(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】モデル生成装置、モデル生成方法、状態予測装置、状態予測方法、及び、記録媒体
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20250304BHJP
【FI】
G16H50/30
(21)【出願番号】P 2022574944
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2021001011
(87)【国際公開番号】W WO2022153430
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】小阪 勇気
(72)【発明者】
【氏名】荒木 賢志
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-032772(JP,A)
【文献】特開2005-328924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値、及び前記第1時点よりも後の第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得する取得手段と、
前記第1時点における対象患者の状態に基づいて前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルを学習する学習手段と
を備え、
前記学習手段は、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて
、前記第1指標値及び前記第3指標値の間の変化が、前記変化情報が表す前記第1時点から前記第2時点への前記状態の変化傾向である第1の変化傾向に近づくように前記予測モデルを学習する
モデル生成装置。
【請求項2】
前記学習手段は、前記第1及び第3指標値の間の変化が前記第1の変化傾向に近づくほど小さくなる項を含む損失関数に基づいて、前記予測モデルを学習する
請求項
1に記載のモデル生成装置。
【請求項3】
前記第1時点は、前記サンプル患者及び前記対象患者を含む患者が病院に入院してから退院するまでの間の時点であり、
前記第2時点は、前記患者が病院を退院してから第1所定期間が経過した時点である
請求項1
又は2に記載のモデル生成装置。
【請求項4】
前記予測モデルは、前記第1時点よりも後であって且つ前記第2時点とは異なる第3時点における前記対象患者の状態を更に予測し、
前記学習用データは、前記第3時点における前記サンプル患者の状態を示す第4指標値を含み、
前記学習手段は、前記第3指標値と、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第3時点における前記サンプル患者の状態を示す第5指標値と、前記変化情報とに基づいて、前記予測モデルを学習する
請求項1から
3のいずれか一項に記載のモデル生成装置。
【請求項5】
前記学習手段は、前記第1指標値、前記第3指標値及び前記第5指標値の間の変化が、前記変化情報が表す前記第1時点から前記第2時点及び前記第3時点への前記状態の変化傾向である第2の変化傾向に近づくように前記予測モデルを学習する
請求項
4に記載のモデル生成装置。
【請求項6】
前記学習手段は、前記第1指標値、前記第3指標値及び前記第5指標値の間の変化が前記第2の変化傾向に近づくほど小さくなる項を含む損失関数に基づいて、前記予測モデルを学習する
請求項
5に記載のモデル生成装置。
【請求項7】
前記第1時点は、前記サンプル患者及び前記対象患者を含む患者が病院に入院してから退院するまでの間の時点であり、
前記第2時点は、前記患者が病院を退院してから第1所定期間が経過した時点であり、
前記第3時点は、前記患者が病院を退院してから前記第1所定期間とは異なる第2所定期間が経過した時点である
請求項
4から
6のいずれか一項に記載のモデル生成装置。
【請求項8】
前記第1時点は、前記患者が病院に入院する時点である
請求項
3又は
7に記載のモデル生成装置。
【請求項9】
第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値、及び前記第1時点よりも後の第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、
前記第1時点における対象患者の状態に基づいて前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルを学習し、
前記予測モデルの学習では、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて
、前記第1及び第3指標値の間の変化が、前記変化情報が表す前記第1時点から前記第2時点への前記状態の変化傾向である第1の変化傾向に近づくように前記予測モデルが学習される
コンピュータ・ソフトウエアによるモデル生成方法。
【請求項10】
コンピュータに
第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値、及び前記第1時点よりも後の第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、
前記第1時点における対象患者の状態に基づいて前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルを学習し、
前記予測モデルの学習では、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて
、前記第1及び第3指標値の間の変化が、前記変化情報が表す前記第1時点から前記第2時点への前記状態の変化傾向である第1の変化傾向に近づくように前記予測モデルが学習されるモデル生成方法を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項11】
第1時点における対象患者の状態に関する状態情報を取得する状態取得手段と、
前記状態情報と、前記第1時点における前記対象患者の状態に基づいて前記第1時点よりも後の第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルとを用いて、前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測手段と
を備え、
前記予測モデルは、前記第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値及び前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて
、前記第1及び第3指標値の間の変化が、前記変化情報が表す前記第1時点から前記第2時点への前記状態の変化傾向である第1の変化傾向に近づくように学習することで生成されるモデルである
状態予測装置。
【請求項12】
第1時点における対象患者の状態に関する状態情報を取得し、
前記状態情報と、前記第1時点における前記対象患者の状態に基づいて前記第1時点よりも後の第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルとを用いて、前記第2時点における前記対象患者の状態を予測し、
前記予測モデルは、前記第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値及び前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて
、前記第1及び第3指標値の間の変化が、前記変化情報が表す前記第1時点から前記第2時点への前記状態の変化傾向である第1の変化傾向に近づくように学習することで生成されるモデルである
コンピュータ・ソフトウエアによる状態予測方法。
【請求項13】
コンピュータに、
第1時点における対象患者の状態に関する状態情報を取得し、
前記状態情報と、前記第1時点における前記対象患者の状態に基づいて前記第1時点よりも後の第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルとを用いて、前記第2時点における前記対象患者の状態を予測し、
前記予測モデルは、前記第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値及び前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて
、前記第1及び第3指標値の間の変化が、前記変化情報が表す前記第1時点から前記第2時点への前記状態の変化傾向である第1の変化傾向に近づくように学習することで生成されるモデルである状態予測方法を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の状態を予測するための予測モデルを生成可能なモデル生成装置、モデル生成方法及び記録媒体、並びに、予測モデルを用いて患者の状態を予測可能な状態予測装置、状態予測方法及び記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の施設において患者の状態を予測する装置が知られている。例えば、特許文献1には、患者を受け入れる施設と患者とをマッチングするために、患者の病状の回復度合いを予測する装置が記載されている。
