(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】網の製造方法
(51)【国際特許分類】
A01K 75/00 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
A01K75/00 F
(21)【出願番号】P 2021041565
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2020045796
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591018877
【氏名又は名称】日東製網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐介
(72)【発明者】
【氏名】大屋 克之
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-106390(JP,U)
【文献】特開昭63-309294(JP,A)
【文献】特開昭63-303158(JP,A)
【文献】特開平01-207453(JP,A)
【文献】特開昭63-028959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 75/00
D04C 1/06
D04C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に山部及び谷部を有する一方の網地と、端部に山部及び谷部を有する他方の網地とを連結する網の製造方法であって、
前記一方の網地の山部と前記他方の網地の谷部、前記一方の網地の谷部と前記他方の網地の山部をそれぞれ対応させ、前記一方の網地と前記他方の網地の対応させた部分をミシン機によって縫製する
縫製工程と、
前記一方の網地の山部と前記他方の網地の谷部の中間又は前記一方の網地の谷部と前記他方の網地の山部の中間かつ所定の間隔で、縫製によって多重巻部を形成する多重巻部形成工程と、を含む、
ことを特徴とする網の製造方法。
【請求項2】
前記縫製工程
及び前記多重巻部形成工程は、網送りローラーを有し、前記一方の網地及び前記他方の網地を載置する基台の上で行い、
前記縫製工程
及び前記多重巻部形成工程において、少なくとも、前記ミシン機のミシン針の動作、前記ミシン機の動作、前記網送りローラーの動作、前記基台の動作の何れかを調整することで、前記対応させた部分を左右交互に縫製する、
ことを特徴とする請求項1に記載の網の製造方法。
【請求項3】
多重巻部
は2針から6針で縫製されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の網の製造方法。
【請求項4】
前記ミシン機で使用する縫い糸が、前記一方の網地及び前記他方の網地の太さの0.1倍から2倍である、
ことを特徴とする
請求項1から請求項3
の何れか一項に記載の網の製造方法。
【請求項5】
前記一方の網地及び前記他方の網地が、無結節網である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の網の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、網は、土砂の落下を防止するための落石防止用ネットや、漁業用の網(以下、漁網とも記す。)など、様々な用途で使用されている(特許文献1及び特許文献2)。
例えば、漁網は、過酷な環境下で長時間使用されるため、強固なものが望まれている。また、漁網には漁網同士の結合(連結)や離脱が求められることもあり、漁網には、高い機能性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-162913号公報
【文献】特開2008-22786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、網の作製は、網地の端部同士を手作業で連結させて、所望の網を作製していた。そのため、1つの網を作製するために長い時間を要していた。また、縫い合わせの技術の熟練度合いで、網の強度が変わってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、短時間で作製することができ、一定の強度を有する網を製造できる網の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る網の製造方法は、端部に山部及び谷部を有する一方の網地と、端部に山部及び谷部を有する他方の網地とを連結するものであって、一方の網地の山部と他方の網地の谷部、一方の網地の谷部と他方の網地の山部をそれぞれ対応させ、一方の網地と他方の網地の対応させた部分をミシン機によって縫製することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る網の製造方法は、縫製工程は、網送りローラーを有し、一方の網地及び他方の網地を載置する基台の上で行い、縫製工程において、少なくとも、ミシン機のミシン針の動作、ミシン機の動作、網送りローラーの動作、基台の動作の何れかを調整することで、重ね合わせ部分を左右交互に縫製することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る網の製造方法は、多重巻部を所定の間隔で形成することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る網の製造方法は、一方の網地と他方の網地の対応させた部分を縫製した後に、多重巻部を複数形成することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る網の製造方法は、ミシン機で使用する縫い糸が、一方の網地及び他方の網地の太さの0.1倍から2倍であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る網の製造方法は、一方の網地及び前記他方の網地が無結節網であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る網の製造方法は、ミシンで縫製するため、手縫いで網を作製する場合と比較し、短時間で、効率よく、作製することができる。