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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】車内用発光装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/14 20170101AFI20250304BHJP
   B60Q 3/54 20170101ALI20250304BHJP
   B60Q 3/78 20170101ALI20250304BHJP
   B60Q 3/64 20170101ALI20250304BHJP
   F21V 11/12 20060101ALI20250304BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20250304BHJP
   F21V 17/00 20060101ALN20250304BHJP
【FI】
B60Q3/14
B60Q3/54
B60Q3/78
B60Q3/64
F21V11/12
F21V8/00 310
F21V17/00 400
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021127850
(22)【出願日】2021-08-03
(65)【公開番号】P2023022779
(43)【公開日】2023-02-15
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 佳苗
(72)【発明者】
【氏名】柴川 展子
(72)【発明者】
【氏名】矢橋 和起
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 康継
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0240988(US,A1)
【文献】特開2013-100100(JP,A)
【文献】特開2014-094679(JP,A)
【文献】特開2016-048875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/14
B60Q 3/54
B60Q 3/78
B60Q 3/64
F21V 11/12
F21V 8/00
F21V 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパパネルと、前記アッパパネルの下方に配置されたロアパネルと、を有する車両内装品の表面で発光する車内用発光装置であって、
前記アッパパネルは、パネル下部の車室内側表面において斜め下方に向いた第一傾斜面を有し、
前記ロアパネルは、パネル上部の車室内側表面において斜め上方に向いた第二傾斜面を有し、
前記車両内装品は、
前記アッパパネルのパネル下部と前記ロアパネルのパネル上部との間の車室内側に形成された表面側空間と、
前記アッパパネルのパネル下部の車室外側端と前記ロアパネルのパネル上部の車室外側端との間に形成され又は前記ロアパネルのパネル上部に貫通して形成されたスリットと、
を有し、
前記アッパパネルのパネル下部の車室外側端及び前記ロアパネルのパネル上部の車室外側端の双方よりも車室外側に配置され、前記スリットに沿って棒状に延在し、光源から延在方向の端部に進入した光を反射して前記スリットを介して車室内方の斜め上方へ出射する導光体である発光部と、
前記導光体を覆うように設けられたアウタレンズと、
前記導光体を保持し、前記アウタレンズが取り付けられるリテーナと
を備え
前記アウタレンズは、前記スリットを介して車室内側に露出する露出面と、前記露出面に背向する内面に設けられたローレット部と、を有し、
前記導光体の反射した光は、前記ローレット部から前記アウタレンズに進入して前記露出面から前記スリットを介して車室内方の斜め上方へ出射され、
前記リテーナと前記アウタレンズとは、前記導光体を収容する収容空間を形成し、
前記導光体は、前記収容空間内において前記露出面よりも車室外側に位置し、前記アウタレンズから離れて前記リテーナに保持されている、車内用発光装置。
【請求項2】
前記導光体は、前記延在方向に並んで設けられた複数のプリズムを有し、
各前記プリズムはそれぞれ、前記光源からの光を反射し又は屈折させる傾斜面部を有し、
前記複数の前記プリズムは、前記光源から前記プリズムまでの距離が長いほど前記傾斜面部における前記延在方向に対する垂直な方向のプリズム高さが大きくなるように形成されている、請求項に記載された車内用発光装置。
【請求項3】
前記導光体は、前記延在方向に並んで設けられた複数のプリズムを有し、
各前記プリズムはそれぞれ、前記光源からの光を反射し又は屈折させる傾斜面部を有し、
前記複数の前記プリズムは、前記プリズムと運転席との相対位置関係に合わせて前記傾斜面部が前記延在方向に対してなす角度が変化するように形成されている、請求項に記載された車内用発光装置。