【0003】
その他、本願発明に関連する先行技術文献として、非特許文献1があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/071540号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【文献】小山哲男、「脳卒中患者の機能予後予測と地域連携パス」、第3回リハビリテーション科専門医会 学術集会、JpnJ Rehabil Med 2009、pp108-117、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一の時点での患者の状態を予測するために、一の時点とは異なる他の時点での患者の状態に基づいて一の時点での患者の状態を予測する予測モデルが用いられることがある。このような予測モデルが用いられる場合には、予測モデルの予測精度を向上させるために、一の時点での患者の実際の状態と他の時点での患者の実際の状態とを含む学習用データを用いて、予測モデルを更新する(例えば、予測モデルのパラメータを更新する)学習動作が行われることが好ましい。一方で、予測モデルの予測精度を十分に向上させるためには、ある程度の量の学習用データが必要となる。しかしながら、学習用データを生成するためには、患者の状態を実際に測定する必要がある。このため、十分な量の学習用データが必ずしも用意できるとは限らない。その結果、予測モデルの予測精度を適切に向上させることができず、結果として、患者の状態を適切に予測することができない可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した技術的問題を解決可能なモデル生成装置、モデル生成方法、状態予測装置、状態予測方法、及び、記録媒体を提供することを課題とする。一例として、本発明は、予測モデルの予測精度を適切に向上させることが可能なモデル生成装置、モデル生成方法及び記録媒体、並びに、患者の状態を適切に予測することが可能な状態予測装置、状態予測方法及び記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
モデル生成装置の一態様は、第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値、及び前記第1時点よりも後の第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得する取得手段と、前記第1時点における対象患者の状態に基づいて前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルを学習する学習手段とを備え、前記学習手段は、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて、前記予測モデルを学習する。
【0009】
モデル生成方法の一態様は、第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値、及び前記第1時点よりも後の第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1時点における対象患者の状態に基づいて前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルを学習し、前記予測モデルの学習では、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて、前記予測モデルが学習される。
【0010】
記録媒体の第1の態様は、コンピュータに、第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値、及び前記第1時点よりも後の第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1時点における対象患者の状態に基づいて前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルを学習し、前記予測モデルの学習では、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて、前記予測モデルが学習されるモデル生成方法を実行させるコンピュータプログラムが記録された記録媒体である。
【0011】
状態予測装置の一態様は、第1時点における対象患者の状態に関する状態情報を取得する状態取得手段と、前記状態情報と、前記第1時点における前記対象患者の状態に基づいて前記第1時点よりも後の第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルとを用いて、前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測手段とを備える状態予測装置であり、前記予測モデルは、前記第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値及び前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて学習することで生成されるモデルである。
【0012】
状態予測方法の一態様は、第1時点における対象患者の状態に関する状態情報を取得し、前記状態情報と、前記第1時点における前記対象患者の状態に基づいて前記第1時点よりも後の第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルとを用いて、前記第2時点における前記対象患者の状態を予測し、前記予測モデルは、前記第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値及び前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて学習することで生成されるモデルである。
【0013】
記録媒体の第2の態様は、コンピュータに、第1時点における対象患者の状態に関する状態情報を取得し、前記状態情報と、前記第1時点における前記対象患者の状態に基づいて前記第1時点よりも後の第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルとを用いて、前記第2時点における前記対象患者の状態を予測し、前記予測モデルは、前記第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値及び前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて学習することで生成されるモデルである状態予測方法を実行させるコンピュータプログラムが記録された記録媒体である。
【発明の効果】
【0014】
上述したモデル生成装置の一態様、モデル生成方法の一態様及び記録媒体の第1の態様によれば、予測モデルの予測精度を適切に向上させることが可能となる。また、上述した状態予測装置の一態様、状態予測方法の一態様及び記録媒体の第2の態様によれば、患者の状態を適切に予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるモデル生成装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における学習用データセットのデータ構造を示すデータ構造図である。
【
図3】
図3は、本実施形態におけるモデル生成装置が行うモデル生成動作の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、FIMスコアの変化傾向を表す変化曲線の一例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本実施形態における状態予測装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本実施形態における状態予測装置が行う状態予測動作の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施形態のモデル生成動作によって生成された予測モデルの予測精度と、比較例のモデル生成動作によって生成された予測モデルの予測精度とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、モデル生成装置、モデル生成方法、状態予測装置、状態予測方法、及び、記録媒体の実施形態について説明する。以下では、モデル生成装置、モデル生成方法、及び、記録媒体の実施形態が適用されたモデル生成装置1と、状態予測装置、状態予測方法、及び、記録媒体の実施形態が適用された状態予測装置2とについて順に説明する。
