EO注射部位のH&E染色皮膚組織切片の顕微鏡写真(矢じり印は注射されたバイオマテリアルを指し、矢印は浸潤細胞を示す)。(図3B)注射後14日目にNCと比べてBEM-EO処理部位で著しく高い細胞浸潤を示す、組織切片のバイオマテリアル領域内の平均細胞数の概要。(図3C)移植後3、14、又は28日のNC又はBEM-EO注射部位のマッソントリクローム染色皮膚組織切片の組織像(点線は線維性被膜の厚さを示し、黒線は細胞浸潤の領域を示す)。(図3D)注射後D14でのNCと比較して、BEM-EO処理部位の細胞浸潤層が厚いことを示すグラフ。(図3E)(図3C)において点線でマークされたように、注射後D28でのBEM-EOにおける注射されたバイオマテリアルの周りの線維性被膜層を示す形態計測分析。(図3F及び図3G)D3でNCと比較してBEM-EOにおいて体積が大きく、D3のBEM-EOと比較して28日までにBEM-EO体積が減少したことを示す、再構成されたマイクロCT画像と注射されたバイオマテリアルの量のボリューム分析。スケールバーはマイクロCT画像では2mm、組織像では150μm。p値はテューキーの多重比較を使用した分散分析によって決定した。p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001。データは平均±SEM(n=4)として表される。
図4図4A~4Pは、ブタにおけるBEM-EOを使用した腸骨動脈及び腎動脈のカテーテル誘導塞栓術。(図4A)内腸骨動脈(IIA)の開存性を示す塞栓術前の血管造影(白い矢印)。(図4B)塞栓術後のIIA(白い矢印)におけるBEM-EOのシングルショットX線透視画像。(図4C)IIAの閉塞(白い矢印)を確認する塞栓術後のDSA。(図4D)塞栓されたIIAの体軸方向コンピュータ断層撮影(CT)画像。白い矢印はBEM-EOを示す。(図4E)遠位大動脈及び腸骨動脈の3D再構成CTA画像。IIA(白い矢印)をキャストした明るいBEM-EOと塞栓された腸骨動脈。(図4F)塞栓術後1時間及び2週間の、BEM-EOで閉塞されたIIAの染色された組織学的断面の顕微鏡写真。2週間の生存群、動脈壁内に破壊されたエラスチンを伴う広範な同心円状の線維炎症反応(黒い矢印)。(図4G)エラスチン染色された組織切片で評価された動脈壁の中膜の厚さの形態計測分析。(図4H)PCNA陽性細胞数の概要は、塞栓術の2週間後に有意な増加を示している。(図4I)開存性腎動脈分節枝(矢印)を示す塞栓術前の血管造影。(図4J)塞栓術後の腎動脈におけるBEM-EOを示す蛍光透視画像(矢印)。(図4K)BEM-EOによる腎動脈の完全閉塞(矢印間)を示す塞栓術後のデジタルサブトラクション血管造影。(図4L及び図4M)動脈内における画像アーチファクトのない可視BEM-EO(白い矢印)を示す、塞栓された腎臓の体軸方向CT画像及び3DレンダリングCT画像。(4N及び図4O)塞栓術後1時間及び2週間のブタ腎臓のマイクロCT、全体図、及び組織像であり、マイクロCTには腎動脈におけるBEM-EOが示されている(白い矢印)。染色された組織学的画像は、塞栓術後1時間及び2週間にBEM-EOで満たされた動脈枝(黒い輪郭の領域)を示し、壊死した尿細管細胞が塞栓術後2週間で観察される(黒い矢印)。(図4P)対照腎臓と比較した、腎動脈塞栓術後2週間のブタ腎臓の3DレンダリングCTスキャンの体積分析。スケールバーは、組織像では150μm、全体図画像では1cm。対応のないt検定によって決定されたp値、p≦0.05、ns、有意差なし。データは平均±SEM(n=4)として表されている。
図5図5A~5Eは、マイクロCTを用いたBEM-EOの経時的な構造変化の評価。(図5A)BEM-EOによる塞栓術後1時間及び2週間の腸骨動脈のマイクロCTスキャン及び対応する組織学的画像の3Dレンダリング。これらの画像は、経時的な形態学的変化を示している。非生存1時間群は均一に閉塞した動脈を示し、2週間群ではこれが進行して断片化し、介入する非増強領域は線維性組織に置き換えられた。標本P4とP8の点線は、体軸方向マイクロCT画像及び対応するH&E画像が取得された位置を表す。スケールバーは2.5mm。(図5B)BEM-EOの3D総体積は、セグメンテーションソフトウェアを使用して、塞栓された腸骨動脈のマイクロCTスキャンから計算された。これらのデータは、バイオマテリアルの体積が2週間で63%減少したことを示している。(図5C)37℃で0、3、7、14、及び70日間保存されたチューブ内のBEM-EOの一連のスキャンは、経時的に低密度病巣の一貫した分散を示す(矢印は時間の経過とともに同様の領域を示す)。スケールバーは2.5mm。(図5D及び図5E)模式図に見られるように、各チューブの5つの階層から得られたチューブに装填されたBEM-EOの低密度病巣及び放射線密度の経時的測定。各チューブを5つの区分に分け、各区分に対して測定を行い、経時的な有意差は示されなかった。これは、BEM-EOが安定しており、時間の経過とともに成分への相分離が発生しないことを示唆している。スチューデントのt検定を使用してBEM-EO体積の差を計算し、テューキーの多重比較検定を使用した一元配置分散分析を使用して、in vitroでのマイクロCTの経時的変化を評価した。****p≦0.0001、ns、有意差なし。データは平均±SEMとして表されている。
図6図6A~6Hは、ポイントオブケア血液由来塞栓物質(pocBEM)の製造及び特徴解析。(図6A)3匹の異なるブタから得られた、新たに調製されたPRFで測定されたPDGF-Bレベルを示すグラフ。(図6B)類似の粘度プロファイルを示す5匹の異なるブタからのpocBEMのせん断速度スイープ。(図6C)10rads-1で実行された振幅スイープに対して決定された異なるpocBEMのG’を示すグラフ(破線は、すべてのpocBEMにおける15685Paの平均G’を示す)。(図6D)すべてのpocBEM製剤の優れた回復性を示すチキソトロピー試験。(図6E)平均力30N(破線)でのpocBEMの注入性を示す圧縮試験。(図6F)無菌条件下で調製したpocBEMを接種してから1日後及び1週間後に得られたOD600測定値は、細菌の増殖を示さない。(図6G)血液単独と比較して、血液がpocBEMと接触している場合のΔG’の急速な増加を示すレオロジー研究。(図6H)血液単独と比較して加速された凝固時間を示すpocBEMの血栓形成能の代表的な試験。p値はテューキーの多重比較を使用した二元配置分散分析によって決定した。ns、有意差なし、****p≦0.0001。データは平均±SEMとして表されている。
図7図7A~7Lは、ブタでのpocBEMを使用した、経カテーテル動脈塞栓術、回収、及び失敗した塞栓のコイルによるレスキュー。(図7A)開存性内腸骨動脈(IIA)を示すブタの腸骨動脈の血管造影図。(図7B)完全な閉塞を示す、pocBEMを使用した右IIA(RIIA)の塞栓術後のデジタルサブトラクション血管造影(DSA)。(図7C)両方のIIAへの血流の中断を示す、pocBEMを使用した両方のIIAの塞栓術後のDSA。(図7D)冠状面及び横断面の塞栓されたIIAのマイクロCT画像(破線は横断面の位置を示す)。pocBEMは、RIIA及びLIIAを画像アーチファクトなく完全に充填する。(図7E)腸骨動脈への正常な血流を示す血管造影画像。(図7F)LIIAのコイル塞栓術後の血管造影画像は、抗凝固処置を施したブタの血流を停止できなかったことを示す。(図7G)血管造影画像は、Fでの失敗したコイル塞栓のレスキューの後に完全な閉塞をもたらしたカテーテルを介したpocBEM注入を示す。(図7H)Penumbra Aspirationシステムを使用したpocBEM回収後のIIA内のコイルを通る正常な血流を示すLIIAの血管造影画像。(図7I)コイル塞栓術及びpocBEMの回収が行われたLIIAの冠状及び体軸方向のマイクロCT画像(破線は、下の対応する体軸方向断面を示している)は、コイルに起因する広範なストリークアーチファクトを示す。LIIAは不透明化を示さず、pocBEMの吸引の成功を示唆する。(図7J)右の模式図に示すように、抗凝固処理されたブタでのコイルによる腎動脈塞栓術の失敗を示す血管造影画像。(図7K)Jの失敗したコイル塞栓術は、pocBEMで正常に塞栓され、ここでは腎臓への血流がない。(図7L)pocBEMが、重大なストリークアーチファクトをもたらすコイル塊の近位の腎動脈を満たしていることを示す、塞栓された腎臓のマイクロCT画像。
図8図8A~8Cは、PRFの調製。(図8A)ガラス管での遠心分離後の上相のPRFを示すブタ血液アリコートの画像。(図8B及び図8C)全血からの43±5.3重量%のPRFの重量収率、及びPRF調製物からの7.3±0.84重量%のL-PRFの重量収率を示すプロット。
図9図9A~9Gは、PRF及びL-PRFのin vitro分析。(図9A)3匹の異なるブタからのPRF及びL-PRFを示すSDS-PAGEの画像、及び同様のタンパク質画分を示すプールされたL-PRFサンプル。(図9B)PRF及びL-PRFにおけるVEGF、PDGF-B、及びTGF-βタンパク質のウエスタンブロット検出。(図9C及び図9D)3つのL-PRF調製物におけるPDGF-B及びVEGF-Aタンパク質レベルの定量分析。(図9E)対照と比較して、PRF及びL-PRF処理細胞における細胞増殖の増強を示す、1日目及び3日目のin vitroでのL-929細胞増殖に対するPRF及びL-PRFの効果(n=8)。(図9F)L929細胞を無血清培地(対照)、PRF、及びL-PRFと共にインキュベートして1日後に得られたin vitroスクラッチアッセイの代表的な画像。(図9G)陰性対照と比較して、PRF及びL-PRF処理細胞における細胞遊走の増強を示す、L-929遊走に対するPRF及びL-PRFの効果(n=6)。p値はテューキーの多重比較を使用した一元配置分散分析によって決定した。p≦0.05、**p≦0.01、****p≦0.0001。データは平均±SEMとして表されている。
図10】NC、L-PRF、及びBEMのSEM画像。NCの層状構造、L-PRFのハニカム状構造、及びBEMの多孔質構造を示す異なる倍率のSEM画像。
図11図11A~11Eは、BEM-EO特性評価。(図11A)NC、BEM、及びBEM-EOアリコートの全体的な外観。NC、BEM、及びBEM-EOの蛍光透視画像は、BEM-EOシリンジでの顕著なX線増強を示す。(図11B)in vitro及びin vivo実験に使用するBEM又はBEM-EOを装填したシリンジ。(図11C)シアシニング特性を明らかにするNC、BEM、及びBEM-EOの流動曲線。(図11D)振幅スイープから得られたバイオマテリアルの貯蔵弾性率G’の概要(n=3)。(図11E)変位圧力測定システムの模式図。データは平均±SEMとして表されている。
図12】BEM-EO無菌アッセイのin vitro評価。ミューラーヒントン寒天プレートの全体図画像は、LBブロスに可溶化したBEM-EOの接種7日後に、大腸菌陽性対照と比較して細菌の増殖がないことを示している。
図13】ラットの背部への生理食塩水、NC、BEM、及びBEM-EOの皮下注射。各ラットは、生理食塩水、NC、BEM、及びBEM-EOのそれぞれの200μLの皮下注射を4回受けた(n=4、各群)。
図14-1】図14A~14Eは、ラット背部に皮下注射されたBEMの形態計測分析。(図14A)代表的なH&E、又はマッソントリクローム染色された組織切片、及びBEMの注射後3、14、又は28日で外植された皮膚組織から得られたマイクロCT画像(矢じり印及び破線の領域は、注入されたバイオマテリアルを示す。矢印は、組織切片における浸潤細胞を示す)。(図14B)NCと比較して、BEM及びBEM-EOにおいてD14でピークに達する浸潤細胞数の増加を示す、組織切片におけるBEMゾーン内の平均細胞数の概要。(図14C)マッソントリクローム染色切片で測定された細胞浸潤層の厚さ(線維芽細胞が豊富なゾーン)を示すグラフ。(図14D)バイオマテリアル及び周囲の組織を取り囲む線維性被膜の厚さの概要。(図14E)D28でのBEM及びBEM-EO体積の減少を示す、注入されたバイオマテリアルのマイクロCT体積分析を示すグラフ。スケールバーは、マイクロCT画像では2mm、組織像では150μm。p値はテューキーの多重比較を使用した分散分析によって決定した。p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001。データは平均±SEM(n=4)として表される。
図14-2】同上。
図15-1】図15A~15Dは、バイオマテリアル移植後のラット皮下組織における細胞増殖及び血管新生の評価。(図15A)NC、BEM、BEM-EOの皮下注射後3、14、及び28日目に得られたPCNA免疫染色ラット皮膚切片の代表的な画像。増殖中の細胞を茶色に可視化している(黒い矢印)。(図15B)14日目及び28日目に、NCと比較してBEMで増殖中の細胞数が多いことを示すPCNA陽性細胞数の概要。(図15C)NC、BEM、又はBEM-EOの皮下注射後3、14、及び28日目に得られたCD31免疫染色ラット皮膚切片の代表的な画像。血管を可視化している(黒い矢印)。(図15D)NCと比較してBEM及びBEM-EOでの血管新生の増強を示す、D28でのCD31陽性血管数の概要。スケールバーは150μm。統計分析は、テューキーの多重比較を使用した二元配置分散分析によって計算した。p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001。データは平均±SEMとして表される。
図15-2】同上。
図16】BEM-EOによるブタ内腸骨動脈塞栓術。4匹のブタのベースライン時と、BEM-EOによる塞栓術後の内腸骨動脈を示す蛍光透視画像。塞栓術の前に、腸骨動脈(白い矢印)の開存性がDSAによって示される。塞栓後、DSAは塞栓された腸骨動脈(2つの矢印の間)に血流がないことを示す。BEM-EOは、シングルショット蛍光透視画像の塞栓後に容易に検出できる(白い矢印)。BEM-EOが塞栓術の2週間後にIIAをキャストしていることを示す(白い矢印)コンピュータ断層撮影血管造影画像のパネル。
