(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】植物の寸法測定方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
A01G7/00 603
(21)【出願番号】P 2020143604
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曾 祥宇
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186723(JP,A)
【文献】特開2020-099215(JP,A)
【文献】特開2017-042133(JP,A)
【文献】特開平11-351823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0169868(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103162635(CN,A)
【文献】中国実用新案第209802305(CN,U)
【文献】中国実用新案第210491057(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
G01B 11/00-11/30
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の背後に背景板を配置し、撮像機で撮像した植物の茎の所定の寸法測定箇所における寸法を算出するための植物の寸法測定方法であって、
前記寸法測定箇所は、前記植物の成長点から所定長さ下の部分であり、
前記背景板には、寸法の基準が記されており、
前記寸法は、前記茎の径または幅であり、
前記茎に沿った複数点において前記寸法が測定され、
前記複数点において測定された前記寸法と、前記複数点における前記成長点からの長さとから、前記寸法と前記長さとの関係の近似曲線を求めることにより、前記寸法測定箇所における寸法を算出することを特徴とする、
植物の寸法測定方法。
【請求項2】
前記背景板には前記成長点の位置基準を示すマークと、該マークから所定長さの部分に配置される複数の指標とが記されていることを特徴とする、
請求項
1に記載の植物の寸法測定方法。
【請求項3】
前記背景板は、前記植物の背後に配置した際に水平に延びる水平部と該水平部の水平方向の中央部から垂直方向に延びる垂直部とからなる、T字を上下逆にした形状を有し、
前記寸法の基準は、前記水平部の前記垂直部を水平方向に挟む部分に配置されており、
前記成長点の位置基準を示すマーク及び前記指標は、前記垂直部に垂直方向に並列していることを特徴とする、
請求項
2に記載の植物の寸法測定方法。
【請求項4】
前記寸法測定箇所の撮像において、前記撮像機の撮像画面中に枠型の形状の撮像マスクを表示させ、
撮像の際には、前記寸法測定箇所及び前記寸法の基準を、前記撮像機の撮像画面において前記撮像マスクの内部の所定位置に配置させることで、前記寸法測定箇所と前記寸法の基準の位置関係を確定することを特徴とする、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の植物の寸法測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の寸法測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、植物の寸法測定方法の一例として、植物の茎の直径を、メジャーやノギスといった測定ツールを用いて植物の茎に接触して測定する方法が実施されている。しかし、測定時に植物に接触するため、植物の栄養成長に負の影響を与えるリスクがある。さらに、植物の茎の直径を測定するポイントが、植物の枝分かれ部分である場合、その部分が障害となり、測定ツールを接触させることが困難である。
【0003】
また、植物に関連する測定方法の一例として、撮像部によって対象の植物を上方側から撮像し、画像解析によって、植物の茎に関する特性を測定するシステムが提供されている(例えば、特許文献1参照)。このように画像解析により植物の測定を行うことで、簡易且つ高精度の測定が可能となり、また、植物にほとんど接触することなく測定が可能となる。
【0004】