【請求項4】
前記導光体は、前記延在方向に並んで設けられた複数のプリズムを有し、
各前記プリズムはそれぞれ、
前記延在方向の運転席側に配置され、前記光源からの光を反射し又は屈折させる第一傾斜面部と、
前記延在方向の助手席側に配置され、前記光源からの光を反射し又は屈折させる第二傾斜面部と、
を有し、
各前記プリズムはそれぞれ、前記第一傾斜面部が前記延在方向の運転席側から助手席側にかけた方向に対してなす第一角度が、前記第二傾斜面部が前記延在方向の助手席側から運転席側にかけた方向に対してなす第二角度以下であるように形成されている、請求項に記載された車内用発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内用発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内に向けて光を出射する車内用発光装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の車内用発光装置は、車両内装品であるインストルメントパネルのアッパパネルとロアパネルとの境界部分から光が出射されるように構成されている。アッパパネルは、パネル下部において車室内方の斜め下方に向いて傾斜する傾斜面を有している。ロアパネルは、パネル上部において車室内方の斜め上方に向いて傾斜する傾斜面を有している。アッパパネルのパネル下部とロアパネルのパネル上部との間には、車室内側に形成されてインストルメントパネルを上下に区分けする表面側空間が形成されている。表面側空間は、車幅方向に柱状に延びる凹溝空間であり、車室内空間に連通している。
【0003】
上記の車内用発光装置は、車幅方向に延びる導光体である発光部と、発光部の車幅方向端面よりも側方に配置された光源と、を備えている。発光部は、光源から発光部の内部に入射した光を表面から発する。インストルメントパネルのアッパパネルのパネル下部におけるロアパネルとの境界付近には、溝部が形成されている。発光部は、アッパパネルの上記溝部に配置されており、アッパパネルのパネル下部からロアパネルのパネル上部の表面に向けて光を発する。そして、ロアパネルのパネル上部の表面に照射された光は、そのパネル上部の表面で反射して車室内方へ出射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-184668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インストルメントパネルのアッパパネルに配置された発光部から発せられた光がロアパネルの表面に反射して車室内方へ出射されるものとすると、光が一旦下方へ出た後に斜め上方へ進むことが必要であるので、発光部からの光を大きく反射させる構造が必要となる。このため、発光部の構造や位置,発光方向,ロアパネルの傾斜角などを決めるうえで制約が大きくなる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、発光部からの光を大きく屈曲させることなく車室内方へ出射させることが可能な車内用発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、アッパパネルと、前記アッパパネルの下方に配置されたロアパネルと、を有する車両内装品の表面で発光する車内用発光装置であって、前記アッパパネルは、パネル下部の車室内側表面において斜め下方に向いた第一傾斜面を有し、前記ロアパネルは、パネル上部の車室内側表面において斜め上方に向いた第二傾斜面を有し、前記車両内装品は、前記アッパパネルのパネル下部と前記ロアパネルのパネル上部との間の車室内側に形成された表面側空間と、前記アッパパネルのパネル下部の車室外側端と前記ロアパネルのパネル上部の車室外側端との間に形成され又は前記ロアパネルのパネル上部に貫通して形成されたスリットと、を有し、前記アッパパネルのパネル下部の車室外側端及び前記ロアパネルのパネル上部の車室外側端のうち少なくとも何れか一方よりも車室外側に配置され、前記スリットを介して車室内方の斜め上方へ出射する光を発する発光部を備える、車内用発光装置である。
【0008】
この構成によれば、発光部が発した光が、車室外側から車室内側にかけてスリットに向けて斜め上方へ進行してスリットを介して車室内方へ出射される。このため、発光部の発する光を車両内装品のアッパパネルとロアパネルとの境界付近から車室内方へ出射するうえで、発光部の発する光をアッパパネルやロアパネルなどの表面で反射させる必要はなく、発光部からの光を車室内に到達させるまでに大きく屈曲させることは不要である。従って、発光部からの光を大きく屈曲させることなく車室内方へ出射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る車内用発光装置が取り付けられる車両内装品の斜視図である。