図17】ブタの塞栓術から2週間後の全身CT画像。4匹のブタの脳、肝臓、脾臓、後肢、及び肺のCTスキャンのパネルが示されている(破線)。すべての組織において異常は見られなかった。白い矢印は、両方の後肢の動脈の正常な流出を示す。
図18図18A~18Dは、BEM-EOによる塞栓術の2週間後の内腸骨動脈(IIA)の組織学的評価。(図18A及び図18B)H&E染色IIA断面は、管腔領域(ブラケット)の約40%を占める同心円状の炎症反応ゾーンと共に、BEM-EOによる動脈管腔の完全なキャスティングを示している。(図18C)非常に豊富なマクロファージの存在下で出現する脂肪滴(黒い矢印)を示す、同心円ゾーンから得られた高倍率の組織切片。(図18D)散在する多核巨細胞(黒い矢印)を示す、同心円ゾーンから得られた高倍率の組織像。スケールバーは100μm。
図19】BEM-EOによるブタ腎動脈塞栓術。4匹のブタのベースライン(塞栓術前)時と、BEM-EOによる塞栓後の完全な閉塞時の腎動脈を示す蛍光透視画像のパネル。4匹のブタにおいて持続する閉塞(白い矢印)を示す、BEM-EOによる腎動脈塞栓術の2週間後に得られたコンピュータ断層撮影血管造影画像。塞栓後、DSAは塞栓された腎動脈と腎臓において血流がないことを示す。シングルショット蛍光透視画像及び体軸方向CTAでは、BEM-EOは容易に検出できる(白い矢印)。
図20図20A~20Hは、BEM-EOで塞栓された腎実質の組織像。(図20A)塞栓術の1時間後に得られた腎実質のH&E染色組織切片(挿入図は、高倍率画像が撮影された場所を示す)。(図20B)正常な腎実質を示す組織像。(図20C及び図20D)トリクローム染色切片の塞栓された分節動脈(黒い矢印)を示す高倍率組織像。(図20E)腎動脈塞栓術の2週間後に得られた腎実質のH&E組織像。(図20F図20G図20H)黒い四角で囲まれた領域の高倍率組織像は、閉塞した腎実質のびまん性壊死と、トリクローム染色画像の線維性分節腎動脈を示す(矢印)。A及びEにおけるスケールバーは1mmである。
図21図21A~21Cは、pocBEMの微細構造。(図21A)pocBEM構造の模式図。(図21B)pocBEMのH&E画像は、白血球(白い矢印)及び血小板(黒い矢印)の存在を示す。(図21C)pocBEMのSEM画像は、多孔質構造のフィブリン(白い矢印)を示す。
図22図22A~22Iは、pocBEMで塞栓された腸骨動脈及び腎動脈の塞栓術後1時間のマイクロCT及び組織像。(図22A)蛍光透視下の腸骨動脈におけるpocBEMの可視性。(図22B図22C)pocBEMで塞栓された腸骨動脈の体軸方向及び冠状方向のマイクロCT画像。(図22D図22E)無定形のpocBEMが動脈管腔を均一に閉塞していることを示す、塞栓された腸骨動脈のH&E画像。(図22F)腎動脈の開存性を示す塞栓術前のDSA画像。(図22G)pocBEMを使用した腎動脈塞栓術後、DSA画像は、閉塞された腎動脈(白い矢印)、及び腎臓への血流の欠如(白い点線)を示す。(図22H)腎動脈及びその分節枝を画像アーチファクトなく充填する高密度pocBEMを示す、塞栓された腎臓のマイクロCT画像。(図22I)塞栓された腎臓のH&E画像。高倍率画像は、腎実質の塞栓された動脈を示す。
図23図23A~23Lは、ブタモデルにおける損傷動脈のカテーテル誘導塞栓術による急性出血制御。(図23A)腎動脈分枝の開存性を示す塞栓術前の血管造影。(図23B)20cm及び18G針を使用した腎損傷後のデジタルサブトラクション血管造影(DSA)(黒い矢印)。造影剤の血管外遊出及び仮性動脈瘤(白い矢印)が示されている。(図23C)pocBEMを使用した腎動脈塞栓後のDSA(黒い矢印)は、損傷領域(破線領域)に出血がないことを示している。(図23D)腎動脈の開存性を示す腎損傷前のDSA画像。(図23E)腎損傷後、DSA画像は、造影剤の血管外遊出及び仮性動脈瘤(矢印)を示す。(図23F)損傷した腎動脈の塞栓術後の、出血を示さないDSA(破線領域)。(図23G及び図23H)損傷後の出血性動脈仮性動脈瘤(矢印)を示す血管造影画像。(図23I)pocBEMでの塞栓後に出血がないことを示すDSA画像(矢印)。(図23J及び図23K)外腸骨動脈枝に針で形成された損傷後の出血性仮性動脈瘤(黒い矢印)を示すDSA画像。(図23L)pocBEMによる塞栓後の出血制御を示すDSA画像(黒い矢印)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
実施形態の説明では、本説明の一部を形成し、本発明の実施となり得る特定の実施形態を例として示す添付の図面を参照することがある。他の実施形態を利用することができ、本発明の範囲から逸脱することなく構造上の変更を行うことができることを理解されたい。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記法、及びその他の科学用語又は専門用語は、本発明が関係する当業者によって一般的に理解される意味を有することを意図している。場合によっては、明確にするため、及び/又はすぐに参照できるように、一般的に理解されている意味を持つ用語が本明細書で定義されている。本明細書にそのような定義を含めることは、当技術分野で一般的に理解されている定義との実質的な違いを表すものとして必ずしも解釈されるべきではない。本明細書に記載又は参照される技術及び手順の態様の多くは、当業者によって十分に理解され、一般的に使用される。以下の文章は、本発明の様々な実施形態を述べている。
【0023】
本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)の塞栓形成のための方法及び材料を提供する。例えば、本開示は、血管の塞栓形成のために哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)に送達することができる組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料)を含むBEM組成物などのバイオマテリアル組成物)を提供する。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、バイオマテリアル組成物)は、血管内で血栓(例えば、人工塞栓)の形成を誘導するために哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されることができる。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、バイオマテリアル組成物)は、血管内に塞栓(例えば、人工塞栓)を形成するために哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されることができる。別の態様では、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)の1つ以上の創傷(例えば、皮膚の創傷、粘膜の創傷及び/又は胃腸創傷)に、その創傷を治療するため(例えば、創傷治癒を促進するため)に送達することができる組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物などのバイオマテリアル組成物)を提供する。
【0024】
本明細書で提供される組成物(例えば、BEM組成物)は、PRF及び1つ以上のナノクレイ材料を含み得る。当技術分野で知られているように、Laponite(登録商標)ナノクレイなどのナノクレイ材料は、ナノ細孔を有するナノサイズのケイ酸塩粒子である。これらの粘土は、以下の4つの主要なグループ:カオリナイトグループ(ゼオライト又はハロイサイト)、モンモリロナイト/スメクタイトグループ、イライトグループ、及びクロライトグループに分類できる(例えば、Gaharwar et al.,Adv Mater.2019年6月;31(23):e1900332;Erezuma et al.,Adv Healthc Mater.2021年8月;10(16):e2100217;Villalba-Rodriguez et al.,Gels.2021年5月14日;7(2):59.doi:10.339;及び米国特許出願公開第20180071446号及び第20200390804号を参照。これらは参照によって本明細書に組み込まれる)。場合によっては、本明細書で提供される組成物は無菌であり得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は抗菌活性を有することができる。場合によっては、本明細書で提供される組成物は生物活性であり得る。例えば、本明細書で提供される組成物は、1つ以上の治療薬を含むように設計することができる。
【0025】
場合によっては、本明細書で提供される組成物(例えば、BEM組成物)は、任意の適切な量のバイオマテリアル(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料)を含むように設計することができる。例えば、本明細書で提供される組成物は、約0.1%(重量%)~約90%(重量%)のバイオマテリアル(例えば、約0.1重量%~約80重量%、約0.1重量%~約70重量%、約0.1重量%~約60重量%、約0.1重量%~約50重量%、約0.1重量%~約40重量%、約0.1重量%~約30重量%、約0.1重量%~約20重量%、約0.1重量%~約10重量%、約1重量%~約90重量%、約5重量%~約90重量%、約10重量%~約90重量%、約20重量%~約90重量%、約30重量%~約90重量%、約40重量%~約90重量%、約50重量%~約90重量%、約60重量%~約90重量%、約70重量%~約90重量%、約80重量%~約90重量%、約0.5重量%~約80重量%、約1重量%~約70重量%、約2重量%~約60重量%、約3重量%~約50重量%、約4重量%~約40重量%、約5重量%~約30重量%、約6重量%~約20重量%、約7重量%~約10重量%、約0.5重量%~約5重量%、約1重量%~約10重量%、約2重量%~約12重量%、約3重量%~約15重量%、約4重量%~約20重量%、又は約5重量%~約25重量%のバイオマテリアル)を含み得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、約7.2重量%のバイオマテリアルを含み得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、約8重量%のバイオマテリアルを含み得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、約9重量%のバイオマテリアルを含み得る。
【0026】
場合によっては、本明細書で提供される組成物(例えば、BEM組成物)は、任意のタイプのPRF及び/又は白血球-PRFを含むように設計することができる。例えば、PRF(又は白血球-PRF)は、本明細書に記載のように治療される哺乳動物の血液に由来するものであり得る。PRF及び/又は白血球-PRFは、任意の適切な方法を使用して得ることができる。PRFを得る方法は、例えば、実施例1に記載されているように行うことができる。場合によっては、PRFを得る方法は、他の場所で説明されているようにすることができる(例えば、Dohan et al.,Oral Surg.Oral Med.Oral Pathol.Oral Radiol.Endod.,101(3):e37-e44(2006),Ghanaati et al.,J. Oral Implantol.,40(6):679-689(2014);及びVarela et al.,Clin.Oral Investig.,23(3):1309-1318(2019)を参照)。場合によっては、PRF(又は白血球-PRF)は凍結乾燥させることができる。PRF(又は白血球-PRF)は、任意の量の血小板を含み得る。例えば、PRF(又は白血球-PRF)は、PRF1立方ミリメートル当たり約10個の血小板(血小板/mm)~約10血小板/mm(例えば、約10血小板/mm~約10血小板/mm、約10血小板/mm~約10血小板/mm、約10血小板/mm~約10血小板/mm、約10血小板/mm~約10血小板/mm、約10血小板/mm~約750血小板/mm、約10血小板/mm~約500血小板/mm、約10血小板/mm~約250血小板/mm、約10血小板/mm~約200血小板/mm、約10血小板/mm~約100血小板/mm、約50血小板/mm~約10血小板/mm、約100血小板/mm~約10血小板/mm、約250血小板/mm~約10血小板/mm、約500血小板/mm~約10血小板/mm、約750血小板/mm~約10血小板/mm、約10血小板/mm~約10血小板/mm、約10血小板/mm~約10血小板/mm、又は約10血小板/mm~約10血小板/mm)を含み得る。場合によっては、PRF(又は白血球-PRF)は、1つ以上の追加の成分を含み得る(例えば、血小板及びフィブリンに加えて)。PRF(又は白血球-PRF)に存在し得る成分の例には、限定するものではないが、血小板、フィブリン、増殖因子(例えば、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、血小板由来増殖因子(PDGF))、及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF))、サイトカイン(例えば、IL-8、TNF-α、及びIL-10)、接着分子、凝固因子、細胞(例えば、白血球、線維芽細胞、好中球、マクロファージ、及び間葉系幹細胞)、TGF-β、及びオステオカルシンが含まれる。
【0027】
