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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/60 20230101AFI20250304BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20250304BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20250304BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20250304BHJP
   C09B 57/00 20060101ALN20250304BHJP
【FI】
H10K30/60
H01G9/20 113A
H10K30/50
H10K85/60
C09B57/00 X
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021115426
(22)【出願日】2021-07-13
(65)【公開番号】P2023012030
(43)【公開日】2023-01-25
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】光山 健太
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀一
(72)【発明者】
【氏名】千阪 二郎
【審査官】丸橋 凌
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-083867(JP,A)
【文献】特開2019-211764(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122738(WO,A1)
【文献】特開2019-11455(JP,A)
【文献】特開2018-193516(JP,A)
【文献】特開2010-077261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-39/38
H10K 85/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に光電変換層を有してなる光電変換素子であって、光電変換層が、下記一般式(1)または一般式(2)で表される色素を含有する光電変換素子。
【化1】


一般式(1)中、R11~R30は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、または置換基を有してもよいアミノ基を表す。R11~R20の内いずれか2つ以上、及び/又はR21~R30の内いずれか2つ以上は、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、R 11 、R 19 、R 21 及びR 29 はすべてメチル基であるか、又は、R 13 、R 17 、R 23 及びR 27 はすべてメチル基である。
【化2】

一般式(2)中、R41~R56は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アセトアミド基、カルボキシ基、水酸基、置換基を有してもよいアミノ基、またはフェニル基を表す。ただし、41~R56の内、いずれかの隣接する2つは、互いに結合して環を形成する
【請求項2】
光電変換層が、さらに分散剤(D)を含有する請求項1記載の光電変換素子。
【請求項3】
分散剤(D)は、アミン価が10~200mgKOH/gまたは4級アンモニウム塩価が10~90mgKOH/gである請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
請求項1~3いずれかに記載の光電変換素子を形成するための光電変換層であって、下記一般式(1)または一般式(2)で表される色素を含有する光電変換層。
【化1】

一般式(1)中、R11~R30は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、または置換基を有してもよいアミノ基を表す。R11~R20の内いずれか2つ以上、及び/又はR21~R30の内いずれか2つ以上は、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、R 11 、R 19 、R 21 及びR 29 はすべてメチル基であるか、又は、R 13 、R 17 、R 23 及びR 27 はすべてメチル基である。
【化2】

一般式(2)中、R41~R56は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アセトアミド基、カルボキシ基、水酸基、置換基を有してもよいアミノ基、またはフェニル基を表す。ただし、41~R56の内、いずれかの隣接する2つは、互いに結合して環を形成する
【請求項5】
請求項1~3いずれかに記載の光電変換素子を形成するための光電変換材料であって、下記一般式(1)または一般式(2)で表される色素を含有する光電変換材料。
【化1】

一般式(1)中、R11~R30は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、または置換基を有してもよいアミノ基を表す。R11~R20の内いずれか2つ以上、及び/又はR21~R30の内いずれか2つ以上は、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、R 11 、R 19 、R 21 及びR 29 はすべてメチル基であるか、又は、R 13 、R 17 、R 23 及びR 27 はすべてメチル基である。
【化2】

一般式(2)中、R41~R56は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アセトアミド基、カルボキシ基、水酸基、置換基を有してもよいアミノ基、またはフェニル基を表す。ただし、41~R56の内、いずれかの隣接する2つは、互いに結合して環を形成する
【請求項6】
請求項1~3いずれかに記載の光電変換素子を有するイメージセンサー。
【請求項7】
請求項1~3いずれかに記載の光電変換素子を有する太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、それを形成するための光電変換層および光電変換材料ならびにそれを用いたイメージセンサーおよび太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、光を電気に変換する素子であり、太陽電池等への応用が試みられている。光電変換素子としては、以前より光電変換材料としてシリコンが使用されてきた。しかし、シリコンは近赤外線領域の光に対する吸収に乏しいため、近赤外光を光電変換に有効に利用することができず、光電変換効率が低いという問題があった。また、光電変換素子は、光を電気に変換する際に素子内の光電変換材料において電子の授受が起こるため、水や酸素等によって素子が経時劣化する場合が多い。特に、光電変換材料として有機化合物を使用する場合、経時劣化する傾向が高いことが問題となっていた。
