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特許7643741がん及び感染症に対する免疫療法のための融合タンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】がん及び感染症に対する免疫療法のための融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20250304BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20250304BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250304BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20250304BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250304BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20250304BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/21 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/29 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/245 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/205 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/285 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/13 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/165 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/20 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/25 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/235 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/015 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/08 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/05 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/112 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/108 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/04 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/10 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/102 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/095 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/09 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/125 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/15 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/07 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/002 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/106 20060101ALI20250304BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20250304BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250304BHJP
   C12P 21/00 20060101ALN20250304BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/705
C12N15/63 Z
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/12
A61K39/395 N
A61K38/16
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P11/00
A61P13/12
A61P15/00
A61P13/10
A61P17/00
A61P25/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/04
A61P13/08
A61P37/04
A61P31/06
A61P31/12
A61P31/18
A61P31/16
A61P31/20
A61P31/14
A61K39/00 H
A61K39/12
A61K39/21
A61K39/145
A61K39/29
A61K39/215
A61K39/245
A61K39/205
A61K39/285
A61K39/13
A61K39/165
A61K39/20
A61K39/25
A61K39/235
A61K39/015
A61K39/08
A61K39/05
A61K39/112
A61K39/108
A61K39/04
A61K39/10
A61K39/102
A61K39/095
A61K39/09
A61K39/125
A61K39/15
A61K39/07
A61K39/002
A61K39/106
A61K39/02
C12N15/62 Z
C12P21/00 C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022567573
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 US2021029203
(87)【国際公開番号】W WO2021225820
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】63/020,545
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522432642
【氏名又は名称】ナビキュア バイオファーマシューティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ウー, チア-マオ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-506072(JP,A)
【文献】特表2016-504308(JP,A)
【文献】特表2018-507860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0368350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質であって、
(a)CD40結合ドメインと、
(b)抗原と、
(c)前記CD40結合ドメインと前記抗原との間に位置するトランスロケーションドメインと、
を含み、
前記融合タンパク質において、前記CD40結合ドメインと前記トランスロケーションドメインとの間にフーリン及び/又はカテプシンL切断部位が存在する、融合タンパク質。
【請求項2】
前記トランスロケーションドメインは、シュードモナス外毒素A(PE)トランスロケーションペプチドであり、前記CD40結合ドメインは、前記融合タンパク質のN末端に位置する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記トランスロケーションドメインは、長さで26-112アミノ酸残基から構成されるPEトランスロケーションペプチドであり、前記PEトランスロケーションペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記トランスロケーションドメインは、志賀毒素(Stx)トランスロケーションペプチドであり、前記抗原は、前記融合タンパク質のN末端に位置する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記トランスロケーションドメインは、長さで8-84アミノ酸残基から構成されるStxトランスロケーションペプチドであり、前記Stxトランスロケーションペプチドは、配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記フーリン及び/又はカテプシンL切断部位は、フーリン及び/又はカテプシンL切断を介して前記融合タンパク質からCD40結合ドメインを除去することを可能にする、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記フーリン及び/又はカテプシンL切断部位は、配列番号1又は2のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記CD40結合ドメインと前記トランスロケーションドメインとの間に位置するフーリン及び/又はカテプシンL切断部位を含むペプチドリンカーをさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記CD40結合ドメインは、CD40リガンド(CD40L)又はその機能的断片である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記CD40結合ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列を含むCD40リガンド(CD40L)又はその機能的断片であり、前記CD40L又はその機能的断片は、長さで154-261アミノ酸残基を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記CD40結合ドメインは、CD40特異的抗体若しくはその結合断片、又は一本鎖可変断片(scFv)であり、