本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)は、任意の量のPRF(及び/又は白血球-PRF)を含み得る。例えば、本明細書で提供される組成物は、約0.1%(重量%)~約90%(重量%)のPRF(及び/又は白血球-PRF)(例えば、約0.1重量%~約75重量%、約0.1重量%~約50重量%、約0.1重量%~約40重量%、約0.1重量%~約30重量%、約0.1重量%~約20重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.1重量%~約8重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.1重量%~約4重量%、約0.1重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%、約0.1重量%~約1重量%、約0.2重量%~約90重量%、約0.3重量%~約90重量%、約0.4重量%~約90重量%、約0.5重量%~約90重量%、約0.6重量%~約90重量%、約0.7重量%~約90重量%、約0.8重量%~約90重量%、約0.9重量%~%~約90重量%、約1重量%~約90重量%、約2重量%~約90重量%、約0.2重量%~約50重量%、約0.3重量%~約30重量%、約0.4重量%~約15重量%、約0.5重量%~約10重量%、約0.6重量%~約8重量%、約0.7重量%~約5重量%、約0.8重量%~約3重量%、約0.2重量%~約0.6重量%、約0.4重量%~約0.8重量%、約0.6重量%~約1重量%、約0.7重量%~約1.1重量%、約0.8重量%~約1.2重量%、約1重量%~約1.4重量%、約1.2重量%~約1.6重量%、約1.4重量%~約1.8重量%、約1.6重量%~約2重量%、約1.8重量%~約2.2重量%、約2重量%~約2.4重量%、約2.2重量%~約2.6重量%、約2.6重量%~約3重量%、約2.8重量%~約3.2重量%、約3重量%~約3.6重量%、又は約3.4重量%~約4重量%、PRF(及び/又は白血球-PRF))を含み得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、約0.4重量%~約0.8重量%(例えば、約0.6重量%)のPRFを含み得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、約1.2重量%~約1.6重量%(例えば、約1.4重量%)のPRFを含み得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、約2.2重量%~約2.6重量%(例えば、約2.4重量%)のPRFを含み得る。
【0028】
本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物)は、任意のタイプのナノクレイ材料を含み得る。場合によっては、組成物は単一種のナノクレイ材料を含み得る。場合によっては、組成物は、2種以上(例えば、2種、3種、4種、又はそれ以上)のナノクレイ材料を含むことができるとともに、任意の形態であることができる。例えば、ナノクレイ材料は粉末であり得る。場合によっては、ナノクレイ材料は膨潤性であり得る(例えば、水などの液体に分散したときに膨張することでヒドロゲルなどのゲルを生成するナノクレイ材料)。場合によっては、ナノクレイ材料は、1つ以上のナノ粒子を含み得る。本明細書で提供されるナノクレイ材料に含めることができるナノ粒子の例には、限定するものではないが、ポリ(d,l乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(N,N-ジエチルアクリルアミド-co-アクリル酸)、ポリ[アクリル酸-co-ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリラート](PAA-co-PEGMEA)、及びポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAm)-ヘクトライド(hectoride)が含まれる。本明細書で提供される組成物に含めることができるナノクレイ材料の例には、限定するものではないが、ケイ酸塩ナノクレイ(例えば、Laponite(登録商標)などのフィロケイ酸塩ナノクレイ)が含まれる。
【0029】
本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)は、任意の量のナノクレイ材料を含み得る。例えば、本明細書で提供される組成物は、約0.5%(重量%)~約90%(重量%)のナノクレイ材料(例えば、約0.5重量%~約70重量%、約0.5重量%~約50重量%、約0.5重量%~約30重量%、約0.5重量%~約15重量%、約0.5重量%~約12重量%、約0.5重量%~約10重量%、約0.5重量%~約9重量%、約0.5重量%~約8重量%、約0.5重量%~約7重量%、約0.5重量%~約6重量%、約0.5重量%~約5重量%、約1重量%~約90重量%、約2重量%~約90重量%、約3重量%~約90重量%、約4重量%~約90重量%、約5重量%~約90重量%、約6重量%~約90重量%、約7重量%~約90重量%、約8重量%~約90重量%、約9重量%~約90重量%、約10重量%~約90重量%、約15重量%~約90重量%、約20重量%~約90重量%、約50重量%~約90重量%、約75重量%~約90重量%、約1重量%~約75重量%、約2重量%~約50重量%、約3重量%~約30重量%、約4重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約6重量%~約10重量%、約6.4重量%~約6.8重量%、約1重量%~約5重量%、約2重量%~約6重量%、約3重量%~約7重量%、約4重量%~約8重量%、約5重量%~約9重量%、約6重量%~約10重量%、約7重量%~約11重量%、又は約8重量%~約12重量%のナノクレイ材料)を含み得る。場合によっては、本明細書で提供されるバイオマテリアル組成物は、約6.4重量%~約6.8重量%(例えば、約6.6重量%)のナノクレイ材料を含み得る。
【0030】
場合によっては、本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)は、1つ以上の造影剤を含み得る。例えば、本明細書で提供される組成物は、1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むように設計することができる。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、単一種の放射線不透過性造影剤を含み得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、2種以上(例えば、2種、3種、4種、又はそれ以上)の放射線不透過性造影剤を含み得る。本明細書で提供される組成物に含めることができる放射線不透過性造影剤の例には、限定するものではないが、エチオ化油、イオヘキソール、ヨウ素、磁気共鳴造影剤(例えば、ガドビストなどのガドブトロール)、及び、酸化鉄ナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化マグネシウム粒子、タンタル粒子などの金属粒子(例えば、金属ナノ粒子を含むポリマーナノ粒子)が含まれる。
【0031】
本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物)は、任意の量の造影剤(例えば、放射線不透過性造影剤)を含み得る。例えば、本明細書で提供される組成物は、約0%(重量%)~約90%(重量%)の放射線不透過性造影剤(例えば、約0.1重量%~約80重量%、約0.1重量%~約70重量%)、約0.1重量%~約60重量%、約0.1重量%~約50重量%、約0.1重量%~約40重量%、約0.1重量%~約30重量%、約3重量%~約90重量%、約5重量%~約90重量%、約8重量%~約90重量%、約10重量%~約90重量%、約20重量%~約90重量%、約30重量%~約90重量%、約40重量%~約90重量%、約50重量%~約90重量%、約60重量%~約90重量%、約5重量%~約75重量%、約8重量%~約50重量%、約10重量%~約40重量%、約12重量%~約30重量%、約15重量%~約25重量%、約18重量%~約22重量%、約5重量%~約15重量%、約10重量%~約20重量%、約15重量%~約25重量%、約20重量%~約30重量%、約25重量%~約35重量%、約30重量%~約40重量%、又は約35重量%~約45重量%の放射線不透過性造影剤)を含み得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、約18~約22重量%の放射線不透過性造影剤(例えば、約20重量%のエチオ化油)を含み得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、約10~約40重量%の放射線不透過性造影剤(例えば、約25重量%のエチオ化油)を含み得る。
【0032】
本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)が造影剤を含む場合、組成物は、任意の適切な方法を使用して(例えば、哺乳動物内で)可視化することができる。例えば、超音波、コンピュータ断層撮影法、磁気共鳴画像法、及び/又は蛍光透視法などの画像化技術を使用して、1つ以上の造影剤を含む本明細書で提供される組成物を可視化することができる。
【0033】
場合によっては、本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物)は、約0.6重量%のPRF及び約6.6重量%のナノクレイ材料を含み得る。例えば、本明細書で提供される組成物は、約0.6重量%のPRF、約6.6重量%のナノクレイ材料、及び約20重量%のエチオ化油を含み得る。
【0034】
場合によっては、本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物)は、約1.4重量%のPRF及び約6.6重量%のナノクレイ材料を含み得る。例えば、本明細書で提供される組成物は、約1.4重量%のPRF、約6.6重量%のナノクレイ材料、及び約25重量%のエチオ化油を含み得る。
【0035】
場合によっては、本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物)は、約2.4重量%のPRF及び約6.6重量%のナノクレイ材料を含み得る。例えば、本明細書で提供される組成物は、約2.4重量%のPRF、約6.6重量%のナノクレイ材料、及び約25重量%のエチオ化油を含み得る。
【0036】
場合によっては、本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)は生分解性であり得る(例えば、哺乳動物内で生分解し得る)。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)内の血管に送達された組成物の体積は、経時的に減少し得る。場合によっては、哺乳動物(例えば、ヒト)内の血管に送達された組成物の体積は、経時的に少なくとも約25%(例えば、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約75%)減少し得る。場合によっては、哺乳動物(例えば、ヒト)内の血管に送達された組成物の体積は、送達後約14日間減少し得る。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)内の血管に送達された組成物の体積は、送達後約14日間で少なくとも約60%減少し得る。場合によっては、哺乳動物(例えば、ヒト)内の血管に送達された組成物の体積は、送達後約28日間減少し得る。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)内の血管に送達された組成物の体積は、送達後約28日間で少なくとも約75%減少し得る。
【0037】
場合によっては、本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)が哺乳動物(例えば、ヒト)内の血管に送達された後に生分解する場合、生分解された組成物は、線維性組織(例えば、永久線維性組織)に置き換えられ得る。
【0038】
場合によっては、本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)は、シアシニング組成物であり得る。例えば、本明細書で提供される組成物の粘度は、約0.0001 1/秒~約100 1/秒(例えば、約0.0001 1/秒~約80 1/秒、約0.0001 1/秒~約60 1/秒、約0.0001 1/秒~約50 1/秒、約0.0001 1/秒~約40 1/秒、約0.0001 1/秒~約30 1/秒、約0.0001~約20 1/秒、約0.0001 1/秒~約10 1/秒、約0.0001 1/秒~約1 1/秒、約0.001 1/秒~約100 1/秒、約0.01 1/秒~約100 1/秒、約0.1 1/秒~約100 1/秒、約1 1/秒~約100 1/秒、約10 1/秒~約100 1/秒、約20 1/秒~約100 1/秒、約30 1/秒~約100 1/秒、約50 1/秒~約100 1/秒、約70 1/秒~約100 1/秒、約0.001 1/秒~約90 1/秒、約0.01 1/秒~約80 1/秒、約0.1 1/秒~約70 1/秒、約1 1/秒~約60 1/秒、約10 1/秒~約50 1/秒、約20 1/秒~約40 1/秒、約0.0001 1/秒~約1 1/秒、約0.001 1/秒~約10 1/秒、約0.01 1/秒~約20 1/秒、約0.1 1/秒~約30 1/秒、約1 1/秒~約40 1/秒、約10 1/秒~約50 1/秒、約20 1/秒~約60 1/秒、約30 1/秒~約70 1/秒、約40 1/秒~約80 1/秒、又は約50 1/秒~約90 1/秒)のせん断速度の下で減少し得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物の粘度は、約0.01(10-2)1/秒のせん断速度の下で低下し得る。
【0039】
