(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20250304BHJP
B65H 5/08 20060101ALI20250304BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
G03G15/16
B65H5/08 H
G03G15/20 515
(21)【出願番号】P 2021137631
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2024-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 崇
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-050096(JP,A)
【文献】特開2021-009206(JP,A)
【文献】特開2021-032914(JP,A)
【文献】特開平08-241008(JP,A)
【文献】特開2000-019798(JP,A)
【文献】特開2013-174633(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0022889(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
5/04
5/08-5/20
5/24-5/38
29/52
G03G 13/02
13/14-13/16
13/20
15/02
15/14-15/16
15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持されていると共に回転径方向外側部分に第1溝部が形成され、回転径方向外側の面上を通過する記録媒体に画像が転写される転写胴と、
回転可能に支持されていると共に回転径方向外側部分に第2溝部が形成され、回転径方向外側の面上を通過する前記記録媒体に転写された前記画像が前記記録媒体に定着される定着胴と、
環状に形成されていると共に少なくとも前記転写胴と前記定着胴とに掛け渡され、前記転写胴及び前記定着胴の回転に伴い周回する周回部材と、
前記周回部材に支持されていると共に前記記録媒体を把持し、前記転写胴の回転径方向外側部分を通過する際に前記第1溝部内に配置され、前記定着胴の回転径方向外側部分を通過する際に前記第2溝部内に配置される把持部材と、
前記転写胴を回転させる第1駆動部と、
前記定着胴を回転させ、その出力トルクに対する前記定着胴の慣性モーメントの比が前記第1駆動部の出力トルクに対する前記転写胴の慣性モーメントの比よりも大きく設定された第2駆動部と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記定着胴の慣性モーメントが、前記転写胴の慣性モーメントよりも大きく設定された請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
回転可能に支持されていると共に回転径方向外側部分に第1溝部が形成され、回転径方向外側の面上を通過する記録媒体に画像が転写される転写胴と、
回転可能に支持されていると共に回転径方向外側部分に第2溝部が形成され、回転径方向外側の面上を通過する前記記録媒体に転写された前記画像が前記記録媒体に定着され、前記転写胴よりも質量が大きい定着胴と、
環状に形成されていると共に少なくとも前記転写胴と前記定着胴とに掛け渡され、前記転写胴及び前記定着胴の回転に伴い周回する周回部材と、
前記周回部材に支持されていると共に前記記録媒体を把持し、前記転写胴の回転径方向外側部分を通過する際に前記第1溝部内に配置され、前記定着胴の回転径方向外側部分を通過する際に前記第2溝部内に配置される把持部材と、
前記転写胴を回転させる第1駆動部と、
前記定着胴を回転させる第2駆動部と、
を備えた画像形成装置。
【請求項4】
前記転写胴の質量が30kg以下であり、前記定着胴の質量が50kg以上である請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写胴の質量が20kg以下であり、前記定着胴の質量が60kg以上である請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
回転可能に支持されていると共に回転径方向外側の面上にトナー像が形成される感光体と、
環状に形成されていると共に一方向へ周回する転写ベルトであって、前記感光体が外周面上で回転することで前記トナー像が転写される前記転写ベルトと、
をさらに備え、