そして、画像解析を用いて植物の寸法を測定する方法としては、植物を撮像する際に、植物の背後に黒いマーカーが記された白い背景板を配置する方法も提案されている。しかし実際は、枝や葉の存在による植物の立体性により、植物の茎を白い背景板に密着させることが困難であり、結果として、植物の茎と白い背景板の間の距離に起因する測定誤差が生じてしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の測定方法に関して、植物の栄養成長の度合いを評価するために、白い背景板を植物の背後に配置し、デジタルカメラ等の撮像機で植物の茎を撮像し、所定の画像解析プログラムを用いて植物の茎の直径を測定することが考えられる。その場合には、実際は植物の茎と背景板の間に距離があるにもかかわらず、植物の茎が白い背景板に密着しているものとする値が算出される。このような理由で画像解析プログラムによる植物の茎の直径の測定値が、真値を上回ることがしばしばある。また、画像解析プログラムによる植物の茎と白い背景板の間の距離の測定は困難である。
【0007】
そこで、本発明では、上記のような測定誤差の問題に鑑みて、植物の茎を撮像する方法を改善し、植物の茎の直径の測定値の誤差が低減する、植物の寸法測定方法を提供することを目的とする。そして、高い信頼性をもって測定した植物の茎の直径の測定値を基に、その植物の栄養成長の管理が可能になることを最終的な目的とする。
【0008】
ここで、本発明における植物の寸法測定方法について、測定の対象となるパラメーターは、植物の茎の直径以外であってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明は、
植物の背後に背景板を配置し、撮像機で撮像した植物の茎の所定の寸法測定箇所におけ
る寸法を算出するための植物の寸法測定方法であって、
前記背景板には、寸法の基準が記されており、
前記茎に沿った複数点において前記寸法が測定され、前記複数点から得られるデータに基づいて、前記寸法測定箇所における寸法を算出することを特徴とする、
植物の寸法測定方法である。
本発明によれば、寸法測定箇所における一点の測定値により寸法を算出するのでなく、複数点における測定値に基づく植物の茎の全体形状から、寸法測定箇所における寸法を算出することが可能となる。結果として、寸法測定箇所における寸法を高精度に算出することが可能である。なお、本発明における複数点における寸法の測定は、背景板に記された同一の寸法の基準を基に行われる。
【0010】
また、本発明においては、前記寸法測定箇所は、前記植物の成長点から所定長さ下の部分であり、前記寸法は、前記茎の径または幅であり、前記寸法測定箇所における寸法は、前記複数点において測定された前記寸法と、前記複数点における前記成長点からの長さとから、前記寸法と前記長さとの関係の近似曲線を求めることにより算出されることを特徴とする、植物の寸法測定方法としてもよい。これによれば、成長点からの長さと寸法との関係の近似曲線から寸法の値を取得するため、その値の信頼性は高い。なお、本発明において、所定長さは例えば20cmとしてもよい。
【0011】
また、本発明においては、前記背景板には前記成長点の位置基準を示すマークと、該マークから所定長さの部分に配置される複数の指標とが記されていることを特徴とする、植物の寸法測定方法としてもよい。これによれば、撮像機による植物の撮像において、測定者が成長点の位置を認識することが容易になる。また、測定者が成長点から寸法測定箇所である植物の茎の位置を認識することも容易になる。なお、本発明において、指標は成長点の位置基準を示すマークから例えば30cm下までの範囲で複数記されてもよい。
【0012】
また、本発明においては、前記背景板は、前記植物の背後に配置した際に水平に延びる水平部と該水平部の水平方向の中央部から垂直方向に延びる垂直部とからなる、T字を上下逆にした形状を有し、前記寸法の基準は、前記水平部の前記垂直部を水平方向に挟む部分に配置されており、前記成長点の位置基準を示すマーク及び前記指標は、前記垂直部に垂直方向に並列していることを特徴とする、植物の寸法測定方法としてもよい。これによれば、背景板がT字を上下逆にした形状を有するので、植物の茎の背後に背景板を配置することが容易となる。また、長方形の形状を有する背景板と比較すると、T字を上下逆にした形状の背景板は、枝や葉の存在による植物の成長点の立体性に起因して、植物の茎と背景板との間の前後方向の距離が長くなることを抑制でき、植物の茎の寸法の測定精度を向上させることができる。
【0013】
また、本発明においては、前記寸法測定箇所の撮像において、前記撮像機の撮像画面中に枠型の形状の撮像マスクを表示させ、撮像の際には、前記寸法測定箇所及び前記寸法の基準を、前記撮像機の撮像画面において前記撮像マスクの内部の所定位置に配置させることで、前記寸法測定箇所と前記寸法の基準の位置関係を確定することを特徴とする、植物の寸法測定方法としてもよい。これによれば、植物の茎の撮像において、植物の茎の位置決めがより容易になり、極端に端部に寄りすぎることによる測定誤差の発生を防止することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、植物の寸法の測定を効率的に、且つ高精度に実施することが可能となり、得られた寸法の値を基に、より精度よく、植物の栽培管理をすることが可能となる。例えば、植物の茎の直径の測定であれば、得られた値からその植物の栄養成長のレベルが適正であるか不適正であるかをより精度よく判断し、供給する水や肥料の量をより精度よ