場合によっては、本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)は、血管(例えば、健康な血管)の平均圧力よりも高い置換圧を有する。例えば、本明細書で提供される組成物は、約85kPa~約200kPa(例えば、約85kPa~約175kPa、約85kPa~約150kPa、約85kPa~約125kPa、約85kPa~約100kPa、約100kPa~約200kPa、約125kPa~約200kPa、約150kPa~約200kPa、約175kPa~約200kPa、約100kPa~約175kPa、約125kPa~約150kPa、約85kPa~約125kPa、約100kPa~約150kPa、又は約125kPa~約175kPa)の置換圧を有することができる。
【0040】
場合によっては、本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)は、貯蔵安定性がある(例えば、保存中に分離しない)ものであり得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、任意の温度(例えば、約-20℃、約4℃、約25℃、又は約37℃)で安定であり得る。例えば、本明細書で提供される組成物は、約0.1時間~約12ヶ月間(例えば、約0.1時間~約11ヶ月間、約0.1時間~約10ヶ月間、約0.1時間~約9ヶ月間、約0.1時間~約8ヶ月間、約0.1時間~約7ヶ月間、約0.1時間~約6ヶ月間、約0.1時間~約5ヶ月間、約0.1時間~約4ヶ月間、約0.1時間~約3ヶ月間、約0.1時間~約2ヶ月間、約0.1時間~約1ヶ月間、約0.1時間~約3週間、約0.1時間~約2週間、約0.1時間~約7日間、約0.1時間~約4日間、約0.1時間~約2日間、約0.1時間~約24時間、約0.1時間~約12時間、約0.1時間~約3時間、約2時間~約12ヶ月間、約12時間~約12ヶ月間、約24時間~約12ヶ月間、約5日~約12ヶ月間、約2週間~約12ヶ月間、約3週間~約12ヶ月間、約1ヶ月間~約12ヶ月間、約2ヶ月間~約12ヶ月間、約3ヶ月間~約12ヶ月間、約4ヶ月間~約12ヶ月間、約5ヶ月間~約12ヶ月間、約6ヶ月間~約12ヶ月間、約7ヶ月間~約12ヶ月間、約8ヶ月間~約12ヶ月間、約9ヶ月間~約12ヶ月間、約10ヶ月間~約12ヶ月間、約1時間~約8ヶ月間、約12時間~約6ヶ月間、約24時間~約4ヶ月間、約1週間~約3ヶ月間、約2週間~約2ヶ月間、約1時間~約1週間、約1週間~約1ヶ月間、約2週間~約2ヶ月間、約3週間~約3ヶ月間、約4週間~約4ヶ月間、約5週間~約5ヶ月間、約6週間~約6ヶ月間、約7週間~約7ヶ月間、約8週間~約8ヶ月間、約9週間~約9ヶ月間、又は約10週間~約10ヶ月間)安定であり得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、試験管内で約6ヶ月間(例えば、相分離なく)安定であり得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、(例えば、37℃で)約70日間安定であり得る。
【0041】
本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)は、任意の適切な方法を使用して作製することができる。場合によっては、PRFと1つ以上のナノクレイ材料を最初に混合し、次に1つ以上の放射線不透過性造影剤を加えることができる。本明細書で提供される組成物を作成するための、PRF、1つ以上のナノクレイ材料、及び任意選択で1つ以上の放射線不透過性造影剤の混合(例えば、均一混合)には、例えば、遠心混合、ボルテックス混合、スピードミキサー混合、及び/又は手動混合を使用することができる。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、実施例1に記載のように作製することができる。
【0042】
本明細書で提供される組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物)は、迅速に作製することができる。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、約60分未満(例えば、約55分未満、約50分未満、約45分未満、約40分未満、約35分未満、約30分未満、約25分未満、又は約20分未満)のうちに調製され得る。例えば、本明細書で提供される組成物は、約25分未満のうちに調製され得る。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、約10分~約24時間(例えば、約10分~約12時間、約10分~約10時間、約10分~約8時間、10分~約1時間、約10分~約45分、約10分~約35分、約10分~約30分、約10分~約25分、約20分~約24時間、約30分~約24時間、約60分~約24時間、約15分~約12時間、約20分~約8時間、約25分~約4時間、約10分~約25分、約15分~約30分、又は約20分~約35分)のうちに調製され得る。
【0043】
本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を使用する方法も本明細書で提供される。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管の塞栓形成のために使用することができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物を、哺乳動物内の1つ以上の血管の塞栓形成のためにその血管に送達することができる。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物を、送達された組成物の断片化を伴わずに塞栓形成に使用することができる。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物を、その組成物の移動を伴わずに塞栓形成に使用することができる。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物は、再疎通率が約35%未満(例えば、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、又は約10%未満)の塞栓形成に使用することができる。
【0044】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達することで、その血管内の血流を減少させ又は排除することができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達することで、その血管内の血流を、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、又はそれ以上のパーセンテージで減少させることができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達することで、その血管内の血流を約1mL/秒未満まで減少させることができる。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物を哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達することで、その血管内の血流を止めることができる。
【0045】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達することで、送達部位で凝固を誘導することができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達することで、約10分未満(例えば、約9分未満、約8分未満、約7分未満、約6分未満、約5分未満、約4分未満、約3分未満、又は約2分未満)のうちに送達部位で凝固を誘導することができる。
【0046】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達することで、送達部位でのコラーゲン沈着を増加させることができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達することで、送達部位でのコラーゲン沈着を、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、又はそれ以上のパーセンテージで増加させることができる。
【0047】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達することで、送達部位での血管形成を増強することができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達することで、送達部位での血管形成を、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、又はそれ以上のパーセンテージで増強することができる。
【0048】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達することで、送達部位での細胞増殖を増強することができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達することで、送達部位での細胞増殖を、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、又はそれ以上のパーセンテージで増強することができる。
【0049】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を、出血性疾患(例えば、凝固障害)を有する哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達することで、その哺乳動物を治療することができる。例えば、本明細書で提供される組成物を、哺乳動物内の1つ以上の腫瘍に栄養を与えている1つ以上の血管に送達することで、出血性疾患に関連する血流を減少させ又は排除することができる。本明細書に記載のように(例えば、PRF及び1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を哺乳動物内の1つ以上の血管に送達することによって)治療できる出血性疾患の例には、限定するものではないが、出血(hemorrhage)(例えば、非外傷性出血及び外傷性出血)、動脈瘤(例えば、破裂動脈瘤、及び嚢状動脈瘤)、血管奇形(例えば、尿道皮膚瘻、動静脈瘻、腸皮膚瘻、及び腸管瘻などの瘻孔)が含まれる。
【0050】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を、1つ以上の腫瘍を有する哺乳動物(例えば、ヒト)の1つ以上の血管に送達することで、その哺乳動物を治療することができる。例えば、本明細書で提供される組成物を、哺乳動物内の1つ以上の腫瘍に栄養を与えている1つ以上の血管に送達することで、腫瘍への血流を減少させ又は排除することができる。場合によっては、腫瘍は悪性腫瘍であり得る。場合によっては、腫瘍は良性腫瘍であり得る。本明細書に記載のように(例えば、PRF及び1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を哺乳動物内の1つ以上の血管に送達することによって)治療することができる腫瘍の例には、限定するものではないが、肝腫瘍、子宮筋腫、良性前立腺肥大症、前立腺腫瘍、腎腫瘍、乳がん腫瘍、黒色腫、胃がん腫瘍、及び膵臓がん腫瘍が含まれる。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物を、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の腫瘍に栄養を与えている1つ以上の血管に送達することで、その腫瘍のサイズ(例えば、体積)を、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、又はそれ以上のパーセンテージで減少させることができる。
【0051】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達した時も、哺乳動物が経験する塞栓形成に関連する合併症を最小限に抑えるか、又はまったくなくすことができる。塞栓形成に関連する合併症の例には、限定するものではないが、血管痙攣、血栓症、解離、及び破裂が含まれる。
【0052】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を哺乳動物(例えば、ヒト)の創傷(例えば皮膚創傷)に投与することで、その哺乳動物内の創傷治癒を加速することができる。例えば、本明細書で提供される組成物を、哺乳動物内の創傷に送達することで、創傷からの血流を減少させ又は排除すること(例えば、創傷部に血塊を形成させること)ができる。創傷は、哺乳動物のあらゆる部分(例えば、哺乳動物の体のあらゆる部分)に影響を与える可能性がある。場合によっては、創傷は皮膚の(cutaneous又はskin)創傷であり得る。本明細書に記載のように(例えば、PRF及び1つ以上のナノクレイ材料を含む組成物を哺乳動物内の1つ以上の血管に送達することによって)治療することができる創傷の例には、限定するものではないが、擦過傷、潰瘍(例えば、慢性下肢潰瘍、糖尿病性足潰瘍、及び静脈性下肢潰瘍)、褥瘡、外科的皮膚創傷、やけど、及び脱毛症が含まれる。例えば、本明細書に記載の組成物を、創傷を有する哺乳動物に投与することで、哺乳動物内の創傷治癒を、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、又はそれ以上のパーセンテージで加速することができる。
【0053】
