(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2021107559
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2024-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】村山 平
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-331315(JP,A)
【文献】特表2004-508220(JP,A)
【文献】特開2015-205400(JP,A)
【文献】特開2012-125974(JP,A)
【文献】特開2021-085814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して液体を吐出して記録を行う複数の記録ヘッドと、
複数の前記記録ヘッドを搭載するキャリッジと、
複数の前記記録ヘッドと対向可能な位置に設けられる基準部と、
複数の前記記録ヘッドと前記基準部とのいずれか一方に設けられ、複数の前記記録ヘッドと前記基準部との距離を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づく所定の処理の実行を制御して、個々の前記記録ヘッドが吐出する前記液体の付着位置の調整を行う制御部と、を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、予め調整された前記距離の情報を記憶し、前記測定結果と前記距離の情報とに基づいて前記所定の処理を実行する、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記所定の処理は、前記液体の吐出タイミングおよび吐出速度のうちの少なくとも一方を補正する、請求項1または請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
各々の前記記録ヘッドは、前記基準部に対する前記距離を調整する調整部を有し、
前記所定の処理は、前記調整部を制御して、前記距離を自動で調整する、請求項1または請求項2に記載の記録装置。
【請求項5】
各々の前記記録ヘッドは、前記基準部に対する前記距離を調整する調整部を有し、
前記所定の処理は、前記液体の吐出タイミングおよび吐出速度のうちの少なくとも一方を補正する処理と、前記調整部を制御して、前記距離を自動で調整する処理とを含む、請求項3に記載の記録装置。
【請求項6】
各々の前記記録ヘッドは、前記基準部に対する前記距離を調整する調整部を有し、
前記所定の処理は、前記調整部によって前記距離を調整するための調整情報を報知する、請求項1または請求項2に記載の記録装置。
【請求項7】
前記調整情報は、所定の時間間隔にて逐次更新される、請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記キャリッジは、前記記録媒体が搬送される搬送方向と交差する方向に走査され、
前記基準部は、前記キャリッジが走査される走査範囲の内側にあって、前記キャリッジが走査された際に各々の前記記録ヘッドと対向する位置に設けられる、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記基準部は、前記記録媒体が搬送される搬送経路の外側に設けられ、前記キャリッジが走査されるのに伴って、各々の前記記録ヘッドと順次対向する、請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記基準部は、前記キャリッジが走査された際に、複数の前記記録ヘッドと同時に対向する、請求項8に記載の記録装置。
【請求項11】
前記測定部は、各々の前記記録ヘッドに設けられる、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
前記測定部は、前記記録ヘッドにおける前記搬送方向の中央に配置される、
請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項13】
前記測定部は、各々の前記記録ヘッドに設けられる、請求項12に記載の記録装置。
【請求項14】
前記測定部は、複数の前記記録ヘッドに対応して前記基準部に複数設けられる、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項15】
前記測定部は、薄膜圧電素子を含む超音波センサーを有する、請求項1から請求項
