IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 出口織ネームの特許一覧

特許7643713織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法
<>
  • 特許-織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法 図1
  • 特許-織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法 図2
  • 特許-織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法 図3
  • 特許-織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法 図4
  • 特許-織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法 図5
  • 特許-織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法 図6
  • 特許-織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法 図7
  • 特許-織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法 図8
  • 特許-織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法
(51)【国際特許分類】
   D03C 19/00 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
D03C19/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021064399
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2022159924
(43)【公開日】2022-10-18
【審査請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】306034103
【氏名又は名称】株式会社 出口織ネーム
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】出口 隆
(72)【発明者】
【氏名】出口 勉
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212440(JP,A)
【文献】特許第4629150(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03C 1/00-19/00
D03D29/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
原画データを読み込むステップ、
前記原画データから文字データを抽出するステップ、
前記原画データを複数のセルデータに分割するステップ、
前記文字データと前記セルデータに基づいてモザイク文字データを作成するステップ、を実行させるための織型データ作成プログラムであって、
前記モザイク文字データを作成するステップは、前記コンピュータに、作成されたモザイク文字データを表示させ、ユーザの操作に応じて、前記文字データと前記セルデータの相対位置を変位させてモザイク文字データを再作成し、表示させるステップを含む
織型データ作成プログラム。
【請求項2】
原画データを読み込むステップ、
前記原画データから文字データを抽出するステップ、
前記原画データを複数のセルデータに分割するステップ、
前記文字データと前記セルデータに基づいてモザイク文字データを作成するステップ、を有する織型データ作成方法であって、
前記モザイク文字データを作成するステップは、コンピュータに、作成されたモザイク文字データを表示させ、ユーザの操作に応じて、前記文字データと前記セルデータの相対位置を変位させてモザイク文字データを再作成し、表示させるステップを含む
織型データ作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
織物は、縦糸と横糸を組み合わせて織り上げる布地であって、その中でも細幅織物は、例えば、被服等に縫い付けるタグ等に多く用いられる。
【0003】
近年、織物、特に細幅織物はその高精細化が求められており、細い糸で精細な図柄を織る要求が高くなってきている。
【0004】
ところで、近年のコンピュータ技術の発達により、より高解像度の原画データを作成することができるようになっている。しかしながら、この原画データをそのまま織物に反映することは、織物に用いる糸にある程度の太さが必要である以上限界があり、原画データがいかに高解像度であっても、糸の太さ等に基づく糸を配置する間隔がその解像度の限界となる。
したがって、原画データの文字からその糸を配置する間隔に応じたモザイク文字に変更する必要が生じることとなる。
【0005】
ところで、文字の変更に関する技術としては、例えば下記特許文献1に、細かい色相のカラー画像データの色相をより粗くし、より広い領域にわたって同じ色相に変換する織物用の画像データ処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4629150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、織物に織られる各柄の境界または輪郭を明瞭にする装置及び写真と文字の混合画像を調和する装置にすぎない。加えて、この技術によっても、細かい画像データを単純に粗い画像データとする技術にすぎず、そのままでは文字の形状が大きく変形し、文字のデザイン性が損なわれてしまうといった課題がある。
【0008】
(従来の実施方法)
従来の織型設計方法の課題について図面を用いて説明する。
画像処理ソフトウェアを用いて設計された原画(図2)から、縦糸および横糸本数に対応したモザイク化処理を行っている。
