(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】静電容量-電圧特性測定方法および静電容量-電圧特性測定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20250304BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
H01L21/66 Q
G01N27/22 C
(21)【出願番号】P 2020153887
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2019173521
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮内 拓也
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 大地
(72)【発明者】
【氏名】芦部 友樹
(72)【発明者】
【氏名】小坂 志乃
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-149798(JP,A)
【文献】特開2018-098394(JP,A)
【文献】特開2009-238858(JP,A)
【文献】特開2004-146831(JP,A)
【文献】特開2016-046352(JP,A)
【文献】特開2011-146692(JP,A)
【文献】特開昭57-075439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体の層と半導体の層とを含む積層体に前記絶縁体の層側から光を照射し、光励起によって前記絶縁体中に電荷を発生させる光照射工程と、
前記絶縁体の層側から前記積層体に接触する第1の電極と、前記半導体の層側から前記積層体に接触する第2の電極と、光照射後の前記積層体とを含む光照射後のキャパシタ構造の静電容量-電圧特性を測定する測定工程と、
を含
み、
前記積層体における前記絶縁体の層と前記半導体の層との間には、前記絶縁体に比して電気抵抗の高い電荷遮断層が介在する、
ことを特徴とする静電容量-電圧特性測定方法。
【請求項2】
前記第1の電極は、前記積層体に照射される前記光に対して透明な透明電極であり、
前記光照射工程は、前記第1の電極と前記第2の電極と光照射前の前記積層体とによって形成される光照明前のキャパシタ構造の前記積層体に対し、前記第1の電極を介して前記絶縁体の層側から前記光を照射する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の静電容量-電圧特性測定方法。
【請求項3】
前記第1の電極は、前記積層体に対して離間可能に接触する可動型の電極であり、
前記光照射工程は、前記積層体から前記第1の電極を離間させて、前記積層体に前記絶縁体の層側から前記光を照射し、
前記測定工程は、前記第1の電極と前記第2の電極と光照射後の前記積層体とによって光照射後の前記キャパシタ構造を形成し、光照射後の前記キャパシタ構造の静電容量-電圧特性を測定する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の静電容量-電圧特性測定方法。
【請求項4】
前記可動型の電極は、水銀プローブである、
ことを特徴とする請求項
3に記載の静電容量-電圧特性測定方法。
【請求項5】
絶縁体の層と半導体の層とを含む積層体に対して、前記絶縁体の層側から接触する第1の電極と、
前記積層体に対して、前記半導体の層側から接触する第2の電極と、
前記積層体に対して、前記絶縁体の層側から光を照射する光源と、
前記第1の電極と前記第2の電極と光照射後の前記積層体とを含む光照射後のキャパシタ構造に対して、直流バイアス電圧を印加する直流電源と、
光照射後の前記キャパシタ構造に対して交流電圧を印加する交流電源と、
光照射後の前記キャパシタ構造の静電容量-電圧特性を測定する測定部と、
少なくとも前記光源と前記積層体と前記第1の電極と前記第2の電極とが収容される暗室を形成する筐体と、
を備え
、
前記積層体は、前記絶縁体の層と前記半導体の層との間に介在し、前記絶縁体に比して高い電気抵抗を有する電荷遮断層をさらに含む、
ことを特徴とする静電容量-電圧特性測定装置。
【請求項6】
前記第1の電極は、前記光源からの前記光に対して透明な透明電極であり、
前記光源は、前記第1の電極と前記第2の電極と光照射前の前記積層体とによって形成される光照射前のキャパシタ構造の前記積層体に対し、前記第1の電極を介して前記絶縁体の層側から前記光を照射する、
ことを特徴とする請求項
5に記載の静電容量-電圧特性測定装置。
【請求項7】
前記第1の電極は、前記積層体に対して離間可能に接触する可動型の電極であり、
前記可動型の電極は、前記光源によって前記積層体に前記光が照射される際に前記積層体から離間し、光照射後の前記積層体に接触する、
ことを特徴とする請求項
5に記載の静電容量-電圧特性測定装置。
【請求項8】
前記可動型の電極は、水銀プローブである、
ことを特徴とする請求項
7に記載の静電容量-電圧特性測定装置。
【請求項9】
前記光源からの前記光の波長を変化させる波長変更部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項
5~
8のいずれか一つに記載の静電容量-電圧特性測定装置。
【請求項10】
前記半導体の層は、前記第2の電極に設けられている、
ことを特徴とする請求項
5~
9のいずれか一つに記載の静電容量-電圧特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量-電圧特性測定方法および静電容量-電圧特性測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの回路やディスプレイには、材料として絶縁体が用いられている。例えば、絶縁体が基板として用いられる場合、絶縁体からなる基板上に半導体素子および配線等が設けられ、これにより、電子デバイスやディスプレイの回路が形成される。このような基板としての絶縁体は、回路内での意図せぬ短絡が発生しないように、半導体素子同士、配線同士、半導体素子および配線等の各間を絶縁している。
【0003】
上記のように基板等の材料として用いられた絶縁体では、電子デバイスやディスプレイの長期駆動に伴って電荷が発生する場合がある。この場合、絶縁体中に蓄積された電荷が半導体素子の動作に影響を及ぼしてしまい、これに起因して、電子デバイスやディスプレイの信頼性を低下させる恐れがある。
【0004】
特に、ディスプレイの基板(例えばフレキシブル基板)を構成する絶縁体では、ディスプレイの駆動時に発光素子等から光が照射され、この結果、光励起による電荷が、当該絶縁体中に発生して蓄積される。このように絶縁体中に蓄積された電荷は、ディスプレイの基板上に設けられた半導体素子、例えば、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)の動作を変化させて、ディスプレイの信頼性(動作の安定性)を低下させる原因となる。具体的には、上記絶縁体中の電荷の影響により、TFTの駆動電圧(閾値電圧)が変化し、これに起因して、発光素子の発光輝度が経時変化したり、電源をOFFにしても発光素子の微弱な発光が意図せず持続する等、ディスプレイとしての正常な動作が損なわれてしまう。
【0005】
なお、対象物についての電荷の評価に関する従来技術として、例えば、対象とする半導体ウェハと導電性測定プローブとの接触によってキャパシタを形成し、この半導体ウェハに光を照射した後に当該キャパシタの静電容量を測定し、この静電容量の経時変化に基づいて半導体ウェハの荷電キャリア寿命を測定するものがある(特許文献1参照)。また、MOSダイオードに電圧を印加して、当該MOSダイオード内の半導体(Si)と酸化膜(SiO2)との界面にトラップされた状態の電荷の量を評価するものもある(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】S.M.ジィー著、「半導体デバイス(第2版)-基礎理論とプロセス技術-」、産業図書株式会社、2015年3月30日、p.161-166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電子デバイスの回路やディスプレイに用いられる基板等の絶縁材料としては、光励起による電荷の発生量(蓄積量)がより少ない絶縁体を選択することが好ましい。このような絶縁体の選択は、光励起によって絶縁体中に発生した電荷量を評価し、この評価結果に基づいて行うことが重要である。また、上記電荷量の評価を行うためには、評価対象とする絶縁体に光を照射し、この光照射後の絶縁体を含むキャパシタ構造について、静電容量-電圧特性(以下、CV特性と適宜いう)を測定することが必要不可欠である。しかしながら、上述した従来技術では、光照射後の絶縁体を含むキャパシタ構造のCV特性を測定する手法について全く開示されておらず、故に、光励起による絶縁体中の電荷量の評価に必要不可欠な上記CV特性を測定することが困難である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光照射後の絶縁体を含むキャパシタ構造のCV特性を容易に測定することができる静電容量-電圧特性測定方法および静電容量-電圧特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る静電容量-電圧特性測定方法は、絶縁体の層と半導体の層とを含む積層体に前記絶縁体の層側から光を照射し、光励起によって前記絶縁体中に電荷を発生させる光照射工程と、前記絶縁体の層側から前記積層体に接触する第1の電極と、前記半導体の層側から前記積層体に接触する第2の電極と、光照射後の前記積層体とを含む光照射後のキャパシタ構造の静電容量-電圧特性を測定する測定工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る静電容量-電圧特性測定方法は、上記の発明において、前記積層体における前記絶縁体の層と前記半導体の層との間には、前記絶縁体に比して電気抵抗の高い電荷遮断層が介在する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る静電容量-電圧特性測定方法は、上記の発明において、前記第1の電極は、前記積層体に照射される前記光に対して透明な透明電極であり、前記光照射工程は、前記第1の電極と前記第2の電極と光照射前の前記積層体とによって形成される光照明前のキャパシタ構造の前記積層体に対し、前記第1の電極を介して前記絶縁体の層側から前記光を照射する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