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特許7642816焙煎コーヒー豆を含む香味発生セグメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】焙煎コーヒー豆を含む香味発生セグメント
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/16 20200101AFI20250303BHJP
   A24D 1/20 20200101ALI20250303BHJP
【FI】
A24B15/16
A24D1/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023531447
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015267
(87)【国際公開番号】W WO2023276378
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2021107775
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】石井 滋
(72)【発明者】
【氏名】永山 萌夏
(72)【発明者】
【氏名】西野 創
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/204038(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/147222(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/075749(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B15/00-15/42
A24D 1/20
A24F40/20
A24F47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎コーヒー豆を含む香味発生セグメントであって、
前記焙煎コーヒー豆が、ふるいを使用して測定された粒径が600~1000μmである焙煎コーヒー豆粉砕物を含む、香味発生セグメント
【請求項2】
前記焙煎コーヒー豆の、JIS Z 8729に従って測定されたL値が16.0以上である、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項3】
前記焙煎コーヒー豆が、浅煎り焙煎コーヒー豆を含む、請求項1または2に記載の香味発生セグメント。
【請求項4】
たばこ材料をさらに含む、請求項1~のいずれかに記載の香味発生セグメント。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の香味発生セグメントを備える、非燃焼香味吸引物品。
【請求項6】
エアロゾル発生セグメントをさらに備え、当該エアロゾル発生セグメントの下流に前記香味発生セグメントを備える、請求項に記載の非燃焼香味吸引物品。
【請求項7】
基材層と金属層とを備える包装材内に封入されている、請求項1~のいずれかに記載の香味発生セグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焙煎コーヒー豆を含む香味発生セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃焼しないタイプの香味吸引物品が開発されている。例えば特許文献1には、発生させたエアロゾルをたばこ材料と接触させ、香味成分を担持させたエアロゾルを吸引するタイプの非燃焼香味吸引物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/075749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、代表的な嗜好品であるコーヒーは世界中で愛飲されている。発明者らは、非燃焼香味吸引物品を用いてコーヒーの香りまたは風味を楽しむことができれば、新たな嗜好品となるという着想を得た。かかる事情に鑑み、本発明はコーヒーの香りまたは風味を楽しめる香味発生セグメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様1
焙煎コーヒー豆を含む香味発生セグメント。
態様2
前記焙煎コーヒー豆が、焙煎コーヒー豆粉砕物を含む、態様1に記載の香味発生セグメント。
態様3
前記焙煎コーヒー豆粉砕物の、ふるいを使用して測定された粒径が200~1000μmである、態様1または2に記載の香味発生セグメント。
