(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 81/04 20060101AFI20250304BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20250304BHJP
B29B 11/16 20060101ALI20250304BHJP
D01F 9/22 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
C08L81/04
C08K7/06
B29B11/16
D01F9/22
(21)【出願番号】P 2020546511
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032339
(87)【国際公開番号】W WO2021044935
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2019161064
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥田 治己
(72)【発明者】
【氏名】田中 文彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 潤
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141762(JP,A)
【文献】国際公開第2012/117975(WO,A1)
【文献】特開2009-197358(JP,A)
【文献】特開2012-097386(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244830(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B29B 11/00- 11/16
D01F 9/00- 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物において、炭素繊維の単繊維直径が6.0μm以上、引張弾性率Eが350~500GPa、引張弾性率E(GPa)とループ破断荷重A(N)が式(1)の関係を満たし、熱可塑性樹脂がポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリアリーレンスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、該炭素繊維の質量含有率Wfが15~55%であ
り、該炭素繊維がフィラメント数3000~60000の炭素繊維束からなり、該炭素繊維束表層の撚り角が2.0~30.5°である樹脂組成物。
A≧-0.0017×E+1.02 ・・・式(1)
【請求項2】
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物において、炭素繊維の単繊維直径が6.0μm以上、Raman分光法による結晶化パラメーターIv/Igが0.65以下、結晶化パラメーターIv/Igと引張弾性率E(GPa)が式(2)の関係を満たし、熱可塑性樹脂がポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリアリーレンスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、該炭素繊維の質量含有率Wfが15~55%であ
り、該炭素繊維がフィラメント数3000~60000の炭素繊維束からなり、該炭素繊維束表層の撚り角が2.0~30.5°である樹脂組成物。
E≧290×(Iv/Ig)
-0.23 ・・・式(2)
【請求項3】
炭素繊維のRaman分光法による結晶化パラメーターIv/Igが0.40以上である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
該炭素繊維の単繊維コンポジットの圧縮フラグメンテーション法による単繊維圧縮強度Fc(GPa)と結晶子サイズLc(nm)が式(3)の関係を満たす請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
Fc≧1.3×10/Lc-0.2 ・・・式(3)
【請求項5】
該炭素繊維の結晶配向度π
002が80.0~95.0%、結晶子サイズLcが2.2~3.5nmであり、結晶子サイズLc(nm)と結晶配向度π
002(%)が式(4)の関係を満たす請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
π
002≧4.0×Lc+73.2 ・・・式(4)
【請求項6】
炭素繊維と熱可塑性樹脂を溶融混練して得る樹脂組成物において、溶融混練前の該炭素繊維の長さが100mm以上である請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
該炭素繊維の450℃における加熱減量率が0.15%以下である請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
該炭素繊維の単繊維直径が6.5~8.5μmである請求項1~
7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物において、炭素繊維の単繊維直径が6.0μm以上、熱可塑性樹脂がポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリアリーレンスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、該炭素繊維の質量含有率Wfが15~55%であり、樹脂組成物の曲げ弾性率FM(GPa)と樹脂組成物中の炭素繊維の質量含有率Wf(%)ならびに炭素繊維の引張弾性率E(GPa)が式(5)および式(6)の関係を満た
し、該炭素繊維がフィラメント数3000~60000の炭素繊維束からなり、該炭素繊維束表層の撚り角が2.0~30.5°である樹脂組成物。
FM/Wf
0.5>6.8 ・・・式(5)
FM/Wf
0.5>0.01×E+3.00 ・・・式(6)
【請求項10】
曲げ弾性率FMが41~55GPaである請求項
9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形に適した炭素繊維を含む樹脂組成物であり、曲げ弾性率が高いうえに、複雑形状の部材を成形可能な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維複合材料、特に炭素繊維強化プラスチックは優れた力学特性を示すために、従来はアルミニウムなどの軽金属が適用されていた部材を代替する軽量材料として近年幅広く使用されている。しかしながら、炭素繊維強化プラスチックは優れた力学特性を発現させるために連続繊維または不連続繊維でも数mm以上の長さの繊維の状態で使用されることが多く、その場合では複雑形状に賦形することが困難である問題があった。一方で、複雑形状への賦形性に優れる射出成形を、炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂に対して適用すると一般に成形品の曲げ弾性率が低く、軽金属の代替としては満足できる力学特性ではなかった。