14のいずれか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッドと記録媒体との距離を測定するセンサーを備えた記録装置が知られていた。例えば、特許文献1には、音波式の距離センサーによって、被記録媒体と記録部との距離を測定する記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の記録装置では、キャリッジに複数の記録ヘッドが搭載される場合に、プラテンに対する各記録ヘッドの高さにばらつきが生じ易いという課題があった。詳しくは、記録装置の輸送時や設置時に、上記高さにずれが発生して、ばらつきが生じる場合があった。上記高さにばらつきが生じると、各記録ヘッドから吐出されるインクが所望の付着位置に付着し難くなり、印刷される画像などの品質が低下することがあった。また、記録装置の輸送後や記録ヘッドの交換後に、上記高さの調整に労力を要するという課題もあった。すなわち、複数の記録ヘッドによる液体の付着位置を簡便に調整する記録装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
記録装置は、記録媒体に対して液体を吐出して記録を行う複数の記録ヘッドと、複数の前記記録ヘッドを搭載するキャリッジと、複数の前記記録ヘッドと対向可能な位置に設けられる基準部と、複数の前記記録ヘッドと前記基準部とのいずれか一方に設けられ、複数の前記記録ヘッドと前記基準部との距離を測定する測定部と、前記測定部の測定結果に基づく所定の処理の実行を制御して、個々の前記記録ヘッドが吐出する前記液体の付着位置の調整を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る記録装置の構成を示す概略側面図。
【
図4】記録ヘッドと基準部との配置を示す模式平面図。
【
図6】第2実施形態に係る記録ヘッドと基準部との配置を示す模式平面図。
【
図7】第3実施形態に係る記録ヘッドと基準部との配置を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に述べる実施の形態では、サイン用途の印刷などに用いられるラージフォーマット型の記録装置を例示し、図面を参照して説明する。
【0008】
以下の各図においては、必要に応じて相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。Y軸は記録装置の前後方向に沿い、記録装置の+Y方向を前方とする。X軸は記録装置の左右方向に沿い、記録装置の+X方向を右方とする。また、X軸に沿う方向である+X方向および-X方向を総称して、単にX方向ということもある。Z軸は鉛直方向に沿う仮想軸であって記録装置の+Z方向を上方とする。なお、図示の便宜上、各部材の大きさを実際とは異ならせている。
【0009】
1.第1実施形態
図1に示すように、本実施形態に係る記録装置1は、複数の記録ヘッドH、キャリッジ11、プラテン3を備える。複数の記録ヘッドHは、プラテン3に支持される記録媒体Pに対して、液体であるインクを吐出して記録を行う。図示を省略するが、記録装置1は、測定部および制御部も備える。なお、
図1の説明では、特に断りがない限り、+X方向から側面視した状態を述べるものとする。また、
図1では、図示の便宜上、複数の記録ヘッドHを1つのみとしている。
【0010】
複数の記録ヘッドHは、キャリッジ11の下面に-Z方向を向いて搭載される。各記録ヘッドHは-Z方向にノズル面Fを備える。ノズル面Fには後述するノズルが設けられる。該ノズルからインクの液滴が吐出される。
【0011】
複数の記録ヘッドHの各々は図示しない調整部を有する。各記録ヘッドHは、調整部を介してキャリッジ11に搭載される。調整部は、プラテン3に設けられた基準部と、記録ヘッドHとの距離を調整する。基準部については後述する。調整部には、例えば、ボールねじや無段階の偏心カムなどのように、回転運動を直線運動に変換する機構が採用される。具体的には、ボールねじでは、ねじ軸を回転させることにより上記高さを調整することが可能となる。
【0012】
各記録ヘッドHには、図示しないインクタンクからの配管が接続される。該インクタンクには、各色を呈する色インクや白色インクが個別に格納される。また、インクタンクには、前処理剤やコート液などの処理液が格納されてもよい。本明細書では、上述したインクや処理液などの液体を総称してインクという。
【0013】
複数の記録ヘッドHのノズル面Fは、記録装置1が記録を行う際に、記録媒体Pを介してプラテン3と対向して配置される。記録ヘッドHは、圧電素子により吐出駆動されるインクジェットヘッドである。記録ヘッドHにおける吐出駆動の手段は圧電素子に限定されない。
【0014】