前記CD40特異的抗体又はscFvは、V及びVを含み、
(a)前記Vは、配列番号22のアミノ酸配列を含み、
(b)前記Vは、配列番号23のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記CD40結合ドメインは、CD40特異的抗体又はその結合断片であり、前記CD40特異的抗体は、V及びVを含み、前記Vは、V CDR1、V CDR2及びV CDR3を含み、前記Vは、V CDR1、V CDR2及びV CDR3を含み、
(i)前記V CDR1、V CDR2及びV CDR3は、それぞれ配列番号24、25及び26のアミノ酸配列を含み、
(ii)前記V CDR1、V CDR2及びV CDR3は、それぞれ配列番号27、28及び29のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記抗原は、腫瘍抗原であり、前記腫瘍は、乳がん、結腸がん、直腸がん、膀胱がん、子宮内膜がん、腎臓がん、胃がん、膠芽腫、肝細胞がん、胆管がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、卵巣がん、子宮頸がん、膵臓がん、前立腺がん、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、非ホジキンリンパ腫、甲状腺がんからなる群より選択される、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)、インフルエンザウイルス、デングウイルス、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ジカウイルス、狂犬病ウイルス、天然痘ウイルス、チクングニアウイルス、ウエスナイルウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ハンタウイルス、日本脳炎ウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス、ムンプスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、セルコピテシンヘルペスウイルス-1(CHV-1)、黄熱ウイルス(YFV)、リフトバレー熱ウイルス、ラッサウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、リケッチア・プロワゼキー、チフスリケッチア、オリエンティア・ツツガムシ、ボレリア・ブルグドルフェリ、エルシニア・ペスティス、三日熱マラリア原虫、マラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、炭疽菌、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・ボツリヌス、コリネバクテリウム・ジフテリアエ、サルモネラ・エンテリカ血清型チフス、サルモネラ・エンテリカ血清型パラチフスA、志賀毒素産生大腸菌(STEC)、シゲラ・ダイセンテリア、志賀赤痢菌、志賀フレキシネル菌、志賀ソンネ菌、エンタメーバ・ヒストリチカ、コレラ菌、結核菌、髄膜炎菌、百日咳菌、インフルエンザ菌B型(HiB)、破傷風菌、リステリア・モノサイトゲネス及び肺炎レンサ球菌からなる群より選択される病原体の抗原である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
抗原特異的細胞性免疫応答を誘導して対象における腫瘍及び/又は病原体に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における、請求項1から14のいずれか1項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項16】
前記抗原のC末端に位置する小胞体(ER)保持配列をさらに含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
前記CD40結合ドメインと前記フーリン及び/又はカテプシンL切断部位との間に位置するCD28活性化ペプチドをさらに含み、前記CD28活性化ペプチドは、長さが28-53アミノ酸残基であり、配列番号35、36及び37から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2又は4に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
請求項1に記載の融合タンパク質をコードするDNA断片を含む、発現ベクター。
【請求項19】
前記PEトランスロケーションペプチドは、配列番号5、6、7、8及び9から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
前記Stxトランスロケーションペプチドは、配列番号12、13、14、15及び16から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融合タンパク質に関し、具体的には、腫瘍及び感染症に対するT細胞媒介性免疫応答を誘導するための融合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
適応免疫系は、体液性免疫成分と細胞性免疫成分の両方を含み、侵入する病原体を破壊する。適応免疫応答を実行する細胞は、リンパ球として知られる白血球である。B細胞とT細胞は、2つの異なるタイプのリンパ球であり、抗体応答と細胞性免疫応答を実行する。適応免疫は、病原体への暴露によって活性化され、その病原体との将来の遭遇に対する免疫応答の強化につながる。ワクチンは、適応免疫細胞に抗原特異的記憶を誘導し、標的病原体に対する防御を可能にする。病原体によって引き起こされるがんや感染症などの疾患を治療するための新しい治療用ワクチンは、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本発明は、融合タンパク質に関する。この融合タンパク質は、(a)CD40結合ドメイン、(b)抗原、及び(c)前記CD40結合ドメインと前記抗原との間に位置するトランスロケーションドメインを含み、前記融合タンパク質において、前記CD40結合ドメインと前記トランスロケーションドメインとの間にフーリン及び/又はカテプシンL切断部位が存在する。
【0004】
別の態様では、本発明は、本発明に係る融合タンパク質をコードするDNA断片に関する。本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするDNA断片を含む発現ベクターにも関する。
【0005】
別の態様では、本発明は、本発明に係る融合タンパク質、薬学的に許容される担体及び/又は補助剤を含む医薬組成物に関する。
【0006】
別の態様では、本発明は、抗原特異的細胞性免疫応答を誘導して対象における腫瘍及び/又は病原体に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における本発明の融合タンパク質又は医薬組成物の使用に関する。本発明は、抗原特異的細胞性免疫応答を誘導して対象における腫瘍及び/又は病原体に起因する疾患を治療するために使用される本発明の融合タンパク質又は医薬組成物にも関する。
【0007】
代替的に、本発明は、抗原特異的細胞性免疫応答を誘導して対象における腫瘍及び/又は病原体に起因する疾患を治療するための方法に関する。この方法は、前記対象に有効量の本発明に係る融合タンパク質又は医薬組成物を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ベクターマップである。
【0009】
図2】ベクターマップである。MCS:マルチクローニングサイト
【0010】
図3】ベクターマップである。
【0011】
図4】ベクターマップである。
【0012】
図5図5A-5Eは、本発明の様々な実施形態を示す模式図である。
【0013】
図6】各動物群における相対サイトカイン誘導を示す図である。
【0014】
図7】各動物群からの脾臓細胞におけるIFN-γ免疫スポットを示す図である。
【0015】
図8】各動物群における血清HPV16 E7特異的抗体のレベルを示す図である。
【0016】
図9】各動物群における血清HPV18 E7特異的抗体のレベルを示す図である。
【0017】
図10】免疫化スケジュール及び指定融合タンパク質で処理された又は処理されていない動物群を示す。
【0018】
図11】指定融合タンパク質で処理された又は処理されていない各動物群における腫瘍サイズを示す図である。
【0019】
図12】指定融合タンパク質で処理された又は処理されていない各動物群の生存率を示す図である。
【0020】
図13】指定融合タンパク質で処理された又は処理されていない各動物群の無腫瘍率を示す図である。
【0021】
図14】指定された様々な投与量の融合タンパク質18sCD40L-TPE-E7で処理された又は処理されていない各動物群における腫瘍サイズを示す図である。
【0022】
図15】指定された様々な投与量の融合タンパク質E7-TStx-18sCD40Lで処理された又は処理されていない各動物群における腫瘍サイズを示す図である。
【0023】
図16】融合タンパク質HBx-preS1-TStx-18sCD40Lの免疫化スキーム(上図)、動物群及びそれぞれの投与スケジュール(下図)を示す。
【0024】
図17図16に示される各動物群からの脾臓細胞におけるIFN-γ免疫スポットを示す図である。
【0025】
図18図16に示される各動物群における血清HBx特異的抗体のレベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、以下の定義は、本発明を説明するために使用される様々な用語の意味及び範囲を例示及び定義するために記載される。
【0027】
定義
【0028】
抗原提示細胞(APC)又はアクセサリー細胞は、主要組織適合性複合体(MHC)と複合体を形成した抗原を表面に表示する細胞である。このプロセスは、抗原提示として知られている。T細胞は、T細胞受容体(TCR)を使用してこれらの複合体を認識することができる。APCは抗原を処理し、T細胞に提示する。
【0029】