く調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】撮像機を用いて植物の茎を撮像する様子を示す模式図である。
【
図2】植物の成長点の位置を合せるための基準となるマークと、成長点から下の長さを示す指標を有する背景板の表面の特徴を示す模式図である。
【
図3】撮像後に画像解析プログラムを用いて、植物の茎の直径を測定する手法を説明するための模式図である。
【
図4】撮像機で植物の茎と背景板を撮像する際に、測定者が見る撮像画面中における撮像マスクを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔適用例〕
本適用例においては、植物の寸法測定方法の一例として、植物の茎の直径の測定方法について説明する。植物の茎の直径の測定において、対象となる測定箇所の位置座標の情報をより正確にするため、互いの距離が既知であるマーカーが記された白い背景板を植物の茎の背後に配置する方法がある。背景板が測定対象である植物の茎の背後に配置された状態で、植物の茎と背景板を撮像し、撮像された画像の解析において、白い背景板に記されたマーカーどうしの間の距離を基に、画像上における植物の茎の各測定点の位置を高精度に取得し、各測定点における植物の茎の直径を測定する。
【0017】
画像解析プログラムを用いた撮像画像の解析の際には、撮像した植物の茎の上端部を対象の植物の成長点とし、植物の茎に沿った複数点における茎の直径を測定する。複数点におけるデータから近似曲線の式が求まり、近似曲線の式を用いて、成長点から例えば20cm下の部分の茎の直径を求めることが可能である。
【0018】
〔実施例1〕
以下、本発明の実施例1に係る植物の寸法測定方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下では、植物の寸法測定について、植物の茎の直径の測定を実施例として示す。
【0019】
<寸法測定手法>
図1は、撮像機1を用いて植物の茎2を撮像する様子を示す模式図である。撮像機1として、例えばデジタルカメラ等を用いることが多い。背景板3を背後に配置し、撮像機1を用いて撮像した植物の茎2は、画像解析において測定箇所が特定され、その部分の直径が測定される。背景板3は白色であることが多いが、植物の茎2と識別できるよう、植物の茎2と同系統の色でなければよい。植物の茎2の幅は、背景板3上に配置されたマーカー5(図示省略)どうしの間の距離を基準に算出され、植物の茎2の幅から直径が算出される。ここで、植物の成長点とは、植物の茎の先端にある細胞分裂の活発な部分のことを指す。
【0020】
植物の茎2の直径の測定において、具体的には植物の成長点から20cm下の部分の直径が安定しており、この位置で測定した直径が、植物の茎2の直径の真値として信頼性が高い。撮像機1を用いて撮像し、画像解析プログラムを用いて解析する場合は、測定者がこの成長点から20cm下の部分(以下、この部分を寸法測定箇所ともいう。)を認識できることが望ましい。背景板3上には、測量線8(図示省略)が記されているが、これは補助的に測長するための目盛りとして用いる。本実施例では、解析の際に成長点からの所定長さごとに植物の茎2の直径を測定し、それらの値から近似曲線を求め、成長点から20cm下の寸法測定箇所の直径を求める。なお、背景板3の表面の形状は長方形で示して
いるが、この形状は長方形に限定しない。
【0021】
次に、本実施例においては、撮像機1を用いて植物の茎2を撮像する際、
図1に示した背景板3に、後述するように、植物の成長点の位置を合せるための基準となるマークと、植物の成長点から下の長さを示す指標を加えた背景板を用いる。
【0022】
<寸法測定手法>
図2は、植物の成長点の位置を合せるための基準となるマークと、成長点から下の長さを示す指標を有する背景板3の表面の特徴を示す模式図である。上述のとおり、植物の茎2の直径等の寸法測定は、
図2に示す背景板3を植物の背後に配置し、撮像機1でその画像を撮像した上で、撮像後の画像解析において行う。背景板3は、
図2の向きで右上と左上の2ヶ所にマーカーエリア4を有し、マーカーエリア4内のそれぞれに複数のマーカー5を有する。撮像時の背景板3の上下の向きは不問である。マーカー5は、
図2の向きにおける下端部側に配置してもよい。ここで、マーカー5は、本発明における寸法の基準に相当する。
