(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/21 20060101AFI20250304BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 129
B41J2/01 203
(21)【出願番号】P 2021027095
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 貴士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 脩平
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-020382(JP,A)
【文献】特開2011-068055(JP,A)
【文献】特開2019-010849(JP,A)
【文献】特開2018-144425(JP,A)
【文献】特開2005-153314(JP,A)
【文献】特開2012-232529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0302300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体及び第2液体を印刷媒体に吐出するヘッドと、
前記印刷媒体上の前記第1液体及び前記第2液体を硬化させるためのエネルギーを付与するエネルギー付与部と、
黒色の階調と有彩色の階調との対応関係を示す変換テーブルを記憶した記憶部を有する制御装置と、を備え、
前記第2液体は、黒色インクと3色の有彩色インクとを含み、
前記制御装置は、
前記第1液体を吐出させてから前記エネルギーを付与して前記印刷媒体に前記第1液体の下地を形成し、前記第2液体を吐出させてから前記エネルギーを付与して前記下地上に画像を印刷する第1モード、及び、
前記下地を形成せずに、前記第2液体を吐出させてから前記エネルギーを付与して前記印刷媒体上に画像を印刷する第2モードを有し、
前記第1モードにおいて画像を印刷するときに、当該画像を構成する複数のドットのうち、前記第2モードの印刷において前記黒色インクにより形成される黒色のドットの一部または全部を、前記変換テーブルに示された黒色の階調と有彩色の階調との対応関係に基づいて、前記3色の有彩色インクにより形成されるドットに置き換えて印刷することにより、前記第1モードにおいて画像を印刷するときの前記第2液体の吐出量を、前記第2モードにおいて当該画像と同じ画像を印刷するときの前記第2液体の吐出量よりも多くする、印刷装置。
【請求項2】
前記第1液体は白色インクである、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記エネルギー付与部は、前記印刷媒体上の前記第1液体及び前記第2液体を硬化するためのエネルギーを付与する、請求項1
又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
第1液体及び第2液体を印刷媒体に吐出するヘッドと、前記印刷媒体上の前記第1液体及び前記第2液体を硬化させるためのエネルギーを付与するエネルギー付与部と、黒色の階調と有彩色の階調との対応関係を示す変換テーブルを記憶した記憶部と、制御装置と、前記制御装置へ各種データを送信する外部装置と、を備えたシステムであって、
前記第2液体は、黒色インクと3色の有彩色インクとを含み、
前記制御装置は、
前記第1液体を吐出させてから前記エネルギーを付与して前記印刷媒体に前記第1液体の下地を形成し、前記第2液体を吐出させてから前記エネルギーを付与して前記下地上に画像を印刷する第1モード、及び、
前記下地を形成せずに、前記第2液体を吐出させてから前記エネルギーを付与して前記印刷媒体上に画像を印刷する第2モードを有し、
前記第1モードにおいて画像を印刷するときに、当該画像を構成する複数のドットのうち、前記第2モードの印刷において前記黒色インクにより形成される黒色のドットの一部または全部を、前記変換テーブルに示された黒色の階調と有彩色の階調との対応関係に基づいて、前記3色の有彩色インクにより形成されるドットに置き換えて印刷することにより、前記第1モードにおいて画像を印刷するときの前記第2液体の吐出量を、前記第2モードにおいて当該画像と同じ画像を印刷するときの前記第2液体の吐出量よりも多くする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置の一例として、特許文献1の画像記録装置が知られている。この画像記録装置は、インクを吐出する記録ヘッド、及び、記録媒体に着弾したインクに光を照射する光照射装置を備えている。この画像記録装置では、記録ヘッドから基本色インク及び白色インクを記録媒体に吐出し、記録媒体上のインクに光を照射することにより、記録媒体に画像を記録している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の画像記録装置では、例えば、透明な記録媒体において各種の基本色インクによって表現される画像を見やすく引き立たせるために、記録媒体の画像記録領域の全画素あるいは基本色インクにより記録されない画素に白色インクを吐出している。この際、記録媒体における画像が記録された部分のインク量が均一になるように、白色インクの吐出量が多い範囲では、白色インクが吐出されない範囲に比べて、基本インクの吐出量が少ない。このため、基本色インクによる色ムラやバンディングが発生してしまい、画質が低下してしまうおそれがある。
本発明はこのような事態に鑑み、色を重ねて印刷する部分における画質の低下を抑制することができる、印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様に係る印刷装置は、第1液体及び第2液体を印刷媒体に吐出するヘッドと、前記印刷媒体上の前記第1液体及び前記第2液体を硬化させるためのエネルギーを付与するエネルギー付与部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1液体を吐出させてから前記エネルギーを付与して前記印刷媒体に前記第1液体の下地を形成し、前記第2液体を吐出させてから前記エネルギーを付与して前記下地上に画像を印刷する第1モード、及び、前記下地を形成せずに、前記第2液体を吐出させてから前記エネルギーを付与して前記印刷媒体上に画像を印刷する第2モードを有し、前記第1モードにおいて画像を印刷するときの前記第2液体の吐出量を、前記第2モードにおいて当該画像と同じ画像を印刷するときの前記第2液体の吐出量よりも多くする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、色を重ねて印刷する部分における画質の低下を抑制することができる印刷装置を提供することが可能であるという効果を奏する。