【0003】
炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂の射出成形品の曲げ弾性率を高めるためには、主に炭素繊維の含有率を高める方法、炭素繊維の繊維長を長く残すような成形を行う方法、炭素繊維の引張弾性率を高める方法が一般的である。これらの方法はほぼ独立の効果を発現するためにそれぞれ検討が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
炭素繊維の引張弾性率を高める方法では、市販の炭素繊維の中から単に引張弾性率の高い品種を選択している例が見受けられる。例えば、引張弾性率が295~390GPaの炭素繊維と特定の芳香族アミドを組み合わせることで炭素繊維の含有率40質量%のときに成形品の曲げ弾性率で39GPaに向上させている(特許文献1)。
【0005】
また、特定のポリアミド樹脂との組み合わせにおいて炭素繊維の引張弾性率を汎用の240GPa付近から290GPaまで高める方法が提案されている(特許文献2)。
【0006】
また、ポリフェニレンスルフィド樹脂と引張弾性率が390~450GPaの炭素繊維を用いることで、炭素繊維の含有率が31質量%のときに成形品の曲げ弾性率で37GPaまで向上させている(特許文献3)。
【0007】
また、引張弾性率が860GPaのピッチ系炭素繊維をポリアクリロニトリル系炭素繊維に組み合わせて使用する技術が提案されている(特許文献4)。
【文献】特開2006-1965号公報
【文献】特開2018-145292号公報
【文献】特開2017-190426号公報
【文献】特開2019-26808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献において提案された技術には次のような課題がある。
【0009】
特許文献1では成形品の曲げ弾性率を向上させる効果は見られるものの、汎用の炭素繊維である引張弾性率240GPaのものでは成形品の曲げ弾性率32GPaと、炭素繊維の引張弾性率が1.6倍になっても成形品の曲げ弾性率は1.2倍しか向上しない結果であり、効果が極めて小さいものであった。また、引張弾性率375GPaの炭素繊維を用いた場合にはRaman分光法による結晶化パラメーターが小さい、つまり炭素化温度が高い、ものであって、かつ単繊維直径が小さいためか、成形品の曲げ弾性率は39GPaであり、効果の小さなものであった。
【0010】
特許文献2では炭素繊維の含有率が45質量%のときに成形品の曲げ弾性率が33から35GPaまでしか向上できないものであった。
【0011】
特許文献3ではRaman分光法による結晶化パラメーターが小さい、つまり炭素化温度が高いものであって、かつ単繊維直径が小さいためか、炭素繊維の含有率31質量%のときだけでなく、56質量%まで高めたとしてもその使用量に対して成形品の曲げ弾性率は満足できる結果ではなかった。
【0012】
特許文献4では引張弾性率の高いピッチ系炭素繊維のみを用いたとしても成形品の曲げ弾性率は最大でも29GPaと満足できる結果ではなかった。
【0013】
上述したように、従来技術では汎用の引張弾性率の高い炭素繊維を用いる着想はあったものの、射出成形に適した炭素繊維について何ら示唆はなかった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明の樹脂組成物は、次のいずれかの構成を有する。すなわち、
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物において、炭素繊維の単繊維直径が6.0μm以上、引張弾性率Eが350~500GPa、引張弾性率E(GPa)とループ破断荷重A(N)が式(1)の関係を満たし、熱可塑性樹脂がポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリアリーレンスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、該炭素繊維の質量含有率Wfが15~55%であり、該炭素繊維がフィラメント数3000~60000の炭素繊維束からなり、該炭素繊維束表層の撚り角が2.0~30.5°である樹脂組成物(以下、第1の態様)、
A≧-0.0017×E+1.02 ・・・式(1)、
または、
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物において、炭素繊維の単繊維直径が6.0μm以上、Raman分光法による結晶化パラメーターIv/Igが0.65以下、結晶化パラメーターIv/Igと引張弾性率E(GPa)が式(2)の関係を満たし、熱可塑性樹脂がポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリアリーレンスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、該炭素繊維の質量含有率Wfが15~55%であり、該炭素繊維がフィラメント数3000~60000の炭素繊維束からなり、該炭素繊維束表層の撚り角が2.0~30.5°である樹脂組成物(以下、第2の態様)、
E≧290×(Iv/Ig)
-0.23
・・・式(2)
または、
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物において、炭素繊維の単繊維直径が6.0μm以上、熱可塑性樹脂がポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリアリーレンスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、該炭素繊維の質量含有率Wfが15~55%であり、樹脂組成物の曲げ弾性率FM(GPa)と樹脂組成物中の炭素繊維の質量含有率Wf(%)ならびに炭素繊維の引張弾性率E(GPa)が式(5)および式(6)の関係を満たし、該炭素繊維がフィラメント数3000~60000の炭素繊維束からなり、該炭素繊維束表層の撚り角が2.0~30.5°である樹脂組成物(以下、第3の態様)、である。
【0015】
FM/Wf0.5>6.8 ・・・式(5)
FM/Wf0.5>0.01×E+3.00 ・・・式(6)。
【0016】
本発明の成形品は、次の構成を有する。すなわち、
上記樹脂組成物を成形してなる成形品、である。
【0017】
本発明の第2の態様の樹脂組成物は、該炭素繊維のRaman分光法による結晶化パラメーターIv/Igが0.40以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の第1または第2の態様の樹脂組成物は、該炭素繊維の単繊維コンポジットの圧縮フラグメンテーション法による単繊維圧縮強度Fc(GPa)と結晶子サイズLc(nm)が式(3)の関係を満たすことが好ましい。
【0019】
Fc≧1.3×10/Lc-0.2 ・・・式(3)
本発明の第1または第2の態様の樹脂組成物は、該炭素繊維の結晶配向度π002が80.0~95.0%、結晶子サイズLcが2.2~3.5nmであり、結晶子サイズLc(nm)と結晶配向度π002(%)が式(4)の関係を満たすことが好ましい。
