(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】転倒監視システム、および、これを備えた乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 29/00 20060101AFI20250304BHJP
B66B 31/00 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
B66B29/00 Z
B66B31/00 C
(21)【出願番号】P 2023095920
(22)【出願日】2023-06-09
【審査請求日】2023-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【氏名又は名称】福屋 好泰
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】大脇 裕之
(72)【発明者】
【氏名】能 愛莉
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-067533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 29/00
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り場と降り場との間に設けられた乗客通路に沿って乗客を搬送する無端搬送体を
含む乗客コンベアにおける
乗客転倒の有無を監視する転倒監視システムであって、
前記無端搬送体
と近接する領域を通過する物体を検知する第1の物体検知部と、
前記第1の物体検知部
の搬送経路における直下流側に配置され前記無端搬送体と近接する領域を通過する物体を検知する第2の物体検知部と、
前記第1の物体検知部における物体の検知時間と前記無端搬送体の搬送速度とから算出される第1の算出値が所定の第1基準値以上である場合に前記第2の物体検知部
が物体を検知していることを条件に乗客が転倒していると判定する判定部と、
を備える転倒監視システム。
【請求項2】
乗り場と降り場との間に設けられた乗客通路に沿って乗客を搬送する無端搬送体を含む乗客コンベアにおける乗客転倒の有無を監視する転倒監視システムであって、
前記無端搬送体と近接する領域を通過する物体を検知する第1の物体検知部と、
前記第1の物体検知部の搬送経路における直下流側に配置され前記無端搬送体と近接する領域を通過する物体を検知する第2の物体検知部と、
前記第1の物体検知部における物体の検知時間と前記無端搬送体の搬送速度とから算出される第1の算出値が所定の第1基準値以上である場合に、前記第1の算出値が前記所定の第1基準値以上の値となってから所定時間以内に前記第2の物体検知部が物体を検知している検知時間と前記無端搬送体の搬送速度とから算出される第2の算出値が所定の第2基準値以上の値となることを条件に乗客が転倒していると判定する判定部と、
を備える転倒監視システム。
【請求項3】
前記無端搬送体は、複数の踏段を無端状に連結して構成されており、
前記所定時間は、前記第1の物体検知部に検知される位置の直下方を前記踏段が2つ通過するのに要する時間を所要時間とした場合に前記所要時間以上であり且つ前記所要時間の2倍以下の時間長さとなるように設定される、
請求項
2に記載の転倒監視システム。
【請求項4】
前記無端搬送体は、複数の踏段を無端状に連結して構成されており、
前記第1基準値は、2つの前記踏段に横たわるように載置された物体が前記第1の物体検知部に検知される位置を通過したときに測定される長さに基づいて設定される、
請求項1に記載の転倒監視システム。
【請求項5】
前記無端搬送体は、複数の踏段を無端状に連結して構成されており、
前記第1基準値は、2つの前記踏段に横たわるように載置された物体が前記第1の物体検知部に検知される位置を通過したときに測定される長さに基づいて設定される、
請求項2に記載の転倒監視システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の転倒監視システムと、
前記無端搬送体の走行を制御する運転制御部と、
を備え、
前記運転制御部は、前記転倒監視システムによって乗客が転倒していると判定された場合に前記無端搬送体の走行速度を通常運転時の運転速度より減速させる減速運転モードまたは前記無端搬送体を停止させる停止モードのいずれかを実行する、
乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客の転倒を検出する転倒監視システム、および、これを備えた乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアには、異常発生時に踏段を停止させる機能を有する安全装置が種々備えられている。例えば、乗客コンベアの降り場や乗り場に設置されるコムプレートには、同プレートと踏段の間に荷物などの物体が挟まるなどした場合に踏段を停止させる機能を有する安全装置が取り付けられている。
【0003】
この点に関し、特許文献1には、乗り場から降り場に向かった踏段が走行する乗客通路に沿って乗客の通過を検知する検知部が設けられており、同検知部を介して乗客が検知される検知時間と踏段の移動速度とに基づいて算出される算出値が所定の基準値以上である場合に乗客の転倒が発生しているものと判断する転倒監視システムを備える乗客コンベアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の転倒監視システムの構成では、乗客の転倒以外の要因、例えば、検知部やその周囲にチラシなどの異物が付着したり挟まったりすることにより検知部が物体を検知している状態となってしまった場合や、検知部に故障が発生したことに起因して物体を検知している状態となってしまった場合などにおいて乗客が転倒していないにも拘らず乗客が転倒したものとの判定がなされてしまうということが発生し得る。
