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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】トリミング方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 89/00 20250101AFI20250304BHJP
   H10D 84/40 20250101ALI20250304BHJP
   H10D 84/80 20250101ALI20250304BHJP
   H10D 84/83 20250101ALI20250304BHJP
【FI】
H10D89/00 101V
H10D84/40 H
H10D84/80 101A
H10D84/83 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020143045
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038499
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片倉 英明
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-141468(JP,A)
【文献】特開2003-209174(JP,A)
【文献】特開2009-267371(JP,A)
【文献】特開2004-096083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 1/00
H10D 89/00
H10D 84/80
H10D 84/40
H10D 84/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に設けられたヒューズ抵抗を切断することで、前記半導体基板に設けられた被調整回路の電気特性を調整するトリミング方法であって、
前記ヒューズ抵抗に切断電流を流して前記ヒューズ抵抗を切断する場合に、前記半導体基板に設けられたスイッチング素子の少なくも一つを導通可能な状態にして、前記切断電流を前記スイッチング素子に流し、
前記被調整回路は、前記スイッチング素子を含み、
前記ヒューズ抵抗が複数あり、複数の前記ヒューズ抵抗を切断する場合のそれぞれの前記切断電流は、共通の前記スイッチング素子に流れる
トリミング方法。
【請求項2】
半導体基板に設けられたヒューズ抵抗を切断することで、前記半導体基板に設けられた被調整回路の電気特性を調整するトリミング方法であって、
前記ヒューズ抵抗に切断電流を流して前記ヒューズ抵抗を切断する場合に、前記半導体基板に設けられたスイッチング素子の少なくも一つを導通可能な状態にして、前記切断電流を前記スイッチング素子に流し、
前記ヒューズ抵抗は、前記半導体基板の一方の面に絶縁膜を介して配置され、前記半導体基板の他方の面に配置されず、
前記スイッチング素子は、前記半導体基板の前記一方の面に設けられた第1主電極と前記半導体基板の他方の面に設けられた第2主電極との間で電流を流すか否かを制御する縦型デバイスの一部であり、
前記切断電流を流す場合に、前記ヒューズ抵抗を介して前記半導体基板の内部に流れた前記切断電流を、前記第1主電極に流す
トリミング方法。
【請求項3】
半導体基板に設けられたヒューズ抵抗を切断することで、前記半導体基板に設けられた被調整回路の電気特性を調整するトリミング方法であって、
前記ヒューズ抵抗に切断電流を流して前記ヒューズ抵抗を切断する場合に、前記半導体基板に設けられたスイッチング素子の少なくも一つを導通可能な状態にして、前記切断電流を前記スイッチング素子に流し、
前記ヒューズ抵抗は、前記半導体基板の一方の面に絶縁膜を介して配置され、
前記半導体基板の導電型がn型であり、
前記スイッチング素子は、
前記半導体基板の一方の面側に形成されたp型のベース領域と、該ベース領域内に形成されたn型の領域と、前記半導体基板と前記n型の領域との間の前記ベース領域上に絶縁膜を介して形成された導電部と、前記n型の領域と接触する第1主電極と、を備え、
前記半導体基板の一方の面側に前記p型のベース領域と離れて形成され、前記ヒューズ抵抗と電気的に接続されたp型の領域を備え、
前記切断電流を、前記p型の領域、前記半導体基板、前記p型のベース領域、前記n型の領域を構成要素とする横型IGBTに流す
トリミング方法。
【請求項4】
半導体基板に設けられたヒューズ抵抗を切断することで、前記半導体基板に設けられた被調整回路の電気特性を調整するトリミング方法であって、
前記ヒューズ抵抗に切断電流を流して前記ヒューズ抵抗を切断する場合に、前記半導体基板に設けられたスイッチング素子の少なくも一つを導通可能な状態にして、前記切断電流を前記スイッチング素子に流し、
前記ヒューズ抵抗は、前記半導体基板の一方の面に絶縁膜を介して配置され、
前記スイッチング素子は、前記半導体基板の前記一方の面に設けられた第1主電極と前記半導体基板の他方の面に設けられた第2主電極との間で電流を流すか否かを制御する縦型デバイスの一部であり、
前記切断電流を流す場合に、前記ヒューズ抵抗を介して前記半導体基板の内部に流れた前記切断電流を、前記第1主電極に流し、
前記スイッチング素子は、
前記半導体基板の一方の面側に形成されたp型のベース領域と、該ベース領域内に形成されたn型の領域と、前記半導体基板と前記n型の領域との間の前記ベース領域上に絶縁膜を介して形成された導電部と、前記n型の領域と接触する第1主電極と、を備え、
前記半導体基板の一方の面側に前記p型のベース領域と離れて形成され、前記ヒューズ抵抗と電気的に接続されたp型の領域を備え、
前記切断電流を、前記p型の領域、前記半導体基板、前記p型のベース領域、前記n型の領域を構成要素とする横型IGBTに流す
トリミング方法。
【請求項5】
前記半導体基板には、前記縦型デバイスを制御するための制御素子が設けられており、
前記切断電流を流す場合に、前記制御素子を非導通状態にする
請求項2または4に記載のトリミング方法。
【請求項6】
前記縦型デバイスがMOSFETである
請求項2、4または5のいずれか一項に記載のトリミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリミング方法に関する。
【0002】
半導体装置における製造バラつきによる回路特性の変動を補正するために、トリミング回路が用いられる。トリミング回路として、ポリシリコン層により形成されたヒューズ抵抗を備える回路が知られている(例えば、特許文献1)。互いに直列に接続されたヒューズ抵抗および読出用トランジスタと、ヒューズ抵抗および読出用トランジスタに並列に設けられた切断用トランジスタ部とを有するトリミング回路において、ヒューズ抵抗および読出用トランジスタの接続点にパッドを設けて、パッドと切断用トランジスタ部のソースとの間で電流を流して、ヒューズ抵抗を切断するトリミング方法が知られている(例えば、特許文献2)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2018-22848号公報
[特許文献2] 特開2007-200387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トリミング方法においては、ヒューズ抵抗を完全に切断することによってリーク電流を軽減することが望ましい。ヒューズ抵抗を完全に切断するためには、ヒューズ抵抗を切断するために流す切断電流の経路を短くして、切断電流の立ち上がり時間を短くすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一の態様は、トリミング方法を提供する。トリミング方法においては、半導体基板に設けられたヒューズ抵抗を切断することで、半導体基板に設けられた被調整回路の電気特性が調整されてよい。トリミング方法において、ヒューズ抵抗に切断電流を流してヒューズ抵抗を切断する場合に、半導体基板に設けられたスイッチング素子の少なくも一つを導通可能な状態にして、切断電流をスイッチング素子に流してよい。
【0005】
ヒューズ抵抗は、半導体基板の一方の面に絶縁膜を介して配置されてよい。
【0006】
スイッチング素子は、縦型デバイスの一部であってよい。縦型デバイスは、半導体基板の一方の面に設けられた第1主電極と、半導体基板の他方の面に設けられた第2主電極との間で電流を流すか否かを制御してよい。切断電流を流す場合に、ヒューズ抵抗を介して半導体基板の内部に流れた切断電流を、第1主電極に流してよい。
【0007】
半導体基板には、縦型デバイスを制御するための制御素子が設けられてよい。切断電流を流す場合に、制御素子を非導通状態にしてよい。
