IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

特許7643077電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法
<>
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図1
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図2
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図3
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図4
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図5
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図6
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図7
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図8
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図9
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図10
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図11
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図12
  • 特許-電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20250304BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
H05K5/02 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021028395
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022092556
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2020204675
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 弘志
(72)【発明者】
【氏名】今村 尚人
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 麻里
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮平
(72)【発明者】
【氏名】福島 真吾
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-027920(JP,A)
【文献】実開平02-089427(JP,U)
【文献】実開昭58-092767(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周から短手方向の第1方向に突出する第1雄部を長手方向の両端部近傍に夫々有する長尺状の第1取付部材と、前記第1雄部に対応する第1雌部を前記長手方向の両端部近傍に夫々有する長尺状の第2取付部材と、を有する取付部材と、
前記取付部材が取り付けられる被取付部材と、
を有し、
前記取付部材は、前記第1雄部及び前記第1雌部の近傍に、前記第1方向及び前記長手方向と直交する第2方向に延びる第2雄部及び、前記第2雄部に対応する第2雌部のいずれか一方を含み、
前記被取付部材は、前記第2雄部及び前記第2雌部のいずれか他方を含み、
前記第1雄部と前記第1雌部は互いに固定されておらず、前記第1取付部材及び前記第2取付部材は前記長手方向の両端側では固定されていない、
電子機器。
【請求項2】
前記第1雄部は、前記第1方向に突出する幅広の突出片であって、幅方向の長さが厚み方向の長さより長い突出片を含み、
前記第1雌部は、前記突出片が挿入される、前記幅方向の長さが前記厚み方向の長さより長い長孔を含む、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記取付部材は、前記取付部材の外側面にあたる、前記被取付部材の壁部の内側の面との対向面に壁面摺動部を有する、
請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1取付部材及び前記第2取付部材は、前記第1取付部材と前記第2取付部材のうち一方が他方に重畳する重畳配置部を有し、
前記他方の部材には、前記一方の部材を受けるリブ部が設けられている、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記第2取付部材は、前記第1取付部材と対向する縁部の近傍に前記縁部に沿って設けられる凹溝部を有する請求項1乃至4の何れかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記取付部材及び前記被取付部材は、それぞれ長尺状に設けられ、
前記第2雄部及び前記第2雌部は、長尺方向の両端部近傍にそれぞれ設けられている請求項1乃至5の何れかに記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1雄部は、平面部に布部材が貼着されている請求項1乃至6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の電子機器と、
鍵盤と、
を備える電子鍵盤楽器。
【請求項9】
長尺状の第1取付部材の長手方向の両端部近傍の外周から短手方向の第1方向に突出する第1雄部を長尺状の第2取付部材の長手方向の両端部近傍における第1雌部に篏合し、
