(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】劣化予測装置、劣化予測方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20250304BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2023570571
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2021048771
(87)【国際公開番号】W WO2023127089
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】菅原 千里
(72)【発明者】
【氏名】横手 俊倫
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】水越 優介
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝和
(72)【発明者】
【氏名】平田 寛道
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】十文字 奈々
【審査官】阿部 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-57192(JP,A)
【文献】特開2020-77322(JP,A)
【文献】国際公開第2021/192790(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物のセンサ履歴情報を取得するセンサ履歴情報取得手段と、
前記構造物下の地盤の地層情報を取得する地層情報取得手段と、
地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得する地表変位取得手段と、
前記センサ履歴情報、前記地層情報及び前記地表変位に基づいて、将来の時点における前記構造物の劣化状態を予測する劣化予測手段と、
前記構造物の劣化予測結果を出力する出力手段と、
を備える劣化予測装置。
【請求項2】
前記地層情報が軟弱地層である場合、
前記劣化予測手段は、将来の時点における劣化が基準よりも進むと予測する
請求項
1に記載の劣化予測装置。
【請求項3】
前記地層情報が硬質地層である場合、
前記劣化予測手段は、将来の時点における劣化が基準と同等であると予測する
請求項
1に記載の劣化予測装置。
【請求項4】
前記劣化予測手段は、データベースから取得した前記構造物の環境に関する情報を更に用いて、将来の時点における前記構造物の劣化状態を予測する
請求項1~
3のいずれか一項に記載の劣化予測装置。
【請求項5】
前記構造物が道路であり、
前記劣化予測手段は、将来の時点における、道路のひび割れ、ポットホール、わだち掘れ、及び、平坦性異常の少なくともいずれかの指標を用いて道路の劣化度を予測する
請求項1~
4のいずれか一項に記載の劣化予測装置。
【請求項6】
前記劣化予測手段は、将来の複数の時点の前記劣化度を予測し、
前記出力手段は、前記複数の時点の中から選択された時期における劣化度に応じた劣化の様子を地図上に表示させる
請求項
5に記載の劣化予測装置。
【請求項7】
前記劣化予測手段は、将来の複数の時点の前記劣化度を予測し、
前記出力手段は、前記複数の時点の中から選択された時期における劣化度に応じた道路の予測画像と、前記将来の複数の時点と前記劣化度の関係を表すグラフとを表示させる、
請求項
5に記載の劣化予測装置。
【請求項8】
コンピュータが、
構造物のセンサ履歴情報を取得し、
前記構造物下の地盤の地層情報を取得し、
地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得し、
前記センサ履歴情報、前記地層情報及び前記地表変位に基づいて、将来の時点における前記構造物の劣化状態を予測し、
前記構造物の劣化予測結果を出力する
劣化予測方法。
【請求項9】
構造物のセンサ履歴情報を取得し、
前記構造物下の地盤の地層情報を取得し、
地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得し、
前記センサ履歴情報、前記地層情報及び前記地表変位に基づいて、将来の時点における前記構造物の劣化状態を予測し、
前記構造物の劣化予測結果を出力すること
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、劣化予測装置、劣化予測方法、及び、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や滑走路等の構造物は、年月の経過に伴う劣化発生により補修が必要となる。構造物の補修を計画するために、構造物の劣化状態を予測する技術がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、構造物の劣化状況を分析し、将来の劣化度の予測値のデータを生成する構造物点検支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、道路、橋梁、及び、滑走路等の大きな構造物においては、構造物全体に影響する地盤(表層地層)の変位が発生した場合、ひび割れ等の表面の劣化が発生する。この表面の劣化は、表面部材の劣化(個別劣化)等の構造物自体の劣化に起因する変位とは別に発生する。このため、個別劣化だけではなく、地盤の変位に伴う劣化を考慮して、構造物の劣化状態を予測する必要がある。
