(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】移動体制御システム、移動体制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/435 20240101AFI20250304BHJP
B66B 1/18 20060101ALI20250304BHJP
G05D 1/644 20240101ALI20250304BHJP
G05D 1/672 20240101ALI20250304BHJP
G05D 1/225 20240101ALN20250304BHJP
【FI】
G05D1/435
B66B1/18 N
G05D1/644
G05D1/672
G05D1/225
(21)【出願番号】P 2024114218
(22)【出願日】2024-07-17
【審査請求日】2024-07-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根岸 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】垣尾 政之
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-000068(JP,A)
【文献】特開2023-173735(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230305(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066057(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/199343(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/435
B66B 1/18
G05D 1/644
G05D 1/672
G05D 1/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御装置と、
移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御部と、
前記エレベーター制御装置による前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、前記待機可能領域内において、単位面積あたりの前記利用者の滞在人数が予め設定された基準密度以下である待機領域候補を特定する領域特定部と、を備え、
前記移動体制御部は、前記領域特定部により特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる移動体制御システム。
【請求項2】
前記領域特定部は、前記エレベーター制御装置による前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報と、前記利用者が通過した位置に関する情報に基づいて、前記利用者の移動経路を推定し、推定した前記利用者の前記移動経路にさらに基づいて、前記待機領域候補を特定する請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項3】
乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御装置と、
移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御部と、
前記エレベーター制御装置による前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報と、前記利用者が通過した位置に関する情報とに基づいて、前記利用者の移動経路を推定し、推定した前記利用者の前記移動経路に基づいて、待機領域候補を特定する領域特定部と、を備え、
前記移動体制御部は、前記領域特定部により特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる移動体制御システム。
【請求項4】
前記エレベーター制御装置による前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報と、前記利用者が通過した位置に関する情報とに基づいて、前記利用者の通過人数が予め設定された基準人数以下である、前記待機領域候補までの経路候補を特定する経路特定部をさら備え、
前記移動体制御部は、前記経路特定部により特定された前記経路候補から選択された経路で、前記領域特定部により特定された前記待機領域候補から選択された領域まで前記移動体を移動させる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
【請求項5】
前記移動体制御部は、前記経路特定部により特定された前記経路候補がない場合、前記移動体に設けられた報知装置により、当該移動体が移動中である旨及び当該移動体の目的地を周囲の前記利用者に報知させながら、前記領域特定部により特定された前記待機領域候補から選択された領域まで当該移動体を移動させる請求項4に記載の移動体制御システム。
【請求項6】
前記利用者が通過した位置に関する情報は、前記利用者が通過したセキュリティゲートに関する情報及び前記利用者が前記行先階呼びを登録した操作盤に関する情報の一方又は両方を含む請求項2又は請求項3に記載の移動体制御システム。
【請求項7】
前記移動体制御部は、複数の前記待機領域候補のうちで、前記移動体が搭乗すべき前記乗りかごの出入口からの距離が最も近い領域を選択して、前記移動体を待機させる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
【請求項8】
前記移動体制御部は、前記移動体の正面側が当該移動体が乗車すべき前記乗りかごの出入口に向くようにして、当該移動体を待機させる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
【請求項9】
前記移動体制御部は、前記移動体の待機箇所が壁面に隣接している場合、当該移動体の背面側が当該壁面に向くようにして、当該移動体を待機させる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
【請求項10】
前記移動体制御部は、前記移動体に設けられた報知装置により、当該移動体が待機中である旨を周囲の前記利用者に報知させる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
【請求項11】
乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御ステップと、
移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御ステップと、
前記エレベーター制御ステップでの前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、前記待機可能領域内において、単位面積あたりの前記利用者の滞在人数が予め設定された基準密度以下である待機領域候補を特定する領域特定ステップと、を備え、
前記移動体制御ステップは、前記領域特定ステップで特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる移動体制御方法。
【請求項12】
乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御ステップと、
移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御ステップと、
前記エレベーター制御ステップでの前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報と、前記利用者が通過した位置に関する情報とに基づいて、前記利用者の移動経路を推定し、推定した前記利用者の前記移動経路に基づいて、待機領域候補を特定する領域特定ステップと、を備え、
前記移動体制御ステップは、前記領域特定ステップで特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる移動体制御方法。
【請求項13】
移動体制御システムが有するコンピュータに請求項11又は請求項12に記載の移動体制御方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体制御システム、移動体制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人用行先階登録装置による登録とロボット用行先階登録装置による登録とを区別して、エレベーターの複数の乗りかごのうちから人用行先階登録装置により登録された行先階に対応した呼びに割り当てる乗りかごとロボット用行先階登録装置により登録された行先階に対応した呼びに割り当てる乗りかごとを決定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるようなシステムにおいては、乗場でエレベーターの到着を待つ利用者は、乗場でエレベーターの到着まで待機している自律移動体(ロボット)を意識的に避けた位置で待たなければならず、エレベーターを待つ利用者の行動を自律移動体が阻害してしまうおそれがある。また、利用者及び自律移動体の一方又は両方が移動中には、利用者が意識的に自律移動体を避けなくては、自律移動体と衝突しまう可能性もある。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものである。その目的は、エレベーターを待つ利用者の行動を自律移動体が阻害してしまうことを抑制できる移動体制御システム、移動体制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る移動体制御システムは、乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御装置と、移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御部と、前記エレベーター制御装置による前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、前記待機可能領域内において、単位面積あたりの前記利用者の滞在人数が予め設定された基準密度以下である待機領域候補を特定する領域特定部と、を備え、前記移動体制御部は、前記領域特定部により特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる。
【0007】
あるいは、本開示に係る移動体制御システムは、乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御装置と、移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御部と、前記エレベーター制御装置による前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報と、前記利用者が通過した位置に関する情報とに基づいて、前記利用者の移動経路を推定し、推定した前記利用者の前記移動経路に基づいて、待機領域候補を特定する領域特定部と、を備え、前記移動体制御部は、前記領域特定部により特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる。
【0008】
本開示に係る移動体制御方法は、乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御ステップと、移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御ステップと、前記エレベーター制御ステップでの前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、前記待機可能領域内において、単位面積あたりの前記利用者の滞在人数が予め設定された基準密度以下である待機領域候補を特定する領域特定ステップと、を備え、前記移動体制御ステップは、前記領域特定ステップで特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる。
【0009】
あるいは、本開示に係る移動体制御方法は、乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御ステップと、移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御ステップと、前記エレベーター制御ステップでの前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報と、前記利用者が通過した位置に関する情報とに基づいて、前記利用者の移動経路を推定し、推定した前記利用者の前記移動経路に基づいて、待機領域候補を特定する領域特定ステップと、を備え、前記移動体制御ステップは、前記領域特定ステップで特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる。
【0010】
本開示に係るプログラムは、上記の移動体制御方法を移動体制御システムが有するコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る移動体制御システム、移動体制御方法及びプログラムによれば、エレベーターを待つ利用者の行動を自律移動体が阻害してしまうことを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る移動体制御システムの全体構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る移動体制御システムにおける自律移動体の待機場所の例を説明する図である。
【
図3】実施の形態1に係る移動体制御システムにおける自律移動体の待機場所の例を説明する図である。
【
図4】実施の形態1に係る移動体制御システムにおける自律移動体の待機場所の例を説明する図である。
【
図5】実施の形態1に係る移動体制御システムの動作の一例を示すフロー図である。
【
図6】実施の形態1に係る移動体制御システム、移動体制御方法及びプログラムの制御装置の機能を実現する構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示に係る移動体制御システム、移動体制御方法及びプログラムを実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。なお、本開示は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、又は各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0014】
