(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】セレクタ式押ボタンスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20250304BHJP
H01H 25/06 20060101ALI20250304BHJP
H01H 19/63 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
H01H13/14 A
H01H25/06 A
H01H19/63
(21)【出願番号】P 2021094658
(22)【出願日】2021-06-04
【審査請求日】2024-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 明伸
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-072426(JP,U)
【文献】実開平05-001136(JP,U)
【文献】実開平01-174826(JP,U)
【文献】特開平09-213170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/14
H01H 25/06
H01H 19/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に対して第1角度位置と第2角度位置との間で回転可能に設けられたセレクタと、
前記セレクタに対して相対回転不能かつ軸方向に相対変位可能に設けられた筒体と、
前記セレクタに対して相対回転不能かつ軸方向に相対変位可能に設けられた押棒と、
前記押棒を押圧操作する押ボタンと、
前記筒体の筒体座面と前記押棒の押棒座面との間に設けられて、前記押ボタンの後方への押圧操作によって圧縮されるバネと、
前記筒体と前記筐体との間に設けられて、前記セレクタが前記第1角度位置と前記第2角度位置との間で回転するときに、前記バネを圧縮させながら前記筒体を前方に向けて往復させるカム機構と、を有することを特徴とするセレクタ式押ボタンスイッチ。
【請求項2】
前記押棒には径方向に突出する第1ガイド突起が設けられ、
前記筒体には径方向に突出する第2ガイド突起が設けられ、
前記第1ガイド突起と前記第2ガイド突起とは軸方向に並列しており、
前記セレクタは、前記第1ガイド突起および前記第2ガイド突起の周方向両側に当接して軸方向に延在するガイド壁対を有することを特徴とする請求項1に記載のセレクタ式押ボタンスイッチ。
【請求項3】
前記第1ガイド突起および前記第2ガイド突起は周方向に90度間隔で4つ設けられ、前記ガイド壁対は周方向に90度間隔で4対設けられていることを特徴とする請求項2に記載のセレクタ式押ボタンスイッチ。
【請求項4】
前記押ボタンが後方に押圧操作されて所定量変位したとき、前記第1ガイド突起と前記第2ガイド突起とが当接して前記押ボタンの変位規制をすることを特徴とする請求項2または3に記載のセレクタ式押ボタンスイッチ。
【請求項5】
前記筐体は、前記バネよりも小径で前記筒体の内周部に嵌り込んで該筒体を軸方向に変位可能に支持する筒状突起を有し、
前記筒体は、前記筒体座面よりも後側で前記筒状突起に嵌合する後方部、および前記筒体座面よりも前方で前記バネよりも大径の前方部を有し、
前記バネは前記筒状突起と前記前方部との間に形成される環状隙間に配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のセレクタ式押ボタンスイッチ。
【請求項6】
前記押棒の後側に設けられて、前記セレクタとともに回転するロッドと、
前記筐体の後側に取り付けられて、前記セレクタが前記第1角度位置にある時に前記ロッドによって操作可能な位置に設けられた第1操作部、および前記セレクタが前記第2角度位置にある時に前記ロッドによって操作可能な位置に設けられた第2操作部を備える接点ユニットと、
をさらに有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のセレクタ式押ボタンスイッチ。
【請求項7】
前記押棒は周方向に配列された複数の第1噛合歯を備え、
前記筐体は周方向に配置された複数の第2噛合歯を備え、