【0006】
地盤には、様々な種類があり、種類ごとに地盤沈下等の変位の進行が異なる。特許文献1に記載された構造物点検支援システムは、構造物の劣化レベルを判定するためにセンサ履歴情報や地域特性情報を用いている。しかし、同じ地域であっても、場所によってその地盤構造が大きく異なるため、適切な構造物の劣化状態の予測が難しい。
【0007】
本開示の目的の一例は、構造物の劣化状態を適切に予測できる劣化予測装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態における劣化予測装置は、構造物のセンサ履歴情報を取得するセンサ履歴情報取得手段と、構造物下の地盤の地層情報を取得する地層情報取得手段と、センサ履歴情報及び地層情報に基づいて、将来の時点における構造物の劣化状態を予測する劣化予測手段と、構造物の劣化予測結果を出力する出力手段とを備える。
【0009】
本発明の一形態における劣化予測装置方法は、構造物のセンサ履歴情報を取得し、構造物下の地盤の地層情報を取得し、センサ履歴情報及び地層情報に基づいて、将来の時点における構造物の劣化状態を予測し、構造物の劣化予測結果を出力する。
【0010】
本発明の一形態における記録媒体は、構造物のセンサ履歴情報を取得し、構造物下の地盤の地層情報を取得し、センサ履歴情報及び地層情報に基づいて、将来の時点における構造物の劣化状態を予測し、構造物の劣化予測結果を出力することをコンピュータに実行させるプログラムを記録する。
【発明の効果】
【0011】
本開示による効果の一例は、構造物の劣化状態を適切に予測できることにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかる劣化予測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかる劣化予測装置とその周辺の構成の一例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、地図上に、センサ履歴情報に基づく構造物の劣化状態を示した図である。
【
図4】
図4は、地図上に、構造物下の地盤の地層情報を示した図である。
【
図5】
図5は、劣化予測部が予測した構造物の劣化度の表示画面の例である。
【
図6】
図6は、劣化予測部が予測した構造物の劣化度の表示画面の他の例である。
【
図7】
図7は、劣化予測部が予測した構造物の劣化度の表示画面の他の例である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態にかかる劣化予測装置の動作の一例を示すフロー図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態にかかる劣化予測装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態にかかる劣化予測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態にかかる劣化予測装置の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明における実施形態について図面を参照して説明する。各図面は、本発明の実施形態を説明するためのものである。但し、本発明の実施形態は、各図面の記載に限られるわけではない。また、各図面の同様の構成には、同じ番号を付し、その繰り返しの説明を、省略する場合がある。また、以下の説明に用いる図面において、本発明の課題の解決に関係しない部分の構成については、記載を省略し、図示しない場合もある。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態にかかる劣化予測装置10の構成の一例を示すブロック図である。劣化予測装置10は、センサ履歴情報取得部101と、地層情報取得部102と、劣化予測部103と、出力部104とを備える。なお、各構成は、図示しない記憶部に、各構成が特定した情報、取得した情報、及び、判定した情報の少なくとも一部を保存してもよい。この場合、各構成は、記憶部から必要な情報を取得してもよい。劣化予測装置10は、センサ履歴情報取得装置から取得したセンサ履歴情報及び構造物下の地盤の地層情報に基づいて、構造物の劣化状態を予測するための装置である。構造物としては、例えば、道路、橋梁、のり枠、堤防、桟橋、護岸、又は、滑走路等の土木構造物が挙げられる。
【0015】
図2は、第1の実施形態にかかる劣化予測装置10とその周辺の構成の一例を示す概念図である。
図2に示すように、劣化予測装置10は、コンピュータ510、センサ履歴情報取得装置の一例としてドライブレコーダー520、合成開口レーダーシステム(以下SAR)としてSAR530、表示装置の一例として端末装置540、及び、移動体の一例として車両550を含むシステムとして利用される。但し、本実施形態において、SAR530は必須の構成ではない。ネットワーク580は、各装置及びシステムを相互に接続する通信路である。なお、劣化予測装置10(コンピュータ510)とドライブレコーダー520とは、直接的に接続する場合もあるが、ネットワーク等を介して接続する場合もある。