キャリッジ11はプラテン3と対向して配置される。キャリッジ11は、図示しないキャリッジ駆動部によって、記録媒体Pに対してX方向に往復移動する。換言すれば、キャリッジ11は、記録媒体Pがプラテン3上で搬送される搬送方向である+Y方向と、交差するX方向に走査される。キャリッジ駆動部は、後述するキャリッジモーターによって往復移動の駆動力をキャリッジに付与する。キャリッジ11のX方向の位置は、キャリッジ駆動部に備わるエンコーダーによって検知される。
【0015】
記録装置1は、記録媒体Pの搬送および支持機構として、送出部14、支持部2,4、搬送部9、プラテン3、および巻き取り部15を備える。送出部14では、記録前のロール状の記録媒体Pが巻き解かれてプラテン3へ搬送される。巻き取り部15では、記録後の記録媒体Pがロール状に巻き取られる。すなわち、記録装置1は、ロール状の記録媒体Pに記録が可能な構成である。記録媒体Pの形態はロール状であることに限定されず、単票状であってもよい。また、記録装置1は、記録媒体Pが搬送されずに記録が成されるフラットベッド型であってもよい。
【0016】
記録媒体Pは、搬送部9によって送出部14から搬送される。このとき、ロール状の記録媒体Pは、プラテン3で記録面16が上方を向くように、例えば、回転方向Cに回転して巻き解かれる。
【0017】
送出部14から巻き解かれて上方へ搬送された記録媒体Pは、支持部2に至る。支持部2は、記録媒体Pに接する領域が円弧状に形成される。記録媒体Pは、支持部2の上記領域に接しつつ搬送方向Aに搬送される。これにより、記録媒体Pは搬送部9に至る。
【0018】
搬送部9は、駆動ローラー5および従動ローラー6を含む。駆動ローラー5および従動ローラー6は、支持部2とプラテン3との間に配置される。従動ローラー6は駆動ローラー5の上方に位置する。駆動ローラー5および従動ローラー6は、円柱状であって、各々の回転軸がX軸に沿う。
【0019】
駆動ローラー5と従動ローラー6とは、記録媒体Pを挟んで回転することにより、記録媒体Pを+Y方向へ搬送する。詳しくは、駆動ローラー5および従動ローラー6は、ロール状の記録媒体Pを送出部14から巻き解いて引き出し、支持部2を経てプラテン3へ搬送する。駆動ローラー5は、後述する搬送モーターの駆動により、反時計回りの回転方向Cへ回転する。従動ローラー6は、駆動ローラー5の回転に対応して、時計回りに回転する。これにより、記録媒体Pはプラテン3に至る。
【0020】
プラテン3は上面が平板状に形成される。記録媒体Pは、プラテン3の上面に支持されながら+Y方向へ搬送される。上述の通り、プラテン3では、記録媒体Pに対して複数の記録ヘッドHからインクの液滴が付着される。このとき、複数の記録ヘッドHがX軸に沿う方向に走査され、記録媒体Pが+Y方向へ搬送される。そのため、複数の記録ヘッドHは、記録媒体Pに対して、相対的にX軸に沿う方向に走査が可能になり、かつ相対的にY軸に沿う方向に移動が可能となる。これにより、記録媒体Pには画像、テキスト、模様などが形成されて記録が成される。記録媒体Pは、プラテン3から支持部4に至る。
【0021】
支持部4は、プラテン3の+Y方向に配置される。支持部4は+Y方向が下方へ傾斜している。支持部4の傾斜によって、支持部4は、記録媒体Pの搬送方向を+Y方向から搬送方向Bへ案内する。支持部4の傾斜の先には巻き取り部15が設けられる。
【0022】
巻き取り部15は、図示しないモーターの駆動により、例えば、回転方向Cへ回転して記録媒体Pをロール状に巻き取る。
【0023】
図2および
図3に示すように、記録ヘッドHには、測定部としての距離センサーSが配置される。すなわち、距離センサーSは各々の記録ヘッドHに設けられる。距離センサーSは、複数の記録ヘッドHの各々と、プラテン3における後述する基準部との距離を測定する。なお、距離センサーSは、記録ヘッドHに設けられることに限定されない。距離センサーSは、複数の記録ヘッドHと、プラテン3に設けられる基準部と、のいずれか一方に設けられればよい。記録装置1における距離センサーSの配置については後で述べる。
【0024】
-Z方向からの平面視にて、記録ヘッドHは略矩形であり、記録ヘッドHの中央には略矩形のノズル面Fが設けられる。+X方向からの側面視にて、ノズル面Fは-Z方向に突出している。
【0025】
ノズル面Fには、4本のノズル列211a,211b,211c,211dが、この順番にて+X方向へ向かって配置される。ノズル列211a,211b,211c,211dの各々は、Y軸に沿って延在する。ノズル列211a,211b,211c,211dの各々は、複数のノズル201から成る。ノズル列211a,211b,211c,211dの各ノズル201からは、対応する種類のインクの液滴が吐出される。ノズル面Fに配置されるノズル列は、上記の構成に限定されない。
【0026】
