(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】防災用マットレス
(51)【国際特許分類】
A47C 27/14 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
A47C27/14 B
(21)【出願番号】P 2021083660
(22)【出願日】2021-05-18
【審査請求日】2024-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503285852
【氏名又は名称】やまと産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 浩司
(72)【発明者】
【氏名】平川 博丈
(72)【発明者】
【氏名】橘 正能
(72)【発明者】
【氏名】山田 和久
(72)【発明者】
【氏名】柳山 隆一
【審査官】丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-112853(JP,A)
【文献】特開2003-174953(JP,A)
【文献】特開2008-132293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災用のマットレスであって、
弾性を有する発泡体から構成され、
前記マットレスから所定の大きさブロック片を切り取り可能とするための切り取り可能線を有し、
前記切り取り可能線には、厚み方向に貫通する切れ目が所定間隔で設けられている
ことを特徴とする防災用マットレス。
【請求項2】
前記切り取り可能線が前記マットレスの厚み方向に対して垂直な面において格子状に設けられている請求項1記載の防災用マットレス。
【請求項3】
前記切り取り可能線によって切り取り可能な最小ブロック片の厚み方向に垂直な面における面積が150cm
2以上250cm
2以下の範囲である請求項1又は2記載の防災用マットレス。
【請求項4】
前記マットレスの厚み方向の一方面側及び/又は他方面側に複数の凸部および凹部が平面視において直交する2方向にそれぞれ交互となるよう形成されている請求項1~3のいずれか記載の防災用マットレス。
【請求項5】
前記マットレスの厚みに対する前記凸部の高さの割合が15%以上40%以下の範囲である請求項4記載の防災用マットレス。
【請求項6】
前記切れ目の長さが2mm以上である請求項1~5のいずれか記載の防災用マットレス。
【請求項7】
隣り合う切れ目の間の接続部の長さが1mm以上8mm以下の範囲である請求項1~6のいずれか記載の防災用マットレス。
【請求項8】
前記発泡体の密度が25kg/m
3以上である請求項1~7のいずれか記載の防災用マットレス。
【請求項9】
前記発泡体がポリウレタンフォームである請求項1~8のいずれか記載の防災用マットレス。
【請求項10】
前記ポリウレタンフォームが親水性を有する請求項9記載の防災用マットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防災用のマットレスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
台風や地震、噴火などの自然災害あるいは大規模な火災や爆発などの災害から免れるため学校体育館や公民館などの最寄りの避難所に住民等が避難することがある。これらの避難所には避難者の宿泊も想定してマットレスも防災用具の一つとして通常備えられている。
【0003】
ところがマットレスの保管には大きな容積が必要となるため、避難所の多くは避難者数に見合った数のマットレスを備えられていないのが現状である。
【0004】
そこで、膨張・収縮が可能なエアーマットレスが種々提案され市販もされている。エアーマットレスによれば保管時は収縮状態にすることで保管容積を小さくでき、使用時にはエアーで膨らませてマットレスとしての機能を発揮させることができる。
【0005】
また特許文献1には、使用時に、ポリオール成分液とポリイソシアネート成分液とを混合して発泡ウレタン樹脂を生成させて非常用マットレスとして使用する技術が開示されている。この開示技術によれば未使用時のマットレスの保管容積が小さくて済むとされる。
【0006】
そしてまた特許文献2には、発泡ウレタンの芯材を袋に包んだマット片が複数個連結された防災敷きマットが開示されている。この開示技術によれば限られた収納容積にコンパクトに折り畳み収納可能であるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-37753号公報
【文献】実用新案登録第3078319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、使用済みのマットレスは避難状態が解消した後、通常、粗大ごみとして廃棄される。廃棄される使用済みマットレス数は避難者数に比例して増大する。これまでのマットレスでは、未使用保管時のコンパクト性および使用時の利便性は考慮されているが使用後の廃棄の作業性までは注意が払われていなかった。加えて、マットレス以外の利用可能性については考えられていなかった。
