(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】与信支援システム、与信支援方法および与信支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/03 20230101AFI20250304BHJP
【FI】
G06Q40/03
(21)【出願番号】P 2023509898
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2021013210
(87)【国際公開番号】W WO2022208583
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】西山 智之
【審査官】野村 和史
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1997613(KR,B1)
【文献】米国特許第08458065(US,B1)
【文献】特開2003-141340(JP,A)
【文献】特開2021-002379(JP,A)
【文献】特許第6267812(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の企業の第1の時点の財務指標から、前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況を予測し、予測結果への影響度が他の財務指標よりも高い第1の財務指標と、前記第1の財務指標への影響度が他の財務指標よりも高い第2の財務指標を特定する予測手段と、
前記第1の企業の
前記第1の時点の財務指標と、前記第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が所定の条件で一致している第2の企業を抽出する抽出手段と、
前記予測手段が予測した前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況と、前記第2の時点以後の前記第2の企業の財務状況の実績データ
と、前記第1の財務指標と、前記第2の財務指標とを出力する出力手段と
を備える与信支援システム。
【請求項2】
前記予測手段は、企業の財務指標のデータと、前記企業の成長または劣化の状況を示すデータとの関係を学習した予測モデルを用いて、前記第1の企業の前記第1の時点の財務指標から、前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況を予測す
る請求項1に記載の与信支援システム。
【請求項3】
前記予測モデルを機械学習によって生成する予測モデル生成手段をさらに備える請求項
2に記載の与信支援システム。
【請求項4】
前記出力手段は、前記予測手段が特定した前記第1の財務指標および前記第2の財務指標を基に、前記予測結果の説明文を出力する請求項
1から3いずれかに記載の与信支援システム。
【請求項5】
企業の財務指標のデータと、前記企業の融資対象としての適否を示すデータとの関係を学習したスコア算出モデルを用いて、企業の財務指標から、融資対象としての適性を示すスコアを算出するスコア算出手段をさらに備え、
前記出力手段は、前記スコアが所定の基準を満たす企業のリストを出力し、
前記予測手段は、前記リストに含まれる企業を前記第1の企業として、前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況を予測する請求項
1から4いずれかに記載の与信支援システム。
【請求項6】
前記出力手段は、前記スコアの算出に用いる前記スコア算出モデルの特徴量の項目および前記特徴量の重みの情報を出力し、
前記スコア算出手段は、前記特徴量の項目および前記特徴量の重みの変更値を反映した前記スコア算出モデルを用いて、前記スコアを算出する請求項
5に記載の与信支援システム。
【請求項7】
コンピュータが、
第1の企業の第1の時点の財務指標から、前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況を予測し、予測結果への影響度が他の財務指標よりも高い第1の財務指標と、前記第1の財務指標への影響度が他の財務指標よりも高い第2の財務指標を特定する処理と、
前記第1の企業の
前記第1の時点の財務指標と、前記第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が所定の条件で一致している第2の企業を抽出し、
予測した前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況と、前記第2の時点以後の前記第2の企業の財務状況の実績データ
と、前記第1の財務指標と、前記第2の財務指標とを出力する
与信支援方法。
【請求項8】
第1の企業の第1の時点の財務指標から、前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況を予測し、予測結果への影響度が他の財務指標よりも高い第1の財務指標と、前記第1の財務指標への影響度が他の財務指標よりも高い第2の財務指標を特定する処理と、
前記第1の企業の
前記第1の時点の財務指標と、前記第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が所定の条件で一致している第2の企業を抽出する処理と、
予測した前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況と、前記第2の時点以後の前記第2の企業の財務状況の実績データ
と、前記第1の財務指標と、前記第2の財務指標とを出力する処理と
をコンピュータに実行させる与信支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業の財務状況を予測する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金融機関が企業への融資のための営業活動を行う際に、経済状況および企業の財務状況に応じて成約の可能性が高い企業に対して営業活動を行う。また、金融機関の審査部門は、企業に融資を行う際に融資先として適正であるかを審査し、適正である場合に与信を行う。しかし、担当者が経済および企業の状況を判断して、候補企業を選定すると、状況に対して適切ではない企業、あるいは、金融機関の全体の戦略に沿わない企業を候補として選定する恐れがある。また、融資に関する営業活動を行う際に、融資の準備を進めた後に、与信審査が通らないと業務の効率が低下する恐れがある。そのため、融資の受諾の可能性が高く、かつ、与信が行われる可能性の高い企業に対象を絞って営業活動を行えることが望ましい。そのような、融資の候補に対する予測を行う技術としては、例えば、特許文献1のような技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の算出装置は、過去に融資実績のある第1の事業者と、第2の事業者との相関性を基に、第2の事業者の融資に対する関心度を、融資需要度として算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は第2の事業者への融資の成否を予測しているが、融資先の第2の事業者の財務状況を予測することはできない。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、企業の財務指標のデータから財務状況を予測することができる与信支援システム等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の与信支援システムは、抽出部と、出力部を備えている。抽出部は、第1の企業の第1の時点の財務指標と、第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が所定の条件で一致している第2の企業を抽出する。出力部は、第2の時点以後の第2の企業の財務状況の実績データを出力する。
