(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250304BHJP
H01G 2/08 20060101ALI20250304BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20250304BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20250304BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01G2/08 A
H01G2/10 A
H01G2/10 C
H01G4/32 301F
H01G4/32 540
(21)【出願番号】P 2023142648
(22)【出願日】2023-09-04
【審査請求日】2024-09-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 優
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩慶
(72)【発明者】
【氏名】徳永 翔平
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-003947(JP,A)
【文献】特開2015-126674(JP,A)
【文献】特開2007-110025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
H01G 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑用のコンデンサを備えた電力変換装置であって、
前記コンデンサは、
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を収納する金属製のコンデンサケースと、
前記コンデンサケースの内側に充填される樹脂と、を備え、
前記コンデンサケースを成形する板金は、前記コンデンサケースの内面側にプラスチックフィルムを貼り付けた金属樹脂複合板金であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換装置の筐体、または、前記電力変換装置の前記筐体に取り付けられたヒートシンクに、前記コンデンサを熱伝導性接着剤によって固定したことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力変換装置の前記筐体、または、前記ヒートシンクに冷媒が流通する流路が形成されていることを特徴とする請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記コンデンサケースの材質はアルミニウムであることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置におけるコンデンサの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は一般的な電力変換装置の一例としてのインバータユニットの回路構成を示し、
図2は従来のインバータユニットの構成を示す。
【0003】
インバータユニット10において、DCリンク電圧を平滑する役目を担うコンデンサCは、常時電流が流れるため発熱部品となる。そのため、コンデンサCの冷却が必要となる。
【0004】
図2は、水冷でインバータユニット10内のパワー半導体(IGBTパッケージ)1とコンデンサCを冷却する構造の一例である。これ以外にも自冷フィンや風冷フィンに発熱部品をとりつけて冷却する構造もある。これらの構造の先行技術として、特許文献1が開示されている。
【0005】
既存の構成では、
図2に示すように、コンデンサCの底面(場合によっては上面)に配置した熱伝導シート3を介しインバータユニット10の筐体4と接するように配置することにより冷却を実現していた。
【0006】
一方、重量センサ用コンデンサにアルミニウム樹脂複合パネルを用いる先行技術として、特許文献2が開示されている。ただし、特許文献2には、重量センサ用コンデンサに所定量以上の電流が流れて発熱をすることと特許文献2の構成が冷却効果を備えていることについては、記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-197838号公報
【文献】特開2011-22120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、コンデンサCの実際の発熱部はモールドされたコンデンサCの内部(コンデンサ素子や内部導体)である。コンデンサCの内部で発生した熱は樹脂モールド→コンデンサCのケース→熱伝導シート3→インバータユニット10の筐体4→流路5を介して放熱しているため十分な冷却性能が得られない。
【0009】
インバータユニット10の小型化(高出力密度)実現において、個々のアイテムのダウンサイジング及び発熱が課題となる。コンデンサCは、インバータユニット10内でも大型部品であるため(
