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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/536 20210101AFI20250304BHJP
   H01M 50/538 20210101ALI20250304BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20250304BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20250304BHJP
【FI】
H01M50/536
H01M50/538
H01G11/70
H01G11/74
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020149105
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043692
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 真澄
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐介
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013745(JP,A)
【文献】特開2016-030280(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057323(WO,A1)
【文献】特開2010-086688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0067065(US,A1)
【文献】国際公開第2020/159116(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014019505(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/00-11/86
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に接続部を有する電極体と、
前記接続部と第一方向に重ねられた状態で、溶融部において溶接された板状の集電体であって、かつ、前記第一方向に厚み方向を向けて配置された集電体と、を備え、
前記溶融部は、前記第一方向における前記接続部の側に露出する第一溶融部と、前記第一方向における前記集電体の側に露出する第二溶融部とを含
前記第一方向と直交する第二方向において、前記第一溶融部の前記接続部の側に露出する部分の幅を第一幅とし、前記第二溶融部の前記集電体の側に露出する部分の幅を第二幅とした場合、
前記溶融部は、前記第一方向における前記第一幅の位置と前記第二幅の位置との間に、前記第一幅及び前記第二幅よりも狭い第三幅の部分を有する、
蓄電素子。
【請求項2】
さらに、前記集電体とで、前記接続部を挟むように配置され、かつ、前記第一方向に厚み方向を向けて配置された当て板を備え、
前記第一溶融部は、前記当て板の、前記接続部とは反対側の面である外面に露出している、
請求項1記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記溶融部において、前記第一溶融部及び前記第二溶融部は、互いの一部が重複して配置されている、
請求項1または2記載の蓄電素子。
【請求項4】
端部に接続部を有する電極体と、
前記接続部と第一方向に重ねられた状態で、溶融部において溶接された板状の集電体であって、かつ、前記第一方向に厚み方向を向けて配置された集電体と、を備え、
前記溶融部は、前記第一方向における前記接続部の側に露出する第一溶融部と、前記第一方向における前記集電体の側に露出する第二溶融部とを含み、
前記第一方向から見た場合において、前記第一溶融部の前記接続部の側に露出する部分の中心を通り、前記第一方向に平行な仮想線を第一軸線とし、前記第二溶融部の前記集電体の側に露出する部分の中心を通り、前記第一方向に平行な仮想線を第二軸線とした場合、
前記溶融部において、前記第一溶融部と前記第二溶融部とは、前記第一軸線と前記第二軸線とが、前記第一方向と直交する第二方向において離間する位置に配置されている、
