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特許76432543次元形状の位置合わせ方法、および、3次元形状データ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】3次元形状の位置合わせ方法、および、3次元形状データ処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/00 20060101AFI20250304BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
G01B15/00 H
G01B21/00 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021133598
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023028110
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】大西 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤本 弘之
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-264047(JP,A)
【文献】特開2019-139347(JP,A)
【文献】特開平3-115805(JP,A)
【文献】特開2020-8360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/00
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの位置決め部材を被写体とともにX線CT撮影することにより取得された、前記被写体および前記位置決め部材の3次元のCTデータを取得するステップと、
前記被写体と、前記位置決め部材の各々との相対位置を測定するステップと、
取得した前記CTデータの前記位置決め部材の位置情報と、測定した前記相対位置の情報に基づく前記被写体の3次元の設計データにおける前記位置決め部材の位置情報とを用いて、前記CTデータにおける前記被写体と、前記設計データにおける前記被写体との位置合わせを行うステップと、を備える、3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項2】
前記位置決め部材は、等方的な形状を有しており、
前記CTデータにおける前記位置決め部材の前記等方的な形状に基づいて、前記CTデータにおける前記位置決め部材の位置情報である第1位置情報を取得するステップをさらに備える、請求項1に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項3】
前記位置決め部材は、前記等方的な形状として、球状形状を有しており、
前記第1位置情報を取得するステップにおいて、前記CTデータにおける球状形状の前記位置決め部材の表面の位置情報に基づいて、前記第1位置情報を取得する、請求項2に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項4】
前記相対位置の情報は、前記被写体に設定された基準位置の位置情報と、前記位置決め部材の各々の位置情報とを含み、
前記基準位置の位置情報の実測値と前記設計データにおける前記基準位置の位置情報とに基づいて、前記設計データにおける前記位置決め部材の位置情報である第2位置情報を取得するステップ、をさらに備え、
前記位置合わせを行うステップにおいて、前記第1位置情報と前記第2位置情報とに基づいて、前記CTデータにおける前記被写体と、前記設計データにおける前記被写体との位置合わせを行う、請求項2または3に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項5】
前記位置合わせを行うステップにおいて、前記第1位置情報の各々における位置と、前記第1位置情報に対応する前記第2位置情報の各々における位置とを合わせることにより、前記CTデータにおける前記被写体と、前記設計データにおける前記被写体との位置合わせを行う、請求項4に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項6】
前記第1位置情報は、前記CTデータにおける前記位置決め部材の各々の中心点の位置情報であり、
前記第2位置情報は、前記設計データにおける前記位置決め部材の各々の中心点の位置情報である、請求項4または5に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項7】
前記相対位置を測定するステップにおいて、前記被写体および前記位置決め部材の各々に対してプローブを接触させることにより、前記相対位置の測定を行う、請求項6に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項8】
前記基準位置は、前記被写体の表面に設けられた円孔の中心のうちの、前記表面と同一平面に位置する中心の位置である、請求項4~7のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項9】
前記位置決め部材の各々は、各々の中心位置を直線で結んだ際に、前記直線によって平面が形成されるような位置に配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項10】
前記位置決め部材のうち、少なくとも1つを、前記被写体の長手方向の一方側の端部と前記長手方向の中心とのうち、前記一方側の端部に近い位置に配置し、他の少なくとも1つを、前記長手方向の他方側の端部と前記長手方向の中心とのうち、前記他方側の端部に近い位置に配置するステップをさらに備える、請求項9に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項11】
前記位置決め部材を配置するステップにおいて、前記位置決め部材は、少なくとも2つを、前記被写体の互いに異なる面に配置する、請求項10に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項12】
前記位置決め部材は、前記被写体と同一または類似するX線の透過率を有する材料によって形成される、請求項1~11のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項13】
前記位置決め部材の各々を、前記被写体に接触した状態で前記被写体に固定するステップをさらに備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項14】
前記位置決め部材の各々を、固定用の治具を介して、前記被写体に固定するステップをさらに備える、請求項1~13のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項15】
前記CTデータを取得するステップにおいて、前記被写体が複数の部品で構成される場合には、各部品に対して少なくとも3つの前記位置決め部材が配置された状態で取得された前記CTデータを取得する、請求項1~14のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【請求項16】
少なくとも3つの位置決め部材を被写体とともにX線CT撮影することにより取得された、前記被写体および前記位置決め部材の3次元のCTデータを取得するデータ取得部と、
測定された前記被写体と前記位置決め部材の各々との相対位置の情報を取得する相対位置情報取得部と、
取得された前記CTデータの前記位置決め部材の位置情報と、測定された前記相対位置の情報に基づく前記被写体の3次元の設計データにおける前記位置決め部材の位置情報とを用いて、前記CTデータにおける前記被写体と、前記設計データにおける前記被写体との位置合わせを行う位置合わせ部と、を備える、3次元形状データ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元形状の位置合わせ方法、および、3次元形状データ処理装置に関し、特に、X線CT撮影によって取得されるCTデータにおける被写体と、3次元の設計データにおける被写体との位置合わせを行う3次元形状の位置合わせ方法、および、3次元形状データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT撮影によって取得されるCTデータにおける被写体と、3次元の設計データにおける被写体との位置合わせを行う3次元形状の位置合わせ方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-8360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、X線CT撮影を行うことにより取得されるCTデータは、被写体の面の精度は高いが、個々の点の精度は高くない場合がある。すなわち、被写体の形状によっては、CTデータにおける形状の精度が低下する部分が含まれる場合がある。したがって、被写体の形状に起因して、CTデータにおける被写体と、設計データにおける被写体との位置合わせを精度よく行うことが困難な場合があるという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、被写体の形状に依存することなく、CTデータにおける被写体と、設計データにおける被写体との位置合わせを精度よく行うことが可能な3次元形状の位置合わせ方法、および、3次元形状データ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における3次元形状の位置合わせ方法は、少なくとも3つの位置決め部材を被写体とともにX線CT撮影することにより取得された、被写体および位置決め部材の3次元のCTデータを取得するステップと、被写体と、位置決め部材の各々との相対位置を測定するステップと、取得したCTデータの位置決め部材の位置情報と、測定した相対位置の情報に基づく被写体の3次元の設計データにおける位置決め部材の位置情報とを用いて、CTデータにおける被写体と、設計データにおける被写体との位置合わせを行うステップと、を備える。