る静電容量-電圧特性測定方法は、上記の発明において、前記第1の電極は、前記積層体に対して離間可能に接触する可動型の電極であり、前記光照射工程は、前記積層体から前記第1の電極を離間させて、前記積層体に前記絶縁体の層側から前記光を照射し、前記測定工程は、前記第1の電極と前記第2の電極と光照射後の前記積層体とによって光照射後の前記キャパシタ構造を形成し、光照射後の前記キャパシタ構造の静電容量-電圧特性を測定する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る静電容量-電圧特性測定方法は、上記の発明において、前記可動型の電極は、水銀プローブである、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る静電容量-電圧特性測定装置は、絶縁体の層と半導体の層とを含む積層体に対して、前記絶縁体の層側から接触する第1の電極と、前記積層体に対して、前記半導体の層側から接触する第2の電極と、前記積層体に対して、前記絶縁体の層側から光を照射する光源と、前記第1の電極と前記第2の電極と光照射後の前記積層体とを含む光照射後のキャパシタ構造に対して、直流バイアス電圧を印加する直流電源と、光照射後の前記キャパシタ構造に対して交流電圧を印加する交流電源と、光照射後の前記キャパシタ構造の静電容量-電圧特性を測定する測定部と、少なくとも前記光源と前記積層体と前記第1の電極と前記第2の電極とが収容される暗室を形成する筐体と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る静電容量-電圧特性測定装置は、上記の発明において、前記積層体は、前記絶縁体の層と前記半導体の層との間に介在し、前記絶縁体に比して高い電気抵抗を有する電荷遮断層をさらに含む、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る静電容量-電圧特性測定装置は、上記の発明において、前記第1の電極は、前記光源からの前記光に対して透明な透明電極であり、前記光源は、前記第1の電極と前記第2の電極と光照射前の前記積層体とによって形成される光照射前のキャパシタ構造の前記積層体に対し、前記第1の電極を介して前記絶縁体の層側から前記光を照射する、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る静電容量-電圧特性測定装置は、上記の発明において、前記第1の電極は、前記積層体に対して離間可能に接触する可動型の電極であり、前記可動型の電極は、前記光源によって前記積層体に前記光が照射される際に前記積層体から離間し、光照射後の前記積層体に接触する、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る静電容量-電圧特性測定装置は、上記の発明において、前記可動型の電極は、水銀プローブである、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る静電容量-電圧特性測定装置は、上記の発明において、前記光源からの前記光の波長を変化させる波長変更部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る静電容量-電圧特性測定装置は、上記の発明において、前記半導体の層は、前記第2の電極に設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光照射後の絶縁体を含むキャパシタ構造のCV特性を容易に測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係るCV特性測定装置の一構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1において測定されるキャパシタ構造のCV特性の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1に係るCV特性測定方法が適用された光励起電荷量測定方法の一例を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態2に係るCV特性測定装置の一構成例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態3に係るCV特性測定装置の一構成例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態4に係るCV特性測定装置の一構成例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例1におけるCV特性の測定結果の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施例2におけるCV特性の測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0025】
<実施形態1>
(CV特性測定装置)
まず、本発明の実施形態1に係るCV特性測定装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係るCV特性測定装置の一構成例を示す模式図である。本実施形態1に係るCV特性測定装置1は、対象とする絶縁体中の光励起による電荷量の評価を行うためのCV特性を測定する装置(静電容量-電圧特性測定装置)の一例である。
図1に示すように、CV特性測定装置1は、透明電極2aと、支持電極2bと、光源3と、直流バイアス電源4と、交流電源5と、測定部8を構成する静電容量測定器6および電圧計7と、筐体9とを備える。
【0026】
透明電極2aおよび支持電極2bは、本実施形態1におけるCV特性の測定対象であるキャパシタ構造10を形成するための一対の電極の一例である。本実施形態1では、
図1に示すように、透明電極2aと支持電極2bとの間に積層体15をその層厚方向に挟むことにより、キャパシタ構造10が形成される。積層体15は、少なくとも、光励起による電荷量の評価の対象とする絶縁体11の層と、CV特性の定量的な測定を可能にするための半導体12の層とを含む積層体の一例である。具体的には、本実施形態1において、積層体15は、
図1に示すように、絶縁体11の層と半導体12の層とからなる。例えば、積層体15は、半導体12の層の上に絶縁体11の層を積層することによって形成される。
【0027】
半導体12の層を構成する半導体材料としては、例えば、元素半導体や化合物半導体等の無機半導体、または有機半導体が挙げられる。元素半導体としては、例えば、シリコンまたはゲルマニウム等が挙げられる。化合物半導体としては、例えば、セレン化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウム等が挙げられる。これらの中でも、当該半導体材料としては、無機半導体が好ましく、熱酸化膜を容易に形成することができるシリコンが特に好ましい。
【0028】
透明電極2aは、絶縁体11の層と半導体12の層とを含む積層体15に対して絶縁体11の層側から接触する第1の電極の一例である。本実施形態1では、
図1に示すように、透明電極2aは、積層体15における絶縁体11の上面(絶縁体11の層厚方向上側の面)と面接触するように配置される。また、透明電極2aは、配線等を介して、直流バイアス電源4、交流電源5および測定部8(本実施形態1では静電容量測定器6および電圧計7)と電気的に接続されている。透明電極2aは、光源3から発せられる光3aに対して透明な電極であり、例えば酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電膜によって構成される。
【0029】
支持電極2bは、絶縁体11の層と半導体12の層とを含む積層体15に対して半導体12の層側から接触する第2の電極の一例である。本実施形態1では、
図1に示すように、支持電極2bは、積層体15における半導体12の下面(半導体12の層厚方向下側の面)と面接触するように配置される。
図1には図示されていないが、支持電極2bは、載置台(ステージ)等の支持部の上に設けられ、積層体15を下方から支持し得るように構成されている。また、支持電極2bは、配線等を介して、直流バイアス電源4、交流電源5および測定部8の電圧計7と電気的に接続されている。支持電極2bは、例えば銅等の導電性金属膜によって構成され、その面直方向(積層体15の層厚方向)に透明電極2aと対向する。本実施形態1において、この支持電極2bの上面には、積層体15における半導体12の層が載置される。一方、支持電極2bの上面には半導体12の層が予め設けられていてもよく、この支持電極2bに設けられた半導体12の層上に絶縁体11の層を積層(載置)することによって積層体15が形成されてもよい。
【0030】
光源3は、光励起によって絶縁体11中に電荷を発生させるための光源の一例である。
図1に示すように、光源3は、積層体15に対して、絶縁体11の層側から光3aを照射する。本実施形態1では、光源3は、光照射前のキャパシタ構造10の積層体15に対し、透明電極2aを介して絶縁体11の層側から光3aを照射する。光照射前のキャパシタ構造10は、透明電極2aと支持電極2bと光照射前の積層体15とによって形成されるキャパシタ構造である。光源3は、上記のような積層体15に対する光3aの照射により、積層体15の絶縁体11に光3aを照射し、これにより、絶縁体11中に光励起による電荷を発生させる。このように光励起によって発生した電荷は、主に、絶縁体11に蓄積される。
【0031】
このような光源3としては、例えば、キセノン光源、ハロゲン光源、クリプトン光源、重水素タングステン光源、タングステンハロゲン光源、アルゴン光源等、複数の波長帯域が含まれる光を発する光源が用いられてもよいし、単一波長帯域の光を発するLEDライト等の単一波長光源が用いられてもよい。中でも、光源3としては、単一波長光源が好ましい。また、光源3による光3aの強度は、光照射前後で絶縁体11の電荷量の変化が確認でき、且つ、絶縁体11がダメージを受けない程度の強度であることが好ましい。
【0032】
直流バイアス電源4は、CV特性の測定対象に対して直流バイアス電圧を印加する直流電源の一例である。本実施形態1では、
図1に示すように、直流バイアス電源4は、直流バイアス電圧の出力を所定の範囲で変更可能な出力可変型の直流電源によって構成され、CV特性の測定対象であるキャパシタ構造10に対して直流バイアス電圧を印加し得るように回路構成される。直流バイアス電源4は、光源3が絶縁体11に光3aを照射する前である場合、透明電極2aと支持電極2bと光照射前の積層体15とを含む光照射前のキャパシタ構造10に対して直流バイアス電圧を印加する。直流バイアス電源4は、光源3が絶縁体11に光3aを照射した後である場合、透明電極2aと支持電極2bと光照射後の積層体15とを含む光照射後のキャパシタ構造10に対して直流バイアス電圧を印加する。上記いずれの場合であっても、直流バイアス電源4は、予め設定された所定の電圧範囲内で直流バイアス電圧の出力を連続的または断続的に変えながら、キャパシタ構造10に対して直流バイアス電圧を印加する。
