(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】ガスバーナ及びボイラ
(51)【国際特許分類】
F23C 9/08 20060101AFI20250304BHJP
F23D 14/22 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
F23C9/08 400
F23D14/22 G
(21)【出願番号】P 2022579339
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2021040732
(87)【国際公開番号】W WO2022168381
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2024-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2021015591
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】角 宗司
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-235907(JP,A)
【文献】特開2000-055302(JP,A)
【文献】特開2002-364812(JP,A)
【文献】特開2010-242982(JP,A)
【文献】特開2013-178023(JP,A)
【文献】特開2005-273963(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1569455(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 9/08
F23D 14/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の燃焼用空気噴出方向に延び、燃料ガスが供給される燃料供給管と、
前記燃料供給管の周囲に配置され燃焼用空気を前記燃焼用空気噴出方向に噴出する空気噴出口と、
前記燃料供給管から前記空気噴出口よりも外側に突出しないよう、かつ前記燃焼用空気噴出方向に対する傾斜角度が鋭角となるよう延出し、その先端が前記燃料ガスを流出させる燃料流出口を構成する複数の流出ノズルと、
を備
え、
前記空気噴出口から前記燃料流出口の中心までの燃焼用空気噴出方向の距離は、前記空気噴出口の相当直径の3倍以上15倍以下である、ガスバーナ。
【請求項2】
所定の燃焼用空気噴出方向に延び、燃料ガスが供給される燃料供給管と、
前記燃料供給管の周囲に配置され燃焼用空気を前記燃焼用空気噴出方向に噴出する空気噴出口と、
前記燃料供給管から前記空気噴出口よりも外側に突出しないよう、かつ前記燃焼用空気噴出方向に対する傾斜角度が鋭角となるよう延出し、その先端が前記燃料ガスを流出させる燃料流出口を構成する複数の流出ノズルと、
前記燃料供給管の内側に配置され、前記燃料ガスの流路断面を環状に制限する内壁管と、
を備
え、
前記内壁管は、前記流出ノズルの上流側で前記燃料ガスの流路断面積を減少させるよう拡径する拡径部を有する、ガスバーナ。
【請求項3】
所定の燃焼用空気噴出方向に延び、燃料ガスが供給される燃料供給管と、
前記燃料供給管の周囲に配置され燃焼用空気を前記燃焼用空気噴出方向に噴出する空気噴出口と、
前記燃料供給管から前記空気噴出口よりも外側に突出しないよう、かつ前記燃焼用空気噴出方向に対する傾斜角度が鋭角となるよう延出し、その先端が前記燃料ガスを流出させる燃料流出口を構成する複数の流出ノズルと、
前記燃料供給管の内側に配置され、前記燃料ガスの流路断面を環状に制限する内壁管と、
前記燃料供給管の途中で、前記燃料供給管と前記内壁管との隙間を封止する環状の封止板と
を備
え、
前記流出ノズルは、前記封止板から前記燃料供給管を貫通して延出し、前記燃料供給管には直接固定されない、ガスバーナ。
【請求項4】
前記燃料流出口は、前記燃焼用空気噴出方向視で前記燃料供給管から前記空気噴出口の外縁の最外部以内に開口する、請求項
1から3のいずれかに記載のガスバーナ。
【請求項5】
前記空気噴出口の仮想外接円の直径は、前記燃料供給管の外径の2倍未満である、請求項1から4のいずれかに記載のガスバーナ。
【請求項6】
請求項
1から5のいずれかに記載のガスバーナと、