【0007】
この発明の第2の局面における3次元形状データ処理装置は、少なくとも3つの位置決め部材を被写体とともにX線CT撮影することにより取得された、被写体および位置決め部材の3次元のCTデータを取得するデータ取得部と、測定された被写体と位置決め部材の各々との相対位置の情報を取得する相対位置情報取得部と、取得されたCTデータの位置決め部材の位置情報と、測定された相対位置の情報に基づく被写体の3次元の設計データにおける位置決め部材の位置情報とを用いて、CTデータにおける被写体と、設計データにおける被写体との位置合わせを行う位置合わせ部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記第1の局面における3次元形状の位置合わせ方法、第2の局面における3次元形状データ処理装置では、CTデータと、被写体の3次元の設計データと、被写体の位置決め部材の各々との相対位置の情報とに基づいて、CTデータにおける被写体と、設計データにおける被写体との位置合わせを行う。これにより、設計データと、相対位置の情報と、に基づいて、設計データにおける位置決め部材の位置情報を取得することができる。したがって、CTデータおける被写体と設計データにおける被写体との位置合わせを行う際に、CTデータにおける位置決め部材と、設計データにおける位置決め部材との位置合わせを行うことにより、各データの被写体の位置合わせを行うことができる。そのため、たとえば、CTデータにおいて形状を精度よく取得することが可能な形状を有する位置決め部材を用いることにより、被写体の形状に依存することなく、CTデータにおける被写体と設計データにおける被写体との位置合わせを行うことができる。その結果、被写体の形状に依存することなく、CTデータにおける被写体の位置と、設計データにおける被写体の位置合わせを精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態による3次元形状データ処理装置を備えた3次元形状データ処理システムを示したブロック図である。
図2】X線CT撮像装置の一例を示した図である。
図3】被写体の一例を示した図である。
図4】3次元形状データ処理装置のプロセッサの機能を説明するための機能ブロック図である。
図5】本実施形態による3次元形状データ処理装置の処理動作を説明するためのフロー図である。
図6】被写体に対して位置決め部材を配置する処理の詳細を説明するためのフロー図である。
図7】位置決め部材が配置された被写体を説明するための図である。
図8】3つの位置決め部材の配置を説明するための図である。
図9】位置決め部材のうちの少なくとも2つの配置を説明するための図である。
図10】相対位置を測定する処理の詳細を説明するためのフロー図である。
図11】相対位置を測定する処理の詳細を説明するための図である。
図12】第1位置情報を取得する処理の詳細を説明するためのフロー図である。
図13】第1位置情報を取得する処理の詳細を説明するための図である。
図14】第2位置情報を取得する処理の詳細を説明するためのフロー図である。
図15】第2位置情報を取得する処理の詳細を説明するための図である。
図16】位置合わせ部による位置合わせの処理の詳細を説明するためのフロー図である。
図17】位置合わせ部による位置合わせの処理の詳細を説明するための図である。
図18】第1変形例による位置決め部材の固定方法を説明するための図である。
図19】第2変形例による位置決め部材の固定方法を説明するための図である。
図20】第3変形例による被写体に対する位置決め部材の配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1図17を参照して、本実施形態による3次元形状データ処理装置100を備える3次元形状データ処理システムについて説明する。
【0012】
(3次元形状データ処システムの概要)
3次元形状データ処理システムは、3次元形状データ処理装置100と、X線CT撮像装置200と、3次元座標測定装置300とを備える。3次元形状データ処理システムは、X線CT撮像装置200が生成したCTデータ30と、3次元座標測定装置300が取得する相対位置の情報32と、3次元形状データ処理装置100に記憶されている設計データ31とを用いて、CTデータ30における被写体90(図3参照)と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う。
【0013】
(3次元形状データ処理装置)
図1に示す3次元形状データ処理装置100は、被写体90の3次元データを処理する装置である。具体的には、3次元形状データ処理装置100は、X線CT撮像装置200によって被写体90をCT撮影することにより得られた3次元のCTデータ30における被写体90と、3次元の設計データ31における被写体90との位置を合わせる処理を行う。すなわち、本実施形態による3次元形状データ処理装置100は、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行うことにより、被写体90が設計データ31通りに製造されているかを検査する。なお、設計データ31は、被写体90を製造するために作成される設計データである。設計データ31は、たとえば、3次元のCAD(Computer Aided Design)データであり得る。
【0014】
3次元形状データ処理装置100は、いわゆるパーソナルコンピュータであり、プロセッサ10および記憶部20を備える。また、3次元形状データ処理装置100には、表示部111および入力部112が接続されている。表示部111は、たとえば液晶表示装置である。表示部111は、エレクトロルミネッセンス表示装置、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイであってもよい。入力部112は、たとえばマウスおよびキーボードを含む入力装置である。入力部112は、タッチパネルであってもよい。
【0015】
プロセッサ10は、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Aplication Specific Integrated Circuit)などによって構成される。プロセッサ10が、所定のプログラム21を実行することにより、3次元形状データ処理装置100としての演算処理が行われる。
【0016】
記憶部20は、不揮発性記憶装置を含む。不揮発性記憶装置は、たとえば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなどである。記憶部20には、プロセッサ10が実行する各種のプログラム21が記憶されている。また、記憶部20には、被写体90の3次元の設計データ31が記憶されている。
【0017】
ここで、CTデータ30は、被写体90の内部構造を3次元データ化することができる。なお、被写体90の面のデータは精度よく取得することができるが、個々の点においては精度が低下する場合がある。すなわち、CTデータ30は、個々の点によって位置合わせを行う場合には、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを正確に行うことが困難な場合がある。
【0018】
そこで、本実施形態では、被写体90に対して位置決め部材1(図7参照)を配置した状態でX線CT撮影を行うことにより、被写体90および位置決め部材1のCTデータ30を取得する。また、被写体90に配置された位置決め部材1の被写体90に対する相対位置を、3次元座標測定装置300によって計測する。3次元形状データ処理装置100は、X線CT撮像装置200によって生成されたCTデータ30と、設計データ31と、3次元座標測定装置300によって測定された相対位置の情報32とに基づいて、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う。
【0019】
3次元座標測定装置300は、プローブ310(図11参照)を被写体90などの測定対象に接触させて測定を行う接触式の測定装置、レーザ光などを測定対象に照射することによって測定を行う非接触式の測定装置などを含む。本実施形態では、3次元座標測定装置300は、接触式の測定装置である。すなわち、3次元座標測定装置330は、プローブ310を接触させた複数の位置の位置座標を取得し、それらの位置座標を組み合わせることにより、被写体90の3次元形状の情報を取得する装置である。なお、プローブ310は、被写体90に接触させる接触子である。
【0020】
〈X線CT撮影装置〉
図2に示すように、X線CT撮像装置200は、X線源210と、X線検出器220と、制御部230と、画像処理部240と、回転機構250とを備える。
【0021】
X線源210は、被写体90にX線を照射するように構成されている。具体的には、X線源210は、電極に高電圧が印加されることにより発生される電子を、ターゲットに衝突させることによりX線を発生させるように構成されている。X線源210は、たとえば、X線管と、電源とを含むX線発生装置である。
【0022】
