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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】嗅覚受容体発現促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20250304BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
A61K31/198 ZNA
A61K31/197
A61P43/00 105
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021016350
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119320
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】禹 幸玉
(72)【発明者】
【氏名】石渡 潮路
(72)【発明者】
【氏名】桜井 哲人
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-528730(JP,A)
【文献】特開2018-123252(JP,A)
【文献】特開2019-163323(JP,A)
【文献】特開2015-134790(JP,A)
【文献】特開2012-144566(JP,A)
【文献】特開2011-246376(JP,A)
【文献】特開2011-219385(JP,A)
【文献】特開2009-107931(JP,A)
【文献】特表2017-518324(JP,A)
【文献】特表2019-519502(JP,A)
【文献】特表2002-515401(JP,A)
【文献】国際公開第2005/077349(WO,A1)
【文献】国際公開第02/056849(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/198
A61K 31/197
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマアミノ酪酸(GABA)、L-シトルリン、L(-)-フェニルアラニン、L-アルギニン、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸及びL-システインから選択される1以上のアミノ酸を有効成分とする嗅覚受容体であるOR2AT4及び/又はOR51B5の発現促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嗅覚受容体発現促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
嗅覚受容体(きゅうかくじゅようたい、Olfactory receptors)は、嗅細胞(嗅覚受容神経)にあるGタンパク質結合受容体として見出された。脊椎動物ではこのタンパク質は嗅上皮に、昆虫では触角に位置し、嗅覚を感知する重要な受容体として知られている。
近年この嗅覚受容体が、皮膚、精子などの様々な組織細胞にも存在することが確認された。現在では、嗅覚受容体が身体全体に存在し、異なる多様な細胞型受容体(ORファミリー)として発現されており、嗅覚以外の生体の生理学的細胞機能を調節すると考えられている。しかしその全体像は、いまだ解明されていない。
嗅覚受容体・ORファミリーに属する受容体の一つであるOR2AT4は、皮膚におけるケラチノサイトの増殖を刺激することがすでに知られている。なかでも、ヒト毛包の上皮、特に外根鞘がOR2AT4を発現し、特異的OR2AT4アンタゴニストPhenirat(登録商標)とOR2AT4の共投与が、毛髪成長を阻害することが明らかにされている(非特許文献1)。
【0003】
また、全身に存在する嗅覚受容体は、免疫の活性化にも関与している。特許文献1には、公知化合物である合成物質のサンダロール(登録商標)及びブラマノール(登録商標)が、OR2AT4受容体の活性化を介して、インターロイキンIL-1αの発現及び分泌を促すことにより創傷治癒を促進することが記載されている。
特許文献2には、嗅覚受容体ファミリー1、2または51などの複数の嗅覚受容体と選択的に結合するか、または発現を選択的に変化させる化合物を癌、自己免疫疾患、感染症及び移植片対宿主病などの治療剤とする発明が開示されている。この特許文献2に開示された発明の化合物は、嗅覚受容体に結合し、あるいは嗅覚受容体の発現を制御することで、病的な細胞性細胞傷害性T細胞(CTL)応答を調節し、免疫を活性化し又は正常に制御する。
【0004】
