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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】パーキング機構、および駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20250304BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20250304BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
F16H63/34
B60T1/06 G
F16D63/00 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021034108
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2022134745
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】田村 翼
(72)【発明者】
【氏名】麻生 啓介
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-193465(JP,A)
【文献】中国実用新案第209299078(CN,U)
【文献】特開2021-16257(JP,A)
【文献】特開2017-67108(JP,A)
【文献】特表2022-506791(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110425277(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60T 1/06
F16D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びる中心軸を中心として回転可能な被駆動シャフトと、
前記被駆動シャフトの回転に伴って回転する可動部と、
爪部を有し、前記可動部の回転に伴って移動する歯止め部材と、
前記爪部が噛み合い可能なパーキングギヤと、
前記可動部の回転方向において前記可動部に接触可能なストッパ部と、
を備え、
前記歯止め部材の位置は、前記可動部の回転に伴って、前記爪部が前記パーキングギヤに噛み合うパーキング位置と、前記爪部が前記パーキングギヤから離れる非パーキング位置と、に切り替えられ、
前記可動部は、
前記被駆動シャフトに取り付けられた第1弾性部材と、
前記第1弾性部材を介して前記被駆動シャフトに連結され、前記歯止め部材に接触する接触部材と、
を有し、
前記接触部材は、前記歯止め部材に接触するカム面を有し、前記第1弾性部材が弾性変形することで前記被駆動シャフトに対して前記回転方向に相対回転可能であり、かつ、前記ストッパ部に前記回転方向に接触可能であり、
前記ストッパ部は、前記歯止め部材の位置が前記パーキング位置と前記非パーキング位置との間で切り替えられる際において、前記接触部材と前記回転方向に対し、
前記カム面のうち前記ストッパ部から前記回転方向に遠い側の端部と前記カム面のうち前記歯止め部材に接触している部分との間の前記回転方向の角度は、前記カム面のうち前記ストッパ部に前記回転方向に近い側の端部と前記ストッパ部との間の前記回転方向の角度よりも大きい、パーキング機構。
【請求項2】
前記ストッパ部は、前記接触部材に対して、前記回転方向において前記歯止め部材の位置が前記パーキング位置から前記非パーキング位置に切り替えられる際に前記接触部材が移動する側に位置する、請求項1に記載のパーキング機構。
【請求項3】
前記接触部材は、前記被駆動シャフトから径方向外側に突出し、かつ、前記中心軸回りの周方向に回転可能であり、
前記ストッパ部は、前記接触部材の周方向側面と周方向に対向している、請求項1または2に記載のパーキング機構。
【請求項4】
前記接触部材のうち前記ストッパ部と対向する部分は、前記接触部材のうち前記第1弾性部材が接続された部分よりも径方向外側に位置する、請求項3に記載のパーキング機構。
【請求項5】
前記接触部材は、前記回転方向を向く平坦な第1対向面を有し、
前記ストッパ部は、前記第1対向面と前記回転方向に対向する平坦な第2対向面を有し、
前記第1対向面と前記第2対向面とは、互いに接触可能である、請求項1からのいずれか一項に記載のパーキング機構。
【請求項6】
車両に搭載される駆動装置であって、
前記駆動装置を駆動する動力部と、
前記動力部に接続された伝達機構部と、
前記伝達機構部に取り付けられた請求項1からのいずれか一項に記載のパーキング機構と、
前記動力部、前記伝達機構部、および前記パーキング機構を内部に収容するハウジングと、
を備える、駆動装置。
【請求項7】
前記可動部は、前記被駆動シャフトに固定された被固定部材を有し、
前記第1弾性部材は、前記被固定部材を介して前記被駆動シャフトに取り付けられ、かつ、前記被固定部材と前記接触部材とを連結し、
前記ハウジングは、前記回転方向において前記被固定部材に接触可能な突き当て部を有し、
前記突き当て部は、前記被固定部材に対して、前記回転方向において前記ストッパ部が前記接触部材に対して位置する側と同じ側に位置し、
前記ストッパ部と前記接触部材との間の前記回転方向の角度は、前記突き当て部と前記被固定部材との間の前記回転方向の角度よりも大きい、請求項に記載の駆動装置。
【請求項8】
車両に搭載される駆動装置であって、
前記駆動装置を駆動する動力部と、
前記動力部に接続された伝達機構部と、
前記伝達機構部に取り付けられたパーキング機構と、
前記動力部、前記伝達機構部、および前記パーキング機構を内部に収容するハウジングと、
を備え、
前記パーキング機構は、
所定方向に延びる中心軸を中心として回転可能な被駆動シャフトと、
前記被駆動シャフトの回転に伴って回転する可動部と、
爪部を有し、前記可動部の回転に伴って移動する歯止め部材と、
前記爪部が噛み合い可能なパーキングギヤと、
前記可動部の回転方向において前記可動部に接触可能なストッパ部と、
を有し、
前記歯止め部材の位置は、前記可動部の回転に伴って、前記爪部が前記パーキングギヤに噛み合うパーキング位置と、前記爪部が前記パーキングギヤから離れる非パーキング位置と、に切り替えられ、
前記可動部は、
前記被駆動シャフトに取り付けられた第1弾性部材と、
前記第1弾性部材を介して前記被駆動シャフトに連結され、前記歯止め部材に接触する接触部材と、
前記被駆動シャフトに固定された被固定部材と、
を有し、
前記接触部材は、前記第1弾性部材が弾性変形することで前記被駆動シャフトに対して前記回転方向に相対回転可能であり、かつ、前記ストッパ部に前記回転方向に接触可能であり、
前記ストッパ部は、前記歯止め部材の位置が前記パーキング位置と前記非パーキング位置との間で切り替えられる際において、前記接触部材と前記回転方向に対向し、
前記第1弾性部材は、前記被固定部材を介して前記被駆動シャフトに取り付けられ、かつ、前記被固定部材と前記接触部材とを連結し、
前記ハウジングは、前記回転方向において前記被固定部材に接触可能な突き当て部を有し、
前記突き当て部は、前記被固定部材に対して、前記回転方向において前記ストッパ部が前記接触部材に対して位置する側と同じ側に位置し、
前記ストッパ部と前記接触部材との間の前記回転方向の角度は、前記突き当て部と前記被固定部材との間の前記回転方向の角度よりも大きい、駆動装置。
【請求項9】
前記ストッパ部は、前記接触部材に対して、前記回転方向において前記歯止め部材の位置が前記パーキング位置から前記非パーキング位置に切り替えられる際に前記接触部材が移動する側に位置する、請求項8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記接触部材は、前記被駆動シャフトから径方向外側に突出し、かつ、前記中心軸回りの周方向に回転可能であり、
前記ストッパ部は、前記接触部材の周方向側面と周方向に対向している、請求項8または9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記接触部材のうち前記ストッパ部と対向する部分は、前記接触部材のうち前記第1弾性部材が接続された部分よりも径方向外側に位置する、請求項10に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記接触部材は、前記回転方向を向く平坦な第1対向面を有し、
前記ストッパ部は、前記第1対向面と前記回転方向に対向する平坦な第2対向面を有し、
前記第1対向面と前記第2対向面とは、互いに接触可能である、請求項8から11のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記パーキング機構は、第2弾性部材をさらに備え、