【0006】
本発明は、乗客の転倒判定を精度よく行うことが可能な転倒監視システムおよびこれを備えた乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る転倒監視システムは、乗り場と降り場との間に設けられた乗客通路に沿って乗客を搬送する無端搬送体を含む乗客コンベアにおける乗客転倒の有無を監視する転倒監視システムであって、無端搬送体と近接する領域を通過する物体を検知する第1の物体検知部と、第1の物体検知部の搬送経路における直下流側に配置され無端搬送体と近接する領域を通過する物体を検知する第2の物体検知部と、第1の物体検知部における物体の検知時間と無端搬送体の搬送速度とから算出される第1の算出値が所定の第1基準値以上である場合に第2の物体検知部が物体を検知していることを条件に乗客が転倒していると判定する判定部とを備えるものである。
【0008】
本発明に係る転倒監視システムは、乗り場と降り場との間に設けられた乗客通路に沿って乗客を搬送する無端搬送体を含む乗客コンベアにおける乗客転倒の有無を監視する転倒監視システムであって、無端搬送体と近接する領域を通過する物体を検知する第1の物体検知部と、第1の物体検知部の搬送経路における直下流側に配置され無端搬送体と近接する領域を通過する物体を検知する第2の物体検知部と、第1の物体検知部における物体の検知時間と無端搬送体の搬送速度とから算出される第1の算出値が所定の第1基準値以上である場合に、第1の算出値が所定の第1基準値以上の値となってから所定時間以内に第2の物体検知部が物体を検知している検知時間と無端搬送体の搬送速度とから算出される第2の算出値が所定の第2の基準値以上の値となることを条件に乗客が転倒していると判定する判定部とを備えるものである。
【0009】
本発明に係る転倒監視システムにおいて、無端搬送体は、複数の踏段を無端状に連結して構成されており、所定時間は、第1の物体検知部に検知される位置の直下方を踏段が2つ通過するのに要する時間を所要時間とした場合に所要時間時間以上であり且つ所要時間の2倍以下の時間長さとなるように設定してもよい。
【0010】
本発明に係る転倒監視システムにおいて、無端搬送体は、複数の踏段を無端状に連結して構成されており、第1基準値は、2つの踏段に横たわるように載置された物体が第1の物体検知部に検知される位置を通過したときに測定される長さに基づいて設定してもよい。
本発明に係る転倒監視システムにおいて、無端搬送体は、複数の踏段を無端状に連結して構成されており、第1基準値は、2つの踏段に横たわるように載置された物体が第1の物体検知部に検知される位置を通過したときに測定される長さに基づいて設定してもよい。
本発明に係る乗客コンベアは、上記いずれかの発明に記載の転倒監視システムと、無端搬送体の走行を制御する運転制御部と、を備え、運転制御部は、転倒監視システムによって乗客が転倒していると判定された場合に無端搬送体の走行速度を通常運転時の運転速度より減速させる減速運転モードまたは無端搬送体を停止させる停止モードのいずれかを実行するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る転倒監視システムによれば、第1の物体検知部における物体の検知時間と無端搬送体の搬送速度とから算出される第1の算出値が所定の第1基準値以上である場合において第1の物体検知部に隣接する第2の物体検知部における物体の検知状態が所定の条件を満たしていることを条件として乗客が転倒していると判定する。
【0012】
これにより、第1の物体検知部および第2の物体検知部双方の検知状態に基づいて乗客の転倒判定がなされるため、乗客の転倒以外の要因で第1の物体検知部が検知状態となった場合に誤って乗客の転倒判定がなされてしまうのを抑制することができる。
【0013】
本発明に係る乗客コンベアによれば、乗客が転倒していると判定された場合に無端搬送体を減速させる減速運転モードまたは無端搬送体を停止させる停止モードのいずれかを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る転倒監視システムが適用される乗客コンベアの構成を模式的に示す図であり、さらに、踏段周辺の部分拡大図と従動スプロケットおよび駆動スプロケットの構成を示す部分拡大図および踏段周辺の部分拡大図を一部に含む図である。
【
図2】
図1に示す乗客コンベアに含まれる各検知ユニットと降り場に設置されたコムプレートの配置構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図1に含まれる降り場側検知ユニットとコムプレートの配置構成を模式的に示す部分拡大図である。
【
図4】
図1に示す乗客コンベアに形成されるブロック図である。
【
図5】
図5(a)は、検知ユニットの上流側検知部が通常運転時に乗客の通過を検知したときの検知状態を示すタイミングチャートである。
図5(b)は、検知ユニットの下流側検知部が通常運転時に乗客の通過を検知したときの検知状態を示すタイミングチャートである。
図5(c)は、検知ユニットの上流側検知部が踏段上で転倒状態にある乗客を検知したときの検知状態の一例を示すタイミングチャートである。
図5(d)は、検知ユニットの下流側検知部が踏段上で転倒状態にある乗客を検知したときの検知状態の一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】