さらに、本発明に係る網の製造方法は、ミシン操作を習得すれば、比較的容易に操作を行えるため、熟練した技術を有していない者でも網を作製することができ、一定の強度の網を作製することができる。
【0013】
本発明に係る網の製造方法は、少なくとも、ミシン機のミシン針の動作、ミシン機の動作、網送りローラーの動作、基台の動作の何れかを調整することで、一方の網地と他方の網地の対応部分を左右交互に縫製することができる。
【0014】
本発明に係る網の製造方法は、多重巻部を形成するため、ミシン糸が解れることを防止できる。さらに、多重巻部を所定間隔で複数形成することで、網の強度が大きくなるため、一方の網地や他方の網地に大きな力が加わった場合でも、両者が破網することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る網の製造方法に使用する網地を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る網の製造方法を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る網の製造方法における縫製を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る網の製造方法における多重巻部の形成位置を説明するための図である。(a)は、山部の頂部と谷部の底部に多重巻部を形成した例であり、(b)は山部の頂部と谷部の底部との中間に多重巻部を形成した例である。
【
図5】本発明の実施形態に係る網の製造方法において、一方の網地と他方の網地の対応部分を左右交互に縫製する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態に係る網の製造方法を、
図1から
図5を参照し説明する。なお、本実施形態では、
図1を基準に、網地の端部の山部及び谷部が形成されている方向を前後方向X、前後方向Xに直交する方向を左右方向Yとする。
【0017】
本実施形態では、
図1に示すように、第一網地1(一方の網地)と、第二網地2(他方の網地)を連結する網の製造方法について説明する。
【0018】
第一網地1の端部には、山部1Aと谷部1Bとが交互に連続して形成されている。第二網地2の端部には、山部2Aと、谷部2Bが交互に連続して形成されている。第一網地1と第二網地2の網目サイズ(目合い)及び形状とほぼ同一である。
第一網地1及び第二網地2には、例えば、線径(太さ)が1mmから13mmのナイロン、ポリエステル、ポリエチレンが使用される。
なお、この第一網地1及び第二網地2には、無結節網を使用することができる。
【0019】
次に、本実施形態における具体的な網の作製工程について説明する。
【0020】
まず、第一網地1と第二網地2を、
図2に示すように、第一網地1の山部1Aと第二網地2の谷部2B、第一網地1の谷部1Bと第二網地2の山部2Aが互いに向き合うように、配置する。
なお、互いに向き合うように配置させる以外にも、山部1Aと谷部2B、谷部1Bと山部2Aが重ね合わさるように、第一網地1と第二網地2を配置してもよい。
【0021】
次に、
図5に示すように、第一網地1と第二網地2の対応させた部分(以下、「対応部分」とも記す。)を、ミシン機13を使用して、縫製することにより、第一網地1と第二網地2を連結する。このミシン機13を使用して縫製する工程は、網送りローラー11を有する基台12の上で行う。
ミシン機13は、業務用のものを使用し、ミシン糸(縫い糸)には、例えば、ナイロン、ポリエステルを使用される。ミシン糸が細すぎると引っ張り力やスレで切れやすくなり、糸が太すぎると網同士をつなぎ合わせると嵩が増しすぎて扱いが難しくなるため、ミシン糸の太さが、例えば網地2の太さの0.1倍から2倍のものを使用する。このミシン糸は、網の太さや用途に応じて、適切な太さが選択される。また、ミシン機13の縫製の速度は、1倍から5倍とする。ミシン機13による縫製は、
図3に示すように、前後方向Xに向けて、網目に沿って行い、第一網地1と第二網地2を連結させて、網10を作製する。
【0022】
本実施形態に係る網の製造方法では、第一網地1と第二網地2は、網目に沿って縫製されるため、縫製部は、ジグザグ状に形成される。この縫製では、複数の多重巻部3を所定の間隔で形成させるように行う。多重巻部3とは、通常のミシン機で縫製される部分よりも、糸の巻き数が多い部分、すなわち、他の縫製部分よりもミシン針を入れる回数が多い部分を意味する。本実施形態では、2針から6針で縫製した部分を多重巻部3とする。この多重巻部3は、一度の縫製で形成しても、一旦ミシン機13で縫製した後に再度、多重巻部3のみを形成してもよい。
【0023】
多重巻部3は、隣合う多重巻部3同士の間隔が同じに形成され、
図3では、山部1Aの頂部と谷部2Bの底部、谷部1Bの底部と山部2Aの頂部の全てに形成されている。