前記被固定部材は、前記第2弾性部材が引っ掛けられる溝部を有する、請求項7から12のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記ストッパ部は、前記ハウジングの内壁に設けられている、請求項から13のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記ハウジングは、
前記動力部を内部に収容する第1ハウジングと、
前記伝達機構部を内部に収容する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングの内部と前記第2ハウジングの内部とを仕切る隔壁と、
を有し、
前記ストッパ部は、前記第2ハウジングの内壁のうち前記隔壁とは異なる部分に設けられている、請求項14に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキング機構、および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両に搭載されるパーキングロック機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国実用新案第205001503号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パーキングロック機構においては、可動部を回転させることで歯止め部材を移動させ、歯止め部材の爪部をパーキングギヤに噛み合わせることで車両をパーキング状態にする場合がある。この場合、例えば、爪部がパーキングギヤの歯部に接触して歯止め部材が跳ね上げられた場合などに、可動部が回転しすぎて、歯止め部材から外れる恐れがあった。そのため、パーキングロック機構の動作に不具合が生じる虞があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、信頼性を向上できる構造を有するパーキング機構、およびそのようなパーキング機構を備える駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパーキング機構の一つの態様は、所定方向に延びる中心軸を中心として回転可能な被駆動シャフトと、前記被駆動シャフトの回転に伴って回転する可動部と、爪部を有し、前記可動部の回転に伴って移動する歯止め部材と、前記爪部が噛み合い可能なパーキングギヤと、前記可動部の回転方向において前記可動部に接触可能なストッパ部と、を備える。前記歯止め部材の位置は、前記可動部の回転に伴って、前記爪部が前記パーキングギヤに噛み合うパーキング位置と、前記爪部が前記パーキングギヤから離れる非パーキング位置と、に切り替えられる。前記可動部は、前記被駆動シャフトに取り付けられた第1弾性部材と、前記第1弾性部材を介して前記被駆動シャフトに連結され、前記歯止め部材に接触する接触部材と、を有する。前記接触部材は、前記第1弾性部材が弾性変形することで前記被駆動シャフトに対して前記回転方向に相対回転可能であり、かつ、前記ストッパ部に前記回転方向に接触可能である。前記ストッパ部は、前記歯止め部材の位置が前記パーキング位置と前記非パーキング位置との間で切り替えられる際において、前記接触部材と前記回転方向に間隔を空けて対向している。
【0007】
本発明の駆動装置の一つの態様は、車両に搭載される駆動装置であって、前記駆動装置を駆動する動力部と、前記動力部に接続された伝達機構部と、前記伝達機構部に取り付けられた上記のパーキング機構と、前記動力部、前記伝達機構部、および前記パーキング機構を内部に収容するハウジングと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、パーキング機構の信頼性を向上できる。
【0009】
本発明の一つの態様によれば、駆動装置において、パーキング機構の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態の駆動装置を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本実施形態の駆動装置の一部を示す断面図である。
図3図3は、本実施形態のパーキング機構を示す斜視図である。
図4図4は、本実施形態のパーキング機構の一部を示す分解斜視図である。
図5図5は、本実施形態の被固定部材を示す斜視図である。
図6図6は、本実施形態のパーキング機構を右側から見た図である。
図7図7は、本実施形態のパーキング機構を右側から見た図であって、接触部材がストッパ部に接触した状態を示す図である。
図8図8は、本実施形態のパーキング機構を右側から見た図であって、被固定部材が突き当て部に突き当てられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
各図には、X軸と、X軸に直交するY軸と、X軸およびY軸に直交するZ軸と、を示している。以下の説明においては、Z軸に平行な方向を「上下方向」と呼び、Y軸に平行な方向を「左右方向」と呼び、X軸に平行な方向を「前後方向」と呼ぶ。上下方向と左右方向と前後方向とは、互いに直交する方向である。上下方向は、例えば、図1に示す駆動装置100が搭載される車両における上下方向である。左右方向は、例えば、駆動装置100が搭載される車両における左右方向である。前後方向は、例えば、駆動装置100が搭載される車両における前後方向である。
【0012】
上下方向のうち、Z軸の矢印が向く正の側を上側と呼び、Z軸の矢印が向く側と逆側の負の側を下側と呼ぶ。左右方向のうち、Y軸の矢印が向く正の側を左側と呼び、Y軸の矢印が向く側と逆側の負の側を右側と呼ぶ。前後方向のうち、X軸の矢印が向く正の側を前側と呼び、X軸の矢印が向く側と逆側の負の側を後側と呼ぶ。
【0013】
以下の実施形態において、左右方向は「所定方向」に相当する。なお、上下方向、左右方向、前後方向、上側、下側、左側、右側、前側、および後側とは、単に各部の配置関係等を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0014】
図1に示す本実施形態の駆動装置100は、車両に搭載され、車軸86を回転させる駆動装置である。図1に示すように、駆動装置100は、動力部80aと、伝達機構部80bと、パーキング機構10と、ハウジング85と、電動アクチュエータ90と、を備える。
【0015】
ハウジング85は、動力部80a、伝達機構部80b、およびパーキング機構10を内部に収容している。ハウジング85は、動力部80aを収容する第1ハウジング85aと、伝達機構部80bおよびパーキング機構10を収容する第2ハウジング85bと、を有する。第2ハウジング85bは、例えば、第1ハウジング85aの左側に繋がっている。第1ハウジング85aの内部および第2ハウジング85bの内部には、例えば、オイルOが貯留されている。
【0016】
図2に示すように、第2ハウジング85bは、第1部材87と、第2部材88と、を有する。第1部材87と第2部材88とは、互いに別部材である。第2部材88は、第1部材87に固定されている。本実施形態では、第1部材87と第2部材88とが固定されることで、第2ハウジング85bが構成されている。第2部材88は、例えば、第1部材87の左側に位置する。
【0017】
第1部材87は、隔壁87aを有する。つまり、ハウジング85は、隔壁87aを有する。隔壁87aは、第1ハウジング85aの内部と第2ハウジング85bの内部とを左右方向に仕切る壁部である。隔壁87aは、例えば、パーキング機構10の右側に位置する。隔壁87aの左側の面は、第2ハウジング85bの内側面のうち右側に位置する面の少なくとも一部を構成している。
【0018】
第1部材87は、第1穴部87bを有する。つまり、ハウジング85は、第1穴部87bを有する。第1穴部87bは、例えば、隔壁87aの左側の面から右側に窪み、右側に底部を有する穴である。図示は省略するが、第1穴部87bは、例えば、左右方向に見て、中心軸J4を中心とする円形状である。本実施形態において中心軸J4は、左右方向に延びている。中心軸J4は、例えば、動力軸J1と平行である。
【0019】
第2部材88は、例えば、右側に開口する箱状の部材である。第2部材88の右側の開口は、例えば、隔壁87aによって塞がれている。第2部材88は、左側壁部88aと、連結筒部88bと、を有する。左側壁部88aは、例えば、パーキング機構10のうち第2ハウジング85b内に位置する部分の左側に位置する。左側壁部88aは、左側壁部88aの右側の面から左側に窪む凹部88cを有する。図示は省略するが、凹部88cは、例えば、左右方向に見て、中心軸J4を中心とする円形状である。
【0020】