【0017】
(1)モデル生成装置1
はじめに、モデル生成装置1について説明する。モデル生成装置1は、モデル生成動作を行うことが可能な装置である。モデル生成動作は、予測モデルMを生成するための動作である。予測モデルMは、時点tAにおける患者の状態に基づいて、時点tAよりも後の時点tBにおける患者の状態及び時点tBよりも後の時点tCにおける患者の状態の夫々を予測可能なモデルである。予測モデルMは、時点tAにおける患者の状態に基づいて、時点tAよりも後の時点tBにおける患者の状態を予測可能なモデルと、時点tAにおける患者の状態に基づいて、時点tBよりも後の時点tCにおける患者の状態を予測可能なモデルとを別個に含んでいてもよい。或いは、予測モデルMは、時点tAにおける患者の状態に基づいて、時点tAよりも後の時点tBにおける患者の状態及び時点tCにおける患者の状態の夫々を予測可能な単一のモデルであってもよい。本実施形態では、予測モデルMが、時点tAにおける患者の状態を示す指標値が入力された場合に、時点tBにおける患者の状態を示す指標値及び時点tCにおける患者の状態を示す指標値を出力可能なモデルである例について説明する。予測モデルMは、学習可能なモデル(例えば、機械学習可能なモデル)である。つまり、予測モデルMは、学習動作によって予測モデルMの動作を規定するパラメータを更新可能なモデルである。このような学習可能なモデルの一例として、ニューラルネットワークを含むモデルがあげられる。予測モデルMがニューラルネットワークを含むモデルである場合には、予測モデルMの動作を規定するパラメータは、例えば、ニューラルネットワークの構造(つまり、ノードの接続態様)、ニューラルネットワークの重み及びニューラルネットワークのバイアスの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0018】
本実施形態における患者の状態は、例えば、時間の経過と共に変化する患者の状態を意味していてもよい。このような患者の状態の一例として、患者の病状があげられる。なぜならば、患者の病状は、様々な要因によって変化するからである。例えば、患者の病状は、患者に施された治療によって改善するように変化する場合がある。或いは、例えば、患者の病状は、患者に治療が施されたとしても悪化するように変化する場合がある。一例として、患者がアルツハイマー等を患っている場合には、患者の病状は、患者に治療が施されたとしても悪化するように変化する場合がある。患者の状態の他の一例として患者の認知機能及び患者の身体機能の少なくとも一つがあげられる。なぜならば、患者の認知機能及び患者の身体機能の少なくとも一つは、患者が取り組むリハビリテーションによって改善する(つまり、変化する)からである。本実施形態では、患者の状態として、患者の認知機能及び患者の身体機能の少なくとも一つが用いられる例について説明する。
【0019】
患者の状態を示す指標値は、患者の状態の良否に応じて変化する指標値を意味していてもよい。つまり、患者の状態を示す指標値は、患者の状態の良否の程度を定量的に示す指標値を意味していてもよい。例えば、指標値として、患者の状態が良くなるにつれて大きくなる指標値が用いられてもよい。例えば、指標値として、患者の状態が良くなるにつれて小さくなる指標値が用いられてもよい。例えば、指標値として、患者の状態が悪くなるにつれて大きくなる指標値が用いられてもよい。例えば、指標値として、患者の状態が悪くなるにつれて小さくなる指標値が用いられてもよい。上述したように、患者の状態が時間の経過と共に変化する場合には、患者の状態を示す指標値もまた、時間の経過と共に変化する。上述したように、本実施形態では、患者の状態として、患者の認知機能及び患者の身体機能の少なくとも一つが用いられる例について説明する。この場合、患者の状態を示す指標値として、FIM(Fanctional Independence Measure:機能的自立度評価法)に基づく指標(以下、“FIMスコア”と称する)が用いられてもよい。従って、本実施形態では、患者の状態を示す指標値として、FIMスコアが用いられる例について説明する。
【0020】
時点tAは、患者が病院に入院してから退院するまでの間の時点を意味していてもよい。時点tBは、患者が病院を退院してから所定期間pBが経過した時点を意味していてもよい。時点tCは、患者が病院を退院してから所定期間pC(但し、所定期間pCは、所定期間pBよりも長い)が経過した時点を意味していてもよい。本実施形態では、時点tAとして、患者が病院に入院する時点t_Dが用いられ、時点tBとして、患者が病院から退院してから半年が経過した時点t_Fが用いられ、且つ、時点tCとして、患者が病院から退院してから一年が経過した時点t_Yが用いられる例について説明する。この場合、予測モデルMは、時点t_Dにおける患者の状態を示すFIMスコアS_Dに基づいて、時点t_Fにおける患者の状態を示すFIMスコアS_F及び時点t_Yにおける患者の状態を示すFIMスコアS_Yの夫々を予測可能なモデルとなる。但し、時点tA、tB及びtCが、これらの例に限定されることはない。
【0021】
以下、モデル生成装置1の構成及びモデル生成装置1が行うモデル生成動作について順に説明する。
【0022】
(1-1)モデル生成装置1の構成
初めに、
図1を参照しながら、本実施形態におけるモデル生成装置1の構成について説明する。
図1は、本実施形態におけるモデル生成装置1の構成を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、モデル生成装置1は、演算装置11と、記憶装置12とを備えている。更に、モデル生成装置1は、入力装置13と、出力装置14とを備えていてもよい。但し、モデル生成装置1は、入力装置13及び出力装置14の少なくとも一方を備えていなくてもよい。演算装置11と、記憶装置12と、入力装置13と、出力装置14とは、データバス15を介して接続されていてもよい。
【0024】
演算装置11は、例えば、CPU(Central Proecssing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)及びFPGA(Field Programmable Gate Array)のうちの少なくとも一つを含む。演算装置11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、演算装置11は、記憶装置12が記憶しているコンピュータプログラムを読み込んでもよい。例えば、演算装置11は、コンピュータで読み取り可能であって且つ一時的でない記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。演算装置11は、通信装置として機能可能な入力装置13を介して、モデル生成装置1の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、ダウンロードしてもよい又は読み込んでもよい)。演算装置11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行する。その結果、演算装置11内には、モデル生成装置1が行うべき動作(例えば、上述したモデル生成動作)を実行するための論理的な機能ブロックが実現される。つまり、演算装置11は、モデル生成装置1が行うべき動作を実行するための論理的な機能ブロックを実現するためのコントローラとして機能可能である。
【0025】
図1には、モデル生成動作を実行するために演算装置11内に実現される論理的な機能ブロックの一例が示されている。
図1に示すように、演算装置11内には、「取得手段」の一具体例であるデータ取得部111と、「学習手段」の一具体例であるモデル生成部112とが実現される。尚、データ取得部111及びモデル生成部112の夫々が行う動作については後に詳述するが、以下にその概要を説明する。データ取得部111は、予測モデルMを生成するために用いる学習用データ122(
図2参照)を、記憶装置12が記憶する学習用データセット121から取得する。モデル生成部112は、データ取得部111が取得した学習用データ122を用いて、予測モデルMを生成する(言い換えれば、学習する)。
【0026】
記憶装置12は、所望のデータを記憶可能である。例えば、記憶装置12は、演算装置11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶していてもよい。記憶装置12は、演算装置11がコンピュータプログラムを実行している際に演算装置11が一時的に使用するデータを一時的に記憶してもよい。記憶装置12は、モデル生成装置1が長期的に保存するデータを記憶してもよい。尚、記憶装置12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。つまり、記憶装置12は、一時的でない記録媒体を含んでいてもよい。
【0027】