【0008】
半導体基板の導電型がn型であり、スイッチング素子は、半導体基板の一方の面側に形成されたp型のベース領域と、該ベース領域内に形成されたn型の領域と、半導体基板とn型の領域との間のベース領域上に絶縁膜を介して形成された導電部と、n型の領域と接触する第1主電極と、を備え、半導体基板の一方の面側にp型のベース領域と離れて形成され、ヒューズ抵抗と電気的に接続されたp型の領域を備えてもよい。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態のトリミング方法が適用されるトリミング回路100の概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態のトリミング方法が適用される回路図の一例である。
図3】比較例のトリミング方法が適用される回路図の一例である。
図4A図2におけるトリミング方法が適用される半導体装置の一例を示す断面図である。
図4B図4AにおけるA部分の拡大断面図である。
図5図3における比較例のトリミング方法が適用される半導体装置の一例を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態のトリミング方法のフローチャートの一例である。
図7】トリミング方法の適用される他の回路図である。
図8】トリミング方法の適用される他の回路図である。
図9図8におけるトリミング方法が適用される半導体装置の一例である。
図10】トリミング方法の他の適用例を示す回路図である。
図11】トリミング方法の他の適用例を示す回路図である。
図12】トリミング方法の適用される他の回路図である。
図13】トリミング方法の適用される他の回路図である。
図14】トリミング方法の適用される他の回路図である。
図15】トリミング方法の適用される他の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態のトリミング方法が適用されるトリミング回路100の概略構成を示す図である。トリミング回路100は、被調整回路1の電気特性を調整する。例えば、被調整回路1は、少なくとも一つの被調整素子2および少なくとも一つのスイッチング素子3を含む。被調整回路1および被調整素子2は、トリミング回路100と同じ半導体基板に設けられる。スイッチング素子3については後述する。
【0013】
トリミング回路100は、一例において、内部端子T1、T2間の抵抗値を調整する。内部端子T1、T2間には、被調整素子2として抵抗が接続されている。一例において、内部端子T1およびT2の間には、複数の被調整素子2が直列接続されてよい。トリミング回路100は、それぞれの被調整素子2の両端を、短絡するか否かを切り替えることで、内部端子T1、T2間の抵抗値を調整してよい。被調整素子2の数および抵抗値は、適宜に変更されてよい。但し、被調整素子2は、抵抗に限られず、他の受動素子であってもよく、他の能動素子であってもよい。
【0014】
内部端子T1、T2間に接続された1または複数の被調整素子2は、スイッチング素子3のゲートに接続されるゲート抵抗であってよい。トリミング回路100は、内部端子T1、T2間の抵抗値を調整することで、スイッチング素子3のゲート抵抗の値を調整してよい。スイッチング素子3は、縦型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)またはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジタ)などのMOS型(Metal-Oxide-Semiconductor type)デバイスであってよい。スイッチング素子3は、パワー半導体デバイスであってよい。本例のスイッチング素子3は、MOSFETである。但し、被調整素子2およびスイッチング素子3は、この場合に限られない。被調整素子2は、スイッチング素子3の特性を調整するための素子であってもよく、スイッチング素子3とは異なる回路素子の特性を調整するための素子であってもよい。
【0015】
本例において、トリミング回路100は、本体部20とトランジスタ部10とを備える。本例では、一つの本体部20と、一つのトランジスタ部10とが一つのセットになっている。トリミング回路100は、複数セットの本体部20およびトランジスタ部10を備えてよい。本体部20とトランジスタ部10のセット数は、適宜に変更されてよい。本体部20とトランジスタ部10のセット数が増えるほど、端子T1、T2間の抵抗、電流等の電気特性をきめ細かく調整することができ、調整精度を高めることができる。
【0016】
トランジスタ部10は、MOSトランジスタであってよい。例えば、図1に示すトランジスタ部10は、nチャネル型MOSFETである。トランジスタ部10のドレイン12とソース13との間に被調整素子2が設けられる。すなわち、電流等の電気特性を調整したい被調整素子2とトランジスタ部10とが並列に接続される。トランジスタ部10のゲート11は、本体部20の出力端子OUTに電気的に接続されてよい。トランジスタ部10は、半導体基板に形成され、本体部20の出力端子OUTに制御端子が接続される。制御端子は、ゲート端子であってよい。
【0017】
本例では、本体部20の出力端子OUTがLoレベル、すなわち、低レベルになると、トランジスタ部10はオフになる。これにより、対応する被調整素子2の両端は短絡されていない状態となる。一方、本体部20の出力端子OUTがHiレベル、すなわち高レベルになると、トランジスタ部10はオンとなる。トランジスタ部10がオンとなると、対応する被調整素子2の両端は短絡状態となる。但し、この場合に限られず、本体部20の出力端子OUTがLoレベルになるとトランジスタ部10がオンとなり、本体部20の出力端子OUTがHiレベルになると、トランジスタ部10がオフとなるようにトランジスタ部10を構成してもよい。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態のトリミング方法が適用される回路図の一例である。トリミング方法は、半導体基板に設けられたヒューズ抵抗22を切断することで、半導体基板に設けられた被調整回路1の電気特性を調整するトリミング方法である。
【0019】
トリミング回路100は、ヒューズ抵抗22、トリミング用のパッド24、第1ダイオードD1、および出力端子OUTを備える。トリミング回路100は、第1抵抗素子R1、第2抵抗部29、第3抵抗素子R3、および保護ダイオードZLを備えてよい。第1抵抗素子R1は、第1抵抗部の一例である。本例の第2抵抗部29は、第2抵抗素子R2と、抵抗素子LVNDとを備えてよい。抵抗素子LVNDは、トランジスタを用いた高抵抗素子である。本例では、第2抵抗素子R2と抵抗素子LVNDとが直列に接続されている。第3抵抗素子R3は、第3抵抗部の一例である。但し、第1抵抗部、第2抵抗部、および第3抵抗部は、これらの場合に限られない。
【0020】
トリミング回路100は、ヒューズ抵抗22の切断の有無に応じた電圧Soを出力端子OUTへ出力する回路である。トリミング回路100は、ヒューズ抵抗22の切断に応じて出力端子OUTへ印加される電圧Soを変化させて、上述したとおりトランジスタ部10のオン・オフを決定する。また、ヒューズ抵抗22が仮想的に切断された状態を生成する仮想切断が実行される場合にも、トリミング回路100は、電圧Soを変化させる。
【0021】
ヒューズ抵抗22の一端は、接続点28においてパッド24と接続されている。ヒューズ抵抗22の他端は、接続点27において第1ダイオードD1の一端に接続されている。本例では、ヒューズ抵抗22の他端は、第1ダイオードD1のアノードに接続されている。出力端子OUTは、ヒューズ抵抗22とパッド24との接続点28に電気的に接続されている。本例では、出力端子OUTは、第3抵抗素子R3を介して接続点28に電気的に接続されている。出力端子OUTは、ヒューズ抵抗22の切断の有無に応じた電圧を出力する。
【0022】
第1抵抗素子R1の一端は、ヒューズ抵抗22と第1ダイオードD1のアノードとの接続点27に接続される。第1抵抗素子R1の他端は、第3電位V3であるVDDに接続される。第2抵抗部29の一端は、ヒューズ抵抗22の一端とパッド24との接続点28に接続される。第2抵抗部29の他端は、第4電位V4であるGNDに接続される。すなわち、ヒューズ抵抗22の一端は、第2抵抗部29を介して第4電位V4に接続される。本例では、第2抵抗素子R2が接続点28に接続され、抵抗素子LVNDが第4電位V4に接続されているが、逆に、抵抗素子LVNDが接続点28に接続され、第2抵抗素子R2が第4電位V4に接続されてもよい。
【0023】