距離センサーSは、記録ヘッドHにおいて、プラテン3における記録媒体Pの搬送方向であるY軸に沿う方向の中央に、且つノズル列211bとノズル列211cとの間に設けられる。換言すれば、-Z方向からの平面視にて、距離センサーSは、略矩形のノズル面Fの2本の対角線の交点付近に位置する。
【0027】
これにより、距離センサーSによる記録ヘッドHと基準部との距離の測定において、プラテン3に対するキャリッジ11のアライメントの影響を抑えることができる。詳しくは、キャリッジ11の支持形態によっては、プラテン3の上方の面に対して、記録ヘッドHのノズル面Fに傾きが生じる場合がある。その場合であっても、記録媒体Pの搬送方向の中央に距離センサーSが配置されることで、上記傾きの影響を抑えて記録ヘッドHと基準部との距離の測定を行うことができる。また、距離センサーSは、記録ヘッドHのノズル面Fと同様に下方を向いて設けられるため、塵などの異物が距離センサーSに付着し難く、距離センサーSの性能を維持することができる。
【0028】
距離センサーSは非接触式の距離測定装置である。距離センサーSとしては、光学式、音波式、および超音波式などが挙げられる。本実施形態では、距離センサーSとして、以下に述べる薄膜圧電素子を含む超音波センサーを採用する。
【0029】
超音波センサーは、厚さ方向に貫通する開口部を有する基板、開口部を塞ぐ振動板、振動板の背面の開口部と対応する位置に設けられた薄膜圧電素子、および開口部の内側にあって振動板を介して薄膜圧電素子と対向する弾性層を備える。振動板の振動領域と薄膜圧電素子とが1つの超音波トランスデューサーを構成する。
【0030】
超音波センサーでは、薄膜圧電素子の2つの電極間に所定周波数のパルス電圧を印加することにより、薄膜圧電素子が撓んで振動領域が振動して開口部から超音波が送信される。また、超音波センサーに向かって伝播した超音波が振動板の振動領域を振動させると、薄膜圧電素子の2つの電極間に電位差が発生する。該電位差を検出することにより、超音波の発振および受信の時期を検出することが可能となる。さらに、距離センサーSは、温湿度センサーを含み、計測した温湿度から音速を算出する。該温湿度センサーは、距離センサーSと同じ位置に配置されなくてもよい。
【0031】
以上の構成により、超音波を測定対象に送信して、測定対象にて反射された超音波を受信することにより、超音波センサーと測定対象との間の距離を測定することができる。なお、本実施形態の超音波センサーは、対象物が近距離にある場合に特化した小型の超音波センサーである。
【0032】
薄膜圧電素子を含む超音波センサーによれば、薄膜圧電素子を用いない超音波センサーと比べて、距離測定における空間分解能を向上させることができる。また、光学式や音波式のセンサーと比べて小型化が容易である。そのため、距離センサーSが小型かつ軽量なものとなり、記録ヘッドHへ搭載することが容易になる。さらに、超音波センサーは、光学式と比べて、測定対象の色や表面の反射率に影響されにくいという利点も備える。
【0033】
図4に示すように、プラテン3は、互いに隣接するプラテン3A,3Bを含む。ここで、
図4では、キャリッジ11などを破線で示すと共に、キャリッジ11が走査される範囲のうち、+X方向におけるプラテン3Aとプラテン3Bとの境界付近を拡大して図示する。なお、以下の
図4の説明では、特に断りがない限り、上方から平面視した状態を述べることとする。
【0034】
プラテン3Aは、図示しない記録媒体Pが搬送される搬送経路である。言い換えれば、プラテン3AのX軸に沿う方向の範囲は、記録装置1の記録時にキャリッジ11が走査される範囲でもある。プラテン3Bは、記録媒体Pが搬送される搬送経路であるプラテン3Aの+X方向の外側に配置される。プラテン3Aとプラテン3Bとの境界は、Y軸に沿って延在する。プラテン3Bは、プラテン3Aに対して、+X方向に配置されることに限定されず、-X方向に配置されてもよい。
【0035】
キャリッジ11には、複数の記録ヘッドHとして記録ヘッドH1,…,H8が搭載される。記録ヘッドH1,…,H8の各々に対応して、距離センサーSである距離センサーS1,…,S8が設けられる。複数の記録ヘッドHおよび複数の距離センサーSの各々は、X軸に沿う仮想直線L1~L6上に配置される。
【0036】
詳しくは、仮想直線L1上に記録ヘッドH1および距離センサーS1が配置される。仮想直線L2上に記録ヘッドH2および距離センサーS2が配置される。仮想直線L3上に記録ヘッドH3,H4および距離センサーS3,S4が配置される。仮想直線L4上に記録ヘッドH5,H6および距離センサーS5,S6が配置される。仮想直線L5上に記録ヘッドH7および距離センサーS7が配置される。仮想直線L6上に記録ヘッドH8および距離センサーS8が配置される。