本実施形態では、記憶装置12は、モデル生成動作を行うためにモデル生成装置1が利用するデータを記憶する。
図1には、モデル生成動作を行うためにモデル生成装置1が利用するデータの一例として、学習用データセット121が記載されている。つまり、
図1は、記憶装置12が学習用データセット121を記憶する例を示している。
【0028】
学習用データセット121のデータ構造の一例が
図2に示されている。
図2に示すように、学習用データセット121は、複数の学習用データ122を含む。各学習用データ122は、過去に測定された患者の状態に関する情報を含む。具体的には、各学習用データ122は、過去に測定された患者の状態に関する情報として、時点t_Dにおける患者の状態を測定した結果得られたFIMスコアS_Dと、時点t_Fにおける患者の状態を測定した結果得られたFIMスコアS_Fと、時点t_Yにおける患者の状態を測定した結果得られたFIMスコアS_Yの少なくとも一方とを含む。この場合、学習用データセット121は、FIMスコアS_D、FIMスコアS_F及びFIMスコアS_Yの全てを含む学習用データ122(
図2において、データIDが#1となる学習用データ122参照)を含んでいてもよい。学習用データセット121は、FIMスコアS_D及びFIMスコアS_Fを含む一方で、FIMスコアS_Yを含まない学習用データ122(
図2において、データIDが#2となる学習用データ122参照)を含んでいてもよい。学習用データセット121は、FIMスコアS_D及びFIMスコアS_Yを含む一方で、FIMスコアS_Fを含まない学習用データ122(
図2において、データIDが#3となる学習用データ122参照)を含んでいてもよい。
【0029】
学習用データ122にFIMスコアが含まれている患者は、過去にFIMスコアを測定済みの患者であり、典型的には、予測モデルMを用いて未来のFIMスコアを推定する対象となる患者とは異なっていてもよい。このため、以下の説明では、必要に応じて、学習用データ122にFIMスコアが含まれている患者を“サンプル患者”と称する一方で、予測モデルMを用いて未来のFIMスコアを推定する対象となる患者を“対象患者”と称することで、両者を便宜的に区別する。尚、対象患者は、サンプル患者と同一人物であってもよい。つまり、学習用データセット121は、予測モデルMを用いて未来のFIMスコアを推定する対象となっている対象患者の過去に測定済みのFIMスコアを含む学習用データ122を含んでいてもよい。
【0030】
また、以下の説明では、必要に応じて、学習用データ122に含まれるFIMスコアS_D、FIMスコアS_F及びFIMスコアS_Yを、夫々、FIMスコアS_D_sample、FIMスコアS_F_sample及びFIMスコアS_Y_sampleと表記する一方で、予測モデルMを用いて予測されたFIMスコアS_F及びFIMスコアS_Yを、夫々、FIMスコアS_F_predict及びFIMスコアS_Y_predictと表記することで、両者を区別する。この場合、FIMスコアS_D_sampleは、サンプル患者が病院に入院する時点t_Dにおけるサンプル患者の状態を示すFIMスコアの実測値に相当する。また、FIMスコアS_F_sampleは、サンプル患者が病院を退院してから半年が経過した時点t_Fにおけるサンプル患者の状態を示すFIMスコアの実測値に相当する。また、FIMスコアS_Y_sampleは、サンプル患者が病院を退院してから一年が経過した時点t_Yにおけるサンプル患者の状態を示すFIMスコアの実測値に相当する。また、FIMスコアS_F_predictは、対象患者が病院を退院してから半年が経過した時点t_Fにおける対象患者の状態を示すFIMスコアの予測値に相当する。また、FIMスコアS_Y_predictは、対象患者が病院を退院してから一年が経過した時点t_Yにおける対象患者の状態を示すFIMスコアの予測値に相当する。
【0031】
学習用データセット121は、異なる複数のサンプル患者の状態に関する情報を夫々含む複数の学習用データ122を含んでいてもよい。例えば、学習用データセット121は、(i)第1のサンプル患者が病院に入院する時点t_Dにおける第1のサンプル患者の状態を測定した結果得られたFIMスコアS_D_sampleと、第1のサンプル患者が病院を退院してから半年が経過した時点t_Fにおける第1のサンプル患者の状態を測定した結果得られたFIMスコアS_F_sample及び第1のサンプル患者が病院を退院してから一年が経過した時点t_Yにおける第1のサンプル患者の状態を測定した結果得られたFIMスコアS_Y_sampleの少なくとも一方とを含む第1の学習用データと、(ii)第1のサンプル患者とは異なる第2のサンプル患者が病院に入院する時点t_Dにおける第2のサンプル患者の状態を測定した結果得られたFIMスコアS_D_sampleと、第2のサンプル患者が病院を退院してから半年が経過した時点t_Fにおける第2のサンプル患者の状態を測定した結果得られたFIMスコアS_F_sample及び第2のサンプル患者が病院を退院してから一年が経過した時点t_Yにおける第2のサンプル患者の状態を測定した結果得られたFIMスコアS_Y_sampleの少なくとも一方とを含む第2の学習用データとを含んでいてもよい。
【0032】
あるサンプル患者が病院に複数回入院した場合には、学習用データセット121は、サンプル患者がN(尚、Nは1以上の整数を示す変数である)回目に病院に入院した場合のサンプル患者の状態に関する情報を含む学習用データ122と、サンプル患者がM(尚、Mは、Nとは異なり且つ1以上の整数を示す変数である)回目に病院に入院した場合の同じサンプル患者の状態に関する情報を含む学習用データ122とを含んでいてもよい。
【0033】
再び
図1において、入力装置13は、モデル生成装置1の外部からのモデル生成装置1に対する情報の入力を受け付ける装置である。例えば、入力装置13は、モデル生成装置1のユーザが操作可能な操作装置(例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルのうちの少なくとも一つ)を含んでいてもよい。例えば、入力装置13は、モデル生成装置1の外部から通信ネットワークを介してモデル生成装置1にデータとして送信される情報を受信可能な受信装置を含んでいてもよい。
【0034】
出力装置14は、情報を出力する装置である。例えば、出力装置14は、モデル生成装置1が行うモデル生成動作によって生成された予測モデルMに関する情報を出力してもよい。上述したように、予測モデルMが状態予測装置2によって用いられるがゆえに、出力装置14は、予測モデルMに関する情報を状態予測装置2に出力してもよい。その結果、状態予測装置2は、予測モデルMを用いて、対象患者の状態を予測することができる。このような出力装置14の一例として、通信ネットワーク又はデータバスを介して情報をデータとして送信可能な送信装置があげられる。但し、出力装置14は、例えば、情報を画像として出力可能な(つまり、表示可能な)ディスプレイ(表示装置)を含んでいてもよい。出力装置14は、例えば、情報を音声として出力可能なスピーカ(音声出力装置)を含んでいてもよい。例えば、出力装置14、例えば、情報が印刷された文書を出力可能なプリンタを含んでいてもよい。
【0035】
(1-2)モデル生成装置1が行うモデル生成動作
続いて、
図3を参照しながら、モデル生成装置1が行うモデル生成動作について説明する。
図3は、モデル生成装置1が行うモデル生成動作の流れを示すフローチャートである。
【0036】
図3に示すように、まず、データ取得部111は、記憶装置12が記憶している学習用データセット121から、予測モデルMを生成するために用いる学習用データ122を取得する(ステップS11)。データ取得部111は、学習用データセット121に含まれている複数の学習用データ122の全てを取得する。但し、データ取得部111は、学習用データセット121に含まれている複数の学習用データ122のうちの一部を取得する一方で、学習用データセット121に含まれている複数の学習用データ122のうちの他の一部を取得しなくてもよい。尚、以下の説明では、説明の便宜上、データ取得部111がK(尚、Kは、2以上の整数を示す定数)個の学習用データ122(具体的には、学習用データ122#1から122#K)を取得した例について説明する。
【0037】