抗原提示細胞は、プロフェッショナルと非プロフェッショナルの2つのカテゴリに分類される。共刺激分子及びパターン認識受容体とともにMHCクラスII分子を発現する細胞は、プロフェッショナル抗原提示細胞と呼ばれる。専門的抗原提示細胞の主なタイプは、樹状細胞(DC)、マクロファージ、及びB細胞である。非専門的APCは、体内の全ての有核細胞タイプを含むMHCクラスI分子を発現する。
【0030】
専門的APCは、T細胞への抗原提示を専門としている。それらは、ファゴサイトーシス又は受容体媒介エンドサイトーシスのいずれかによって抗原を内在化し、抗原をペプチド断片に処理し、それらのペプチド(クラスII MHC分子に結合)を膜上に表示するのに非常に効率的である。T細胞は、抗原提示細胞の膜上の抗原クラスII MHC分子複合体を認識し、相互作用する。次に、追加の共刺激シグナルが抗原提示細胞によって生成され、T細胞を活性化する。全ての専門的APCは、MHCクラスI分子も発現する。
【0031】
専門的プロフェッショナルAPCと非専門的APCは、MHCクラスI分子を用いて細胞膜に内因性ペプチドを表示する。これらのペプチドは、MHCクラスII分子を使用する専門的APCによって表示される外因性抗原とは対照的に、細胞自体に由来する。細胞傷害性T細胞は、MHCクラスI分子によって提示される抗原と相互作用することができる。
【0032】
CD40は抗原提示細胞で発現されるる共刺激タンパク質である(例えば、樹状細胞、マクロファージ及びB細胞)。CD40LがCD40に結合すると、抗原提示細胞が活性化され、様々なダウンストリーム効果が誘導される。CD40は、がん免疫療法の創薬標的である。
【0033】
「CD40結合ドメイン」という用語は、CD40を認識して結合することができるタンパク質を指す。CD40結合ドメインは、「CD40リガンド(CD40L)又はその機能的断片」、「抗CD40抗体又はその機能的断片」の1つから選択され得る。
【0034】
「CD40L」、「CD40リガンド」及び「CD154」という用語は交換可能である。CD40Lは抗原提示細胞(APC)上のCD40(タンパク質)に結合し、標的細胞の種類に応じて多くの効果をもたらす。CD40Lは、T細胞のプライミング及びCD40発現免疫細胞の活性化を介した免疫応答の共刺激及び調節において中心的な役割を果たす。US5,962,406は、CD40Lの核酸及びアミノ酸配列を開示している。
【0035】
「抗CD40抗体」及び「CD40特異的抗体」という用語は交換可能である。
【0036】
「実質的にから構成される」又は「実質的にからなる」という用語がポリペプチドのアミノ酸配列を記述する際に使用される場合、タンパク質の翻訳要求に応じて、ポリペプチドがポリペプチドの一部としてN末端に開始アミノ酸「M」(開始コドンAUGから翻訳されたもの)を持っている場合と持っていない場合があることを意味する。例えば、抗原HPV18 E7タンパク質(配列番号39)が別のポリペプチド(例えば、別の抗原)に融合された場合、開始アミノ酸「M」は省略又は保持されてもよい。
【0037】
本明細書において、「トランスロケーションドメイン」は、融合タンパク質内の抗原を、エンドソーム膜を通過してCD40発現細胞の細胞質基質にトランスロケーションする生物活性を有するポリペプチドである。トランスロケーションドメインは、抗原提示のためのクラスI主要組織適合遺伝子複合体(MHC-1)経路(即ち、細胞障害性T細胞経路)に向かって抗原を誘導又は促進する。
【0038】
「シュードモナス外毒素A(PE)トランスロケーションペプチド(TPE)」という用語は、トランスロケーション生物活性を有するPEドメインIIペプチド又はその機能的断片を指す。
【0039】
「志賀毒素(Stx)トランスロケーションペプチド(TStx)」という用語とは、トランスロケーションにおいて生物学的活性を有するStxトランスロケーションドメイン又はその機能的断片を指す。
【0040】
「フーリン及び/又はカテプシンL」又は「フーリン/カテプシンL」という用語は、交換可能である。フーリン及び/又はカテプシンL切断部位とは、プロテアーゼ(フーリン及び/又はカテプシンL)感受性部位を指す。それは、フーリン若しくはカテプシンL、又はフーリンとカテプシンLの両方によって切断可能な短いペプチド配列である。それは、融合タンパク質に導入される前記切断部位を含むペプチドリンカー、又は融合タンパク質のトランスロケーションドメインに存在する固有のプロテアーゼ切断部位であり得る。
【0041】
「抗原」と「免疫原」という用語は交換可能である。抗原は、腫瘍抗原(がん由来の抗原又はがんに関連する抗原)又は病原体の抗原(病原体由来の抗原)であり得る抗原性タンパク質を指す。
【0042】
「腫瘍」と「がん」という用語は交換可能である。
【0043】
「がん細胞の抗原」と「腫瘍抗原」という用語は交換可能である。
【0044】
「腫瘍抗原」という用語は、腫瘍特異的抗原及び/又は腫瘍関連抗原を指す。腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の表面で発現されるタンパク質又はポリペプチドであり得る。
【0045】
分化クラスター28(CD28)は、T細胞特異的な表面糖タンパク質である。CD28受容体は、T細胞と抗原提示細胞との接触中に刺激される。その機能は、T細胞の活性化、細胞増殖の誘導、サイトカイン産生、及びT細胞の生存の促進に関与する。
【0046】
「有効量」という用語は、治療対象に治療効果を与えるのに必要な活性融合タンパク質の量を指す。有効用量は、当業者によって認識されるように、投与経路、賦形剤の使用、及び他の治療処置との同時使用の可能性に応じて変化する。
【0047】
「治療する」又は「治療」という用語は、それを必要とする対象に有効量の融合タンパク質を投与することを指す。前記対象は、疾患、その症状又はその素因を治癒、軽減、緩和、治療、改善又は予防する目的で、がん若しくは感染症、又はそのような疾患の症状若しくは素因を有する。このような対象は、任意の適切な診断方法からの結果に基づいて、ヘルスケアの専門家によって特定され得る。
【0048】
「0~12繰り返し」又は「2~6繰り返し」とは、「0~12」又は「2~6」の範囲内の全ての整数単位量が本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。したがって、0、1、2、3、4、・・・10、11及び12」又は「2、3、4、5及び6」単位の量が、本発明の実施形態として含まれる。
【0049】
一態様では、本発明は、(i)CD40結合ドメイン、(ii)抗原、及び(iii)前記CD40結合ドメインと前記抗原との間に位置するトランスロケーションドメインを含む融合タンパク質に関する。前記融合タンパク質において、前記CD40結合ドメインと前記トランスロケーションドメインとの間にフーリン及び/又はカテプシンL切断部位が存在する。
【0050】
本発明の融合タンパク質は、MHCクラスI抗原提示経路を介して抗原特異的T細胞免疫応答を誘導することができる。それらは共通の作用メカニズムを共有する。以下、融合タンパク質18sCD40L-TPE-E7を例として作用メカニズムを説明する。
【0051】
(1)前記融合タンパク質は、CD40発現細胞(例えば、樹状細胞又はマクロファージ)に結合し、CD40媒介エンドサイトーシスにより内在化される。
(2)前記融合タンパク質は、エンドソーム内でフーリンプロテアーゼ及び/又はカテプシンLプロテアーゼにより切断されるこれによって、18sCD40L断片はTPE-E7断片から除去される。
(3)TPE-E7断片は、エンドソームのエンドソーム膜を通過して細胞質基質に入る。
(4)TPE-E7断片は、細胞質基質プロテアソームによって消化され、エピトープを持つ小さなE7抗原を生成する。
(5)E7抗原は、抗原提示のためにMHCクラスI経路に送達される。
(6)CD8+T細胞特異的免疫応答は、T細胞が提示されたこれらの抗原を認識するによって誘導又は増強される。
【0052】
上記の作用メカニズムは、前記融合タンパク質E7-TStx-18sCD40Lに適用される。この場合、フーリン及び/又はカテプシンLプロテアーゼによる切断により、E7-TStx断片は18sCD40L断片から除去される。そうすると、E7-TStx断片は、エンドソームのエンドソーム膜を通過して細胞質基質に入り、細胞質基質プロテアソームによって消化されてエピトープを持つ小さなE7抗原を生成する。E7抗原は、抗原提示のためにMHCクラスI経路に送達される。CD8+T細胞特異的免疫応答は、T細胞が提示されたこれらの抗原を認識するによって誘導又は増強される。
【0053】
本発明によれば、前記融合タンパク質において、前記抗原と前記トランスロケーションドメインとの間に、フーリン及び/又はカテプシンL切断部位が存在しない。
【0054】
フーリン及び/又はカテプシンL切断部位の存在及び融合タンパク質におけるその位置により、フーリン及び/又はカテプシンL切断後の融合タンパク質からのCD40結合ドメインの除去は可能になる。
【0055】
一実施形態において、本発明の融合タンパク質は、ペプチドリンカーをさらに含む。前記リンカーは、前記融合タンパク質における前記CD40結合ドメインと前記トランスロケーションドメインとの間に存在するフーリン及び/又はカテプシンL切断部位を含む。
【0056】
前記トランスロケーションドメイン及び抗原は、トランスロケーションドメインにより、抗原がエンドソーム膜を横切って細胞質基質に入るように抗原をトランスロケーションさせ、その後、CD40発現細胞における抗原提示のために抗原をMHCクラスI経路へ促進可能なような方向及び/又は関係で前記融合タンパク質内に位置する。
【0057】
一実施形態において、前記トランスロケーションドメインは、シュードモナス外毒素A(PE)に由来する。別の実施形態において、前記トランスロケーションドメインは、志賀毒素(Stx)に由来する。
【0058】
一実施形態において、前記トランスロケーションドメインは、CD40結合ドメインが前記融合タンパク質のN末端に位置する場合、シュードモナス外毒素A(PE)トランスロケーションペプチド(TPE)を含むか又はそれである。
【0059】
別の実施形態において、前記トランスロケーションドメインは、前記抗原が前記融合タンパク質のN末端に位置する場合、志賀毒素(Stx)トランスロケーションペプチド(TStx)を含むか又はそれである。
【0060】
別の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、(i)前記融合タンパク質のN末端に位置するCD40結合ドメイン、(ii)PEトランスロケーションペプチド(TPE)を含むトランスロケーションドメイン、及び(iii)前記融合タンパク質のC末端に位置する抗原を順次含む。フーリン及び/又はカテプシンL切断部位は、前記融合タンパク質におけるCD40結合ドメインと前記トランスロケーションドメインとの間に存在する。