【0020】
π002≧4.0×Lc+73.2 ・・・式(4)
本発明の第1または第2の態様の樹脂組成物は、炭素繊維と熱可塑性樹脂を溶融混練して得る樹脂組成物において、溶融混練前の該炭素繊維の長さが100mm以上であることが好ましい。
【0021】
本発明の第1または第2の態様の樹脂組成物は、該炭素繊維の450℃における加熱減量率が0.15%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の第1または第2の態様の樹脂組成物は、該炭素繊維がフィラメント数3000~60000の炭素繊維束からなり、該炭素繊維束表層の撚り角が2.0~30.5°である。
【0023】
本発明の第1または第2の態様の樹脂組成物は、該炭素繊維の単繊維直径が6.0μm以上である。
【0024】
本発明の第1または第2の態様の樹脂組成物は、該炭素繊維の単繊維直径が6.5~8.5μmであることが好ましい。
【0025】
本発明の第3の態様の樹脂組成物は、該炭素繊維の質量含有率Wfが15~55%である。
【0026】
本発明の第3の態様の樹脂組成物は、該炭素繊維の曲げ弾性率FMが41~55GPaであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の樹脂組成物は、射出成形により複雑形状の部材に対する成形性が高いことに加えて、得られる成形品は曲げ弾性率および衝撃特性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の樹脂組成物には炭素繊維と熱可塑性樹脂が含まれる。
【0029】
まず、本発明に用いられる炭素繊維について説明する。
【0030】
本発明に用いられる炭素繊維は引張弾性率Eが350~500GPaである。炭素繊維の引張弾性率が高いほど、射出成形品の曲げ弾性率が高い傾向になる。引張弾性率が350GPaに満たない場合、射出成形品の曲げ弾性率を高めることができない。炭素繊維の引張弾性率が500GPaを超える場合、射出成形品の曲げ弾性率を向上させる効果が弱まる。炭素繊維の引張弾性率Eの下限は、好ましくは370GPa以上であり、より好ましくは380GPa以上である。炭素繊維の引張弾性率はJIS R7608:2004に記載の、樹脂含浸ストランドの引張試験に従って評価する。ストランド弾性率の評価法の詳細は後述する。
【0031】
本発明の第1の態様である樹脂組成物に用いられる炭素繊維は、引張弾性率E(GPa)とループ破断荷重A(N)が式(1)の関係を満たす炭素繊維である。
【0032】
A≧-0.0017×E+1.02 ・・・式(1)。
【0033】
式(1)における定数項は好ましくは1.04であり、より好ましくは1.06である。ループ破断荷重とは、単繊維をループ状に曲げていったとき破断が生じる際の荷重に相当し、後述の方法で評価する。通常、引張弾性率を高めるとループ破断荷重は低下傾向を示すことが多く、ループ破断荷重が低いと、射出成形時に曲げ方向の力により炭素繊維が折れやすく、繊維長が短くなることにより射出成形品の曲げ弾性率向上効果が小さくなる。本発明において、炭素繊維の引張弾性率を高めてもループ破断荷重が高い、上記式(1)の関係を満たす特定の炭素繊維を用いなければ、射出成形品の曲げ弾性率を効果的に高めることができない。
【0034】
本発明の第2の態様である樹脂組成物に用いられる炭素繊維は、炭素繊維のRaman分光法による結晶化パラメーターIv/Igが0.65以下の炭素繊維である。本発明のRaman分光法による結晶化パラメーターIv/Igは、炭素繊維の単繊維断面から得たRamanスペクトルの解析から評価する。詳しい評価手法は後述する。かかるRamanスペクトルは、1580cm-1付近にGバンド、1360cm-1付近にDバンド、1480cm-1付近にそれらのバンド間の谷ができる。Gバンドのピーク強度をIg、1480cm-1付近の最もスペクトル強度が弱まった部分をIvとして、その比が炭素繊維内部構造の結晶化の進行度を示す指標となる。市販されている炭素繊維であれば、引張弾性率380GPa付近のものはIv/Igが0.2未満であり、引張弾性率が230~290GPaのものはIv/Igが0.70以上である。かかるIv/Igが0.65以下だと十分に結晶化が進んでおり、炭素繊維の引張弾性率が高まっている。
【0035】
結晶化パラメーターIv/Igは炭素繊維製造時の炭素化最高温度により調整できる。結晶化パラメーターIv/Igの上限は、好ましくは0.60であり、より好ましくは0.55である。
【0036】
本発明の第2の態様である樹脂組成物に用いられる炭素繊維は、結晶化パラメーターIv/Igと引張弾性率E(GPa)が式(2)の関係を満たす炭素繊維である。
【0037】
E≧290×(Iv/Ig)-0.23 ・・・式(2)
結晶化パラメーターIv/Igが小さいほど、結晶化が進んでおり、炭素繊維の引張弾性率が高まっている。一般的な傾向としては、例えば東レ(株)製“TORAYCA”(登録商標)T700S-24000-50Eにおいて、Iv/Igは0.91、引張弾性率は230GPa、東レ(株)製“TORAYCA”(登録商標)M40J-12000-50Eにおいて、Iv/Igは0.18、引張弾性率は377GPa、東レ(株)製“TORAYCA”(登録商標)M55J-6000-50Eにおいて、Iv/Igは0.05、引張弾性率は536GPaというように、Iv/Igが小さいほど、引張弾性率が加速度的に高まる傾向にあり、これら2つのパラメーターの間には概ねべき乗の関係が認められる。結晶化が進むほど射出成形時に曲げ方向の力により炭素繊維が折れやすくなるため、本発明者らが検討したところ、式(2)を満たす炭素繊維であれば引張弾性率の高さと炭素繊維の折れにくさを高いレベルで維持できることがわかった。式(2)の物理的な意味は、引張弾性率の高さの割には結晶化が進んでいない炭素繊維を用いるのがよいということである。上記式(2)の関係を満たす特定の炭素繊維を用いることで、射出成形品の曲げ弾性率を効果的に高めることができる。射出成形品の曲げ弾性率をさらに効果的に高めることができる観点からは、式(2)の係数を290の代わりに300にすることが好ましい。
【0038】
本発明に用いられる炭素繊維において、結晶化パラメーターIv/Igの下限は、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.30以上であり、さらに好ましくは0.40以上である。かかる結晶化パラメーターIv/Igが0.25以上であると、炭素繊維自身の引張弾性率は極めて高いレベルではないものの、射出成形時の炭素繊維の折れにくさが一定以上であるため、結果として炭素繊維の引張弾性率のわりには射出成形品の曲げ弾性率を高いものとしやすい。
【0039】
本発明に用いられる炭素繊維において、結晶子サイズLcは好ましくは2.2~3.5nmであり、より好ましくは2.4~3.3nmであり、さらに好ましくは2.6~3.1nmである。結晶子サイズは炭素繊維中に存在する結晶子のc軸方向の厚みを表す指標であり、炭素化時の熱処理量に対応するが、熱処理を行うほど引張弾性率が高まりやすくなると同時に、射出成形時に炭素繊維が折れやすくなる傾向がある。結晶子サイズLcが上記の範囲であれば、炭素繊維の引張弾性率と折れやすさのバランスに優れる。結晶子サイズLcは、炭素繊維の広角X線回折により評価する。詳しい評価手法は後述する。