X線検出器220は、X線源210から照射されたX線を検出するように構成されている。また、X線検出器220は、検出したX線を電気信号(画像信号)に変換するように構成されている。X線検出器220は、X線を受光する受光部と、受光したX線を画像信号に変換する変換部とを含む。X線検出器220は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。X線検出器220は、複数の変換素子(図示せず)と複数の変換素子上に配置された画素電極(図示せず)とにより構成されている。X線検出器220の画像信号は、画像処理部240に送られる。
【0023】
制御部230は、X線源210、および、回転機構250を制御するように構成されている。制御部230は、CPU、RAM、および、ROMなどにより構成されるプロセッサを含む。
【0024】
画像処理部240は、X線検出器220を制御するように構成されている。また、画像処理部240は、X線検出器220により検出されたX線に基づいて、X線画像データを取得するように構成されている。また、画像処理部240は、回転機構250によって被写体90を軸線40の周りに回転させながら撮影することにより取得された複数のX線画像データに基づいて、CTデータ30を生成するように構成されている。画像処理部240は、CPU、GPU、FPGA、ASICなどのプロセッサを含む。画像処理部240は、プロセッサが各種プログラムを実行することにより実現される機能ブロックとしてソフトウェア的に構成される。画像処理部240は、専用のプロセッサ(処理回路)をX線CT撮像装置200に設けてハードウェアにより構成されていてもよい。
【0025】
回転機構250は、被写体90を軸線40の周りに回転させるように構成されている。回転機構250は、被写体90が載置される載置部と、載置部を回転させる回転部と、回転部に駆動力を付与する駆動部と、を含む。回転部は、たとえば、駆動部からの駆動力を伝達するためのプーリーを含む。また、駆動部は、たとえば、モータとを含む。
【0026】
(被写体)
図3は、被写体90の一例を示す図である。被写体90は、樹脂材料によって形成される樹脂製品、または、金属材料によって形成される金属製品などを含む。被写体90の製造方法は、問わない。本実施形態では、被写体90は、たとえば、アルミニウムによって形成されている。
【0027】
図3では、便宜的に、被写体90として、直方体90aおよび直方体90bが一体的に形成された単一の部品の例を図示している。被写体90の第1面91aには、円孔91bが設けられている。また、被写体90の第1面91aとは異なる面である第2面91cには、円孔91dが設けられている。
【0028】
(位置決め部材)
位置決め部材1は、等方的な形状を有している。具体的には、位置決め部材1は、等方的な形状として、球状形状を有している。また、位置決め部材1は、被写体90と同一または類似するX線の透過率を有する材料によって形成される。位置決め部材1は、たとえば、セラミックス製の球体を含む。なお、等方的な形状とは、位置決め部材1の形状に指向性がないことを意味する。言い換えると、X線CT撮像装置200によってX線CT撮影を行う際に、回転機構250によって位置決め部材1を回転させた場合でも、各回転角度において、位置決め部材1を透過するX線の経路長に差が少ないことを意味する。
【0029】
(3次元形状データ処理装置の詳細構成)
図4は、3次元形状データ処理装置100がCTデータ30における被写体90と設計データ31における被写体90との位置合わせを行う各構成の概略を示したブロック図である。
【0030】
3次元形状データ処理装置100のプロセッサ10は、データ取得部11と、相対位置情報取得部12と、位置合わせ部13と、第1位置情報取得部14と、第2位置情報取得部15と、を機能ブロックとして含む。言い換えると、プロセッサ10は、記憶部20に記憶されたプログラム21を実行することによって、データ取得部11、相対位置情報取得部12、位置合わせ部13、第1位置情報取得部14、第2位置情報取得部15として機能する。
【0031】
データ取得部11は、少なくとも3つの位置決め部材1(図7参照)を被写体90(図3参照)とともにX線CT撮影することにより取得された、被写体90および位置決め部材1の3次元のCTデータ30を取得する機能を有する。データ取得部11は、ネットワークを介して、X線CT撮像装置200から送信されたCTデータ30を取得する。なお、CTデータ30が記憶部20に記憶されている場合には、データ取得部11は、記憶部20からCTデータ30を読み込んでもよい。また、データ取得部11は、記憶部20(図1参照)に記憶された設計データ31を読み込むことにより、設計データ31を取得する。データ取得部11は、取得したCTデータ30を第1位置情報取得部14に出力する。また、データ取得部11は、取得した設計データ31を、第2位置情報取得部15に出力する。
【0032】
相対位置情報取得部12は、被写体90と、位置決め部材1の各々との相対位置の情報32を取得する。具体的には、相対位置情報取得部12は、3次元座標測定装置300が測定した相対位置の情報32を取得する。相対位置の情報32は、被写体90と位置決め部材1の各々との相対位置の情報である。本実施形態では、相対位置の情報32は、被写体90に設定された基準位置3の位置情報32a(図11参照)と、位置決め部材1の各々の位置情報32b(図11参照)とを含む。相対位置情報取得部12は、ネットワークを介して、3次元座標測定装置300から送信された相対位置の情報32を取得する。なお、相対位置の情報32が記憶部20に記憶されている場合には、相対位置情報取得部12は、記憶部20から相対位置の情報32を読み込んでもよい。相対位置情報取得部12は、取得した相対位置の情報32を、第2位置情報取得部15に出力する。
【0033】
第1位置情報取得部14は、CTデータ30における位置決め部材1(図7参照)の位置情報を取得する。具体的には、第1位置情報取得部14は、CTデータ30における位置決め部材1の中心点2(図8参照)の位置情報である第1位置情報33を取得する。第1位置情報取得部14は、取得した第1位置情報33を、位置合わせ部13に出力する。
【0034】
第2位置情報取得部15は、設計データ31と、相対位置の情報32とに基づいて、設計データ31における位置決め部材1の位置情報を取得する。具体的には、第2位置情報取得部15は、設計データ31における位置決め部材1の中心点2(図8参照)の位置情報である第2位置情報34を取得する。第2位置情報取得部15は、取得した第2位置情報34を、位置合わせ部13に出力する。
【0035】
位置合わせ部13は、被写体90の3次元の設計データ31と、相対位置の情報32とに基づいて、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う。本実施形態では、位置合わせ部13は、第1位置情報33と、第2位置情報34とに基づいて、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う。位置合わせ部13が、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う構成の詳細については、後述する。
【0036】
(3次元形状の位置合わせ方法)
次に、図5を参照して、本実施形態の3次元形状の位置合わせ方法を説明する。本実施形態の3次元形状の位置合わせ方法は、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う方法である。3次元形状の位置合わせ方法は、3次元形状データ処理装置100(プロセッサ10)によって実行することができる。
【0037】
本実施形態の3次元形状の位置合わせ方法は、少なくとも、以下のステップを備える。
(1)少なくとも3つの位置決め部材1を被写体90とともにX線CT撮影することにより取得された、被写体90および位置決め部材1の3次元のCTデータ30を取得するステップ
(2)被写体90と、位置決め部材1の各々との相対位置を測定するステップ
(3)CTデータ30と、被写体90の3次元の設計データ31と、相対位置の情報32とに基づいて、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行うステップ
【0038】
CTデータ30を取得するステップ(1)は、データ取得部11によって実行される。CTデータ30を取得するステップ(1)は、X線CT撮像装置200によるX線CT撮影が行われた後に実行される。相対位置を測定するステップ(2)は、3次元座標測定装置300によって実行される。CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行うステップ(3)は、位置合わせ部13によって実行される。また、本実施形態の3次元形状の位置合わせ方法は、第1位置情報取得部14による第1位置情報33を取得する処理、第2位置情報取得部15による第2位置情報34を取得する処理、をさらに備える。
【0039】
また、本実施形態の3次元形状の位置合わせ方法は、被写体90に対して位置決め部材1を配置するステップと、位置決め部材1を固定するステップとをさらに備える。
【0040】
次に、図5図17を参照して、3次元形状データ処理装置100による処理の流れを詳細に説明する。
【0041】
〈位置決め部材の配置〉
ステップS1において、位置決め部材1が、被写体90に対して配置される。図6図9を参照して、位置決め部材1が被写体90に配置される際の配置の詳細について説明する。
【0042】
図6のステップS1aにおいて、少なくとも3つの位置決め部材1が被写体90に配置される。本実施形態では、位置決め部材1a~位置決め部材1cの3つの位置決め部材1が、被写体90に配置される。
【0043】
ステップS1bにおいて、位置決め部材1の各々が、被写体90に固定される。本実施形態では、位置決め部材1の各々は、被写体90に接触した状態で被写体90に固定される。これにより、少なくとも、X線CT撮影、および、相対位置の測定の両方が完了するまで、位置決め部材1の各々の相対位置が変化しない。位置決め部材1を被写体90に固定する方法としては、接着剤による固定、ねじ止めなどがあるが、被写体90に対して位置決め部材1を固定することが可能であれば、方法は問わない。