態様4
前記焙煎コーヒー豆の、JIS Z 8729に従って測定されたL値が16.0以上である、態様1~3のいずれかに記載の香味発生セグメント。
態様5
前記焙煎コーヒー豆が、浅煎り焙煎コーヒー豆を含む、態様1~4のいずれかに記載の香味発生セグメント。
態様6
たばこ材料をさらに含む、態様1~5のいずれかに記載の香味発生セグメント。
態様7
態様1~6のいずれかに記載の香味発生セグメントを備える、非燃焼香味吸引物品。
態様8
エアロゾル発生セグメントをさらに備え、当該エアロゾル発生セグメントの下流に前記香味発生セグメントを備える、態様7に記載の非燃焼香味吸引物品。
態様9
基材層と金属層とを備える包装材内に封入されている、態様1~8のいずれかに記載の香味発生セグメント。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、コーヒーの香りまたは風味を楽しめる香味発生セグメントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】香味発生セグメントの一態様を示す図
図2】非燃焼香味吸引物品の一態様を示す図
図3】非燃焼香味吸引物品の別態様を示す図
図4】非燃焼加熱型香味吸引システム一態様を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
【0009】
1.香味発生セグメント
香味発生セグメントは、ラッパーやカプセル等の外装材と、この中に充填された充填物として香味発生基材を含む。図1は、香味発生セグメントの一態様であるカプセル1cを示す。天面10と底面12は、気体が通過できるような構造を有し、内部には充填物が存在する。
【0010】
(1)焙煎コーヒー豆
香味発生セグメントは、充填物として焙煎コーヒー豆を含む。本発明において焙煎コーヒー豆とは、好ましくは飲用に適するように焙煎されたコーヒー豆をいう。焙煎コーヒー豆は、焙煎コーヒー豆粉砕物を含むことが好ましく、一態様において焙煎コーヒー豆粉砕物からなる。焙煎コーヒー豆粉砕物とは、焙煎コーヒー豆をミル等によって粉砕して得た粉粒体である。焙煎とは、熱媒体として油や水を使わずに食材を加熱乾燥させることをいう。以下、特に断らない限り、焙煎コーヒー豆を単に「コーヒー豆」ともいう。焙煎は、その程度によって浅煎り、中煎り、深煎りに分類されるが、本発明においてはいずれのものも使用できる。焙煎度はJIS Z 8729に従って測定されたL値で表すことができ、本発明で使用できる焙煎コーヒー豆のL値は、好ましくは16.0以上である。中でも浅煎り焙煎コーヒー豆を用いることが好ましい。蔵置後のオフノート(ムレ臭)の発生を抑制できるからである。浅煎り焙煎コーヒー豆の、JIS Z 8729に従って測定されたL値は、好ましくは24.0以上であり、より好ましくは25.0以上である。
【0011】
コーヒー豆粉砕物の粒径は、好ましくは200~1000μmであり、より好ましくは600~850μmである。当該粒径は公知の方法で測定できるが、本発明においてはふるいを使用して測定すること、またはレーザ回折法によって測定することが好ましい。特にレーザ回折法が好ましく、具体的にはレーザ回折式粒子径分布測定装置を用いることができる。コーヒー豆粉砕物の粒径がこの範囲であると、蔵置後において製品として可能なコーヒーキャラクターを保持しやすい。本発明においてコーヒーキャラクターとは、コーヒーの香りまたは風味をいう。
【0012】
コーヒー豆の量は、前記充填物の乾物重量中、好ましくは50重量%以上、75重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、または100重量%である。その上限は、前記充填物の乾物重量に対して、好ましくは98重量%以下、95重量%以下、または90重量%以下である。本発明において充填物の乾物重量とは、好ましくは前記充填物を100℃で5時間乾燥した際の残留物の重量である。
【0013】
コーヒー豆としては、通常、コーヒー産業分野で使用されているものを使用できる。本発明においては、飲んだ時に知覚できる各コーヒー豆の特徴を、香喫味として味わうことができる。下表にコーヒー豆の一例を示す。
【0014】
【表1】
【0015】
(2)たばこ材料