前記第1雄部と前記第1雌部を互いに固定させずに、前記第1取付部材と前記第2取付部材を前記長手方向の両端部以外で固定し、
前記第1雄部及び前記第1雌部の近傍に、前記第1取付部材及び前記第2取付部材のいずれか一方に設けられている前記第1方向及び前記長手方向に直交する第2方向に延びる第2雄部が被取付部材に含まれる第2雌部に篏合する、又は、被取付部材に含まれる前記第2方向に延びる第2雄部が前記第1取付部材及び前記第2取付部材のいずれか一方に設けられている第2雌部に篏合する、
電子機器の製造方法。
【請求項10】
前記第2雄部が前記第2雌部に篏合するときに、前記第1取付部材及び前記第2取付部材のいずれか一方に設けられる壁面摺動部が、前記被取付部材に含まれる壁部に接触する、
請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記壁面摺動部が前記壁部に接触する前と比べて、前記壁面摺動部が前記壁部に接触した後、前記第1取付部材と前記第2取付部材の間の隙間が狭くなるように調整する、
請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器や電子鍵盤楽器において、樹脂の射出成形により製造される端子ボックスやパネル等が開示されている。例えば、特許文献1に開示される、電子機器に用いられる電気接続箱は、側板から突出して挿入孔が開けられる透孔板を備える箱本体と、挿入孔に挿入される位置決めピンを備えるカバーとを備えて、箱本体にカバーが取り付けられる際に挿入孔に位置決めピンが挿入されて、側板の反りが矯正される。位置決めピンの挿入方向は、側板の平坦面に対して平行な方向とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-299053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気接続箱がさらに長尺状である場合には、上下方向に反りが生じてしまうこともある。特に、長尺状の第一部材と、長尺状の第二部材と、を係合させた取付部材を被取付部材に取り付ける場合に、取付部材側の構造或いは、被取付部材側の構造によっては、各部材を互いに良好に固定できず、反りや撓みが生じてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、取付部材を被取付部材に良好に固定する電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例である電子機器は、外周から短手方向の第1方向に突出する第1雄部を長手方向の両端部近傍に夫々有する長尺状の第1取付部材と、前記第1雄部に対応する第1雌部を前記長手方向の両端部近傍に夫々有する長尺状の第2取付部材と、を有する取付部材と、前記取付部材が取り付けられる被取付部材と、を有し、前記取付部材は、前記第1雄部及び前記第1雌部の近傍に、前記第1方向及び前記長手方向と直交する第2方向に延びる第2雄部及び、前記第2雄部に対応する第2雌部のいずれか一方を含み、前記被取付部材は、前記第2雄部及び前記第2雌部のいずれか他方を含み、前記第1雄部と前記第1雌部は互いに固定されておらず、前記第1取付部材及び前記第2取付部材は前記長手方向の両端側では固定されていない。
【0007】
本発明の電子鍵盤楽器は、上述の電子機器と、鍵盤と、を備える。
【0008】
本発明の電子機器の製造方法は、長尺状の第1取付部材の長手方向の両端部近傍の外周から短手方向の第1方向に突出する第1雄部を長尺状の第2取付部材の長手方向の両端部近傍における第1雌部に篏合し、前記第1雄部と前記第1雌部を互いに固定させずに、前記第1取付部材と前記第2取付部材を前記長手方向の両端部以外で固定し、前記第1雄部及び前記第1雌部の近傍に、前記第1取付部材及び前記第2取付部材のいずれか一方に設けられている前記第1方向及び前記長手方向に直交する第2方向に延びる第2雄部が被取付部材に含まれる第2雌部に篏合する、又は、被取付部材に含まれる前記第2方向に延びる第2雄部が前記第1取付部材及び前記第2取付部材のいずれか一方に設けられている第2雌部に篏合する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、取付部材を被取付部材に良好に固定する電子機器、電子鍵盤楽器及び電子機器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の上面部材と楽器ケースとを分離して示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の上面部材を下側から見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の上面部材をコンソールパネルとスピーカカバーに分離した状態を示す、下側から見た斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の上面部材をコンソールパネルとスピーカカバーに分離した状態を示す、左端部分を前側の下側から見た拡大斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器のコンソールパネルの左端部分を後側の下側から見た拡大斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の上面部材をコンソールパネルとスピーカカバーに分離した状態を示す、上側から見た斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器のコンソールパネルのボリュームつまみの周辺を上側から見た、図7のQ4部の拡大斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の上面部材における、図8のIX-IX断面に相当する断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の上面部材における、図8のX-X断面に相当する断面図である。