【0033】
交流電源5は、CV特性の測定対象に対して交流電圧を印加する交流電源の一例である。本実施形態1では、
図1に示すように、交流電源5は、CV特性の測定対象であるキャパシタ構造10に対して交流電圧を印加し得るように回路構成される。交流電源5は、光源3が絶縁体11に光3aを照射する前である場合、透明電極2aと支持電極2bと光照射前の積層体15とを含む光照射前のキャパシタ構造10に対して交流電圧を印加する。交流電源5は、光源3が絶縁体11に光3aを照射した後である場合、透明電極2aと支持電極2bと光照射後の積層体15とを含む光照射後のキャパシタ構造10に対して交流電圧を印加する。
【0034】
測定部8は、光源3が絶縁体11に光3aを照射する前である場合、光照射前のキャパシタ構造10のCV特性を測定し、光源3が絶縁体11に光3aを照射した後である場合、光照射後のキャパシタ構造10のCV特性を測定する。本実施形態1では、
図1に示すように、測定部8は、静電容量測定器6と電圧計7とによって構成される。
【0035】
静電容量測定器6は、キャパシタ構造10のCV特性における静電容量Cを測定するための装置である。詳細には、静電容量測定器6は、LCRメータ等によって構成され、
図1に示すように、交流信号を読み取ってキャパシタ構造10の静電容量Cを測定し得るように回路構成される。静電容量測定器6は、光源3が絶縁体11に光3aを照射する前である場合、直流バイアス電源4からの直流バイアス電圧の印加と交流電源5からの交流電圧の印加とによって積層体15に電荷が蓄積されるキャパシタ構造10の静電容量Cを測定する。また、静電容量測定器6は、光源3が絶縁体11に光3aを照射した後である場合、直流バイアス電源4からの直流バイアス電圧の印加と交流電源5からの交流電圧の印加と光源3からの光3aの照射とによって積層体15に電荷が蓄積されるキャパシタ構造10の静電容量Cを測定する。上記いずれの場合も、静電容量測定器6は、所定の電圧範囲内で変化させながらキャパシタ構造10に印加される直流バイアス電圧の各値に対応して、キャパシタ構造10の静電容量Cを測定する。また、静電容量測定器6は、測定した静電容量Cを表示する。
【0036】
電圧計7は、キャパシタ構造10のCV特性における印加電圧Vを測定するための装置である。詳細には、
図1に示すように、電圧計7は、キャパシタ構造10を構成する一対の電極(本実施形態1では透明電極2aおよび支持電極2b)と配線を介して並列に接続され、キャパシタ構造10に印加される電圧(印加電圧V)を測定する。例えば、電圧計7は、キャパシタ構造10の印加電圧Vとして、直流バイアス電源4によってキャパシタ構造10に印加される直流バイアス電圧を測定する。また、電圧計7は、測定した印加電圧Vを表示する。
【0037】
筐体9は、少なくとも、光源3と、光源3による光照射の対象となるキャパシタ構造の積層体、第1の電極および第2の電極とが収容される暗室を形成する筐体の一例である。本実施形態1では、上述したように、光源3による光照射の対象となるキャパシタ構造は、
図1に示すキャパシタ構造10であり、このキャパシタ構造10の積層体、第1の電極および第2の電極は、各々、積層体15、透明電極2aおよび支持電極2bである。すなわち、本実施形態1における筐体9は、少なくとも光源3と積層体15と透明電極2aと支持電極2bとが収容される暗室を形成する。より詳細には、筐体9は、光源3からの光3a以外の光(以下、外光と適宜いう)を遮断し得る暗室を形成する中空構造体である。
図1に示すように、筐体9による暗室内には、光源3、透明電極2a、支持電極2b、積層体15、直流バイアス電源4、交流電源5、静電容量測定器6および電圧計7等が収容される。これらのうち、積層体15は、筐体9の暗室内に出し入れ可能に収容される。半導体12の層が予め支持電極2bの上に設けられている場合、積層体15のうちの絶縁体11が、筐体9の暗室内に出し入れ可能に収容される。筐体9は、暗室内に光源3、積層体15、透明電極2aおよび支持電極2b等を収容することにより、これらの収容物に対して、外光を遮断することができる。この結果、CV特性の測定対象であるキャパシタ構造10の積層体15(特に絶縁体11)に対して光源3からの光3aを適切に照射することができる。
【0038】
(キャパシタ構造のCV特性)
つぎに、本実施形態1に係るCV特性測定装置1によって測定されるキャパシタ構造10のCV特性について説明する。
図2は、本発明の実施形態1において測定されるキャパシタ構造のCV特性の一例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態1におけるキャパシタ構造10のCV特性は、キャパシタ構造10の静電容量Cと印加電圧Vとの相関関係によって表される。
【0039】
詳細には、キャパシタ構造10の静電容量Cは、光源3によるキャパシタ構造10の光照射前後の各々において、静電容量測定器6により、キャパシタ構造10の印加電圧Vに対応して測定される。また、キャパシタ構造10の印加電圧Vは、光源3によるキャパシタ構造10の光照射前後の各々において、静電容量測定器6による静電容量Cの測定に伴い、電圧計7によって測定される。光照射前のキャパシタ構造10のCV特性は、静電容量測定器6によって測定された光照射前のキャパシタ構造10の静電容量Cと、電圧計7によって測定された光照射前のキャパシタ構造10の印加電圧Vとの相関関係によって表される。光照射後のキャパシタ構造10のCV特性は、静電容量測定器6によって測定された光照射後のキャパシタ構造10の静電容量Cと、電圧計7によって測定された光照射後のキャパシタ構造10の印加電圧Vとの相関関係によって表される。
【0040】
例えば、
図2に示すように、光照射前のキャパシタ構造10のCV特性は、光照射前のキャパシタ構造10の静電容量Cと印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y1(
図2中の実線)によって表される。光照射後のキャパシタ構造10のCV特性は、光照射後のキャパシタ構造10の静電容量Cと印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y2(
図2中の破線)によって表される。キャパシタ構造10が光照射前後の何れの場合であっても、相関線Y1、Y2に例示されるように、キャパシタ構造10の静電容量Cは、所定の電圧範囲内で順次変化(増加)する印加電圧Vについて、最大値を含む高い値となる相関と、当該高い値から急峻に低下する相関と、当該急峻な低下後に緩やかに増加または減少、或いは一定の値となる相関とを示す。
【0041】
ここで、光照射後のキャパシタ構造10のCV特性において、静電容量Cが急峻に低下するときの印加電圧Vは、
図2に示す相関線Y1と相関線Y2との比較から明らかなように、光照射前のキャパシタ構造10のCV特性に比べて増加している。すなわち、光照射後のキャパシタ構造10のCV特性を表す相関線Y2は、光照射前のキャパシタ構造10のCV特性を表す相関線Y1に比べて、静電容量Cが急峻に低下するときの印加電圧Vの増加量分、印加電圧Vの増加方向(
図2の紙面に向かって右側)にシフトしている。この相関線Y1に対する相関線Y2のシフト現象は、光源3からの光3aがキャパシタ構造10の絶縁体11に照射されることにより、この絶縁体11中に光励起による電荷が発生して蓄積されたことに起因して起こる。
【0042】
上述した光照射前および光照射後のキャパシタ構造10の各CV特性を用いれば、光源3からの光3aの照射によって絶縁体11中に励起された電荷の量(以下、光励起電荷量と適宜いう)の導出に必要なフラットバンド電圧やキャパシタ構造10の電荷蓄積状態における静電容量(以下、電荷蓄積状態の静電容量と適宜いう)等のパラメータを得ることができる。具体的には、
図2に示すように、光照射前のキャパシタ構造10のフラットバンド電圧V
FB1は、光照射前のキャパシタ構造10のCV特性(相関線Y1参照)において静電容量Cが急峻に低下するときの印加電圧Vから導出することができる。光照射後のキャパシタ構造10のフラットバンド電圧V
FB2は、光照射後のキャパシタ構造10のCV特性(相関線Y2参照)において静電容量Cが急峻に低下するときの印加電圧Vから導出することができる。また、電荷蓄積状態の静電容量C
Iは、例えば、光照射前のキャパシタ構造10に含まれる半導体12の層に電荷が蓄積された状態における静電容量である。このような電荷蓄積状態の静電容量C
Iは、キャパシタ構造10の絶縁領域(本実施形態1では絶縁体11の層)の静電容量と一致し、光照射前のキャパシタ構造10のCV特性において、印加電圧Vに応じて最大値となる時の静電容量Cから導出することができる。
【0043】
絶縁体11の光励起電荷量Qは、上述したようにキャパシタ構造10のCV特性から得られた各パラメータをもとに、以下に示す式(1)、(2)に基づいて導出することができる。詳細には、光照射前のキャパシタ構造10のフラットバンド電圧VFB1と、光照射後のキャパシタ構造10のフラットバンド電圧VFB2とを用い、式(1)に基づいてフラットバンド電圧VFB1とフラットバンド電圧VFB2との差の絶対値を算出することにより、光照射前後のキャパシタ構造10のフラットバンド電圧差ΔVFBが導出される。また、式(2)に基づいて、上記フラットバンド電圧差ΔVFBと電荷蓄積状態の静電容量CIとを乗ずることにより、絶縁体11の光励起電荷量Qが導出される。
ΔVFB=|VFB2-VFB1| ・・・(1)
Q=CI×ΔVFB ・・・(2)
【0044】
(キャパシタ構造のCV特性の測定方法)
つぎに、本発明の実施形態1に係るCV特性測定方法について説明する。
図3は、本発明の実施形態1に係るCV特性測定方法が適用された光励起電荷量測定方法の一例を示すフロー図である。この光励起電荷量測定方法は、対象とする絶縁体11中に蓄積される光励起による電荷量(すなわち光励起電荷量Q)を測定する方法であり、例えば
図3に示すステップS101~S106の各工程を順次行うことによって実現される。本実施形態1に係るCV特性測定方法は、上記絶縁体11の光励起電荷量Qの測定に必要なキャパシタ構造10のCV特性を測定する方法であり、上述したCV特性測定装置1(
図1参照)を用いて例えば
図3に示す少なくともステップS103、S104の各工程を行うことによって実現される。