【0040】
本発明に用いられる炭素繊維において、結晶配向度π002は好ましくは80.0~95.0%であり、より好ましくは80.0~90.0%であり、さらに好ましくは82.0~90.0%である。結晶配向度π002とは、炭素繊維中に存在する結晶子の繊維軸を基準とした配向角を表す指標である。結晶子サイズ同様、広角X線回折により評価する。詳しい評価手法は後述する。結晶配向度が80.0%以上であれば射出成形時に炭素繊維が折れにくくなり、結晶配向度が95.0%以下であれば、炭素繊維の引張弾性率が満足できるものとなりやすい。
【0041】
本発明に好適に用いられる炭素繊維は結晶子サイズLc(nm)、単繊維コンポジットの圧縮フラグメンテーション法による単繊維圧縮強度Fc(GPa)の関係が以下の(3)式の範囲である。
【0042】
Fc≧1.3×10/Lc-0.2 ・・・(3)。
【0043】
本発明に用いられる炭素繊維は(3)式の右辺がより好ましくは1.3×10/Lc+0.1であり、さらに好ましくは1.3×10/Lc+0.5である。一般に、炭素繊維の結晶子サイズが高まるほど単繊維圧縮強度は低下する傾向にあることが知られている。これに対し、結晶子サイズから予想される従来のレベルよりも単繊維圧縮強度が高い炭素繊維を用いることで射出成形品の曲げ弾性率を効果的に高めることができる。炭素繊維は(3)式を満足することで、射出成形品の曲げ弾性率が満足する値を得ることができる。本発明で用いる単繊維コンポジットの圧縮フラグメンテーション法とは、炭素繊維の単繊維を樹脂に埋め込んだ炭素繊維強化複合材料(単繊維コンポジット)に圧縮歪みをステップワイズに与えながら各圧縮歪みでの繊維破断数を数えることで、炭素繊維の単繊維圧縮強度を調べることができるものである。繊維破断したときの単繊維コンポジット圧縮歪みから単繊維圧縮強度に変換するためには、単繊維コンポジット圧縮歪みと繊維圧縮歪みの差と、各繊維圧縮歪みでの弾性率非線形性を考慮する必要がある。そのため、単繊維圧縮応力は、ストランド引張試験(詳細は後述)で得た応力-歪み(S-S)曲線を、X軸を歪み、Y軸を応力として0≦y≦3の範囲で2次関数y=ax2+bx+cでフィッティングし、そのフィッティングラインを圧縮歪み側に延長したものを用いて求める。単繊維圧縮強度は、破断数は1個/10mmを超えた時点の単繊維圧縮応力とする。
【0044】
本発明に用いられる炭素繊維において、結晶子サイズLc(nm)と結晶配向度π00
2(%)は式(4)の関係を満たすことが好ましい。
【0045】
π002≧4.0×Lc+73.2 ・・・式(4)。
【0046】
発明者らが検討したところ、結晶子サイズLcが高まるほど結晶配向度π002が高まっていく傾向があり、式(4)は既知の炭素繊維のデータからその関係の上限を経験的に示している。通常、結晶子サイズLcが大きいほど、炭素繊維の引張弾性率は向上する一方で、ループ破断荷重や単繊維圧縮強度は低下傾向となることが多い。また、結晶配向度π002は射出成形品の曲げ弾性率に強く影響し、結晶配向度が高いほど射出成形品の曲げ弾性率も高くなる。結晶配向度π002が式(4)の関係を満たすことは、結晶子サイズLcの割には結晶配向度π002が大きいことを意味しており、炭素繊維の引張弾性率が高いときに、射出成形品の曲げ弾性率を効果的に高めることができ、工業的な価値が大きい。本発明において、式(4)における定数項はより好ましくは73.5であり、さらに好ましくは74.0である。
【0047】
本発明に用いられる炭素繊維は、450℃における加熱減量率が好ましくは0.15%以下であり、より好ましくは0.10%以下であり、さらに好ましくは0.07%以下である。本発明において、450℃における加熱減量率の詳しい測定方法は後述するが、測定対象の炭素繊維を一定量秤量し、450℃の温度に設定した不活性ガス雰囲気のオーブン中で15分間加熱した前後での質量変化率のことを指す。かかる条件下での加熱減量率が少ない炭素繊維は、高温にさらされた場合に熱分解する成分、例えばサイジング剤を含む量が少なく、加熱減量率が0.15%以下であると樹脂組成物への炭素繊維の分散性に優れるために射出成形品の曲げ弾性率が高くなりやすい。
【0048】
本発明に用いられる炭素繊維は、炭素繊維と熱可塑性樹脂を溶融混練して得る樹脂組成物において、溶融混練前の炭素繊維の長さが好ましくは100mm以上であり、より好ましくは1000mm以上である。射出成形時は取り扱い性の容易さから一般にチョップド炭素繊維と言われる数mmに切断された炭素繊維が用いられることが多い。炭素繊維の長さが小さい場合には連続繊維からチョップド炭素繊維に加工する1工程が増えるだけでなく、射出成形品の曲げ弾性率も低下しがちであるために好ましくない。そのため、射出成形に用いられる炭素繊維は連続繊維であることがより好ましく、本発明では1m以上連続した炭素繊維を実質的に連続繊維とする。
【0049】
本発明に用いられる炭素繊維は、フィラメント数3000~60000の炭素繊維束の形態を採る場合において、炭素繊維束表層の撚り角が2.0~30.5°であり、好ましくは4.8~30.5°であり、より好ましくは4.8~24.0°である。炭素繊維束表層の撚り角とは、炭素繊維束の最表層に存在する単繊維の繊維軸方向が、炭素繊維束の束としての長軸方向に対して成す角のことであり、直接観察してもよいが、より高精度には、撚り数とフィラメント数、単繊維直径から後述のように算出することができる。かかる撚り角を上記範囲内に制御すれば、集束性良く射出成形機に炭素繊維を投入できるために好ましく、長い繊維長のまま射出成形機に投入できるために射出成形品に含まれる繊維長が大きくできる。
【0050】
本発明に用いられる炭素繊維は単繊維直径が6.0μm以上であり、好ましくは6.5μm以上であり、より好ましくは6.9μm 以上である。単繊維直径が大きいほど、射出成形時に繊維が長く残りやすく、曲げ弾性率が高まりやすく、単繊維直径が6.0μm以上であると射出成形品の曲げ弾性率が高まりやすい。本発明において単繊維直径の上限に特に制限はないが、大きすぎると炭素繊維の引張弾性率が低くなることがあるため、15μm程度が一応の上限と考えればよい。また、8.5μm以下であれば、炭素繊維の引張弾性率と生産性とのバランスが良く、工業的な価値を高めやすい。単繊維直径の評価方法は後述するが、繊維束の比重・目付・フィラメント数から計算してもよいし、走査電子顕微鏡観察により評価してもよい。用いる評価装置が正しく校正されていれば、いずれの方法で評価しても同等の結果が得られる。走査電子顕微鏡観察により評価する際に、単繊維の断面形状が真円でない場合、円相当直径で代用する。円相当直径は単繊維の実測の断面積と等しい断面積を有する真円の直径のことを指す。
【0051】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリアリーレンスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることが好ましく、得られる成形品の曲げ弾性率の観点からはポリアミドおよびポリアリーレンスルフィドがより好ましく、特に、ポリアリーレンスルフィドがさらに好ましい。本発明に用いられる炭素繊維と組み合わせることで、熱可塑性樹脂種類の制約なく得られる成形品の曲げ弾性率等の力学特性を高めることができるので熱可塑性樹脂は幅広く選択できるが、成形品の力学特性を高めやすい熱可塑性樹脂、具体的には引張降伏応力が高く発現する熱可塑性樹脂を選択することで本発明の効果を得やすい。
