(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】円盤状基板の製造装置及び円盤状基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/10 20060101AFI20250304BHJP
B24B 37/08 20120101ALI20250304BHJP
B24B 37/28 20120101ALI20250304BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20250304BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B37/08
B24B37/28
B24B41/06 A
B23Q17/00 A
(21)【出願番号】P 2024107713
(22)【出願日】2024-07-03
【審査請求日】2024-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524259126
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・ハードディスク
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間舘 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】久志野 高宏
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112388496(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/00-3/60,21/00-39/06;
41/00-51/00;
B23Q 17/00,17/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状基板を保持するキャリアが上側に載置される下定盤と、
前記下定盤の上側で前記下定盤に対し接近及び離隔する上定盤と、
前記上定盤が前記下定盤から離隔している状態で前記キャリアに対し前記円盤状基板を移載する移載装置と、
前記移載装置に設けられ、前記下定盤の上側の所定位置における前記キャリアの有無を検知する検知装置と、
前記所定位置に前記キャリアが無いことを前記検知装置において検知した場合に前記円盤状基板に対する処理を停止する制御装置と、
を有する円盤状基板の製造装置。
【請求項2】
前記制御装置により停止される前記処理は、前記移載装置による前記移載を含む、
請求項1に記載の円盤状基板の製造装置。
【請求項3】
前記移載装置は、前記キャリアに前記円盤状基板を搬入する搬入装置を含み、
前記検知装置は、少なくとも前記搬入装置に設けられている
請求項1に記載の円盤状基板の製造装置。
【請求項4】
前記検知装置は、
前記移載装置に上下移動可能に設けられ、前記キャリアに対し上側から接触することで前記移載装置に対し上方に移動する接触体、を含む
請求項1に記載の円盤状基板の製造装置。
【請求項5】
下定盤の上側に設置されたキャリアで円盤状基板を保持し前記下定盤と上定盤とによって前記円盤状基板を研磨する円盤状基板の製造方法であり、
前記上定盤が前記下定盤から離隔している状態で前記キャリアに対し前記円盤状基板を移載し、
前記上定盤が前記下定盤から離隔している状態で前記下定盤の上側の所定位置における前記キャリアの有無を検知し、
前記所定位置に前記キャリアが無いことを検知した場合に、前記円盤状基板に対する処理を停止する、
円盤状基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円盤状基板の製造装置及び円盤状基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被加工物を装填する保持孔が形成されたキャリアを有し、キャリアに装填された被加工物を、上下に対向配置された上定盤と下定盤との間に挟持して研磨液を供給しながら研磨する研磨部、を有する湿式研磨装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、キャリアには保持孔が形成されている。この保持孔に被加工物が保持される。これにより、被加工物は下定盤の上側で、キャリアの保持された状態で研磨等の加工がなされる。加工後の被加工物は、アンローダー等で下定盤の上側から搬出される。アンローダーは、被加工物は保持するが、キャリアは保持しないため、通常は、キャリアは下定盤の上側に残った状態を維持する。