【0007】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】光照射ユニットを備える印刷装置であって、筐体の蓋を開けた状態の斜視図である。
【
図2】
図1の印刷装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1のヘッドユニットを側方から視た図である。
【
図4】
図3のヘッドユニットを下方から視た図である。
【
図5】
図5(a)は、第2モードで印刷されたドットを示す図である。
図5(b)は、第2モードで印刷された画像Cが印刷された印刷媒体Aを示す図である。
図5(c)は、
図5(b)のVc-Vcにおける断面図である。
【
図6】
図6(a)は、第1モードで印刷されたドットを示す図である。
図6(b)は、第1モードで印刷された画像Cが印刷された印刷媒体Aを示す図である。
図6(c)は、
図6(b)のVIc-VIcにおける断面図である。
【
図7】
図1の印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8(a)は、印刷装置により第2モードで印刷された画像C8aであり、
図8(b)は、第1モードで印刷された画像C8bである。
【
図9】
図9(a)は、印刷装置により第2モードで印刷された画像C9aであり、
図9(b)は、第1モードで印刷された画像C9bである。
【
図10】印刷装置により第1モードで印刷された画像C10である。
【
図11】
図11(a)は、印刷装置により第2モードで印刷された画像C11aであり、
図11(b)は、第1モードで印刷された画像C11bである。
【
図12】
図12(a)は、印刷装置より第2モードで印刷された画像C12aであり、
図12(b)は、第1モードで印刷された画像C12bである。
【
図13】
図13(a)は、印刷装置により第1モードで印刷された画像C13aであり、
図13(b)は、第1モードで印刷された別の画像C13bである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付している。
【0010】
(実施の形態1)
<印刷装置の構成>
実施の形態1に係る印刷装置10は、例えば、
図1に示すように、液体をヘッド20から印刷媒体Aに吐出し、印刷媒体A上の液体にエネルギー付与部30からエネルギーを付与して印刷を行うインクジェットプリンタである。印刷媒体Aは、例えば、布帛及び紙等のシート状、並びに、ボール及びマグカップなどの立体状の形状を有し、樹脂等の液体が浸透しない又は、紙よりも浸透し難い材料により形成されている。
【0011】
印刷装置10は、ヘッドユニット11、走査装置40、搬送装置50、複数のタンク12及び制御装置60(
図2)を備えている。ヘッドユニット11は、第1液体及び第2液体を印刷媒体Aに吐出するヘッド20、及び、印刷媒体A上の第1液体及び第2液体を硬化させるためのエネルギーを付与するエネルギー付与部30を有している。なお、ヘッドユニット11及び制御装置60の詳細については後述する。
【0012】
また、搬送装置50により印刷媒体Aを搬送する搬送方向を前後方向と称する。搬送方向に交差(例えば、直交)する方向であって、走査装置40によりヘッドユニット11が移動する走査方向を左右方向と称する。前後方向及び左右方向に交差(例えば、直交)する方向を上下方向と称する。但し、印刷装置10の配置はこれに限定されない。
【0013】
走査装置40は、一対の走査レール41、キャリッジ42、駆動ベルト43、走査モータ44を有し、ヘッドユニット11を左右方向に移動する。走査レール41は、左右方向に延びる長尺部材であって、前後方向において互いの間にヘッドユニット11を挟むように互いに平行に配置されている。キャリッジ42は、ヘッドユニット11を搭載し、走査レール41に沿って左右方向において移動可能に支持されている。駆動ベルト43は、左右方向に沿って走査レール41に架け渡され、走査モータ44に連結されている。走査モータ44は、駆動ベルト43を駆動することにより走査レール41に沿ってキャリッジ42を左右方向に往復移動する。
【0014】
搬送装置50は、ステージ51、一対の搬送レール52、ステージ支持台53及び搬送モータ54(
図2)を有し、印刷媒体Aを前後方向に移動する。ステージ51は、矩形の平板形状であって、その上面に印刷媒体Aが載置され、上下方向において印刷媒体Aとヘッド20との間隔を規定する。一対の搬送レール52は、前後方向に延びており、ステージ支持台53を前後方向に移動可能に支持する。ステージ支持台53は、例えば、ステージ51を取り外し可能に支持し、搬送モータ54に連結されている。搬送モータ54がステージ支持台53を駆動することにより、ステージ51を前後方向に移動する。
【0015】
タンク12は、液体を収容する容器であって、ヘッド20に接続されて液体を供給する。液体は、付与されたエネルギーにより硬化するエネルギー硬化性の液体である。複数のタンク12は、例えば、白色(W)インク及び黒色(K)インクの無彩色インク、並びに、イエロー(Y)インク、マゼンダ(M)インク及びシアン(C)インクの有彩色インクのそれぞれのインクの5種類のタンク12を有している。
【0016】
<ヘッドユニットの構成>
ヘッドユニット11は、
図3及び
図4に示すように、ヘッド20の下面及びエネルギー付与部30の下面がステージ51の上面に対向するようにステージ51上に間隔を空けて配置されている。ヘッド20は、複数のノズル21、複数の個別流路22、複数の共通流路23、流路形成体24、及び、複数の駆動素子25(
図2)を有し、液体を印刷媒体Aに吐出する。流路形成体24は、例えば、直方体形状であって、その内部にノズル21、個別流路22及び共通流路23が形成されている。ノズル21は、流路形成体24の下面にて開口している。
【0017】
複数の共通流路23は、例えば、5種類のタンク12(
図1)のそれぞれに設けられている。共通流路23は、タンク12に接続されており、タンク12から液体が供給される。共通流路23は前後方向に延び、共通流路23から複数の個別流路22が分岐している。個別流路22は、その上流端が共通流路23に接続され、その下流端がノズル21に接続されている。
【0018】
複数のノズル21は、前後方向において互いに等間隔に並んでノズル列を成している。液体は、タンク12から共通流路23に流入し、共通流路23を流れている間に個別流路22に分流し、ノズル21に供給される。
【0019】
駆動素子25は、圧電素子等であって、個別流路22に対応して設けられ、制御装置60からの駆動信号に応じて個別流路22の容積を変動させるよう駆動する。この駆動素子25の駆動より、駆動素子25に対応する個別流路22の液体に圧力が付与され、個別流路22に接続されたノズル21から液体が吐出される。
