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特許7642824遺伝子発現および抑制が同時に可能な核酸構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】遺伝子発現および抑制が同時に可能な核酸構造体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20250303BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 35/15 20250101ALI20250303BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/11 Z
A61K31/713
A61K48/00
A61P37/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K9/51
A61K35/15
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023537237
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2020018484
(87)【国際公開番号】W WO2022131398
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-08-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2(2020)年8月11日ウェブサイト「https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2020.08.009」(公開時のアドレス)における公開
(73)【特許権者】
【識別番号】524118199
【氏名又は名称】サージネックス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】リー ギュ リ
(72)【発明者】
【氏名】リー ヒョク ジン
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0369417(US,A1)
【文献】国際公開第2021/130537(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/074453(WO,A1)
【文献】Journal of Controlled Release,2020年,Vol.327 ,pp.225-234
【文献】Cancer Biology & Therapy,2006年,Vol.5, No.2,pp.174-179
【文献】Biotechnology and Bioengineering,2007年,Vol.96, No.5,pp.821-834
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
A61K 31/33-33/44
A61K 48/00
C12N 9/00- 9/99
A61K 35/00-35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
mRNAおよびsiRNAを含む核酸構造体であって、
(i)3’末端に5’方向から3’方向に順次に位置するポリ(A)テール(poly(A)tail);および第1のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列を含むmRNA;および
(ii)前記第1のsiRNA配列に相補的に結合する混成化配列を含む核酸構造体であって
前記混成化配列は、3’末端に前記mRNAのポリ(A)テールと相補的に結合するポリ(T)テール(poly(T)tail)をさらに含む、前記核酸構造体
【請求項2】
前記混成化配列は、第1のsiRNA配列に相補的に結合する第2のsiRNAアンチセンスまたはセンス配列;或いは第1のsiRNA配列に相補的に結合するDNAアンチセンスまたはセンス配列であることを特徴とする、請求項1に記載の核酸構造体。
【請求項3】
前記ポリ(T)テールは2ないし6nt長さであることを特徴とする、請求項に記載の核酸構造体。
【請求項4】
前記核酸構造体は、前記mRNAがコードするターゲットタンパク質の発現および標的遺伝子の発現抑制を同時に誘発することを特徴とする、請求項1に記載の核酸構造体。
【請求項5】
第1のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列の3’末端に追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列のための第1のリンカー配列をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の核酸構造体。
【請求項6】
前記第1のリンカー配列は、ポリ(U)テール(poly(U)tail)であることを特徴とする、請求項に記載の核酸構造体。
【請求項7】
前記第1のリンカー配列の3’末端に追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の核酸構造体。
【請求項8】
混成化配列;および第2のリンカー配列をさらに含むことを特徴とする核酸構造体であって、
前記混成化配列は、前記第1のリンカー配列;および追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列に相補的に結合することを特徴とする、請求項に記載の核酸構造体。
【請求項9】
前記混成化配列は、追加のsiRNA配列に相補的に結合する第2のsiRNAアンチセンスまたはセンス配列;或いは追加のsiRNA配列に相補的に結合するDNAアンチセンスまたはセンス配列であることを特徴とする、請求項に記載の核酸構造体。
【請求項10】
前記第2のリンカー配列は、第1のリンカー配列と相補的に結合するポリ(A)テール(poly(A)tail)であることを特徴とする、請求項に記載の核酸構造体。
【請求項11】
前記核酸構造体は、第1のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列の3’末端に次の(a)および(b)を含む繰り返し単位を複数個さらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の核酸構造体:
(a)追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列のための第1のリンカー配列;および追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列;および
(b)混成化配列;および第2のリンカー配列であって、前記混成化配列は、前記第1のリンカー配列;および追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列に相補的に結合することである。
【請求項12】
請求項1に記載の核酸構造体および核酸伝達体を含む組成物。
【請求項13】
前記核酸伝達体はナノ粒子であることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の核酸構造体を含む免疫治療用薬学的組成物。
【請求項15】
前記免疫治療は、がん免疫治療であることを特徴とする、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記がんは、脳腫瘍、陽性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、脳下垂体腺腫、脳髄膜腫、脳リンパ腫、乏突起膠腫、頭蓋内咽腫、上衣細胞腫、脳幹腫瘍、頭頸部腫瘍、喉頭がん、中咽頭がん、鼻腔/副鼻腔がん、鼻咽頭がん、唾液腺がん、下咽頭がん、甲状腺がん、胸部腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺がん、縦隔洞腫瘍、食道がん、乳がん、男性乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、大腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん、男性生殖器腫瘍、陰茎がん、尿道がん、前立腺がん、女性生殖器腫瘍、子宮頸部がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮肉腫、腟がん、女性外部生殖器がん、女性尿道がん、皮膚がん、骨髄腫、白血病および悪性リンパ腫からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の核酸構造体を含むがんワクチン。
【請求項18】