図1に示す乗客コンベアの運転制御の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図6の一部に含まれる定義済み処理である転倒有無判定サブルーチンの流れを示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係る乗客コンベアに形成されるブロック図である。
【
図9】第2実施形態における転倒有無判定サブルーチンの構成を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1、本発明の一実施形態であるエスカレータ(乗客コンベア)10の構成を模式的に示す図である。
図1において、踏段チェーン31を2点鎖線で示している。
図2は、エスカレータ10に含まれる各検知ユニットPと降り場14に設置されたコムプレートPLとの位置関係を模式的に示す図である。なお、各図において、図中に示す「X」はエスカレータ10の上面視における長手方向と略平行をなす水平方向Xを示し、「Y」は水平方向Xと直交する水平方向Yを示し、「Z」は鉛直方向Zを示すものとする。
【0016】
図1および
図2に示すように、エスカレータ10は、上階側に設けられた乗り場12と、下階側に設けられた降り場14と、乗り場12および降り場14との間に設けられた走行路SWとを含み、乗り場12から降り場14に向かう搬送方向Aに沿って乗客を搬送する機能を有する。この走行路SWは、複数の踏段32A,32B,32C,・・・(以下、特に区別する必要が無い場合は適宜、踏段「32」と表記)が階段状を呈して走行する斜行区間DL(
図2参照)と乗り場12および降り場14に各々隣接し各踏段32が略水平に走行する水平区間HN1,HN2(
図2参照)とを含む。
【0017】
乗り場12及び降り場14は、ほぼ同一の構成を備える。
図1に示すように降り場14の踏段32が床面に潜り込む位置には櫛状に構成されたコムプレートPLが取り付けられている。このコムプレートPLには、安全装置(不図示)が取り付けられており、踏段32とコムプレートPLの間に異物が挟まるなどした場合に後述する踏段32を停止させる役割を有する。
【0018】
また、
図1および
図2に示すように、上記走行路SWおよび乗り場12および降り場14から構成される乗客通路15の両側には欄干部21,22が各々設けられている。欄干部21および欄干部22は、乗客通路15を挟んで対称形をなしており、同様の構成部材からなる。以下の説明では、欄干部22について主に説明を行うとともに欄干部21については適宜説明を省略する。
【0019】
欄干部22は、乗客通路15に沿って立設する欄干パネル23と、欄干パネル23を支持する支持部24とを有する。この欄干パネル23は、例えば、複数の板ガラスを列状に並べて構成され透光性を有する。また、欄干パネル23の乗り場12側の端部および降り場14側の端部は、各々円弧状に構成される。また、欄干部22の外周部には、走行路SWの直上方を踏段32と同じ向きに同じ速度で循環走行するように構成された無端状のハンドレール(移動手摺)27が移動可能に取り付けられている。支持部24には、乗客通路15の側面を覆うようにスカートガード(側板)24Aが取り付けられている。同様に、欄干部21の支持部25にもスカートガード25Aが取り付けられている。
【0020】
図1および
図2に示すように、スカートガード24A,25Aには、走行路SWの上階(上流)側から下階(下流)側に向かって予め設定された位置に各々検知ユニットP1,P2,P3,P4が設けられている。より詳しくは、検知ユニットP1は水平区間HN1に、検知ユニットP2,P3は斜行区間DLの上流側と下流側に、検知ユニットP4は水平区間HN2に各々設置されている。各検知ユニットP1,P2,P3,P4の構成は同一である(以下、特に区別する必要が無い場合には適宜「検知ユニットP」と表記)。以下、検知ユニットP4を例に挙げて説明を行う。
【0021】
検知ユニットP4は、
図1に示すように、上流側検知部(第1の物体検知部)PFと直下流側に隣接配置された下流側検知部(第2の物体検知部)PRを含み、各検知ユニットPのうちコムプレートPLに最も接近した位置に配置された検知ユニットである。上流側検知部PFは、投光部PXと受光部PYとを含む透過型光電センサで構成され、踏段32に乗った状態の乗客や荷物などの物体が投光部PXの照射する光を遮る(遮光する)ことにより物体の通過を検知する機能を有する。
【0022】
ここで、
図1の一部に示す部分拡大図は、
図1に示す降り場14側から見たときの踏段32とスカートガード24A,25Aの位置関係を示すものである。
図1の一部に含まれる上記部分拡大図に示すように、検知ユニットP4における上流側検知部PFを構成する投光部PXおよび受光部PYは、各々スカートガード24A,25Aに両スカートガード24A,25Aを間に挟んで互いに対向するように取り付けられている。また、両スカートガード24A,25Aにおける投光部PXおよび受光部PYそれぞれの取付部分には、投光部PXが照射する光を受光部PYに受光させるため各々貫通孔が設けられている。また、検知ユニットP4の下流側検知部PRも上述した上流側検知部PFと同一の機能および構成を具備する。
【0023】
図2に示すように各検知ユニットPの上流側検知部PFおよび下流側検知部PRは、走行路SWに沿って移動する踏段32の直上方に各々設置することが好ましい。より具体的には、上流側検知部PFを構成する投光部PX(
図1参照)および受光部PY(
