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特許7643344表示体の製造方法および表示体、ならびに表示体の真正の検証方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】表示体の製造方法および表示体、ならびに表示体の真正の検証方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/328 20140101AFI20250304BHJP
   B42D 25/40 20140101ALI20250304BHJP
   G03H 1/02 20060101ALI20250304BHJP
   B42D 25/41 20140101ALI20250304BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
B42D25/328 120
B42D25/40 100
G03H1/02
B42D25/41
G02B5/32
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021562694
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2020044934
(87)【国際公開番号】W WO2021112143
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2019218137
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】香田 祖光
(72)【発明者】
【氏名】籠谷 彰人
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/200030(WO,A1)
【文献】特開平08-099490(JP,A)
【文献】特開2013-020084(JP,A)
【文献】特許第6380100(JP,B2)
【文献】特開2001-315472(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176967(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0298205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/02
G02B 5/32
B42D 15/02
25/00-25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別情報から隠蔽コードを生成し、
前記隠蔽コードを暗号化して暗号文を生成し、
前記識別情報のコードおよび画像のうち少なくとも一方を熱転写およびレーザーエングレービングのうち少なくとも一方により基材に形成し、
前記隠蔽コードを熱転写またはセキュリティ印刷により前記基材に形成し、
前記暗号文を熱転写およびレーザーエングレービングのうち少なくとも一方により前記基材に記録する、
前記基材を備えた表示体の製造方法において、
ホログラム構造を有するホログラム転写箔に外部エネルギーを印加して前記基材にホログラムフィルムを熱転写することにより前記隠蔽コードが形成され、
前記ホログラム構造が複数転写され、前記ホログラム構造の少なくとも一つの再生像の前記基材の厚み方向の位置が、前記少なくとも一つの再生像とは前記基材の表面において異なる位置に再生される、他の再生像の前記基材の厚み方向の位置と異なっている表示体の製造方法
【請求項2】
識別情報のコードおよび隠蔽コードを取得し、
前記識別情報のコードおよび前記隠蔽コードのうち少なくとも一方を暗号化して暗号文を生成し、
前記識別情報の前記コードおよび画像のうち少なくとも一方を熱転写およびレーザーエングレービングのうち少なくとも一方により基材に形成し、
前記隠蔽コードを転写またはセキュリティ印刷により基材に形成し、
前記暗号文を転写およびレーザーエングレービングのうち少なくとも一方によりを基材に記録する、
表示体の製造方法において、
ホログラム構造を有するホログラム転写箔に外部エネルギーを印加して前記基材にホログラムフィルムを熱転写することにより前記隠蔽コードが形成され、
前記ホログラム構造が複数転写され、前記ホログラム構造の少なくとも一つの再生像の前記基材の厚み方向の位置が、前記少なくとも一つの再生像とは前記基材の表面において異なる位置に再生される、他の再生像の前記基材の厚み方向の位置と異なっている表示体の製造方法
【請求項3】
ホログラム構造を有する情報要素に外部エネルギーを印加して前記基材に熱転写することにより前記識別情報が形成される、
請求項1または2に記載の表示体の製造方法。
【請求項4】
ホログラム構造を有する情報要素を中間転写箔に熱転写して、前記暗号文を形成し、
前記中間転写箔を前記基材と接合する、
請求項1または2に記載の表示体の製造方法。
【請求項5】
ホログラム構造を有する情報要素を中間転写箔に熱転写して、前記暗号文を形成し、
前記中間転写箔を前記基材と接合する、
請求項1または2に記載の表示体の製造方法。
【請求項6】
第一領域と、第二領域と、第三領域とを有する基材を備えた表示体であって、
前記第一領域には識別情報のコードおよび画像のうち少なくとも一方が形成され、
前記第二領域には前記識別情報の少なくとも一部をコード化した情報を含む隠蔽コードが形成され、
前記第三領域には暗号化された暗号文が記録され、
前記暗号文は、前記識別情報のコードおよび前記隠蔽コードのうち少なくとも一方から生成されており、
前記隠蔽コードまたは前記暗号文を構成する複数の情報要素のうち少なくとも一つが、ホログラム構造を有し、
前記ホログラム構造を複数有し、
前記複数のホログラム構造のそれぞれの再生像は、前記基材の表面から離間した位置にあり、前記複数のホログラム構造のうち少なくとも一つの再生像の前記基材の厚み方向の位置が、前記少なくとも一つの再生像とは前記基材の表面において異なる位置に再生される、他の再生像の前記基材の厚み方向の位置と異なっている、
表示体。
【請求項7】
前記第一領域と、前記第二領域および前記第三領域の少なくとも一方とが、平面視において重なっている、
請求項6に記載の表示体。
【請求項8】
前記識別情報が前記基材に直接形成されている、
請求項6に記載の表示体。
【請求項9】
前記隠蔽コードまたは前記暗号文を構成する複数の情報要素のうち少なくとも一つが、前記基材に直接形成されている、
請求項6に記載の表示体。
【請求項10】
前記ホログラム構造が前記基材の内部に配置されている、
請求項6に記載の表示体。
【請求項11】
前記ホログラム構造が前記基材の表面上に配置されている、
請求項6に記載の表示体。
【請求項12】
前記隠蔽コードは、国名コード、地理コード、性別コード、言語コード、通貨コードを有する国際規格ISOに準拠したコードのいずれかを含む、
請求項6に記載の表示体。
【請求項13】
前記隠蔽コードが前記基材の内部に配置されている、
請求項6に記載の表示体。
【請求項14】
請求項6に記載の前記表示体の真正を検証する方法であって、
前記識別情報、および前記隠蔽コードを前記表示体から取得し、
取得された前記識別情報、および前記隠蔽コードから、前記表示体が真正であるか否かを検証する、
表示体の真正の検証方法。
【請求項15】
前記暗号文をさらに前記表示体から取得し、
取得された前記識別情報、前記隠蔽コードと、前記暗号文から復号した情報とが同一かどうかにより、前記表示体が真正であるか否かを検証する、
請求項14に記載の表示体の真正の検証方法。
【請求項16】
前記暗号文をさらに前記表示体から取得し、
前記暗号文から復号したデータが取得された前記識別情報および前記隠蔽コードのうち少なくとも一方を有するかどうかにより、前記表示体が真正であるか否かを検証する、
請求項14に記載の表示体の真正の検証方法。
【請求項17】
前記隠蔽コードがホログラムフィルムで記録され、
取得された前記識別情報から、前記隠蔽コードの読み出し条件が取得され、
前記読み出し条件に従って前記隠蔽コードが取得される、
請求項14から16のいずれか一項に記載の表示体の真正の検証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示体の製造方法および表示体、ならびに表示体の真正の検証方法に関する。
本願は、2019年12月2日に日本に出願された特願2019-218137号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