【0020】
エネルギー付与部30は、ヘッド20と共に移動し、その移動方向において液体を吐出しながら移動するヘッド20の上流に配置されている。例えば、一方向印刷では、ヘッド20が左側に移動する際に液体を吐出し、右側に移動する際には液体を吐出しない。この場合、エネルギー付与部30は、印刷時の左側への移動方向においてヘッド20の上流である右側に配置されている。エネルギー付与部30は、液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して移動しながら、印刷媒体A上の液体にエネルギーを付与する。
【0021】
エネルギー付与部30は、複数のエネルギー源31、及び、エネルギー源31が搭載された基板32を有し、印刷媒体A上の液体を硬化させるためのエネルギーを付与する。基板32は、平板形状であって、その下面にエネルギー源31、及び、制御装置60(
図2)が接続された電気回路が設けられている。エネルギー源31は、例えば、LED等の光源であって、紫外線及び赤外線等の光を照射する。
【0022】
<制御装置の構成>
制御装置60は、
図2に示すように、インターフェース61、演算部62、記憶部63及び波形生成部64を有している。なお、制御装置60は、集中制御する単独の制御装置であってもよいし、分散制御する複数の制御装置であってもよい。
【0023】
インターフェース61はコンピュータ及びネットワーク等の外部装置Bに接続され、制御装置60は外部装置Bから印刷データ等の各種データをインターフェース61を介して受信する。印刷データは、印刷媒体Aに印刷される画像を示すラスタデータ等の画像データを含んでいる。なお、印刷データは、記憶部63に予め記憶されていてもよい。
【0024】
記憶部63は、演算部62にアクセス可能なメモリであって、RAM及びROM等により構成されている。RAMは、各種データを一時的に記憶する。この各種データとしては、印刷データ、及び、演算部62により変換された印刷データが例示される。ROMは、各種データ処理を行うためのプログラムを記憶している。なお、プログラムは、外部装置Bから取得されたものであってもよく、また、他の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0025】
演算部62は、例えば、CPU等のプロセッサ、及び、ASIC等の集積回路等により構成されている。演算部62は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子25、エネルギー源31、走査モータ44及び搬送モータ54を制御して、印刷処理を実行する。印刷処理の詳細については後述する。
【0026】
波形生成部64は、駆動素子25に出力される駆動信号の波形を規定する波形信号を生成する。波形生成部64は、専用の回路であってもよく、演算部62及び記憶部63により構成されていてもよい。波形信号は、例えば、パルス信号であって、駆動素子25を駆動させて液体をヘッド20から吐出させるための信号であって、液体の吐出量が異なる複数種類の波形信号を含んでいる。
【0027】
演算部62は、例えば、複数種類の波形信号から1種類の波形信号を、印刷データに基づいた1滴ごとの液体の吐出量に応じてノズル21毎及びノズル21に対応する駆動素子25の駆動周期毎に選択し、波形選択データを生成する。ここで、演算部62は、印刷する画像において濃度が高いほど、液体の吐出量が多い吐出波形信号を印刷データに基づいて選択するように、波形選択データを生成する。
【0028】
制御装置60は、ヘッド駆動回路65を介して駆動素子25に接続されている。制御装置60は、波形信号及び波形選択データを制御データとしてヘッド駆動回路65に出力する。ヘッド駆動回路65は、波形選択データにより選択された波形信号に応じた駆動信号を生成して駆動素子25に出力する。駆動素子25は、吐出波形信号の駆動信号に応じて駆動する。これにより、個別流路22の容積が変更されて、個別流路22の液体に圧力が付与されることによって、液体がノズル21から吐出される。
【0029】
また、制御装置60は、エネルギー源駆動回路66を介してエネルギー源31に接続されており、印刷データに基づいてエネルギー源31の制御データをエネルギー源駆動回路66に出力する。これにより、制御装置60はエネルギー源31のオンとオフとを切り替える制御を行う。
【0030】
さらに、制御装置60は走査駆動回路67を介して走査モータ44に接続されており、印刷データに基づいて走査モータ44の制御データを走査駆動回路67に出力する。また、制御装置60は搬送駆動回路68を介して搬送モータ54に接続されており、印刷データに基づいて搬送モータ54の制御データを搬送駆動回路68に出力する。これにより、制御装置60は、走査モータ44及び搬送モータ54の駆動タイミング、回転速度、回転量等を制御する。
【0031】
<印刷処理>
印刷処理では、制御装置60は、駆動素子25を制御してヘッド20から液体を吐出させる吐出動作を実行する。また、制御装置60は、エネルギー源31を制御してエネルギー付与部30からエネルギーを付与させる付与動作を実行する。さらに、制御装置60が、走査モータ44を制御して、ヘッドユニット11を左右方向に移動させる移動動作を実行する。制御装置60は、搬送モータ54を制御して、印刷媒体Aを前方へ搬送させる搬送動作を実行する。
【0032】
この吐出動作、付与動作及び移動動作を含むパスにおいて、ヘッド20が左側へ移動しながら、ノズル21から液体を吐出する。これにより、ヘッド20の下面に対向する印刷媒体Aに液体が着弾し、液体によりドットが印刷媒体A上に形成されていき、複数のドットが左右方向に並ぶ。そして、ヘッド20に追随してエネルギー付与部30が左側へ移動しながら、エネルギー源31からエネルギーを付与する。これにより、エネルギー源31に対向する印刷媒体Aにエネルギーが付与され、印刷媒体A上の液体がエネルギーにより硬化し印刷媒体Aに定着する。
【0033】
そして、パス後に搬送動作を行うことにより、印刷媒体Aがヘッド20に対して前方に移動する。さらに、搬送動作後にパスを行うことにより、複数のドットが前後方向に並ぶ。このように、制御装置60は、パスと搬送動作とを交互に繰り返し、印刷を進めていくと、複数のドットが左右方向及び前後方向のそれぞれにおいて並ぶことにより画像が印刷媒体Aに印刷される。
【0034】
<印刷モード>
