(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20250304BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250304BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/175 501
B41J2/01 305
B41J2/165 211
(21)【出願番号】P 2021054035
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】刑部 吉記
(72)【発明者】
【氏名】中澤 史朗
(72)【発明者】
【氏名】白野 太一
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 草介
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-018599(JP,A)
【文献】特開2018-108647(JP,A)
【文献】特開2004-291486(JP,A)
【文献】特開2014-210417(JP,A)
【文献】特開平03-016738(JP,A)
【文献】国際公開第2020/032968(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
媒体が載置されるトレイと、
トレイセンサと、
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
少なくとも一部が上記ノズルの開口よりも上方に位置しており、液体が液面を形成して貯留される貯留部と、
大気開放口を通じて上記貯留部の気体層と外部とを連通する大気連通路と、
電力供給を受けて駆動する電気アクチュエータを有しており、当該電気アクチュエータの駆動により上記大気開放口又は上記大気連通路を連通状態又は非連通状態にするバルブユニットと、
コントローラと、を備えており、
上記バルブユニットは、上記電気アクチュエータに電力が供給されていない状態において、直前の上記電気アクチュエータの駆動により上記大気開放口又は上記大気連通路を連通状態又は非連通状態に保持
し、
上記トレイは、上記筐体に対して媒体を供給可能な第1位置と、媒体を供給不能な第2位置とに移動可能であり、
上記トレイセンサは、上記トレイが上記第2位置にあることに応じた検知信号を出力し、
上記コントローラは、上記トレイセンサから上記検知信号を取得したことを条件として、上記電気アクチュエータを駆動して上記バルブユニットを上記非連通状態とする液体吐出装置。
【請求項2】
搬送路を有する筐体と、
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
少なくとも一部が上記ノズルの開口よりも上方に位置しており、液体が液面を形成して貯留される貯留部と、
大気開放口を通じて上記貯留部の気体層と外部とを連通する大気連通路と、
電力供給を受けて駆動する電気アクチュエータを有しており、当該電気アクチュエータの駆動により上記大気開放口又は上記大気連通路を連通状態又は非連通状態にするバルブユニットと、
上記搬送路において媒体を検知したことに応じた検知信号を出力する媒体センサと、
コントローラと、を備えており、
上記バルブユニットは、上記電気アクチュエータに電力が供給されていない状態において、直前の上記電気アクチュエータの駆動により上記大気開放口又は上記大気連通路を連通状態又は非連通状態に保持し、
上記コントローラは、上記媒体センサから取得した上記検知信号に基づいて媒体の搬送が異常であるかを判断し、媒体の搬送が異常であると判断したことを条件として、上記電気アクチュエータを駆動して上記バルブユニットを上記非連通状態とする液体吐出装置。
【請求項3】
上記ヘッドを搭載して移動するキャリッジと、
上記キャリッジの移動に応じた信号を出力する位置センサと
、を更に備えており、
上記コントローラは、
上記位置センサから出力される信号に基づいて、上記キャリッジが待機位置に位置するかを判定し、
上記キャリッジが上記待機位置に位置すると判定したことに基づいて、上記電気アクチュエータを駆動して上記バルブユニットを上記連通状態とする請求項1
または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
上記ヘッドの上記ノズルから液体を吸引する吸引機
構を更に備え、
上記コントローラは、上記吸引機構を駆動するときに、上記電気アクチュエータを駆動して上記バルブユニットを上記連通状態とする請求項1
または2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
上記コントローラは、上記ヘッドが上記ノズルから液体を吐出しているときに、上記電気アクチュエータを駆動して上記バルブユニットを上記連通状態とす
る請求項1
または2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
外部環境の状態に応じた検知信号を出力する環境セン
サを更に備え、
上記コントローラは、上記環境センサの上記検知信号に基づいて外部環境が変化したと判断したことを条件として、上記電気アクチュエータを駆動して上記バルブユニットを上記連通状態とする請求項1
または2に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
上記ノズルを被覆した被覆位置及び上記ノズルから離間した離間位置に移動可能なキャップと、
上記キャップの内部空間と外部とを連通するキャップ開放口を上記連通状態又は上記非連通状態にするキャップバルブユニットと、を備えており、
上記キャップバルブユニットは、電源がオンからオフに移行されるときに、上記キャップ開放口を上記非連通状態から上記連通状態にする請求項1から
6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
上記バルブユニットは、回動することにより上記非連通状態と上記連通状態とに姿勢変化する回動体を更に備え、
上記電気アクチュエータは、第1電気アクチュエータと第2電気アクチュエータとを有しており、
上記第1電気アクチュエータは、電力が供給されることにより駆動して、上記回動体を上記非連通状態から上記連通状態に回動させ、
上記第2電気アクチュエータは、電力が供給されることにより駆動して、上記回動体を上記連通状態から上記非連通状態に回動させる請求項1から
7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
上記バルブユニットは、回動することにより上記非連通状態と上記連通状態とに姿勢変化する回動体を更に備え、
上記電気アクチュエータは、上記回動体に当接して回動させる偏心カムを有する回動機である請求項1から
7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
少なくとも一部が上記ノズルの開口よりも上方に位置しており、液体が液面を形成して貯留される貯留部と、
大気開放口を通じて上記貯留部の気体層と外部とを連通する大気連通路と、
電力供給を受けて駆動する電気アクチュエータを有しており、当該電気アクチュエータの駆動により上記大気開放口又は上記大気連通路を連通状態又は非連通状態にするバルブユニットと、を備えており、
上記バルブユニットは、回動することにより上記非連通状態と上記連通状態とに姿勢変化する回動体を更に備え、
上記電気アクチュエータは、第1電気アクチュエータと第2電気アクチュエータとを有しており、
上記第1電気アクチュエータは、電力が供給されることにより駆動して、上記回動体を上記非連通状態から上記連通状態に回動させ、
上記第2電気アクチュエータは、電力が供給されることにより駆動して、上記回動体を上記連通状態から上記非連通状態に回動させる液体吐出装置。
【請求項11】
上記ヘッド、上記貯留部、及び上記バルブユニットを搭載して移動するキャリッジを更に備える請求項1から
10のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項12】
上記ヘッド及び上記貯留部を搭載して移動するキャリッジを更に備え、
上記大気開放口及び上記バルブユニットは、上記キャリッジに搭載されておらず、上記大気開放口と上記貯留部とは気体流路によって接続されている請求項1から
10のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項13】
上記ヘッドを搭載して移動するキャリッジを更に備え、
上記貯留部及び上記バルブユニットは、上記キャリッジに搭載されておらず、上記貯留部と上記ヘッドとは液体流路によって接続されている請求項1から
10のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項14】
上記キャリッジは、走査方向に移動するものであり、
上記ヘッドは、上記キャリッジが上記走査方向へ移動しているときに液体を吐出する請求項
11から
13のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項15】
上記貯留部は、
第1貯留室と、
上記第1貯留室及び上記ヘッドと液体が流通可能に接続された第2貯留室と、を有する請求項1から
14のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項16】
上記大気連通路は、ラビリンス構造又は半透膜の少なくともいずれか一方を有する請求項1から
15のいずれかに記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留部から供給された液体を吐出するヘッドを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置としてインクジェット記録装置が公知である。インクジェット記録装置では、インクの吐出安定性を担保するために、ヘッドのノズルに、ヘッドの外から見て凹型のメニスカスが形成される。
【0003】
特許文献1に記載されたインクジェット記録装置では、ヘッドがインクを吐出する状態において、弁体201が空気流入調整部62を開放している。これにより、空気流入調整部62を通じてインクタンク54内に空気が流入する。インクタンク54が操作部202の下方に移動すると、操作部202との当接により弁体201が姿勢変化して、空気流入調整部62が閉塞される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたインクジェット記録装置では、弁体201が空気流入調整部62を閉塞するヘッドの位置、及び開放するヘッドの位置が固定される。換言すれば、ヘッドの位置に拘わらずに空気流入調整部62を開閉することができない。したがって、例えば、用紙が搬送できなくなる所謂ジャムが発生したときに、直ちに空気流入調整部62を閉塞することができず、その結果、ヘッドのノズルから用紙にインクが漏れ続けるおそれがある。また、温度や気圧の環境変化によりヘッドのノズルのメニスカスが壊れるおそれがあるときに、直ちに空気流入調整部62を開放することができない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッドの位置に拘わらずに貯留部の大気開放口を連通状態又は非連通状態にすることができ、また、電源が供給されない状態となっても大気開放口の連通状態又は非連通状態が保持される液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、少なくとも一部が上記ノズルの開口よりも上方に位置しており、液体が液面を形成して貯留される貯留部と、大気開放口を通じて上記貯留部の気体層と外部とを連通する大気連通路と、電力供給を受けて駆動する電気アクチュエータを有しており、当該電気アクチュエータの駆動により上記大気開放口又は上記大気連通路を連通状態又は非連通状態にするバルブユニットと、を備える。上記バルブユニットは、上記電気アクチュエータに電力が供給されていない状態において、直前の上記電気アクチュエータの駆動により上記大気開放口又は上記大気連通路を連通状態又は非連通状態に保持する。