さらに、この表示体に係る読み取り方法、観察装置、および真正の検証方法にも言及する。
【背景技術】
【0002】
個人情報を含む表示体として、パスポートや運転免許証などの各種ID(IDentification)カードが知られている。IDカードの多くには、目視による個人情報の識別を行うために、顔画像や文字情報が表示されている。個人情報が単純に表示体上に印刷されているだけであると、容易に改ざんや偽造ができてしまう。
【0003】
表示体の偽造防止方法として、特許文献1には、ホログラム転写箔を表示体に付与することで、表示体の改ざん防止性を向上させることが記載されている。
特許文献2には、蛍光発光材料を用いて、可視光観察では透明で視認できないが、紫外光観察では視認できるように個人情報を付与することが記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の偽造防止技術は、既に広く知られていることに加え、虹色の回折光を出射する一般的なホログラムであれば、偽造は難しくなく、改善の余地がある。
特許文献3には、さらなる偽造防止方法として、特定波長の光をホログラムに照射することでホログラム上に表示される再生情報を用いて真正の検証を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開平6-67592号公報
【文献】日本国特許第3198324号公報
【文献】日本国特許第4677683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3の記載の技術では、再生情報は予め設計されており不変である。そのため、偽造者が再生情報を知ってしまうと、再生情報を模倣したホログラムが作製されてしまう可能性があり、いまだ改善の余地がある。
【0007】
上記事情を踏まえ、本発明は、簡素な構成で改ざんや偽造を好適に抑止できる表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、表示体の製造方法では、識別情報から隠蔽コードを生成し、前記隠蔽コードを暗号化して暗号文を生成し、前記識別情報のコードおよび画像のうち少なくとも一方を熱転写およびレーザーエングレービングのうち少なくとも一方により基材に形成し、前記隠蔽コードを熱転写またはセキュリティ印刷により前記基材に形成し、前記暗号文を熱転写およびレーザーエングレービングのうち少なくとも一方により前記基材に記録し、ホログラム構造を有するホログラム転写箔に外部エネルギーを印加して前記基材にホログラムフィルムを熱転写することにより前記隠蔽コードが形成され、前記ホログラム構造が複数転写され、前記ホログラム構造の少なくとも一つの再生像の前記基材の厚み方向の位置が、前記少なくとも一つの再生像とは前記基材の表面において異なる位置に再生される、他の再生像の前記基材の厚み方向の位置と異なっている
【0009】
本発明の第2の態様によれば、表示体は、第一領域と、第二領域と、第三領域とを有する基材を備えている。前記第一領域には識別情報が形成され、前記第二領域には前記識別情報の少なくとも一部をコード化した情報を含む隠蔽コードが形成されている。前記第三領域には暗号化された暗号文が記録されている。前記暗号文は、前記識別情報のコード及び前記隠蔽コードのうち少なくとも一方から生成されており、前記隠蔽コードまたは前記暗号文を構成する複数の情報要素のうち少なくとも一つが、ホログラム構造を有し、前記ホログラム構造を複数有し、前記複数のホログラム構造のそれぞれの再生像は、前記基材の表面から離間した位置にあり、前記複数のホログラム構造のうち少なくとも一つの再生像の前記基材の厚み方向の位置が、前記少なくとも一つの再生像とは前記基材の表面において異なる位置に再生される、他の再生像の前記基材の厚み方向の位置と異なっている
【0010】
本発明の第3の態様によれば、上記第1の態様に係る表示体が真正であるか否かを検証する表示体の真正の検証方法である。
真正の検証方法は、前記識別情報、および前記隠蔽コードを前記表示体から取得し、取得された前記識別情報、および前記隠蔽コードから、前記表示体が真正であるか否かを検証する。
【発明の効果】
【0011】
上記態様の表示体は、簡素な構成で改ざんや偽造を好適に抑止できる。さらに、特定の観察条件により、特別な視覚効果を発現する隠蔽コードで真正の検証が可能であり、加えて、暗号文によりフォレンジックな検証が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る表示体を概念的に示す平面図である。
図2A図1の表示体の斜視図である。
図2B図1の表示体の断面模式図であり、再生像の位置を模式的に示している。
図3A】基材と識別情報との位置関係の例を示している。
図3B】基材と識別情報との位置関係の例を示している。
図4A図1の表示体の第二領域の拡大模式図である。
図4B】第二領域のホログラム再生像の位置を模式的に示している。
図5A図1の表示体における第二領域および第三領域の位置の例を示している。
図5B図1の表示体における第二領域および第三領域の位置の例を示している。
図5C図1の表示体における第二領域および第三領域の位置の例を示している。
図6】表示体の製造方法に関わるプロセスフローの一例である。
図7】表示体の製造方法に関わるプロセスフローの一例である。
図8A】ホログラムフィルムの斜視図である。
図8B図8AのI-I線における断面図であり、再生像の位置を模式的に示している。
図9A】ホログラムフィルムから情報要素が転写されるプロセスを示す模式図である。
図9B】ホログラムフィルムから情報要素が転写されるプロセスを示す模式図である。
図10】表示体の真正の検証の流れを示すフローチャートである。
図11A】表示体の観察装置を示す模式図である。
図11B】表示体の観察装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一態様について、図1から図11を参照しながら説明する。
本発明の実施形態は、独自の単一の発明を元とする一群の実施形態である。また、本発明の各側面は、単一の発明を元とした一群の実施形態の側面である。本発明の各構成は、本開示の各側面を有しうる。本発明の各特徴は組み合わせ可能であり、各構成を成すことができる。したがって、本発明の各特徴、本発明の各構成、本開示の各側面、本発明の各実施形態は、組み合わせることが可能であり、その組み合わせは協同機能を発現し、相乗的な効果を発揮しうる。
図1は、本実施形態における表示体100を概念的に示す平面図である。表示体100は、第一領域11と、第二領域12と、第三領域13を有する。
【0014】
第一領域11には、識別情報21のコードおよび画像のうち少なくとも一方が形成されている。このコードは、可視とできる。また、リーダーにより識別できるものとできる。このリーダーは、ラインセンサーまたはイメージセンサーを備えてもよい。また、このリーダーは、光源を備えてもよい。図1に示すように、可視のコードは、テキスト、文字、数字、記号の組合せとできる。これらのコードは、目視により可読である。つまり、識別情報21は、目視により可読なコードとして記録できる。また、識別情報21の画像は、顔画像、サイン(Signature)としてもよい。識別情報21は、表示体100の所有者の個人情報とできる。所有者の個人情報は、氏名、生年月日、出身国、出身地、個人識別番号である。これら個人情報は文字、数字、記号などの組合せでコードとして記録できる。図1において、第一領域11内の楕円部には、所有者の顔画像が識別情報として記録されている。識別情報は、所有者の生体情報とできる。生体情報は、顔画像、サイン(Signature)の画像、生体特徴量とできる。生体特徴量は、第一領域11にコードとして記録できる。第一領域11に形成された識別情報は、この顔画像も識別情報の一部を構成している。また識別情報は、一定のルールに従い、コードに変換できる。つまり、識別情報からコードを生成できる。このコードはデジタルデータとできる。デジタルデータは、1byte以上、256byte以下とできる。また、画像をデジタルデータとした場合、1Mbyte以上、1Gbyte以下とできる。また、画像を10kbyte以上、1Mbyte未満のデジタルデータとしてもよい。コード、画像のデータは、固定長または可変長とできる。固定長であれば、データを処理しやすい。可変長であれば、データ量を小さくできる。識別情報は、デジタルデータのコードとする際に、離散化される。第一領域11に記録されたコードを解釈し、識別情報を得ることができる。コードは、識別情報と同一ではないが、識別情報から生成されたコードにより、特定の群から特定の単一または特定の複数の対象を識別し、選別できる。識別情報が製品のシリアル番号である場合は、複数の製品から対象の製品を特定することができる。識別情報が個人情報である場合は、識別情報から生成されたコードから、個人を特定することができる。