図11】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の製造方法を示す、図1のXI-XI断面に相当する断面を示し、(a)はコンソールパネルとスピーカカバーを互いに取り付ける前の状態を示し、(b)はコンソールパネルとスピーカカバーを互いに取り付けた状態を示す。
図12】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の製造方法を示す、上面部材と上ケースに係る図1のXI-XI断面に相当する断面を示し、(a)は上面部材と上ケースを互いに取り付ける前の状態を示し、(b)は上面部材と上ケースを互いに取り付けた状態を示す。
図13】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の図1のXI-XI断面に係る後側を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1に示す電子機器としての電子鍵盤楽器10は、61鍵の鍵盤11と、楽器ケース20とを備える。なお、以下の説明においては、鍵盤11の鍵の前後方向FBにおける前を前側F、鍵の前後方向FBの後を後側Bとし、鍵盤11に向かって左を左側L、右を右側Rとする。鍵盤11の鍵の配列方向LRは、左右方向である。また、電子鍵盤楽器10の上下方向ULにおいて上を上側Up、下を下側Loとする。
【0012】
楽器ケース20(被取付部材)は、左右方向を長手方向とする略長矩形板状であり、上ケース21(被取付部材)と下ケース22とを備える。上ケース21及び下ケース22は、それぞれ樹脂材料の射出成形により製造され、図示しないボルトにより連結される。楽器ケース20の内部には、基板や電源である電池等が収納される。
【0013】
図1及び図2にも示すように、鍵盤11の後側Bには、上面部材30(取付部材)が配置される。上面部材30は、共に樹脂材料の射出成形により製造されるコンソールパネル31(第1取付部材)とスピーカカバー32(第2取付部材)を有する。コンソールパネル31は、鍵の配列方向LRに長い長尺状であり、電源ボタン311、操作ボタン312、ボリュームつまみ313及び操作状態を表示するLED表示部314を備える操作部310が設けられる。スピーカカバー32には、布地33が巻かれている。
【0014】
図2に示すように、上面部材30は、上ケース21の上面後側Bの略凹状の上面部材取付部21aに取り付けられる。上面部材取付部21aには、上面部材取付部21aの前側Fにおける鍵の配列方向LRの両端側にピン挿入孔55(第2雌部)が設けられる。ピン挿入孔55は、鍵の配列方向LRに若干長い長孔とされる。左側のピン挿入孔55の周辺を拡大した図2のP1部拡大図に示すように、ピン挿入孔55は、前側Fと後側Bに平行して設けられる直線部55aと、2つの直線部55aを両端側で接続する円弧状部55bとを有する。ピン挿入孔55は、後述するピン51(第2雄部)に対応する位置に設けられる。上面部材取付部21aは、左右及び後側Bの縁部に立設する壁部21bを有する。
【0015】
図3に示すように、操作部310に対応する上面部材30の内面には、基板315が設けられる。基板315は、前後方向FBにおいて、コンソールパネル31とスピーカカバー32に亘って設けられる。また、上面部材30の前側F及び後側Bの縁部近傍(すなわち、コンソールパネル31とスピーカカバー32)には、上面部材30を上ケース21にボルト210(図2参照)で固定するための雌ねじ部を有する複数のボス34が設けられる。
【0016】
図3及び図7にも示すように、コンソールパネル31は、電子鍵盤楽器10の前側Fに配置される前板31aと、操作部310が設けられる上板31bとを有する。前板31aと上板31bとは、鍵の配列方向LRの側面視において略直交するように接続される。図3図4に示すように、コンソールパネル31の鍵の配列方向LRの両端部には、前板31a及び上板31bと接続する三角リブ状の側板31cが設けられる。前板31aの外表面は、鍵の配列方向LRに長い凹凸面が設けられる。図6にも示すように、前板31aの内面には、四角柱状のリブ31a1が複数設けられる。そして、前板31aの下端には、鍵盤11の上面との間に配置されるフェルト部材36が鍵の配列方向LRに延設される。
【0017】
図4及び図7にも示すように、コンソールパネル31の上板31bは、操作部310が設けられて外部に露出する上板本体部31b1と、上板本体部31b1と段部31dを介して接続する上板接続部31b2とを有する。上板接続部31b2の上面は、上板本体部31b1の上面よりも下側Loに位置する。上板接続部31b2の鍵の配列方向LRの両端側は、後述するスピーカカバー32のスピーカ孔部32aの円弧状の縁部に倣った円弧状部31eが設けられる。
【0018】
コンソールパネル31には、鍵の配列方向LRの両端部近傍の上板本体部31b1の内面に、後述の第1方向D1とは異なる第2方向D2に突出するピン51(第2雄部)が設けられる。図6に示すように、ピン51は、前後板51aと左右板51bとが直交して交わり、略十字状に設けられる。従って、前後板51aの縁面51a1は、前側F及び後側Bに面して配置される。一方、左右板51bの縁面51b1は、図6に示す左側Lのピン51では右側Rに面して配置され、右側Rのピン51では左側Lに面して配置される。左右板51bの外方向側(縁面51b1と反対側)の基部51cは、補強のためのリブ31gがボス34を介して側板31cの内面と接続される。前後板51a及び左右板51bは、先端部51dが先窄み状であり、基部51cは先端部51dより幅広で、先端部51d側と基部51c側とは段部51eにより接続される。
【0019】