一方で、近赤外線に吸収を有する化合物として、スクアリリウム系の化合物が開示されている(特許文献1、特許文献2等)。しかし、これら化合物が光電変換能を有するか否かは不明であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-198816号公報
【文献】特開2019-211764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、近赤外線領域の光に対して高い感度を有し、経時劣化が少ない光電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、一対の電極間に光電変換層を有してなる光電変換素子であって、光電変換層が、下記一般式(1)または一般式(2)で表される色素を含有する光電変換素子に関する。
【0006】
【化1】
【0007】
一般式(1)中、R11~R30は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、または置換基を有してもよいアミノ基を表す。R11~R20の内いずれか2つ以上、及び/又はR21~R30の内いずれか2つ以上は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0008】
【化2】
【0009】
一般式(2)中、R41~R56は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アセトアミド基、カルボキシ基、水酸基、置換基を有してもよいアミノ基、またはフェニル基を表す。R41~R56の内、隣接する2つは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0010】
また、本発明は、光電変換層が、さらに分散剤(D)を含有する上記光電変換素子に関する。
【0011】
また、本発明は、分散剤(D)は、アミン価が10~200mgKOH/gまたは4級アンモニウム塩価が10~90mgKOH/gである上記光電変換素子に関する。
【0012】
また、本発明は、上記光電変換素子を形成するための光電変換層であって、上記一般式(1)または一般式(2)で表される色素を含有する光電変換層に関する。
【0013】
また、本発明は、上記光電変換素子を形成するための光電変換材料であって、上記一般式(1)または一般式(2)で表される色素を含有する光電変換材料に関する。
【0014】
また、本発明は、上記光電変換素子を有するイメージセンサーに関する。
【0015】
また、本発明は、上記光電変換素子を有する太陽電池に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、近赤外線領域の光に対して高い感度を有し、経時劣化が少ない光電変換素子を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、詳細にわたって本発明を説明するが、本明細書で用いられる用語や略号等についてまず説明する。一般式(1)で表される色素を含有する光電変換材料を「光電変換材料(A)」、一般式(2)で表される色素を含有する光電変換材料を「光電変換材料(B)」と称することとする。また、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0018】
<一般式(1)および一般式(2)で表される色素>
まず、本発明に用いられる一般式(1)および一般式(2)で表される色素について説明する。一般式(1)および一般式(2)中の基について説明する。
【0019】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルエチル基等が挙げられる。アルキル基上の置換基としては、フェニル基等が挙げられる。
【0020】
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0021】
アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、1-ブテニル基、イソブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、1-ビニルヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0023】
アリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-アンスリル基、1-フェナンスリル基、2-フェナンスリル基、3-フェナンスリル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、2-ペリレニル基、3-ペリレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、7-フルオレニル基、8-フルオレニル基等が挙げられる。
【0024】
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ等が挙げられる。
【0025】
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基が挙げられる。
【0026】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。
【0027】
アミノ基上の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルエチル基などのアルキル基が挙げられる。
【0028】
一般式(1)において、R11~R20の内いずれか2つ以上、及び/又はR21~R30の内いずれか2つ以上は、互いに結合して環を形成してもよい。また、一般式(2)において、R41~R56の内、隣接する2つは、互いに結合して環を形成してもよい。例えば、R11とR13とが、いずれもアルキル基であって「互いに結合」している場合とは、R11とR13とがアルキレン基によって結合していることを意味する。一般式(2)におけるR41~R56の内、隣接する2つが互いに結合して環を形成する場合、形成される環は、芳香環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0029】
耐久性の観点から、一般式(1)におけるR11~R14、R17~R20、R21~R24及びR27~R30の内、いずれか一つ以上がメチル基であることが好ましい。特に、R11及びR19並びにR21及びR29、又は、R13及びR17並びにR23及びR27のいずれかの組合せがメチル基であることがより好ましい。耐久性の観点から、一般式(2)におけるR41~R56は、水素原子であるか、隣接する2つが互いに結合して環を形成していることが好ましい。
【0030】
<光電変換材料>
