(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、硬化被膜、硬化被膜付き基材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20250303BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20250303BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250303BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250303BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20250303BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
C08F290/06
C09D4/02
C09D7/63
C09D7/61
B32B27/18 F
B05D7/24 301T
B05D7/24 302P
(21)【出願番号】P 2024166730
(22)【出願日】2024-09-25
【審査請求日】2024-10-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真也
(72)【発明者】
【氏名】本田 清二
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-057855(JP,A)
【文献】特開2012-025898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09D
B32B
B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレートモノマー(A)、光重合開始剤(B)、およびアレル物質低減化剤(C)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記(メタ)アクリレートモノマー(A)が、アルキレンオキサイドが付加されていない(メタ)アクリレートモノマー(A1)およびアルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)を含み、
前記(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量が、樹脂固形分に対して80.0質量%以上であり、前記アルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量に対して20.0質量%以上であり、
前記光重合開始剤(B)の含有量が、樹脂固形分に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であり、
前記アレル物質低減化剤(C)の含有量が、樹脂固形分に対して7.0質量%以上
25.0質量%以下であり、
光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂(D)の含有量が、樹脂固形分に対して15.0質量%未満である、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量が、樹脂固形分に対して98.0質量%以下である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量に対して90.0質量%以下である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アレル物質低減化剤(C)の含有量が、樹脂固形分に対して
7.5質量%以上24.0質量%以下である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂(D)の含有量が、樹脂固形分に対して5.0質量%未満である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜のアレル物質の低減化率が60.0%以上である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
塗料として用いられる、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜。
【請求項9】
基材表面の少なくとも一部に、請求項1~7のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物から形成された硬化被膜を有する硬化被膜付き基材。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を基材の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、紫外線照射により前記光硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化被膜を形成する硬化工程と、
を含む、硬化被膜付き基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜、該硬化被膜付き基材、および該硬化被膜付き基材の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉、ダニ、ハウスダストなどのアレル物質によるアレルギー疾患が増加している。特に、室内環境でのアレル物質の低減化を目的として、床材に高いアレル物質の低減化機能を付与するための塗料組成物の開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子のアレル物質低減化剤(A)と、光硬化性モノマー(B)と、光硬化性オリゴマー(C)と、重合開始剤(D)と、を必須成分として含有することを特徴とする床材トップコート用光硬化性塗料が提案されており、光硬化性オリゴマー(C)は、床材トップコート用光硬化性塗料の樹脂固形分量に対して、15~75重量%の割合で含有されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の床材トップコート用光硬化性塗料は赤褐色に色が付き易く、透明性が悪化する恐れがあった。さらに、このような光硬化性塗料の粘度は高くなりやすい傾向があるため、塗料中に配合できるアレル物質低減化剤の添加量に限りがあり、増粘に伴い塗工性も低下する恐れがあった。また、既存の無機物質のアレル物質低減化剤の多くは少量の添加では効果が得られにくく、高濃度の添加が必要になる場合がある。この場合、硬化被膜の透明性が損なわれたりする可能性が高く、耐汚染性や耐薬品性等の表面性能が低下する恐れがあった。
【0006】