香味発生セグメントは、前記コーヒー豆に加えて、たばこ材料を含んでいてもよい。たばこ材料とはタバコ属植物に由来する材料である。具体的なたばこ材料としては、乾燥したたばこ葉を刻んだもの、葉たばこ粉砕物、またはたばこ抽出物(水、有機溶媒、またはこれらの混合溶液による抽出物)等が挙げられる。葉たばこ粉砕物は、葉たばこを粉砕することにより得られる粒子である。葉たばこ粉砕物は、例えば、その平均粒径D50を好ましくは30~120μm、より好ましくは50~100μmとすることができる。粉砕は、公知の粉砕機を用いて行うことができ、乾式粉砕でも湿式粉砕でもよい。したがって、葉たばこ粉砕物は葉たばこ粒子とも称される。本発明において平均粒径は、レーザ回折・散乱法により求められ、具体的にはレーザ回折式粒子径分布測定装置(例えば、堀場製作所 LA-950)を用いて測定される。また、葉たばこはNicotiana属に類する、例えば、タバカム、ルスチカなど好適に使用できる。品種などは限定されないが、これらの葉たばこの一つ以上を混合して使用できる。混合物としては、目的とする味となるように前記の各品種を適宜ブレンドしたものを用いることができる。たばこ材料は、充填物に含まれていてもよいし、外装材に含まれていてもよい。例えば、たばこ材料を含むラッパーを用いることで、外装材にたばこ材料を含ませることができる。
【0016】
たばこ材料の量は、前記充填物の乾物重量に対して、好ましくは2重量%以上、5重量%以上、または10重量%以上である。その上限は、前記充填物の乾物重量中、好ましくは10重量%以下、5重量%以下、または2重量%以下である。
【0017】
(3)他の成分
香味発生セグメントは、充填物として公知の添加剤を含んでいてもよい。当該添加物としては香料やエアロゾル生成基材等が挙げられる。また、一般に製品の保存安定性を高める中鎖脂肪酸を他の成分として用いることもできるが、コーヒー以外の香りを発生させて、コーヒーの香りを阻害する場合があるので、中鎖脂肪酸を用いなくてもよい。
【0018】
(4)外装材
香味発生セグメントは、外装材を備える。外装材としては、カプセルが挙げられる。当該カプセルは、側面と底面と天面を有する柱状であることが好ましく、底面と天面は気体が通過できる構造であることが好ましい。一態様において、カプセルの底面と天面には孔が設けられる。カプセルの材質は限定されないが、例えば樹脂製であることが好ましい。カプセルは、当該カプセルの上流にエアロゾル発生源を備える非燃焼香味吸引物品に好適である。
【0019】
また、外装材は、当該分野で使用されるラッパーであってもよい。ラッパーとしては紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。外装材がラッパーである香味発生セグメントは、当該香味発生セグメントを加熱するタイプの非燃焼香味吸引物品に好適である。この場合、充填物はエアロゾル生成基材を含むことが好ましい。
【0020】
エアロゾル生成基材の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質またはそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル生成基材の具体例としては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の多価アルコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、およびこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0021】
(5)蔵置
香味発生セグメントは、保存時に香味成分が減少することを避けるため、包装材内に封入されて保存されることが好ましい。包装材は、通気性が低い材料で構成されていれば限定されないが、基材層と金属層とを備える包装材を用いることが好ましい。基材層は、ポリプロピレンやポリエステルなどのプラスチックフィルムが好ましい。金属層はアルミニウム箔などの金属箔が好ましい。両者は積層体であり、香味発生セグメントが封入される側に金属層が存在することが好ましい。
【0022】
2.非燃焼香味吸引物品
図2(1)は非燃焼香味吸引物品の好ましい態様を示す。図中、10は非燃焼香味吸引物品、1cは香味発生セグメントであるカプセル、2は霧化部、4はエアロゾル源、40はエアロゾル発生セグメント、5はマウスピース、6は筐体、8は電源である。本態様の非燃焼香味吸引物品は、カプセルを間接的に加熱するので「非燃焼間接加熱型香味吸引物品」とも称される。当該物品は、香味発生セグメントの上流に配置したエアロゾル発生源からエアロゾルを発生させて、当該エアロゾルに香味発生セグメントからの香味成分を担持させて香味を生成する物品である。
【0023】
1)カプセル
カプセル1cは、気体が外部と内部に連通可能であるように封止されている。エアロゾル源4から発生したエアロゾルが当該容器内に導入され、かつ当該容器から吸口端に向かって通過できるように封止されている。このため、好ましくは容器の長手方向の両端部に開口が設けられている。容器内にたばこ材料が充填される場合、当該たばこ材料の形状は限定されないが、顆粒状であることが好ましい。