本例において、第3電位V3は、第4電位V4より高電位である。本例において、第4電位V4は、グランド配線GNDの電位(グランド電位)に対応し、第3電位V3は、高電位配線VDDの電位に対応する。すなわち、ヒューズ抵抗22の他端は、第1抵抗素子R1を介して高電位配線VDDに接続されてよい。第4電位V4は、グランド電位に略等しいLoレベルであってよく、第3電位V3は、高電位配線VDDの電位に略等しいHiレベルであってよい。
【0024】
第2抵抗部29の他端、特に抵抗素子LVNDのゲートとドレインとは、グランド配線GNDに接続されてよい。本例の接続点27は、接続点28よりも、高電位配線VDD側の点である。接続点27は、ヒューズ抵抗22と高電位配線VDDの間に配置されてよい。接続点28は、ヒューズ抵抗22とグランド配線GNDとの間に配置されてよい。
【0025】
保護ダイオードZLは、第2抵抗部29の他端と出力端子OUTとの間に接続される。本例では、保護ダイオードZLのアノードは、第4電位V4であるグランド配線GNDに接続され、保護ダイオードZLのカソードは、出力端子OUTに接続される。
【0026】
出力端子OUTは、トランジスタ部10の制御端子に接続される。本例では、制御端子は、トランジスタ部のゲート端子である。図2では、説明の簡略のために、一つのトランジスタ部10と一つの被調整素子2が示されているが、図1に示されるように、複数のトランジスタ部10と複数の被調整素子2とのセットが設けられてよい。トランジスタ部10のドレイン12とソース13との間に被調整素子2が設けられる。
【0027】
本例では、一又は複数の被調整素子2は、スイッチング素子3のゲートに接続されており、ゲート抵抗として機能する。本例では、一又は複数のスイッチング素子3が、被調整回路1に含まれている。
【0028】
ヒューズ抵抗22、トリミング用のパッド24、第1ダイオードD1、第1抵抗素子R1、第2抵抗部29、第3抵抗素子R3、保護ダイオードZL、トランジスタ部10、被調整回路1は、同じ半導体基板上に形成されてよい。ヒューズ抵抗22は、例えばポリシリコン層により形成されたポリシリコンヒューズである。第1ダイオードD1は、第1導電型の半導体基板に第2導電型の半導体領域を有する。一例において、第1導電型はn型であって、第2導電型はp型である。
【0029】
第1ダイオードD1の一端は、ヒューズ抵抗22と同じ半導体基板上にある一または複数のスイッチング素子3の少なくとも一つに電気的に接続されてよい。本例では、第1ダイオードD1の一端は、被調整回路1に含まれているスイッチング素子3に電気的に接続されている。半導体基板は、下面に配置されたウェハチャック部5および外部ケーブル6を経て外部装置50に接続される。外部装置50は、一例において、ウェハ工程完了後に電気特性試験を行うためのウェハ試験機である。ウェハチャック部5は、ウェハを真空吸着して固定するステージであってよい。ウェハチャック部5の少なくとも一部分は、半導体基板の下面に電気的に接続される。ウェハチャック部5は、外部装置によって任意の電圧に調整することができる。または、外部装置の電源と電気的に切り離すことができる。本半導体装置の通常動作時は、半導体基板下面の電圧はVDD電位よりも高く、第1ダイオードD1は逆バイアス状態となり電流は流れない。スイッチング素子3のゲートには外部パッドが接続されており、ウェハ試験機で任意の電圧Vgを印加することができる。
【0030】
第1抵抗素子R1は、トリミング回路100がトリミングを実行していない状態において、出力端子OUTを高電位配線VDDの電位にプルアップ(分圧)するためのプルアップ抵抗であるとともに、ヒューズ抵抗22に流れる電流を制限する電流制限抵抗でもある。一方、第2抵抗部29は、ヒューズ抵抗22が切断された状態において出力端子OUTをグランド電位にプルダウン(分圧)するためのプルダウン抵抗である。第2抵抗部29および第3抵抗素子R3も、ヒューズ抵抗22に流れる電流を制限する電流制限抵抗でもある。第1抵抗素子R1、第2抵抗部29、および第3抵抗素子R3の抵抗値は、トリミング未実施であってヒューズ抵抗22が切断されていない状態において、出力端子OUTに印加される電圧Sが、トランジスタ部10がオンするレベルとなるように調整されてよい。
【0031】
[非トリミング時]
トリミング回路100がトリミングを実行していない状態においては、出力端子OUTの出力電圧Sは、高電位配線VDDによりプルアップ(分圧)されている。一例において、高電位配線VDDに印加された電圧が第1抵抗素子R1および第2抵抗部29によって分圧される。例えば、出力端子OUTには、Hiレベル(トランジスタ部10を構成するトランジスタの閾値電圧より高い電圧)の電圧Soが印加される。これにより、電流調整用のMOSFETであるトランジスタ部10はオンし、対応する被調整素子2の両端は短絡状態を維持する。
【0032】
[仮想切断時]
トリミング回路100は、ヒューズ抵抗22の切断後における被調整回路1の電気特性を確認するために仮想切断を実行することができる。トリミング回路100は、ヒューズ抵抗22が仮想的に切断された状態を生成する。トリミング回路100が、仮想切断を実行する場合には、トリミング用のパッド24に印加される電圧Spが調整されてよい。
【0033】
[通常切断時]
本例のトリミング方法は、ヒューズ抵抗22に切断電流を流してヒューズ抵抗22を切断する場合に、半導体基板に設けられた一または複数スイッチング素子3の少なくも一つを導通可能な状態にする。切断電流は、ヒューズ抵抗22をジュール熱によって切断するためにヒューズ抵抗22に流す電流を意味する。
【0034】
本例では、スイッチング素子3のゲート電極に閾値電圧以上のHiレベル(高レベル)のゲート電圧Vgを加えることにより、スイッチング素子3が導通可能な状態となる。印加されるゲート電圧Vgは、たとえば、5Vである。但し、スイッチング素子3は、この場合に限られず、スイッチング素子3のゲート電極に閾値電圧以下のLoレベル(低レベル)のゲート電圧Vgを加えるとスイッチング素子3が導通可能な状態となるように構成されてもよい。
【0035】
本例のトリミング方法では、ヒューズ抵抗22に切断電流を流してヒューズ抵抗22を切断する場合には、まず、スイッチング素子3を導通可能な状態とする。次に、ウェハチャック部5をフローティングにする。次に、第1ダイオードD1に順方向電流が流れるように、パッド24に印加する電位と、スイッチング素子3の第1主電極に印加する電位とを調整する。本例では、トリミング用のパッド24に第1電位V1を印加し、スイッチング素子3の第1主電極に第2電位V2を印加する。第1電位V1と第2電位V2は異なる電位である。本例では、第1電位V1は、第2電位V2より高い。本例では、第1主電極は、ソース電極Sである。
【0036】
本例では、トリミング用のパッド24に、高電位配線VDDに印加される第3電位V3より高い第1電位V1が外部電圧源または内部電圧源によって印加されてよい。そして、スイッチング素子3の第1主電極であるソース電極を第2電位V2、例えばグランド電位に接続する。
【0037】
例えば、外部電圧源または内部電圧源によって、パッド24には、10V以上30V以下の電圧が印加される。これにより、ヒューズ抵抗22に電流が流れて、ヒューズ抵抗22がジュール熱により切断される。例えば、半導体装置を検査するためのウェハ試験機の外部電圧源によって、パッド24に電圧が印加される。
【0038】
第1ダイオードD1は、順方向に接続されることになるので、順方向電流である切断電流が、ヒューズ抵抗22および第1ダイオードD1を通じて半導体基板へ流れる。そして、半導体基板に設けられたスイッチング素子3の少なくも一つを導通可能な状態にすることによって、切断電流がスイッチング素子3に流れる。本例によれば、第1抵抗素子R1および第2抵抗部29の影響を受けずに、ヒューズ抵抗22を切断するのに十分な電流を流すことができる。
【0039】
他の例では、ヒューズ抵抗22を切断する場合には、第2抵抗部29が接続される第4電位V4(本例ではグランド電位)を調整してもよい。一例において、パッド24にヒューズ抵抗22を切断するための電圧を印加する場合には、パッド24に電圧を印加しない場合に比べて、第4電位V4を上昇させてよい。これにより、パッド24から第2抵抗部29に電流が流れることを抑制できる。パッド24にヒューズ抵抗22を切断するための電圧を印加する場合、第4グランド電位V4を第2電位V2より高くしてよい。当該第4電位V4を、高電位配線VDDと同電位にしてもよい。これにより、ヒューズ抵抗22に電流を流しやすくなり、ヒューズ抵抗22を容易に切断できる。
【0040】