【0008】
本発明の与信支援方法は、第1の企業の第1の時点の財務指標と、第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が所定の条件で一致している第2の企業を抽出する。本発明の与信支援方法は、第2の時点以後の第2の企業の財務状況の実績データを出力する。
【0009】
本発明のプログラム記録媒体は、与信支援プログラムを記録している。与信支援プログラムは、第1の企業の第1の時点の財務指標と、第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が所定の条件で一致している第2の企業を抽出する処理をコンピュータに実行させる。与信支援プログラムは、第2の時点以後の第2の企業の財務状況の実績データを出力する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、財務指標のデータから企業の財務状況を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態の与信支援システムの構成の概要を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の与信支援システムの構成の例を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の与信支援システムの動作フローの例を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態のおける表示画面の例を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の与信支援システムの動作フローの例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態のおける表示画面の例を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態のおける表示画面の例を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態のおける表示画面の例を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の与信支援システムの動作フローの例を示す図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態の与信支援システムの動作フローの例を示す図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態の与信支援システムの構成の概要を示す図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態の与信支援システムの動作フローの例を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態の他の構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の与信支援システムの構成の概要を示す図である。本実施形態の情報処理システムは、与信支援システム10と、端末装置20を備えている。与信支援システム10と、端末装置20とネットワークを介して接続されている。また、与信支援システム10は、単数または複数の情報処理装置によって構成されている。複数の情報処理装置によって構成されている場合には、情報処理装置は、ネットワークを介して互いに接続されている。
【0013】
本実施形態の情報処理システムは、融資の対象として適している企業の予測と、対象として適している企業の財務状況の予測を行うシステムである。財務状況は、企業の財務面での成長または劣化の状況のことである。財務面での成長とは、例えば、企業経営において数値が上昇すると望ましい財務指標の数値が上昇することをいう。また、財務面での劣化とは、財務面での成長とは、例えば、企業経営において数値が上昇すると望ましい財務指標の数値が降下することをいう。
【0014】
情報処理システムの与信支援システム10は、機械学習によって生成された学習モデルを用いて融資の対象として適している企業と、企業の財務状況を予測する。与信支援システムは、学習モデルを用いて、企業の財務指標のデータから、融資先としての適性を示すスコアを算出することで、融資先として適している候補を予測する。以下の説明では、財務指標のデータから融資先として適性を示すスコアを算出する学習モデルをスコア算出モデルという。融資先として適している候補とは、例えば、営業活動を行った際に、融資を受諾する可能性が高く、かつ、返済能力が備わっている企業のことをいう。また、与信支援システムは、学習モデルを用いて融資先の候補の企業の財務指標のデータから、各企業の成長確率を算出し、財務状況を予測する。以下の説明では、財務指標のデータから企業の成長確率を算出し、財務状況を予測する学習モデルを財務状況予測モデルという。
【0015】
与信支援システム10の構成について説明する。
図2は、与信支援システム10の構成の例を示す図である。与信支援システム10は、取得部11と、スコア算出部12と、算出モデル生成部13と、財務状況予測部14と、予測モデル生成部15と、抽出部16と、出力部17と、記憶部18を備えている。
【0016】
取得部11は、作業者の操作によって端末装置20によって入力される融資形態の選択結果、および財務状況の予測を行う対象とする企業の選択結果を入力データとして取得する。また、取得部11は、企業の財務指標のデータを取得する。ここで、財務指標とは、企業の期間における業績、あるいは、ある時点の財政状態などを表す値である。融資形態とは、例えば、融資先の企業における資金の用途に応じた融資および返済の方法のことをいう。資金の用途とは、例えば、運転資金の増加、他の借入金の返済、納税資金の調達または買収資金の調達のことをいう。資金の用途は、上記の例には限られない。融資の候補の検討および与信判断の際に参照する財務指標は、資金の用途によって異なる。そのため、与信支援システム10は、融資形態ごとに設定されたスコア算出モデルを用いて融資の対象として適した企業の予測を行う。
【0017】