電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体と電極体に接続された集電体とを備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザー溶接により電極体と集電体とを接続する工程を含む二次電池の製造方法が開示されている。この二次電池は、内部集電端子(集電体)は、巻回型の電極体の電極露出部を巻回軸方向に対して交差する方向から挟み込む一対の接合部を含む。接合部は、巻回軸から離れるに従って外側に拡がる傾斜面を有する。上記二次電池の製造方法は、傾斜面に沿って接続部を拡げることにより、接続部を階段状の形態にする工程と、階段状の形態になった接続部と傾斜面とをレーザー光を用いて溶接接合する工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-134910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記製造方法では、複数の電極露出部(極板端部)は、上層に対して下層が突出するようにずらされて積層されるため、極板端部の積層体である接続部の、電極体本体からの突出長さが大きくなりやすい。この突出長さを抑制するためには、接続部における極板端部の上層と下層とのずれ量を小さくする必要があるが、この場合、複数の極板端部を十分に溶かし合わせるために、例えばレーザー光の出力を大きくする必要が生じる。その結果、スパッタの増加、及び、金属箔である極板端部の溶断等の問題が生じやすくなる。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目してなされたものであり、電極体の接続部と集電体との溶接部分である溶融部の信頼性が向上された蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、端部に接続部を有する電極体と、前記接続部と第一方向に重ねられた状態で、溶融部において溶接された板状の集電体であって、かつ、前記第一方向に厚み方向を向けて配置された集電体と、を備え、前記溶融部は、前記第一方向における前記接続部の側に露出する第一溶融部と、前記第一方向における前記集電体の側に露出する第二溶融部とを含む。
【0007】
この構成によれば、電極体の接続部と集電体とを溶接する際に、電極体の接続部の側からの溶接作業と、集電体の側からの溶接作業によって、第一溶融部及び第二溶融部を形成することができる。つまり、第一溶融部及び第二溶融部それぞれの形成のための溶接作業を比較的に小さいエネルギーで行うことができ、かつ、集電体と接続部とを十分に溶け合わせることができる。従って、例えばスパッタの飛散、または、接続部の一部の溶断等を生じさせずに、溶融部における十分な通電性能を確保することができる。従って、本態様に係る蓄電素子は、電極体の接続部と集電体との溶接部分である溶融部の信頼性が向上された蓄電素子である。
【0008】
蓄電素子はさらに、前記集電体とで、前記接続部を挟むように配置され、かつ、前記第一方向に厚み方向を向けて配置された当て板を備え、前記第一溶融部は、前記当て板の、前記接続部とは反対側の面である外面に露出している、としてもよい。
【0009】
この構成によれば、例えば金属箔である極板端部が積層することで形成された接続部を、当て板で押さえながら溶接することができる。このように、積層された極板端部が当て板で押さえられた場合、隣り合う極板端部の間に隙間が生じにくくなる。従って、第一溶融部及び第二溶融部のそれぞれの形成にレーザー光を用いたレーザー溶接を採用した場合であっても、良好な状態の溶融部を効率よく形成することができる。これにより、短時間で、信頼性の向上された溶融部を形成することができる。
【0010】
前記溶融部において、前記第一溶融部及び前記第二溶融部は、互いの一部が重複して配置されている、としてもよい。
【0011】
この構成によれば、溶融部における機械的な接続強度が向上するため、溶融部における電気的な接続のみならず機械的な接続においても信頼性を向上させることができる。
【0012】
前記第一方向と直交する第二方向において、前記第一溶融部の前記接続部の側に露出する部分の幅を第一幅とし、前記第二溶融部の前記集電体の側に露出する部分の幅を第二幅とした場合、前記溶融部は、前記第一方向における前記第一幅の位置と前記第二幅の位置との間に、前記第一幅及び前記第二幅よりも狭い第三幅の部分を有する、としてもよい。
【0013】
例えばレーザー溶接によって溶融部を形成する場合、その対象物は、レーザー光の照射側が比較的に多く溶かし込まれ、そこから奥に行くに従い(溶融深さが深くなるに従い)、次第に溶融量は減少する。従って、照射方向における対象物の全域を貫くように溶融部を形成するためには、レーザー光の出力の増加が必要となる場合がある。しかし、本態様では、溶融すべき部分の両側からレーザー光を照射することで、接続部の側及び集電体の側の両方に比較的に多くの溶融量を有し、かつ、第一方向において接続部及び集電体の全域に亘って存在する溶融部を形成することができる。従って、溶融部の形成に用いるレーザー光の出力を大きくすることなく、十分な通電量が確保される溶融部を形成することができる。つまり、信頼性が向上された溶融部が形成される。
【0014】
前記第一方向から見た場合において、前記第一溶融部の前記接続部の側に露出する部分の中心を通り、前記第一方向に平行な仮想線を第一軸線とし、前記第二溶融部の前記集電体の側に露出する部分の中心を通り、前記第一方向に平行な仮想線を第二軸線とした場合、前記溶融部において、前記第一溶融部と前記第二溶融部とは、前記第一軸線と前記第二軸線とが、前記第一方向と直交する第二方向において離間する位置に配置されている、としてもよい。
【0015】
