(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20250304BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20250304BHJP
B60K 35/60 20240101ALI20250304BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
B60R11/02 C
B60K35/23
B60K35/60
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2021105459
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(72)【発明者】
【氏名】水落 正彦
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119396(JP,A)
【文献】特開2004-338578(JP,A)
【文献】特開2019-78966(JP,A)
【文献】特開2021-49948(JP,A)
【文献】国際公開第2021/059953(WO,A1)
【文献】特開2011-150990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/00
B60R 9/00-11/06
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向く開口が形成された筐体と、
前記筐体に収容され、画像を表す表示光を前記開口に向けて反射させる反射部と、を備え、
前記筐体は、第1ケースと、前記第1ケースの上方に位置し、前記開口が形成された第2ケースと、を有し、
前記第2ケースは、前記開口の端部から垂れ下がるとともに前記反射部の側面に向く壁部を有し、
前記壁部に前記側面から離れる方向の力を加えることで、前記壁部が前記反射部に触れることを抑制する抑制部をさらに備える、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記抑制部は、前記第1ケースと一体、又は、前記第1ケースに対して不動であるとともに、上方に突起して形成され、前記壁部を前記側面から離れる方向に押圧する傾斜面を有し、
前記壁部は、前記傾斜面に押される被押圧面を有する、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記抑制部の上面は、前記壁部に覆われている、
請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記壁部の前記側面に向く主面と、前記抑制部の前記側面に向く面とは、面一である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)装置として、例えば特許文献1には、凹面鏡等で構成された反射部で反射した表示光を、上ケースに形成された開口から外部に放射する構成が記載されている。この上ケースは、垂れ下がって形成されるとともに反射部の側面に向く壁部(同文献の
図7での符号11参照)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の壁部は、下端が自由端であるため、熱などの影響で変形すると反射部に当たる可能性がある。壁部が反射部に当たると、反射部の位置がずれたり、反射部の駆動を妨げたりする虞があるため、好ましくない。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、壁部が反射部に当たることを抑制できるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
上方に向く開口が形成された筐体と、
前記筐体に収容され、画像を表す表示光を前記開口に向けて反射させる反射部と、を備え、
前記筐体は、第1ケースと、前記第1ケースの上方に位置し、前記開口が形成された第2ケースと、を有し、
前記第2ケースは、前記開口の端部から垂れ下がるとともに前記反射部の側面に向く壁部を有し、
前記壁部に前記側面から離れる方向の力を加えることで、前記壁部が前記反射部に触れることを抑制する抑制部をさらに備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、壁部が反射部に当たることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ(HUD)装置の概略側面図。
【
図2】同上実施形態に係る反射部及び筐体の要部斜視図。
【
図3】同上実施形態に係る反射部、壁部及び抑制部の要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示すヘッドアップディスプレイ(HUD)装置1は、例えば車両のダッシュボードに設けられ、車両のウインドシールドに向けて表示光Lを放射する。ウインドシールドで反射した表示光Lは、ユーザに表示光Lが表す画像の虚像を視認させる。虚像は、車両に関する各種情報を示し、ウインドシールドを介して車両の前方に表示される。
【0011】
HUD装置1は、表示部10と、光路変更鏡20と、反射部30と、筐体40と、を備える。
【0012】