前記感光体の質量が、前記定着胴の質量よりも小さく設定されている請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記感光体の質量が、前記転写胴の質量よりも小さい請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1駆動部の定格出力と前記第2駆動部の定格出力とが、同じ定格出力となっている請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第2駆動部の出力トルクに対する前記定着胴の質量の比が、前記第1駆動部の出力トルクに対する前記転写胴の質量の比よりも大きく設定されている請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、画像形成装置が開示されている。この文献に記載された画像形成装置は、画像が外面に転写される環状の転写ベルトと、転写ベルトの外面とで記録媒体を挟んで画像を転写ベルトから記録媒体に転写する転写領域を有する転写胴と、転写胴の軸方向両端側に配置された回転体と、を有する転写部と、を備えている。また、この画像形成装置は、回転体に巻き掛けられ、回転体の回転により周回する周回部材と、周回部材に取り付けられ、記録媒体を保持し、周回部材の周回により記録媒体を搬送して、転写領域を通過させる保持部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録媒体に画像を転写している際に、定着胴側で生じた振動が転写胴側へ伝わると、記録媒体へ転写される画像の画質が損なわれることが考えられる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、第2駆動部の出力トルクに対する定着胴の慣性モーメントの比と第1駆動部の出力トルクに対する転写胴の慣性モーメントの比とが等しい構成と比べて、記録媒体へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる画像形成装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の画像形成装置は、回転可能に支持されていると共に回転径方向外側部分に第1溝部が形成され、回転径方向外側の面上を通過する記録媒体に画像が転写される転写胴と、回転可能に支持されていると共に回転径方向外側部分に第2溝部が形成され、回転径方向外側の面上を通過する前記記録媒体に転写された前記画像が前記記録媒体に定着される定着胴と、環状に形成されていると共に少なくとも前記転写胴と前記定着胴とに掛け渡され、前記転写胴及び前記定着胴の回転に伴い周回する周回部材と、前記周回部材に支持されていると共に前記記録媒体を把持し、前記転写胴の回転径方向外側部分を通過する際に前記第1溝部内に配置され、前記定着胴の回転径方向外側部分を通過する際に前記第2溝部内に配置される把持部材と、前記転写胴を回転させる第1駆動部と、前記定着胴を回転させ、その出力トルクに対する前記定着胴の慣性モーメントの比が前記第1駆動部の出力トルクに対する前記転写胴の慣性モーメントの比よりも大きく設定された第2駆動部と、を備えている。
【0007】
第2の態様の画像形成装置は、第1の態様の画像形成装置において、前記定着胴の慣性モーメントが、前記転写胴の慣性モーメントよりも大きく設定されている。
【0008】
第3の態様の画像形成装置は、回転可能に支持されていると共に回転径方向外側部分に第1溝部が形成され、回転径方向外側の面上を通過する記録媒体に画像が転写される転写胴と、回転可能に支持されていると共に回転径方向外側部分に第2溝部が形成され、回転径方向外側の面上を通過する前記記録媒体に転写された前記画像が前記記録媒体に定着され、前記転写胴よりも質量が大きい定着胴と、環状に形成されていると共に少なくとも前記転写胴と前記定着胴とに掛け渡され、前記転写胴及び前記定着胴の回転に伴い周回する周回部材と、前記周回部材に支持されていると共に前記記録媒体を把持し、前記転写胴の回転径方向外側部分を通過する際に前記第1溝部内に配置され、前記定着胴の回転径方向外側部分を通過する際に前記第2溝部内に配置される把持部材と、前記転写胴を回転させる第1駆動部と、前記定着胴を回転させる第2駆動部と、を備えている。
【0009】
第4の態様の画像形成装置は、第3の態様の画像形成装置において、前記転写胴の質量が30kg以下であり、前記定着胴の質量が50kg以上である。
【0010】
第5の態様の画像形成装置は、第4の態様の画像形成装置において、前記転写胴の質量が20kg以下であり、前記定着胴の質量が60kg以上である。
【0011】
第6の態様の画像形成装置は、第1の態様~第5の態様のいずれか1つの態様の画像形成装置において、回転可能に支持されていると共に回転径方向外側の面上にトナー像が形成される感光体と、環状に形成されていると共に一方向へ周回する転写ベルトであって、前記感光体が外周面上で回転することで前記トナー像が転写される前記転写ベルトと、 をさらに備え、前記感光体の質量が、前記定着胴の質量よりも小さく設定されている。
【0012】