【0009】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、避難所等における保管容積を小さくでき、使用後の廃棄処理作業が容易で、またマットレス以外にも利用することが可能な防災用マットレスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明の一態様に係る防災用マットレス(以下、単に「マットレス」と記すことがある。)は、弾性を有する発泡体から構成され、前記マットレスから所定の大きさのブロック片を切り取り可能とするための切り取り可能線を有し、前記切り取り可能線には、厚み方向に貫通する切れ目が所定間隔で設けられていることを特徴とする。
【0011】
このような構成のマットレスでは、切り取り可能線の延在方向に対して垂直方向すなわち切り取り可能線を切り開く方向に力が加えられると、切れ目と切れ目との接続部分が切断されてマットレスを所望の大きさのブロック片に分割できる。
【0012】
前記構成の防災用マットレスでは、前記切り取り可能線が前記マットレスの厚み方向に対して垂直な面において格子状に設けられているのが好ましい。
【0013】
前記構成の防災用マットレスでは、前記切り取り可能線によって切り取り可能な最小ブロック片の厚み方向に垂直な面における面積が150cm2以上250cm2以下の範囲であるのが好ましい。
【0014】
また前記構成の防災用マットレスでは、前記マットレスの厚み方向の一方面側及び/又は他方面側に複数の凸部および凹部が平面視において直交する2方向にそれぞれ交互となるよう形成されているのが好ましい。
【0015】
前記構成の防災用マットレスでは、前記マットレスの厚みに対する前記凸部の高さの割合が15%以上40%以下の範囲であるのが好ましい。
【0016】
前記構成の防災用マットレスでは、前記切れ目の長さが2mm以上であるのが好ましい。
【0017】
前記構成の防災用マットレスでは、隣り合う切れ目の間の接続部の長さが1mm以上8mm以下の範囲であるのが好ましい。
【0018】
前記構成の防災用マットレスでは、前記発泡体の密度が25kg/m3以上であるのが好ましい。
【0019】
前記構成の防災用マットレスでは、前記発泡体がポリウレタンフォームであるのが好ましい。そして、ポリウレタンフォームが親水性を有しているのがより好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の防災用マットレスは弾性を有する発泡体から構成されているので、例えば気密性の袋に収納された後袋内が減圧されることでマットレスの体積が圧縮され避難所等でのマットレスの保管容積を小さくすることが可能となる。
【0021】
また、本発明の防災用マットレスは、カッターなどの切断具を用いることなく作業者が手指でマットレスを所望の大きさのブロック片に分割することができる。これにより通常のマットレスとして使用する場合には使用者の身長や体格に対応した形状とすることや避難所での敷設場所の形状に対応した形状とすることが容易にできる。またマットレスから所望の大きさのブロック片に分割することもできる。分割したブロック片は、例えば被災した家具や窓などを洗浄する部材、あるいは漏れ出たオイル・水・溶剤などを吸収する部材等として使用することができる。
【0022】
そしてまた本発明の防災用マットレスは複数のブロック片に分割・解体可能であるので使用後の廃棄作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係るマットレスの一実施形態を示す下側から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示すマットレスの上側から見た部分斜視図である。
【
図3】
図1に示すマットレスの部分垂直断面図である。
【
図5】本発明に係るマットレスの保管例を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係るマットレスの他の活用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るマットレスについて図に基づいて説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。また、本明細書における「厚み方向」、「X方向」、「Y方向」は図において示される厚み方向、X方向、Y方向を意味するものとする。
【0025】
(マットレス)
図1に、本発明に係るマットレスMの一実施形態を示す、厚み方向である上下方向下側から見た斜視図を、
図2に上下方向上側から見た部分斜視図を、
図3に部分垂直断面図をそれぞれ示す。これらの図に示すマットレスMは、平面視が長方形状で、弾性を有する発泡体から構成されている。厚み方向一方面側(
図1では上面側)が複数の凸部11および凹部12が平面視において直交する2方向にそれぞれ交互となるようなプロファイル加工が施されている。このようなプロファイル加工が施されていることによってマットレスとして使用した際に体圧分散性および通気性が向上する。