【0061】
別の実施形態において、前記トランスロケーションドメインは、TPEの機能的部分であり、前記フーリン及び/又はカテプシンL切断部位は、PEからの固有フーリン切断部位である。
【0062】
別の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、(i)前記融合タンパク質のN末端に位置するCD40結合ドメイン、(ii)フーリン及び/又はカテプシンL切断部位を含むペプチドリンカー、(iii)PEトランスロケーションペプチド(TPE)を含むトランスロケーションドメイン、及び(iv)病原体抗原又は腫瘍抗原を順次含む。
【0063】
別の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、(i)前記融合タンパク質のN末端に位置する抗原、(ii)Stxトランスロケーションペプチド(TStx)を含むトランスロケーションドメイン、及び(iii)CD40結合ドメインを順次含む。フーリン及び/又はカテプシンL切断部位は、前記融合タンパク質における前記CD40結合ドメインと前記トランスロケーションドメインとの間に存在する。
【0064】
一実施形態において、前記トランスロケーションドメインは、TStxの機能的部分であり、前記フーリン及び/又はカテプシンL切断部位は、Stxからの固有フーリン切断部位である。
【0065】
別の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、(i)前記融合タンパク質のN末端に位置する抗原、(ii)Stxトランスロケーションペプチド(TStx)を含むトランスロケーションドメイン、(iii)フーリン及び/又はカテプシンL切断部位を含む切断可能なリンカー、及び(iv)CD40結合ドメインを順次含む。
【0066】
一実施形態において、フーリン及び/又はカテプシンL切断部位は、配列番号1若しくは2のアミノ酸配列を含むか、それであるか、又はそれからなる。
【0067】
別の実施形態において、PEトランスロケーションペプチド(TPE)は、シュードモナス外毒素Aタンパク質(全長PE;配列番号4)のドメインII(アミノ酸残基253-364;配列番号9)である。
【0068】
別の実施形態において、PEトランスロケーションペプチド(TPE)は、最小機能的断片GWEQLEQCGYPVQRLVALYLAARLSW(配列番号5)を含む。
【0069】
別の実施形態において、PEトランスロケーションペプチド(TPE)は、26-112アミノ酸残基から構成され、前記PEトランスロケーションペプチドは、最小機能的断片GWEQLEQCGYPVQRLVALYLAARLSW(配列番号5)を含む。
【0070】
別の実施形態において、PEトランスロケーションペプチド(TPE)は、配列番号5、6、7、8又は9と少なくとも90%、95%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0071】
別の実施形態において、PEトランスロケーションペプチド(TPE)は、PE280-305(配列番号5)、PE280-313(配列番号6)、PE268-313(配列番号7)、PE253-313(配列番号8)、及びPE253-364(配列番号9;全長PEドメインII)からなる群より選択される。
【0072】
一実施形態において、Stxトランスロケーションペプチド(TStx)は、志賀毒素(Stx)サブユニットA(配列番号10)又は志賀様毒素I(Slt-I)サブユニットA(配列番号11)の機能的断片である。本発明によれば、Stxトランスロケーションペプチドは、トランスロケーション機能を有するが、サブユニットAの細胞毒性効果を有しない。志賀毒素(Stx)サブユニットAとSlt-IサブユニットAとの間の配列同一性は99%であり、両者のアミノ酸の違いは1つだけである。
【0073】
別の実施形態において、Stxトランスロケーションペプチド(TStx)は、長さで8-84アミノ酸残基から構成される。
【0074】
別の実施形態において、Stxトランスロケーションペプチド(TStx)は、LNCHHHAS(配列番号12)の最小機能的断片を含む。
【0075】
別の実施形態において、Stxトランスロケーションペプチド(TStx)は、長さで8-84アミノ酸残基から構成され、前記TStxは、LNCHHHAS(配列番号12)の最小断片を含む。
【0076】
別の実施形態において、Stxトランスロケーションペプチド(TStx)は、配列番号12、13、14、15及び16から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、95%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
別の実施形態において、Stxトランスロケーションペプチドは、配列番号12、13、14、15及び16から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0078】
別の実施形態において、トランスロケーションペプチド(TStx)は、StxサブユニットAのStx240-247(配列番号12)、Stx240-251(配列番号13)、Stx211-247(配列番号14)、Stx211-251(配列番号15)及びStx168-251(配列番号16)からなる群より選択される。
【0079】
CD40結合ドメインは、CD40発現細胞上のCD40タンパク質に結合する生物活性を有するポリペプチドである。CD40結合ドメインにより、本発明の融合タンパク質は、CD40発現細胞(例えば、樹状細胞又はマクロファージ)上のCD40受容体に結合することができる。
【0080】
一実施形態において、CD40結合ドメインは、(i)CD40リガンド(CD40L)又はその機能的断片、及び(ii)抗CD40抗体又はその機能的断片からなる群より選択される。
【0081】
CD40L、抗CD40抗体及びそれらのそれぞれの機能的断片は、全てCD40発現細胞上のCD40タンパク質に結合する生物活性を有する。
【0082】
CD40Lの機能的断片は、全長CD40L1-261タンパク質(配列番号17)の膜貫通及び細胞質領域を実質的に欠いている生物活性を有する短縮型CD40Lである。
【0083】
別の実施形態において、CD40L又はその機能的断片は、長さで154-261アミノ酸残基から構成される。
【0084】
別の実施形態において、機能的活性を有する短縮型CD40Lは、CD40L47-261(配列番号18)及びCD40L108-261(18sCD40L;配列番号19)からなる群より選択される。
【0085】
別の実施形態において、CD40リガンド(CD40L)又はその機能的断片は、長さで154-261アミノ酸残基から構成され、前記機能的断片は、CD40L108-261(配列番号19)を含む。
【0086】
別の実施形態において、CD40Lは、配列番号17、18又は19と少なくとも90%、95%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。前記CD40Lは、CD40発現細胞上のCD40タンパク質に結合する生物活性を有する。
【0087】
別の実施形態において、CD40リガンド(CD40L)は、CD40L47-261(配列番号18)、CD40L108-261(配列番号19;18sCD40Lと呼ばれる)及びCD40L1-261(配列番号17)からなる群より選択される。
【0088】
別の実施形態において、CD40結合ドメインは、CD40特異的抗体(又は抗CD40抗体)である。CD40特異的抗体は、CD40タンパク質に対して特異的な抗体である。CD40特異的抗体は、CD40発現細胞上のCD40タンパク質に結合することができる。
【0089】
一実施形態において、前記CD40特異的抗体は、重鎖可変ドメイン(V)及び軽鎖可変ドメイン(V)を含む。Vは、配列番号22のアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号23のアミノ酸配列を含む。
【0090】
別の実施形態において、本発明のCD40特異的抗体は、一本鎖可変断片(scFv)、ダイアボディ(dscFv)、トリアボディ、テトラボディ、二重特異性scFv、scFv-Fc、scFc-CH3、一本鎖抗原結合断片(scFab)、抗原結合断片(Fab)、Fab、ミニボディ及び完全抗体からなる群より選択される。
【0091】
別の実施形態において、本発明のCD40結合ドメインは、comprising a 重鎖可変ドメイン(V)、軽鎖可変ドメイン(V)、及びthe VとVとを結合するフレキシブルなリンカー(L)を含むCD40特異的scFv(抗CD40 scFv)である。
【0092】
一実施形態において、CD40特異的scFvは、配列番号20又は21のアミノ酸配列を含む。
【0093】
別の実施形態において、本発明のCD40結合ドメインは、(i)CD40特異的抗体若しくはその結合断片、又は(ii)CD40特異的一本鎖可変断片(scFv)若しくはその結合断片である。前記CD40特異的抗体又はCD40特異的scFvは、V及びVを含む。(a)前記Vは、配列番号22のアミノ酸配列を含み、(b)前記Vは、配列番号23のアミノ酸配列を含む。
【0094】
別の実施形態において、前記CD40特異的抗体又はCD40特異的scFvは、V及びVを含む。前記Vは、V CDR1、V CDR2及びV CDR3を含み、前記Vは、V CDR1、V CDR2及びV CDR3を含む。(i)前記V CDR1、V CDR2及びV CDR3は、それぞれ配列番号24、25及び26のアミノ酸配列を含み、(ii)前記V CDR1、V CDR2及びV CDR3は、それぞれ配列番号27、28及び29のアミノ酸配列を含む。
【0095】
別の実施形態において、前記CD40結合ドメインは、V及びVを含むCD40特異的scFvである。(a)前記Vは、配列番号22のアミノ酸配列を含み、(b)前記Vは、配列番号23のアミノ酸配列を含む。
【0096】
別の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、トランスロケーションドメインがPEトランスロケーションペプチド(TPE)を含む場合、抗原のC末端に位置する小胞体(ER)保持配列をさらに含む。
【0097】
別の実施形態において、前記ER保持配列は、配列番号30、31、32、33及び34から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0098】