本例のトリミング方法におけるヒューズ抵抗22の切断段階では、パッド24、ヒューズ抵抗22、第1ダイオードD1、およびスイッチング素子3の順に切断電流が流れる。すなわち、ヒューズ抵抗22を切断するために流される切断電流は、スイッチング素子3を導通可能な状態とすることによって、スイッチング素子3に流れる。
【0041】
トリミング後には、トリミング回路100は、ヒューズ抵抗22が切断された状態となる。ヒューズ抵抗22が切断された状態においては、第2抵抗部29が、出力端子OUTをグランド電位にプルダウンする。出力端子OUTには、Loレベルの電圧Soが印加される。これにより、電流調整用のMOSFETであるトランジスタ部10はオフし、対応する被調整素子2の両端は短絡されていない状態に変化する。
【0042】
図3は、比較例のトリミング方法が適用される回路図の一例である。比較例のトリミング方法においては、ヒューズ抵抗22に切断電流を流してヒューズ抵抗を切断する場合に、半導体基板の下面に配置されたウェハチャック部5および外部ケーブル6を経て外部装置に接続される。外部装置は、一例において、ウェハ工程完了後に電気特性試験を行うためのウェハ試験機である。ウェハチャック部5は、ウェハを真空吸着して固定するステージであってよい。ウェハチャック部5の少なくとも一部分は、半導体基板の下面に電気的に接続される。そして、外部ケーブル6は、トリミング回路100および被調整回路1が設けられている半導体基板の下面を外部装置のグランド電極に接続する。
【0043】
比較例のトリミング方法におけるヒューズ抵抗22の切断段階では、パッド24、ヒューズ抵抗22、第1ダイオードD1、基板下面の電極、ウェハチャック部5、および外部ケーブル6の順に切断電流が流れる。すなわち、ヒューズ抵抗22を切断するために流される切断電流は、ウェハチャック部5および外部ケーブル6を経由する。
【0044】
図3に示される比較例においては、切断電流がウェハチャック部5および外部ケーブル6のインピーダンスの影響、たとえば寄生容量の影響を受ける。具体的には、比較例のトリミング方法においては、切断時における切断電流の立ち上がりが図2に示される本実施形態のトリミング方法における切断電流の立ち上がりに比べて遅くなる。切断電流の立ち上がりが遅いと、ポリシリコンで形成されているヒューズ抵抗22の一部だけが発熱して切断が不十分となりトリミング処理後のリーク電流が大きくなる場合がある。また、ポリシリコンで形成されたヒューズ抵抗22の周辺に熱が伝わり、層間絶縁膜等の保護膜の品質に影響を与えるおそれがある。
【0045】
図4Aは、図2における実施形態のトリミング方法が適用される半導体装置200の一例を示す断面図である。図4Bは、図4AのA部分を拡大した拡大断面図である。本実施形態のトリミング方法は、種々の半導体装置200に適用することができる。半導体装置200は、被調整回路1およびトリミング回路100を備える。被調整回路1およびトリミング回路100は、同じ半導体基板30上に設けられている。図4Aおよび図4Bにおいては、説明の簡便のために、トリミング回路100に含まれる第1抵抗素子R1、第2抵抗部29、第3抵抗素子R3、および保護ダイオードZLは、回路シンボルにより電気的接続関係だけ示されている。また、図4Aおよび図4Bにおいては、説明の簡便のためにトリミング回路100のうち、トランジスタ部10は省略して本体部20を示している。
【0046】
本例の被調整回路1は、互いに同一の半導体基板30の上面に形成されている出力段回路部210を含んでよい。半導体装置200は、制御回路部230を含んでよい。制御回路部230も被調整回路1に含まれてもよい。
【0047】
出力段回路部210は、図1に示される複数のスイッチング素子3を含んでよい。換言すれば、スイッチング素子3は、半導体装置200の外部に電流を出力する出力トランジスタの一部であってよい。スイッチング素子3は、半導体基板30の一方の面側、すなわち、おもて面側に設けられてよい。出力段回路部210は、トレンチゲート型のパワー半導体デバイスを含んでよい。出力段回路部210は、スイッチング素子3を構成要素の一部とする、出力トランジスタとしての縦型デバイス7を含んでよい。
【0048】
縦型デバイス7は、半導体基板30の一方の面(図では上面)に設けられた第1主電極と半導体基板30の他方の面(図では下面)に設けられた第2主電極との間で電流を流すか否かを制御するデバイスである。縦型デバイス7は、縦型のMOSFETを含んでいてもよく、IGBTを含んでいてもよい。本例では、縦型デバイス7は、トレンチゲートを有する縦型MOSFETである。
【0049】
半導体装置200は、大電流を流すことができる出力段回路部210と、制御回路部230とを一つの半導体チップ上に搭載したパワー集積回路であってよい。半導体装置200のウェハプロセス完成後に、電気特性が目標範囲から外れていた場合、ウェハ試験機を用いてトリミング回路100のポリシリコンのヒューズ抵抗22を切断することで、電気特性を目標範囲に調整することができる。トリミング回路に使われるヒューズ抵抗22は、レーザー照射または切断電流を流すことで切断することができるが、本例のように、切断電流を流す方式によれば、レーザー照射装置が不要である。ウェハ工程完成後に電気特性試験を実行するウェハ試験機をトリミング処理の外部装置として兼用することができる。
【0050】
本例では、半導体基板30の導電型は、n型である。半導体基板30は、n-型ドリフト層201を備える。半導体基板30の下面には、不純物拡散等によりコンタクト層202としてのn+型層が形成される。コンタクト層202には第2主電極203が形成されている。第2主電極203は、金属等の導電性材料で形成される。本例では、第2主電極203はドレイン電極である。なお、半導体基板30の主面のうち第2主電極203が形成される下面を裏面、下面の反対側の上面をおもて面とも称する。コンタクト層202は、縦型デバイス7のドレイン層として機能する。第2主電極203は、縦型デバイス7のドレイン電極として機能する。
【0051】
半導体基板30の一方の面側にはp型ベース領域212が形成されている。p型ベース領域212内には、p+型領域213およびn+型領域214が形成されている。これらの領域は、不純物拡散等により形成される。半導体基板30には、トレンチゲート211が形成されている。
【0052】
トレンチゲート211は、半導体基板の一方の面から掘り込まれている。トレンチゲート211は、p型ベース領域212を突き抜けてn-型ドリフト層201まで達している。トレンチゲート211はトレンチ内に充填された導電部215と、導電部215を半導体基板30から電気的に分離する絶縁膜216とを備える。トレンチは、n+型領域214とp型ベース領域212およびn-型ドリフト層201と接する。導電部215は、すくなくとも、n+型領域214とn-型ドリフト層201との間のp型ベース領域212の表面に、絶縁膜216を介して形成されることがよい。第1主電極220は、p+型領域213およびn+型領域214と接触するように形成されている。第1主電極220は導電性材料によって形成される。本例では、第1主電極220は、ソース電極である。トレンチゲート211の上方には、絶縁膜222が形成されている。絶縁膜222は、トレンチゲート211と第1主電極220とを絶縁する。
【0053】
スイッチング素子3は、n+型領域214、p型ベース領域212、n-型ドリフト層201、トレンチゲート211および第1主電極220を備えていてよい。スイッチング素子3は、縦型デバイス7のMOS部217であってよい。n+型領域214、p型ベース領域212、n-型ドリフト層201、トレンチゲート211および第1主電極220はそれぞれ縦型デバイス7のソース領域、ベース領域、ドリフト層、ゲートおよびソース電極として機能する。MOS部217は、縦型デバイス7のソース領域、ベース領域、ドリフト層、ゲートおよびソース電極を含む部分であってよく、縦型デバイス7のドレイン層およびドレイン電極を含まないでよい。
【0054】
なお、MOS部217は、トレンチゲートの代わりにプレーナーゲートを備えてもよい。プレーナーゲートは、半導体基板の一方の面に絶縁膜を介して形成される。具体的には、n+型領域214とn-型ドリフト層201とに挟まれたp型ベース領域212の表面上に絶縁膜を介して形成される。
【0055】
なお、本発明において構成要素として表示する「n」は電子を多数キャリアとする要素を意味し、「p」は正孔を多数キャリアとする要素を意味する。「+」は比較的高不純物濃度であることを意味し、「-」は比較的低不純物濃度であることを意味する。
【0056】