図1参照)の上下方向位置は、直下方を通過する踏段32との間の距離が20cm以内となる位置に設置するのが好ましく、より好ましくは10cm以内に設置するのが好適である。下流側検知部PRにおける投光部および受光部の上下方向位置についても、上述した上流側検知部PFの場合と同様に設置することが好ましい。このように走行路SWに沿って走行移動する踏段32に近接する直上方の位置に検知ユニットPを設けることで検知精度を向上させることができる。
【0024】
図3は、検知ユニットP4,P3の配置構成について説明する図である。
図3に示すように、水平区間HN2に配置される検知ユニットP4の上流側検知部PFおよび下流側検知部PRの間隔L1は、水平方向Xにおける踏段32の長さ(換言すると、踏段32の短手方向の寸法)以下となるように両検知部PF,PRを近接配置することが好ましい。同様に、斜行区間DLに配置される検知ユニットP3の上流側検知部PFおよび下流側検知部PRの間隔L2においても間隔L1と同じ長さに設定することが好ましく、他の検知ユニットP1,P2における両検知部PF,PRの間隔ついても同様に設定することが好ましい。
【0025】
本実施形態では、間隔L1は、走行路SWに沿って移動する踏段32の水平方向Xにおける長さと同等の長さ(一例として0.4m)に設定されている。
【0026】
図1に示すように、無端搬送体30は、踏段チェーン31を介して上述した複数の踏段32を無端状に連結して構成される。また、降り場14の直下方に設けられた下階側機械室14Mには回転自在に支持された踏段スプロケット14Pが設けられ、乗り場12の直下方に設けられた上階側機械室12Mには回転自在に支持された踏段スプロケット12Pが設けられる。両踏段スプロケット12P,14Pには、上述した無端搬送体30の一部を構成する踏段チェーン31が各々巻き掛けられており、踏段チェーン31が後述する従動スプロケット12Qを介して回転駆動されるのに伴い踏段32が走行路SWを乗り場12から降り場14に向かって循環移動するように構成される。
【0027】
図1に示すように、乗り場12および降り場14の欄干部22の支持部24においてスピーカSP1,SP2(以下、特に区別する必要が無い場合には適宜スピーカ「SP」と表記)が各々内蔵されている。各スピーカSPは、音声案内などを放送する役割を有する。本実施形態では、欄干部22にスピーカSPを内蔵しているが、エスカレータ10の他の部分にスピーカを設けてもよいし、エスカレータ10周辺の建屋の壁面や天井などにスピーカを設置してもよい。
【0028】
また、上階側機械室12Mには、電動機34が設置されており、電動機34の駆動力は減速機(不図示)を介して出力軸(不図示)に伝達され、出力軸を介して駆動スプロケット34Pが回転駆動される。この駆動スプロケット34Pの回転動力は、ローラーチェーン34Cを介して従動スプロケット12Qに伝達される。従動スプロケット12Qは踏段スプロケット12Pとともにシャフト12Xに取り付けられており、従動スプロケット12Qを回転させることにより踏段スプロケット12Pも連動して回転させることとなる。これにより、上述した踏段チェーン31がガイドレール(不図示)に沿って周回走行し、これに伴い同チェーン31に無端状に各々連結された複数の踏段32が循環走行する。
【0029】
上記シャフト12Xには、従動スプロケット12Qの回転量を検出する回転検出部36(
図4参照)が取り付けられている。この回転検出部36はロータリーエンコーダ(不図示)を含み、シャフト12Xの回転(角)量に応じてパルス信号を後述する測定部44(
図4参照)に出力する機能を有する。
【0030】
本実施形態では、回転検出部36を従動スプロケット12Qのシャフト12Xに取り付けているが、電動機34の出力軸(不図示)や、その他、無端搬送体30の駆動と連動して回転する軸などに取り付けるようにしてもよい。
【0031】
また、
図1に含まれる従動スプロケット12Qと駆動スプロケット34P周辺の部分拡大図に示すように、回転検出部36は、上記ロータリーエンコーダに代えて、従動スプロケット12Qの外周に等角度間隔で形成される歯の先端部(歯先)を各々検出する機能を有する近接センサ36Aを用いるものとしてもよい。この場合には、従動スプロケット12Qの回転に伴って近接センサ36Aの検出位置に従動スプロケット12Qの歯先が逐次到来し近接センサ36Aにより検出される。そして、近接センサ36Aの検出信号が後述する測定部44(
図4参照)に出力されることで上記ロータリーエンコーダを用いる場合と同様に後述する測定部44において無端搬送体30の搬送速度を算出することが可能となる。
【0032】
続いて、
図4を用いて制御装置40の構成について説明を行う。
図4は、制御装置40を中心としたブロック図である。
図4に示すように、エスカレータ10は、エスカレータ10の運転を統括的に制御する制御装置40を上階側機械室12M(
図1参照)に備える。制御装置40は、各種制御プロブラムが記憶されたROM、RAM、およびHDDなどからなる記憶デバイス(不図示)やCPUなどの演算処理装置(不図示)を備える。そして、制御装置40は、演算処理装置が記憶デバイスから上記制御プログラムを読み出して演算処理を行うことにより転倒監視システム41や、電動機34の駆動を制御する運転制御部45として機能する。
【0033】
この転倒監視システム41は、無端搬送体30の搬送速度を測定する測定部44と、無端搬送体30における乗客転倒の有無を判定する転倒有無判定部(判定部)43とを含み、無端搬送体30上における乗客の転倒を監視する機能を有する。
【0034】