特許文献3には、香料を有効成分とする皮膚免疫機能調節剤が記載されている。この皮膚免疫機能調節剤において、含有されている香料が、皮膚嗅覚受容体を刺激する作用を有していることが示されている。このように嗅覚受容体の発現促進剤は、癌、自己免疫疾患、感染症、臓器移植などの治療や改善剤として使用することができると考えられている。
一方、アミノ酸はタンパク質を構成する最小単位として知られており、さまざまな生理活性が知られている。しかしアミノ酸が嗅覚受容体の発現を促進することは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-518324号公報
【文献】特表2016-535060号公報
【文献】特開2003-206237号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】NATURE COMMUNICATIONS (2018)9:3624 DOI:10.1038/s41467-018-05973-0 www.nature.com/naturecommunications
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ガンマアミノ酪酸(GABA)、L-シトルリン、L(-)-フェニルアラニン、L-アルギニン、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸及びシステインから選択される1以上のアミノ酸を有効成分とする、嗅覚受容体の発現促進用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の構成である。
(1)ガンマアミノ酪酸(GABA)、L-シトルリン、L(-)-フェニルアラニン、L-アルギニン、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸及びL-システインから選択される1以上のアミノ酸を有効成分とする嗅覚受容体発現促進用組成物。
(2)嗅覚受容体がOR2AT4及び/又は OR51B5である(1)に記載の嗅覚受容体発現促進用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によりガンマアミノ酪酸(以下「GABA」)、L-シトルリン、L(-)-フェニルアラニン、L-アルギニン、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸及びL-システインから選択される1以上のアミノ酸を有効成分とする嗅覚受容体発現促進用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例2においてGABAによる嗅覚受容体発現促進効果を試験した結果を示すグラフである。
図2】試験例2においてL-シトルリンによる嗅覚受容体発現促進効果を試験した結果を示すグラフである。
図3】試験例2においてL-(-)フェニルアラニンによる嗅覚受容体発現促進効果を試験した結果を示すグラフである。
図4】試験例2においてL-アルギニンによる嗅覚受容体発現促進効果を試験した結果を示すグラフである。
図5】試験例2においてL-アラニンによる嗅覚受容体発現促進効果を試験した結果を示すグラフである。
図6】試験例2においてL-アスパラギンによる嗅覚受容体発現促進効果を試験した結果を示すグラフである。
図7】試験例2においてL-アスパラギン酸による嗅覚受容体発現促進効果を試験した結果を示すグラフである。
図8】試験例2においてL-システインによる嗅覚受容体発現促進効果を試験した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明でいう組成物とは、GABA、L-シトルリン、L(-)-フェニルアラニン、L-アルギニン、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸及びL-システインから選択される1以上のアミノ酸を含むものをいう。本発明の組成物は、さらに任意成分を含有するものも含まれる。
【0012】
上記の各アミノ酸は、それらの塩であってもよい。塩としては薬学上許容される塩であればよい。例えば、カリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロピルアルコールアミン塩、ジイソプロピルアルコールアミン塩、トリイソプロピルアルコールアミン塩等のアルカノールアミン塩が挙げられる。
【0013】
アミノ酸の製法は特に限定されない。例えば、合成法、抽出法、酵素法、発酵法が挙げられる。また、D,L-アミノ酸のラセミ混合物を光学分割する方法も挙げられる。光学分割法としては特に限定されない。
【0014】