本発明者らは、光硬化性樹脂組成物をモノマー主体で構成することで、アレル物質低減化剤の添加量が少なくても、アレル物質の低減化効率を改善できることを知見した。これは、光硬化性樹脂組成物をモノマー主体で構成した場合には架橋密度が高まり、オリゴマーや樹脂主体で構成した光硬化性樹脂組成物よりもアレル物質低減化剤が表面に効率よく配向し、表面に均一に分布しやすく、被膜に強固に保持されることが影響していると推察される。
【0007】
さらに、本発明者らは、アルキレンオキサイドが付加されていない(メタ)アクリレートモノマーの含有量が多い場合、架橋点が増加し、硬化収縮が顕著に発生するため、アルキレンオキサイドを付加された(メタ)アクリレートモノマーをバランスよく配合することで硬化収縮を抑制することができ、アレル物質の低減化効率も高く維持できることを知見した。
【0008】
本発明は上記の背景技術および課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アレル物質の低減化、耐汚染性、耐薬品性、耐カール性、および透明性に優れる硬化被膜を形成可能な光硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、(メタ)アクリレートモノマー(A)としてアルキレンオキサイドが付加されていない(メタ)アクリレートモノマー(A1)およびアルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)、光重合開始剤(B)、ならびにアレル物質低減化剤(C)を含有する光硬化性樹脂組成物において、これらの成分および光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂(D)の含有量を調節することにより、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (メタ)アクリレートモノマー(A)、光重合開始剤(B)、およびアレル物質低減化剤(C)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記(メタ)アクリレートモノマー(A)が、アルキレンオキサイドが付加されていない(メタ)アクリレートモノマー(A1)およびアルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)を含み、
前記(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量が、樹脂固形分に対して80.0質量%以上であり、前記アルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量に対して20.0質量%以上であり、
前記光重合開始剤(B)の含有量が、樹脂固形分に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であり、
前記アレル物質低減化剤(C)の含有量が、樹脂固形分に対して7.0質量%以上であり、
光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂(D)の含有量が、樹脂固形分に対して15.0質量%未満である、光硬化性樹脂組成物。
[2] 前記(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量が、樹脂固形分に対して98.0質量%以下である、[1]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[3] 前記アルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量に対して90.0質量%以下である、[1]または[2]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[4] 前記アレル物質低減化剤(C)の含有量が、樹脂固形分に対して25.0質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[5] 光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂(D)の含有量が、樹脂固形分に対して5.0質量%未満である、[1]~[4]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[6] 前記硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜のアレル物質の低減化率が60.0%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[7] 塗料として用いられる、[1]~[6]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜。
[9] 基材表面の少なくとも一部に、[1]~[7]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物から形成された硬化被膜を有する硬化被膜付き基材。
[10] [1]~[7]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を基材の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、紫外線照射により前記光硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化被膜を形成する硬化工程と、
を含む、硬化被膜付き基材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アレル物質の低減化、耐汚染性、耐薬品性、耐カール性、および透明性に優れる硬化被膜を形成可能な光硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、このような光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜、該硬化被膜付き基材、および該硬化被膜付き基材の製造方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
「樹脂固形分」とは、(メタ)アクリレートモノマー(A)、光重合開始剤(B)、および光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂(D)の総量であり、硬化させたときに硬化被膜を構成する成分を示す。なお、樹脂固形分の量には、アレル物質低減化剤(C)の量は含まれない。
【0013】
<光硬化性樹脂組成物>
本発明による光硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリレートモノマー(A)、光重合開始剤(B)、およびアレル物質低減化剤(C)を含有するものである。本発明においては、光硬化性樹脂組成物が(A)~(C)成分を含み、光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂(D)の含有量を低減することで、アレル物質の低減化、耐汚染性、耐薬品性、耐カール性、および透明性に優れる硬化被膜を形成することができる。