【0044】
図7に示すように、位置決め部材1は、少なくとも2つが、被写体90の互いに異なる面に配置される。図7に示す例では、位置決め部材1aが被写体90の第2面91cに配置され、位置決め部材1cが、被写体90の第1面91aに配置される。また、図7に示す例では、位置決め部材1bは、第2面91cに接する直方体90b上に設けられる。
【0045】
また、位置決め部材1の各々は、図8に示すように、各々の中心位置を直線4(直線4a、直線4b、直線4c)で結んだ際に、直線4(直線4a、直線4b、直線4c)によって平面50が形成されるような位置に配置される。なお、直線4aは、位置決め部材1aの中心点2aと、位置決め部材1bの中心点2bとを結ぶ直線である。また、直線4bは、位置決め部材1bの中心点2bと、位置決め部材1cの中心点2cとを結ぶ直線である。また、直線4cは、位置決め部材1cの中心点2cと、位置決め部材1aの中心点2aとを結ぶ直線である。
【0046】
また、図9に示すように、位置決め部材1のうち、少なくとも1つを、被写体90の長手方向の一方側の端部91eと長手方向の中心92とのうち、一方側の端部91eに近い位置に配置し、他の少なくとも1つを、長手方向の他方側の端部91fと長手方向の中心92とのうち、他方側の端部91fに近い位置に配置する。なお、図9では、便宜的に被写体90の長手方向の中心92を、一点鎖線を用いて図示している。
【0047】
<X線CT撮影>
図5のステップS2において、X線CT撮像装置200が、被写体90のX線CT撮影を行う。これにより、被写体90の3次元のCTデータ30が生成される。生成されたCTデータ30は、3次元形状データ処理装置100に送信される。
【0048】
<相対位置の測定>
図5のステップS3において、3次元座標測定装置300が、被写体90および被写体90に配置された位置決め部材1の各々の相対位置を測定する。図10および図11を参照して、3次元座標測定装置300による相対位置の測定の詳細について説明する。
【0049】
図10に示すように、3次元座標測定装置300による相対位置の情報32の取得処理は、基準位置3の位置情報32aを取得するステップS3aと、位置決め部材1の位置情報32bを取得するステップS3bとを含む。
【0050】
ステップS3aにおいて、3次元座標測定装置300は、基準位置3の位置情報32aを取得する。
【0051】
ステップS3bにおいて、3次元座標測定装置300は、プローブ310を、位置決め部材1の各々に接触させることにより、位置決め部材1の各々の位置情報32bを取得する。
【0052】
図11に示すように、本実施形態では、3次元座標測定装置300は、被写体90および位置決め部材1の各々に対してプローブ310を接触させることにより、相対位置の測定を行う。基準位置3は、被写体90の表面(第1面91a)に設けられた円孔91bの中心のうちの、表面(第1面91a)と同一平面に位置する中心の位置である。本実施形態では、3次元座標測定装置300は、プローブ310を、被写体90の第1面91aの所定の位置に接触させることにより、第1面91aの位置情報を取得する。3次元座標測定装置300は、たとえば、第1面91aの6箇所に設定された接触位置311の各々に対して、プローブ310を接触させることにより、第1面91aの位置情報を取得する。同様に被写体90の上面(第2面91c)についても第2面92cの位置情報を取得する。
【0053】
また、3次元座標測定装置300は、円孔91bの内周面に対して、プローブ310を接触させることにより、円孔91bの位置情報を取得する。具体的には、3次元座標測定装置300は、円孔91bの内周面に設定された接触位置312の各々に対して、プローブ310を接触させることにより、円孔91bの位置情報を取得する。そして、3次元座標測定装置300は、第1面91aの位置情報、第2面91cの位置情報、および、円孔91bの位置情報に基づいて、基準位置3の位置情報32aを取得する。3次元座標測定装置300は、基準位置3の位置情報32aとして、(X0、Y0、Z0)の座標値および方向を取得する。なお、本実施形態では、相対位置の情報32は、基準位置3の位置情報32aで定義される第1座標系における位置情報とする。
【0054】
具体的には、3次元座標測定装置300は、位置決め部材1の中心点2(図8参照)の位置情報を取得する。本実施形態では、3次元座標測定装置300は、位置決め部材1aの中心点2aの位置情報と、位置決め部材1bの中心点2bの位置の位置情報と、位置決め部材1cの中心点2cの位置情報とを取得する。具体的には、3次元座標測定装置300は、位置決め部材1aの中心点2aの座標値(X1、Y1、Z1)を、位置決め部材1aの位置情報32bとして取得する。また、3次元座標測定装置300は、位置決め部材1bの中心点2bの座標値(X2、Y2、Z2)を、位置決め部材1bの位置情報32bとして取得する。また、3次元座標測定装置300は、位置決め部材1cの中心点2cの座標値(X3、Y3、Z3)を、位置決め部材1cの位置情報32bとして取得する。
【0055】
3次元座標測定装置300が取得した基準位置3の位置情報32a、および、位置決め部材1の位置情報32bは、3次元形状データ処理装置100に送信される。なお、基準位置3の位置情報32a、および、位置決め部材1の位置情報32bは3次元形状データ処理装置100が備える記憶部20に記憶されてもよい。
【0056】
〈CTデータの取得〉
図5のステップS4において、データ取得部11(図3参照)が、CTデータ30を取得する処理(上記ステップ(1))を実施する。データ取得部11は、X線CT撮像装置200からネットワークなどを介して送信されたCTデータ30を受信することにより、CTデータ30を取得する。また、データ取得部11は、取得したCTデータ30を、記憶部20に記憶する。なお、CTデータ30が、予め記憶部20に記憶されている場合には、ステップS4の処理は省略される。
【0057】
〈第1位置情報の取得〉
その後、ステップS5において、第1位置情報取得部14が、第1位置情報33を取得する処理を実行する。図12および図13を参照して、第1位置情報33を取得する処理の詳細を説明する。
【0058】
図12に示すように、第1位置情報33を取得するするステップS5は、CTデータ30から位置決め部材1の形状を取得するステップS5aと、CTデータ30における位置決め部材1の中心点2の位置情報を取得するステップS5bと、を含む。なお、第1位置情報33は、CTデータ30における位置決め部材1の各々の中心点2の位置情報である。
【0059】
ステップS5aにおいて、第1位置情報取得部14は、CTデータ30における位置決め部材1の形状を取得する。本実施形態では、第1位置情報取得部14は、位置決め部材1の形状を特定する。第1位置情報取得部14が位置決め部材1の形状を特定する手法については、問わない。なお、CTデータ30は、P軸、Q軸、および、R軸によって定義される第2座標系の3次元の被写体90の形状を示すデータとする。
【0060】
ステップS5bにおいて、第1位置情報取得部14は、第2座標系における位置決め部材1の位置情報を取得する。第1位置情報取得部14は、CTデータ30における位置決め部材1の等方的な形状に基づいて、CTデータ30における位置決め部材1の位置情報である第1位置情報33を取得する。より具体的には、第1位置情報取得部14は、CTデータ30における球状形状の位置決め部材1の表面1dの位置情報に基づいて、第1位置情報33を取得する。
【0061】
第1位置情報取得部14は、ステップS5aによって位置が特定された位置決め部材1の表面1dの各点から等距離の位置にある点を、位置決め部材1の中心点2として取得する。ここで、CTデータ30における位置決め部材1の表面1dの各点の位置情報は、第2座標系の座標値としてCTデータ30から取得することができる。また、位置決め部材1は、等方的な形状である球状形状である。したがって、第1位置情報取得部14は、第2座標系おける位置決め部材1の中心点2の位置情報(第1位置情報33)を精度よく取得することができる。また、第1位置情報取得部14は、他の公知の手法により、位置決め部材1の第1位置情報33の位置情報を取得してもよい。
【0062】
本実施形態では、第1位置情報取得部14は、図13に示すように、位置決め部材1aの第1位置情報33として、第2座標系における中心点2aの位置座標(P1、Q1、R1)を取得する。また、第1位置情報取得部14は、位置決め部材1bの第1位置情報33として、第2座標系における中心点2bの位置座標(P2、Q2、R2)を取得する。また、第1位置情報取得部14は、位置決め部材1cの第1位置情報33として、第2座標系における中心点2cの位置座標(P3、Q3、R3)を取得する。
【0063】
第1位置情報取得部14は、取得した第1位置情報33を、記憶部20に出力する。すなわち、第1位置情報33は、記憶部20に記憶される。
【0064】
〈相対位置の情報の取得〉
図5のステップS6において、相対位置情報取得部12は、相対位置の情報32を取得する。具体的には、相対位置情報取得部12は、3次元座標測定装置300から送信された相対位置の情報32を受信する。相対位置情報取得部12は、受信した相対位置の情報32を、記憶部20に対して出力する。すなわち、相対位置の情報32は、記憶部20に記憶される。
【0065】
〈第2位置情報の取得〉
次に、ステップS7において、第2位置情報取得部15は、第2位置情報34を取得する処理を実行する。図14および図15を参照して、第2位置情報34を取得する処理の詳細を説明する。なお、第2位置情報34は、設計データ31における位置決め部材1の各々の中心点2(図8参照)の位置情報である。