暗号文は、コードとして記録できる。コード、画像は、特定の物性値を有したエリアの形状、サイズ、配置として形成することができる。形成されたコードは、物質または物質に囲まれた空間として実在する。また、画像も特定の物性値を有したエリアの形状、サイズ、配置として記録することができる。記録された画像は、物質または物質に囲まれた空間として実在する。
【0015】
表示体100を形成する基材30は、例えばポリカーボネートのシートである。ポリカーボネートのシートは、そのレーザービームによる熱でポリカーボネート樹脂が炭化するため、レーザービームにより識別情報を第一領域にコードおよび画像のうち少なくとも一方を形成することが可能である。つまり、識別情報21は、レーザーエングレービングにより第一領域にコードおよび画像のうち少なくとも一方を形成できる。また、ポリカーボネートのシートは、そのレーザービームによる熱でポリカーボネート樹脂が炭化するため、レーザービームにより暗号文を第三領域へ記録することが可能である。つまり、暗号文を、レーザーエングレービングにより記録できる。これらの記録されたコードは、消去することが困難であるため、一度記録されたコードを書き換え、改ざんすることは困難である。
【0016】
識別情報21のコードおよび画像のうち少なくとも一方は熱転写で形成できる。識別情報21は基材30に直接的に熱転写されてもよい。あるいは、予め識別情報21を熱転写した基材を他の基材にラミネートしてもよい。このように、表示体100を形成してもよい。識別情報21の熱転写は、転写可能なインキ層が形成された熱転写リボン、および、熱転写可能なホログラムが形成されたホログラム転写箔のうち少なくとも一方を用いて、サーマルヘッドにより基材に部分的に熱転写することで、識別情報21を第一領域にコードおよび画像のうち少なくとも一方を形成できる。特に熱転写リボンを昇華型とすることで、高画質な画像を形成できる。ホログラム転写箔は赤、緑、青に対応した回折光を反射するホログラム構造が形成されたものとできる。この赤、緑、青に対応した回折光を反射するホログラム構造は転写箔の長手方向に順次形成されていてもよい。このようにすることでひとつのホログラム転写箔でカラーの画像を形成できる。ホログラム転写箔で所有者の顔画像を形成することは困難であるため、識別情報の画像として、ホログラム転写箔で所有者の顔画像を形成しその画像を所有者と対比することで、目視でなりすましがないかを検証できる。また熱転写可能なインキ層が形成された熱転写リボンおよび熱転写可能なホログラムが形成されたホログラム転写箔のうち少なくとも一方を、サーマルヘッドで部分的に基材に熱転写することで、暗号文25を第三領域に記録できる。言い換えると、暗号文25は、熱転写可能なインキ層が形成された転写箔、および、熱転写可能なホログラムが形成された転写箔のうち少なくとも一方をサーマルヘッドにより部分的に熱転写することで、第三領域に記録できる。
あるいは、識別情報21のコードおよび画像のうち少なくとも一方は、インクジェットで印刷し形成してもよい。また、暗号文25も、インクジェットで印刷し記録してもよい。インクジェットの印刷は、簡便である。
基材30は、レーザーエングレービングおよび熱転写の少なくとも一方が可能とできる。また、インクジェットの印刷が可能としてもよい。
【0017】
基材30に直接レーザーエングレービングしたり、上述した重ね合わせにより印刷部分を基材の内部に位置させたりすると、表示体100の偽造や改ざん時に識別情報21が破壊されやすくなり、偽装や改ざんがあったかの検証が容易となる。
図3Aは、識別情報21が基材30の内部に位置する例を模式的に示している。図3Bは、識別情報21が基材30の表面に位置する例を模式的に示している。レーザービームを基材30の内部に集光させることによっても、識別情報21を基材30の内部に形成できる。
【0018】
表示体100においては、図1に示すように、第二領域12の一部および第三領域13が第一領域11内に位置しており、表示体100の平面視において重なっている。このようにすると、後述する第二領域12および第三領域13の構造に加えてそれぞれの位置関係も偽造や改ざんにおいて考慮する必要が生じ、偽装や改ざんがより困難になる。
各領域11、12、13の重なり方や重なる面積の大きさ等は、使用者の見やすさに合わせて決定できる。
第一領域11、第二領域12、第三領域13は重なっていなくてもよい。このようにすることで、それぞれの視認性を高めることができる。また、いずれかの領域にさらに、セキュリティパッチが重ねられてもよい。セキュリティパッチは、ホログラム構造が形成された熱転写可能なホログラム転写箔を熱転写した所定の形状のホログラムフィルムとできる。ホログラムフィルムは、ホログラム構造が形成された層と接着層の積層とできる。セキュリティパッチの外形は、円形または楕円、または角が丸い長方形とできる。セキュリティパッチの形状は、熱転写する際のダイヘッドの形状により定めることができる。なお、ダイヘッドでのホログラム転写箔の熱転写は、ホットスタンピングともいう。
【0019】
第二領域12には、隠蔽コード22が形成されている。第三領域13には、暗号文25が記録されている。本実施形態において、隠蔽コード22および暗号文25の内容は、識別情報21の一部と同一である。また、レーザーエングレービングまたは印刷により記録された隠蔽コード22と後述するホログラムフィルムにより形成された隠蔽コード22の再生像24とは、平面視において完全に重なるように位置合わせされてもよい。この印刷は後述のセキュリティ印刷であってもよい。図1の例では、レーザーエングレービングまたはインクジェットの印刷により形成された暗号文25と後述するホログラムフィルムにより形成された暗号文25の再生像27A,27Bとは、平面視において重なるように位置を合わせされている。
具体的には、識別情報21は、図1に示された記号、数字、およびアルファベットを組み合わせた文字列のコードであり、隠蔽コード22は文字列「DOME」であり、暗号文25は文字と数字の組み合わせた「AJPN012345」である。
尚、隠蔽コードはホログラムフィルムのみで形成されてもよい。暗号文25は、レーザーエングレービングまたはインクジェットの印刷によってのみ記録されてもよい。隠蔽コードをホログラムフィルムのみで形成し、暗号文25をレーザーエングレービングまたは印刷によってのみ形成してもよい。これにより偽造耐性と製造の容易さとの双方を実現できる。隠蔽コード22は、セキュリティ印刷により形成されてもよい。セキュリティ印刷は、異なる方向で形成された細線による潜像とできる。この細線による潜像は特定の方向からの反射観察、透過観察、万線フィルターの重ね合わせにより記録されたコードを視認することができる。またセキュリティ印刷は、不可視インキの印刷やバリアブルインキの印刷であってもよい。バリアブルインキはパールインキ、コレステリック液晶インキまたは磁性インキとできる。不可視インキは蛍光インキとできる。蛍光インキは、紫外線を照射することにより可視化できる。また、不可視インキは、赤外線吸収インキでもよい。赤外線吸収インキは、暗視装置で可視化できる。さらにセキュリティ印刷は、領域毎に配向の異なるネマチック液晶の複数の領域が形成されたものでもよい。これはネマチック液晶のセキュリティ印刷である。これは、偏光板で可視化できる。セキュリティ印刷は、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷により形成できる。つまり隠蔽コード22は、特定の観察条件で特別な視覚効果を発現するホログラムフィルムおよび特別な視覚効果を有するセキュリティ印刷のうち少なくとも一方により形成されている。
この隠蔽コード22が上述の特別な視覚効果により、隠蔽コード22が形成された表示体の真正を検証できる。この真正の検証は、OVARTまたはCOVERTな検証である。
【0020】
本実施形態における隠蔽コード22は、文字列「DOME」および「INTE」のいずれかである。「DOME」は「Domestic」を表し、所有者が、表示体100が使用されている国(図1の例ではJAPAN)の国籍を有することを示す。「INTE」は「International」を表し、所有者が、表示体100が使用されている国(図1の例ではJAPAN)以外の国籍を有することを示す。隠蔽コード22は、表示体100が使用されている国と所有者の国籍とが区別できるものであればよく、上述の「DOME」、「INTE」の組には限られない。