図2】実施形態の車内用発光装置の斜視図である。
図3】実施形態の車内用発光装置の分解斜視図である。
図4】実施形態の車両内装品及び車内用発光装置の断面図である。
図5】実施形態の車内用発光装置が有するプリズムが導光体の延在方向に複数並んだ状態を表す斜視図である。
図6】実施形態の車内用発光装置が有するプリズムごとの傾斜面のなす角度α,βを表した図である。
図7】実施形態の車内用発光装置が有するプリズムごとのプリズム高さhを表した図である。
図8】実施形態の車内用発光装置が有するプリズムごとのプリズム幅wを表した図である。
図9】実施形態の車内用発光装置が有するプリズム間ごとのピッチpを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る車内用発光装置の具体的な実施形態について説明する。
【0011】
1.車内用発光装置の構成
一実施形態の車内用発光装置1は、車両に搭載されており、車室内に向けて光を出射する装置である。車内用発光装置1は、主に車両運転者への視覚を通じた注意喚起などのお知らせ目的のために発光する。車内用発光装置1は、図1に示す如く、例えば運転席や助手席の車両前方に設けられたインストルメントパネル10の表面で発光する。
【0012】
インストルメントパネル10は、車両計器類やエアコン通気口などが設けられた車両内装品である。インストルメントパネル10は、車幅方向に延びており、車幅方向一端側から車幅方向他端側にかけて直線状に又は車両前後方向に湾曲した曲線状に形成されている。インストルメントパネル10は、上下に区分けされて形成されている。尚、インストルメントパネル10は、運転席側と助手席側とで分離して別々に設けられていてよく、また、それぞれ独自の形状を有していてよく、この場合は、各インストルメントパネル10それぞれが、上下に区分けされる。
【0013】
インストルメントパネル10は、アッパパネル20と、ロアパネル30と、を有している。アッパパネル20は、インストルメントパネル10の上部を構成している。ロアパネル30は、インストルメントパネル10の下部を構成している。ロアパネル30は、アッパパネル20の下方に配置されている。車内用発光装置1は、アッパパネル20とロアパネル30との境界部分から光が出射されるように構成されている。
【0014】
インストルメントパネル10は、インストルメントパネル10を上下に区分けする表面側空間11を有している。表面側空間11は、アッパパネル20とロアパネル30との境界部分すなわちアッパパネル20のパネル下部20Lとロアパネル30のパネル上部30Hとの間において車室内側(すなわち車両後方側)に形成されている。表面側空間11は、車幅方向に柱状に延びており、車室内の空間と一体化されている。
【0015】
アッパパネル20は、第一傾斜面21を有している。第一傾斜面21は、アッパパネル20のパネル下部20Lの車室内側表面に設けられている。第一傾斜面21は、パネル下部20Lの車室内側表面において斜め下方に向いている。パネル下部20Lは、第一傾斜面21を含めて、車両側方から見て平面状に傾斜して形成され又は下に凸に湾曲して形成されている。尚、パネル下部20Lの車室外側端部は、車室内側から車室外側にかけて下方へ傾斜し又は略水平に形成されていてよい。
【0016】
ロアパネル30は、第二傾斜面31を有している。第二傾斜面31は、ロアパネル30のパネル上部30Hの車室内側表面に設けられている。第二傾斜面31は、パネル上部30Hの車室内側表面において斜め上方に向いている。パネル上部30Hは、第二傾斜面31を含めて、車両側方から見て平面状に傾斜して形成され又は上に凸に湾曲して形成されている。尚、パネル上部30Hの車室外側端部は、車室内側から車室外側にかけて上方へ傾斜し又は略水平に形成されていてよい。
【0017】
インストルメントパネル10は、スリット12を有している。スリット12は、アッパパネル20とロアパネル30との境界付近に開いた孔である。スリット12は、アッパパネル20のパネル下部20Lの車室外側端Leとロアパネル30のパネル上部30Hの車室外側端Heとの間に形成されている。アッパパネル20のパネル下部20Lの車室外側端Leは、図1及び図4に示す如く、ロアパネル30のパネル上部30Hの車室外側端Heに比べて車室外側(すなわち車両前方側)に位置していると共に、その車室外側端Heと同じ高さに又はその車室外側端Heに比べて上方に位置している。
【0018】
スリット12は、表面側空間11の最奥部(すなわち車室外側端部)に設けられている。スリット12は、インストルメントパネル10の裏側から表側(すなわち表面側空間11)にかけて上方に又は車室内方の斜め上方に向いている。スリット12は、車幅方向に帯状に延在している。スリット12は、例えば2mm~3mmの幅を有している。スリット12は、車室内側から見て(具体的には、車両運転者が想定範囲の目の高さで見たときに)直接に視認可能な位置に設けられている。