本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物)は、任意のタイプの哺乳動物内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達することができる。場合によっては、哺乳動物(例えば、ヒト)は抗凝固処理され得る(例えば、1つ以上の抗凝固剤を服用することができる)。場合によっては、哺乳動物(例えば、ヒト)は凝固障害のあるものであり得る(例えば、哺乳動物の血液凝固能力が損なわれている出血性疾患を有するものであり得る)。本明細書で提供される1つ以上の組成物を哺乳動物内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達することができる哺乳動物の例には、限定するものではないが、ヒト、サルなどの非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、マウス、ラット、及びウサギが含まれる。
【0054】
本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達する場合、その組成物は哺乳動物内の任意のタイプの血管に送達することができる。場合によっては、血管は病気の血管であり得る。場合によっては、血管は損傷した血管であり得る。本明細書で提供される組成物を送達することができる血管のタイプの例には、限定するものではないが、動脈、静脈、及び毛細血管が含まれる。本明細書で提供される1つ以上の組成物を動脈に送達する場合、動脈は、腎動脈、肝動脈、脾動脈、大腿動脈、上腕動脈、腸骨動脈、頸動脈、又は脳動脈などの哺乳動物(例えば、ヒト)内の任意の動脈であり得る。
【0055】
本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達する場合、任意の適切な送達方法を使用できる。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物は、血管(例えば、塞栓術を必要とする血管)への直接注入によって、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物は、創傷に直接注入することによって、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の創傷に送達され得る。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物は、カテーテル誘導送達によって(例えば、塞栓術が必要な血管内に挿入されたカテーテルを介して)、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達され得る。本明細書で提供される1つ以上の組成物を、カテーテル誘導送達によって哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達する場合、任意のタイプのカテーテルを使用することができる(例えば、バーンスタイン(Bernstein)カテーテル、マイクロカテーテル、コブラ(Cobra)カテーテル、フォガティー(Fogarty)バルーン、及びプログレート(ProGreat)カテーテル)。本明細書で提供される1つ以上の組成物を、カテーテル誘導送達によって哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達する場合、任意のサイズのカテーテルを使用することができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物は、約1.7フレンチ~約6フレンチ(例えば、約1.7フレンチ~約5フレンチ、約1.7フレンチ~約4フレンチ、約1.7フレンチ~約3フレンチ、約1.7フレンチ~約2フレンチ、約2フレンチ~約6フレンチ、約3フレンチ~約6フレンチ、約4フレンチ~約6フレンチ、約5フレンチ~約6フレンチ、約2フレンチ~約5フレンチ、約3フレンチ~約4フレンチ、約2フレンチ~約4フレンチ、又は約3フレンチ~約5フレンチ)(1フレンチ=1/3mm)のサイズを有するカテーテルを使用して、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達され得る。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物は、約5フレンチ(約1.667mm)のサイズを有するカテーテルを使用して哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。
【0056】
本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に任意の送達速度で送達され得る(例えば、任意の流量で送達され得る)。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に約50μL/分~約5000μL/分(例えば、約50μL/分~約4000μL/分、約50μL/分~約3000μL/分、約50μL/分~約2000μL/分、約50μL/分~約1000μL/分、約50μL/分~約500μL/分、約50μL/分~約400μL/分、約50μL/分~約300μL/分、約50μL/分~~約200μL/分、約50μL/分~約100μL/分、約100μL/分~約5000μL/分、約200μL/分~約5000μL/分、約300μL/分~約5000μL/分、約400μL/分~約5000μL/分、約500μL/分~約5000μL/分、約600μL/分~約5000μL/分、約700μL/分~約5000μL/分、約800μL/分~約5000μL/分、約900μL/分~約5000μL/分、約1000μL/分~約5000μL/分、約2000μL/分~約5000μL/分、約3000μL/分~約5000μL/分、約4000μL/分~約5000μL/分、約100μL/分~約4000μL/分、約200μL/分~約3000μL/分、約300μL/分~約2000μL/分、約400μL/分~約1000μL/分、約500μL/分~約750μL/分、約50μL/分~約500μL/分、約100μL/分~約600μL/分、約200μL/分~約700μL/分、約300μL/分~約800μL/分、約400μL/分~約900μL/分、約500μL/分~約1000μL/分、約600μL/分~約2000μL/分、約700μL/分~約3000μL/分、又は約800μL/分~約4000μL/分)の量で送達され得る。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に約300μL/分の量で送達され得る。
【0057】
本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)の任意の量が、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達され得る。例えば、約1cc~約10cc(例えば、約1cc~約9cc、約1cc~約8cc、約1cc~約7cc、約1cc~約6cc、約1cc~約5cc、約1cc~約4cc、約1cc~約3cc、約1cc~約2cc、約2cc~約10cc、約3cc~約10cc、約4cc~約10cc、約5cc~約10cc、約6cc~約10cc、約7cc~約10cc、約8cc~約10cc、約9cc~約10cc、約2cc~約9cc、約3cc~約8cc、約4cc~約7cc、約5cc~約6cc、約1cc~約3cc、約2cc~約4cc、約3cc~約5cc、約4cc~約6cc、約5cc~約7cc、約6cc~約8cc、又は約7cc~約9cc)の本明細書で提供される1つ以上の組成物が、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管及び/又は1つ以上の創傷に送達され得る。
【0058】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)を哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管の塞栓形成に使用した後、その組成物はその血管から回収され得る。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物を、血管の塞栓形成のために哺乳動物内の1つ以上の血管に送達した後、その血管を通る血流を増加(例えば、回復)させるためにその組成物は回収され得る。任意の適切な方法を使用して、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管から本明細書で提供される1つ以上の組成物を回収することができる。哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管から本明細書で提供される1つ以上の組成物を回収するために、例えば、吸引カテーテル及び外科的除去を使用することができる。
【0059】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)は、塞栓術に使用される唯一の活性剤として、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。
【0060】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)は、塞栓術に使用される1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物は、固体塞栓物質(例えば、コイル、粒子、フォーム、プラグ、ミクロスフェア、及び/又はビーズ)及び/又は液体塞栓材料(例えば、シアノアクリル酸ブチル(n-BCA)、及びOnyx(登録商標))と組み合わせて、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。
【0061】
本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含むBEM組成物)が、塞栓術に使用される追加の薬剤と組み合わせて使用される場合、その塞栓術に使用される1つ以上の追加の薬剤は、同時に(例えば、同じ組成物で、又は別々の組成物で)又は独立して投与され得る。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物を最初に投与し、塞栓術に使用される1つ以上の追加の薬剤を2番目に投与することができ、又はその逆も可能である。
【0062】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の創傷に、創傷治癒に使用される唯一の活性剤として送達され得る。
【0063】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の創傷に、創傷治癒に使用される1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて送達され得る。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物は、抗菌剤(例えば、抗生物質、抗真菌剤、及び防腐剤)、組換え増殖因子、免疫療法、化学療法、及び/又はナノ粒子療法と組み合わせて、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の創傷に送達され得る。
【0064】
本明細書で提供される1つ以上の組成物(例えば、PRF(及び/又は白血球-PRF)及び1つ以上のナノクレイ材料を含有するBEM組成物)が、創傷治癒に使用される追加の薬剤と組み合わせて使用される場合、その創傷治癒に使用される1つ以上の追加の薬剤は、同時に(例えば、同じ組成物で、又は別々の組成物で)又は独立して投与され得る。例えば、本明細書で提供される1つ以上の組成物を最初に投与し、創傷治癒に使用される1つ以上の追加の薬剤を2番目に投与することができ、又はその逆も可能である。
【0065】
本発明は、以下の実施例でさらに説明されるが、これらは特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
実施例
実施例1:カテーテル誘導動脈塞栓術のための血液由来バイオマテリアル
この実施例は、凝固障害に関係なく即時かつ持続的な止血を達成するために迅速な調製及び臨床カテーテルを使用した送達が可能な、再生特性を有する血液由来塞栓物質(BEM)の開発について説明する(図1)。BEMは、現在使用されている塞栓材料に比べて大きな利点があり、塞栓術のための有望な新しいツールとなっている。
【0066】
BEMを作成するために、ブタ全血の新たに採取したアリコートから多血小板フィブリン(PRF)画分を単離した。この淡黄色のゲル状の物質には、重合したフィブリンメッシュ、成長因子、及び血小板が含まれており、抗菌性や再生特性など、塞栓剤に適したいくつかの特徴がある(Dohan et al.,Oral Surg.Oral Med.Oral Pathol.Oral Radiol.Endod.101:e37(2006))。PRFをさらに処理して、凍結乾燥PRF(L-PRF)を調製した(図1及び図8)。このバージョンでは、後でBEMを作成するためにL-PRFを4℃で保存できる。L-PRFとPRFのSDS-PAGEは類似しており、凍結乾燥プロセス中の分解の有意な証拠はなかった(図9A)。さらに、L-PRF及び新たに調製されたPRFにおいて、選択された成長因子の完全性が維持されていることが、イムノブロッティング及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)実験によって実証された(図9B~9D)。VEGF-Aの検出レベルには多少のばらつきが見られた。これは、各ブタのPRF組成の通常のばらつきを表している可能性がある(図9D)。PRF及びL-PRFにおけるこれらの成長因子の生物学的活性を実証するために、L-929マウス線維芽細胞を使用して細胞遊走及び増殖アッセイを実施した。PRF及びL-PRFの両方が、有意に増強された細胞増殖(p<0.0001)及び遊走(PRF;p<0.05、L-PRF;p<0.01)を示した(図9E~9G)。これは、L-PRF及びPRFベースのBEMが適切な生物活性を提供することで、動脈塞栓術後の線維炎症反応を促進し、再疎通を回避する耐久性のある閉塞を作成できることを示唆している。