その後、モデル生成部112は、ステップS11で取得された複数の学習用データ122を用いて、予測モデルMを生成(つまり、学習)する(ステップS12)。具体的には、モデル生成装置1が初めて予測モデルMを生成する場合には、モデル生成部112は、予め用意されているデフォルトの予測モデルM(或いは、初期状態の予測モデルM)に対して、ステップS11で取得された学習用データ122#k(尚、kは、1≦k≦Kを満たす整数を示す変数)に含まれているFIMスコアS_D_sampleを入力する。以下の説明では、学習用データ122#kに含まれるFIMスコアS_D_sample、S_F_sample及びS_Y_sampleを、夫々、FIMスコアS_D_sample#k、S_F_sample#k及びS_Y_sample#kと表記する。或いは、モデル生成装置1が既に予測モデルMを生成済みである場合には、モデル生成部112は、生成済みの予測モデルMに対して、ステップS11で取得された学習用データ122#kに含まれているFIMスコアS_D_sample#kを入力する。その結果、予測モデルMは、FIMスコアS_F_predict及びFIMスコアS_Y_predictを出力する。つまり、モデル生成部112は、FIMスコアS_F_predict及びFIMスコアS_Y_predictを取得する。以下の説明では、FIMスコアS_D_sample#kが入力された予測モデルMが出力するFIMスコアS_F_predict及びS_Y_predictを、夫々、FIMスコアS_F_predict#k及びS_Y_predict#kと表記する。
【0038】
モデル生成部112は、FIMスコアS_D_sample#kを予測モデルMに入力することでFIMスコアS_F_predict#k及びFIMスコアS_Y_predict#kを取得する動作を、ステップS11で取得されたK個の学習用データ122#1から122#Kを対象に繰り返す。その結果、モデル生成部112は、FIMスコアS_F_predict#1からS_F_predict#K及びFIMスコアS_Y_predict#1からS_Y_predict#Kを取得する。
【0039】
その後、モデル生成部112は、FIMスコアS_F_predict#1からS_F_predict#K及びFIMスコアS_Y_predict#1からS_Y_predict#Kに基づいて、デフォルトの又は生成済みの予測モデルMを更新する。つまり、モデル生成部112は、FIMスコアS_F_predict#1からS_F_predict#K及びFIMスコアS_Y_predict#1からS_Y_predict#Kに基づいて、予測モデルMの動作を規定するパラメータを更新する。その結果、更新された(つまり、学習された)予測モデルMが生成される。予測モデルMを更新するために、モデル生成部112は、FIMスコアS_F_predict#1からS_F_predict#K及びFIMスコアS_Y_predict#1からS_Y_predict#Kに基づいて定まる損失関数(言い換えれば、目的関数)Lossを用いる。つまり、モデル生成部112は、損失関数Lossに基づいて、予測モデルMを生成する。具体的には、モデル生成部112は、例えば、損失関数Lossが最小になるように、予測モデルMを更新してもよい。
【0040】
損失関数Lossは、FIMスコアS_F及びS_Yの夫々の予測誤差に基づく損失項Loss1を含んでいてもよい。具体的には、予測モデルMが出力したFIMスコアS_F_predict#kは、時点t_Fにおけるサンプル患者のFIMスコアS_Fの予測値である。一方で、時点t_Fにおけるサンプル患者のFIMスコアS_Fの実測値は、学習用データ122#k内にFIMスコアS_F_sample#kとして含まれている。このため、FIMスコアS_F_predict#kとFIMスコアS_F_sample#kとの差分(つまり、FIMスコアS_Fの予測誤差)が小さいほど、予測モデルMの予測精度が良好であると推定される。同様の理由から、FIMスコアS_Y_predict#kとFIMスコアS_Y_sample#kとの差分(つまり、FIMスコアS_Yの予測誤差)が小さいほど、予測モデルMの予測精度が良好であると推定される。このため、損失項Loss1は、FIMスコアS_F_predict#kとFIMスコアS_F_sample#kとの差分が小さくなるほど及び/又はFIMスコアS_Y_predict#kとFIMスコアS_Y_sample#kとの差分が小さくなるほど小さくなる項であってもよい。このような損失項Loss1の一例が、数式1及び2に示されている。数式1は、予測誤差として二乗誤差が用いられる例を示している。数式2は、予測誤差として絶対値が用いられる例を示している。尚、モデル生成部112が一般的には行列演算を行うことで損失項Loss1を算出することを考慮すれば、数式1に示す損失項Loss1が用いられることが好ましい。
【0041】
【0042】
【0043】
本実施形態では特に、損失関数Lossは、時間の経過に伴うFIMスコアの変化傾向を表す変化曲線Cに基づいて定まる損失項Loss2を含む。この場合、モデル生成部112は、損失項Loss1と損失項Loss2との和を含む損失関数Lossが最小になるように、予測モデルMを更新してもよい。
【0044】
変化曲線Cは、時間の経過に伴うFIMスコアの典型的な(言い換えれば、一般的な、標準的な、平均的な又は理想的な)変化傾向を表す情報である。具体的には、ある病気を患った一の患者の状態(この場合、病状)は、同じ病気を患った他の患者の病状が回復する傾向と概ね同じような傾向で回復していく可能性が相対的に高い。つまり、ある病気を患った一の患者のFIMスコアは、同じ病気を患った他の患者のFIMスコアが変化する(典型的には、増加する)傾向と概ね同じような傾向で変化していく(典型的には、増加していく)可能性が相対的に高い。言い換えれば、同じ病気を患った複数の患者のFIMスコアは、互いに同じように変化していく可能性が相対的に高い。例えば、上述した非特許文献1は、脳卒中を患った患者のFIMスコアは、対数曲線に沿って変化する傾向にあることを示している。
【0045】
このように時間の経過に伴うFIMスコアの典型的な変化傾向を示す変化曲線C(或いは、任意の情報)は、実質的には、学習用データ122#kに含まれるFIMスコアS_D_sample#k、S_F_sample#k及びS_Y_sample#kの間に成立しているであろうと推定される所定関係を表しているとも言える。そうすると、予測モデルMに入力されるFIMスコアS_D_sample#kと、予測モデルMが出力するFIMスコアS_F_predict#k及びS_Y_predict#kとの間の関係が、変化曲線Cが表す所定関係に近づけば近づくほど、予測モデルMの予測精度が良好であると推定される。つまり、FIMスコアS_D_sample#kとFIMスコアS_F_predict#k及びS_Y_predict#kとの間の変化が、変化曲線Cが表す時点t_Dから時点t_F及びt_Yまでの間でのFIMスコアの変化傾向に近づけば近づくほど、予測モデルMの予測精度が良好であると推定される。このため、損失項Loss2は、FIMスコアS_D_sample#k、S_F_predict#k及びS_Y_predict#kの間の関係が、変化曲線Cが表す所定関係に近づけば近づくほど小さくなる項であってもよい。つまり、損失項Loss2は、FIMスコアS_D_sample#kとFIMスコアS_F_predict#k及びS_Y_predict#kとの間の変化が、変化曲線Cが表す時点t_Dから時点t_F及びt_Yまでの間でのFIMスコアの変化傾向に近づけば近づくほど小さくなる項であってもよい。この場合、モデル生成部112は、FIMスコアS_D_sample#kとFIMスコアS_F_predict#k及びS_Y_predict#kとの間の変化が、変化曲線Cが表す時点t_Dから時点t_F及びt_Yまでの間でのFIMスコアの変化傾向に近づくように、予測モデルMを生成する。
【0046】
損失項Loss2の一例について
図4を参照しながら説明する。
図4は、FIMスコアが、S_Day1=S_Day2+β×ln(Day1/Day2)という数式aで定義される例を示している。つまり、
図4は、FIMスコアの変化傾向を示す変化曲線Cが、S_Day1=S_Day2+β×ln(Day1/Day2)という数式aによって表されている例を示している。尚、数式aにおける「Day1」及び「Day2」は、所定の基準時(例えば、患者が病気を発症した時点)からの経過日数を示す。但し、「Day1」及び「Day2」は、互いに異なる。また、数式aにおける「β」は、任意の定数を意味している。また、数式aにおける「ln」は、ネイピア数eを底とする対数(つまり、自然対数)を意味する。このため、数式aは、FIMスコアS_D、S_F及びS_Yの間には、S_Y=S_D+β×ln(Day_Y/Day_D)という数式bで定義される所定関係が成立することを示している。尚、数式bにおける「Day_D」及び「Day_Y」は、夫々、所定の基準時から時点t_Dまでの経過日数及び所定の基準時から時点t_Yまでの経過日数を示す。また、数式bにおける定数βは、β=S_F-S_D/ln(Day_F/Day_D)という数式cで表現可能な定数となる。尚、数式cにおける「Day_F」は、所定の基準時から時点t_Fまでの経過日数を示す。尚、数式bは、S_F=S_D+β×ln(Day_F/Day_D)という数式b’で置き換えられてもよく、この場合、定数βは、β=S_Y-S_D/ln(Day_Y/Day_D)という数式c’で表現されてもよい。ここで、数式cを数式bに代入して式を整理すると、数式bは、S_Y=S_D×(1-A)+S_F×Aという数式dに変換される。尚、数式dにおける「A」は、A=ln(Day_Y/Day_D)/ln(Day_F/Day_D)という数式で表される定数を示す。