【0019】
車内用発光装置1は、図1図2、及び図3に示す如く、発光部40と、光源50と、アウタレンズ60と、リテーナ70と、を備えている。
【0020】
発光部40は、光を発する部位である。発光部40は、車幅方向に棒状に延在する導光体である。発光部40は、光源50からの光を反射して光を発する。以下、発光部40を導光体40と称す。導光体40は、断面略円形に形成されている。尚、導光体40は、インストルメントパネル10の表面形状に合わせて車幅方向(すなわち、導光体40の延在方向)の端部間において車両前後方向へ湾曲していてよい。
【0021】
導光体40は、光源50からの光が進入する入光面41と、入光面41に進入した光を出光する出光面42と、を有している。入光面41は、導光体40の延在方向端面に形成されている。出光面42は、導光体40の周面に形成されている。尚、出光面42は、導光体40の周面の一部に限定されていてよい。導光体40は、入光面41に光源50からの光が進入すると共に、その進入した光を導光体40の延在方向に沿って進行させつつその進行した光を出光面42側へ反射してその出光面42から放出する。
【0022】
光源50は、可視光を発するLEDなどの発光体である。光源50は、ケース内に収容されている。尚、光源50は、例えば様々な色の光を出力することができるものであってよい。光源50は、導光体40の延在方向両端それぞれに接続されている。各光源50は、制御装置(図示せず)に電気的に接続されており、制御装置により発光制御される。導光体40は、延在方向両端の入光面41それぞれに光源50からの光が進入すると共に、それらの進入した光を出光面42側へ反射する。光源50から導光体40に進入した光は、導光体40の出光面42から導光体40の延在方向に亘って略均一に放出される。
【0023】
導光体40は、図5に示す如く、プリズム43を有している。プリズム43は、光源50からの光を反射し又は屈折させるための鏡面体である。プリズム43は、多角柱状に形成されている。プリズム43は、導光体40の内部において導光体40の軸心を挟んで出光面42とは点対称位置にある箇所に配置されている。導光体40の内面においてプリズム43が配置される箇所は、平面状に形成されている。以下、プリズム43は、三角柱状に形成されているものとする。
【0024】
プリズム43は、底面部43aと、第一傾斜面部43bと、第二傾斜面部43cと、を有している。底面部43a、第一傾斜面部43b、及び第二傾斜面部43cは、三角柱の三つの面をなしている。底面部43aは、延在方向に沿って広がる面部である。第一傾斜面部43b及び第二傾斜面部43cはそれぞれ、延在方向に対して傾斜して広がる面部である。第一傾斜面部43b及び第二傾斜面部43cはそれぞれ、光源50からの光を反射し又は屈折させる。
【0025】
底面部43aは、導光体40の内部において導光体40の軸心を挟んで出光面42とは点対称位置にある箇所の内面に接している。第一傾斜面部43b及び第二傾斜面部43cはそれぞれ、底面部43aから導光体40の内部における光の進行を妨げるように突出している。第一傾斜面部43bと第二傾斜面部43cとは、突出した端同士が接することによりで互いに線接触している。第一傾斜面部43bは、延在方向の運転席側に配置されている。第二傾斜面部43cは、延在方向の助手席側に配置されている。
【0026】
底面部43aと第一傾斜面部43bとは、角度αをなしている。すなわち、角度αは、第一傾斜面部43bが導光体40の延在方向の運転席側から助手席側にかけた方向に対してなす角度である。また、底面部43aと第二傾斜面部43cとは、角度βをなしている。角度βは、第二傾斜面部43cが導光体40の延在方向の助手席側から運転席側にかけた方向に対してなす角度である。角度α,βはそれぞれ、光の進行方向を規定するように設定されている。角度αは、角度β以下であるように設定されている。角度α,βはそれぞれ、例えば70°以下(好ましくは、60°以下)に設定されている。
【0027】
プリズム43は、底面部43aから第一傾斜面部43bと第二傾斜面部43cとが接する突出端までの長さとしてのプリズム高さhを有している。プリズム高さhは、第一傾斜面部43b又は第二傾斜面部43cにおける延在方向に対する垂直な方向の高さである。プリズム43は、三角柱状の柱長さとしてのプリズム幅wを有している。プリズム高さh及びプリズム幅wはそれぞれ、車内用発光装置1における車幅方向の明るさの均一性或いはその明るさのなだらかな強弱変化が確保されるように設定されている。プリズム高さhは、例えば、0.8mm~1.5mmに設定されている。プリズム幅wは、例えば、0.5mm~2mmに設定されている。
【0028】