前記ガスバーナを囲むように配置され、前記燃焼用空気噴出方向に延びる複数の水管を有し、前記ガスバーナの燃焼排ガスを前記複数の水管の軸方向に流す流路を画定する缶体と、
を備える、ボイラ。
【請求項7】
前記空気噴出口の中心を結ぶ仮想円の直径は、前記缶体の内側空間の直径の0.15倍より大きく0.7倍未満である、請求項
6に記載のボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナ及びボイラに関する。
本願は、2021年2月3日に日本に出願された特願2021-15591号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えばボイラ等において、燃料ガスを燃焼用空気と混合して燃焼させるガスバーナが広く利用されている。ガスバーナでは、燃焼温度が高くなり、窒素酸化物(NOx)の生成が問題となる場合がある。窒素酸化物を低減するために、炉内に高速の燃焼用空気を噴出することにより炉内の排ガスを誘引するようにした自己再循環型バーナが知られている。噴出した燃焼用空気は酸素濃度の低い炉内の排ガスを巻き込みながら火炎と接触するため、燃焼が緩慢となって火炎温度が低下し、窒素酸化物の生成を低減できる。
【0003】
このような自己再循環型バーナとして、燃焼用空気の噴流の中に、燃焼用空気の噴き出し方向に延びる燃料ノズルを配設し、燃焼用空気の流れの中に燃料ガスを噴き出させるガスバーナが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるようなガスバーナでは、窒素酸化物の生成を十分に低減できない場合がある。例えば、水素等の燃焼速度の大きい燃料ガスを用いる場合は窒素酸化物の生成量が大きくなるおそれがある。また、窒素酸化物の生成と燃焼排ガス中の未燃物の増加はトレードオフの関係にあるため、窒素酸化物の生成を抑制すると共に未燃物の発生を低減することが求められる。
【0006】
従って、本発明は、窒素酸化物の生成を抑制できるとともに、燃焼排ガス中の未燃物の残留を低減できるガスバーナ及びボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るガスバーナは、所定の燃焼用空気噴出方向に延び、燃料ガスが供給される燃料供給管と、前記燃料供給管の周囲に配置され燃焼用空気を前記燃焼用空気噴出方向に噴出する空気噴出口と、前記燃料供給管から前記空気噴出口よりも外側に突出しないよう、かつ前記燃焼用空気噴出方向に対する傾斜角度が鋭角となるよう延出し、その先端が前記燃料ガスを流出させる燃料流出口を構成する複数の流出ノズルと、を備える。
【0008】
上述のガスバーナにおいて、前記燃焼用空気噴出方向視で、前記空気噴出口と前記燃料流出口とが重複してもよい。
【0009】
上述のガスバーナは、前記燃料供給管の内側に配置され、前記燃料ガスの流路断面を環状に制限する内壁管をさらに備え、前記内壁管は、前記流出ノズルの上流側で前記燃料ガスの流路断面積を減少させるよう拡径する拡径部を有してもよい。
【0010】
上述のガスバーナは、前記燃料供給管の内側に配置され、前記燃料ガスの流路断面を環状に制限する内壁管と、前記燃料供給管の途中で、前記燃料供給管と前記内壁管との隙間を封止する環状の封止板と、をさらに備え、前記流出ノズルは、前記封止板から前記燃料供給管を貫通して延出し、前記燃料供給管には直接固定されなくてもよい。
【0011】
上述のガスバーナにおいて、前記空気噴出口の仮想外接円の直径は、前記燃料供給管の外径の2倍未満であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係るガスバーナは、上述のガスバーナと、前記ガスバーナを囲むように配置され、前記燃焼用空気噴出方向に延びる複数の水管を有し、前記ガスバーナの燃焼排ガスを前記複数の水管の軸方向に流す流路を画定する缶体と、を備える。
【0013】
上述のボイラにおいて、前記空気噴出口の中心を結ぶ仮想円の直径は、前記缶体の内側空間の直径の0.15倍より大きく0.7倍未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、窒素酸化物の生成を抑制できるとともに、燃焼排ガス中の未燃物の残留を低減できるガスバーナ及びボイラを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るボイラの断面図である。
【
図2】
図1のボイラのガスバーナの構成を示す断面図である。
