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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】燃料電池用流体機械
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/14 20060101AFI20250304BHJP
   F02B 37/10 20060101ALI20250304BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20250304BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20250304BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20250304BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20250304BHJP
【FI】
F01D5/14
F02B37/10 Z
F02B39/00 D
F02B39/00 Q
F01D25/00 F
F01D25/24 D
H01M8/04 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021191335
(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公開番号】P2023077852
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】楳山 亮
(72)【発明者】
【氏名】森 英文
(72)【発明者】
【氏名】秋本 健太
(72)【発明者】
【氏名】松岡 裕也
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/159744(WO,A1)
【文献】特表2015-505927(JP,A)
【文献】米国特許第05094587(US,A)
【文献】国際公開第2014/203372(WO,A1)
【文献】特開平09-144550(JP,A)
【文献】特表昭60-501016(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0104424(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012023011(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F01D 5/00 , 25/00
H01M 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸を回転させる電動モータと、
前記回転軸の回転によって燃料電池スタックに供給される空気を圧縮する圧縮部と、
前記回転軸の回転を補助する回転補助部と、を備え、
前記回転補助部は、
前記回転軸に設けられ、前記回転軸と一体回転するタービンホイールと、
前記タービンホイールが収容されるタービン室を形成し、前記タービンホイールと対向するシュラウド面を有するタービンハウジングと、を備え、
前記タービンホイールは、前記燃料電池スタックから排出されて前記タービン室に導入される排出ガスを前記回転軸の径方向から導入し、前記回転軸の軸線方向に排出することによって回転する燃料電池用流体機械であって、
前記タービンホイールの径、及び前記シュラウド面の径は、前記排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次拡径しており、
前記タービンホイールは、前記排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次拡径する複数の翼を有し、
子午面視において、複数の前記翼における前記排出ガスの流れ方向の下流に位置する端縁である下流端縁と前記回転軸の軸線とは直交しており、
前記子午面視において、前記下流端縁と複数の前記翼における前記シュラウド面側の縁である外縁とが区画するエッジの角度は鋭角であることを特徴とする燃料電池用流体機械。
【請求項2】
前記タービンホイールは、前記排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次縮径する外周面を有するハブを有し、
複数の前記翼は、前記外周面に設けられ、前記ハブの周方向に配列され
複数の前記翼における前記シュラウド面側の縁である外縁は、前記シュラウド面に沿って延びていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用流体機械。
【請求項3】
前記タービンハウジングは、前記翼と対向し、前記排出ガスを導入する導入口を有し、
複数の前記翼における前記導入口と対向する対向縁は、前記回転軸の軸線方向に対して、前記ハブの径が最大径から小さくなるにつれて前記回転軸から離間するように延びていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用流体機械。
【請求項4】
前記タービンハウジングは、前記翼と対向し、前記排出ガスを導入する導入口を有し、