【0005】
被加工物としての円盤状基板が薄型化されるに伴い、この円盤状基板を保持するキャリアも薄型化されている。キャリアが薄型化されていると、アンローダーによって円盤状基板を搬出する場合に、キャリアが円盤状基板に付着し、円盤状基板と共にキャリアが排出されやすくなる。すなわち、キャリアが下定盤の上側の所定位置にない状態になってしまう。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、キャリアが下定盤の上側の所定位置に無い状態になっていることを知ることができない。したがって、特許文献1に記載の技術では、キャリアが下定盤の上側の所定位置に無い状態であっても、円盤状基板に対する処理が進行する。
【0006】
本開示は、下定盤の上側の所定位置にキャリアが無い状態では円盤状基板に対する処理を行わない、円盤状基板の製造装置及び製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示では、以下の態様が含まれる。
<1>円盤状基板を保持するキャリアが上側に載置される下定盤と、
前記下定盤の上側で前記下定盤に対し接近及び離隔する上定盤と、
前記下定盤の上側の所定位置における前記キャリアの有無を検知する検知装置と、
前記所定位置に前記キャリアが無いことを前記検知装置において検知した場合に前記円盤状基板に対する処理を停止する制御装置と、
を有する円盤状基板の製造装置。
<2>前記上定盤が前記下定盤から離隔している状態で前記キャリアに対し前記円盤状基板を移載する移載装置を備え、
前記検知装置が、前記移載装置に設けられている<1>に記載の円盤状基板の製造装置。
<3>前記制御装置により停止される前記処理は、前記移載装置による前記移載を含む、<1>に記載の円盤状基板の製造装置。
<4>前記移載装置は、前記キャリアに前記円盤状基板を搬入する搬入装置を含み、
前記検知装置は、少なくとも前記搬入装置に設けられている<2>又は<3>に記載の円盤状基板の製造装置。
<5>前記検知装置は、
前記移載装置に上下移動可能に設けられ、前記キャリアに対し上側から接触することで前記移載装置に対し上方に移動する接触体、を含む<2>~<4>の何れか一項に記載の円盤状基板の製造装置。
<6> 下定盤の上側に設置されたキャリアで円盤状基板を保持し前記下定盤と上定盤とによって前記円盤状基板を研磨する円盤状基板の製造方法であり、
前記上定盤が前記下定盤から離隔している状態で前記下定盤の上側の所定位置における前記キャリアの有無を検知し、
前記所定位置に前記キャリアが無いことを検知した場合に、前記円盤状基板に対する処理を停止する、
円盤状基板の製造方法
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、下定盤の上側の所定位置にキャリアが無い状態では円盤状基板に対する処理を行わない、円盤状基板の製造装置及び製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施形態の円盤状基板の製造装置を含む製造システムの概略構成を示す正面図である。
【
図2A】
図2Aは、円盤状基板の一例としての磁気ディスク基板を示す斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、円盤状基板の一例としての磁気ディスク基板を示す正面図である。
【
図3】
図3は実施形態の研磨装置を示す断面図である。
【
図4】
図4は実施形態の円盤状基板の製造装置のローダー部、研磨部、及びアンローダー部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は実施形態の円盤状基板の製造装置を検知装置の位置で示す断面図である。
【
図6】
図6は実施形態の円盤状基板の製造装置を検知装置の位置で部分的に示す拡大断面図である。
【
図7】
図7は実施形態の円盤状基板の製造装置を検知装置の位置で部分的に示す拡大断面図である。
【
図8】
図8は実施形態の円盤状基板の製造装置を検知装置の位置で部分的に示す拡大断面図である。
【
図9】
図9は実施形態の円盤状基板の製造装置を検知装置の位置で部分的に示す拡大平面図である。
【
図10】
図10は実施形態の円盤状基板の製造装置における制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施形態を説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。本開示において図面を参照して実施形態を説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0011】