プリズム43は、導光体40の延在方向に並んで複数(例えば、300個~400個)設けられている。プリズム43は、延在方向に所定ピッチpで配置されている。所定ピッチpは、車内用発光装置1における車幅方向の明るさの均一性或いはその明るさのなだらかな強弱変化が確保されるように設定されている。所定ピッチpは、例えば1.5mm~3.5mmに設定されている。尚、車両運転者から見て車内用発光装置1の発光を導光体40の延在方向に亘って略均一なものとするためには、所定ピッチpは、図9に示す如く、プリズム43の延在方向位置(具体的には、プリズム43と車両運転席との相対位置関係)に合わせて変化されるのが好適である。例えば、所定ピッチpは、助手席側に比べて車両運転席側が大きくなるように二段階に設定されていてよい。
【0029】
また、車両運転者から見て車内用発光装置1の発光を導光体40の延在方向に亘って略均一なものとするためには、以下に示す条件が設定されるのが好適である。具体的には、上記の角度αは、図6に示す如く、プリズム43の延在方向位置(具体的には、プリズム43と車両運転席との相対位置関係)に合わせて変化されるのがよい。例えば、角度αは、車両運転席側に比べて助手席側が角度大になるように二段階に設定されていてよい。尚、角度βは、プリズム43の延在方向位置に関係なく、角度α以上の一定値であってよい。
【0030】
また、プリズム高さh及びプリズム幅wはそれぞれ、図7及び図8に示す如く、プリズム43における光源50からの距離に応じて変化されるのがよい。例えば、プリズム高さhは、光源50からの距離が長いものほど大きくなるように設定されていてよい。また、プリズム幅wは、光源50からの距離が長いものほど大きくなるように設定されていてよい。尚、光源50からの距離は、二つの光源50のうち近い側の光源50からの距離である。
【0031】
アウタレンズ60は、導光体40から発せられる光を車両外方へ出射するレンズである。アウタレンズ60は、導光体40の延在方向に延在している。アウタレンズ60は、導光体40を覆うように設けられている。具体的には、アウタレンズ60は、導光体40を収容する収容空間80を形成する収容部61を有している。収容部61は、断面U字状或いは断面半円状に形成されている。アウタレンズ60は、収容部61の開口が下方に向くように導光体40を上方及び車両前後方向から覆っている。尚、アウタレンズ60は、導光体40の湾曲に合わせて導光体40の延在方向において車両前後方向へ湾曲していてよい。
【0032】
アウタレンズ60は、露出面62を有している。露出面62は、スリット12を介して車室内側に露出する意匠面部である。露出面62は、収容部61の車室内側の上側角部付近に設けられており、スリット12に沿って延在している。露出面62は、導光体40から発せられる光を透過可能な透過部に形成されている。露出面62は、導光体40からの光を車室内方へ出射する。
【0033】
また、アウタレンズ60は、ローレット部63を有している。ローレット部63は、アウタレンズ60の延在方向に沿って延びる多数の凹凸からなる部位である。ローレット部63は、収容部61における露出面62に背向する内面に設けられている。ローレット部63は、導光体40の発した光がアウタレンズ60に進入する際の光の拡散を抑えて、車室内方へ光を出射し易くする機能を有している。
【0034】
尚、アウタレンズ60の内面に設けられたローレット部63の凹凸が輝線となって車両乗員に浮き出て見えるのを防ぐため、露出面62にシボを形成し、或いは、アウタレンズ60を拡散材含有の透明樹脂材で形成することとしてもよい。
【0035】
また、アウタレンズ60における露出面62以外の部位は、光が外方へ漏れるのを防止するための非透過部を有していてもよい。この非透過部は、例えば黒色に色付けされている。この非透過部は、例えば、露出面62と共に二色成形され、或いは、露出面62と非透過部とを一体に形成した透明体の一部の表面又は裏面に塗装が施されることにより形成される。
【0036】
リテーナ70は、導光体40を保持する板状の保持体である。リテーナ70は、導光体40の延在方向に延在している。リテーナ70は、導光体40の延在方向両端に接続する光源50を保持することも可能である。アウタレンズ60は、リテーナ70に取り付けられる。リテーナ70へのアウタレンズ60の取り付けは、爪嵌合などにより行われる。リテーナ70は、アウタレンズ60が取り付けられた状態で、アウタレンズ60の収容部61の開口を閉じて収容空間80を形成する。リテーナ70は、取付部71で車体側にスクリュ締めなどで取り付け固定される。
【0037】
リテーナ70は、導光体保持部72を有している。導光体保持部72は、導光体40を保持する部位である。導光体保持部72は、導光体40の延在方向に延在しており、断面U字状或いは断面半円状に形成されている。リテーナ70は、導光体40の光をより多く出光面42を介して車両乗員に向けて導くため、導光体保持部72を含めて全体的に白色に形成されている。
【0038】