トリミング回路100は、切断電流を流す場合に、スイッチング素子3であるMOS部217を導通可能な状態にする。すなわち、MOS部217のトレンチゲート211の導電部215に電圧を印加し、n-型ドリフト層201とn+型領域214との間のp型ベース領域212にチャネルを形成する。MOS部217を導通可能な状態とすると、ヒューズ抵抗22を介して半導体基板30の内部に流れた切断電流を、MOS部217を介して第1主電極220に流す。また、スイッチング素子3を複数備えていてよい。トリミング回路100は、切断電流を流す場合に、複数のパワー半導体デバイスのすべてのMOS部217を導通可能な状態としてもよく、一部のパワー半導体デバイスのMOS部を導通可能な状態としてもよい。切断電流を流してヒューズ抵抗22を切断する場合には、ウェハチャック部5はフローティングにしてよい。
【0057】
制御回路部230は、半導体基板30のおもて面側において、nチャンネル型のMOSトランジスタ240とpチャンネル型のMOSトランジスタ250とを組み合わせたCMOS回路部を含んでよい。nチャンネル型のMOSトランジスタ240は、n型の半導体基板30内に形成されたpウェル領域241を有する。そしてpウェル領域241の内部に、それぞれn+型のソース領域242とドレイン領域243が形成されている。
【0058】
ソース領域242にはソース電極246が接続され、ドレイン領域243にはドレイン電極247に接続される。ソース電極246およびドレイン電極247は、金属等の導電性材料によって形成される。半導体基板30のおもて面上には、ゲート絶縁膜245を介してゲート電極244が設けられる。ゲート電極244の一方の側方にはソース領域242が設けられ、ゲート電極244の他方の側方にはドレイン領域243が設けられる。
【0059】
pチャンネル型のMOSトランジスタ250は、n型の半導体基板30内に形成されたpウェル領域251を有し、そのpウェル領域251の内部にnウェル領域252を有する。nウェル領域252の内部に、それぞれp+型のソース領域253とドレイン領域254が形成されている。ソース領域253には、ソース電極257が接続され、ドレイン領域254には、ドレイン電極258が接続される。半導体基板30のおもて面上には、ゲート絶縁膜256を介してゲート電極255が設けられる。
【0060】
制御回路部230は、縦型デバイス7を制御するための制御素子であってよい。本実施形態の切断電流を流す場合には、制御回路部230は非導通状態にしてもよい。この場合、このようにパワー半導体デバイスでない制御回路部230についてはオフとすることで、制御回路部230に予め定められた値以上の電流が流れるのを未然に防止して、制御回路部230が破損することを防止することができる。
【0061】
トリミング回路100において、第1ダイオードD1およびヒューズ抵抗22が半導体基板30に形成されている。ヒューズ抵抗22は、半導体基板30の上面に絶縁膜46を介して配置されている。絶縁膜46は、半導体基板30上に部分的に設けられる。絶縁膜46は、LOCOS酸化膜であってよい。ヒューズ抵抗22は、ポリシリコン層32で形成されている。
【0062】
図4Bに示されるように、半導体基板30の一方の面側に第2導電型の第1半導体領域42が形成されている。一例において、第1半導体領域42は、n型半導体基板30に不純物拡散等により形成されたp型領域である。第1半導体領域42は、p型ベース領域212と離れて形成されている。第1半導体領域42は、ヒューズ抵抗22と電気的に接続される。第1半導体領域42と半導体基板30とによってPN接合が形成される。このPN接合が第1ダイオードD1として機能する。第1ダイオードD1は、縦型ダイオードであってよい。本明細書において、縦型ダイオードとは、半導体基板30の厚み方向に電流が流れるダイオードをいう。本例では、アノードが半導体基板30の上面側に配置され、カソードが半導体基板30の内部側に配置されている。
【0063】
ヒューズ抵抗22に切断電流を流してヒューズ抵抗22を切断する場合に、本来、縦型MOSFETのMOS部217であるスイッチング素子3に、縦型ダイオードである第1ダイオードD1から電流が流れる。これにより、第1ダイオードD1のp型領域、半導体基板30および縦型デバイス7のMOS部217であるスイッチング素子3が横型IGBT218として機能する。具体的には、横型IGBT218は、第1半導体領域42(p型の領域)、半導体基板30(ドリフト層201)、p型ベース領域212、n+型領域214(n型の領域)を構成要素とする。
【0064】
第1半導体領域42の一部には、第2導電型の第2半導体領域44が不純物拡散等により形成されてよい。第2半導体領域44は、不純物濃度が第1半導体領域42より高い。一例では、第2半導体領域44は、p+領域である。
【0065】
第2導電型の第2半導体領域44には、コンタクト部34が接続される。コンタクト部34は、導電性物質で形成されてよい。ヒューズ抵抗22の一の端部は、コンタクト部34を介してメタル配線36に接続する。
【0066】
第1ダイオードD1のうち第2半導体領域44が形成されている領域において、絶縁膜46が一部除去されており、第2半導体領域44が部分的に露出している。第2半導体領域44は、コンタクト部34を介してメタル配線36に接続する。メタル配線36およびコンタクト部34は、第1ダイオードD1のアノード(第1半導体領域42および第2半導体領域44)とヒューズ抵抗22とを電気的に接続しており、図2に示した接続点27として機能する。メタル配線36は、第1抵抗素子R1を介して高電位配線VDDに接続されてよい。
【0067】
ヒューズ抵抗22の他の端部は、コンタクト部34を介して、メタル配線37に接続する。メタル配線37は、ヒューズ抵抗22をパッド24および第2抵抗部29と接続する接続点28として機能する。メタル配線37は、第3抵抗素子R3を介して出力端子OUTに電気的に接続されてよい。また、メタル配線37は、第2抵抗部29を介して、グランド電位GNDに電気的に接続されてよい。
【0068】
ヒューズ抵抗22、第2半導体領域44、および絶縁膜46と、メタル配線36、37との間には、層間絶縁膜47が形成されてよい。すなわち、層間絶縁膜47上にメタル配線36およびメタル配線37が形成されてよい。この場合、コンタクト部34は、層間絶縁膜47内の開口を貫通して形成される。
【0069】
本実施形態のトリミング方法においては、外部装置50が用いられてよい。外部装置50は、半導体基板30上のスイッチング素子3のゲート電極G、半導体基板30上のパッド24、およびスイッチング素子3のソース電極である第1主電極220に対して、それぞれ、ゲート電圧Vg、第1電位V1、第2電位V2を印加する。具体的には、外部装置50は、ゲート電圧印加端子54、第1電位印加端子55、および第2電位印加端子56を備える。ゲート電圧印加端子54は、半導体基板30上のスイッチング素子3のゲート電極Gにゲート電圧Vgを印加するか否かを切り替える。第1電位印加端子55は、半導体基板30上のパッド24に第1電位V1を印加するか否かを切り替える。第2電位印加端子56は、スイッチング素子3のソース電極である第1主電極220に第2電位V2を印加するか否かを切り替える。
【0070】
外部装置50は、ウェハ試験機であってよく、特に、プローブカードと呼ばれる治具であってよい。プローブカードとは、半導体基板上に形成された半導体装置200の電気的検査に用いられる治具である。プローブカードは、半導体基板30上の電極と、測定機であるウェハ試験機とを接続するコネクタとして機能する。半導体基板30上の各電極に、プローブカードの針を接触させ、対応する電位を印加する。外部装置50として、ウェハ試験機を用いる場合には、ウェハ検査の結果に応じて、別の外部装置に接続しなおすことなく、トリミング処理を実行することができる。
【0071】
図5は、図3における比較例のトリミング方法が適用される半導体装置200の一例を示す断面図である。図5に示される比較例は、図4Aおよび図4Bに示される本発明の実施形態と比べて、切断電流の経路が異なる。半導体装置200の構造自体は、図4Aに示される構造と同様である。
【0072】
図5に示される比較例では、外部装置50は、第1電位印加端子55および第2電位印加端子56を備える。第1電位印加端子55は、半導体基板30上のパッド24に第1電位V1を印加するか否かを切り替える。第2電位印加端子56は、半導体基板30の裏面に配置されたウェハチャック部5に第2電位V2を印加するか否かを切り替える。ヒューズ抵抗22(ポリシリコン層32)に切断電流を流してヒューズ抵抗22を切断する場合には、第1電位印加端子55は、半導体基板30上のパッド24に第1電位V1を印加し、第2電位印加端子56は、ウェハチャック部5に第2電位V2(本比較例では、グランド電位)を印加する。
【0073】