印刷処理は、下地を形成するか否かに応じて、第1モード及び第2モードを有している。第1モードでは、制御装置60は、第1液体を吐出させてからエネルギーを付与して印刷媒体Aに第1液体の下地を形成し、第2液体を吐出させてからエネルギーを付与して下地上に画像を印刷する。第2モードでは、制御装置60は、下地を形成せずに、第2液体を吐出させてからエネルギーを付与して印刷媒体A上に画像を印刷する。制御装置60は、第1モードにおいて画像を印刷するときの第2液体の吐出量を、第2モードにおいて当該画像と同じ画像を印刷するときの第2液体の吐出量よりも多くする。
【0035】
具体的には、液体は第1液体及び第2液体を有している。第1液体は、下地の形成に用いられる液体であって、第2液体は、下地上の画像の形成に用いられる液体である。このため、第1液体は、画像の色に応じてユーザにより決定され又は予め決定されており、例えば、画像で使用される色とは異なる色又は画像で最も多く使用される色とは異なる色又は画像の輪郭で使用される色とは異なる色であって、例えば、白色インクである。第2液体は、画像データに基づいて決定され、画像の形成に用いられる色であり、例えば、黒色インク及び有彩色インクであって、白色インクを含んでいてもよいし、白色インクを含んでいなくてもよい。
【0036】
第1モードと第2モードとのモード切り替えはユーザによる操作により行われてもよい。この場合、例えば、印刷装置10は入力装置を備えており、ユーザが入力装置を操作してモードデータを入力する。これにより、制御装置60はモードデータに基づいて第1モード又は第2モードを判定し、判定したモードに応じて印刷処理を実行する。なお、モード切り替えは印刷データに基づいて行われてもよい。この場合、印刷データは、画像データに加えて、第1モード又は第2モードを示すモードデータを含んでいる。
【0037】
<第2モード>
第2モードでは、制御装置60は、画像データに基づいて印刷する画像を複数の領域である画素にマトリクス状に分割し、各画素の画素データを取得する。画素データは、画素の色毎の濃度を示し、例えば、RGB値を有している。RGB値は、R(赤)、G(緑)及びB(青)の色毎の256階調の階調を表し、階調は濃淡の度合いを表している。
【0038】
制御装置60は、画像で表された色を印刷装置10が備える液体の色に変換する色変換処理を行い、所定の対応関係に基づいて画素データの色を描画データの色に変換する。この所定の対応関係は、画素データの色と描画データの色との対応関係を示す変換テーブルであって、予め定められて記憶部63に記憶されている。例えば、画素データの色はRGBの3色であり、描画データの色は印刷装置10が備える液体のCMYKWの5色である。
【0039】
制御装置60は、画像で表された階調を印刷装置10が形成可能な階調に変換するハーフトーン処理を行い、所定の対応関係に基づいて画素データの階調を描画データの階調に変換する。この所定の対応関係は、画素データの階調と描画データの階調との対応関係を示す変換テーブルであって、予め定められて記憶部63に記憶されている。
【0040】
描画データの階調は、例えば、ノズル21から吐出された液体により形成されるドットの有無により設定されている。この場合、階調は、液体を吐出しないドット無し、及び、所定量の液体を吐出するドット有りの2階調を示すデータである。このハーフトーン処理により、256階調を示す画素データが、ドット有り及びドット無しの2階調を示す描画データに変換される。これにより、画像用の描画データが生成される。
【0041】
制御装置60は、ラスターライズ処理を行い、マトリクス状に並ぶ画像用の描画データを、吐出動作におけるノズル21からの液体の吐出順序(ドットの形成順序)に従って並べて、ノズル21毎及びノズル21に対応する駆動素子25の駆動周期毎に割り付ける。制御装置60は、画像用の描画データに基づいて波形信号及び波形選択データをノズル21毎及び駆動周期毎に生成し制御データとしてヘッド駆動回路65に出力し駆動素子25を駆動させる。画像用の描画データの色はノズル21に予め対応し、描画データの階調は波形選択データに予め対応している。
【0042】
これにより、第2モードでは、
図5(a)に示すように、画像の色に応じた色の第2液体がヘッド20から吐出される。例えば、黒色インクによるドットDk、イエローインクによるドットDy、マゼンダインクによるドットDm、及び、シアンインクによるドットDc等、第2液体によるドットが印刷媒体A上に形成される。そして、エネルギー付与部30から光によるエネルギーが印刷媒体A上の第2液体に付与されて、ドットが印刷媒体Aに定着する。これを繰り返すことにより、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、複数のドットにより構成される画像Cが印刷媒体A上に直接、印刷される。
【0043】
<第1モード>
第1モードでは、制御装置60は下地の領域を取得する。この下地の領域は、所定の領域であってもよいし、印刷媒体Aのサイズ又は画像のサイズに応じて設定されてもよい。例えば、印刷媒体Aの全体を覆うように印刷媒体Aの外周縁と下地の外周縁が一致するように、下地の領域が設定されてもよい。又は、印刷媒体Aの一部を覆うように印刷媒体Aの外周縁から所定距離、内側に下地の外周縁が位置するように、下地の領域が設定されてもよい。又は、画像が下地上に配置されるように、画素データの階調が所定以上の領域を画像領域とし、画像領域の外周縁から所定距離、外側に下地の外周縁が位置するように、下地の領域が設定されてもよい。
【0044】
制御装置60は、下地の色を第1液体の色とし、印刷可能領域のうち下地の領域をドット有りとし、下地の領域以外の領域をドット無しとする描画データを生成する。制御装置60は、この下地用の描画データにラスターライズ処理を行い、下地用の制御データをパス毎に分割してヘッド駆動回路65に出力する。
【0045】
また、制御装置60は、第2モードと同様に、印刷データの画像データに基づいて複数の画素データを取得し、色変換処理及びハーフトーン処理を行い、画素データから画像用の描画データを生成する。そして、制御装置60は、第1モードにおいて画像を印刷するときの第2液体の吐出量を、第2モードにおいて当該画像と同じ画像を印刷するときの第2液体の吐出量よりも多くするように、描画データに対して補正処理を行う。例えば、補正処理では、制御装置60は、第1モードにおいて画像を印刷するときの有彩色インクの吐出量を、第2モードにおいて当該画像と同じ画像を印刷するときの有彩色インクの吐出量よりも多くする。
【0046】
具体的には、有彩色を均等に混ぜ合わせることにより黒色を呈する事から、補正処理において、制御装置60は、所定の対応関係に基づいて黒色ドットの一部又は全部を3色の有彩色ドットに置き換える補正を行う。この所定の対応関係は、黒色の階調と有彩色の階調との対応関係を示す変換テーブルであって、予め定められて記憶部63に記憶されている。ここで、1つの黒色ドットから置き換えられるC、Y、Mの3色の有彩色ドットは、黒色に見えるように分散する又は重なるように配置が補正される。