導光体保持部72は、傾斜面72aを有している。傾斜面72aは、導光体保持部72における導光体40の軸心を挟んで出光面42とは点対称位置にある面が接する内面に設けられている。具体的には、傾斜面72aは、導光体40のプリズム43の底面部43aが接する平面部である。導光体保持部72(特に傾斜面72a)は、導光体40が出光面42とは点対称位置にある面から発した光をその出光面42へ反射するように構成されている。
【0039】
導光体保持部72の開口は、開口奥側から開口手前側にかけて開口幅が狭まるように形成されている。これは、導光体40を導光体保持部72に安定的に保持し、導光体保持部72に導光体40が保持された状態で断面略円形の導光体40が導光体保持部72内で回転するのを抑えるためである。
【0040】
アウタレンズ60の露出面62と、リテーナ70の傾斜面72a(すなわち、導光体40が光を反射し又は屈折させるためのプリズム43の底面部43a)と、は双方の面が例えば0°~40°の角度をなすように形成されている。
【0041】
リテーナ70は、レンズ位置決め部73を有している。レンズ位置決め部73は、アウタレンズ60を位置決めする壁部位である。レンズ位置決め部73は、アウタレンズ60の収容部61における露出面62とは反対側(遠い側)に位置する側壁の内面に接することによりアウタレンズ60を位置決めする。尚、レンズ位置決め部73は、導光体保持部72の一部を兼用していてよい。
【0042】
リテーナ70にアウタレンズ60が取りけられた状態では、リテーナ70とアウタレンズ60とは、上記の収容空間80を形成する。導光体40は、リテーナ70に保持された状態で収容空間80に収容される。導光体40は、収容空間80内において車室外側である車両前側に位置しており、アウタレンズ60の露出面62よりも車両前側に位置している。
【0043】
導光体40は、ロアパネル30のパネル上部30Hの車室外側端Heよりも車室外側(車両前方側)に配置されていると共に、アッパパネル20のパネル下部20Lの車室外側端Leよりも車室外側(車両前方側)に配置されている。また、導光体40は、アッパパネル20とロアパネル30との境界付近に開いたスリット12よりも下方に配置されている。
【0044】
2.車内用発光装置の組立及び動作
車内用発光装置1は、以下の手順に従って組み立てられる。まず、リテーナ70に導光体40が取り付けられて保持され、その導光体40の延在方向両端に光源50が接続されると共に、そのリテーナ70に導光体40を覆うようにアウタレンズ60が取り付けられる。かかる組み付けが行われると、導光体40が、リテーナ70とアウタレンズ60とで形成される収容空間80に収容される。そして、導光体40は、収容空間80内において車両外側に位置する。
【0045】
次に、上記の如くリテーナ70と導光体40と光源50とアウタレンズ60との組み付けが行われた後、車内用発光装置1は、インストルメントパネル10の裏側(すなわち、車両前側)に取り付けられる。インストルメントパネル10への車内用発光装置1の取り付けは、アッパパネル20とロアパネル30との境界付近に開いたスリット12を介してアウタレンズ60の露出面62が車室内側に露出するように行われる。
【0046】
インストルメントパネル10への車内用発光装置1の取り付けが行われると、導光体40は、ロアパネル30のパネル上部30Hの車室外側端He及びアッパパネル20のパネル下部20Lの車室外側端Leの双方よりも車室外側に配置される。また、導光体40は、ロアパネル30の車室外側端Heとアッパパネル20の車室外側端Leとの間に形成されたスリット12よりも下方に配置される。
【0047】
上記の車内用発光装置1は、所定条件の成立に従って光源50から可視光を発する。尚、所定条件は、車両運転者に注意喚起や警告を行う条件であって、例えば、自車両の前方に存在する前車が停車状態から発進したことを自車両の運転者に知らせることや、自車両と自車両の前方に存在する前車との車間距離が小さくなっていることを自車両の運転者に知らせることなどである。
【0048】
光源50が光を発すると、この光は、導光体40の入光面41に進入して導光体40内に延在方向に進行する。この導光体40内を進行した光は、プリズム43で反射され又は屈折され、その後、図4に示す如く、導光体40内において車室外側から車室内側にかけて斜め上方へ進行して出光面42から放出される。導光体40の出光面42から放出された光は、まず、収容空間80内において車室外側から車室内側にかけて斜め上方へ進行し、その後、アウタレンズ60に裏面側から進入して露出面62からスリット12を介して車室内方(具体的には、車室外側から車室内側にかけて斜め上方)へ出射される。
【0049】
上記の如く光がスリット12を介して出射された状態では、車両運転者は、インストルメントパネル10のアッパパネル20とロアパネル30との境界付近のスリット12から放出される光を視認することができる。
【0050】
3.車内用発光装置の効果