実施の形態1.
図1から
図6を参照しながら、本開示の実施の形態1について説明する。
図1は移動体制御システムの全体構成を示す図である。
図2から
図4のそれぞれは移動体制御システムにおける自律移動体の待機場所の例を説明する図である。
図5は移動体制御システムの動作の一例を示すフロー図である。
図6は移動体制御システム、移動体制御方法及びプログラムの制御装置の機能を実現する構成の一例を示す図である。
【0015】
この実施の形態に係る移動体制御システムは、エレベーターの運転に関する情報を利用して、ロボット等の移動体の動作を制御するシステムである。この実施の形態に係る移動体制御システムは、
図1に示すように、エレベーター制御装置120と、行先予報システム130と、移動体制御サーバー200とを備えている。エレベーター制御装置120は行先予報システム130と、通信可能に接続されている。また、行先予報システム130は移動体制御サーバー200と、通信可能に接続されている。
【0016】
エレベーター制御装置120は、エレベーター110を制御する。エレベーター制御装置120が制御するエレベーター110は1台以上の乗りかごを有している。
【0017】
移動体制御サーバー200は、自律移動体300の動作を制御する。自律移動体300は、例えば移動ロボットであり、自律して移動可能である。自律移動体300の台数は1台に限られず、2台以上であってもよい。移動体制御サーバー200は、自律移動体300に制御信号を送信する。移動体制御サーバー200から送信された制御信号を受信した自律移動体300は、この受信した制御信号に従って動作する。自律移動体300は、移動体制御サーバー200による管制下で自律的に移動することができる。
【0018】
エレベーター110が設置された建物1には、乗りかごと同数の昇降路(図示せず)が設けられている。乗りかごは、昇降路内に昇降自在に配置されている。乗りかごには、乗客及び自律移動体300が乗降可能である。乗りかごは、昇降路内を昇降し、乗りかご内に搭乗している乗客及び自律移動体300の一方又は両方を、建物の複数の階床間にわたって運搬する。
【0019】
この実施の形態に係るエレベーター110は、行先階呼びを登録可能である。行先階呼びとは、行先階を指定して乗客が搭乗する出発階の乗場に乗りかごを呼び寄せる呼びである。利用者が行先階呼びを登録する方法としては、例えば以下が挙げられる。
【0020】
・行先階登録操作盤によるもの
・セキュリティゲートによるもの
・携帯端末の専用アプリケーションによるもの
【0021】
1つめの行先階登録操作盤によるものとは、利用者が行先階登録操作盤を操作することで行先階呼びを登録するものである。この場合、例えば建物1内のエレベーター110の乗場に通じる箇所には、図示しない行先階登録操作盤が設置されている。行先階登録操作盤には、例えばテンキー、タッチパネル等の操作部が備えられている。利用者は、行先階登録操作盤の操作部を操作することで、所望する行先階を入力できる。そして、エレベーター制御装置120は、行先階登録操作盤への入力に応じて行先階呼びを登録する。
【0022】
2つめのセキュリティゲートによるものとは、利用者がセキュリティゲートを通過することで行先階呼びを登録するものである。この場合、例えば建物1内のエレベーター110の乗場に通じる箇所には、図示しないセキュリティゲートが設置されている。セキュリティゲートを通過しようとする利用者は、当該ゲートを通過する権限を有するか否かが認証される。この認証においては、利用者の識別情報が用いられる。利用者の識別情報とは、当該利用者を一意に特定可能な情報である。利用者の識別情報として、例えば、個々の利用者によって予め設定された暗証番号、個々の利用者に予め割り振られた識別番号、識別用文字列等のデータ、当該利用者の虹彩、指紋、静脈パターン、顔情報等の生体情報等が挙げられる。例えば、当該システムにおいては、利用者の識別情報ごとに当該利用者の行先階が予め登録されている。これにより、セキュリティゲートでの認証成功時に、エレベーター制御装置120は、認証された利用者について登録されている行先階への行先階呼びを登録できる。
【0023】
3つめの携帯端末の専用アプリケーションによるものとは、利用者が携帯する携帯端末で実行される専用アプリケーションにより、行先階呼びを登録するものである。利用者が携帯する携帯端末には、例えば予め行先階呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされている。また、利用者が携帯する携帯端末は、例えば、建物1の構内無線通信ネットワーク、インターネット等を介して、エレベーター制御装置120と通信可能である。利用者は、携帯端末で行先階呼び登録用のアプリケーションソフトを実行して所望する行先階を入力できる。携帯端末は、行先階呼びの登録要求をエレベーター制御装置120へ送信する。そして、エレベーター制御装置120は、行先階呼びの登録要求に応じて行先階呼びを登録する。
【0024】
エレベーター制御装置120は、エレベーター110の乗りかごの運転を含むエレベーターの動作全般を制御する。ここで説明する構成例では、エレベーター制御装置120は、複数の乗りかごを一群として統括的に管理する群管理を行う。なお、エレベーター制御装置120は、群管理を行わなくともよい。また、乗りかごが1台の場合は群管理は行われない。
【0025】
エレベーター制御装置120は、登録された行先階呼びに対して割り当てる乗りかごを、複数の乗りかごのうちから決定する。行先階呼びに対して割り当てる乗りかごの決定は、例えば、次のようにして行われる。まず、エレベーター制御装置120は、各乗りかごの運行状態に基づいて、乗りかごのそれぞれについて割当評価値を算出する。この割当評価値は、例えば、呼びに応答する乗りかごが到着するまでの待ち時間、乗りかごの負荷、乗りかごに対して既に割り当てられている呼びの行先階等を用いて算出される。そして、エレベーター制御装置120は、算出した各乗りかごの割当評価値を比較して、割当評価値が最も大きい乗りかごを行先階呼びに対して割り当てる乗りかごに決定する。このようにして、エレベーター制御装置120は、行先階呼びに対して乗りかごを割り当てる。
【0026】
本開示においては、エレベーター制御装置120が行先階呼びに対して割り当てた乗りかごのことを「割当かご」ともいう。なお、前述したようにエレベーター制御装置120は群管理を行わなくともよい。群管理を行わない場合、エレベーター制御装置120は、例えば、同じ行先階への呼びが既に登録されている乗りかごがあれば、当該乗りかごを新たに登録された行先階呼びに対して割り当てる。また、同じ行先階への呼びが既に登録されている乗りかごがない場合、例えば、現在待機中の乗りかごのうち、行先階呼びの出発階に最も近いものを割当かごに決定する。
【0027】
エレベーター制御装置120は、複数の乗りかごのそれぞれの運転を制御する。エレベーター制御装置120は、行先階呼びに割り当てる乗りかごを決定すると、登録された行先階呼びに応答すべく、行先階呼びの出発階へと当該乗りかごを走行させる。行先階呼びの出発階へと当該乗りかごが到着したら、エレベーター制御装置120は、当該乗りかごを戸開させ、乗客が当該乗りかごに搭乗した後に戸閉させる。そして、エレベーター制御装置120は、当該乗りかごが割り当てられた行先階呼びが示す行先階へと当該乗りかごを走行させる。