【0037】
複数の記録ヘッドHのうち、記録ヘッドH1,H4,H7と、記録ヘッドH2,H3,H8と、は各々Y軸に沿う方向に並ぶ。複数の記録ヘッドHや複数の距離センサーSの数や配置は、上述した形態に限定されない。
【0038】
基準部R1はY軸に沿う方向に細長い略矩形である。基準部R1は、プラテン3Bにあって、例えば、プラテン3Aと、記録装置1におけるキャリッジ11のメンテナンス位置との間に設けられる。基準部R1は、記録媒体Pの搬送経路の外側に設けられるため、記録媒体Pと接触し難くなる。そのため、記録媒体Pに由来する塵などの付着を抑えられて、基準部R1を清浄に保つことができる。基準部R1はY軸に沿う方向に細長い略矩形に限定されず、Y軸に沿う方向に細長い略矩形の領域においてY軸方向に分割されて配置されていても良い。
【0039】
キャリッジ11は、基準部R1を含む領域まで移動が可能である。キャリッジ11がプラテン3Aを超えて+X方向へ走査されると、各々の距離センサーSと基準部R1とが対向する。各記録ヘッドHと基準部R1との距離は、双方をZ軸に沿う方向に対向させて測定される。基準部R1は、キャリッジ11がX方向に走査されるのに伴って、各々の記録ヘッドHと順次対向する。このとき、各記録ヘッドHと基準部R1との距離が順次測定される。
【0040】
距離センサーSは、各記録ヘッドHに設けられることに限定されない。距離センサーSは、記録ヘッドHに対応して基準部R1に設けられてもよい。すなわち、距離センサーSとして、距離センサーS1~S8に代えて、基準部R1に複数の距離センサーS11~S16を設けてもよい。詳しくは、基準部R1における、仮想直線L1上に距離センサーS11を、仮想直線L2上に距離センサーS12を、仮想直線L3上に距離センサーS13を、仮想直線L4上に距離センサーS14を、仮想直線L5上に距離センサーS15を、仮想直線L6上に距離センサーS16を、各々配置してもよい。
【0041】
キャリッジ11は基準部R1と対向する位置へ移動可能である。キャリッジ11をX方向に走査させることにより、記録ヘッドH3,H4で距離センサーS13を共用し、記録ヘッドH5,H6で距離センサーS14を共用することが可能となる。このように、キャリッジ11において、走査方向に沿う直線上に配置される複数の記録ヘッドHでは、基準部R1に設けられる距離センサーSを共用することが可能となる。これにより、距離センサーSの数を低減することができる。
【0042】
図5に示すように、制御部118は、CPU(Central Processing Unit)119、システムバス120、ROM(Read Only Memory)121、RAM(Random Access Memory)122、ヘッド駆動部123、モーター駆動部124、および入出力部130を備える。
【0043】
CPU119は記録装置1の全体の制御を司る。CPU119は、システムバス120を介して、ROM121、RAM122、およびヘッド駆動部123と電気的に接続される。ROM121には、CPU119が実行する各種制御プログラムやメンテナンスシーケンスなどが格納される。RAM122は一時的にデータを格納する。ヘッド駆動部123は、複数の記録ヘッドHである記録ヘッドH1,H2,…,H8を駆動する。
【0044】
CPU119は、システムバス120を介して、モーター駆動部124と電気的に接続される。モーター駆動部124は、キャリッジモーター65、搬送モーター88、および昇降駆動モーター99と電気的に接続される。
【0045】
キャリッジモーター65は、上述したキャリッジ駆動部に含まれる。キャリッジモーター65は、キャリッジ11をX方向に往復移動させる。搬送モーター88は、上述した駆動ローラー5を駆動して記録媒体Pを搬送する。昇降駆動モーター99は、キャリッジ11をZ軸に沿う方向に移動させる。これにより、複数の記録ヘッドHと、プラテン3および記録媒体Pとの距離が一律で変更される。
【0046】
CPU119は、システムバス120を介して、入出力部130と電気的に接続される。入出力部130は、測定部である距離センサーS1,S2,…,S8、およびPC(Personal Computer)129と電気的に接続される。PC129は、記録データなどを記録装置1に入力する情報機器である。なお、距離センサーS1~S8に代えて、上述した距離センサーS11~S16を用いてもよい。
【0047】
距離センサーSは、複数の記録ヘッドHである記録ヘッドH1,H2,…,H8の各々に対応する距離センサーS1,S2,…,S8を含む。距離センサーS1,S2,…,S8の各々は、対応する記録ヘッドH1,H2,…,H8と、上述した基準部R1との間の距離、すなわちプラテン3に対する各記録ヘッドHの高さを測定する。