測定部44は、上述した回転検出部36から送信されるパルス信号を基に無端搬送体30の搬送速度を測定する機能を有する。また、運転制御部45は、測定部44の測定結果に基づいて運転モードを選択し、選択された運転モードに対応する速度指令信号などの制御信号を電動機34に送信する機能を有する。
【0035】
ここで、
図5(a)~
図5(d)は上述した検知ユニットPが物体を検知したときのタイミングチャートを各々示すものである。このうち、
図5(a)および
図5(b)は通常運転時において乗客が検知位置を通過したときの検知ユニットPの上流側検知部PFおよび下流側検知部PRにおける検知状態の変化を示すタイミングチャートである。
図5(a)および
図5(b)に示すように、踏段32の上に乗りこんだ状態の乗客が走行路SWに沿って移動する場合には、上流側検知部PFによって乗客の通過が検知された後、換言するとON状態に変化した後、下流側検知部PRによって乗客の通過が検知されることとなる。
【0036】
一方、
図5(c)および
図5(d)は、乗客転倒時における検知ユニットPの上流側検知部PFおよび下流側検知部PRによって乗客通過が検知された場合における検知状態の変化の一例を示すタイミングチャートである。
図5(c)および
図5(d)において、タイミングTP1は上流側検知部PFが遮光を検知しOFF状態からON状態に変化したタイミングを示し、同様に、タイミングTP2は下流側検知部PRが遮光を検知しOFF状態からON状態に変化したタイミングを示す。また、タイミングCRは、転倒有無判定部43によって乗客の転倒有りと判定されるタイミングを示す。
【0037】
図5(c)および
図5(d)に示すように、乗客転倒時には複数の踏段32の上に乗客が横たわった状態となっているため上流側検知部PFがON状態となる時間が通常運転時よりも長く継続することとなる。また、同様に、下流側検知部においてもON状態となる時間が通常運転時よりも長く継続することとなる。また、乗客転倒時には、互いに近接して配置されている上流側検知部PFおよび下流側検知部PRの双方が同時にON状態となる時間も比較的長い間発生することとなる。
【0038】
そこで、転倒有無判定部43は、検知ユニットPにおける上流側検知部PFが物体(遮光)を継続的に検知する検知時間T1と無端搬送体30の搬送速度V(すなわち、踏段32の走行速度)との積である算出値U1(すなわち、算出値U1=検知時間T1×搬送速度V)が閾値α(第1基準値)以上の値となるタイミングと、検知ユニットPにおける下流側検知部PRの遮光検知時間である検知時間T2と無端搬送体30の搬送速度Vの積である算出値U2が閾値α(第2基準値)以上の値となるタイミングとが所定の時間内にいずれも発生していることを条件(所定の条件)に乗客転倒有りとの判定を行う。算出値U1は本発明の第1の算出値に相当し、算出値U2は本発明の第2の算出値に相当する
【0039】
換言すると、転倒有無判定部43は検知ユニットPの上流側検知部PFにおける算出値U1が閾値α以上の値であるときからΔt時間以内に同検知ユニットPの下流側検知部PRにおける算出値U2が閾値α以上の値となっているか否かに基づいて乗客の転倒有無について判定を行う。ここで、Δt時間は、上流側検知部PFと下流側検知部PRとの間の距離を無端搬送体30の搬送速度Vで移動した場合に要する時間FRに基づいて設定すればよい。また、Δt時間は、上記時間FRに多少の余裕時間を加えた時間長さとなるように設定することが好ましい。
【0040】
一例として、Δt時間は、以下の式(1)の関係を満たす時間長さとなるように設定してもよい。
α/V≦Δt≦(2×α)/V・・・(1)
式(1)において、αは閾値αであり、Vは搬送速度Vとする。
【0041】
このように、転倒有無判定部43は、上流側検知部PFおよび下流側検知部PRにおける検知状態を並列的に常時監視し、Δt時間以内の時間差で算出値U1,U2のいずれもが閾値α以上の値となる場合に乗客転倒有りとの判定を行う。
【0042】
上述のように上流側検知部PFおよび下流側検知部PR双方の検知状態に基づいて乗客の転倒有無の判定が行われる。これにより、走行路SWに偶発的に進入したチラシなどのゴミが両検知部PF,PRのうちいずれか一方の検知部周辺に位置するスカートガード24A,25Aに付着したり、或いは、スカートガード24A,25Aと踏段32の間に挟まったりすることにより同検知部がON状態となった場合や、両検知部PF,PRのうちいずれか一方の検知部が故障して継続的にON状態となってしまった場合など乗客転倒以外の要因に起因してON状態となった場合において乗客転倒有りとの判定が誤ってなされてしまうことを防ぐことができる。
【0043】
運転制御部45は、転倒有無判定部43を介して乗客の転倒有りとの判定がなされていない場合は通常運転モードを実行する。一方、運転制御部45は、検知ユニットP1,P2,P3のいずれかを介して乗客が転倒しているとの判定がなされている場合には減速モードを実行する。これにより、転倒した乗客が立ち上がったり、周囲に居合わせた他の乗客が転倒した乗客を助け起こしたりしやすくすることができる。
【0044】
また、運転制御部45は、降り場14のコムプレートPLに最も近い位置に存在する検知ユニットP4を介して乗客が転倒しているとの判定がなされている場合には停止モードを実行する。これにより、転倒した乗客がコムプレートPLに到達する前に踏段32を停止させたり、或いは、転倒した乗客がコムプレートPLに到達するまでに踏段32の速度を減速させることができる。
【0045】
本実施形態において、通常運転モードは毎分30mの設定速度で踏段32を走行させる運転モードであり、減速モードは毎分10mの設定速度で踏段32を走行させる運転モードであり、停止モードは踏段32を停止させる運転モードである。