上板接続部31b2の後側Bの縁部には、縁壁部31fが設けられる。縁壁部31fの鍵の配列方向LRの両端部近傍(すなわち、コンソールパネル31の両端部近傍)には、縁壁部31fの縁面31f1(すなわちコンソールパネル31の外周)から第1方向D1に突出する羽根部材61(雄部(第1雄部)、突出片、フィンともいう)が延設される。羽根部材61は、斜辺側を内方向(左側の羽根部材61においては右側R、右側の羽根部材61では左側L)に向けた略三角形の板状とされ、平面が上下方向ULを向くように設けられる。羽根部材61は、羽根部材61の上側Upの面から下側Loの面である平面部に、先端部を介して亘る布部材であるフェルト部材62が貼着される。また、羽根部材61の基部には、縁面31f1と羽根部材61の下側Loの面とを接続する略三角形状のリブ63が鍵の配列方向LRに3カ所設けられる。羽根部材61は、先端から基部に亘って漸次板厚が厚くなるようテーパ状に設けられる。このようにして、ピン51と羽根部材61は、互いに略直交する方向に延設される。換言すれば、第1方向D1と第2方向D2は直交する。
【0020】
図7に示すように、コンソールパネル31の上板接続部31b2には、複数のボス配置部37が設けられる。ボス配置部37は、後述のスピーカカバー32に設けられるボス35が位置決めされて配置される。ボス配置部37は、内部形状が異なる第1ボス配置部37a、第2ボス配置部37b、第3ボス配置部37cを有する。ボス配置部37は、図7の左側Lから、第1ボス配置部37a、第3ボス配置部37c、第2ボス配置部37b、第3ボス配置部37c、第2ボス配置部37b、第1ボス配置部37aの順で鍵の配列方向LRに配置される。
【0021】
図6及び図7の拡大図(Q1~Q3)に示すように、ボス配置部37は、平面視において後側が開放された略U字状のU字状壁部37-1と、U字状壁部37-1と下側Loで接続する底板37-2を有する。U字状壁部37-1は、縁壁部31fと接続する。また、U字状壁部37-1は、上側Upから下側Loに向けて漸次幅狭となるようテーパ状に設けられる。底板37-2には、ボルト220(図4参照)が挿通される孔部37-3が設けられる。図7のQ1部及びQ3部拡大図に示すように、第1ボス配置部37aと第3ボス配置部37cの凹状の内部には、底板37-2の上側Upの面から立設する円弧状の規制壁部37a1,37c1が設けられる。規制壁部37a1,37c1は、後側Bに向けて凸円弧状とされ、略中央にリブ37a2,37c2が設けられる。第1ボス配置部37aのリブ37a2の前後方向FBの長さは、第3ボス配置部37cのリブ37c2よりも長い。また、第2ボス配置部37bの底板37-2の上側Upの面は、平坦面状である。
【0022】
また、ボス配置部37のうち、第1ボス配置部37a及び第3ボス配置部37cは、底板37-2の前後方向FBの距離が、スピーカカバー32のボス35の径よりも僅かに大きくされて略一致して設けられる。一方、第3ボス配置部37cのうち、ボリュームつまみ313近くの第3ボス配置部37c-1の底板37-2は、図8に示すように、円形に設けられる。すなわち、ボリュームつまみ313近くの第3ボス配置部37c-1の底板37-2の径は、スピーカカバー32のボス35の径よりも僅かに大きい径とされて略一致して設けられる。一方、第3ボス配置部37c-1以外のボス配置部37は、ボス35に比して、位置決め時にボス35が逃げるように、鍵の配列方向LRが大きくなるよう設けられる。
【0023】
すなわち、ボス35がボス配置部37に配置される際には、前後方向FBについては、第1ボス配置部37a及び第3ボス配置部37cにより位置決めされて、鍵の配列方向LRについては、ボリュームつまみ313近くの第3ボス配置部37c-1のみにより位置決めされる。よって、所定間隔を空けて配置される第1ボス配置部37a及び第3ボス配置部37cにより、スピーカカバー32の前端縁(後述する前壁部32e)とコンソールパネル31の段部31dとの間の隙間を均一にすることができる。なお、コンソールパネル31における鍵の配列方向LRの両端部(ボス配置部37aよりも左右外側)におけるスピーカカバー32の前端縁とコンソールパネル31の段部31dとの間の隙間は、後述するピン51とピン挿入孔55の嵌合により調整される。
【0024】
そして、コンソールパネル31とスピーカカバー32の鍵の配列方向LRの位置決めは、ボリュームつまみ313近くの第3ボス配置部37c-1のみにより位置決めされることにより、後述するボリュームつまみ313周りの環状リブ部31b3と、環状リブ部31b3に対応するスピーカカバー32の切欠部32cとの間の隙間が均一になるよう調整される。特に、スピーカカバー32は、布地33が設けられるので、環状リブ部31b3と切欠部32c間の隙間の不均一が目立ちやすいため、ボリュームつまみ313近くの第3ボス配置部37c-1により前後方向FB及び鍵の配列方向LRにおけるコンソールパネル31に対するスピーカカバー32の位置決めを行う本構成は好適である。
【0025】
図8及び図9に示すように、ボリュームつまみ313の外周における上板接続部31b2の上面には、円弧状に形成される環状リブ部31b3が設けられる。さらに、図8及び図10に示すように、上板接続部31b2の上面における段部31d近傍には、鍵の配列方向LRに延在するリブ部31b4が設けられる。なお、環状リブ部31b3の外周側には、リブ部31b4は設けられていない(図9も参照)。
【0026】
図10に示すように、リブ部31b4は、スピーカカバー32の前壁部32eにおける下側Loの面を受けることができる。なお、環状リブ部31b3の外周にリブ部31b4を設けないことで、スピーカカバー32が上から押圧されたとしても、上板接続部31b2が撓むことが無い。従って、上板接続部31b2がボリュームつまみ313のフランジ部313a(図9参照)を押圧してボリュームつまみ313の回動を阻害することがない。また、環状リブ部31b3により、後述の重畳配置部75に隣接して配置されるボリュームつまみ313の回動操作時に、布地33を巻き込んでしまうことが低減される。
【0027】
図1及び図2に示すように、コンソールパネル31の後側Bには、コンソールパネル31と鍵の配列方向LRが略同幅とされる平板状のスピーカカバー32が設けられる。スピーカカバー32は、図2に示すように、上ケース21の上面の両端部近傍に配置されるスピーカ13に対応して複数の孔を備えるスピーカ孔部32aを有する。
【0028】