前記がんワクチンは樹枝状細胞をさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載のがんワクチン。
【請求項19】
1)3’末端に5’方向から3’方向に順次に位置するポリ(T)テール(poly(T)tail)およびsiRNAアンチセンスまたはセンス配列が導入されたDNA鋳型を製造するステップ;
2)DNA鋳型にRNA重合酵素を含む反応溶液を処理して3’末端にsiRNA配列を含むmRNAを得るステップ;および
3)3’末端にOligo(dT)が連結されたsiRNAを前記mRNA産物にアニーリングするステップ;を含む、
請求項1に記載のmRNAおよびsiRNAを含む核酸構造体の製造方法。
【請求項20】
免疫治療に使用するための請求項1の核酸構造体を含む薬学的組成物。
【請求項21】
免疫治療のための薬剤の製造における請求項1の核酸構造体の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子発現および抑制が同時に可能な核酸構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、人類の健康を脅かす最大の疾病のうち一つであって、細胞が一連の突然変異過程を経て無制限的且つ非調節的な方式で増殖および不死化されて発生する疾病である。がんと関連する多様な生化学的機序が究明され、それによる治療剤が開発されてきているが、未だ根本的な治療方法は提示されていない。このようながん治療の新たなパラダイムとして位置付けているのが、免疫抗がん療法(がん免疫治療、cancer immunotherapy)である。
前記免疫抗がん療法は、受動免疫治療と能動免疫治療とに区分することができる。受動免疫治療には、免疫チェックポイント抑制剤(immune checkpoint inhibitor)、免疫細胞治療剤(immune cell therapy)、治療用抗体(therapeutic antibody)などが使用され、このうち免疫チェックポイント抑制剤は、T細胞抑制に関与する免疫チェックポイントタンパク質(immune checkpoint protein)の活性化を遮断してT細胞を活性化させてがん細胞を攻撃する治療剤として、CTLA-4、PD-1、PD-L1抑制剤などがある。
【0003】
能動免疫治療には、がん治療ワクチン、免疫調節剤などが使用され、具体的に体内免疫細胞を収集して強化させるか、遺伝子工学的に変形させてさらに入れる細胞治療方式で腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocytes、TIL)、T細胞受容体(T cell receptor、TCR)、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)細胞治療剤などがあり、がん細胞が有している腫瘍特異的抗原(tumor-specific antigen)をがん患者に投与して免疫体係を活性化させることで体内免疫機能を活発にしてがん細胞を攻撃するようにするがんワクチンなどがある。
その中でも樹枝状細胞(dendritic cell、DC)は、免疫係の最も核心的な抗原提示細胞であって、樹枝状細胞がんワクチンはがん抗原を提示して抗がん免疫反応活性化を通じて腫瘍を効果的に除去することができる理想的な治療剤とされている。しかし、腫瘍および腫瘍微細環境(tumor microenvironment、TME)は、直接的に樹枝状細胞の機能障害を誘導するか、腫瘍抗原を隠して免疫抑制サイトカインを多量分泌して抗がん免疫活性を抑制する。特に、がん細胞とこれを攻撃しようとする免疫細胞の力のバランスが崩れるようになると、がん細胞が本格的な増殖を開始して体内免疫システムを撹乱し、このとき、一部のがん細胞は免疫細胞の免疫チェックポイントを活用して免疫を回避することになる。
【0004】
よって、免疫体係を活性化させて能動的にがん細胞に対する免疫反応を増加させながらも、受動的に免疫チェックポイントタンパク質の活性化を遮断して免疫回避妨害を受けないようにする新たな免疫抗がん剤に対する必要性が台頭する。
また、誘電体システムの複雑な環境、特に、がん環境で特定遺伝子の上向きまたは下向き調節が円滑に行われる必要があるが、一つの物質の処理でこのような遺伝子調節を成すことが非常に難しい。すなわち、単一の分子を利用して生体内で遺伝子の正確且つ速い調節を目的とする多くの研究があったが、十分な結果を確保していない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、mRNAおよびsiRNAを含む核酸構造体を製造し、前記構造体が特定遺伝子をmRNAまたはsiRNAそれぞれを通じて同時に発現または抑制することを確認した。特に、抗原mRNAを発現させて免疫体係を活性化させると同時に、免疫チェックポイントタンパク質の活性化を抑制して免疫チェックポイントタンパク質による免疫回避機序を克服できることを確認し、本発明を完成することになった。
よって、本発明の目的は、遺伝子発現および抑制が同時に可能なmRNAおよびsiRNAを含む核酸構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明はmRNAおよびsiRNAを含む核酸構造体を提供する。
また、本発明は前記核酸構造体および核酸伝達体を含む組成物を提供する。
また、本発明は前記核酸構造体を含む免疫治療用薬学的組成物を提供する。
また、本発明は前記核酸構造体を含むがんワクチンを提供する。
また、本発明は前記核酸構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明による遺伝子発現および抑制が同時に可能な核酸構造体は、単一構造体内にmRNAとsiRNAをすべて含むことによって同一の細胞にmRNAおよびsiRNAを同時に導入させ、これを通じて発現しようとするタンパク質を正常に発現させながらも、特定遺伝子の発現は特異的に抑制することができる。前記mRNA-siRNA核酸構造体は、抗原提示細胞にターゲットタンパク質を発現させて免疫体係を活性化させると同時に、免疫チェックポイントタンパク質の活性化を遮断して免疫回避妨害を克服することができ、免疫治療分野、特に抗がん免疫治療分野で非常に有用に使用され得るものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】核酸構造体の一模式図を示す。
図2】本発明によるmRNA-siRNA核酸構造体の製造方法を順に図式化したものである。
図3】本発明によるmRNA-siRNA核酸構造体の製造方法を順に図式化したものである。DNA鋳型、前記鋳型DNAを使用して試験管内転写されたmRNA(「mRNA-siRNA(SS or AS)」)および前記mRNAにsiRNAをアニーリング(annealing)させて製造されたmRNA-siRNA核酸構造体をsiRNAのセンス(SS)またはアンチセンス配列(AS)表示とともに図式化した。
図4】本発明によるmRNA-siRNA核酸構造体が細胞内環境でRNase HによってmRNAおよびsiRNAに分離される過程を図式化したものである(AAAA、TTTT文字はDNA配列に該当)。
図5】siRNAのセンスまたはアンチセンス配列、長さを異にするOligo(dT)を多様な構成で組み合わせたsiRNA-Oligo(dT)をmRNAにアニーリング(annealing)させて製造したmRNA-siRNA実施例を図式化したものである(TT、TTTTTT、TTTT-AS、TTTT-SS文字はDNA配列に該当)。
図6】DNA鋳型(a)および試験管内転写産物(b)に対して電気泳動した結果を示した図である。
図7】mRNA-siRNAに対して電気泳動した結果を示した図である。
図8】互いに異なるmRNA-siRNA実施例のタンパク質(赤い蛍光タンパク質、GFP)発現能力を評価した結果を示した図である。
図9】形質注入24時間後、互いに異なるmRNA-siRNA実施例のタンパク質(青い蛍光タンパク質、BFP)発現能力および遺伝子(緑色蛍光タンパク質、GFP)発現抑制能力を評価した結果を示した図である。(a)mBFPタンパク質発現効率、(b)GFPタンパク質発現抑制効率。
図10】形質注入48時間後、互いに異なるmRNA-siRNA実施例のタンパク質(青い蛍光タンパク質、BFP)発現能力および遺伝子(緑色蛍光タンパク質、GFP)発現抑制能力を評価した結果を示した図である。(a)mBFPタンパク質発現効率、(b)GFPタンパク質発現抑制効率。
図11】本発明による核酸構造体にオボアルブミン(Ovalbumin、OVA)を発現するmRNAおよびSTAT3遺伝子の発現を抑制するsiRNAを導入し、前記mOVA-siSTAT3のSTAT3タンパク質発現抑制能力を評価した結果を示した図である。
図12】本発明による核酸構造体にオボアルブミン(Ovalbumin、OVA)を発現するmRNAおよびSTAT3遺伝子の発現を抑制するsiRNAを導入し、前記mOVA-siSTAT3のSTAT3タンパク質発現抑制能力をwestern blotを通じて評価した結果を示した図である。