【0014】
本発明による光硬化性樹脂組成物中の樹脂固形分の含有量は、光硬化性樹脂組成物の全量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、さらにより好ましくは85質量%以上であり、また、95質量%以下であってもよく、93質量%以下であってもよく、91質量%以下であってもよい。
【0015】
以下、光硬化性樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
【0016】
((メタ)アクリレートモノマー(A))
(メタ)アクリレートモノマー(A)は、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、光硬化性樹脂組成物に対して紫外線照射した際、硬化被膜を形成する。本発明で用いる(メタ)アクリレートモノマー(A)は、アルキレンオキサイドが付加されていない(メタ)アクリレートモノマー(A1)およびアルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)を含む。
【0017】
(アルキレンオキサイドが付加されていない(メタ)アクリレートモノマー(A1))
アルキレンオキサイドが付加されていない(メタ)アクリレートモノマー(A1)としては、多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとは、分子内に官能基として2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味する。
【0018】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートおよびネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラフルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のハロゲン置換アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート;水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;1,3-ジオキサン-2,5-ジイルジ(メタ)アクリレート等のジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールFジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物等のビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート;シリコーンジ(メタ)アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート;2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン;2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン;2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート;等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3価以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
上記の多官能(メタ)アクリレートモノマーの中でも、耐汚染性、耐薬品性の観点から、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることがより好ましい。
【0021】
(アルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2))
アルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレンオキサイドが付加された多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、エチレンオキサイドが付加された多官能(メタ)アクリレートモノマーがより好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、上記の(A1)で説明した通りである。
【0022】
(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量は、硬化被膜の性能の観点から、樹脂固形分に対して80.0質量%以上であり、好ましくは82.0質量%以上であり、より好ましくは84.0質量%以上であり、さらに好ましくは86.0質量%以上であり、最も好ましくは88.0質量%以上であり、また、好ましくは98.0質量%以下であり、より好ましくは97.0質量%以下であり、さらに好ましくは96.0質量%以下である。特に、本発明においては、光硬化性樹脂組成物中の(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量を高めて、光硬化性樹脂組成物をモノマー主体で構成した場合には架橋密度が高まり、オリゴマーや樹脂主体で構成した光硬化性樹脂組成物よりもアレル物質低減化剤が表面に効率よく配向し、表面に均一に分布しやすく、被膜に強固に保持されることで、アレル物質の低減化効率を改善できると推察される。
【0023】
本発明においては、(メタ)アクリレートモノマー(A)として、アルキレンオキサイドが付加されていない(メタ)アクリレートモノマー(A1)およびアルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)を特定の割合で併用することで、硬化被膜の硬化収縮を抑え、耐カール性を向上させることができる。そのため、アルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)の含有量は、(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量(A1+A2)に対して20.0質量%以上であり、好ましくは30.0質量%以上であり、より好ましくは35.0質量%以上であり、さらに好ましくは40.0質量%以上であり、最も好ましくは45.0質量%以上であり、また、好ましくは90.0質量%以下であり、より好ましくは85.0質量%以下であり、さらに好ましくは80.0質量%以下であり、さらにより好ましくは75.0質量%以下である。
【0024】
(光重合開始剤(B))