【0016】
ドライブレコーダー520は、図示しないデータベースに、センサ履歴情報を出力する。センサ履歴情報とは、構造物の状況及びその周辺の状況を判定するために、センサから取得された情報の蓄積データである。センサとしては、例えば、カメラ、速度計、又は加速度計が挙げられる。ドライブレコーダー520は、例えば、移動体に搭載されて、センサ情報を取得する。移動体としては、車両やドローン等が挙げられる。また、ドライブレコーダー520ではなく、移動体に取り付けられた固定カメラ、人等が移動体に持ち込んだカメラ又は道路に設置された固定カメラを用いてセンサ情報を取得してもよい。また、ドライブレコーダー520ではなく、移動体に取り付けられた全天カメラ又は車載内蔵カメラ等の固定カメラでも構わない。また、人等が移動体に持ち込んだスマートフォンやタブレットに搭載されたカメラ又は道路に設置された固定カメラを用いてセンサ情報を取得してもよい。
【0017】
SAR530とは、人工衛星や航空機等の飛翔体が移動しながら電波を送信及び受信して、大きな開口を持ったアンテナの場合と等価な画像を得るレーダーシステムである。SAR530は、劣化予測装置10に、測定画像(SAR画像)又は地表変位を出力する。
【0018】
端末装置540は、劣化予測装置10が出力する構造物の劣化予測結果を表示する。端末装置540は、構造物の劣化予測結果を表示できれば、任意の装置でよい。端末装置540は、例えば、自治体等の道路管理者の端末装置であってもよい。
【0019】
図2に含まれる構成の数は、一例である。例えば、ドライブレコーダー520は、単数でも複数でも構わない。あるいは、少なくとも一部のドライブレコーダー520は、車両550に搭載されていなくてもよい。なお、
図2は、理解を容易にするため、ドライブレコーダー520を、車両550の外に表示している。但し、ドライブレコーダー520は、車両550の内部に搭載されてもよい。
【0020】
図1に戻って、センサ履歴情報取得部101は、構造物のセンサ履歴情報を取得する。センサ履歴情報とは、過去から現在までのセンサ情報を蓄積した情報であり、図示しないデータベースに記憶されている。センサ履歴情報取得部101は、このデータベースからセンサ履歴情報を取得する。なお、センサ履歴情報取得装置にセンサ情報が蓄積されていてもよい。この場合、センサ履歴情報取得部101は、センサ履歴情報取得装置から直接センサ履歴情報を取得しても構わない。センサ履歴情報取得部101は、ユーザにより構造物の劣化予測を始める操作を検知したことをトリガとして、任意の期間のセンサ履歴情報を取得する。センサ履歴情報取得部101は、センサ履歴情報として画像データの履歴情報を取得する際、画像データの履歴と共に各画像データが取得された日時及び撮影された位置の情報を取得する。位置の情報は、例えば、マップ上の位置、緯度と経度、GNSS(Global Navigation Satellite System)、又は、GPS(Global Positioning System)による位置情報を含む。センサ履歴情報取得部101は、センサ履歴情報と共に明暗、影の有無、逆光の有無又は周辺の天候等のセンサ取得時の情報を取得してもよい。
【0021】
地層情報取得部102は、構造物下の地盤の地層情報を取得する。地盤とは、構築物の基礎を支える地面の表層部である。地層情報取得部102は、劣化予測する対象の構造物が存在する地盤の地層情報を、例えば、公開されたデータベース等より取得する。
【0022】
地層情報とは、造成地情報、表層地層、土壌情報又は地形情報を含む。造成地情報とは、宅地以外の土地を住宅地等にするために土地に対して施した工事情報である。造成地情報としては、例えば、既設盛土、腹付け盛土、谷埋め、地山、非盛土等の盛土を含む。表層地層とは、地表面近くに堆積した地層である。表層地層としては、低湿地堆積物、自然堤防、砂州堆積物、飯室層、柿生層、武蔵野ローム層、武蔵野礫層、小原台砂礫層・善行礫層、下末吉ローム層・下末吉層、早田ローム層、舞岡ローム層、鶴見層・舞岡層等の地質名称、又は、中・後期更新世、前期更新世、宗新世、後期更新世、第四紀等の地層時代を示す情報を含む。土壌情報としては、例えば、砂丘未熟土、黒ボク土、褐色低地土、灰色低地土、岩屑土、暗赤土、人工改変土、人工改変地土等の土壌種類、又は、細砂、粗砂、シルト、粘土等の土性を含む。なお、シルト又は粘土等の水を含みやすい地層や土壌は、軟弱であることが多い。地形情報としては、ローム(火山灰)台地、土石流堆積地、山地斜面、旧水部、旧河道、減低地、川原・河川敷、湿地、現水部、砂礫大地、自然堤防、谷低地、麓屑面・崖錐等の自然地形又は人工平坦地、切土地、埋立地、盛土地、砂利採取跡地等の人口地形を含む。
【0023】