この例では、隠蔽コード22は表示体100の所有者に関わる個人情報の一部をコード化した情報である。コード化した情報は、ISO3166-1 alpha-3で定められている3文字の国名コード、ISO3166-1 alpha-2で定められている2文字の国名コード、ISO3166-1 numericにて定められている3桁の数字による国名コード等である。あるいは、国際オリンピック委員会で定められているIOCコードによる国名コードである。
【0021】
隠蔽コード22は表示体100の所有者の国籍を示す情報に限られない。例えば、隠蔽コード22は、ISO3166-2で定められている都道府県や州に割り振られた地域コード、ISO5218で定められている性別コード、ISO4217で定められている通貨コード、ISO639で定められている言語コード等であってもよい。また、隠蔽コード22は、独自に定めたコードであってもよい。
隠蔽コード22は、表示体100の所有者が属する、あるいは区別できるような情報であり、所有者の識別情報21に関連づけられていればよい。隠蔽コード22は、上述した各種コードをそのまま利用してもよいし、上述の各種コードまたは識別情報のコードおよび画像のうち少なくとも一方からハッシュ関数により生成されたハッシュ値としてもよい。ハッシュ関数は、暗号学的ハッシュ関数が好ましい。つまり、隠蔽コード22は、暗号学的ハッシュ関数により生成されたハッシュ値が好ましい。暗号学的ハッシュ関数は、原像計算困難性、第2原像計算困難性、強衝突耐性を有するものと定義できる。このハッシュ関数は、Merkle-Damgard construction(Damgardの後ろのaは上リング付きA小文字)であってもよい。これによれば、識別情報21、隠蔽コード22が可変長の場合にも簡易にハッシュ値を生成できる。適用可能なハッシュ値を生成するハッシュ関数は、MD5、SHA-244、SHA-256のいずれか、またはそのハイブリッドであってもよい。
ハッシュ関数が生成するハッシュ値は、固定長とするのが好ましい。固定長とすることで、隠蔽コード22のコードを一定の領域に記録することができる。この際、ハッシュ関数に入力する値は、固定長でもよいし、変動長でもよい。
【0022】
暗号文及び隠蔽コードを生成する際、上述のハッシュ関数を用いて生成されたコードとして暗号化されたコードを用いてもよい。
暗号化コードは、公開鍵暗号方式または共通鍵暗号方式、ハイブリッド暗号方式を利用して暗号文、隠蔽コードを生成できる。
【0023】
公開鍵暗号方式を利用し、秘密鍵を用いて識別情報から暗号文を生成して第三領域に暗号化されたコードとして記録した場合、表示体100の認証および真正の検証を後述にて説明するように、オフラインできる。オフラインでの表示体の真正の検証は、表示体100を認証する装置やアプリケーションに公開鍵をメモリーに保存して、保存された公開鍵を利用し、暗号文を復号することで、真正の検証ができる。なお、公開鍵暗号方式を利用した場合に、オフラインでの検証に限らず、オンラインでの検証に利用してもよい。
より詳しくは、識別情報の全てを秘密鍵で暗号化してコードを生成し、生成したコードを第三領域に記録し、そのコードを公開鍵で復号し、識別情報、隠蔽コードと同一かどうかにより表示体の真正を検証できる。また、識別情報からハッシュ関数により生成したハッシュ値を秘密鍵で暗号化してコードを生成し、生成したコードを第三領域に記録し、そのコードを公開鍵で復号し、識別情報、隠蔽コードのハッシュ関数により生成したハッシュ値と同一かどうかにより表示体の真正を検証できる。この暗号文を復号した情報と、識別情報、隠蔽コードとが同一かどうかによる表示体の真正の検証は、フォレンジックな検証であってもよい。
適用可能な公開鍵暗号方式は、RSA方式,楕円曲線暗号方式のいずれかまたはそのハイブリッドである。また、公開鍵暗号方式は、格子暗号方式としてもよい。公開鍵の鍵長は、1024bit,2048bit,3072bit,4096bitのいずれかが好ましい。鍵長は、表示体が求められるセキュリティのレベルにより選択できる。
【0024】
また、共通鍵暗号方式を利用し、暗号文または隠蔽コードを生成した場合、表示体100の認証および真正の検証を後述にて説明するオンラインでの検証に利用できる。また、ハイブリッド暗号方式を利用し、暗号文または隠蔽コードを生成した場合においても、表示体100の認証および真正の検証を後述にて説明するオンラインでの検証に利用できる。
ブロック暗号、ストリーム暗号、または、そのハイブリットが共通鍵方式として適用できる。適用可能なブロック暗号は、AES、Camellia、または、そのハイブリッドである。適用可能なストリーム暗号は、RC4である。鍵長は、128bit、192bit、256bitであってもよい。
【0025】
本実施形態における暗号文25は、識別情報21のコードおよび画像のうち少なくとも一方のハッシュ値「A」およびを識別情報21のコードを暗号化した文字列「012345」と、ISO3166-1 alpha-3における日本のコード「JPN」とを組み合わせて構成されている。暗号文25は、文字長を含んでもよい。また、暗号文25は、識別情報21のコードを暗号化したものとしてもよい。これにより、暗号文を復号したコードと、識別情報21のコードが同一かどうかにより、真正を検証できる。また、記録された隠蔽コード22を暗号化した暗号文としてもよい。この場合、記録された隠蔽コード22は、識別情報21のハッシュ値としてもよい。特にこのハッシュ値を暗号学的ハッシュ関数から生成されたものとすることでなりすましを防止しやすい。記録された隠蔽コード22が固定長の場合、暗号化したコードも固定長とすることができる。この場合、暗号化プログラム、復号プログラムが実装しやすい。
第三領域13にはホログラムフィルムが熱転写されており、暗号文25はホログラムフィルムのホログラム構造として記録されており、ホログラム再生像として表示される。図2Aおよび図2Bに示すように、暗号文25のホログラム再生像は、表示体100の法線方向Zにおいて基材30から離れた再生像空間26内に位置するように視認される。図2A及び図2Bに示す例では、「A」、「J」、「P」、「N」、「3」、「4」、および「5」の再生像27Aは基材30の上側(Z>0)の、「0」、「1」、および「2」の再生像27Bは基材30の下側(Z<0)の再生像空間26内に、それぞれ形成される。
暗号文25のホログラム再生像は、後述する表示体の観察方法および検出装置により、取得できる。
【0026】
図2Bに示すように、再生像27Aおよび27Bは、それぞれ法線方向Zにおける基材30との距離が異なる複数の位置に形成されているが、基材30との距離が統一されてもよい。再生像と基材30との距離は、暗号文25の一部を構成しうる。すなわち、暗号文25は、識別情報21を暗号化したコードと、このコードのホログラム再生像と基材30と距離の情報とを含みうる。ホログラム再生像と基材30と距離は量子化されて離散的であることが好ましい。尚、暗号文25は、レーザーエングレービングやインクジェット印刷で記録してもよい。なお、暗号文は、一次元コードまたは二次元コードとして記録されてもよい。このようにすることで、リーダーによる読み取りが容易となる。適用可能な一次元コードは、バーコードである。適用可能な二次元コードは、QRコード(登録商標)である。また、暗号文は、表示体に内装されたICチップに記録されてもよい。表示体の表面に接触端子を備え、内装されたICチップが、表示体の表面の接触端子と接続されていてもよい。また、表示体にアンテナが内装されており、内装されたICチップが、アンテナと接続されていてもよい。表示体に内装されたICチップは、それのみで認証ができるものでもよい。これにより、電子的な認証が可能となる。またアンテナとICチップが内装されたものは、RFIDとして使用できる。
【0027】
第二領域12もホログラム構造を有し、隠蔽コード22がホログラム再生像として表示される。
図4Aおよび図4Bに隠蔽コード22のホログラム再生像の再生位置を示す。再生像24は、再生像空間23内において、いずれも基材30の上側に形成されている。各文字に対応する再生像との基材30との距離は、距離z1と、距離z1よりも短いz2とのいずれかとなっているが、すべて異なっていてもよい。再生像と基材30との距離は、隠蔽コード22の一部を構成しうる。すなわち、隠蔽コード22は、個人情報の一部をコード化した文字と、この文字のホログラム再生像と基材30との距離の情報とを含みうる。この距離を量子化することで離散的とし、デジタルデータとして、情報を記録できる。