本発明の光電変換材料は、一般式(1)または一般式(2)で表される色素を含有することを特徴とする。本明細書では、一般式(1)で表される色素を含有する光電変換材料を「光電変換材料(A)」、一般式(2)で表される色素を含有する光電変換材料を「光電変換材料(B)」と称することとする。光電変換材料(A)及び光電変換材料(B)は、それぞれ単独または2種類以上を併用して使用してもよい。
【0031】
<光電変換素子形成用組成物(P)>
本発明の光電変換材料は、後述する有機溶剤等と混合して光電変換膜を形成するための光電変換素子形成用組成物(P)とすることができる。 光電変換材料の含有率は、光電変換素子形成用組成物(P)中、0.01~90%であることが好ましく、10~80%であることがより好ましい。
【0032】
<有機溶剤>
有機溶剤としては、公知の有機溶剤を用いることができるが、均一な光電変換膜を形成する上で光電変換材料を溶解または均一に分散できるものが好ましい。具体的には、1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール等のアルコール系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸イソアミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤が挙げられるが、これらに限定されない。有機溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0033】
<分散剤(D)>
本発明の光電変換層は、分散剤(D)を含有しても良い。分散剤(D)は、光電変換素子形成用組成物(P)に含有させた後、光電変換層を形成することによって光電変換層に含有されることになる。
分散剤(D)は、アミン価または4級アンモニウム塩価を有することが好ましい。
分散剤(D)がアミン価を有する場合、アミン価は、10~200mgKOH/gであることが好ましく、20~200mgKOH/gであることがより好ましく、60~150mgKOH/gであることが更に好ましく、60~120mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0034】
分散剤(D)が4級アンモニウム塩価を有する場合、4級アンモニウム塩価は、10~90mgKOH/gであることが好ましく、15~50mgKOH/gであることがより好ましい。本明細書における4級アンモニウム塩価とは、5%クロム酸カリウム水溶液を指示薬として、0.1Nの硝酸銀水溶液で滴定して求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した値であり、測定した全アンモニウム塩価を分散剤の固形分換算した値(mgKOH/g)である。
【0035】
分散剤(D)の重量平均分子量(Mwと略記することがある)は、標準ポリスチレン換算値で4,000~40,000が好ましく、5,000~20,000がより好ましい。分散剤(D)は、公知の分散剤を使用することができるが、例えば、特開2019-211764号公報に記載されている塩基性樹脂型分散剤(B)は好ましい態様の一つである。
【0036】
<その他添加剤>
本発明の光電変換層や光電変換素子形成用組成物(P)は、上に述べた光電変換材料、有機溶剤、分散剤(D)以外のその他添加剤を含んでも良い。その他添加剤としては、界面活性剤、バインダー(結着剤)等が挙げられる。
【0037】
<光電変換素子>
本発明の光電変換素子は、一対の電極間に光電変換層を有し、光電変換層が、下記一般式(1)または一般式(2)で表される色素を含有することを特徴とする。光電変換素子は、公知の素子構成や製造方法によって製造することができ、例えば、特開2015-065267号公報に記載されている製造方法によって製造することができる。光電変換素子を構成する電極の材料としては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、金、銀、白金、クロム、ニッケル、リチウム、インジウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム等の金属等の公知の材料が挙げられる。
【0038】
<イメージセンサー>
本発明のイメージセンサーは、本発明の光電変換素子をアレイ上に多数配置し、一対の電極の間に光電変換素子の外部から電圧を印加することにより、入射光の量だけでなく、入射位置の情報を認識するものである。
【0039】
<太陽電池>
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子をそのまま用いることもできるし、設置環境に応じて、フレームやバックシートを用いて、防水を行うこともできる。光電変換素子に外部から電圧を印加することなく、光電変換素子が光照射により電気が発生するものである。
【実施例
【0040】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、「部」及び「%」とは「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0041】
<分散剤(D)の合成>
特開2019-211764号公報の段落[0199]~[0232]に記載されている方法にしたがって分散剤(D1-1)~(D1-27)および(D2-1)~(D2-10)をそれぞれ合成した。ここで合成した分散剤と、特開2019-211764号公報に記載されている塩基性樹脂型分散剤との対応表を下記表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
<光電変換材料の製造>
光電変換材料の同定には、MALDITOF-MSスペクトル(以下、「TOF-MS」と略記する)を用いた。MALDITOF-MSスペクトルは、ブルカー・ダルトニクス社製MALDI質量分析装置autoflexIIIを用い、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた光電変換材料の同定を行った。尚、本実施例では、一般式(1)に属する色素を光電変換材料(A)、一般式(2)に属する色素を光電変換材料(B)とした。
【0044】
(光電変換材料(A))
実施例1(光電変換材料[A-1])