前記第1噛合歯と前記第2噛合歯とは、前記押ボタンを後方に押圧操作したときに前記セレクタが前記第1角度位置または前記第2角度位置以外である場合には互いに当接して前記押ボタンの変位を不能にし、前記セレクタが前記第1角度位置および前記第2角度位置にあるときにのみ軸方向の変位が許容されて噛合いが可能となっていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のセレクタ式押ボタンスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に対して第1角度位置と第2角度位置との間で回転可能に設けられたセレクタを備えるセレクタ式押ボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
セレクタ式押ボタンスイッチには、筐体に対して第1角度位置と第2角度位置との間で回転可能に設けられたセレクタが設けられている。そしてセレクタが第1角度位置にある場合と第2角度位置にある場合で、押ボタンと一体に設けられたロッドの位置が変位して接点ユニットに対する作用が切り替えられる。これにより、接点ユニットにおける複数の端子間のオン・オフ態様を変更することができる。すなわち、1つのセレクタ式押ボタンスイッチで、2つスイッチの態様で使うことができて好適である(特許文献1参照)。
【0003】
一般的なモーメンタリ式の押ボタンスイッチでは、押ボタンを押し込む操作をすることにより端子間のオン・オフ状態が切り替わり、そして押ボタンから指を離すとバネの復元力によって元の状態に戻る。
【0004】
また、セレクタ式押ボタンスイッチでは、セレクタが第1角度位置および第2角度位置のいずれかに位置決めされている必要があり、この位置決めにはバネが用いられる。つまり、セレクタが第1角度位置と第2角度位置の中間に配置されていると、バネが圧縮されてその復元力によって第1角度位置または第2角度位置のいずれかに押し戻すように作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セレクタ式押ボタンスイッチでは、一般的な押ボタンスイッチの機能として押ボタンを元の位置に復帰させるための第1バネと、セレクタを第1角度位置または第2角度位置のいずれかに押し戻すための第2バネとが設けられる。
【0007】
すなわちセレクタ式押ボタンスイッチでは、その機能上2つのバネを設ける必要があるが、2つのバネを設けることはそれだけ複雑であるとともにコスト高の要因となっている。また、2つのバネがそれぞれ伸び縮みするための空間を確保する必要があって製品サイズが大きくなってしまう。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、簡易な構成、低コストであり、しかも小型化が可能なセレクタ式押ボタンスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるセレクタ式押ボタンスイッチは、筐体に対して第1角度位置と第2角度位置との間で回転可能に設けられたセレクタと、前記セレクタに対して相対回転不能かつ軸方向に相対変位可能に設けられた筒体と、前記セレクタに対して相対回転不能かつ軸方向に相対変位可能に設けられた押棒と、前記押棒を押圧操作する押ボタンと、前記筒体の筒体座面と前記押棒の押棒座面との間に設けられて、前記押ボタンの後方への押圧操作によって圧縮されるバネと、前記筒体と前記筐体との間に設けられて、前記セレクタが前記第1角度位置と前記第2角度位置との間で回転するときに、前記バネを圧縮させながら前記筒体を前方に向けて往復させるカム機構と、を有することを特徴とする。
【0010】
このようなセレクタ式押ボタンスイッチでは、1つのバネが押ボタンを元の位置に復帰させる作用と、セレクタを第1角度位置または第2角度位置のいずれかに押し戻す作用とを有している。したがって、これらの作用ごとに異なるバネを設ける必要がなく、簡易な構成で低コストとなる。また、セレクタ式押ボタンスイッチでは複数のバネが伸び縮みするための空間は不要であって、1つのバネが変形するための空間が確保されていれば足り、小型化が可能となっている。
【0011】
前記押棒には径方向に突出する第1ガイド突起が設けられ、前記筒体には径方向に突出する第2ガイド突起が設けられ、前記第1ガイド突起と前記第2ガイド突起とは軸方向に並列しており、前記セレクタは、前記第1ガイド突起および前記第2ガイド突起の周方向両側に当接して軸方向に延在するガイド壁対を有してもよい。このような構成により、筒体および押棒をセレクタに対して確実に相対回転不能かつ軸方向に相対変位可能にすることができる。
【0012】
前記第1ガイド突起および前記第2ガイド突起は周方向に90度間隔で4つ設けられ、前記ガイド壁対は周方向に90度間隔で4対設けられていてもよい。これにより、筒体および押棒をバランスよく支持よびガイドすることができる。
【0013】
前記押ボタンが後方に押圧操作されて所定量変位したとき、前記第1ガイド突起と前記第2ガイド突起とが当接して前記押ボタンの変位規制をしてもよい。このように第1ガイド突起と第2ガイド突起とは、押ボタンの変位規制手段として兼用することができる。