図3及び図4に示すように、スピーカ孔部32aは、外周に環状の壁部32a1が設けられる。壁部32a1は、両端部が半円状の角丸長矩形状とされる。また、図4に示すように、スピーカカバー32の前側Fの内面からは、コンソールパネル31との接続用の複数のボス35が立設する。ボス35は、雌ねじ部が設けられ、ボス配置部37に対応して、鍵の配列方向LRに沿って配置される。
【0029】
スピーカカバー32の後側B及び左右の側縁には、下側Loに突出するように壁部32dが設けられる。そして、左右の側縁の壁部32dの端部を接続するようにして、スピーカカバー32の前側Fの縁部には前壁部32eが設けられる。図5に示すように、壁部32dは、内側に段部32d1が設けられる。前壁部32eは、壁部32dよりも高さが十分に低い。コンソールパネル31と対向する縁部とされる前壁部32eの内側近傍であるスピーカカバー32の内面(下側Loの面)には、前壁部32eである縁部に沿って、鍵の配列方向LRに直線状に延在する凹溝部32fが設けられる(図9及び図10も参照)。ここで、スピーカカバー32に布地33を巻き付ける製造工程においては、スピーカカバー32に巻き付けた布地33をカッターナイフ等で切断するが、高さが比較的高い壁部32dでは壁部32dの段部32d1の縁線に沿って布地を切断することができる。高さが低い前壁部32eにおいては、布地33を切断するカッターナイフ等の刃を凹溝部32fに挿入して布地33を切断することができる。
【0030】
スピーカ孔部32aの壁部32a1やスピーカカバー32の外周に立設する壁部32d、及び、ボルト210,220が螺合するボス34やボス35は、前後方向FB及び鍵の配列方向LRに延在して格子状に配置されるリブ32bが適宜接続される。また、図7に示すように、スピーカカバー32におけるボリュームつまみ313(環状リブ部31b3)に対応する部位には、半円状の切欠部32cが設けられる。
【0031】
図4に示すように、スピーカカバー32の内面における両端部近傍には、被挿入部65が設けられる。図5に示すように、被挿入部65は、羽根部材61に対応する位置であるスピーカカバー32の前側Fの角部に設けられる。被挿入部65は、鍵の配列方向LRに長い長矩形の箱状とされ、前側Fは鍵の配列方向LRに長い長矩形状に開口する平孔部65a(第1雌部、突出片挿入孔、長孔ともいう)が設けられる。なお、被挿入部65は、スピーカ孔部32aの壁部32a1と接続して、この接続部分が壁部32a1に倣って凹円弧状とされる。
【0032】
すなわち、本発明の一実施例の電子機器は、外周から第1方向D1に突出する第1雄部(羽根部材61)を有する第1取付部材(コンソールパネル31)と、前記第1雄部が篏合する第1雌部(平孔部65a)を有する第2取付部材(スピーカカバー32)と、を有する取付部材(上面部材30)と、前記取付部材が取り付けられる被取付部材(楽器ケース20、上ケース21)と、を有する。前記取付部材は、前記第1方向D1とは異なる第2方向D2に延びる第2雄部(ピン51)及び、前記第2雄部に対応する第2雌部(ピン挿入孔55)のいずれか一方を含み、前記被取付部材は、前記第2雄部及び前記第2雌部のいずれか他方を含む。第1方向D1に突出する第1雄部と第1雌部により上下方向の撓みを抑制しつつ、第2方向D2に延びる第2雄部(ピン51)が第2雌部(ピン挿入孔55)に挿入されることにより第1取付部材と第2取付部材の間の隙間が調整され、第1取付部材と第2取付部材と被取付部材とを互いに良好に固定できる。
【0033】
さらに詳細には、鍵の配列方向LRにおける上面部材30の第1ボス配置部37a間は、前述の各ボス配置部37における底板37-2の形状により鍵の配列方向LR及び前後方向FBの位置決めがなされた上、ボルト220により固定されて、上下方向ULも位置決めがなされる。一方、上面部材30の両端部分は、スピーカ13が配置される関係で十分なスペースが無く、ボス配置部37を設けることができなかった。しかしながら、羽根部材61及び平孔部65a、ピン51及びピン挿入孔55により、鍵の配列方向LR、前後方向FB及び上下方向ULの位置決めがなされている。このようにして、スペースの制約がある部位であっても、第1取付部材と第2取付部材及び取付部材と被取付部材とを互いに良好に固定できる。
【0034】
また、前記第1雄部は前記第1方向D1に突出する幅広の突出片(羽根部材61)を含み、この突出片は、幅方向(鍵の配列方向LR)の長さが厚み方向(羽根部材61の板厚)の長さより長い。また、前記突出片が挿入される前記第1雌部は、前記幅方向(平孔部65aの幅方向、鍵の配列方向LR)の長さが前記厚み方向(平孔部65aの高さ方向)の長さより長い長孔を含む。これにより、板状の第1取付部材と板状の第2取付部材とが組み合わされた状態で第1雄部が上下方向及び左右方向で第1雌部と接触したとしても第1雄部の強度を確保できる。
【0035】
また、第1取付部材及び第2取付部材のいずれかは一方は、第2方向D2に延びるボス35を有する。第1取付部材及び第2取付部材のいずれか他方は、ボス配置部37を有する。第1取付部材と第2取付部材は、第1方向D1に延びる第1雄部と第1雌部が篏合した状態で、第2方向D2に延びるボス35がボス配置部37の位置で固定され、その後、被取付部材に取り付けられる。第1取付部材と第2取付部材は、第1方向D1に延びる第1雄部と第1雌部が篏合した状態で、第2方向D2に延びるボス35がボス配置部37の位置で固定されているので、第1取付部材と第2取付部材は、良好に組み合わさり、はずれにくいという利点を有する。
【0036】
次に、本発明の一実施例の電子機器の製造方法を説明する。先ず、図11(a)及び図11(b)に示すように、まず第1工程では、第1取付部材(コンソールパネル31)の外周から第1方向D1に突出する第1雄部(羽根部材61)を第2取付部材(スピーカカバー32)における第1雌部(平孔部65a)に嵌合させる。第1取付部材側にボリュームつまみ313(凸部)が設けられ、第2取付部材側に切欠部32c(凹部)が設けられているため、第1取付部材と第2取付部材は篏合させやすい。また、切欠部32cの最も近くに設けられるボス35が、第1取付部材と第2取付部材の位置を決める機能を有する。
【0037】