取得部11は、融資の対象として適している企業を予測するスコア算出モデルを生成する際に、財務指標を機械学習における学習データとして用いる企業についての融資対象としての適否を示すデータを取得する。取得部11は、作業者の操作によって端末装置20に入力される融資対象としての適否を示すデータを端末装置20から取得する。また、取得部11は、企業の財務状況を予測する財務状況予測モデルを生成する際に、財務指標を機械学習における学習データとして用いる企業についての成長の有無を示すデータを取得する。取得部11は、作業者の操作によって端末装置20に入力される企業の成長の有無を示すデータを端末装置20から取得する。
【0018】
スコア算出部12は、企業の財務指標のデータを入力データとして、スコア算出モデルを用いて融資対象としての適性を示すスコアを算出する。スコア算出モデルは、融資形態ごとに機械学習によってあらかじめ生成されている。スコア算出部12は、財務指標のデータからスコア算出モデルで設定されている項目のデータを特徴量として抽出する。スコア算出部12は、抽出した特徴量を入力データとして、スコア算出モデルを用いて、各企業の融資対象としての適性を示すスコアを算出する。
【0019】
算出モデル生成部13は、企業の財務指標のデータを入力データ、企業の融資対象としての適否をラベルとした機械学習を実行し、企業の財務指標のデータから融資対象としての適性を示すスコアを予測するスコア算出モデルを生成する。
【0020】
算出モデル生成部13は、財務指標の入力データ、融資対象としての適否を正解データとして決定木形式のルールによって場合分けし、各場合で異なる説明変数を組み合わせた線形モデルで予測を行う。算出モデル生成部13は、データの場合分け条件の最適化、説明変数の組み合わせの最適化のよる予測モデルの生成、および不要な予測モデルの削除の処理を順に行うことで予測モデルを生成する。このような機械学習による予測モデルの生成方法は、異なる説明変数の組み合わせによる予測モデルを組み合わせて予測するため、異種混合学習とも呼ばれる。スコア算出モデルは、企業の財務指標を用いて融資の対象として適した企業を予測できるものであれば上記の方法以外の機械学習アルゴリズムによって生成されてもよい。異種混合学習の手法は、例えば、米国特許出願公開第2014/0222741号明細書に開示されている。
【0021】
算出モデル生成部13は、実際に行った営業活動における融資の成否の情報を用いてスコア算出モデルの再学習を行ってもよい。算出モデル生成部13は、企業の財務指標のデータを入力データ、実績を反映した融資対象の適否を示すデータをラベルとした機械学習を行って、企業の財務指標のデータから融資対象としての適性を示すスコアを算出するスコア算出モデルを生成する。算出モデル生成部13は、再学習によって生成したスコア算出モデルのデータを用いて、記憶部18に保存されているスコア算出モデルのデータを更新する。実績データを用いた再学習によって、スコア算出モデルを更新することで、融資対象として適した企業の推定結果の精度がより向上する。
【0022】
財務状況予測部14は、予測の対象企業の財務指標のデータを入力データとして、財務状況予測モデルを用いて、現時点以後、すなわち予測に用いた財務指標のデータが示す時点以後の成長確率および劣化確率を算出することで対象企業の財務状況を予測する。財務状況予測部14は、成長確率または劣化確率のいずれか一方のみを算出してもよい。
【0023】
財務状況予測部14は、例えば、予測に用いた財務指標のデータが示す年の1年後から3年後までのそれぞれの年における予測の対象企業の成長確率および劣化確率を算出する。成長確率および劣化確率の予測は、1年ごとでなくてもよい。また、予測の期間は、3年間でなくてもよい。
【0024】
財務状況予測部14は、成長確率および劣化確率をスコア化することで財務状況の予測をおこなってもよい。また、財務状況予測部14は、成長確率および劣化確率を算出する際に用いたルールまたはルールに含まれる財務指標を経験的な重要度に応じて重みづけし、算出した成長確率および劣化確率をあらかじめ設定された式を用いてスコア化してもよい。ルールは、予測に用いた特徴量の組み合わせと、特徴の組み合わせが満たす条件との組み合わせによって構成されている。
【0025】
財務状況予測部14は、企業の成長予測の際に、財務状況予測モデルのデータを用いて、予測の対象となる企業の財務指標のデータから特徴量を抽出し、抽出した特徴量が、設定されている条件を満たすルールを特定する。財務状況予測部14は、特徴量が条件を満たすルールのうち、上位からあらかじめ設定された数のルールを選択する。財務状況予測部14は、選択された各ルールの成長確率および劣化確率を用いて、選択されたすべてのルールの成長確率および劣化確率の平均値を算出し、算出した平均値を予測の対象企業の成長確率および劣化確率とする。このような機械学習アルゴリズムを用いた財務状況予測モデルによって、成長確率および劣化確率を予測することで、ルールによって予測の根拠を把握しつつ、企業の成長予測を行うことができる。
【0026】
予測モデル生成部15は、企業の過去の財務指標のデータを入力データとし、成長または劣化の実績データをラベルとした機械学習を実行することで、現在の財務指標から企業の成長確率を予測する予測モデルを生成する。
【0027】
予測モデル生成部15は、企業の財務指標のデータからあらかじめ設定された項目のデータを特徴量として抽出する。予測モデル生成部15は、ランダムフォレストを用いた周知の手法によって特徴量の組み合わせと、特徴の組み合わせが満たす条件ごとの成長確率および劣化確率を算出する。成長確率および劣化確率は、特徴量の組み合わせには、1項目の財務指標のみの特徴量も含まれる。
【0028】
予測モデル生成部15は、ルールごとに成長確率および劣化確率を算出する。予測モデル生成部15は、成長確率を、学習に財務指標が用いられた企業数のうち、特徴量がルールで設定された条件を満たす企業数の割合を用いて算出する。また、予測モデル生成部15は、劣化確率を、学習に財務指標が用いられた企業数のうち、特徴量がルールで設定された条件を満たさない企業数の割合を用いて算出する。
【0029】
予測モデル生成部15は、生成したルールを選別アルゴリズムで選別し、企業の成長確率を予測する上で重要なルールを特定する。予測モデル生成部15は、例えば、各ルールで算出された確率を用いて微分可能なモデルとし、連続最適化問題として扱う選別アルゴリズムを用いてルールの選別を行う。予測モデル生成部15は、選別したルールについて、絞り込みの度合いが高いルールを上位とした順位付けを行う。予測モデル生成部15は、ルールの順位と、各ルールを関連付けたデータを財務状況予測モデルのデータとして記憶部18に保存する。このように生成された機械学習アルゴリズムは、ルール発見型推論ともよばれる。
【0030】