【0028】
エレベーター制御装置120は、行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報を行先予報システム130へ送信する。行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報には、それぞれの行先階呼びの出発階及び行先階、それぞれの行先階呼びに割り当てられた乗りかごの号機情報、それぞれの乗りかご割り当てられた行先階呼びの行先階の情報が含まれている。
【0029】
行先予報システム130は、エレベーター110のそれぞれの乗りかごについて予定されている行先階を利用者に知らせるとともに、行先階呼びを登録した利用者のそれぞれに、自身が搭乗すべき乗りかごを知らせることで、利用者が適切な乗りかごに搭乗できるように誘導するものである。行先予報システム130は、エレベーター制御装置120から送信された、行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、行先階呼びを登録した利用者のそれぞれに、自身が搭乗すべき乗りかごを知らせる。
【0030】
乗りかごのそれぞれには、番号又はアルファベット等により何号機であるのかが予め定められている。この号機情報により乗りかごを特定可能である。行先予報システム130は、例えば、行先階登録操作盤、セキュリティゲート、携帯端末に設けられたディスプレイ等に、行先階呼びが割り当てられた乗りかごが何号機であるのかを表示することで、行先階呼びを登録した利用者のそれぞれに、自身が搭乗すべき乗りかごを知らせる。また、行先予報システム130は、エレベーター110の乗場等に設けられたディスプレイ等に、エレベーター110のそれぞれの乗りかごについて予定されている行先階を表示する。
【0031】
自律移動体300は、移動体制御部310及び地図記憶部320を備えている。地図記憶部320には、建物1内の地図が記憶されている。移動体制御部310は、移動体制御サーバー200から送信された制御信号に従い、地図記憶部320に記憶された建物1内の地図を参照し、自身の動作を制御する。
【0032】
この実施の形態に係る移動体制御サーバー200は、エレベーター110が設置された建物内を移動する自律移動体300の動作と、エレベーター110の動作とを連携させて制御することができる。自律移動体300がエレベーター110を利用して他の階床へ移動する場合、自律移動体300は、移動体制御サーバー200へエレベーター110の配車要求を送信する。自律移動体300からの配車要求を受信した移動体制御サーバー200は、自律移動体300からの配車要求に応じて、自律移動体300の乗車階への乗場呼び登録要求をエレベーター制御装置120に送信する。
【0033】
乗場呼び登録要求を受信したエレベーター制御装置120は、自律移動体300の乗車階への乗場呼びを登録する。そして、エレベーター制御装置120は、登録された乗場呼びに対する割当かごを決定する。このようにして、自律移動体300からの配車要求に応じて、乗車階への乗場呼びが登録され、乗りかごが配車される。エレベーター制御装置120は、自律移動体300からの配車要求に応じて登録された乗場呼びに対して割り当てる乗りかごを決定すると、割当かご情報を移動体制御サーバー200へと送信する。割当かご情報は、登録された乗場呼びに割り当てられた乗りかごを特定する情報である。
【0034】
割当かご情報を受信した移動体制御サーバー200は、この割当かご情報を配車要求のあった自律移動体300へと送信する。割当かご情報は、自律移動体300に対し搭乗すべき乗りかごを指定する情報である。割当かご情報を自律移動体300が受信すると、当該自律移動体300の移動体制御部310は、割当かご情報により指定された乗りかごが、自身が現在いる階床に到着するまで、当該自律移動体300を当該階床の乗場等で待機させる。ここで、地図記憶部320に記憶されている地図には待機可能領域が予め設定されている。待機可能領域は、自律移動体300が待機できる領域である。換言すれば、地図記憶部320には、自律移動体300が待機できる待機可能領域が予め記憶されている。移動体制御部310は、自律移動体300を待機可能領域内に移動させ、当該自律移動体300が搭乗すべき乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該自律移動体300を待機させる。
【0035】
自律移動体300は、領域特定部330をさらに備えている。領域特定部330は、待機可能領域内における待機領域候補を特定する。そして、移動体制御部310は、領域特定部330により特定された待機領域候補から選択された領域で自律移動体300を待機させる。待機可能領域は、一定の広さを有する領域であり、待機可能領域内において自律移動体300が待機できる位置・領域は多数存在する。領域特定部330は、そのような待機可能領域から待機領域候補を特定することで、実際に自律移動体300が待機する領域を絞り込む。そして、移動体制御部310は、このようにして絞り込まれた待機領域候補から実際に自律移動体300を待機させる領域を選択する。
【0036】
次に、領域特定部330による待機領域候補の特定の例について説明する。この実施の形態に係る移動体制御システムにおいては、行先予報システム130は、エレベーター制御装置120による行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報を、移動体制御サーバー200へ送信する。そして、移動体制御サーバー200は、自律移動体300からの配車要求に応じて割当かご情報を当該自律移動体300へ送信する際に、エレベーター制御装置120による行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報も併せて当該自律移動体300へ送信する。
【0037】
領域特定部330は、エレベーター制御装置120による行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、待機領域候補を特定する。より詳しくは、領域特定部330は、行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、待機可能領域内において、単位面積あたりの利用者の滞在人数が予め設定された基準密度以下である領域を、待機領域候補として特定する。
【0038】
すなわち、領域特定部330は、まず、行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、それぞれの乗りかごに割り当てられた行先階呼びの数を特定する。領域特定部330は、それぞれの乗りかごに割り当てられた行先階呼びの数から、当該階床において各乗りかごに搭乗する利用者の人数を特定できる。ここで、利用者は、乗場における、自身が搭乗する乗りかごの出入口に近い箇所で、当該乗りかごが到着するまで待機すると考えられる。このため、領域特定部330は、当該階床において各乗りかごに搭乗する利用者の人数から、乗場における利用者の位置分布を推定できる。そして、領域特定部330は、このようにして推定した利用者の位置分布から、単位面積あたりの利用者の滞在人数を算出する。続いて、領域特定部330は、算出した単位面積あたりの利用者の滞在人数を予め設定された基準密度と比較する。そして、待機可能領域のうちで、単位面積あたりの利用者の滞在人数が基準密度以下である領域を待機領域候補として特定する。