【
図3】
図2のガスバーナを燃焼用空気噴出方向下流側から見た図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るガスバーナの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るガスバーナ1を備えるボイラ100の構成を示す断面図である。
図2は、ガスバーナ1の構成を示す断面図である。
図3は、ガスバーナ1を燃焼用空気噴出方向下流側から見た図である。
【0017】
ボイラ100は、所定の燃焼用空気噴出方向(本実施形態では上下方向)に延びる火炎を形成するガスバーナ1と、ガスバーナ1の燃焼排ガスによって加熱される缶体110とを備える。ボイラ100は、それ自体が本発明に係るボイラの一実施形態である。
【0018】
缶体110は、ガスバーナ1を囲むように配置され、燃焼用空気噴出方向(上下方向)に延びる複数の水管111と、複数の水管111の下端を接続する下部ヘッダ112と、複数の水管111の上端を接続する上部ヘッダ113と、を有する。缶体110は、ガスバーナ1の燃焼排ガスを複数の水管111の軸方向に流す流路を画定する。
【0019】
缶体110において、複数の水管111は、ガスバーナ1の噴射方向視で二重の環状に配置される。内側の水管111のガスバーナ1と反対側の端部を除いて、周方向に隣接する水管111同士は、直接又は帯状の部材によって接続され、燃焼排ガスが通過できないように配設される。これにより、ガスバーナ1の燃焼排ガスは、内側の水管111の内側の空間を通り、ガスバーナ1と反対側の端部で水管111の隙間を通り抜け、内側の水管11と外側の水管111との間の空間を逆方向に通過してから外部に排出される。
【0020】
ガスバーナ1は、燃焼用空気噴出方向に延びる燃料供給管10と、燃料供給管10の上流部を囲むよう配置されるウインドボックス20と、燃料供給管10の外側に配置されるようウインドボックス20から延出する空気供給管30と、燃料供給管10の周囲に配置されるよう空気供給管30の先端に設けられる複数の空気噴出口40と、燃料供給管10の内側に配置される内壁管50と、燃料供給管10の先端で燃料供給管10と内壁管50との隙間を封止する環状の封止板60と、空気噴出口40よりも燃焼用空気噴出方向下流側で燃料供給管10から延出する複数の流出ノズル70と、内壁管50の内側に配置されるパイロットバーナ80と、を備える。
【0021】
燃料供給管10は、燃料ガスが供給され、燃料ガスを流出ノズル70まで案内する流路を画定する。ガスバーナ1において使用される燃料ガスとしては、例えば水素ガス、メタンガス、プロパンガス、水素を含むガス等が想定されるが、特に燃焼速度が大きい水素ガスや水素含むガスを使用する場合おいて、本発明により窒素酸化物を低減する効果が顕著となる。
【0022】
ウインドボックス20は、燃焼用空気が供給され、供給された燃焼用空気を燃料供給管10に対する角度位置によってばらつかないように分配して空気供給管30に導入する。
【0023】
空気供給管30は、燃焼用空気を燃料供給管10に沿って、燃焼用空気噴出方向に空気噴出口40まで案内する。
【0024】
空気噴出口40は、燃焼用空気を燃焼用空気噴出方向(
図1及び
図2では下方)に噴出する。図示する例において、空気噴出口40は、空気供給管30の先端を封止する終端板41に配設される短管42によって画定されている。複数の空気噴出口40は、燃料供給管10の全周に亘って、燃料供給管10に沿う燃焼用空気の流れを形成できるよう、燃料供給管10を取り囲むよう環状に並んで形成される。
【0025】
空気噴出口40は、燃料供給管10から径方向に離間して設けられることが好ましい。空気噴出口40を燃料供給管10から一定の距離を空けて設けることにより、燃料供給管10に沿う燃焼用空気の流れを効率よく形成することができる。
【0026】
空気噴出口40から噴出される燃焼用空気の噴流によって、該噴流近傍に低圧領域が形成され、炉内の燃焼排気ガスは周方向から噴流の流れに沿って燃料ガス供給部に向かって連続的に燃焼用空気に巻き込まれることで、効果的に燃焼用空気の酸素濃度が低下する。
【0027】
空気噴出口40の仮想外接円(
図3に二点鎖線で図示)の直径は、燃料供給管10の外径の2倍未満であることが好ましく、1.65倍未満であることがより好ましい。燃料供給管10の外径に対して空気噴出口40の仮想外接円の直径を必要以上に大きくしないことによって、燃焼用空気の噴流の厚みが薄くなり、体積当たりの比表面積は大きくなるので、炉内の燃焼配ガスを効率的に燃焼用空気の噴流に巻き込むことができる。