トルエン400部に、1,8-ジアミノナフタレン40.0部、シクロヘキサノン25.1部、p-トルエンスルホン酸一水和物0.087部を混合し、窒素ガスの雰囲気中で加熱攪拌し、3時間還流させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により系中から除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体をアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製した。得られた茶色固体を、トルエン240部とn-ブタノール160部の混合溶媒に溶解させ、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン13.8部を加えて、窒素ガスの雰囲気中で加熱撹拌し、8時間還流反応させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により系中から除去した。反応終了後、溶媒を蒸留し、得られた反応混合物を攪拌しながら、ヘキサン200部を加えた。得られた黒茶色沈殿物を濾別した後、順次ヘキサン、エタノールおよびアセトンで洗浄を行い、減圧下で乾燥させ、光電変換材料[A-1]61.9部(収率:92%)を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、光電変換材料[A-1]であることを同定した。
【0045】
実施例2(光電変換材料[A-2])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、2, 6-ジメチルシクロヘキサノン32.2部を使用した以外は、光電変換材料[A-1] の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-2]71.9部(収率:97%)を得 た。TOF-MSによる質量分析の結果、光電変換材料[A-2]であることを同定し た。
【0046】
実施例3(光電変換材料[A-3])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、3, 5-ジメチルシクロヘキサノン32.2部を使用した以外は、光電変換材料[A-1] の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-3]を得た。TOF-MSによる質量 分析の結果、光電変換材料[A―3]であることを同定した。
【0047】
実施例4(光電変換材料[A-4])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- メチルシクロヘキサノン28.6部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の製造 と同様の操作を行い、光電変換材料[A-4]部を得た。TOF-MSによる質量分析 の結果、光電変換材料[A-4]であることを同定した。
【0048】
実施例5(光電変換材料[A-5])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、3, 3,5-トリメチルシクロヘキサノン35.8部を使用した以外は、光電変換材料[A -1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-5]を得た。TOF-MSによ る質量分析の結果、光電変換材料[A-5]であることを同定した。
【0049】
実施例6(光電変換材料[A-6])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- エチルシクロヘキサノン32.2部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の製造 と同様の操作を行い、光電変換材料[A-6]を得た。TOF-MSによる質量分析の 結果、光電変換材料[A-6]であることを同定した。
【0050】
実施例7(光電変換材料[A-7])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- プロピルシクロヘキサノン35.8部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の製 造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-7]を得た。TOF-MSによる質量分析 の結果、光電変換材料[A-7]であることを同定した。
【0051】
実施例8(光電変換材料[A-8])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、2- シクロヘキシルシクロヘキサノン46.0部を使用した以外は、光電変換材料[A-1 ]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-8]を得た。TOF-MSによる質 量分析の結果、光電変換材料[A-8]であることを同定した。
【0052】
実施例9(光電変換材料[A-9])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、2- ノルボルナノン28.1部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の製造と同様の 操作を行い、光電変換材料[A-9]を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、光 電変換材料[A-9]であることを同定した。
【0053】
実施例10(光電変換材料[A-10])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、2- フェニルシクロヘキサノン部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の製造と同様 の操作を行い、光電変換材料[A-10]を得た。TOF-MSによる質量分析の結果 、光電変換材料[A-10]であることを同定した。
【0054】
実施例11(光電変換材料[A-11])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- p-トリルシクロヘキサノン48.1部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の 製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-11]を得た。TOF-MSによる質量 分析の結果、光電変換材料[A-11]であることを同定した。
【0055】
実施例12(光電変換材料[A-12])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- ベンジルシクロヘキサノン48.1部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の製 造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-12]を得た。TOF-MSによる質量分 析の結果、光電変換材料[A-12]であることを同定した。
【0056】
実施例13(光電変換材料[A-13])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- エトキシシクロヘキサノン36.3部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の製 造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-13]を得た。TOF-MSによる質量分 析の結果、光電変換材料[A-13]であることを同定した。