以下の図面の記載において、同様の部分には、同様の符号が付されている。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置と各部材の厚みの比率は、現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みと寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係と比率とが異なる部分が含まれている。また、明細書中に特段の断りが無い限り、本開示の各構成要素の個数は、1つに限定されず、複数存在してもよい。
【0012】
以下の実施形態において、構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0013】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値が、それぞれ最小値及び最大値として含まれる。
【0014】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0015】
本開示において、成分が含まれる場合、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
【0016】
本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0017】
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0018】
<円盤状基板の製造システムの全体構成>
本実施形態の円盤状基板の製造システム12の全体構成を、
図1を参照しつつ説明する。
【0019】
円盤状基板の製造システム12は、
図2Aに示される磁気ディスク基板102の製造に用いられるシステムである。本開示では、円盤状基板の製造システム12は、円盤状基板を製造するために必要な1つ以上の他の装置を含んで構成されてよい。磁気ディスク基板102は、本実施形態ではハードディスク用基板であるが、他の用途に用いる基板であってもよい。磁気ディスク基板102の中心には、貫通孔104が形成されている。但し、中心の貫通孔104は無くてもよい。
【0020】
図2Bに示されるように、磁気ディスク基板102は、基材106を有している。基材106は、例えば、アルミニウム板又はアルミニウム合金板であるが、本開示では、これに限定されず、ガラス板等を採用してもよい。以降、アルミニウム板、アルミニウム合金板、ガラス板等を総称して、基材106ともいう。基材106の第一面及び第二面には、めっき層108A、108Bが形成されている。めっき層108A、108Bは、例えば、無電解ニッケル-りんめっきである。この場合、研磨対象表面は、めっき層108A、108Bとすることができる。
【0021】
図1に示されるように、円盤状基板の製造システム12は、供給部22、ローダー部24、研磨部26、アンローダー部28、洗浄乾燥部30、及び排出部32を備えている。ローダー部24及びアンローダー部28は、本開示の技術における移載装置の一例である。ローダー部24は搬入装置の一例でもある。アンローダー部28は搬出装置の一例でもある。
【0022】
供給部22には、ケース34に収納された状態で磁気ディスク基板102が搬送されてくる。円盤状基板の製造システム12は、これらの磁気ディスク基板102に対し、研磨部26による研磨と、洗浄乾燥部30による洗浄及び乾燥と、を実施する。そして、円盤状基板の製造システム12は、洗浄及び乾燥がなされた磁気ディスク基板102をケース34に収納して排出するまでの作業を行う。
【0023】
研磨部26では所定の複数枚の磁気ディスク基板102を同時に研磨することが可能である。ローダー部24から研磨部26への磁気ディスク基板102の搬入、及び研磨部26からアンローダー部28への磁気ディスク基板102の搬出は、例えば、研磨枚数単位で一括して行ってもよい。
【0024】
ローダー部24では、ケース34から磁気ディスク基板102を1枚ずつ取り出す。ローダー部24は、所定枚数の磁気ディスク基板102を一括して保持する。ローダー部24は、所定枚数の磁気ディスク基板102を研磨部26に搬入する。
【0025】
アンローダー部28では、研磨部26で研磨された磁気ディスク基板102を、研磨部26から一括して搬出する。アンローダー部28は、磁気ディスク基板102を1枚ずつ洗浄乾燥部30に搬送する。洗浄乾燥部30によって洗浄及び乾燥がなされた磁気ディスク基板102は、所定枚数ごとにケース34収納され、排出部32から装置外に排出される。