連結筒部88bは、左側壁部88aから左側に突出している。連結筒部88bは、左側に開口している。連結筒部88bは、例えば、中心軸J4を中心とする円筒状である。連結筒部88bの内部には、オイルシール71が保持されている。オイルシール71は、後述する被駆動シャフト20を囲む円環状である。
【0021】
第2部材88は、第2穴部88dを有する。つまり、ハウジング85は、第2穴部88dを有する。第2穴部88dは、例えば、左側壁部88aの右側の面から左側に窪んでいる。より詳細には、第2穴部88dは、例えば、凹部88cの底面から左側に窪んでいる。凹部88cの底面は、凹部88cの内側面のうち左側に位置し右側を向く面である。図示は省略するが、第2穴部88dは、例えば、左右方向に見て、中心軸J4を中心とする円形状である。第2穴部88dは、例えば、左側壁部88aを左右方向に貫通し、第2ハウジング85bの内部と連結筒部88bの内部とを繋いでいる。第2穴部88dの内径は、例えば、第1穴部87bの内径、凹部88cの内径、および連結筒部88bの内径よりも小さい。
【0022】
本実施形態において電動アクチュエータ90は、パーキング機構10を駆動させる駆動源である。図1に示すように、電動アクチュエータ90は、例えば、ハウジング85の外部に位置する。電動アクチュエータ90は、例えば、第2ハウジング85bの外側面に固定されている。電動アクチュエータ90は、例えば、連結筒部88bに連結されている。
【0023】
動力部80aは、駆動装置100を駆動する部分である。本実施形態において動力部80aは、モータである。動力部80aは、ロータ81と、ステータ82と、を有する。ロータ81は、動力軸J1を中心として回転可能な動力シャフト81aを有する。動力軸J1は、例えば、左右方向に延びている。動力シャフト81aは、例えば、動力軸J1を中心として左右方向に延びる円柱状である。動力シャフト81aは、例えば、第1ハウジング85aの内部から左側に延びて隔壁87aを左右方向に貫通し、第2ハウジング85bの内部に突出している。
【0024】
伝達機構部80bは、動力部80aに接続されている。伝達機構部80bは、減速装置83と、差動装置84と、を有する。減速装置83は、動力シャフト81aに接続されている。減速装置83は、動力部80aの回転速度を減じて、動力部80aから出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置83は、動力部80aから出力されるトルクを差動装置84へ伝達する。減速装置83は、第1ギヤ83aと、第2ギヤ83bと、第3ギヤ83cと、中間シャフト83dと、を有する。つまり、伝達機構部80bは、第1ギヤ83aと、第2ギヤ83bと、を有する。
【0025】
第1ギヤ83aは、動力シャフト81aのうち第2ハウジング85b内に突出した部分の外周面に固定されている。これにより、第1ギヤ83aは、動力部80aに固定されている。中間シャフト83dは、例えば、中間軸J2を中心として左右方向に延びている。中間軸J2は、例えば、動力軸J1と平行である。中間軸J2は、例えば、動力軸J1よりも下側に位置する。第2ギヤ83bおよび第3ギヤ83cは、中間シャフト83dの外周面に固定されている。第2ギヤ83bと第3ギヤ83cとは、中間シャフト83dを介して接続されている。第2ギヤ83bは、第1ギヤ83aに噛み合っている。中間シャフト83d、第2ギヤ83b、および第3ギヤ83cは、中間軸J2を中心として回転可能である。
【0026】
差動装置84は、減速装置83に接続されている。差動装置84は、車軸86を回転させる。車軸86は、例えば、動力軸J1と平行に延びる出力軸J3回りに回転する。出力軸J3は、例えば、左右方向に見て、動力軸J1および中間軸J2とずれた位置に配置されている。差動装置84は、リングギヤ84aを有する。リングギヤ84aは、第3ギヤ83cと噛み合っている。リングギヤ84aには、動力部80aから出力されるトルクが減速装置83を介して伝えられる。リングギヤ84aの下側の端部は、第2ハウジング85b内に貯留されたオイルOに浸漬している。リングギヤ84aが回転することで、オイルOがかき上げられる。かき上げられたオイルOは、例えば、減速装置83および差動装置84に潤滑油として供給される。
【0027】
本実施形態においてパーキング機構10は、電動アクチュエータ90によって、車両のシフト操作に基づいて駆動される。パーキング機構10の状態は、動力源である電動アクチュエータ90によって、車軸86の回転が阻止されるロック状態と、車軸86の回転が許容されるアンロック状態と、の間で切り替えられる。パーキング機構10は、車両のギヤがパーキングである場合に、ロック状態となり、車両のギヤがパーキング以外である場合に、アンロック状態となる。車両のギヤがパーキング以外である場合とは、例えば、車両のギヤがドライブ、ニュートラル、リバースなどである場合を含む。図3に示すように、パーキング機構10は、被駆動シャフト20と、可動部30と、歯止め部材40と、パーキングギヤ50と、第2弾性部材60と、を備える。
【0028】
被駆動シャフト20は、左右方向に延びる中心軸J4を中心として回転可能である。被駆動シャフト20は、例えば、中心軸J4を中心として左右方向に延びる円柱状である。なお、以下のパーキング機構10の説明においては、中心軸J4を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸J4回りの周方向を単に「周方向」と呼ぶ場合がある。各図においては、適宜、周方向を矢印θで示す。周方向のうち右側から見て中心軸J4を中心として時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼び、周方向のうち右側から見て中心軸J4を中心として反時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側と逆側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。
【0029】
図2に示すように、被駆動シャフト20は、例えば、第2ハウジング85bの内部から、凹部88cの内部、第2穴部88dの内部、および連結筒部88bの内部を介して、ハウジング85の外部に突出している。図2および図4に示すように、被駆動シャフト20は、被連結部21と、大径部22と、中径部23と、小径部24と、を有する。被連結部21と大径部22と中径部23と小径部24とは、左側から右側に向かってこの順に繋がっている。
【0030】
被連結部21は、電動アクチュエータ90に連結された部分である。図2に示すように、被連結部21は、例えば、ハウジング85の外部に突出している。被連結部21の左側の端部は、例えば、被駆動シャフト20の左側の端部である。被連結部21の外周面には、例えば、スプライン部が設けられている。被連結部21は、例えば、スプライン部が電動アクチュエータ90の出力部に設けられたスプライン溝に嵌め合わされることで、電動アクチュエータ90に連結されている。
【0031】
本実施形態において被連結部21は、被駆動シャフト20のうち可動部30よりも左側に位置する部分である。つまり、本実施形態では、被駆動シャフト20のうち可動部30よりも左側に位置する部分である被連結部21が、被駆動シャフト20を回転させる駆動源である電動アクチュエータ90に接続されている。
【0032】
大径部22は、被連結部21の右側に繋がっている。大径部22の外径は、例えば、被連結部21の外径よりも大きい。大径部22の左右方向の寸法は、例えば、被連結部21の左右方向の寸法よりも大きい。大径部22は、被シール部22aと、第2被支持部22bと、を有する。つまり、被駆動シャフト20は、被シール部22aと、第2被支持部22bと、を有する。
【0033】
被シール部22aは、例えば、大径部22の左側部分である。被シール部22aは、例えば、連結筒部88bの内部に位置する。被シール部22aの外周面は、オイルシール71の内周面に接触している。オイルシール71によって被シール部22aの外周面と連結筒部88bの内周面との間が封止されている。
【0034】
第2被支持部22bは、例えば、大径部22の右側部分である。第2被支持部22bは、被シール部22aの右側に繋がっている。第2被支持部22bは、第2穴部88dに挿入されている。第2被支持部22bの外径は、第2穴部88dの内径よりも僅かに小さい。本実施形態において第2被支持部22bは、第2穴部88d内に隙間嵌めされている。これにより、第2被支持部22bは、第2穴部88dの内周面によって中心軸J4回りに回転可能に支持されている。つまり、本実施形態において第2穴部88dは、第2被支持部22bを中心軸J4回りに回転可能に支持する軸受部として機能する。第2被支持部22bは、被駆動シャフト20のうち駆動源としての電動アクチュエータ90に接続される部分である被連結部21と可動部30との左右方向の間に位置する。
【0035】