この構成によれば、例えば、第一溶融部と第二溶融部とが重複する部分の溶融量が少なくなり、これにより、溶融部の全体としての溶融量(溶融部の体積)が大きくなる。従って、例えば、溶融部における通電量の増加または接続強度の向上が図られ、その結果、溶融部の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電極体の接続部と集電体との溶接部分である溶融部の信頼性が向上された蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る蓄電素子の分解斜視図である。
図3】実施の形態に係る集電体及び接続部の接合構造を簡易的に示す側面図である。
図4】実施の形態に係る溶融部の形成方法を示す図である。
図5】実施の形態に係る溶融部の形状についての特徴を示す図である。
図6】実施の形態の変形例1に係る溶融部の構成を示す図である。
図7】実施の形態の変形例2に係る溶融部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(及びその変形例)に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0019】
また、以下の説明及び図面中において、蓄電素子が有する一対(正極側及び負極側)の電極端子の並び方向、一対の集電体の並び方向、電極体が有する一対の接続部の並び方向、または、容器の短側面の対向方向をX軸方向と定義する。容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、または、容器の厚さ方向をY軸方向と定義する。電極端子と集電体と電極体との並び方向、蓄電素子の容器本体と蓋体との並び方向、容器の短側面の長手方向、電極体の巻回軸方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。また、以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。
【0020】
(実施の形態)
[1.蓄電素子の全般的な説明]
まず、図1及び図2を用いて本実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の分解斜視図である。
【0021】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。また、蓄電素子10は、家庭用または発電機用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0022】
なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子10は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。また、蓄電素子10は、固体電解質を用いた電池であってもよい。また、本実施の形態では、直方体形状(角形)の蓄電素子10を図示しているが、蓄電素子10の形状は、直方体形状には限定されず、直方体形状以外の多角柱形状、長円柱形状等であってもよい。
【0023】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、一対(正極側及び負極側)の電極端子200と、一対(正極側及び負極側)の上部ガスケット300とを備えている。また、図2に示すように、容器100の内方には、一対(正極側及び負極側)の下部ガスケット400と、一対(正極側及び負極側)の集電体500と、電極体700とが収容されている。また、容器100の内部には、電解液(非水電解質)が封入されているが、図示は省略されている。当該電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。また、上記の構成要素の他、電極体700の上方もしくは側方に配置されるスペーサ、または、電極体700等を包み込む絶縁フィルム等が配置されていてもよい。
【0024】
容器100は、開口が形成された容器本体110と、容器本体110の当該開口を閉塞する蓋体120とを有する直方体形状(箱形)のケースである。このような構成により、容器100は、電極体700等を容器本体110の内部に収容後、容器本体110と蓋体120とが溶接等されることにより、内部を密封することができる構造となっている。なお、容器本体110及び蓋体120の材質は特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0025】
容器本体110は、容器100の本体部を構成する矩形筒状で底を備える部材であり、Z軸プラス方向側に開口が形成されている。蓋体120は、容器100の蓋部を構成する、X軸方向に長尺かつ矩形状の板状部材であり、容器本体110の開口を塞ぐ位置に配置されている。蓋体120には、容器100の内圧が過度に上昇した場合に容器100内部のガスを排出するガス排出弁122が配置されている。
【0026】