【0066】
図14に示すように、第2位置情報34を取得するステップS7は、設計データ31を読み込むステップS7aと、相対位置の情報32を読み込むステップS7bと、設計データ31と相対位置の情報32とに基づいて、設計データ31における位置決め部材1の位置情報を取得するステップS7cと、を含む。
【0067】
ステップS7aにおいて、第2位置情報取得部15は、記憶部20から、設計データ31を読み込む。
【0068】
ステップS7bにおいて、第2位置情報取得部15は、記憶部20から相対位置の情報32を読み込む。
【0069】
ステップS7cにおいて、第2位置情報取得部15は、相対位置の情報32と設計データ31とに基づいて、位置決め部材1の各々の位置情報を取得する。
【0070】
本実施形態では、図15に示すように、第2位置情報取得部15は、基準位置3の位置情報32aの実測値と設計データ31における基準位置3の位置情報32aとに基づいて、設計データ31における位置決め部材1の位置情報である第2位置情報34を取得する。なお、設計データ31は、L軸、M軸、および、N軸によって定義される第3座標系の3次元の被写体90の形状を示すデータとする。また、図15に示す例では、便宜的に、位置決め部材1a~位置決め部材1cを破線で図示しているが、設計データ31には位置決め部材1a~位置決め部材1cは含まれない。
【0071】
ここで、設計データ31には、位置決め部材1の位置情報は含まれていない。一方、設計データ31には、基準位置3の位置情報が含まれる。したがって、第2位置情報取得部15は、設計データ31に基づいて、設計データ31(第3座標系)における基準位置3の位置座標(L0、M0、N0)を取得することができる。
【0072】
第2位置情報取得部15は、第1座標系における基準位置3の位置座標(X0、Y0、Z0)と、第3座標系における基準位置3の位置座標(L0、M0、N0)との位置を合わせることにより、設計データ31における位置決め部材1の位置情報を取得する。具体的には、第2位置情報取得部15は、第1座標系における基準位置3の位置座標(X0、Y0、Z0)と、第3座標系における基準位置3の位置座標(L0、M0、N0)との位置を合わせた後、基準位置3の位置情報32aの実測値である第1座標系の位置座標(X0、Y0、Z0)と、各位置決め部材1の位置座標(X1、Y1、Z1)、(X2、Y2、Z2)、(X3、Y3、Z3)との関係に基づき、第3座標系における各位置決め部材1の位置座標を取得する。すなわち、第2位置情報取得部15は、各位置決め部材1の位置座標(X1、Y1、Z1)、(X2、Y2、Z2)、(X3、Y3、Z3)を第3座標系の位置座標に変換することにより、設計データ31における各位置決め部材1の位置座標を取得する。
【0073】
具体的には、第2位置情報取得部15は、第1座標系における基準位置3の位置座標(X0、Y0、Z0)と、位置決め部材1aの位置座標(X1、Y1、Z1)から、第1座標系における基準位置3から位置決め部材1aまでの各軸方向の距離を取得する。すなわち、第2位置情報取得部15は、位置決め部材1aのX座標(X1)から基準位置3のX座標(X0)を減算することにより、基準位置3から位置決め部材1aまでのX軸方向における距離を取得する。第2位置情報取得部15は、同様に、Y座標の減算(Y1-Y0)、および、Z座標の減算(Z1‐Z0)を行うことにより、基準位置3から位置決め部材1aまでのY軸方向の距離およびZ軸方向の距離を取得する。
【0074】
第2位置情報取得部15は、第3座標系における基準位置3の位置座標(L0、M0、N0)に対して、第1座標系における基準位置3から位置決め部材1aの各軸方向の距離を加算することにより、位置決め部材1aの位置座標(L1、M1、N1)に変換する。すなわち、第2位置情報取得部15は、第3座標系における基準位置3の位置座標(L0、M0、N0)に対して、(X1‐X0、Y1‐Y0、Z1‐Z0)を加算することにより、第3座標系における位置決め部材1aの位置座標(L1、M1、N1)を取得する。
【0075】
第2位置情報取得部15は、同様の手法により、第1座標系における位置決め部材1bの位置座標(X2、Y2、Z2)、および、第3座標系における位置決め部材1bの位置座標(L2、M2、N2)を取得する。さらに第2位置情報取得部15は、同様の手法により、第1座標系における位置決め部材1bの位置座標(X3、Y3、Z3)、および、第3座標系における位置決め部材1cの位置座標(L3、M3、N3)を取得する。
【0076】
これにより、第2位置情報取得部15は、第3座標系における位置決め部材1の各々の位置座標である第2位置情報34を取得することができる。第2位置情報取得部15は、取得した第2位置情報34を、記憶部20に対して出力する。すなわち、第2位置情報34は、記憶部20に記憶される。
【0077】
〈被写体の位置合わせ〉
図5のステップS8において、位置合わせ部13は、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせの処理(上記ステップ(3))を実行する。図16および図17を参照して、位置合わせ部13が、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う処理の詳細を説明する。
【0078】
図16に示すように、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行うステップS8は、第1位置情報33を読み込むステップS8aと、第2位置情報34を読み込むステップS8bと、第1位置情報33と第2位置情報34とに基づいて、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行うステップS8cを含む。
【0079】
ステップS8aにおいて、第1位置情報取得部14は、記憶部20から第1位置情報33を読み込む。
【0080】
ステップS8bにおいて、第1位置情報取得部14は、記憶部20から第2位置情報34を読み込む。なお、ステップS8aの処理と、ステップS8bの処理とは、どちらが先に実行されてもよい。
【0081】
ステップS8cにおいて、位置合わせ部13は、第1位置情報33と第2位置情報34とに基づいて、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う。
【0082】
具体的には、図17に示すように、位置合わせ部13は、第1位置情報33の各々における位置と、第1位置情報33に対応する第2位置情報34の各々における位置とを合わせることにより、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う。
【0083】
すなわち、位置合わせ部13は、CTデータ30における中心点2aの位置座標(P1、Q1、R1)と、設計データ31における中心点2aの位置座標(L1、M1、N1)とを合わせる。また、位置合わせ部13は、CTデータ30における中心点2bの位置座標(P2、Q2、R2)と、設計データ31における中心点2bの位置座標(L2、M2、N2)とを合わせる。また、位置合わせ部13は、CTデータ30における中心点2cの位置座標(P3、Q3、R3)と、設計データ31における中心点2cの位置座標(L3、M3、N3)とを合わせる。これにより、位置合わせ部13は、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との、位置および姿勢を合わせる。
【0084】
すなわち、本実施形態では、位置合わせ部13は、各中心点2の位置合わせを行うことにより変換行列を取得し、取得した変換行列に基づいて、CTデータ30における被写体90の各点の座標を変換することにより、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う。なお、位置合わせ部13は、取得した変換行列に基づいて設計データ31の各点の変換を行うことにより、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行うように構成されていてもよい。
【0085】
以上により、本実施形態の3次元形状データ処理装置100により実施される3次元形状の位置合わせ方法が完了する。
【0086】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0087】
本実施形態では、上記のように、3次元形状の位置合わせ方法は、少なくとも3つの位置決め部材1を被写体90とともにX線CT撮影することにより取得された、被写体90および位置決め部材1の3次元のCTデータ30を取得するステップと、被写体90と、位置決め部材1の各々との相対位置を測定するステップと、CTデータ30と、被写体90の3次元の設計データ31と、相対位置の情報32とに基づいて、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行うステップと、を備える。
【0088】