第7の態様の画像形成装置は、第6の態様の画像形成装置において、前記感光体の質量が、前記転写胴の質量よりも小さい。
【0013】
第8の態様の画像形成装置は、第1の態様~第7の態様のいずれか1つの態様の画像形成装置において、前記第1駆動部の定格出力と前記第2駆動部の定格出力とが、同じ定格出力となっている。
【0014】
第9の態様の画像形成装置は、第1の態様~第8の態様のいずれか1つの態様の画像形成装置において、前記第2駆動部の出力トルクに対する前記定着胴の質量の比が、前記第1駆動部の出力トルクに対する前記転写胴の質量の比よりも大きく設定されている。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様の画像形成装置では、第2駆動部の出力トルクに対する定着胴の慣性モーメントの比と第1駆動部の出力トルクに対する転写胴の慣性モーメントの比とが等しい構成と比べて、記録媒体へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0016】
第2の態様の画像形成装置では、定着胴の慣性モーメントと転写胴の慣性モーメントとが同じに設定されている構成や定着胴の慣性モーメントが転写胴の慣性モーメントよりも小さく設定されている構成と比べて、記録媒体へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0017】
第3の態様の画像形成装置では、転写胴の質量と定着胴の質量とが同じ質量に設定されている構成と比べて、記録媒体へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0018】
第4の態様の画像形成装置では、転写胴の質量及び定着胴の質量が上記の範囲外に設定されている構成と比べて、記録媒体へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0019】
第5の態様の画像形成装置では、転写胴の質量及び定着胴の質量が上記の範囲外に設定されている構成と比べて、記録媒体へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0020】
第6の態様の画像形成装置では、感光体の質量が、定着胴の質量と同じ質量又は定着胴の質量よりも大きく設定されている構成と比べて、転写ベルトに転写されるトナー像にズレが生じることを抑制することができる。
【0021】
第7の態様の画像形成装置では、感光体の質量が、転写胴の質量と同じ質量又は転写胴の質量よりも大きく設定されている構成と比べて、転写ベルトに転写されるトナー像にズレが生じることを抑制することができる。
【0022】
第8の態様の画像形成装置では、同じ定格出力の第1駆動部及び第2駆動部を用いることができる。
【0023】
第9の態様の画像形成装置では、第2駆動部の出力トルクに対する定着胴の質量の比と第1駆動部の出力トルクに対する転写胴の質量の比とが同じに設定されている構成や第2駆動部の出力トルクに対する定着胴の質量の比が、第1駆動部の出力トルクに対する転写胴の質量の比よりも小さく設定されている構成と比べて、記録媒体へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】画像形成装置の概略構成を示した正面図である
【
図2】
図1に示された画像形成装置の一部を拡大して示す拡大正面図である。
【
図3】定着胴が転写胴に対して軽い場合における定着胴の速度変動を示すグラフである。
【
図4】定着胴が転写胴に対して軽い場合における転写胴のトルク変動を示すグラフである。
【
図5】定着胴が転写胴に対して重い場合における定着胴の速度変動を示すグラフである。
【
図6】定着胴が転写胴に対して重い場合における転写胴のトルク変動を示すグラフである。
【
図7】定着胴が転写胴に対して軽い場合における転写胴の速度変動を示すグラフである。
【
図8】定着胴が転写胴に対して重い場合における転写胴の速度変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0026】
(画像形成装置10)
まず、画像形成装置10の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置10の概略構成を示した正面図である。なお、各図に示された矢印UPは、鉛直方向上側であって装置上方側を指す。また、矢印RHは、
図1に示されるように、水平方向の一方側であって、装置に正対した際の右側を指す。また、以下説明中において前提なく上下方向を指定した場合は、
図1に示された装置の上下方向を意味する。また、以下説明中において前提なく左右方向を指定した場合は、
図1に示された装置に正対した際の左右方向を意味する。さらに、以下説明中において前提なく前後方向を指定した場合は、
図1に示す装置に正対した際の前後方向(すなわち紙面に対する手前側及び奥側の方向)を意味する。