【0067】
次に、L-PRFを臨床用カテーテルから注入できるようにするために、L-PRFをLaponite(登録商標)ナノクレイ(NC)と組み合わせてシアシニングBEMを開発した。NCは、注入性に有利な抗菌特性及びシアシニング特性を有することができる(Rawat et al.Appl.Biochem.Biotechnol.,174:936(2014);Gaharwar et al.,ACS Nano.,8:9833(2014);及びAvery et al.,Sci.Transl.Med.,8:365ral56(2016))。NCは、表面に負電荷、縁に沿って正電荷を持つナノサイズのケイ酸塩ディスクを含むことができ、これはPRFタンパク質(すなわち、フィブリン)とのイオン相互作用を形成するのに役立つ。走査型電子顕微鏡(SEM)では、BEMは多孔質の微細構造を示した(図2A及び図10)。
【0068】
L-PRFとNCとの間の相互作用を調査するために、NC含有量を6.6重量%で一定に保ちながら、様々な量のL-PRF(7.2重量%、8重量%、及び9重量%の全固形分)を使用して3種類のBEM製剤を製造した(表1)。せん断速度の増加に伴う粘度の低下は、NC及びBEMのシアシニング性能が、3つの製剤すべてで経カテーテル注入性に有利であることを示唆した(図2B)。さらに、3種類のBEMは、低ひずみ及び高ひずみを交互に繰り返すサイクルにおいて優れた回復性を示し、これは振動の履歴によらない迅速なネットワークの崩壊と再構成の性能を示している(図2C)。L-PRFをNCに追加すると、BEMの安定性の指標である貯蔵弾性率G’が有意に向上した。さらに、弾性率がNCゲル単独(4097±118Pa)と比較して、9重量%BEMで3倍(12562±475Pa)に増加したことが観察された(図2D)。カテーテル送達のための優れた機械的特性及び安定性を備える高L-PRF含有量のBEM(9重量%)を、さらなる研究のために選択した。
【0069】
【表1】
【0070】
処置中の非標的塞栓形成を避けるために、BEMが動脈内のカテーテルの先端を出るときにリアルタイムでBEMを観察することができる。可視化を可能にするために、X線ベースのイメージングモダリティ、すなわちコンピュータ断層撮影(CT)及び蛍光透視法において臨床で使用される一般的な造影剤であるエチオ化油をBEMと混合した。市販のエチオ化油をNC及びL-PRFと混合して、エチオ化油を含むBEM(BEM-EO)を生成した(図11A及び11B)。BEM-EOのその後のレオロジー試験では、優れたG’(39068±575Pa)を有する持続的なシアシニング特性が実証され、これはBEM単独と比較して3倍高かった(図11C及び11D)。
【0071】
次に、医師の体験(例えば、手での注入性能は、使いやすさ、処置時間の短縮、及び処置コストの削減のために重要である)を評価した。圧縮試験では、NC、BEM、及びBEM-EOの最大注入力は、それぞれ23±0.3N、32±0.6N、及び71±0.4Nであると測定され、臨床カテーテルを介した用手注入の実現可能性を示している(図2E)。BEM-EOの強化された弾性率は、in vitro血管閉塞モデルでNC、BEM、又はBEM-EOを置換するのに必要な最大圧力(それぞれ71±7kPa、93±8kPa、及び192±7kPa)を測定することによってさらに確認された。BEM-EOは、通常の収縮期圧よりも約12倍高い置換圧を示し、これは、動脈に注入すると、移動や断片化することなく定位置に留まることを示唆している(図2F及び図11E)。
【0072】
次に、新鮮なPRF、L-PRF、NC、BEM、及びBEM-EOの細胞毒性を、L-929細胞を使用してISO10993-5ガイドラインに従って評価した。試験したPRF含有材料のいずれでも細胞毒性は観察されず、生体適合性が明らかになった(図2G)。放射線不透過性BEM-EOをブタの実験で使用するために選択したため、BEM-EOの無菌性及び止血性能を調査した。動物実験の前に、BEM-EOの調製物をLBブロスと混合し、37℃でインキュベートした。これらは、1日目と7日目に無菌であることを示した(図2H及び図12)。BEM-EOが血液と接触したときの時間依存的弾性率変化を観察するレオメトリーを使用して止血活性を試験した。血液がBEM-EOと接触したとき、血液単独と比較して弾性率の急速な上昇が示された(図2I)。さらに、96ウェルプレートにロードされた血液アリコートは5分で凝固することが示されたが、BEM-EOを含む血液は3分で凝固し始めた。これは、臨床で使用されるコイルと同様である(図2J)。BEM中のエチオ化油の濃度は、X線透視下で最適化された。BEMと混合された25重量%のエチオ化油は、X線ベースのイメージングモダリティの下で追跡を可能にするのに十分な放射線不透過性を生成した(図2K)。塞栓剤の別の望ましい特性は、塞栓剤を回収する性能である。これにより、偶発的な送達に起因する非標的塞栓のレスキューが可能になる。脳卒中の原因となる血栓を除去するためのFDA承認デバイスであるPenumbraアスピレーションカテーテルシステム(Penumbra,Inc.、カリフォルニア州アラメダ)を使用して、BEM-EOを回収できるかどうかを調査した(図2L)。BEM-EOは、送達後に回収可能であることが示された。これは、現在FDAに承認されている塞栓剤では不可能な独自の特性である。
【0073】
NC、BEM、及びBEM-EOの生体適合性及び生分解性プロファイルをさらに評価するために、ラット皮下注射モデルを使用した(図13)。注射後3、14、及び28日目に注入物及び周囲の組織を外植した。組織学的検査により、注射部位に無定形の好酸性と思われるBEM及びBEM-EOが明らかになった(図3図14)。総細胞数の計測のためにH&E染色を使用し、トリクローム染色を使用してコラーゲン沈着を示した。BEM-EO群では、3日目と比較して有意に多い細胞数が14日目(p<0.01)及び28日目(p<0.05)に観察された(図3A及び3B、矢印)。14日目のNCと比較して、BEM-EOにはより多くの細胞も存在した(図3A及び3B、矢印)。さらに、注入物は、細胞浸潤の層(図3C、黒い線)及びコラーゲンの豊富な線維性被膜(図3C、点線)に囲まれていた。14日目の群では、BEM(p<0.05)及びBEM-EO(p<0.001)の両方が、NC群と比較して有意に厚い細胞浸潤の層を有し、これは、L-PRFが増殖効果を有する可能性が高いことを示唆している(図3C及び3D、図14A及び14C、黒い線)。28日目のBEM-EOサンプルは、NCと比較してバイオマテリアル周辺のコラーゲン沈着の増加を表す、より厚いコラーゲンの豊富な線維性被膜も示した(図3C及び3E、点線)。この強化された線維化は、血管内の注入された材料を安定させることで、耐久性のある塞栓形成を達成するとともに長期的に再疎通を防ぐのに有益である。図3F及び3Gに示すように、注入された材料体積の変化を、外植組織の再構成されたマイクロCT画像から測定した。マイクロCT画像で、3日目から28日目までの間に有意な体積減少がBEM(p<0.05)及びBEM-EO(p<0.01)で観察され(図3F及び3G、図14E)、生分解性が明らかになった。すべてのラットからの血液サンプルの分析は、NC、BEM、及びBEM-EOの生体適合性をさらに裏付けた。全血球計算(CBC)調査では、白血球、赤血球、及び血小板の正常なレベルが示された(表2)。
【0074】
【表2】
【0075】
血管新生及び細胞増殖は、軟部組織の治癒に不可欠である。ラット皮下注射モデルにおける増殖細胞核抗原(PCNA)免疫染色は、14日目(p<0.001)及び28日目(p<0.05)で、NCと比較してBEM群で有意に多い数の増殖細胞を示した(図15A及び15B)。組織-注入物界面での血管新生もCD31免疫染色を使用して評価し、NCと比較して28日目にBEM及びBEM-EOサンプルで形成された血管の数が有意に多いことを示した(p<0.01)(図15C及び15D)。これらの発見は、in vitro細胞増殖及び遊走アッセイとも一致しており、これは、BEM-EOが生分解及び線維化を促進する再生反応を誘発できることを示唆している。これらは、動脈内腔の持続的な閉塞の達成に関与する特性である。
【0076】
次に、ブタの動脈塞栓形成の前臨床モデルを使用して、BEM-EOが抗凝固状態(すなわち、活性化凝固時間(ACT)>300秒)で再疎通することなく塞栓形成を達成する性能を試験した。頸動脈への動脈内アクセスに続いて、臨床カテーテルを遠位大動脈に進め、デジタル減算血管造影(DSA)を実施して、ブタ腸骨動脈の正常な動脈解剖学を明らかにした(図4A)。リアルタイム蛍光透視下で、カテーテルの先端を腸骨動脈の中央部に持ってきて、BEM-EOを含む注射器をルアーロックを介してカテーテルに接続し、内腸骨動脈(IIA)に15~20秒間注入した。BEM-EOは、注入中に優れた可視性を示した(図4B)。塞栓術の直後に、遠位大動脈からのDSAを再び実施したところ、腸骨動脈の即時閉塞が示された。断片化、遠位移動、又は非標的塞栓形成の証拠は観察されなかった(図4C)。金属コイルとは対照的に、これらの抗凝固処理されたブタは、BEM-EOが閉塞を達成するのに血栓形成を必要としないことを示した。塞栓術の後、1時間後に4匹のブタを屠殺し、別の4匹のブタを2週間生存させ、全身CT血管造影(CTA)イメージング後に屠殺した。塞栓術の14日後、CTAは、BEM-EOがアーチファクト、断片化、変位又は移動、又はBEM-EO再疎通を伴うことなくIIAにまだ見られることを示した(図4D及び4E)。すべての動物の蛍光透視画像と14日目のブタのCTA調査は、一貫して塞栓術の成功を示した(図16)。
【0077】
さらに、委員会認定の放射線科医によるCTスキャンの所見では、すべての調査で、非標的塞栓形成の証拠がなく、遠位後肢への正常な流れが示された。さらに、脳、肺、肝臓、及び脾臓にリンパ節腫脹や異常所見の証拠はなかった(図17)。屠殺の直前に血液サンプルを採取し、剖検中に塞栓された動脈を採取し、高解像度マイクロCTイメージング及び組織学に供した。採取されたIIAの組織学的評価は、認定された病理学者によって行われた。1時間の非生存群では、綿状の無定形の材料が、最小限の組織反応で動脈管腔をキャスティングするのが見られた(図4F)。2週間の生存群では、動脈管腔はBEM-EOによって完全に閉塞され、これはマクロファージ、筋線維芽細胞、及びフィブリンの豊富な広範な同心性線維炎症反応を伴い、肉芽組織に似ている(図4F)。散在する多核巨細胞、及びマクロファージも脂肪滴と共に観察された(図18)。2つの群間の中膜層の厚さは類似していたが(p>0.05)、2週間の生存群は、内膜・中膜層の弾性繊維の線維化及び崩壊を示した(図4F(黒い矢印)及び4G)。しかし、PCNAの免疫染色は、2週間で非生存群と比較して塞栓されたIIAの細胞増殖の有意な増加(p<0.05)を示した(図4F及び4H)。
【0078】
骨盤内では、血管の流れに、閉塞を回避するのに役立つ広範な冗長性(redundancy)が存在することがよくある。2週間生存群のIV造影CTA画像は、BEM-EOの遠位に造影剤の混濁を示した。これはほぼ確実に側副血流を表しているが、再疎通を完全に排除することはできなかった。再疎通を評価するために、動脈の冗長性のない終末器官の動脈を塞栓した。この場合、腎臓の主腎動脈をBEM-EO塞栓術のために選択した。合計8匹のブタで、処置中に抗凝固状態にして蛍光透視下で主腎動脈を塞栓した。4匹を1時間で屠殺し、別の4匹を塞栓術の2週間後に屠殺した。図4Iは正常な腎血管造影を示す。続いて、BEM-EOをリアルタイム蛍光透視中に5F臨床カテーテルを介して腎動脈に注入した(図4J)。塞栓術の後、DSA画像は、塞栓された腎動脈を通る流れがないことを示した(図4K)。生存群を屠殺にする直前にCTAを再度実施し、再疎通やイメージングアーチファクトのない腎動脈の完全な閉塞が示された(図4L及び4M)。BEM-EOによる腎動脈塞栓術は、すべての動物で問題なく達成された(図19)。これと一致して、CTA調査は、2週間で塞栓された腎臓の造影増強の証拠がないことを示し、これは再疎通が観察されなかったことを明確に示している(図19)。塞栓された腎臓及び反対側の正常な腎臓の両方を採取し、高解像度のマイクロCTイメージング及び組織学によって評価した。マイクロCT画像は、BEM-EOによる腎動脈の完全な充填を示した(図4N及び4O)。組織学的には、非生存群の腎実質は依然として生存していた。BEM-EOは、腎門動脈及び分節動脈に見られた(図20A~20D)。2週間の生存群では、閉塞した腎門及び分節動脈における線維炎症反応を伴う腎実質における均一な虚血が再び認められた(図20E~20H)。これらの変化は、未処理の腎臓と比較して塞栓された腎臓の体積の2週間での有意な損失(p<0.05)と一致し、腎動脈の塞栓術が成功したことを示している(図4P)。
【0079】
BEM-EO塞栓術の全身性副作用を評価するために、各ブタの塞栓術の前後に血液サンプルを採取した。全血球計算(CBC)、基礎代謝パネル(BMP)、肝機能検査(LFT)、及びタンパク質アレイを使用したサイトカインレベルは、目立たない正常範囲内の値を示した(表3)。2週間で、腎動脈塞栓術を受けたコホートでクレアチニンレベルの増加が観察されたことで、BEM-EOによる塞栓術が成功したときに期待される機能的結果が示された。
【0080】
【表3】
【0081】