【0047】
これにより、
図5(a)に示す黒色インクにより形成される黒色ドットDkが、
図6(a)に示すC、Y、Mの3色の有彩色インクにより形成される有彩色ドットDc、Dy、Dmに置き換えられる。この1つの黒色ドットDkに対する黒色インクの量よりも、1つの黒色ドットDkから置き換えられた有彩色ドットDc、Dy、Dmの3色の有彩色インクの合計量は多い。このため、第1モードにおいて画像を形成するための第2液体の吐出量は、第2モードにおいて画像を形成するための第2液体の吐出量よりも多くなる。
【0048】
そして、制御装置60は、補正した画像用の描画データにラスターライズ処理を行い、画像用の制御データを生成してパス毎に分割しヘッド駆動回路65に出力する。このような第1モードでは、印刷処理のパスは、下地用パス及び画像用パスを有している。このため、印刷処理では、下地用の制御データに従って下地用パスを行った後に、搬送動作を行わずに、画像用の制御データに従って画像用パスを行ってから、搬送動作を行う。
【0049】
具体的には、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、下地用パスにおいてヘッド20が左側に移動しながら下地用の制御データに基づいて第1液体を吐出すると、印刷媒体A上に第1液体によるドットが形成される。このヘッド20に追随してエネルギー付与部30が左側に移動しながらエネルギーを印刷媒体A上の第1液体に付与すると、第1液体によるドットが印刷媒体Aに定着する。これにより、複数のドットにより構成される下地Eが印刷媒体A上に直接、印刷される。
【0050】
下地用パスが終了すると、制御装置60は、印刷媒体Aを前方に搬送せずに、ヘッド20及びエネルギー付与部30を右側に移動させてから、画像用パスを開始する。この画像用パスにおいてヘッド20が左側に移動しながら画像用の制御データに基づいて第2液体を吐出すると、下地E上に第2液体によるドットが形成される。このヘッド20に追随してエネルギー付与部30が左側に移動しながらエネルギーを下地E上の第2液体に付与すると、第2液体によるドットが下地に定着する。これにより、複数のドットにより構成される画像Cが下地E上に印刷される。
【0051】
このような今回のパスにおける下地用パス及び画像用パスが終了してから、印刷媒体Aを前方に搬送して、次のパスを実行する。このように、下地用パス及び画像用パスと搬送動作とを交互に繰り返すことにより、全体の画像Cが印刷される。
【0052】
<印刷装置の制御方法>
印刷装置10の制御方法は、例えば、
図7のフローチャートに沿って制御装置60により実行される。まず、制御装置60は、印刷データを取得する(ステップS1)。制御装置60は、印刷データの画像データに対して色変換処理及びハーフトーン処理を行い、画像用の描画データに生成する(ステップS2)。また、制御装置60は、入力装置等からモードデータを取得し(ステップS3)、印刷処理が第1モードで実行されるか否かをモードデータに基づいて判定する(ステップS4)。
【0053】
制御装置60は、モードデータが第1モードであれば(ステップS4:YES)、下地用の描画データを生成する(ステップS5)。また、制御装置60は、ステップS2で生成した画像用の描画データ対して、第1モードにおいて画像を印刷するときの第2液体の吐出量を、第2モードにおいて当該画像と同じ画像を印刷するときの第2液体の吐出量よりも多くなるように補正する(ステップS6)。
【0054】
制御装置60は、ステップS5で生成した下地用の描画データに基づいて下地用パスを実行し、下地Eを印刷媒体A上に印刷する(ステップS7)。続いて、制御装置60は、ステップS6で補正した画像用の描画データに基づいて画像用パスを実行し、画像Cを下地E上に印刷する(ステップS8)。それから、制御装置60は、搬送動作を実行し、印刷媒体Aを前方に搬送する(ステップS9)。制御装置60は、印刷データにおける全てのパスが終了していなければ(ステップS10:NO)、ステップS7に戻り次のパスを実行する。一方、制御装置60は、印刷データにおける全てのパスが終了していれば(ステップS10:YES)、印刷処理を終了する。
【0055】
また、制御装置60は、モードデータが第2モードであれば(ステップS4:NO)、ステップS2で生成した画像用の描画データに基づいてパスを実行し、画像Cを印刷媒体A上に印刷する(ステップS11)。それから、制御装置60は、搬送動作を実行し、印刷媒体Aを前方に搬送する(ステップS12)。制御装置60は、印刷データにおける全てのパスが終了していなければ(ステップS13:NO)、ステップS11に戻り次のパスを実行する。一方、制御装置60は、印刷データにおける全てのパスが終了していれば(ステップS13:YES)、印刷処理を終了する。
【0056】
このように、印刷装置10では、第1モードにおいて画像を印刷するときの第2液体の吐出量を、第2モードにおいて当該画像と同じ画像を印刷するときの第2液体の吐出量よりも多くする。このため、下地上において第2液体が拡がり難い場合であっても、第2液体による色ムラやバンディングが低減し、色を重ねて印刷する部分における画質の低下を抑制することができる。
【0057】
また、第1モードにおいて画像を印刷するときの有彩色インクの吐出量を、第2モードにおいて当該画像と同じ画像を印刷するときの有彩色インクの吐出量よりも多くする。例えば、1つの黒色インクによるドットDkを3つの有彩色インクのドットDc、Dy、Dmに置き換える。これにより、有彩色インクのドットDc、Dy、Dmの面積がドットDkによりも広いため、色を重ねて印刷する部分における画質の低下を抑制することができる。
【0058】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る印刷装置10では、制御装置60は、第1モードにおいて画像を構成する少なくとも一部のドットである対象ドットのサイズを、第2モードにおいて当該画像と同じ画像を構成するドットのうち対象ドットに対応するドットのサイズよりも大きくするように、第2液体の吐出量を制御する。
【0059】
具体的には、制御装置60は、
図7のステップS2において、描画データの階調を、ノズル21から吐出された液体により形成されるドットのサイズにより設定する。この階調は、例えば、ノズル21から液体を吐出しないドット無し、所定量よりも少ない液体により形成される小ドット、所定量の液体により形成される中ドット、及び、所定量よりも多い液体により形成される大ドットの4階調を示すデータである。制御装置60は、ハーフトーン処理により、256階調を示す画素データを4階調の描画データに変換して、画像用の描画データが生成する。
【0060】
第2モードでは、