本発明の組成物は、上記アミノ酸の少なくとも1つ以上を含むものをいう。GABA、L-シトルリン、L(-)-フェニルアラニン、L-アルギニン、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸及びL-システインから選択される1以上のアミノ酸を、合計量で換算した場合の好適な含有量の下限は、通常、0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上である。その上限は、通常、30質量%以下であり、好ましくは10質量%以下である。
【実施例
【0015】
以下に試験例を示して本発明を具体的に説明する。
<<試験例1>>
<嗅覚受容体遺伝子発現促進作用を有するアミノ酸の一次スクリーニング>
OR2AT4及び/又はOR51B5の発現促進作用を有するアミノ酸のスクリーニングを行った。
1.試験方法
(1)試験用の細胞及び培養方法
正常ヒト表皮角化細胞(Neo)(Thermo Fisher Scientific)(NHEK)をEpiLife(登録商標)Medium with 60μM Calcium(Life Technologies Japan)溶液にHumedia-KG2増殖添加剤(クラボウ)を添加し培養した。
80-90%程コンフルエントになったら、0.017%Trypsin/0.007%EDTA(0.05%Trypsin/0.02%EDTA(Sigma)をPBSで3倍希釈)で細胞を剥がし、再混濁した後細胞数を計測した。
12well plateに1×10cell/wellになるように再播種し、37℃、5%CO インキュベーターで一晩培養し、翌日試験サンプル(アミノ酸)を添加した。
【0016】
(2)RNA抽出方法及びRT-PCR法
各濃度のアミノ酸を添加した細胞(24時間経過後)の上清を除去し、PBS(-)で洗浄した。300μl/wellずつRNAiso(Takara)を添加し、十分ピペッティングしながら細胞を破砕した。この細胞ホモジナイズ溶液を1.5ml容量のTubeに回収した。60μlのクロロホルムを加え、よく振り混ぜてから室温で5分間静置した。
次いで12,000×gで15分間、4℃の温度条件で遠心し、分離した水層の上層(RNA部分)を新しい試験管に移した。
さらに300μlのイソプロパノールを加え、よく混合し、室温で10分間静置した。
次いで、12,000×gで10分間、4℃で遠心しRNAを沈殿させた。上清を捨て、75% 冷エタノール300μlを加え、ボルテックスミキサーで攪拌し、7,500×gで5分間、4℃の温度条件で遠心した。
上清を捨て、室温で数分間乾燥させた後、15μlのRNase-free waterで溶解し、Total RNAを回収した。
NanoDrop 2000C(Thermo Scientific)を利用し、RNAを定量してから濃度を合わせ、PrimeScript(登録商標)RT reagent Kit(タカラバイオ)のプロトコールに従い逆転写を行い、SYBR(登録商標)Premix Ex Taq(商標)II(Tli RNaseH Plus)(タカラバイオ)を用い調整した後LightCycler(登録商標)480(Roche)を用いリアルタイムPCRを行った。各遺伝子のCp値はGAPDH遺伝子のCp値に対する相対値で比較した。
【0017】
Hs_OR2AT4_mRNAのprimer(TAKARA)には
Reverse: GTAGTAGGTGCCCACGACCAGAA(配列番号1)、
Forward: CTATGTCCACATCCTGGCCTCA(配列番号2)、
【0018】
Hs_OR51B5_mRNAのPrimer(Invitrogen)には
Reverse: TTTGCCTATGGCCTGCTACCTAA(配列番号3)、
Forward: GCCCAGTTGTCTGGCATCTC(配列番号4)、
【0019】
Hs_GAPDH_mRNAのPrimer(Invitrogen)には
Reverse: TGGTGAAGAGACGCCAGTGGA(配列番号5)、
Forward: GCACCGTCAAGGCTGAGAAC(配列番号6)
をそれぞれ用いた。
【0020】
(3)試験対象アミノ酸
次の表1のアミノ酸について実施した。
【0021】
【表1】
【0022】
上記表1に記載の22種類のアミノ酸の嗅覚受容体に対する作用を次の条件で評価し、一次スクリーニングを行った。
各アミノ酸は、細胞培養培地で0.01%、0.1%になるように溶解して試験溶液を調整し、1ml/wellになるように添加した。37℃、5%COインキュベーターで、24時間培養した後、嗅覚受容体(OR2AT4、OR51B5)のmRNAの発現変動を測定することで嗅覚受容体遺伝子の発現促進効果を評価した。
【0023】
2.試験結果
アミノ酸濃度を0.01%、0.1%としたとき、それぞれmRNAの変動が検出された。