【0026】
以下に、各部の詳細構成と動作について詳述する。
【0027】
<研磨部>
図3に示されるように、研磨部26は、下定盤36、上定盤38、太陽歯車40、内歯歯車42を含んでいる。研磨部26は、磁気ディスク基板102を研磨する研磨装置の一例であり、磁気ディスク基板102を製造する製造装置の一例でもある。
【0028】
下定盤36は、円盤状の部材である。下定盤36は、円環状の水平な上面を有している。下定盤36の上面には研磨布48が貼り付けられている。下定盤36は、垂直軸VAを中心として回転可能に支持されている。下定盤36は、不図示の回転駆動部と連結されている。下定盤36及び下部支持部材は、回転駆動部の回転力を受けて回転する。
【0029】
上定盤38は、円盤状の部材である。上定盤38は、円環状の水平な下面を有している。上定盤38の下面には研磨布48が貼り付けられている。上定盤38に貼り付けられている研磨布48の位置は、下定盤36に貼り付けられている研磨布48と対向する位置である。上定盤38は、垂直軸VAを中心として回転可能に支持されている。上定盤38は、不図示の定盤回転駆動部に連結されている。上定盤38及び上部支持部材は、定盤回転駆動部の回転力を受けて回転する。
【0030】
上定盤38及び上部支持部材は、垂直軸VAに沿って昇降自在に支持されている。上定盤38及び上部支持部材は、不図示の上定盤昇降駆動部の駆動によって昇降する。上定盤38は、昇降により、下定盤36に対し接近及び離隔する。上定盤38及び研磨布48には研磨液供給孔及び離用流体供給孔(いずれも不図示)が多数設けられている。研磨液供給孔及び剥離用流体供給孔を通じて、研磨液及び剥離用流体が供給される。
【0031】
太陽歯車40は、研磨部26の中央位置に設けられている。太陽歯車40は、不図示の太陽歯車回転駆動部の駆動により、垂直軸VAを中心として回転する。太陽歯車40としては、側面部に歯列が一体形成された平歯車、ピン歯車等が用いられる。
【0032】
内歯歯車42は、太陽歯車40と同心円状に配置されている。内歯歯車42は円環状の筒体50を有している。筒体50の内周面には内歯が形成されている。
図5にも示されるように、筒体50の内周側には、下定盤36との間に環状の間隙GPが構成されている。本実施形態の内歯歯車42は、不図示の保持部材に対し回転不能に保持されている。これに代えて、内歯歯車を回転駆動する回転駆動部を設け、垂直軸VAを中心にして内歯歯車を回転させる構成でもよい。内歯歯車42を回転動作させる場合は、太陽歯車40は回転不能に保持されていてもよい。また、内歯歯車42においても、平歯車、ピン歯車等を用いてもよい。
【0033】
キャリア44は、薄板状の円盤部材である。キャリア44の外周面には外歯が形成されている。
図4に示されるように、キャリア44には、保持孔54が複数個形成されている。保持孔54には、磁気ディスク基板102が保持される。
【0034】
研磨部26には、複数個のキャリア44が配置される。キャリア44は、太陽歯車40及び内歯歯車42に噛み合い、太陽歯車40及び内歯歯車42の少なくとも一方の回転に応じて、太陽歯車40の周囲を公転しつつ自転する。
【0035】
研磨部26では、キャリア44に保持された磁気ディスク基板102の上側に上定盤38が位置し、下側に下定盤36が位置する。この状態でキャリア44を公転及び自転させることにより、磁気ディスク基板102の上下両面が、研磨布48によって研磨される。
【0036】
上定盤38の上方には、不図示の流体供給装置が設けられている。流体供給装置は、研磨部26に研磨液及び剥離用流体を供給する。
【0037】
<ローダー部>
図4に示されるように、ローダー部24は研磨部26の前段に配置されている。ローダー部24は、テーブル56と、移載装置58と、を有している。テーブル56は円形である。テーブル56は、不図示の台の上に回転可能に設置されている。移載装置58は、テーブル56の上方に配置されている。ローダー部24の移載装置58は、開示の技術の搬入装置の一例である。
【0038】
テーブル56上には、複数のプレート60が取り付けられている。プレート60の数は、研磨部26のキャリア44と同数である。複数のプレート60の配置は、キャリア44の配置と同じである。各プレート60には、複数のトレイ62が設けられている。トレイ62の位置は、キャリア44の保持孔54に対応する位置である。トレイ62に磁気ディスク基板102を置くことが可能である。
【0039】
移載装置58は、可動基板64を有している。可動基板64はテーブル56と研磨部26の下定盤36との間を水平に移動可能である。また、可動基板64は、下定盤36に対し昇降可能である。