【0046】
なお、減速モードの減速度(すなわち、負の加速度)の方が停止モードの減速度よりも絶対値が小さくなるように設定し減速度合いが緩やかなものとなるようにしてもよい。また、停止モードの代わりに例えば毎分1m程度の低速、換言すると、上記減速モードよりも低速で踏段32を走行させる微速モードを実行するようにしてもよい。
【0047】
本実施形態では、運転制御部45は、無端搬送体30の搬送速度を測定部44より取得しているが、電動機34に送信する速度指令信号などに基づいて無端搬送体30の搬送速度を算出するようにしてもよい。
【0048】
本実施形態では、上記閾値αは、上流側検知部PFの検知位置を無端搬送体30に載置された状態で移動する物体の長さが、同検知位置を2つの踏段32が通過するときの長さSD(
図1参照)に概ね相当する長さとなる値に設定される。これにより、上記SD以上の長さの物体、例えば、転倒して2つ以上の踏段32に横たわる状態となっている乗客など、エスカレータ10の正常な利用状況下では発生し得ないような長尺の物体について上流側検知部PFを介して検知することが可能となる。従って、上記SD以上の長さの物体を検知した場合に乗客が転倒しているものと判定することが可能となる。
【0049】
また、搬送速度Vと検知時間T1の積である算出値U1を用いることにより無端搬送体30の搬送速度が異なる場合において、いずれの搬送速度であっても同じ物体の長さを想定した判定基準で乗客の転倒有無の判定が可能となる利点もある。
【0050】
本実施形態では、閾値αを上記長さSDに相当する値としているが、エスカレータ10の使用環境などに応じて上記長さSDよりも短い長さに相当する値を閾値αとしてもよいし、上記長さSDよりも長い長さに相当する値を閾値αとして用いてもよい。
【0051】
続いて、
図6を用いて制御装置40における運転制御の流れについて説明を行う。
図6は、通常運転モード実行時に乗客の転倒が発生した場合における運転制御の流れを示すフローチャートである。
【0052】
図6に示すように、運転制御部45は通常運転モードを実行するとともに(ステップS1)、定義済み処理である転倒有無判定サブルーチンSB1を呼び出して実行する。
【0053】
ここで、
図7は、転倒有無判定サブルーチンSB1の構成を示すフローチャートである。この転倒有無判定サブルーチンSB1は、検知ユニットPに含まれる上流側検知部PFおよび下流側検知部PR双方における遮光検知の状況を並列的に監視することにより乗客の転倒判定を行うためのサブルーチンである。
【0054】
図7に示すように、転倒有無判定部43は、上流側検知部PFにおける遮光検知の有無を判断する(ステップB1)。そして、上流側検知部PFで遮光が検知されている場合には(ステップB1:YES)、転倒有無判定部43がステップB1で遮光を検知した上流側検知部PFにおける検知時間T1と無端搬送体30における搬送速度Vの積(すなわち、検知時間T1×搬送速度V)である算出値U1を計算し(ステップB2)、算出値U1が閾値α以上であるか否かを判断する(ステップB3)。そして、算出値U1が閾値α以上である場合において、転倒有無判定部43は算出値U1が閾値α以上となっているタイミングをタイミングFTとして記録する(ステップB3:YES,ステップB4)。
【0055】
また、上記ステップB1~B4の処理と並行して、転倒有無判定部43は、上流側検知部PFの直下流側に隣接配置された下流側検知部PRにおける遮光検知の有無を判断する(ステップB5)。そして、下流側検知部PRで遮光が検知されている場合には(ステップB5:YES)、転倒有無判定部43がステップB4で遮光を検知した下流側検知部PRにおける検知時間T2と無端搬送体30における搬送速度Vの積(すなわち、検知時間T2×搬送速度V)である算出値U2を計算し(ステップB6)、算出値U2が閾値α以上であるか否かを判断する(ステップB7)。転倒有無判定部43は、算出値U2が閾値α以上である場合には(ステップB7:YES)、算出値U2が閾値α以上となったタイミングと上述したタイミングFTとの差分時間がΔt時間以内であるか否かを判断する(ステップB8)。換言すると、転倒有無判定部43は、ステップB4で記録されたタイミングFTから算出値U2が閾値α以上となったタイミングまでの経過時間がΔt時間以内であるか否かを判断する(ステップB8)。そして、経過時間がΔt時間以内である場合には、転倒有無判定部43は乗客が転倒しているとの判定を行う(ステップB9)。
【0056】
すなわち、ステップB8の処理において、ステップB3,B7で算出される算出値U1,U2のうち少なくとも一方が閾値α未満である場合には乗客が転倒しているとの判定は行われないこととなる。さらに、ステップB3,B7の処理において、算出値U1,U2の双方が閾値α以上となる場合であっても双方の算出値が閾値α以上となったタイミング同士の時間間隔がΔt時間以内でなければ乗客の転倒有りとの判定がなされないこととなる。これにより、乗客の転倒判定を精度よく行うことが可能となる。
【0057】
そして、
図6に示すステップS2の処理に遷移して、上述したステップB9の処理において乗客の転倒有りと転倒有無判定部43によって判定されている場合には(ステップS2:YES)、運転制御部45はステップS2の処理において物体を検知した上流側検知部PFおよび下流側検知部PRが検知ユニットP4の各検知部PF,PRである場合には(ステップS3:YES)、スピーカSPを介して「異常を検知しました停止します、ハンドレールにおつかまり下さい」などのアナウンスを実行するとともに停止モードを実行する(ステップS13,S14)。