予測モデル生成部15は、財務指標のうち、企業の成長の有無に対する影響度が高い項目であるカテゴリ変数と、他の財務指標のうち、カテゴリ変数への影響度が高い項目であるサポート変数を特定し、予測結果への影響度が高い変数を抽出する学習モデルを生成してもよい。ここで、ある変数の影響度とは、当該変数の値の変化が他の変数の値を変化させる度合いである。例えば、ある予測モデルが機械学習アルゴリズムによって生成され、説明変数の重み付き線形和で表される式であるとする。その場合、ある説明変数の影響度は、当該説明変数の重み係数であり、当該説明変数の値の変化が目的変数の値を変化させる度合いである。また、そのような学習モデルを生成する際に、カテゴリ変数とサポート変数の組は、サポート変数にさらに変数が補助変数として組み合わされ、3階層で構成されていてもよい。予測モデル生成部15は、そのような機械学習アルゴリズムで生成された学習モデルを用いて予測することで、目的変数である企業成長の有無に対する影響度が大きい、説明変数の組み合わせを抽出することで、予測結果の理由の説明性が高くなる。
【0031】
抽出部16は、予測の対象企業の財務指標と、過去のある時点における財務指標が一致している企業を抽出する。例えば、予測対象の企業を第1の企業、過去のある時点における財務指標が一致している企業を第2の企業としたとき、抽出部16は、第1の企業の第1の時点の財務指標と、第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が一致している第2の企業を抽出する。
【0032】
抽出部16は、例えば、あらかじめ設定された算出式を用いて算出された各企業の財務状況を示すスコアと、予測の対象企業の財務状況を用いて、予測の対象企業の現在の財務状況と、過去の財務状況が一致している企業を特定する。互いに一致している財務指標には、一致しているとみなせる類似の財務指標も含まれる。抽出部16は、例えば、予測の対象企業の財務指標をスコア化した値と、過去のある時点における財務指標をスコア化した値の差があらかじめ設定された基準以下であったとき、財務指標が一致している企業として抽出する。すなわち、抽出部16は、予測の対象企業の財務指標と、過去のある時点における財務指標が所定の条件内で一致している企業を抽出する。
【0033】
出力部17は、スコア算出部12が算出したスコアに従って候補企業の情報を出力する。出力部17は、スコアが高い順に候補企業を順位付けし、順位順に並べた企業名と、各企業のスコアの一覧を表示データとして端末装置20に出力する。出力部17は、例えば、指定された順位までの企業名とスコアの一覧の表示データを端末装置20に出力する。出力部17は、スコアが基準以上のスコアの企業名とスコアの一覧の表示データを出力してもよい。
【0034】
出力部17は、対象企業の成長確率と劣化確率のデータを出力する。また、出力部17は、対象企業の成長予測の理由と劣化予測の理由を出力する。また、出力部17は、対象企業の現在の財務状況と、過去の財務状況が一致している企業の財務状況の推移を出力する。
【0035】
記憶部18は、スコア算出モデルおよび財務状況予測モデルのデータを保存している。また、記憶部18は、企業の財務指標のデータを保存している。
【0036】
取得部11、スコア算出部12、算出モデル生成部13、財務状況予測部14、予測モデル生成部15、抽出部16および出力部17における各処理は、例えば、CPU(Central Processing Unit)上でコンピュータプログラムを実行することで行うことができる。また、取得部11、スコア算出部12、算出モデル生成部13、財務状況予測部14、予測モデル生成部15、抽出部16および出力部17における処理は、ネットワークを介して接続されている複数の情報処理装置において行われてもよい。
【0037】
与信支援システム10における各処理を複数の情報処理装置において行うとき、例えば、スコア算出部12および算出モデル生成部13における処理と、財務状況予測部14、予測モデル生成部15および抽出部16における処理を別の情報処理装置で行ってもよい。また、例えば、機械学習によって学習モデルを生成する算出モデル生成部13および予測モデル生成部15における処理と、学習モデルを用いて予測を行うスコア算出部12、財務状況予測部14および抽出部16における処理が別の情報処理装置において行われてもよい。上記のような構成とする場合、取得部11、出力部17および記憶部18は、各情報処理装置に備えられる。また、複数の情報処理装置において処理を行う場合の構成は、上記の例に限られない。
【0038】
記憶部18は、例えば、ハードディスクドライブを用いて構成されている。記憶部18は、不揮発性の半導体記憶装置などの他の種類の記憶装置または複数の種類の記憶装置の組み合わせによって構成されていてもよい。記憶部18は、与信支援システム10と接続されている記憶装置上に備えられていてもよい。また、記憶部18は、ネットワークを介して接続されている情報処理装置が制御する記憶装置上に備えられていてもよい。
【0039】
端末装置20は、与信支援システム10から取得する候補企業のリストおよび財務状況の予測結果の表示データを図示しない表示装置に表示する。また、端末装置20は、作業者の操作によって入力される融資形態の選択結果、融資の対象企業としての適否のデータ、企業の成長の有無のデータおよび財務状況を予測する企業の選択結果を入力データとして与信支援システム10に送る。
【0040】
本実施形態の情報処理システムの動作について説明する。
【0041】
企業の融資対象としての適性を予測する動作について説明する。
図3は、与信支援システム10の動作フローのうち、融資対象としての適性を示すスコアを算出する際の動作フローの例を示す図である。
【0042】
端末装置20は、作業者の操作によって入力される融資形態の選択結果のデータを入力データとして取得する。端末装置20は、融資形態の選択結果の入力データを与信支援システム10に送る。
【0043】
図3において、取得部11は、融資形態の選択結果のデータを取得する(ステップS11)。また、取得部11は、複数の企業の財務指標のデータを取得する(ステップS12)。取得部11は、例えば、作業者の操作によって端末装置20に入力された企業の財務指標のデータを端末装置20から取得する。取得部11は、企業の財務指標のデータをネットワークを介して接続された、企業の財務情報の提供サーバから取得してもよい。また、企業の財務指標のデータは、作業者の操作によって与信支援システム10に入力されてもよい。取得部11は、取得した財務指標のデータを記憶部18に保存する。財務指標のデータを取得する対象の企業は、例えば、金融機関が融資の営業活動を行う可能性のある企業、または業種に応じて設定されていてもよい。
【0044】
融資形態の選択結果のデータが取得されると、スコア算出部12は、選択された融資形態の設定に応じた項目のデータを、企業の財務指標のデータから特徴量として抽出する(ステップS13)。融資形態で設定された項目のデータを抽出すると、スコア算出部12は、財務指標のデータから抽出した特徴量を入力データとし、スコア算出モデルを用いて、融資対象としての適性を示すスコアを算出する(ステップS14)。スコア算出部12は、融資対象としての適性を示すスコアを正例の企業との財務指標の類似度を用いて算出する。
【0045】
1つの企業のスコアを算出したとき、スコアが未算出の企業がある場合(ステップS15でNo)、与信支援システム10は、ステップS12の財務指標のデータの抽出以降の処理を繰り返し、未算出の企業のスコアを算出する。
【0046】