【0052】
ポリオレフィンとしては、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと少なくとも1種のα-オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどとの共重合物が挙げられる。
【0053】
ポリアミドとしては、アミド基の繰り返しによって主鎖を構成するポリマーが挙げられ、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド610、ポリアミド612のような脂肪族ポリアミド、あるいはポリアミド6Tのような芳香族ポリアミドなどを挙げることができる。これらの混合物や複数の種類のポリアミド共重合体であってもよい。
【0054】
ポリアリーレンスルフィドとしては、その構成単位として、p-フェニレンスルフィド単位、m-フェニレンスルフィド単位、o-フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位よりなるものを挙げることができ、特にポリp-フェニレンスルフィドが好ましい。
【0055】
本発明における樹脂組成物は本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を加えることができる。添加剤としては、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、および射出成形に用いる石油樹脂が具体的に挙げられる。石油樹脂とは、ナフサの熱分解の際に副生される炭化水素化合物の重合物であり、芳香族炭化水素からなるC9留分を重合して得られるC9石油樹脂や、脂肪族炭化水素からなるC5留分を重合して得られるC5石油樹脂、およびC9留分およびC5留分を原料として共重合により得られるC5-C9共重合石油樹脂およびそれらの石油樹脂を無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、フェノールなどで変性した変性石油樹脂、などを挙げることができる。
【0056】
本発明の樹脂組成物の製造方法の第一の好ましい様態は、上記各成分を同時にまたは任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造するものであり、より好ましくは二軸押出機による溶融混練である。押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また、押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレートなどを挙げることができる。
【0057】
このとき炭素繊維を連続的に供給することが好ましく、熱可塑性樹脂を溶融混練した後に炭素繊維を供給することがより好ましい。
【0058】
本発明の樹脂組成物の製造方法の第二の好ましい様態は、上記石油樹脂を炭素繊維に先に付着させて、その後、熱可塑性樹脂を接着させる方法である。石油樹脂の付着工程は、繊維束に油剤、サイジング剤、マトリックス樹脂を付与するような公知の製造方法を用いることができるが、より具体的な例として、加熱した回転するロールの表面に、溶融した石油樹脂の一定厚みの被膜をコーティングし、このロール表面に炭素繊維を接着させながら走らせることで、炭素繊維の単位長さ当たりに所定量の石油樹脂を付着させる方法を挙げることができる。ロール表面への石油樹脂のコーティングに関しては、リバースロール、正回転ロール、キスロール、スプレー、カーテン、押出などの公知のコーティング装置の概念を応用することで実現できる。石油樹脂の炭素繊維への付着工程では、石油樹脂が溶融する温度において、石油樹脂の付着した炭素繊維に対して、ロールやバーで張力をかける、拡幅、集束を繰り返す、圧力や振動を加えるなどの操作で石油樹脂を炭素繊維束の単繊維間まで含浸するようにする。より具体的な例として、加熱された複数のロールやバーの表面に炭素繊維を接触するように通す方法を挙げることができる。
【0059】
さらに、炭素繊維と石油樹脂からなる石油樹脂付着炭素繊維が上述の熱可塑性樹脂に接して樹脂組成物が形成される。熱可塑性樹脂の配置工程としては、溶融した熱可塑性樹脂を石油樹脂付着炭素繊維に接するように配置する。より具体的には、押出機と電線被覆法用のコーティングダイを用いて、連続的に石油樹脂付着炭素繊維の周囲に熱可塑性樹脂を被覆するように配置していく方法や、ロール等で扁平化した石油樹脂付着炭素繊維の片面あるいは両面から押出機とTダイを用いて溶融したフィルム状の熱可塑性樹脂を配置し、ロール等で一体化させる方法を挙げることができる。
【0060】
上述の第一あるいは第二の好ましい様態で炭素繊維が熱可塑性樹脂と一体化された後は、ペレタイザーやストランドカッターなどの装置で例えば1~50mmの一定長に切断して用いることもある。この切断工程が熱可塑性樹脂の配置工程の後に連続的に設置されていてもよい。成形材料が扁平であったりシート状であったりする場合には、スリットして細長くしてから切断してもよい。スリットと切断を同時におこなうシートペレタイザーのようなものを使用してもよい。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、曲げ弾性率FMが好ましくは41~55GPaであり、より好ましくは44~55GPaである。曲げ弾性率はISO 178により測定されるものであり、部材のたわみにくさを示す剛性の主要因子である。曲げ弾性率が大きいほど使用する樹脂組成物を減らしても部材のたわみにくさを維持でき、部材軽量化に繋がる。曲げ弾性率が41GPa以上であれば、軽量金属の代表であるマグネシウム合金に匹敵する特性であり、満足できる結果である。曲げ弾性率は高いことに越したことはないが、55GPa以下であれば、マグネシウム合金の代替には十分な特性である。曲げ弾性率を上記の範囲に制御するためには上述の炭素繊維を用いることがポイントである。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、炭素繊維を好ましくは15~55質量%含み、より好ましくは25~50質量%含む。炭素繊維の質量含有率Wfは、用途や狙いの物性によって調整することができ、樹脂組成物の曲げ弾性率のみを考えるのであれば質量含有率を高めることが好ましい。炭素繊維の質量含有率は15質量%以上であれば樹脂組成物の曲げ弾性率が高く、55質量%以下であれば射出時の成形性を維持することができる。炭素繊維の質量含有率は投入した炭素繊維と熱可塑性樹脂およびその他添加成分との比率から計算することができる。
【0063】
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の曲げ弾性率FM(GPa)と樹脂組成物中の炭素繊維の質量含有率Wf(%)ならびに炭素繊維の引張弾性率E(GPa)が式(5)および式(6)の関係を満たす。