【0039】
この実施の形態に係る移動体制御システムによれば、エレベーター110の行先予報システム130と連携し、以上のようにして特定された待機領域候補から選択された領域で、自律移動体300を待機させることで、エレベーター110を待つ利用者の行動を自律移動体300が阻害してしまうことを抑制できる。このため、利用者(人間)は意識的に自律移動体300を避けることなく、自律移動体300と利用者の衝突の発生を抑制できる。
【0040】
領域特定部330により複数の待機領域候補が特定された場合、移動体制御部310は、例えば以下のようにして、自律移動体300を待機させる領域を選択してもよい。すなわち、移動体制御部310は、複数の待機領域候補のうちで、自律移動体300が搭乗すべき乗りかごの出入口からの距離が最も近い領域を選択して、自律移動体300を待機させる。このようにすることで、自律移動体300が乗りかごに搭乗する際にかかる移動時間を短くできる。あるいは、移動体制御部310は、複数の待機領域候補のうちで、単位面積あたりの利用者の滞在人数が最小の領域を選択して、自律移動体300を待機させる。このようにすれば、利用者の行動を自律移動体300が阻害してしまうことを、より抑制できる。
【0041】
次に、この実施の形態に係る移動体制御システムの変形例についていくつか説明する。領域特定部330は、エレベーター制御装置120による行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報に加えて、さらに、利用者が通過した位置に関する情報に基づいて、待機領域候補を特定してもよい。ここで、利用者が通過した位置に関する情報は、例えば、利用者が通過したセキュリティゲートに関する情報、及び、利用者が行先階呼びを登録した行先階登録操作盤に関する情報の一方又は両方を含んでもよい。
【0042】
利用者が通過した位置に関する情報は、例えば、行先予報システム130又はエレベーター制御装置120により取得される。すなわち、利用者がセキュリティゲートを通過する際に行先階呼びを登録した場合、行先予報システム130又はエレベーター制御装置120は、当該セキュリティゲートの位置を特定可能な情報を取得することで、利用者が通過した位置に関する情報を取得できる。また、利用者が行先階登録操作盤から行先階呼びを登録した場合、行先予報システム130又はエレベーター制御装置120は、当該行先階登録操作盤の位置を特定可能な情報を取得することで、利用者が通過した位置に関する情報を取得できる。
【0043】
この場合、まず、領域特定部330は、行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報と、利用者が通過した位置に関する情報とから、当該利用者の移動経路を推定する。利用者の移動経路は、当該利用者が通過した位置から、当該利用者が登録した行先階呼びに割り当てられた乗りかごの出入口近くまで移動までの経路として推定できる。
【0044】
そして、領域特定部330は、前述した単位面積あたりの利用者の滞在人数と、推定した利用者の移動経路とに基づいて、待機領域候補を特定する。すなわち、単位面積あたりの利用者の滞在人数が前述の基準密度以下であり、かつ、推定した利用者の移動経路と重ならない領域を待機領域候補として特定する。なお、単位面積あたりの利用者の滞在人数が前述の基準密度以下である領域のすべてが、推定した利用者の移動経路と重なってしまう場合、推定した利用者の移動経路と重なる範囲が一定以下の領域を待機領域候補として特定してもよい。このようにすることで、エレベーター110を待っている利用者だけでなく、移動中の利用者に対しても、自律移動体300が利用者の行動を阻害してしまうことを抑制できる。
【0045】
自律移動体300は、
図1に示すように、経路特定部340をさらに備えてもよい。経路特定部340は、自律移動体300の現在位置から、領域特定部330により特定された各待機領域候補までの経路候補を特定する。そして、移動体制御部310は、経路特定部340により特定された経路候補から選択された経路で、領域特定部330により特定された待機領域候補から選択された領域まで自律移動体300を移動させる。
【0046】
次に、経路特定部340による経路候補の特定の例について説明する。経路特定部340は、例えば、エレベーター制御装置120による行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、経路候補を特定する。より詳しくは、経路特定部340は、行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、自律移動体300の現在位置と、領域特定部330により特定された各待機領域候補との間の領域において、単位面積あたりの利用者の滞在人数が予め設定された基準密度以下である領域のみを通過する経路を、経路候補として特定する。なお、単位面積あたりの利用者の滞在人数の算出は前述したのと同様にして行うことができる。また、ここで経路候補の特定に用いる基準密度は、前述した待機領域候補の特定に用いる基準密度と同一の値であっても、異なる値であってもよい。
【0047】
また、経路特定部340による経路候補の特定の別例として、利用者が通過した位置に関する情報をさらに用いてもよい。この場合、経路特定部340は、前述と同様にして、行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報と、利用者が通過した位置に関する情報とから、当該利用者の移動経路を推定する。そして、経路特定部340は、推定した利用者の移動経路に基づいて経路候補を特定する。例えば、自律移動体300の現在位置から各待機領域候補までの経路のうちで、利用者の通過人数が予め設定された基準人数以下である経路を経路候補として特定する。利用者の通過人数が基準人数以下である経路とは、当該経路を横切る利用者の人数が基準人数以下であるということである。換言すれば、当該経路と推定した利用者の移動経路との交点の数が基準値以下である。
【0048】
移動体制御部310は、複数の待機領域候補と複数の経路候補とについて、総合的に判断して待機領域及び経路の組み合わせを選択してもよいし、まず、待機領域候補から待機領域を1つに絞ったうえで、当該待機領域までの経路候補から経路を選択してもよい。また、移動体制御部310は、複数の経路候補のうちで、最も待機領域までの移動距離が短かいものを選択してもよい。このようにすることで、自律移動体300が乗りかごに搭乗する際にかかる移動時間を短くできる。あるいは、移動体制御部310は、複数の経路候補のうちで、単位面積あたりの利用者の滞在人数がより少ない領域を通過するものを選択したり、利用者の通過人数が最も少ないものを選択したりしてもよい。
【0049】
自律移動体300は、
図1に示すように、報知装置350をさらに備えてもよい。報知装置350は、自律移動体300の周囲の利用者に各種の情報等を報知するものである。報知装置350として、例えば、文字、画像等を表示可能なディスプレイ、音声を鳴動可能なスピーカ、回転灯等が挙げられる。移動体制御部310は、自律移動体300が待機中において、報知装置350により当該自律移動体300が待機中である旨を周囲の利用者に報知させてもよい。この場合、報知装置350のディスプレイに待機中である旨の文字メッセージを表示させたり、報知装置350のスピーカにより待機中である旨の音声メッセージを鳴動させたりする。