表示部10は、画像を表示することで、その画像を表す表示光Lを放射する。表示部10は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)と、LCDを背後から照明するバックライトとを含んで構成される。LCDは、例えば、TFT(Thin Film Transistor)型である。バックライトは、例えば、LED(Light Emitting Diode)、導光部材等から構成される。
【0013】
光路変更鏡20は、表示部10から放射された表示光Lの光路を変更する。具体的に、光路変更鏡20で反射した表示光Lは、反射部30に向かう。光路変更鏡20は、平面鏡又は曲面鏡からなり、図示しない部材を介して後述の第2ケース42に固定される。
【0014】
反射部30は、光路変更鏡20からの表示光Lを、筐体40に形成された開口に向けて反射させる構成である。詳細に、反射部30は、凹面鏡31と、
図2に示すホルダ32とを有する。
【0015】
凹面鏡31は、光路変更鏡20からの表示光Lを開口に向けて反射させる。凹面鏡31の機能により、虚像は、表示部10に表示されている画像が拡大されたサイズでユーザに視認される。
【0016】
ホルダ32は、凹面鏡31を背後から保持する。ホルダ32は、
図2に示す軸線AXを中心に回転可能に、図示しない軸受部材を介して筐体40に支持される。したがって、反射部30は軸線AXを中心として回転可能に設けられる。
【0017】
HUD装置1は、反射部30を回転駆動する、図示せぬミラー駆動部を備える。ミラー駆動部は、モータ、モータを駆動する駆動回路、モータの回転をホルダ32に伝達するギヤ機構などから構成される。
【0018】
筐体40は、上記の各種構成を収容するものであり、第1ケース41と、第1ケース41の上方に位置する第2ケース42と、を有する。なお、各図では、筐体40の一部を抜粋して表している。筐体40は、第1ケース41及び第2ケース42以外の構成をさらに有していてもよいことは勿論である。例えば、筐体40は、第2ケース42を下方から覆うカバーをさらに有していてもよい。
【0019】
第1ケース41は、例えば金属から形成され、
図1に示すように、反射部30の背後に位置する。
【0020】
第2ケース42は、例えば合成樹脂から形成され、第1ケース41と、螺合、係合、嵌合などの公知の手段によって結合される。第2ケース42には、上方に向く(この実施形態では車両のウインドシールドに向く)開口Hが形成されている。第2ケース42には、開口Hを塞ぐ図示せぬ透光板が取り付けられる。表示部10から発せられ、光路変更鏡20、凹面鏡31の順で反射した表示光Lは、この透光板を透過して、ウインドシールドに向かって放射される。なお、HUD装置1は、コンピュータからなる図示せぬ制御部を備える。制御部は、表示部10及び前述のミラー駆動部の各々の動作を制御する。
【0021】
第2ケース42は、
図2に示すように、開口Hの端部から垂れ下がる壁部420を有する。壁部420は、反射部30の側面30aに向く。ここで、反射部30の側面30aとは、凹面鏡31又はホルダ32の側面であればよいが、この実施形態では、壁部420により近いホルダ32の側面に反射部30の側面30aを示す符号を付した。壁部420は、筐体40の内部において表示光Lが通る空間に、余計な部材が露出しないように設けられる。当該空間に余計な部材が露出すると、その像がユーザに視認されてしまうからである。
【0022】
壁部420は、反射部30の回転動作を妨げないように、側面30aと間隔を開けて設けられている。しかしながら、熱などの要因で壁部420が変形し、反射部30に向かって曲がってしまうと、反射部30に触れてしまう虞がある。これを抑制すべく、HUD装置1は、壁部420を側面30aから離れる方向(以下、離間方向D)に押圧することで、壁部420が反射部30に触れることを抑制する抑制部50をさらに備える。なお抑制部50は、少なくとも壁部420の側面30aに向かう撓みが生じた場合に押圧してもよい。すなわち、通常状態では抑制部50は壁部420に接するだけでもよいし、触れていなくてもよい。本開示では、一例として、壁部420が常に抑制部50から押圧される態様が示される。
【0023】
抑制部50は、この実施形態では、第1ケース41と一体に形成されている。
図3に示すように、第1ケース41は、壁部420の下方に位置する台部410を有する。台部410の上面は、壁部420の下端と間隔を開けて位置する。抑制部50は、台部410から上方に突起して形成されている。
【0024】
抑制部50は、
図3又は
図4に示すように、上方に向う凸状であり、具体的には、上方に向かって先細りの台形状に形成されている。抑制部50は、上端よりも下端が反射部30の側面30aよりも遠ざかる傾斜面51と、上面52と、傾斜面51の裏に位置して側面30aと対向する対向面53と、を有する。
【0025】
壁部420の下端部には、抑制部50に対応する対応部60が形成されている。対応部60は、抑制部50が挿入される凹状の部分であり、
図4に示すように、傾斜面51と同様の傾斜を有して傾斜面51に押される被押圧面61と、上面52を覆う覆い面62とを有する。
【0026】
第1ケース41に設けられた抑制部50が壁部420の対応部60に挿入されることにより、対応部60の被押圧面61は、抑制部50の傾斜面51によって押された状態になる。これにより、壁部420に離間方向Dの力が加えられ、壁部420が反射部30(本例ではホルダ32)に触れることを抑制することができる。特に、この実施形態では、第1ケース41と一体に形成される抑制部50は、樹脂からなる第2ケース42よりも剛性の高い金属からなる。これにより、壁部420が反射部30に向かって熱変形してしまうことをより良好に抑制できる。