図5にも示されるように、可動基板64の下面には、プレート60と同数の把持プレート66が取り付けられている。把持プレート66の下面には、把持ユニット68が設けられている。把持ユニット68は、エアの給排等によって開閉する一対の爪68Tを有している。
【0040】
<アンローダー部>
アンローダー部28は研磨部26の後段に配置されている。アンローダー部28は、テーブル70と、移載装置72と、を有している。テーブル70は円形である。テーブル70は、不図示の台の上に回転可能に設置されている。移載装置72は、テーブル70の上方に配置されている。アンローダー部28の移載装置72は、開示の技術の搬出装置の一例である。
【0041】
アンローダー部28のテーブル70及び移載装置72は、ローダー部24のテーブル56及び移載装置58と各部が左右対称に配置されていることを除いて同様の構成である。アンローダー部28において、ローダー部24と同一の名称は同様の機能を有するものとして、
図4において同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0042】
<検知装置>
図5及び
図6に示されるように、本実施形態では、ローダー部24は検知装置46を有している。検知装置46は、ホルダー74、接触棒76、及びセンサ78を含んでいる。接触棒76は、開示の技術の接触体の一例である。
【0043】
ホルダー74は、本実施形態では、把持プレート66の外周面に設けられている。ホルダー74の形状は特に限定されないが、たとえば、全体として直方体形状とされ、把持プレート66の外周面に対向する面は、把持プレート66の外周面に沿って湾曲された形状を採り得る。ホルダー74には、このホルダー74を上下方向に貫通する挿通孔74Hが形成されている。挿通孔74Hの延在方向と直交する方向の断面形状は特に限定されないが、本実施形態では円形である。
【0044】
挿通孔74Hには、接触棒76が挿通されている。接触棒76の延在方向と直交する方向の断面形状は、本実施形態では、挿通孔74Hに対応させて円形である。従って、接触棒76の全体的形状は、円柱状である。
【0045】
接触棒76の外径は挿通孔74Hの内径よりも小さい。接触棒76は、挿通孔74Hに挿通された状態で、ホルダー74に対して上下移動可能である。すなわち、接触棒76は、ローダー部24の一部である把持プレート66に対して上下移動可能である。
【0046】
接触棒76の上端にはストッパ76Sが形成されている。ストッパ76Sも接触棒76の一部を成している。ストッパ76Sの形状は特に限定されないが、本実施形態では例えば円柱状である。ストッパ76Sの外径は挿通孔74Hの内径よりも大きい。接触棒76の下方への移動は、ストッパ76Sがホルダー74に当たることにより制限される。
【0047】
例えば、
図6に示されるように、把持プレート66がキャリア44から離隔した位置にある状態では、接触棒76の下端はキャリア44に接触していない。また、
図8に示されるように、下定盤36の上側の所定位置に、本来ならばあるべきキャリア44が無い状態でも、接触棒76の下端はキャリア44に接触していない。これらの状態では、接触棒76は自重で下がった位置にあり、ストッパ76Sがホルダー74に接触している。
【0048】
接触棒76の長さは、
図7に示されるように、把持プレート66が下定盤36の上側において所定位置まで下降した状態で、接触棒76の下端がキャリア44に接触するように設定されている。接触棒76の下端がキャリア44に接触した状態で把持プレート66がさらに下降すると、接触棒76がホルダー74及び把持プレート66に対し相対的に上方へスライドする。接触棒76が上方へスライドした状態で、ストッパ76Sを含む接触棒76の一部は、把持プレート66の上面よりもさらに上にある。
【0049】
把持プレート66の上面には、センサ78が設けられている。センサ78は、ストッパ76Sを含む接触棒76の有無を検知可能である。
図6又は
図8に示されるように、接触棒76が把持プレート66に対し相対的に下がった位置にある状態では、ストッパ76Sを含む接触棒76は把持プレート66の上面よりも下の位置にあり、センサ78は接触棒76を検知しない。換言すれば、このようにセンサ78が接触棒76を検知しないことによって、接触棒76が下降した位置にあることが分かる。これに対し、
図7に示されるように、接触棒76の下端がキャリア44に接触し、接触棒76が把持プレート66に対し相対的に上昇した位置にある状態では、把持プレート66の上面よりも上の位置にある接触棒76をセンサ78が検出する。すなわち、接触棒76が上昇した位置にあることが分かる。センサ78が検出した接触棒76の位置、すなわち接触棒76の上昇又は下降に関する情報は、