中径部23は、大径部22の右側に繋がっている。中径部23の外径は、例えば、大径部22の外径よりも小さい。中径部23の左右方向の寸法は、例えば、大径部22の左右方向の寸法よりも大きい。中径部23は、例えば、第2ハウジング85bの内部に位置する。中径部23の左側の端部は、例えば、凹部88cの内部に位置する。中径部23は、中径部23を径方向に貫通するピン止め孔23aを有する。ピン止め孔23aは、例えば、中径部23のうち左側寄りの部分に設けられている。図4に示すように、ピン止め孔23aは、例えば、円形状の孔である。
【0036】
小径部24は、中径部23の右側に繋がっている。小径部24の外径は、例えば、中径部23の外径、および被連結部21の外径よりも小さい。図2に示すように、小径部24は、第1被支持部24aを有する。つまり、被駆動シャフト20は、第1被支持部24aを有する。第1被支持部24aは、例えば、小径部24の右側部分である。第1被支持部24aの右側の端部は、例えば、被駆動シャフト20の右側の端部である。第1被支持部24aは、可動部30よりも右側に位置する。
【0037】
第1被支持部24aは、第1穴部87bに挿入されている。第1被支持部24aの外径は、第1穴部87bの内径よりも僅かに小さい。本実施形態において第1被支持部24aは、第1穴部87b内に隙間嵌めされている。これにより、第1被支持部24aは、第1穴部87bの内周面によって中心軸J4回りに回転可能に支持されている。つまり、本実施形態において第1穴部87bは、第1被支持部24aを中心軸J4回りに回転可能に支持する軸受部として機能する。
【0038】
可動部30は、被駆動シャフト20の回転に伴って回転する部分である。本実施形態において可動部30は、被駆動シャフト20の回転に伴って中心軸J4回りの周方向に回転する。つまり、本実施形態において中心軸J4回りの周方向は、可動部30の回転方向に相当する。図4に示すように、可動部30は、被固定部材31と、接触部材32と、第1弾性部材33と、を有する。
【0039】
被固定部材31は、被駆動シャフト20に固定されている。被固定部材31は、筒部34と、フランジ部35と、を有する。筒部34とフランジ部35とは、例えば、互いに別部材であり、互いに固定されている。筒部34は、例えば、中心軸J4を中心とする略円筒状である。筒部34は、左右方向の両側に開口している。図2に示すように、筒部34の内部には、被駆動シャフト20の中径部23が左右方向に通されている。筒部34は、第1部分34aと、第2部分34bと、を有する。
【0040】
第1部分34aは、例えば、筒部34の左側部分である。第2部分34bは、例えば、筒部34の右側部分である。第2部分34bは、第1部分34aの右側に繋がっている。第2部分34bの外径は、第1部分34aの外径よりも小さい。第1部分34aと第2部分34bとの左右方向の間には、段差面34eを有する段差が設けられている。段差面34eは、例えば、右側を向き左右方向と直交する面であり、第1部分34aの右側の端面である。
【0041】
第1部分34aは、ピン止め孔34cを有する。ピン止め孔34cは、中心軸J4を径方向に挟んで一対設けられている。ピン止め孔34cは、第1部分34aの内周面から外周面までを貫通している。ピン止め孔34cは、例えば、円形状の孔である。第1部分34aは、例えば、ピン止め孔34cに通されたピン38によって中径部23に固定されている。これにより、筒部34が被駆動シャフト20に固定され、被固定部材31が被駆動シャフト20に固定されている。
【0042】
ピン38は、中心軸J4を中心とする径方向に延びる円柱状である。ピン38は、筒部34の一対のピン止め孔34cのうち一方のピン止め孔34cから、被駆動シャフト20のピン止め孔23aを通って、一対のピン止め孔34cのうち他方のピン止め孔34cまで延びている。ピン38は、各ピン止め孔23a,34c内に嵌め合わされて固定されている。ピン38が各ピン止め孔23a,34c内に嵌め合わされることで、被駆動シャフト20と被固定部材31との中心軸J4回りの相対回転および左右方向の相対移動が阻止されている。図4に示すように、第1部分34aの外周面には、一対の平坦面34dが設けられている。一対の平坦面34dは、径方向と直交する矩形状の面であり、互いに中心軸J4を挟んで反対側に配置されている。
【0043】
図2に示すように、筒部34の左側の端部と凹部88cの底面との間には、ワッシャ70が設けられている。ワッシャ70は、例えば、中心軸J4を中心とし、被駆動シャフト20の中径部23を囲む円環状である。ワッシャ70は、板面が左右方向を向く板状である。ワッシャ70の内径は、例えば、大径部22の外径よりも小さい。ワッシャ70の左側の面は、例えば、凹部88cの底面に接触している。ワッシャ70の右側の面は、例えば、筒部34の左側の端面に接触している。
【0044】
フランジ部35は、筒部34に固定されている。フランジ部35は、例えば、板状の部材が折り曲げられて作られている。フランジ部35は、基部35aと、連結部35bと、外縁部35cと、を有する。つまり、被固定部材31は、外縁部35cを有する。
【0045】
基部35aは、筒部34に固定された部分である。基部35aは、基部35aを左右方向に貫通する固定孔35gを有する。固定孔35gには、第2部分34bが嵌め合わされている。第2部分34bの右側の端部は、固定孔35gよりも右側に突出している。第2部分34bのうち固定孔35gよりも右側に突出した部分の外径は、例えば、右側に向かうに従って小さくなっている。
【0046】
基部35aの左側の面は、段差面34eに接触している。基部35aは、例えば、溶接によって筒部34に固定されている。なお、基部35aは、固定孔35g内への第2部分34bの圧入によって、筒部34に固定されていてもよい。図5に示すように、基部35aは、基部35aの右側の面から左側に窪む挿込穴35fを有する。挿込穴35fは、例えば、基部35aを左右方向に貫通する円形状の孔である。
【0047】
連結部35bは、基部35aと外縁部35cとを繋ぐ部分である。連結部35bは、基部35aの周方向の一部から径方向外側斜め右方に突出している。連結部35bは、例えば、基部35aのうち挿込穴35fの周方向位置と異なる周方向位置にある部分から突出している。
【0048】
外縁部35cは、連結部35bの径方向外側の端部から径方向外側に突出している。外縁部35cは、中心軸J4を中心とする径方向において筒部34よりも外側に位置する。外縁部35cは、例えば、周方向に延びている。外縁部35cの周方向の寸法は、例えば、径方向内側から径方向外側に向かうに従って大きくなっている。図2に示すように、本実施形態において外縁部35cは、筒部34よりも右側に位置する。つまり、本実施形態において筒部34の左右方向の位置と外縁部35cの左右方向の位置とは、互いに異なっている。また、本実施形態において、筒部34の左右方向の位置は、外縁部35cの左右方向の位置よりも、接触部材32から左右方向に離れた位置である。
【0049】
図6に示すように、本実施形態において外縁部35cの周方向一方側(+θ側)の側面は、周方向一方側を向く平坦な第3対向面35iである。つまり、被固定部材31は、周方向(回転方向)を向く平坦な第3対向面35iを有する。第3対向面35iは、例えば、径方向に対して周方向に傾く方向に延びている。第3対向面35iは、径方向外側に向かうに従って周方向他方側(-θ側)に位置する。第3対向面35iは、被固定部材31の周方向側面である。
【0050】
図5に示すように、被固定部材31は、溝部35hを有する。本実施形態において溝部35hは、外縁部35cに設けられている。溝部35hは、例えば、外縁部35cの径方向外周縁から径方向内側に窪んでいる。本実施形態において溝部35hは、複数設けられている。溝部35hは、第1溝部35dと、第2溝部35eと、を含む。第1溝部35dと第2溝部35eとは、互いに周方向に離れている。第2溝部35eは、例えば、第1溝部35dから周方向一方側に離れて配置されている。第1溝部35dは、例えば、外縁部35cの周方向他方側の端部に設けられている。第2溝部35eは、例えば、外縁部35cの周方向一方側の端部に設けられている。
【0051】
図2に示すように、接触部材32は、第1弾性部材33を介して、被固定部材31に連結されている。これにより、接触部材32は、第1弾性部材33および被固定部材31を介して被駆動シャフト20に連結されている。接触部材32は、第1弾性部材33が弾性変形することで被駆動シャフト20および被固定部材31に対して中心軸J4回りの周方向(回転方向)に相対回転可能である。接触部材32は、例えば、被固定部材31の右側に離れて位置する。つまり、本実施形態において被固定部材31と接触部材32とは、左右方向に沿って間隔を空けて配置されている。接触部材32は、被駆動シャフト20から径方向外側に突出している。接触部材32は、例えば、単一の部材である。接触部材32は、筒部36と、カムフランジ部37と、を有する。