次に、図12(a)及び図12(b)に示すように、第2工程では、前記第1取付部材及び前記第2取付部材のいずれか一方に設けられている前記第1方向D1とは異なる第2方向D2に延びる第2雄部(ピン51)が被取付部材(上ケース21)に含まれる第2雌部(ピン挿入孔55)に嵌合する(第2工程の第1実施例)、又は、被取付部材に含まれる前記第1方向とは異なる第2方向に延びる第2雄部が前記第1取付部材及び前記第2取付部材の何れか一方に設けられている第2雌部に嵌合する(第2工程の第2実施例)。これにより、被取付部材に第1取付部材と第2取付部材とを含む取付部材が取り付けられるので、それぞれの部材が互いに良好に固定できる。そのため手作業にて組立作業を行っても、第1取付部材と第2取付部材との間の隙間が良好に調整された電子機器を製造することができる。
【0038】
そして、第2工程において、前記第2雄部が前記第2雌部に嵌合するときに、前記第1取付部材及び第2取付部材のいずれか一方に設けられる壁面摺動部70が、被取付部材に含まれる壁部21bに接触する。そして、前記壁面摺動部70が壁部21bに接触する前(つまり、図12(a)の状態)と比べて、前記壁面摺動部70が前記壁部21bに接触した後、前記第1取付部材と前記第2取付部材の隙間(スピーカカバー32の前端縁とコンソールパネル31の段部31dとの間の隙間)が狭くなるように調整する。本実施例において、第1取付部材及び第2取付部材は両端側では固定されていない。従って両端側における第1取付部材と第2取付部材の間の隙間は、両端側以外の他の部分の隙間よりも鍵の前後方向に大きくなる或いは小さくなりやすい。しかし、このような製造方法を採用することで、壁面摺動部70により、第1取付部材と第2取付部材の間の隙間が良好に調整された電子機器を製造することができる。すなわち、見栄えのよい電子機器を提供することができる。
【0039】
電子機器としての電子鍵盤楽器10の製造方法は、具体的には以下の通りである。コンソールパネル31とスピーカカバー32とを組み合わせる際には、図11(a)に示すように、羽根部材61は、被挿入部65の平孔部65aに挿入され嵌合される。羽根部材61は、フェルト部材62及びテーパ形状により平孔部65aに圧入される。これにより、羽根部材61は、平孔部65aと平面部に垂直な方向に当接する。一方、羽根部材61は、平孔部65aの鍵の配列方向LRに対しては、所定のクリアランスを有している。従って、羽根部材61は、平孔部65aの上下方向ULは位置決めされる。
【0040】
またここで、図7のQ1部、Q3部の拡大図及び図10を参照する。コンソールパネル31とスピーカカバー32とを組み合わせる際には、ボス35がボス配置部37に収納される。このとき、第1ボス配置部37a及び第3ボス配置部37cに配置されるボス35は、規制壁部37a1,37c1と、U字状壁部37-1の下端により、前後方向FBでボス35と当接する。このようにして、ボス35は前後方向FBに位置決めされる。また、ボス35の鍵の配列方向LRの位置は、U字状壁部37-1の鍵の配列方向LRにおける壁部により凡そ位置決めされる。そして、ボリュームつまみ313近くの第3ボス配置部37c-1の底板37-2により、第3ボス配置部37c-1に対応するボス35は、鍵の配列方向LRの位置決めがなされ、スピーカカバー32はコンソールパネル31に対して鍵の配列方向LRの位置決めがなされる。
【0041】
なお、ボス35がボス配置部37(第1ボス配置部37a及び第3ボス配置部37c)に配置される際には、ボス35の先端部がリブ37c2の傾斜面上を摺接して案内されるので、スムーズにU字状壁部37-1と規制壁部37a1,37c1との間に配置される。ボス配置部37に配置されたボス35は、ボルト220が螺合され、コンソールパネル31とスピーカカバー32は固定される。
【0042】
コンソールパネル31とスピーカカバー32とが組み合わされると、前壁部32eを含むスピーカカバー32の前側Fの近傍が、コンソールパネル31の上板接続部31b2の上側Upに配置される。このように、コンソールパネル31とスピーカカバー32は、一方が上側Upに配置されて他方が下側に配置され重畳する重畳配置部75を有する。図11(b)に示すように、コンソールパネル31とスピーカカバー32の組合せ後、ボス配置部37を介してボルト220とボス35の雌ねじ部を螺合して、コンソールパネル31とスピーカカバー32とを互いに固定する。
【0043】
図12(a)に示すように、組み合わされたコンソールパネル31とスピーカカバー32を備える上面部材30は、楽器ケース20の上ケース21に取り付けられる。このとき、ピン51は、ピン挿入孔55に挿入される。ピン51は、ピン51の前後板51aにおける前側の縁面51a1が、ピン挿入孔55の前側Fの直線部55aの板厚面と当接する。このように、前後方向FBの平坦面同士の当接とすることができるので、丸ピンと丸穴の係合に比して、コンソールパネル31の反りの矯正量を設定し易くすることができる。
【0044】
また、図12(b)に示すように、スピーカカバー32の後側Bの壁部32dは、上面部材取付部21aの後側Bの壁部21bと、壁面同士が向かい合う対向面とされる。そして、上面部材30は、上ケース21との該対向面に壁面摺動部70を有する。ここで、コンソールパネル31は、鍵の配列方向LRに長い射出成形により製造される部材であり、両端部が前側F、略中央付近が後側Bに向かう方向に反りが生じることがある。すると、スピーカカバー32の前側Fの縁(前壁部32e)とコンソールパネル31の両端部付近の段部31dとの間に隙間が生じることがある。しかしながら、ピン51がピン挿入孔55に挿入され、コンソールパネル31の反りは矯正される。矯正量が多い場合には、鍵の配列方向LRの略中央部で壁面摺動部70の壁部32dと壁部21bが摺動し、ピン51のピン挿入孔55への挿入による矯正と共にコンソールパネル31の反りを矯正する。
【0045】
すなわち、ピン挿入孔55にピン51が挿入されて被取付部材(上ケース21、楽器ケース20)に取付部材(上面部材30)が取り付けられる際に、取付部材の壁面摺動部70が被取付部材に接触することにより、前記第1取付部材と前記第2取付部材の間の隙間が調整される。