図1に示される制御装置80に送信される。
【0050】
制御装置80では、把持プレート66の上下位置、及び接触棒76の上下位置に関する情報に基づいて、磁気ディスク基板102に対する各種の処理を実行する。そして、センサ78が接触棒76を検知していない場合、すなわち、キャリア44が下定盤36の所定位置に無いことを検知装置46において検知した場合に、これらの処理を停止する。本実施形態では、このように停止される処理には、ローダー部24の動作が含まれる。
【0051】
具体的には、
図6に示されるように、把持プレート66がキャリア44から離隔している状態では、制御装置80は、ローダー部24の動作を継続する。
図7に示されるように、把持プレート66がキャリア44に接近し所定位置に至った状態で、センサ78が接触棒76を検知している場合は、キャリア44が下定盤36の上側に存在していると分かる。この場合は、制御装置80は、ローダー部24の動作をさらに継続する。
【0052】
これに対し、把持プレート66がキャリア44に接近して所定位置に至った状態で、センサ78が接触棒76を検知していない場合は、
図8に示されるように、キャリア44が下定盤36の上側に存在していないと認識できる。この場合は、制御装置80は、ローダー部24の動作を停止する。
【0053】
制御装置80には、表示装置82が接続されている。制御装置80は、センサ78から受けた情報に基づいて、例えばキャリア44が下定盤36の上側に存在しているか否かを表示装置82に表示させる。表示装置82としては、例えば画像を表示するディスプレイであってもよいし、研磨部26の各種の動作状態を示すランプ等、作業者が視認可能な装置を用いることができる。また、これらの視認可能な装置に代えて、又は併用して、音声等によって研磨部26の動作状態を作業者に知らせるスピーカ、ブザー等を用いてもよい。
【0054】
図9に示されるように、把持プレート66が下定盤36の上側の所定位置にある状態で、下定盤36を平面視した場合の接触棒76の位置は、内歯歯車42の筒体50と下定盤36との間隙GPにある。キャリア44が下定盤36の上側にない状態でプレート60が下降した場合に、接触棒76の下端が下定盤36に接触しない構造になっている。
【0055】
図10には、制御装置80のハードウエア構成がブロック図として示されている。
【0056】
制御装置80は、コンピュータ84を有する。コンピュータ84は、プロセッサ86、メモリ88、ストレージ90、入力装置92、出力装置94、記憶媒体読取装置96及び通信I/F(Interface)98を有する。これらの各要素は、バス100を介して相互に通信可能に接続されている。
【0057】
ストレージ90には、磁気ディスク基板102を製造するための基板製造プログラム112が格納されている。プロセッサ86は、各種のプログラムを実行したり、各要素を制御したりすることが可能である。具体的には、プロセッサ86は、ストレージ90からプログラムを読み出し、メモリ88を作業領域としてプログラムを実行する。すなわち、プロセッサ86は、ストレージ90に格納されているプログラムに従って、各要素の制御及び各種の演算処理を行う。
【0058】
メモリ88には、作業領域として、一時的にプログラム及び各種のデータを記憶可能である。
【0059】
ストレージ90は、たとえば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等であり、各種プログラム及び各種データが格納される。このプログラムには、上記した基板処理プログラム等のアプリケーションプログラムだけでなく、オペレーティングシステムも含まれる。
【0060】
入力装置92は、コンピュータ84に対し各種の入力を行うための装置である。入力装置92としては、操作スイッチ、操作ボタン等が含まれる他、パーソナルコンピュータ等に使用されるキーボード、マウス等のポインティングデバイス等を含んでいてもよい。
【0061】
出力装置94は、コンピュータ84からの各種の情報を出力するための装置であり、たとえば、ディスプレイや表示ランプ、スピーカ等が含まれる。出力装置94としてタッチパネルディスプレイを用いることも可能であり、この場合には、タッチパネルディスプレイが入力装置92としても機能する。
【0062】