【0027】
また、抑制部50の上面52は、壁部420に設けられた対応部60の覆い面62に覆われている。つまり、抑制部50の上面52は、壁部420に覆われている。これにより、抑制部50の上面52が、筐体40の内部において表示光Lが通る空間に露出せず、余計な像としてユーザに視認されることを防止できる。
【0028】
また、
図4に示すように、壁部420における反射部30の側面30aに向く主面421と、抑制部50の対向面53とは、面一である。これにより、壁部420と抑制部50の間に段差が生じないため、当該段差が余計な像としてユーザに視認されることを防止できる。
【0029】
なお、壁部420の主面421の裏面には、
図1に示すリブ422が設けられている。リブ422は、第2ケース42において開口Hを囲むベゼル部42aと、壁部420とを連結し、壁部420を補強する。このリブ422によっても、壁部420が反射部30に近付く方向に変形することが抑制される。本実施形態の説明は以上である。
【0030】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、実施形態に適宜の変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0031】
上記実施形態では、壁部420の一部を凹状にくり抜くことで対応部60を形成する例を示した。しかしながら、
図5に示す変形例のように、壁部420の下端部に、台部410に向かって突出する凸部413を設けることにより、対応部60を形成してもよい。なお、
図5に示す対応部60の機能は、上記実施形態と同様である。つまり、壁部420に設けた凹状部分に凸状の抑制部50を挿入する構成に限られず、壁部420に設けた凸状部分を、凸状の抑制部50で離間方向Dに押圧する構成を採用してもよい。
【0032】
上記実施形態では、反射部30の一方の側面近傍の構成について言及したが、図示せぬ他方の側面近傍の構成が同様であってもよいことは勿論である。つまり、抑制部50及び抑制部50によって押圧される壁部420の組み合わせは、一対あってもよい。
【0033】
抑制部50は、第1ケース41と一体に形成されなくともよく、第1ケース41に直接又は間接して固定されることで第1ケース41に対して不動な部材から構成されてもよい。また、以上では、抑制部50が壁部420を離間方向Dに押圧する例を示したが、抑制部50の構成は、壁部420に離間方向Dの力を加えることができれば任意に変更可能である。例えば、壁部420の裏側(主面421の裏側)に位置する部材と、壁部420との間に接着剤又は粘着剤を設けることで壁部420に離間方向Dの力を加えてもよい。この場合、接着剤又は粘着剤が抑制部50として機能する。壁部420の裏側に位置する部材は、例えば、図示せぬ軸受部材であればよい。また、抑制部50は、壁部420を離間方向Dに引っ張る弾性部材、ワイヤなどから構成されてもよい。この場合、壁部420が離間方向Dに逸れて変形しないように引張り力を調整すればよい。
【0034】
以上では、第1ケース41及び抑制部50が金属からなり、第2ケース42が樹脂からなる例を示したが、第1ケース41及び抑制部50も樹脂であってもよい。ここで、壁部420を有する第2ケース42は、第1ケース41よりも上方に位置するため、太陽光の影響で熱変形しやすい。したがって、たとえ第1ケース41が第2ケース42と同程度の剛性であったとしても、第1ケース41と一体又は第1ケース41に対して不動の抑制部50により、壁部420が反射部30に触れることを抑制できる。
【0035】
表示部10と凹面鏡31とを結ぶ表示光Lの光路において、鏡を何枚用いるか、どのように表示光Lの光路を折り返すか等は、設計に応じて適宜変更可能である。
【0036】
以上では、筐体40に対して反射部30が回転移動可能に設けられる例を示したが、反射部30は平行移動可能に設けられていてもよい。例えば、反射部30は、壁部420に沿って平行移動可能であってもよい。
【0037】
表示部10は、LCDを用いたものに限られず、OLED(Organic Light-Emitting Diode)を用いたものであってもよい。また、表示部10は、例えば、DMD(Digital Micro mirror Device)、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示デバイスを用いたものであってもよい。
【0038】
表示光Lの投射対象は、車両のウインドシールドに限定されず、板状のハーフミラー、ホログラム素子等により構成されるコンバイナであってもよい。
【0039】
HUD装置1が搭載される車両の種類は限定されない、HUD装置1は、自動四輪車、自動二輪車など様々な車両に搭載可能である。また、HUD装置1は、航空機、船舶、スノーモービル等、車両以外の乗り物に搭載されてもよい。
【0040】
以上の説明では、本開示の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0041】
1…ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置、L…表示光
10…表示部、20…光路変更鏡
30…反射部、30a…側面、31…凹面鏡、32…ホルダ、AX…軸線
40…筐体
41…第1ケース、410…台部
42…第2ケース、H…開口
420…壁部、421…主面、422…リブ
50…抑制部、51…傾斜面、52…上面、53…対向面
60…対応部、61…被押圧面、62…覆い面
D…離間方向