【0045】
詳細には、
図3に示すように、本実施形態1に係るCV特性測定方法では、まず、第1のCV特性測定工程が行われる(ステップS101)。この第1のCV特性測定工程は、光照射前のキャパシタ構造10のCV特性を測定する工程である。本実施形態1において、光照射前のキャパシタ構造10は、絶縁体11の層側から積層体15に接触する透明電極2aと、半導体12の層側から積層体15に接触する支持電極2bと、光照射前の積層体15とを含むキャパシタ構造である。例えば、ステップS101では、CV特性測定装置1の透明電極2aと支持電極2bとの間に光照射前の積層体15が配置され、これにより、光照射前のキャパシタ構造10が形成される。積層体15は、ステップS101の前の段階において、半導体12の層上に絶縁体11の層を積層することによって予め形成されてもよいし、ステップS101の工程内において半導体12の層上に絶縁体11の層を積層することによって形成されてもよい。
【0046】
ステップS101において、CV特性測定装置1は、静電容量測定器6および電圧計7によって光照射前のキャパシタ構造10のCV特性を測定する。この際、静電容量測定器6は、直流バイアス電源4からの直流バイアス電圧の印加と交流電源5からの交流電圧の印加とによって積層体15に電荷が蓄積された状態のキャパシタ構造10の静電容量Cを、所定の電圧範囲内で変化しながらキャパシタ構造10に印加される直流バイアス電圧の各値に対応して測定する。電圧計7は、直流バイアス電源4によって光照射前のキャパシタ構造10に印加される直流バイアス電圧を、この光照射前のキャパシタ構造10の印加電圧Vとして測定する。光照射前のキャパシタ構造10のCV特性は、この静電容量測定器6による光照射前のキャパシタ構造10の静電容量Cと、この電圧計7による光照射前のキャパシタ構造10の印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y1(
図2参照)によって表される。当該相関線Y1は、光照射前のキャパシタ構造10のCV特性の測定結果として、例えば静電容量測定器6またはCV特性測定装置1が備える表示部(図示せず)等に表示される。
【0047】
上述したステップS101の実行後、
図3に示すように、第1のフラットバンド電圧導出工程が行われる(ステップS102)。この第1のフラットバンド電圧導出工程は、光照射前のキャパシタ構造10のCV特性におけるフラットバンド電圧V
FB1を導出する工程である。
【0048】
ステップS102において、フラットバンド電圧VFB1は、上述したステップS101で測定された光照射前のキャパシタ構造10のCV特性をもとに導出される。詳細には、光照射前のキャパシタ構造10のCV特性の測定結果である上記相関線Y1において静電容量Cが急峻に低下するときの印加電圧Vが、フラットバンド電圧VFB1として導出される。このフラットバンド電圧VFB1の導出処理は、例えば、静電容量測定器6またはCV特性測定装置1が備える演算処理部(図示せず)等によって実行することができる。
【0049】
上述したステップS102の実行後、
図3に示すように、光照射工程が行われる(ステップS103)。この光照射工程は、絶縁体11の層と半導体12の層とを含む積層体15に絶縁体11の層側から光を照射し、光励起によって絶縁体11中に電荷を発生させる工程である。
【0050】
本実施形態1では、
図1に示したように、積層体15に対して絶縁体11の層側から接触する第1の電極は、光源3によって積層体15に照射される光3aに対して透明な透明電極2aである。ステップS103において、CV特性測定装置1の光源3は、光照射前のキャパシタ構造10の積層体15に対し、透明電極2aを介して絶縁体11の層側から光3aを照射する。詳細には、光源3は、上述したステップS101において既にCV特性測定装置1に形成されている光照射前のキャパシタ構造10に対し、透明電極2a側から光3aを照射する。光源3から発せられた光3aは、透明電極2aを透過して積層体15の絶縁体11に到達する。このようにして、光源3は、透明電極2aを介して絶縁体11に光3aを照射する。光源3からの光3aが照射された絶縁体11中には、光励起による電荷が発生する。この光励起による電荷は、主に、絶縁体11中に蓄積される。
【0051】
上述したステップS103の実行後、
図3に示すように、第2のCV特性測定工程が行われる(ステップS104)。この第2のCV特性測定工程は、光照射後のキャパシタ構造10のCV特性を測定する工程である。本実施形態1において、光照射後のキャパシタ構造10は、絶縁体11の層側から積層体15に接触する透明電極2aと、半導体12の層側から積層体15に接触する支持電極2bと、光照射後の積層体15とを含むキャパシタ構造である。ステップS104における光照射後のキャパシタ構造10は、上述した光照射前のキャパシタ構造10に対して光源3からの光3aが照射されたものである。
【0052】
ステップS104において、CV特性測定装置1は、静電容量測定器6および電圧計7によって光照射後のキャパシタ構造10のCV特性を測定する。この際、静電容量測定器6は、直流バイアス電源4からの直流バイアス電圧の印加と交流電源5からの交流電圧の印加と光源3からの光3aの照射とによって積層体15に電荷が蓄積された状態のキャパシタ構造10の静電容量Cを、上述したステップS101と同じ条件の直流バイアス電圧の各値に対応して測定する。電圧計7は、上述したステップS101と同じ条件で直流バイアス電源4によって光照射後のキャパシタ構造10に印加される直流バイアス電圧を、この光照射後のキャパシタ構造10の印加電圧Vとして測定する。光照射後のキャパシタ構造10のCV特性は、この静電容量測定器6による光照射後のキャパシタ構造10の静電容量Cと、この電圧計7による光照射後のキャパシタ構造10の印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y2(
図2参照)によって表される。当該相関線Y2は、光照射後のキャパシタ構造10のCV特性の測定結果として、例えば静電容量測定器6またはCV特性測定装置1が備える表示部(図示せず)等に表示される。
【0053】
上述したステップS104の実行後、
図3に示すように、第2のフラットバンド電圧導出工程が行われる(ステップS105)。この第2のフラットバンド電圧導出工程は、光照射後のキャパシタ構造10のCV特性におけるフラットバンド電圧V
FB2を導出する工程である。
【0054】
ステップS105において、フラットバンド電圧VFB2は、上述したステップS104で測定された光照射後のキャパシタ構造10のCV特性をもとに導出される。詳細には、光照射後のキャパシタ構造10のCV特性の測定結果である上記相関線Y2において静電容量Cが急峻に低下するときの印加電圧Vが、フラットバンド電圧VFB2として導出される。このフラットバンド電圧VFB2の導出処理は、例えば、静電容量測定器6またはCV特性測定装置1が備える演算処理部(図示せず)等によって実行することができる。
【0055】
本実施形態1に係るCV特性測定方法は、上述したステップS101~S105の各工程を含むものである。このCV特性測定方法の各工程を実行後、すなわち、上述したステップS105の実行後、
図3に示すように、光励起電荷量導出工程が行われ(ステップS106)、本実施形態1における光励起電荷量測定方法が終了する。この光励起電荷量導出工程は、光源3からの光3aの照射によって絶縁体11中に励起された電荷の量、すなわち、絶縁体11の光励起電荷量Qを導出する工程である。
【0056】
ステップS106において、絶縁体11の光励起電荷量Qは、上述したステップS102によるフラットバンド電圧VFB1と、上述したステップS105によるフラットバンド電圧VFB2と、電荷蓄積状態の静電容量CIとをもとに導出される。例えば、ステップS106では、上述したステップS101によって測定された光照射前のキャパシタ構造10のCV特性における静電容量Cの最大値が、電荷蓄積状態の静電容量CIとして導出される。また、これらのフラットバンド電圧VFB1、VFB2を用い、上述した式(1)に基づいて演算処理を行うことにより、光照射前後のキャパシタ構造10のフラットバンド電圧差ΔVFBが算出される。続いて、このフラットバンド電圧差ΔVFBと上記の静電容量CIとを用い、上述した式(2)に基づいて演算処理を行うことにより、絶縁体11の光励起電荷量Qが算出される。このステップS106における演算処理は、例えば、光励起電荷量測定方法に適用される光励起電荷量測定装置の演算処理部または上述したCV特性測定装置の演算処理部(いずれも図示せず)によって導出することができる。
【0057】
このように導出された光励起電荷量Qは、対象とする絶縁体11の光励起電荷量評価に用いることができる。例えば、絶縁体11の光励起電荷量Qと予め設定された電荷量の閾値(上限値)とを比較し、この比較結果に基づいて、光励起による電荷の蓄積量がより少ない絶縁体11(すなわち耐光特性に優れた絶縁体11)を選択することができる。具体的には、光励起電荷量Qが当該閾値に比べて大きい場合、この絶縁体11は耐光特性が不十分なものであると判断し、光励起電荷量Qが当該閾値以下である場合、この絶縁体11は耐光特性が良好なものであると判断することができる。耐光特性が良好な絶縁体11は、例えば、有機ELディスプレイ等に搭載されるTFTの基板を構成する絶縁材料としての採用が期待される。また、絶縁体11の光励起電荷量評価では、上記光励起電荷量Qを絶縁体11の体積によって除算することにより、絶縁体11の単位体積当たりの光励起電荷量を算出し、この算出値と予め設定された上限閾値とを比較し、この比較結果に基づいて、絶縁体11の耐光特性を評価することもできる。
【0058】
なお、上述した第1のCV特性測定工程(ステップS101)では、半導体12の層と絶縁体11の層との積層によって形成された積層体15をCV特性測定装置1の透明電極2aと支持電極2bとの間に介在させ、これによってキャパシタ構造10を形成していたが、本実施形態1に係るCV特性測定方法は、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態1に係るCV特性測定方法では、予め支持電極2b上に半導体12の層を固定配置しておき、この支持電極2b上の半導体12の層と透明電極2aとの間に光照射前の絶縁体11を介在させることにより、光照射前のキャパシタ構造10を形成してもよい。この手法により、測定サンプルとして単一層の絶縁体11を準備すればよく、積層体15を準備する手間を省くことができ、簡便に測定サンプルを準備することができる。これに加え、光照射後のキャパシタ構造10のCV特性を測定完了する毎に複数の絶縁体11を順次切り替えてキャパシタ構造10を形成し直した場合であっても、CV特性が測定される複数のキャパシタ構造10の間で半導体12の特性差を無くすことができる。これにより、CV特性の測定誤差を低減できることから、キャパシタ構造10のCV特性を精度良く測定することができ、延いては、絶縁体11の光励起電荷量Qを精度よく導出することができる。