【0048】
各記録ヘッドHの高さの測定は、記録装置1の出荷前に実施される。また、上記高さの測定は、出荷後に、記録装置1の輸送後、設置後、一定期間使用された後、および記録ヘッドHの交換後などの任意の時期に実施される。測定された各記録ヘッドHの高さを含む情報は、制御部118に送信されてRAM122に記憶される。特に、記録装置1の出荷前の該情報は、各記録ヘッドHの高さが予め調整された初期状態におけるものである。該情報は、各記録ヘッドHと基準部R1との距離の初期情報として、制御部118のRAM122に記憶される。
【0049】
制御部118は、距離センサーSの測定結果である各記録ヘッドHの高さ情報に基づいて、所定の処理を実行する。制御部118の所定の処理によって、個々の記録ヘッドH1,H2,…,H8が吐出するインクの付着位置の調整が行われる。なお、距離センサーSによる各記録ヘッドHの高さ情報には、記録媒体Pの厚さ分は含まれない。記録媒体Pの厚さ分の調整は、上記昇降駆動モーター99によるキャリッジ11の昇降によって行われてもよい。
【0050】
制御部118における所定の処理は、上記距離の初期情報と、出荷以降の任意の時期における各記録ヘッドHの高さの測定結果とに基づいて実行されてもよい。これによれば、記憶されている初期情報を参照することにより、任意の時期における測定結果と初期情報とが対比される。双方に差異がある場合に、その差異を低減する修正を所定の処理として実施することによって、インクの付着位置の調整を容易に行うことができる。
【0051】
制御部118による所定の処理は、ソフト的な調整として、各記録ヘッドHにおけるインクの液滴の吐出タイミングおよび吐出速度のうちの少なくとも一方を補正することを含む。また、上記所定の処理は、機械的な調整である上記の調整部による調整、および該調整を手作業で行う場合の支援と、も含む。
【0052】
まず、上記所定の処理のうちのソフト的な調整について述べる。例えば、ROM121は、基準部R1と各記録ヘッドHとの距離に対応する、インクの液滴の吐出タイミングや吐出速度といった複数の吐出条件を予め記憶する。制御部118は、測定された各記録ヘッドHの高さに対応する上記吐出条件をROM121から読み出す。次いで、制御部118は、上記吐出条件に基づいてインクの液滴の吐出タイミングや吐出速度を補正して、システムバス120を介してヘッド駆動部123を制御する。
【0053】
上記吐出タイミングの調整には、記録時にキャリッジ11と共に走査されている各記録ヘッドHにおける、インクの液滴の吐出タイミングの修正も含まれる。これにより、記録媒体Pにインクの液滴が付着する微視的な位置が補正される。また、上記吐出速度の調整には、記録時に走査されている各記録ヘッドHからのインクの液滴の吐出速度の修正が含まれる。これにより、記録媒体Pにインクの液滴が付着する微視的な位置が補正される。
【0054】
以上により、ソフト的な調整として、インクの液滴の吐出タイミングや吐出速度の補正が実施され、インクの液滴の付着位置を容易に調整することができる。
【0055】
次に、上記所定の処理のうちの機械的な調整について述べる。例えば、RAM122に記憶される初期情報と、基準部R1および各記録ヘッドHの距離の測定結果との差異を、調整部によって機械的に解消させる。つまり、上記所定の処理として、調整部を制御することにより、基準部R1と各記録ヘッドHとの距離を、初期状態に戻すように自動で調整する。調整部としてボールねじや偏心カムを用いる場合には、これらを制御部118が制御する図示しないモーターによって回転駆動する。これにより、記録媒体Pにおけるインクの付着位置の調整を簡便に行うことができる。また、自動で調整する場合には、ソフト的な調整と機械的な調整の両方を実行しても良い。例えば、所定の範囲までの調整はソフト的な調整で補正して、所定の範囲を超える調整には機械的な調整を行うようにしても良い。
【0056】
上記の機械的な調整は手作業で実施されてもよい。具体的には、制御部118は、調整部を介する手作業による調整において、基準部R1と各記録ヘッドHとの距離を調整部によって調整するための調整情報を報知してもよい。
【0057】
該調整情報としては、RAM122に記憶される初期情報と、基準部R1と各記録ヘッドHとの距離の測定結果との差異の情報、調整部における適切な調整量についての案内情報、および適切な調整が完了したことを示す情報などが挙げられる。報知の手段としては、記録装置1に備わる図示しない表示パネルやPC129への表示、報知音、音声、および表示灯などが挙げられる。
【0058】
これによれば、基準部R1と各記録ヘッドHとの距離を、隙間ゲージなどで都度測定する作業が不要になり、記録媒体Pにおけるインクの付着位置の調整をより簡便に行うことができる。