光重合開始剤は、特に限定されず、従来公知の光硬化性樹脂組成物用の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、アセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイルホルメート系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤、ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤等が挙げられる。
【0025】
アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、およびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
アセトフェノン系重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。
ベンゾイルホルメート系重合開始剤としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
チオキサントン系重合開始剤としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
オキシムエステル系重合開始剤としては、2-[(ベンゾイルオキシ)イミノ]-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1-オン、および1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]-3-(シクロペンチル)プロパン-1-オンO-アセチルオキシム等が挙げられる。
ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤としては、およびベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、および4,4’-ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン等が挙げられる。
これらの重合開始剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
光重合開始剤(B)の含有量は、光硬化性樹脂組成物の硬化性および硬化被膜の性能の観点から、樹脂固形分に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上9.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上8.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上7.0質量%以下である。
【0027】
(アレル物質低減化剤(C))
アレル物質低減化剤(C)は、特に限定されず、従来公知のアレル物質低減化剤を用いることができる。アレル物質低減化剤としては、例えば、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子、アニオン系界面活性剤、水酸基を有する化合物または高分子等の有機系アレル物質低減化剤、金属塩等の無機系アレル物質低減化剤が挙げられる。
【0028】
(有機系アレル物質低減化剤)
フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子としては、例えば、ポリ(3,4,5-ヒドロキシ安息香酸ビニル)、ポリ(4-ビニルフェノール)等のポリビニルフェノール、ポリチロシン、ポリ(1-ビニル-5-ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1-ビニル-6-ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1-ビニル-5-ヒドロキシアントラセン)等が挙げられる。これらのフェノール性水酸基を有する非水溶性高分子は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、塩化ヘキサデシルピリジニウム、臭化ヘキサデシルピリジニウム、臭化オクタデシルピリジニウム、臭化ドデシルピコリニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化ベンジルピリジニウム、塩化ブチルピリジニウム、アンモニウム塩、トリエタノールアミンやオクタデシルトリメチルアミン等のアミン、アミン塩等が挙げられる。これらのアニオン系界面活性剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
水酸基を有する化合物または高分子としては、例えば、没食子酸、ポリビニルアルコール、ポリ(4-ビニルフェノール)、ポリチロシン、リグノフェノール誘導体、セルロース、スターチ、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、イヌリン、キトサン、クラスターデキストリン、グアーガム、タンニン酸、カテキン、キチン、キトサン、植物抽出物等が挙げられる。これらの水酸基を有する化合物または高分子は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(無機系アレル物質低減化剤)
金属塩としては、例えば、銅、亜鉛、ジルコニウム、錫、鉛、アルミニウム等の2~4価の金属の硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩や、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等のアルカリ金属の炭酸塩、およびこれらを含む複塩(明礬等)等を挙げることができる。これらの中でも、2~4価の金属の硫酸塩、酢酸塩、およびリン酸塩等が好ましく、例えば、硫酸亜鉛、酢酸鉛、リン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム等がより好ましい。これらの金属塩は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
更に、上記の有機系アレル物質低減化剤と無機系アレル物質低減化剤を併用してもよい。また、上記無機系アレル物質低減化剤(金属塩等)と有機化合物の混合物でもよい。有機化合物としては、塩化ヘキサデシルピリジニウム、臭化ヘキサデシルピリジニウム、臭化オクタデシルピリジニウム、臭化ドデシルピコリニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化ベンジルピリジニウム、塩化ブチルピリジニウム、アンモニウム塩、トリエタノールアミンやオクタデシルトリメチルアミン等のアミン、アミン塩等の窒素化合物等を挙げることができる。これらの有機化合物は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明による光硬化性樹脂組成物においては、無機系アレル物質低減化剤は有機系アレル物質低減化剤に比べて塗料の粘度を増化させにくく、有機系アレル物質低減化剤に比べて少量の添加量でアレル物質の低減化効果が期待される観点から、アレル物質低減化剤としては無機系アレル物質低減化剤である金属塩を含むものが好ましい。