【0058】
これにより、検知ユニットPの直下流側に位置するコムプレートPL(
図1参照)に物体が乗り上げたり、或いは、ぶつかったりする前に踏段32をできるだけ減速させることができる。
【0059】
一方、ステップS3の処理において乗客の転倒を検知した検知ユニットPが検知ユニットP4以外の検知ユニット、すなわち検知ユニットP1~P3のいずれかである場合には(ステップS3:NO)、運転制御部45はスピーカSPを介して「異常を検知しました減速します、ハンドレールにおつかまり下さい」などのアナウンスを実行するとともに通常運転モードから減速モードに運転モードを切り替えて実行する(ステップS4,S5)。さらに、運転制御部45は、減速運転モードの継続時間である減速時間REを算出する(ステップS6)。
【0060】
これにより、踏段32の走行速度が低速となるため、例えば、踏段32上に倒れ込んだ乗客も踏段32の移動速度が通常の運転速度よりも低速となることで起き上がりやすく、また、周辺に居合わせた乗客などが転倒した乗客を助け起こしやすくなるという利点もある。
【0061】
また、上述したステップS2の処理において、乗客が転倒しているとの判定がなされていない場合には運転制御部45によって通常運転モードの実行が継続されることとなる(ステップS2:NO,ステップS1)。
【0062】
そして、運転制御部45は、減速モードの実行開始後に上述した転倒有無判定サブルーチンSB1と同一の構成からなる転倒有無判定サブルーチンSB2(
図7参照)を介して乗客の転倒無しと判定されている場合には(ステップS7:NO)、ステップS10の処理に進む。
【0063】
このステップS10の処理において、運転制御部45は、減速時間REが予め設定された時間W(一例として10分)以上の時間の長さとなっているか否かを判断する(ステップS10)。運転制御部45は。減速時間REが予め設定された時間W未満である場合には(ステップS10:NO)、上述したステップS5の処理に進む。
【0064】
また、運転制御部45は、上述した転倒有無判定サブルーチンSB2の処理において乗客の転倒有りと判定された場合には(ステップS7:YES)、同サブルーチンSB2で遮光を検知した検知ユニットPが検知ユニットP4であれば(ステップS8:YES)、スピーカSPを介して「異常を検知しました停止します、ハンドレールにおつかまり下さい」などのアナウンスを実行するとともに停止モードを実行する(ステップS13,S14)。
【0065】
また、乗客の転倒有りと判定された場合において(ステップS7:YES)、同サブルーチンSB2の処理で遮光を検知した検知ユニットPが検知ユニットP4以外の検知ユニット(すなわち、検知ユニットP1~P3)である場合には減速時間REを0にリセットし(ステップS8:NO,ステップS9)、上述したステップS10の処理に遷移する。
【0066】
運転制御部45は、減速時間REが予め設定された時間W以上の長さとなっている場合には(ステップS10:YES)、減速時間REを0にリセットするとともに(ステップS11)、スピーカSPを介して「エスカレータが通常速度まで加速します。お気を付けください。」などのアナウンスを実行(ステップS12)し、ステップS1の処理に遷移して減速モードから通常運転モードに運転モードを切り替えて実行する(ステップS1)。
【0067】
これにより、乗客の転倒検知がなされた場合には、減速運転をある程度の時間実行しつつ同減速運転中に乗客の転倒が再検知されないことを条件に通常運転に復帰させることができる。
【0068】
本実施形態の転倒監視システム41によれば、検知ユニットPの上流側検知部PFにおける物体の検知時間T1と無端搬送体30の搬送速度Vとから算出される算出値U1が所定の閾値α以上である場合において、同算出値U1が閾値α以上となってからΔt時間以内に直下流側に隣接配置された下流側検知部PRにおける物体の検知時間T2と上記搬送速度Vから算出される算出値U2が所定の閾値α以上となることを条件に乗客が転倒しているとの判定を行う。
【0069】
これにより、検知ユニットPを構成する上流側検知部PFおよび下流側検知部PR双方の検知状態に基づいて乗客の転倒判定がなされるため、乗客転倒以外の要因で上流側検知部PFが検知状態となった場合に誤って乗客の転倒有りとの判定がなされてしまうことを抑制することができる。
【0070】
上記第1実施形態では、転倒監視システム41は、転倒有無判定サブルーチンSB1,SB2を用いて検知ユニットPの各検知部PF,PRにおける遮光検知時の算出値U1,U2がいずれも閾値α以上であることを条件に乗客の転倒有りと判定する例を挙げている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上述した算出値U1が閾値α以上であり、且つ、下流側検知部PRが遮光を同時検知していることを条件(所定の条件)に乗客の転倒有りと判定するようにしてもよい。
【0071】
この場合の第2実施形態に係るエスカレータ100の構成について、
図8および
図9を参照しつつ説明を行う。以下の説明において、上記第1実施形態におけるエスカレータ10と構成が共通する部分については適宜説明を省略し、主に構成が異なる部分についてのみ説明を行うものとする。
【0072】
図8は、第2実施形態に係るエスカレータ100において形成されるブロック図を示すものである。
図8に示すように、エスカレータ100は、上記第1実施形態における転倒監視システム41に代えて転倒監視システム141を制御装置40が備える点を除き上記第1実施形態のエスカレータ10と同一の構成を備える。また、転倒監視システム141は、転倒有無判定部43の代わりに後述する転倒有無判定部(判定部)143を備える点を除き上記第1実施形態の転倒監視システム41と同一の構成を具備する。