1つのスコアを算出したときに、全ての企業のスコアの算出が完了している場合(ステップS15でYes)、出力部17は、スコアが高い順に企業名とスコアを並べた融資対象の候補企業のリストを生成し、端末装置20に出力する(ステップS16)。
【0047】
融資対象の候補企業のリストを受け取ると、端末装置20は図示しない表示装置に融資対象の候補企業のリストを表示する。
【0048】
図4は、融資対象の候補企業の予測結果の表示画面の例を示す図である。
図4の左側には、融資形態を示すシナリオ名「運転資金増加A」と、スコアを算出した際に適用されたルールが表示されている。また、
図4の右側は、候補企業の名称を示す顧客名と、各候補企業のスコアがスコア順にリストとして表示されている。
図4のような表示画面を表示することで、作業者は、予測の際のルールを参照しながら、融資対象として適性の高い企業の情報を得ることができる。また、
図4の例において、適用されているルールが作業者の操作によって書き換え可能に構成されていてもよい。適用されているルールが書き換え可能な場合に、取得部11は、作業者の操作によって端末装置20に入力されるルールの変更結果を入力データとして取得する。算出モデル生成部13は、取得した入力データを用いてスコア算出モデルのデータを更新する。
【0049】
企業の財務状況を予測する動作について説明する。
図5は、与信支援システムの動作フローのうち、企業の財務状況を予測する際の動作フローの例を示す図である。
【0050】
端末装置20は、作業者の操作によって入力される財務状況の予測の対象企業の選択結果を入力データとして取得する。端末装置20は、予測の対象企業の選択結果の入力データを与信支援システム10に送る。財務状況の予測の対象企業の選択は、例えば、
図4の融資対象の候補企業のリストの表示画面において、作業者のマウス操作によって候補企業の名称部分がクリックされることで行われる。
【0051】
図5において、取得部11は、財務状況の予測対象となる企業の選択結果を端末装置20から取得する(ステップS21)。予測の対象企業の選択結果が取得されると、取得部11は、選択された企業の財務指標のデータを取得する(ステップS22)。取得部11は、取得した企業の財務指標のデータを記憶部18に保存する。また、記憶部18に選択された企業の財務指標が保存されている場合には、取得部11は、新たに財務指標のデータを取得しなくてもよい。
【0052】
財務指標のデータが取得されると、財務状況予測部14は、財務指標のデータを入力データとして財務状況予測モデルを用いて、予測の対象企業の財務状況を予測する(ステップS23)。財務状況予測部14は、財務状況を成長確率として算出する。財務状況予測部14は、財務状況の予測を行った際に、条件が当てはまる予測ルールのうち、確率が高い順にあらかじめ設定された数の予測ルールを抽出する財務状況予測部14は、抽出した予測ルールごとの成長確率の平均値を算出することで対象企業の成長確率を算出する。また、財務状況予測部14は、抽出した予測ルールごとの劣化確率の平均値を算出することで対象企業の劣化確率を算出する。
【0053】
成長確率と劣化確率を算出すると、財務状況予測部14は、成長確率と劣化確率の算出に用いたルールで示される条件を予測の理由として抽出する(ステップS24)。
【0054】
また、抽出部16は、予測の対象企業の現在の財務指標と、過去の時点における財務指標の類似度が高い企業を、財務指標が一致している企業として抽出する(ステップS25)。抽出部16は、財務指標の類似度が高い企業を、例えば、あらかじめ設定された計算式を用いて財務指標のスコアを算出し、算出したスコアを用いて類似度が高い企業を財務指標が一致している企業として抽出する。抽出部16は、抽出した予測ルールに含まれる回数が多い企業を予測の対象企業と財務指標が一致している企業として特定してもよい。
【0055】
財務状況の予測と、過去の財務状況が一致している類似企業の抽出が行われると、出力部17は、財務状況の予測結果の表示データを生成し、端末装置20に出力する。出力部17は、予測の対象企業の財務状況の予測結果と、財務指標が一致している企業の実績データと、財務状況の予測理由を予測結果として端末装置に出力する(ステップS26)。予測結果の表示データを取得すると、端末装置20は、表示データを用いて予測結果を図示しない表示装置に表示する。
【0056】
図6は、財務状況の予測結果の表示画面の例を示した図である。
図6の左上では、予測の対象企業の企業名が財務状況予測企業の欄に表示されている。
図6の例では、企業Aが予測の対象企業として表示されている。また、
図6の「財務対象予測企業」の名称の下には、予測の対象企業の財務状況の予測結果が成長確率および劣化確率として示されている。また、
図6の上段に右側には、過去の財務指標が一致している企業名が、類似企業リストとして表示されている。類似企業リストは、財務指標が一致している企業名、財務指標が一致している年度、および類似度を示すスコアによって構成されている。
【0057】
図6の中段には、成長確率を算出した際に用いられたルールである成長予測適用ルールと、劣化確率を算出した際に用いられたルールである劣化予測適用ルールが表示されている。成長予測適用ルールの表示欄は、ルールの識別を示すID、ルールの内容およびルールごとの確率によって構成されている。IDが10のルールは、現預金対借入金比率の指標が90以下という条件を含み、IDが10のルールが示す成長確率は、80.5パーセントであることを示している。劣化予測適用ルールの表示欄は、ルールの識別を示すID、ルールの内容およびルールごとの確率によって構成されている。IDが51のルールは、借入金依存率が30.3より大きいという条件を含み、IDが51のルールが示す成長確率は、1.5パーセントであることを示している。なお、成長予測適用ルールまたは劣化予測適用ルールのいずれか一方のみが表示されていてもよい。
【0058】
図6の下段は、成長予測および劣化予測の理由が、プラス評価理由およびマイナス評価理由として示されている。プラス評価理由は、成長予測適用ルールのうち、確率が高いルールを用いて生成される自然文として出力される。ルールに含まれる項目と生成される自然文の対応は、あらかじめ設定されている。ルールに含まれる項目と生成される自然文の対応は、機械学習によって生成された学習モデルを用いて決定されてもよい。マイナス評価理由は、劣化予測適用ルールのうち、確率が高いルールを用いて生成される自然文として出力される。ルールに含まれる項目と生成される自然文の対応は、あらかじめ設定されている。なお、プラス評価理由またはマイナス評価理由のいずれか一方のみが表示されていてもよい。
【0059】
融資の営業活動を行う関係者、あるいは企業への融資の可否を決める与信審査官は、
図6のような予測結果を参照することで、予測理由を用いて予測結果の妥当性を判断しつつ、予測結果を企業の財務状況の判断に用いることができる。
【0060】
図7は、
図6において類似企業が選択された場合における、予測結果の表示画面の例を示した図である。
図7では、予測の対象企業の財務指標と、企業Gの2014年度の財務指標の類似度が高く、財務指標が一致している企業として企業Gが選択されている。財務指標が一致している企業の選択は、例えば、