これにより、設計データ31と、相対位置の情報32と、に基づいて、設計データ31における位置決め部材1の位置情報を取得することができる。したがって、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う際に、CTデータ30における位置決め部材1の位置と、設計データ31における位置決め部材1との位置合わせを行うことにより、各データの被写体90の位置合わせを行うことができる。そのため、たとえば、CTデータ30において形状を精度よく取得することが可能な形状を有する位置決め部材1を用いることにより、被写体90の形状に依存することなく、CTデータ30における被写体90と設計データ31における被写体90との位置合わせを行うことができる。その結果、被写体90の形状に依存することなく、CTデータ30における被写体90の位置と、設計データ31における被写体90の位置合わせを精度よく行うことができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、3次元形状データ処理装置100は、少なくとも3つの位置決め部材1を被写体90とともにX線CT撮影することにより取得された、被写体90および位置決め部材1の3次元のCTデータ30を取得するデータ取得部11と、被写体90と、位置決め部材1の各々との相対位置の情報32を取得する相対位置情報取得部12と、CTデータ30と、被写体90の3次元の設計データ31と、相対位置の情報32とに基づいて、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う位置合わせ部13と、を備える。
【0090】
これにより、上記3次元形状の位置合わせ方法と同様に、被写体90の形状に依存することなく、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを精度よく行うことが可能な3次元形状データ処理装置100を提供することができる。
【0091】
また、上記実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0092】
すなわち、本実施形態では、上記のように、位置決め部材1は、等方的な形状を有しており、CTデータ30における位置決め部材1の等方的な形状に基づいて、CTデータ30における位置決め部材1の位置情報である第1位置情報33を取得するステップをさらに備える。ここで、CTデータ30を取得する際には、位置決め部材1が等方的な形状を有している場合、位置決め部材1を回転させながら撮影する際の、位置決め部材1を透過するX線の経路長の撮影角度毎の差が小さくなる。撮影角度毎のX線の経路長の差が小さい場合、撮影角度毎のX線の経路長に起因するX線の検出強度の差が小さくなる。すなわち、経路長の差に起因して生じるX線の検出強度の差によって位置決め部材1の形状の精度が低下することを抑制することができる。そのため、上記のように構成することにより、位置決め部材1の形状が等方的であるため、CTデータ30における位置決め部材1の形状を精度よく取得することができる。その結果、位置決め部材1の形状に基づいて取得される第1位置情報33を、精度よく取得することが可能となるので、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせの精度を向上させることができる。
【0093】
また、本実施形態では、上記のように、位置決め部材1は、等方的な形状として、球状形状を有しており、第1位置情報33を取得するステップにおいて、CTデータ30における球状形状の位置決め部材1の表面1dの位置情報に基づいて、第1位置情報33を取得する。ここで、球状形状を有する位置決め部材1のCTデータ30を取得する場合、撮影角度によるX線の経路長の差がなくなる。したがって、CTデータ30において、位置決め部材1の形状をより精度よく取得することができる。そのため、上記のように、球状形状を有する位置決め部材1の表面1dの位置情報に基づいて第1位置情報33を取得することにより、第1位置情報33の精度をより向上させることができる。その結果、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせの精度をより向上させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、上記のように、相対位置の情報32は、被写体90に設定された基準位置3の位置情報32aと、位置決め部材1の各々の位置情報32bとを含み、基準位置3の位置情報32aの実測値と設計データ31における基準位置3の位置情報32aとに基づいて、設計データ31における位置決め部材1の位置情報である第2位置情報34を取得するステップ、をさらに備え、位置合わせを行うステップにおいて、第1位置情報33と第2位置情報34とに基づいて、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う。ここで、CTデータ30と設計データ31とは、互いに異なる座標系のデータである。しかしながら、第1位置情報33における位置決め部材1の各々の相対位置と、第2位置情報34における位置決め部材1の各々の相対位置とは、互いに等しい。したがって、第1位置情報33と第2位置情報34とによって、互いに座標系が異なるデータであるCTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行うことができる。そのため、上記のように構成すれば、第1位置情報33と第2位置情報34とを取得することにより、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを容易に行うことができる。
【0095】
また、本実施形態では、上記のように、位置合わせを行うステップにおいて、第1位置情報33の各々における位置と、第1位置情報33に対応する第2位置情報34の各々における位置とを合わせることにより、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う。これにより、少なくとも3つの位置決め部材1が配置されるので、第1位置情報33と、第1位置情報33に対応する第2位置情報34の各々とによって、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置のみならず、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との姿勢も合わせることができる。
【0096】
また、本実施形態では、上記のように、第1位置情報33は、CTデータ30における位置決め部材1の各々の中心点2の位置情報であり、第2位置情報34は、設計データ31における位置決め部材1の各々の中心点2の位置情報である。これにより、位置決め部材1のうちから任意の点の位置情報を第1位置情報33および第2位置情報34として取得する構成と異なり、一意の点である位置決め部材1の中心点2の位置情報を取得するため、位置決め部材1の各々の位置情報を、容易に、かつ、精度よく取得することができる。
【0097】
また、本実施形態では、上記のように、相対位置を測定するステップにおいて、被写体90および位置決め部材1の各々に対してプローブ310を接触させることにより、相対位置の測定を行う。これにより、プローブ310を接触させて被写体90の位置情報を取得する接触式の3次元座標測定装置300によって、被写体90と位置決め部材1の各々との相対位置の情報32を、精度よく取得することができる。
【0098】
また、本実施形態では、上記のように、基準位置3は、被写体90の表面(第1面91a)に設けられた円孔91bの中心のうちの、表面(第1面91a)と同一平面に位置する中心の位置である。これにより、3次元座標測定装置300によって精度よく取得でき円孔91bの中心のうち、被写体90の表面(第1面91a)と同一平面上に位置する中心を基準位置3として取得するため、設計データ31において位置決め部材1の位置を精度よく取得することができる。その結果、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせの精度を向上させることができる。
【0099】
また、本実施形態では、上記のように、位置決め部材1の各々は、各々の中心位置を直線(直線4a、直線4b、直線4c)で結んだ際に、直線(直線4a、直線4b、直線4c)によって平面50が形成されるような位置に配置される。これにより、各々の位置決め部材1が直線状に並ぶ配置と異なり、位置決め部材1に基づいてCTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置を位置合わせする際に、被写体90の位置のみならず、姿勢についても、合わせることができる。その結果、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置および姿勢を、容易に合わせることができる。
【0100】
また、本実施形態では、上記のように、位置決め部材1のうち、少なくとも1つを、被写体90の長手方向の一方側の端部91eと長手方向の中心92とのうち、一方側の端部91eに近い位置に配置し、他の少なくとも1つを、長手方向の他方側の端部91fと長手方向の中心92とのうち、他方側の端部91fに近い位置に配置するステップをさらに備える。ここで、被写体90と異なり、位置決め部材1の各々の中心点2の位置情報は、精度よく取得することができる。したがって、位置決め部材1の各々の中心点2を直線4で結ぶことによって形成される平面50も、精度よく取得することができる。すなわち、精度よく取得された中心点2の位置情報に基づいて位置合わせを行うことにより、平面50内に含まれる各点の位置合わせを、精度よく行うことができる。そのため、上記のように構成することにより、位置決め部材1のうちの少なくとも2つを、被写体90の長手方向の一方側の端部91eと長手方向の中心92とのうち、一方側の端部91eに近い位置または他方側の端部91fに近い位置に配置する構成と比較して、少なくとも2の位置決め部材1の間の距離を大きくすることができる。したがって、位置決め部材1の各々の中心位置(中心点2)を直線4で結ぶことによって形成される平面50の大きさ(面積)を容易に大きくすることができる。その結果、精度よく取得することが可能な平面50の面積を容易に大きくすることが可能となるので、その分、位置決め部材1による位置合わせの精度を、容易に向上させることができる。
【0101】