【0028】
再生像と基材との距離は、ホログラム構造により適宜設定することができる。第二領域12および第三領域13に形成されるホログラム構造は、リップマン型の体積ホログラムや、微細凹凸構造を有したホログラム構造であってもよい。凹凸構造を有したホログラム構造は再生像を予め設計し、その設計された再生像から回折格子ホログラムパターンを計算した計算機ホログラムの構造であってもよい。これらのホログラム構造は、再生像を形成するための光学位相情報を微細凹凸構造としてフィルム状に形成できる。また、上述の隠蔽コードの再生像24や、暗号文の再生像27A、27Bの位置を緻密に制御することができる。
【0029】
リップマン型の体積ホログラムをホログラム構造に採用する場合、光応答性のフォトポリマーに対し、形成したい隠蔽コード、暗号文からの物体光と、その物体光を再生するための参照光とを照射し、その干渉縞をフォトポリマーに記録させることでホログラム構造を形成することができる。隠蔽コード、暗号文からの物体光の光学位相情報を予め計算機にて計算し、その光学位相情報を空間光位相変調器にて表示させ、その空間光位相変調器を透過あるいは反射した光を物体光としてリップマン型の体積ホログラムを形成してもよい。
体積ホログラムの材料は、感光して屈折率が変調するフォトポリマーを使用してもよい。フォトポリマーの種類は、光架橋型、または、光重合型であってもよい。光架橋型の実例は、ポリビニルカルバゾールを主成分したものである。光重合型は、感光時の連鎖反応により高感度としやすい。光架橋型は、屈折率差を大きくしやすい。光重合型の種類は、現像処理を要する湿式、または、現像処理不要の乾式を使用してもよい。乾式のフォトポリマーは、屈折率の異なる相溶性の低い材料のペアを主成分として使用してもよい。主成分のペアの実例は、酢酸ビニル化合物とアクリル酸エステル化合物、または、エポキシ化合物とアクリル酸エステル化合物であり、これらの片方がポリマーであってもよい。酢酸ビニル化合物およびアクリル酸エステル化合物を主成分のペアとしたフォトポリマーは、屈折率差をつけやすい。エポキシ化合物およびアクリル酸エステル化合物を主成分のペアとしたフォトポリマーは、耐久性を高めやすい。また、湿式の実例は、ポリビニルピロリドンとモノマーとの混合物である。この混合物は、光強度の弱い部分が現像液に溶けてボイドとなるため、屈折率差を大きくしやすい。体積ホログラムは、マスターのホログラムにレーザーを照射し、その反射光(物体光)と照射したレーザーの光(参照光)の干渉縞をフォトポリマーに感光させ、フォトポリマーの屈折率を変調させることで複製できる。(コンタクトコピー法)
【0030】
計算機ホログラムをホログラム構造に採用する場合、隠蔽コード、暗号文を記録するための光学位相情報を予め計算機にて計算し、その光学位相情報を実現するための微細凹凸構造をレーザー描画法、電子線描画法、イオンビーム描画法等により形成し、その微細凹凸構造を原版として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂が塗工されたフィルム材料に押し当て複製することで、ホログラムフィルムが得られる。
【0031】
微細凹凸構造は、PCT/JP2017/020049(国際公開公報WO2017/209113A1号)に開示された、以下で説明する微細凹凸構造を備えてもよい。
一例として、本実施形態の微細凹凸構造は、位相角記録領域と、位相角非記録領域とを有する。微細凹凸構造において、位相角記録領域以外の領域は、位相角非記録領域となる。位相角非記録領域は、一例において、鏡面である。
【0032】
ここで、XYZ直交座標系を用いて、各構成の位置関係を説明する。微細凹凸構造はXY平面に沿って配置されている。
微細凹凸構造に交差する方向から光が入射すると、その微細凹凸構造により入射光が変調されることで再生像を得ることができる。再生像は複数の再生点の像である。再生点は、微細凹凸構造からZ方向に離間した位置で得られる。着目する再生点から微細凹凸構造を見た場合に、視野角方向における再生像が再生される範囲を、視野角θと呼ぶ。以下の説明では、視野角方向はX方向またはY方向である。
微細凹凸構造上には、再生像が再生される各再生点からの視野角θに応じて、計算要素区画がそれぞれ規定される。このように、計算要素区画は、位相角記録領域および位相角非記録領域とは独立して規定されるので、通常は、位相角記録領域および位相角非記録領域と個々に重なり合う。
【0033】
また、再生点は、複数存在する。したがって、計算要素区画は、複数の再生点の各々に対応して、再生点と同数存在する。
また、再生点は、微細凹凸構造と離間して配置されている。Z方向における、再生点の微細凹凸構造からの距離は、5mm以上、25mm以下に再生されるのが好ましい。なお、再生点は、微細凹凸構造から観察者側に再生される場合と、微細凹凸構造の観察者と反対側に再生される場合とがある。どちらの場合でも、再生点の微細凹凸構造からの距離は同様に規定できる。
【0034】
再生点からの視野角θは、下記の(1)式によって定義される。
θ<(A/m) ・・・・(1)
ここで、(λ/2d)≦1である場合、A=asin(λ/2d)、λは光の波長、dは単位ブロックの視野角方向における配列間隔、mは3以上の実数である。この光の波長λは、具体的には、可視光のうち人間の最大比視感度である555nmとする。配列間隔dは、単位ブロックの中心間距離とすることができる。中心単位ブロックの配列間隔は、10nm以上、200nm以下とする。
視野角θは、着目する再生点から微細凹凸構造を見た場合におけるX方向の範囲によって決定され、X方向の最小値Xminと、着目する再生点と、X方向の最大値Xmaxとでなす角2θの1/2となる。なお、X方向、Y方向は、夫々、微細凹凸構造の延びる一方向をX方向、X方向に直交する方向をY方向としたユークリッド座標のX座標軸、Y座標軸に相当する。
【0035】
なお、視野角方向をY方向とした場合における視野角θも同様にして規定される。すなわち、視野角θは、着目する再生点から微細凹凸構造を見た場合におけるY方向の範囲によって決定され、Y方向の最小値Yminと、着目する再生点と、Y方向の最大値Ymaxとでなす角2θの1/2となる。したがって、単位ブロックの配列間隔dは、視野角方向がX方向である場合には、単位ブロックのX方向の配列間隔dxに相当し、視野角方向がY方向である場合には、単位ブロックのY方向の配列間隔dyに相当する。
【0036】
このため、計算要素区画は、一般的には正方形または長方形となる。しかし、計算要素区画を、四角形以外の多角形、または円あるいは楕円としてもよい。多角形では、特に正方形、長方形に加えて、六角形も適している。計算要素区画が正方形または長方形以外である場合には、計算要素区画のX方向の最小値(下限値)を、Xmin、計算要素区画のX方向の最大値(上限値)をXmaxとする。同様に、計算要素区画のY方向の最小値をYmin、計算要素区画16のY方向の最大値Ymaxとする。
【0037】
単位ブロックの形状が、正方形または長方形である場合、実際には、正方形や長方形の角が丸みを帯びた角丸方形となる。また、単位ブロックは、隣接した単位ブロックと融合していても良い。この場合は、各単位ブロックの形状としては、角丸方形であっても、単位ブロックが融合した形状としては、角丸方形とはならず、変形するが、融合により変形しても光学的効果は変わらない。単位ブロックは、整然配列されているのが好ましい。整然配列としては、一定範囲の間隔での配列、等間隔の配列とすることができる。典型的な整然配列としては、正方配列や、六方配列である。
【0038】
視野角θは、上記(1)式から分かるように、A未満となる。光がこの位相成分を通過し、回折される場合、理論上Aを超えた回折は生じない。したがって、計算機を用いたホログラム計算を行う場合、計算範囲を、視野角θを上限として制限すればよい。このように、計算範囲を制限することは、計算時間を短縮することになる。また、仮に、視野角θを超えた範囲について計算を行ったとしても、理論的に存在しない回折の計算を行うだけであるので、その結果はノイズとしてしか寄与しない。しかしながら、上述の計算では、視野角θを超えた範囲の計算を行わないので、再生点上における再生像の再生時にノイズは重畳されない。
【0039】