電極体700は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)である。具体的には、電極体700は、正極板と負極板との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻回されて形成されている。これにより、正極板の基材層(金属箔)が有する複数のタブ(極板端部)が積層されて正極側の接続部720が形成され、負極板の基材層(金属箔)が有するタブ(極板端部)が積層されて負極側の接続部730が形成されている。つまり、電極体700は、電極体本体部710と、電極体本体部710の一部からZ軸プラス方向(第三方向)に突出してY軸プラス方向に延びる接続部720及び730とを有している。このように設けられた接続部720及び730のそれぞれは、「タブ部」と呼ばれる場合もある。なお、本実施の形態では、断面形状が長円形状の電極体700が採用されているが、電極体700の断面形状は楕円形状などでもよい。
【0027】
電極端子200は、集電体500を介して、電極体700に電気的に接続される部材である。電極端子200は、かしめ等によって、集電体500に接続され、かつ、蓋体120に取り付けられている。具体的には、電極端子200は、下方(Z軸マイナス方向)に延びる軸部201(リベット部)を有している。そして、軸部201が、上部ガスケット300の貫通孔301と、蓋体120の貫通孔123と、下部ガスケット400の貫通孔401と、集電体500の貫通孔501とに挿入されて、かしめられる。これにより、電極端子200は、上部ガスケット300、下部ガスケット400及び集電体500とともに、蓋体120に固定される。なお、電極端子200は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の金属等の導電部材で形成されている。また、軸部201が電極端子200に設けられていることは必須ではない。例えば、集電体500に一体に設けられた軸部201が、下部ガスケット400、蓋体120、上部ガスケット300、及び電極端子200を貫通し、かつ、電極端子200の外側でかしめられてもよい。
【0028】
集電体500は、電極体700と電極端子200とを電気的に接続する板状の部材である。具体的には、正極側の集電体500は、正極側の電極端子200とかしめ等により接合される端子接続部510と、電極体700の正極側の接続部720と溶接により接続(接合)される電極接続部520とを有する。負極側の集電体500についても同様であり、負極側の電極端子200とかしめ等により接合される端子接続部510と、電極体700の負極側の接続部730と溶接により接続(接合)される電極接続部520とを有する。また、本実施の形態では、集電体500は、接続部720または730と溶接される時点ではほぼ平板状であり、その後、X軸方向に平行な軸を中心に折り畳まれて、容器100内に収容される。つまり、本実施の形態における集電体500は、折り畳み線を境界として、端子接続部510と電極接続部520とが区分される。
【0029】
なお、「板状の部材」という場合、例えば、平板状の部材、及び、平板状の部材が、L字状、U字状、V字状、またはS字状などに形成されたものを含む。L字状などの各種の形状の部材を作製するための、形状の形成方法に特に限定はなく、折り曲げ加工、切削加工、絞り加工、または鋳造などの各種の形成方法が採用され得る。
【0030】
集電体500は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の金属で形成されている。なお、集電体500と電極端子200とを接続(接合)する手法は、かしめ接合には限定されず、超音波接合、レーザー溶接、もしくは、抵抗溶接等の溶接、または、ねじ締結等のかしめ以外の機械的接合が用いられてもよい。また、集電体500と接続部720または730とを接続(接合)する手法は、レーザー溶接または抵抗溶接などが採用される。本実施の形態では、レーザー溶接によって集電体500と接続部720または730とが溶接される。本実施の形態における集電体500と接続部730との接合構造については、図3図5を用いて後述する。
【0031】
上部ガスケット300は、容器100の蓋体120と電極端子200との間に配置された、平板状かつ絶縁性を有する封止部材である。下部ガスケット400は、蓋体120と集電体500との間に配置された、平板状かつ絶縁性を有する封止部材である。なお、上部ガスケット300及び下部ガスケット400は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、もしくは、ポリエーテルサルフォン(PES)等の樹脂、または、これら樹脂を含む複合材料等の、絶縁性を有する素材によって形成されている。
【0032】
[2.集電体と電極体の接続部との接合構造]
次に、集電体500と電極体700の接続部730との接合構造について、図3図6を用いて説明する。本実施の形態では、正極側の集電体500及び接続部720の接合構造と、負極側の集電体500及び接続部730の接合構造とは、実質的に同一であるため、以下では負極側の接合構造に着目し、その説明を行う。つまり、以下で説明される負極側の集電体500及び接続部730に関する各種の事項は、正極側の集電体500及び接続部720に適用されてもよい。