【0014】
前記筐体は、前記バネよりも小径で前記筒体の内周部に嵌り込んで該筒体を軸方向に変位可能に支持する筒状突起を有し、前記筒体は、前記筒体座面よりも後側で前記筒状突起に嵌合する後方部、および前記筒体座面よりも前方で前記バネよりも大径の前方部を有し、前記バネは前記筒状突起と前記前方部との間に形成される環状隙間に配置されていてもよい。これにより、バネはセレクタ式押ボタンスイッチの組み立て時に組み付けやすく、しかも押ボタンの後方への押圧操作などの動作時にもずれにくい。
【0015】
前記押棒の後側に設けられて、前記セレクタとともに回転するロッドと、前記筐体の後側に取り付けられて、前記セレクタが前記第1角度位置にある時に前記ロッドによって操作可能な位置に設けられた第1操作部、および前記セレクタが前記第2角度位置にある時に前記ロッドによって操作可能な位置に設けられた第2操作部を備える接点ユニットと、をさらに有してもよい。
【0016】
前記押棒は周方向に配列された複数の第1噛合歯を備え、前記筐体は周方向に配置された複数の第2噛合歯を備え、前記第1噛合歯と前記第2噛合歯とは、前記押ボタンを後方に押圧操作したときに前記セレクタが前記第1角度位置または前記第2角度位置以外である場合には互いに当接して前記押ボタンの変位を不能にし、前記セレクタが前記第1角度位置および前記第2角度位置にあるときにのみ軸方向の変位が許容されて噛合いが可能となっていてもよい。これにより、セレクタが第1角度位置または第2角度位置以外にあるときに、押ボタンが不用意に押し下げられることを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるセレクタ式押ボタンスイッチでは、1つのバネが押ボタンを元の位置に復帰させる作用と、セレクタを第1角度位置または第2角度位置のいずれかに押し戻す作用とを有している。したがって、これらの作用ごとに異なるバネを設ける必要がなく、簡易な構成、低コストであり、しかも小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態にかかるセレクタ式押ボタンスイッチを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本体と接点ユニットとに分解した状態のセレクタ式押ボタンスイッチの斜視図である。
【
図6】
図6は、押棒ユニット、筒体、セレクタおよび押駒を下方から見た分解斜視図である。
【
図7】
図7は、ローゼットおよびフレームの一部をカットした本体の一部拡大側面図である。
【
図8】
図8は、押ボタンを後方に押圧した状態の本体の断面側面図である。
【
図9】
図9は、セレクタを第1角度位置から30度程度回転した状態の本体の断面側面図である。
【
図10】
図10は、セレクタを第1角度位置から30度程度回転した状態でローゼットおよびフレームの一部をカットした本体の一部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかるセレクタ式押ボタンスイッチの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態にかかるセレクタ式押ボタンスイッチ10を示す斜視図である。
図2は、本体12と接点ユニット14とに分解した状態のセレクタ式押ボタンスイッチ10の斜視図である。
図3は、セレクタ式押ボタンスイッチ10の分解斜視図である。
図4は、セレクタ式押ボタンスイッチ10の断面側面図である。
【0021】
セレクタ式押ボタンスイッチ10は本体12と、該本体12の後方に取り付けられた接点ユニット14とからなる。本体12の一部は、制御盤のパネル前面側からパネル孔に挿入されて後側の接点ユニット14と固定される。本願では本体12が設けられる側を前側とし、接点ユニット14が設けられる側を後側とする。各図においては前側を「F」、後側を「B」として適宜矢印で示す。
【0022】
セレクタ式押ボタンスイッチ10は、押ボタン16を後方へ押すことにより接点ユニット14における複数の端子14c間のオン・オフ状態が切り替わる。また、セレクタ18は筐体を構成するフレーム20に対して第1角度位置(例えば、
図1の実線位置)と第2角度位置(例えば
図1の破線位置)との間で回転可能に設けられている。本実施形態では、第1角度位置と第2角度位置との間は90度であるものとする。
【0023】
そしてセレクタ18が第1角度位置にある場合と第2角度位置にある場合で、押ボタン16と一体に設けられたロッド26a(