【0052】
筒部36は、例えば、中心軸J4を中心とする円筒状である。筒部36は、左右方向の両側に開口している。筒部36は、被駆動シャフト20が左右方向に通された貫通孔36eを有する。つまり、接触部材32は、被駆動シャフト20が左右方向に通された貫通孔36eを有する。貫通孔36eの内部には、中径部23の右側の端部および小径部24の左側部分が位置する。貫通孔36eの内周面には、段差面36dを有する段差が設けられている。段差面36dは、左側を向く面である。段差面36dには、例えば、中径部23と小径部24との左右方向の間に設けられた段差の段差面が接触している。
【0053】
筒部36は、基部36aと、基部36aの右側に繋がる第1突出部36bと、基部36aの左側に繋がる第2突出部36cと、を有する。第1突出部36bは、基部36aから右側に突出している。第1突出部36bの外径は、基部36aの外径よりも小さい。第1突出部36bの右側の端面は、例えば、接触部材32の右側の端面であり、隔壁87aの左側の面に接触している。第2突出部36cは、基部36aから左側に突出している。第2突出部36cの外径は、基部36aの外径よりも小さい。第2突出部36cの外径は、例えば、左側に向かうに従って小さくなっている。
【0054】
カムフランジ部37は、基部36aから径方向外側に広がっている。カムフランジ部37は、例えば、基部36aから下側に広がっている。図4に示すように、カムフランジ部37は、左右方向に見て、略扇形状である。カムフランジ部37の径方向外側面の一部は、カム面37aである。つまり、接触部材32は、カム面37aを有する。カム面37aは、周方向に延びている。カム面37aは、例えば、下側を向いている。図3および図6に示すように、カム面37aは、歯止め部材40に接触する面である。つまり、本実施形態において接触部材32は、カム面37aを介して歯止め部材40に接触する。カム面37aは、例えば、外縁部35cの径方向外縁よりも径方向外側に位置する。
【0055】
図6に示すように、カム面37aは、第1カム部37bと、第2カム部37cと、接続カム部37fと、を有する。第1カム部37bおよび第2カム部37cは、周方向に延びている。第1カム部37bおよび第2カム部37cは、例えば、中心軸J4を中心とする円弧状である。第1カム部37bと第2カム部37cとは、接続カム部37fを介して、周方向に繋がっている。第2カム部37cは、例えば、第1カム部37bの周方向一方側に繋がっている。第2カム部37cは、第1カム部37bよりも径方向外側に位置する。
【0056】
接続カム部37fは、第1カム部37bと第2カム部37cとの周方向の間に位置する。接続カム部37fは、第1カム部37bの周方向一方側(+θ側)の端部と第2カム部37cの周方向他方側(-θ側)の端部とを周方向に繋いでいる。接続カム部37fは、周方向に対して傾斜する傾斜面である。接続カム部37fの径方向位置は、周方向一方側(+θ側)に向かうに従って径方向外側に位置する。
【0057】
本実施形態においてカム面37aは、周方向位置が第1溝部35dと同じ部分を有する。つまり、本実施形態において溝部35hの少なくとも一部における中心軸J4回りの周方向位置は、カム面37aにおける中心軸J4回りの周方向位置に含まれている。本実施形態においてカム面37aの周方向位置は、図6においてθcで示す周方向範囲である。カム面37aの周方向位置には、例えば、外縁部35cの周方向他方側寄りの部分の周方向位置が含まれている。
【0058】
図4に示すように、カムフランジ部37は、カムフランジ部37の左側の面から右側に窪む挿込穴37dを有する。挿込穴37dは、例えば、カムフランジ部37を左右方向に貫通する円形状の孔である。挿込穴37dは、例えば、カムフランジ部37のうち径方向外側面にカム面37aが設けられていない部分に設けられている。挿込穴37dは、例えば、カム面37aよりも周方向一方側に位置する。挿込穴37dは、接触部材32のうち第1弾性部材33が接続された部分である。
【0059】
図6に示すように、本実施形態においてカムフランジ部37の周方向一方側(+θ側)の側面は、周方向一方側を向く平坦な第1対向面37eである。つまり、接触部材32は、周方向(回転方向)を向く平坦な第1対向面37eを有する。第1対向面37eは、例えば、周方向と直交する平坦な面である。第1対向面37eは、径方向に延びている。第1対向面37eは、接触部材32の周方向側面である。第1対向面37eは、挿込穴37dよりも径方向外側に位置する。つまり、第1対向面37eは、接触部材32のうち第1弾性部材33が接続された部分よりも径方向外側に位置する。第1対向面37eは、接触部材32のうち後述するストッパ部110と対向する部分である。
【0060】
第1弾性部材33は、被固定部材31と接触部材32とを連結している。図2および図4に示すように、本実施形態において第1弾性部材33は、左右方向に延び被駆動シャフト20を囲むコイルばねである。第1弾性部材33は、例えば、ねじりコイルばねである。つまり、本実施形態において第1弾性部材33は、周方向に弾性変形可能である。第1弾性部材33は、被固定部材31と接触部材32とが周方向に相対回転することで周方向に弾性変形する。
【0061】
本実施形態において第1弾性部材33の内部には、中径部23が左右方向に通されている。第1弾性部材33は、被固定部材31と接触部材32との左右方向の間に位置する。図4に示すように、第1弾性部材33は、弾性部材本体33aと、被挿込部33b,33cと、を有する。
【0062】
弾性部材本体33aは、第1弾性部材33を構成する線材が中心軸J4回りに螺旋状に巻き回されて構成された部分である。図2に示すように、弾性部材本体33aの左側の端部における内側には、筒部34の第2部分34bのうち固定孔35gよりも右側に突出している部分が挿入されている。これにより、第1弾性部材33が被固定部材31に対して径方向にずれることを抑制できる。本実施形態では、第2部分34bのうち固定孔35gよりも右側に突出した部分の外径が右側に向かうに従って小さくなっているため、弾性部材本体33aの左側の端部における内側に第2部分34bを挿入しやすい。
【0063】
弾性部材本体33aの右側の端部における内側には、筒部36の第2突出部36cが挿入されている。これにより、第1弾性部材33が接触部材32に対して径方向にずれることを抑制できる。本実施形態では、第2突出部36cの外径が基部36aの外径よりも小さいため、第2突出部36cの外径を比較的小さくでき、弾性部材本体33aの右側の端部における内側に第2突出部36cを挿入しやすい。また、本実施形態では、第2突出部36cの外径が左側に向かうに従って小さくなっているため、弾性部材本体33aの右側の端部における内側に第2突出部36cをより挿入しやすい。弾性部材本体33aの左側部分の一部は、外縁部35cの径方向内側に位置する。つまり、第1弾性部材33の一部は、中心軸J4を中心とする径方向に見て、外縁部35cと重なっている。
【0064】
図4に示すように、被挿込部33bは、弾性部材本体33aを構成する線材の左側の端部から左側に延びている。被挿込部33bは、被固定部材31の挿込穴35fに挿し込まれている。これにより、第1弾性部材33は、被固定部材31に取り付けられている。本実施形態において第1弾性部材33は、被固定部材31を介して被駆動シャフト20に取り付けられている。被挿込部33cは、弾性部材本体33aを構成する線材の右側の端部から右側に延びている。被挿込部33cは、接触部材32の挿込穴37dに挿し込まれている。これにより、第1弾性部材33は、接触部材32に取り付けられている。
【0065】
図3に示すように、歯止め部材40は、例えば、可動部30の下側に位置する。本実施形態において歯止め部材40は、支持シャフト44によって、回転可能に支持されている。支持シャフト44は、例えば、動力軸J1と平行な回転軸J5を中心として左右方向に延びる円柱状である。回転軸J5は、例えば、中心軸J4よりも前側かつ下側に位置する。回転軸J5は、例えば、中間軸J2よりも前側かつ上側に位置する。図示は省略するが、支持シャフト44の右側の端部は、隔壁87aに設けられた穴部に嵌め込まれて支持されている。支持シャフト44の左側の端部は、左側壁部88aに設けられた穴部に嵌め込まれて支持されている。
【0066】
支持シャフト44には、ねじりコイルばね45が装着されている。ねじりコイルばね45の一端は、歯止め部材40に固定されている。図示は省略するが、ねじりコイルばね45の他端は、隔壁87aに固定されている。ねじりコイルばね45は、歯止め部材40に対して、周方向一方側向き(+θ向き)の弾性力を加えている。
【0067】