【0033】
図3は、実施の形態に係る集電体500及び接続部730の接合構造を簡易的に示す側面図である。図3では、蓄電素子10のX軸プラス方向側から見た場合(側面視)における負極側の集電体500及びその周辺の構成が簡易的に図示されており、容器100は点線で表され、かつ、上部ガスケット300及び下部ガスケット400の図示は省略されている。図4は、実施の形態に係る溶融部600の形成方法を示す図である。図5は、実施の形態に係る溶融部600の形状についての特徴を示す図である。なお、図3図5において、側面視における溶融部600の存在範囲が、破線で囲まれかつドットが付された領域で表されている。このことは、後述する図6及び図7にも適用される。
【0034】
図3に示すように、電極体700の負極板の端部(極板端部701)が積層されて形成された接続部730は、集電体500と溶接されている。具体的には、接続部730と集電体500とは、第一方向の一例であるZ軸方向に重ねられ、溶融部600において溶接されている。また、溶融部600は、極板端部701の積層方向であるZ軸方向において接続部730と集電体500とを貫いて形成されている。より詳細には、溶融部600は、Z軸方向に重ねられた集電体500及び接続部730における接続部730の側に露出する第一溶融部610と、集電体500の側に露出する第二溶融部620とを有する。このような溶融部600は、例えば図4に示すように、Z軸方向に重ねられた集電体500及び接続部730に対し、Z軸方向の両側のそれぞれからレーザー光を照射することで形成することができる。
【0035】
すなわち、本実施の形態に係る蓄電素子10は、端部に接続部730を有する電極体700と、接続部730と第一方向(Z軸方向)に重ねられた状態で、溶融部600において溶接された板状の集電体500とを備える。集電体500はZ軸方向に厚み方向を向けて配置されている。溶融部600は、Z軸方向における接続部730の側に露出する第一溶融部610と、Z軸方向における集電体500の側に露出する第二溶融部620とを含む。
【0036】
このように、本実施の形態に係る蓄電素子10では、電極体700の接続部730と集電体500との溶接部分である溶融部600が、接続部730と集電体500との重ね合わせ方向(Z軸方向)の両側に露出している。つまり、溶融部600において、接続部730及び集電体500それぞれが十分に溶融した状態が形成される。また、このような溶融部600が有する第一溶融部610及び第二溶融部620は、電極体700の接続部730の側からの溶接作業と、集電体500の側からの溶接作業によって形成することができる。つまり、第一溶融部610及び第二溶融部620それぞれの形成のための溶接作業を比較的に小さいエネルギーで行うことができ、かつ、集電体500と接続部730とを十分に溶け合わせることができる。さらに、本実施の形態のように、レーザー光を用いたレーザー溶接によって溶融部600を形成する場合、板状の集電体500に対しその厚み方向(法線方向)からレーザー光を照射できる。これにより、溶融すべき箇所に効率よくエネルギーを集中することができる。そのため、例えばスパッタの飛散または、接続部730の一部の溶断等を生じさせずに、溶融部600における十分な通電性能を確保することができる。従って、本実施の形態に係る蓄電素子10は、電極体700の接続部730と集電体500との溶接部分である溶融部600の信頼性が向上された蓄電素子10である。
【0037】
また、本実施の形態では、図3及び図4に示すように、蓄電素子10はさらに、集電体500とで、接続部730を挟むように配置され、かつ、第一方向に厚み方向を向けて配置された当て板550を備える。第一溶融部610は、当て板550の、接続部730とは反対側の面である外面551に露出している。当て板550は、集電体500と同じく、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の金属で形成された板状の部材である。
【0038】
このように、接続部730と集電体500との溶接に、当て板550を用いることで、金属箔である極板端部701が積層することで形成された接続部730を、当て板550で押さえながら極板端部701間の隙間が生じにくい状態で溶接することができる。従って、第一溶融部610及び第二溶融部620のそれぞれの形成にレーザー光を用いたレーザー溶接を採用した場合であっても、良好な状態の第一溶融部610及び第二溶融部620を効率よく形成することができる。すなわち、短時間で、信頼性の向上された溶融部600を形成することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、溶融部600において、第一溶融部610及び第二溶融部620は、互いの一部が重複して配置されている。具体的には、図3に示すように、接続部730の厚み方向(Z軸方向)の中央部分に第一溶融部610及び第二溶融部620の重複部分が存在する。第一溶融部610及び第二溶融部620の重複部分は、その形成の過程において、第一溶融部610の形成の際の熱で溶融し、かつ、第二溶融部620の形成の際の熱で溶融した部分である。つまり、溶融部600において、第一溶融部610の形成範囲と第二溶融部620の形成範囲とが接続されている場合、その接続部分には、第一溶融部610及び第二溶融部620の重複部分が存在する。