図4参照)の位置が変位して接点ユニット14に対する作用が変更されて、該接点ユニット14における複数の端子14c間のオン・オフ状態が切り替わる。接点ユニット14は複数の異なる接点形式のものがあり、本体12に対して交換可能である。本体12は基本的に、後述するねじ36およびバネ38が金属材であり、それ以外は樹脂材である。
【0024】
図3、
図4に示すように、セレクタ式押ボタンスイッチ10の本体12は、押ボタン16、押棒ユニット(押棒)24および押駒26を有する。押ボタン16、押棒ユニット24、押駒26は一体的に固定されている。押棒ユニット24は押ボタン16によって押圧操作される。押棒ユニット24は、前方の円盤28から短い外筒30と長い内筒32とが同心状で後側に向かって突出するように設けられている。円盤28は押ボタン16の後面に固定されているが、両者は一体成型品でもよい。外筒30の前部分の周面には、90度間隔に4つ配置され、外径方向に突出する第1ガイド突起30aが設けられている。第1ガイド突起30aは、外筒30と同心の円弧形状となっている。第1ガイド突起30aは周方向に適度に長い幅を有しており十分な強度がある。外筒30の後面(押棒座面)30bは、後述するバネ38の一端が当接する座面を兼ねている。押棒ユニット24は90度間隔の4つの第1ガイド突起30aによりバランスよく支持・ガイドされる。
【0025】
内筒32の前方部分の周面には、周方向について90度間隔に4つ配置され、径方向に突出する第1噛合歯32aが設けられている。内筒32の中間部分の周面には環状溝に嵌められたシール34が設けられている。押駒26は、押棒ユニット24の後側端部に対してねじ36で固定されている。押駒26は後側に突出するロッド26aを有している。つまり、ロッド26aは押棒ユニット24の後側に設けられている。押ボタン16、押棒ユニット24および押駒26は一体的に構成されており、後述するようにセレクタ18とともに回転する。
【0026】
接点ユニット14は略箱型であり、前面側の2つの位置に第1操作部14aおよび第2操作部14bと、後側に突出する複数の端子14cと、四隅から前方に突出してフレーム20をガイドするガイド片14dとを有する。第1操作部14aは、セレクタ18が第1角度位置にある時にロッド26aによって操作可能な位置に設けられている。第2操作部14bは、セレクタ18が第2角度位置にある時にロッド26aによって操作可能な位置に設けられている。
【0027】
本体12は、さらにバネ38、筒体40およびローゼット42と、上記のセレクタ18およびフレーム20とを有する。バネ38はコイル式バネである。フレーム20とローゼット42とは一体的に組み合わされて本体12の筐体を形成する。フレーム20およびローゼット42は取り付けられるパネルに対して軸方向および周方向のいずれにも変位しない。
【0028】
ローゼット42は変則的な筒形状であり、フレーム20の前方側略半分の部分に対して外嵌されて固定されている。ローゼット42とフレーム20とは、例えばスナップフィット形式で固定される。ローゼット42の後面42aは適度に広い面積を有しており、パネル面に当接して安定する。
【0029】
図5は、フレーム20の斜視図である。
図3、
図4、
図5に示すように、フレーム20は変則的な筒形状であり、その後側略半分はパネル孔から突出して接点ユニット14が取り付けられる部分である。フレーム20の後側端部近傍には、接点ユニット14の線バネ14e(
図3参照)が係合する係合溝20aが形成されている。フレーム20の後側略半分には中空部20bが形成されている。押駒26は、中空部20bに嵌合しながら軸方向に変位可能となっている。押駒26は中空部20bの天面20baに当接することによって変位が規制され、押棒ユニット24の抜止として作用する。
【0030】
フレーム20の前面側略半分には、中空部20bと連通する中空孔20cが形成されている。押棒ユニット24の内筒32は、中空孔20cに嵌合しながら軸方向に変位可能となっている。内筒32は一部が中空孔20cから突出して中空部20bに入って押駒26と接続されている。シール34は中空孔20cの周面に摺接してシール作用を奏する。フレーム20の外周面には雄ねじ20dが形成されておりナット(図示略)が嵌合し、ローゼット42の後面42aとの間でパネルを挟持して固定される。
【0031】
図5に示すように、フレーム20の前面側には、底板20eから前方に突出する同心状の内筒(筒状突起)20fと外筒20gとが設けられている。底板20eはフレーム20の前後略中間位置に設けられている。内筒20fは外筒20gよりも長い。内筒20fの外径はバネ38の内径よりもやや小さい。内筒20fの外周と上記の筒体40の内周との間にはバネ38を配置するための環状隙間43(