歯止め部材40は、アーム部41と、爪部42と、ローラ43と、を有する。アーム部41は、支持シャフト44から後側(-X側)に延びている。図6に示すように、アーム部41の前側の端部には、アーム部41を左右方向に貫通する孔部41aが設けられている。孔部41aには、支持シャフト44が左右方向に通されている。アーム部41の後側の端部は、カム面37aの下側に位置する。
【0068】
爪部42は、アーム部41の後側(-X側)の端部から下側に突出している。ローラ43は、アーム部41の後側の端部における上側に取り付けられている。本実施形態においてローラ43は、可動部30に接触する部分である。ローラ43は、左右方向に延びる回転軸回りに回転可能にアーム部41に取り付けられている。ローラ43は、カム面37aに下側から接触している。
【0069】
歯止め部材40は、可動部30の回転に伴って移動する。本実施形態において歯止め部材40は、接触部材32が中心軸J4回りに回転するのに伴って、回転軸J5を中心として揺動する。これにより、歯止め部材40の後側の端部は、接触部材32が中心軸J4回りに回転するのに伴って上下方向に移動する。本実施形態において歯止め部材40はねじりコイルばね45によって周方向一方側向きに弾性力を受けているため、歯止め部材40の後側の端部に設けられたローラ43はねじりコイルばね45から上側向きに力を受け、カム面37aに下側から押し付けられている。
【0070】
本実施形態においてパーキングギヤ50は、歯止め部材40の下側に位置する。より詳細には、パーキングギヤ50は、爪部42の下側に位置する。本実施形態においてパーキングギヤ50は、被駆動シャフト20の延長線上には位置していない。つまり、本実施形態において被駆動シャフト20は、左右方向に見て、パーキングギヤ50が設けられる領域の外側に位置する。
【0071】
図1に示すように、パーキングギヤ50は、例えば、中間シャフト83dの左側の端部に固定されている。これにより、本実施形態においてパーキングギヤ50は、中間シャフト83dを介して、第2ギヤ83bに固定されている。パーキング機構10は、パーキングギヤ50を介して伝達機構部80bに取り付けられている。パーキングギヤ50は、中間軸J2回りに回転可能である。なお、パーキングギヤ50は、第3ギヤ83cを介して第2ギヤ83bに固定されてもよいし、直接的に第2ギヤ83bに固定されていてもよい。
【0072】
図3および図6に示すように、パーキングギヤ50は、中間軸J2回りに沿って間隔を空けて複数の歯部51を有する。歯部51同士の間には、爪部42が挿入可能となっている。これにより、パーキングギヤ50には、爪部42が噛み合い可能である。
【0073】
図4に示すように、第2弾性部材60は、板バネ部61と、ローラ62と、を有する。板バネ部61は、板面が上下方向を向く板状である。板バネ部61は、前後方向に延びている。板バネ部61の前側の端部は、例えば、ネジ63によってハウジング85に固定されている。板バネ部61のうち後側に位置する部分は、被固定部材31の下側に位置する。板バネ部61のうち後側に位置する部分は、ネジ63で固定された板バネ部61の前側の端部を支点として上下方向に弾性変位可能である。
【0074】
板バネ部61は、基部61aと、一対の腕部61b,61cと、を有する。基部61aは、例えば、板バネ部61の前側部分である。基部61aは、例えば、ネジ63によってハウジング85に固定されている。一対の腕部61b,61cは、基部61aの後側の端部から後側に延びている。一対の腕部61b,61cは、左右方向に間隔を空けて並んで配置されている。腕部61cは、腕部61bの右側に位置する。一対の腕部61b,61c同士の左右方向の間における左右方向位置は、例えば、外縁部35cの左右方向位置と同じである。一対の腕部61b,61c同士の左右方向の間には、例えば、外縁部35cが上下方向に通されている。
【0075】
ローラ62は、左右方向に延びる回転軸回りに回転可能である。ローラ62は、板バネ部61の後側の端部に取り付けられている。ローラ62は、左右方向に延びている。ローラ62は、一対の腕部61b,61cの後側の端部同士を繋いでいる。ローラ62の左側の端部は、腕部61bの後側の端部に回転可能に支持されている。ローラ62の右側の端部は、腕部61cの後側の端部に回転可能に支持されている。ローラ62は、外縁部35cの下側に位置する。ローラ62は、外縁部35cの径方向外側面に接触している。
【0076】
ローラ62は、溝部35hに嵌ることが可能であり、溝部35hに対して中心軸J4回りの周方向に引っ掛かることが可能である。これにより、溝部35hには、第2弾性部材60が中心軸J4回りの周方向に引っ掛けられる。図4では、例えば、第1溝部35dにローラ62が嵌って周方向に引っ掛けられている状態を示している。
【0077】
図3においては、パーキング機構10が、車軸86の回転が許容されるアンロック状態である場合について示している。アンロック状態においては、歯止め部材40の爪部42は、パーキングギヤ50から上側に離れた状態であり、爪部42が歯部51同士の間に位置していない。つまり、歯止め部材40は、アンロック状態においては、爪部42がパーキングギヤから離れる非パーキング位置に位置する。この状態では、パーキングギヤ50が中間軸J2回りに回転可能であり、減速装置83の各ギヤも回転可能である。そのため、動力部80aからの回転が減速装置83および差動装置84を介して車軸86に伝えられ、車軸86が回転可能である。アンロック状態においてローラ62は、第1溝部35dに周方向に引っ掛けられている。つまり、被駆動シャフト20の回転角度が歯止め部材40を非パーキング位置にする回転角度である場合に、第1溝部35dには、第2弾性部材60が引っ掛けられる。アンロック状態において歯止め部材40のローラ43は、第1カム部37bに接触している。
【0078】
アンロック状態において、電動アクチュエータ90によって被駆動シャフト20が周方向他方側向き(-θ向き)に回転させられると、被駆動シャフト20と共に可動部30も周方向他方側向きに回転する。アンロック状態から接触部材32が周方向他方側向きに回転すると、図6に示すように、ローラ43に接触するカム面37aの部分が、第1カム部37bから第2カム部37cに変わる。第2カム部37cは第1カム部37bよりも径方向外側に位置するため、ローラ43が第2カム部37cによって下側に押されて、歯止め部材40の後側の端部が下側に移動させられる。これにより、爪部42が、パーキングギヤ50の歯部51同士の間に入り込み、パーキングギヤ50に噛み合う。つまり、歯止め部材40の位置が、爪部42がパーキングギヤ50に噛み合うパーキング位置になる。
【0079】
爪部42がパーキングギヤ50に噛み合うと、パーキングギヤ50の中間軸J2回りの回転が阻止される。そのため、パーキングギヤ50が固定された中間シャフト83d、第2ギヤ83b、および第3ギヤ83cの回転が阻止される。これにより、パーキング機構10は、車軸86の回転が阻止されるロック状態となる。ロック状態においてローラ62は、第2溝部35eに周方向に引っ掛けられている。つまり、被駆動シャフト20の回転角度が歯止め部材40をパーキング位置にする回転角度である場合に、第2溝部35eには、第2弾性部材60が引っ掛けられる。
【0080】
ロック状態において、電動アクチュエータ90によって被駆動シャフト20が周方向一方側向き(+θ向き)に回転させられると、被駆動シャフト20と共に可動部30も周方向一方側向きに回転する。ロック状態から接触部材32が周方向一方側向きに回転すると、ローラ43に接触するカム面37aの部分が、第2カム部37cから第1カム部37bに変わる。これにより、コイルばね45の弾性力によって歯止め部材40の後側の端部が上側に移動させられ、爪部42がパーキングギヤ50の歯部51同士の間から上側に離れる。つまり、歯止め部材40の位置が、爪部42がパーキングギヤ50から離れる非パーキング位置になる。これにより、パーキング機構10が再びアンロック状態となる。
【0081】
以上のように、電動アクチュエータ90によって被駆動シャフト20が回転させられることによって、歯止め部材40の位置が、可動部30の回転に伴って、パーキング位置と、非パーキング位置と、に切り替えられる。これにより、パーキング機構10がロック状態とアンロック状態との間で切り替えられる。
【0082】
図6に示すように、パーキング機構10は、ストッパ部110を備える。本実施形態においてストッパ部110は、ハウジング85の内壁に設けられている。より詳細には、ストッパ部110は、第2ハウジング85bの内壁のうち隔壁87aとは異なる部分に設けられている。本実施形態においてストッパ部110は、第2ハウジング85bの内壁のうち後側(-X側)に位置する後壁部88eに設けられている。ストッパ部110は、後壁部88eのうちストッパ部110の下側に位置する部分よりも前側(+X側)に突出している。ストッパ部110は、例えば、後壁部88eに設けられた段差部によって構成されている。