また、地層情報として、地層以外の土地及び土壌に関連する情報を含んでいてもよい。例えば、(平均)傾斜角度、急傾斜地指定、年間降水量、雨水浸透桝、排水困難低地、土砂災害警戒区域、液状化危険度、揺れやすさ、土砂災害警戒指定区域、土地利用種別、登記地目等が挙げられる。これらの情報により、地盤の軟弱さが把握できる。土地利用種別としては、高層建物、低層建物、低層建物密集地、公共施設、工場、展示場、駐車場、公園・緑地、森林、空き地、道路、鉄道、河川、湖沼、海岸である。登記地目としては、宅地、田、畑、牧場、原野、塩田、泉地、池沼、山林、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤井溝(せいこう)、保安林、公衆用道路、公園、鉄道用地、学校用地、雑種地が挙げられる。例えば、河川や池沼等付近によくみられる低地は軟弱であることが多い。
【0024】
また、地層情報取得部102は、地層情報として、地層の時系列的な情報(地層履歴)を取得してもよい。例えば、造成地における、造成前後の土壌の状態、過去の河川の流域の変化や移動、地表の開発・変更予定、造成計画、改良計画、地下トンネルの工事又は大型ビルの建築の計画等の開発計画等周辺の工事計画などを関連付けてもよい。過去に河川流域であった地層は軟弱であることが多い。なお、劣化予測部103で用いる地層情報は、一つでもよく、複数でもよい。また、劣化予測部103で用いる地層情報は、固定でもよいが、ユーザが任意に指定することもできる。
【0025】
劣化予測部103は、センサ履歴情報取得部101及び地層情報取得部102からそれぞれ入力されたセンサ履歴情報及び地層情報に基づいて、将来の時点における構造物の劣化状態を予測する。まず、劣化予測部103は、機械学習により生成された学習済モデルを用いて、将来のある時点における構造物の基準の劣化状態を予測する。この学習済モデルは、例えば、構造物を撮像した画像や加速度等の過去の複数の時点におけるセンサ履歴情報を教師データとして生成されたモデルであり、センサ履歴情報に対して、構造物の劣化の予測を出力する。また、劣化予測部103は、例えば、自己回帰モデル、移動平均法、又は、指数平均法等の統計的予測方法を用いて構造物の基準の劣化状態を予測しても構わない。また、劣化予測部103は、センサ履歴情報から算出された構造物ごとの基準の劣化速度に基づいて、将来のある時点における基準の劣化状態を予測しても構わない。すなわち、将来の時点における基準の劣化状態とは、センサ履歴情報のみに基づいて、予測された劣化状態である。
【0026】
次いで、劣化予測部103は、上記のように予測した基準の劣化状態に、構造物下の地盤の地層情報を加味して、将来の時点における構造物の劣化状態を予測する。具体的には、劣化予測部103は、構造物下の地盤の地層情報によって構造物の劣化速度が異なることを考慮して劣化状態を予測する。例えば、地層情報が軟弱地層である場合、劣化速度がより大きくなる。この場合、劣化予測部103は、基準よりも劣化状態が進むと予測する。一方、地層情報が硬質地層である場合、劣化速度が基準の劣化速度と同等である。この場合、劣化予測部103は、基準と劣化状態が同等であると予測する。但し、劣化予測部103による劣化状態の予測の手法はこれに限られない。例えば、劣化予測部103は、センサ履歴情報、地層情報及び将来の時点における実際の劣化状態を教師データとして生成したモデルを生成し、生成したモデルに基づいて、将来の時点における構造物の劣化状態を予測してもよい。このモデルは、センサ履歴情報及び地層情報を入力すると、将来の時点における構造物の劣化状態を出力するモデルである。
【0027】
劣化予測部103は、構造物として道路の劣化状態を予測する場合は、道路の劣化度を表す指標を用いる。ここで、道路の劣化度を表す指標について説明する。道路劣化には複数の種類がある。道路劣化は、例えば、ひび割れ、ポットホール、わだち掘れ、及び、道路の平坦性異常を含む複数の種類に分類される。ひび割れは、形状によって、直線ひび、及び、亀甲ひびの異なる種類に分類されてもよい。直線ひびとは、単独の線状のひびである。亀甲ひびとは、例えば、縦横の直線ひびが繋がった場合等に生じる亀甲状のひびである。道路のひび割れは、一般的に、直線ひび、亀甲ひび、ポットホールの順で進行する傾向がある。劣化予測部103は、例えば、道路のセンサ履歴情報と地盤の地層情報に基づいて、例えば、ポットホールの発生時期を予測しても構わない。
【0028】
ひび割れ度は、ひび割れの形状、長さ、面積、本数のいずれか、又は、これらの組み合わせによって表される。ひび割れ率はひび割れ度の一例である。ひび割れ率は、例えば、100×(ひび割れの面積/道路区間の面積)によって表される。この場合、劣化度の値は、0%から100%の範囲となる。ひび割れの面積は任意の方法で算出される。なおひび割れ率の算出方法は特に限定されず、上記の他に既知の算出方法を適用可能である。
【0029】
ポットホールの大きさは、例えば、ポットホールの面積、幅、長さ、深さのいずれか、又は、これらの組み合わせによって表される。わだち掘れ量とは、交通荷重により車の車輪通過位置(わだち部)に生じる道路延長方向に連続した凹みの深さである。
【0030】
ひび割れ度、ポットホールの数と大きさ、及び、わだち掘れ量は、センサで道路表面を測定した測定データに基づいて算出されてもよい。あるいは、これらの指標は、道路を撮像した画像から道路劣化を認識した認識結果に基づいて算出されてもよい。
【0031】