【0028】
空気噴出口40の中心を結ぶ仮想円(
図3に一点鎖線で図示)の直径は、缶体110の内側空間の直径D(内側の水管111のピッチ円直径、
図1参照)の0.15倍より大きく0.7倍未満であることが好ましい。これにより、燃焼用空気の噴流が燃焼排ガスを巻き込む領域を確保すると共に、燃焼に必要な空間を確保し、燃焼排ガスを効率的に燃焼用空気の噴流に巻き込むことができると同時に、不完全燃焼を防止できる。
【0029】
内壁管50は、燃料供給管10の内側に配置され、燃料ガスの流路断面を環状に制限する。内壁管50は、流出ノズル70の上流側で燃料ガスの流路断面積を減少させるよう拡径する拡径部51を有する。内壁管50が拡径部51を有することによって、燃料供給管10の先端部内側における燃料ガスの流速が大きくなるので、燃焼により温度が高くなりやすい燃料供給管10の先端部を燃料ガスで冷却することができ、ガスバーナ1の耐久性を向上できる。特に、燃料ガスは空気と比べて熱伝導率が大きいため、燃料ガスの流速を大きくすることによる燃料供給管10の冷却効果の増大は小さくないものとなる。特に、燃料ガスとして水素ガスを用いる場合、水素ガスの熱伝導率は、200℃において0.257W/mkであり、空気の200℃における熱伝導率0.038W/mkの7倍近いため、拡径部51による燃料供給管10の冷却効果の増大が顕著となる。
【0030】
封止板60は、燃料ガスの流路となる燃料供給管10と内壁管50との隙間を終端する。これにより、燃料ガスは、流出ノズル70からのみ流出する。
【0031】
流出ノズル70は、空気噴出口40よりも外側に突出しないよう、かつ燃焼用空気噴出方向に対する傾斜角度αが鋭角となるよう延出する。この流出ノズル70は、その先端部から燃料ガスを流出させる。つまり、流出ノズル70の先端が燃料ガスを流出させる燃料流出口71を構成する。
【0032】
流出ノズル70の配置によって、燃料ガスの流出する位置及び方向を制御できる。また、複数の流出ノズル70から燃料ガスを流出させることにより、ガスバーナ1の周方向の燃料分布の偏りを少なくできる。さらに、流出ノズル70を設けることによって、燃焼停止時には炉内の燃焼排ガス或いはパージ空気が燃料供給管10の内部に拡散することを抑制できる。
【0033】
流出ノズル70は、空気噴出口40よりも下流側に、空気噴出口40から一定の距離を空けて配設される。空気噴出口40を燃料供給管10から一定の距離を空けて設けることにより、燃焼用空気の噴流には、燃料ガスが混合される前に、炉内の燃焼排ガスが混合される。これにより、燃料ガスが混合される時点の燃焼用空気の酸素濃度が低下するので、燃焼温度が低減されることにより窒素酸化物の生成が抑制される。
【0034】
また、ガスバーナ1では、空気噴流により形成される低圧領域に流出ノズル70の燃料流出口71が配置されることにより、従来より供給圧力が低い燃料ガスであっても、必要な量を流出させられる。このため、ガスバーナ1は、例えば副生水素や低圧供給都市ガス等の供給圧力が低い燃料ガスを加圧することなく使用することができる。
【0035】
流出ノズル70(燃料流出口71の中心)の空気噴出口40からの燃焼用空気噴出方向の距離Lとしては、空気噴出口40の相当直径の3倍以上15倍以下が好ましく、6倍以上12倍以下がより好ましい。流出ノズル70の空気噴出口40からの距離Lを前記下限以上とすることによって、窒素酸化物の生成を効果的に抑制可能な酸素濃度になった燃焼用空気に燃料ガスを混合できるので、窒素酸化物の生成を効果的に抑制できる。また、流出ノズル70の空気噴出口40からの距離Lを前記上限以下とすることによって、燃焼用空気の酸素濃度が低下し過ぎて燃焼が不完全となることや、燃焼用空気の流速が低下して局所的な温度上昇による窒素酸化物の生成を抑制できる。
【0036】
流出ノズル70は、燃料供給管10から燃焼用空気噴出方向視で空気噴出口40の外縁の最外部から突出しないように配設される。つまり、流出ノズル70の先端の燃料流出口71は、図複数の空気噴出口40の仮想外接円の内側に開口する。これにより、空気噴出口40から噴出する燃焼用空気の噴流が燃料供給管10の裏側に局所的に形成する低圧領域に燃料ガスが流出するため、燃料ガスの流出圧力をより小さくすることができる。
【0037】