【0057】
実施例14(光電変換材料[A-14])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- フェノキシシクロヘキサノン48.6部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の 製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-14]を得た。TOF-MSによる質量 分析の結果、光電変換材料[A-14]であることを同定した。
【0058】
実施例15(光電変換材料[A-15])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- アセトアミドシクロヘキサン39.6部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の 製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-15]を得た。TOF-MSによる質量 分析の結果、光電変換材料[A-15]であることを同定した。
【0059】
実施例16(光電変換材料[A-16])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- オキソシクロヘキサンカルボン酸36.3部を使用した以外は、光電変換材料[A-1 ]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-16]を得た。TOF-MSによる 質量分析の結果、光電変換材料[A-16]であることを同定した。
【0060】
実施例17(光電変換材料[A-17])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、2- オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル43.5部を使用した以外は、光電変換材料[ A-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-17]を得た。TOF-MS による質量分析の結果、光電変換材料[A-17]であることを同定した。
【0061】
実施例18(光電変換材料[A-18])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- アミノシクロヘキサノン28.9部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の製造 と同様の操作を行い、光電変換材料[A-18]を得た。TOF-MSによる質量分析 の結果、光電変換材料[A-18]であることを同定した。
【0062】
実施例19(光電変換材料[A-19])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- (ジメチルアミノ)シクロヘキサノン36.1部を使用した以外は、光電変換材料[A -1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-19]を得た。TOF-MSに よる質量分析の結果、光電変換材料[A-19]であることを同定した。
【0063】
実施例20(光電変換材料[A-20])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4- オキソ20フェニルシクロヘキサンカルボニトリル50.6部を使用した以外は、光電 変換材料[A-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-20]を得た。T OF-MSによる質量分析の結果、光電変換材料[A-20]であることを同定した。
【0064】
実施例21(光電変換材料[A-21])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、2- ニトロシクロヘキサノン36.5部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の製造 と同様の操作を行い、光電変換材料[A-21]を得た。TOF-MSによる質量分析 の結果、光電変換材料[A-21]であることを同定した。
【0065】
実施例22(光電変換材料[A-22])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、2- クロロシクロヘキサノン33.8部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の製造 と同様の操作を行い、光電変換材料[A-22]を得た。TOF-MSによる質量分析 の結果、光電変換材料[A-22]であることを同定した。
【0066】
実施例23(光電変換材料[A-23])
光電変換材料[A-1]の製造で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、2-フルオロシクロヘキサノン29.6部を使用した以外は、光電変換材料[A-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[A-23]を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、光電変換材料[A-23]であることを同定した。
以下に得られた光電変換材料(A)の構造を示す。
【0067】
【化3】
【0068】
【化4】
【0069】
【化5】
【0070】
実施例24(光電変換材料(B)の製造)
<光電変換材料(B)>
[光電変換材料[B-1]]
トルエン400部に、1,8-ジアミノナフタレン40.0部、9-フルオレノン46.0部、p-トルエンスルホン酸一水和物0.087部を混合し、窒素ガス雰囲気中で加熱攪拌し、3時間還流させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により系中から除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体をアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製した。得られた茶色固体を、トルエン240部とn-ブタノール160部の混合溶媒に溶解させ、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン13.8部を加えて、窒素ガスの雰囲気中で加熱撹拌し、8時間還流反応させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により系中から除去した。反応終了後、溶媒を蒸留し、得られた反応混合物を攪拌しながら、ヘキサン200部を加えた。得られた黒茶色沈殿物を濾別した後、順次ヘキサン、エタノール及びアセトンで洗浄を行い、減圧下で乾燥させ、光電変換材料[B-1]84.6部(収率:97%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-1]であることを同定した。