【0064】
FM/Wf0.5>6.8 ・・・式(5)
FM/Wf0.5>0.01×E+3.00 ・・・式(6)。
【0065】
曲げ弾性率は、炭素繊維の質量含有率Wfに依存するがWfには比例しないので経験的にWfの0.5乗の関係で規格化して用いている。FM/Wf0.5が6.8以下となって、式(5)の関係を満たさない場合には、炭素繊維の質量含有率に対して樹脂組成物の曲げ弾性率への向上効果が期待できない。また、式(6)の関係を満たさない場合には、炭素繊維の引張弾性率Eを高めても効果的に樹脂組成物の曲げ弾性率FMを高めることができない。上述の特許文献1~3の実施例に記載された樹脂組成物は式(5)および(6)を満たさないことを本発明者らは確認している。式(5)および(6)を満たすよう制御するためには、本発明で用いられる炭素繊維を選択する必要がある。
【0066】
本発明の樹脂組成物によって得られる成形品中の炭素繊維の数平均繊維長は好ましくは0.3~2mmであり、より好ましくは0.4~1mmである。かかる範囲とすることで、成形品における熱可塑性樹脂を炭素繊維が補強する効果を高め、成形品の力学特性を十分高めることができる。ここで、成形品中の数平均繊維長の測定方法について説明する。成形品に含有される炭素繊維の数平均繊維長の測定方法としては、例えば、溶解法、あるいは焼き飛ばし法により、成形品に含まれる樹脂成分を除去し、残った炭素繊維を濾別した後、顕微鏡観察により測定する方法がある。測定は炭素繊維を無作為に400本選び出し、その長さを1μm単位まで光学顕微鏡にて測定し、繊維長の合計を本数で除することで数平均繊維長を算出する。数平均繊維長を上記範囲に制御するためには、上述の射出成形時に折れにくい炭素繊維を用いることで達成できる。
【0067】
<炭素繊維の引張弾性率>
炭素繊維の引張弾性率は、JIS R7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に従い、次の手順に従い求める。ただし、炭素繊維の繊維束が撚りを有する場合、撚り数と同数の逆回転の撚りを付与することにより、解撚してから評価する。樹脂処方としては、“セロキサイド”(登録商標)2021P((株)ダイセル化学工業製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、温度125℃、時間30分を用いる。炭素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド強度およびストランド弾性率とする。なお、ストランド弾性率を算出する際の歪み範囲は0.1~0.6%とする。
<Raman分光法による結晶化パラメーターIv/Ig>
樹脂組成物を樹脂包埋し、研磨して炭素繊維の単繊維断面を露出させる。研磨ダメージによるRamanスペクトルへの影響を避けるため、研磨の最終段階で0.05μm径程度の研磨材を用いた仕上げ研磨を行う。炭素繊維の単繊維断面を無作為に5点選び、顕微Raman分光器を用いてRamanスペクトルを測定する。測定点は各単繊維断面の中心付近とする。励起波長は532nm、レーザー強度を1mW、測定範囲を900~2000cm-1、レーザー光を2μm径に絞り、測定時間を60秒×3回積算で行う。得られたスペクトルのベースラインを、1000cm-1と1800cm-1の散乱強度が0になるように、直線の関数を用いてオフセットし、Gバンドの高さをIg、1480cm-1付近の谷底の高さをIvとして結晶化パラメーターIv/Igを算出する。誤差の影響を最小化するため、Igを求める際は、Gバンドの目視での頂点付近から約±10cm-1の範囲を2次関数で最小自乗近似して、フィッティング関数のピークトップ強度をIgとする。Ivについても、1480cm-1付近の谷近辺に対して同様にしてIvを求める。本発明では、5点のIv/Igの平均値を用いる。
【0068】
なお、実施例において、包埋樹脂は“EpoKwick”(登録商標)FC(Buehler社製)を用い、研磨装置として“AutoMet”(登録商標)250Pro(Buehler社製)を用いた。研磨は、粗研磨を#320、#500、#700の研磨パッドを用いて行ったあと、仕上げ研磨を、研磨布として“MasterTex”(Buehler社製)、研磨剤として0.05μm径のアルミナ懸濁液を用いて行った。研磨ダメージの有無を確認するため、樹脂組成物を樹脂包埋するにあたり、常に東レ(株)製“TORAYCA”(登録商標)M40J-12000-50Eをブランクとして、研磨面に対して繊維軸が垂直になる方向で同時に方埋しておく。かかるM40Jに対して前記の方法で評価したIv/Igが0.18±0.02であれば研磨ダメージが最小化できており、そうでない場合は研磨をやり直す。
【0069】
<炭素繊維の平均単繊維直径>
評価したい炭素繊維の単繊維断面を走査電子顕微鏡観察し、断面積を評価する。かかる断面積と同じ断面積を有する真円の直径を算出し、単繊維直径とする。単繊維直径の算出のN数は50とし、その平均値を採用する。なお、加速電圧は5keVとする。
【0070】
なお、本発明では、走査電子顕微鏡として(株)日立ハイテクノロジーズ製の走査電子顕微鏡(SEM)S-4800を用いることができる。
【0071】
<炭素繊維束表層の撚り角>
水平面から60cmの高さの位置にガイドバーを設置し、炭素繊維束の任意の位置をガイドバーにテープで貼り付けることによって固定端とした後、固定端から50cm離れた箇所で炭素繊維束を切断し、自由端を形成する。自由端はテープに挟み込むように封入して、単繊維単位にほどけないように処理する。半永久的な撚り以外の一時的、あるいは時間と共に戻っていく撚りを排除するため、この状態で5分間静置したのち、回数を数えながら自由端を回転させてゆき、完全に解撚されるまでに回転させた回数n(ターン)を記録する。以下の式により、残存する撚り数を算出する。上記測定を3回実施した平均を、本発明における残存する撚り数とする。
【0072】
残存する撚り数(ターン/m)=n(ターン)/0.5(m)。
【0073】
前記単繊維直径(μm)およびフィラメント数から以下の式により炭素繊維束全体の直径(μm)を算出した後、撚り数(ターン/m)を用いて以下の式により、炭素繊維束表層の撚り角(°)を算出する。
【0074】
炭素繊維束全体の直径(μm)={(単繊維直径)2×フィラメント数}0.5
炭素繊維束表層の撚り角(°)=atan(繊維束全体の直径×10-6×π×撚り数)。
【0075】
<ループ破断荷重>
長さ約10cmの単繊維をスライドガラス上に置き、中央部にグリセリンを1~2滴たらして単繊維両端部を繊維周方向に軽くねじることで単繊維中央部にループを作り、その上にカバーガラスを置く。これを顕微鏡のステージに設置し、トータル倍率が100倍、フレームレートが15フレーム/秒の条件で動画撮影を行う。ループが視野から外れないようにステージを都度調節しながら、ループさせた繊維の両端を指でスライドガラス方向に押しつけつつ逆方向に一定速度で引っ張ることで、単繊維が破断するまで歪をかける。コマ送りにより破断直前のフレームを特定し、画像解析により破断直前のループの横幅Wを測定する。単繊維直径dをWで除してd/Wを算出する。試験のn数は20とし、d/Wの平均値に引張弾性率Eをかけ算することによりループ強度E×d/Wを求める。さらに、単繊維直径から求まる断面積πd2/4を乗じ、πE×d3/4Wをループ破断荷重とする。