【0008】
本構成によれば、ヘッドの状態に拘わらずに大気開放口又は大気連通路を連通状態又は非連通状態にするタイミングが設定可能である。また、電気アクチュエータに電力が供給されていない状態において、大気開放口又は大気連通路が連通状態又は非連通状態に保持される。
【0009】
(2)好ましくは、液体吐出装置は、上記液体吐出装置の状態を検知して、検知結果に応じた検知信号を出力する状態センサと、コントローラと、を更に備える。上記コントローラは、上記検知信号に基づいて上記液体吐出装置の状態が異常であると判断したことを条件として、上記電気アクチュエータを駆動して上記バルブユニットを上記非連通状態とする。
【0010】
本構成によれば、液体吐出装置の状態が異常状態となったとき、バルブユニットが非連通状態にされるので、ヘッドから液体が流出し続けることが抑制される。
【0011】
(3)好ましくは、液体吐出装置は、開口を有する筐体と、上記開口を開閉するカバーと、上記カバーが上記開口に対して開かれていることに応じた検知信号を出力するカバーセンサと、を更に備える。上記状態センサは、上記カバーセンサであり、上記コントローラは、上記カバーセンサから上記検知信号を取得したことを条件として上記液体吐出装置の状態が異常であると判断する。
【0012】
(4)好ましくは、液体吐出装置は、筐体と、媒体が載置されるトレイと、トレイセンサと、を更に備える。上記状態センサは、上記トレイセンサであり、上記トレイは、上記筐体に対して媒体を供給可能な第1位置と、媒体を供給不能な第2位置とに移動可能であり、上記トレイセンサは、上記トレイが上記第2位置にあることに応じた検知信号を出力し、上記コントローラは、上記トレイセンサから上記検知信号を取得したことを条件として、上記液体吐出装置の状態が異常であると判断する。
【0013】
(5)好ましくは、液体吐出装置は、搬送路を有する筐体と、上記搬送路において媒体を検知したことに応じた検知信号を出力する媒体センサとを更に備える。上記状態センサは、上記媒体センサであり、上記コントローラは、上記媒体センサから取得した上記検知信号に基づいて媒体の搬送が異常であるかを判断し、媒体の搬送が異常であると判断したことを条件として上記液体吐出装置の状態が異常であると判断する。
【0014】
(6)好ましくは、液体吐出装置は、上記貯留部に貯留された液体が所定量未満であることに応じた検知信号を出力する液体センサを更に備える。上記状態センサは、上記液体センサであり、上記コントローラは、上記液体センサから上記検知信号を取得したことを条件として、上記液体吐出装置の状態が異常であると判断する。
【0015】
(7)好ましくは、液体吐出装置は、上記ヘッドを搭載して移動するキャリッジと、上記キャリッジの移動に応じた信号を出力する位置センサと、コントローラと、を更に備える。上記コントローラは、上記位置センサから出力される信号に基づいて、上記キャリッジが待機位置に位置するかを判定し、上記キャリッジが上記待機位置に位置すると判定したことに基づいて、上記電気アクチュエータを駆動して上記バルブユニットを上記連通状態とする。
【0016】
本構成によれば、キャリッジが待機位置に位置するときに、外部環境の温度が変化しても、ノズルのメニスカスが壊れることが抑制される。
【0017】
(8)好ましくは、液体吐出装置は、上記ヘッドの上記ノズルから液体を吸引する吸引機構と、コントローラと、を更に備える。上記コントローラは、上記吸引機構を駆動するときに、上記電気アクチュエータを駆動して上記バルブユニットを上記連通状態とする。
【0018】
本構成によれば、ヘッドのノズルから液体を吸引することが容易である。
【0019】
(9)好ましくは、液体吐出装置は、上記ヘッドが上記ノズルから液体を吐出しているときに、上記電気アクチュエータを駆動して上記バルブユニットを上記連通状態とするコントローラを更に備える。
【0020】
本構成によれば、液体吐出装置は、ヘッドのノズルから液体を連続して吐出することが容易である。
【0021】
(10)好ましくは、液体吐出装置は、外部環境の状態に応じた検知信号を出力する環境センサと、コントローラと、を更に備える。上記コントローラは、上記環境センサの上記検知信号に基づいて外部環境が変化したと判断したことを条件として、上記電気アクチュエータを駆動して上記バルブユニットを上記連通状態とする。
【0022】
本構成によれば、液体吐出装置は、温度や気圧などの外部環境が変化しても、ノズルのメニスカスが壊れることが抑制される。
【0023】
(11)好ましくは、液体吐出装置は、上記ノズルを被覆した被覆位置及び上記ノズルから離間した離間位置に移動可能なキャップと、上記キャップの内部空間と外部とを連通するキャップ開放口を連通状態又は非連通状態にするキャップバルブユニットと、を備える。上記キャップバルブユニットは、電源がオンからオフに移行されるときに、上記キャップ開放口を非連通状態から連通状態にする。
【0024】
本構成によれば、液体吐出装置は、キャップがノズルを被覆することにより、ノズルから液体が蒸発することが低減される。電源がオフであるとき、キャップ開放口が連通状態であるので、気温が上昇するなど外部環境が変化しても、キャップの内部空間の空気がノズルへ進入してメニスカスが壊れることが低減される。
【0025】
(12)好ましくは、液体吐出装置において、上記バルブユニットは、回動することにより上記非連通状態と上記連通状態とに姿勢変化する回動体を更に備える。上記電気アクチュエータは、第1電気アクチュエータと第2電気アクチュエータとを有しており、上記第1電気アクチュエータは、電力が供給されることにより駆動して、上記回動体を上記非連通状態から上記連通状態に回動させ、上記第2電気アクチュエータは、電力が供給されることにより駆動して、上記回動体を上記連通状態から上記非連通状態に回動させる。
【0026】
(13)好ましくは、液体吐出装置において、上記バルブユニットは、回動することにより上記非連通状態と上記連通状態とに姿勢変化する回動体を更に備える。上記電気アクチュエータは、上記回動体に当接して回動させる偏心カムを有する回動機である。
【0027】
(14)好ましくは、液体吐出装置は、上記ヘッド、上記貯留部、及び上記バルブユニットを搭載して移動するキャリッジを更に備える。
【0028】
(15)好ましくは、液体吐出装置は、上記ヘッド及び上記貯留部を搭載して移動するキャリッジを更に備える。上記大気開放口及び上記バルブユニットは、上記キャリッジに搭載されておらず、上記大気開放口と上記貯留部とは気体流路によって接続されている。
【0029】
(16)好ましくは、液体吐出装置は、上記ヘッドを搭載して移動するキャリッジを更に備える。上記貯留部及び上記バルブユニットは、上記キャリッジに搭載されておらず、上記貯留部と上記ヘッドとは液体流路によって接続されている。
【0030】
(17)好ましくは、液体吐出装置において、上記キャリッジは、走査方向に移動するものであり、上記ヘッドは、上記キャリッジが上記走査方向へ移動しているときに液体を吐出する。
【0031】
(18)好ましくは、液体吐出装置において、上記貯留部は、第1貯留室と、上記第1貯留室及び上記ヘッドと液体が流通可能に接続された第2貯留室と、を有する。
【0032】
(19)好ましくは、液体吐出装置はにおいて、上記大気連通路は、ラビリンス構造又は半透膜の少なくともいずれか一方を有する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ヘッドの位置に拘わらずに貯留部の大気開放口を連通状態又は非連通状態にすることができる。また、電源が供給されない状態となっても大気開放口の連通状態又は非連通状態が保持される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の斜視図である。
【
図2】
図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、プラテン42及び記録部24を前後方向8と直交する面で切った断面を示す縦断面図であり、キャリッジ40が待機位置に位置し且つキャップ70が被覆位置に位置する状態が示されている。
【
図4】
図4は、プラテン42及び記録部24を前後方向8と直交する面で切った断面を示す縦断面図であり、キャリッジ40が待機位置に位置し且つキャップ70が離間位置に位置する状態が示されている。
【
図5】
図5は、プラテン42及び記録部24を前後方向8と直交する面で切った断面を示す縦断面図であり、キャリッジ40が媒体通過領域36の上方に位置し且つキャップ70が離間位置に位置する状態が示されている。
【
図6】
図6(a)(b)は、大気連通装置48を示す断面図であって、第1電気アクチュエータ49Aに給電した際の動作について示す図である。
【
図7】
図7(a)(b)は、大気連通装置48を示す断面図であって、第2電気アクチュエータ50Aに給電した際の動作について示す図である。
【
図8】
図8は、複合機10の機能ブロック図である。
【
図9】
図9は、画像記録の際におけるバルブユニット91の駆動制御を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図10は、状態センサ31によるバルブユニット91の駆動制御を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図11は、異常時処理を説明するためのフローチャートである。
【
図12】
図12は、画像記録の終了後における駆動制御を説明するためのフローチャートである。
【
図13】
図13(a)~(d)は、変形例1に係る複合機10の大気連通装置48Aを示す断面図であって、バルブユニット91Aが連通状態又は非連通状態に姿勢変化する状態について示す図である。
【
図14】
図14は、変形例2に係る複合機10のキャリッジの断面図である。
【
図15】
図15は、変形例3に係る複合機10のキャリッジの断面図である。
【
図16】
図16は、変形例4に係る複合機10のキャリッジの断面図である。
【
図17】
図17(a)は、変形例5に係る複合機10のタンク80の上壁82に設けられたラビリンス構造187を示す図であり、
図17(b)は、変形例6に係る複合機10の大気開放口88に設けられた半透膜188を示す図である。
【
図18】
図18は、変形例7に係る複合機10の大気連通装置48Fを一部断面で示す図であって、バルブユニット91Fが連通状態又は非連通状態に姿勢変化する状態について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が設けられている面を前面23として前後方向8が定義され、複合機10を前方から視て左右方向9が定義される。上下方向7、前後方向8、及び左右方向9は互いに直交している。
【0036】
[複合機10の全体構造]
図1に示されるように、複合機10(液体吐出装置の一例)は、概ね直方体形状の筐体14を有する。筐体14の下部に、プリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。複合機10は、プリント機能として、インクジェット方式で用紙12(