【0027】
画像形成装置10は、用紙にトナー像を形成する電子写真式の画像形成装置である。なお、用紙は記録媒体の一例であり、トナー像は画像の一例である。具体的には、画像形成装置10は、搬送部12と、画像形成部14と、定着部16と、を備えている。
【0028】
(搬送部12)
搬送部12は、用紙を搬送する機能を有している。具体的には、搬送部12は、用紙の搬送方向における先端部を把持するグリッパ18と、一対のチェーン20と、を有している。グリッパ18は、把持部材の一例である。一対のチェーン20は、周回部材の一例であり、環状に形成されている。この一対のチェーン20は、前後方向に間隔をおいて配置されている。なお、
図1では、一対のチェーン20のうち、前方側に配置されたチェーン20を図示している。また、
図1では、チェーン20及びグリッパ18を簡略化して示している。
【0029】
そして、一対のチェーン20の各々は、後述する転写胴46、定着胴56、第1中間軸部60及び第2中間軸部63間に掛け渡されている。詳述すると、一対のチェーン20の各々は、後述する転写胴46、定着胴56、第1中間軸部60及び第2中間軸部63に対する軸方向の一端側及び他端側にそれぞれ配置された図示しない一対のスプロケットに巻き掛けられている。これにより、転写胴46、定着胴56、第1中間軸部60及び第2中間軸部63が互いに同期して回転するようになっている。
【0030】
搬送部12では、グリッパ18が、図示しない収容部から送られた用紙の先端部を把持する。また、搬送部12では、グリッパ18が用紙の先端部を把持した状態で、チェーン20が矢印G方向へ周回することで用紙を搬送し、後述の対向位置54(すなわち二次転写位置)を通過させる。さらに、搬送部12では、グリッパ18が、用紙を対向位置54(すなわち二次転写位置)を通過させた後、定着部16へ搬送する。
【0031】
(画像形成部14)
画像形成部14は、用紙に画像を形成する機能を有している。具体的には、画像形成部14は、電子写真方式によりトナー像を形成するトナー像形成部28と、トナー像形成部28で形成されたトナー像を用紙に転写する転写部30と、を有している。
【0032】
(トナー像形成部28)
トナー像形成部28は、色ごとにトナー像を形成するように複数備えられている。本実施形態では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の計4色のトナー像形成部28が備えられている。
図1に示す(Y)、(M)、(C)、(K)の符号は、上記各色に対応する構成部分を示している。また、各色のトナー像形成部28は、用いるトナーを除き同様に構成されているので、各色のトナー像形成部28を代表して、
図1ではトナー像形成部28(Y)を構成する各要素に符号を付している。
【0033】
各色のトナー像形成部28は、回転する円筒状の感光体32と、感光体32を帯電する帯電器34と、を有している。さらに、トナー像形成部28は、帯電した感光体32に露光用の光を照射して静電潜像を形成する露光部36と、トナーを含んだ現像剤によって静電潜像をトナー層によって形成された画像として現像するための現像部38と、を備えている。さらに、トナー像形成部28は、感光体32から転写ベルト42へトナーが転写された後、感光体32の表面に残ったトナーを除去するクリーナ40を備えている。
【0034】
(転写部30)
転写部30は、各色の感光体32のトナー像を、当該感光体32が転写ベルト42上で回転することで当該転写ベルト42に重畳して一次転写し、該重畳されたトナー像を用紙に二次転写する機能を有している。具体的には、転写部30は、中間転写体としての転写ベルト42と、一次転写ロール44と、転写胴46と、二次転写ロール48(転写ロールの一例)と、を備えている。
【0035】
一次転写ロール44は、感光体32に形成されたトナー像を、感光体32と一次転写ロール44との間の一次転写位置50において、転写ベルト42の外周面に転写する機能を有している。
【0036】
転写ベルト42は、無端状(すなわち環状)を成し、二次転写ロール48及び複数のロール52に巻き掛けられることで、二次転写ロール48及び複数のロール52に支持され、姿勢が決められている。転写ベルト42は、複数のロール52の少なくとも1つが回転駆動されることで、矢印X方向へ周回し、一次転写された画像を対向位置54へ搬送する。
【0037】
転写胴46は、転写ロール48と協同して転写ベルト42に転写されたトナー像を用紙に転写する機能を有している。転写胴46は、転写ベルト42に対向するように、転写ベルト42の左下側に配置されている。この転写胴46は、前後方向を軸方向とする円筒状に形成されている。転写胴46は、チェーン20が巻き掛けられた図示しないスプロケットと一体に回転する。転写胴46の回転径方向外側の部分である外周部には、グリッパ18との干渉を抑制するための凹溝46A(第1溝部の一例)が形成されている。グリッパ18は、転写胴46と二次転写ロール48との間を通過する際に、凹溝46Aに配置された状態で通過する。