記憶媒体読取装置96は、各種の記憶媒体に記憶されたデータの読み込み、及び、記憶媒体に対するデータの書き込みを行う装置である。記憶媒体としては、たとえば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、ブルーレイディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等を挙げることができる。
【0063】
通信I/F98は、他の機器と通信するためのインターフェースである。通信のためには、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI(Fiber Distributed Dsta Interface)等の規格が用いられる。
【0064】
本実施形態では、通信I/F98は、判定部20、供給部22、ローダー部24、及び研磨部26のそれぞれと通信することにより、これら装置の制御及び各種状態の取得が可能である。この通信は、無線であってもよいし、有線であってもよい。
図1に示される表示装置82は、出力装置94に含まれていてもよいし、出力装置94とは別に設けられていてもよい。
【0065】
次に、本実施形態の円盤状基板の製造システム12の作用、及び円盤状基板の製造方法について説明する。
【0066】
円盤状基板の製造システム12を用いて円盤状基板を製造する場合、上定盤38が下定盤36から離隔した状態で、ローダー部24から磁気ディスク基板102が研磨部26に搬送、すなわちロードされる。そして、磁気ディスク基板102はキャリア44の保持孔54に移載される。
【0067】
磁気ディスク基板102が保持孔54に保持された状態で、ローダー部24は下定盤36の上方から退避される。その後、上定盤38が下定盤36に接近され、磁気ディスク基板102が上下面に研磨布48が接触する。そして、キャリア44の公転及び自転により、磁気ディスク基板102の両面が研磨布48で研磨される。
【0068】
研磨後は、上定盤38が上昇して下定盤36から離隔する。その後、アンローダー部28により、磁気ディスク基板102はキャリア44の保持孔54から搬出、すなわちアンロードされ、さらに洗浄乾燥部30に移動される。
【0069】
ここで、ローダー部24により磁気ディスク基板102をキャリア44の保持孔54に移載する場合を詳細に説明する。この場合、下定盤36の上側にキャリア44が存在している。把持プレート66がキャリア44に所定位置まで接近すると、接触棒76の先端がキャリア44に接触し、接触棒76が把持プレート66に対し相対的に上昇する。これにより、センサ78は接触棒76を検知する。そして、制御装置80は、ローダー部24の動作を継続するように制御する。
【0070】
しかしながら、下定盤36の上側の所定位置にキャリア44が存在していない状態となっていることがある。たとえば、アンローダー部28により、磁気ディスク基板102をキャリア44の保持孔54から搬出する際に、磁気ディスク基板102にキャリア44が付着した状態で、一体的に搬出されてしまう事態が生じることがある。
【0071】
この状態で、把持プレート66がキャリア44に所定位置まで接近しても、下定盤36の上側にキャリア44が存在していないので、接触棒76の先端はキャリア44に接触しない。すなわち、接触棒76は下がった位置に維持される。接触棒76の一部が把持プレート66の上面から突出していないので、センサ78はストッパ76Sを検知しない。この場合、制御装置80は、ローダー部24の動作を停止するように制御する。すなわち、キャリア44に対する磁気ディスク基板102の移載を停止する。さらに、制御装置80は、下定盤36の上側にキャリア44が存在していない状態であることを、表示装置82により表示する。
【0072】
このように、本実施形態では、下定盤36の上側にキャリア44がない状態では、制御装置80が、ローダー部24の動作を停止する。下定盤36の上側にキャリア44がない状態で磁気ディスク基板102を下定盤36の上側に移載してしまうと、その後に研磨部26を運転した場合にトラブルが発生するおそれが高い。しかし、本実施形態では、下定盤36の上側にキャリア44がない状態で、下定盤36の上側に磁気ディスク基板102を移載しないので、このようなトラブルが発生するおそれは低い。そして、トラブルが減少することにより、研磨部26の稼働率が向上する。
【0073】
下定盤36の上側にキャリア44がない状態であることは、表示装置82に表示される。作業者は、この表示により、キャリア44を下定盤36の上側の所定位置にセットする等、必要な処置を施すことが可能である。また、キャリア44に対する磁気ディスク基板102の移載を停止する動作を、たとえば作業者がローダー部24の電源スイッチをオフにする等によって行うことも可能である。
【0074】