別の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、CD40結合ドメインと、フーリン及び/又はカテプシンL切断部位との間に位置するCD28活性化ペプチドをさらに含む。
【0099】
別の実施形態において、前記CD28活性化ペプチドは、長さで28-53アミノ酸残基から構成される。
【0100】
別の実施形態において、前記CD28活性化ペプチドは、長さが28-53アミノ酸残基であり、前記CD28活性化ペプチドは、配列番号35、36及び37から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0101】
別の実施形態において、前記CD28活性化ペプチドは、長さが28-53アミノ酸残基であり、前記CD28活性化ペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列を含む。
【0102】
別の実施形態において、前記CD28活性化ペプチドは、配列番号35、36及び37から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0103】
別の実施形態において、前記CD28活性化ペプチドは、配列番号35、36又は37と少なくとも90%、95%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0104】
本発明の融合タンパク質の抗原は、病原体抗原又は腫瘍抗原である。
【0105】
前記病原体は、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)、インフルエンザウイルス、デングウイルス、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ジカウイルス、狂犬病ウイルス、天然痘ウイルス、チクングニアウイルス、ウエスナイルウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ハンタウイルス、日本脳炎ウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス、ムンプスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、セルコピテシンヘルペスウイルス-1(CHV-1)、黄熱ウイルス(YFV)、リフトバレー熱ウイルス、ラッサウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、リケッチア・プロワゼキー、チフスリケッチア、オリエンティア・ツツガムシ、ボレリア・ブルグドルフェリ、エルシニア・ペスティス、三日熱マラリア原虫、マラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、炭疽菌、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・ボツリヌス、コリネバクテリウム・ジフテリアエ、サルモネラ・エンテリカ血清型チフス、サルモネラ・エンテリカ血清型パラチフスA、志賀毒素産生大腸菌(STEC)、シゲラ・ダイセンテリア、志賀赤痢菌、志賀フレキシネル菌、志賀ソンネ菌、エンタメーバ・ヒストリチカ、コレラ菌、結核菌、髄膜炎菌、百日咳菌、インフルエンザ菌B型(HiB)、破傷風菌、リステリア・モノサイトゲネス及び肺炎レンサ球菌からなる群より選択され得る。
【0106】
別の実施形態において、前記病原体は、HPV、HIV-1、インフルエンザウイルス、デングウイルス、HAV、HBV、HCV、SARS-CoV、SARS-CoV-2からなる群より選択される。より具体的には、前記病原体は、HPV、HBV、HCV及びSARS-CoV-2からなる群より選択される。
【0107】
別の実施形態において、前記抗原は、HPV16 E7タンパク質、HPV18 E7タンパク質、HBV Xタンパク質(HBx)、HBV preS1タンパク質、HCVコアタンパク質(HCVコア)及びSARS-CoV-2スパイクタンパク質(CoV2S)からなる群より選択される病原性抗原である。
【0108】
別の実施形態において、前記抗原は、望ましい免疫応答を誘導するための少なくとも1つのエピトープ、好ましくは1から30個のエピトープ、より好ましくは1から15個のエピトープを含む。
【0109】
別の実施形態において、前記抗原は、配列番号38、39、40、41、42又は43と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は実質的にそれから構成される病原性抗原である。
【0110】
別の実施形態において、前記抗原は、配列番号38、39、40、41、42又は43と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は実質的にそれから構成される病原性抗原である。
【0111】
別の実施形態において、前記抗原は、配列番号38、39、40、41、42及び43からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0112】
別の実施形態において、前記抗原は、腫瘍抗原である。腫瘍抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)又は腫瘍特異的抗原(TSA)である。
【0113】
一実施形態において、前記腫瘍又はがんは、乳がん、結腸がん、直腸がん、膀胱がん、子宮内膜がん、腎臓がん、胃がん、膠芽腫、肝細胞がん、胆管がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、卵巣がん、子宮頸がん、膵臓がん、前立腺がん、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、非ホジキンリンパ腫、甲状腺がんからなる群より選択される。
【0114】
別の実施形態において、腫瘍関連抗原は、SSX2、MAGE-A3、NY-ESO-1、iLRP、WT12-281、RNF43、CEA-NE3、AFP、ALK、前側勾配2(AGR2)、BAGEタンパク質、β-カテニン、brc-abl、BRCA1、BORIS、CA9、炭酸脱水酵素IX、カスパーゼ-8、CD40、CDK4、CEA、CTLA4、サイクリンB1、CYP1B1、EGFR、EGFRvIll、ErbB2/Her2、ErbB3、ErbB4、ETV6-AML、EphA2、Fra-1、FOLR1、GAGEタンパク質(例えば、GAGE-1、-2)、GD2、GD3、GloboH、グリピカン-3、GM3、gp100、HLA/B-raf、HLA/k-ras、HLA/MAGE-A3、hTERT、LMP2、MAGEタンパク質(例えば、MAGE-1、-2、-3、-4、-6及び-12)、MART-1、メソテリン、ML-IAP、Muc1、Muc16(CA-125)、MUM1、NA17、NY-BR1、NY-BR62、NY-BR85、NY-ES01、OX40、p15、p53、PAP、PAX3、PAX5、PCTA-1、PLAC1、PRLR、PRAME、PSMA(FOLH1)、RAGEタンパク質、Ras、RGS5、Rho、SART-1、SART-3、Steap-1、Steap-2、サバイビン、TAG-72、TGF-β、TMPRSS2、Tn、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ及びウロプラキン-3からなる群より選択される。
【0115】
別の実施形態において、前記抗原は、SSX2、MAGE-A3、NY-ESO-1、iLRP、WT12-281、RNF43及びCEA-NE3からなる群より選択される腫瘍関連抗原である。
【0116】
別の実施形態において、前記抗原は、配列番号44、45、46、47、48、49又は50と少なくとも70%、80%、90%、95%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む腫瘍関連抗原である。
【0117】
別の実施形態において、前記抗原は、配列番号44、45、46、47、48、49及び50からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む腫瘍関連抗原である。
【0118】
抗原は、単一抗原若しくはその抗原性断片、又は少なくとも2つの抗原が融合した融合抗原であってもよい。例えば、抗原は、HPV16 E7タンパク質の単一抗原、又はHPV16 E7とHPV18 E7タンパク質を含む融合抗原であってもよい。融合抗原は、異なる抗原を結合するリンカーを有しても有しなくてもよい。
【0119】
別の実施形態において、前記抗原は、異なる抗原を結合する少なくとも1つのリンカーを有する融合抗原である。
【0120】
別の実施形態において、前記抗原は、異なる抗原を結合する剛性リンカー(EAAAAK)を有する融合抗原である。ここで、nは、0-12、好ましくは2-6、より好ましくは3-4の整数である。言い換えれば、前記剛性リンカーは、0-12、2-6又は3-4繰り返しの配列EAAAAK(配列番号56)を含む。
【0121】
別の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、CD40結合ドメインとフーリン及び/又はカテプシンL切断部位との間に剛性リンカーをさらに含む。前記剛性リンカーは、0-12繰り返しのアミノ酸配列EAAAAK(配列番号56)を含むペプチドリンカーであってもよい。
【0122】
前記剛性リンカーは、(EAAAAK)又は(配列番号56)であってもよい。ここで、nは、0-12、好ましくは2-6、より好ましくは3-4の整数である。
【0123】
別の実施形態において、前記剛性リンカーは、2-6又は3-4繰り返しの配列番号56を含む。
【0124】
別の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、配列番号51、52、53、54又は55と少なくとも90%、95%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は実質的にそれから構成される。
【0125】
別の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、配列番号51、52、53、54及び55からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、又は実質的にそれから構成される。
【0126】