比較例においては、切断電流は、外部装置50の第1電位印加端子55、パッド24、ヒューズ抵抗22(ポリシリコン層32)、第1ダイオードD1、コンタクト層202、第2主電極203、ウェハチャック部5、外部ケーブル6、および外部装置50の第2電位印加端子56の順に流れる。したがって、ウェハチャック部5および外部ケーブル6のインピーダンスの影響、たとえば寄生容量の影響によって、切断電流の立ち上がりが遅くなる。
【0074】
これに対して、図4Aおよび図4Bに示される本発明の一実施形態においては、ヒューズ抵抗22(ポリシリコン層32)に切断電流を流してヒューズ抵抗22を切断する場合に、半導体基板30に設けられた縦型デバイス7のMOS部217であるスイッチング素子3の少なくも一つを導通可能な状態にして、切断電流を流す。したがって、切断電流は、外部装置50の第1電位印加端子55、パッド24、ヒューズ抵抗(ポリシリコン層32)、第1ダイオードD1、スイッチング素子3のチャネル、第1主電極220、および外部装置50の第2電位印加端子56の順に流れる。したがって、ウェハチャック部5および外部ケーブル6のインピーダンスの影響、たとえば寄生容量の影響を受けない。
【0075】
図6は、本発明の一実施形態のトリミング方法のフローチャートの一例である。トリミングを実行するか否かが決定される(ステップS101)。仮想切断により得られた結果に基づいて、トリミングを実行するか否かが決定されてよい。例えば、端子T1と端子T2との間の抵抗値または電流値が目標範囲内になるように、複数のヒューズ抵抗22のうちから選択的に切断するヒューズ抵抗22が決定される。
【0076】
トリミングを実行する場合(ステップS101:YES)、すなわち、ヒューズ抵抗22に切断電流を流してヒューズ抵抗22を切断する場合には(ステップS101:YES)、出力段回路部210のうちの少なくとも一つのスイッチング素子3を導通可能な状態とする(ステップS102)。具体的には、外部装置50のゲート電圧印加端子54がスイッチング素子3のゲート電極Gにゲート電圧Vgを加えることで、縦型デバイス7のMOS部217であるスイッチング素子3を導通可能な状態とする。ウェハチャック部5はフローティングにする。トリミングするヒューズ抵抗22の配置位置に応じて、ヒューズ抵抗22から所定の距離内にある一または複数のスイッチング素子3を複数のスイッチング素子3の中から選択して導通可能な状態としてもよい。
【0077】
そして、第1ダイオードD1に順方向電流が流れるように、ヒューズ抵抗22の一端に接続されたパッド24と、スイッチング素子3の第1主電極220との間の電圧が調整される。本例では、ヒューズ抵抗22の一端に接続されたパッド24に高電位配線VDDの第3電位V3より高い第1電位V1が印加される(ステップS103)。一方、スイッチング素子3の第1主電極220には、第2電位V2が印加される(ステップS102)。これによって、ヒューズ抵抗22から半導体基板30の内部に流れた切断電流を第1主電極に流す。
【0078】
一例において、外部装置50の第1電位印加端子55は、半導体基板30上のパッド24に第1電位V1を印加する状態に切り替える。外部装置50の第2電位印加端子56は、スイッチング素子3のソース電極である第1主電極220に第2電位V2を印加する状態に切り替える。なお、ステップS102、ステップS103、およびステップS104は、同時に実行されてもよい。
【0079】
本実施形態においては、切断電流がウェハチャック部5および外部ケーブル6を経由しない。それゆえ、本実施形態のトリミング方法によれば、ウェハチャック部5および外部ケーブル6のインピーダンスの影響、たとえば寄生容量の影響によって、切断電流の立ち上がりが遅くなることを抑制することができる。また、ウェハチャック部5の仕様および外部ケーブル6の仕様に影響されることなく、ヒューズ抵抗22の切断時の電流の立ち上がりを速めることができる。したがって、ヒューズ抵抗22を安定して切断することができる。外部装置50として、ウェハ試験機等を兼用することもできるので、外部装置50の改造が不要である。
【0080】
本実施形態によれば、ヒューズ抵抗22(ポリシリコン層32)は、半導体基板30の上面に絶縁膜46を介して設けられている。そして、切断電流を流す場合に、半導体基板30の上面側に設けられたスイッチング素子3を導通可能な状態にする。したがって、半導体基板30の上面に設けられている部分の間で切断電流が流れるので、切断電流を流す経路を短くすることができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、縦型デバイス7のMOS部217であるスイッチング素子3を導通可能な状態として切断電流を流すので、ヒューズ抵抗22を切断するのに十分な大電流を流すことができる。切断電流を流す場合には、トリミングを実施するヒューズ抵抗の周囲に配置されている複数のパワー半導体デバイスのMOS部217を導通可能な状態としてよい。これにより一つのスイッチング素子3を通じて切断電流を流す場合に比較して、大きな切断電流を流すことができる。
【0082】
特に、動作時においては縦型デバイス7のMOS部217として機能するスイッチング素子3を、トリミング時においては横型IGBT等として転用するため、トリミング時における動作抵抗を低くすることができる。
【0083】
本実施形態によれば、切断電流を流す場合に、既存のスイッチング素子3を使用することができ、別途のスイッチング素子3を設ける必要がないので、トリミング回路の小型化を実現することができる。特に、被調整回路1に含まれているスイッチング素子3を活用することができる。
【0084】
なお、比較例の場合と同様に、本実施形態のトリミング回路100によれば、ヒューズ抵抗22を切断する前にヒューズ抵抗22の切断後における被調整素子の電気特性を確認する仮想切断を実現することができる。
【0085】
本例においても、ヒューズ抵抗22の一端に接続されるトリミング用のパッド24は必要であるが、ヒューズ抵抗22の他端側の端子としては、スイッチング素子3の第1主電極220を用いることができ、トリミング専用の外部端子を設ける必要がない。また、ヒューズ抵抗22を溶断する大電流に耐えうる抵抗バイパス回路を設ける必要がない。したがって、従来に比べて小型化と仮想切断機能とを両立したトリミング回路100を実現できる。
【0086】
本例のトリミング回路100によれば、ヒューズ抵抗22が切断されても、パッド24と出力端子OUTとは、メタル配線37および第3抵抗素子R3を介して電気的に接続されている。したがって、トリミング用のパッド24を、出力端子OUTにおける電圧の監視に再活用することができる。具体的には、トリミング後においても、出力端子OUTにおける電圧Soを測定することができる。また、トリミングが素子に与える劣化(リーク)の有無を確認することができ、回路における高信頼性を確保することができる。
【0087】
図7は、トリミング方法の適用される他の回路図である。図7に示されるトリミング回路100では、保護ダイオードZLが省略されている。また、図7における第2抵抗部29は、第2抵抗素子R2で構成されており、抵抗素子LVNDは省略されている。図7に示される例においても、本発明のトリミング方法を実行することができる。
【0088】
図8は、トリミング方法の適用される他の回路図である。図8に示されるトリミング回路においては、ヒューズ抵抗22と第1抵抗素子R1との接続点27にトリミング用のパッド24が接続されており、ヒューズ抵抗22と第2抵抗部29との接続点28に第1ダイオードD1が接続されている。第1ダイオードD1とヒューズ抵抗22の接続点28に第3抵抗素子R3を介して出力端子OUTが接続されている。
【0089】
しかしながら、図8に示されるトリミング回路においても、トリミング用のパッド24をヒューズ抵抗22の両端にそれぞれ設けないため、回路面積の拡大を防止することができる。ただし、図8に示されるトリミング回路においては、ヒューズ抵抗22が切断された状態において、パッド24と出力端子OUTとが電気的に切り離されてしまう。したがって、トリミング用のパッド24を、出力端子OUTにおける電圧の監視に再活用することはできない。
【0090】
図8に示されるトリミング回路100においても、ヒューズ抵抗22に切断電流を流してヒューズ抵抗22を切断する場合に、半導体基板30に設けられたスイッチング素子3の少なくも一つを導通可能な状態にして、切断電流をスイッチング素子3に流すことができる。したがって、ウェハチャック部5および外部ケーブル6のインピーダンスの影響、たとえば寄生容量の影響によって、ヒューズ抵抗22の切断時における切断電流の立ち上がりが遅くなることを防止することができる。
【0091】