【0024】
2)エアロゾル源
エアロゾル源4は、前述のエアロゾル生成基材を繊維充填物等の多孔質体に担持させて構成することができる。エアロゾル源4の長さは限定されないが10~25mmであることが好ましい。
【0025】
3)霧化部
霧化部2は電気的にエアロゾル源4を200~300℃程度に加熱できることが好ましい。当該加熱によってエアロゾルが発生し、当該エアロゾルはカプセル1c内に導入され、充填物を30~80℃の雰囲気にしながら通過し、香味成分を担持し、使用者に吸引される。非燃焼香味吸引物品と電源との組合せを非燃焼香味吸引システムともいう。霧化部4は例えばコイルであってよく、図2(2)に示すように電源8から供給される電気によってエアロゾルを発生させることができる。このようなシステムは、例えば、国際公開2016/075749に開示されている。
【0026】
4)マウスピース
マウスピース5はフィルターを備えていてもよい。
5)筐体
筐体6は公知の材料で構成されてよいが、例えばポリマーで構成されていることが好ましい。
【0027】
図3(1)は非燃焼香味吸引物品の好ましい別態様を示す。非燃焼香味吸引物品20は、香味発生セグメント20Aと、周上に穿孔を有する筒状の冷却部20Bと、フィルター部20Cと、を備える。非燃焼香味吸引物品20は、香味発生セグメント20Aを直接加熱するので、「非燃焼直接加熱型香味吸引物品」とも称される。非燃焼香味吸引物品20は、これ以外の部材を有していてもよい。非燃焼香味吸引物品20の軸方向の長さは限定されないが、40~90mmであることが好ましく、50~75mmであることがより好ましく、50~60mm以下であることがさらに好ましい。また、非燃焼香味吸引物品20の周の長さは16~25mmであることが好ましく、20~24mmであることがより好ましく、21~23mmであることがさらに好ましい。例えば、香味発生セグメント20Aの長さは20mm、冷却部20Bの長さは20mm、フィルター部20Cの長さは7mmである態様を挙げることができる。これら個々の部材長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。図3には、第1セグメント25を配置した態様を示すが、これを配置せずに、冷却部20Bの下流側に第2セグメント26のみを配置してもよい。
【0028】
1)香味発生セグメント20A
香味発生セグメント20Aには、充填物21として、コーヒー豆を用いることができる。充填物21を巻紙22内に充填する方法は特に限定されないが、例えばコーヒー豆好ましくはコーヒー豆粉砕物を巻紙22で包んでもよく、筒状の巻紙22内にコーヒー豆好ましくはコーヒー豆粉砕物を充填してもよい。香味発生セグメント20Aが加熱されることにより、充填物21に含まれるコーヒー由来成分、水分、および充填物21にエアロゾル生成基材が含まれる場合はこれが気化し、吸引に供される。
【0029】
2)冷却部20B
冷却部20Bは筒状部材で構成されることが好ましい。筒状部材は例えば厚紙を円筒状に加工した紙管23であってもよい。また、冷却部20Bは、チャネルを形成するために、しわ付けされ、次いでひだ付け、ギャザー付け、または折畳まれた薄い材料のシートによって形成されてもよい。このような材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、酢酸セルロース、およびアルミニウム箔から構成される群から選択されたシート材料を用いることができる。冷却部20Bの全表面積は冷却効率を考慮して適宜調製されるが、例えば、300~1000mm/mmとすることができる。冷却部20Bには、好ましくは穿孔24が設けられる。穿孔24の存在により、吸引時に外気が冷却部20B内に導入される。これにより、香味発生セグメント20Aが加熱されることで生成したエアロゾル気化成分が外気と接触し、その温度が低下するため液化し、エアロゾルが形成される。穿孔24の径(差し渡し長さ)は特に限定されないが、例えば0.5~1.5mmであってもよい。穿孔24の数は特に限定されず、1つでも2つ以上でもよい。例えば穿孔24は冷却部20Bの周上に複数設けられていてもよい。
【0030】
冷却部20Bは、その軸方向の長さが例えば7~28mmのロッド形状とすることができる。例えば、冷却部20Bの軸方向の長さは18mmとすることができる。冷却部20Bは、その軸方向断面形状として実質的に円形であり、直径を5~10mmとすることができる。例えば、冷却部の直径は、約7mmとすることができる。
【0031】
3)フィルター部20C