【0059】
以上、説明したように、本発明の実施形態1では、絶縁体11の層と半導体12の層とを含む積層体15に対し、光源3からの光3aを絶縁体11の層側から照射し、この光照射により、絶縁体11中に光励起による電荷を発生させ、絶縁体11の層側から積層体15に接触する第1の電極(本実施形態1では透明電極2a)と、半導体12の層側から積層体15に接触する第2の電極(本実施形態1では支持電極2b)と、光照射後の積層体15とを含む光照射後のキャパシタ構造10のCV特性を測定している。
【0060】
このため、光励起によって絶縁体11中に発生した電荷の影響を受けるキャパシタ構造10のCV特性、すなわち、光照射後の絶縁体11を含むキャパシタ構造10のCV特性を容易に測定することができる。このような光照射後のキャパシタ構造10のCV特性と、光照射前のキャパシタ構造10のCV特性とを用いることにより、光励起による絶縁体11中の電荷量の評価に必要不可欠なパラメータ(具体的には上述したフラットバンド電圧VFB1、フラットバンド電圧VFB2、フラットバンド電圧差ΔVFBおよび電荷蓄積状態の静電容量CI)を容易に導出することができる。この結果、絶縁体11の光励起電荷量Qを容易に導出することができる。
【0061】
また、本発明の実施形態1では、絶縁体11の層側から積層体15に接触する第1の電極として透明電極2aを用い、光照明前のキャパシタ構造10の積層体15に対し、透明電極2aを介して絶縁体11の層側から光源3による光3aを照射している。このため、従来のプローブ電極を絶縁体11の層側から積層体15に接触させる場合に比べ、絶縁体11の光照射面積をより広くすることができるとともに、絶縁体11の光照射の対象面にプローブ電極の接触傷がつくことを防止することができる。この結果、光照射後の絶縁体11を含むキャパシタ構造10のCV特性をより容易かつ安定して測定することができる。
【0062】
<実施形態2>
(CV特性測定装置)
つぎに、本発明の実施形態2に係るCV特性測定装置について説明する。
図4は、本発明の実施形態2に係るCV特性測定装置の一構成例を示す模式図である。
図4に示すように、本実施形態2に係るCV特性測定装置21は、上述した実施形態1に係るCV特性測定装置1の積層体15の代わりに、積層体25を透明電極2aと支持電極2bとの間に介在させている。すなわち、本実施形態2において、CV特性測定装置21には、CV特性の測定対象として、上述した実施形態1におけるキャパシタ構造10の代わりに、透明電極2aと支持電極2bと積層体25とを含むキャパシタ構造20が形成される。また、本実施形態2における積層体25は、絶縁体11の層と半導体12の層との間に電荷遮断層23をさらに含む。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0063】
キャパシタ構造20は、
図4に示すように、透明電極2aと支持電極2bとの間に積層体25をその層厚方向に挟むことによって形成される。本実施形態2において、光源3による光照射前のキャパシタ構造20は、透明電極2aと支持電極2bと光照射前の積層体25とによって形成される。光源3による光照射後のキャパシタ構造20は、透明電極2aと支持電極2bと光照射後の積層体25とによって形成される。
【0064】
積層体25は、少なくとも上述の絶縁体11の層と半導体12の層とを含む積層体の一例である。本実施形態2において、積層体25は、
図4に示すように、実施形態1と同様の絶縁体11の層および半導体12の層を含み、さらに電荷遮断層23を含む。電荷遮断層23は、絶縁体11の層から半導体12の層への電荷の移動を遮断するための層である。電荷遮断層23は、絶縁体11に比して高い電気抵抗を有する絶縁体によって構成され、絶縁体11の層と半導体12の層との間に介在する。積層体25は、半導体12の層の上に電荷遮断層23を積層し、この電荷遮断層23の上に絶縁体11の層を積層することによって形成される。
【0065】
電荷遮断層23を構成する絶縁体は、有機絶縁体または無機絶縁体のいずれであってもよいが、無機絶縁体であることが好ましく、酸化物絶縁体であることがより好ましく、熱酸化法によって形成した酸化物絶縁体(以下、熱酸化膜という)であることが特に好ましい。また、電荷遮断層23の層厚は、測定サンプルとしての絶縁体11の層厚に比べて薄いことが好ましいが、特にこれに限定されない。
【0066】
また、本実施形態2において、支持電極2bの上面には、積層体25における半導体12の層が載置される。一方、支持電極2bの上面には半導体12の層が予め設けられていてもよく、この支持電極2bに設けられた半導体12の層上に、電荷遮断層23と絶縁体11の層とからなる積層体を載置することによって、本実施形態2における積層体25が形成されてもよい。或いは、上記支持電極2bに設けられた半導体12の層上に、電荷遮断層23を積層し、この電荷遮断層23の上に絶縁体11の層を積層し、これによって積層体25が形成されてもよい。
【0067】
(キャパシタ構造のCV特性の測定方法)
つぎに、本発明の実施形態2に係るCV特性測定方法について説明する。本実施形態2に係るCV特性測定方法は、測定対象が実施形態1のキャパシタ構造10から実施形態2のキャパシタ構造20に置き換わったこと以外、上述した実施形態1と同様である。すなわち、本実施形態2に係るCV特性測定方法が適用される光励起電荷量測定方法は、CV特性の測定対象を実施形態2のキャパシタ構造20にして、
図3に示したステップS101~S106の各工程を順次行うことによって実現される。本実施形態2に係るCV特性測定方法は、絶縁体11の光励起電荷量Qの測定に必要なキャパシタ構造20のCV特性を測定する方法であり、上述したCV特性測定装置21(
図4参照)を用いて例えば
図3に示した少なくともステップS103、S104の各工程を行うことによって実現される。
【0068】
詳細には、本実施形態2における第1のCV特性測定工程(ステップS101)では、CV特性測定装置21の透明電極2aと支持電極2bとの間に光照射前の積層体25が配置され、これにより、光照射前のキャパシタ構造20が形成される。積層体25は、ステップS101の前の段階において、半導体12の層上に電荷遮断層23と絶縁体11の層とを順次積層することによって予め形成されてもよいし、ステップS101の工程内において半導体12の層上に電荷遮断層23と絶縁体11の層とを順次を積層することによって形成されてもよい。
【0069】
このステップS101において、CV特性測定装置21は、静電容量測定器6および電圧計7によって光照射前のキャパシタ構造20のCV特性を測定する。ステップS101におけるCV特性測定装置21によるCV特性の測定は、CV特性の測定対象が光照射前のキャパシタ構造20であること以外、上述した実施形態1と同様である。すなわち、このステップS101では、光照射前のキャパシタ構造20の静電容量Cが静電容量測定器6によって測定され、光照射前のキャパシタ構造20の印加電圧Vが電圧計7によって測定される。光照射前のキャパシタ構造20のCV特性は、この静電容量測定器6による光照射前のキャパシタ構造20の静電容量Cと、この電圧計7による光照射前のキャパシタ構造20の印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y1(
図2参照)によって表される。
【0070】
続いて、本実施形態2における第1のフラットバンド電圧導出工程(ステップS102)では、上述したステップS101で測定された光照射前のキャパシタ構造20のCV特性をもとに、フラットバンド電圧VFB1が導出される。このフラットバンド電圧VFB1の導出処理は、光照射前のキャパシタ構造20のCV特性を用いること以外、上述した実施形態1と同様である。
【0071】
続いて、本実施形態2における光照射工程(ステップS103)では、CV特性測定装置21の光源3は、光照射前のキャパシタ構造20の積層体25に対し、透明電極2aを介して絶縁体11の層側から光3aを照射する。詳細には、光源3は、上述したステップS101において既にCV特性測定装置21に形成されている光照射前のキャパシタ構造20に対し、透明電極2a側から光3aを照射する。光源3から発せられた光3aは、透明電極2aを透過して積層体25の絶縁体11に到達する。このようにして、光源3は、透明電極2aを介して絶縁体11に光3aを照射する。光源3からの光3aが照射された絶縁体11中には、光励起による電荷が発生する。
【0072】
ここで、積層体25における絶縁体11の層と半導体12の層との間には、
図4に示すように、絶縁体11に比して電気抵抗の高い電荷遮断層23が介在している。電荷遮断層23は、光励起によって絶縁体11中に発生した電荷が半導体12の層へ移動することを防止することができる。この結果、絶縁体11中の光励起による電荷は、半導体12の層側へ逃げず、絶縁体11中に蓄積される。
【0073】
続いて、本実施形態2における第2のCV特性測定工程(ステップS104)では、上述した光照射前のキャパシタ構造20に対して光源3からの光3aが照射されたものが、光照射後のキャパシタ構造20になる。ステップS104において、CV特性測定装置21は、静電容量測定器6および電圧計7によって光照射後のキャパシタ構造20のCV特性を測定する。ステップS104におけるCV特性測定装置21によるCV特性の測定は、CV特性の測定対象が光照射後のキャパシタ構造20であること以外、上述した実施形態1と同様である。すなわち、このステップS104では、光照射後のキャパシタ構造20の静電容量Cが静電容量測定器6によって測定され、光照射後のキャパシタ構造20の印加電圧Vが電圧計7によって測定される。光照射後のキャパシタ構造20のCV特性は、この静電容量測定器6による光照射後のキャパシタ構造20の静電容量Cと、この電圧計7による光照射後のキャパシタ構造20の印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y2(
図2参照)によって表される。
【0074】
続いて、本実施形態2における第2のフラットバンド電圧導出工程(ステップS105)では、上述したステップS104で測定された光照射後のキャパシタ構造20のCV特性をもとに、フラットバンド電圧VFB2が導出される。このフラットバンド電圧VFB2の導出処理は、光照射後のキャパシタ構造20のCV特性を用いること以外、上述した実施形態1と同様である。