下記表2にアミノ酸濃度0.01%時のmRNA測定結果を発現の高い順位に配列し、表3にアミノ酸濃度0.1%時のmRNA測定結果を発現の高い順に配列して示した。
また無添加の場合の測定値(相対値)に対する各測定値が2以上を示すアミノ酸には*を付した。
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
0.01%の濃度で嗅覚受容体OR2AT4またはOR51B5の値がアミノ酸無添加の場合の値に対し2以上を示したアミノ酸に注目した。このようなアミノ酸は、GABA、L-シトルリン、L(-)-フェニルアラニン、L-アルギニン、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システインの8アミノ酸であった。
【0027】
<<試験例2>>
<アミノ酸の有効濃度>
試験例1の結果から、嗅覚受容体OR2AT4またはOR51B5のmRNA発現の増加作用が高い、GABA、L-アスパラギン酸、L-シトルリン、L(-)-フェニルアラニン、L-アスパラギン、L-システイン、L-アルギニン、L-アラニンの8アミノ酸について、さらに詳細に試験を行いmRNA及び、嗅覚受容体タンパク質量の産生増加を指標として、各アミノ酸の有効濃度を確認した。
各アミノ酸の試験濃度は、0.001%、0.01%、0.1%の3段階とした。またOR2AT4またはOR51B5のmRNA及びOR2AT4またはOR51B5のタンパク質を測定した。
【0028】
1.試験方法
(1)mRNA測定
試験例1と同様の条件でアミノ酸添加後に24時間培養し、嗅覚受容体OR2AT4またはOR51B5のmRNAを測定した。各濃度3wellずつの測定結果から、平均値及び標準偏差値を得た。全データはアミノ酸無添加細胞の測定値に対して有意差検定を行った(t-検定、有意水準:*p<0.05,**p<0.01,***p<0.001)。
【0029】
(2)発現したタンパク質量測定
また、発現した嗅覚受容体OR2AT4またはOR51B5タンパク質量はウエスタンブロット法によった。なおウエスタンブロット法による操作手順は、次の通りとした。
【0030】
1)上記各濃度のアミノ酸を添加して48時間培養経過後の細胞を回収し、PBS(-)で洗浄し、Cell lysis bufferによりタンパク質を抽出した。
2)抽出タンパク質濃度に合わせ、0.5M Tris-HCl緩衝液(pH6.8)を用いて、抽出溶液中のSDS濃度が全量当たり2%になるように調整した。
3)SDS-PAGE(5-20% gel)(DRC)でタンパク質バンドを分離し、0.2μmPVDF Trans-Blot Turbo Transfer Packに転写した。
4)StartingBlock T20(PBS)、Blocking Buffer(Thermo Scientific)を用いて室温条件で、20分間、ブロッキング操作を行った。
5)次いでブロッキング溶液を除去した後、1000倍希釈した1次抗体に交換し、4℃で振動させながら一晩反応させた。なお一次抗体にはAnti-Rabbit-Human OR2AT4 antibody(Abcam)、Anti-Rabbit OR51B5 antibody(Abcam)、Anti-mouse β-actin antibody(Santacruz)を使用した。
6)抗体反応終了後、0.05%Tween20-PBS溶液で3回洗浄し、HRP-Rabbit-IgG(Cell signaling)、HRP-Mouse-IgG(Invitrogen)をblocking bufferで1:10000に希釈し、室温で1時間反応させた。
7)ECL prime Western blotting detection reagent(GE Healthcare)で5分間反応させた後、ルミノ・イメージアナライザー LAS-4000 miniシリーズ(GE Healthcare)で検出し、β-actinに対する相対値を求めた。
8)各濃度3wellずつの測定結果から、平均値及び標準偏差値を得た。全データはアミノ酸無添加細胞の測定値に対して有意差検定を行った(t-検定、有意水準:*p<0.05,**p<0.01,***p<0.001)。
【0031】
2.試験結果
試験結果を添加アミノ酸ごとに次に説明する。
(1)GABA
図1上段にGABA添加によるOR2AT4のmRNA量(左グラフ)及びOR51B5のmRNA量(右グラフ)の測定結果を示す。また下段には同じくOR2AT4のタンパク質(左グラフ)及びOR51B5のタンパク質(右グラフ)の測定結果を示す。
GABAの添加によって嗅覚受容体は、遺伝子の発現が促進され、各受容体の発現量が統計的有意に増加した。すなわちGABAは濃度依存性で、嗅覚受容体の遺伝子発現及びタンパク質発現を促進した。
【0032】
(2)L-シトルリン