また、本実施形態では、上記のように、位置決め部材1を配置するステップにおいて、位置決め部材1は、少なくとも2つを、被写体90の互いに異なる面に配置する。これにより、少なくとも2つの位置決め部材1を被写体90の同一面上に配置する構成と比較して、位置決め部材1の少なくとも2つの間の距離を大きくすることができる。したがって、位置決め部材1の各々の中心位置(中心点2)を直線4で結ぶことによって形成される平面50の大きさ(面積)をより容易に大きくすることができる。その結果、精度よく取得することが可能な平面50の面積をより容易に大きくすることが可能となるので、その分、位置決め部材1による位置合わせの精度を、より容易に向上させることができる。
【0102】
また、本実施形態では、上記のように、位置決め部材1は、被写体90と同一または類似するX線の透過率を有する材料によって形成される。ここで、位置決め部材1のX線の透過率が、被写体90のX線の透過率よりも大きい場合、CTデータ30における位置決め部材1の画素値が、被写体90の画素値よりも大きくなる。この場合、CTデータ30における位置決め部材1の画素値が大きいことに起因してアーチファクトが生じる場合がある。アーチファクトが生じた場合、CTデータ30における被写体90の形状が把握することが困難になる場合がある。そこで、上記のように、被写体90と同一または類似するX線の透過率を有する材料によって形成された位置決め部材1を用いることにより、CTデータ30においてアーチファクトが生じることを抑制することができる。その結果、アーチファクトに起因して、CTデータ30における被写体90の形状を把握することが困難になることを抑制することができる。
【0103】
また、本実施形態では、上記のように、位置決め部材1の各々を、被写体90に接触した状態で被写体90に固定するステップをさらに備える。これにより、位置決め部材1を被写体90に接触した状態で被写体90に固定するため、CTデータ30、および、相対位置の情報32を取得する際に、位置決め部材1の相対位置が変化することを抑制することができる。
【0104】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0105】
たとえば、上記実施形態では、位置決め部材1が、被写体90に接触した状態で被写体90に固定される構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図18に示す第1変形例のように、位置決め部材1は、治具5を介して被写体90に固定されていてもよい。具体的には、位置決め部材1の各々は、固定用の治具5を介して、被写体90に固定されてもよい。この場合、上記実施形態における被写体90に位置決め部材1を固定するステップS1bの処理において、位置決め部材1が固定された治具5を、被写体90に固定すればよい。これにより、たとえば、位置決め部材1被写体90に接触した状態で固定することが困難な場合でも、治具5を介して被写体90に位置決め部材1を固定することができる。その結果、位置決め部材1の選択の自由度を向上させることが可能となるので、操作者の利便性を向上させることができる。なお、治具5は、X線CT撮影を行う際に、被写体90と位置決め部材1との相対位置が変化しないように、剛性が高い材料によって構成されることが好ましい。治具5は、たとえば、樹脂材料、または、金属材料によって形成されることが好ましい。
【0106】
また、たとえば、図19の第2変形例に示すように、箱状形状の治具5aの内周面に少なくとも3つの位置決め部材1を設け、箱状形状の治具5aの内部に被写体90を固定することにより、位置決め部材1と被写体90とを固定するように構成されていてもよい。なお、第2変形例に示すように、治具5aが箱状形状を有する場合、3次元座標測定装置300のプローブ310が位置決め部材1に接触することが困難になる。したがって、治具5aが箱状形状を有する場合、相対位置の情報32の取得は、非接触式の3次元座標測定装置を用いて行えばよい。また、箱状形状ではなく、枠状形状を有する治具(図示せず)によって、位置決め部材1を被写体90に対して固定するように構成してもよい。この場合、治具が枠状形状を有しているため、接触式の3次元座標測定装置300を用いて、相対位置の情報32を取得することができる。
【0107】
また、上記実施形態では、位置合わせ部13が、単一の部品である被写体90の位置合わせを行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図20に示す第3変形例のように、位置合わせ部13は、第1部品90cと、第2部品90dとが組み合わされた被写体90の位置合わせを行うように構成されていてもよい。第3変形例のように、被写体90が、第1部品90c、および、第2部品90dの複数の部品で構成される場合には、CTデータ30を取得するステップS4において、各部品(第1部品90c、第2部品90d)に対して少なくとも3つの位置決め部材1が配置された状態で取得されたCTデータ30を取得すればよい。これにより、第1部品90cおよび第2部品90dの各々に少なくとも3つの位置決め部材1が設けられるので、位置決め部材1によってCTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行うことにより、第1部品90cおよび第2部品90dの各々の製造精度のみならず、組み立て精度についても検証することができる。
【0108】
また、上記実施形態では、位置決め部材1が、等方的な形状として、球状形状を有する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、位置決め部材1は、等方的な形状として、立方体形状を有していてもよい。また、位置決め部材1は、等方的な形状として、立方体や直方体に凹球面が設けられることにより形成される形状を有していてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、位置決め部材1が、等方的な形状を有している構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、位置決め部材1は、等方的な形状を有していなくてもよい。しかしながら、位置決め部材1が等方的な形状を有していない場合、X線CT撮影において、撮影角度によってX線が透過する経路長の差が大きくなるため、位置決め部材1の形状を精度よく取得することが困難になる。この場合、CTデータ30における位置決め部材1の位置情報(第1位置情報33)を精度よく得することが困難になる。そのため、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせの精度が低下する。したがって、位置決め部材1は、等方的な形状を有していることが好ましい。
【0110】
また、上記実施形態では、第1位置情報33がCTデータ30における位置決め部材1の中心点2であり、第2位置情報34が設計データ31における位置決め部材1の中心点2である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1位置情報33は、CTデータ30における位置決め部材1の中心点2以外の点の位置情報であってもよい。また、第2位置情報34は、設計データ31における位置決め部材1の中心点2以外の点の位置情報であってもよい。しかしながら、第1位置情報33がCTデータ30における位置決め部材1の中心点2以外の点の位置情報であり、第2位置情報34が設計データ31における位置決め部材1の中心点2外の位置情報得である場合、第1位置情報33と第2位置情報34とを用いる位置合わせが複雑化する。したがって、第1位置情報33がCTデータ30における位置決め部材1の中心点2であり、第2位置情報34が設計データ31における位置決め部材1の中心点2であることが好ましい。
【0111】
また、上記実施形態では、相対位置の情報32を取得する際に、接触式の3次元座標測定装置300を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、非接触式の3次元座標測定装置を用いて、相対位置の情報32を取得してもよい。相対位置の情報32を精度よく取得することが可能であれば、相対位置の情報32を取得する装置および手法は問わない。
【0112】
また、上記実施形態では、位置決め部材1の少なくとも1つを、被写体90の長手方向の一方側の端部91eと長手方向の中心92とのうち、一方側の端部91eに近い位置に配置し、他の少なくとも1つを、長手方向の他方側の端部91fと長手方向の中心92とのうち、他方側の端部91fに近い位置に配置する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、位置決め部材1を、被写体90の長手方向の中心92に近い位置に配置してもよい。しかしながら、位置決め部材1を被写体90の長手方向の中心92に近い位置に配置する場合、平面50の大きさ(面積)が小さくなる。この場合、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせの精度が低下する。したがって、位置決め部材1の少なくとも1つを、被写体90の長手方向の一方側の端部91eと長手方向の中心92とのうち、一方側の端部91eに近い位置に配置し、他の少なくとも1つを、長手方向の他方側の端部91fと長手方向の中心92とのうち、他方側の端部91fに近い位置に配置することが好ましい。
【0113】
また、上記実施形態では、位置決め部材1の少なくとも2つが、被写体90の互いに異なる面(第1面91aおよび第2面91c)に配置される構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、位置決め部材1の少なくとも2つは、被写体90の同一面上に配置されてもよい。この場合、平面50の大きさ(面積)が小さくならないように、位置決め部材1の少なくとも2つをなるべく離間した位置に配置することが好ましい。