平坦性は、国際ラフネス指数(International Roughness Index(IRI))によって表されてもよい。IRIとは、路面と運転手の乗り心地を関連付けた指数であり、凸凹の程度を数値として表現したものである。IRIは、センサで道路表面を測定した測定データに基づいて算出されてもよい。あるいは、IRIは、車両に取り付けられた走行中の加速度センサの値に基づいて算出されてもよい。具体的には、例えば、IRIは、検出位置において取得された加速度に含まれる上下方向の加速度の値に基づいて算出される。なおIRIの算出方法は、上記に限られず、既知の算出方法を採用することが可能である。
【0032】
劣化度は、上述の指標に限られず、例えば、MCI(Maintenance Control Index:維持管理指数)を含む道路劣化を表す任意の指標が用いられてもよい。MCIの値は、ひび割れ率、わだち掘れ量、及び平坦性を用いる4つの定義式を計算した結果の最小値である。道路の劣化に伴いMCIは低下する。なお、構造物が滑走路である場合、平坦性を表す指標であるBBI(Boeing Bump Index)を用いることができる。
【0033】
劣化予測部103は、上述の指標を用いて以下のように劣化速度を予測し、劣化速度に基づき劣化度を予測する。例えば、シルト又は粘土等の水を含みやすい土壌を含む地層は地層内部での凍結により膨張し(凍上)、構造物表面でひび割れが発生する可能性がある。よって、劣化予測部103は、地層情報として、水を含みやすい地層が含まれる場合、凍結による構造物のひび割れ速度(劣化速度)が大きくなると予測する。一方、砂層、砂礫層、岩盤等の水分が少ない又は排水性のよい地層は凍上の影響を受けにくい。この場合、劣化予測部103は、凍上による構造物の劣化速度は影響を受けないと予測する。また、劣化予測部103は、熱や圧力により変動しやすい地層が含まれる場合、地層内部の膨張圧縮による構造物のひび割れ速度が大きくなると予測する。
【0034】
また、地層情報として盛土が含まれる場合、盛土又は盛土の軟弱地層による地盤沈下の可能性がある。すなわち、谷間や斜面に盛土がなされた地盤は、盛土自体の土の重さによって地盤沈下する可能性がある。また、盛土がなされた土壌にガラス等の建築廃材が混入している場合、地盤が軟弱であり、地盤沈下する可能性がある。よって、劣化予測部103は、盛土がなされた土地の地盤の地層情報に応じて、基準の劣化速度よりも構造物の劣化速度が大きくなると予測する。
【0035】
劣化予測部103は、劣化度を予測するにあたり、更に外部のデータベースから取得した構造物の環境に関する情報を用いても構わない。外部のデータベースとは、例えば、気象データや交通データである。気象データは、例えば、気象庁等のホームページで公開されている降水量情報や気温情報である。劣化予測部103は、構造物の環境に関する情報を加味し、劣化の劣化速度が異なることを考慮して劣化度を予測する。劣化予測部103は、例えば、降水量が多かった地域や極端に低温であった地域は、降水量又は気温の影響を受けて基準よりも劣化速度が大きくなると予測する。劣化予測部103は、例えば、交通量が多かった道路や橋梁は、交通量の影響を受けて基準よりも劣化速度が大きくなると予測する。
【0036】
劣化予測部103は、季節によって劣化速度が異なることを考慮して劣化度を予測しても構わない。劣化予測部103は、例えば、春先の雪解け時期、雨量が多い時期及び真冬の時期は、基準より劣化速度が大きくなると予測する。
【0037】
劣化予測部103が劣化度を予測する時期は、センサ履歴情報のセンサ情報取得日より後の任意の時点で設定される。劣化予測部103は、例えば、月単位、季節単位(四半期)、年単位のレンジで、将来の複数の時点における劣化度を予測してもよい。劣化予測部103は、ユーザが指定した将来の時点における劣化度を予測してもよい。
【0038】
なお、上記劣化度の予測は他の装置において行われてもよい。他の装置は、予測時点における劣化度を予測し、劣化予測装置10に送信する。劣化予測部103は、該他の装置から劣化度を取得し、予測された劣化度を将来の劣化度として決定する。
【0039】
出力部104は、劣化予測部103により予測された構造物の劣化予測結果を出力する。例えば、出力部104は、劣化予測部103が構造物の劣化状態を予測すると、端末装置540に、構造物の劣化予測結果を通知する。出力部104は、通知先を選択してもよい。
【0040】
出力部104は、例えば、自治体等の道路管理者の端末装置540のディスプレイに劣化予測結果を表示してもよい。出力部104は、予測時点における構造物の劣化予測結果を地図上に重畳表示しても構わない。
【0041】
ここで、劣化予測部103による劣化予測方法及び表示方法について、図面を用いて説明する。
図3は、地図上に、センサ履歴情報に基づく構造物の劣化状態を示した図である。
図3において、線は、道路である。
図3中、「劣化有」は、構造物が劣化した箇所であり、「劣化無」は、構造物が劣化していない箇所である。
図4は、地図上に、構造物下の地盤の地層情報を示した図である。
図4に示すように境界線Bを境に硬質地層、軟弱地層となっている。硬質地層及び軟弱地層は、換算N値等の指標により分類される。例えば、一般的に粘性土であれば換算N値が3以下、砂質土では換算N値が5以下であれば軟弱地盤に分類される。但し、硬質地層及び軟弱地層について、換算N値以外の指標を用いて分類しても構わない。
【0042】
図5は、劣化予測部103が予測した構造物の劣化度の表示画面の例である。