図1の電気回路内に示す電気部品の中で、最も体積が大きいことが多い)、このコンデンサCの発熱がネックとなっていた。
【0010】
以上示したようなことから、電力変換装置において、コンデンサの冷却効率を向上させることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、平滑用のコンデンサを備えた電力変換装置であって、前記コンデンサは、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収納する金属製のコンデンサケースと、前記コンデンサケースの内側に充填される樹脂と、を備え、前記コンデンサケースを成形する板金は、前記コンデンサケースの内面側にプラスチックフィルムを貼り付けた金属樹脂複合板金であることを特徴とする。
【0012】
また、その一態様として、前記電力変換装置の筐体、または、前記電力変換装置の前記筐体に取り付けられたヒートシンクに、前記コンデンサを熱伝導性接着剤によって固定したことを特徴とする。
【0013】
また、その一態様として、前記電力変換装置の前記筐体、または、前記ヒートシンクに冷媒が流通する流路が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、一態様として、前記コンデンサケースの材質はアルミニウムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電力変換装置において、コンデンサの冷却効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】実施形態におけるコンデンサと電力変換装置の筐体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明における電力変換装置の実施形態を
図1、
図3、
図4に基づいて詳述する。
【0018】
[実施形態]
まず、
図1の電気回路図に基づいて、一般的な電力変換装置(例えばインバータユニット、以下インバータユニットと称する)を説明する。
図1に示すように、P端子とN端子との間にコンデンサ(例えばフィルムコンデンサ)Cが接続される。また、P端子とN端子との間にスイッチング素子Su,Sx、スイッチング素子Sv,Sy、スイッチング素子Sw,Szが直列接続される。スイッチング素子は例えばIGBTであり、スイッチング素子Su~Szでパワー半導体(IGBTパッケージ)1を構成している。
【0019】
パワー半導体1の交流側(スイッチング素子Su,Sxの接続点、スイッチング素子Sv,Syの接続点、スイッチング素子Sw,Szの接続点)にはモータMが接続される。また、パワー半導体1とモータMとの間には電流センサ2が設けられている。
【0020】
コンデンサCはDCリンク電圧を平滑する役目を担う。また、コンデンサCに対して並列に放電抵抗Rが接続される。放電抵抗Rは、インバータユニット10の入力電源オフ時にコンデンサCの電荷を放電させるために設けている。これにより感電事故を防止している。
【0021】
本実施形態におけるコンデンサCを
図3に示す。
図3の左側はコンデンサCの分解斜視図であり、
図3の右側がコンデンサCの組立後の斜視図である。
【0022】
コンデンサCは、コンデンサ素子11と、P側導体12と、N側導体13と、コンデンサケース14と、を備える。コンデンサ素子11はP側導体12とN側導体13が接続された状態でコンデンサケース14内に収納される。そして、樹脂15でコンデンサケース14内を充填する。
【0023】
コンデンサケース14の材料は、PPS(Polyphenylenesulfide:ポリフェニレンスルファイド)などの樹脂材料が一般的であるが、冷却性能を向上させるため熱伝導率が高いアルミニウムや他の金属などを用いる。
【0024】
ただし、ポッテイング(充填)する樹脂15とコンデンサケース14の金属の相性が悪いため、膨張収縮にてコンデンサケース14から樹脂15が剥離する可能性が高くなる。
【0025】
そこで、コンデンサケース14を成形する板金にプラスチックフィルム(図示せず)を貼り付けた金属樹脂複合板金を使用して,コンデンサケース14の内面側がプラスチックフィルム側となるようにコンデンサケースを製作する。金属のコンデンサケース14とプラスチックフィルム、および、充填された樹脂15とプラスチックフィルムの相性が良いため、コンデンサケース14から樹脂5が剥離するおそれが抑制される。
【0026】
図4は、本実施形態におけるコンデンサCとインバータユニット10の筐体4を示す斜視図である。なお、本実施形態ではインバータユニット10の筐体4に冷媒(例えば水)が流通する流路が形成されているものとする。
【0027】
従来はコンデンサケース14の底面に熱伝導シートを張り付け、熱伝導シートを介してインバータユニット10の筐体4と接するようにコンデンサCを設置することにより、コンデンサケース14の底面からのみインバータユニット10の筐体4に放熱していた。
【0028】