【0038】
二次転写ロール48は、転写胴46との間に転写ベルト42が配置された状態で、転写胴46と予め定められた対向位置54で対向している。具体的には、二次転写ロール48は、転写胴46に対する右上側に配置されている。
【0039】
転写部30では、グリッパ18及びチェーン20により搬送される用紙を、対向位置54にて転写ベルト42と転写胴46とで挟み、転写胴46と二次転写ロール48との間に二次転写バイアスが印加されることで発生した静電力により、転写ベルト42の外周面に転写されたトナー像が該用紙に対向位置54にて転写される。したがって、対向位置54は、画像が二次転写される二次転写位置ともいえる。さらに、対向位置54は、画像が用紙に形成される画像形成位置ともいえる。対向位置54は、転写ベルト42(すなわち二次転写ロール48)と転写胴46とで用紙を挟み込む挟込位置(すなわち、挟込領域)ともいえる。さらに、対向位置54は、二次転写ロール48と転写ベルト42とが接触する位置(すなわち接触領域)ともいえる。
【0040】
(定着部16)
図1に示される定着部16は、用紙の画像を用紙に定着させる機能を有している。具体的には、定着部16は、定着胴56と、圧力ロール58と、を有している。圧力ロール58は圧力部の一例である。定着部16では、加熱と、圧力ロール58と定着胴56との間の圧力によって、用紙に転写された画像が、用紙に定着される。
【0041】
定着胴56は、前後方向を軸方向とする円筒状に形成されている。この定着胴56の外径は、転写胴46の外径と定められた公差の範囲内において同じ寸法に設定されている。また、定着胴56は、転写胴46に対して左側に配置されていると共に転写胴46と定められた公差の範囲内において上下方向の同じ位置に配置されている。また、定着胴56は、チェーン20が巻き掛けられた図示しないスプロケットと一体に回転する。このスプロケットの歯数は、転写胴46と一体に回転するスプロケットと同じ歯数に設定されている。定着胴56の回転径方向外側の部分である外周部には、グリッパ18との干渉を抑制するための凹溝56A(第2溝部の一例)が形成されている。本実施形態では、凹溝56Aの各部の寸法が、転写胴46の凹溝46Aの各部の寸法と定められた公差の範囲内において同一の寸法に設定されている。グリッパ18は、定着胴56と圧力ロール58との間を通過する際に、凹溝56Aに配置された状態で通過する。
【0042】
なお、本実施形態では、圧力ロール58が定着胴56の凹溝56A上を通過する際に、圧力ロール58を定着胴56から離間させ、圧力ロール58が定着胴56の凹溝56A上を通過完了する際に、圧力ロール58を定着胴56側へ近接させる(元の位置に戻す)機構を備えている。なお、この機構が設けられてない構成としてもよい。
【0043】
そして、定着部16では、グリッパ18及びチェーン20により搬送される用紙が、定着胴56と圧力ロール58とで挟まれることで、用紙に転写された画像が、用紙に定着される。したがって、用紙が定着胴56と圧力ロール58とで挟まれる位置は、画像が定着される定着位置ともいえる。さらに、この位置は、圧力ロール58と定着胴56とで用紙を挟み込む挟込位置(すなわち、挟込領域)ともいえる。さらに、この位置は、圧力ロール58と定着胴56とが接触する位置(すなわち接触領域)ともいえる。
【0044】
本実施形態では、転写胴46の回転方向上流側かつ定着胴56の回転方向下流側においてチェーン20が巻きかけられる第1中間軸部60及び第2中間軸部63を備えている。第1中間軸部60及び第2中間軸部63は、内側中間軸部の一例である。
【0045】
第1中間軸部60及び第2中間軸部63は、前後方向を軸方向として回転可能に支持されている。第1中間軸部60及び第2中間軸部63は、一対のチェーン20がそれぞれ巻き掛けられる一対のスプロケットと、一対のスプロケットを軸方向に連結する軸部材と、軸部材に固定されたフライホイールと、を含んで構成されている。
【0046】
本実施形態では、第1中間軸部60は、定着胴56に対して下方側に配置されている。この第1中間軸部60には、チェーン20の内側から当該チェーン20が巻き掛けられている。また、第2中間軸部63は、第1中間軸部60に対して右側かつ転写胴46に対して左側に配置されている。この第2中間軸部63には、チェーン20の内側から当該チェーン20が巻き掛けられている。
【0047】
(転写される画像の画質が損なわれることを抑制するための構成)
次に、本実施形態の要部構成について説明する。
【0048】
ところで、