【0050】
また、移動体制御部310は、自律移動体300が移動中において、報知装置350により当該自律移動体300が移動中である旨及び当該自律移動体300の目的地を周囲の利用者に報知させてもよい。特に、経路特定部340により特定された経路候補がない場合、自律移動体300は、滞在している利用者が比較的に多い領域、あるいは、利用者の移動経路との交差が比較的に多い経路を通過して、待機領域まで移動せざるを得ない。そこで、このような場合に移動中である旨及び目的地を報知しながら移動すると、なおよい。
【0051】
移動体制御部310は、自律移動体300を待機させる際、当該自律移動体300の正面側が当該自律移動体300が乗車すべき乗りかごの出入口に向くようにするとよい。このようにすることで、周囲の利用者は、乗りかごの到着時に自律移動体300が移動する方向を予測しやすくなる。また、乗りかごの到着時に自律移動体300の移動を開始するのに必要な時間も短くできる。
【0052】
また、移動体制御部310は、自律移動体300の待機箇所が壁面に隣接している場合、当該自律移動体300の背面側が当該壁面に向くようにして、当該自律移動体300を待機させてもよい。このようにすることでも、周囲の利用者は、乗りかごの到着時に自律移動体300が移動する方向を予測しやすくなる。また、乗りかごの到着時に自律移動体300の移動を開始するのに必要な時間を短くできる。
【0053】
次に、この実施の形態に係る移動体制御システムにおける、自律移動体300の待機場所の具体例について、
図2から
図4を参照しながら説明する。なお、これらの図に示すいずれの例においても、自律移動体300が搭乗するエレベーター110の乗りかごはA号機であるとする。
【0054】
まず、
図2に示すのは、袋小路(行き止まりになる箇所)にエレベーター110の乗場が設けられている場合の例である。この場合、エレベーター110の乗場における四方のうちの1方向が開放されて乗場への入口になっており、すなわち、エレベーター110の乗場の入口は1箇所である。利用者は、この入口を通って乗場に進入する。乗場入口から見て右側には、袋小路の奥側から順にA号機、B号機及びC号機の出入口が設けられている。また、乗場入口から見て左側には、袋小路の奥側からD号機、E号機及びF号機の出入口が設けられている。2人の利用者の一方はB号機に搭乗予定であり、他方はF号機に搭乗予定である。この例での2人の利用者の予測移動経路、及び、このような利用者の行動を阻害しない自律移動体300の待機場所(待機領域候補)は、
図2に示すようになる。すなわち、待機領域候補は、A号機、D号機、E号機のそれぞれの出入口の前にわたる領域になる。移動体制御部310は、待機領域候補のうちから、例えば、指定されたA号機の前の領域を選択して、自律移動体300を待機させる。
【0055】
次に、
図3に示すのは、通路にエレベーター110の乗場が設けられている場合の例である。この場合、エレベーター110の乗場における四方のうちで、対向する2方向が開放されて乗場への入口になっており、すなわち、エレベーター110の乗場の入口は2箇所である。乗場入口から見て左右の一側には、A号機、B号機及びC号機の出入口が設けられている。また、乗場入口から見て左右の他側には、D号機、E号機及びF号機の出入口が設けられている。2人の利用者の一方はB号機に搭乗予定であり、他方はF号機に搭乗予定である。2人の利用者のいずれもが、C号機及びF号機側の乗場入口から進入する。この例での2人の利用者の予測移動経路、及び、このような利用者の行動を阻害しない自律移動体300の待機場所(待機領域候補)は、
図3に示すようになる。すなわち、待機領域候補は、A号機、D号機、E号機のそれぞれの出入口の前から、A号機及びD号機側の乗場出入口にまでわたる領域になる。移動体制御部310は、待機領域候補のうちから、例えば、指定されたA号機の前の領域を選択して、自律移動体300を待機させる。
【0056】
図4に示すのは、壁際にエレベーター110の乗場が設けられている場合の例である。この場合、エレベーター110の乗場における四方のうちの3方向が開放されており、壁にA号機、B号機及びC号機の出入口が設けられている。2人の利用者の一方はB号機に搭乗予定であり、他方はC号機に搭乗予定である。2人の利用者のいずれもが、C号機側から乗場に進入する。この例での2人の利用者の予測移動経路、及び、このような利用者の行動を阻害しない自律移動体300の待機場所(待機領域候補)は、
図4に示すようになる。すなわち、待機領域候補は、A号機の出入口の前の領域になる。移動体制御部310は、待機領域候補であるA号機の前の領域で自律移動体300を待機させる。
【0057】
次に、この実施の形態に係る移動体制御システムの動作例について、
図5のフロー図を参照しながら説明する。まず、ステップS1において、自律移動体300の移動体制御部310は、当該自律移動体300が搭乗すべきエレベーター110の乗りかごが到着するまで待機する必要があるか否かを判定する。この判定は、行先予報システム130からの情報を用いて行うことができる。搭乗するエレベーター110の乗りかごが到着するまで待機する必要がある場合、移動体制御システムは次にステップS2の処理を行う。
【0058】
ステップS2においては、領域特定部330は待機領域候補を特定する。そして、移動体制御部310は、領域特定部330により特定された待機領域候補があるか否かを判定する。すなわち、人間(利用者)が少ない待機場所の候補があるか否かを判定する。領域特定部330により特定された待機領域候補がある場合、移動体制御システムは次にステップS3の処理を行う。
【0059】
ステップS3においては、経路特定部340は経路候補を特定する。そして、移動体制御部310は、経路特定部340により特定された経路候補があるか否かを判定する。すなわち、移動体制御部310は、待機場所までの経路に人間(利用者)が少ない空間があるか否かを判定する。経路特定部340により特定された経路候補がある場合、移動体制御システムは次にステップS4の処理を行う。
【0060】
ステップS4においては、移動体制御部310は、ステップS2で領域特定部330により特定された待機領域候補のうちから待機場所を決定し、ステップS3で経路特定部340により特定された経路候補のうちから経路を決定する。そして、移動体制御部310は、決定した待機場所まで、決定した経路で自律移動体300を移動させる。続くステップS5において、移動体制御部310は、指定された乗りかごが到着するまで自律移動体300を待機場所で待機させる。そして、指定された乗りかごが到着したら、ステップS6において、移動体制御部310は、乗りかごに自律移動体300を搭乗させる。
【0061】
一方、ステップS2で領域特定部330により特定された待機領域候補がない場合、又は、ステップS3で経路特定部340により特定された経路候補がない場合、移動体制御システムは次にステップS7の処理を行う。ステップS7においては、移動体制御部310は、自律移動体300をエレベーター110のバンクの入口、すなわち、エレベーター110の乗場の入口まで移動させる。続くステップS8において、移動体制御部310は、指定された乗りかごが到着するまで自律移動体300を乗場の入口で待機させる。そして、ステップS9において、移動体制御部310は、報知装置350により当該自律移動体300が移動する旨、及び、当該自律移動体300の目的地を報知させながら、自律移動体300を指定された乗りかごの出入口まで移動させる。ステップS9の後、移動体制御システムは次にステップS6の処理を行う。