【0076】
<炭素繊維の単繊維圧縮強度>
単繊維コンポジットの圧縮フラグメンテーション法による単繊維圧縮強度の測定は、次の(i)~(v)の手順で行う。
【0077】
(i)樹脂の調整
ビスフェノールA型エポキシ樹脂化合物“エポトート”(登録商標)YD-128(新日鐵化学(株)製)190質量部とジエチレントリアミン(和光純薬工業(株)製)20.7質量部を容器に入れてスパチュラでかき混ぜ、自動真空脱泡装置を用いて脱泡する。
【0078】
(ii)炭素繊維単繊維のサンプリングとモールドへの固定
20cm程度の長さの炭素繊維束をほぼ4等分し、4つの束から順番に単繊維をサンプリングする。このとき、束全体からできるだけまんべんなくサンプリングする。次に、穴あき台紙の両端に両面テープを貼り、サンプリングした単繊維に一定張力を与えた状態で穴あき台紙に単繊維を固定する。次に、ポリエステルフィルム“ルミラー”(登録商標)(東レ(株)製)を貼り付けたガラス板を用意して、試験片の厚さを調整するための2mm厚のスペーサーをフィルム上に固定する。そのスペーサー上に単繊維を固定した穴あき台紙を置き、さらにその上に、同様にフィルムを貼り付けたガラス板をフィルムが貼り付いた面を下向きにセットする。このときに繊維の埋め込み深さを制御するために、厚み70μm程度のテープをフィルムの両端に貼り付ける。
【0079】
(iii)樹脂の注型から硬化まで
上記(ii)の手順のモールド内(スペーサーとフィルムに囲まれた空間)に上記(i)の手順で調整した樹脂を流し込む。樹脂を流し込んだモールドを、あらかじめ50℃に昇温させたオーブンを用いて5時間加熱後、降温速度2.5℃/分で30℃の温度まで降温する。その後、脱型、カットをして2cm×7.5cm×0.2cmの試験片を得る。このとき、試験片幅の中央0.5cm幅内に単繊維が位置するように試験片をカットする。
【0080】
(iv)繊維埋め込み深さ測定
上記(iii)の手順で得られた試験片に対して、レーザーラマン分光光度計(日本分光(株)NRS-3200)のレーザーと532nmノッチフィルターを用いて繊維の埋め込み深さ測定を行う。まず、単繊維表面にレーザーを当て、レーザーのビーム径が最も小さくなるようにステージ高さを調整し、そのときの高さをA(μm)とする。次に試験片表面にレーザーを当て、レーザーのビーム径が最も小さくなるようにステージ高さを調整し、そのときの高さをB(μm)とする。繊維の埋め込み深さd(μm)は上記レーザーを使用して測定した樹脂の屈折率1.732を用いて、以下の式で計算する。
【0081】
d=(A-B)×1.732。
【0082】
(v)4点曲げ試験
上記(iii)の手順で得られた試験片に対して、外側圧子50mm間隔、内側圧子20mm間隔の治具を用いて4点曲げで圧縮歪みをかける。ステップワイズに0.1%毎に歪みを与え、偏光顕微鏡により試験片を観察し、試験片長手方向の中心部5mmの破断数を測定する。測定した破断数の2倍値を繊維破断数(個/10mm)とし、試験数30の平均繊維破断数が1個/10mmを超えた圧縮歪みから計算した圧縮応力を単繊維圧縮強度とする。また、試験片の中心から幅方向に約5mm離れた位置に貼り付けた歪みゲージを用いて単繊維コンポジット歪みε(%)を測定する。最終的な炭素繊維単繊維の圧縮歪みεcは、歪みゲージのゲージファクターκ、上記(iv)の手順で測定した繊維埋め込み深さd(μm)、残留歪み0.14(%)を考慮して以下の式で計算する。
【0083】
εc=ε×(2/κ)×(1-d/1000)-0.14。
【0084】
<炭素繊維束の450℃における加熱減量率>
評価対象となる炭素繊維束を質量2.5gとなるよう切断したものを直径3cm程度のカセ巻きにし、熱処理前の質量w0(g)を秤量する。次いで、温度450℃の窒素雰囲気のオーブン中で15分間加熱し、デシケーター中で室温になるまで放冷した後に加熱後質量w1(g)を秤量する。以下の式により、450℃における加熱減量率を計算する。なお、評価は3回行い、その平均値を採用する。
【0085】
450℃における加熱減量率(%)=(w0-w1)/w0×100(%)。
【0086】
<炭素繊維束の結晶子サイズLcおよび結晶配向度π002>
測定に供する炭素繊維束を引き揃え、コロジオン・アルコール溶液を用いて固めることにより、長さ4cm、1辺の長さが1mmの四角柱の測定試料を用意する。用意された測定試料について、広角X線回折装置を用いて、次の条件により測定を行う。
【0087】
[1]結晶子サイズLcの測定
・X線源:CuKα線(管電圧40kV、管電流30mA)
・検出器:ゴニオメーター+モノクロメーター+シンチレーションカウンター
・走査範囲:2θ=10~40°
・走査モード:ステップスキャン、ステップ単位0.02°、計数時間2秒。
【0088】
得られた回折パターンにおいて、2θ=25~26°付近に現れるピークについて、半値幅を求め、この値から、次のシェラー(Scherrer)の式により結晶子サイズを算出する。
【0089】
結晶子サイズ(nm)=Kλ/β0cosθB
ここで、
K:1.0、λ:0.15418nm(X線の波長)
β0:(βE
2-β1
2)1/2
βE:見かけの半値幅(測定値)rad、β1:1.046×10-2rad
θB:Braggの回析角。
【0090】
[2]結晶配向度π002の測定
上述した結晶ピークを円周方向にスキャンして得られる強度分布の半値幅から次式を用いて計算して求める。
【0091】
π002=(180-H)/180
ここで、
H:見かけの半値幅(deg)
上記測定を3回行い、その算術平均を、その炭素繊維束の結晶子サイズおよび結晶配向度とする。
【0092】
なお、後述の実施例および比較例においては、上記広角X線回折装置として、(株)島津製作所製XRD-6100を用いた。
【0093】
<成形品の曲げ試験>
ISO型ダンベル試験片について、ISO 178(2010)に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/分の試験条件にて曲げ強度を測定する。試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供する。n=6個の成形品について測定し、平均値で曲げ強度を求める。
【0094】
なお、後述の実施例および比較例においては、試験機として、“インストロン”(登録商標)万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。
【0095】
<成形品のシャルピー衝撃強度>
ISO型ダンベル試験片の平行部を切り出し、株式会社東京衡機試験機製C1?4?01型試験機を用い、ISO 179(2010)に準拠してVノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施し、衝撃強度(kJ/m2)を算出する。
【0096】
<成形品中に含まれる炭素繊維の数平均繊維長>
成形品の一部を切り出したサンプルを、電気炉を用いて空気中において、500℃の温度で30分間加熱して熱可塑性樹脂(A)と化合物(B)を十分に焼却除去して炭素繊維を分離する。分離した炭素繊維を、無作為に少なくとも400本以上抽出し、光学顕微鏡にてその長さを1μm単位まで測定して、次式により数平均繊維長(Ln)を求める。