本実施形態では、インバータユニット10の筐体4にコンデンサケース14を熱伝導性接着剤によって固定する。コンデンサケース14は、底面だけでなく側面もインバータユニット10の筐体4と接する。インバータユニット10の筐体4の底から点線までの部分がコンデンサケース14の側面と接することとなる。熱伝導性接着剤はコンデンサケース14の底面と側面に塗布してインバータユニット10の筐体4に固定する。その結果、コンデンサケース14の底面だけでなく側面からもインバータユニット10の筐体4に放熱することが可能となる。
【0029】
[作用・動作の説明]
コンデンサケース14の材料はアルミニウムや他の金属などを用いる。熱伝導率の高い金属をコンデンサケース14に用いることでコンデンサCからインバータユニット10の筐体4への放熱性能の向上が期待できる。
【0030】
また、コンデンサケース14の金属と充填する樹脂15は相性が悪いためコンデンサケース14から樹脂15が剥離する可能性がある。そこで、コンデンサケース14の板金にプラスチックフィルムを貼り付けた金属樹脂複合板金を使用して、コンデンサケースの内面側がプラスチックフィルム側となるように製作する。金属のコンデンサケース14とプラスチックフィルム、および、樹脂15とプラスチックフィルムの相性が良いため、コンデンサケース14から樹脂15が剥離する恐れを抑制することが可能となる。
【0031】
また、従来はコンデンサケース14の底面に熱伝導シートを貼り付けてインバータユニット10の筐体4に設置することにより、コンデンサケース14の底面からのみインバータユニット10の筐体4に放熱していた。本実施形態では、熱伝導シートではなく熱伝導性接着剤をコンデンサケース14の底面および側面に使用してインバータユニット10の筐体4に設置する事でコンデンサケース14の底面からだけでなく側面からの放熱も可能となる。
【0032】
[効果]
本実施形態によれば、コンデンサケース14の材料に熱伝導率の高い金属を用いること、および、熱伝導接着剤を用いてコンデンサケース14の底面および側面からインバータユニット10の筐体4に放熱すること、によりコンデンサCの冷却能力を向上させることが可能となる。
【0033】
また、コンデンサケース14は板金にプラスチックフィルムを貼り付けた金属樹脂複合板金を使用して、コンデンサケースの内面側がプラスチックフィルム側となるように製作することでコンデンサケース14から樹脂15が剥離する恐れを抑制することが可能となる。これによりコンデンサCの不良が低減し、電力変換装置の信頼性を向上することができる。
【0034】
さらに、コンデンサCの冷却能力が向上することにより、コンデンサCのESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)の条件が緩和する。すなわち、従来と比較してコンデンサCのESRを大きくできるため、コンデンサフィルムの厚さを低減することが可能となる。また、コンデンサCの冷却能力が向上することにより、静電容量あたりの電流許容値を増加することができる。これらにより、コンデンサCの小型化を図ることが可能となる。
【0035】
また、従来はインバータユニット10の筐体4とコンデンサケース14をボルト等により固定していたが、本実施形態では熱伝導性接着剤によってインバータユニット10の筐体4にコンデンサケース14を固定している。これにより、ボルトを削減することができ、部品点数を削減することが可能となる。
【0036】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0037】
例えば、本実施形態ではインバータユニット10の筐体4にコンデンサC(コンデンサケース14)を設置する構成について説明したが、インバータユニット10の筐体4に別途取り付ける水冷ヒートシンクや風冷ヒートシンクにコンデンサC(コンデンサケース14)を設置してもよい。水冷ヒートシンクの場合、ヒートシンクに冷媒(水)が流通する流路が形成される。
【0038】
また、実施形態では平滑用のコンデンサが設けられるインバータユニット10について説明したが、インバータユニット以外の電力変換装置(例えば、コンバータ、チョッパ等)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
C…コンデンサ
R…放電抵抗
Su~Sz…スイッチング素子
M…モータ
1…パワー半導体(IGBTモジュール)
2…電流センサ
3…熱伝導シート
4…インバータユニットの筐体
5…流路
10…電力変換装置(インバータユニット)
11…コンデンサ素子
12…P側導体
13…N側導体
14…コンデンサケース
15…樹脂
【要約】
【課題】電力変換装置において、コンデンサの冷却効率を向上させる。
【解決手段】平滑用のコンデンサCを備えた電力変換装置において、コンデンサCは、コンデンサ素子11と、コンデンサ素子11を収納する金属製のコンデンサケース14と、プラスチックフィルムと、樹脂15と、を備える。コンデンサケース14を成形する板金は、コンデンサケース14の内面側にプラスチックフィルムを貼り付けた金属樹脂複合板金とする。樹脂15は、コンデンサケース14の内側に充填される。
【選択図】
図3