ただしこの原画は登録商標への配慮から、デザイン部分および商標などの部分を省略している。
原画の一部の文字(図3)を市販の画像処理ソフトウェアを使ってモザイク化処理をしたものが切出し画像(図4)である。
この切出し画像に対し、原画と対比しながら、ペンタブレット等を用いてモザイクセル毎に2値化を進める。
この作業により完成した補正画像(図5)を用いて織物設計を進めることになる。
原画のデザイン性を維持するために作業者には熟練が要求される。
またこの作業は修正量が多いことと、基本的に手作業で行っているため、多大な時間を要している。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、文字のデザイン性をより高く維持できる織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る織型データ作成プログラムは、コンピュータに、原画データを読み込むステップ、原画データから文字データを抽出するステップ、原画データを複数のセルデータに分割するステップ、文字データとセルデータに基づいてモザイク文字データを作成するステップ、を有する織型データ作成プログラムであって、モザイク文字データを作成するステップは、文字データの位置とセルデータの位置の関係をずらすステップを含むものである。
【0011】
また、本発明の他の一観点に係る織型データ作成方法は、原画データを読み込むステップ、原画データから文字データを抽出するステップ、原画データを複数のセルデータに分割するステップ、文字データとセルデータに基づいてモザイク文字データを作成するステップ、を有する織型データ作成方法であって、モザイク文字データを作成するステップは、文字データの位置とセルデータの位置の関係をずらすステップを含むものである。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によって、文字データとセルデータの相対位置をずらすことにより最も原画に近い形状を選択することができる。これにより文字のデザイン性をより高く維持できる織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法を提供することができる。
また織型データ作成プログラムの使用により、織型データの作成時間の短縮に大きく寄与することができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】織型データ作成方法の処理の流れを示す図である。
図2】作成する前の原画データを示す。
図3】原画データの文字の一部を示す。
図4】従来の実施方法によるモザイク化のための切出し画像を示す。
図5】従来の実施方法による織型補正画像を示す。
図6】本発明実施前のモザイク化のための切出し画像の例を示す。
図7】本発明による織型補正画像を示す。
図8】文字データとセルデータの相対位置を示すモデル図である。
図9】ハードウェア構成を例示する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、また以下に示す実施形態、実施例において記載される具体的な例示についても適宜変更及び調整が可能であり、これらに限定されるものではない。
【0015】
(全体の流れ説明)
図1は、本実施形態に係る織型データ作成方法(以下、「本方法」という。)の処理の流れを示す図である。本図で示すように、本方法は、(S1)原画データを読み込むステップ、(S2)原画データから文字データを抽出するステップ、(S3)原画データを複数のセルデータに仮分割するステップ、(S4)文字データとセルデータに基づいてモザイク文字データを作成するステップ、を有する織型データ作成方法であって、上記(S4)のモザイク文字データを作成するステップは、(S4-1)文字データの位置とセルデータの位置の関係をずらして適切な位置を求めるステップを含むものである。
【0016】
(コンピュータを用いる場合の説明)
また、本方法は、限定されるわけではないが、いわゆるコンピュータを用いて実現可能である。この場合、コンピュータの構成としては、限定されるわけではないが、例えばCPU(中央演算装置)、ハードディスクやソリッドステートドライブ(SSD)等の記録媒体、メモリ等の一時的記録媒体、ディスプレイ等の表示装置、キーボードやマウス等の入力装置、これらを接続するバス等の接続配線を備えたものであることが好ましい。更に具体的に本方法は、上記ステップを実行するためのコンピュータプログラムを上記コンピュータの記録媒体に記録し、これをメモリ等の一時的記録媒体に読み込みCPUによって演算処理させることにより実現することができる。具体的には、コンピュータの記録媒体に、(S1)原画データを読み込むステップ、(S2)原画データから文字データを抽出するステップ、(S3)原画データを複数のセルデータに分割するステップ、(S4)文字データとセルデータに基づいてモザイク文字データを作成するステップ、を実行させるための織型データ作成プログラム(以下「本プログラム」という。)を記録し、使用者の要求に応じてプログラムを実行させることで上記各ステップを機能させることが可能である。
【0017】
(クラウドでも可能)
なお、上記コンピュータに関しては、複数のコンピュータを電気通信回線いわゆるインターネットに接続された状態として使用する形態も好ましい。この場合、一方のコンピュータに入力されたデータを、電気通信回線を通じて他方のコンピュータに送信し、当該他方のコンピュータが入力されたデータに対して上記所定の処理を行い、一方のコンピュータにデータを送信するようにすることで、一方のコンピュータの処理量を低減させることが可能となる。
【0018】
(S1の説明)
原画データの定義、織型データの定義