【0075】
本実施形態2に係るCV特性測定方法は、本実施形態2におけるステップS101~S105の各工程を含むものである。このCV特性測定方法の各工程を実行後、上述した実施形態1の場合と同様に、ステップS106の光励起電荷量導出工程が行われ、本実施形態2における光励起電荷量測定方法が終了する。
【0076】
本実施形態2の光励起電荷量導出工程(ステップS106)は、本実施形態2のステップS102によるフラットバンド電圧VFB1と本実施形態2のステップS105によるフラットバンド電圧VFB2とを用いること以外、上述した実施形態1と同様である。すなわち、このステップS106により、本実施形態2のキャパシタ構造20における絶縁体11の光励起電荷量Qが、上記のフラットバンド電圧VFB1、VFB2、電荷蓄積状態の静電容量CIおよび式(1)、(2)をもとに導出される。本実施形態2において、電荷蓄積状態の静電容量CIは、例えば、光照射前のキャパシタ構造20に含まれる半導体12の層に電荷が蓄積された状態における静電容量である。このような電荷蓄積状態の静電容量CIは、キャパシタ構造20の絶縁領域(本実施形態2では絶縁体11の層および電荷遮断層23の領域)の静電容量と一致し、光照射前のキャパシタ構造20のCV特性において、印加電圧Vに応じて最大値となる時の静電容量Cから導出することができる。
【0077】
なお、本実施形態2における第1のCV特性測定工程(ステップS101)では、半導体12の層と電荷遮断層23と絶縁体11の層との積層によって形成された積層体25をCV特性測定装置21の透明電極2aと支持電極2bとの間に介在させ、これによってキャパシタ構造20を形成していたが、本実施形態2に係るCV特性測定方法は、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態2に係るCV特性測定方法では、予め支持電極2b上に半導体12の層を固定配置しておき、この支持電極2b上の半導体12の層と透明電極2aとの間に、光照射前の絶縁体11と電荷遮断層23との積層体を介在させることにより、光照射前のキャパシタ構造20を形成してもよい。或いは、予め支持電極2b上に半導体12の層と電荷遮断層23との積層体を固定配置しておき、この支持電極2b上の積層体における電荷遮断層23と透明電極2aとの間に、光照射前の絶縁体11を介在させることにより、光照射前のキャパシタ構造20を形成してもよい。
【0078】
上記の手法により、積層体25を準備する手間を低減することができ、簡便に測定サンプルを準備することができる。これに加え、光照射後のキャパシタ構造20のCV特性を測定完了する毎に複数の絶縁体11を順次切り替えてキャパシタ構造20を形成し直した場合であっても、CV特性が測定される複数のキャパシタ構造20の間で半導体12の特性差を無くすことができる。これにより、CV特性の測定誤差を低減できることから、キャパシタ構造20のCV特性を精度良く測定することができ、延いては、絶縁体11の光励起電荷量Qを精度よく導出することができる。
【0079】
以上、説明したように、本発明の実施形態2では、CV特性の測定対象となるキャパシタ構造20を形成するための積層体25における絶縁体11の層と半導体12の層との間に、絶縁体11に比して電気抵抗の高い電荷遮断層23を介在させ、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、光励起によって絶縁体11中に発生した電荷が半導体12の層側へ逃げることを防止することができ、これにより、光照射後のキャパシタ構造20のCV特性を測定する際に、静電容量Cの測定値のばらつきを抑制することができる。この結果、光照射の影響によって光照射前のCV特性からシフトする光照射後のCV特性のシフト量(すなわちフラットバンド電圧差ΔVFB)を精度よく導出することができ、延いては、絶縁体11の光励起電荷量Qを精度よく導出することができる。
【0080】
<実施形態3>
(CV特性測定装置)
つぎに、本発明の実施形態3に係るCV特性測定装置について説明する。
図5は、本発明の実施形態3に係るCV特性測定装置の一構成例を示す模式図である。
図5に示すように、本実施形態3に係るCV特性測定装置31は、上述した実施形態2に係るCV特性測定装置21の構成に加え、さらに、光源3から発光される光3aの波長を可変にするための波長変更部33を備える。その他の構成は実施形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0081】
波長変更部33は、光源3から発光される光3aの波長を変化させるものである。詳細には、波長変更部33は、プリズムまたは回折格子に例示される分光器等によって構成され、
図5に示すように、光源3の発光部側に設けられる。波長変更部33は、光源3からの光を受光し、受光した光を、連続する複数の波長帯域の光3aに分光する。波長変更部33は、このように分光した複数の波長帯域の光3aを、所定の順序で波長帯域別に順次出力する。すなわち、光源3から波長変更部33を介して出力された光3aは、所定の順序で波長を連続的に変化させながら、積層体25の絶縁体11に照射される。なお、波長変更部33は、短波長側から長波長側へ波長を連続的に変えながら光3aを順次出力してもよいし、長波長側から短波長側へ波長を連続的に変えながら光3aを順次出力してもよい。
【0082】
(キャパシタ構造のCV特性の測定方法)
つぎに、本発明の実施形態3に係るCV特性測定方法について説明する。本実施形態3に係るCV特性測定方法は、波長変更部33によって波長が連続的に変更された光3aを波長帯域別に順次、絶縁体11に照射すること以外、上述した実施形態2と同様である。すなわち、本実施形態3に係るCV特性測定方法が適用される光励起電荷量測定方法では、波長変更部33によって連続的に変更される光3aの波長帯域毎に、
図3に示したステップS101~S106の各工程が順次繰り返し行われる。本実施形態3に係るCV特性測定方法では、波長変更部33によって連続的に変更される光3aの波長帯域毎に、少なくともステップS103、S104の各工程が繰り返し行われる。
【0083】
例えば、光源3から発光され且つ波長変更部33によって分光された複数の波長帯域の光3aのうち、第1の波長帯域の光が絶縁体11に照射される場合、この第1の波長帯域の光について、上述したステップS101~S106の各工程が行われる。続いて、これら複数の波長帯域の光3aのうち、上記第1の波長帯域から連続する第2の波長帯域の光が絶縁体11に照射される場合、この第2の波長帯域の光について、上述したステップS101~S106の各工程が再度行われる。このように、ステップS101~S106の各工程は、波長変更部33が光3aの波長を変更し終えるまで繰り返し行われる。この結果、本実施形態3では、連続する光3aの波長帯域別に、光照射前および光照射後のキャパシタ構造20の各CV特性と、フラットバンド電圧VFB1、VFB2と、フラットバンド電圧差ΔVFBおよび電荷蓄積状態の静電容量CIと、絶縁体11の光励起電荷量Qとが得られる。
【0084】
以上、説明したように、本発明の実施形態3では、光源3から発光される光3aの波長を波長変更部33によって変化させながら、複数の波長帯域の光3aを絶縁体11に対して波長帯域別に順次照射し、絶縁体11に照射する光3aの波長帯域毎に、光励起電荷量測定方法の各工程(CV特性測定方法の各工程を含む)を繰り返し行うようにし、その他を実施形態2と同様に構成している。このため、上述した実施形態2と同様の作用効果を享受するとともに、絶縁体11に照射する光3aの複数の波長帯域別に、絶縁体11の光励起電荷量Qの導出に必要なCV特性等の物理データが得られることから、絶縁体11の光励起電荷量Qの照射光波長に対する依存性を評価することが可能となる。
【0085】
<実施形態4>
(CV特性測定装置)
つぎに、本発明の実施形態4に係るCV特性測定装置について説明する。
図6は、本発明の実施形態4に係るCV特性測定装置の一構成例を示す模式図である。
図6に示すように、本実施形態4に係るCV特性測定装置41は、上述した実施形態2に係るCV特性測定装置21の透明電極2aに代えて可動型の電極(例えば水銀プローブ42a)を備える。すなわち、本実施形態4において、CV特性測定装置41には、CV特性の測定対象として、上述した実施形態2におけるキャパシタ構造20の代わりに、水銀プローブ42aと支持電極2bと積層体25とを含むキャパシタ構造40が形成される。その他の構成は実施形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0086】
水銀プローブ42aは、少なくとも絶縁体11の層と半導体12の層とを含む積層体(本実施形態4では積層体25)に対して絶縁体11の層側から離間可能に接触する可動型の電極の一例である。詳細には、水銀プローブ42aは、弾力性と導電性とを兼ね備える水銀流体を内包する円筒等の筒状構造体等によって構成される電極であり、
図6に示すように、支持電極2bと対向するように配置される。また、水銀プローブ42aは、駆動部(図示せず)を有し、支持電極2bに対して接近または離間する接離方向(例えば
図6中の太線両側矢印で示される方向)に移動可能である。水銀プローブ42aは、例えば支持電極2b上に配置された積層体25の絶縁体11に向かって移動し、筒状構造体から露出させた水銀流体を絶縁体11の表面に当てることによって絶縁体11と接触する。また、水銀プローブ42aは、上記水銀流体を絶縁体11の表面から離す方向に移動することによって、絶縁体11から離間する。本実施形態4における水銀プローブ42aでは、絶縁体11の表面から水銀プローブ42aを離間させた場合に水銀流体の一部分が絶縁体11の表面上に残らないよう、水銀流体の粘度や筒状構造体の内径等が設定されている。このような水銀プローブ42aは、
図6に示すように、配線等を介して、直流バイアス電源4、交流電源5および測定部8(本実施形態4では静電容量測定器6および電圧計7)と電気的に接続されている。
【0087】
キャパシタ構造40は、
図6に示すように、水銀プローブ42aと支持電極2bとの間に積層体25をその層厚方向に挟むことによって形成される。本実施形態4において、光源3による光照射前のキャパシタ構造40は、水銀プローブ42aと支持電極2bと光照射前の積層体25とによって形成される。光源3による光照射後のキャパシタ構造40は、水銀プローブ42aと支持電極2bと光照射後の積層体25とによって形成される。
【0088】
(キャパシタ構造のCV特性の測定方法)
