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7643645セルロース分散用樹脂組成物、繊維材料、及び成形材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】セルロース分散用樹脂組成物、繊維材料、及び成形材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/02 20060101AFI20250304BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20250304BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20250304BHJP
   C08F 220/68 20060101ALI20250304BHJP
   C08F 222/02 20060101ALI20250304BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20250304BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20250304BHJP
   C08L 35/00 20060101ALI20250304BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
C08L1/02
C08F220/10
C08F220/56 ZNM
C08F220/68
C08F222/02
C08L33/06
C08L33/26
C08L35/00
C08L101/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024531103
(86)(22)【出願日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2023039568
(87)【国際公開番号】W WO2024122232
(87)【国際公開日】2024-06-13
【審査請求日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2022194771
(32)【優先日】2022-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】植村 幸司
(72)【発明者】
【氏名】梶川 正浩
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 啓信
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-189758(JP,A)
【文献】特開2014-162880(JP,A)
【文献】米国特許第05278222(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/02
C08F 220/10
C08F 220/56
C08F 220/68
C08F 222/02
C08L 33/06
C08L 33/26
C08L 35/00
C08L 101/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数が4~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)と、不飽和二塩基酸及びケト基を有する不飽和単量体からなる群より選ばれる1以上の不飽和単量体(a2)と、(メタ)アクリルアミド(a3)とを必須原料とするアクリル樹脂(A)を含有するセルロース分散用樹脂組成物であって、前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体成分中の前記アルキル(メタ)アクリレート(a1)が20~50質量%であり、前記不飽和単量体(a2)が10~50質量%であり、前記(メタ)アクリルアミド(a3)が30~70質量%であることを特徴とするセルロース分散用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載のセルロース分散用樹脂組成物、及びセルロース繊維を含有することを特徴とする繊維材料。
【請求項3】
請求項2記載の繊維材料及び熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする成形材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース分散用樹脂組成物、繊維材料、及び成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースナノファイバーは植物由来の天然原料ナノフィラーであり、バイオマス繊維として、繊維強化複合材料への利用が注目されている。このようなセルロースナノファイバーを利用した複合材料としては、マトリックス材料中にセルロース繊維を含有する繊維強化複合材料であって、セルロース繊維の表面が、水系における重合性成分のグラフト重合により、グラフト修飾されている繊維強化複合材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、この複合材料は、グラフト成分の極性が高いため、ポリオレフィン等の低極性マトリックス材料を用いた場合、マトリックス材料中のセルロース繊維の分散が不十分となり、成形品の機械特性が十分に発現しないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-67817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、セルロース繊維を含有し、かつ、優れた機械的強度を有する成形品を得ることのできるセルロース分散用樹脂組成物、繊維材料、及び成形材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、炭素原子数が4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、不飽和二塩基酸及びケト基を有する不飽和単量体からなる群より選ばれる1以上の不飽和単量体と、(メタ)アクリルアミドとを必須原料とする特定のアクリル樹脂を含有するセルロース分散用樹脂組成物が、セルロース分散性に優れ、バイオマス度が高く、機械的強度に優れた成形品を得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、炭素原子数が4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)と、不飽和二塩基酸及びケト基を有する不飽和単量体からなる群より選ばれる1以上の不飽和単量体(a2)と、(メタ)アクリルアミド(a3)とを必須原料とするアクリル樹脂(A)を含有するセルロース分散用樹脂組成物であって、前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体成分中の前記アルキル(メタ)アクリレート(a1)が20~50質量%であり、前記不飽和単量体(a2)が10~50質量%であり、前記(メタ)アクリルアミド(a3)が30~70質量%であることを特徴とするセルロース分散用樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のセルロース分散用樹脂組成物は、セルロースの分散性に優れることから、ポリエチレン等のマトリックス樹脂とセルロース繊維とからなる成形品の機械的強度を効果的に補強することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のセルロース分散用樹脂組成物は、炭素原子数が4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)と、不飽和二塩基酸及びケト基を有する不飽和単量体からなる群より選ばれる1以上の不飽和単量体(a2)と、(メタ)アクリルアミド(a3)とを必須原料とするアクリル樹脂(A)を含有するセルロース分散用樹脂組成物であって、前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体成分中の前記アルキル(メタ)アクリレート(a1)が20~50質量%であり、前記不飽和単量体(a2)が10~50質量%であり、前記(メタ)アクリルアミド(a3)が30~70質量%であるものである。