図2参照、媒体の一例)の片面に画像記録する機能を有している。なお、複合機10は、用紙12の両面に画像記録するものであってもよい。筐体14の上部に、操作部17が設けられている。操作部17は、画像記録の指示や各種設定のために操作されるボタンや、各種情報が表示される液晶ディスプレイなどによって構成されている。本実施形態において、操作部17は、ボタン及び液晶ディスプレイの双方の機能を有するタッチパネルによって構成されている。
【0037】
図2に示されるように、プリンタ部11は、給送トレイ20、給送部16、外ガイド部材18、内ガイド部材19、搬送ローラ対59、排出ローラ対44、プラテン42、記録部24、キャップ70(
図3参照)、大気連通装置48(
図3参照)、シートセンサ120(媒体センサの一例)、ロータリエンコーダ75(
図8参照)、コントローラ130(
図8参照)、及びメモリ140(
図8参照)を備えている。これらは、筐体14の内部に配置されている。また、筐体14の内部には、複合機10の状態を検知して、検知結果に応じた検知信号を出力する様々な状態センサ31が配置されている。本実施形態において、状態センサ31は、トレイセンサ110、カバーセンサ150、エンコーダ35、シートセンサ120、液体センサ163、及び温度センサ115である。なお、状態センサ31は、前記のものに限らず、公知の複合機10に設けられた種々のセンサであってもよい。
【0038】
[給送トレイ20]
図1に示されるように、プリンタ部11の前面23に、開口13が形成されている。給送トレイ20(トレイの一例)には、用紙12が載置される。給送トレイ20が、前後方向8へ移動することによって、開口13を介して筐体14に対して挿入及び抜去可能である。給送トレイ20は、筐体14に装着され筐体14に用紙12を給送可能な給送位置(
図1及び
図2参照、第1位置の一例)と、筐体14から抜き出され筐体14に用紙12を給送不能な非給送位置(第2位置の一例)とに移動可能である。給送トレイ20は、筐体14に対して後方へ挿入されることによって給送位置へ移動し、筐体14に対して前方へ引き出されることによって非給送位置へ移動する。
【0039】
給送トレイ20は、上方が開放された箱形状の部材であり、用紙12を収容する。
図2に示されるように、給送トレイ20の底板22に、用紙12が重ねられた状態で支持される。給送トレイ20の前部の上方に、排出トレイ21が配置されている。記録部24によって画像記録されて排出された用紙12が、排出トレイ21の上面に支持される。
【0040】
図2に示されるように、給送トレイ20が給送位置のとき、給送トレイ20に支持された用紙12が搬送路65へ給送可能である。
【0041】
筐体14の内部の後下部に、トレイセンサ110が配置されている。トレイセンサ110は、筐体14の下壁141に支持されている。トレイセンサ110は、給送トレイ20が給送位置に位置しているか否かを検知するためのセンサである。なお、トレイセンサ110は、本実施形態において説明されているものに限らず、公知のものが採用可能である。例えば、本実施形態において、トレイセンサ110は、軸111と、軸111を中心に回動可能な検出子112と、発光素子及び当該発光素子から発光された光を受光する受光素子を有する光学センサ113とを備えている。
【0042】
[給送部16]
図2に示されるように、給送部16は、記録部24の下方且つ給送トレイ20の底板22の上方に配置されている。給送部16は、給送ローラ25、給送アーム26、駆動伝達機構27、及び軸28を備えている。給送ローラ25は、給送アーム26の先端部で回転可能に支持されている。給送ローラ25は、給送用モータ102によって駆動される。給送ローラ25は、給送トレイ20の用紙12を、搬送路65へ給送する。
【0043】
[搬送路65]
図2に示されるように、給送トレイ20の後端部から搬送路65が延出されている。搬送路65は、湾曲部33と直線部34とを備える。湾曲部33は、上方へ向かいつつ後方から前方へUターンするように延びている。直線部34は、概ね前後方向8に沿って延びている。
【0044】
湾曲部33は、所定間隔を隔てて互いに対向する外ガイド部材18と内ガイド部材19とによって形成されている。外ガイド部材18及び内ガイド部材19は、左右方向9へ延設されている。直線部34は、記録部24が配置されている位置では所定間隔を隔てて互いに対向する記録部24とプラテン42とによって形成されている。
【0045】
給送トレイ20に支持された用紙12は、給送ローラ25によって湾曲部33を搬送されて、搬送ローラ対59に到達する。搬送ローラ対59に挟持された用紙12は、直線部34を記録部24へ向けて前方へ搬送される。記録部24の直下に到達した用紙12は、記録部24により画像記録される。画像記録された用紙12は、直線部34を前方へ搬送されて排出トレイ21に排出される。以上より、用紙12は、
図2に一点鎖線の矢印で示される搬送向き15に沿って搬送される。
【0046】
[開閉カバー145]
図2に示されるように、開閉カバー145(カバ-の一例)が、開口を有する筐体14の後壁142によって左右方向9に延びた軸145A周りに回動可能に支持されている。本実施形態において、軸145Aは、開閉カバー145の下端部に位置しているが、軸145Aの位置はこれに限らない。
【0047】
開閉カバー145は、
図2に実線で示される遮断位置と、
図2に破線で示される開放位置とに回動可能である。外ガイド部材18は、開閉カバー145に取り付けられている。つまり、外ガイド部材18は、開閉カバー145と一体に回動する。開閉カバー145が遮断位置のとき、外ガイド部材18は湾曲部33を構成する。このとき、湾曲部33が筐体14の外部から閉塞される。開閉カバー145が開放位置のとき、湾曲部33が筐体14の外部に露出される。これにより、ユーザが搬送路65に詰まった用紙12を容易に取り出すことができる。
【0048】
筐体14の内部の後上部に、カバーセンサ150が配置されている。カバーセンサ150は、複合機10のフレーム(不図示)に支持されている。カバーセンサ150は、開閉カバー145の位置を検知するためのセンサであり、カバーが開口に対して開かれていることに応じた検知信号を出力する。なお、カバーセンサ150は、本実施形態において説明されているものに限らず、公知のものが採用可能である。例えば、本実施形態において、カバーセンサ150は、軸151と、軸151を中心に回動可能な検出子152と、発光素子及び当該発光素子から発光された光を受光する受光素子を有する光学センサ153とを備えている。
【0049】
開閉カバー145が開放位置に位置しているとき(換言すると、開閉カバー145が遮断位置に位置していないとき)、検出子152は、自重によって
図2に破線で描かれている状態である。このとき、検出子152の先端部は、開閉カバー145が遮断位置のときに開閉カバー145の上部が位置する空間にある。このとき、検出子152は、光学センサ153の発光素子から受光素子に至る光路から外れて、上記光路に光が通る。そのため、光学センサ153からコントローラ130(
図8参照)にハイレベルの信号が出力される。
【0050】
開閉カバー145が開放位置から遮断位置へ回動すると、開閉カバー145の上部が検出子152を前方へ押す。これにより、検出子152は、
図2に破線で描かれている位置から実線で描かれている位置へ回動する。その結果、検出子152の先端部は、光学センサ153の発光素子から受光素子に至る光路に進入して、当該光路を通る光を遮断する。そのため、光学センサ153からコントローラ130(
図8参照)にローレベルの信号が出力される。なお、検出子152は、自重以外、例えばバネによって
図2に破線で描かれた位置に付勢されていてもよい。
【0051】
[搬送ローラ対59及び排出ローラ対44]
図2に示されるように、直線部34に、搬送ローラ対59が配置されている。直線部34における搬送ローラ対59よりも搬送向き15の下流に、排出ローラ対44が配置されている。
【0052】
搬送ローラ対59は、搬送ローラ60と、搬送ローラ60の下方に搬送ローラ60と対向して配置されたピンチローラ61とを備えている。ピンチローラ61は、コイルバネなどの弾性部材(不図示)によって搬送ローラ60に押圧されている。搬送ローラ対59は、用紙12を挟持可能である。
【0053】
排出ローラ対44は、排出ローラ62と、排出ローラ62の上方に排出ローラ62と対向して配置された拍車ローラ63とを備えている。拍車ローラ63は、コイルバネなどの弾性部材(不図示)によって排出ローラ62へ向けて押圧されている。排出ローラ対44は、用紙12を挟持可能である。
【0054】
搬送ローラ60及び排出ローラ62は、搬送用モータ101(
図8参照)から駆動力を付与されて回転する。搬送ローラ対59に用紙12が挟持されている状態で搬送ローラ60が回転すると、当該用紙12は、搬送ローラ対59によって搬送向き15へ搬送され、プラテン42上に搬送される。排出ローラ対44に用紙12が挟持されている状態で排出ローラ62が回転すると、当該用紙12は、排出ローラ対44によって搬送向き15へ搬送され、排出トレイ21上に排出される。
【0055】
[プラテン42]
図2に示されるように、プラテン42は、搬送路65の直線部34に配置されている。プラテン42は、上下方向7において記録部24に対向している。プラテン42は、搬送路65を搬送される用紙12を下方から支持する。
【0056】
搬送路65を搬送される用紙12は、左右方向9において、プラテン42の右端及び左端の間の媒体通過領域36(
図3~
図5参照)を通過する。
【0057】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、プラテン42の上方にプラテン42と対向して配置されている。記録部24は、キャリッジ40と、ヘッド38と、タンク80(貯留部の一例)とを備えている。
【0058】
キャリッジ40は、前後方向8に間隔を空けて配置された2つのガイドレール56、57によって搬送向き15と直交する左右方向9(走査方向の一例)に沿って移動可能に支持されている。本実施形態におけるキャリッジ40は、少なくとも一部がヘッド38の上方に位置した状態でタンク80が搭載されている。キャリッジ40は、左右方向9において媒体通過領域36よりも右方から媒体通過領域36よりも左方に亘って移動可能である。キャリッジ40は、画像記録していないときには、キャップ70と対向する位置である待機位置に位置する。なお、キャリッジ40の移動方向は、左右方向9に限らず、搬送向き15と交差する方向であればよい。
【0059】
ガイドレール56は、ヘッド38よりも搬送向き15の上流に配置されている。ガイドレール57は、ヘッド38よりも搬送向き15の下流に配置されている。ガイドレール56、57は、左右方向9において搬送路65の直線部34の外方に配置された一対のサイドフレーム(不図示)によって支持されている。キャリッジ40は、
図8に示されるように、キャリッジ駆動用モータ103(駆動源の一例)から駆動力を付与されることにより移動する。
【0060】
ガイドレール56またはガイドレール57には、エンコーダ35(
図8参照、位置センサの一例)が配置されている。エンコーダ35は、左右方向9に延びたエンコーダストリップと、キャリッジ40におけるエンコーダストリップに対向する箇所に設けられた光学センサとを備えている。エンコーダストリップには、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが、左右方向9にピッチで交互に配置されたパターンが記されている。光学センサによって透光部及び遮断部を検出されることによってパルス信号が検出される。パルス信号は、キャリッジ40の左右方向9の位置に応じた信号である。パルス信号は、コントローラ130(