複数の前記翼における前記導入口と対向する対向縁は、前記回転軸の軸線方向に対して、前記ハブの径が最大径から小さくなるにつれて前記回転軸の軸線方向に延びていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転軸と、電動モータと、圧縮部と、を備えた燃料電池用流体機械が知られている。電動モータは、回転軸を回転させる。圧縮部は、回転軸の回転によって駆動する。そして、圧縮部は、燃料電池スタックに供給される空気を圧縮する。また、燃料電池用流体機械は、回転軸の回転を補助する回転補助部を備えている場合がある。回転補助部は、例えば特許文献1に開示されているように、タービンホイールと、タービンハウジングと、を備えている。タービンホイールは、回転軸に設けられている。タービンホイールは、回転軸と一体回転する。タービンハウジングは、タービン室を形成する。タービン室には、タービンホイールが収容されている。また、タービンハウジングは、タービンホイールと対向するシュラウド面を有している。このような燃料電池用流体機械において、タービンホイールは、燃料電池スタックから排出されてタービン室に導入される排出ガスを回転軸の径方向から導入し、回転軸の軸線方向に排出することによって回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-204422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような燃料電池用流体機械において、図3に示すように、タービン効率ηは、速度比U/Cと関係がある。タービン効率ηは、速度比U/Cに対して上に凸となる特性がある。したがって、タービン効率ηは、所定の速度比U/C0において極大値ηmaxとなる。
【0005】
速度比U/Cは、タービンホイール周速Uと断熱速度Cとの比によって表される。タービンホイール周速Uは、タービンホイールの周方向の回転速度である。タービンホイール周速Uは、タービンホイールの回転数と、タービンホイールにおける排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径との積によって表される。断熱速度Cは、排出ガスの温度と圧力との関数によって表される。断熱速度Cは、ある温度と圧力とを有する排出ガスを、所定の温度及び圧力まで膨張させたときに得られる理論的なガス速度を意味する。
【0006】
ここで、燃料電池スタックから排出される排出ガスの温度及び圧力は、例えば、エンジンの排気に比べて大幅に低い。したがって、燃料電池用流体機械においては、断熱速度Cが比較的低いため、速度比U/Cが、所定の速度比U/C0よりも大きい速度比U/Cxとなってしまう。すると、タービン効率ηは、極大値ηmaxよりも低い値ηxとなってしまう。
【0007】
燃料電池スタックから排出される排出ガスの温度及び圧力は、燃料電池スタックに供給される空気の要求流量、温度、及び圧力によって一義的に決まる。したがって、燃料電池用流体機械において、断熱速度Cは、燃料電池スタックに供給される空気の要求流量、温度、及び圧力によって一義的に決まることになる。したがって、タービン効率ηを向上させるためには、タービンホイール周速Uを小さくする必要がある。
【0008】
タービンホイール周速Uを小さくするために、例えば、タービンホイールの回転数を小さくすることが考えられるが、回転軸の回転を補助するためには、タービンホイールの回転数を小さくすることは好ましくない。したがって、タービンホイールにおける排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径を小さくすることが考えられる。このとき、タービンホイールの径が、排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次縮径している構成であるタービンホイールの場合を考える。この場合、タービンホイールの入口径を小さくするにつれて、タービンホイールにおける排出ガスの流れ方向の下流に位置する出口径も小さくなる。すると、タービンホイールの回転によって流れる排出ガスがタービン室を通過し難くなる。よって、タービン室内において、排出ガスの流れ方向の上流の圧力が上昇するため、燃料電池スタックの入口の圧力を上昇させてしまうことになる。その結果として、圧縮部が消費する動力が大幅に増大してしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する燃料電池用流体機械は、回転軸と、前記回転軸を回転させる電動モータと、前記回転軸の回転によって燃料電池スタックに供給される空気を圧縮する圧縮部と、前記回転軸の回転を補助する回転補助部と、を備え、前記回転補助部は、前記回転軸に設けられ、前記回転軸と一体回転するタービンホイールと、前記タービンホイールが収容されるタービン室を形成し、前記タービンホイールと対向するシュラウド面を有するタービンハウジングと、を備え、前記タービンホイールは、前記燃料電池スタックから排出されて前記タービン室に導入される排出ガスを前記回転軸の径方向から導入し、前記回転軸の軸線方向に排出することによって回転する燃料電池用流体機械であって、前記タービンホイールの径、及び前記シュラウド面の径は、前記排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次拡径している。