【0083】
本実施形態においてストッパ部110は、第1対向面37eと周方向(回転方向)に対向する平坦な第2対向面110aを有する。つまり、ストッパ部110は、接触部材32の周方向側面である第1対向面37eと周方向に対向している。第2対向面110aは、後壁部88eに設けられた段差部の段差面である。第2対向面110aは、下側を向く面である。より詳細には、第2対向面110aは、下側かつ斜め前側(+X側)を向いている。第2対向面110aは、周方向他方側(-θ側)を向いている。図7に示すように、第1対向面37eと第2対向面110aとは、互いに接触可能である。つまり、ストッパ部110は、可動部30の回転方向(周方向)において可動部30に接触可能である。また、接触部材32は、ストッパ部110に回転方向(周方向)に接触可能である。
【0084】
ストッパ部110は、歯止め部材40の位置がパーキング位置と非パーキング位置との間で切り替えられる際において、接触部材32と周方向(回転方向)に間隔を空けて対向している。つまり、歯止め部材40の位置がパーキング位置と非パーキング位置との間で切り替えられる際においては、ストッパ部110と接触部材32とは互いに接触しない。なお、「ストッパ部110が、歯止め部材40の位置がパーキング位置と非パーキング位置との間で切り替えられる際において、接触部材32と回転方向に間隔を空けて対向している」とは、歯止め部材40の位置がパーキング位置と非パーキング位置との間で切り替えられる際に接触部材32が回転する範囲内において、接触部材32がストッパ部110と接触しなければよい。
【0085】
本実施形態においてストッパ部110は、接触部材32の周方向一方側(+θ側)に位置する。つまり、本実施形態においてストッパ部110は、接触部材32に対して、周方向(回転方向)において歯止め部材40の位置がパーキング位置から非パーキング位置に切り替えられる際に接触部材32が移動する側に位置する。
【0086】
図6に示すように、カム面37aのうちストッパ部110から周方向に遠い側(-θ側)の端部とカム面37aのうち歯止め部材40に接触している部分との間の周方向の角度φ1は、カム面37aのうちストッパ部110に周方向に近い側(+θ側)の端部とストッパ部110との間の周方向の角度φ2よりも大きい。本実施形態においてカム面37aのうちストッパ部110から周方向に遠い側の端部は、第1カム部37bの周方向他方側(-θ側)の端部である。本実施形態においてカム面37aのうちストッパ部110に周方向に近い側の端部は、第2カム部37cの周方向一方側(+θ側)の端部である。本実施形態において角度φ2は、第1対向面37eと第2対向面110aとの間の周方向の角度である。つまり、本実施形態において角度φ2は、ストッパ部110と接触部材32との間の周方向の角度である。
【0087】
本実施形態においてパーキング機構10を駆動する電動アクチュエータ90は、歯止め部材40の位置をパーキング位置と非パーキング位置との間で切り替えるために必要な被駆動シャフト20の回転角度範囲を突き当て制御を行うことによって取得する。図8に示すように、突き当て制御において電動アクチュエータ90は、可動部30がハウジング85の一部に突き当たるまで被駆動シャフト20を回転させて、可動部30がハウジング85の一部に突き当たる際の被駆動シャフト20の回転角度を取得する。電動アクチュエータ90は、取得した回転角度に基づいて、可動部30がハウジング85の一部に突き当たらない範囲に、被駆動シャフト20の回転角度範囲を決定する。
【0088】
具体的に、本実施形態の突き当て制御において電動アクチュエータ90は、被固定部材31をハウジング85の突き当て部120に突き当てて、被固定部材31が突き当て部120に突き当たる際の被駆動シャフト20の回転角度を取得する。このように、ハウジング85は、周方向において被固定部材31に接触可能な突き当て部120を有する。本実施形態において突き当て部120は、ハウジング85の内壁に設けられている。より詳細には、突き当て部120は、第2ハウジング85bの内壁のうち隔壁87aとは異なる部分に設けられている。本実施形態において突き当て部120は、後壁部88eに設けられている。
【0089】
突き当て部120は、ストッパ部110よりも左側(+Y側)かつ上側に位置する。突き当て部120は、後壁部88eのうち突き当て部120の下側に位置する部分よりも前側(+X側)に突出している。突き当て部120は、例えば、ストッパ部110よりも前側に突出している。突き当て部120は、例えば、後壁部88eに設けられた段差部によって構成されている。
【0090】
本実施形態において突き当て部120は、第3対向面35iと周方向(回転方向)に対向する平坦な第4対向面120aを有する。第4対向面120aは、後壁部88eに設けられた段差部の段差面である。第4対向面120aは、下側を向く面である。より詳細には、第4対向面120aは、下側かつ斜め後側(-X側)を向いている。第4対向面120aは、周方向他方側(-θ側)を向いている。第4対向面120aは、径方向に対して周方向に傾く方向に延びている。第4対向面120aは、径方向外側に向かうに従って周方向他方側に位置する。突き当て制御においては、第4対向面120aに第3対向面35iが接触することで、被固定部材31が突き当て部120に突き当てられる。
【0091】
本実施形態において突き当て部120は、被固定部材31の周方向一方側(+θ側)に位置する。つまり、本実施形態において突き当て部120は、被固定部材31に対して、周方向(回転方向)においてストッパ部110が接触部材32に対して位置する側と同じ側に位置する。本実施形態においてストッパ部110と接触部材32との間の周方向の角度φ2は、突き当て部120と被固定部材31との間の周方向の角度φ3よりも大きい。角度φ3は、第3対向面35iと第4対向面120aとの間の周方向の角度である。
【0092】
本実施形態によれば、ストッパ部110が設けられ、可動部30の接触部材32は、ストッパ部110に可動部30の回転方向(周方向)に接触可能である。そのため、接触部材32の必要以上の回転をストッパ部110によって止めることができ、接触部材32が回転しすぎることを抑制できる。これにより、接触部材32が歯止め部材40から外れることを抑制できる。したがって、パーキング機構10の動作に不具合が生じることを抑制でき、パーキング機構10の信頼性を向上できる。また、接触部材32が回転しすぎることを抑制できるため、接触部材32を被駆動シャフト20に連結する第1弾性部材33が弾性変形しすぎることを抑制できる。これにより、第1弾性部材33が損傷することを抑制できる。
【0093】
例えば、歯止め部材40の位置がパーキング位置から非パーキング位置に切り替えられる際、図7に示すように歯止め部材40の爪部42がパーキングギヤ50の歯部51と対向していると、爪部42が歯部51に接触して歯止め部材40が上側に跳ね上げられる場合がある。この場合、歯止め部材40が接触部材32のカム面37aに下側から押し付けられる。ここで、歯止め部材40の位置がパーキング位置から非パーキング位置に切り替えられる直前において歯止め部材40はカム面37aのうち周方向に対して傾斜した接続カム部37fに接触している。そのため、歯止め部材40が接続カム部37fに下側から押し付けられることで、接続カム部37fに歯止め部材40から周方向の力が加えられる。これにより、歯止め部材40によって接触部材32が回転させられる。具体的に本実施形態では、歯止め部材40によって接触部材32が周方向一方側向き(+θ向き)に回転させられる。つまり、接触部材32は、歯止め部材40の位置が非パーキング位置に戻る向きに回転させられる。このとき、歯止め部材40は歯部51に接触して跳ね上げられているため、歯止め部材40を介して接触部材32にも周方向一方側向きに衝撃が加えられ、接触部材32が周方向一方側向きに大きく回転しやすい。そのため、特に、接触部材32が歯止め部材40から外れやすい恐れがあった。具体的には、接触部材32が周方向一方側向きに回転しすぎる結果、カム面37aの周方向他方側(-θ側)の端部が歯止め部材40のローラ43よりも周方向一方側に移動して歯止め部材40が接触部材32に接触しなくなる恐れがあった。
【0094】
これに対して、本実施形態によれば、ストッパ部110は、接触部材32に対して、周方向(回転方向)において歯止め部材40の位置がパーキング位置から非パーキング位置に切り替えられる際に接触部材32が移動する側(+θ側)に位置する。そのため、歯止め部材40が上側に跳ね上げられた際に接触部材32が、歯止め部材40の位置が非パーキング位置に戻る向きに回転させられる場合であっても、接触部材32の回転をストッパ部110によって止めることができる。これにより、爪部42が歯部51に接触して歯止め部材40が上側に跳ね上げられた場合であっても、接触部材32が歯止め部材40から外れることを抑制できる。したがって、パーキング機構10の動作に不具合が生じることをより抑制でき、パーキング機構10の信頼性をより向上できる。