図13】mOVA-siSTAT3の樹枝状細胞成熟促進効果をCD40、CD80発現量を通じて確認した結果を示した図である。
図14】OVAの発現がmOVA-siSTAT3/siSTAT3構造体処理を通じて確認された結果を示す。
図15】mOVA-siSTAT3/siSTAT3を筋肉注射したマウスから採取した脾臓細胞(splenocyte)のうち誘導されたOVA抗原特異細胞毒性T細胞集団が13.8%と分析された結果を示す。
図16】mOVA-siSTAT3/siSTAT3を筋肉注射したマウスの脾臓細胞でmOVAとsiSTAT3の単純mixtureを筋肉注射したマウスに比べてさらに高いOVA特異細胞毒性T細胞集団が観察されることを見せる。
図17】mOVA-siSTAT3/siSTAT3を筋肉注射したマウスのOVA-特異的IgG発現がmOVAとsiSTAT3の単純mixtureを筋肉注射したマウスに比べて向上したことを確認した結果を示す。
図18】siSTAT3/siSTAT3(mOVA-T6-STAT3i)は単純mixtureと対比して顕著に優れた腫瘍抑制効果を示した結果を見せる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をより詳細に説明する。
他の式に正義されない限り、本明細書において使用されたすべての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野における熟練した専門家によって通常に理解されるものと同一の意味を有する。一般的に、本明細書において使用された命名法は、本技術分野においてよく知られており、通常的に使用されるものである。
本発明において、用語「ベクター」は、適切な宿主細胞で目的とするタンパク質を発現することができるようにする作動可能に連結された必須的な調節要素を含む核酸製作物を意味する。
【0010】
本発明において、前記ベクターは、本発明による核酸構造体を生産するのに適合したものであれば制限なく使用されることができ、プロモーターなどの転写のために必要な要素を含む。前記ベクターは、RNAベクターまたはDNAベクターであってよく、好ましくはDNAベクターであってよい。前記ベクターは、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターのように通常の技術者にとって知られているベクターであれば制限なく使用されることができ、好ましくはDNAプラスミドベクターを使用することができる。また、前記ベクターは円形分子であることを特徴とすることができる。前記ベクター、好ましく円形ベクターは、例えば、制限酵素によって線形化(linearization)されることができる。
【0011】
本発明において、用語「プロモーター」は、転写調節因子が結合するDNA塩基配列部位を意味し、本発明の目的上、遺伝子発現率を高めるために強力且つ安定した遺伝子発現を誘導することができるプロモーターを使用することができる。本発明において、前記プロモーターは、好ましくはRNA重合酵素プロモーターであってよく、より好ましくはT7プロモーターまたはSP6プロモーターであってよいが、これに制限されるものではない。
本発明において、用語「UTR(untranslation region、非翻訳領域)」は、mRNAの非翻訳領域を言う単語であって、一般的にコード領域の両末端を意味する。特に、5’末端部分を5’UTRと3’末端部分を3’UTRと指称する。
【0012】
本発明において、用語「ポリ(A)テール(poly(A)tail)」は、ポリアデニル酸またはポリアデニル酸切片とも呼ばれ、真核生物のmRNA 3’末端に普遍的に存在するアデニル酸の連続した配列を意味する。その長さは10ないし200ヌクレオチド(nt)程度であり、発現ベクターバックボーン(backbone)の許容大きさによって多様に調節されることができる。ポリ(A)は、mRNAの安定化、翻訳、核から細胞質への輸送などに関与するものと知られている。
【0013】
本発明において、用語「siRNA(small interfering RNA)」は、二本鎖RNAがダイサー(Dicer)酵素によって切断されて生成される18~23ヌクレオチド(nt)大きさの小さなRNA断片で、相補的な配列を有するmRNAに特異的に結合してターゲットタンパク質、mRNAの発現を抑制するのに使用することができる。前記siRNAは、センスRNAとアンチセンスRNAが二本鎖RNA分子を形成し、このとき、センスRNAがmRNAのうち一部の連続ヌクレオチドの標的配列と同一の核酸配列を含むsiRNA分子であることが好ましい。前記アンチセンス配列は、センス配列と相補的な配列を有することが最も好ましい。
【0014】
本発明において、用語「相補的な配列」は、互いに相補的結合を成す特徴を維持することができれば、100%相補的配列の外に60ないし100%の相補的配列、好ましくは80%ないし100%相補的配列、さらに好ましくは90ないし100%相補的配列、より一層好ましくは95%ないし100%の相補的配列からなることを含んでよい。
本発明において、用語「標的遺伝子」とは、前記siRNAによって発現が選択的に抑制されるか不活性化される遺伝子である。このような不活性化は、siRNAが標的遺伝子のmRNAを切断することによって達成される。
【0015】
本発明において、用語「リボヌクレアーゼ(ribonuclease、RNase)」は、リボ核酸を分解してオリゴヌクレオチドあるいは単一核酸で作る反応を触媒する酵素であって、好ましくは、エンドリボ核酸分解酵素(endo ribonuclease)であり、前記エンドリボ核酸分解酵素は、RNase A、RNase H、RNase I、RNase III、RNase L、RNase P、RNase PhyM、RNase T1、RNase T2、RNase U2、RNase V1およびRNase Vを含む。
【0016】
本発明において、前記リボ核酸は、伝令リボ核酸(messenger RNA)であってよく、前記リボヌクレアーゼとしては、好ましくはRNase Hを使用することができる。本発明の一実施例においては、RNase Hを使用して本発明による核酸構造体であるmRNA-siRNAのポリ(A)-ポリ(T)混成化部分のリン酸ジエステル結合(phosphodiester bond)を加水分解させてmRNAによる遺伝子発現およびsiRNAによるタンパク質発現抑制を同時に達成することができることを確認している。
【0017】
本発明において、用語「mRNA-siRNA(SS or AS)」は、3’末端にsiRNAのセンスまたはアンチセンス配列を含むmRNAを意味する。本発明の一実施例においては、ポリ(A)配列および/またはsiRNA(センス/アンチセンス)配列を含む逆方向プライマー(Reverse Primer、RP)を使用して3’UTR真横3’にポリ(T)テール(poly(T)tail)およびsiRNA(アンチセンス/センス)配列が導入されたDNA鋳型を製造し、製造したDNA鋳型を利用して試験管内(in vitro)転写(in vitro transcription、IVT)を通じて3’末端にsiRNAセンスまたはアンチセンス配列を含むmRNA(「mRNA-siRNA(SS or AS)」)を製造した。
【0018】
本発明において、用語「mRNA-siRNA」は、前記製造したmRNA-siRNA(SS or AS)の3’末端に導入されたsiRNAのセンスまたはアンチセンス配列に相補的に結合することができる「混成化配列」をアニーリングした結果、mRNA-siRNA 3’末端のポリ(A)テールおよびsiRNA配列(センス/アンチセンス)がそれぞれこれと相補的な混成化配列(アンチセンス/センス)およびoligo(dT)と結合して二本鎖を形成する核酸構造体を意味する。
【0019】
本発明において、前記「混成化配列」は、siRNAまたはDNAであってよく、したがって「mRNA-siRNA」は、本明細書内において、「mRNA-siRNA/siRNA」または「mRNA-siRNA/DNA」とも表記される。
本発明は、遺伝子発現および抑制が同時に可能な核酸構造体を提供する。
より具体的に、本発明は、mRNAおよびsiRNAを含む核酸構造体として、(i)3’末端に5’方向から3’方向に順次に位置するポリ(A)テール(poly(A)tail);および第1のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列を含むmRNA;および(ii)前記第1のsiRNA配列に相補的に結合する混成化配列を含む核酸構造体を提供する。
【0020】
本発明において、前記混成化配列は、第1のsiRNA配列に相補的に結合する第2のsiRNAアンチセンスまたはセンス配列;或いは第1のsiRNA配列に相補的に結合するDNAアンチセンスまたはセンス配列であることを特徴とする。