【0010】
これによれば、タービンホイールにおける排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径が小さくなるため、タービンホイール周速が小さくなる。したがって、タービン効率が、極大値に近付く。その結果、燃料電池用流体機械において、タービン効率が向上する。そして、タービンホイールにおける排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径を小さくしても、タービンホイールにおける排出ガスの流れ方向の下流に位置する出口径が、入口径よりも小さくなることが無い。よって、タービンホイールの入口径を小さくしても、タービンホイールの回転によって流れる排出ガスがタービン室を通過し難くなることを抑制することができる。その結果、タービンホイール周速を小さくするために、タービンホイールの入口径を小さくしても、タービン室内において、排出ガスの流れ方向の上流の圧力が上昇してしまうことが抑制される。したがって、燃料電池スタックの入口の圧力を上昇させてしまうことが抑制される。以上により、圧縮部が消費する動力が増大することなく、タービン効率を向上させることができる。
【0011】
上記燃料電池用流体機械において、前記タービンホイールは、前記排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次縮径する外周面を有するハブと、前記外周面に設けられ、前記ハブの周方向に配列され、前記排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次拡径する複数の翼と、を有し、複数の前記翼における前記シュラウド面側の縁である外縁は、前記シュラウド面に沿って延びているとよい。
【0012】
これによれば、複数の翼におけるシュラウド面側の縁である外縁が、シュラウド面に沿って延びているため、複数の翼におけるシュラウド面側の縁である外縁とシュラウド面との間のクリアランスを一定に維持することができる。したがって、タービン効率をさらに向上させることができる。
【0013】
上記燃料電池用流体機械において、前記タービンハウジングは、前記翼と対向し、前記排出ガスを導入する導入口を有し、複数の前記翼における前記導入口と対向する対向縁は、前記回転軸の軸線方向に対して、前記ハブの径が最大径から小さくなるにつれて前記回転軸から離間するように延びているとよい。
【0014】
これによれば、タービンホイールにおける排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径と、タービンホイールにおける排出ガスの流れ方向の下流に位置する出口径との差を極力大きくすることができる。したがって、タービンホイールの入口径を小さくしても、タービンホイールの回転によって流れる排出ガスがタービン室を通過し難くなることをさらに抑制し易くすることができる。
【0015】
上記燃料電池用流体機械において、前記タービンハウジングは、前記翼と対向し、前記排出ガスを導入する導入口を有し、複数の前記翼における前記導入口と対向する対向縁は、前記回転軸の軸線方向に対して、前記ハブの径が最大径から小さくなるにつれて前記回転軸の軸線方向に延びているとよい。
【0016】
これによれば、排出ガスの運動エネルギーをタービンホイールに伝達させ易くすることができる。したがって、排出ガスの運動エネルギーがタービンホイールの回転エネルギーに変換され易くなり、タービンホイールで発生した回転エネルギーによって、回転軸の回転を補助し易くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、圧縮部が消費する動力が増大することなく、タービン効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態における燃料電池用流体機械を説明するための側断面図である。
図2】タービンホイール周辺を拡大して示す断面図である。
図3】タービン効率と速度比との関係を示すグラフである。
図4】別の実施形態におけるタービンホイール周辺を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、燃料電池用流体機械を具体化した一実施形態を図1図3にしたがって説明する。本実施形態の燃料電池用流体機械は、例えば、燃料電池車などの車両に搭載される燃料電池システムに用いられる。
【0020】
(燃料電池システム10について)
図1に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池スタック11と、燃料電池用流体機械12と、を備えている。燃料電池用流体機械12は、酸化剤ガスである空気を圧縮する。燃料電池スタック11には、燃料電池用流体機械12によって圧縮された空気が供給される。燃料電池スタック11は、例えば、複数のセルを有している。各セルは、酸素極と、水素極と、両極の間に配置された電解質膜とが積層されて構成されている。
【0021】
そして、燃料電池スタック11は、燃料ガスである水素と空気に含まれる酸素とを化学反応させて発電を行う。燃料電池スタック11の発電に寄与する酸素は、空気中に2割程度しか存在しない。したがって、燃料電池スタック11に供給された空気の8割程度は、燃料電池スタック11の発電に寄与されることなく燃料電池スタック11から排出ガスとして排出される。