【0062】
また、ステップS1で搭乗するエレベーター110の乗りかごが到着するまで待機する必要がない場合、移動体制御システムは次にステップS10の処理を行う。ステップS10においては、経路特定部340は、当該自律移動体300か搭乗する乗りかごの出入口までの経路候補を特定する。そして、移動体制御部310は、経路特定部340により特定された経路候補があるか否かを判定する。すなわち、移動体制御部310は、当該自律移動体300が搭乗する乗りかごの出入口までの経路に人間(利用者)が少ない空間があるか否かを判定する。
【0063】
経路特定部340により特定された経路候補がある場合、移動体制御部310は、経路特定部340により特定された経路候補のうちから経路を決定する。そして、ステップS6の処理により、移動体制御部310は、乗りかごの出入口まで、決定した経路で自律移動体300を移動させる。一方、経路特定部340により特定された経路候補がない場合は、ステップS9の処理により、移動体制御部310は、報知装置350により当該自律移動体300が移動する旨、及び、当該自律移動体300の目的地を報知させながら、自律移動体300を指定された乗りかごの出入口まで移動させる。
【0064】
なお、移動体制御部310、地図記憶部320、領域特定部330及び経路特定部340の一部又は全部を、自律移動体300でなく移動体制御サーバー200に備えるようにしてもよい。また、報知装置350を、自律移動体300でなく、あるいは、自律移動体300とともに、エレベーター110の乗場等に設けてもよい。
【0065】
図6は、この実施の形態における自律移動体300の移動体制御部310、地図記憶部320、領域特定部330及び経路特定部340の各部、並びに、エレベーター制御装置120、行先予報システム130及び移動体制御サーバー200のそれぞれ(以下、「自律移動体300の各部等のそれぞれ」という)の機能を実現する構成の一例を示す図である。自律移動体300の各部等のそれぞれの機能は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ11及びメモリ12を備えていてもよい。処理回路は、専用ハードウェア13であってもよい。処理回路の一部が専用ハードウェア13として形成され、かつ、当該処理回路はさらにプロセッサ11及びメモリ12を備えていてもよい。同図に示す例においては、処理回路の一部は専用ハードウェア13として形成されている。また、同図に示す例において、処理回路は、プロセッサ11及びメモリ12をさらに備えている。
【0066】
一部が少なくとも1つの専用ハードウェア13である処理回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路が少なくとも1つのプロセッサ11及び少なくとも1つのメモリ12を備える場合、自律移動体300の各部等のそれぞれの機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
【0067】
ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ12に格納される。プロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ12には、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM及びEEPROM等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、又は磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク及びDVD等が該当する。
【0068】
このようにして、自律移動体300の各部等のそれぞれの処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、自律移動体300の各部等のそれぞれの各機能を実現することができる。自律移動体300の各部等のそれぞれの処理回路が少なくともプロセッサ11及びメモリ12を備える場合、自律移動体300の各部等のそれぞれにおいてメモリ12に記憶されたプログラムをプロセッサ11が実行し、自律移動体300の各部等のそれぞれのハードウェアとソフトウェアとが協働することによって、自律移動体300の各部等のそれぞれが備える各部の機能が実現される。
【0069】
また、本開示に係る移動体制御方法は、乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して乗りかごを割り当てるエレベーター制御ステップと、自律移動体300の動作を制御し、当該自律移動体300が搭乗すべき乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該自律移動体300を待機させる移動体制御ステップと、エレベーター制御ステップでの行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、待機可能領域内において、単位面積あたりの利用者の滞在人数が予め設定された基準密度以下である待機領域候補を特定する領域特定ステップと、を備えている。そして、移動体制御ステップでは、領域特定ステップで特定された待機領域候補から選択された領域で自律移動体300を待機させる。
【0070】
あるいは、本開示に係る移動体制御方法は、乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して乗りかごを割り当てるエレベーター制御ステップと、自律移動体300の動作を制御し、当該自律移動体300が搭乗すべき乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該自律移動体300を待機させる移動体制御ステップと、エレベーター制御ステップでの行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報と、利用者が通過した位置に関する情報とに基づいて、利用者の移動経路を推定し、推定した利用者の移動経路に基づいて、待機領域候補を特定する領域特定ステップと、を備えている。そして、移動体制御ステップは、領域特定ステップにより特定された待機領域候補から選択された領域で自律移動体300を待機させる。
【0071】
そして、本開示に係るプログラムは、移動体制御システムが有するコンピュータに上記の移動体制御方法を実行させるためのものである。また、本開示に係る記録媒体は、このようなプログラムが記録された、コンピュータ読取可能なものである。
【0072】
なお、本開示においては、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態、各構成例、各変形例等を任意に組み合わせてもよい。以下に、本開示の諸態様の例を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御装置と、
移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御部と、