他の例として、多重巻部3は、
図4(a)に示すように、山部1Aの頂部と谷部2Bの底部に1つ形成し、前後方向Xに対し、1.5ピッチずれた位置の谷部1Bの底部と山部2Aの頂部に1つ形成し、さらに前後方向Xに対し、1.5ピッチずれた位置の山部1Aの頂部と谷部2Bの底部に1つ形成し、この繰り返しで、複数の多重巻部3を形成することもできる。また、多重巻部3は、
図4(b)に示すように、山部1A(2A)の頂部と谷部2B(1B)の底部の中間に形成することもできる。この場合も、多重巻部3は、一定の規則性に従って形成する。
この多重巻部3は、一定の規則性に従って形成されていればよく、例えば、
図4(a)と
図4(b)で示した多重巻部3を組合せて形成することもできる。
【0024】
多重巻部3は、
図5に示すように、第一網地1及び第二網地2の進行方向Zに対して、左右交互に形成される。第一網地1と第二網地2の対応部分に、多重巻部3を左右交互に形成するために、少なくとも、ミシン機13のミシンの針の動作、ミシン機(ミシン機本体)13の動作、網送りローラー11の動作、基台12の動作の何れかを調整することで、縫製する。これらの可動範囲(動作距離)は、1mmから40mmの範囲で変更することができる。
【0025】
次に、本実施形態に係る網の製造方法の作用効果について説明する。
【0026】
本実施形態に係る網の製造方法は、第一網地1の端部と第二網地2の端部をミシン機13で縫製する。そのため、手作業で網を作製する場合と比較し、短時間で、効率よく、所望の網を作製することができる。
また、本実施形態に係る網の製造方法は、ミシン操作を習得すれば、比較的容易に操作を行えるため、熟練した技術を有していない者でも容易に所望の網を作製することができ、一定の強度の網10を作製することができる。
【0027】
多重巻部3は、
図5に示すように、進行方向Zに対して、左右交互に形成される。第一網地1と第二網地2の対応部分に、多重巻部3を左右交互に形成するために、ミシン機13のミシンの針の動作、ミシン機13の動作、網送りローラー11の動作、基台12の動作の何れかを調整することで、縫製して連結させる。本実施形態に係る網の製造方法では、ミシンの針の動作、ミシン機13の動作、網送りローラー11の動作、基台12の動作の何れかを調整できるため、例えば、ミシン機(ミシン針)が固定され左右に可動できない場合、網送りローラー11の動作または基台12の動作によって、多重巻部3を左右交互に縫製できる。
このように本実施形態に係る網の製造方法は、多様な方法で、多重巻部3を形成することができる。
【0028】
本実施形態に係る網の製造方法は、ミシンの針の動作、ミシン機10の動作、網送りローラー11の動作、基台12の動作の可動範囲を1mmから40mmの範囲で変更できる。そのため、第一網地1と第二網地の目の大きさに関わらず、多重巻部3を所望の位置に形成することができる。
また、ミシン糸の太さを、第一網地1及び第二網地2の太さの0.1倍から2倍のものを使用することで、引っ張り力やスレで切れやすくなることやミシン糸の嵩が増し扱いにくくなることを防止できる。
【0029】
本実施形態に係る網の製造方法は、前後方向Xに沿って、多重巻部3を複数形成する。前後方向Xにジグザグ状に縫われているミシン糸が解れた場合、ミシン糸の解れを多重巻部3によって、断ち切ることができる。したがって、多重巻部3を複数形成することで、網の破網を抑止することができる。
【0030】
本実施形態に係る網の製造方法における多重巻部3は、上述した通り、他の縫製部分よりもミシン針を入れる回数が多いため、多重巻部3が形成された部分は、強固に連結される。そして、この多重巻部3を所定の間隔で形成することで、網10を、左右方向Yからの大きな引張力が加わった場合でも、第一網地1と第二網地2が破網することを防止できる。この多重巻部3を形成する数が多ければ多いほど、引張力に対する耐性は大きなる。
このように、本実施形態に係る網の製造方法で作製した網10は、強度が大きいため、例えば、過酷な環境下で長時間使用される漁網として、好適である。
【0031】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。本実施形態では、2つの網地を連結する場合について、説明したが、3つ以上の網地を連結することもでき、所望のサイズの強固な網10を作製することができる。
また、多重巻部3は、本実施形態で示した例以外にも、網目のサイズ(目合い)、求められる強度によって、形成する位置や個数を適宜決定することができる。
本実施形態では、ミシン機13のミシンの針の動作、ミシン機13の動作、網送りローラー11の動作、基台12の動作の何れかを調整することを説明したが、これらの中から複数の動作を選択し、多重巻部3を形成することもできる。これらの複数の動作を調整することで、1つの動作を調整した場合と比較し、より多様な位置に多重巻部3を形成することができる。
【0032】
本実施形態では、結節を多重巻する例について説明したが、結節と結節の間の網脚も多重巻することもできる。この場合、例えば、結節4針-網脚2針-結節4針として、縫製する。また、多重巻部3は、左右交互に縫製されていなくてもよく、例えば、多重巻部3が一列となるように縫製することもできる。
【符号の説明】
【0033】
1 第一網地(一方の網地)
1A 山部
1B 谷部
2 第二網地(他方の網地)
2A 山部
2B 谷部
3 多重巻部
10 網
11 網送りローラー
12 基台
13 ミシン機(ミシン機本体)
X 前後方向
Y 左右方向
Z 進行方向