本発明において、前記混成化配列は、3’末端に前記mRNAのポリ(A)テールと相補的に結合するポリ(T)テール(poly(T)tail)をさらに含んでよい。前記ポリ(T)テールは2ないし6nt長さであってよいが、これに制限されるものではない。
本発明において、前記核酸構造体は、第1のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列の3’末端に追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列のための第1のリンカー配列をさらに含んでよく、前記第1のリンカー配列は、リンカー配列の3’末端に追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列をさらに含んでよい。
また、本発明において、前記核酸構造体は、前記第1のリンカー配列;および追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列に相補的に結合する混成化配列;および第2のリンカー配列をさらに含んでよい。前記混成化配列は、前記第1のリンカー配列;および追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列に相補的に結合することを特徴とする。
【0021】
本発明において、リンカー(linker)またはアダプター(adaptor)配列は、通常の方法による合成オリゴヌクレオチド配列を制限なく使用することができ、好ましくは、前記第1のリンカー配列は、ポリ(U)テールであってよく、前記第2のリンカー配列は、第1のリンカー配列と相補的に結合するポリ(A)テールであってよいが、これに制限されるものではない。
前記リンカーまたはアダプター配列は、DNAと混成化されない部位を含んでよい。
【0022】
本発明において、前記核酸構造体は、下記図1で赤い点線で表示した繰り返し単位を複数個さらに含んでよく、好ましくは1個ないし5個さらに含んでよい。追加される繰り返し単位の個数は、当業者が目的によって適切に調節することができる。
具体的に、前記核酸構造体は、第1のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列の3’末端に(a)および(b)を含む繰り返し単位を複数個さらに含んでよく、前記(a)および(b)は、(a)追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列のための第1のリンカー配列;および追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列;および(b)混成化配列;および第2のリンカー配列であることを特徴とし、このとき前記混成化配列は、前記第1のリンカー配列;および追加のsiRNAセンスまたはアンチセンス配列に相補的に結合することを特徴とする。
【0023】
繰り返し単位の一部として追加されるsiRNAは、ターゲットにする遺伝子が互いに同一であるかまたは異なってよく、前記核酸構造体は、細胞内に注入されると、RNase HによってmRNA-siRNAの混成化部位が切断されて独立した二本鎖siRNAに分離されて効果的に標的遺伝子の発現を抑制することができる。互いに異なる2種以上のsiRNAを含む場合、2以上のターゲット遺伝子を同時に発現抑制することができる。
また、本発明は、本発明による核酸構造体および核酸伝達体を含む組成物を提供する。
【0024】
本発明において、用語「核酸伝達体(nucleic acid delivery system)」は、本発明による核酸構造体の体内への伝達効率を高めるためのものであって、体内における安定性に優れるだけでなく、薬物としての製造工程が簡単であるという長所がある。
前記核酸伝達体は、これに制限されるものではないが、ウイルス性ベクター、非ウイルス性ベクター、リポソーム、カチオン性高分子、ミセル(micelle)、エマルションおよびナノ粒子(nanoparticles)を含んでよく、好ましくはナノ粒子であってよい。前記カチオン性高分子には、キトサン、アテロコラーゲン(atelocollagen)、カチオン性ポリペプチド(cationic polypeptide)などのような天然高分子とpoly(L-lysin)、線形または分枝型PEI(polyethylene imine)、シクロデキストリン系列多価カチオン(cyclodextrin-based polycation)、デンドリマー(dendrimer)などのような合成高分子を含む。
【0025】
本発明において、前記ナノ粒子は、これに制限されるものではないが、磁性粒子(magnetic bead)、金(Au)ナノ粒子、銀(Ag)ナノ粒子、白金(Pt)ナノ粒子、量子ドット(Quantum dot)、上方転換ナノ粒子(upconversion nanoparticle、UCNP)、グラフェン(graphene)-ナノ粒子複合体、色染色ナノ粒子(color dyed particles)およびラテックス(latex)ナノ粒子、シリカナノ粒子(silica nanoparticle)、炭素誘導体ナノ粒子(carbon derivative nanopartilces;例えば、炭素ナノチューブ(carbon nanotube)および固形リピッドナノ粒子(solid lipid nanoparticles)からなる群より選択されるいずれか一つであってよい。
【0026】
本発明による核酸構造体は、前記のようなナノ粒子に導入される場合、前記核酸構造体のターゲット細胞への伝達が促進し、比較的低い濃度の投与量でもターゲット細胞に伝達されて高いターゲットタンパク質発現誘導および標的遺伝子発現抑制機能を示すことができる。また、ターゲット以外の他臓器および細胞への非特異的なmRNA-siRNAの伝達を防止することができる。
また、本発明は、本発明による核酸構造体を含む免疫治療用薬学的組成物を提供する。本発明による薬学的組成物は、免疫反応を増加させるか、特定疾病、感染または疾患の治療または予防に好ましい免疫反応の一部を選択的に上昇させることができる。
本発明において、前記免疫治療は、好ましくはがん免疫治療であってよい。
【0027】
本発明において、前記がんは、脳腫瘍、陽性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、脳下垂体腺腫、脳髄膜腫、脳リンパ腫、乏突起膠腫、頭蓋内咽腫、上衣細胞腫、脳幹腫瘍、頭頸部腫瘍、喉頭がん、中咽頭がん、鼻腔/副鼻腔がん、鼻咽頭がん、唾液腺がん、下咽頭がん、甲状腺がん、胸部腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺がん、縦隔洞腫瘍、食道がん、乳がん、男性乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、大腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん、男性生殖器腫瘍、陰茎がん、尿道がん、前立腺がん、女性生殖器腫瘍、子宮頸部がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮肉腫、腟がん、女性外部生殖器がん、女性尿道がん、皮膚がん、骨髄腫、白血病および悪性リンパ腫からなる群より選択されるいずれか一つであってよいが、これに制限されるものではない。
【0028】
本発明において、前記薬学的組成物は、本発明による核酸構造体を単独で含むか、一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含んで提供されることができる。
前記「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与されるとき、通常的に胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似した反応を起こさない組成物を意味し、前記担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0029】
本発明による薬学的組成物は、前記成分の以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含んでよい。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記セフテゾールに少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(calciumcarbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また単なる賦形剤の以外にステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当し、通常使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されてよい。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されてよい。