【0047】
その結果、
図4に示す変化曲線Cは、FIMスコアS_D、S_F及びS_Yの間には、S_Y=S_D×(1-A)+S_F×Aという数式dで表される所定関係が成立していることを示していると言える。つまり、変化曲線Cは、FIMスコアS_D_sample、S_F_sample及びS_Y_sampleの間には、S_Y_sample=S_D_sample×(1-A)+S_F_sample×Aという数式dで表される所定関係が成立しているであろうと推定されることを示している。そうすると、FIMスコアS_F_predict及びS_Y_predictが、夫々、FIMスコアS_F_sample及びS_Y_sampleの予測値であることを考慮すれば、FIMスコアS_D_sample、S_F_predict及びS_Y_predictの間の関係が、S_Y_predict=S_D_sample×(1-A)+S_F_predict×Aという数式eで表される所定関係に近づけば近づくほど、予測モデルMの予測精度が良好であると推定される。このため、損失項Loss2は、数式eの左辺(=S_Y_predict)と数式eの右辺(=S_D_sample×(1-A)+S_F_predict×A)との差分が小さくなるほど小さくなる項であってもよい。このような損失項Loss2の一例が、数式3及び4に示されている。数式3は、差分の二乗値が用いられる例を示している。数式4は、差分の絶対値が用いられる例を示している。尚、モデル生成部112が一般的には行列演算を行うことで損失項Loss2を算出することを考慮すれば、数式3に示す損失項Loss2が用いられることが好ましい。尚、損失項Loss2は、いわゆる正則化項として用いられてもよい。
【0048】
【0049】
【0050】
損失項Loss2は、変化曲線Cに基づいて予め設定されていてもよい。或いは、モデル生成部112が、変化曲線Cに基づいて、損失項Loss2を設定してもよい。いずれの場合であっても、モデル生成部112は、変化曲線Cに基づいて予測モデルMを更新すると言える。つまり、モデル生成部112は、変化曲線Cに関する事前知識を用いて予測モデルMを更新すると言える。
【0051】
(2)状態予測装置2
続いて、状態予測装置2について説明する。状態予測装置2は、モデル生成装置1が生成した予測モデルMを用いて、時点tAにおける対象患者の状態に基づいて、時点tAよりも後の時点tBにおける対象患者の状態及び時点tBよりも後の時点tCにおける対象患者の状態の夫々を予測する状態予測動作を行う。本実施形態では、上述したように、予測モデルMが、時点t_Dにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_Dに基づいて、時点t_Fにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_F及び時点t_Fよりも後の時点t_Yにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_Yの夫々を予測可能なモデルである例について説明している。この場合、状態予測動作は、予測モデルMを用いて、時点t_Dにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_Dに基づいて、時点t_Fにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_F及び時点t_Yにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_Yの夫々を予測する動作となる。以下、状態予測装置2の構成及び状態予測装置2が行う状態予測動作について順に説明する。
【0052】
(2-1)状態予測装置2の構成
初めに、
図5を参照しながら、本実施形態における状態予測装置2の構成について説明する。
図5は、本実施形態における状態予測装置2の構成を示すブロック図である。
【0053】
図5に示すように、状態予測装置2は、演算装置21と、記憶装置22とを備えている。更に、状態予測装置2は、入力装置23と、出力装置24とを備えていてもよい。但し、状態予測装置2は、入力装置23及び出力装置24の少なくとも一方を備えていなくてもよい。演算装置21と、記憶装置22と、入力装置23と、出力装置24とは、データバス25を介して接続されていてもよい。
【0054】
演算装置21は、例えば、CPU、GPU及びFPGAのうちの少なくとも一つを含む。演算装置21は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、演算装置21は、記憶装置22が記憶しているコンピュータプログラムを読み込んでもよい。例えば、演算装置21は、コンピュータで読み取り可能であって且つ一時的でない記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。演算装置21は、通信装置として機能可能な入力装置23を介して、状態予測装置2の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、ダウンロードしてもよい又は読み込んでもよい)。演算装置21は、読み込んだコンピュータプログラムを実行する。その結果、演算装置21内には、状態予測装置2が行うべき動作(例えば、上述した状態予測動作)を実行するための論理的な機能ブロックが実現される。つまり、演算装置21は、状態予測装置2が行うべき動作を実行するための論理的な機能ブロックを実現するためのコントローラとして機能可能である。
【0055】
図5には、状態予測動作を実行するために演算装置21内に実現される論理的な機能ブロックの一例が示されている。
図5に示すように、演算装置21内には、「取得手段」の一具体例であるデータ取得部211と、「予測手段」の一具体例である状態予測部212とが実現される。尚、データ取得部211及び状態予測部212の夫々が行う動作については後に詳述するが、以下にその概要を説明する。データ取得部211は、時点t_Dにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_Dを取得する。状態予測部212は、データ取得部211が取得したFIMスコアS_Dと、予測モデルMとを用いて、時点t_Fにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_F及び時点t_Yにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_Yの夫々を予測する。
【0056】
記憶装置22は、所望のデータを記憶可能である。例えば、記憶装置22は、演算装置21が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶していてもよい。記憶装置22は、演算装置21がコンピュータプログラムを実行している際に演算装置21が一時的に使用するデータを一時的に記憶してもよい。記憶装置22は、状態予測装置2が長期的に保存するデータを記憶してもよい。例えば、
図5に示す例では、記憶装置22は、状態予測装置2が用いる予測モデルMを記憶している。尚、記憶装置22は、RAM、ROM、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。つまり、記憶装置22は、一時的でない記録媒体を含んでいてもよい。
【0057】
入力装置23は、状態予測装置2の外部からの状態予測装置2に対する情報の入力を受け付ける装置である。例えば、入力装置23は、状態予測装置2のユーザが操作可能な操作装置(例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルのうちの少なくとも一つ)を含んでいてもよい。例えば、入力装置23は、状態予測装置2の外部から通信ネットワークを介して状態予測装置2にデータとして送信される情報を受信可能な受信装置を含んでいてもよい。
【0058】
出力装置24は、情報を出力する装置である。例えば、出力装置24は、状態予測装置2の予測結果に関する情報(例えば、FIMスコアS_F及びS_Yの夫々)を出力してもよい。このような出力装置24の一例として、通信ネットワーク又はデータバスを介して情報をデータとして送信可能な送信装置があげられる。但し、出力装置24は、例えば、情報を画像として出力可能な(つまり、表示可能な)ディスプレイ(表示装置)を含んでいてもよい。出力装置24は、例えば、情報を音声として出力可能なスピーカ(音声出力装置)を含んでいてもよい。例えば、出力装置24、例えば、情報が印刷された文書を出力可能なプリンタを含んでいてもよい。
【0059】
(2-2)状態予測装置2が行う状態予測動作
続いて、
図6を参照しながら、状態予測装置2が行う状態予測動作について説明する。
図6は、状態予測装置2が行う状態予測動作の流れを示すフローチャートである。