つぎに、本発明の実施形態4に係るCV特性測定方法について説明する。本実施形態4に係るCV特性測定方法は、測定サンプルとしての絶縁体11の表面に接触させる第1の電極が透明電極2aから可動型の水銀プローブ42aに置き換わったこと以外、上述した実施形態2と同様である。すなわち、本実施形態4に係るCV特性測定方法が適用される光励起電荷量測定方法は、上記第1の電極として水銀プローブ42aを用い、
図3に示したステップS101~S106の各工程を順次行うことによって実現される。本実施形態4に係るCV特性測定方法は、絶縁体11の光励起電荷量Qの測定に必要なキャパシタ構造40のCV特性を測定する方法であり、上述したCV特性測定装置41(
図6参照)を用いて例えば
図3に示した少なくともステップS103、S104の各工程を行うことによって実現される。
【0089】
詳細には、本実施形態4における第1のCV特性測定工程(ステップS101)では、CV特性測定装置41の支持電極2b上に積層体25が載置され、この積層体25における絶縁体11の層に水銀プローブ42aを接触させることにより、光照射前のキャパシタ構造40が形成される。なお、積層体25の形成については、上述した実施形態2と同様である。
【0090】
このステップS101において、CV特性測定装置41は、静電容量測定器6および電圧計7によって光照射前のキャパシタ構造40のCV特性を測定する。ステップS101におけるCV特性測定装置41によるCV特性の測定は、絶縁体11の層と接触させる透明電極2aが水銀プローブ42aに置き換わったこと以外、上述した実施形態2と同様である。すなわち、このステップS101では、光照射前のキャパシタ構造40の静電容量Cが静電容量測定器6によって測定され、光照射前のキャパシタ構造40の印加電圧Vが電圧計7によって測定される。光照射前のキャパシタ構造40のCV特性は、この静電容量測定器6による光照射前のキャパシタ構造40の静電容量Cと、この電圧計7による光照射前のキャパシタ構造40の印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y1(
図2参照)によって表される。
【0091】
続いて、本実施形態4における第1のフラットバンド電圧導出工程(ステップS102)では、上述したステップS101で測定された光照射前のキャパシタ構造40のCV特性をもとに、フラットバンド電圧VFB1が導出される。このフラットバンド電圧VFB1の導出処理は、光照射前のキャパシタ構造40のCV特性を用いること以外、上述した実施形態2と同様である。
【0092】
続いて、本実施形態4における光照射工程(ステップS103)では、CV特性測定装置41は、積層体25から水銀プローブ42aを離間させて、この積層体25に絶縁体11の層側から光源3による光3aを照射する。このステップS103において、水銀プローブ42aは、積層体25に対して離間可能に接触する可動型の電極の一例であり、光源3によって積層体25に光3aが照射される際に積層体25から離間する。詳細には、水銀プローブ42aは、絶縁体11の表面から水銀流体を離す方向に移動することにより、積層体25における絶縁体11の層から離間する。上記のように水銀プローブ42aが絶縁体11の層から離間した後、光源3は、光照射前の積層体25に対し、絶縁体11の層側から光3aを照射する。この際、光源3は、絶縁体11の少なくとも測定対象部分を含む表面部分(好ましくは絶縁体11の表面全域)に光3aを照射する。なお、絶縁体11の測定対象部分は、絶縁体11の表面全域のうち水銀プローブ42aに接触される部分である。光源3からの光3aが照射された絶縁体11中には、光励起による電荷が発生する。絶縁体11中の光励起による電荷は、電荷遮断層23によって半導体12の層側への移動が遮断されるため、絶縁体11中に蓄積される。
【0093】
続いて、本実施形態4における第2のCV特性測定工程(ステップS104)では、上述した光照射前の積層体25に対して光源3からの光3aが照射されたものが、光照射後の積層体25になる。ステップS104において、CV特性測定装置41は、水銀プローブ42aと支持電極2bと光照射後の積層体25とによって光照射後のキャパシタ構造40を形成し、静電容量測定器6および電圧計7によって光照射後のキャパシタ構造20のCV特性を測定する。詳細には、水銀プローブ42aは、光源3による光照射後の積層体25に対して絶縁体11の層側から接触する。すなわち、水銀プローブ42aは、光照射後の積層体25の絶縁体11に向かって移動し、この絶縁体11の表面に水銀流体を当てることにより、光照射後の積層体25における絶縁体11の層に接触する。この結果、本実施形態4における光照射後のキャパシタ構造40が形成される。
【0094】
ステップS104におけるCV特性測定装置41によるCV特性の測定は、光照射後の絶縁体11の層と接触している第1の電極が透明電極2aから水銀プローブ42aに置き換わったこと以外、すなわち、CV特性の測定対象が光照射後のキャパシタ構造40であること以外、上述した実施形態2と同様である。このようなステップS104では、光照射後のキャパシタ構造40の静電容量Cが静電容量測定器6によって測定され、光照射後のキャパシタ構造40の印加電圧Vが電圧計7によって測定される。光照射後のキャパシタ構造40のCV特性は、この静電容量測定器6による光照射後のキャパシタ構造40の静電容量Cと、この電圧計7による光照射後のキャパシタ構造40の印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y2(
図2参照)によって表される。
【0095】
続いて、本実施形態4における第2のフラットバンド電圧導出工程(ステップS105)では、上述したステップS104で測定された光照射後のキャパシタ構造40のCV特性をもとに、フラットバンド電圧VFB2が導出される。このフラットバンド電圧VFB2の導出処理は、光照射後のキャパシタ構造40のCV特性を用いること以外、上述した実施形態2と同様である。
【0096】
本実施形態4に係るCV特性測定方法は、本実施形態4におけるステップS101~S105の各工程を含むものである。このCV特性測定方法の各工程を実行後、上述した実施形態2の場合と同様に、ステップS106の光励起電荷量導出工程が行われ、本実施形態4における光励起電荷量測定方法が終了する。
【0097】
本実施形態4の光励起電荷量導出工程(ステップS106)は、本実施形態4のステップS102によるフラットバンド電圧VFB1と本実施形態4のステップS105によるフラットバンド電圧VFB2とを用いること以外、上述した実施形態2と同様である。すなわち、このステップS106により、本実施形態4のキャパシタ構造40における絶縁体11の光励起電荷量Qが、上記のフラットバンド電圧VFB1、VFB2、電荷蓄積状態の静電容量CIおよび式(1)、(2)をもとに導出される。本実施形態4において、電荷蓄積状態の静電容量CIは、例えば、光照射前のキャパシタ構造40に含まれる半導体12の層に電荷が蓄積された状態における静電容量である。このような電荷蓄積状態の静電容量CIは、キャパシタ構造40の絶縁領域(本実施形態4では絶縁体11の層および電荷遮断層23の領域)の静電容量と一致し、光照射前のキャパシタ構造40のCV特性において、印加電圧Vに応じて最大値となる時の静電容量Cから導出することができる。
【0098】
なお、本実施形態4における第1のCV特性測定工程(ステップS101)では、半導体12の層と電荷遮断層23と絶縁体11の層との積層によって形成された積層体25をCV特性測定装置41の支持電極2b上に配置し、この積層体25の絶縁体11と水銀プローブ42aとを接触させることによってキャパシタ構造40を形成していたが、本実施形態4に係るCV特性測定方法は、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態4に係るCV特性測定方法では、予め支持電極2b上に半導体12の層を固定配置しておき、この支持電極2b上の半導体12の層と水銀プローブ42aとの間に、光照射前の絶縁体11と電荷遮断層23との積層体を介在させることにより、光照射前のキャパシタ構造40を形成してもよい。或いは、予め支持電極2b上に半導体12の層と電荷遮断層23との積層体を固定配置しておき、この支持電極2b上の積層体における電荷遮断層23と水銀プローブ42aとの間に、光照射前の絶縁体11を介在させることにより、光照射前のキャパシタ構造40を形成してもよい。
【0099】
上記の手法により、積層体25を準備する手間を低減することができ、簡便に測定サンプルを準備することができる。これに加え、光照射後のキャパシタ構造40のCV特性を測定完了する毎に複数の絶縁体11を順次切り替えてキャパシタ構造40を形成し直した場合であっても、CV特性が測定される複数のキャパシタ構造40の間で半導体12の特性差を無くすことができる。これにより、CV特性の測定誤差を低減できることから、キャパシタ構造40のCV特性を精度良く測定することができ、延いては、絶縁体11の光励起電荷量Qを精度よく導出することができる。
【0100】
以上、説明したように、本発明の実施形態4では、積層体25に対して絶縁体11の層側から接触する第1の電極として、積層体25に対して離間可能に接触する可動型の電極を用い、積層体25から可動型の電極を離間させて、積層体25に絶縁体11の層側から光源3による光3aを照射し、可動型の電極と支持電極2bと光照射後の積層体25とによって光照射後のキャパシタ構造40を形成し、光照射後のキャパシタ構造40のCV特性を測定するようにし、その他を実施形態2と同様に構成している。このため、上述した実施形態2と同様の作用効果を享受するとともに、絶縁体11の表面全域のうち電極を接触させる部分を含む広範囲の表面部分に対して光照射することができ、この結果、光照射後の絶縁体11を含むキャパシタ構造40のCV特性をより容易に測定することができる。また、上記可動型の電極として水銀プローブ42aを用いているので、絶縁体11の光照射の対象面にプローブ電極の接触傷や圧痕がつくことを防止することができる。この結果、光照射後の絶縁体11を含むキャパシタ構造40のCV特性を安定して測定することができる。
【0101】
なお、上述した実施形態1~4では、筐体9によって形成される暗室の内部に、CV特性測定装置を構成する第1の電極、第2の電極、光源、直流バイアス電源、交流電源、静電容量測定器および電圧計と、これらの第1の電極と第2の電極との間に介在させる積層体とを収容していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上記暗室の内部には、CV特性を測定するために光照射において外光を遮断する必要があるもの、すなわち、少なくとも、測定対象であるキャパシタ構造を構成する第1の電極、第2の電極および積層体と、光照射の光源とを収容するようにしてもよい。
【0102】