【0071】
実施例25[光電変換材料[B-2]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-メチル-9H-フルオレン-9-オン46.0部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-2]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-2]であることを同定した。
【0072】
実施例26[光電変換材料[B-3]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2,7-ジメチル-9H-フルオレン-9-オン53.1部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-3]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-3]であることを同定した。
【0073】
実施例27[光電変換材料[B-4]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2,6-ジメチル-9H-フルオレン-9-オン53.1部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-4]部を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-4]であることを同定した。
【0074】
実施例28[光電変換材料[B-5]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、7H-ベンゾ[c]フルオレン-7-オン58.7部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-5]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-5]であることを同定した。
【0075】
実施例29[光電変換材料[B-6]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、4-メトキシ-9-フルオレノン91.8部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-6]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-6]であることを同定した。
【0076】
実施例30[光電変換材料[B-7]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、9-フルオレン-4-カルボン酸57.2部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-7]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-7]であることを同定した。
【0077】
実施例31[光電変換材料[B-8]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-ヒドロキシ-9-フルオレン50.0部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-8]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-8]であることを同定した。
【0078】
実施例32[光電変換材料[B-9]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2,7-ジヒドロキシ-9H-フルオレン-9-オン54.1部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-9]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-9]であることを同定した。
【0079】
実施例33[光電変換材料[B-10]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-アミノ-9-フルオレノン49.8部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-10]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-10]であることを同定した。
【0080】
実施例34[光電変換材料[B-11]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-ジメチルアミノ-9-フルオレノン56.9部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-11]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-11]であることを同定した。
【0081】
実施例35[光電変換材料[B-12]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-ブロモ-9-フルオレノン66.1部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-12]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-12]であることを同定した。
【0082】
実施例36[光電変換材料[B-13]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-フルオロー9-フルオレノン50.5部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-13]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-13]であることを同定した。
【0083】
実施例37[光電変換材料[B-14]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2,7-ジクロロ-9-フルオレノン63.5部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-14]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-14]であることを同定した。
【0084】