図8参照)に出力される。すなわち、エンコーダ35は、キャリッジ40の移動に応じた信号を出力する。
【0061】
ヘッド38は、キャリッジ40に搭載されている。ヘッド38の下面68は、下方へ露出しており、プラテン42と対向している。ヘッド38は、キャリッジ40が左右方向9へ移動しているときにインクを吐出する。ヘッド38は、複数のノズル39と、インク流路37と、圧電素子45とを有する。
【0062】
複数のノズル39は、ヘッド38の下面68に開口されており、インク(液体の一例)を吐出する。インク流路37は、タンク80と複数のノズル39とを繋ぐ。圧電素子45(
図8参照)は、インク流路37の一部を変形させることでノズル39から下方へインク滴を吐出させる。圧電素子45は、コントローラ130(
図8参照)により給電されることで動作する。
【0063】
液体センサ163は、タンク80の近傍に設けられる。液体センサ163は、タンク80に貯留されたインクが所定量未満であることに応じた検知信号を出力する。液体センサ163は、本実施形態において説明されているものに限らず、公知のものが採用可能である。例えば、液体センサ163は、発光部(不図示)と、受光部(不図示)とを備える。タンク80に貯留されたインクが所定量未満であることにより発光部から受光部への光が遮断されると、液体センサ163からコントローラ130にローレベル信号が出力され、インクが所定量以上であることにより発光部から受光部への光が通ると、液体センサ163からコントローラ130にハイレベル信号が出力される。
【0064】
タンク80(貯留部の一例)は、キャリッジ40に搭載されている。タンク80は、インク室81を有している。インク室81には、インクが液面を形成して貯留される。インク室81は、インクの液面によって気体層78とインク層79とに区画される。タンク80の近傍には、温度センサ115(環境センサの一例)が設置されている。温度センサ115は、外部環境の状態に応じた検知信号をコントローラ130に出力する。なお、タンク80には、温度センサ115に代えて気体層78の内部の圧力を検知する圧力センサ114が設置されていてもよい。
【0065】
本実施形態では、記録部24は、一つのタンク80を備えている。この一つのタンク80には、黒色のインクが貯留されている。なお、タンク80に貯留されるインクの色は黒色に限らない。また、記録部24は、タンク80を備えているが、インクカートリッジによりインクが供給されるものであってもよい。
【0066】
タンク80は、ヘッド38より上方に位置している。なお、本実施形態では、タンク80の全てがヘッド38より上方に位置している。なお、タンク80は、少なくとも一部がノズル39の開口よりも上方に位置していればよい。
【0067】
インク室81のインク層79は、インク流路37を介して複数のノズル39と連通している。インク流路37を通じて、インク室81からノズル39へインクが供給される。
【0068】
タンク80の上壁82に、インク室81へインクを注入するための注入口83が設けられている。注入口83は、上壁82を厚み方向に貫通して、インク室81の気体層78をタンク80の外部に連通する。インクが補充される際は、ボトル(不図示)が注入口83に挿入され、ボトルから注入口83を介してインク室81へインクが注入される。なお、注入口83は、インク室81の上部と外部とを連通する位置であれば、上壁82以外に設けられていてもよい。
【0069】
図3~
図5に示されるように、タンク80の上壁82において大気開放口88が設けられている。大気開放口88は、インク室81の気体層78と外部とを連通させる。
【0070】
[大気連通装置48]
図3~
図7に示されるように、大気開放口88の近傍には、大気連通装置48が設けられている。本実施形態におけるにおける大気連通装置48は、バルブユニット91と、駆動機構92とを備える。
【0071】
バルブユニット91は、大気開放口88の右側近傍に設けられている。バルブユニット91は、バルブユニット電気アクチュエータ(以下、BU電気アクチュエータとも称する)49の駆動により大気開放口88を連通状態又は非連通状態にする。また、BU電気アクチュエータ49に電力が供給されていない状態において、直前のBU電気アクチュエータ49の駆動により大気開放口88を連通状態又は非連通状態に保持する。連通状態とは、大気開放口88が開放されてインク室81の気体層78と外部とを連通させている状態である。非連通状態とは、大気開放口88が閉塞されて、インク室81の気体層78と外部とが気密に遮断されている状態である。
【0072】
バルブユニット91は、回動体96と、回動軸97と、回動支持台98とを備える。
【0073】
回動体96は、中央付近で折れ曲がった平板形状であり、前後方向8から視てV字形状である。回動体96において折れ曲がった箇所から左方に延びる部分が第1回動体99と称され、右方に延びる部分が第2回動体100と称される。第1回動体99と第2回動体100との境界から前後方向8に沿って回動軸97が回動体96から突出している。
【0074】
回動支持台98は、タンク80の上壁82から上方へ突出する。回動支持台98は、大気開放口88の右方に位置する。回動支持台98は、回動軸97を前後方向8に沿って回動可能に支持する。回動軸97周りに回動体96が回動することによって、第1回動体99が、大気開放口88を閉塞したり、開放したりする。
【0075】
駆動機構92は、電力供給を受けて駆動するBU電気アクチュエータ49と、コイルバネ51とを備えている。BU電気アクチュエータ49は、所謂電磁弁である。BU電気アクチュエータ49は、第1電気アクチュエータ49Aと、第2電気アクチュエータ50Aとを有している。また、コイルバネ51は、第1コイルバネ51Aと、第2コイルバネ52Aとを有している。駆動機構92は、コントローラ130から給電されることで動作し、バルブユニット91を駆動する。駆動機構92は、タンク80の上壁82に設けられている。
【0076】
第1電気アクチュエータ49Aは、例えば、上壁82において回動支持台98より左方に位置する第1支持台94に支持されている。第2電気アクチュエータ50Aは、例えば、上壁82において右方に位置する第2支持台95に支持されている。
【0077】
第1電気アクチュエータ49Aは、第1コイル部107と、第1プランジャ125とを備えており、第2電気アクチュエータ50Aは、第2コイル部108と、第2プランジャ126とを備えている。第1プランジャ125と、第2プランジャ126の先端部分は、一体に結合された当接部127である。当接部127の下端は、回動軸97の上方にある。
【0078】
第1コイル部107は電磁コイルを有する。第1プランジャ125は、第1コイル部107に挿入された軸部分が磁性を有しており、第1コイル部107に誘導磁界が発生すると、第1プランジャ125が第1コイル部107に対して右方へ移動する。
【0079】
第2コイル部108も同様に電磁コイルを有する。第2プランジャ126は、第2コイル部108に挿入された軸部分が磁性を有しており、第2コイル部108に誘導磁界が発生すると、第2プランジャ126が第2コイル部108に対して左方へ移動する。
【0080】
図6に示されるように、第1支持台94の左方において、第1バネ座105が上方へ突出している。第1バネ座105は、大気開放口88よりも左方に位置する。第1バネ座105と第1電気アクチュエータ49Aの第1プランジャ125とに支持されて、第1コイルバネ51Aが左右方向9に沿って延びている。
【0081】
タンク80の上壁82の右端付近において、第2バネ座106が上方へ突出している。第2バネ座106は、大気開放口88よりも右方に位置する。第2バネ座106と第2電気アクチュエータ50Aの第2プランジャ126とに支持されて、第2コイルバネ52Aが左右方向9に沿って延びている。第1電気アクチュエータ49A及び第2電気アクチュエータ50Aに給電されていない状態において、第1コイルバネ51A及び第2コイルバネ52Aは、当接部127を回動軸97の上方に保持する。
【0082】
図6(a)に示されるように、第1コイル部107に給電され第2コイル部108に給電されていない状態おいて、当接部127は、第1コイル部107に対して最も右方に移動した状態となる。この状態において、当接部127は、回動軸97よりも右方に位置して、第2回動体100の上方に位置する。このとき、回動体96は、最も時計回りに回動した状態となり、第1回動体99が、大気開放口88から離間する。つまり、回動体96は、回動することにより非連通状態から連通状態に姿勢変化する。
【0083】
連通状態から第2コイル部108への給電がされないまま第1コイル部107への給電が停止されると、当接部127は、
図6(b)に示されるように、第1コイルバネ51A及び第2コイルバネ52Aの付勢力によって左方に移動し、回動軸97の上方で停止する。当接部127は回動軸97に接触しない長さであるので、回動体96の姿勢は保持され、第1回動体99は、大気開放口88から離間したままとなる。
【0084】
連通状態から第1コイル部107への給電がされないまま第2コイル部108に給電されると、当接部127は、
図7(a)において示されるように、第2コイル部108に対して最も左方に移動した状態となる。この状態において、当接部127は、回動軸97よりも左方に位置して、第1回動体99の上方に位置する。このとき、回動体96は最も反時計回りに回動した状態となり、第1回動体99が大気開放口88を閉塞する。つまり、回動体96は、回動することにより連通状態から非連通状態に姿勢変化する。
【0085】
非連通状態から第1コイル部107への給電がされないまま、第2コイル部108への給電が停止されると、当接部127は、
図7(b)に示されるように、第1コイルバネ51A及び第2コイルバネ52Aの付勢力によって右方に移動し、回動軸97の上方で停止する。このため、回動体96の姿勢は保持され、第1回動体99は、大気開放口88を閉塞したままとなる。
【0086】
なお、第1回動体99は、大気開放口88に当接することによってバルブユニット91を非連通状態にするが、第1回動体99の下面には、大気開放口88との密閉性を高めるために弾性部材が設けられていてもよい。
【0087】
また、駆動機構92は、コイルバネ51が第1コイルバネ51Aと、第2コイルバネ52Aとを有する場合を例に挙げて説明しているが、これに限らない。すなわち、駆動機構92は、単独のコイルバネを備えるものであってもよい。
【0088】
また、複合機10は、例えば、当該複合機10に電力を供給する給電状態又は電力を給電しない非給電状態に切り替える電源スイッチを有しており、更に、複合機10に電力が給電されている状態において、当該複合機10を省電力待機状態又はスタンバイ状態に切り替えるためのソフトスイッチである電源ボタンを有していてもよい。そして、バルブユニット91の連通状態及び非連通状態の切り替えは、ソフトスイッチの操作の後に実行されるものであってもよい。
【0089】
また、本実施形態では、バルブユニット91が、大気開放口88の右側近傍に設けられている場合を例に説明したが、バルブユニット91は、大気開放口88の左側近傍に設けられているものであってもよい。
【0090】
[キャップ70]
図3~
図5に示されるように、左右方向9におけるプラテン42の外、本実施形態では媒体通過領域36よりも右方の待機位置(
図3及び
図4に示される位置)にキャップ70が位置する。キャリッジ40が待機位置にあるとき、キャップ70はキャリッジ40の下方に位置して、キャリッジ40(詳細には、ヘッド38のノズル39)と対向する。キャップ70は、上方が開放された箱形状の部材である。キャップ70は、ゴムなどの弾性材料からなる。
【0091】