【0022】
燃料電池スタック11は、図示しない走行用モータに電気的に接続されている。走行用モータは、燃料電池スタック11により発電された電力を電力源として駆動する。走行用モータの動力は、図示しない動力伝達機構を介して車軸に伝達され、車両は、アクセルペダルのアクセル開度に応じた車速で走行する。
【0023】
(燃料電池用流体機械12の全体構成)
燃料電池用流体機械12は、回転軸13と、電動モータ14と、圧縮部15と、備えている。電動モータ14は、回転軸13を回転させる。圧縮部15は、回転軸13の回転によって駆動する。本実施形態では、圧縮部15は、回転軸13の第1端部に連結されたコンプレッサインペラである。そして、圧縮部15は、燃料電池スタック11に供給される空気を圧縮する。
【0024】
(回転補助部16の構成)
燃料電池用流体機械12は、回転補助部16を備えている。回転補助部16は、回転軸13の回転を補助する。回転補助部16は、タービンホイール20と、タービンハウジング30と、を備えている。タービンホイール20は、回転軸13に設けられている。具体的には、タービンホイール20は、回転軸13の第2端部に連結されている。タービンホイール20は、回転軸13と一体回転する。
【0025】
タービンハウジング30は、タービン室31を形成する。タービン室31には、タービンホイール20が収容されている。タービンハウジング30は、円孔状の吐出口32を有する筒状である。吐出口32は、タービン室31に連通している。吐出口32の軸心は、回転軸13の軸線L1に一致している。また、タービンハウジング30は、吸入室33と、導入口34と、を有している。吸入室33は、タービン室31の周囲で吐出口32の軸心周りに延びている。吸入室33には、燃料電池スタック11から排出された排出ガスが吸入される。導入口34は、タービン室31と吸入室33とを連通している。導入口34は、回転軸13の径方向に延びている。そして、導入口34は、吸入室33に吸入された排出ガスを回転軸13の径方向からタービン室31に導入する。
【0026】
タービンホイール20は、燃料電池スタック11から排出されてタービン室31に導入される排出ガスを回転軸13の径方向から導入し、回転軸13の軸線方向に排出することによって回転する。タービンホイール20は、タービン室31に導入された排出ガスの運動エネルギーにより回転する。これにより、排出ガスの運動エネルギーがタービンホイール20の回転エネルギーに変換される。このように、タービンホイール20で発生した回転エネルギーは、回転軸13の回転を補助する。そして、タービン室31を通過した排出ガスは、吐出口32から外部へ吐出される。
【0027】
(シュラウド面35について)
図2に示すように、タービンハウジング30は、タービンホイール20と対向するシュラウド面35を有している。シュラウド面35は、タービン室31を形成している。シュラウド面35は、タービンホイール20を取り囲んでいる。シュラウド面35は、導入口34におけるタービン室31側の開口縁と吐出口32の内周面とを接続している。シュラウド面35の径は、導入口34から吐出口32に向かうにつれて漸次拡径している。したがって、シュラウド面35の径は、排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次拡径している。
【0028】
(ハブ21について)
タービンホイール20は、ハブ21と、複数の翼22と、を有している。ハブ21は、回転軸13と一体的に回転する。ハブ21は、回転軸13の第2端部に取り付けられている。ハブ21は、背面21aから先端面21bに向かうにつれて外径が拡径していく略円錐形状である。ハブ21は、背面21aから先端面21bに向かうにつれて漸次縮径する外周面21cを有している。タービン室31を流れる排出ガスの流れ方向は、導入口34から吐出口32に向かう方向である。したがって、ハブ21は、排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次縮径する外周面21cを有している。ハブ21の外周面21cは、回転軸13の軸線L1に向けて凹む湾曲面である。ハブ21の背面21aの外径は、ハブ21の径の最大径である。ハブ21の先端面21bの外径は、ハブ21の径の最小径である。
【0029】
(翼22について)
複数の翼22は、ハブ21の外周面21cに設けられている。複数の翼22は、ハブ21の外周面21cから突出している。複数の翼22は、ハブ21の外周面21cに対して、ハブ21の周方向に等間隔置きに配置されている。複数の翼22は、ハブ21の周方向に配列されている。タービンホイール20は、各翼22がシュラウド面35に対向した状態で、タービン室31内に収容されている。複数の翼22におけるシュラウド面35側の縁である外縁23は、ハブ21の背面21aから先端面21bに向かうにつれて漸次拡径している。したがって、各翼22は、排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次拡径している。このように、タービンホイール20の径、及びシュラウド面35の径は、排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次拡径している。