図7のステップS11において画像用の描画データに基づいて画像Cを印刷する。ここで、制御装置60は、小ドットに対して所定量よりも少ない量の液体が吐出されるように波形選択データを生成し、中ドットに対して所定量の液体が吐出されるように波形選択データを生成し、大ドットに対して所定量よりも多い量の液体が吐出されるように波形選択データを生成する。制御装置60は、この波形選択データに応じて駆動素子25を駆動することにより、ドットサイズに応じた量の液体が駆動素子25に対応するヘッド20から吐出される。
【0061】
これにより、
図8(a)に示すように、画像用の描画データに基づいた第2液体による小ドットD1、中ドットD2及び大ドットD3のドットが印刷媒体A上に形成される。そして、第2液体は印刷媒体A上で広がる。それから、エネルギー付与部30から光によるエネルギーが印刷媒体A上の第2液体に付与されて、ドットが印刷媒体Aに定着する。これを繰り返すことにより、複数のドットにより構成される画像C8aが印刷媒体A上に直接、印刷される。
【0062】
これに対し、第1モードでは、
図7のステップS6において、制御装置60は、画像用の描画データを補正する。この補正処理では、制御装置60は、画像用の描画データの階調において、小ドット及び中ドットを対象ドットとして、対象ドットのサイズを大きくするように階調を補正する。これにより、画像における全ての小ドットが中ドットに補正され、画像における全ての中ドットが大ドットに補正される。なお、画像における一部の小ドット及び中ドットが対象ドットとされてサイズが大きくなるように補正されてもよい。また、小ドットは中ドットよりも大きい大ドットに補正されてもよい。
【0063】
これにより、
図7のステップS8において、制御装置60は、補正した画像用の描画データに基づいて画像用パスを実行する。
図8(b)に示すように、描画データに応じた量の第2液体がヘッド20から吐出され、第2液体によるドットD2、D3が下地E上に形成され、複数のドットにより構成される画像C8bが下地E上に印刷される。
【0064】
このように、画像C8a、C8bにおいて互いに同じ位置に配置される対象ドットについて、第2モードでは小ドットD1で印刷されるのに対し、第1モードでは中ドットD2で印刷される。また、画像C8a、C8bにおいて互いに同じ位置に配置される別の対象ドットについて、第2モードでは中ドットD2で印刷されるのに対し、第1モードではD3で印刷される。このため、画像C8a、C8bを構成する複数のドットにおいて大きいドットD2、D3の割合が第2モードよりも第1モードにおいて多くなる。これにより、下地E上において第2液体が拡がり難い場合であっても、画像C8bを形成するための第2液体の吐出量が多いため、色を重ねて印刷する部分における画質の低下を抑制することができる。
【0065】
<変形例1>
変形例1に係る印刷装置10では、実施の形態2において、制御装置60は、第1モードにおいて文字の画像を印刷するとき、対象ドットのうち、当該画像の端に配置されるドットを、第2モードの対象ドットに対応するドットのサイズよりも大きくせずに、当該画像の端以外に配置されるドットを、第2モードの対象ドットに対応するドットのサイズよりも大きくするように、第2液体の吐出量を制御する。
【0066】
例えば、
図9(a)に示すように、複数の中ドットD2により構成される文字の画像C9aが第2モードにおいて印刷データに基づいて印刷される。この印刷データに基づいて画像C9aを第1モードで印刷する場合、制御装置60は、
図7のステップS6において、画像用の描画データを補正する。この補正処理において、例えば、制御装置60は、画像C9aを構成する全ての中ドットD2を対象ドットとする。そして、制御装置60は、対象ドットのうち、周囲を取り囲む8つの画素のいずれかの画素においてドット無しの画素が存在するドットを、画像C9aの端に配置されるドットDeと判定する。このように、画像C9aの端に配置されるドットDeは、前後方向、左右方向及び斜め方向にいずれの方向においてドットと隣接しない。
【0067】
そして、制御装置60は、
図9(b)に示すように、対象ドットのうち、画像C9bの端に配置されるドットDe以外のドットDiについて、ドットのサイズが大きくなるように、画像用の描画データの階調を補正する。また、制御装置60は、対象ドットのうち、画像C9bの端に配置されるドットDeについて階調を補正しない。これにより、ドットDeは中ドットD2にサイズが維持され、画像C9bにおける端のドットDeよりも内側のドットDiは中ドットD2から大ドットD3にサイズが大きくなる。
【0068】
そして、
図7のステップS8において、制御装置60は、補正した画像用の描画データに基づいて画像用パスを実行する。これにより、
図9(b)に示すように、下地E上に第2液体によるドットD2、D3が形成され、複数のドットD2、D3により構成される画像C9bが下地E上に印刷される。
【0069】
このように、画像C9bにおける内側のドットDiはサイズが大きく印刷される。これにより、下地E上において第2液体が拡がり難い場合であっても、画像C9bを形成するための第2液体の吐出量が多いため、色を重ねて印刷する部分における画質の低下を抑制することができる。これに対し、画像C9bの端ではドットDeのサイズが大きく補正されないため、画像C9bのサイズが大きくなることを低減することができる。
【0070】
なお、制御装置60は、対象ドットのうち、画像C9bの端に配置されるドットDeについてドットのサイズが小さくなるように、画像用の描画データの階調を補正してもよい。これにより、画像C9bの端のドットDeは中ドットD2から小ドットD1にサイズが小さくなる。このため、画像C9bの端ではドットDeのサイズが小さく補正されるため、画像C9bのサイズが大きくなることを低減することができる。
【0071】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る印刷装置10では、制御装置60は、第1モードにおいて画像を構成する複数ドットのうち最大ドットのサイズを、第2モードにおいて当該画像と同じ画像を構成する複数のドットのうち最大ドットのサイズよりも大きくするように、第2液体の吐出量を制御する。
【0072】
具体的には、制御装置60は、
図7のステップS2において、描画データの階調を、ノズル21から吐出された液体により形成されるドットのサイズにより設定する。この階調は、例えば、ドット無し、小ドット、中ドット及び大ドットの4階調を示すデータである。但し、制御装置60は、ハーフトーン処理により、256階調を示す画素データを4階調の描画データに変換して、画像用の描画データが生成する。
【0073】
図7のステップS1画像用の描画データに基づいて第2液体がヘッド20から吐出される。これにより、1において第2モードで画像を印刷すると、