前記エレベーター制御装置による前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、前記待機可能領域内において、単位面積あたりの前記利用者の滞在人数が予め設定された基準密度以下である待機領域候補を特定する領域特定部と、を備え、
前記移動体制御部は、前記領域特定部により特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる移動体制御システム。
(付記2)
前記領域特定部は、前記エレベーター制御装置による前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報と、前記利用者が通過した位置に関する情報に基づいて、前記利用者の移動経路を推定し、推定した前記利用者の前記移動経路にさらに基づいて、前記待機領域候補を特定する付記1に記載の移動体制御システム。
(付記3)
乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御装置と、
移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御部と、
前記エレベーター制御装置による前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報と、前記利用者が通過した位置に関する情報とに基づいて、前記利用者の移動経路を推定し、推定した前記利用者の前記移動経路に基づいて、待機領域候補を特定する領域特定部と、を備え、
前記移動体制御部は、前記領域特定部により特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる移動体制御システム。
(付記4)
前記エレベーター制御装置による前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報と、前記利用者が通過した位置に関する情報とに基づいて、前記利用者の通過人数が予め設定された基準人数以下である、前記待機領域候補までの経路候補を特定する経路特定部をさら備え、
前記移動体制御部は、前記経路特定部により特定された前記経路候補から選択された経路で、前記領域特定部により特定された前記待機領域候補から選択された領域まで前記移動体を移動させる付記1から付記3のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
(付記5)
前記移動体制御部は、前記経路特定部により特定された前記経路候補がない場合、前記移動体に設けられた報知装置により、当該移動体が移動中である旨及び当該移動体の目的地を周囲の前記利用者に報知させながら、前記領域特定部により特定された前記待機領域候補から選択された領域まで当該移動体を移動させる付記4に記載の移動体制御システム。
(付記6)
前記利用者が通過した位置に関する情報は、前記利用者が通過したセキュリティゲートに関する情報及び前記利用者が前記行先階呼びを登録した操作盤に関する情報の一方又は両方を含む付記2から付記5のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
(付記7)
前記移動体制御部は、複数の前記待機領域候補のうちで、前記移動体が搭乗すべき前記乗りかごの出入口からの距離が最も近い領域を選択して、前記移動体を待機させる付記1から付記6のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
(付記8)
前記移動体制御部は、前記移動体の正面側が当該移動体が乗車すべき前記乗りかごの出入口に向くようにして、当該移動体を待機させる付記1から付記7のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
(付記9)
前記移動体制御部は、前記移動体の待機箇所が壁面に隣接している場合、当該移動体の背面側が当該壁面に向くようにして、当該移動体を待機させる付記1から付記7のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
(付記10)
前記移動体制御部は、前記移動体に設けられた報知装置により、当該移動体が待機中である旨を周囲の前記利用者に報知させる付記1から付記9のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
(付記11)
乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御ステップと、
移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御ステップと、
前記エレベーター制御ステップでの前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、前記待機可能領域内において、単位面積あたりの前記利用者の滞在人数が予め設定された基準密度以下である待機領域候補を特定する領域特定ステップと、を備え、
前記移動体制御ステップは、前記領域特定ステップで特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる移動体制御方法。
(付記12)
乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して前記乗りかごを割り当てるエレベーター制御ステップと、
移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき前記乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御ステップと、
前記エレベーター制御ステップでの前記行先階呼びへの前記乗りかごの割り当て状況に関する情報と、前記利用者が通過した位置に関する情報とに基づいて、前記利用者の移動経路を推定し、推定した前記利用者の前記移動経路に基づいて、待機領域候補を特定する領域特定ステップと、を備え、
前記移動体制御ステップは、前記領域特定ステップで特定された前記待機領域候補から選択された領域で前記移動体を待機させる移動体制御方法。
(付記13)
移動体制御システムが有するコンピュータに付記11又は付記12に記載の移動体制御方法を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0073】
1 建物
11 プロセッサ
12 メモリ
13 専用ハードウェア
110 エレベーター
120 エレベーター制御装置
130 行先予報システム
200 移動体制御サーバー
300 自律移動体
310 移動体制御部
320 地図記憶部
330 領域特定部
340 経路特定部
350 報知装置
【要約】
【課題】自律移動体によるエレベーターを待つユーザの行動の阻害を抑制できる移動体制御システムを提供する。
【解決手段】移動体制御システムは、乗りかごの運転を制御し、利用者により登録された行先階呼びに対して乗りかごを割り当てるエレベーター制御装置と、移動体の動作を制御し、当該移動体が搭乗すべき乗りかごが到着するまで、待機可能領域内で当該移動体を待機させる移動体制御部と、エレベーター制御装置による行先階呼びへの乗りかごの割り当て状況に関する情報に基づいて、待機可能領域内において、単位面積あたりの利用者の滞在人数が予め設定された基準密度以下である待機領域候補を特定する領域特定部と、を備える。移動体制御部は、領域特定部により特定された待機領域候補から選択された領域で移動体を待機させる。
【選択図】
図1