【0046】
そして、図12(b)に示すように、上面部材30は、ボルト210がボス34の雌ねじ部に螺合して、上ケース21に固定される。ここで、後側Bの複数のボルト210は、図2に示すように、上ケース21の対応する後側Bのボルト孔部21cを介してスピーカカバー32の後側Bのボス34(図3及び図4参照)の雌ねじ部に螺合する。ボルト孔部21cは、ボス34の先端部が当接する座面21c1を備える。複数のボルト孔部21cのうち、略中央のボルト孔部21cの座面21c1は、略円形に設けられる(図2のP2部拡大図参照)。一方、略中央のボルト孔部21c以外のボルト孔部21c(代表的に、図2においてP3部の拡大図を示す)における鍵の配列方向LRの長さは、ボス34の径よりも大きい。従って、鍵の配列方向LRについては、上面部材30は、上ケース21に対して、略中央のボルト孔部21cの座面21c1により位置決めされている。ボルト孔部21cは、上ケース21の上面部材取付部21aの鍵の配列方向LRに亘って設けられるので、位置決めを行う箇所を略中央のボルト孔部21cとすることでバランスよく上面部材30を上ケース21に配置することができる。なお、前述の通り、ピン挿入孔55は、鍵の配列方向LRを長軸方向とする長孔状に設けられるので、ピン51は鍵の配列方向LRに逃がされる。また、ボルト孔部21cの座面21c1の前後方向FBの長さは、ボス35の径に比して、僅かに大きくされて略一致している。
【0047】
上面部材30の上ケース21への組付け後、鍵盤11等の他の部材が組付けられた下ケース22に、上ケース21から立設する固定用ボス21dの雌ねじ部に螺合する図示しないボルトを用いて、上面部材30が取り付けられた上ケース21を下ケース22に組み付けて、図13のように電子鍵盤楽器10を製造する。
【0048】
このようにして、コンソールパネル31の反りが矯正されるので、コンソールパネル31とスピーカカバー32との隙間が鍵の配列方向LRにおいて均一化されて、さらにコンソールパネル31の上板本体部31b1とスピーカカバー32の上面とが略連続平面とされて、見栄えの良い電子鍵盤楽器10とすることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態によって限定されることは無く、種々の変更を加えて実施することができる。例えば、ピン51とピン挿入孔55の配置は、コンソールパネル31にピン挿入孔55を設け、上ケース21にピン51を設けてもよい。同様に、羽根部材61と平孔部65aは逆の配置でもよい。
【0050】
以上の本発明の実施形態によれば、電子機器である電子鍵盤楽器10は、外周から第1方向D1に突出する第1雄部である羽根部材61を有する第1取付部材であるコンソールパネル31と、羽根部材61に対応する第1雌部である平孔部65aを有する第2取付部材であるスピーカカバー32と、を有する取付部材である上面部材30と、上面部材30が取り付けられる被取付部材である楽器ケース20(上ケース21)を有する。そして、上面部材30は、第1方向D1とは異なる第2方向D2に延びる第2雄部であるピン51及び、ピン51が挿入される第2雌部であるピン挿入孔55の何れか一方を含み、楽器ケース20(上ケース21)は、ピン51及びピン挿入孔55の何れか他方を含む。
【0051】
これにより、上面部材30の上ケース21に対する位置決めを的確に行いつつ、コンソールパネル31の反りを矯正して、コンソールパネル31とスピーカカバー32との間に生じる隙間を適正なものとされる。よって、上面部材30を楽器ケース20に良好に固定することができる。
【0052】
また、羽根部材61は、第1方向D1に突出する幅広の突出片であって、幅方向の長さが厚み方向の長さより長い。平孔部65aは、羽根部材61が挿入される、幅方向の長さが厚み方向の長さより長い長孔を含む。これにより、羽根部材61の強度を確保しつつ、板状のコンソールパネル31やスピーカカバー32に配置し易いものとすることができる。
【0053】
また、上面部材30(スピーカカバー32)は、上ケース21の壁部21bの内側の面との対向面である壁部32dの外側面に壁面摺動部70を有する。これにより、ピン51のピン挿入孔55への挿入と共に、コンソールパネル31とスピーカカバー32の隙間を調整することができる。
【0054】
また、コンソールパネル31及びスピーカカバー32は、コンソールパネル31とスピーカカバー32のうち一方が他方に重畳する重畳配置部75を有し、コンソールパネル31には、スピーカカバー32を受けるリブ部31b4が設けられている。これにより、スピーカカバー32が押圧されることが有っても、リブ部31b4で受けることができるので、スピーカカバー32やコンソールパネル31の変形を低減することができる。
【0055】
また、スピーカカバー32は、コンソールパネル31と対応する縁部である前壁部32eの近傍に、前壁部32eに沿って設けられる凹溝部32fを有する。これにより、コンソールパネル31と対向する縁部であるために前壁部32eの高さを高く出来ない場合であっても、製造工程において布地33を巻いた後の切断処理を効率よく行うことができる。
【0056】
また、上面部材30及び楽器ケース20(上ケース21)は、長尺状に設けられ、ピン51及びピン挿入孔55は、長尺方向の両端部近傍にそれぞれ設けられている。これにより、長尺状である上面部材30のコンソールパネル31の反りの矯正をし易くし、適正に上面部材30の位置決めを行うことができる。
【0057】
また、羽根部材61は、平面部に布部材であるフェルト部材62が貼着される。これにより、電子機器が振動するような場合(例えば電子鍵盤楽器10の演奏中)であっても、羽根部材61が平孔部65aの内部で衝突することによる異音の発生を低減することができる。
【0058】
また、電子機器である電子鍵盤楽器10は、鍵盤11を有する。これにより、上面部材30を楽器ケース20に良好に固定する電子鍵盤楽器10を提供することができる。
【0059】