流出ノズル70が傾斜していることによって、燃料ガスが燃焼用空気噴出方向の速度成分を有する状態で燃料流出口71から流出する。これにより、燃料ガスが迅速に燃焼用空気噴出方向下流側に移動するため、燃焼用空気と燃焼排ガスの混合領域および混合時間が確保されやすくなり、未燃物(未燃焼の燃料ガス及び一酸化炭素等の不完全燃焼物)の排出を抑制できる。また、流出ノズル70により燃焼用空気噴出方向に対して鋭角な方向に燃料ガスを流出するため、径方向に燃料ガスを噴出させる場合と比べて、燃料ガスが水管111に接触しにくいので、未燃物(未燃焼の燃料ガス及び一酸化炭素等の不完全燃焼物)の排出をより確実に抑制できる。
【0038】
流出ノズル70の燃焼用空気噴出方向に対する傾斜角度αの下限としては、15°が好ましく、30°がより好ましい、一方、流出ノズル70の傾斜角度αの上限としては、75°が好ましく、60°がより好ましい。流出ノズル70の傾斜角度αを前記下限以上とすることによって、燃料供給管10の開口が燃焼用空気噴出方向に大きくなり過ぎないので、流出ノズル70の取付が容易になるとともに、熱応力に対する強度を確保しやすい。また、流出ノズル70の傾斜角度αを前記上限以下とすることによって、窒素酸化物の生成を適切に抑制できる。
【0039】
空気噴出口40と燃料流出口71とは、燃焼用空気噴出方向視で部分的に重複することが好ましい。空気噴出口40と燃料流出口71とが重複することで、燃焼用空気の噴流と燃料ガスとの混合が促進されるので、未燃物を低減できる。また、これらの重複度合いを最適化することにより、燃焼排ガスの影響による燃焼用空気の酸素濃度低下による窒素酸化物の生成抑制と、燃料ガスの燃焼用空気との混合促進による未燃物の低減と、を高度に両立することができる。
【0040】
流出ノズル70の数及び燃料供給管10を中心とする角度位置は、空気噴出口40の数及び角度位置に制限されず任意に設定できる。
【0041】
パイロットバーナ80は、パイロット燃焼用空気が供給されるパイロット空気管81と、パイロット空気管81の内側に配置され、パイロット燃料が供給されるパイロット燃料管82と、を有する。パイロットバーナ80は、パイロット空気管81の先端部においてパイロット燃料とパイロット燃焼用空気とを混合し、パイロット火炎を形成する。
【0042】
パイロットバーナ80と内壁管50との隙間には、冷却用空気が供給されてもよい。これにより、冷却用空気によって内壁管50を介して燃料ガスひいては燃料供給管10を冷却できるので、ガスバーナ1の耐久性を向上できる。冷却用空気は、燃料供給管10に供給される燃料ガスの流量に応じて流量が設定される燃焼用空気の一部を利用することができる。
【0043】
以上のように、ガスバーナ1は、空気噴出口40よりも下流側で、炉内の燃焼排ガスが混合されて酸素濃度が低下した燃焼用空気によって燃料ガスの燃焼を行うため、燃焼温度を低下させて窒素酸化物の生成を抑制できる。特に、ガスバーナ1は、流出ノズル70によって、燃料ガスを燃焼用空気噴出方向の速度成分を有する状態で流出させるので、燃料ガスが迅速に燃焼用空気噴出方向下流側に移動する。このため、ガスバーナ1では、燃焼用空気と燃焼排ガスの混合領域および混合時間が確保されやすくなり、未燃物の残留を低減できる。
【0044】
ボイラ100では、複数の水管111によって周囲を閉鎖された空間内にガスバーナ1が配設されるため、周方向で燃焼用空気の流れに偏りを生じさせない。このため、燃焼用空気の噴流の外側に周方向で均等な低圧領域が形成され、炉内の燃焼排ガスが燃焼用空気に巻き込まれるため、確実に窒素酸化物の生成を抑制しつつ、未燃物の発生を抑制できる。また、ボイラ100は、ガスバーナ1の燃焼排ガスを複数の水管111の軸方向に流す流路を画定する缶体110を採用したことで、軸方向の流速に偏りがなく燃焼による局所的な高温部分の形成を抑制できるだけでなく、缶体110における圧損を低減でき、送風機のエネルギーを抑制する効果が得られるとともに、燃料ガスの供給圧低減にも効果がある。したがって、ボイラ100は、窒素酸化物の生成を抑制しながら効率よく水蒸気を生成できる。
【0045】
続いて、本発明の第2実施形態に係るガスバーナ1Aについて説明する。
図4は、ガスバーナ1Aの構成を示す断面図である。なお、以降の説明において、先に説明した実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略することがある。このガスバーナ1Aは、