【0060】
図6に示すように、まず、データ取得部211は、時点t_Dにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_Dを取得する(ステップS21)。例えば、FIMスコアS_Dが記憶装置22に記憶されている場合には、データ取得部211は、記憶装置22から、FIMスコアS_Dを取得してもよい。例えば、FIMスコアS_Dが入力装置23を介して状態予測装置2に入力される場合には、データ取得部211は、入力装置23を用いて、FIMスコアS_Dを取得してもよい。
【0061】
その後、状態予測部212は、ステップS21において取得されたFIMスコアS_Dと、予測モデルMとを用いて、時点t_Fにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_F及び時点t_Yにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_Yの夫々を予測する(ステップS22)。具体的には、状態予測部212は、予測モデルMに対して、ステップS21で取得されたFIMスコアS_Dを入力する。その結果、予測モデルMは、FIMスコアS_F_predict及びFIMスコアS_Y_predictを出力する。つまり、状態予測部212は、時点t_Fにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_Fの予測値として、予測モデルMからFIMスコアS_F_predictを取得する。また、状態予測部212は、時点t_Yにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_Yの予測値として、予測モデルMからFIMスコアS_Y_predictを取得する。
【0062】
(3)技術的効果
以上説明したように、本実施形態のモデル生成装置1は、変化曲線C(つまり、患者の状態の変化傾向を表す情報)に基づいて、予測モデルMを生成する。つまり、モデル生成装置1は、変化曲線Cに基づいて定まる損失項Loss2を含む損失関数Lossを用いて、予測モデルMを生成する。このため、モデル生成装置1は、比較例のモデル生成装置と比較して、変化曲線Cが表す患者の状態の変化傾向に合致する可能性が相対的に高い予測結果を出力可能な予測モデルMを生成することができる。尚、比較例のモデル生成装置は、損失項Loss2を含まない損失関数(例えば、損失項Loss1を含む一方で、損失項Loss2を含まない損失関数)を用いて予測モデルMを生成する装置である。このため、モデル生成装置1は、予測モデルMの予測精度を適切に向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、モデル生成装置1は、対象患者が病院を退院した後の時点t_F及びt_Yにおける対象患者の状態を示すFIMスコアS_F及びS_Yを予測する予測モデルMを生成する。ここで、上述したように損失関数Lossが予測誤差に関する損失項Loss1を含む場合には、サンプル患者が病院を退院した後の時点t_F及びt_Yにおけるサンプル患者の状態を示すFIMスコアS_F_sample及びS_Y_sampleのサンプル数が多くなればなるほど、予測モデルMによるFIMスコアS_F及びS_Yの予測精度が高くなる。しかしながら、患者が病院に入院している間に患者の状態を測定する場合と比較して、患者が一旦病院を退院した後にその患者の状態を測定することは、必ずしも容易ではない。なぜならば、病院を退院した患者に、患者の状態を測定するために病院への来院を促すことが容易ではないからである。このため、FIMスコアS_F_sample及びS_Y_sampleを数多く集めることは、必ずしも容易ではない。一方で、本実施形態のモデル生成装置1は、予測誤差に関する損失項Loss1に加えて又は代えて変化曲線Cに基づく損失項Loss2を含む損失関数Lossを用いて予測モデルMを生成する。このため、本実施形態のモデル生成装置1は、比較例のモデル生成装置と比較して、FIMスコアS_F_sample及びS_Y_sampleのサンプル数が相対的に少ない状況下においても、予測モデルMの予測精度を適切に向上させることができる。例えば、
図7は、本実施形態のモデル生成装置1が生成した予測モデルMの予測精度と、比較例のモデル生成装置が生成した予測モデルMの予測精度を示している。
図7の横軸は、時点t_DにおけるFIMスコアS_D_sampleが測定済みのサンプル患者の総数に対する、時点t_F及びt_YにおけるFIMスコアS_F_sample及びS_Y_sampleが測定可能であったサンプル患者の総数の割合を示している。具体的には、
図7の横軸が示す「X%」は、Y人のサンプル患者のFIMスコアS_D_sampleが測定済みとなっている状況下において、X×Y人のサンプル患者のFIMスコアS_F_sample及びS_Y_sampleだけが測定可能であった(逆に言えば、(1-X)×Y人のサンプル患者のFIMスコアS_F_sample及びS_Y_sampleが測定できなかった)状況を示す。
図7に示すように、比較例のモデル生成装置が生成した予測モデルMの予測精度は、FIMスコアS_F_sample及びS_Y_sampleのサンプル数が少なくなるほど(つまり、FIMスコアS_F_sample及びS_Y_sampleが測定可能であったサンプル患者の総数の割合が少なくなるほど)、低下する。一方で、本実施形態のモデル生成装置1が生成した予測モデルMの予測精度は、FIMスコアS_F_sample及びS_Y_sampleのサンプル数が少なくなったとしても、比較例のモデル生成装置が生成した予測モデルMの予測精度ほどには低下しない。
【0064】
また、本実施形態の状態予測装置2は、本実施形態のモデル生成装置1が生成した予測モデルMを用いて患者の状態を予測する。このため、状態予測装置2は、患者の状態を適切に予測することができる。
【0065】
(4)変形例
上述した説明では、予測モデルMは、時点tA(例えば、患者が入院した時点t_D)における患者の状態に基づいて、時点tAよりも後の時点tB(例えば、患者が退院してから半年が経過した時点t_F)における患者の状態及び時点tBよりも後の時点tC(例えば、患者が退院してから一年が経過した時点t_Y)における患者の状態の夫々を予測可能なモデルである。しかしながら、予測モデルMは、時点tAにおける患者の状態に基づいて、時点tB及びtCのいずれか一方における患者の状態を予測する一方で、時点tB及びtCのいずれか他方における患者の状態を予測しないモデルであってもよい。この場合であっても、モデル生成装置1は、上述したモデル生成動作を行うことで、予測モデルMを生成してもよい。
【0066】
一変形例として、時点t_Dにおける患者の状態を示すFIMスコアS_Dに基づいて、時点t_Yにおける患者の状態を示すFIMスコアS_Yを予測可能な予測モデルMを生成するためのモデル生成動作について説明する。変形例においても、データ取得部111は、学習用データ122を取得する(
図3のステップS11)。但し、変形例では、学習用データ122は、時点t_Fにおけるサンプル患者の状態を示すFIMスコアS_F_sampleを含んでいなくてもよい。その後、モデル生成部112は、FIMスコアS_D_sample#kを予測モデルMに入力することでFIMスコアS_Y_predict#kを取得する。その後、モデル生成部112は、FIMスコアS_Y_predict#1からS_Y_predict#Kに基づいて、損失関数Lossが最小になるように、予測モデルMを更新する。但し、変形例では、損失項Loss1は、FIMスコアS_Y_predict#kとFIMスコアS_Y_sample#kとの差分が小さくなるほど小さくなる項である。このような損失項Loss1の一例が、数式4及び5に示されている。また、変形例では、損失項Loss2は、FIMスコアS_D_sample#k及びS_Y_predict#kの間の関係が、変化曲線Cが表す所定関係に近づけば近づくほど小さくなる項であってもよい。このような損失項Loss2の一例が、数式6及び7に示されている。但し、変形例では、定数βは、モデル生成装置1にとって既知の情報(つまり、予め設定されている値)であることが好ましい。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
尚、変形例におけるモデル生成動作の説明中における符号「Y」を符号「F」に置き換えることで、上述のモデル生成動作の説明は、時点t_Dにおける患者の状態を示すFIMスコアS_Dに基づいて、時点t_Fにおける患者の状態を示すFIMスコアS_Fを予測可能な予測モデルMを生成するためのモデル生成動作の説明となる。
【0072】
(5)付記
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
[付記1]