図5の例では、
図3における劣化した箇所について、6か月後の劣化度の大きさに応じて濃淡が異なる色で示されている。すなわち、
図5中、Xで示した領域は、硬質地層であるため、劣化度が基準と同等である。一方、
図5中、Yで示した領域は、軟弱地層であるため、劣化度が基準よりも大きい。また、出力部104は、複数の時点の中から選択された時期における劣化度に応じた劣化の様子を地図上に表示させる。すなわち、
図5に示すように、出力部104は、スライダーバーとスライダーとを表示させ、スライダーバー上のスライダーの位置に基づいて、表示する予測時期の劣化予測結果を切り替えてもよい。
図5の例では、6か月後、12か月後、18か月後の劣化予測結果を切り替えて表示することができる。
【0043】
図6は、劣化予測部103が予測した構造物の劣化度の表示画面の他の例である。
図6の表示画面は、
図5のようにスライダーの位置に基づいて表示する劣化予測結果が切り替わるではなく、予測ボタンがある。劣化予測部103は、元画像が表示された状態でこの予測ボタンが押された場合、表示画面内の道路において最初に劣化度が閾値を超えると予測される時期の劣化予測結果を表示するように画面を自動的に切り替えてもよい。
図6に示すように、最初に劣化度が閾値を超えると予測される時期が6か月後である場合、劣化予測部103は、6か月後の劣化予測結果の画面に自動的に切り替える。
【0044】
また、出力部104は、予測画像と共に、予測時期と劣化度の変化を表すグラフを表示させてもよい。
図7は、劣化予測部103が予測した構造物の劣化度の表示画面の他の例である。
図7は、予測時期とMCIの関係を表すグラフを含む。また、
図7に示すように、出力部104は、表示する予測画像とグラフ内の位置との対応関係を表示させてもよい。例えば、表示する予測画像に対応するグラフ上のプロット、または、軸上の値を他のプロットまたは値よりも強調して表示してもよい。更に、出力部104は、グラフ上に構造物の補修が必要となる劣化度の閾値を示してもよい。
【0045】
また、出力部104は、
図7に示すように、劣化度が閾値を超えると予測される時期やその日付をグラフ上に表示してもよい。
図7の例では、劣化度が閾値を超えると予測される時期は、16か月後の2023年4月20日となっている。更に、出力部104は、劣化度が閾値を超えると予測される時期に対応するグラフ上の位置の色を変える、又はアイコン表示等して強調表示させてもよい。
【0046】
なお、
図7の画面において、「ひび割れ率」または「IRI」のボタンが押されることにより、予測時期とひび割れ率に関するグラフと、予測時期とIRIに関するグラフが表示されてもよい。
【0047】
[動作の説明]
図8は、第1の実施形態にかかる劣化予測装置10の動作の一例を示すフロー図である。センサ履歴情報取得部101は、構造物のセンサ履歴情報を取得する(ステップS101)。地層情報取得部102は、構造物下の地盤の地層情報を取得する(ステップS102)。劣化予測部103は、センサ履歴情報及び地層情報に基づいて、将来の時点における構造物の劣化状態を予測する(ステップS103)。次いで、出力部104は、構造物の劣化予測結果を出力する(ステップS104)。
【0048】
劣化予測装置10は、劣化予測部103が、センサ履歴情報及び地層情報に基づいて、将来の時点における構造物の劣化状態を予測する。これにより、構造物表面の劣化情報だけではなく、地盤の地層情報を加味して構造物の劣化状態を予測できる。よって、劣化予測装置10によれば、構造物の適切な劣化予測が可能となる。
【0049】
[ハードウェア構成]
次に、劣化予測装置10のハードウェア構成について説明する。劣化予測装置10の各構成部は、ハードウェア回路で構成されてもよい。あるいは、劣化予測装置10において、各構成部は、ネットワークを介して接続した複数の装置を用いて、構成されてもよい。例えば、劣化予測装置10は、クラウドコンピューティングを利用して構成されてもよい。あるいは、劣化予測装置10において、複数の構成部は、1つのハードウェアで構成されてもよい。あるいは、劣化予測装置10は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含むコンピュータ装置として実現されてもよい。劣化予測装置10は、上記構成に加え、さらに、ネットワークインターフェース回路(NIC:Network Interface Circuit)を含むコンピュータ装置として実現されてもよい。
【0050】
図9は、劣化予測装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。劣化予測装置10は、CPU610と、ROM620と、RAM630と、記憶装置640と、NIC650とを含み、コンピュータ装置を構成している。CPU610は、ROM620及び/又は記憶装置640からプログラムを読み込む。そして、CPU610は、読み込んだプログラムに基づいて、RAM630と、記憶装置640と、NIC650とを制御する。そして、CPU610を含むコンピュータは、これらの構成を制御し、
図1に示されている、センサ履歴情報取得部101と、地層情報取得部102と、劣化予測部103と、出力部104としての各機能を実現する。
【0051】