【0030】
複数の翼22の外縁23は、シュラウド面35に沿って延びている。したがって、各翼22の外縁23とシュラウド面35との間のクリアランスC1は、排出ガスの流れ方向で一定である。導入口34は、各翼22に対向している。したがって、各翼22は、導入口34と対向する対向縁24を有している。そして、複数の翼22における導入口34と対向する対向縁24は、回転軸13の軸線方向に対して、ハブ21の径が最大径から小さくなるにつれて回転軸13から離間するように延びている。各翼22の対向縁24の径は、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径である。各翼22の外縁23におけるハブ21の先端面21b側に位置する端部の径は、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の下流に位置する出口径である。
【0031】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
電動モータ14によって回転軸13が回転すると、圧縮部15が回転軸13の回転によって駆動し、圧縮部15が空気を圧縮する。圧縮部15で圧縮された空気は、燃料電池スタック11に供給される。燃料電池スタック11に供給された空気に含まれる酸素は、燃料電池スタック11の発電に寄与する。燃料電池スタック11から排出された排出ガスは、吸入室33に吸入される。吸入室33に吸入された排出ガスは、導入口34を通じてタービン室31に導入される。そして、タービン室31に導入された排出ガスの運動エネルギーによりタービンホイール20が回転する。これにより、排出ガスの運動エネルギーがタービンホイール20の回転エネルギーに変換される。このように、タービンホイール20で発生した回転エネルギーは、回転軸13の回転を補助する。そして、タービン室31を通過した排出ガスは、吐出口32から外部へ吐出される。
【0032】
図3のグラフは、タービン効率ηと速度比U/Cとの関係を示している。図3に示すように、タービン効率ηは、速度比U/Cに対して上に凸となる特性がある。したがって、タービン効率ηは、所定の速度比U/C0において極大値ηmaxとなる。
【0033】
ところで、このような燃料電池用流体機械12において、タービン効率ηは、速度比U/Cと関係がある。速度比U/Cは、タービンホイール周速Uと断熱速度Cとの比によって表される。タービンホイール周速Uは、タービンホイール20の周方向の回転速度である。タービンホイール周速Uは、タービンホイール20の回転数と、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径との積によって表される。断熱速度Cは、排出ガスの温度と圧力との関数によって表される。断熱速度Cは、ある温度と圧力とを有する排出ガスを、所定の温度及び圧力まで膨張させたときに得られる理論的なガス速度を意味する。
【0034】
ここで、燃料電池スタック11から排出される排出ガスの温度及び圧力は、例えば、エンジンの排気に比べて大幅に低い。したがって、燃料電池用流体機械12においては、断熱速度Cが比較的低いため、速度比U/Cが、所定の速度比U/C0よりも大きい速度比U/Cxとなってしまう。すると、タービン効率ηは、極大値ηmaxよりも低い値ηxとなってしまう。
【0035】
燃料電池スタック11から排出される排出ガスの温度及び圧力は、燃料電池スタック11に供給される空気の要求流量、温度、及び圧力によって一義的に決まる。したがって、燃料電池用流体機械12において、断熱速度Cは、燃料電池スタック11に供給される空気の要求流量、温度、及び圧力によって一義的に決まることになる。したがって、タービン効率ηを向上させるためには、タービンホイール周速Uを小さくする必要がある。
【0036】
タービンホイール周速Uを小さくするために、例えば、タービンホイール20の回転数を小さくすることが考えられるが、回転軸13の回転を補助するためには、タービンホイール20の回転数を小さくすることは好ましくない。したがって、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径を小さくすることが考えられる。
【0037】
そこで、タービンホイール20の径、及びシュラウド面35の径が、排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次拡径している。これによれば、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径が小さくなるため、タービンホイール周速Uが小さくなる。したがって、速度比U/Cが、所定の速度比U/C0に近付き、タービン効率ηが、極大値ηmaxに近付く。その結果、燃料電池用流体機械12において、タービン効率ηが向上する。
【0038】