【0097】
数平均繊維長(Ln)=(ΣLi)/Nf
ここで、
Li:測定した繊維長さ(i=1、2、3、・・・、n)
Nf:繊維長さを測定した総本数
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、熱可塑性樹脂は一種のみで代表させて特定の炭素繊維を適用したときの評価を行っているが、本発明は熱可塑性樹脂の種類を限定するものではない。
[実施例1]
アクリロニトリルおよびイタコン酸からなるポリアクリロニトリル共重合体を含む紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液を、紡糸口金から一旦空気中に吐出し、ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条を得た。また、その凝固糸条を水洗した後、90℃の温水中で3倍の浴中延伸倍率で延伸し、さらにシリコーン油剤を付与し、160℃の温度に加熱したローラーを用いて乾燥を行い、4倍の延伸倍率で加圧水蒸気延伸を行い、単繊維繊度1.1dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た。次に、得られた前駆体繊維束を4本合糸し、単繊維本数12,000本とし、空気雰囲気230~280℃のオーブン中で延伸比を1として熱処理し、耐炎化繊維束に転換した。得られた耐炎化繊維束に加撚処理を行い、45ターン/mの撚りを付与し、温度300~800℃の窒素雰囲気中において、延伸比1.0として予備炭素化処理を行い、予備炭素化繊維束を得た。次いで、かかる予備炭素化繊維束に、延伸比1.02、炭素化温度1900℃の条件で炭素化処理を施した後、サイジング剤は付与せず、炭素繊維束を得た。
【0099】
(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイを設置した長繊維強化樹脂ペレット製造装置を使用し、押出機シリンダー温度を330℃に設定し、熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイド樹脂(東レ(株)製“トレリナ”(登録商標)M2888)をメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。200℃にて加熱溶融させた固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製“jER”(登録商標)1004AF(E-2)、軟化点97℃)を、炭素繊維100質量部に対し、8.7質量部となるように吐出量を調整して付与した後、溶融した熱可塑性樹脂を含む組成物を吐出するダイス口(直径3mm)へ供給して、炭素繊維の周囲を被覆するように連続的に配置した。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断し、長繊維ペレットとした。この時、炭素繊維が30質量%となるように、引取速度を調整した。
【0100】
こうして得られた長繊維ペレットを、射出成形機((株)日本製鋼所製J110AD)を用いて、射出時間:5秒、背圧5MPa、保圧力:20MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:330℃、金型温度:130℃の条件で射出成形することにより、成形品としてのISO型ダンベル試験片を作製した。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。得られた試験片(成形品)を、特性評価に供した。前述の方法により評価した評価結果をまとめて表1に示した。
【0101】
【0102】
なお、表1中、式(1)~式(6)の各項において、「Yes」は各項の該当する式の関係を満たすことを意味し、「No」は各項の該当する式の関係を満たさないことを意味する。
[実施例2]
実施例1で得られた炭素繊維をさらに窒素雰囲気下2350℃、延伸比1.00で追加熱処理して得た炭素繊維を用いた以外は実施例1と同様に評価を行った。
[実施例3]
2350℃での追加熱処理における延伸比を1.02に変更した以外は実施例2と同様に評価を行った。
[実施例4]
樹脂組成物に含まれる炭素繊維の質量含有率を20質量%に変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。
[実施例5]
二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX-30α、L/D=31.5)を使用し、ポリフェニレンサルファイド樹脂をメインフィード、実施例1と同様の炭素繊維束をサイドフィードして各成分の溶融混練を行った。溶融混練はシリンダー温度290℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量10kg/時で行い、吐出物を引き取りながら水冷バスで冷却することでストランドとし、前記ガットを5mmの長さに切断することでペレットとした。
【0103】
射出成形機((株)日本製鋼所製J150EII-P)を使用し、前記ペレットの射出成形を行うことで各種評価用の試験片を作製した。射出成形は、シリンダー温度320℃、金型温度150℃で行った。得られた試験片は、150℃で2時間アニール処理した後に、空冷して各試験に供した。
[比較例1]
炭素繊維を東レ(株)製“TORAYCA”(登録商標)T700S-24000-50Eに変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。
[比較例2]
炭素繊維を東レ(株)製“TORAYCA”(登録商標)M40J-12000-50Eに変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。
[比較例3]
炭素繊維を東レ(株)製“TORAYCA”(登録商標)M50J-6000-50Eに変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。
[比較例4]
炭素繊維を東レ(株)製“TORAYCA”(登録商標)M55J-6000-50Eに変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。
[比較例5]
炭素繊維を東レ(株)製“TORAYCA”(登録商標)T700S-24000-50Eに変更し、樹脂組成物に含まれる炭素繊維を30質量%に変更した以外は実施例5と同様に評価を行った。
[比較例6]
炭素繊維を東レ(株)製“TORAYCA”(登録商標)T800S-24000-10Eに変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の樹脂組成物は、コンパウンド、ペレット、SMC(シートモールディングコンパウンド)、UD(単方向)テープなどの用途に幅広く用いることができる。これらの中間基材は最終的にはさまざまな部品・部材に用いることができ、特に、電気・電子機器、OA機器、家電機器、自動車の部品・内部部材および筐体などに好適である。