位相角記録領域も位相角非記録領域もそれぞれ複数の単位ブロックを含んでいる。位相角記録領域のうち、計算要素区画と重複した領域(重複領域)に含まれる単位ブロックを対象として、計算機によって、位相成分に基づいて位相角が計算され、計算された位相角が、重複領域に含まれる対応する単位ブロックに記録される。
【0040】
本実施形態の微細凹凸構造は、可視であり認証可能である。このような、微細凹凸構造をレリーフ構造として備えた光学構造体を一定以上傾斜し、上記の視野角θの範囲外から観察した場合には、レリーフ構造により再生像が消失する。
また、上記の再生像は点光源でのみ再生される。そのため、拡散照明の下では、再生像が消失する。
視野角θは、再生像の視認性の観点から5度以上であることが好ましく、再生点が消失しやすくする観点から15度以下が好ましい。
【0041】
微細凹凸構造のホログラム構造は、レーザーまたは電子線で形成された凹凸構造をレジスト版とし、レジスト版をニッケル電鋳により、ニッケルのスタンパーを造り、そのスタンパーを樹脂にエンボスすることでホログラム構造を形成できる。このホログラム構造は、ホログラム転写箔に形成することで、ホログラム構造が形成されたホログラム転写箔を得ることができる。このホログラム転写箔を熱転写することでホログラム構造が形成されたホログラムフィルムを各領域に配置することができる。
微細凹凸構造のホログラム構造に対し、金属の反射層を形成してもよい。反射層の金属は、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)または、これらの合金とする。これによりホログラムフィルムに形成された微細凹凸構造のホログラム構造で再生される再生像の明るさが向上する。これにより、隠蔽コードや暗号文の再生像が明るくなり、より検証しやすくなる。微細凹凸構造のホログラム構造はレリーフホログラムと呼ばれる。
【0042】
また、微細凹凸構造のホログラム構造を形成したホログラムフィルムに対し、金属化合物の反射層を形成してもよい。金属化合物は、金属硫化物、金属酸化であってもよい。適用可能な金属硫化物は、硫化亜鉛であってもよい。適用可能な金属酸化物は、二酸化チタン、ジルコニア、硫化亜鉛、酸化アルミニウムである。金属化合物の反射層は光透過性を有する。光透過性のある反射層とすることで、識別情報21が形成された第一領域の上に第二領域12が形成されても、第二領域12の下にある識別情報21を視認できる。
金属の反射層や金属酸化物の反射層は、物理堆積により形成できる。適用可能な物理堆積は、真空蒸着法やスパッタリング法である。金属酸化物の反射層は、化学体積で形成してもよい。また、反射層はゾルゲル法などのウェットコーティング技術により形成してもよい。
【0043】
表示体100において、第二領域12および第三領域13は、平面視において視認できれば、どこに配置してもよい。第二領域12と第三領域13とで配置する位置が異なってもよい。
図5Aに示すように、基材30の内部に第二領域12や第三領域13を配置すると、第二領域、第三領域を改竄するには基材30そのものも破壊しなければならなくなるため、改竄等の防止につながり、偽造防止性能が向上する。
図5Aに示す構成は、例えば、基材30を形成するための複数の樹脂シートにあらかじめ第二領域12および第三領域13を形成、あるいは貼付し、この樹脂シートを、第二領域12および第三領域13を他の樹脂シートに向けた状態で、熱圧ラミネート加工により一体化させることで形成できる。
【0044】
図5Bに示すように、基材30の表面に第二領域12や第三領域13を配置する場合、基材30の形成後に、表示体100を所有する所有者情報を含んだ第二領域12および第三領域13を連続的に形成できるため、表示体100の製造効率を向上させることが可能となる。このとき、基材30の表面に第一領域11が配置されていてもよい。のまた、基材30に予め第二領域12が形成された表示体を識別情報に応じて選択してもよい。これにより表示体の生産性を向上できる。また、第三領域13を裏面に設けてもよい。
図5Bに示す構成とする場合は、基材30上に接着材料を配置し、第二領域12や第三領域13となる媒体を基材30の上に貼り付けてもよい。あるいは、第二領域12、第三領域13となる媒体に接着層を設けておき、基材30の上に貼り付けてもよい。
【0045】
図5Cに示すように、第二領域12または第三領域13を形成した中間転写箔31を、基材30に貼り付けて表示体100を形成してもよい。この場合、中間転写箔31と基材30とが全面で接合されるため、第二領域12や第三領域13の密着状態が安定し、はがれにくい。
【0046】
表示体100の製造方法について説明する。表示体100は、基本形状や外観は同様であるが、記録される識別情報21、および暗号文25の内容は、1枚1枚異なる。したがって、表示体を1枚製造するために、記録する個別情報を都度準備する必要がある。また、カード毎で隠蔽コード22は同一ではない。
【0047】
図6は、表示体100の製造におけるプロセスフローの一例を示している。
まず、ステップS200において、識別情報21が取得される。例えば、パスポート発行装置、IDカード発行装置等において、表示体100の発行対象となる利用者に関する個別情報が選択、入力されることでステップS200が実行される。ここで、識別情報21のコードおよび画像のうち少なくとも一方も生成される。予め入力フォームや書式などを準備しておくことで、識別情報を取得、認識しやすくすることができる。
【0048】
ステップS201において、ステップS200で取得された識別情報21のコードおよび画像のうち少なくとも一方から、隠蔽コード22が生成される。
ステップS202において、識別情報のコードおよび隠蔽コードのうち少なくとも一方を暗号化して暗号文25を生成する。暗号文25を復号すると識別情報のコードおよび隠蔽コードのうち少なくとも一方の一部または全部と同一となる。つまり、暗号文25は、識別情報のコードおよび隠蔽コードのうち少なくとも一方と関連付けられている。
【0049】
ステップS203において、識別情報21のコードおよび画像のうち少なくとも一方が表示体100の第一領域11に形成される。形成は、上述したように、熱転写およびレーザーエングレービングのうち少なくとも一方によって行われる。また、形成は、インクジェット印刷によって行われてもよい。
ステップS204において、隠蔽コード22が表示体100の第二領域12に形成される。
ステップS205において、暗号文25が表示体100の第三領域13に記録される。
【0050】
図6のフローにおいて、ステップS201とステップS202とはいずれが先に行われてもよい。ステップS203、S204、およびS205は、対応する個別情報が取得された後であれば、どのような順番やタイミングで行われてもよい。
【0051】
図7に示すフローは、あらかじめ準備された複数の基材を用いて表示体を製造する場合の手順の一例を示している。
ステップS200において識別情報が取得された後、ステップS210において、取得された識別情報に基づき、表示体100を作製するためにあらかじめ準備された複数の基材のうち一つが選択および取得される。複数の基材の各々の第二領域には、識別情報の一部をコード化した隠蔽コードが既に形成されている。すなわち、複数の基材が有する隠蔽コードは、識別情報の一部の所定の内容と関連付けられている。例えば、複数の基材として、「日本人用」と「非日本人用」との2種類が存在し、日本人用基材の第二領域には、文字列「DOME」が隠蔽コードとして形成され、非日本人用基材の第二領域には、文字列「INTE」が隠蔽コードとして形成されている場合を例示できる。これにより、ステップS210では、識別情報の一部と関連付けられて複数の基材が選択取得され、第二領域に隠蔽コードが形成される。
以降の各ステップは、図6で説明したものと同様である。このように、隠蔽コードは、識別情報の一部に関連付けられた、数パターンの一つであってよい。
【0052】
図8Aに、ステップS204やS205の一態様を示す。図8Aは、複数の情報要素150がホログラム構造として形成されたホログラム転写箔140を示している。ステップS204やS205においては、ホログラム転写箔140を表示体の上方に位置させて、記録する個別情報の内容に対応する情報要素150を選択しつつ表示体に熱転写する。言い換えると、上述したように、暗号文25や、隠蔽コード22の文字、各文字の再生像の位置に合致するホログラム構造142の情報要素150を選択し、基材30に熱転写し形成する。尚、情報要素150を直接表示体100に熱転写するのに代えて、上述した中間転写箔31に熱転写してもよい。暗号文25のコードや、隠蔽コード22は、再生像の位置が異なる文字列として形成できる。