塞栓された腸骨動脈セグメントのさらなるマイクロCT分析では、1時間の非生存群は、冠状及び体軸方向の両方の画像でBEM-EOによる動脈管腔の完全な充填を示した。対応するH&E画像は、動脈管腔の均一な充填を示した(図5A)。しかし、2週間の生存群は、冠状画像でより不均一な外観を示した。これは、時間の経過とともに劣化したBEM-EOが線維組織に置き換えられたことを示唆している。体軸方向CT画像及び対応するH&E画像は、BEM-EOに対する特徴的な同心円状の線維炎症反応を示している(図5A)。生存群における2週間にわたるBEM-EOの分解プロファイルを決定するために、広範な画像解析を実施することで、周囲の結合組織から動脈内のBEM-EOをセグメント化した。これらのデータは、BEM-EOの63%以上が2週間で生分解されたことを明らかにした(図5B)。BEM-EO組成の安定性を評価するために、サンプルをチューブに入れて37℃で保存し、0、3、7、14、及び70日目にマイクロCTを使用して高解像度で連続的に画像化した(図5C)。マイクロCT画像内の低密度病巣の計数及びチューブ全体のハンスフィールド単位測定を含む、これらのチューブの広範な画像分析を実施した。これらのデータは、経時的にチューブ間に有意差がないことを示した。これは、BEM-EOが安定しており、成分の相分離が起こらなかったことを示唆している(図5D及び5E)。
【0082】
次に、応急又は緊急の塞栓処置のためにポイントオブケアで調製できるバージョンのBEM-EOを導入した。同じブタの全血を700rpmで3分間遠心分離して、増殖因子、細胞、及びタンパク質にも富んだ液体形態のPRFを生成した(図6A)。この液体バージョンのPRFを、直ちにNC及びエチオ化油と混合し、ポイントオブケアバージョンのBEMすなわちpocBEMを生成した。採血からローディングまでの使用準備済みpocBEMシリンジを調製するプロセスには、26±0.7分かかった(n=5)。異なるブタ(n=5)から調製されたpocBEMは、粘度プロファイルが類似しており、これは一貫したシアシニング特性を示している(図6B)。pocBEMにはまた、優れた弾性率(15685±434Pa)及び回復性があることが明らかになった。これらは、塞栓物質の動脈内での移動又は断片化を抑制する安定性に関与する(図6C及び6D)。5フレンチ(1.667mm)臨床カテーテルを介してpocBEMを注入するために必要な最大注入力は、30±1.5N(n=5)であると測定され、これは用手注入の実現可能性を示している(図6E)。さらに、pocBEMsの調製プロセスは、1週間細菌の増殖がなく無菌であることが示された(図6F)。さらに、pocBEMの止血性能を試験した。血液単独と比較して、pocBEMと接触した血液はより速く凝固した。これはレオロジー研究でも裏付けられた(図6G及び6H)。最後に、pocBEMのSEM画像及びH&E染色は、pocBEMにおけるフィブリンの束及び血小板の存在を明らかにした(図21)。
【0083】
調製後、pocBEMを注射器に詰め、同じブタに注射した。8匹のブタの腸骨動脈と4匹のブタの腎動脈が、pocBEMを使用して正常に塞栓された。塞栓術中、pocBEMは蛍光透視下でリアルタイムに視認でき(図22A)、即時の止血を達成し、その後のDSAは塞栓された動脈に流れがないことを示した(図7A~7C)。ブタは、塞栓術後1時間で安楽死させた。すべての塞栓動脈を、マイクロCT及び組織学的評価のために採取した。マイクロCTでは、pocBEMは腸骨動脈の管腔を完全に閉塞した(図7D及び図22B及び22C)。組織学画像では、pocBEMは無定形の血管内物質として現れた(図22D及び22E)。さらに、pocBEMを臨床的に使用される塞栓剤と比較するために、IIAのコイル塞栓術を実施した(図7E及び7F)。抗凝固状態の血管内コイルによる塞栓術の失敗の後、コイル塊に1~2ccのpocBEMを送達すると、失敗したコイルを助ける即時止血を達成することができた(図7G)。さらに、図7Hは、偶発的なpocBEMの非標的送達の場合、Penumbra吸引カテーテルシステムを使用してpocBEMを回収することで血流を回復できることを示している。高解像度マイクロCTでは、図7Hから採取された腸骨動脈は、コイルによって引き起こされた広範なストリークアーチファクトを示し、残留pocBEMの証拠はないため、pocBEMがLIIAから正常に吸引されたことを示唆している(図7I)。
【0084】
次に、pocBEMを使用して腎動脈塞栓術を実施し、その後のDSA画像は腎臓への血流の完全な停止を示した(図22F及び22G)。しかし、腎動脈のコイル塞栓術は止血に失敗した。一方、腎動脈のコイル塊への1~2ccのpocBEM送達により、即時止血を達成することができた(図7J及び7K)。塞栓された腎臓の採取に続いて、高解像度マイクロCTイメージングを行った。pocBEM単独で塞栓された腎臓は、イメージングアーチファクトを引き起こすことなく、主腎動脈及び分節枝の均一な充填を示した(図22H)。組織学では、pocBEMは、塞栓された腎臓の腎門動脈枝及び分節動脈枝に存在していた(図22I)。コイルとpocBEMの両方を受けた腎動脈のマイクロCTイメージングでは、コイルからの有意なストリークアーチファクトと、腎動脈のpocBEMで塞栓されたセグメントの均一なキャスティングが再び示された(図7L)。
【0085】
まとめると、これらの結果は、BEMが強化された局所細胞増殖を誘発し、血管分布を促進し、生分解を促進できることを示している。これらの結果は、線維炎症反応が長期の閉塞を維持し、再疎通及び断片化を抑制できることも示している。
【0086】
実験の部
多血小板フィブリン(PRF)及び凍結乾燥PRF(L-PRF)の調製:
PRF及びL-PRFを生成するために、健康な成体のヨークシャー種のブタから血液サンプルを採取した。典型的な調製では、10mLの全血を無添加のガラス製血液チューブ(BDバキュテイナ(登録商標)、BD、米国ニュージャージー州フランクリンレイクス)に採取した後、直ちに室温で2700rpmで12分間遠心分離した。遠心分離後、血液は、淡黄色の上層のPRFと、チューブの底にある赤色の血液が豊富な塊とを含む2つの異なる相に分離した。上層のPRF層を注意深く収集し、-80℃で凍結し、24時間凍結乾燥して(Labconco FreeZone、米国カンザスシティ)、L-PRFを得た。
【0087】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDSPAGE):
ゲル電気泳動を行うことで、タンパク質抽出バッファーに可溶化されたL-PRFを、還元条件下で8~16%ポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad Laboratories、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して分画した。各サンプルの総タンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して測定し、20μgの総タンパク質を各ウェルにロードした。Precision Plus Protein(商標)Dual Color Standards(Bio-Rad Laboratories、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して、タンパク質画分の分子量を特定した。ゲルを100ボルトで1時間分離した後、クーマシーブルーR-250染色(Imperial(商標)タンパク質染色、Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を行った。ゲルとタンパク質を、100Vで1時間の電気泳動によって分離した。ゲルを、Amersham imager 680(Global Life Sciences Solutions USA LLC、米国マサチューセッツ州)を使用して画像化した。サンプルはトリプリケートで試験した。
【0088】
ウェスタンブロッティング:
VEGF-A、PDGF-B、及びTGF-βタンパク質を、ウェスタンブロッティングを使用して検出した。PRF及びL-PRFサンプルを、Tris-グリシン-SDSバッファー(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールスバッド)中の8~16%ポリアクリルアミドゲル(Bio-RadLaboratories、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)にロードし、還元条件下で100Vで1時間泳動した。タンパク質をニトロセルロース膜(Bio-Rad Laboratories、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)に転写した後、PBS中の5%BSA溶液で4℃で一晩ブロッキングした。次いで膜をVEGF特異的抗体(Abcam;ab53465;1:1000)、PDGF特異的抗体(Abcam;ab3404;1:1000)又はTGF-β特異的抗体(Abcam;ab92486;1:1000)と共に室温で1時間インキュベートした後、それぞれのHRP結合二次抗体(PDGFにはab97110、TGF-β及びVEGFにはab97051)と共に室温で1時間インキュベートした。各インキュベーション期間の後、1%tween(登録商標)20を添加したPBSで膜を10分間、3回洗浄した。Supersignal westfemto最大感度試薬基質(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州)のアリコートと共に膜をインキュベートすることにより、特定のタンパク質バンドを可視化した。各成長因子について、3回の独立したウェスタンブロッティング実験を実施した。
【0089】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA):
L-PRF調製物を無血清DMEM培地1mLあたり6mgで37℃で1時間可溶化し、次いで500×gで1分間遠心分離した後、分析まで-80℃で保存した。ELISAキットを製造元の指示に従い使用して、L-PRF抽出物を、VEGF-A(RAB1135-1KT、Sigma-Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)及びPDGF-B(Porcine PDGF-BB ELISA、RayBiotech、米国ジョージア州)のタンパク質レベルについて分析した。
【0090】
細胞培養:
L929細胞を、American Type Culture Collection(ATCC、米国バージニア州マナサス)から入手し、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した最小必須培地(MEM)で培養した。加湿した5%CO中、37℃でインキュベートした。
【0091】
抽出物調製:
PRF及びL-PRFを、抗生物質を添加した無血清MEM中、37℃のウォーターバス内で72時間インキュベートした。5000rpmで15分間遠心分離することにより、細胞及びデブリのない抽出物を回収した。
【0092】
細胞増殖:
L929細胞の増殖を、WST-1アッセイ(Cayman chemicals、米国ミシガン州アナーバー)で評価した。細胞を96ウェルプレートに2000細胞/ウェルの密度で播種し、24時間インキュベートした。細胞培地を低血清(0.5%FBS)MEMに24時間交換して、増殖停止を誘導した。次に、細胞をPRF抽出物とともに最大3日間インキュベートした。細胞生存率を、処理後1日目と3日目に評価した。実験は6レプリケートで行い、独立して3回繰り返した。
【0093】
細胞遊走:
細胞をセルトラッカーグリーン(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールスバッド)で蛍光標識し、1チャンバーあたり20,000個の細胞密度でプレーティングし(Ibidi USA Inc.、米国ウィスコンシン州フィッツバーグ)、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した最小必須培地(MEM)で、加湿した5%COの37℃のチャンバーで24時間インキュベートした。次いで、インサートを取り出して蛍光標識細胞の単層を作成し、無細胞創傷領域を露出させた。次いで、細胞を温PBSで洗浄し、PRF又はL-PRF抽出物又は無血清培地(陰性対照)、又は完全増殖培地(陽性対照)で処理した。細胞遊走を、24時間のインキュベーション後に評価した。蛍光画像を、処理後0時間及び24時間で撮影した。創傷領域内の遊走細胞を、ImageJソフトウェア(国立衛生研究所、米国メリーランド州ベセスダ)を使用して計数した。データは、陰性対照に対する細胞遊走の倍数変化として計算された。3回の独立した遊走実験を行った。
【0094】
血液由来塞栓物質(BEM)の調製:
BEMを、ナノクレイとL-PRFを所定の比率で混合することによって調製した(表1)。スピードミキサー(FlackTek,Inc.、米国サウスカロライナ州ランドラム)を使用して、Laponite(登録商標)粉末(BYK Additives Ltd.)を氷冷超純水中で混合することにより、ナノクレイ(NC)(9%w/v)を最初に調製した。次に、L-PRFをNCに追加することで、様々なBEM製剤を生成した(表1)。例えば、9重量%BEMを、250mgの凍結乾燥PRFと2.5gの水を7.5gの9%(w/v)NCに加え、続いてスピードミキサーで混合して均質化することによって調製した。最終的な9重量%のBEMには、6.6重量%のNC及び2.4重量%のL-PRFが含まれていた。他のBEMを、同様のプロトコルを使用して調製した。ゲルを放射線不透過性にするために、エチオ化油造影剤(Lipiodol(登録商標)Ultrafluide、Laboratoire Guerbet、仏国オーネー=スー=ボア)をBEMと混合し、すべての固体成分の重量を一定に保ち、25重量%の最終濃度のエチオ化油を含むBEM-エチオ化油(BEM-EO)製剤を作成した。
【0095】
ポイントオブケアBEM(pocBEM)の調製:
ポイントオブケア用のpocBEMを作成するために、迅速な調製プロトコルを開発した。このプロセスでは、10mLの全血をガラス管に採取し、直ちに室温で700rpmで3分間遠心分離して、注射用多血小板フィブリン(I-PRF)の上相を生成した。上相(I-PRF)を注射器に吸引し、重量を量った。5グラムの注射用PRFを、スピードミキサーを使用して9%(w/v)NC(15g)及びエチオ化油(20重量%)と直ちに混合し、pocBEM組成物を生成した。このプロセスは、ブタからpocBEMを生成し、その後、同じ動物から得られた血液アリコートに由来する塞栓剤を使用して腸骨動脈又は腎動脈の血管内塞栓術をタイムリーに行うことの実現可能性及び適用性を調査するために(n=5)時間調整された。