CPU610は、各機能を実現する際に、RAM630又は記憶装置640を、プログラム及びデータの一時的な記憶媒体として使用してもよい。あるいは、CPU610は、コンピュータで読み取り可能にプログラムを記憶した記録媒体690が含むプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。あるいは、CPU610は、NIC650を介して、図示しない外部の装置からプログラムを受け取り、RAM630又は記憶装置640に保存して、保存したプログラムを基に動作してもよい。
【0052】
ROM620は、CPU610が実行するプログラム及び固定的なデータを記憶する。ROM620は、例えば、P-ROM(Programmable-ROM)又はフラッシュROMである。RAM630は、CPU610が実行するプログラム及びデータを一時的に記憶する。RAM630は、例えば、D-RAM(Dynamic-RAM)である。記憶装置640は、劣化予測装置10が長期的に保存するデータ及びプログラムを記憶する。また、記憶装置640は、CPU610の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置640は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)又はディスクアレイ装置である。ROM620と記憶装置640とは、不揮発性(non-transitory)の記録媒体である。一方、RAM630は、揮発性(transitory)の記録媒体である。そして、CPU610は、ROM620、記憶装置640、又は、RAM630に記憶されているプログラムを基に動作可能である。つまり、CPU610は、不揮発性記録媒体又は揮発性記録媒体を用いて動作可能である。
【0053】
NIC650は、ネットワークを介した外部の装置(ドライブレコーダー520、SAR530、端末装置540、車両550等)とのデータのやり取りを中継する。NIC650は、例えば、LAN(Local Area Network)カードである。さらに、NIC650は、有線に限らず、無線を用いてもよい。
【0054】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下、本実施形態の説明が不明確にならない範囲で、前述の説明と重複する内容については説明を省略する。
【0055】
図10は、第2の実施形態にかかる劣化予測装置11の構成の一例を示すブロック図である。劣化予測装置11は、センサ履歴情報取得部111と、地層情報取得部112と、地表変位取得部113と、劣化予測部114と、出力部115とを備える。第2の実施形態は、第1の実施形態とは地表変位取得部113を備えている点で異なる。センサ履歴情報取得部111と、地層情報取得部112の構成は、第1の実施形態のそれぞれ対応する構成と同様のため、説明を割愛する。
【0056】
地表変位取得部113は、地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得する。地表変位取得部113は、具体的には、SAR530が撮影したSAR画像を取得し、取得したSAR画像を分析して地表変位を取得する。あるいは、地表変位取得部113は、SAR530が撮影したSAR画像を分析して得られた地表変位を直接取得してもよい。地表変位には、地盤沈下・隆起、建物の建設・撤去等の地表状態についての情報が含まれていても構わない。なお、地表変位取得部113は、SAR530からマルチスペクトルを用いた観測結果を取得してもよい。この場合、地表変位取得部113は、取得した測定画像を用いて、地表変位に加え、地表の種類を分析できる。地表の種類としては、水面、泥土、ゴミ、乾燥土壌、草原、森林、農地、及び、積雪の少なくとも一つを含む。地表変位取得部113は、ビルなどの建築物の変位を用いてもよい。また、地表変位取得部113は、ドライブレコーダー520が接続されたクラウドコンピューティングを用いて構成されたクラウドシステムに保存されたSAR画像を用いて地表変位を取得しても構わない。地表変位取得部113は、取得した地表変位を劣化予測部114に出力する。
【0057】
劣化予測部114は、センサ履歴情報、地層情報及び地表変位に基づいて、構造物の劣化を評価する。劣化予測部114は、劣化予測部103の機能に加え、地表変位も加味して構造物の劣化状態を予測する。劣化予測部114は、例えば、地表変位が予測値よりも大きいほど構造物の劣化速度が大きいと予測し、その劣化速度に基づいて劣化状態を予測する。劣化予測部114は、地表変位が予測値よりも大きくなくても、地表が急激に変位しており、地表変位が非線形な動きをしている地表部分について、劣化速度が基準よりも大きくなると予測してもよい。
【0058】
劣化予測結果には災害発生時期を含んでいてもよい。劣化予測部114は、取得したセンサ履歴情報、地層情報及び地表変位に基づいて、災害発生時期を予測しても構わない。例えば、劣化予測部114は、地表変位に基づいて、盛土の崩壊、斜面・崖の土砂崩れ又は道路面や線路の路盤・路床の陥没等の災害の発生時期を予測できる。但し、陥没は、路面下の土壌の沈下に限らず、路面のポットホールが増大化して陥没となる場合もある。この場合、劣化予測部114は、センサ履歴情報に基づいて、災害発生時期を予測する。また、劣化予測部114は、橋台、橋脚、及び、基礎等の地面に接する部分の変位に基づいて、建物、高架鉄道・高架道路の倒壊又は橋の崩落等の災害発生の時期等を予測できる。劣化予測部114は、このように予測した構造物の劣化予測結果を出力部115に出力する。