第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値、及び前記第1時点よりも後の第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得する取得手段と、
前記第1時点における対象患者の状態に基づいて前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルを学習する学習手段と
を備え、
前記学習手段は、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて、前記予測モデルを学習する
モデル生成装置。
[付記2]
前記学習手段は、前記第1及び第3指標値の間の変化が、前記変化情報が表す前記第1時点から前記第2時点への前記状態の変化傾向である第1の変化傾向に近づくように前記予測モデルを学習する
付記1に記載のモデル生成装置。
[付記3]
前記学習手段は、前記第1及び第3指標値の間の変化が前記第1の変化傾向に近づくほど小さくなる項を含む損失関数に基づいて、前記予測モデルを学習する
付記1に記載のモデル生成装置。
[付記4]
前記第1時点は、前記サンプル患者及び前記対象患者を含む患者が病院に入院してから退院するまでの間の時点であり、
前記第2時点は、前記患者が病院を退院してから第1所定期間が経過した時点である
付記1から3のいずれか一項に記載のモデル生成装置。
[付記5]
前記予測モデルは、前記第1時点よりも後であって且つ前記第2時点とは異なる第3時点における前記対象患者の状態を更に予測し、
前記学習用データは、前記第3時点における前記サンプル患者の状態を示す第4指標値を含み、
前記学習手段は、前記第3指標値と、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第3時点における前記サンプル患者の状態を示す第5指標値と、前記変化情報とに基づいて、前記予測モデルを学習する
付記1から4のいずれか一項に記載のモデル生成装置。
[付記6]
前記学習手段は、前記第1指標値、前記第3指標値及び前記第5指標値の間の変化が、前記変化情報が表す前記第1時点から前記第2時点及び前記第3時点への前記状態の変化傾向である第2の変化傾向に近づくように前記予測モデルを学習する
付記5に記載のモデル生成装置。
[付記7]
前記学習手段は、前記第1指標値、前記第3指標値及び前記第5指標値の間の変化が前記第2の変化傾向に近づくほど小さくなる項を含む損失関数に基づいて、前記予測モデルを学習する
付記6に記載のモデル生成装置。
[付記8]
前記第1時点は、前記サンプル患者及び前記対象患者を含む患者が病院に入院してから退院するまでの間の時点であり、
前記第2時点は、前記患者が病院を退院してから第1所定期間が経過した時点であり、
前記第3時点は、前記患者が病院を退院してから前記第1所定期間とは異なる第2所定期間が経過した時点である
付記5から7のいずれか一項に記載のモデル生成装置。
[付記9]
前記第1時点は、前記患者が病院に入院する時点である
付記4又は8に記載のモデル生成装置。
[付記10]
第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値、及び前記第1時点よりも後の第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、
前記第1時点における対象患者の状態に基づいて前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルを学習し、
前記予測モデルの学習では、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて、前記予測モデルが学習される
モデル生成方法。
[付記11]
コンピュータに
第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値、及び前記第1時点よりも後の第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、
前記第1時点における対象患者の状態に基づいて前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルを学習し、
前記予測モデルの学習では、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて、前記予測モデルが学習されるモデル生成方法を実行させるコンピュータプログラムが記録された記録媒体。
[付記12]
コンピュータに、
第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値、及び前記第1時点よりも後の第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、
前記第1時点における対象患者の状態に基づいて前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルを学習し、
前記予測モデルの学習では、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて、前記予測モデルが学習されるモデル生成方法を実行させるコンピュータプログラム。
[付記13]
第1時点における対象患者の状態に関する状態情報と取得する状態取得手段と、
前記状態情報と、前記第1時点における前記対象患者の状態に基づいて前記第1時点よりも後の第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルとを用いて、前記第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測手段と
を備え、
前記予測モデルは、前記第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値及び前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて学習することで生成されるモデルである
状態予測装置。
[付記14]
第1時点における対象患者の状態に関する状態情報と取得し、
前記状態情報と、前記第1時点における前記対象患者の状態に基づいて前記第1時点よりも後の第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルとを用いて、前記第2時点における前記対象患者の状態を予測し、
前記予測モデルは、前記第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値及び前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて学習することで生成されるモデルである
状態予測方法。
[付記15]
コンピュータに、
第1時点における対象患者の状態に関する状態情報と取得し、
前記状態情報と、前記第1時点における前記対象患者の状態に基づいて前記第1時点よりも後の第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルとを用いて、前記第2時点における前記対象患者の状態を予測し、
前記予測モデルは、前記第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値及び前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて学習することで生成されるモデルである状態予測方法を実行させるコンピュータプログラムが記録された記録媒体。
[付記16]
コンピュータに、
第1時点における対象患者の状態に関する状態情報と取得し、
前記状態情報と、前記第1時点における前記対象患者の状態に基づいて前記第1時点よりも後の第2時点における前記対象患者の状態を予測する予測モデルとを用いて、前記第2時点における前記対象患者の状態を予測し、
前記予測モデルは、前記第1時点におけるサンプル患者の状態を示す第1指標値及び前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第2指標値を含む学習用データを取得し、前記第1指標値に基づいて前記予測モデルが予測した前記第2時点における前記サンプル患者の状態を示す第3指標値と、時間の経過に伴う前記状態の変化傾向を表す変化情報とに基づいて学習することで生成されるモデルである状態予測方法を実行させるコンピュータプログラム。
【0073】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うパラメータ決定装置、パラメータ決定方法、信号送信方法及びコンピュータプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 モデル生成装置
11 演算装置
111 データ取得部
112 モデル生成部
12 記憶装置
121 学習用データセット
122 学習用データ
2 状態予測装置
21 演算装置
211 データ取得部
212 状態予測部
M 予測モデル