フィルター部20Cの構成は特に限定されないが、単数または複数の充填層から構成されてよい。充填層の外側は一枚または複数枚の巻紙で巻装されてよい。フィルター部20Cの通気抵抗は、フィルター部20Cに充填されるフィルター充填物の量、材料等により適宜変更することができる。例えば、フィルター充填物が酢酸セルロース繊維である場合、フィルター部20Cに充填される酢酸セルロース繊維の量を増加させれば、通気抵抗を増加させることができる。フィルター充填物が酢酸セルロース繊維である場合、酢酸セルロース繊維の充填密度は0.13~0.18g/cmであることができる。前記通気抵抗は通気抵抗測定器(商品名:SODIMAX、SODIM製)により測定される値である。
【0032】
フィルター部20Cの周の長さは特に限定されないが、16~25mmであることが好ましく、20~24mmであることがより好ましく、21~23mmであることがさらに好ましい。フィルター部20Cの軸方向(図3の水平方向)の長さは4~10mmで選択可能であり、その通気抵抗が15~60mmHO/segとなるように選択される。フィルター部20Cの軸方向の長さは5~9mmが好ましく、6~8mmがより好ましい。フィルター部20Cの断面の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、多角形等であることができる。またフィルター部20Cには香料を含んだ破壊性カプセル、香料ビーズ、香料を直接添加していてもよい。
【0033】
フィルター部20Cは第1セグメント25としてセンターホール部を備えていてもよい。センターホール部は1つまたは複数の中空部を有する第1充填層25aと、当該充填層を覆うインナープラグラッパー(内側巻紙)25bとで構成される。センターホール部は、マウスピース部の強度を高める機能を有する。センターホール部はインナープラグラッパー25bを持たず、熱成型によってその形が保たれていてもよい。フィルター部20Cは第2セグメント26を備えていてもよい。第2セグメント26は第2充填層26aと当該充填層を覆うインナープラグラッパー(内側巻紙)26bとで構成される。第2充填層26aは、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されトリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロース重量に対して、6~20重量%添加されて硬化された内径φ5.0~φ1.0mmのロッドとすることができる。第2充填層は繊維の充填密度が高いため、吸引時は、空気やエアロゾルは中空部のみを流れることになり、第2充填層内はほとんど流れない。センターホール部内部の第二の充填層が繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることが少ない。
【0034】
第1充填層25aと第2充填層26aとはアウタープラグラッパー(外側巻紙)27で接続されている。アウタープラグラッパー27は、例えば円筒状の紙であることができる。また、香味発生セグメント20Aと、冷却部20Bと、接続済みの第1充填層25aと第2充填層26aとは、マウスピースライニングペーパー28により接続されている。これらの接続は、例えばマウスピースライニングペーパー28の内側面に酢酸ビニル系糊等の糊を塗り、前記3つの部材を巻くことで接続することができる。これらの部材は複数のライニングペーパーで複数回に分けて接続されていてもよい。図には、フィルター部20Cを備える態様を示したが、本発明においてはフィルター部20Cを設けないこともできる。
【0035】
非燃焼香味吸引物品とエアロゾルを発生させるための加熱デバイスとの組合せを、特に非燃焼加熱型香味吸引システムともいう。当該システムの一例を図4に示す。図中、非燃焼加熱型香味吸引システムは、非燃焼香味吸引物品20と、香味発生セグメント20Aを外側から加熱する加熱デバイス30とを備える。
【0036】
加熱デバイス30は、ボディ31と、ヒーター32と、金属管33と、電池ユニット34と、制御ユニット35とを備える。ボディ31は筒状の凹部36を有し、これに挿入される香味発生セグメント20Aと対応する位置に、ヒーター32と金属管33が配置されている。ヒーター33は電気抵抗によるヒーターであることができ、温度制御を行う制御ユニット35からの指示により電池ユニット34より電力が供給され、ヒーター32の加熱が行われる。ヒーター32から発せられた熱は、熱伝導度の高い金属管33を通じて香味発生セグメント20Aへ伝えられる。当該図には、加熱デバイス30は香味発生セグメント20Aを外側から加熱する態様を示したが、内側から加熱するものであってもよい。加熱デバイス30による加熱温度は特に限定されないが、400℃以下であることが好ましく、150~400℃であることがより好ましく、200~350℃であることがさらに好ましい。加熱温度とは加熱デバイス30のヒーターの温度を示す。この場合香味発生セグメント20Aは200~350℃程度に加熱される。