【0026】
マットレスMの厚みD(
図3に図示)に特に限定はないが、通常、40mm以上80mm以下の範囲が好ましく、より好ましくは50mm以上70mm以下の範囲である。また、体圧分散性や通気性等を向上させる観点からは凸部11の高さを高くすることが考えられるが、凸部11の高さが高くなると耐久性などが低下する。このため、通常、凸部11の高さh(
図3に図示)はマットレスMの厚みD(
図3に図示)に対して15%以上40%以下の範囲とすることが推奨される。なお、プロファイル加工はマットレスMの厚み方向の一方面側のみならず他方面側に施しても構わないし、あるいはまたマットレスMの厚み方向の両面側共にプロファイル加工を施さず平面状としても構わないが、少なくとも一方面側にプロファイル加工が施されているのが好ましく、マットレスとして使用する際はプロファイル加工が施された側が上側となるようにマットレスMを配置するのが好ましい。
【0027】
マットレスMを構成する発泡体としては、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォームなどの弾性を有する樹脂発泡体が好適に使用できる。これらの中でも反発弾性率が低く体圧分散性が高いポリウレタンフォームが好適に使用される。加えて、通気性や透水性の機能をも発揮させる観点からは、セル膜を有しない三次元網目構造のポリウレタンフォームが推奨される。また、発泡体中にカーボンなどの導電性粉や抗菌剤、防カビ剤を含有させることによって発泡体に帯電(静電気)防止、抗菌性能、防カビ性能を付与してもよい。また、後述のように、マットレスMを切り取り可能線で分割してブロック片とし、当該ブロック片を窓などを洗浄する部材や漏水や溜まり水などを吸収する部材として使用することを考慮して発泡体は親水性を有していているのが好ましい。発泡体に親水性を付与するには、例えば、発泡体がポリウレタンフォームである場合には、ウレタン骨格中にポリエチレングリコールを導入した原料を用いる、あるいは水溶性高分子を分散させたポリオールを原料とする、あるいは原料に親水性高分子を混合する方法が挙げられる。
【0028】
また、マットレスMを構成する発泡体の密度としては14kg/m3以上であるのが望ましい。発泡体の密度が14kg/m3未満では、十分なクッション性が得られない虞がある。より好ましい発泡体の密度は25kg/m3以上である。発泡体の密度が25kg/m3未満であると保管や輸送時の省スペース化のためにマットレスMを圧縮した場合に、使用時において圧縮状態からの復元が不十分となる虞がある。また、マットレスMを折り曲げた際に切り取り可能線でマットレスMが断裂する虞がある。発泡体の密度のより好ましい下限値は30kg/m3である。一方、発泡体の密度の上限値に特に限定はないが、通常、50kg/m3である。
【0029】
(切り取り可能線)
図1に示すように、マットレスMには、マットレスMを所定の大きさに切り取り可能とするための複数本の切り取り可能線LがX方向及びY方向に所定間隔で格子状に設けられている。切り取り可能線Lには厚み方向に貫通する切れ目Br(
図4に図示)が線方向に所定間隔で形成されている。このように切り取り可能線LがマットレスMに設けられていることによって、作業者はカッターなどの切断具を用いることなく手指でマットレスMを所望の大きさに切り取り可能線Lを利用して切り取ることが可能となる。なお、本実施形態で示すマットレスMでは、X-Y平面におけるマットレスMの周縁部に切り取り可能線Lが形成されていない外周枠部10(
図1に図示)が設けられているが、これは輸送時や保管時などにマットレスMが切り取り可能線Lで断裂することなどを抑制するためのものであって、マットレスMに外周枠部10が設けられていなくても構わない。
【0030】
切り取り可能線Lは1本であっても2本以上であっても構わない。切り取り可能線Lが2本以上の場合その形成間隔P1,P2(
図1に図示)に特に限定はなく、マットレスMから切り取ったブロック片の使用目的などから適宜決定すればよい。例えば、マットレスMから切り取ったブロック片を被災した家具や窓などを洗浄する部材として使用する場合には、作業者が片手で掴んで使用しやすいように、形成間隔P1,P2は100mm以上200mm以下の範囲が好ましく、ブロック片の平面形状は長方形状が好ましい。なお、切り取り可能線Lは直線状に限定されるものではなく屈曲線や曲線などであっても構わない。
【0031】
図4に切り取り可能線Lの部分拡大図を示す。