キャップ70は、公知の可動機構71を介してフレーム46に支持されており、キャップ駆動用モータ104(
図8参照)から駆動力を付与された可動機構71によって上下動可能である。フレーム46は、プラテン42より右方に位置しており、前後方向8及び左右方向9に拡がった板状の部材である。可動機構71は、例えばボールネジを用いた機構や、カムを用いた機構などである。
【0092】
キャップ70は、
図3に示されるノズル39を被覆した被覆位置と、
図4に示されるノズルから離間した離間位置に移動可能である。
図3に示されるように、被覆位置のキャップ70は、その上端が下方からヘッド38の下面68に圧接される。これにより、キャップ70は、下面68に開口された複数のノズル39を下方から覆った状態となる。このとき、キャップ70とヘッド38の下面68によって画定されるキャップ内部空間76が形成される。離間位置は、被覆位置より下方の位置である。離間位置のキャップ70は、ヘッド38の下面68から離間している。
【0093】
キャップ70の底面70Aには、キャップ70の内部空間76と外部とを連通する貫通孔72(キャップ開放口の一例)が設けられている。貫通孔72にはチューブ73の一端が接続されている。チューブ73は、可撓性を有する樹脂チューブである。チューブ73の一端が貫通孔72に接続されることで、貫通孔72を通じてキャップ内部空間76と外部とを連通するキャップ連通路74が形成される。チューブ73の他端は、貫通孔72又はキャップ連通路74を連通状態又は非連通状態にするキャップバルブユニット67に接続されている。キャップバルブユニット67は、キャップバルブユニット電気アクチュエータ53(
図8参照)を有している。キャップバルブユニット67は、貫通孔72又はキャップ連通路74を連通状態又は非連通状態にする。キャップバルブユニット67は、キャップバルブユニット電気アクチュエータ53への電源がオンからオフに移行されると非連通状態から連通状態となる。連通状態とは、貫通孔72又はキャップ連通路74がキャップ内部空間76と外部とを連通させている状態である。非連通状態とは、貫通孔72又はキャップ連通路74が外部とは閉塞された状態である。非連通状態において、キャップ内部空間76は、ポンプ77と連通する。
【0094】
キャップ内部空間76は、ポンプ77(吸引機構の一例)と接続されている。ポンプ77は、キャップ内部空間76に吸引圧を付与する。キャップ70が被覆位置に位置してノズル39を覆っており、且つ、キャップバルブユニット67が非連通状態であるときにポンプ77が駆動されると、キャップ内部空間76が負圧となり、ノズル39からインクとともに異物がキャップ内部空間76へ吸い出される。
【0095】
[シートセンサ120]
図2に示されるように、シートセンサ120は、搬送路65における搬送ローラ対59よりも搬送向き15の上流に位置する。シートセンサ120は、軸121と、軸121を中心に回動可能な検出子122と、発光素子及び当該発光素子から発光された光を受光する受光素子を有する光学センサ123とを備えている。
【0096】
検出子122の一端は、搬送路65に突出している。検出子122の一端に外力が加えられていないとき、検出子122の他端は光学センサ123の発光素子から受光素子に至る光路に進入して、当該光路を通る光を遮断している。このとき、光学センサ123からコントローラ130(
図8参照)にローレベルの信号が出力される。検出子122の一端が用紙12の先端に押されて回動すると(
図2に破線で描かれた検出子122参照)、検出子122の他端は上記光路から外れて、上記光路に光が通る。このとき、光学センサ123からコントローラ130にハイレベルの信号が出力される。なお、検出子122は、
図2に実線で描かれた位置にバネなどによって付勢されている。
【0097】
[ロータリエンコーダ75]
ロータリエンコーダ75は、エンコーダディスクと光学センサとからなる。エンコーダディスクが回転すると、光学センサによってパルス信号が生成され、コントローラ130に当該パルス信号が出力される。
【0098】
[コントローラ130及びメモリ140]
以下、
図8が参照されて、コントローラ130及びメモリ140の構成が説明される。なお、
図8~12においてバルブユニット91についてはBUと称し、キャリッジ40についてはCRと称し、キャップバルブユニット67についてはCBUと称し、キャップバルブユニット電気アクチュエータ53についてはCBU電気アクチュエータと称する。
【0099】
コントローラ130は、複合機10の全体動作を制御するものである。コントローラ130は、CPU131及びASIC135を備えている。メモリ140は、ROM132、RAM133、及びEEPROM134を備えている。CPU131、ASIC135、ROM132、RAM133、及びEEPROM134は、内部バス137によって接続されている。
【0100】
ROM132には、CPU131が各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0101】
ASIC135には、搬送用モータ101、給送用モータ102、キャリッジ駆動用モータ103、キャップ駆動用モータ104、BU電気アクチュエータ49、及びキャップバルブユニット電気アクチュエータ53が接続されている。ASIC135には、各モータを制御する駆動回路が組み込まれている。CPU131は、各モータを回転させるための駆動信号を各モータに対応する駆動回路に出力する。駆動回路は、CPU131から取得した駆動信号に応じた駆動電力を対応するモータへ出力する。これにより、対応するモータが回転する。つまり、コントローラ130は、給送用モータ102を制御して、給送部16に用紙12を給送させる。また、コントローラ130は、搬送用モータ101を制御して、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44に用紙12を搬送させる。コントローラ130は、キャリッジ駆動用モータ103を制御して、キャリッジ40を移動させる。コントローラ130は、キャップ駆動用モータ104を制御して、可動機構71を駆動させて、キャップ70を移動させる。コントローラ130は、BU電気アクチュエータ49を制御して、バルブユニット91を駆動させる。コントローラ130は、キャップバルブユニット電気アクチュエータ53を制御して、キャップバルブユニット67を駆動させる。
【0102】
ASIC135には、トレイセンサ110が接続されている。コントローラ130は、トレイセンサ110からローレベルの信号を取得した場合、給送トレイ20が給送位置に位置することを検知する。コントローラ130は、トレイセンサ110からハイレベルの信号を取得した場合、給送トレイ20が給送位置に位置していないことを検知する。
【0103】
ASIC135には、カバーセンサ150が接続されている。コントローラ130は、カバーセンサ150からローレベルの信号を取得した場合、開閉カバー145が遮断位置に位置することを検知する。コントローラ130は、カバーセンサ150からハイレベルの信号を取得した場合、開閉カバー145が開放位置に位置することを検知する。
【0104】
ASIC135には、シートセンサ120が接続されている。シートセンサ120は、搬送路65において用紙12を検知したことに応じた検知信号を出力する。コントローラ130は、シートセンサ120からハイレベルの信号を取得した場合、シートセンサ120の配置位置に用紙12が存在することを検知する。コントローラ130は、シートセンサ120からローレベルの信号を取得した場合、シートセンサ120の配置位置に用紙12が存在しないことを検知する。
【0105】
ASIC135には、ロータリエンコーダ75が接続されている。コントローラ130は、ロータリエンコーダ75の光学センサから受け取った電気信号に基づいて、搬送用モータの回転量を算出する。
【0106】
ASIC135には、液体センサ163が接続されている。コントローラ130は、ローレベルの信号を取得した場合、タンク80に貯留されたインクが所定量以上であることを検知する。コントローラ130は、ハイレベル信号を取得した場合、タンク80に貯留されたインクが所定量未満であることを検知する。
【0107】
ASIC135には、温度センサ115が接続されている。コントローラ130は、温度センサ115の出力結果に基づいて、タンク80の環境温度を認識する。コントローラ130は、温度センサ115から受け取った情報に基づいて、温度の変化を算出しBU電気アクチュエータ49を駆動させる。タンク80は、温度センサ115に代えて圧力センサ114が設置されていてもよく、この場合、ASIC135に圧力センサ114が接続される。コントローラ130は、圧力センサ114の出力結果に基づいて、気体層78内の圧力を認識する。コントローラ130は、圧力センサ114から受け取った情報に基づいて、圧力の変化を算出しBU電気アクチュエータ49を駆動させる。
【0108】
コントローラ130は、シートセンサ120から受け取った電気信号がローレベルからハイレベルに変化してから(つまりシートセンサ120の配置位置に用紙12の先端が到達したことを検知してから)の搬送用モータ101の回転量によって、用紙12の位置を認識する。
【0109】
ASIC135には、エンコーダ35が接続されている。コントローラ130は、エンコーダ35から受け取ったパルス信号に基づいて、キャリッジ40の位置や移動距離を認識する。
【0110】
ASIC135には、ヘッド38の圧電素子45が接続されている。コントローラ130は、圧電素子45への給電を制御し、複数のノズル39から選択的にインク滴を吐出させる。
【0111】
ASIC135には、BU電気アクチュエータ49が接続されている。コントローラ130は、BU電気アクチュエータ49内に配置されたコイルに電流を供給することによって、プランジャ125を移動させる。
【0112】
ASIC135には、キャップバルブユニット電気アクチュエータ53が接続されている。コントローラ130は、キャップバルブユニット電気アクチュエータ53に電流を供給することによって、キャップバルブユニット67を駆動させる。
【0113】
なお、コントローラ130は、上記に限らず、CPU131のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC135のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU131とASIC135とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、コントローラ130は、1つのCPU131が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU131が処理を分担して行うものであってもよい。また、コントローラ130は、1つのASIC135が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC135が処理を分担して行うものであってもよい。
【0114】
[画像記録の際におけるバルブユニット91の駆動制御]
次に、画像記録の際におけるコントローラ130によるバルブユニット91の駆動制御について
図9を参照して説明する。
図9は、ステップS110~S220を実行する。
【0115】
まず、通常の画像記録において、コントローラ130は、操作部17を通じて印刷開始の入力を受け付けたことに応じて、或いは、外部情報機器から印刷データを受信したことに応じて給送用モータ102を駆動し用紙12を搬送路65へ給送する(S110)。このとき、バルブユニット91は連通状態であり、タンク80のインク室81の圧力(気圧)は大気圧である。