また、上述した実施形態3、4では、測定対象の絶縁体11を含む積層体として、半導体12の層と電荷遮断層23と絶縁体11の層とからなる積層体25を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、光源3からの光3aの波長を変化させる波長変更部33を備える実施形態3のCV特性測定装置31において、CV特性が測定されるキャパシタ構造20は、透明電極2aと支持電極2bとの間に、半導体12の層と絶縁体11の層とからなる積層体15を介在させて形成されるものであってもよい。また、絶縁体11と離間可能に接触させる可動型の電極として水銀プローブ42aを備える実施形態4のCV特性測定装置41において、CV特性が測定されるキャパシタ構造40は、水銀プローブ42aと支持電極2bとの間に、半導体12の層と絶縁体11の層とからなる積層体15を介在させて形成されるものであってもよい。すなわち、本発明に係るCV特性測定装置は、上述した実施形態1~4を適宜組み合わせたものであってもよい。
【0103】
また、上述した実施形態4では、絶縁体11と離間可能に接触させる可動型の電極として水銀プローブ42aを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、当該可動型の電極は、水銀プローブ42aに限らず、水銀プローブ42a以外の電極であってもよい。
【実施例】
【0104】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例等によって限定されるものではない。
【0105】
<実施例1>
実施例1では、上述した実施形態4に係るCV特性測定装置41(
図6参照)を用い、測定サンプルについてCV特性の測定を行った。実施例1の測定サンプルは、P型シリコンウェハ(半導体12の一例)の上にポリイミド膜(絶縁体11の一例)を積層してなる積層体とした。この積層体におけるポリイミド膜の厚さは、1[μm]とした。水銀プローブ42aの電極直径は、0.17[cm]である。実施例1において、測定サンプルは、光源3からの光3a(照射光)以外の外光を遮断するために、CV特性測定装置41の筐体9による暗室内に保管した。この測定サンプルに対するCV特性の測定は、この暗室内で行った。
【0106】
実施例1におけるCV特性の測定では、CV特性測定装置41の支持電極2b上に、P型シリコンウェハが支持電極2bと接触する向きで測定サンプルを載置し、この測定サンプルにおけるポリイミド膜の表面に水銀プローブ42aを下して接触させた。これにより、支持電極2bとP型シリコンウェハとポリイミド膜と水銀プローブ42aとからなるキャパシタ構造を形成した。続いて、CV特性測定装置41は、このキャパシタ構造に対し、直流バイアス電源4によって直流バイアス電圧を印加し、且つ、交流電源5によって交流電圧を印加した。このとき、直流バイアス電圧は、-50[V]以上50[V]以下とした。交流電圧の周波数は、100[kHz]とした。CV特性測定装置41は、この状態におけるキャパシタ構造の静電容量Cおよび印加電圧Vを静電容量測定器6および電圧計7によって各々測定し、これにより、このキャパシタ構造のCV特性を測定した。
【0107】
図7は、本発明の実施例1におけるCV特性の測定結果の一例を示す図である。実施例1では、
図7に示すように、光照射前のキャパシタ構造の静電容量Cと印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y1が、この光照射前のキャパシタ構造のCV特性として得られた。また、この得られた相関線Y1に基づいて、
図7に示すように、光照射前のキャパシタ構造のフラットバンド電圧V
FB1を導出することができた。
【0108】
その後、CV特性測定装置41は、キャパシタ構造のポリイミド膜に接触させていた水銀プローブ42aを当該ポリイミド膜から離間させ、この水銀プローブ42aが外されたポリイミド膜の表面に対し、光源3によって光3aを照射した。このとき、光3aは、波長が470[nm]であるLED光とした。光3aの強度は、4[μW/cm
2]とした。光3aの照射時間は、30分間とした。この状態において、CV特性測定装置41は、光照射前のCV特性と同様の条件で、光照射後のキャパシタ構造の静電容量Cおよび印加電圧Vを静電容量測定器6および電圧計7によって各々測定し、これにより、この光照射後のキャパシタ構造のCV特性を測定した。この結果、
図7に示すように、光照射後のキャパシタ構造の静電容量Cと印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y2が、この光照射後のキャパシタ構造のCV特性として得られた。また、この得られた相関線Y2に基づいて、
図7に示すように、光照射後のキャパシタ構造のフラットバンド電圧V
FB2を導出することができた。
【0109】
続いて、実施例1では、これら光照射前および光照射後の各フラットバンド電圧V
FB1、V
FB2を用い、上述した式(1)に基づいて、
図7に示すフラットバンド電圧差ΔV
FBを導出した。得られたフラットバンド電圧差ΔV
FBは、14.7[V]であった。また、実施例1における光照射前のキャパシタ構造のCV特性(
図7に示す相関線Y1参照)に基づいて、電荷蓄積状態の静電容量C
Iを導出した。得られた静電容量C
Iは、105.3[pF]であった。このように得られたフラットバンド電圧差ΔV
FBおよび静電容量C
Iを用い、上述した式(2)に基づいて、上記ポリイミド膜の光励起電荷量Qを導出することができた。得られた光励起電荷量Qは、上記ポリイミド膜中で光励起によって増加した電荷量であり、1.5×10
-9[C]であった。
【0110】
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同様にCV特性測定装置41を用い、測定サンプルについてCV特性の測定を行った。実施例2の測定サンプルは、電荷遮断層23の一例である熱酸化膜(SiO2)を実施例1と同様のP型シリコンウェハの表面に積層し、この熱酸化膜の上に、実施例1と同様のポリイミド膜を積層してなる積層体とした。すなわち、この積層体において、熱酸化膜は、P型シリコンウェハとポリイミド膜との間に介在している。この熱酸化膜の厚さは、50[nm]とした。この熱酸化膜の体積抵抗値は、上記ポリイミド膜の体積抵抗値(=1×1017[Ω・cm])に比べて高い値であり、具体的には、1×1018[Ω・cm]であった。また、CV特性測定装置41の水銀プローブ42aは、実施例1と同様にとした。実施例2における測定サンプルは、実施例1と同様に、外光を遮断するためにCV特性測定装置41の筐体9による暗室内に保管した。この測定サンプルに対するCV特性の測定は、この暗室内で行った。
【0111】
実施例2におけるCV特性の測定では、CV特性測定装置41の支持電極2b上に、P型シリコンウェハが支持電極2bと接触する向きで測定サンプルを載置し、この測定サンプルにおけるポリイミド膜の表面に水銀プローブ42aを下して接触させた。これにより、支持電極2bとP型シリコンウェハと熱酸化膜とポリイミド膜と水銀プローブ42aとからなるキャパシタ構造を形成した。続いて、CV特性測定装置41は、このキャパシタ構造に対し、直流バイアス電源4によって直流バイアス電圧を印加し、且つ、交流電源5によって交流電圧を印加した。このとき、直流バイアス電圧は、-50[V]以上100[V]以下とした。交流電圧の周波数は、100[kHz]とした。CV特性測定装置41は、この状態におけるキャパシタ構造の静電容量Cおよび印加電圧Vを静電容量測定器6および電圧計7によって各々測定し、これにより、このキャパシタ構造のCV特性を測定した。
【0112】
図8は、本発明の実施例2におけるCV特性の測定結果の一例を示す図である。実施例2では、
図8に示すように、光照射前のキャパシタ構造の静電容量Cと印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y1が、この光照射前のキャパシタ構造のCV特性として得られた。また、この得られた相関線Y1に基づいて、
図8に示すように、光照射前のキャパシタ構造のフラットバンド電圧V
FB1を導出することができた。
【0113】
その後、CV特性測定装置41は、キャパシタ構造のポリイミド膜に接触させていた水銀プローブ42aを当該ポリイミド膜から離間させ、この水銀プローブ42aが外されたポリイミド膜の表面に対し、光源3によって光3aを照射した。このとき、光3aは、波長が470[nm]であるLED光とした。光3aの強度は、4[μW/cm
2]とした。光3aの照射時間は、30分間とした。この状態において、CV特性測定装置41は、光照射前のCV特性と同様の条件で、光照射後のキャパシタ構造の静電容量Cおよび印加電圧Vを静電容量測定器6および電圧計7によって各々測定し、これにより、この光照射後のキャパシタ構造のCV特性を測定した。この結果、
図8に示すように、光照射後のキャパシタ構造の静電容量Cと印加電圧Vとの相関関係を示す相関線Y2が、この光照射後のキャパシタ構造のCV特性として得られた。また、この得られた相関線Y2に基づいて、
図8に示すように、光照射後のキャパシタ構造のフラットバンド電圧V
FB2を導出することができた。
【0114】
続いて、実施例2では、これら光照射前および光照射後の各フラットバンド電圧V
FB1、V
FB2を用い、上述した式(1)に基づいて、
図8に示すフラットバンド電圧差ΔV
FBを導出した。得られたフラットバンド電圧差ΔV
FBは、62.8[V]であった。また、実施例2における光照射前のキャパシタ構造のCV特性(
図8に示す相関線Y1参照)に基づいて、電荷蓄積状態の静電容量C
Iを導出した。得られた静電容量C
Iは、106.7[pF]であった。このように得られたフラットバンド電圧差ΔV
FBおよび静電容量C
Iを用い、上述した式(2)に基づいて、上記ポリイミド膜の光励起電荷量Qを導出することができた。得られた光励起電荷量Qは、上記ポリイミド膜中で光励起によって増加した電荷量であり、6.7×10
-9[C]であった。
【0115】
なお、本発明は、上述した実施形態1~4および実施例1、2によって限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1~4に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1、21、31、41 CV特性測定装置
2a 透明電極
2b 支持電極
3 光源
3a 光
4 直流バイアス電源
5 交流電源
6 静電容量測定器
7 電圧計
8 測定部
9 筐体
10、20、40 キャパシタ構造
11 絶縁体
12 半導体
15、25 積層体
23 電荷遮断層
33 波長変更部
42a 水銀プローブ
Y1、Y2 相関線