図6の類似企業リストの表示画面において、作業者のマウス操作によって類似企業の名称部分がクリックされることで行われる。財務指標が一致している企業の選択は、財務使用の類似度が最も高い企業が自動で選択されることで行われてもよい。
【0061】
図7の上段のグラフは、財務状況予測モデルが予測した企業Aの成長確率を所定の計算式を用いてスコア化した値と、企業Gの実績データをスコア化した値をグラフとして示したものである。
図7の縦軸は、スコアの値の大小を示している。基準年は、企業Aは現在の年、企業Gは企業Aの財務指標と財務指標が一致している2014年である。このように財務指標が互いに一致している年をそろえて表示することで、予測結果と実績データを比較し、予測結果の妥当性を容易に確認することができる。
【0062】
図7の下段の左側は、予測の対象企業の企業Aの財務状況、右側は、財務指標が類似している企業Gの財務状況を示している。
図7の下段のグラフのうち棒グラフは、例えば、売上高、折れ線グラフは、例えば、経常利益を示す。
図7の下段のグラフの縦軸は、例えば、金額または規格化された金額を示すように設定されている出力部17は、企業Aの現在の財務状況である2021年の財務状況と、一致している2014年の企業Gの財務状況のそれぞれのグラフの中における位置が一致するように表示を行っている。
【0063】
図7の企業Aの成長予測のグラフでは、2020年と2021年は実績データ、2022年と2023年は予測値である。企業Aの成長予測の将来分の予測は、例えば、類似している企業の変化の変化量の統計値を用いて算出される。企業Aの成長予測の将来分の予測は、線形モデルを用いた予測方法によって行われてもよい。また、企業Aのデータは、過去と現在のデータのみが表示されてもよい。
図7のように、予測対象の企業の現時の状態および予測値と、過去の財務指標が類似している企業の実績データを並べて表示することで、予測結果を用いる作業者は、予測結果の妥当性を確認しつつ、予測結果を用いた判断を行うことができる。
【0064】
図8は、
図6において表示されている予測理由をさらに詳細に表示する表示画面の例を示す図である。
図8は、参照指標として、カテゴリ、サポート変数および補助変数が1つの組として表示されている。参照指標には、予測結果への影響が大きい各変数の項目名と値が表示されている。プラス評価理由は、参照指標のデータを用いて生成された説明文として表示されている。また、指標評価は、あらかじめ設定された方法によって算出された参照指標が予測結果に与える影響の指標として表示されている。
【0065】
スコア算出モデルの生成の動作について説明する。
図9は、スコア算出モデルを生成する際の与信支援システム10の動作フローの例を示す図である。
【0066】
端末装置20は、作業者の操作によって入力される営業活動の対象としての適否を示すデータを入力データとして取得する。端末装置20は、営業活動の対象としての適否を示す入力データを与信支援システム10に送る。
【0067】
図9において、取得部11は、企業の財務指標のデータと、融資対象としての適否を示すデータを取得する(ステップS31)。取得部11は、例えば、作業者の操作によって端末装置20に入力された入力データを端末装置20から取得する。また、取得部11は、企業の財務指標のデータを財務情報の提供サービスのサーバからネットワークを介して取得してもよい。
【0068】
企業の財務指標のデータが取得されると、算出モデル生成部13は、財務指標のデータから、スコア算出モデルの生成に用いる項目のデータを特徴量として抽出する(ステップS32)。特徴量として抽出する財務指標の項目は、例えば、与信審査の専門家または専門家から指示を受けた作業者の操作によって端末装置20に入力され、取得部11によって端末装置20から取得される。
【0069】
スコア算出モデルの生成に用いる特徴量を抽出すると、算出モデル生成部13は、企業の財務指標のデータから抽出した特徴量を入力データ、企業の営業対象としての適否のデータラベルとして機械学習を行う(ステップS33)。算出モデル生成部13は、機械学習によって、企業の財務指標のデータから営業活動の対象としての適性を示すスコアを出力するスコア算出モデルを生成する。スコア算出モデルは、融資形態ごとに生成される。スコア算出モデルは、財務指標から特徴量として抽出する項目と、スコアの算出ルールを含むデータによって構成されている。スコア算出モデルの生成は、例えば、線形モデルを用いた機械学習によって行われる。スコア算出モデルの生成は、異種混合学習法を用いた機械学習によって行われてもよい。
【0070】
算出モデル生成部13は、スコア算出モデルを生成すると、テストデータを用いてスコア算出モデルの精度の検証を行う。生成したスコア算出モデルの精度が、あらかじめ設定された基準を満たすとき(ステップS34でYes)、算出モデル生成部13は、生成したスコア算出モデルのデータを学習済みモデルのデータとして記憶部18に保存する(ステップS35)。
【0071】
生成したスコア算出モデルの精度が、あらかじめ設定された基準を満たさないとき(ステップS34でNo)、取得部11は、スコアの予測に用いる特徴量の項目の変更データを取得する(ステップS36)。取得部11は、作業者の操作によって端末装置20に入力されるスコアの予測に用いる特徴量の項目の変更データを端末装置20から取得する。
【0072】
特徴量の変更データが取得されると、与信支援システム10は、ステップ31に戻り、取得部11による企業の財務指標のデータと、営業活動の対象としての適否を示すデータを取得する処理以降の動作を繰り返して行う。
【0073】
財務状況予測モデルの生成の動作について説明する。
図10は、与信支援システム10が財務状況予測モデルを生成する際の与信支援システム10の動作フローの例を示す図である。
【0074】
端末装置20は、作業者の操作によって入力される企業の成長の有無を示すデータを入力データとして取得する。端末装置20は、企業の成長の有無を示す入力データを与信支援システム10に送る。
【0075】
図10において、取得部11は、企業の財務指標のデータと、成長の有無を示すデータを取得する(ステップS41)。取得部11は、企業の成長の有無を示すデータを端末装置20から取得する。取得部11は、例えば、作業者の操作によって端末装置20に入力された企業の財務指標のデータを端末装置20から取得する。取得部11は、企業の財務指標のデータをネットワークを介して接続された、企業の財務情報の提供サーバから取得してもよい。また、企業の財務指標のデータは、作業者の操作によって与信支援システム10に入力されてもよい。取得部11は、取得した財務指標のデータを記憶部18に保存する。
【0076】
企業の財務指標のデータと、成長の有無を示すデータが取得されると、予測モデル生成部15は、財務指標のデータからあらかじめ設定された項目のデータを特徴量として抽出する(ステップS42)。特徴量として抽出する財務指標の項目は、例えば、企業財務の専門家または専門家から指示を受けた作業者の操作によって端末装置20に入力され、取得部11によって端末装置20から取得される。
【0077】