【0030】
前記薬学的組成物の好ましい投与量は、患者の状態および体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なり、当業者によって適切に選択されることができる。しかし、好ましい効果のために、1日0.0001ないし100mg/kgで、好ましくは0.001ないし100mg/kgで投与することが良い。投与は、一日に一回投与してよく、数回に分けて投与してもよい。前記投与量は、如何なる面でも本発明の範囲を限定するものではない。
前記薬学的組成物は多様な経路で投与されることができ、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、腹腔、子宮内軽膜または脳血管内注射によって投与されることができる。
また、本発明は、本発明による核酸構造体を含むがんワクチンを提供する。本発明による核酸構造体は、抗原提示細胞に抗原を標識して免疫反応を誘導させることができ、同時に免疫チェックポイントタンパク質の発現を抑制することができる。前記核酸構造体は、ナノ粒子と結合した状態でがんワクチンに含まれてよい。
【0031】
本発明において、前記がんワクチンは、樹枝状細胞をさらに含むものであってよい。例えば、前記がんワクチンは、生体外(ex vivo)で本発明による核酸構造体を樹枝状細胞に伝達した後、形質感染された樹枝状細胞を伝達する形態で提供されることができる。前記樹枝状細胞は、対象体の免疫原性を増加させることができ、対象体内腫瘍の増殖および/または転移を効果的に予防または抑制することができる。
本明細書において、用語「樹枝状細胞」は、抗原を細胞内部に吸収し、これを処理して抗原または抗原から由来したペプチドをMHCクラスI複合体またはMHCクラス複合体とともに提示する抗原提示細胞(antigen presenting cell)を意味する。樹枝状細胞は、成熟度によって未成熟樹枝状細胞と成熟樹枝状細胞とに分類する。
【0032】
前記「未成熟樹枝状細胞」は、成熟初期ステップで発見されるものであって、成熟樹枝状細胞と同様にCD14のような細胞表面マーカーを発現せず、HLA-DR、CD86、CD80、CD83またはCD40を低い水準で発現し、CD1aおよびCCR1、CCR2、CCR5およびCXCR1を通常の水準で発現する樹枝状細胞を言う。
前記「成熟樹枝状細胞」は、未成熟樹枝状細胞が成熟化して形成された細胞を意味し、B細胞およびT細胞活性に関与する細胞表面マーカー、例えば、MHCクラスIまたはMHCクラス(HLA-DR)、細胞接着因子(CD54、CD18、CD11)、共同刺激因子(例えば、CD86、CD80、CD83またはCD40)が未成熟樹枝状細胞に比べて高い水準または相対的に増加した水準で発現する細胞を意味する。
【0033】
例えば、本発明の一実施例においては、本発明による核酸構造体にオボアルブミン(Ovalbumin、OVA)を発現するmRNAおよびSTAT3遺伝子の発現を抑制するsiRNAを導入したmRNA-siSTAT3を形質注入した結果、CD40およびCD80マーカーの発現量が顕著に増加して分離したmRNAおよびsiRNAを混合して投与することより樹枝状細胞成熟促進効果に遥かに優れることを確認した。
本発明はまた、免疫治療に使用するための本発明による核酸構造体を含む薬学的組成物を提供する。
本発明はまた、免疫治療のための薬剤の製造における、本発明による核酸構造体の用途を提供する。
【0034】
本発明はまた、本発明による核酸構造体を、これを必要とする個体に投与するステップを含む免疫治療方法を提供する。
本発明において、前記免疫治療は、がん免疫治療であってよい。より具体的に、がん治療用途であってよい。
また、本発明は、
1)3’末端に5’方向から3’方向に順次に位置するポリ(T)テール(poly(T)tail)およびsiRNAアンチセンスまたはセンス配列が導入されたDNA鋳型を製造するステップ;
2)DNA鋳型にRNA重合酵素を含む反応溶液を処理して3’末端にsiRNA配列を含むmRNAを得るステップ;および
3)3’末端にOligo(dT)が連結されたsiRNAを前記mRNA産物にアニーリングするステップ;を含むmRNAおよびsiRNAを含む核酸構造体の製造方法を提供する。
【0035】
前記1)ステップにおいて、DNA鋳型はmRNA合成のための転写鋳型であって、T7プロモーター(promoter)、5’UTR、オープンリーディングフレーム(open reading frame、ORF)および3’UTRを含むDNAベクター(pUCIDT-Amp vector)を製造し、前記DNAを鋳型としてPCRを遂行してベクターを線形化した後、増幅させたものであってよい。
【0036】
PCRは、DNAベクターを1次鋳型にしてPCR反応混合液、正方向プライマー(forward primer)として5’-TTGGACCCTCGTACAGAAGCTAATACG-3’(配列番号4)からなるオリゴヌクレオチド、逆方向プライマー(reverse primer)として「5’-siRNA配列-ポリ(A)-DNAベクターと特異的に結合するプライマー配列-3’(逆方向プライマー)」構成に基盤したものを使用して遂行した。具体的に、前記逆方向プライマーは、ポリ(A)配列および/またはsiRNA(センス/アンチセンス)配列を含み、製造されたDNA鋳型の3’UTR真横3’にポリ(T)テール(poly(T)tail)およびsiRNA(アンチセンス/センス)配列を導入させた。本発明の一実施例において、前記PCR反応混合液は、2X TOPsimpleTM DryMIX-HOT(enzynomics、韓国)を使用したが、これに制限されるものではない。
【0037】
DNA鋳型を製造するためのPCRの条件は、PCR遂行のための3ステップ、すなわち変性(Denaturation)ステップ、混成(Annealing)ステップ、延長(Elongation)ステップを遂行するための温度および時間をそれぞれ維持することができ、前記変性ステップを遂行するための条件は、85℃ないし105℃ 5分ないし15分、好ましくは95℃ 10分、前記混成ステップを遂行するための条件は、40℃ないし65℃ 20秒ないし40秒、好ましくは59℃ 30秒、前記延長ステップを遂行するための条件は、50℃ないし80℃ 30秒ないし2分、好ましくは72℃ 1分であってよい。前記PCR遂行のための特定された温度および時間範囲は、PCRを遂行するにあたって実現可能な範囲内で調節可能である。
【0038】
本発明の一実施例において、前記DNA鋳型を製造するためのPCRの条件は、初期変性(Initial denaturation)95℃ 10分後、変性95℃ 3秒、混成59℃ 30秒、延長72℃ 1分を1回転に計30回転を進行し、追加延長(Final elongation)72℃ 5分を進行した。また、増幅されたPCR反応産物は、AccuPrepTMPCR Purification Kit(Bioneer、South Korea)を使用して精製した。
【0039】
前記2)ステップは、試験管内転写(in vitro transcription、IVT)ステップであって、1)ステップで製造したDNA鋳型にRNA重合酵素を含む反応溶液を処理して3’末端にsiRNA配列を含むmRNA(「mRNA-siRNA」)を製造することを特徴とすることができる。本発明の一実施例において、前記試験管内転写は、製造したDNA鋳型に反応溶液を処理して37℃で16時間の間培養した後、Turbo DNase Iを1μl追加して37℃で15分間反応させて遂行した。ただし、前記試験管内転写のための具体的な反応条件は、実現可能な範囲内で調節可能である。
【0040】
前記3)ステップにおいて、アニーリング(annealing)のための条件は、配列-依存的であり環境的変数によって多様であるが、40ないし80℃ 5分ないし15分、好ましくは75℃ 10分であってよい。本発明の一実施例において、前記アニーリングは、75℃ 10分遂行後、4℃までファーストクーリング(急冷)して遂行した。
【0041】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するものであるだけであって、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形および均等な他の実施例が可能であるという点を理解するはずである。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的思想によって決まらなければならないだろう。
【実施例
【0042】
実施例.本発明による核酸構造体の製造
DNA鋳型製造