図4に示すように、切り取り可能線Lには線方向に長さLbの切れ目Brが所定間隔(接続部Co:長さLc)で複数設けられている。切れ目Brは厚み方向にマットレスMを貫通している。切り取り可能線Lを構成する切れ目Brの長さLbは、通常、2mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましい。上限値に特に限定はないが50mm程度である。切れ目Brの長さLbが2mm未満であると、マットレスMを切り取り難くなる。切れ目Brの長さLbが2mm以上であると、切り取り可能線Lを中心に、マットレスMの左右を上下に引っ張ることで分割することができる。切れ目Brの長さLbが10mm以上であると作業者がマットレスMを切り取る際に切れ目Brに作業者の手指を差し入れやすく円滑に切り始めることができる。また、切り取り可能線Lから外れてマットレスMが断裂し難くなる。一方、切れ目Brの長さLbが50mmを超えると作業者の手指は差し入れやすくはなるものの、運搬時や保管時等に意図しない分割が発生する虞がある。
【0032】
切れ目Brと共に切り取り可能線Lを構成する、隣り合う切れ目Br間の接続部Coの長さLcは1mm以上8mm以下の範囲が好ましい。接続部Coの長さLcが1mm未満であると、運搬時や保管時等に意図しない分離が発生する虞がある。一方、接続部Coの長さLcが8mmを超えると、マットレスMの切断面の性状が汚くなる虞があり、また切り屑が発生する虞もある。接続部Coの長さLcは、より好ましくは1mm以上6mm以下の範囲、さらに好ましくは1mm以上4mm以下の範囲である。特に好ましくは1mm以上3mm以下の範囲である。
【0033】
切り取り可能線Lを構成する切れ目Brの長さLbと接続部Coの長さLcとの比率に特に限定はないが、通常、切れ目Brの長さLbは接続部Coの長さLcよりも長いのが好ましい。
【0034】
なお、接続部Coは厚み方向の少なくとも一部において切れ目Br間を接続していればよく、例えばマットレスMの厚み方向に所定深さの切込みが接続部Coに設けられていてもよい。このような切込みが形成されていることによって切り取り可能線LでのマットレスMの切り取りがより容易となるとともに、切り取り可能線Lから外れてマットレスMが切断されることが抑えられる。
【0035】
図5に、本発明のマットレスの保管例を示す。マットレスの厚みよりも厚いマチを有する気密性を有する直方体形状の収納袋2が用意される。収納袋2は、長手方向(Y方向)一方側に開閉チャック21を備えた開口部20を有し、厚み方向一方面側には逆止機能付き吸気弁22を有する。マットレスMは収納袋2の開口部20から収納袋2内に収納される。その後開口部20が開閉チャック21で閉じられ、例えば掃除機の吸引口が吸気弁22に当接されて、収納袋2内の空気が掃除機によって外に吸い出される。これにより収納袋2内は低圧となって、弾性を有する発泡体から構成されるマットレスMは通常の約1/3程度にまで圧縮され、マットレスMの避難所等における保管容積を減少させることが可能となる。
【0036】
一方、マットレスMを使用する際は収納袋2の開口部20の開閉チャック21が閉状態から開状態にされる。これにより外部空気が収納袋2内に流入して、圧縮収納されていたマットレスMは通常の厚みに戻る。なお、マットレスMの圧縮状態からの復元力はマットレスMを構成する発泡体の密度の影響を受ける。このため、前述のように、発泡体の密度は25kg/m3以上であることが好ましく、30kg/m3以上がより好ましい。また、マットレスMに切れ目Brがあることで、圧縮状態から復元する際に切れ目からマットレスM内部に外部空気が流入するため、より復元しやすくなる。
【0037】
収納袋2で圧縮されたマットレスMは平板状のまま積み重ねて保管してもよいし、ロール状として保管してもよい。また
図6に示すように、ロール状にされたマットレスMは円筒形状のケース3内に収納されてもよい。ケース3は軸方向一方端面が封鎖され他方端面が開口30とされ、当該開口30には蓋部材31が線ファスナ32で開閉可能に取り付けられている。ケース3は柔軟性のある樹脂シート材で構成される。なお、蓋部材31を開口30に開閉可能に取り付ける部材は線ファスナ32に限定されず、面ファスナや点ファスナなど従来公知の留め具を用いることができる。
【0038】
このように、ロール状にされたマットレスMを円筒形状のケース3内に収納してポールとすることで、これまで平常時は使用されずに単に保管されていたマットレスを例えばストレッチ用ポールやスタンディングバッグとして平常時にも活用することができる。また、ケース3の形状を例えば直方体形状とすればタックルミットやキックミットなどとしても活用することができる。
【0039】
なお、
図6に示した実施形態では、収納袋2によって圧縮されたマットレスMをケース3に収納していたが、マットレスMを圧縮せずにケース3に収納しても勿論かまわない。またケース3に気密性を持たせてマットレスMをケース3に収納した後にケース3内を減圧してマットレスMを圧縮するようにしても構わない。
【実施例】
【0040】
(例1~例7)
X方向:150mm,Y方向:200mm,厚み:60mm,密度25kg/m3,片面側にプロファイル加工(凸部20mm)がなされたポリウレタンフォームに、X方向に50mm間隔で、Y方向に75mm間隔でX方向またはY方向に平行な切り取り可能線を形成し例1~例7のマットレスを作製した。切り取り可能線の切れ目Brおよび接続部Coの長さは表1に示すとおりである。そして、作製したマットレスについて下記の項目について評価試験を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