【0053】
図8Bは、図8AのI-I線における断面図である。ホログラム転写箔140には、同一の情報要素150が複数形成されているが、複数の情報要素150の再生像170の位置は、図8Bに示すように、互いに異なっている。したがって、同一の情報要素を複数含む個別情報を、再生像の位置を異ならせながら形成できる。
これにより、隠蔽コードおよび暗号文に含められる情報量を著しく増やすことができる。例えば、数字0から9を3桁分形成する場合、その組み合わせの数は10の3乗(1000通り)であるが、再生像の位置を組み合わせることで、選択できる組合せの数が増える。例えば、図8Bに示すように再生像の位置が5パターンあった場合、その組み合わせの数は50の3乗(125000通り)となり、組合せの数が125倍となる。組合せの数は数字だけでなく、アルファベットなどの文字、記号を含めることで、更に増やすことができる。
これにより、隠蔽コード22および暗号文25に必要とされる情報要素の数を抑制することができ、表示体のレイアウトの自由度や、製造効率の向上が可能になる。
【0054】
図9A及び図9Bは、ホログラム転写箔140から所望の情報要素150のみを基材30に形成する方法を示している。
図9Aに示すように、ホログラム転写箔140は、キャリアフィルム141と、キャリアフィルム141上に形成されたホログラム構造142とを含んでいる。このホログラム転写箔140に対し、エネルギー印加部60を、キャリアフィルム141における所望の情報要素150の位置に接触させて、外部エネルギーを情報要素150に印加する。ホログラム構造142に設けた接着層が外部エネルギーにより活性化されると、接着層が基材30と接合し、図9Bに示すように、所望の情報要素150のみが基材30に熱転写される。
エネルギー印加部60は、ヒートヘッドあるいは、レーザーヘッドであってもよい。ヒートヘッドは、熱転写する形状を有したダイヘッドまたは、サーマルヘッドとできる。
【0055】
他の例として、一端基材上に熱転写したホログラムフィルムをレーザービームで部分的に除去することにより情報要素を形成してもよい。例えば、7セグメントディスプレイの形状を有するホログラムフィルムを基材上に熱転写し、所定のセグメントを除去することで、数字やアルファベット等を形成できる。さらにホログラム転写箔から選択的に熱転写されたホログラムフィルムをさらに、レーザービームで部分的に除去して情報要素を形成してもよい。
【0056】
表示体100から情報を読み取る方法について説明する。
表示体100に記録された識別情報21のコードおよび画像のうち少なくとも一方は、可視とできる。また、表示体100に記録された識別情報21のコードおよび画像のうち少なくとも一方は、読取装置で読み取り可能とできる。記録された隠蔽コード22および暗号文25を読み取る際は、隠蔽コード22、暗号文25を読み出すための条件(光源情報、光源や読み取りのスペクトル、読み出すべき再生像の再生位置など)を取得し、その条件に基づいて隠蔽コード22、暗号文25の全部または一部を取得できる。
【0057】
読み取りにあたっては、識別情報21のコードや隠蔽コード22から暗号文25を生成する際に用いた情報変換プログラムや暗号化処理が使用されてもよい。あるいは、識別情報21のコードおよび隠蔽コード22のうち少なくとも一方に読み出し条件を含んでもよい。さらには、暗号文25が読み出し条件を含んでもよい。
第二領域12および第三領域13に形成されるホログラム構造の再生像を取得するためには、所定の参照光に対応する点光源、あるいはレーザー光源が必要となる。点光源はLED光源であってもよい。読み出し条件は、これらの光源の種類の情報を含んでもよい。
【0058】
表示体100から読み取った情報に基づいて、その表示体の真正の検証を行うことができる。
真正の検証に用いる観察装置がネットワークと接続されている場合、取得された識別情報21、隠蔽コード22、および暗号文25の組合せをネットワークに接続されたサーバーやデータベース等で照合することで、その表示体が真正であるか否かを検証できる。言い換えれば、取得された識別情報21、隠蔽コード22、および暗号文25が適合するかを、ネットワークに接続されたサーバーやデータベース等で照合し、検証できる。
あるいは、観察装置にて取得した識別情報21をネットワーク経由でサーバーあるいはデータベースに送信、照合することで、隠蔽コード22および暗号文25の読み出し条件を観察装置が受信して取得してもよい。その後、読み出し条件に従って取得された隠蔽コード22、暗号文25を適合させることにより真正の検証ができる。この場合、真正の検証に用いる隠蔽コード22、暗号文25の読み出し条件を検証の度に変更することができるため、よりセキュリティを向上できる。
【0059】
観察装置がネットワークと接続されていない場合は、識別情報21、隠蔽コード22、および暗号文25の組合せを観察装置内に保存し、観察装置内で照合を行ってもよい。ただし、この場合、組み合わせの数が膨大になると、照合に時間がかかったり、観察装置に保存しきれなくなったりする可能性がある。また、データベースのメンテナンスも、観察装置ごとに行うため煩雑になる。
【0060】
このような場合、識別情報の内容と隠蔽コード22の読み取り条件をあらかじめ対応付けておくことにより、読み出し条件の取得を省略して真正の検証に要する時間を短くすることができる。
図10に、このような真正の検証方法の一例に係るフローを示す。この例に係る表示体では、識別情報にISO3166-1 alpha-3に基づく3文字の国名コードが含まれている。隠蔽コードは同一の国名コードを再生像とするホログラム構造であり、3文字の情報要素の再生像は、基材表面からの距離がそれぞれ異なる3種類の位置Z1、Z2、およびZ3のいずれかに設定されている。
【0061】
まずステップS301において、観察装置が第一領域11の識別情報21のコードを読み取り、国名コードを取得する。
次に、ステップS302において、観察装置は記憶されたテーブルを参照し、取得された国名コードに対応する各文字の再生像の読み取り位置を、読み出し条件として取得する。テーブルの一例を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
ステップS303において、観察装置は、ステップS302で取得された読み出し条件に従って、第二領域における再生像を取得し、隠蔽コード22とする。
例えば、ステップS301で取得された国名コードが「IRL」であった場合、ステップS302において、「1文字目 Z1、2文字目 Z1、3文字目 Z2」の読み出し条件が表1のテーブルに基づき取得される。そして、ステップS303において、観察装置は、読み出し条件に規定された位置で再生像の取得を行う。表示体が真正である場合は、正常に各文字の再生像が取得されるが、すべての再生像がZ1に位置する偽造品では、3文字目の再生像は取得されず、隠蔽コードが不完全となる。
【0064】
ステップS304において、暗号文が取得された後、ステップS305において、取得された識別情報、隠蔽コード、暗号文の組み合わせが適切であるか否かが、言い換えるとそれらが適合するかが、観察装置に記憶された情報と照合され、表示体が真正である否かが判定される。上述のケースでは、偽造品では隠蔽コードが「IR」の二文字のみとなり、不完全であるため、表示体は真正でないと判定できる。
ステップS304の判定は、オンラインおよびオフラインのいずれでも行える。オンラインの場合は、例えば取得された識別情報、隠蔽コード、暗号文を観察装置からネットワーク経由でサーバーまたはデータベースに送信し、サーバーまたはデータベース上で、識別情報、隠蔽コード、暗号文の組み合わせが適切であるか否か、言い換えるとそれらが適合するか、を確認できる。オフラインの場合は、観察装置に表1に記載のような国名および国名コードのリストを記録しておく。まず観察装置で表示体から識別情報として国籍を取得し、取得された国籍情報に基づいて、観察装置が国名コードの各文字の読み取り位置をリストから取得する。その後、観察装置にて隠蔽コードとしての国名コードを表示体から読み取って取得し、取得された隠蔽コードをリストと照合することにより識別情報と隠蔽コードとが適合するかをチェックできる。また、暗号文を復号したデータと、識別情報のコードおよび隠蔽コードのうち少なくとも一方の全部または一部が同一かどうかにより表示体の真正を検証できる。また、暗号文を復号したデータと、隠蔽コードとが同一かどうかにより、表示体の真正を検証してもよい。この復号は、公開鍵暗号方式であれば、公開鍵を利用し、共通鍵暗号方式であれば、共通鍵を利用する。また、それらのハイブリッドの場合は、公開鍵と共通鍵を利用する。ステップS304によりフォレンジックな検証が行われる。隠蔽コードは、ホログラムフィルムやセキュリティ印刷で記録されているため、その改ざんは困難であり、加えて隠蔽コードと暗号文とを適合させるには、暗号化のアルゴリズムと暗号鍵が必要であるため、所持情報と暗号による二要素の検証が可能である。復号鍵には、所有者のPINを含んでもよい。また、暗号文を暗号化する際に、特定の暗号鍵を用いた暗号と、所有者のPINを用いた暗号の双方で2重に暗号化してもよい。所有者のPINを用いた暗号方式は、共通鍵方式とできる。このように表示体100は高いレベルでの認証が可能である。また、所有者の識別情報の画像が表示体100に形成されている場合には、その画像と所有者とを対比することができる。特に画像として顔画像が形成された場合は所有者と表示体100との対比が容易である。また、ホログラムで顔画像を形成した場合には、所有者と表示体100の対比とともに、その顔画像自体の偽造が困難であるため、なりすましを防止できる。