【0114】
また、上記実施形態では、位置決め部材1が、被写体90と同一または類似するX線の透過率を有する材料によって形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、位置決め部材1は、被写体90のX線の透過率よりも、低いX線の透過率を有する材料によって形成されていてもよい。しかしながら、位置決め部材1のX線の透過率が、被写体90のX線の透過率よりも低い場合、CTデータ30において、位置決め部材1の近傍にアーチファクトが生じる可能性がある。この場合、CTデータ30における被写体90の形状が把握することが困難になる場合がある。したがって、位置決め部材1は、被写体90と同一または類似するX線の透過率を有する材料によって形成されることが好ましい。
【0115】
また、上記実施形態では、3次元形状データ処理装置100が、いわゆるパーソナルコンピュータであり、X線CT撮像装置200とは別体で設けられる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線CT撮像装置200の制御部230において、上記実施形態における3次元形状の位置合わせ方法を実行するように構成されていてもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、単一のプロセッサ10により、全てのデータ処理(データ取得部11、相対位置情報取得部12、位置合わせ部13、第1位置情報取得部14、第2位置情報取得部15としての各処理)を実行する例を示したが、本発明はこれに限られない。3次元形状の位置合わせ方法の全ての処理を、3次元形状データ処理装置100が行わなくてもよい。すなわち、上記実施形態におけるステップS1の処理は、人が行ってもよい。また、X線CT撮影を行うステップS2の一部、および、相対位置の測定を行うステップS3の一部に、人が介在するステップが含まれていてもよい。また、CTデータ30における被写体90と、設計データ31における被写体90との位置合わせを行う処理は、複数のプロセッサによって分担して実行されてもよい。1つ1つの処理が別々のプロセッサによって実行されてもよい。複数のプロセッサは、別々のコンピュータに設けられていてもよい。つまり、3次元形状データ処理装置100が、データ処理を行う複数台のコンピュータによって構成されていてもよい。
【0117】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0118】
(項目1)
少なくとも3つの位置決め部材を被写体とともにX線CT撮影することにより取得された、前記被写体および前記位置決め部材の3次元のCTデータを取得するステップと、
前記被写体と、前記位置決め部材の各々との相対位置を測定するステップと、
前記CTデータと、前記被写体の3次元の設計データと、前記相対位置の情報とに基づいて、前記CTデータにおける前記被写体と、前記設計データにおける前記被写体との位置合わせを行うステップと、を備える、3次元形状の位置合わせ方法。
【0119】
(項目2)
前記位置決め部材は、等方的な形状を有しており、
前記CTデータにおける前記位置決め部材の前記等方的な形状に基づいて、前記CTデータにおける前記位置決め部材の位置情報である第1位置情報を取得するステップをさらに備える、項目1に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0120】
(項目3)
前記位置決め部材は、前記等方的な形状として、球状形状を有しており、
前記第1位置情報を取得するステップにおいて、前記CTデータにおける球状形状の前記位置決め部材の表面の位置情報に基づいて、前記第1位置情報を取得する、項目2に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0121】
(項目4)
前記相対位置の情報は、前記被写体に設定された基準位置の位置情報と、前記位置決め部材の各々の位置情報とを含み、
前記基準位置の位置情報の実測値と前記設計データにおける前記基準位置の位置情報とに基づいて、前記設計データにおける前記位置決め部材の位置情報である第2位置情報を取得するステップ、をさらに備え、
前記位置合わせを行うステップにおいて、前記第1位置情報と前記第2位置情報とに基づいて、前記CTデータにおける前記被写体と、前記設計データにおける前記被写体との位置合わせを行う、項目2または3に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0122】
(項目5)
前記位置合わせを行うステップにおいて、前記第1位置情報の各々における位置と、前記第1位置情報に対応する前記第2位置情報の各々における位置とを合わせることにより、前記CTデータにおける前記被写体と、前記設計データにおける前記被写体との位置合わせを行う、項目4に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0123】
(項目6)
前記第1位置情報は、前記CTデータにおける前記位置決め部材の各々の中心点の位置情報であり、
前記第2位置情報は、前記設計データにおける前記位置決め部材の各々の中心点の位置情報である、項目4または5に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0124】
(項目7)
前記相対位置を測定するステップにおいて、前記被写体および前記位置決め部材の各々に対してプローブを接触させることにより、前記相対位置の測定を行う、項目6に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0125】
(項目8)
前記基準位置は、前記被写体の表面に設けられた円孔の中心のうちの、前記表面と同一平面に位置する中心の位置である、項目4~7のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0126】
(項目9)
前記位置決め部材の各々は、各々の中心位置を直線で結んだ際に、前記直線によって平面が形成されるような位置に配置される、項目1~8のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0127】
(項目10)
前記位置決め部材のうち、少なくとも1つを、前記被写体の長手方向の一方側の端部と前記長手方向の中心とのうち、前記一方側の端部に近い位置に配置し、他の少なくとも1つを、前記長手方向の他方側の端部と前記長手方向の中心とのうち、前記他方側の端部に近い位置に配置するステップをさらに備える、項目9に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0128】
(項目11)
前記位置決め部材を配置するステップにおいて、前記位置決め部材は、少なくとも2つを、前記被写体の互いに異なる面に配置する、項目10に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0129】
(項目12)
前記位置決め部材は、前記被写体と同一または類似するX線の透過率を有する材料によって形成される、項目1~11のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0130】
(項目13)
前記位置決め部材の各々を、前記被写体に接触した状態で前記被写体に固定するステップをさらに備える、項目1~12のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0131】
(項目14)
前記位置決め部材の各々を、固定用の治具を介して、前記被写体に固定するステップをさらに備える、項目1~13のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0132】
(項目15)
前記CTデータを取得するステップにおいて、前記被写体が複数の部品で構成される場合には、各部品に対して少なくとも3つの前記位置決め部材が配置された状態で取得された前記CTデータを取得する、項目1~14のいずれか1項に記載の3次元形状の位置合わせ方法。
【0133】
(項目16)
少なくとも3つの位置決め部材を被写体とともにX線CT撮影することにより取得された、前記被写体および前記位置決め部材の3次元のCTデータを取得するデータ取得部と、
前記被写体と、前記位置決め部材の各々との相対位置の情報を取得する相対位置情報取得部と、
前記CTデータと、前記被写体の3次元の設計データと、前記相対位置の情報とに基づいて、前記CTデータにおける前記被写体と、前記設計データにおける前記被写体との位置合わせを行う位置合わせ部と、を備える、3次元形状データ処理装置。
【符号の説明】
【0134】
1、1a、1b、1c 位置決め部材
2、2a、2b、2c 位置決め部材の中心点
3 基準位置
4、4a、4b、4c 直線(位置決め部材の中心位置を結んだ直線)
5、5a 治具
11 データ取得部
12 相対位置情報取得部
13 位置合わせ部
14 第1位置情報取得部
15 第2位置情報取得部
30 CTデータ
31 設計データ
32 相対位置の情報
32a 基準位置の位置情報
32b 位置決め部材の位置情報
33 第1位置情報
34 第2位置情報
50 平面(位置決め部材の各々の中心位置を直線で結ぶことによって形成される平面)
90 被写体
90c、90d 複数の部品
91a 被写体の表面
91b 被写体の表面に設けられた円孔
91e 被写体の長手方向の一方側の端部
91f 被写体の長手方向の他方側の端部
92 被写体の長手方向の中心
100 3次元形状データ処理装置
300 3次元座標測定装置
310 プローブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20