図8(a)に示すように、第2液体による小ドットD1、中ドットD2及び大ドットD3のドットが印刷媒体A上に形成され、これらのドットによる画像C8aが印刷媒体Aに印刷される。
【0074】
これに対し、第1モードでは、
図7のステップS6において、制御装置60は、この画像用の描画データを補正する。補正処理では、制御装置60は、画像用の描画データの階調において、画像を構成する小ドット、中ドット及び大ドットのうち最も大きい大ドットを対象ドットとする。そして、制御装置60は、対象ドットを形成するための第2液体の吐出量を、大ドットD3を形成するための第2液体の吐出量よりも多く、ヘッド20が吐出可能な最大量以下の量に増やす。これにより、大ドットD3のサイズは、これよりも大きい特大ドットD4になるように階調が補正される。
【0075】
これにより、
図7のステップS8において、制御装置60は、補正した画像用の描画データに基づいて画像用パスを実行する。ここで、大ドットD3の量よりも多い量の第2液体がヘッド20から吐出され、
図10に示すように、第2液体による特大ドットD4が下地E上に形成され、特大ドットD4を含む複数のドットにより構成される画像C10が下地Eに印刷される。
【0076】
このように、画像C8a、C10において互いに同じ位置に配置される対象ドットについて、第2モードでは大ドットD3で印刷されるのに対し、第1モードでは大ドットよりも大きな特大ドットD4で印刷される。これにより、下地E上において第2液体が拡がり難い場合であっても、画像C10を形成するための第2液体の吐出量が多いため、色を重ねて印刷する部分における画質の低下を抑制することができる。
【0077】
<変形例2>
変形例2に係る印刷装置10では、実施の形態3において、制御装置60は、第1モードにおいて文字の画像を印刷するとき、画像を構成する複数のドットのうち、当該画像の端に配置される最大ドットのサイズを、第2モードの最大ドットのサイズよりも大きくせずに、当該画像の端以外に配置される最大ドットのサイズを、第2モードの最大ドットのサイズよりの大きくするように、第2液体の吐出量を制御する。
【0078】
例えば、
図11(a)に示すように、複数の大ドットD3により構成される画像C11aが第2モードにおいて印刷データに基づいて印刷される。この印刷データに基づいて画像を第1モードで印刷する場合、制御装置60は、
図7のステップS6において、
図11(b)に示すように画像C11bを構成する全てドットのうち最も大きい大ドットD3を対象ドットとし、画像用の描画データを補正する。この際、制御装置60は、対象ドットのうち、周囲を取り囲む8つの画素のいずれかの画素においてドット無しの画素が存在するドットが、画像C11bの端に配置されるドットDeと描画データに基づいて判定する。このように、画像C11bの端に配置されるドットDeは、前後方向、左右方向及び斜め方向にいずれの方向においてドットと隣接しない。
【0079】
そして、制御装置60は、対象ドットのうち、画像C11bの端に配置されるドットDe以外のドットDiについて、ドットを形成するための第2液体の吐出量が多くなるように、画像用の描画データの階調を補正する。また、制御装置60は、対象ドットのうち、画像C11bの端に配置されるドットDeについて階調を補正しない。これにより、画像C11bの端のドットDeは大ドットD3にサイズが維持され、画像における端のドットDeよりも内側のドットDiは大ドットD3から特大ドットD4にサイズが大きくなる。
【0080】
これにより、
図7のステップS8において、制御装置60は、補正した画像用の描画データに基づいて画像用パスを実行する。これにより、
図11(b)に示すように、下地E上に第2液体によるドットが形成され、複数のドットにより構成される画像C11bが下地Eに印刷される。
【0081】
このように、画像C11bにおいて内側のドットDiはサイズが大きく印刷される。これにより、下地E上において第2液体が拡がり難い場合であっても、画像C11bを形成するための第2液体の吐出量が多いため、色を重ねて印刷する部分における画質の低下を抑制することができる。これに対し、画像C11bの端ではドットDeのサイズが大きく補正されないため、画像C11bのサイズが大きくなることを低減することができる。
【0082】
なお、制御装置60は、対象ドットのうち、画像C11bの端に配置されるドットDeについてドットのサイズが小さくなるように、画像用の描画データの階調を補正してもよい。これにより、画像C11bの端のドットDeは大ドットから中ドット又は小ドットにサイズが小さくなる。このため、画像C11bの端ではドットDeのサイズが小さく補正されるため、画像C11bのサイズが大きくなることを低減することができる。
【0083】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る印刷装置10では、制御装置60は、第1モードにおいて画像を印刷するときの第2液体の吐出数を、第2モードにおいて当該画像と同じ画像を印刷するときの第2液体の吐出数よりも多くするようにヘッド20を制御する。
【0084】
具体的には、制御装置60は、
図7のステップS2において、描画データの階調をドットの有無により設定する。この階調は、例えば、ドット無し及びドット有りの2階調を示すデータである。制御装置60は、ハーフトーン処理により、256階調を示す画素データを2階調の描画データに変換して、画像用の描画データが生成する。
【0085】
図7のステップS11において第2モードで画像を印刷すると、
図12(a)に示すように、画像用の描画データに基づいて第2液体がヘッド20から吐出され、第2液体によるドットが印刷媒体A上に形成される。それから、エネルギー付与部30から光によるエネルギーが印刷媒体A上の第2液体に付与されて、ドットが印刷媒体Aに定着する。これを繰り返すことにより、複数のドットにより構成される画像C12aが印刷媒体A上に直接、印刷される。
【0086】
これに対し、第1モードでは、
図7のステップS6において、制御装置60は、この画像用の描画データを補正する。この補正処理では、制御装置60は、画像用の描画データにおいて画像を構成するドットの数が多くなるように、ドット無しの画素をドット有りの画素になるように階調を補正する。例えば、制御装置60は、左右方向においてドット無しの画素とドット有りの画素との間且つ前後方向においてドット無しの画素とドット有りの画素との間の画素Fにおいてドット無しをドット有りに置き換えるように、描画データの階調を補正する。
【0087】
これにより、
図7のステップS8において、制御装置60は、補正した画像用の描画データに基づいて画像用パスを実行する。ここで、ドット無しからドット有りの画素Fにおいてヘッド20から第2液体を吐出することにより、