【0116】
コントローラ130は、シートセンサ120が用紙12の前端を検知したことに応じて、搬送用モータ101を駆動し、搬送ローラ対59によって用紙12の前端を記録部24の下方に位置させる頭出しを行う(S120)。
【0117】
コントローラ130は、頭出しされた用紙12を、記録部24の直下において間欠して搬送し(S130)、用紙12が停止しているときに、キャリッジ駆動用モータ103を駆動してキャリッジ40を移動しつつヘッド38のノズル39からインクを吐出してパス印字を行う(S140)。
【0118】
パス印字が行われると、コントローラ130は、キャリッジ40が左右方向9に移動する際に用紙12が湾曲する等してジャムが発生したか否かについて判断する(S150)。ジャムの発生の判断は、例えば、エンコーダ35が出力する信号に基づいて、キャリッジ40の移動速度が閾値よりも低下したとコントローラ130が判断したことにより行われる。
【0119】
コントローラ130は、ジャムが発生したと判断したとき(S150:Yes)、キャリッジ駆動用モータ103を停止しキャリッジ40を停止する(S180)。コントローラ130は、キャリッジ駆動用モータ103を停止した後、BU電気アクチュエータ49を駆動してバルブユニット91を非連通状態にする(S190)。このとき、タンク80のインク室81の圧力(気圧)は大気圧である。次に、コントローラ130は、操作部17を通じてユーザにジャムが発生したことを報知する(S200)。コントローラ130は、ユーザに報知した後、ジャムが解消したか否かについて判断する(S210)。ジャムの解消は、例えば、ユーザが操作部17にジャムが解消したことを入力したか否かによってコントローラ130が判断する。コントローラ130は、ジャムが解消されていないと判断したとき(S210:No)、ジャムが解消するまで継続判断する。一方、コントローラ130は、用紙12がユーザによって取り除かれジャムが解消されたと判断したとき(S210:Yes)、BU電気アクチュエータ49を駆動してバルブユニット91を連通状態にする(S220)。コントローラ130は、ステップS220の後、画像記録を新たに開始するため給送用モータ102を駆動し用紙12を搬送路65へ給送する(S110)。
【0120】
ステップS150において、コントローラ130は、ジャムが発生していないと判断したとき(S150:No)、用紙12への印字が終了したか否かについて判断する(S160)。コントローラ130は、用紙12への印字が終了していないと判断したとき(S160:No)、用紙12全体への印字が終了するまで(S160:Yes)、間欠搬送(S130)とパス印字(S140)とを繰り返す。
【0121】
一方、コントローラ130は、ステップS160において用紙12への印字が終了したと判断したとき(S160:Yes)、画像記録する次ページがあるか否か判断する(S170)。コントローラ130は、画像記録する次ページがあると判断したとき(S170:Yes)、次ページの画像記録を開始するため給送用モータ102を駆動し用紙12を搬送路65へ給送する(S110)。一方、コントローラ130は、画像記録する次ページがないと判断したとき(S170:No)、画像記録を終了する。
【0122】
[状態センサによるバルブユニット91の駆動制御]
次に、コントローラ130の状態センサによるバルブユニット91の駆動制御について説明する。
図10に示されるように、コントローラ130は、ステップS310~S400を実行し、状態センサの検知信号に基づいて複合機10の状態が異常であると判断したことを条件として、BU電気アクチュエータ49を駆動してバルブユニット91を連通状態から非連通状態にする。
【0123】
まず、コントローラ130は、所定間隔(例えば、数ミリ秒間隔)において、ステップS310~S340を実行する。つまり、コントローラ130は、トレイセンサ110から取得した検知信号を参照し(S310)、カバーセンサ150から取得した検知信号を参照し(S320)、シートセンサ120から取得した検知信号を参照し(S330)、液体センサ163から取得した検知信号を参照する(S340)。なお、ステップS310~S340は、異なる順序で実行されてもよいし、並行して実行されてもよい。
【0124】
コントローラ130は、トレイセンサ110からローレベルの検知信号を取得した場合(S310:No)、給送トレイ20が筐体14に装着された給送位置に位置しているために複合機10が正常であると判断する。コントローラ130は、トレイセンサ110が第2位置にあることに応じた検知信号であるハイレベルの信号を取得したとき(S310:Yes)、つまりトレイセンサ110から取得した信号がローレベルからハイレベルへ変わったとき、複合機10が異常であると判断する。この場合、異常時処理が実行される(S350)。
【0125】
コントローラ130は、カバーセンサ150からローレベルの検知信号を取得した場合(S320:No)、開閉カバー145が遮断位置に位置する(閉じられている)ために複合機10が正常であると判断する。コントローラ130は、カバーセンサ150からハイレベルの検知信号を取得した場合(S320:Yes)、開閉カバー145が開放位置に位置するために複合機10が異常であると判断する。この場合、異常時処理が実行される(S350)。
【0126】
コントローラ130は、シートーセンサ120からハイレベルの信号を取得した場合(S330:No)、シートセンサ120の配置位置に用紙12が存在するため複合機10が正常であると判断する。コントローラ130は、シートセンサ120からローレベルの検知信号を取得した場合(S330:Yes)、シートセンサ120の配置位置に用紙12が存在しないため搬送に異常があると判断する。この場合、異常時処理が実行される(S350)。
【0127】
コントローラ130は、液体センサ163からローレベルの検知信号を取得した場合(S340:No)、タンク80に貯留されたインクが所定量以上であるため複合機10が正常であると判断する。コントローラ130は、液体センサ163からハイレベルの検知信号を取得した場合(S340:Yes)、タンク80に貯留されたインクが所定量未満であるため複合機10が異常であると判断する。この場合、異常時処理が実行される(S360)。
【0128】
液体センサ163からハイレベル信号を取得し異常時処理が実行された(S360)後、コントローラ130は、インクが補充されたか否かについて判断する(S370)。インクの補充の判断は、例えば、ユーザが操作部17にインクを補充したことの入力があったか否かをコントローラ130が判断することにより行われる。コントローラ130は、インクが補充されていないと判断したとき(S370:No)、インクが補充されるまで継続判断する。コントローラ130は、インクが補充されたと判断したとき(S370:Yes)、パージを実行する。すなわち、コントローラ130は、キャップバルブユニット電気アクチュエータ53を駆動してキャップバルブユニット67を非連通状態にする(S380)。コントローラ130は、ポンプ77を駆動し(S390)する。これにより、ヘッド38のノズル39からインクが強制的に排出される。パージが終了すると、コントローラ130は、キャップバルブユニット電気アクチュエータ53を駆動してキャップバルブユニット67を非連通状態から連通状態にする(S400)。コントローラ130は、パージを実行した後、制御を終了する。
【0129】
以下、
図10及び
図11を参照しつつ異常時処理(S350、S360)の具体的内容について説明する。
【0130】
異常時処理(S350、S360)では、コントローラ130は、ステップS510~S550を実行する。
図11に示されるように、コントローラ130は、BU電気アクチュエータ49を駆動して連通状態のバルブユニット91を非連通状態にした後、連通状態にする。
【0131】
具体的には、コントローラ130は、状態センサ31から異常である検知信号を取得した後、BU電気アクチュエータ49を駆動し、バルブユニット91を連通状態から非連通状態にする(S510)。バルブユニット91が非連通状態となることで、タンク80のインク室81は大気に対して遮断され密閉状態となる。
【0132】
次に、コントローラ130は、複合機10の異常が解消されたか否かを判断する(S520)。例えば、トレイセンサ110からハイレベルの検知信号を取得したときにおいて(S310)コントローラ130は、給送トレイ20が再び筐体14に装着されると、異常が解消したと判断する(S520:Yes)。また、ステップS320において異常があると判断されたときにおいてコントローラ130は、開閉カバー145が閉じられると、異常が解消したと判断する(S520:Yes)。また、ステップS330において異常があると判断されたときにおいてコントローラ130は、シートセンサ120からハイレベルの検知信号を取得することによってシートセンサ120の配置位置に用紙12が存在するため異常が解消したと判断する(S520:Yes)。また、ステップS340において異常があると判断されたときにおいてコントローラ130は、液体センサ163からローレベルの信号を取得し、且つユーザによる操作部17へのインクの補充を行ったことの入力を受け付けたことによって、タンク80に貯留されたインクが所定量以上であり異常が解消したと判断する(S520:Yes)。
【0133】
コントローラ130は、異常が解消したと判断した後、キャリッジ40が待機位置に位置しているか否かを判断する(S530)。キャリッジ40が待機位置に位置していない場合(S530:No)、コントローラ130は、キャリッジ駆動用モータ103を駆動しキャリッジ40を待機位置へ移動する(S540)。次に、コントローラ130は、BU電気アクチュエータ49を駆動してバルブユニット91を非連通状態から連通状態にする(S550)。
【0134】
一方、ステップS530において、キャリッジ40が待機位置に位置していたとき(S530:Yes)、コントローラ130は、BU電気アクチュエータ49を駆動してバルブユニット91を非連通状態から連通状態にする(S550)。
【0135】
ステップS550においてバルブユニット91を連通状態にする際コントローラ130は、キャリッジ駆動用モータ103を駆動しキャリッジ40を待機位置に移動する。そして、コントローラ130は、キャップ駆動用モータ104を上方に駆動する。これによりキャップ70は被覆位置に移動する。
【0136】
上述の制御が行われることで異常時処理が終了する。
【0137】
[画像記録終了後におけるバルブユニット91の駆動制御]
次に、画像記録終了後におけるコントローラ130によるバルブユニット91の駆動制御について説明する。
図12に示されるように、コントローラ130は、画像記録が終了した後においてステップS610~S700を実行し、インク室81の外部環境の変化を条件に、BU電気アクチュエータ49を駆動してバルブユニット91を非連通状態から連通状態にする。
【0138】
画像記録が終了した後、コントローラ130は、キャリッジ40が待機位置であるか否かについて判断する(S610)。コントローラ130は、キャリッジ40が待機位置でないと判断した場合(S610:No)、キャリッジ40が待機位置にあるか否か継続判断する。
【0139】
一方、コントローラ130は、キャリッジ40が待機位置であるとき(S610:Yes)、BU電気アクチュエータ49を駆動しバルブユニット91を非連通状態にする(S620)。次に、コントローラ130は、温度センサ115からインク室81の温度を取得する(S630)。コントローラ130は、温度センサから取得した温度をメモリ140に格納する。
【0140】