【0059】
上記の調整情報は、所定の時間間隔にて逐次更新されることが好ましい。すなわち、手作業での調整時に、更新される調整情報を確認しながら調整を進めることが可能となる。そのため、調整作業をより容易に実施することができる。
【0060】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。記録媒体Pに対して、各記録ヘッドHが吐出するインクの付着位置を簡便に調整することができる。詳しくは、距離センサーSによって基準部R1と複数の記録ヘッドHとの距離、すなわち記録ヘッドHの高さが測定される。そのため、例えば隙間ゲージなどを用いて上記高さを測定する手間を省くことができる。また、制御部118による所定の処理によって、記録媒体Pにおけるインクの付着位置が調整される。そのため、複数の記録ヘッドHの高さにばらつきが生じても、付着位置の調整を容易に行うことができる。したがって、インクの付着位置を簡便に調整する記録装置1を提供することができる。
【0061】
2.第2実施形態
本実施形態に係る記録装置では、第1実施形態の記録装置1に対して、基準部R1の配置を変更している。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成部位には同一の符号を使用して、重複する説明は省略する。
【0062】
図6に示すように、本実施形態の記録装置では、基準部R2がプラテン3Aに設けられる。プラテン3Aは、上述した通り、キャリッジ11が記録時に走査される走査範囲の内側にある。つまり、基準部R2は、キャリッジ11が記録時の走査範囲内を走査された際に、各々の記録ヘッドHである記録ヘッドH1,…,H8と対向する位置に設けられる。基準部R2は、上方からの平面視にて、Y軸に沿う方向に細長い略矩形である。
【0063】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、測定センサーSは、各記録ヘッドHと基準部R2とのいずれか一方に設けられる。
【0064】
本実施形態によれば第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0065】
3.第3実施形態
本実施形態に係る記録装置では、第2実施形態の記録装置に対して、基準部R2の配置および形態を変更している。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成部位には同一の符号を使用して、重複する説明は省略する。
【0066】
図7に示すように、本実施形態の記録装置では、基準部R31~R38がプラテン3Aに設けられる。基準部R31~R38は、上記実施形態のような一体の形態ではなく、各記録ヘッドHの配置に対応して分割して設けられる。基準部R31~R38の各々は、上方からの平面視にて略矩形であって、各記録ヘッドHと重なる程度の面積を有する。
【0067】
基準部R31~R38は、キャリッジ11が記録時に走査された際に、複数の記録ヘッドH1,…,H8と同時に対向する。具体的には、記録ヘッドH1と基準部R31と、記録ヘッドH2と基準部R32と、記録ヘッドH3と基準部R33と、記録ヘッドH4と基準部R34と、記録ヘッドH5と基準部R35と、記録ヘッドH6と基準部R36と、記録ヘッドH7と基準部R37と、記録ヘッドH8と基準部R38と、が各々同時に対向する。
【0068】
これによれば、複数の記録ヘッドHと対応する基準部R31~R38との距離、すなわち各記録ヘッドHの高さを同時に測定することが可能となる。そのため、上記高さの測定を短時間で実施することができる。
【0069】
また、基準部R31~R38の配置は、基準部R31~R38の全てが複数の記録ヘッドHと同時に対向することに限定されない。例えば、プラテン3AのX方向に微小なうねりや傾きが存在する場合に、基準部R31~R38は、うねりや傾きの影響が低減される任意の領域に設けられてもよい。これによれば、記録装置によって記録される画像などの品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…記録装置、11…キャリッジ、118…制御部、H,H1,H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8…記録ヘッド、P…記録媒体、R1,R2,R31,R32,R33,R34,R35,R36,R37,R38…基準部、S,S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8,S11,S12,S13,S14,S15,S16…測定部としての距離センサー。