(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】フラックス転写装置、フラックス転写方法及び実装装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
H05K3/34 503B
H05K3/34 512B
(21)【出願番号】P 2023541200
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 JP2021029839
(87)【国際公開番号】W WO2023017620
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信一
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-009498(JP,A)
【文献】特開2006-269626(JP,A)
【文献】特開2009-016650(JP,A)
【文献】特開2003-060398(JP,A)
【文献】特開2008-159845(JP,A)
【文献】特開2007-294776(JP,A)
【文献】特開2007-281024(JP,A)
【文献】特開平10-326807(JP,A)
【文献】特開2015-054328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の電極形成面にフラックスを転写するフラックス転写装置であって、
フラックスを貯留する転写ステージと、
前記電子部品の前記電極形成面を前記転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬するように前記電子部品を保持面で保持する保持ツールと、
フラックス転写後の前記電子部品の前記電極形成面の撮像画像を取得する撮像部と、
前記撮像画像と、フラックスの塗布状態の基準状態とを比較し、前記電子部品に転写されたフラックスの転写状況を検出することにより、前記転写ステージに対する前記保持面の傾きを算出する検出部と、
を備える、
フラックス転写装置。
【請求項2】
前記傾きに基づいて前記保持ツールの姿勢を調整可能に構成された第1の調整部をさらに備える、
請求項
1に記載のフラックス転写装置。
【請求項3】
前記傾きに基づいて前記転写ステージの姿勢を調整可能に構成された第2の調整部をさらに備える、
請求項
1または2に記載のフラックス転写装置。
【請求項4】
前記撮像部は、フラックス転写後の前記電子部品の前記電極形成面を下方から撮像する、
請求項1に記載のフラックス転写装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記撮像画像と、フラックスが正常に転写された後の電子部品の電極形成面から取得された基準画像が示す、フラックスの塗布状態の前記基準状態とを比較する、
請求項
3に記載のフラックス転写装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記撮像画像から少なくとも1つのサブエリアの画像を取得し、前記少なくとも1つのサブエリアにおいて基準画像と比較する、
請求項
5に記載のフラックス転写装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのサブエリアは、前記電極形成面の角部に設けられた角部サブエリアを含む、
請求項
6に記載のフラックス転写装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのサブエリアは、前記電極形成面の長辺又は短辺に沿って延在する帯状サブエリアを含む、
請求項
6又は7に記載のフラックス転写装置。
【請求項9】
前記保持ツールは、前記電子部品を対象物に実装するボンディングツールである、
請求項1から
8のいずれか1項に記載のフラックス転写装置。
【請求項10】
電子部品の電極形成面にフラックスを転写するフラックス転写方法であって、
転写ステージにフラックスを貯留することと、
前記電子部品を保持ツールの保持面で保持することと、
前記電子部品の前記電極形成面を前記転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬させることと、
フラックス転写後の前記電子部品の前記電極形成面の撮像画像を取得することと、
前記撮像画像と、フラックスの塗布状態の基準状態とを比較し、前記電子部品に転写されたフラックスの転写状況を検出することにより、前記転写ステージに対する前記保持面の傾きを算出することと、
を含む、
フラックス転写方法。
【請求項11】
前記傾きに基づいて、前記転写ステージ又は前記保持ツールの姿勢を調整することをさらに含む、
請求項
10に記載のフラックス転写方法。
【請求項12】
前記電子部品を対象物に実装させずに開放し、別の電子部品の電極形成面を前記転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬させることをさらに含む、
請求項
11に記載のフラックス転写方法。
【請求項13】
前記電子部品を再び前記転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬させることをさらに含む、
請求項
11に記載のフラックス転写方法。
【請求項14】
電極形成面にフラックスが転写された電子部品を対象物に実装する実装装置であって、
フラックスを貯留する転写ステージと、
前記電子部品の前記電極形成面を前記転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬するように前記電子部品を保持面で保持するとともに、前記電子部品を前記対象物に実装する実装ツールと、
フラックス転写後の前記電子部品の前記電極形成面の撮像画像を取得する撮像部と、
前記撮像画像と、フラックスの塗布状態の基準状態とを比較し、前記電子部品に転写されたフラックスの転写状況を検出することにより、前記転写ステージに対する前記保持面の傾きを算出する検出部と、
を備える、
実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、フラックス転写装置、フラックス転写方法及び実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フリップチップボンディング方法などによる電子部品の実装には、一般に半田接合が広く用いられている。このフリップチップボンディング方法においては、半田と電極との接続性を高めるために、電子部品の電極形成面にフラックス(酸化膜除去剤、表面活性剤、等)を転写してから、電子部品を基板の上に実装する方法が用いられている。フラックスの量が半田付け品質を左右するため、フラックス転写装置には転写不良を検知する機構が備えられている場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、転写ステージのフラックス浸漬エリアに光を照射する照明と、フラックス浸漬エリアの画像を撮像する撮像手段と、撮像手段によって撮像された画像と予め登録されている画像とを比較し、撮像手段によって撮像された画像の良否を判定する制御手段とを有する、フラックス転写装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明によれば、フラックス成膜時の平坦度不良に起因したフラックスの転写不良を防止し、基板への電子部品の実装不良を低減することができる。