【0010】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」の表記は、「アクリレート」及び「メタアクリレート」のいずれか一方または両方を表すものであり、「(メタ)アクリルアミド」の表記は、「アクリルアミド」及び「メタアクリルアミド」のいずれか一方または両方を表すものであり、「(メタ)アクリル酸」の表記は、「アクリル酸」及び「メタアクリル酸」のいずれか一方または両方を表すものである。また、本発明におけるアルキル基は、シクロアルキル基を含むものとする。
【0011】
前記アルキル(メタ)アクリレート(a1)は、前記炭素原子数が4以上のアルキル基を有するものであるが、これを使用することにより、低極性のマトリックス材料に対しても、セルロース分散性が優れたものになる。アルキル(メタ)アクリレート(a1)としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらの中でも、セルロース分散性に優れ、成形品の機械的強度がより向上することから、炭素原子数が4~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらのアルキル(メタ)アクリレート(a1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0012】
前記不飽和単量体(a2)は、不飽和二塩基酸及びケト基を有する不飽和単量体からなる群より選ばれる1以上の単量体であるが、これを使用することにより、セルロースと反応することができる。前記不飽和二塩基酸としては、例えば、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸等が挙げられる。なお、これらの不飽和二塩基酸は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0013】
前記ケト基を有する不飽和単量体としては、例えば、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドが挙げられる。なお、ケト基を有する不飽和単量体は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0014】
前記(メタ)アクリルアミド(a3)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0015】
また、前記アクリル樹脂(A)の原料としては、前記アルキル(メタ)アクリレート(a1)、前記不飽和単量体(a2)、及び前記(メタ)アクリルアミド(a3)の他に、必要に応じてその他の単量体(a4)を使用することができる。
【0016】
前記その他の単量体(a4)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、γ―メタクリロキシプロピルトリメトシキシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシジル(メタ)アクリレート、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ドデシルアクリルアミド、N-プロポキシメチルアクリルアミド、6-(メタ)アクリルアミドヘキサン酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-[2,2-ジメチル-3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド等の官能基を有する(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸-1,4-ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸-1,6-ヘキサンジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。なお、これらのその他の単量体(a4)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0017】
前記アルキル(メタ)アクリレート(a1)の使用量は、前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体成分中、20~50質量%であるが、セルロース分散性及び得られる成形品の機械的強度がより向上することから、25~40質量%が好ましい。
【0018】
前記不飽和単量体(a2)の使用量は、前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体成分中、10~50質量%であるが、セルロース分散性及び得られる成形品の機械的強度がより向上することから、10~40質量%が好ましい。
【0019】
前記(メタ)アクリルアミド(a3)の使用量は、前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体成分中、30~70質量%であるが、セルロース分散性及び得られる成形品の機械的強度がより向上することから、35~60質量%が好ましい。
【0020】
また、前記アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、セルロース分散性及び得られる成形品の機械的強度がより向上することから、10,000~100,000が好ましい。ここで、重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
【0021】
前記アクリル樹脂(A)は、例えば、前記アルキル(メタ)アクリレート(a1)、前記不飽和単量体(a2)、及び前記(メタ)アクリルアミド(a3)、必要に応じてその他の単量体(a4)を、有機溶剤及び/又は水中で、重合開始剤存在下、60~140℃の温度でラジカル重合することによって製造することができる。
【0022】
前記有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレンのような芳香族溶剤;シクロへキサノンのような脂環族溶剤;酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル溶剤;エタノール、イソブタノール、ノルマルブタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール溶剤、ソルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤などを使用することができる。これらの溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0023】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物などが挙げられる。これらの重合体開始剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、前記重合開始剤は、前記アクリル樹脂(A)の原料となる単量体の合計に対して、0.1~10質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0024】