遺伝子発現および抑制が同時に可能な核酸構造体を製造するために、次のように実験を遂行した。先ず、mRNA合成のための転写鋳型として、T7プロモーター(promoter)、5’UTR、オープンリーディングフレーム(open reading frame、ORF)および3’UTRを含むDNAベクター(pUCIDT-Amp vector)を製造した。前記DNAを鋳型としてPCRを遂行してベクターを線形化し、T7プロモーターから3’UTRまで増幅させた。PCRは、TOPsimpleTM DryMIX-HOT(enzynomics、韓国)を使用して遂行し、具体的なPCR条件は、下記表1のとおりである。増幅されたPCR反応産物は、AccuPrepTM PCR Purification Kit(Bioneer、South Korea)を使用して精製した。
【0043】
【表1】
【0044】
このとき、ポリ(A)配列および/またはsiRNA(センス/アンチセンス)配列を含む逆方向プライマー(Reverse Primer、RP)を使用して3’UTR真横3’にポリ(T)テール(poly(T)tail)およびsiRNA(アンチセンス/センス)配列が導入されたDNA鋳型を製造した(図2のa)。すなわち、前記逆方向プライマーは、次の構成に基盤したものを使用した。

5’-siRNA配列-ポリ(A)-DNAベクターと特異的に結合するプライマー配列-3’(逆方向プライマー)
【0045】
本実施例において、本発明者らは、前記逆方向プライマーとして、120ntポリ(A)配列のみからなるプライマー、120ntポリ(A)配列とsiRNA(センス/アンチセンス)配列とを含むプライマー、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein、GFP)mRNAを標的するsiRNA(以下、siGFP)、赤い蛍光タンパク質(Red fluorescent Protein、RFP)および青蛍光タンパク質(Blue fluorescent Protein、BFP)をコードするmRNAを使用した。
【0046】
mRNA-siRNA合成
前記実施例において製造したDNA鋳型を使用して、試験管内(in vitro)転写(in vitro transcription、IVT)を遂行して末端にsiRNA配列を含むmRNA(以下、「mRNA-siRNA(SS or AS)」という)を合成した。T7 RNA重合酵素、rATP、rCTP、rGTP、rUTPおよびキャップ類似体(cap analogue)を含む反応溶液(MEGAscriptTMT7 Transcription Kit(Ambion、USA)を使用して試験管内転写を遂行し、DNA分解酵素(DNase)処理で鋳型DNAを除去してmRNAのみを回収した。
具体的に、反応溶液をチューブに入れて37℃で16時間の間培養した後、Turbo DNase Iを1μl追加して37℃で15分間反応させ、反応産物をMEGAclearTM Kit(Ambion、USA)を使用して精製した。反応溶液を構成するすべての成分およびその用量、濃度は、下記表2のとおりである。これを通じて合成されたmRNAは、キャップ類似体を転写反応に添加することで生産された5’-キャップ(5’-cap)を5’末端に含んだ(図2のb)。
【0047】
【表2】
【0048】
本発明による核酸構造体の製造
次に、dTdTdTdTdTdTと連結させたsiRNA(siRNA-Oligo(dT))を含む逆方向プライマーを前記実施例において製造したmRNA-siRNA(SS or AS)にアニーリング(annealing)して、mRNA-siRNA(SS or AS)の一部が混成化配列と相補的に結合して二本鎖を形成する、本発明による核酸構造体(「mRNA-siRNA」を製造した。このとき、前記混成化配列は、ポリ(T)を含むsiRNA配列またはポリ(T)を含むDNA配列に該当する。
【0049】
具体的に、アニーリングは、mRNA-siRNA(SS or AS)とsiRNA-Oligo(dT)を同じチューブに入れて混合し、75℃で10分間反応させた後、4℃までファーストクーリング(急冷)した。このとき、dTdTdTdTdTdT部位は、mRNA-siRNA(SS or AS)のポリ(A)テール(poly(A)tail)にアニーリングされ、siRNA配列(アンチセンス/センス)は、mRNA-siRNA(SS or AS)の3’末端に導入されたsiRNAに相補的にアニーリングされ(図2のc)、その結果、mRNA-siRNA(SS or AS)3’末端のポリ(A)テールおよびsiRNA配列(センス/アンチセンス)がそれぞれこれと相補的なsiRNA(アンチセンス/センス)およびoligo(dT)と結合して二本鎖を形成する本発明による核酸構造体が形成された(以下、「(またはmRNA-siRNA/siRNAあるいはmRNA-siRNA/DNA)」という)。前記mRNA-siRNAの製造過程を図式化して図3に示した。
本実施例および実験例において使用したDNAベクター、すべてのプライマー配列、すべてのsiRNA配列を下記表3に示した。すべての配列は、IDT(遺伝子合成サービス)から提供されて使用した。
【0050】
【表3】








【0051】
本発明によるmRNA-siRNAは、細胞内環境でRnase HによってmRNAのポリ(A)とsiRNAのポリ(T)との間に形成された二本鎖混成体が切断され、ターゲットタンパク質を発現させ得るmRNAと特定遺伝子の発現を抑制させることができるsiRNAとに分離され、これを通じて対象体でタンパク質の発現と抑制を同時に可能にする(図4)。
一方、図4に示したように、本発明によるmRNA-siRNAは、mRNAの3’末端にsiRNAが一つ以上連結され得ることを特徴とする。このとき、一番目のsiRNAの導入以降、二番目のsiRNAからは前記アニーリングと同一の条件で実験を遂行するが、逆方向プライマーにsiRNA配列を追加して進行する。追加されるsiRNAの場合、逆方向プライマーに対して導入しようとする個数だけsiRNAを導入して追加することができることを特徴とする。例えば、二番目のsiRNAを導入するために使用したすべてのプライマーを下記表4に示した。
【0052】
【表4】
【0053】
本実施例において、本発明者らは、下記のようにsiRNAのセンスまたはアンチセンス配列、長さを異にするOligo(dT)を多様な構成で組み合わせたsiRNA-Oligo(dT)を使用してmRNAのタンパク質発現効率およびsiRNAの遺伝子発現抑制能を評価し、遺伝子発現および抑制効果に優れた核酸構造体の最適構造を導出しようとした(図5)。
【0054】
5’-siGFPと相補的に結合するsiRNA配列(アンチセンス/センス)-dTdT-3’(T2)
5’-siGFPと相補的に結合するsiRNA配列(アンチセンス/センス)-dTdTdTdTdTdT-3’(T6)
5’-siGFPと相補的に結合するDNA配列(アンチセンス/センス)-dTdTdTdT-3’(DNA)
【0055】
実験例1.各反応産物の確認
前記実施例の各反応が終わった後、反応産物を1%アガロースゲルに100V電圧で30分間電気泳動してPCR反応産物、試験管内転写産物を確認した結果を図6に示した。
図6のaに示したように、逆方向プライマーを使用して増幅されたDNA断片の大きさは、それぞれ971bp(poly(A)120、レーン4)および992bp(poly(A)120-AS siGFP、レーン5)であることを確認した。前記結果を通じて、PCRを遂行することによって3’UTR真横3’にポリ(T)tailおよびsiRNA配列が導入されるようにデザインされた逆方向プライマーを通じてDNA鋳型が効果的に増幅されたことを確認した。
【0056】
また、図6のbに示したように、前記DNA鋳型を使用して試験管内転写を遂行した結果、それぞれ3’末端にpoly(A)120配列が導入されたmRFP(レーン2)および3’末端にpoly(A)120-AS siGFP配列が導入されたmRFP(レーン3)が合成されたことを確認した。
同様に、前記実施例に記載した方法で製造したmRNA-siRNA核酸構造体を確認した結果を図7に示した。
【0057】
図7のaに示したように、mRNAの3’末端にpoly(A)120配列のみ導入されたものとpoly(A)120とアンチセンスsiGFP配列が共に導入された形態のmRFPをセンスsiGFP鎖とファーストクーリングをさせた結果、poly(A)120とアンチセンスsiGFP配列が共に導入された形態のmRFPに注入したセンスsiGFPのバンドが薄くなることを確認することで、センスsiGFPが成功的にpoly(A)120とアンチセンスsiGFP配列が導入されたmRFPにアニーリングされたことを確認した。
【0058】