そして、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径を小さくしても、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の下流に位置する出口径が、入口径よりも小さくなることが無い。よって、タービンホイール20の入口径を小さくしても、タービンホイール20の回転によって流れる排出ガスがタービン室31を通過し難くなることが抑制されている。その結果、タービンホイール周速Uを小さくするために、タービンホイール20の入口径を小さくしても、タービン室31内において、排出ガスの流れ方向の上流の圧力が上昇してしまうことが抑制される。したがって、燃料電池スタック11の入口の圧力が上昇させてしまうことが抑制される。以上により、圧縮部15が消費する動力が増大することなく、タービン効率ηが向上する。
【0039】
(効果)
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)タービンホイール20の径、及びシュラウド面35の径が、排出ガスの流れ方向の上流から下流に向けて漸次拡径している。これによれば、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径が小さくなるため、タービンホイール周速Uが小さくなる。したがって、速度比U/Cが、所定の速度比U/C0に近付き、タービン効率ηが、極大値ηmaxに近付く。その結果、燃料電池用流体機械12において、タービン効率ηが向上する。そして、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径を小さくしても、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の下流に位置する出口径が、入口径よりも小さくなることが無い。よって、タービンホイール20の入口径を小さくしても、タービンホイール20の回転によって流れる排出ガスがタービン室31を通過し難くなることを抑制することができる。その結果、タービンホイール周速Uを小さくするために、タービンホイール20の入口径を小さくしても、タービン室31内において、排出ガスの流れ方向の上流の圧力が上昇してしまうことが抑制される。したがって、燃料電池スタック11の入口の圧力を上昇させてしまうことが抑制される。以上により、圧縮部15が消費する動力が増大することなく、タービン効率ηを向上させることができる。
【0040】
(2)複数の翼22におけるシュラウド面35側の縁である外縁23が、シュラウド面35に沿って延びている。これによれば、複数の翼22におけるシュラウド面35側の縁である外縁23とシュラウド面35との間のクリアランスC1を一定に維持することができる。したがって、タービン効率ηをさらに向上させることができる。
【0041】
(3)複数の翼22における導入口34と対向する対向縁24は、回転軸13の軸線方向に対して、ハブ21の径が最大径から小さくなるにつれて回転軸13から離間するように延びている。これによれば、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の上流に位置する入口径と、タービンホイール20における排出ガスの流れ方向の下流に位置する出口径との差を極力大きくすることができる。したがって、タービンホイール20の入口径を小さくしても、タービンホイール20の回転によって流れる排出ガスがタービン室31を通過し難くなることをさらに抑制し易くすることができる。
【0042】
(変更例)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0043】
図4に示すように、複数の翼22における導入口34と対向する対向縁24が、回転軸13の軸線方向に対して、ハブ21の径が最大径から小さくなるにつれて回転軸13の軸線方向に延びていてもよい。これによれば、排出ガスの運動エネルギーをタービンホイール20に伝達させ易くすることができる。したがって、排出ガスの運動エネルギーがタービンホイール20の回転エネルギーに変換され易くなり、タービンホイール20で発生した回転エネルギーによって、回転軸13の回転を補助し易くすることができる。
【0044】
○ 実施形態において、複数の翼22におけるシュラウド面35側の縁である外縁23が、シュラウド面35に沿って延びていなくてもよい。要は、複数の翼22におけるシュラウド面35側の縁である外縁23とシュラウド面35との間のクリアランスC1が一定でなくてもよい。例えば、複数の翼22におけるシュラウド面35側の縁である外縁23とシュラウド面35との間のクリアランスC1が、排出ガスの流れ方向の上流から下流に向かうにつれて徐々に狭くなっていくようにしてもよい。また、例えば、複数の翼22におけるシュラウド面35側の縁である外縁23とシュラウド面35との間のクリアランスC1が、排出ガスの流れ方向の上流から下流に向かうにつれて徐々に広くなっていくようにしてもよい。
【0045】
○ 実施形態において、燃料電池用流体機械12は、燃料電池車に搭載され、燃料電池スタック11に対して空気を供給するために用いられるものに限らない。例えば、燃料電池用流体機械12は、車両に搭載されるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
11…燃料電池スタック、12…燃料電池用流体機械、13…回転軸、14…電動モータ、15…圧縮部、16…回転補助部、20…タービンホイール、21…ハブ、21c…外周面、22…翼、23…外縁、24…対向縁、30…タービンハウジング、31…タービン室、34…導入口、35…シュラウド面。
図1
図2
図3
図4