図4参照)が形成される。これにより、バネ38は本体12の組み立て時に組み付けやすく、しかも押ボタン16の押圧操作などの動作時にもずれにくい。
【0032】
内筒20fには前方に突出し、周方向について90度間隔の4つの第2噛合歯20faが形成されている。隣接する第2噛合歯20faの隙間幅は上記の第1噛合歯32aの幅にほぼ等しい。押棒ユニット24の一部である第1噛合歯32aと筐体の一部である第2噛合歯20faとは、噛合機構44(
図4、
図9参照)を構成する。噛合機構44の第1噛合歯32aと第2噛合歯20faとは、押ボタン16を押圧操作したときにセレクタ18が第1角度位置または第2角度位置以外である場合には互いに当接して押ボタン16および押棒ユニット24の変位を不能にし、セレクタ18が第1角度位置および第2角度位置にあるときにのみ軸方向の変位が許容されて噛合いが可能となっている。
【0033】
底板20eには180度間隔で前方に突出する一対の突起20hが設けられている。突起20hは頂部から周方向両側に向かって傾斜する山形である。突起20hの軸方向突出長さは後述するカム40bの軸方向突出長さよりもやや長い。突起20hの傾斜面は、カム40bの傾斜面よりも急角度になっている。突起20hは内筒20fの外周面とつながっているが外筒20gの内周面とは離れている。突起20hは底板20eおよび内筒20fと一体的に成型されていることから十分な強度を有する。突起20hは90度間隔で4つ設けてもよい。
【0034】
図6は、押棒ユニット24、筒体40、セレクタ18および押駒26を下方から見た分解斜視図である。
図3、
図6に示すように、筒体40は筒形状であって、外周面に90度間隔で設けられて外径方向に突出する4つの第2ガイド突起40aと、後側に設けられた90度間隔の4つのカム40bとを有する。筒体40は90度間隔の4つの第2ガイド突起40aによりバランスよく支持・ガイドされる。
【0035】
また、筒体40の中空部分は段差形状になっており、前方側にバネ38が嵌り込んで当接する筒体座面40cが形成されている。すなわち、バネ38は筒体座面40cと上記の後面30bとの間に設けられており、押ボタン16の後方への押圧操作によって圧縮される。
【0036】
筒体40は第2ガイド突起40aを除く筒形状部分の外径が、上記の外筒30における第1ガイド突起30aを除く筒形状部分の外径と等しくなっている。筒体40は、筒体座面40cよりも後側で内筒20fに嵌合する後方部40d、および筒体座面40cよりも前方でバネ38よりも大径の前方部40eを有する。筒体40は後方部40dに上記の内筒20fが嵌合することによって軸方向に変位可能に支持されている。バネ38は内筒20fと前方部40eとの間に形成される環状隙間43に配置されている。なお、設計条件によって筒体40は必ずしも完全な筒形状ではなく、例えばC字の断面形状としてもよい。
【0037】
個々のカム40bは頂部40baを基準として周方向両側に緩斜面を有する山形である。隣接するカム40bにおける谷部40bb同士は一致している。頂部40baおよび谷部40bbは鈍角状となっている。第2ガイド突起40aは、上記の第1ガイド突起30aと平面視形状が等しくなっている。すなわち、第2ガイド突起40aは、筒体40の前方部40eと同心の円弧形状となっており、周方向に適度に長い幅を有する。第1ガイド突起30aと第2ガイド突起40aとは上記のガイド壁対45に嵌って軸方向に並列する。4つの第2ガイド突起40aの周方向中心位置と4つのカム40bの頂部40baとは周方向位置が一致している。
【0038】
図3、
図4、
図6に示すように、セレクタ18は本体12の最も前方に設けられており、外周を形成する筒部18aと、該筒部18aに対して環状板18bを介して後側に突出する4つの円弧突出片18cと、筒部18aの側面に設けられたノブ18dとを有する。ノブ18dは指をかけることによりセレクタ18を捻回させやすくなる。セレクタ18とローゼット42とは外径がほぼ等しく、しかも相互の筒部には隙間がほとんどなく、外観上好適である。
【0039】
筒部18aの内部には押ボタン16が嵌合しており軸方向に沿って後方に変位可能となっている。押ボタン16が押圧操作されていない基準状態において、該押ボタン16とセレクタ18とは前端面が一致している。
【0040】
円弧突出片18cの外周面には係合突起18caが設けられている。係合突起18caはローゼット42のフック42bに係合する。これによりセレクタ18はローゼット42に対して軸方向に抜けなくなるが回転は可能となっている。
【0041】