また、図7のbに示したように、FITC標識されたセンスsiGFP(FITC-SS siGFP、レーン1)より、3’末端にアンチセンスsiGFPが導入されたmRFP(mRFP-AS siGFP)に対してFITC標識されたセンスsiGFPがアニーリングされた場合(mRFP-AS siGFP+FITC-SS siGFP、レーン2)、バンドがさらに上側で現れることを確認した。前記結果を通じて、3’末端にsiRNA配列を含むmRNAと前記siRNA配列に相補的に結合するsiRNAをアニーリングさせると、相互間に部分的に混成化されたmRNA-siRNA核酸構造体が形成されることを確認した。
【0059】
実験例2.各構造体のタンパク質発現能力評価
前記実施例において製造した互いに異なるmRNA-siRNA核酸構造体のタンパク質発現効果を確認した。具体的に、細胞を96-ウェルプレートにウェル当たり1×104個でシーディングし、形質注入試薬を使用して細胞を10pg mRNA/cellの用量の各構造体で形質注入(transfection)させた。形質注入24時間後、フローサイトメーターFACS Calibur(BD Biosciences、CA)を使用して各実施例で発現される赤い蛍光タンパク質の蛍光強度を測定して各構造体の翻訳効率(translation efficiency)を確認し、その結果を図8に示した。実験に使用したすべての実施例を下記表5に示した。下記表5において、mRNA-SS/SSまたはmRNA-SS/ASは、siGFP-T2配列とアニーリングされたことを意味し、mRNA-AS/SS(DNA)またはmRNA-AS/AS(DNA)は、siGFP配列を有しているDNAに追加的にdT配列が4個導入された配列とアニーリングされたことを意味する。
【0060】
【表5】
【0061】
図8に示したように、3’末端にsiRNA配列を含むmRNAを形質注入した実施例において共通的に翻訳効率が低くなったことを確認した。これに対し、mRNA(SS)にsiGFP(AS)-TTTT(DNA)をアニーリングさせた実施例とmRNA(AS)にsiGFP(SS)-TTTT(DNA)をアニーリングさせた実施例の場合、減少された翻訳効率が顕著に増加し、mRFPを形質注入した場合よりも蛍光強度が強くてmRNAのタンパク質発現能力が完全に回復したことを確認した。
【0062】
前記結果を通じて、3’末端にsiRNA(センス/アンチセンス)配列を含むmRNAと、前記siRNAに相補的に結合するsiRNA(アンチセンス/センス)配列およびmRNAに相補的に結合するOligo(dT)を含むsiRNAを混成化させると、siRNA配列の結合によって阻害されたmRNAの翻訳効率が、mRNA-siRNA(SS or AS)のsiRNA配列にアニーリング(annealing)されたDNA配列によって回復できることを確認した。これは、本発明によるmRNA-siRNA/DNAハイブリッド構造体が細胞内RNase Hによって切られる機序によるものと見られる。また、mRNA-siRNA(SS or AS)にアニーリングさせたsiRNA-dTdT(T2)の場合、タンパク質翻訳効率が阻害されることを確認することでmRNA-siRNA(SS or AS)とアニーリングされたDNAのシーケンスの長さが少なくとも2個以上となってこそ細胞内RNase Hによって追加的に導入されたsiRNAシーケンスが切られてmRNAタンパク翻訳効率が回復できることが分かった。よって、以後の実験ではmRNA-siRNA(SS or AS)にsiRNA-dTdTdTdTdTdT(T6)をアニーリングさせて細胞内導入時にRNase HによってmRNAとsiRNAとに分離してmRNAのタンパク質翻訳効率およびsiRNAのタンパク質抑制効率が維持できるようにデザインした。
【0063】
実験例3.各構造体のタンパク質発現能力および遺伝子発現抑制能力評価
前記実施例において製造した互いに異なるmRNA-siRNA構造体のタンパク質発現能力および遺伝子発現抑制効果を確認した。具体的に、細胞を96-ウェルプレートにウェル当たり1×104個でシーディングし、形質注入試薬を使用して細胞を10pg mRNA/cellの用量の各構造体で形質注入(transfection)させた。形質注入24、48時間後、フローサイトメーターFACS Calibur(BD Biosciences、CA)を使用して各実施例で発現される青い蛍光タンパク質および緑色蛍光タンパク質の蛍光強度を測定して各構造体のタンパク質発現効率を確認し、その結果を図9および図10に示した。実験に使用したすべての実施例を下記表6に示した。
【0064】
【表6】
【0065】
図9のaに示したように、3’末端にsiRNA配列を含むmRNAを形質注入した実施例において青い蛍光強度が減少し、これを通じてsiRNA配列を連結することによってタンパク質発現効率が低くなったことを確認した。これに対し、mBFP(SS)にsiGFP(AS)-TTTTTT(T6)、siGFP(AS)-TTTT(DNA)をアニーリングさせた実施例とmBFP(AS)にsiGFP(SS)-TTTTTT(T6)、siGFP(SS)-TTTT(DNA)をアニーリングさせた実施例の場合、減少された翻訳効率が顕著に増加し、mBFPを形質注入した場合よりも蛍光強度が強くてmRNAのタンパク質発現能力が完全に回復したことを確認した。
【0066】
前記結果を通じて、3’末端にsiRNA(センス/アンチセンス)配列を含むmRNAと、前記siRNAに相補的に結合するsiRNA(アンチセンス/センス)配列を含むsiRNAを混成化させる場合(mRNA-siRNA)、mRNAにsiRNA配列を連結させることによる翻訳効率の減少を克服できることを確認した。さらに、減少された翻訳効率は、アニーリングされるsiRNAの3’末端に位置するOligo(dT)がT2である場合よりはT6が、T6である場合よりはT4であるとき顕著に増加することを確認した。
【0067】
一方、図9のbに示したように、mBFP(SS)にsiGFP(AS)-TTTTTT(T6)をアニーリングさせた実施例とmBFP(AS)にsiGFP(SS)-TTTTTT(T6)をアニーリングさせた実施例において緑色蛍光強度が減少し、特に測定された蛍光強度が正常siRNAを形質注入した場合と類似することを確認した。
前記結果を通じて、mRNAのタンパク質発現とは独立して、3’末端にsiRNA(センス/アンチセンス)配列を含むmRNAと、前記siRNAに相補的に結合するsiRNA(アンチセンス/センス)配列を含むsiRNAを混成化させる場合(mRNA-siRNA)、前記siRNAが標的する遺伝子の発現が顕著に抑制されることを確認した。特に、タンパク質発現抑制効率は、アニーリングされるsiRNAの3’末端に位置するOligo(dT)がT6である場合に最も高いことを確認した。
【0068】
このような結果は、形質注入48時間後にも類似して示されることを確認した。ただし、図10のaに示したように、mRNAにsiRNA配列を連結させることによる減少された翻訳効率は、アニーリングされるsiRNAの3’末端に位置するOligo(dT)がT2またはT4であるとき最も大きく増加した。また、図10のbに示したように、遺伝子発現抑制効率は、mBFP(AS)にsiGFP(SS)-TTTTTT(T6)をアニーリングさせた実施例において最も高かった。
【0069】
上述した分析結果、本発明によるmRNA-siRNA核酸構造体は、高効率で細胞に同時に導入され、導入された後に細胞内RNaseによってmRNAとsiRNAとの間に形成された二本鎖混成体が切断されてターゲットタンパク質を発現させることができるmRNAと特定遺伝子の発現を抑制させることができるsiRNAとに分離されることを確認した。さらに、このような特異的構造を有することで、本発明によるmRNA-siRNA核酸構造体は、一つの細胞でmRNAによるターゲットタンパク質の発現およびsiRNAによる特定遺伝子の発現抑制を同時に成功的に達成することができることを確認した。
【0070】
実験例4.本発明による核酸構造体の免疫原性向上能力評価
mRNAは、トール-類似受容体(toll-like receptor、TLR)を刺激して免疫反応を誘導する効果があると知られている。すなわち、mRNAは、自体に免疫反応誘導効果があると同時に抗原(タンパク質)発現が可能であって別途のアジュバント(adjuvant)なしにもワクチンとして活用可能である。一方、このようなmRNA基盤ワクチンは樹枝状細胞やT細胞に特定抗原を発現させるが、このとき、STAT3タンパク質は免疫反応活性化を抑制して樹枝状細胞の成熟(maturation)を抑制する。
【0071】
よって、本発明者らは、本発明による核酸構造体を活用して、抗原を発現するように設計されたmRNA構造体にSTAT3の発現を抑制するsiRNA配列を導入すると、免疫回避妨害を受けないと同時に樹枝状細胞の成熟を効果的に促進することができるものと判断して、次のように実験を遂行した。先ず、前記実施例に記載したことと同一の方法で、本発明による核酸構造体にオボアルブミン(Ovalbumin、OVA)を発現するmRNAおよびSTAT3遺伝子の発現を抑制するsiRNAを導入した。比較実験群としては、STAT3を標的するsiRNA(siSTAT3)、オボアルブミンを発現するmRNAとsiSTAT3の単純混合物(mOVA+siSTAT3)を使用した。実験に使用したすべてのmRNAとsiRNA配列は、前記実施例内の表3に記載した。