【0034】
アレル物質低減化剤(C)の含有量は、硬化被膜のアレル物質の低減化の性能の観点から、樹脂固形分に対して7.0質量%以上であり、好ましくは7.5質量%以上であり、より好ましくは8.0質量%以上であり、また、好ましくは25.0質量%以下であり、より好ましくは24.0質量%以下である。
【0035】
(光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂(D))
光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂(D)は、光硬化性基を有するオリゴマーおよび樹脂であれば特に制限されないが、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系オリゴマーおよび/または(メタ)アクリレート系樹脂であることが好ましい。このような光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂(D)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性(メタ)アクリレートモノマーを用いて得ることができる。
【0036】
光硬化性(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、アクリル酸エステル共重合体の側鎖にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入した共重合系(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。光硬化性(メタ)アクリレートモノマーは、1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂としては、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマー等の(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエーテル(メタ)アクリレート系樹脂等の(メタ)アクリレート系樹脂が挙げられる。これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーおよび樹脂が好ましい。光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂は、1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
光硬化性オリゴマーおよび光硬化性樹脂(D)の含有量は、硬化被膜の耐汚染性および耐薬品性等の性能の観点から、樹脂固形分に対して15.0質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、0質量%であってもよい。
【0039】
(その他の成分)
本発明による光硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記(A)~(D)成分以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、無機粒子、レベリング剤、分散剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、非反応性希釈剤、つや消し剤、消泡剤、沈降防止剤、熱安定剤、密着性向上剤、光増感剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、シランカップリング剤、可塑剤等を必要に応じて配合することができる。
【0040】
本発明による光硬化性樹脂組成物は、非反応性希釈剤(有機溶剤)で希釈する溶剤型樹脂組成物、また、有機溶剤で希釈する必要が無い無溶剤型樹脂組成物のどちらとしても構わない。ただし、揮発性有機化合物(VOC)の残留がないため、人体への影響がなく環境対応性に優れる等の理由から、無溶剤型樹脂組成物であることが好ましい。
【0041】
<光硬化性樹脂組成物の調製方法>
本発明による光硬化性樹脂組成物は、上記の各成分を、従来公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用いて、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、ホモディスパー、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0042】
<硬化被膜>
本発明による硬化被膜は、上記の光硬化性樹脂組成物から形成される。上記のアレル物質低減化剤を特定量含む光硬化性樹脂組成物から形成された硬化被膜は、アレル物質の低減化に有効である。本発明による硬化被膜のアレル物質の低減化率は、好ましくは60.0%以上であり、より好ましくは70.0%以上であり、さらに好ましくは80.0%以上であり、さらにより好ましくは90.0%以上であり、最も好ましくは95.0%以上である。なお、本発明においてアレル物質の低減化率とは、下記の実施例で詳述するサンドイッチELISA法により測定した24時間後のアレル物質の低減化率(%)である。
【0043】
硬化被膜の膜厚は特に限定されないが、透明性等の観点から、好ましくは1μm以上100μm以下であり、より好ましくは2μm以上80μm以下であり、さらに好ましくは3μm以上60μm以下であり、さらにより好ましくは4μm以上40μm以下であり、最も好ましくは5μm以上20μm以下である。本発明における膜厚とは、硬化被膜の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等にて観察した際の、硬化被膜の厚さを指す。このような膜厚の被膜を形成する際は、1回の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよいし、複数回の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよい。
【0044】
<硬化被膜付き基材>
本発明による硬化被膜付き基材は、基材表面の少なくとも一部に、上記の光硬化性樹脂組成物から形成された硬化被膜を備えるものである。また、硬化被膜付き基材の最表層に当該硬化被膜を備えているものであれば、複数の被膜が積層されていても良い。硬化被膜は、基材の片面全面に設けられていてもよく、片面の一部にのみ設けられていてもよく、また基材の両面に設けられていてもよい。一部に設ける場合の硬化被膜の態様は特に制限されず、例えば、海島状の海部または島部、格子状、モザイク状など任意の態様を特に制限することなく採用できる。
【0045】
(基材)