【0040】
この構成によれば、溶融部600は、接続部730に含まれる全ての極板端部701をその積層方向に貫き、かつ、集電体500をその厚み方向に貫いた状態で形成される。従って、溶融部600における機械的な接続強度が向上するため、溶融部600における電気的な接続のみならず機械的な接続においても信頼性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態において、図5に示すように、第一方向(Z軸方向)と直交する第二方向(例えばY軸方向)において、第一溶融部610の接続部730の側に露出する部分の幅を第一幅(W1)とし、第二溶融部620の集電体500の側に露出する部分の幅を第二幅(W2)とした場合を想定する。この場合、溶融部600は、Z軸方向におけるW1の位置とW2の位置との間に、W1及びW2よりも狭い第三幅(W3)の部分を有している。言い換えると、溶融部600は、Z軸方向における両端部の間に、両端部の幅(W1、W2)よりも狭い幅(W3)の部分を有している。なお、レーザー光を、第一方向と直交する所定の方向に動かしながら第一溶融部610及び第二溶融部620を形成した場合、第一溶融部610及び第二溶融部620のそれぞれは、当該所定の方向に長尺状に形成される。この場合、第一幅(W1)は、第一方向から見た場合の第一溶融部610の露出部分における短手方向の幅であり、第二幅(W2)は、第一方向から見た場合の第二溶融部620の露出部分における短手方向の幅である、と規定される。さらに、第三幅(W3)は、溶融部600における、第一方向と垂直な断面(XY平面に平行な断面)における短手方向の幅であって、W3<W1かつW3<W2を満たす幅である、と規定される。
【0042】
本実施の形態のように、レーザー溶接によって溶融部600を形成する場合、その対象物は、レーザー光の照射側が比較的に多く溶かし込まれ、そこから奥に行くに従い、次第に溶融量は減少する。そのため、照射方向における対象物の全域を貫くように溶融部600を形成するために、レーザー光の出力の増加が必要となる場合がある。つまり、図3図5に示すように、例えば第一溶融部610及び第二溶融部620の一方のみに着目した場合、当該一方は、レーザー光の照射側を底辺とする山型に形成される。従って、当該一方のみで集電体500及び接続部730をZ軸方向で貫いて溶融させる場合、当該一方を形成するためのレーザー光の出力を増加させる必要がある。このことは、接続部730に含まれる極板端部701の溶断の発生、または、スパッタの飛散よる他の部材の損傷等の要因となる。
【0043】
しかし、本実施の形態では、重ね合わされた接続部730及び集電体500における溶融すべき部分の両側からレーザー光を照射する。これにより、接続部730の側及び集電体500の側の両方に比較的に多くの溶融量を有し、かつ、Z軸方向において接続部730及び集電体500の全域に亘って存在する溶融部600を形成することができる。従って、溶融部600の形成に用いるレーザー光の出力を大きくすることなく、十分な通電量が確保される溶融部600を形成することができる。つまり、信頼性が向上された溶融部600が形成される。
【0044】
以上、実施の形態に係る蓄電素子10について説明したが、蓄電素子10は、電極体700の接続部730と集電体500との溶接部分である溶融部として、図3図5に示す構成とは異なる構成の溶融部を有してもよい。そこで、以下に、蓄電素子10が有する溶融部についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0045】
(変形例1)
図6は、実施の形態の変形例1に係る溶融部600aの構成を示す図である。図6に示すように、本変形例に係る溶融部600aは、Z軸方向における接続部730の側に露出する第一溶融部610と、Z軸方向における集電体500の側に露出する第二溶融部620とを含む。この構成に関しては、実施の形態に係る溶融部600と共通する。本変形例では、第一溶融部610及び第二溶融部620のY軸方向における位置が明確にずれている点で、上記実施の形態とは異なる。
【0046】
具体的には、Z軸方向から見た場合において、第一溶融部610の接続部730の側に露出する部分の中心を通り、Z軸方向に平行な仮想線を第一軸線A1とし、第二溶融部620の集電体500の側に露出する部分の中心を通り、Z軸方向に平行な仮想線を第二軸線A2とした場合を想定する。この場合、溶融部600において、第一溶融部610と第二溶融部620とは、第一軸線A1と第二軸線A2とが、Z軸方向と直交する第二方向(例えばY軸方向)において離間する位置に配置されている。このような構成の溶融部600aは、例えば、第一溶融部610を形成するためのレーザー光の光軸と、第二溶融部620を形成するためのレーザー光の光軸とを、Z軸方向に直交する方向でずらすことで形成することができる。このことは、後述する変形例2に係る溶融部600bについても同じである。