【0065】
本実施形態の表示体の観察に適した観察装置について説明する。観察装置は、コードを読み取るリーダーである。図11Aに示す観察装置400は、表示体100を挿入して読み取らせるタイプの観察装置である。図11Bに示す観察装置410は、表示体100をスキャナ面411上において読み取らせるタイプの観察装置である。
【0066】
観察装置400は、隠蔽コード22および暗号文25の再生像を取得するための光学センサ401を備えている。観察装置410は、隠蔽コード22および暗号文25の再生像を取得するための光学センサ413を備えている。光学センサ401、413は、観察装置内で移動可能に構成され、第二領域12および第三領域13に対応する位置まで移動することができる。
観察装置に光学センサを複数設け、第二領域12および第三領域13が、それぞれ専用の光学センサで読み取られてもよい。
【0067】
観察装置410は、識別情報21を取得するためのラインスキャナ412を備えているため、スキャナ面411上に表示体100を置いて作動させることにより、識別情報21、隠蔽コード22、および暗号文25のすべてを一括で取得することができる。
【0068】
本発明の表示体について、実験例を用いてさらに説明する。
(実験例)
計算機ホログラムにより、「A」、「B」、および「C」の3文字が、ホログラムフィルムの界面を基準として、それぞれ手前側5mm、7mm、9mmの位置に再生されるようにホログラム構造を計算し、そのホログラム構造がエンボス成型されたホログラム転写箔を作製した。参照光は緑色光とした。
【0069】
作製したホログラム転写箔をポリカーボネート樹脂シートに熱転写し、ポリカーボネート樹脂シートを複数枚重ね合わせて熱ラミネート加工を行い、隠蔽コードとしてホログラムフィルムが内装された基材を備えるプレ表示体を作製した。
【0070】
プレ表示体に対して、波長1064nmの赤外レーザービームを用いてレーザーエングレービングを行い、それぞれ人物A、人物Bの情報を識別情報として形成した2枚の表示体を作製した。人物Aの情報を記録した表示体Aにおける隠蔽コードの読み出し条件は、「赤色光源、再生位置9mm」とし、人物Bの情報を記録した表示体Bにおける隠蔽コードの読み出し条件は、「緑色光源、再生位置7mm」とした。
【0071】
フルカラーLED光源、光学プリズム、およびCMOSセンサを組み合わせ、光源の光が表示体に対し垂直に入射し、ホログラムフィルムの再生像がCMOSセンサへ結像する観察装置を作製した。
【0072】
観察装置を用いて、読み出し条件に従って隠蔽コードを取得したところ、表示体Aにおいて隠蔽コードは取得されなかった。これは、光が赤色光になったことにより各文字の再生像の位置が変化し、9mmの位置に存在する再生像がなくなったことによる。
一方、表示体Bにおいては、7mmに位置する「B」の再生像のみが取得された。
【0073】
表示体AおよびBの第二領域を目視すると、「A」、「B」、「C」すべての再生像を視認できる。そのため、偽造や改ざんを行おうとする者は、「A」、「B」、「C」のすべてが真正の検証に使用されるのか、一部のみが使用されるのかを知ることはできない。また、上述の読み出し条件が変化すると、観察装置が取得する再生像も変化するため、正しい読み出し条件を知らない限り、真正の検証に耐えうる偽造を行うことは不可能である。
この実験例により、再生位置の異なるホログラム構造を用いて隠蔽コードを好適に形成でき、暗号文を好適にコードとして記録できることが示された。
【0074】
以上、本発明の一実施形態、および実施例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
さらに本開示の範囲は、図示され記載された実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含むことができる。さらに、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴に限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴、その特徴のあらゆる組み合わせも含む。
【0075】
本開示で用いられる「部分」、「要素」、「領域」「エリア」、「層」、「面」、「表示体」、「物品」「記録」、「媒体」、「基材」、「印刷」、「エングレービング」という用語は、物理的存在である。物理的存在は、物質的形態または、物質に囲まれた空間的形態を指すことができる。物理的存在は、その材質、物性、物理量、心理物理量、配置、形状、外形、前記の統計量、記録された情報、記録されたデータ、記録されたコード、読み取れる情報、読み取れるデータ、読み取れるコード、能力、性能、外観、色、スペクトル、形成/表示する画像、加工方法、検知の方法、検証の方法、判定の方法、により特徴づけることができる。また、その物理的存在の特徴により、物理的存在は特定の機能を有することができる。特定の機能を有した物理的存在のセットは、各物理的存在の各機能による相乗的効果を発現できる。
【0076】
用語、構成、特徴、側面、実施形態を解釈する場合、必要に応じて図面を参照すべきである。図面により、直接的かつ一義的に導き出せる事項は、テキストと同等に、補正の根拠となるべきである。
【0077】
本開示および特に請求の範囲で使用される用語は、一般的に、「オープンな」用語として意図される(例えば、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「含む」という用語は「含むがそれに限定されない」などと解釈されるべきである)。さらに、請求項に明示的に特定の数が記載されていな場合、特定の数の意図は存在しない。例えば、理解を助けるために、請求の範囲は、「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」の導入句の使用を含み、請求の列挙を導入することができる。しかしながら、そのような語句の使用が、不定冠詞「a」または「an」による記載を導入した請求項を含む特定の請求項を、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない。「1つ以上」または「少なくとも1つ」の語句および「a」または「an」などの不定冠詞は、少なくとも(「1つ」または「1つ以上」)を意味すると解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
上述した表示体は、人による目視観察時に得られる個別情報と、読取装置により得られる個別情報とを同じもの、あるいは異なる物とすることができるため、偽造防止向けの光学効果、および読取装置、真正の検証方法として利用することができる。特に個別情報が利用されるようなパスポートや運転免許証、IDカードといった個人認証媒体などの物品に含まれる価値や情報を保護するための表示体として利用できる。また、読取装置を介することのみで取得できる個別情報があることから、個人情報、個別情報と連携した機械認証システムへも利用することができる。
本発明の表示体は、簡素な構成で改ざんや偽造を好適に抑止できる。
【符号の説明】
【0079】
11 第一領域
12 第二領域
13 第三領域
21 識別情報
22 隠蔽コード
25 暗号文
30 基材
100 表示体
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B