なお、プレート60を平面視した場合の接触棒76の位置は、内歯歯車42の筒体50と下定盤36との間隙GPにある。したがって、キャリア44が下定盤36の上側にない状態で把持プレート66が下降した場合に、接触棒76の下端が下定盤36に接触しない。すなわち、接触棒76が把持プレート66に対し不用意に上昇しないので、キャリア44が無いにも関わらずあると誤認識してしまう事態が抑制される。
【0075】
上記は、センサ78によって検知した接触棒76の上下位置に関する情報を制御装置に送信し、この情報に基づいてローダー部24の動作を制御する構成の例である。この場合のセンサ78としては、例えば可視光や赤外線を用いたセンサを用いることが可能である。また、接触棒76を撮像装置で撮像することにより、接触棒76の上下位置を検知する構成としてもよい。さらには、検知装置として接触棒を用いることなく、キャリア44を撮影するカメラを用いてもよい。すなわち、撮像装置による撮影画像から、キャリア44の有無を撮像する構成である。接触棒76を用いた構成では、接触棒76をセンサ78で検知するので、簡易な構造で、キャリア74の有無を検知できる。
【0076】
また、下定盤36の上側のキャリア44の有無により、ローダー部24の動作を制御する構成は、上記した制御装置80を用いる構成に限定されない。例えば、接触棒76の位置に応じて、導通状態(導通、又は絶縁)や電気抵抗が変化するメカニカルな構造とし、導通状態や電気抵抗に基づいてローダー部24が運転、または停止される構成でもよい。
【0077】
上記では、検知装置46がローダー部24に設けられている例であるが、これに代えて、又は併用して、検知装置46がアンローダー部28に設けられていてもよい。検知装置46がアンローダー部28に設けられている構成では、例えば、研磨部26において研磨された磁気ディスク基板102をアンローダー部28によって搬出する場合に、磁気ディスク基板102と共にキャリア44を搬出していないかを検知するようにすればよい。すなわち、アンローダー部28による磁気ディスク基板102の搬出時に検知装置46が、磁気ディスク基板102と共にキャリア44が搬出されていることを検知した場合には、下定盤36の上側にキャリア44が存在していない状態になっていると分かる。さらには、検知装置46は、下定盤36に設けてもよく、また、内歯歯車42に設けてもよい。
【0078】
ローダー部24及びアンローダー部28はいずれも、開示の技術の搬送装置の一例である。したがって、検知装置46をローダー部24又はアンローダー部28に設けた構成は、搬送装置に設けた構成の例でもある。ただし、検知装置は、搬送装置に設けられている必要はなく、例えば研磨部26に設けられていてもよい。また、検知装置は、搬送装置や研磨部26とは別に設けられていてもよい。たとえば、上記したように、検知装置として撮像装置を含む構成では、移載装置や研磨部26とは別に撮像装置を設けることが可能である。
【0079】
上記実施形態のように、ローダー部24に検知装置を設ける構成では、キャリア44に磁気ディスク基板102を搬入する動作に連動して、下定盤36の上側におけるキャリア44の有無を検知できる。
【0080】
アンローダー部28に検知装置を設ける構成では、キャリア44から磁気ディスク基板102を搬出する動作に連動して、下定盤36の上側の所定位置におけるキャリア44の有無を検出できる。
【0081】
上記実施形態では、下定盤36の上側にキャリア44がない場合に、制御装置80が停止する処理の例として、搬送装置を停止する例を挙げているが、制御装置80が停止する処理はこれに限定されない。制御装置80が停止する処理は、搬送装置の停止に加えて、又は搬送装置の停止と併せて、例えば、研磨部26を停止することを含んでよい。さらに、下定盤36の上側にキャリア44がない場合に、円盤状基板の製造システム12の全体を停止することを含んでよい。
【符号の説明】
【0082】
12 製造システム
23 ローダー部(移載装置の一例)
28 アンローダー部(移載装置の一例)
36 下定盤
38 上定盤
44 キャリア
46 検知装置
58 移載装置
76 接触棒(接触体の一例)
102 磁気ディスク基板(円盤状基板の一例)
【要約】
【課題】下定盤の上側の所定位置にキャリアが無い状態となっていることを検知する。
【解決手段】円盤状基板の製造装置は、円盤状基板を保持するキャリアが上側に載置される下定盤と、下定盤の上側で下定盤に対し接近及び離隔する上定盤と、下定盤の上側の所定位置におけるキャリアの有無を検知する検知装置と、所定位置にキャリアが無いことを検知装置において検知した場合に円盤状基板に対する処理を停止する制御装置と、を有する。
【選択図】
図5