次に、コントローラ130は、タイマーをセットしBU電気アクチュエータ49を駆動してバルブユニット91を非連通状態にしてからの経過時間のカウントを開始する(S640)。コントローラ130は、タイマーをセットした後の現在の時間が、メモリ140に予め設定された所定時間であるか判断する(S650)。コントローラ130は、現時点において、所定時間が経過したと判断したことに応じて(S650:Yes)、インク室81内の温度が予め設定された温度に対してΔT以上アップしたか否かを判断する(S660)。具体的には、温度センサ115から温度情報を取得して、メモリ140に格納された温度情報との温度差を算出する。そして、算出した温度差がΔT以上であるかを判定する。コントローラ130は、インク室81内の温度がΔT以上アップしたと判断したことに応じて(S660:Yes)、BU電気アクチュエータ49を駆動してバルブユニット91を非連通状態から連通状態にする(S670)。一方、コントローラ130は、インク室81内の温度がΔT以上アップしていないと判断したとき(S660:No)、タイマーをリセットし(S680)、経過時間のカウントを再開する。
【0141】
ステップ650において、コントローラ130は、現時点において、所定時間が経過していないと判断したとき(S650:No)、画像記録を開始する等のユーザからの入力があるか否かを判断する(S690)。コントローラ130は、ユーザからの入力がなかったと判断したとき(S690:No)、ユーザからの入力があるまで継続判断する。一方、コントローラ130は、ユーザからの入力があったとき(S690:Yes)、BU電気アクチュエータ49を駆動しバルブユニット91を連通状態にする(S700)。その後、コントローラ130は、画像記録後のバルブユニット91の駆動制御を終了する。
【0142】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、ヘッド38の状態に拘わらずに大気開放口88を連通状態又は非連通状態にするタイミングが設定可能である。つまり、キャリッジ40が待機位置に位置するときか位置しないときかに拘わらず大気開放口88を連通状態又は非連通状態にすることが可能である。また、給電が停止される等、BU電気アクチュエータ49に電力が供給されていない状態において、大気開放口88が連通状態又は非連通状態に保持される。
【0143】
また、本実施形態によれば、例えば、給送トレイ20が給送位置にしない等、複合機10の状態が異常状態となったとき、異常が解消するまでバルブユニット91が非連通状態にされるので、ヘッド38からインクが流出し続けることが抑制される。
【0144】
また、本実施形態によれば、キャリッジ40が待機位置に位置するときに、外部環境の温度が変化しても、インク室81内の圧力が上昇する等してノズル39のメニスカスが壊れることが抑制される。
【0145】
また、本実施形態によれば、大気開放口88を連通状態にしてインク室81を外部と連通させることで、ヘッド38のノズル39からインクを吸引することが容易に行うことができる。
【0146】
また、本実施形態によれば、画像記録が行われることでインクが減少しインク室81内の圧力が大気圧から低下しても、大気開放口88を連通状態にしてヘッド38のノズル39から容易にインクを連続して吐出させることができる。
【0147】
また、本実施形態によれば、温度や気圧などの外部環境が変化しても、大気開放口88を連通状態にすることでインク室81内の圧力の低下を抑制し、ノズル39のメニスカスが壊れるのを抑制することができる。
【0148】
また、本実施形態によれば、キャップ70がノズル39を被覆することにより、ノズル39からインクが蒸発することが低減される。電源がオフであるとき、貫通孔72が連通状態であるので、気温が上昇するなど外部環境が変化しても、キャップ70の内部空間76の空気がノズル39へ進入してメニスカスが壊れることが低減される。
【0149】
[変形例1]
上記実施形態では、駆動機構92は、当接部127を左右方向9に移動させてバルブユニット91を連通状態又は非連通状態に姿勢変化させていた。しかし、駆動機構92Aは、例えば、
図13に示すような、偏心カム159を回動させてバルブユニット91Aを連通状態又は非連通状態に姿勢変化させるものあってもよい。
【0150】
図13に示されるように、大気連通装置48Aは、バルブユニット91Aと、回動機92Aとを備える。
【0151】
バルブユニット91Aは、回動体96Aと、回動軸97Aとを備える。
【0152】
回動体96Aは、中央付近で折れ曲がった形状であり、前後方向8から視てV字形状である。回動体96Aは、大気開放口88の右方に設けられている。回動体96Aにおいて折れ曲がった箇所から左方に延びる部分が第1回動体99Aと称され、右方に延びる部分が第2回動片100Aと称される。第1回動体99Aと第2回動片100Aとの境界から前後方向8に沿って回動軸97Aが回動体96Aから突出している。
【0153】
第1回動体99Aは、先端側の上面に、第1上側面116を有している。第1上側面116は、第1回動体99Aが水平な状態であるときに水平となる。また、第1回動体99Aは、基端側の上面に、第1傾斜面117を有する。第1傾斜面117は、第1回動体99Aが水平な状態であるときに傾斜した状態となる。
【0154】
第2回動片100Aは、先端側の上面に、第2上側面118を有している。第2上側面118は、第2回動片100Aが水平な状態であるときに水平となる。第2回動片100Aは、基端側の上面に、第2傾斜面119を有している。第2傾斜面119は、第2回動片100Aが水平な状態であるときに傾斜した状態となる。
【0155】
回動機92Aは、支持壁156と、カム軸157と、規制軸158と、偏心カム159とを備える。回動機92Aは、コントローラ130から給電されることで回動し、バルブユニット91Aを駆動する。
【0156】
支持壁156は、上壁82に設けられている。支持壁156は、例えば、平板状に形成されており、大気開放口88の近傍に設置されている。支持壁156には、前方向に延びるカム軸157が設けられている。また、支持壁156には、カム軸157の左右両側に、偏心カム159の回動を規制するための規制軸158がそれぞれ設けられている。
【0157】
偏心カム159は、カム軸157によって回動自在に支持されている。偏心カム159には、バルブユニット91の回動体96Aに向かって延びる当接部127Aが形成されている。また、偏心カム159には、規制軸158に当接する規制部161が形成されている。このため、偏心カム159の回動する範囲が制限されている。
【0158】
以下、回動機92Aの電源のオンオフによる偏心カム159の動作について説明する。
【0159】
例えば、
図13(a)及び(b)に示されるように、給電されていない状態から給電されることで、偏心カム159が回動し、当接部127Aが回動軸97の上方位置から左方に回動する。回動した当接部127Aは、第1回動体99Aに駆動力を伝達して回動体96Aを回動させる。このとき、偏心カム159は、
図13(b)に示されるように、左方に配置された規制軸158に規制部161が当接することで移動が規制される。その結果、当接部127Aは、第1上側面116と第1傾斜面117の境界部分付近で停止する。そして、バルブユニット91は、連通状態から非連通状態に姿勢変化する。
【0160】
コントローラ130へ給電されていた状態から、給電が停止された状態に移行すると、偏心カム159は、
図13(c)に示されるように、右方に回動し、当接部127Aが回動軸97の上方位置で停止する。このとき、バルブユニット91は、姿勢変化することなく保持され、大気開放口88は非連通状態のままとなる。
【0161】
また、給電が停止された状態から上述の電流の向きとは逆向きの電流が供給されることで、偏心カム159は、
図13(c)及び(d)に示されるように、右方に回動し、当接部127Aが右方に回動する。回動した当接部127Aは、第2回動片100Aに駆動力を伝達して回動体96Aを回動させる。このとき、偏心カム159は、
図13(d)に示されるように、右方に配置された規制軸158に規制部161が当接することで移動が規制される。その結果、当接部127Aは、第2上側面118と第2傾斜面119の境界部分付近で停止する。そして、バルブユニット91が、非連通状態から連通状態に姿勢変化する。
【0162】
[変形例2]
上記実施形態では、キャリッジ40に大気開放口88及びバルブユニット91が搭載されている場合を例に挙げて説明した。しかし、大気開放口88B及びバルブユニット91Bは、
図14に示すように、キャリッジ40に搭載されなくてもよい。例えば、キャリッジ40に搭載されたタンク80が気体流路180を介して大気開放口88Bに接続されるものであってもよい。
【0163】
本変形例では、記録部24は、キャリッジ40と、ヘッド38と、タンク80とを備えている。ヘッド38及びタンク80は、キャリッジ40に搭載されている。タンク80は、インク室81を有している。インク室81は、気体層78とインク層79とに区画される。インク層79は、インク流路37を介して複数のノズル39と連通している。タンク80の上壁82に、インク室81へインクを注入するための注入口83が設けられている。また、上壁82には、大気開放口88を連通状態又は非連通状態にする大気連通装置48Bが設けられている。
【0164】
大気連通装置48Bは、キャリッジ40に搭載されておらず、例えば、フーレム部分に設置される。大気連通装置48Bは、枠部181に支持されている。枠部181の下壁182には、大気開放口88Bが設けられている。大気開放口88Bは、バルブユニット91の回動体96によって閉塞又は開放される。
【0165】
気体流路180は、インク室81から大気開放口88までの通路として構成される。気体流路180は、内部に空間を有する管状の部材である。気体流路180は、タンク80の上壁82に設けられた貫通孔183と大気開放口88Bを通じてタンク80の気体層78と外部とを連通している。
【0166】
[変形例3]
上記実施形態では、キャリッジ40にタンク80及びバルブユニット91が搭載されている場合を例に挙げて説明した。しかし、タンク80C及びバルブユニット91Cは、
図15に示すように、キャリッジ40に搭載されなくてもよい。例えば、キャリッジ40に搭載されたヘッド38がキャリッジ40に搭載されないタンク80Cにインク流路37C(液体流路の一例)を介して接続されるものであってもよい。
【0167】
本変形例では、記録部24は、キャリッジ40と、ヘッド38とを備えている。ヘッド38はキャリッジ40に搭載されている。ヘッド38は、複数のノズル39を有している。複数のノズル39は、インク流路37Cによってタンク80Cと接続されている。インク流路37Cは、
【0168】
タンク80Cは、キャリッジ40に搭載されておらず、例えばフレーム部分に設置される。タンク80Cは、インク室81Cを有している。インク室81Cは、気体層78Cとインク層79Cとに区画される。インク層79Cは、インク流路37Cを介して複数のノズル39と連通している。タンク80Cの上壁82Cには、注入口83Cが設けられている。また、上壁82には、大気開放口88Cを連通状態又は非連通状態にする大気連通装置48Cが設けられている。
【0169】
大気連通装置48Cは、タンク80Cの上壁82C上であって、大気開放口88Cの近傍に設けられている。インク流路37Cは、インク室81Cからヘッド38の複数のヘッド38までの通路として構成される。
【0170】
[変形例4]
上述の実施形態では、記録部24に、1つのタンク80を備える場合を例に挙げて説明したが、タンク80は、例えば、
図16に示されるように、第1貯留室80D及び第2貯留室81Dで構成されるものであってもよい。