実施例38[光電変換材料[B-15]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2,4-ジクロロ-9-フルオレノン63.5部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-15]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-15]であることを同定した。
【0085】
実施例39[光電変換材料[B-16]]
光電変換材料[B-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-アセトアミド-9-フルオレノン49.8部を使用した以外は、光電変換材料[B-1]の製造と同様の操作を行い、光電変換材料[B-16]を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、光電変換材料[B-16]であることを同定した。
以下に得られた光電変換材料(B)の構造を示す。
【0086】
【化6】
【0087】
【化7】
【0088】
<光電変換素子形成用組成物(P)の製造>
(光電変換素子形成用組成物(P-1))
下記材料を均一になるように撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散し、0.5μmのフィルタで濾過し、光電変換素子形成用組成物(P-1)を製造した。

光電変換材料[A-1] :0.94部
分散剤[D1-1]溶液 :0.56部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤) :8.50部
【0089】
(光電変換素子形成用組成物(P-2~41及びPR-1~2)の製造)
光電変換材料、塩基性樹脂型分散剤を表2に示す組成になるように変更した以外は、光電変換材料組成物(P-1)の製造方法と同様にして、光電変換材料組成物(P-2~41及びPR-1~2)を製造した。尚、表2の略号AR-1は、下記構造を有する化合物である比較用光電変換材料を表す。
【0090】
【化8】
【0091】
【表2】
【0092】
<光電変換形成素子の作成>
実施例40(光電変換素子(E-1))
洗浄したITO電極付きガラス板上に、電荷注入バッファー層としてPEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシ)-2,5-チオフェン/ポリスチレンスルホン酸、Bayer社製BAYTRON P)をスピンコート法にて膜厚80nmに製膜した。次いで、光電変換素子形成用組成物(P-1)をスピンコート法で80nmの膜厚で製膜し、光電変換層を形成した。さらにその上に、Alを100nmの厚みに蒸着して電極を形成して、光電変換素子を得た。得られた素子を大気に曝すことなく水分濃度および酸素濃度が1ppm以下のグローブボックス内に移して封止処理を施した。
【0093】
実施例41~80(光電変換素子(E-2~E-41)及び比較例1、2(比較用光電変換素子ER-1、ER-2)の製造
光電変換素子形成用組成物(P-1)を、表3に示した光電変換素子形成用組成物に変更した以外は、実施例40と同様な操作を行い、光電変換素子(E-2~E-41)及び比較用光電変換素子(ER-1)を製造した。光電変換素子形成用組成物(PR-2)を用いて、同様に比較用光電変換素子(ER-2)の製造を試みたが、均一な光電変換層を得ることができず、素子を作成できなかった。
【0094】
<フォトダイオード評価1>
製造した光電変換素子をグローブボックスから取り出し、暗所と近赤外線光照射した際の電圧-電流曲線を、-2V~2Vの範囲で測定した。光源として850nmに発光波長を示すLED(発光ダイオード)を用い、5mW/cm2の光量に調整して測定した。電圧-1Vにおける電流値を読み取り、初期の明暗電流比を求めた。また、80℃デシケーター中で素子を60時間保存し、同様に経時後の明暗電流比を求めた。明暗電流比は以下の基準で判定した。判定結果を表3に示す。明暗電流比は、高いほど優れているといえる。判定基準が、初期で3以上、経時後に2以上が実用範囲である。

(判定基準)
5: 明暗電流比 200以上
4: 100以上200未満
3: 50以上100未満
2: 20以上 50未満
1: 20未満
【0095】
<フォトダイオード評価2>
製造した光電変換素子をグローブボックスから取り出し、100℃のホットプレート上で20分間熱処理を行った。熱処理後の素子について、光電変換効率(初期光電変換効率)を測定した。また、80℃の環境で100時間連続駆動させた後の光電変換効率(経時後光電変換効率)を測定した。結果を表3に示す。
【0096】
光電変換効率は、光源として850nmに発光波長を示すLEDを用い、5mW/cm2の光量に調整して測定した。光電変換セルの試験サンプルに露光部分が0.04cm2になるようにマスクを介して、光照射をしながら、KEITHLEYMODEL 2400ソースメーターを使用してI-Vカーブ特性を測定した。変換効率ηは、設定した光源照度(W)及びI-Vカーブ特性測定から得られたVoc(開放電圧値)、Isc(短絡電流値)及びff(フィルファクター値)を用いて下記の式により算出した。光電変換効率は、高いほど優れているといえる。判定基準が、初期で3以上、経時後で2以上が実用範囲である。
【0097】
【数1】
【0098】
(判定基準)
5: 光電変換効率 0.1%以上
4: 0.05%以上 0.1%未満
3: 0.03%以上 0.05%未満
2: 0.01%以上 0.03%未満
1: 0.01%未満
【0099】
【表3】
【0100】
表3から明らかなように、本発明の光電変換素子は、フォトダイオードとして、光照射有無での電流比が高く、経時での劣化の少ないことが示された。太陽電池としては、変換効率が高く、寿命も長いことが示された。
【0101】
<イメージセンサーの作製と評価>
表3に示した光電変換素子(E-2)を16個作製した。次いで、平面上に、4個×4個光電変換素子(E-2)を配置してイメージセンサーを作製した。作製したイメージセンサーを、暗室に設置されたスクリーンに光源として850nmに発光波長を示すLEDを用いて投影された画像に向けて設置した。順次、電極間に-1Vの電圧を印加して、暗時と画像を投影時の電流比を求めた。光電変換素子毎の求めた電流比は、投影画像の明暗を再現しており、イメージセンサーをして動作することを確認した。
【0102】
<太陽電池評価>
表3に示した光電変換素子(E-2)を作成した。ソーラーシミュレーターを光源(ウシオ電機株式会社製、USS―180S)とし、太陽光(AM1.5)相当の光強度(100 mW/cm2)に調整した。光電変換セルの試験サンプルに露光部分が0.04cm2になるようにマスクを介して、光照射をしながら、KEITHLEYMODEL 2400ソースメーターを使用してI-Vカーブ特性を測定した。フォトダイオード評価2と同様に光電変換効率を算出して、判定基準により判定を行った。判定結果は3であり、太陽電池として動作することを確認した。また、可視光に吸収する光電変換素子をタンデム構造にすることにより、より高い光電変換効率が期待される。