【0023】
背景板3を背後に配置して植物の茎2を撮像した画像上において、複数のマーカー5は、あらかじめ基準となる位置座標が決まっており、複数のマーカー5どうしの間のピクセル数と、対象となる植物の茎2の幅のピクセル数から植物の茎2の直径を測定することが可能である。
図2にWと表示した、マーカー5どうしの間の距離は例えば30cmである。なお、マーカー5の形状は、黒色に塗りつぶされた円形であることが多い。また、マーカー5は、2ヶ所のマーカーエリア4内に少なくとも1つずつあればよい。撮像機1を用いて撮像する際には、マーカーエリア4が完全に撮像範囲に収まるようにする。また、撮像する際には、マーカーエリア4に影が重ならないようにする。
【0024】
背景板3には、成長点位置ポイント6が記されており、植物の茎2を撮像する際には、植物の成長点の位置を成長点位置ポイント6に合わせる。また、背景板3には、測定指標7a~7dが記されており、成長点位置ポイント6から各測定指標までの距離はそれぞれ10cm、15cm、20cm、30cmである。画像解析プログラムを用いた解析において、成長点から20cm下の位置が植物の茎2の寸法測定箇所となるが、撮像機1による植物の撮像時には、測定者が測定指標7cの位置を認識することで、寸法測定箇所の目安とすることが可能である。ここで、測定指標7a~7dは、本発明における指標に相当する。
【0025】
背景板3は、測量線8も有しており、例えば植物の葉の幅等の測定に用いることが可能である。なお、
図2に示す背景板3における、縦横に垂直に交わる実線は全て測量線であり、実際には寸法測定の補助として用いる目盛りが表示されているが、
図2中では省略する。また、撮像の際、マーカーエリア4が撮像範囲に入れば、植物は真中に位置している必要はなく、また、角度をつけて撮像してもよい。
【0026】
図3は、撮像後に画像解析プログラムを用いて、植物の茎2の直径を測定する手法を説明するための模式図である。ここで、画像解析プログラムは、撮像機1で撮像した植物の茎2と背景板3を含む画像から、植物の茎2の寸法測定箇所における直径を算出するために準備されたプログラムである。画像解析プログラムは、一般的なPC(図示省略)に読み込まれ、PCが有するROM等のメモリに格納され、PCのCPUによって実行されてもよい。撮像機1が一般的なデジタルカメラである場合には、撮像機1で撮像された画像がPCに取り込まれた上で、画像解析プログラムによって、画像が呼び出され解析される。撮像機1が例えばスマートフォンや、タブレット型PCである場合には、画像解析プログラムも当該スマートフォンやタブレット型PCに読み込まれ、撮像後にそのまま画像解析する事が可能としてもよい。
図3(a)は、植物の茎2の撮像画像の概略図である。画
像解析プログラムを実行させ、撮像された植物の上端部から植物の茎2の方向に沿って下方になぞると、なぞった軌跡が画像上に表示される。なお、なぞった軌跡は
図3(a)に示すように太線で表示される。なぞった軌跡の始端を植物の成長点とし、植物の茎2の寸法測定箇所は、成長点から20cm下の部分とする。
【0027】
そして、画像解析プログラムにおいては、寸法測定箇所における茎2の直径を算出するために、上記の軌跡における複数点に対応する茎の直径が測定される。より詳細には、背景板3が有するマーカー5の間の距離(ピクセル数)を基準として、上記の軌跡における複数点の水平方向両側における茎の端部どうしの距離(ピクセル数)が求められる。複数点に対応する茎の直径は、求められたピクセル数にピクセル間のピッチを乗じることで取得される。
【0028】
次に、画像解析プログラムを用いた解析においては、
図3(b)に示すように、近似曲線のグラフについて、
図3(a)に示す測定指標7a~7dそれぞれを目安として上下に複数選んだ点におけるLの値に応じた茎の直径の値がドットとして断片的に表示される。そして、表示された点から近似曲線が求まり、あらゆるLの値に応じた茎の直径の値がドットと合わせて表示される。さらに、L=20のときの茎の直径を植物の茎2の直径の測定値として、近似曲線から算出される。これは、成長点から20cm下における寸法測定箇所の茎の直径が、茎の直径の測定値として信頼性が高いからである。このように複数点におけるデータに基づいて成長点から20cm下の寸法測定箇所における茎の直径を算出することで、より信頼性の高い値が得られる。この場合、測定指標7cを目安とした位置での測定が必ずしも含まれている必要はなく、例えば測定指標7bと測定指標7dを目安とした複数点から近似曲線を求め、L=20である寸法測定箇所における茎の直径を算出してもよい。また、それ以外の複数点から近似曲線を求めても良い。なお、この場合の複数点は、L=20の寸法測定箇所の上下に亘るように選択することが望ましい。そのことで、L=20における直径の算出精度を向上させることができる。また、本実施例における近似曲線としては、四次関数y=2E