【0037】
当該図には、香味発生セグメント20Aを外部から加熱する態様を示したが、香味発生セグメント20Aは内部から加熱されてもよい。例えば、ニードル型またはブレード型のヒーターを香味発生セグメント20Aの内部に挿入して当該セグメントを加熱してもよい。
【実施例
【0038】
[実施例1]
表2に示す市販の焙煎コーヒー豆を準備し、ミル用いて粉砕した。次に、図2に示すような非燃焼加熱型香味吸引物品(プルームテック(登録商標)、日本たばこ産業株式会社製)を準備した。当該製品からたばこカプセルを取出し、当該カプセル内に充填されているたばこ顆粒を前記コーヒー豆粉砕物に置換した。前記コーヒー豆粉砕物が充填されたカプセルを前記非燃焼加熱型香味吸引物品に収納し、十分に訓練されたパネリストによる喫煙試験に供した。結果を表2に示した。飲料として飲んだ際のコーヒー豆の特徴が、非燃焼加熱型香味吸引物品の喫煙によっても再現できることが確認された。
【0039】
【表2】
【0040】
[実施例2]
コロンビア産のアラビカ種コーヒー豆粉砕物について、焙煎度を変えたもの(浅煎りL値24、深煎りL値16、中煎りL値20)を準備した。前記カプセルを3つ準備し、それぞれのコーヒー豆粉砕物をカプセルに充填した。各カプセルを、下記条件にて蔵置した。蔵置後のカプセルを用いて実施例1と同じ方法で喫煙試験を実施した。
蔵置条件:恒温恒湿器(エスペック株式会社製、製品名「プラチナス Platinous」、型式/Model「PR-3J」)を使用。温度40℃/湿度60%で20日間(常態での8か月蔵置を想定)。
【0041】
【表3】
【0042】
[実施例3]
以下の充填物が充填されたカプセルを調製した。
カプセル3X:焙煎されたコロンビア産のアラビカ種コーヒー豆粉砕物200mg
カプセル3Y:焙煎されたベトナム産のカネフォラ種コーヒー豆粉砕物200mg
これらのカプセルを、それぞれ市販のポリプロピレン製袋内に収納し、袋を密閉した。各袋を下記条件にて蔵置した。
蔵置条件:前述の恒温恒湿器を使用。温度40℃/湿度60%で16日間(常態での6.5か月蔵置を想定)。
蔵置後、前記袋から各カプセルを取出し、実施例1と同じ方法で喫煙試験に供した。その結果、いずれのカプセルについても、Top note(コーヒーの香り立ち)がやや弱くなるものの、オフノート(ムレ臭)は感じられなかった。
【0043】
[実施例4]
以下の充填物が充填されたカプセルを調製した。
カプセル4X~7X:表4に示す粒径の焙煎されたコロンビア産のアラビカ種コーヒー豆粉砕物250mg
カプセル4Y~7Y:表4に示す粒径の焙煎されたベトナム産のカネフォラ種コーヒー豆粉砕物250mg
このようにして得た8つのカプセルを、ブリスターパック(PET層とアルミニウム層とを備える包装材)内に収納し、袋を密閉した。各袋を下記条件にて蔵置した。
蔵置条件:前述の恒温恒湿器を使用。温度40℃/湿度60%で15日間および30日間(常態での6か月蔵置および常態での12か月蔵置を想定)。
蔵置後、前記袋から各カプセルを取出し、実施例1と同じ方法で喫煙試験に供した。その結果表4に示す。コーヒー豆の粉砕物の粒径が600μm以上であると、優れたコーヒーキャラクターを呈した。また、当該粒径が600μm未満であるとやや吸いづらさが感じられるとともに、コーヒーキャラクターも弱まる印象であった。
【0044】
【表4】
【0045】
上記以外のコーヒー豆についても実施例4と同様の評価を行い、実施例4と同等の結果を示すことを確認した。上記実施例において、レーザ回折式粒子径分布測定装置(Malvern社製、MASTERSIZER3000)を用いてコーヒー豆粉砕物の粒径を測定した。
【符号の説明】
【0046】
1c カプセル(香味発生セグメント)
10、12 天面、底面
2 霧化部
4 エアロゾル源
40 エアロゾル発生セグメント
5 マウスピース
6 筐体
8 電源

20 非燃焼香味吸引物品
20A 香味発生セグメント
20B 冷却部
20C フィルター部

21 充填物
22 巻紙
23 紙管
24 穿孔
25 第1セグメント
25a 第1充填層
25b インナープラグラッパー
26 第2セグメント
26a 第2充填層
26b インナープラグラッパー
27 アウタープラグラッパー
28 ライニングペーパー

30 加熱装置
31 ボディ
32 ヒーター
33 金属管
34 電池ユニット
35 制御ユニット
36 凹部
37 通気穴
図1
図2
図3
図4