本発明のセルロース分散用樹脂組成物は、前記アクリル樹脂(A)を含有するものであるが、必要に応じて、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、バイオポリエチレン等のポリエチレン系樹脂(PE)、ポリプロピレン系樹脂(PP)、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂等のオレフィン系樹脂や、ナイロン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂、トリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロース等のセルロース系樹脂等、ポリアミド系樹脂としてはポリアミド6(PA6、ε-カプロラクタムの開環重合体)、ポリアミド66(PA66、ポリヘキサメチレンアジポアミド)、ポリアミド11(PA11、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド)、ポリアミド12(PA12、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド)等の熱可塑性樹脂、相溶化剤、界面活性剤、でんぷん類、アルギン酸等の多糖類、ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質、タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物、着色剤、可塑剤、香料、顔料、流動調整剤、レベリング剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、消臭剤等の添加剤を併用することができる。
【0025】
本発明の繊維材料は、前記セルロース分散用樹脂組成物及びセルロース繊維を含有するものであるが、前記セルロース繊維が前記セルロース分散用樹脂組成物により表面処理されることにより、マトリックス樹脂中におけるセルロース繊維の分散性が優れたものとなる。
【0026】
前記セルロース繊維は、得られる成形品の機械的強度がより向上することから、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」と略記することがある。)であることが好ましい。
【0027】
前記繊維材料は、例えば、CNFの存在下、前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体を上記したラジカル重合することにより容易に得られる。
【0028】
前記繊維材料は、例えば、ドラムドライヤー、ディスクドライヤー、コニカルドライヤー、スプレードライヤー、薄膜蒸留等で乾燥後、ヘンシェルミキサー等で微粒子に粉砕し、成形材料に供することができる。
【0029】
本発明の成形材料は、前記繊維材料、及び熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として含有するものであるが、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらの中でも、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましい。
【0030】
本発明の成形材料は、前記繊維材料、及び熱可塑性樹脂を公知の混練方法により混錬することにより得られる。
【0031】
本発明の成形材料は、機械的強度に優れる成形品が得られることから、各種成形品の製造に利用できる。
【実施例
【0032】
以下、本発明を実施例及び比較例によって、より具体的に説明する。
【0033】
(実施例1)
攪拌機、温度計および冷却器、窒素ブローを取り付けた2.0Lの反応容器中に、CNF水分散体(スギノマシン製「Binfi-S FMa-10010」、固形分10.0質量%)700.0質量部、イソプロピルアルコール700.0質量部を仕込み70℃まで加熱したのち、これにアクリルアミド38.0質量部、ラウリルメタクリレート21.0質量部、マレイン酸11.0質量部、イソプロピルアルコール70.0質量部、過硫酸アンモニウム0.5質量部、イオン交換水70.0質量部の混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了してから3時間経過後、冷却を行った。得られた繊維材料(1)の不揮発分は8.5質量%、25℃における粘度は265mPa・sであった。
【0034】
(実施例2)
攪拌機、温度計および冷却器、窒素ブローを取り付けた2.0Lの反応容器中に、CNF水分散体(スギノマシン製「Binfi-S FMa-10010」、固形分10.0重量%)700.0質量部、イソプロピルアルコール700.0質量部を仕込み70℃まで加熱したのち、これにアクリルアミド28.0質量部、ラウリルメタクリレート21.0質量部、ダイアセトンアクリルアミド21.0質量部、イソプロピルアルコール70.0質量部、過硫酸アンモニウム0.5質量部、イオン交換水70.0質量部の混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了してから3時間経過後、冷却を行った。得られた繊維材料(2)の不揮発分は8.7質量%、25℃における粘度は247mPa・sであった。
【0035】
(実施例3)
攪拌機、温度計および冷却器、窒素ブローを取り付けた2.0Lの反応容器中に、CNF水分散体(スギノマシン製「Binfi-S FMa-10010」、固形分10.0重量%)700.0質量部、イソプロピルアルコール700.0質量部を仕込み70℃まで加熱したのち、これにアクリルアミド28.0質量部、ブチルアクリレート21.0質量部、ダイアセトンアクリルアミド21.0質量部、イソプロピルアルコール70.0質量部、過硫酸アンモニウム0.5質量部、イオン交換水70.0質量部の混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了してから3時間経過後、冷却を行った。得られた繊維材料(3)の不揮発分は8.5質量%、25℃における粘度は196mPa・sであった。
【0036】
(比較例1)
攪拌機、温度計および冷却器、窒素ブローを取り付けた2.0Lの反応容器中に、CNF水分散体(スギノマシン製「Binfi-S FMa-10010」、固形分10.0重量%)700.0質量部、イオン交換水840.0質量部を仕込み、これに硝酸二アンモニウムセリウム(IV)2.1質量部と、メチルメタクリレート70質量部を加え、30℃の温度下で、4時間反応させた。得られた繊維材料(R1)の不揮発分は8.6質量%、25℃における粘度は231mPa・sであった。
【0037】
(比較例2)
繊維材料(R2)として、CNF水分散体(スギノマシン製「Binfi-S FMa-10010」、固形分10.0質量%)を使用した。
【0038】
[成形材料及び成形品の製造]
上記で得られた繊維材料をディスクドライヤーにて乾燥し、ドライアップ品と、マトリクス樹脂であるポリエチレン粉体(Braskem社製「SHC7260」)とをCNF含有量が5質量%となるように混合した。得られた混合物を、混練装置である小型混練装置(レオ・ラボ株式会社製「DSM Xplore1 15」)にて140℃、200rpmの条件で、10分間溶融混練して成形材料を製造した。得られた成形材料を、小型射出成形機(レオ・ラボ株式会社製)を用いて、金型温度50℃、シリンダ温度150℃の条件で、射出成形を行い、成形品である引張り試験用試験片(長さ74mm、幅5mm、厚み2mm)を製造した。
【0039】
[成形品の機械的強度の評価]
得られた引張り試験用試験片を、引張試験機(株式会社島津製作所製「AUTOGRAPH AGS-X」)を用い、引張速度:50mm/min、チャック間距離:50mm、温度:23℃、湿度:50%の条件で引張強度、引張弾性率を測定した。
【0040】
実施例1~3及び比較例1~2で使用したアクリル樹脂(A)の単量体組成、及び評価結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例1~3の本発明のセルロース分散用樹脂組成物を用いて得られた成形品は、機械的強度に優れることが確認された。
【0043】
一方、比較例1は、アクリル樹脂の原料として、メチルメタクリレートを用いた例であるが、成形品の引張弾性率が不十分であることが確認された。
【0044】
比較例2は、アクリル樹脂で処理されていないCNFを用いた例であるが、成形品の引張弾性率が不十分であることが確認された。