【0073】
図9は、転倒有無判定サブルーチンSB11,SB12における処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示す転倒有無判定サブルーチンSB11は、上記第1実施形態の転倒有無判定サブルーチンSB1の代わりに乗客の転倒判定処理に用いられるサブルーチンである。また、転倒有無判定サブルーチンSB12は、転倒有無判定サブルーチンSB11と同一の構成からなるサブルーチンであり、上記第1実施形態の転倒有無判定サブルーチンSB2の代わりに乗客の転倒判定処理に用いられるサブルーチンである。
【0074】
この第2実施形態の転倒監視システム141における転倒判定処理は、転倒有無判定サブルーチンSB11,SB12を上述した転倒有無判定サブルーチンSB1,SB2の代わりに各々用いる点のみ上記第1実施形態に係る転倒監視システム41における転倒判定処理の構成と相違する。転倒有無判定サブルーチンSB11,SB12の構成は、ほぼ同一であるため転倒有無判定サブルーチンSB11の構成についてのみ説明を行い、転倒有無判定サブルーチンSB12については説明を省略する。
【0075】
図9に示すように、転倒有無判定サブルーチンSB11において、転倒有無判定部143は、上流側検知部PFが遮光を検知している場合に(ステップB11:YES)、上流側検知部PFにおける検知時間T1と無端搬送体30における搬送速度Vの積(すなわち、検知時間T1×搬送速度V)である算出値U1を計算する(ステップB12)。そして、転倒有無判定部43は、算出値U1が閾値α以上である場合には(ステップB13:YES)、ステップB11において遮光を検知した上流側検知部PFの直下流側に隣接配置された下流側検知部PRにおいても物体を同時に検知している否かを判断し(ステップB14)、同下流側検知部PRが物体を検知している場合には(ステップB14:YES)、乗客が転倒していると判定し(ステップB15)、ステップS2の処理に遷移する(
図6参照)。
【0076】
この第2実施形態の転倒監視システム141によれば、検知ユニットPの上流側検知部PFにおける物体の検知時間T1と無端搬送体30の搬送速度Vとから算出される算出値U1が所定の閾値α以上である場合に直下流側に隣接配置された下流側検知部PRにおいても物体が同時に検知されていることを条件に乗客が転倒していると判定することができる。
【0077】
これにより、検知ユニットPを構成する上流側検知部PFおよび下流側検知部PR双方の検知状態に基づいて乗客の転倒判定がなされるため、乗客転倒以外の要因で上流側検知部PFが検知状態となった場合に誤って乗客の転倒有りとの判定がなされてしまうことを抑制することができる。
【0078】
上記第1実施形態のステップB3,B6では、上流側検知部PFと同検知部PFの直下流側に取り付けられた下流側検知部PR双方の遮光検知において同じ閾値αを用いて転倒有無の判定処理を行っているが、値の異なる閾値を用いるようにしてもよい。例えば、下流側検知部PRの遮光検知時に用いられる閾値を上流側検知部PFの遮光検知時に用いられる閾値より小さい値(換言すると、短い長さに相当する値)とすることなどが考えられる。
【0079】
また、上記第1実施形態では検知ユニットPの上流側検知部PFにおける遮光検知時の算出値U1が閾値α以上であり、且つ、同じ検知ユニットPにおける下流側検知部PRの遮光検知時の算出値U2が閾値α以上となることを条件(以下、「第1の転倒判定条件」と表記)とし、上記第2実施形態では検知ユニットPの上流側検知部PFにおける遮光検知時の算出値U1が閾値α以上であり、且つ、下流側検知部PRが遮光を同時検知していることを条件(以下、「第2の転倒判定条件」と表記)として乗客の転倒判定を行っている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
例えば、検知ユニットP1~P3のいずれかにおける遮光検知に基づく乗客の転倒判定は第1の転倒判定条件とし、検知ユニットP4の遮光検知に基づく乗客の転倒判定は第2の転倒判定条件に基づいて乗客の転倒有無の判定を行うものとしてもよい。この場合には、検知ユニットPの設置位置なども考慮して乗客の転倒判定条件を設定することが可能となる。
【0081】
また、上記第1および第2実施形態では、エスカレータ10における搬送方向Aが上階側から下階側に向かう方向である場合を例に挙げて説明しているが、搬送方向Aを下階側から上階側に向かう方向としてもよい。
【0082】
上記実施形態では、乗客コンベアの一例としてエスカレータ10を例に挙げて説明しているが、動く歩道に本発明を適用してもよい。
【0083】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0084】
10,100 エスカレータ
12 乗り場
14 降り場
15 乗客通路
30 無端搬送体
32,32A,32B,32C 踏段
34 電動機
40 制御装置
41,141 転倒監視システム
43,143 転倒有無判定部(判定部)
44 測定部
45 運転制御部
P,P1~P4 検知ユニット
PF 上流側検知部(第1の物体検知部)
PR 下流側検知部(第2の物体検知部)
PL コムプレート
S1~S16,SB1,SB2,SB11,SB12,B1~B4,B10~B15 ステップ
SW 走行路
SP,SP1,SP2 スピーカ
U1 算出値(第1の算出値)
U2 算出値(第2の算出値)