図2に示されるように、定着胴56の凹溝56Aにおける回転方向の端部と圧力ロール58とが接触すると、定着胴56に速度変動(回転数変動)が生じる。特に、定着胴56の凹溝56Aにおける回転方向上流側端部56Bと圧力ロール58とが接触したときに、定着胴56に速度変動(回転数変動)が生じる。また、定着胴56に速度変動(回転数変動)が生じると、転写胴46や感光体32にも速度変動(回転数変動)が生じる。そこで、本実施形態では、転写胴46や感光体32の速度変動を抑制することで、用紙へ転写される画像や転写ベルト42に転写されるトナー像の画質が損なわれることを抑制している。以下、転写胴46や感光体32の速度変動を抑制するための構成について説明する。
【0049】
図2に示されるように、本実施形態では、転写胴46を回転させる第1モータ64と、定着胴56を回転させる第2モータ66と、が設けられている。なお、第1モータ64及び第2モータ66は、一例としてACサーボモータである。第1モータ64の回転は第1減速機65で減速されて転写胴46に伝達されるようになっている。また、第2モータ66の回転は第2減速機67で減速されて定着胴56に伝達されるようになっている。ここで、第1モータ64及び当該第1モータ64の回転を減速して転写胴46へ伝達する第1減速機65は、転写胴46を回転させる第1駆動部68を構成している。また、第2モータ66及び当該第2モータ66の回転を減速して定着胴56へ伝達する第2減速機67は、定着胴56を回転させる第2駆動部70を構成している。
【0050】
なお、本実施形態では、第1駆動部68を構成する第1モータ64の定格出力と第2駆動部70を構成する第2モータ66の定格出力とが、一例として同じ定格出力である1500Wとなっている。また、第1駆動部68を構成する第1減速機65の減速比と第2駆動部70を構成する第2減速機67の減速比とが、一例として同じ減速比である40となっている。これにより、第1モータ64の速度(回転速度)が第1減速機65で1/40に減速されて転写胴46に伝達され、第2モータ66の速度(回転速度)が第2減速機67で1/40に減速されて定着胴56に伝達されるようになっている。
【0051】
また、第1モータ64の回転及び第2モータ66の回転は、それぞれ独立して制御される。第1モータ64の回転は、図示しないエンコーダによって検出される。そして、このエンコーダによって検出された回転が目標値に近づくように、第1モータ64の回転が制御される。これと同様に、第2モータ66の回転は、図示しないエンコーダによって検出される。そして、このエンコーダによって検出された回転が目標値に近づくように、第2モータ66の回転が制御される。
【0052】
また、本実施形態では、定着胴56の肉抜き部分の体積やフライホイールの質量等及び転写胴46の肉抜き部分の体積やフライホイールの質量等が調整されることにより、定着胴56の慣性モーメントが、転写胴46の慣性モーメントよりも大きく設定されている。これにより、第2駆動部70の出力トルクに対する定着胴56の慣性モーメントの比が、第1駆動部68の出力トルクに対する転写胴46の慣性モーメントの比よりも大きくなっている。すなわち、第2駆動部70の出力トルク(定格トルク)をT2とし、定着胴56の回転軸まわりの慣性モーメントをI2とし、第1駆動部68の出力トルク(定格トルク)をT1とし、転写胴46の回転軸まわりの慣性モーメントをI1とした場合に、以下の式1を満たすようになっている。
(I2/T2)>(I1/T1) ・・・式1
なお、定格トルクとは、定格電圧、定格周波数において回転が安定後に、定格出力が発生した際の駆動トルクをいう。従って、定格電圧、定格周波数で第2駆動部70を駆動する場合には、第2駆動部70の出力トルクは定格トルクとなる。これに対して、定格電圧、定格周波数とは異なる電圧、周波数で第2駆動部70を駆動する場合には、当該電圧、定格周波数において回転が安定後の出力トルクが、第2駆動部70の出力トルクとなる。
【0053】
また、本実施形態では、定着胴56の質量が、転写胴46の質量よりも大きくなっている。これにより、第2駆動部70の出力トルクに対する定着胴56の質量の比が、第1駆動部68の出力トルクに対する転写胴46の質量の比よりも大きくなっている。すなわち、転写胴46の質量をM2とし、転写胴46の質量をM1とした場合に、以下の式2を満たすようになっている。なお、定着胴56の各部の寸法と転写胴46の各部の寸法とが定められた公差の範囲内において同一の寸法に設定されている構成においては、式1を満たせば式2も満たす。これと同様に、式2を満たせば式1も満たす。
(M2/T2)>(M1/T1) ・・・式2
【0054】
ここで、一例として、転写胴46の質量M1を30kg以下に設定すると共に、定着胴56の質量M2を50kg以上に設定することができる。より好ましくは、転写胴46の質量M1を20kg以下に設定すると共に、定着胴56の質量M2を60kg以上に設定するとよい。
【0055】