基材としては特に限定されず、木質部材、印刷シートおよび壁紙等の部材、各種のプラスチックフィルムを用いることができる。木質部材としては、例えば、化粧単板付き合板、フローリング材、無垢材、階段材、手摺、框などが挙げられる。印刷シートおよび壁紙等の部材としては、ポリオレフィンシートや強化紙等に印刷を施したシートおよび長尺の巻取りシートなどが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂等のフィルムが挙げられる。アレル物質の低減化確認試験の際には、試験溶液などが基材に吸収されない、プラスチックフィルムなどが好ましく、例えばPETフィルムを用いることがより好ましい。基材の厚さは、特に限定されるものではないが、アレル物質低減化剤の表面への露出などの観点から、好ましくは1μm以上、100μm以下であり、より好ましくは2μm以上80μm以下であり、さらに好ましくは、3μm以上60μm以上であり、さらにより好ましくは4μm以上40μm以下であり、最も好ましくは5μm以上20μm以下である。
【0046】
<硬化被膜付き基材の製造方法>
本発明による硬化被膜付き基材の製造方法は、上記の光硬化性樹脂組成物を基材の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後、紫外線照射により上記の光硬化性脂組成物を硬化させて硬化被膜を形成する硬化工程と、
を含むものである。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0047】
(塗布工程)
塗布工程は、基材の少なくとも一方の面に、従来公知の方法により、上記の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程である。塗布には、例えば、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗布機が使用できる。これらの中でも、作業性および生産性の観点からロールコーターを用いた塗布方法が好ましい。
【0048】
塗布膜厚は、特に限定されず、基材の種類によって、適宜選択される。塗布膜厚は、硬化乾燥後の膜厚が、上記硬化被膜の膜厚の範囲にあることが好ましい。
【0049】
樹脂組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗布後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは10~200℃、被膜の平滑性および外観の観点から更に好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から更に好ましい下限は30℃である。
【0050】
(硬化工程)
硬化工程は、基材の塗布面に紫外線を照射して、塗布された光硬化性樹脂組成物を硬化させて、硬化被膜を形成する工程である。紫外線で硬化させる方法としては、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射は、酸素による硬化阻害を抑制するために、必要に応じて窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。紫外線の照射量は、光硬化性樹脂組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から、好ましくは100~3,000mJ/cm2であり、より好ましくは200~1,000mJ/cm2である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
まず、光硬化性樹脂組成物のために、以下の材料を準備した。
・(A1)(メタ)アクリレートモノマー1:EO付加無し、2官能、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、東亞合成株式会社製、商品名:アロニックス M-220
・(A1)(メタ)アクリレートモノマー2:EO付加無し、3官能、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、東亞合成株式会社製、商品名:アロニックス M-309
・(A1)(メタ)アクリレートモノマー3:EO付加無し、6官能、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、東亞合成株式会社製、商品名:アロニックス M-400
・(A2)EO変性(メタ)アクリレートモノマー1:2官能、EO変性1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-HD(EO)DA)、Miwon株式会社製、商品名:MIRAMER M-202
・(A2)EO変性(メタ)アクリレートモノマー2:3官能、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP(EO)TA)、東亞合成株式会社製、商品名:アロニックス M-350
・(A2)EO変性(メタ)アクリレートモノマー3:6官能、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DP(EO13)HA)、Green Chem株式会社製、商品名:KOMERATE M136
・(B)光重合開始剤1(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、IGM Resin社製、商品名:Omnirad 184)
・(B)光重合開始剤2(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)オキソ(フェニル)アセテート、IGM Resin社製、商品名:Omnirad 754)
・(C)アレル物質低減化剤1:無機系アレル物質低減化剤、大和化学工業株式会社製、商品名:アレルノンYKパウダー
・(C)アレル物質低減化剤2:有機系アレル物質低減化剤、積水マテリアルソリューションズ株式会社製、商品名:アレルバスターBV
・(C)アレル物質低減化剤3:有機系アレル物質低減化剤、丸善石油化学株式会社製、商品名:マルカリンカ―S-2P
・(C)アレル物質低減化剤4:無機系アレル物質低減化剤、東亞合成株式会社製、商品名:アレリムーブ ZS-200
・(C)アレル物質低減化剤5:無機系アレル物質低減化剤、東亞合成株式会社製、商品名:アレリムーブ ZS-300
・(D)光硬化性オリゴマー1:6官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、三菱ケミカル株式会社製、商品名:紫光UV-7600B
・(D)光硬化性オリゴマー2:2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、三菱ケミカル株式会社製、商品名:紫光UV-6640B
【0053】
[実施例1~15、比較例1~15]
[光硬化性樹脂組成物の調製]