また、電子機器である電子鍵盤楽器10の製造方法は、第1取付部材であるコンソールパネル31の外周から第1方向D1に突出する第1雄部である羽根部材61を第2取付部材であるスピーカカバー32における第1雌部である平孔部65aに嵌合する。そして、コンソールパネル31及びスピーカカバー32のいずれか一方に設けられている第1方向D1とは異なる第2方向D2に延びる第2雄部であるピン51が被取付部材である楽器ケース20に含まれる第2雌部であるピン挿入孔55に嵌合する。これにより、コンソールパネル31とスピーカカバー32との隙間が調整され、良好に上面部材30が楽器ケース20に取り付けられた電子鍵盤楽器10を製造することができる。
【0060】
また、ピン51がピン挿入孔55に嵌合するときに、上面部材30の壁面摺動部70が上ケース21の壁部21bに接触する。これにより、上面部材30は、適正に案内されつつ上ケース21に取り付けることができる。
【0061】
また、壁面摺動部70が壁部21bに接触する前と比べて、壁面摺動部70が壁部21bに接触した後、コンソールパネル31とスピーカカバー32の間の隙間が狭くなるように調整する。これにより、上面視弓状に反って射出成形されるコンソールパネル31であっても、コンソールパネル31とスピーカカバー32の間の隙間が中央部から左右の両端部に亘って均一とされて、見栄えの良い電子鍵盤楽器10を製造することができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0063】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]外周から第1方向に突出する第1雄部を有する第1取付部材と、前記第1雄部に対応する第1雌部を有する第2取付部材と、を有する取付部材と、
前記取付部材が取り付けられる被取付部材と、
を有し、
前記取付部材は、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる第2雄部及び、前記第2雄部に対応する第2雌部のいずれか一方を含み、
前記被取付部材は、前記第2雄部及び前記第2雌部のいずれか他方を含む、
電子機器。
[2]前記第1雄部は、前記第1方向に突出する幅広の突出片であって、幅方向の長さが厚み方向の長さより長い突出片を含み、
前記第1雌部は、前記突出片が挿入される、前記幅方向の長さが前記厚み方向の長さより長い長孔を含む、
前記[1]に記載の電子機器。
[3]前記取付部材は、前記被取付部材との対向面に壁面摺動部を有する、
前記[1]又は前記[2]に記載の電子機器。
[4]前記第1取付部材及び前記第2取付部材は、前記第1取付部材と前記第2取付部材のうち一方が他方に重畳する重畳配置部を有し、
前記他方の部材には、前記一方の部材を受けるリブ部が設けられている、
前記[1]乃至前記[3]のいずれかに記載の電子機器。
[5]前記第2取付部材は、前記第1取付部材と対向する縁部の近傍に前記縁部に沿って設けられる凹溝部を有する前記[1]乃至前記[4]の何れかに記載の電子機器。
[6]前記取付部材及び前記被取付部材は、それぞれ長尺状に設けられ、
前記第2雄部及び前記第2雌部は、長尺方向の両端部近傍にそれぞれ設けられている前記[1]乃至前記[5]の何れかに記載の電子機器。
[7]前記第1雄部は、平面部に布部材が貼着されている前記[1]乃至前記[6]のいずれかに記載の電子機器。
[8]前記[1]乃至前記[7]の何れかに記載の電子機器と、
鍵盤と、
を備える電子鍵盤楽器。
[9]第1取付部材の外周から第1方向に突出する第1雄部を第2取付部材における第1雌部に篏合し、
前記第1取付部材及び前記第2取付部材のいずれか一方に設けられている前記第1方向とは異なる第2方向に延びる第2雄部が被取付部材に含まれる第2雌部に篏合する、又は、被取付部材に含まれる前記第1方向とは異なる第2方向に延びる第2雄部が前記第1取付部材及び前記第2取付部材のいずれか一方に設けられている第2雌部に篏合する、
電子機器の製造方法。
[10]前記第2雄部が前記第2雌部に篏合するときに、前記第1取付部材及び前記第2取付部材のいずれか一方に設けられる壁面摺動部が、前記被取付部材に含まれる壁部に接触する、
前記[9]に記載の製造方法。
[11]前記壁面摺動部が前記壁部に接触する前と比べて、前記壁面摺動部が前記壁部に接触した後、前記第1取付部材と前記第2取付部材の間の隙間が狭くなるように調整する、
前記[10]に記載の製造方法。
【符号の説明】
【0064】
10 電子鍵盤楽器 11 鍵盤
13 スピーカ 20 楽器ケース
21 上ケース 21a 上面部材取付部
21b 壁部 21c ボルト孔部
21c1 座面 22 下ケース
30 上面部材 31 コンソールパネル
31a 前板 31a1 リブ
31b 上板 31b1 上板本体部
31b2 上板接続部 31b3 環状リブ部
31b4 リブ部 31c 側板
31d 段部 31e 円弧状部
31f 縁壁部 31f1 縁面
31g リブ 32 スピーカカバー
32a スピーカ孔部 32a1 壁部
32b リブ 32c 切欠部
32d 壁部 32d1 段部
32e 前壁部 32f 凹溝部
33 布地 34 ボス
35 ボス 36 フェルト部材
37 ボス配置部 37-1 U字状壁部
37-2 底板 37-3 孔部
37a 第1ボス配置部 37a1 規制壁部
37a2 リブ 37b 第2ボス配置部
37c 第3ボス配置部 37c1 規制壁部
37c2 リブ 51 ピン
51a 前後板
51a1 縁面 51b 左右板
51b1 縁面 51c 基部
51c 先端部 55 ピン挿入部
55a 直線部 55b 円弧状部
61 羽根部材
61a 平孔部 62 フェルト部材
63 リブ 65 被挿入部
65a 平孔部 70 壁面摺動部
75 重畳配置部 210 ボルト
220 ボルト 310 操作部
311 電源ボタン 312 操作ボタン
313a フランジ部 314 LED表示部
315 基板
B 後側 F 前側
FB 前後方向 L 左側
LR 鍵の配列方向 Lo 下側
R 右側 UL 上下方向
Up 上側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13