4つの円弧突出片18cは90度間隔に設けられており、内周面には筒体40の前方部40eが嵌合する。円弧突出片18cの厚みは、第1ガイド突起30aおよび第2ガイド突起40aの厚みとほぼ等しい。また、個々の円弧突出片18cの周方向端面18cbは、隙間を介して隣接する同士がガイド壁対45を形成している。ガイド壁対45の幅は第1ガイド突起30aおよび第2ガイド突起40aの幅とほぼ等しくなっている。
【0042】
第1ガイド突起30aおよび第2ガイド突起40aはガイド壁対45に嵌り込む。つまり、ガイド壁対45を形成する一対の周方向端面18cbは軸方向に延在していて、第1ガイド突起30aおよび第2ガイド突起40aの周方向両側に当接することによりガイド機能を奏する。したがって、第1ガイド突起30aを備える押棒ユニット24および第2ガイド突起40aを備える筒体40はセレクタ18に対して相対回転不能かつ軸方向に相対変位可能となっている。
【0043】
図7は、ローゼット42およびフレーム20の一部をカットした状態の本体12の一部拡大側面図である。筒体40はフレーム20の底板20eに近づくようにバネ38によって後面向きの力を受けているが、底板20eには前向きに突出する突起20hがあって、筒体40の変位を規制している。筒体40の後側には複数のカム40bが周方向に配列されており、突起20hが谷部40bbに当たるときに筒体40は最も下向きに変位して安定する。後述するように、セレクタ18を回転させると、筒体40はセレクタ18とともに回転するため、突起20hはカム40bの傾斜面に対して摺接しながら押圧することになり、筒体40は前方に押出されることになる。すなわち、筒体40に設けられたカム40bとフレーム20に設けられた突起20hとは、セレクタ18が第1角度位置と第2角度位置との間で回転するときに筒体40を前方に向けて往復させてバネ38を圧縮させるカム機構46を構成している。突起20hは筒体40の後側で下向きに突出するように設け、カム40bは底板20eから上向きに突出するように設けてもよい。
【0044】
次に、このように構成されるセレクタ式押ボタンスイッチ10の作用について説明する。
図4、
図6に示すように、押ボタン16が押圧されていない基準状態では、バネ38は適度に圧縮されていて押棒ユニット24を上方に向けて弾性付勢している。上記のとおり押棒ユニット24は押駒26がフレーム20の天面20baに当接することによって抜けなくなっている。また、筒体40はバネ38によって下方に向けて弾性付勢されていることから、突起20hがカム40bの谷部40bbに当接する最大下方位置となっている(
図7参照)。
【0045】
図8は、押ボタン16を後方に押圧した状態の本体12の断面側面図である。押ボタン16を押圧すると、押棒ユニット24は押ボタン16とともに後方に変位する。第1噛合歯32aと第2噛合歯20faとは干渉することなく噛合い、押棒ユニット24は下方への変位が可能となっている。これによってロッド26aは接点ユニット14の第1操作部14aまたは第2操作部14bに対して押圧操作を行い、接点状態が切り替わる。また、押ボタン16が後方に押圧操作されて所定量変位したとき、第1ガイド突起30aと第2ガイド突起40aとが当接して押ボタン16の変位規制をする。4つの第1ガイド突起30aおよび4つの第2ガイド突起40aは、外形方向にやや突出して軸心からある程度はなれた位置にあることからバランスよくかつ安定して押ボタン16および押棒ユニット24の変位規制を行うことができる。
【0046】
なお、セレクタ18が第1角度位置にあるときと第2角度位置にあるときでは、ロッド26aの位置および該ロッド26aが行う接点ユニット14に対する操作が異なるだけであり、押棒ユニット24、筒体40およびバネ38の作用は同じである。
【0047】
図9は、セレクタ18を第1角度位置から第2角度位置へ向けて30度程度回転した状態の本体12の断面側面図である。
図10は、セレクタ18を第1角度位置からから第2角度位置へ向けて30度程度回転した状態でローゼット42およびフレーム20の一部をカットした本体12の一部拡大側面図である。
【0048】
上記のとおり、押棒ユニット24の第1ガイド突起30aおよび筒体40の第2ガイド突起40aは、セレクタ18のガイド壁対45に嵌り込んでいることから該セレクタ18に対して相対回転不能となっている。したがって、セレクタ18を回転させると押棒ユニット24および筒体40も一体的に回転する。また、バネ38も筒体座面40cと外筒30の後面30bとの間に設けられていることから一体的に回転し、該バネ38に捻じれは生じない。
【0049】
一方、筐体の一部であるフレーム20は回転しない。そうすると