-08x
4-2E
-05x
3+0.006x
2-0.7284x+35.473を例示することができる。
【0029】
なお、撮像の際に、植物の茎2がその植物の枝や葉と重なり、解析において重なった部分の植物の茎2が認識されず、連続性のある植物の茎2が途切れて認識されることがあるため、補正として直線やスプライン曲線を後から解析画像に書き入れることが可能である。このようにして、画像解析において、植物の茎2を連続性のあるものとして認識することが可能である。
【0030】
図4は、撮像機1で植物の茎2と背景板3を撮像する際に、測定者が見る撮像画面中における撮像マスク9を示す模式図である。撮像画面中において、植物の茎2の位置合わせは重要であるので、それを容易にすべく、二重字の「王」字型の撮像マスク9を表示させる。なお、
図4では簡略的に示すが、撮像マスク9は「王」字の枠内のみ明るく、枠外は影がかかっており、測定者にははっきりと見えない。撮像マスク9の枠内に、植物の茎2とマーカーエリア4が入っていることが撮像時の必要条件である。本実施例では、このように、撮像機1による撮像時に、測定者が見る撮像画面上に撮像マスク9が表示され、植物の茎2とマーカーエリア4とをその枠内に配置することで、植物の茎2と背景板3との位置関係を容易に定めることができ、植物の茎2の直径の測定精度を向上させることができる。なお、撮像マスク9はあくまで植物の茎2の位置合わせを容易にするためのツールに過ぎず、必ずしも撮像画面中に必須のものではない。また、撮像マスク9の形状は、植物の茎2とマーカーエリア4がその枠内に入れば、「王」字型である必要はなく、例えば「T」字型であってもよい。「+」型等、文字の型でなくてもよい。
【0031】
〔実施例2〕
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例においては、撮像機1を用いて植物の茎2を撮像する際、実施例1に示した背景板3と比較して表面積の小さい、T字を上下逆にした形状の背景板を用いる。なお、T字を上下逆にした形状の背景板は、本実施例における一例に過ぎず、背景板の形状を限定する趣旨ではない。以下、T字を上下逆にした形状の背景板は、実施例1の背景板3に相当するものとし、単に背景板3と記載する。
【0032】
図5は、背景板3の形状の変形例を示す模式図である。背景板3は、T字を上下逆にした形状であり、撮像時に植物の茎2の背後に配置した際に、水平に延びる水平部と、水平部の水平方向の中央部から垂直方向に延びる垂直部を有する。水平部の両端には、垂直部を挟むようにマーカー5が記されている。垂直部には、成長点位置ポイント6と測定指標7a~7dが縦列している。T字を上下逆にした形状の背景板3は、同じ縦幅と横幅を持つ長方形の形状の背景板3と比較して、表面積が小さく、枝や葉の存在による植物の成長点の立体性に起因して、植物の茎2と背景板3との間の前後方向の距離が長くなることを抑制でき、植物の茎2の寸法測定箇所の直径を、高い信頼性をもって算出することが可能となる。
【0033】
本実施例に示した寸法測定方法により、植物の茎2を固定する目的以外に、植物の茎2にほとんど接触することなく、且つ植物の茎2の直径を高精度に測定することが可能となる。一般的に、植物は成長段階毎に最適な成長バランスを実現することが必要であり、植物の茎2の直径の測定は、成長バランスに必要となる栄養成長を管理する指標の一つとなる。なお、上記の実施例においては、植物の茎の寸法として、植物の茎の直径を測定する例について説明したが、測定対象としての寸法は、植物の半径や、幅であっても構わない。また、画像解析プログラムで、複数点における直径の値から寸法測定箇所における直径を算出する近似曲線は、上述の曲線に限られない。4次関数以外の多項式、指数関数、対数関数、三角関数、所定のスプライン関数や、その他の関数を用いてもよい。
【0034】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
植物の背後に背景板(3)を配置し、撮像機(1)で撮像した植物の茎(2)の所定の寸法測定箇所における寸法を算出するための植物の寸法測定方法であって、
前記背景板には、寸法の基準(5)が記されており、
前記茎に沿った複数点において前記寸法が測定され、前記複数点から得られるデータに基づいて、前記寸法測定箇所における寸法を算出することを特徴とする、
植物の寸法測定方法。
【符号の説明】
【0035】
1 :撮像機
2 :植物の茎
3 :背景板
4 :マーカーエリア
5 :マーカー
6 :成長点位置ポイント
7a―7d :測定指標
8 :測量線
9 :撮像マスク