【0072】
4-1.STAT3タンパク質発現抑制効果
骨髄-由来樹枝状細胞(bone marrow-derived dendritic cell、BMDC)に前記製造したsiSTAT3、mOVAおよびsiSTAT3の単純混合物(mOVAおよびsiSTAT3の単純混合物)およびmOVA-siSTAT3/siSTAT3構造体をそれぞれ処理した。具体的に、BMDC(1×106cells/ウェル)を10% FBSと抗生剤(100unit/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン)を含むX-vivo 15 mediaで37℃で24時間の間24-ウェルプレートで培養した。培養したBMDCを対象にsiSTAT3、mOVA+siSTAT3およびmOVA-siSTAT3/siSTAT3をそれぞれ形質注入した。各BMDCでSTAT3遺伝子の発現程度をqRT-PCR方法を使用して分析し、その結果を図11に示した。
【0073】
図11に示したように、本発明による核酸構造体にmOVAおよびsiSTAT3を導入したmOVA-siSTAT3/siSTAT3(mOVA-T6-STAT3i)処理時、mOVAおよびsiSTAT3を単純混合したmOVA+siSTAT3に比べてSTAT3発現が顕著に抑制されることを確認した。前記結果を通じて、分離されたmRNAおよびsiRNAを混合して投与することよりタンパク質発現を目的とするmRNAとsiRNAが結合された形態のmRNA-siRNA核酸構造体を投与する場合に免疫原性向上効果に遥かに優れることを確認した。
また、前記発現変化の確認結果をwestern blotを通じて確認し、その結果を図12に示した。
図12において確認できるように、mRNAとsiRNAが結合された形態のmRNA-siRNA核酸構造体を投与する場合に免疫原性向上効果に遥かに優れることを確認した。
【0074】
4-2.樹枝状細胞成熟促進効果
前記実験例4-1に記載したことと同一の方法で骨髄-由来樹枝状細胞(bone marrow-derived dendritic cell、BMDC)に前記製造したsiSTAT3、mOVA+siSTAT3およびmOVA-siSTAT3/siSTAT3構造体をそれぞれ処理して12時間ないし48時間の間培養した。一部細胞を取って細胞表面で発現するCD40およびCD80マーカーの発現量をフローサイトメトリー(Fluorescence-activated cell sorting、FACS)を通じて分析した。その結果を図13に示した。
【0075】
図13に示したように、本発明による核酸構造体にmOVAおよびsiSTAT3を導入したmOVA-siSTAT3/siSTAT3処理時、mOVAおよびsiSTAT3を単純混合したmOVA+siSTAT3に比べて成熟した樹枝状細胞の表現型であるCD40およびCD80の発現がいずれも顕著に増加することを確認した。前記結果を通じて、分離されたmRNAおよびsiRNAを混合して投与することよりタンパク質発現を目的とするmRNAとsiRNAが結合された形態のmRNA-siRNA核酸構造体を投与する場合に樹枝状細胞成熟促進効果に遥かに優れることを確認した。
【0076】
4-3.オボアルブミン(Ovalbumin、OVA)発現確認
mOVA-siSTAT3/siSTAT3(mOVA-T6-STAT3i)構造体を樹枝状細胞に処理した後、OVAの発現量をELISAを通じて測定して、その結果を図14に示した。
図14において確認できるように、相当量のOVAの発現がmOVA-siSTAT3/siSTAT3構造体処理を通じて確認された。
【0077】
実験例5.Tetramer assay
In vivo研究のために、mOVA+siSTAT3混合物またはmOVA-siSTAT3/siSTAT3(mOVA-T6-STAT3i)は微細流体装置(NanoAssemblr Benchtop(Precision Nanosystems、Canada)を使用して次の組成の速い混合により脂質ナノ粒子で製剤化された:脂質混合物を含むエタノール相(C12-200:ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE):コレステロール:C14-ポリエチレングリコール(PEG)2000=35:16:46.5:2.5、モル比)および水性相(10mMクエン酸塩緩衝液、pH3)。
【0078】
細胞毒性T細胞免疫誘導を確認するために、脂質で剤形化されたmOVA+siSTAT3混合物またはmOVA-siSTAT3/siSTAT3ナノ粒子を6週齢雌C57BL/6マウス(20pmole mOVA+20pmole siSTAT3混合物または20pmole mOVA-siSTAT3/siSTAT3)に筋肉内注射した。注射1週間後、脾臓細胞を分離して抗体混合物(PerCP/Cyanine5.5-anti-mouse CD8a、FITC-anti-mouse CD44およびAPCanti-mouse CD45(BioLegend、USA))と組み合わせられたSIINFEKL(OVAのMHCIペプチドエピトープ)四量体で染色した。
【0079】
染色された細胞は、NovoCyte Flow Cytometer(ACEA)を使用して検証され、Flowjoソフトウェアはデータ分析に使用された。
前記結果を図15および図16に示した。
脾臓細胞のうちCD45、SIINFEKLおよびCD8aの三重陽性細胞集団は、OVA-特異的細胞毒性T細胞を示した。図15に示したように、mOVA-siSTAT3/siSTAT3処理された樹枝状細胞から収獲された脾臓細胞の13.9%が三重陽性細胞集団で分析された。
また、図16は、mOVA-siSTAT3/siSTAT3を処理したマウスの脾臓細胞でさらに高いOVA特異細胞毒性T細胞集団が観察されたことを見せる。向上した樹枝状細胞成熟は、向上した細胞毒性T細胞免疫を有したmRNAで達成できることと確認された。
このような結果は、Ovalbumine抗原に対するCD8+T細胞誘導効果で本発明による核酸構造体の優れた効果を示す。
【0080】
実験例6.総IgG分析
前記実験例5のマウスセットを利用して総IgG含量の分析を遂行した。血清サンプルは、注入後1週間に収集された。Nunc Maxisorp免疫プレートを一晩中培養して10ug/mlのovalbumin(invivogen)でコーティングした。ovalbuminコーティングされたプレートを希釈された血清(1%牛血清アルブミン(BSA)で1:200)とともに37℃で2時間の間培養した後、洗浄緩衝液(0.05%Tween-20が含まれたPBS)で洗浄した。洗浄されたプレートを2次抗体(Mouse IgG重鎖および軽鎖抗体(Bethyl Laboratories、USA))とともに1時間の間培養した後、洗浄バッファーで洗浄した後、最後にプレートをTMB基質溶液(Thermo Scientific)で処理して停止溶液(Thermo Scientific)を使用して反応を停止した後、450nmにおける吸光度をmicroplate multi-readerで測定した。
その結果を図17に示した。
図17で確認できるように、OVA-特異的IgG発現向上が誘導されたことを確認した。
【0081】
実験例7.腫瘍サイズ減少確認
前記実験例5のマウスセットを利用して腫瘍抑制効果を確認した。薬物注入1週間後、オボアルブミン(3107E.G.7-OVA細胞)を発現する腫瘍細胞にチャレンジした。腫瘍チャレンジ後、デジタルキャリパーを使用して腫瘍サイズを測定して腫瘍の体積をeq.V=0.5W2L(V;腫瘍体積、W;腫瘍幅、L;腫瘍長さ)で計算した。
前記結果を図18に示した。
図18で確認できるように、siSTAT3/siSTAT3(mOVA-T6-STAT3i)は、単純mixtureと対比して顕著に優れる腫瘍抑制効果を示した。
前記のような実験を通じて、本発明によるmRNA-siRNA核酸構造体はmRNAとsiRNAが同時に細胞に導入されて、mRNAは発現しようとするタンパク質を正常に発現し、siRNAは特定遺伝子の発現を特異的に抑制することができることを確認した。前記結果を通じて、本発明による核酸構造体は、抗原提示細胞にターゲットタンパク質を発現させて免疫体係を活性化させると同時に、免疫チェックポイントタンパク質の活性化を遮断して免疫回避妨害を克服することができ、免疫治療分野、特に、抗がん免疫治療分野で非常に有用に使用することができることを確認した。
図1
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【配列表】
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