【0041】
(例8~例14)
プロファイル加工の凸部11の高さを10mmとした以外は例1~例7と同様にしてマットレスを作製し評価試験を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
【0042】
(切り始めの容易さ)
マットレスの切れ目に手指を入れて切れ目を押し広げて切り始めの容易さを下記基準で評価した。
◎:切れ目に入れた手指で容易に最初の接続部を切断できる。
○:切れ目に入れた手指で最初の接続部を切断できるがやや力が必要である。
△:切れ目に入れた手指で最初の接続部を切断する際に力が必要で切断しにくい。
【0043】
(切り取り易さ)
マットレスの切れ目を押し広げて進展させる容易さを下記基準で評価した。
◎:容易に切れ目を押し広げて進展できる。
○:切れ目を押し広げるためにやや力が必要だが切れ目を進展できる。
△:切れ目を押し広げるために力が必要で、切れ目を進展しにくい。
【0044】
(接続部以外への切り込みの発生)
切れ目を進展させる際に接続部以外への切り込みの有無を下記基準で評価した。
◎:接続部の切断は容易であり、切れ目に沿って容易に直線的に切断できる。
○:接続部の切断にやや力が必要で、切れ目に沿って直線的に切断するのに注意が必要。
△:接続部の切断に力が必要で、切れ目に沿って直線的に切断するのに慎重さが必要。
【0045】
(切り取り面の性状・切り屑)
マットレスを切り取り可能線で切り取った後の切り取り面の性状・切り屑の有無を下記基準で評価した。
◎:平滑で、切り屑の発生がない。
○:小さな凹凸があるが、切り屑の発生はない。
△:凹凸が目立ち、やや汚く、切り屑が発生する虞がある。
【0046】
(圧縮梱包評価)
密度25kg/m3の例3のマットレス及び、例3のマットレスと同様の構成で密度を14kg/m3としたマットレスを、厚みが6mmとなるように、マットレス上から荷重をかけて一定時間経過後に開放した際の厚みの復元率を測定した。測定結果を表2に示す。
◎: 復元率91~100%
○: 復元率81~90%
△: 復元率50~80%
【0047】
【0048】
【0049】
表1から明らかなように、プロファイル加工の凸部の高さが20mmおよび10mmで、切り取り可能線の切れ目が2mmで接続部が2mmである例1および例8のマットレスは、「切り始めの容易さ」以外の切り取り評価はいずれも優れていた。
【0050】
プロファイル加工の凸部の高さが20mmのマットレスでは、切り取り可能線の切れ目が12mm、接続部が1mm及び2mmである例2及び例3のマットレスが、切り取り評価のいずれにおいても優れていた。またプロファイル加工の凸部の高さが10mmのマットレスでは、切り取り可能線の切れ目が12mm、接続部が1mmである例9のマットレスが切り取り評価のいずれにおいても優れていた。
【0051】
また、プロファイル加工の凸部の高さが20mmのマットレスでは、切り取り可能線の切れ目が12mmで、接続部が3mm,4mm,6mmと長くされた例4~例6のマットレスでは、「切り始めの容易さ」、「切り取り易さ」、「切り取り面の性状・切り屑」の各評価項目は接続部が長くなると低下する傾向が見られた。
【0052】
プロファイル加工の凸部の高さが10mmのマットレスでは、切り取り可能線の切れ目が12mmで、接続部が2mm,3mm,4mm,6mmと長くされた例10~例13のマットレスでは、「切り始めの容易さ」、「切り取り易さ」、「切り取り面の性状・切り屑」の各評価項目は接続部が長くなると低下する傾向が見られた。
【0053】
例6及び例13のマットレスと切れ目と接続部との長さの比が同じで、例6及び例13のマットレスよりも切り取り可能線の切れ目が16mm、接続部が8mmと長い例7及び例14のマットレスでは、例6及び例13のマットレスに比べて「切り始めの容易さ」は低下したものの、他の評価項目は同じであった。
【0054】
また表2から理解されるように、マットレスの復元率はマットレスの密度の高い方が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の防災用マットレスは避難所等での保管容積を小さくすることが可能となる。また、カッターなどの切断具を用いることなく作業者が手指でマットレスを所望の大きさのブロック片に分割することができ、被災した家具や窓などを洗浄する部材、あるいは漏れ出たオイル・水・溶剤などを吸収する部材等として使用することができる。そしてまた使用後のマットレスを複数のブロック片に分割・解体でき廃棄作業が容易となる。
【符号の説明】
【0056】
2 収納袋
3 ケース
D マットレスの厚み
h 凸部の高さ
L 切り取り可能線
M マットレス
10 外周枠部
11 凸部
12 凹部
20 開口部
21 開閉チャック
22 吸気弁
30 開口
31 蓋部材
32 線ファスナ
Br 切れ目
Co 接続部
Lb 切れ目の長さ
Lc 接続部の長さ