【0171】
第1貯留室80Dは、内部に第1インク室82Dを有している。また、第2貯留室81Dは、第2インク室83Dを有している。第1インク室82Dは、インク流通路164によって、第2インク室83Dとインクが流通可能に接続されている。また、第2インク室83Dは、ヘッド38とインクが流通可能に接続されている。
【0172】
インク流通路164は、内部に空間を有する管状の部材である。インク流通路164の内部の空間は、第1貯留室80D及び第2貯留室81Dに設けられた貫通孔を通じて第1インク室82Dと第2インク室83Dとを連通している。
【0173】
第1貯留室80Dの大気開放口88には、大気連通装置48が設けられており、バルブユニット91は、駆動機構92によって駆動されて大気開放口88を連通状態又は非連通状態にする。
【0174】
[変形例5]
上述の実施形態では、タンク80においてインク室81の気体層78と外部とを連通させる大気開放口88が設けられている場合を例に挙げて説明したが、タンクの気体層と外部とを連通するものとして、大気連通路90Eが設けられていてもよい。大気連通路90Eは、大気開放口88までの通路として構成される。当該大気連通路90Eは、例えば、
図17(a)に示されるように、ラビリンス構造187を有するものであってもよい。
【0175】
大気連通路90Eは、インク室(不図示)と外部とを連通するための連通路である。換言すると、大気連通路90Eは、インク室を大気開放するための連通路である。
【0176】
大気連通路90Eは、上壁82上において溝状に形成されており、上方がフィルム189によって閉塞されている。大気連通路90Eの一端は、上壁82に形成された開口190を介して内部室に連通している。大気連通路90Eの他端は、上壁82に形成された大気開放口88を介して外部に連通している。本変形例では、大気連通路90Eは、前後方向8のUターンを繰り返しつつ左右方向9に沿って延びるラビリンス構造187を有している。
【0177】
[変形例6]
上述の実施形態において、大気開放口88は、連通状態において外部に開放されているが、当該大気開放口88は半透膜188を有するものであってもよい。
【0178】
例えば、
図17(b)に示されるように、外部に連通している大気連通路90Eの他端側には、大気開放口88Eを閉塞するように半透膜188が設けられている。
【0179】
半透膜188は、インクの通過を遮断し且つ気体の通過を許容する微小な孔を有する多孔質膜である。例えば、半透膜188は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体などのフッ素樹脂からなる。これにより、内部室に貯留されたインクは、半透膜188によって阻まれて、大気連通路90E及び大気開放口88Eを通じて貯留部の外部へ流出できない。一方、空気は、内部室と貯留部の外部との間を自由に移動可能である。
【0180】
[変形例7]
上述の実施形態では、
図7及び
図8に示されるような、バルブユニット91と、第1電気アクチュエータ49A及び第2電気アクチュエータ50Aを備えた駆動機構92とで構成される大気連通装置48を例に挙げて説明したが、大気連通装置48は、他の装置が使用されてもよい。例えば、
図18に示すような機構を有する装置が使用されてもよい。
【0181】
本変形例では、大気連通装置48が、インクを貯留するタンク80Fの上壁82Fに設けられている。大気連通装置48Fは、上壁82Fにおいてタンク80Fのインク室81Fを外部に連通させる大気開放口88上に設けられている。
【0182】
大気連通装置48Fは、駆動機構92Fと、バルブユニット91Fとを備える。
【0183】
駆動機構92Fは、バルブユニット91Fを上下方向7に駆動する。駆動機構92Fは、プランジャ125Fと、電気アクチュエータ(不図示)とを備えている。駆動機構92Fは、給電されることで上下方向7に動作し、バルブユニット91Fを駆動する。駆動機構92Fは、タンク80Fの上壁82Fに設けられている。
【0184】
バルブユニット91Fは、パッキン165と、ベース部166と、スライド部167と、一対の弾性部168,168と、規制ピン169とを備える。
【0185】
パッキン165は、バルブユニット91Fが非連通状態のときに隙間から空気が漏れるのを防止するための部材である。パッキン165は、下方がベース部166に当接している。パッキン165は、後述の蓋部173に押圧されることで弾性変形する。
【0186】
ベース部166は、中央部に貫通穴170を有し略円盤状に形成されている。ベース部166は下面が平坦に形成されている。貫通穴170は、ベース部166が設置された状態で大気開放口88に連続する。つまり、ベース部166がタンク80Fに設置された状態において、大気開放口88は、インク室81Fの気体層78Fを外部に連通させる。また、ベース部166の上面には、パッキン165をベース部166上に保持するため突起171が形成されている。突起171は、パッキン165の内周側と外周側において上方に突出するように形成されている。
【0187】
スライド部167は、ベース部166に一対の弾性部168,168を介して連結されており、駆動機構92Fによって駆動力が付与されることで上下方向7に移動する。また、スライド部167は、例えばタンク80Fに固定された固定部材172に対してスライド移動可能に構成されている。スライド部167は、蓋部173と、本体部174と、柱部175とを備える。
【0188】
蓋部173は、大気開放口88を閉塞したり解放したりして大気開放口88を連通状態又は非連通状態にする。蓋部173は、パッキン165を挟んだ状態でベース部166に近接する。蓋部173は、例えば、円盤状に形成されている。
【0189】
柱部175は、上端が本体部174に固定されており、本体部174から下方に延びている。柱部175は、蓋部173を下端において支持する。
【0190】
本体部174は、一対の弾性部168,168によって支持されている。本体部174は、固定部材172に対して上下方向7に相対移動可能である。本体部174は、
図18に示されるように、上下方向の移動範囲を規制する規制ピン169を介して固定部材172に連結されている。本体部174の前面には、溝部176が形成されている。
【0191】
規制ピン169は、一端側が固定部材172にスライド可能に連結されている。規制ピン169は、他端側が固定部材172に回動可能に支持されている。
【0192】
溝部176は、
図18に示されるように、本体部174の下方から右斜め上方に延びる第1溝177と、第1溝177の右上端部から上方に延びる第2溝178と、第2溝178の上端部から左斜め下方に延びる第3溝179と、第3溝179の左下端から左斜め上方に延びる第4溝180と、第4溝180の左上端から下方に延びる第5溝181と、第5溝181の下端から右斜め下方に延びる第6溝182とを有する。
【0193】
第1溝177の始点は第6溝182の終点と一致している。第1溝177と第3溝179とは平行であり溝の長さが同じである。第2溝178と第5溝181とは平行であり溝の長さが同じである。第4溝180と第6溝182とは平行であり溝の長さが同じである。第2溝178は、第1溝177よりも深く形成されており、規制ピン169が第1溝177から第2溝178に移動した後、第2溝178から第1溝177に戻らないように構成されている。同様に、第3溝179は第2溝178よりも深く形成されており、第4溝180は第3溝179よりも深く形成されており、第5溝181は第4溝180よりも深く形成されている。そして、第1溝177は、第6溝182よりも深くなるように形成されている。すなわち、規制ピン169は、第1溝177、第2溝178、第3溝179、第4溝180、第5溝181、第6溝182の順番に移動する。
【0194】
以下、規制ピン169に対するスライド部167の動作について説明する。
【0195】
図18(a)に示されるように、規制ピン169は、スライド部167が最も上方に位置するとき、溝部176の最も下方である第1溝177の始点に位置する。このとき、蓋部173は、ベース部166から離間した状態であり、大気開放口88は、連通状態である。次に、電気アクチュエータに給電されると、規制ピン169は、スライド部167がプランジャ125Fによって下方に押され、第1溝177の終点に移動する。さらに規制ピン169は、スライド部167が下方に押されるため、
図18(b)に示されるように、第2溝178の始点から第2溝178の終点に移動する。このとき、蓋部173は、パッキン165を弾性変形させた状態でベース部166に近接し、大気開放口88が非連通状態となる。
【0196】
次に、電気アクチュエータへの給電が停止されると、
図18(c)に示されるように、プランジャ125Fは上方に戻り、スライド部167は一対の弾性部168,168によって上方に付勢される。これにより、規制ピン169は、第3溝179の始点から第3溝179の終点に移動して停止する。このとき、蓋部173は、ベース部166から離間して上方に移動するが復元するパッキン165に当接したままの状態となる。このため、大気開放口88は、非連通状態で保持される。
【0197】
この後、再び電気アクチュエータに給電されると、規制ピン169は、第4溝180の始点から第4溝180の終点まで移動する。次に、電気アクチュエータへの給電が停止されると、規制ピン169は、第5溝181の始点から第5溝181の終点を経て第6溝182の終点に移動して停止する。このとき、蓋部173は、
図18(a)に示される状態となる。つまり、蓋部173は、ベース部166から離間した状態となり、大気開放口88は、連通状態となる。
【符号の説明】
【0198】
9・・・・・・・・・・・・・左右方向(走査方向の一例)
10・・・・・・・・・・・・複合機(液体吐出装置)
12・・・・・・・・・・・・用紙(媒体)
13・・・・・・・・・・・・開口
14・・・・・・・・・・・・筐体
20・・・・・・・・・・・・給送トレイ(トレイ)
31・・・・・・・・・・・・状態センサ
35・・・・・・・・・・・・エンコーダ(位置センサ)
38・・・・・・・・・・・・ヘッド
39・・・・・・・・・・・・ノズル
40・・・・・・・・・・・・キャリッジ(支持部材)
49・・・・・・・・・・・・電気アクチュエータ
49A・・・・・・・・・・・第1電気アクチュエータ
50A・・・・・・・・・・・第2電気アクチュエータ
65・・・・・・・・・・・・搬送路
67・・・・・・・・・・・・キャップバルブユニット
70・・・・・・・・・・・・キャップ
72・・・・・・・・・・・・貫通孔(キャップ開放口)
76・・・・・・・・・・・・キャップの内部空間
77・・・・・・・・・・・・ポンプ(吸引機構)
78・・・・・・・・・・・・気体層
80,80F・・・・・・・・タンク(貯留部)
80D・・・・・・・・・・・第1貯留室
81D・・・・・・・・・・・第2貯留室
88B,88C,88E・・・大気開放口
90E・・・・・・・・・・・大気連通路
91,91F・・・・・・・・バルブユニット
96・・・・・・・・・・・・回動体
110・・・・・・・・・・・トレイセンサ
114・・・・・・・・・・・圧力センサ(環境センサ)
115・・・・・・・・・・・温度センサ(環境センサ)
120・・・・・・・・・・・シートセンサ(媒体センサ)
130・・・・・・・・・・・コントローラ
145・・・・・・・・・・・開閉カバー(カバー)
150・・・・・・・・・・・カバーセンサ
159・・・・・・・・・・・偏心カム
163・・・・・・・・・・・液体センサ
180・・・・・・・・・・・気体流路
182・・・・・・・・・・・液体流路
187・・・・・・・・・・・ラビリンス構造
188・・・・・・・・・・・半透膜