表1および2に記載の配合に従って、各成分を混合することにより、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0054】
[硬化被膜付き基材の製造]
基材フィルム(PETフィルム、厚さ100μm)上に、上記で調製した光硬化性樹脂組成物を乾燥膜厚が8±2μmとなるように、ナチュラルロールコーターを用いて塗布し、乾燥させた。続いて、基材フィルムの塗布面に、高圧水銀ランプにてUV照射(400mJ/250mW)を行い、被膜を硬化させて硬化被膜を形成し、硬化被膜付き基材を得た。
【0055】
[硬化被膜付き基材の評価]
上記で製造した硬化被膜付き基材を用いて、以下のアレル物質の低減化、耐汚染性、耐薬品性、耐カール性、および透明性の評価を行った。評価結果を表3および4に示した。
【0056】
[アレル物質の低減化確認試験]
(試験手順)
直径9cmのプラスチックシャーレに5cm×5cmの硬化被膜付き基材を入れた。また、アレル物質はダニアレル物質(Der f2)とし、アレル物質濃度15ng/mLの溶液を用意した。
続いて、上記で製造した硬化被膜付き基材の硬化被膜面上にダニアレル物質の溶液を0.4ml滴下した。滴下した液に4cm×4cmに切ったポリエチレンフィルムを被覆させた。シャーレに蓋をし、温度25℃、湿度90%RHの条件下で静置した。
次に、24時間後に試験試料の上に滴下したアレル物質の溶液を回収した。回収した溶液の残存アレル物質の濃度をサンドイッチELISA法により定量し、アレル物質の低減化率を算出した。また、下記の基準でアレル物質の低減化を評価した。評価が◎または〇であれば、合格である。なお、比較例5の硬化被膜付き基材は、カールが激しく、アレル物質の低減化確認試験を行えなかったため、測定不可(-)とした。
(アレル物質の低減化率の算出方法)
アレル物質低減化剤以外の組成が同一であることを条件とし、アレル物質低減化剤を含まない硬化被膜をブランク(未加工品)とし、アレル物質低減化剤が含まれる硬化被膜(加工品)の低減化率を下記式で算出した。
・アレル物質の低減化率(%)=(A-B)/A×100
A:ブランク(未加工品)溶液中の残存アレル物質濃度(ng/mL)
B:硬化被膜(加工品)溶液中の残存アレル物質濃度(ng/mL)
なお、アレル物質低減化剤を含まない硬化被膜の低減化率は必然的に0%となる。
(評価基準)
◎:24時間後の低減化率が80.0%以上であった。
〇:24時間後の低減化率が60.0%以上80.0%未満であった。
×:24時間後の低減化率が60.0%未満であった。
【0057】
[耐汚染性]
(試験手順)
上記で製造した硬化被膜付き基材の硬化被膜面上に青インキ(PILOT社製)を1~2mL滴下した。その後、滴下した青インキを時計皿で被覆し、室温25℃にて6時間静置した。
次に、6時間後に水洗いで硬化被膜の表面を十分にすすぎ、表面の着色残りと外観異常を目視により下記の基準で評価した。評価が3点以上であれば、合格である。
(評価基準)
5:着色跡が確認されなかった。
4:ごく薄く着色跡が確認された。
3:薄く着色跡が確認された。
2:着色跡が確認された。
1:濃い着色跡が確認された。
【0058】
[耐薬品性]
(試験手順)
上記で製造した硬化被膜付き基材の硬化被膜面上にイソジン消毒液を1~2mL滴下した。その後、滴下したイソジン消毒液を時計皿で被覆し、室温25℃にて6時間静置した。
次に、6時間後に水洗いで硬化被膜の表面を十分にすすぎ、表面の着色残りと外観異常を目視により下記の基準で評価した。評価が3点以上であれば、合格である。
(評価基準)
5:着色跡が確認されなかった。
4:ごく薄く着色跡が確認された。
3:薄く着色跡が確認された。
2:着色跡が確認された。
1:濃い着色跡が確認された。
【0059】
[耐カール性]
(試験手順)
上記で製造した硬化被膜付き基材を10cm×10cmの正方形に切り出して、試験体を作成した。
次に、試験体を台の上に静置し、試験体の各頂点から台(設置面)までの距離(高さ)を測定した。各頂点から設置面までの計測した4つの距離の平均値(4頂点の平均高さ)を算出し、耐カール性を下記の基準で評価した。評価が3点以上であれば、合格である。
(評価基準)
5:4頂点の平均高さが5mm未満であった。
4:4頂点の平均高さが5mm以上1mm未満であった。
3:4頂点の平均高さが10mm以上20mm未満であった。
2:4頂点の平均高さが20mm以上であった。
1:フィルムのカールが激しく、測定できなかった。
【0060】
[透明性]
(試験手順)
上記で製造した硬化被膜付き基材を、JIS K5600-4に準拠した隠ぺい率試験紙の上に乗せて、全面を覆った。表面から隠ぺい率試験紙を観察し、黒色部分の白濁感および白黒境目の鮮鋭性を目視により下記の基準で評価した。評価が3点以上であれば、合格である。
(評価基準)
5:白黒部分は鮮明であり、境界線がシャープであった。
4:白黒部分は鮮明であり、境界線が若干ボケた。
3:白黒部分が若干不鮮明であり、境界線が若干ボケた。
2:黒部が白濁し、境界線がボケた。
1:黒部が白濁し、境界線が不鮮明になった。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【要約】
【課題】アレル物質の低減化、耐汚染性、耐薬品性、耐カール性、および透明性に優れる硬化被膜を形成可能な光硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】本発明による光硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリレートモノマー(A)、光重合開始剤(B)、およびアレル物質低減化剤(C)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記(メタ)アクリレートモノマー(A)が、アルキレンオキサイドが付加されていない(メタ)アクリレートモノマー(A1)およびアルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)を含み、
前記(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量が、樹脂固形分に対して80.0質量%以上であり、前記アルキレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートモノマー(A2)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量に対して20.0質量%以上であり、
前記光重合開始剤(B)の含有量が、樹脂固形分に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であり、
前記アレル物質低減化剤(C)の含有量が、樹脂固形分に対して7.0質量%以上であり、
光硬化性オリゴマー(D)の含有量が、樹脂固形分に対して15.0質量%未満である。
【選択図】なし