【0047】
この構成によれば、第一溶融部610と第二溶融部620とが重複する部分の溶融量が少なくなり、これにより、溶融部600の全体としての溶融量(溶融部600の体積)が大きくなる。従って、例えば、溶融部600における通電量の増加または接続強度の向上が図られ、その結果、溶融部600の信頼性が向上する。なお、図6に示す例では、第一軸線A1と第二軸線A2とがY軸方向でずれているが、第一軸線A1と第二軸線A2とは、Z軸方向と直交する方向にずれていればよい。つまり、例えば第一軸線A1と第二軸線A2とがY軸方向で一致し、かつ、X軸方向でずれていてもよい。
【0048】
(変形例2)
図7は、実施の形態の変形例2に係る溶融部600bの構成を示す図である。図7に示すように、本変形例に係る溶融部600bは、Z軸方向における接続部730の側に露出する第一溶融部610と、Z軸方向における集電体500の側に露出する第二溶融部620とを含む。さらに、第一溶融部610の中心軸である第一軸線A1と、第二溶融部620の中心軸である第二軸線A2とは、Z軸方向と直交する第二方向(例えばY軸方向)において離間する位置に配置されている。これらの構成は、変形例1に係る溶融部600aとで共通する。本変形例に係る溶融部600bでは、第一溶融部610と第二溶融部620との重複部分がなく、この点で、変形例1に係る溶融部600aと異なる。
【0049】
この場合であっても、第一溶融部610及び第二溶融部620それぞれのZ軸方向における配置範囲の少なくとも一部同士が重なるように、第一溶融部610及び第二溶融部620が配置されていればよい。これにより、接続部730において積層されている複数の極板端部701それぞれの一部が、第一溶融部610及び第二溶融部620の少なくとも一方に含まれる。そのため、当該複数の極板端部701の全てが、集電体500に電気的に接続される。従って、電極体700は、接続部730及び集電体500を介して効率よく充放電できる。
【0050】
なお、図7に示す例では、第一軸線A1と第二軸線A2とがY軸方向でずれているが、第一軸線A1と第二軸線A2とは、Z軸方向と直交する方向にずれていればよい。つまり、例えば第一軸線A1と第二軸線A2とがY軸方向で一致し、かつ、X軸方向でずれていてもよい。
【0051】
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、上記実施の形態及びその変形例に限定されない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0052】
例えば、図3図5を用いて説明された特徴を有する溶融部600において集電体500と溶接される接続部は、図2に示すような、電極体本体部710の端部の一部から突出して設けられたタブ部である必要はない。例えば、電極体本体部における巻回軸方向の端部の全体から突出した部分が接続部であってもよい。この場合であっても、接続部と集電体との重ね合わせ方向(第一方向)における接続部の側に露出する第一溶融部と、第一方向における集電体の側に露出する第二溶融部とを含む溶融部を形成することは可能である。
【0053】
また、正極側及び負極側の両方に溶融部600が設けられている必要はない。例えば、金属製の容器を正極端子として用いる場合、つまり、電極体700の正極が容器と接続される場合、集電体500と接続部730との溶接部分である溶融部600は、負極側のみに設けられてもよい。
【0054】
なお、上記の、実施の形態に係る溶融部600についての各種の補足事項は、変形例1または2に係る溶融部600aまたは600bに適用されてもよい。
【0055】
また、電極体700に接続される集電体は、図3に示す集電体500のように折り畳まれることは必須ではない。例えば、電極体700の接続部730が、巻回軸方向(Z軸方向)に沿って立てられた状態で容器に収容される場合、単なる平板状またはL字状の集電体が、接続部730に溶接されてもよい。つまり、接続部730と接合される集電体は、溶融部600の形成が可能な部分を有すれば、全体的な形状及びサイズに特に限定はない。
【0056】
また、蓄電素子10が備える電極体の種類は巻回型に限定されない。例えば、平板状極板を積層した積層型の電極体、または、長尺帯状の極板を山折りと谷折りとの繰り返しによって蛇腹状に積層した構造を有する電極体が、蓄電素子10に備えられてもよい。
【0057】
また、上記説明された複数の構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0059】
10 蓄電素子
100 容器
500 集電体
550 当て板
551 外面
600、600a、600b 溶融部
610 第一溶融部
620 第二溶融部
700 電極体
701 極板端部
710 電極体本体部
720、730 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7