別の態様では、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするDNA断片に関する。本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするDNA断片を含む発現ベクターに関する。本発明は、さらに、本発明の融合タンパク質と、薬学的に許容される担体及び/又は補助剤とを含む医薬組成物に関する。
【0127】
前記医薬組成物は、経皮、経粘膜、鼻咽頭、肺若しくは直接注射、又は全身(例えば、非経口)若しくは局所(例えば、腫瘍内又は病巣内注射)投与に適用される経腸又は非経口剤形であってもよい。 非経口注射は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下又は皮内経路を介して行うことができる。
【0128】
適切な補助剤は、サポニン系補助剤又はトール様受容体(TLR)アゴニスト補助剤を含むが、これらに限定されない。サポニン系補助剤は、GPI-0100、Quil A又はQS-21であってもよい。TLRアゴニスト補助剤は、PolyI:C、モノホスホリル脂質A(MPL)又はCpGオリゴヌクレオチド(例えば、クラスA CpG:CpG1585、CpG2216又はCpG2336;クラスB CpG:CpG1668、CpG1826、CpG2006、CpG2007、CpG BW006又はCpG D-SL01;クラスC CpG:CpG2395、CpG M362又はCpG D-SL03)であってもよい。一実施形態において、前記補助剤は、CpGオリゴヌクレオチドである。
【0129】
前記医薬組成物は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセルの形態で経口投与することもできる。
【0130】
融合タンパク質の投与量は、制御すべき疾患、患者の年齢及び個々の状態、ならびに投与態様に応じて変化し得る。投与量は、所望の治療応答を達成するための本発明の融合タンパク質の治療有効量を得るために、それぞれの特定の場合における個々の要件に合わせることができる。
【0131】
成人患者の場合、1回の投与量は約0.1~50mg、特に約0.1~5mgが考慮される。疾患の重症度と正確な薬物動態プロファイルに応じて、前記融合タンパク質は、週、隔週、又は月に1回の投薬単位で投与することができ、そのような治療を満たすために、サイクルごとに合計で1から6回の投薬単位を与える。
【0132】
別の態様では、本発明は、抗原特異的T細胞免疫応答を誘導して対象における感染症若しくは腫瘍を保護及び/又は治療するための医薬品の製造における本発明の融合タンパク質又は医薬組成物の使用に関する。
【0133】
略語
Rap1:Ras-proximate-1又はRas関連タンパク質1
CD40:分化抗原群40
CDR:相補性決定領域
【0134】
実施例
【0135】
動物腫瘍モデル
【0136】
実施例の6-8のインビボ効力アッセイのために、C57BL/6マウスの肺上皮細胞からのHPV16 E6及びE7発現腫瘍細胞株を用いてマウスHPV16腫瘍モデルを構築した。腫瘍細胞をFBS(10%)及びペニシリン/ストレプトマイシン/アムホテリシンB(50ユニット/mL)含有RPMI1640培地中で、37°C、5%COで増殖させた。
【0137】
配列番号及び組成
【0138】
表1は、配列番号、対応するペプチド、ポリペプチド及び融合タンパク質
【表1】
【0139】
フローサイトメトリー
脾臓細胞を抗原性刺激因子で37℃で2時間刺激した後、50μg/mLのブレフェルジンA及びモネンシンで37℃で2時間処理した。細胞を回収して0.5%BSA含有PBSで洗浄し、APC/Cy7結合抗CD3抗体、erCP/Cy5.5結合抗CD4抗体、FITC結合抗CD8抗体、PE結合抗CD44抗体及びAPC結合抗CD62L抗体で同時に染色した。洗浄した後、細胞を透過処理し、固定し、PE結合抗IFN-γ抗体、PE/Cy7結合抗IL-2抗体及びeFluor450結合抗TNF-α抗体で同時に細胞内染色した。CD8+又はCD4+メモリーT細胞表現型(CD3CD44hiCD62Llo)を有する脾臓細胞の細胞内サイトカイン特性(IFN-γ、IL-2又はTNF-α)は、Galliosフローサイトメーター及びKaluzaソフトウェアによってさらに分析された。
【0140】
酵素結合免疫スポット(ELISpot)アッセイ
脾臓細胞を、抗原性刺激因子の存在下又は非存在下で、前処理したマウスIFN-γ捕捉96ウェルプレート(CTL IMMUNOSPOT(登録商標))に2x10細胞/ウェルの細胞密度でトリプリケートで播種した。37℃で24時間インキュベーションした後、細胞を廃棄した。洗浄後、捕捉されたIFN-γをビオチン結合抗マウスIFN-γ抗体によって室温で2時間検出し、製造元の指示に従ってIFN-γ免疫スポットを作成した。IMMUNOSPOT(登録商標)S5マイクロアナライザー(CTL)によりIFN-γ-免疫スポットのスキャンと計数を実行した。
【0141】
間接酵素免疫測定法(ELISA)
採取した全血サンプルを4℃で30~60分間静置した後、5,000gで10分間遠心分離して血餅をペレット化した。サンプルを-20°Cで保存した。抗原特異的抗体結合用の精製コーティングタンパク質をグアニジンコーティングバッファー(2M塩酸グアニジン、500mM NaHPO、25mMクエン酸、pH4.0~4.4)で希釈し、1μg/ウェルで96ウェルプレートに分配した。4℃で一晩インキュベーションした後、96ウェルプレートをPBS中の1%BSAで37℃で1時間ブロックした。血清サンプルを解凍した後、1%BSA含有PBSで10倍連続希釈した。コーティングされたタンパク質を、1000倍に希釈した血清サンプル100μlと共に37℃で2時間インキュベートした。リン酸緩衝生理食塩水TWEEN(登録商標)-20(PBST)で4回洗浄した後、抗原特異的抗体をホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗マウスIgG(1:10,000希釈、カタログ番号31430、Thermo Fisher Science)により37°Cで30分間検出した。PBSTで4回洗浄した後、100μLのTMB基質の存在下でHRP媒介発色を触媒し、100μLの1N HClでクエンチした。450nmでの吸光度で血清サンプル中の抗原特異的抗体の相対力価を決定した。
【0142】
統計分析
t検定により全ての比較の有意性を計算し、p<0.05の場合、結果は有意であると見なされた。
【0143】
実施例1
【0144】
CD40L47-261-TPE-E7及び18sCD40L-TPE-E7の発現ベクターの構築
【0145】
図5A-Eは、本発明の融合タンパク質の様々な実施形態を示す。
【0146】
融合タンパク質CD40L47-261-TPE-E7(配列番号51;図5A)は、(a)短縮型CD40リガンドCD40L47-261(配列番号18)、(b)(EAAAAK)(配列番号3)及びRXRXR(配列番号2)(ここで、XはA、XはY、XはKである)を含む切断可能なリンカー、(c)配列番号5のPEトランスロケーションペプチド(PE280-305)、及び(d)配列番号38のHPV16 E7タンパク質及び配列番号39のHPV18 E7タンパク質を含む融合抗原HPV16/18 E7を含む。
【0147】
以下のようにCD40L47-261-TPE-E7(図1)の発現ベクターを構築する。
CD40L47-261、切断可能なリンカー及びPEトランスロケーションペプチド(PE280-305)を含むHindIIICD40L-リンカー-PENcoI,XhoI,SalIをコードするDNA断片をPCR合成し、HindIII/SalIで消化し、HindIII/XhoI切断部位を持つプラスミドpTAC-MAT-Tag-2に結合してプラスミドP07-His-pNCを得た(図2)。その後、Hisタグ付き融合抗原HPV16/18 E7をコードするDNA断片を制限酵素NcoI/XhoIを介してプラスミドP07-His-pNC(図2)に挿入し、融合タンパク質CD40 L47-261-TPE-E7の発現ベクターを生成した(図1)。
【0148】
切断可能なリンカーにより、フーリン及び/又はカテプシンLプロテアーゼは、融合タンパク質を切断してTPE-E7断片を融合タンパク質から放出することができる。
【0149】
上記と同様の方法により、他の目的の抗原を用いてE7を置換し、図2のプラスミドに挿入して、本発明の目的抗原を含む融合タンパク質のための図1のプラスミドに類似する発現ベクターを生成することができる。
【0150】
上記の同様の方法により、融合タンパク質18sCD40L-TPE-E7(配列番号52;図5B)の発現ベクターを構築した。ここで、短縮型CD40リガンドCD40L47-261(配列番号18)の代わりに、他の短縮型CD40リガンドCD40L108-261(配列番号19)である18sCD40Lを用いた。
【0151】
実施例2
【0152】
E7-TStx-CD40L47-261及びE7-TStx-18sCD40Lの発現ベクターの構築
【0153】
融合タンパク質E7-TStx-CD40L47-261(配列番号53;図5C)は、(a)融合抗原HPV16/18 E7(HPV16 E7タンパク質(配列番号38)及びHPV18 E7タンパク質(配列番号39)を含む)、(b)配列番号14のStxトランスロケーションペプチド(Stx211-247)、(c)配列番号1のRXR(XはV、XはAである)及び配列番号3の(EAAAAK)を含む切断可能なリンカー、並びに(d)配列番号18の短縮型CD40リガンド(CD40L47-261)を含む。
【0154】
以下のように、E7-TStx-CD40L47-261図3)の発現ベクターを構築する。
【0155】
Stxトランスロケーションペプチド(Stx211-247)、切断可能なリンカー及びCD40L47-261を含むHindIII, XhoIStx-リンカー-CD40LSalIをコードするDNA断片をPCR合成し、HindIII/SalIで消化し、HindIII/XhoI切断部位を有するプラスミドpTAC-MAT-Tag-2バックボーンに結合してプラスミドP08(RP)-His-pNCを得た(図4)。その後、Hisタグ付き融合抗原HPV16/18 E7をコードする他のDNA断片を制限酵素HindIII/XhoIを介してプラスミドP08(RP)-His-pNC(図4)に挿入し、発現ベクターE7-TStx-CD40L47-261を生成した(図3)。
【0156】