図9は、図8におけるトリミング方法が適用される半導体装置の一例を示す断面図である。メタル配線36およびコンタクト部34は、第1ダイオードD1のアノードとヒューズ抵抗22とを電気的に接続しており、図8に示した接続点28として機能する。また、メタル配線36は、ヒューズ抵抗22を第2抵抗部29と接続する。また、メタル配線36は、第3抵抗素子R3を介して出力端子OUTに電気的に接続されてよい。また、メタル配線36は、第2抵抗部29を介して、グランド電位GNDに電気的に接続されてよい。一方、メタル配線37は、ヒューズ抵抗22を第1抵抗素子R1に接続する。メタル配線37は、第1抵抗素子R1を介して高電位配線VDDに接続されてよい。
【0092】
以上の点を除いて、図9に示される半導体装置200の構成は、図4Aおよび図4Bに示される半導体装置の構成と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。図9に示される半導体装置200においても、外部装置50が用いられてよい。外部装置50は、半導体基板30上のスイッチング素子3のゲート電極G、半導体基板30上のパッド24、およびスイッチング素子3のソース電極である第1主電極220に対して、それぞれ、ゲート電圧、第1電位、第2電位を印加する。
【0093】
図9に示される実施形態においても、図4Aおよび図4Bに示したのと同様のトリミング方法を適用することができる。切断電流がウェハチャック部5および外部ケーブル6を経由しないので、ウェハチャック部5および外部ケーブル6のインピーダンスの影響、たとえば寄生容量の影響によって切断電流の立ち上がりが遅くなることを抑制することができる。また、切断電流を流す経路を短くすることができる。
【0094】
図10は、トリミング方法の他の適用例を示す回路図である。図10に示されるトリミング回路100では、図8に示されるトリミング回路100において第3抵抗素子R3が省略されている。さらに、図10における第2抵抗部29は、第2抵抗素子R2で構成されており、抵抗素子LVNDは省略されている。図10に示される例においても、本発明のトリミング方法を実行することができる。
【0095】
上述した図2図7図8、および図10に示されるトリミング回路100において、ヒューズ抵抗22に切断電流を流してヒューズ抵抗22を切断する場合に、被調整回路1に含まれているスイッチング素子3を導通可能な状態にして、切断電流をスイッチング素子3に流す場合が示された。切断電流を流す場合に、被調整回路1に含まれているスイッチング素子3を活用することにより、被調整回路1以外の別途のスイッチング素子を設けなくてよく、トリミング回路の小型化を実現することができる。しかし、本発明はこの場合に限られない。
【0096】
図11は、トリミング方法の他の適用例を示す回路図である。本例において、スイッチング素子3は、被調整回路1に含まれる素子とは別の素子として設けられている。スイッチング素子3は、図4Aまたは図9に示された半導体基板30に設けられてよい。スイッチング素子3は、1つであってもよく、複数個であってもよい。ヒューズ抵抗22に切断電流を流してヒューズ抵抗22を切断する場合に、スイッチング素子3を導通可能な状態として、切断電流をスイッチング素子3に流す。
【0097】
具体的には、ヒューズ抵抗22に切断電流を流してヒューズ抵抗22を切断する場合には、スイッチング素子3のゲート電極Gにゲート電圧Vgが印加される。これによってスイッチング素子3が導通可能な状態となる。図11に示されるスイッチング素子3は、被調整回路1とは別の素子であればよく、他の用途で設けられているスイッチング素子がスイッチング素子3として兼用されてもよい。
【0098】
図11に示される実施形態においても、切断電流がウェハチャック部5および外部ケーブル6を経由しない。それゆえ、本実施形態のトリミング方法によっても、ウェハチャック部5および外部ケーブル6のインピーダンスの影響、たとえば寄生容量の影響によって、切断電流の立ち上がりが遅くなることを抑制することができる。また、切断電流を流す経路を短くすることができる。
【0099】
図12は、トリミング方法の適用される他の回路図である。本例のトリミング回路100は、複数の本体部20を備える。本例のトリミング回路100は、本体部20-1、20-2、20-3、・・・を備える。本明細書では、k番目の本体部20を、本体部20-kと称する場合がある。また、各図においては、本体部20-kにおける各構成要素の符号に、kの枝番を付している。それぞれの本体部20は、被調整素子2と対応して設けられている。それぞれの本体部20は、図1に示したトランジスタ部10のゲートに接続されてよい。
【0100】
それぞれの本体部20は、図1から図11において説明したいずれかの態様の本体部20と同様の構造を有する。図12においては、それぞれの本体部20は、図2に示した本体部20と同様の構造を有する。ただし、図12においては、第3抵抗素子R3を省略している。
【0101】
各実施例における本体部20は、第3抵抗素子R3を有していてよく、有していなくてもよい。また図12においては、第2抵抗素子R2を、パッド24と、出力端子OUTとの間に配置している。各実施例の本体部20において、第2抵抗素子R2は、図12と同様にパッド24と出力端子OUTとの間に配置してよく、図2と同様にパッド24と抵抗素子LVNDとの間に配置してもよい。
【0102】
本例のトリミング回路100においては、第1ダイオードD1およびスイッチング素子3が、複数の本体部20に対して共通に設けられている。つまり、それぞれの本体部20には、個別の第1ダイオードD1および個別のスイッチング素子3が設けられていない。共通の第1ダイオードD1には、それぞれの本体部20のヒューズ抵抗22に接続されている。本例の第1ダイオードD1のアノードが、複数のヒューズ抵抗22に接続されている。そして、第1ダイオードD1のカソード側が、スイッチング素子3のドレイン側に接続されている。
【0103】
各ヒューズ抵抗22-kは、図4Aまたは図9に示したように、半導体基板30の上面に絶縁膜46を介して配置されてよく、スイッチング素子3は、半導体基板30の上面に設けられてよい。スイッチング素子3は、半導体基板30の上面に設けられた第1主電極220と半導体基板30の下面に設けられた第2主電極203との間で電流を流すか否かを制御する縦型デバイスであってよい。
【0104】
切断電流を流す場合には、スイッチング素子3を導通可能な状態にして、ヒューズ抵抗22-kから半導体基板30の内部に流れた切断電流を、第1主電極220に流してよい。スイッチング素子3は、複数の本体部20-kの何れかによって調整される被調整回路1-kの何れかに含まれるスイッチング素子3であってよい。
【0105】
本例のヒューズ抵抗22-kは、一端がパッド24-kに接続され、他端が第1ダイオードD1に接続されている。本例では、ヒューズ抵抗22-kの当該一端には、第2抵抗素子R2-1を介して、出力端子OUTkおよび抵抗素子LVNDkが接続されている。
【0106】
また、ヒューズ抵抗22-kの当該他端には、第1抵抗素子R1が接続されている。本例では、第1抵抗素子R1も、複数の本体部20に対して共通に設けられている。第1抵抗素子R1の一端は、第1ダイオードD1に接続され、他端が高電位配線VDDに接続されている。本例では、それぞれの本体部20-kに対して、接続点27-kが設けられている。接続点27-kには、第1ダイオードD1のアノード、第1抵抗素子R1の一端、および、ヒューズ抵抗22-kの他端が接続されている。
【0107】
複数の本体部20に対して第1ダイオードD1およびスイッチング素子3を共通に設けることで、装置規模を小さくできる。また、複数の本体部20に対して第1抵抗素子R1を共通に設けることで、装置規模を小さくできる。
【0108】
本例においては、ヒューズ抵抗22-kに切断電流を流してヒューズ抵抗22-kを切断する場合に、複数の本体部20に対して共通に設けられた1または複数のスイッチング素子3の少なくとも一つを導通可能な状態にして、切断電流をスイッチング素子3に流す。
【0109】
切断すべきヒューズ抵抗22を一つずつ選択し、切断すべきヒューズ抵抗22-kに対応するパッド24-kに、所定の高電位を順番に印加する。それぞれの本体部20において、ヒューズ抵抗22を切断する動作は、図6の例と同様である。上述したように、当該高電位は、高電位配線VDDに印加される電圧より高い第1電位である。選択されていないパッド24はフローティングにする。
【0110】
また、ヒューズ抵抗22を切断するべく選択された本体部20に印加するグランド電位を変更してもよい。例えばヒューズ抵抗22-kを切断する場合、本体部20-kに印加されるグランド電位を上昇させる。本体部20-kのグランド電位を、パッド24-kに印加する電位と同一の電位に制御してもよい。これにより、パッド24-kから第2抵抗部29-kに電流が流れることを抑制できる。