特徴量を生成すると、予測モデル生成部15は、特徴量を入力データ、成長の有無を示すデータをラベルとして機械学習を実行する(ステップS43)。予測モデル生成部15は、財務指標から抽出した特徴量のデータから企業の成長の有無を予測する財務状況予測モデルを生成する。
【0078】
予測モデル生成部15は、財務状況予測モデルを生成すると、テストデータを用いて財務状況予測モデルの精度の検証を行う。生成した財務状況予測モデルの精度が、あらかじめ設定された基準を満たすとき(ステップS44でYes)、予測モデル生成部15は、生成した財務状況予測モデルのデータを学習済みモデルのデータとして記憶部18に保存する(ステップS45)。
【0079】
生成した財務状況予測モデルの精度が、あらかじめ設定された基準を満たさないとき(ステップS44でNo)、取得部11は、財務状況の予測に用いる特徴量の項目の変更データを取得する(ステップS46)。取得部11は、作業者の操作によって端末装置20に入力される財務状況の予測に用いる特徴量の項目の変更データを端末装置20から取得する。
【0080】
特徴量の変更データが取得されると、与信支援システム10は、ステップ41に戻り、取得部11による企業の財務指標のデータと、融資の対象としての適否を示すデータを取得する処理以降の動作を繰り返して行う。
【0081】
本実施形態の与信支援システムは、融資形態ごとに、融資対象の適性の有無をラベルとして生成されたスコア算出モデルを用いて、企業の財務指標のデータから、企業の融資対象としての適性を示すスコアを算出している。また、本実施形態の与信支援システムは、算出したスコアを用いて、融資対象としての適性の高い企業のリストを生成している。融資対象としての適性の高い企業のリストを参照し、スコアが上位の企業にアプローチすることで、融資が受諾される可能性が高くなり、また、与信審査で却下される可能性が低くなるため融資のための営業活動の効率が向上する。
【0082】
本実施形態の情報処理システムの与信支援システム10は、予測の対象企業として選択された企業の成長確率を、企業の財務指標のデータを入力データ、成長の有無をラベルとして生成された財務状況予測モデルを用いて、予測の対象企業の財務指標のデータから予測している。また、本実施形態の与信支援システム10は、成長確率の予測結果への影響度が大きい財務指標を用いて、予測の理由の説明を出力している。予測結果とともに予測の理由を出力することで、予測結果の妥当性を確認しつつ、予測結果を利用することができる。
【0083】
与信支援システム10は、予測の対象企業の財務状況と、過去の財務状況が一致している企業の財務状況の実績データを出力している。財務状況が一致している企業の実績データと、予測の対象企業のデータを比較可能な状態で出力することで、対象企業の将来の財務状況をより容易に認識することができる。よって、本実施形態の情報処理システムの与信支援システム10は、予測の対象企業の財務指標のデータから企業の財務状況を予測することができる。
【0084】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
図11は、本実施形態の与信支援システム100の構成の例を示す図である。本実施形態の与信支援システム100は、抽出部101と、出力部102を備えている。抽出部101は、第1の企業の第1の時点の財務指標と、第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が所定の条件で一致している第2の企業を抽出する。出力部102は、第2の時点以後の第2の企業の財務状況の実績データを出力する。
【0085】
第1の実施形態の抽出部16は、抽出部101の一例である。また、抽出部101は、抽出手段の一態様である。第1の実施形態の出力部17は、出力部102の一例である。また、出力部102は、出力手段の一態様である。
【0086】
与信支援システム100の動作について説明する。
図12は、与信支援システム100の動作フローの例を示す図である。抽出部101は、第1の企業の第1の時点の財務指標と、第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が所定の条件で一致している第2の企業を抽出する(ステップS101)。第2の企業を抽出すると、出力部102は、第2の時点以後の第2の企業の財務状況の実績データを出力する(ステップS102)。
【0087】
本実施形態の与信支援システム100は、第1の企業の財務指標と第1の時点より過去の第2の起点の財務指標が所定の条件で一致している第2の企業の状況の実績を出力している。そのため、本実施形態の与信支援システム100を用いると、第1の企業の財務指標と似ている、過去における第2の企業の財務指標の実績データを参照することで、第1の企業の財務状況を予測することができる。
【0088】
第1の実施形態の与信支援システム10および第2の実施形態の与信支援システム100における各処理は、コンピュータプログラムをコンピュータで実行することによって行うことができる。
図13は、第1の実施形態の与信支援システム10および第2の実施形態の与信支援システム100における各処理を行うコンピュータプログラムを実行するコンピュータ200の構成の例を示したものである。コンピュータ200は、CPU201と、メモリ202と、記憶装置203と、入出力I/F(Interface)204と、通信I/F205を備えている。
【0089】
CPU201は、記憶装置203から各処理を行うコンピュータプログラムを読み出して実行する。CPU201は、CPUとGPU(Graphics Processing Unit)の組み合わせによって構成されていてもよい。メモリ202は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等によって構成され、CPU201が実行するコンピュータプログラムや処理中のデータが一時記憶される。記憶装置203は、CPU201が実行するコンピュータプログラムを記憶している。記憶装置203は、例えば、不揮発性の半導体記憶装置によって構成されている。記憶装置203には、ハードディスクドライブ等の他の記憶装置が用いられてもよい。入出力I/F204は、作業者からの入力の受付および表示データ等の出力を行うインタフェースである。通信I/F205は、端末装置20との間でデータの送受信を行うインタフェースである。また、端末装置20も同様の構成とすることができる。
【0090】
各処理の実行に用いられるコンピュータプログラムは、記録媒体に格納して頒布することもできる。記録媒体としては、例えば、データ記録用磁気テープや、ハードディスクなどの磁気ディスクを用いることができる。また、記録媒体としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の光ディスクを用いることもできる。不揮発性の半導体記憶装置を記録媒体として用いてもよい。
【0091】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0092】
[付記1]
第1の企業の第1の時点の財務指標と、前記第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が所定の条件で一致している第2の企業を抽出する抽出手段と、