図2上段にL-シトルリン添加によるOR2AT4のmRNA量(左グラフ)及びOR51B5のmRNA量(右グラフ)の測定結果を示す。また下段には同じくOR2AT4のタンパク質(左グラフ)及びOR51B5のタンパク質(右グラフ)の測定結果を示す。
L-シトルリンの添加によって嗅覚受容体は、遺伝子の発現が促進され、各受容体の発現量が統計的有意に増加した。すなわちL-シトルリンは濃度依存性で、嗅覚受容体の遺伝子発現及びタンパク質発現を促進した。
【0033】
(3)L-(-)-フェニルアラニン
図3上段にL-(-)-フェニルアラニン添加によるOR2AT4のmRNA量(左グラフ)及びOR51B5のmRNA量(右グラフ)の測定結果を示す。また下段には同じくOR2AT4のタンパク質(左グラフ)及びOR51B5のタンパク質(右グラフ)の測定結果を示す。
L-(-)-フェニルアラニンの添加によって嗅覚受容体は、遺伝子の発現が促進され、各受容体の発現量が統計的有意に増加した。すなわちL-(-)-フェニルアラニンは濃度依存性で、嗅覚受容体の遺伝子発現及びタンパク質発現を促進した。
【0034】
(4)L-アルギニン
図4上段にL-アルギニン添加によるOR2AT4のmRNA量(左グラフ)及びOR51B5のmRNA量(右グラフ)の測定結果を示す。また下段には同じくOR2AT4のタンパク質(左グラフ)及びOR51B5のタンパク質(右グラフ)の測定結果を示す。
L-アルギニンの添加によって嗅覚受容体は、遺伝子の発現が促進され、各受容体の発現量が統計的有意に増加した。すなわちL-アルギニンは濃度依存性で、嗅覚受容体の遺伝子発現及びタンパク質発現を促進した。
【0035】
(5)L-アラニン
図5上段にL-アラニン添加によるOR2AT4のmRNA量(左グラフ)及びOR51B5のmRNA量(右グラフ)の測定結果を示す。また下段には同じくOR2AT4のタンパク質(左グラフ)及びOR51B5のタンパク質(右グラフ)の測定結果を示す。
L-アラニンの添加によって嗅覚受容体は、遺伝子の発現が促進され、各受容体の発現量が統計的有意に増加した。すなわちL-アラニンは濃度依存性で、嗅覚受容体の遺伝子発現及びタンパク質発現を促進した。
【0036】
(6)L-アスパラギン
図6上段にL-アスパラギン添加によるOR2AT4のmRNA量(左グラフ)及びOR51B5のmRNA量(右グラフ)の測定結果を示す。また下段には同じくOR2AT4のタンパク質(左グラフ)及びOR51B5のタンパク質(右グラフ)の測定結果を示す。
L-アスパラギンの添加によって嗅覚受容体は、遺伝子の発現が促進され、各受容体の発現量が統計的有意に増加したが、0.01%の添加が最適であった。すなわちL-アスパラギンは、mRNAの発現には至適範囲があることが考えられた。しかし嗅覚受容体タンパク質発現は、mRNAとは異なり濃度依存性で促進した。
【0037】
(7)L-アスパラギン酸
図7上段にL-アスパラギン酸添加によるOR2AT4のmRNA量(左グラフ)及びOR51B5のmRNA量(右グラフ)の測定結果を示す。また下段には同じくOR2AT4のタンパク質(左グラフ)及びOR51B5のタンパク質(右グラフ)の測定結果を示す。
L-アスパラギン酸の添加によって嗅覚受容体は、遺伝子の発現が促進され、各受容体の発現量が統計的有意に増加したが、0.01%添加が最適であった。すなわちL-アスパラギン酸の嗅覚受容体mRNAの発現には至適範囲があると考えられた。しかし嗅覚受容体のタンパク質発現は、mRNAとは異なり濃度依存性で促進した。
【0038】
(8)L-システイン
図8上段にL-システイン添加によるOR2AT4のmRNA量(左グラフ)及びOR51B5のmRNA量(右グラフ)の測定結果を示す。また下段には同じくOR2AT4のタンパク質(左グラフ)及びOR51B5のタンパク質比(右グラフ)の測定結果を示す。
L-システインの添加によって嗅覚受容体は、遺伝子の発現が促進され、各受容体の発現量が統計的有意に増加した。すなわちmRNAの発現においては濃度依存的に促進作用があると考えられた。一方、L-システインはOR2AT4のタンパク質発現を促進したが、OR51B5のタンパク質には統計的有意な効果は見られなかった。
【0039】
以上の試験結果から、GABA、L-シトルリン、L(-)-フェニルアラニン、L-アルギニン、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システインの8アミノ酸は、0.001%以上の濃度において、濃度依存性で嗅覚受容体の遺伝子発現を促進して嗅覚受容体タンパク質の発現を促進することが明らかとなった。また最適濃度は0.01%以上が好ましいことが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
0007642955000001.app