【0111】
また、仮想切断を設定する場合、それぞれのパッド24に、並行して仮想切断のための電圧を印加してよい。つまり、それぞれの本体部20を、並行して仮想切断状態に設定できる。また、一部の本体部20を選択的に仮想切断状態に設定してもよい。
【0112】
また、第1抵抗素子R1および第2抵抗素子R2の抵抗値は、抵抗素子LVNDの抵抗値よりも十分小さくてよい。抵抗素子LVNDの抵抗値を大きくすることで、本体部20に流れる電流を絞ることができる。
【0113】
本例においても、切断電流がウェハチャック部5および外部ケーブル6を経由しない。それゆえ、本実施形態のトリミング方法によっても、ウェハチャック部5および外部ケーブル6のインピーダンスの影響、たとえば寄生容量の影響によって、切断電流の立ち上がりが遅くなることを抑制することができる。また、切断電流を流す経路を短くすることができる。
【0114】
図13は、トリミング方法の適用される他の回路図である。本例のトリミング回路100は、複数の本体部20を備える。本例においても、図12の例と同様に、第1ダイオードD1および第1抵抗素子R1が、複数の本体部20に対して共通に設けられている。ただし本例の第1ダイオードD1は、それぞれのヒューズ抵抗22-kと、グランド電位との間の接続点27-kに接続されている。また、第1抵抗素子R1は、それぞれの接続点27と、グランド電位との間に接続されている。
【0115】
本例の本体部20は、ヒューズ抵抗22が切断された状態では、高電位VDDに応じた電圧を出力端子OUTから出力する。また本例の本体部20は、ヒューズ抵抗22が切断されていない状態では、グランド電位に応じた電圧を出力端子OUTから出力する。
【0116】
それぞれの本体部20においては、ヒューズ抵抗22と、第1ダイオードD1および第1抵抗素子R1が接続されている。それぞれのヒューズ抵抗22-kは、一端がパッド24-kに接続され、他端が第1ダイオードD1および第1抵抗素子R1に接続されている。パッド24-kとヒューズ抵抗22-kとの接続点28-kには、第2抵抗素子R2-kが接続されている。第2抵抗素子R2-kは、一端が接続点28-kに接続され、他端が抵抗素子LVNDkに接続されている。
【0117】
抵抗素子LVNDkは、一端が第2抵抗素子R2-kに接続され、他端が高電位配線VDDに接続されている。本例では、抵抗素子LVNDkと、第2抵抗素子R2-kとの接続点が、出力端子OUTkに接続されている。出力端子OUTkと、グランド電位との間には、保護ダイオードZLが設けられてよい。
【0118】
本例においても、複数の本体部20に対して第1ダイオードD1を共通に設けることで、装置規模を小さくできる。また、複数の本体部20に対して第1抵抗素子R1を共通に設けることで、装置規模を小さくできる。
【0119】
本例において、ヒューズ抵抗22-kに切断電流を流してヒューズ抵抗22-kを切断する場合に、複数の本体部20に対して共通に設けられた1または複数のスイッチング素子3の少なくとも一つを導通可能な状態にして、切断電流をスイッチング素子3に流す。
【0120】
本例においては、切断すべきヒューズ抵抗22を一つずつ選択し、切断すべきヒューズ抵抗22-kに対応するパッド24-kに、所定の高電位を順番に印加する。上述したように、当該高電位は、高電位配線VDDに印加される電圧より高い第1電位であってよい。選択されていないパッド24はフローティングにする。
【0121】
図14は、トリミング方法の適用される他の回路図である。本例のトリミング回路100は、第1ダイオードD1のアノードおよびカソードの向きが、図12の例と異なる。また、本例のトリミング回路100は、スイッチング素子3のドレインおよびソースの向きが図12の例と異なる。本例では、スイッチング素子3には第2電位V2でなく第1電位が印加される。ヒューズ抵抗22-kを切断する本体部20-kのパッド24-kに、選択的に第2電位V2が印加される。これらの点を除いて、図14の構成例は、図12に示される構成と同様である。したがって、詳しい説明を省略する。
【0122】
本例の第1ダイオードD1は、カソードに、それぞれの本体部20のヒューズ抵抗22―kが接続される。それぞれのヒューズ抵抗22-kは、一端がパッド24-kに接続され、他端が接続点27-kを介して第1ダイオードD1のカソードに接続されている。
【0123】
本例においては、ヒューズ抵抗22-kを切断する本体部20-kのパッド24-kに、選択的に第2電位V2が印加される。当該第2電位V2は、第1ダイオードD1から、パッド24-kに順方向電流が流れる程度に低い電圧である。つまり第2電位V2は、スイッチング素子3のドレイン電極に印加される第1電位V1に対して、横型IGBTとして機能するスイッチング素子3の動作抵抗による電圧降下と第1ダイオードD1の順方向電圧との総和以上に低い。例えば当該第2電位は、グランド電位より低い電位である。
【0124】
図15は、トリミング方法の適用される他の回路図である。本例のトリミング回路100は、第1ダイオードD1のアノードおよびカソードの向きが図13の例と異なる。また、本例のトリミング回路100は、スイッチング素子3のドレインおよびソースの向きが図13の例と異なる。本例では、スイッチング素子3には第2電位V2でなく第1電位V1が印加される。ヒューズ抵抗22-kを切断する本体部20-kのパッド24-kに、選択的に第2電位V2が印加される。これらの点を除いて、図15の構成例は、図13に示される構成と同様である。したがって、詳しい説明を省略する。
【0125】
それぞれのヒューズ抵抗22-kは、一端がパッド24-kに接続され、他端が接続点27-kを介して第1ダイオードD1のカソードに接続されている。本例においては、ヒューズ抵抗22-kを切断する本体部20-kのパッド24-kに、選択的に第2電位V2が印加される。当該第2電位V1は、第1ダイオードD1から、パッド24-kに順方向電流が流れる程度に低い電圧である。つまり第2電位V2は、スイッチング素子3のドレイン電極に印加される第1電位V1に対して、横型IGBTとして機能するスイッチング素子3の動作抵抗による電圧降下と第1ダイオードD1の順方向電圧との総和以上に低い。例えば当該第2電位は、グランド電位より低い電位である。
【0126】
各実施形態において同一の符号を付して説明した構成要素は、同様の特性、機能および構造を有してよい。なお枝番kを含む符号と、枝番kを含まない符号とは、枝番以外の符号が同一であれば、同一符号とする。
【0127】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0128】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0129】
1・・・被調整回路、2・・・被調整素子、3・・・スイッチング素子、5・・・ウェハチャック部、6・・・外部ケーブル、7・・・縦型デバイス、10・・・トランジスタ部、11・・・ゲート、12・・・ドレイン、13・・・ソース、20・・・本体部、22・・・ヒューズ抵抗、24・・・パッド、27・・・接続点、28・・・接続点、29・・・第2抵抗部、30・・・半導体基板、32・・・ポリシリコン層、34・・・コンタクト部、36・・・メタル配線、37・・・メタル配線、42・・・第1半導体領域、44・・・第2半導体領域、46・・・絶縁膜、47・・・層間絶縁膜、50・・・外部装置、54・・・ゲート電圧印加端子、55・・・第1電位印加端子、56・・・第2電位印加端子、100・・・トリミング回路、200・・・半導体装置、201・・・ドリフト層、202・・・コンタクト層、203・・・第2主電極、210・・・出力段回路部、211・・・トレンチゲート、212・・・p型ベース領域、213・・・p+型領域、214・・・n+型領域、215・・・導電部、216・・・絶縁膜、217・・・MOS部、218・・・横型IGBT、220・・・第1主電極、222・・・絶縁膜、230・・・制御回路部、240・・・MOSトランジスタ、241・・・pウェル領域、242・・・ソース領域、243・・・ドレイン領域、244・・・ゲート電極、245・・・ゲート絶縁膜、246・・・ソース電極、247・・・ドレイン電極、250・・・MOSトランジスタ、251・・・pウェル領域、252・・・nウェル領域、253・・・ソース領域、254・・・ドレイン領域、255・・・ゲート電極、256・・・ゲート絶縁膜、257・・・ソース電極、258・・・ドレイン電極
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15