切断可能なリンカーは、本発明の融合タンパク質にとって重要である。切断可能なリンカーにより、融合タンパク質は、E7-TStx断片が融合タンパク質から放出されるようにフーリン及び/又はカテプシンLプロテアーゼによって切断され得る。.例えば、図5Cを参照されたい。
【0157】
上記と同様の方法により、様々な病原体又はがんからの他の目的の抗原を用いてE7を置換し、図4のプラスミドに挿入して、本発明の目的抗原を含む融合タンパク質のための図3のプラスミドに類似する発現ベクターを生成することができる。
【0158】
上記の同様の方法により、融合タンパク質E7-TStx-18sCD40L(配列番号54;図5D)の発現ベクターを構築した。ここで、短縮型CD40リガンドCD40L47-261(配列番号18)の代わりに、他の短縮型CD40リガンドCD40L108-261(配列番号19)である18sCD40Lを用いた。
【0159】
比較のために、米国特許第9,481,714B2号に開示された従来の構築物(実施例1)とほぼ同一であり、融合タンパク質RAP1-CD28convPE-E7-K3(本発明において「RAP1-E7」とも呼ばれる)を構築した。RAP1-CD28convPE-E7-K3(本発明において「RAP1-E7」とも呼ばれる)は、RAP1ドメインIII、CD28配列、リンカー、PEトランスロケーションドメインII(PE268-313)、抗原E7タンパク質、及び小胞体保持配列を含む。本明細書で使用される抗原E7タンパク質は、融合抗原HPV16/18 E7であり、HPV16 E7タンパク質(配列番号38)及びHPV18 E7タンパク質(配列番号39)を含むのに対し、先行技術で使用される抗原E7タンパク質は、HPV16 E7タンパク質である。
【0160】
実施例3
【0161】
HBx-preS1-TStx-18sCD40Lの発現ベクターの構築
【0162】
融合タンパク質HBx-preS1-TStx-18sCD40L(配列番号55;図5E)は、(a)配列番号40のHBXタンパク質及び配列番号41のHBV preS1タンパク質を含む融合抗原HBx-preS1、(b)配列番号14のStxトランスロケーションペプチド(Stx211-247)、(c)配列番号1のRXR(XはV、XはAである)及び配列番号3の(EAAAAK)を含む切断可能なリンカー、並びに(d)配列番号19の短縮型CD40リガンド(18sCD40L)を含む。
【0163】
実施例2と同様の方法により、融合タンパク質HBx-preS1-TStx-18sCD40Lの発現ベクターを構築した。ここで、上記のように、使用される短縮型CD40リガンドは、18sCD40Lであり、使用される抗原は、融合抗原HBx-preS1であった。
【0164】
実施例4
【0165】
タンパク質発現
【0166】
タンパク質発現ベクターCD40L47-261-TPE-E7を含む大腸菌BL21細胞を、選択した抗生物質を適切な濃度で含むZY培地(10g/Lトリプトン及び5g/L酵母抽出物)に37°Cで接種した。培養が初期対数期に達したとき(OD600=2~5)、イソプロピル-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド(IPTG)(0.5~2mM)により融合タンパク質の発現を誘導した。4時間のIPTG誘導後に細胞を回収し、超音波処理により破壊した。過剰発現した融合タンパク質を回収するために、封入体を分離し、可溶化バッファー(6M塩酸グアニジン、20mMリン酸カリウム、500mM NaCl、20mMイミダゾール、1mM DTT、pH7.4)で可溶化した。精製後、20~50倍量の透析緩衝液(10mM PBS)において4℃で一晩透析することにより融合タンパク質のリフォールディングを行った。リフォールディングされた融合タンパク質を、還元(ジチオスレイトールあり;+DTT)及び非還元(ジチオスレイトールなし;-DTT)条件下でSDS-PAGE分析にかけ、適切にリフォールディングされたかどうかを評価した。
【0167】
以下の融合タンパク質も、上記と同様の方法により発現及びリフォールディングされた。(1)18sCD40L-TPE-E7、(2)E7-TStx-CD40L47-261、(3)E7-TStx-18sCD40L、(4)RAP1-E7、(5)CD40L47-261-TPE-HBx-preS1、(6)18sCD40L-TPE-HBx-preS1、(7)HBx-preS1-TStx-CD40L47-261、(8)HBx-preS1-TStx-18sCD40L、(9)CD40L47-261-TPE-HCVコア、(10)18sCD40L-TPE-HCVコア、(11)HCVコア-TStx-CD40L47-261、(12)HCVコア-TStx-18sCD40L、(13)CD40L47-261-TPE-CoV2S、(14)18sCD40L-TPE-CoV2S、(15)CoV2S-TStx-CD40L47-261、(16)CoV2S-TStx-18sCD40L、(17)CD40L47-261-TPE-SSX2、(18)18sCD40L-TPE-SSX2、(19)SSX2-TStx-CD40L47-261、(20)SSX2-TStx-18sCD40L。融合タンパク質CD40L47-261-TPE-E7、18sCD40L-TPE-E7、E7-TStx-18sCD40L、RAP1-E7及びHBx-preS1-TStx-18sCD40Lは、以下の実験において免疫原性分析又は有効性分析にさらに供された。
【0168】
実施例5
【0169】
融合タンパク質の免疫原性分析
【0170】
雌C57BL/6NCrlBltwマウス(5-6週齢)を5群(n=5)にランダムに分けた。(A)プラセボ(即ち、PBS)、(B)融合タンパク質CD40L47-261-TPE-E7(100μg)、(C)融合タンパク質18sCD40L-TPE-E7(100μg)、(D)融合タンパク質E7-TStx-18sCD40L(100μg)、及び(E)融合タンパク質RAP1-E7(100μg)。融合タンパク質をPBSに透析した。動物群BからEでは、CpG1826(50μg)を補助剤として使用した。各群については、0日目から7日間隔で皮下(s.c.)で3回の免疫化を受けた。血液サンプルを0、7及び14日目に収集した。21日目に、血液サンプルを採取し、脾臓細胞をFBS(10%)及びPSAを含むRPMI1640培地に再懸濁した。
【0171】
脾臓細胞を使用して、抗原刺激の存在下又は非存在下で、CD8及びCD4メモリーT細胞における細胞内サイトカイン誘導(IFN-γ、IL-2、及び TNF-α)を分析した。簡単に言えば、各動物群からの脾臓細胞を、抗原E7タンパク質(2μg/mLのHPV16 E7ペプチドプール)の有無にかかわらず処理した後、フローサイトメトリーで分析した。各マウス群における細胞内サイトカイン誘導の程度又はレベルは、相対サイトカイン誘導として表され、刺激抗原E7の存在下でのサイトカイン/CD8及びサイトカイン/CD4脾臓細胞の頻度を非刺激(未処理)対照の頻度に正規化することによって得られた。
【0172】
脾臓細胞は、酵素結合免疫スポット(ELISpot)アッセイを使用して、抗原刺激(2μg/mLのHPV16 E7ペプチドプール)の存在下又は非存在下でのIFN-γ分泌脾臓細胞の頻度を分析するためにも使用された。結果は、百万個の脾臓細胞あたりのIFN-γ免疫スポットとして表された。
【0173】
血液サンプルを用いてELISAにより血清HPV16 E7特異的及びHPV18 E7特異的抗体のレベルを分析した。精製されたHPV16 E7及びHPV18 E7組換えタンパク質は、それぞれコーティングタンパク質として使用された。
【0174】
図6は、HPV16 E7ペプチドプールによる脾臓細胞の抗原刺激後のサイトカイン誘導結果を示す。融合タンパク質CD40L47-261-TPE-E7、18sCD40L-TPE-E7又はE7-TStx-18sCD40L(群B-D)で免疫化した動物からのCD8メモリーT細胞におけるIL2ではなくIFN-γ及びTNF-αの相対サイトカイン誘導は全て、RAP1-E7処理群(群E)又はプラセボ群(群A)と比較して顕著に増加した。動物群B-Eでは、CD8メモリーT細胞におけるIL-2及びCD4メモリーT細胞におけるサイトカインIFN-γ、IL-2又はTNF-αの相対サイトカイン誘導は、わずかに増加したが、プラセボ群(群A)と比較して有意差を示さなかった。
【0175】
それにもかかわらず、本発明の融合タンパク質は、抗原HPV16 E7の刺激に応答してCD8メモリーT細胞においてIFN-γ及びTNF-αの発現を誘導する点で、先行技術の融合タンパク質よりも優れていると結論付けることができる。
【0176】
図7は、インビトロでHPV16 E7ペプチドプールで刺激された脾臓細胞におけるIFN-γ+免疫スポットを示す。それぞれCD40L47-261-TPE-E7、18sCD40L-TPE-E7、E7-TStx-18sCD40L及びRAP1-E7(群B-E)で刺激された動物群からのIFN-γ分泌脾臓細胞の頻度は、プラセボ群と比較して顕著に増加した。特に、E7-TStx-18sCD40Lは、CD40L47-261-TPE-E7と比較して顕著により高いIFN-γ分泌細胞の頻度を誘導した(p=0.035)。
【0177】
この結果は、本発明の融合タンパク質が抗原性HPV16 E7ペプチドプールによる刺激時又は刺激後にIFN-γ分泌T細胞集団を顕著に増加できることを示している。
【0178】
図8は、様々な融合タンパク質で0、7及び14日目に刺激された動物における血清HPV16 E7特異的抗体のレベルを示す。CD40L47-261-TPE-E7、18sCD40L-TPE-E7又はE7-TStx-18sCD40Lを接種した動物(それぞれ群B-D)では、HPV16 E7特異的抗体のレベルは、7日目の2回目のワクチン接種後に増加し始め、14日目の3回目のワクチン接種後にさらに上昇した。21日目に、群B-D動物では、血清HPV16 E7特異的抗体のレベルは、プラセボ及びRAP1-E7(即ち、RAP1-CD28convPEt- E7-K3)を接種した動物群よりも高い。
【0179】
融合タンパク質RAP1-E7(RAP1-CD28convPEt-E7-K3)は、2回のワクチン接種(0日目及び7日目)後にHPV16 E7特異的抗体レベルを誘発することができなかった。それは14日目の3回目のワクチン接種後にHPV16 E7特異的抗体を誘導し始め、血清抗体レベルはグループB~Dと比較して21日目にわずかであった。それに対し、本発明の融合タンパク質は、0日目及び7日目にワクチンを2回接種した後、血清HPV16 E7特異的抗体レベルを誘導した。
【0180】