【0095】
また、本実施形態によれば、接触部材32は、被駆動シャフト20から径方向外側に突出し、かつ、中心軸J4回りの周方向に回転可能である。ストッパ部110は、接触部材32の周方向側面である第1対向面37eと周方向に対向している。そのため、ストッパ部110によって、接触部材32の第1対向面37eを受け止めて、接触部材32の回転を好適に止めることができる。
【0096】
また、本実施形態によれば、接触部材32のうちストッパ部110と対向する部分、つまり第1対向面37eは、接触部材32のうち第1弾性部材33が接続された部分よりも径方向外側に位置する。そのため、接触部材32のうちストッパ部110と対向する第1対向面37eの径方向位置を比較的径方向外側にすることができる。これにより、ストッパ部110に第1対向面37eが接触した際にストッパ部110から受ける反力によって接触部材32に生じる中心軸J4回りのモーメントを、比較的大きくできる。したがって、ストッパ部110によって接触部材32の回転をより好適に止めることができる。また、接触部材32における第1弾性部材33の接続部分、つまり挿込穴37dの径方向位置を比較的径方向内側にすることができる。そのため、接触部材32が被固定部材31に対して相対回転する際に第1弾性部材33の被挿込部33cが周方向に移動する移動量を小さくしやすい。これにより、第1弾性部材33の周方向の弾性変形量を小さくしやすく、第1弾性部材33が損傷することを抑制しやすい。
【0097】
また、本実施形態によれば、カム面37aのうちストッパ部110から周方向(回転方向)に遠い側の端部とカム面37aのうち歯止め部材40に接触している部分との間の周方向(回転方向)の角度φ1は、カム面37aのうちストッパ部110に周方向(回転方向)に近い側の端部とストッパ部110との間の周方向(回転方向)の角度φ2よりも大きい。そのため、例えば上述したように歯止め部材40が上側に跳ね上げられた場合などに接触部材32が周方向一方側(+θ側)に回転する場合であっても、カム面37aの周方向他方側(-θ側)の端部が歯止め部材40のローラ43よりも周方向一方側に位置する前に、接触部材32とストッパ部110とが周方向に接触する。これにより、歯止め部材40がカム面37aから外れる前に接触部材32の回転をストッパ部110によって止めることができる。したがって、接触部材32が歯止め部材40から外れることをより好適に抑制でき、パーキング機構10の信頼性をより好適に向上できる。
【0098】
また、本実施形態によれば、接触部材32は、周方向(回転方向)を向く平坦な第1対向面37eを有する。ストッパ部110は、第1対向面37eと周方向(回転方向)に対向する平坦な第2対向面110aを有する。第1対向面37eと第2対向面110aとは、互いに接触可能である。そのため、図7に示すように、接触部材32をストッパ部110に対して面接触させやすい。これにより、ストッパ部110によって、接触部材32を好適に受け止めやすい。したがって、ストッパ部110によって、接触部材32の回転をより好適に止めやすい。また、ストッパ部110から接触部材32に加えられる負荷を分散させることができるため、接触部材32が変形することなどを抑制できる。
【0099】
また、本実施形態によれば、ストッパ部110と接触部材32との間の周方向(回転方向)の角度φ2は、突き当て部120と被固定部材31との間の周方向(回転方向)の角度φ3よりも大きい。そのため、上述した突き当て制御を行う際に、被固定部材31が突き当て部120に接触するよりも前にストッパ部110に接触部材32が接触することを抑制できる。これにより、上述した突き当て制御を好適に行うことができる。
【0100】
また、本実施形態によれば、被固定部材31は、第2弾性部材60が引っ掛けられる溝部35hを有する。そのため、溝部35hに第2弾性部材60が引っ掛けられることで、第2弾性部材60が移動することを抑制でき、被駆動シャフト20が中心軸J4回りに回転することを抑制できる。これにより、例えば、電動アクチュエータ90への電力供給がOFFになっている場合などであっても、被駆動シャフト20の位置を保持しておくことができ、パーキング機構10の状態を保持できる。一方、電動アクチュエータ90によって被駆動シャフト20が回転させられる場合には、第2弾性部材60が弾性変位することで、溝部35hから第2弾性部材60を外すことができ、被駆動シャフト20および可動部30を回転させることができる。したがって、パーキング機構10の状態を切り替えることができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、ストッパ部110は、ハウジング85の内壁に設けられている。そのため、ストッパ部110を別部材としてハウジング85に固定する場合に比べて、駆動装置100の部品点数が増加することを抑制できる。
【0102】
また、本実施形態によれば、ストッパ部110は、第2ハウジング85bの内壁のうち隔壁87aとは異なる部分に設けられている。隔壁87aは第1ハウジング85aの内部と第2ハウジング85bの内部とを仕切る壁であるため、動力シャフト81aが通る孔が設けられる、および動力シャフト81aを回転可能に支持するベアリングが保持されるなど、第2ハウジング85bの内壁のうちでも比較的多くの構造が設けられている。したがって、第2ハウジング85bの内壁のうち隔壁87aとは異なる部分にストッパ部110を設けることで、ストッパ部110の配置の自由度を向上できる。そのため、ストッパ部110をハウジング85に設けやすい。
【0103】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。被駆動シャフトの中心軸が延びる所定方向は、特に限定されない。被駆動シャフトの中心軸が延びる所定方向は、パーキングギヤの回転軸と直交する方向であってもよい。例えば、上述した実施形態において中心軸J4および被駆動シャフト20は、上下方向に延びてもよい。
【0104】
ストッパ部は、可動部の回転方向において可動部に接触可能で、歯止め部材の位置がパーキング位置と非パーキング位置との間で切り替えられる際において、接触部材と回転方向に間隔を空けて対向しているならば、どのような構成であってもよい。ストッパ部は、ハウジングと別部材であり、ハウジングに固定されてもよい。この場合、ストッパ部は、例えば、棒状の部材であってもよい。ストッパ部は、接触部材に対して、回転方向において歯止め部材の位置が非パーキング位置からパーキング位置に切り替えられる際に接触部材が移動する側に位置してもよい。
【0105】
可動部は、第1弾性部材と接触部材とを有し、被駆動シャフトの回転に伴って回転するならば、どのような構成であってもよい。接触部材のうち歯止め部材に接触する部分は、歯止め部材を移動させられるならば、カム面でなくてもよく、どのような構成であってもよい。可動部が被固定部材と接触部材とを有する場合、被固定部材と接触部材とは、どのような相対位置に配置されてもよい。被固定部材は、設けられなくてもよい。この場合、第1弾性部材は、被駆動シャフトに直接取り付けられてもよい。突き当て部は、設けられなくてもよい。
【0106】
歯止め部材は、可動部の移動に伴って移動するならば、どのように移動可能になっていてもよい。歯止め部材は、揺動せずに、全体が或る一方向に直線状に移動する構成であってもよい。第2弾性部材が引っ掛けられる溝部は、接触部材に設けられてもよい。溝部は、1つのみ設けられてもよいし、3つ以上設けられてもよい。溝部は、設けられなくてもよい。パーキングギヤは、伝達機構部のいずれの箇所に取り付けられてもよい。
【0107】
動力部は、モータでなくてもよい。動力部は、例えば、エンジンであってもよい。伝達機構部の構造は、特に限定されない。以上に本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0108】
10…パーキング機構、20…被駆動シャフト、30…可動部、31…被固定部材、32…接触部材、33…第1弾性部材、35h…溝部、37a…カム面、37e…第1対向面、40…歯止め部材、42…爪部、50…パーキングギヤ、60…第2弾性部材、80a…動力部、80b…伝達機構部、85…ハウジング、85a…第1ハウジング、85b…第2ハウジング、87a…隔壁、100…駆動装置、110…ストッパ部、110a…第2対向面、120…突き当て部、J4…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8