図1に示されるように、本実施形態では、感光体32の質量M3が、定着胴56の質量M2よりも小さく設定されている。これに加えて、本実施形態では、感光体32の質量M3が、転写胴46の質量M1よりも小さく設定されている。すなわち、本実施形態では、以下の式3を満たすようになっている。
M2>M1>M3 ・・・式3
【0056】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0057】
以上説明した本実施形態の画像形成装置10では、定着胴56の慣性モーメントI2が、転写胴46の慣性モーメントI1よりも大きく設定されていることにより、第2駆動部70の出力トルクT2に対する定着胴56の慣性モーメントI2の比が、第1駆動部68の出力トルクT1に対する転写胴46の慣性モーメントI1の比よりも大きくなっている。すなわち、上記の式1を満たすようになっている。これにより、定着胴56側で発生した振動がチェーン20を介して転写胴46側へ伝達されることにより、転写胴46に速度変動が生じたとしても、定着胴56の慣性モーメントI2と転写胴46の慣性モーメントI1とが等しく設定されている構成と比べて、転写胴46の速度を第2駆動部70によって所定の速度に速やかに復帰させることができる。すなわち、転写胴46の速度変動を抑えることができる。その結果、二次転写位置である対向位置54において用紙へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0058】
なお、第1モータ64の定格出力を第2モータ66の定格出力よりも高く設定することや第1減速機65の減速比を第2減速機67の減速比よりも大きく設定することにより、第2駆動部70の出力トルクに対する定着胴56の慣性モーメントの比を第1駆動部68の出力トルクに対する転写胴46の慣性モーメントの比よりも大きくなるようにしてもよい。この場合、定着胴56の慣性モーメントと転写胴46の慣性モーメントとの差異が無い構成や定着胴56の慣性モーメントが転写胴46の慣性モーメントよりも小さい構成であったとしても、転写胴46の回転数を所定の回転数に速やかに復帰させることができる。すなわち、転写胴46に速度変動を抑えることができる。なお、定着胴56の質量が転写胴46の質量よりも軽い場合であっても、定着胴56及び転写胴46の外周部や内周部に質量集中部を設けることにより、定着胴56の慣性モーメントが転写胴46の慣性モーメントよりも大きくなるようにすることもできる。
【0059】
ここで、
図3及び
図4には、本実施形態の定着胴56の質量M2よりも軽い質量M2’に設定された比較例に係る定着胴56及び本実施形態の転写胴46の質量M1よりも大きくかつ質量M2’と等しい質量M1’に設定された比較例に係る転写胴46を備えた構成のグラフが示されている。
図3には、質量M2’に設定された比較例に係る定着胴56の速度V2を縦軸とし、時間tを横軸としたグラフが示されている。なお、時間t0は、定着胴56の凹溝56Aにおける回転方向上流側端部56Bと圧力ロール58とが接触したときと一致する。この図に示されるように、時間t0の後においては、定着胴56の速度V2が変動する。
【0060】
また、
図4には、質量M1’に設定された比較例に係る転写胴46のトルクU1を縦軸とし、時間tを横軸としたグラフが示されている。この図に示されるように、時間t0の後においては、転写胴46のトルクU1が変動する。
【0061】
以上の
図3及び
図4からわかるように、定着胴56の凹溝56Aにおける回転方向上流側端部56Bと圧力ロール58とが接触すると、これとほぼ同時に転写胴46のトルクT1が変動する。
【0062】
また、
図5及び
図6には、質量M2に設定された本実施形態の定着胴56及び質量M1に設定された本実施形態の転写胴46を備えた構成のグラフが示されている。
図5には、質量M2に設定された本実施形態の定着胴56の速度V2を縦軸とし、時間tを横軸としたグラフが示されている。この図に示されるように、時間t0の後においては、定着胴56の速度V2が変動するが、
図3の条件に対して、その変動幅が小さくなる。この効果は、定着胴の質量をM2’からM2にしたことによるものである。
【0063】
また、
図6には、質量M1に設定された本実施形態の転写胴46のトルクU1を縦軸とし、時間tを横軸としたグラフが示されている。この図に示されるように、時間t0の後においては、転写胴46のトルクU1は変動するが、
図3の条件に対して、その変動幅が小さくなる。この効果は、定着胴の質量をM2’からM2にしたことによるものである。
【0064】
以上の
図5及び
図6からわかるように、
図3の条件よりも定着胴56の質量を大きく設定すると共に、定着胴56の質量を転写胴46の質量よりも大きく設定することにより、
図3の条件に対して、転写胴46のトルクU1の変動幅を小さくすることができる。
【0065】
図7には、質量M2に設定された本実施形態の定着胴56及び質量M1に設定された本実施形態の転写胴46を備えた構成における転写胴46の速度V1を縦軸とし、時間tを横軸としたグラフが示されている。