まず、本方法は、(S1)原画データを読み込むステップを備える。ここで「原画データ」とは、本方法によって作成される織型データの基礎となるデータであって、高精細な画像データである。より具体的には、細幅織物の糸の太さよりも十分細かい画素幅、画素高さの集合の画像データとなっている。本方法では、この原画データから、使用する糸の太さに合わせた解像度の画像データを作成する。すなわち、本方法において「織型データ」とは、織物を完成させるために使用する糸の太さを一画素として用い、この画素データの集合となった画像データをいう。実際に作製する前の原画データ(原画データが表示装置等に表示された場合)の例を図2および図3に、作成した後の織型データ(織型データが表示装置等に表示された場合)の例を図7にそれぞれ示す。
【0019】
(S2)
また、本方法は、(S2)原画データから文字データを抽出するステップを備える。ここで「文字」とは、言葉や言語を伝達するための記号であって、例えばひらがな、カタカナの一文字ずつ(例えば「あ」や「ア」等)、漢字の一文字ずつ(例えば「山」等)、アルファベットの一文字ずつ(例えば「A」や「a」等)、数字の一文字ずつ(例えば「1」、「I」等)、その他記号(例えば「=」や「・」等)等の文字が該当するがこれに限定されない。
本方法では、原画データから文字データを抽出し、この各々に対して処理を行うことでデザイン性を損ねる恐れが格段に少なくなる。
【0020】
(文字の中には集合が含まれていてもよい)
なお、本方法において、文字は、単一の文字であってもよいが、上記文字の複数の集合とすることも可能である。複数の文字の集合とさせることでこれら文字が集合した際の配置のバランスを制御することが可能となる。
【0021】
(S3)
また、本方法は、(S3)原画データを複数のセルデータに分割するステップを備える。「セル」とは、原画データを複数に分割した場合におけるそれぞれの領域を意味するものであり、より具体的には、織物における縦糸と横糸の交差により形成される領域を想定したものである。すなわち、原画データを複数のセルデータに分割することで、実際に織物とする場合の解像度に合わせることが可能となる。この場合のイメージについて図8に示しておく。
【0022】
(S4)
また、本方法は、(S4)文字データとセルデータに基づいてモザイク文字データを作成するステップを備える。ここで「モザイク文字」とは、上記のステップで抽出した抽出した「文字」を織型に適する形に変換した文字のことをいう。
【0023】
文字データからモザイク文字データの作成については様々な手法を採用することができるが、セルデータと文字データとの重畳に応じてそのセル全体の値を決定する減値化処理、好ましくは二値化処理であることが望ましい。より具体的には、一のセルデータにおいて、文字データとの重複が大きい場合は1を、文字データとの重複が小さい場合は0を選択することで、そのセルデータの値が0か1のいずれかとなり、モザイク文字となる。このイメージについて図6に示す。なお、この0を選択するか1を選択するかの基準となる値などについては適宜調整可能である。
【0024】
(S4-1:文字データをずらす)
また、本ステップでは、更に、(S4-1)文字データの位置とセルデータの位置の関係をずらすステップを含む。上記のステップによると、文字データの位置とセルデータの位置の関係から一義的にモザイク文字を作成することができるが、デザイン性が大きく損なわれてしまうことがある。そのため、文字データの位置とセルデータの位置の関係をずらすことで改めてモザイク文字を作成しなおし、そのデザイン性を高く維持することができるようになる。この場合のイメージを図7に示す。なお、図6には、位置をずらさなかった場合のモザイク文字のイメージを示しておく。これらの図が示すように、文字データの位置とセルデータの位置の関係をずらすことにより、ずらさなかった場合に対する効果が歴然である。なお、この位置のずらす処理としては、セルデータに対して文字データをずらすこととしてもよいが、文字データに対してセルデータをずらすこととしてもよい。
【0025】
(まとめ)
すなわち、本方法では、原画データから文字データを抽出した後、その文字データの位置とセルデータの位置とを調整し、適切なモザイク文字とすることで、文字のデザイン性をより高く維持することができる。なお、この位置調整を行わなかった場合モザイク文字の比較について図6に示しておく。
【0026】
図9は、織型データ作成方法を実行するコンピュータのハードウェア構成を例示する図である。
図9に例示するように、織型データ作成方法を実行するコンピュータは、CPU200、メモリ202、HDD204、ネットワークインタフェース206(ネットワークIF206)、表示装置208、及び入力装置210を有し、これらの構成はバス212を介して互いに接続している。
CPU200は、例えば、中央演算装置である。
メモリ202は、例えば、揮発性メモリであり、主記憶装置として機能する。
HDD204は、例えば、ハードディスクドライブ装置であり、不揮発性の記録装置としてコンピュータプログラム(織型データ作成プログラムなど)やその他のデータファイルを格納する。
ネットワークIF206は、有線又は無線で通信するためのインタフェースである。
表示装置208は、例えば、液晶ディスプレイである。
入力装置210は、例えば、キーボード及びマウスである。
本例のコンピュータは、上記構成によって、文字データとセルデータに基づいて、モザイク文字データを作成し、作成されたモザイク文字データを表示装置208に表示させ、入力装置210を介してユーザの操作に応じて、文字データとセルデータの相対位置を変位させたモザイク文字データを再作成し、表示装置208に表示させる。相対位置の変位量は、例えば、織型データにおける糸1本の太さよりも小さい値である。これにより、ユーザは、相対位置を少しずつずらしながら、最適なデザインの織型データを作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、織型データ作成プログラム及び織型データ作成方法として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0028】
200…CPU
202…メモリ
204…HDD
206…ネットワークIF
208…表示装置
210…入力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9