図12(b)に示すように、下地E上に第2液体によるドットDが形成され、複数のドットDにより構成される画像C12bが下地E上に印刷される。このように、画像C12bを構成するドットDの数が増えることにより、下地E上において第2液体が拡がり難い場合であっても、画像C12bを形成するための第2液体の吐出量が多いため、色を重ねて印刷する部分における画質の低下を抑制することができる。
【0088】
(実施の形態5)
実施の形態5に係る印刷装置10は、ヘッド20を搭載し、走査方向に移動するキャリッジ42を備える。制御装置60は、印刷媒体Aに画像を印刷させる制御は、キャリッジ42を走査方向に移動させながら、ヘッド20から少なくとも第2液体を吐出させる吐出制御を含み、第1モードにおいて画像を第2液体により印刷媒体Aへ印刷するときの吐出制御の合計数を、第2モードにおいて当該画像と同じ画像を第2液体により印刷するときの吐出制御の合計数よりも多くするようにキャリッジ42及びヘッド20を制御する。
【0089】
具体的には、例えば、
図9(a)に示すように、複数の中ドットD2により構成される文字の画像C9aが第2モードにおいて印刷データに基づいて印刷される。この印刷データに基づいて画像C9aを第1モードで印刷する場合、制御装置60は、
図7のステップS6において、画像用の描画データを補正する。この補正処理において、制御装置60は、画像用パスが、吐出動作及び移動動作を含む複数の吐出制御を有し、吐出制御の数は第2モードよりも第1モードで多くなるように、描画データを補正する。例えば、複数の吐出制御により形成される画像の全部又は一部が互いに重なるように、インターレース印刷が行われる。この場合、制御装置60は、画像用の描画データにラスターライズ処理を行いパス毎に分割し、このパス毎の描画データを複数の吐出制御のそれぞれに割り当てるように補正する。
【0090】
そして、制御装置60は、
図7のステップS8にて、描画データに基づいて画像用の制御データを生成してヘッド駆動回路65に出力する。これにより、制御装置60は、画像用パスにおいて複数の吐出制御をそのパスの描画データに基づいて行ってから、付与動作を行う。このため、制御装置60は、左側に移動するヘッド20から第2液体をパスの描画データに応じて吐出する。これにより、
図13(a)に示すように、第2液体によるドットD2が形成され、画像C13aが下地E上に形成される。
【0091】
そして、制御装置60は、エネルギー付与部30からエネルギーを付与せずに、ヘッド20を右側に移動して、同じパスの描画データに応じて左側に移動するヘッド20から第2液体がパスの描画データに応じて吐出する。これにより、前回の描画制御により形成されたドットD2上に第2液体によるドットD2が重なる。このように、制御装置60は、描画制御を複数回、行った後に、エネルギー付与部30が左側へ移動しながら、エネルギー源31からエネルギーを付与する。これにより、第2液体が硬化し下地E上に定着する。
【0092】
このように、画像用パスにおいて複数回、吐出制御を行うことにより、
図13(a)に示すように画像C13aを形成するドットD2の数が多くなる。このため、下地E上において第2液体が拡がり難い場合であっても、画像C13aを形成するための第2液体の吐出量が多いため、色を重ねて印刷する部分における画質の低下を抑制することができる。
【0093】
なお、第2モードにおいても、第1モードと同様に、制御装置60は、画像用パスにおいて複数の吐出制御を互いに同じパスの描画データに基づいて行ってもよい。また、画像用パスにおいて、複数の吐出制御のそれぞれの吐出制御後に付与動作を行ってもよい。
【0094】
さらに、複数の吐出制御は、
図13(b)ドットD2の位置が互いにずれるように行われてもよい。この場合、連続して実行される吐出制御の間において、後方向において互いに隣接するノズル21の間隔よりも短い距離で印刷媒体Aを搬送することにより、ドットの一部が重なるようにずらしてもよい。これにより、前後方向においてノズル21の間隔に基づいた解像度よりも画像C13bの解像度が高くなる。なお、左右方向においてドットに位置が互いにずれるように、第2液体を吐出するノズル21及びその第2液体の吐出タイミングの少なくともいずれかを変化させてもよい。
【0095】
<その他の変形例>
上記全ての実施の形態及び変形例では、エネルギー付与部30のエネルギー源31には、光エネルギーを発生する光源が用いられたが、これに限定されない。例えば、エネルギー源31は、熱エネルギー及びマイクロ波等の電波によるエネルギーを発生する電波発生器であってもよい。この場合、液体には、電波により硬化する液体が用いられる。
【0096】
また、エネルギー付与部30のエネルギー源31には、熱を付与するヒータが用いられてもよい。このヒータとして、輻射式のヒータ、温風ヒータ及び接触式ヒータ等が例示される。この場合、液体には、ラテックスインク等、熱により硬化する液体が用いられる。
【0097】
上記全ての実施の形態及び変形例では、印刷装置10は、キャリッジ42によりヘッド20を左右方向に移動するシリアルヘッド方式が用いられた。しかしながら、印刷装置10は、キャリッジ42を備えずに、ヘッド20が固定されたラインヘッド方式が用いられてもよい。
【0098】
上記全ての実施の形態及び変形例では、駆動素子25に圧電素子が用いられたが、これに限定されない。駆動素子25には、例えば、気泡を発生する発熱抵抗体などのサーマルアクチュエータ、及び、静電力を発生する電極などの静電アクチュエータが用いられてもよい。
【0099】
上記全ての実施の形態及び変形例では、印刷装置10は一方向印刷を行ったが、双方向印刷を行ってもよい。この場合、印刷装置10は、左右方向においてヘッド20を挟むように一対のエネルギー付与部30が配置される。一対のエネルギー付与部30のうちの右側のエネルギー付与部30は、左側に移動しながら液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して左側に移動しながら、印刷媒体A上の液体にエネルギーを付与する。一対のエネルギー付与部30のうちの左側のエネルギー付与部30は、右側に移動しながら液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して右側に移動しながら、印刷媒体A上の液体にエネルギーを付与する。
【0100】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の印刷装置は、色を重ねて印刷する部分における画質の低下を抑制することができる印刷装置等として有用である。
【符号の説明】
【0102】
10 :印刷装置
20 :ヘッド
30 :エネルギー付与部
42 :キャリッジ
60 :制御装置