図1のボイラ100において、ガスバーナ1に換えて使用することができる。
【0046】
本実施形態のガスバーナ1Aは、所定の燃焼用空気噴出方向に延びる燃料供給管10と、燃料供給管10の上流部を囲むよう配置されるウインドボックス20と、燃料供給管10の外側に配置されるようウインドボックス20から延出する空気供給管30と、燃料供給管10の周囲に配置されるよう空気供給管30の先端に設けられる単一の空気噴出口40Aと、燃料供給管10の内側に配置される内壁管50Aと、燃料供給管10の先端で燃料供給管10と内壁管50Aとの隙間を封止する環状の封止板60Aと、空気噴出口40よりも燃焼用空気噴出方向下流側で燃料供給管10から延出する複数の流出ノズル70Aと、内壁管50Aの内側に配置されるパイロット燃料管82と、を備える。
【0047】
空気噴出口40Aは、燃料供給管10の外周に配設され、燃焼用空気の流路を制限する制限部材43と、空気供給管30との隙間である。制限部材43は、燃料供給管10に取り付けられる円環状のフランジ部44と、フランジ部44の外縁から空気供給管30と平行に、空気供給管30の先端と同じ燃焼用空気噴出方向位置まで延びる筒状の案内筒部45と、を有する構成とされ得る。したがって、空気噴出口40Aは、空気供給管30と案内筒部45の隙間の先端の燃焼用空気噴出方向で環状の開口である。
【0048】
制限部材43は、空気供給管30に対して固定されないこと、より詳しくは、案内筒部45と空気供給管がスペーサ等で接続されないことが好ましい。かかる構成により、高負荷時に燃料ガス及び燃焼用空気の流量を大きくした場合には、温度上昇に伴って空気供給管30の熱膨張により空気噴出口40の面積が増大するので、燃焼用空気の圧損を低減して送風機のエネルギー消費の増大を抑制できる。
【0049】
内壁管50Aは、拡径部を有さず、末端まで同じ径で延びる。ガスバーナ1Aでは、内壁管50Aとパイロット燃料管82との間にパイロット燃焼用空気が供給される。つまり、本実施形態における内壁管50Aは、パイロット燃焼用空気の流路を画定する。このため、ガスバーナ1Aでは、パイロット燃焼用空気によって内壁管を介して燃料ガス冷却することによって間接的に燃料供給管10を冷却する。このため、ガスバーナ1Aでは、パイロット火炎を形成しないときにもパイロット燃焼用空気を供給することが好ましい。この場合、空気噴出口40Aから噴出させる燃焼用空気の流量をパイロット空気の流量分だけ小さくしてもよい。
【0050】
封止板60Aは、燃料ガスの流路となる燃料供給管10と内壁管50Aとの隙間を燃料供給管10の途中の燃料供給管10から流出ノズル70Aが延出する位置よりも上流側で終端させる。封止板60Aには、流出ノズル70Aが接続され、接続される流出ノズル70Aに燃料ガスを流出する開口が形成される。
【0051】
流出ノズル70Aは、燃料供給管10の内側で封止板60Aに接続され、封止板60Aから燃焼用空気噴出方向に延び、燃料供給管10の内側で径方向外側に屈曲し、燃料供給管10を貫通して延出する。流出ノズル70Aは、燃料供給管10に形成される開口を貫通し、燃料供給管には直接固定されない。つまり、流出ノズル70Aは、火炎に晒されることがない封止板60Aに固定され、火炎に晒されて高温になる燃料供給管10の先端部分には固定されない。このため、燃料供給管10と流出ノズル70Aとの間に熱応力が集中し得る接続箇所がないため、ガスバーナ1Aは耐久性に優れる。
【0052】
以上、本発明に係る熱供給システムの好ましい実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0053】
燃料供給管と内壁管との隙間を封止する封止板に流出ノズルを接続する構成の場合、特に、内壁管の内側にパイロット空気管及びパイロット燃料管を有するパイロットバーナを備える場合には、内壁管は燃料供給管よりも上流側で終端してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,1A ガスバーナ
10 燃料供給管
20 ウインドボックス
30 空気供給管
40,40A 空気噴出口
41 終端板
42 短管
43 制限部材
44 フランジ部
45 案内筒部
50,50A 内壁管
51 拡径部
60,60A 封止板
70,70A 流出ノズル
71 燃料流出口
80 パイロットバーナ
81 パイロット空気管
82 パイロット燃料管
100 ボイラ
110 缶体
111 水管