図8には、質量M2に設定された本実施形態の定着胴56及び質量M1'に設定された比較例の転写胴46を備えた構成における転写胴46の速度V1を縦軸とし、時間tを横軸としたグラフが示されている。これの図からは、転写胴46の所定の速度v1からの変動及び所定の速度v1までの復帰の様子が読み取れる。これらの図に示されるように、
図7の条件では、
図8の条件と比べて、時間t0の後における転写胴46の所定の速度v1からの変動量を小さくしつつ速やかに速度v1に復帰させることができる。
【0066】
また、
図1に示されるように、本実施形態では、感光体32の質量M3が、定着胴56の質量M2よりも小さく設定されている。これにより、感光体32の質量M3が、定着胴56の質量M2と等しい又は大きく設定されている構成と比べて、定着胴56の速度変動に伴う感光体32の速度変動を小さくすることができる。これに加えて、本実施形態では、感光体32の質量M3が、転写胴46の質量M1よりも小さく設定されている。これにより、感光体32の質量M3が、転写胴46の質量M1と等しい又は大きく設定されている構成と比べて、転写胴46の速度変動に伴う感光体32の速度変動を小さくすることができる。その結果、一次転写位置50において転写ベルト42へ転写されるトナー像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0067】
なお、以上説明した各構成を適宜選択して組み合わせることができる。また、画像形成装置10を構成する各部材は、同様の機能を有する他の部材に置き換えることができる。
【0068】
以上説明したように、画像形成装置10では、第2駆動部70の出力トルクT2に対する定着胴56の慣性モーメントI1の比と第1駆動部68の出力トルクT1に対する転写胴46の慣性モーメントI1の比とが等しい構成と比べて、用紙へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0069】
画像形成装置10では、定着胴56の慣性モーメントI2と転写胴46の慣性モーメントI1とが同じに設定されている構成や定着胴56の慣性モーメントI2が転写胴46の慣性モーメントI1よりも小さく設定されている構成と比べて、用紙へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0070】
画像形成装置10では、転写胴46の質量M1と定着胴56の質量M2とが同じ質量に設定されている構成と比べて、用紙へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0071】
画像形成装置10では、転写胴46の質量M1及び定着胴56の質量M2が上記の範囲(質量M1が30kg以下かつ質量M2が50kg以上)外に設定されている構成と比べて、記録媒体へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0072】
画像形成装置10では、転写胴46の質量M1及び定着胴56の質量M2が上記の範囲(質量M1が20kg以下かつ質量M2が60kg以上)外に設定されている構成と比べて、記録媒体へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0073】
画像形成装置10では、感光体32の質量M3が、定着胴56の質量M2と同じ質量又は定着胴56の質量M2よりも大きく設定されている構成と比べて、転写ベルト42に転写されるトナー像にズレが生じることを抑制することができる。
【0074】
画像形成装置10では、感光体32の質量M3が、転写胴46の質量M1と同じ質量又は転写胴46の質量M1よりも大きく設定されている構成と比べて、転写ベルト42に転写されるトナー像にズレが生じることを抑制することができる。
【0075】
画像形成装置10では、同じ定格出力の第1駆動部68及び第2駆動部70を用いることができる。
【0076】
画像形成装置10では、第2駆動部70の出力トルクT2に対する定着胴56の質量M2の比と第1駆動部68の出力トルクT1に対する転写胴46の質量M1の比とが同じに設定されている構成や第2駆動部70の出力トルクT2に対する定着胴56の質量M2の比が、第1駆動部68の出力トルクT1に対する転写胴46の質量M1の比よりも小さく設定されている構成と比べて、用紙へ転写される画像の画質が損なわれることを抑制することができる。
【0077】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
10 画像形成装置。
18 グリッパ(把持部)
20 チェーン(周回部材)
32 感光体
42 転写ベルト
46 転写胴
46A 凹溝(第1溝部)
56 定着胴
56A 凹溝(第2溝部)
68 第1駆動部
70 第2駆動部