上記の車内用発光装置1においては、導光体40が発した光が、収容空間80内において車室外側から車室内側にかけて斜め上方へ進行すると共に、その後、アウタレンズ60の露出面62からスリット12を介して車室外側から車室内側にかけて斜め上方へ進行して車室内方へ出射される。
【0051】
上記の構成によれば、導光体40の発する光をインストルメントパネル10のアッパパネル20とロアパネル30との境界付近から車室内方へ出射するうえで、導光体40の発する光をアッパパネル20やロアパネル30などの表面で反射させる必要はなく、導光体40からの光を車室内に到達させるまでに大きく屈曲させることは不要である。従って、導光体40からの光を大きく屈曲させることなく車室内方へ出射させることができる。このため、導光体40の構造や位置,発光方向,アッパパネル20やロアパネル30の傾斜角などを決めるうえでの制約を小さくすることができる。
【0052】
また、アウタレンズ60は、スリット12を介して車室内側に露出する露出面62を有している。スリット12は、アッパパネル20のパネル下部20Lとロアパネル30のパネル上部30Hとの間において車室内側に形成された表面側空間11の最奥部に設けられ、アッパパネル20のパネル下部20Lの車室外側端Leとロアパネル30のパネル上部30Hの車室外側端Heとの間に形成されている。
【0053】
従って、アウタレンズ60の露出面62は、表面側空間11の最奥部に配置されて車室内側に露出することとなる。このため、車内用発光装置1が発光していないときにアウタレンズ60の露出面62を車室内側から目立たなくすることができるので、インストルメントパネル10の意匠性が損なわれるのを防止することができる。
【0054】
一方、車内用発光装置1が発光したときは、アッパパネル20とロアパネル30との境界付近に表れる発光面を帯状又は線状に形成することができる。特に、車室内が明るい昼間などでも、表面側空間11の最奥部はアッパパネル20及びロアパネル30に囲まれるので、露出面62の周囲に位置するアッパパネル20及びロアパネル30の表面は暗くなる。このため、アッパパネル20とロアパネル30との境界付近の露出面62における明度を上げることができ、これにより、車両運転者の視認性を向上させることができる。
【0055】
また、リテーナ70とアウタレンズ60とは、導光体40を収容する収容空間80を形成する。導光体40は、収容空間80内において車室外側に位置する。一方、アウタレンズ60の露出面62は、収容部61の車室内側の上側角部付近に設けられている。この構造によれば、導光体40が収容空間80内において車室内側に位置する構造に比べて、導光体40とアウタレンズ60の露出面62との距離を大きく確保することができるので、アウタレンズ60での光の屈折を小さく抑えることができる。
【0056】
また、アウタレンズ60は、収容部61における露出面62とは反対側の側壁がレンズ位置決め部73に接することによりリテーナ70に位置決めされる。このため、リテーナ70とアウタレンズ60とを簡易に精度良く組み付けすることができ、その組み付け性を向上させることができる。
【0057】
また、導光体40は、延在方向に並んだ複数のプリズム43を有している。各プリズム43は、光源50からの光を反射し又は屈折させる傾斜面部43b,43cを有している。各プリズム43のプリズム高さhは、プリズム43における光源50からの距離に応じて変化され、光源50から当該プリズム43までの距離が長いほど大きい。かかる構成においては、光源50から遠いプリズム43ほどプリズム高さhが大きくなることで、導光体40における延在方向の光源50から遠い箇所で光を出光面42へ反射し易くすることができる。
【0058】
従って、導光体40の延在方向において光源50から遠い箇所ほど、到達する光量が少なくなっても、出光面42へ光が反射され易くなるので、導光体40ひいてはアウタレンズ60の露出面62から出射する光を延在方向に亘って略均一なものとすることができる。
【0059】
また、各プリズム43のプリズム幅wは、プリズム43における光源50からの距離に応じて変化され、光源50から当該プリズム43までの距離が長いほど大きい。かかる構成においては、光源50から遠いプリズム43ほどプリズム幅wが大きくなることで、導光体40における延在方向の光源50から遠い箇所で光を出光面42へ反射し易くすることができる。従って、導光体40の延在方向において光源50から遠い箇所ほど、到達する光量が少なくなっても、出光面42へ光が反射され易くなるので、導光体40ひいてはアウタレンズ60の露出面62から出射する光を延在方向に亘って略均一なものとすることができる。
【0060】
また、各プリズム43の第一傾斜面部43bの角度αは、第二傾斜面部43cの角度β以下である。第一傾斜面部43bは、導光体40の延在方向の運転席側に配置されており、第二傾斜面部43cは、導光体40の延在方向の助手席側に配置されている。かかる構成によれば、第一傾斜面部43bが光源50からの光を反射する方向を車室内方とすることができると共に、第二傾斜面部43cが光源50からの光を反射する方向を車室内方とすることができる。このため、導光体40で光を効率的に車室内方へ導くことができる。