【0096】
NC、BEM、及びpocBEMのレオロジー評価:
NC、BEM、及びpocBEMのレオロジー試験を、回転レオメータ(MCR302、Anton Paar、オーストリア)を使用して実施した。すべてのレオロジー測定は、25mmのサンドブラスト処理した上部プレートを用いて行った。上部プレートと底部プレート(これもサンドブラスト処理した)との間の隙間は0.8mmに維持した。各試験では、温度を37℃で5分間平衡化してから測定を行った。試験中、溶媒トラップを使用し、溶媒トラップの端を水で満たすことで、材料の乾燥を防ぐための加湿環境を提供した。流動曲線は、10-3/s及び100/sのせん断速度範囲を使用して実行された。大振幅振動掃引(Large amplitude oscillation sweeps:LAOS)を、すべての材料に対して10rad/sの固定角周波数で行った。構造分解中の材料の回復性及び時間の関数としての回復を調査するために、チキソトロピー試験を行った。ひずみは、10rad/sで、2.5分間0.1%の低振幅と1分間の100%の高振幅の間で振動させた。各タイプの試験はトリプリケートで行った。
【0097】
走査型電子顕微鏡(SEM):
SEMを実施して、凍結乾燥後のNC、BEM、及びpocBEMの微細構造を調査した。凍結乾燥した標本を、スパッタコーター(LEICA EM ACE200、独国ヴェッツラー)を使用して6nmの金/パラジウム層でコーティングした後、SEMイメージング(JCM-6000PLUS、JEOL Ltd.、米国マサチューセッツ州ピーボディ)を行った。
【0098】
注入力:
材料のカテーテル注入性を、圧縮試験(Instron5942、Instron Corp.、米国マサチューセッツ州ノーウッド)を使用して注入力を測定することにより評価した。材料を1mL Medallion(登録商標)シリンジ(Merit Medical Systems,Inc.、米国ユタ州サウスジョーダン)に装填し、材料を、100cmの5F(1.667mm)カテーテル(Cook Medical、米国インディアナ州ブルーミントン)に300μL/分の流量で押し込むのに必要な力を、システムソフトウェア(Bluehill3、Instron Corp.、米国マサチューセッツ州ノーウッド)を使用して記録した。各サンプルを3回試験した。注入プロセス中の最大の力を分析し、まとめた。
【0099】
ex vivo閉塞変位試験:
NC、BEM、BEM-EO組成物が静水圧に耐える性能を、閉塞-変位試験を使用して評価した。簡潔に述べると、血管の塞栓形成を模倣するために、1mLの材料をチューブに入れた。PBSを70mL/分の一定流量で注入し(GenieTouch(商標)シリンジポンプシステム、Kent Scientific Corportaion、米国コネチカット州)、材料を変位させた。材料の変位中の圧力を、材料の上流と下流に接続された圧力センサ(Omega、PX409、米国コネチカット州)を使用して記録した。各材料に対して3回の試験を行い、記録された最大圧力をまとめた。
【0100】
無菌試験:
ゲルの無菌性を評価するために、BEM-EO及びpocBEM抽出物のアリコートを、オービタルシェーカーを使用して37℃、180RPMで24時間又は1週間、LBブロスに可溶化した。陽性対照として、大腸菌(E.coli)とのLBブロスの接種を使用した。各LB溶液の200μLアリコートの光学密度を、マイクロプレートリーダー(SpectraMax iD5、Molecular Devices,LLC.、米国カリフォルニア州)を使用して600nmで測定した。さらに、ミューラーヒントン寒天プレート(Thermo Scientific Remel Mueller Hinton Agar、R454082、米国マサチューセッツ州)を使用して、1週間のインキュベーション後の各アリコートの細菌増殖の評価をさらに除外した。接種後、寒天プレートを37℃で24時間インキュベートした。
【0101】
細胞毒性:
すべてのバイオマテリアルの細胞毒性を、国際標準(ISO10993)プロトコルに従い、WST-1アッセイ(Caymen chemicals、米国ミシガン州アナーバー)を使用してL929細胞で評価した。細胞を96ウェルプレートに1ウェル当たり5000細胞の密度で播種し、24時間インキュベートした。次に、細胞を、MEM増殖培地で様々な濃度(100%、50%、25%、12.5%(v/v))に希釈した後のPRF、L-PRF、BEM、及びBEM-EO抽出物で処理した。24時間後、細胞生存率を、WST-1アッセイ(Caymen Chemicals、米国ミシガン州アナーバー)を製造元の指示に従って使用して評価した。3回の独立した実験を、各実験につき4レプリケートで行った。
【0102】
凝固試験:
96ウェルプレートにおけるBEM-EO組成物の止血性能及びレオロジー止血試験を、別の場所に記載されているように行った(Gaharwar et al.,ACS Nano.,8:9833(2014))。血液の時間依存係数変化は、血液アリコートのみを使用するか、pocBEM、又はBEM-EOと接触させて、回転レオメータ(MCR302、Anton Paar、オーストリア)を使用して行われた。
【0103】
in vivoラットモデル:
NC、BEM、及びBEM-EO組成物の4回の皮下注射を、4~5週齢のオスのスプラーグドーリーラット(Charles River Laboratories、マサチューセッツ州ウィルミントン)の背部にイソフルラン麻酔下で行った(図13)。各注射部位は、0.2mLの各バイオマテリアルを受けた。ラットのサブグループを、注射後3、14、又は28日で安楽死させた(1群あたりn=4)。
【0104】
in vivoブタモデル:
実験の前に、ヨークシャー種のブタ(S&S Farms、カリフォルニア州ブレントウード)を順応させるために4日間飼育した。5mg/kgのチレタミン・ゾラゼパム(Telazol、Zoetis、米国ニューハンプシャー州)、2mg/mLのキシラジン、及び0.02mg/kgのグリコピロレートの筋肉内注射を行うことで麻酔を導入した。手術の前に、血管造影台(Pannomed Aeron、DRE、KY)の上でブタを仰向けにして挿管した。処置中、麻酔は1.5~3%イソフルランの吸入で維持され、心電図、経皮オキシヘモグロビン飽和度(SpO)、呼気終末CO濃度、吸気酸素分率、深部体温も監視した。超音波(ACUSON S2000、Siemens、独国)及び蛍光透視(OEC9800 plus C-Arm、GE Healthcare Systems、米国イリノイ州シカゴ)ガイダンスを使用して、頸動脈への経皮的アクセスを、標準の21Gアクセス針と0.018インチ(0.457mm)の硬いガイドワイヤを使用して達成した。このワイヤを0.035Bentsonワイヤに交換し、5フレンチ(1.667mm)の血管シースを留置した。5バーンスタインカテーテル(Cook Medical、米国インディアナ州ブルーミントン)と0.035ガイドワイヤ(Cook Medical、米国インディアナ州ブルーミントン)の組み合わせを使用して、カテーテルの先端を標的動脈に配置した。DSA(350mgI/mL Omnipaque、GE Healthcare、マサチューセッツ州)を用いて位置を確認した。BEM-EO又はpocBEM組成物を含む1mLのMedallion(登録商標)シリンジを、ルアーロックを介してカテーテルに接続し、リアルタイム蛍光透視ガイダンス中に腸骨動脈又は腎動脈に15~20秒かけて注入した。BEM-EO又はpocBEM組成物による塞栓形成後、塞栓動脈への血流を評価するために、複数回の用手注入DSAを実施した。塞栓術後、ブタを塞栓後1時間(非生存群)又は2週間(生存群)のいずれかで安楽死させた。手術の前後に分析のために血液サンプルを採取した。CT血管造影(CTA)スキャンを、生存群の塞栓術の2週間後に行った。BEM-EO又はpocBEMで塞栓された動脈及び腎臓をマイクロCTイメージング及び組織病理学分析のために採取した。
【0105】
全血球計算(CBC)及び血液生化学:
獣医用血液分析装置(HemaTrue、Heska、米国コロラド州ラブランド)を使用してCBCを分析した。生化学は、Veterinary Chemistry Analyzer(DRI-CHEM 4000、Heska、米国コロラド州ラブランド)によって行った。測定されたCBC及び生化学値を、ブタの全体的な健康状態を評価するために使用した。また、記載されているように、ラットに対してCBCを実施した。ブタの血清サンプルを、ブタのサイトカインアレイ13-plex(Eve Technologies、米国カリフォルニア州カルガリー)を使用して分析した。
【0106】
コンピューター断層撮影血管造影(CTA):
デュアルエナジーCTスキャナ(Siemens Force、Siemens、独国エルランゲン)を使用して、ブタの全身イメージングを行った。CTスキャン中、120mLのIV造影剤(Omnipaque 350mgI/mL、GE Healthcare、米国マサチューセッツ州)の注入の前後に、標準的なシンカットCT血管造影を行った。CTスキャンは、0.6mmの検出器サイズ構成で80kVp~150kVpのエネルギーレベルで行った。CTスキャンに続いて、3D再構成、ボリュメトリック研究、及び画像解釈、ならびに、画像判読を、Visage7.11PACSシステム(Visage Imaging Inc.、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して行った。
【0107】
組織学調査:
組織サンプルをパラフィンブロックに埋め込んだ。4μmの切片をH&E、マッソントリクローム、及びEVG弾性染色で染色し、PCNA(ab92552、Abcam、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)及びCD31(ab182981)の免疫染色を行った。ImageJソフトウェア(国立衛生研究所)を使用して、皮下注射された皮膚組織の総細胞数を含む、組織学スライドの形態計測分析を実施し、各組織切片でランダムに選択された測定面積0.1mmの8つの視野で、PCNA陽性細胞の数をカウントした。線維性被膜の厚さと細胞浸潤の厚さを、マッソントリクローム染色切片で測定した。各注入部位の表皮側で、サンプルごとに12カ所のランダムな位置を選択して、線バイオマテリアル注入後に形成された維性被膜の厚さと細胞浸潤層の厚さを測定した。皮下注射領域の周囲の血管の数を、サンプルごとにランダムに選択された8つの高倍率視野(倍率400倍)で手動でカウントした。
【0108】
マイクロCTイメージング:
Skyscan1276(Bruker、ベルギー、コンティフ)を使用して、マイクロCTイメージングを実施した。スキャンパラメータは、腎臓サンプルでは55kV、200μA、0.5mmアルミニウム(Al)フィルターを使用した80μmの解像度、及び0.8°の回転ステップであった。腸骨動脈サンプルには、45kV、200μAエネルギーレベル、0.25Alフィルターを使用した20μmの解像度、及び0.4°回転ステップのスキャンパラメータを使用した。BEM-EO充填気密チューブは、50kV、200μAエネルギーレベル、Al0.25mmフィルターでの20μmの解像度、及び0.6°回転ステップでスキャンした。各スキャンのマイクロCT再構成を、NReconソフトウェア(Bruker、ベルギー、コンティフ)を使用して行った。塞栓された腸骨動脈のBEM-EO体積を、Mimicsセグメンテーションソフトウェア(Materialise、ベルギー、ルーヴェン)を使用して、再構成されたマイクロCT画像を閾値処理することによって計算した。スキャンされたBEM-EO充填エアロックチューブサンプルを、CTanソフトウェア(CTAnalyzer、Bruker、ベルギー、コンティフ)を使用して分析した。
【0109】
統計分析:
特に明記しない限り、すべてのデータは平均±SEMとして報告されている。複数の群間の統計的有意差は、テューキーの事後検定又はダネットの多重比較検定による分散分析(ANOVA)を使用して計算された。スチューデントのt検定を使用して、Prism Software v8(GraphPad、米国カリフォルニア州)を使用して2つの群間の統計的有意差を計算した。p<0.05は有意であると見なされた。
【0110】
実施例2:BEMによる血行動態の不安定性の治療
急性出血におけるpocBEMの値を試験するために、20cmの18G針を使用して、腎臓及び骨盤血管又はブタへの直接損傷を誘発した(図23)。2つの腎臓では、超音波及び蛍光透視ガイダンス下で針を使用して、仮性動脈瘤及び活発な血管外漏出(図23A~23F)を含むかなりの損傷が生じた。その後、動物は血行動態が不安定になり、頻脈及び低血圧になった。これらの動物に直ちにpocBEMが与えられ、止血を達成し、血行動態の安定性を回復させた(図23C及び23F)。別の2匹の動物では、外腸骨動脈の分枝などの骨盤血管に出血性動脈仮性動脈瘤が作成された(図23G~23L)。これらの分枝を、続いて血行動態の安定性を回復するために塞栓した(図23I及び23L)。
【0111】
その他の実施形態
本発明をその詳細な説明に関連して説明してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示することを意図しており、限定することを意図していないことを理解されたい。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲内にある。
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