前記第2の時点以後の前記第2の企業の財務状況の実績データを出力する出力手段と
を備える与信支援システム。
【0093】
[付記2]
企業の財務指標のデータと、前記企業の成長または劣化の状況を示すデータとの関係を学習した予測モデルを用いて、前記第1の企業の前記第1の時点の財務指標から、前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況を予測する予測手段をさらに備え、
前記出力手段は、前記予測手段が予測した前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況と、前記第2の時点以後の前記第2の企業の財務状況の実績データとを出力する付記1に記載の与信支援システム。
【0094】
[付記3]
前記出力手段は、前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況の予測結果への影響度が、他の財務指標よりも高い財務指標を出力する付記2に記載の与信支援システム。
【0095】
[付記4]
前記予測手段は、予測結果への影響度が他の財務指標よりも高い第1の財務指標と、前記第1の財務指標への影響度が他の財務指標よりも高い第2の財務指標を特定し、
前記出力手段は、前記第1の財務指標と前記第2の財務指標を出力する付記3に記載の与信支援システム。
【0096】
[付記5]
前記出力手段は、前記予測手段が特定した前記第1の財務指標および前記第2の財務指標を基に、前記予測結果の説明文を出力する付記4に記載の与信支援システム。
【0097】
[付記6]
前記予測モデルを機械学習によって生成する予測モデル生成手段をさらに備える付記2から5いずれかに記載の与信支援システム。
【0098】
[付記7]
企業の財務指標のデータと、前記企業の融資対象としての適否を示すデータとの関係を学習したスコア算出モデルを用いて、企業の財務指標から、融資対象としての適性を示すスコアを算出するスコア算出手段をさらに備え、
前記出力手段は、前記スコアが所定の基準を満たす企業のリストを出力し、
前記予測手段は、前記リストに含まれる企業を前記第1の企業として、前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況を予測する付記2から6いずれかに記載の与信支援システム。
【0099】
[付記8]
前記出力手段は、前記スコアの算出に用いる前記スコア算出モデルの特徴量の項目および前記特徴量の重みの情報を出力し、
前記スコア算出手段は、前記特徴量の項目および前記特徴量の重みの変更値を反映した前記スコア算出モデルを用いて、前記スコアを算出する付記7に記載に与信支援システム。
【0100】
[付記9]
前記スコア算出手段は、前記企業への融資形態に応じた前記スコア算出モデルを用いて、前記スコアを算出し、
前記出力手段は、前記融資形態に応じた前記リストを出力する付記7または8に記載の与信支援システム。
【0101】
[付記10]
前記スコア算出モデルを生成し、前記企業への融資の実現の有無を基に設定された前記企業の融資対象としての適否を示すデータを用いた再学習を行って、前記スコア算出モデルを更新する算出モデル生成手段をさらに備える付記7から9いずれかに記載の与信支援システム。
【0102】
[付記11]
第1の企業の第1の時点の財務指標と、前記第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が所定の条件で一致している第2の企業を抽出し、
前記第2の時点以後の前記第2の企業の財務状況の実績データを出力する
与信支援方法。
【0103】
[付記12]
企業の財務指標のデータと、前記企業の成長または劣化の状況を示すデータとの関係を学習した予測モデルを用いて、前記第1の企業の前記第1の時点の財務指標から、前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況を予測し、
予測した前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況と、前記第2の時点以後の前記第2の企業の財務状況の実績データとを出力する付記11に記載の与信支援方法。
【0104】
[付記13]
前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況の予測結果への影響度が、他の財務指標よりも高い財務指標を出力する付記12に記載の与信支援方法。
【0105】
[付記14]
予測結果への影響度が他の財務指標よりも高い第1の財務指標と、前記第1の財務指標への影響度が他の財務指標よりも高い第2の財務指標を特定し、
前記第1の財務指標と前記第2の財務指標を出力する付記13に記載の与信支援方法。
【0106】
[付記15]
特定した前記第1の財務指標および前記第2の財務指標を基に、前記予測結果の説明文を出力する付記14に記載の与信支援方法。
【0107】
[付記16]
企業の財務指標のデータと、前記企業の融資対象としての適否を示すデータとの関係を学習したスコア算出モデルを用いて、企業の財務指標から、融資対象としての適性を示すスコアを算出し、
前記スコアが所定の基準を満たす企業のリストを出力し、
前記リストに含まれる企業を前記第1の企業として、前記第1の時点以後の前記第1の企業の財務状況を予測する付記12から15いずれかに記載の与信支援方法。
【0108】
[付記17]
前記スコアの算出に用いる前記スコア算出モデルの特徴量の項目および前記特徴量の重みの情報を出力し、
前記特徴量の項目および前記特徴量の重みの変更値を反映した前記スコア算出モデルを用いて、前記スコアを算出する付記16に記載に与信支援方法。
【0109】
[付記18]
前記企業への融資形態に応じた前記スコア算出モデルを用いて、前記スコアを算出し、
前記融資形態に応じた前記リストを出力する付記16または17に記載の与信支援方法。
【0110】
[付記19]
前記スコア算出モデルを生成し、前記企業への融資の実現の有無を基に設定された前記企業の融資対象としての適否を示すデータを用いた再学習を行って、前記スコア算出モデルを更新する付記16から18いずれかに記載の与信支援方法。
【0111】
[付記20]
第1の企業の第1の時点の財務指標と、前記第1の時点よりも前の第2の時点における財務指標が所定の条件で一致している第2の企業を抽出する処理と、
前記第2の時点以後の前記第2の企業の財務状況の実績データを出力する処理と
をコンピュータに実行させる与信支援プログラムを記録したプログラム記録媒体。
【0112】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0113】
10 与信支援システム
11 取得部
12 スコア算出部
13 算出モデル生成部
14 財務状況予測部
15 予測モデル生成部
16 抽出部
17 出力部
18 記憶部
20 端末装置
100 与信支援システム
101 抽出部
102 出力部
200 コンピュータ
201 CPU
202 メモリ
203 記憶装置
204 入出力I/F
205 通信I/F