【0061】
また、各プリズム43の第一傾斜面部43bの角度αは、プリズム43の延在方向位置に応じて変化され、運転席側が小さく助手席側が大きくなるように設定されている。かかる構成によれば、光源50から発せられた光をプリズム43で反射させるうえで、導光体40の延在方向の助手席側の箇所でも光を運転席側へ導き易くして、運転者にとって導光体40の延在方向全域に亘って均一な光を視認することができる。このため、車両運転者における光の視認性を向上させることができ、光の均一性により車両運転者に煩わしさを与えることなく車両運転者にさり気なく注意喚起などのお知らせを通知することができる。
【0062】
更に、プリズム43は、延在方向に所定ピッチpで配置されている。この所定ピッチpは、プリズム43の延在方向位置に合わせて変化され、運転席側が大きく助手席側が小さくなるように設定されている。かかる構成によれば、光源50から発せられた光をプリズム43で反射させるうえで、導光体40の延在方向の助手席側の箇所で反射させる光の量を増やすことができ、運転者に到達させる光を導光体40の延在方向全域に亘って均一なものとすることができる。このため、車両運転者における光の視認性を向上させることができ、光の均一性により車両運転者に煩わしさを与えることなく車両運転者にさり気なく注意喚起などのお知らせを通知することができる。
【0063】
尚、上記の実施形態においては、インストルメントパネル10が特許請求の範囲に記載した「車両内装品」に、第一傾斜面部43bが特許請求の範囲に記載した「傾斜面部」に、角度αが特許請求の範囲に記載した「第一角度」に、角度βが特許請求の範囲に記載した「第二角度」に、それぞれ相当している。
【0064】
ところで、上記の実施形態においては、車内用発光装置1が発光する車両内装品として、インストルメントパネル10が適用されている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、車両内装品であれば、インストルメントパネル以外の、ドアパネルやダッシュボード,リアパネルなどに適用することとしてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態においては、光源50が導光体40の延在方向両端それぞれに対応して設けられている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、光源50が導光体40の延在方向の何れか一方に設けられる構成に適用することとしてもよい。
【0066】
また、上記の実施形態においては、導光体40が、アッパパネル20のパネル下部20Lの車室外側端Le及びロアパネル30のパネル上部30Hの車室外側端Heの双方よりも車室外側に配置される。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、導光体40が、少なくともロアパネル30のパネル上部30Hの車室外側端Heよりも車室外側に配置されるものであってよい。
【0067】
更に、上記の実施形態においては、スリット12が、アッパパネル20のパネル下部20Lの車室外側端Leとロアパネル30のパネル上部30Hの車室外側端Heとの間に形成され、導光体40が、アッパパネル20のパネル下部20Lの車室外側端Le及びロアパネル30のパネル上部30Hの車室外側端Heの双方よりも車室外側に配置される。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、スリット12がロアパネル30のパネル上部30H(特に、そのパネル上部30Hの車室外側端He側の部位)に貫通して形成され、導光体40が、少なくともアッパパネル20のパネル下部20Lの車室外側端Leよりも車室外側に配置されるものであってよい。
【0068】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1:車内用発光装置、10:インストルメントパネル、11:表面側空間、12:スリット、20:アッパパネル、20L:パネル下部、21:第一傾斜面、30:ロアパネル、30H:パネル上部、31:第二傾斜面、40:発光部(導光体)、41:入光面、42:出光面、43:プリズム、43a:底面部、43b:第一傾斜面部、43c:第二傾斜面部、50:光源、60:アウタレンズ、62:露出面、70:リテーナ、80:収容空間、He:(ロアパネルの)車室外側端、Le:(アッパパネルの)車室外側端。
図1
図2
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図4
図5
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図7
図8
図9