図10に示すように、カム機構46では、筒体40のカム40bはフレーム20の突起20hに対して相対的に回転し、突起20hはカム40bの傾斜面に摺接しながら押圧し、筒体40はバネ38を圧縮させながら前方に変位することになる。筒体40はセレクタ18に対して軸方向に変位自在となっているためである。
【0050】
この時点の筒体40は圧縮されたバネ38によって適度に強い力で後方に向かって弾性付勢されるとともに、カム40bの傾斜面(
図10では符号40bcを付している)の作用によって元の第1角度位置に戻ろうとする回転方向の力を受ける。したがって、仮にこの時点で操作者がセレクタ18から手を離すと、筒体40は後方に変位するとともに元の方向に押し戻されて
図7に示す基準状態に自動復帰することになる。
【0051】
また図示を省略するが、セレクタ18をさらに回転させて第1角度位置を基準として第2角度位置に向かって45度以上の位置まで達すると、突起20hはカム40bの頂部40baを乗り越えて反対側の傾斜面(
図10では符号40bdを付している)に当接する。そうすると、その時点の筒体40は圧縮されたバネ38によって適度に強い力で後方に向かって弾性付勢されるとともに、カム40bの傾斜面40bdの作用によって第2角度位置に移ろうとする回転方向の力を受ける。したがって、仮にこの時点で操作者がセレクタ18から手を離すと、筒体40は後方に変位するとともに先行方向に押し出されて第2角度位置まで自動回転することになる。
【0052】
すなわち、筒体40と筐体の一部であるフレーム20との間に設けられたカム機構46は、セレクタ18が第1角度位置と第2角度位置との間で回転するときに、バネ38を圧縮させながら筒体40を前方に向けて往復させる作用がある。そして、第1角度位置と第2角度位置との間のいずれかの箇所に位置しているときには、中間位置を基準として第1角度位置に寄っているときには該第1角度位置に自動的に戻るよう弾性付勢し、第2角度位置に寄っているときには該第2角度位置に自動的に移るよう弾性付勢する。したがって、第1角度位置および第2角度位置以外の箇所でセレクタ18が停止してしまうことを防止できる。
【0053】
また、仮にセレクタ18を第1角度位置および第2角度位置以外の箇所にした状態で押ボタン16を押圧操作しても該押ボタン16は変位することがない。セレクタ18が第1角度位置または第2角度位置以外にあるときには、噛合機構44の作用により第1噛合歯32aと第2噛合歯20faとが干渉して押ボタン16の変位を不能にするためである。なお、セレクタ18を第2回転位置から第1回転位置に回転させる場合は、第1回転位置から第2回転位置に回転させる場合と比較して逆の動作を行うだけであり、詳細な説明は省略する。
【0054】
上記のとおり、本実施の形態にかかるセレクタ式押ボタンスイッチ10では、筒体40および押棒ユニット24はセレクタ18に対して相対回転不能かつ軸方向に相対変位可能に内挿されている。そしてバネ38が筒体40と押棒ユニット24との間に設けられて、押ボタン16の後方への押圧操作によって圧縮される構成となっている。これにより、バネ38は押ボタン16を元の位置に復帰させる作用と、セレクタ18を第1角度位置または第2角度位置のいずれかに押し戻す作用とを有している。したがって、これらの作用ごとに異なるバネを設ける必要がなく、簡易な構成で低コストとなる。また、セレクタ式押ボタンスイッチ10では複数のバネが伸び縮みするための空間は不要であって、1つのバネ38が変形するための空間が確保されていれば足り、小型化が可能となっている。
【0055】
さらに、バネ38の両端を支持する筒体座面40cおよび後面30bはセレクタ18とともに回転することから、該セレクタ18がいずれの方向に回転する場合にもバネ38には捩じれが生じることがなく、第1角度位置から第2角度位置への捻回動作時、および第2角度位置から第1角度位置への捻回動作時ともに同様の弾性付勢力を発生させることができる。
【0056】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
10 セレクタ式押ボタンスイッチ
12 本体
14 接点ユニット
16 押ボタン
18 セレクタ
18c 円弧突出片
18cb 周方向端面(ガイド壁対)
20 フレーム(筐体)
20f 内筒
20fa 第2噛合歯
20g 外筒
20h 突起
24 押棒ユニット
26 押駒
26a ロッド
30 外筒
30a 第1ガイド突起
30b 後面(押棒座面)
32 内筒
32a 第1噛合歯
38 バネ
40 筒体
40a 第2ガイド突起
40b カム
40bc,40bd 傾斜面
40c 筒体座面
40d 後方部
40e 前方部
42 ローゼット(筐体)
43 環状隙間
44 噛合機構
45 ガイド壁対
46 カム機構