【0059】
出力部115は、劣化予測部114が予測した構造物の劣化予測結果を出力する。出力先や出力方法は、第1の実施形態における出力部104と同様である。
【0060】
[動作の説明]
図11は、第2の実施形態にかかる劣化予測装置11の動作の一例を示すフロー図である。本実施形態におけるステップS201~ステップS202は、第1の実施形態におけるステップS101~ステップS102と同様のため、説明を省略する。地表変位取得部113は、地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得する(ステップS203)。次に、劣化予測部114は、センサ履歴情報、地層情報及び地表変位に基づいて、将来の時点における構造物の劣化状態を予測する(ステップS204)。最後に、出力部115は、劣化予測部114により評価された構造物の劣化予測結果を出力する(ステップS205)。
【0061】
第2の実施形態にかかる劣化予測装置11は、劣化予測部114がセンサ履歴情報及び地層情報に加え、地表変位に基づいて、将来の時点における構造物の劣化状態を予測する。地表変位の動的な情報を用いて劣化予測することにより、将来の劣化の進み具合を詳細に予測することができる。したがって、構造物の劣化状態をより精度よく評価することができる。
【0062】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0063】
(付記1)
構造物のセンサ履歴情報を取得するセンサ履歴情報取得手段と、
前記構造物下の地盤の地層情報を取得する地層情報取得手段と、
前記センサ履歴情報及び前記地層情報に基づいて、将来の時点における前記構造物の劣化状態を予測する劣化予測手段と、
前記構造物の劣化予測結果を出力する出力手段と、
を備える劣化予測装置。
【0064】
(付記2)
地表測定装置から取得した測定画像を用いて地表変位を取得する地表変位取得手段を更に備え、
前記劣化予測手段は、前記センサ履歴情報、前記地層情報及び前記地表変位に基づいて、将来の時点における前記構造物の劣化状態を予測する
付記1に記載の劣化予測装置。
【0065】
(付記3)
前記地層情報が軟弱地層である場合、
前記劣化予測手段は、将来の時点における劣化が基準よりも進むと予測する
付記1又は付記2に記載の劣化予測装置。
【0066】
(付記4)
前記地層情報が硬質地層である場合、
前記劣化予測手段は、将来の時点における劣化が基準と同等であると予測する
付記1又は付記2に記載の劣化予測装置。
【0067】
(付記5)
前記劣化予測手段は、データベースから取得した前記構造物の環境に関する情報を更に用いて、将来の時点における前記構造物の劣化状態を予測する
付記1~4のいずれかに記載の劣化予測装置。
【0068】
(付記6)
前記劣化予測手段は、前記データベースから気象情報を取得して前記構造物の劣化状態を予測する
付記5に記載の劣化予測装置。
【0069】
(付記7)
前記構造物が道路であり、
前記劣化予測手段は、将来の時点における、道路のひび割れ、ポットホール、わだち掘れ、及び、平坦性異常の少なくともいずれかの指標を用いて道路の劣化度を予測する
付記1~6のいずれかに記載の劣化予測装置。
【0070】
(付記8)
前記劣化予測手段は、将来の複数の時点の前記劣化度を予測し、
前記出力手段は、前記複数の時点の中から選択された時期における劣化度に応じた劣化の様子を地図上に表示させる
付記7に記載の劣化予測装置。
【0071】
(付記9)
前記劣化予測手段は、将来の複数の時点の前記劣化度を予測し、
前記出力手段は、前記複数の時点の中から選択された時期における劣化度に応じた道路の予測画像と、前記将来の複数の時点と前記劣化度の関係を表すグラフとを表示させる、
付記7に記載の劣化予測装置。
【0072】
(付記10)
構造物のセンサ履歴情報を取得し、
前記構造物下の地盤の地層情報を取得し、
前記センサ履歴情報及び前記地層情報に基づいて、将来の時点における前記構造物の劣化状態を予測し、
前記構造物の劣化予測結果を出力する
劣化予測方法。
【0073】
(付記11)
構造物のセンサ履歴情報を取得し、
前記構造物下の地盤の地層情報を取得し、
前記センサ履歴情報及び前記地層情報に基づいて、将来の時点における前記構造物の劣化状態を予測し、
前記構造物の劣化予測結果を出力すること
をコンピュータに実行させるプログラムを記録する記録媒体。
【0074】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0075】
10、11 劣化予測装置
101、111 センサ履歴情報取得部
102、112 地層情報取得部
103、114 劣化予測部
104、115 出力部
113 地表変位取得部
510 コンピュータ
520 ドライブレコーダー
530 SAR
540 端末装置
550 車両
580 ネットワーク
610 CPU
620 ROM
630 RAM
640 記憶装置
650 NIC