上記と同じレジメンと免疫化スケジュールを使用して動物にRAP1-CD28convPEt-HBx-K3(「RAP1-HBx」と呼ぶ)をワクチン接種した場合にも、HBx特異的抗体の誘導における同様の効果が観察された。融合タンパク質RAP1-HBxは、RAP1-E7(RAP1-CD28convPEt-E7-K3)のE7抗原の代わりにHBx抗原を使用して生成された。融合タンパク質RAP1-HBxは、14日目の3回目のワクチン接種後に血清HBx特異的抗体レベルを誘導し、21日目の血清抗体レベルは、本発明の融合タンパク質をワクチン接種された動物と比較してわずか(modest)であった(データは示していない)。
【0181】
図9は、様々な融合タンパク質で0、7及び14日目に免疫化した動物における血清HPV18 E7特異的抗体のレベルを示す。融合タンパク質CD40L47-261-TPE-E7、18sCD40L-TPE-E7及びE7-TStx-18sCD40L(それぞれ群B-D)は、プラセボ群と比較して血清HPV18 E7特異的抗体のレベルを顕著に増加させた。
【0182】
したがって、本発明の融合タンパク質は、抗原特異的抗体の誘導に有効であり、抗体の誘導は2回のワクチン接種後に起こる。
【0183】
以上より、本発明の融合タンパク質は、抗原特異的T細胞応答を誘導し、炎症誘発性サイトカイン、例えばIFN-γ及びTNF-αの発現を増加させ、抗原特異的抗体応答を引き起こすことができる。
【0184】
実施例6
【0185】
融合タンパク質のインビボ効力アッセイ
【0186】
雌C57BL/6NCrlBltwマウス(5から6週齢)を5群にランダムに分け、PBS(群A、プラセボ、n=4)又は下記の融合タンパク質の1つで処理した:群B、CD40L47-261-TPE-E7(25μg;n=5);群C、18sCD40L-TPE-E7(25μg;n=4);群D、E7-TStx-18sCD40L(25μg;n=5);及び群E、RAP1-E7(25μg;n=5)。融合タンパク質をPBSに溶解し、CpG1826(50μg)を群BからEの動物にワクチン接種する際の補助剤として使用した。図10は、免疫化スケジュール、融合タンパク質及び投与量を示す。
【0187】
マウスにチャレンジするために、腫瘍細胞(1×10/0.1mL)を0日目に各マウスの左側腹部に皮下注射した。7日目、14日目、21日目に3回の免疫化が皮下で行われた。腫瘍サイズは、修正された楕円体式(腫瘍サイズ=1/2(長さ×幅))に基づくキャリパー測定値を乗算することにより、週に2回決定した。生存率及び無腫瘍率を計算した。腫瘍の長さが2cmを超えるマウスは死亡したと見なされ、測定可能又は触知可能な腫瘍塊のないマウスは腫瘍がないと見なされた。
【0188】
接種された腫瘍はプラセボ群で急速に発達し、2匹の動物が25日目に死亡したため、プラセボ群のデータは21日目までしか示さなかった(図11)。群C及び群Dの動物(それぞれ18sCD40L-TPE-E7及びE7-TStx-18sCD40Lで免疫)の腫瘍塊は、少なくとも全実験期間中(最終日は39日目)ほぼ完全に抑制された。群B及び群Eの動物(それぞれCD40L47-261-TPE-E7及びRAP1-E7で免疫)の腫瘍は、最初は十分に制御されたが、免疫化を中止すると徐々に成長した。
【0189】
上記の結果は、本発明の融合タンパク質、特に融合タンパク質18sCD40L-TPE-E7及びE7-TStx-18sCD40Lが腫瘍の増殖を効果的に抑制できることを示している。
【0190】
動物群B-E(それぞれCD40L47-261-TPE-E7、18sCD40L-TPE-E7、E7-TStx-18sCD40L及びRAP1-E7で免疫化した)の生存率は、35日目に0%に低下したプラセボ群と比較して35日目に100%維持された(図12)。
【0191】
上記の結果は、本発明の融合タンパク質が動物腫瘍モデルにおいて生存率を効果的に維持できることを示している。
【0192】
実験期間全体(39日間)を通して、群A、B及びEの動物には腫瘍のない動物が見つからなかった(図13)。群Cの1匹(25%)と群Dの3匹(60%)(それぞれ18sCD40L-TPE-E7及びE7-TStx-18sCD40Lで免疫化した)は測定可能又は触知可能な腫瘍なしで生存していることが分かった。特に、これらの腫瘍のないマウスでは、18sCD40L-TPE-E7又はE7-TStx-18sCD40Lによる3回の免疫化の完了直後に、腫瘍塊が全て排除された。
【0193】
上記の結果は、本発明の融合タンパク質が腫瘍を有する動物の無腫瘍率の向上において、先行技術の融合タンパク質RAP1-E7よりも効果的である。
【0194】
実施例7
【0195】
18sCD40L-TPE-E7の異なる用量でのインビボ有効性分析
【0196】
雌C57BL/6NCrlBltwマウス(4から6週齢)を5群にランダムに分けた(n=5/群):(A)プラセボ(PBS);(B)18sCD40L-TPE(100μg;融合抗原E7なし);(C)18sCD40L-TPE-E7(100μg);(D)18sCD40L-TPE-E7(50μg);(E)18sCD40L-TPE-E7(25μg)。群BからEにおいて、融合タンパク質をPBSに溶解し、CpG1826(50μg)を補助剤として使用した。腫瘍細胞(1×10/0.1mL)を0日目に各マウスの左側腹部に皮下注射した。チャレンジの2週間後、腫瘍マウスに14日目、21日目、28日目に3回ワクチン接種した。
【0197】
腫瘍体積を決定した。融合タンパク質18sCD40L-TPE-E7の全ての投与量(25μg、50μg又は100μg)は、強力な腫瘍増殖抑制効果を示した。融合タンパク質による腫瘍サイズの抑制は、14日目の最初の注射後に見られ、34日目の観察の最終日まで、実験期間全体を通して持続した。プラセボ及び18sCD40L-TPEは、どちらも抗原E7を欠き、腫瘍増殖抑制に効果がなかった(図14)。
【0198】
実施例8
【0199】
E7-TStx-18sCD40Lの異なる用量でのインビボ有効性分析
【0200】
マウスをグループ分けし、腫瘍細胞でチャレンジし、14、21、28日目に融合タンパク質を投与し、実施例7と同様の方法を使用して腫瘍サイズを測定した。なお、群BからEのマウスに以下のようにワクチン接種した:それぞれ(B)TStx-18sCD40L(100μg;融合抗原E7なし);(C)E7-TStx-18sCD40L(100μg);(D)E7-TStx-18sCD40L(50μg);及び(E)E7-TStx-18sCD40L(25μg)。融合タンパク質E7-TStx-18sCD40Lの全ての投与量(25μg、50μg又は100μg)は、腫瘍増殖の抑制に強力な効果を示した(図15)。融合タンパク質による腫瘍サイズの抑制は、最初の接種後に見られ、34日目の観察の最終日まで、実験期間全体を通して持続した。プラセボ及びTStx-18sCD40Lは、どちらも抗原E7を欠き、腫瘍増殖抑制に効果がなかった(図15)。
【0201】
したがって、本発明の融合タンパク質は、優れた治療効果で腫瘍増殖を抑制する強力な効果を有する。
【0202】
実施例9
【0203】
ワクチン接種回数:HBx-preS1-TStx-18sCD40Lの免疫原性分析
【0204】
図16は、各動物群の投与スケジュールを示す。C57BL/6JNarl雌マウス(5週齢)を4群にランダムに分けた(n=5/群):(1)プラセボ群;(2)D0-D7-D14群(3回投与、0、7、14日目にワクチン接種);(3)D7-D14群(2回投与、7、14日目にワクチン投与);及び(4)D14群(1回投与、14日目にワクチン接種)。プラセボ群については、0、7及び14日目にPBSを皮下投与した。他の群のマウスについては、図16に示される投与スケジュールに従ってCpG1826ODN(50μg)を補助剤として添加したHBx-preS1-TStx-18sCD40L(100 μg)を皮下投与した。血液サンプルを0、7、14及び21日目に採取した。21日目に、動物を安楽死させ、脾臓細胞を収集して培養した。抗原性刺激因子(HBx特異的ペプチドプール、即ち、HBV32aa重複9ペプチド)の存在下及び非存在下でのIFN-γ分泌脾臓細胞の頻度を、それぞれELISpotアッセイにより分析した。血清HBx特異的抗体のレベルを、精製HBx組換えタンパク質をコーティングタンパク質として使用したELISAにより分析した。
【0205】
図17は、各動物群においてインビトロでHBV 32aa重複9ペプチドプールで刺激された脾臓細胞におけるIFN-γ免疫スポットを示す。結果として、3回投与、2回投与及び1回投与で免疫化した動物群(それぞれ群D0-D7-D14、D7-D14及びD14)からの脾臓細胞は全て、プラセボ群と比較してIFN-γ分泌脾臓細胞の頻度において顕著な増加を示した。IFN-γ分泌脾臓細胞の頻度は、免疫の回数と正の相関があった。群D0-D7-D14(3回ワクチン接種)は、IFN-γ分泌脾臓細胞の最良の誘導を示した。
【0206】
対照的に、HBx-preS1-TStx-18sCD40Lの単一の初回投与(D14群)は、明らかにHBx特異的抗体応答を誘導しなかった。しかし、2回目の免疫化は抗体レベルを中程度に増加させ(D7-D14群)、動物群D0-D7-D14で示されるように、3回目の投与は抗体レベルをさらに増加させた(図18)。体液性応答の誘導における投与回数依存効果は、細胞性免疫応答の誘導における効果と一致する。融合タンパク質は、投与回数依存的にIFN-γ産生を誘導するのに有効である(図17)。
【0207】
したがって、融合タンパク質HBx-preS1-TStx-18sCD40Lは、2回の免疫化後、HBx特異的T細胞媒介性免疫応答及びHBx特異的体液性免疫応答を効果的に誘導することができ、複数回のワクチン接種によってさらに促進することができる。
【0208】
例示的な実施形態の前述の説明は、例示及び説明のみを目的として提示されたものであり、開示された正確な形態に本発明を限定するために網羅的であることを意図していない。本明細書で引用及び議論された全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、各参考文献が個々に参照により組み込まれるのと同程度に組み込まれる。
図1
図2
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図5
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図7
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【配列表】
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