【0006】
しかしながら、転写ステージ上に設けられたフラックスに対して、電子部品の電極形成面が傾いている場合、特許文献1に記載の共振装置では充分に転写不良を抑制できない場合がある。
【0007】
本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本願発明の目的は、転写不良を抑制することができるフラックス転写装置、フラックス転写方法及び実装装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の一態様に係るフラックス転写装置は、電子部品の電極形成面にフラックスを転写するフラックス転写装置であって、フラックスを貯留する転写ステージと、電子部品の電極形成面を転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬するように電子部品を保持面で保持する保持ツールと、フラックス転写後の電子部品の電極形成面、及び、フラックス転写後の転写ステージのうち、少なくとも一方の撮像画像を取得する撮像部と、撮像画像に基づいて、転写ステージに対する保持面の傾きを検出する検出部と、を備える。
【0009】
この態様によれば、例えば、転写ステージに対する保持面の傾きが略ゼロになるように試作を繰り返すことで、フラックスの転写不良を抑制することができる。特に、電子部品が大型化した場合、すなわち、転写ステージに対する保持面の傾きが、電極形成面の端部におけるフラックスの転写不良に大きく影響する場合において、効果的に転写不良を抑制することができる。
【0010】
上記態様において、傾きに基づいて保持ツールの姿勢を調整可能に構成された第1の調整部をされに備えてもよい。
【0011】
これによれば、転写ステージの姿勢を変更することによるフラックスの液面の変動を抑制することができる。したがって、転写ステージの姿勢の調整に起因した転写不良の発生を抑制することができる。
【0012】
上記態様において、傾きに基づいて転写ステージの姿勢を調整可能に構成された第2の調整部をさらに備えてもよい。
【0013】
これによれば、保持ツールの姿勢を調整することなく、転写ステージに対する保持ツールの傾きを調整することができる。したがって、保持ツールの姿勢を調整する時の変位誤差の発生を抑制することができる。
【0014】
上記態様において、撮像部は、フラックス転写後の電子部品の電極形成面を下方から撮像してもよい。
【0015】
これによれば、撮像部が取得した撮像画像を基に、転写ステージに対する電子部品の傾きの検出だけではなく、電極形成面の面内方向における電子部品の位置ずれも検出することができる。
【0016】
上記態様において、検出部は、撮像画像と、フラックスが正常に転写された後の電子部品の電極形成面から取得された基準画像とを比較してもよい。
【0017】
これによれば、視認性が低く画像解析で検出し難いフラックスであっても、撮像画像と基準画像との差分の画像解析によって、精度良く検出することができる。
【0018】
上記態様において、検出部は、撮像画像から少なくとも1つのサブエリアの画像を取得し、少なくとも1つのサブエリアにおいて基準画像と比較してもよい。
【0019】
これによれば、電極形成面の全体の撮像画像と基準画像とを比較する場合に比べて、検出にかかる時間を短縮することができる。
【0020】
上記態様において、少なくとも1つのサブエリアは、電極形成面の角部に設けられた角部エリアを含んでもよい。
【0021】
これによれば、転写ステージに対する保持ツールの傾きが変化したときに、最も大きく変位する角部サブエリアにおけるフラックスの転写の成否を判定することで、迅速に電極形成面の全体におけるフラックスの転写不良について評価することができる。
【0022】
上記態様において、少なくとも1つの撮像エリアは、電極形成面の長辺又は短辺に沿って延在する帯状エリアを含んでもよい。
【0023】
これによれば、帯状サブエリアにおける転写不良の位置を特定することで、転写ステージに対する保持ツールの傾きの角度を算出することができる。
【0024】
上記態様において、保持ツールは、電子部品を対象物に実装するボンディングツールであってもよい。
【0025】
本願発明の他の一態様に係るフラックス転写方法は、電子部品の電極形成面にフラックスを転写するフラックス転写方法であって、転写ステージにフラックスを貯留することと、電子部品を保持ツールの保持面で保持することと、電子部品の電極形成面を転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬させることと、フラックス転写後の電子部品の電極形成面、及び、フラックス転写後の転写ステージのうち、少なくとも一方の撮像画像を取得することと、撮像画像に基づいて、転写ステージに対する保持面の傾きを検出することと、を含む。
【0026】
この態様によれば、例えば、転写ステージに対する保持面の傾きが略ゼロになるように試作を繰り返すことで、フラックスの転写不良を抑制することができる。特に、電子部品が大型化した場合、すなわち、転写ステージに対する保持面の傾きが、電極形成面の端部におけるフラックスの転写不良に大きく影響する場合において、効果的に転写不良を抑制することができる。
【0027】
上記態様において、傾きに基づいて、転写ステージ又は保持ツールの姿勢を調整することをさらに含んでもよい。
【0028】
上記態様において、電子部品を対象物に実装させずに開放し、別の電子部品の電極形成面を転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬させることをさらに含んでもよい。
【0029】
上記態様において、電子部品を再び転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬させることをさらに含んでもよい。
【0030】
これによれば、フラックスの転写が不十分な電子部品についても再利用することで、電子部品の損失を低減することができる。
【0031】
本願発明の他の一態様に係る実装装置は、電極形成面にフラックスが転写された電子部品を対象物に実装する実装装置であって、フラックスを貯留する転写ステージと、電子部品の電極形成面を転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬するように電子部品を保持面で保持するとともに、電子部品を対象物に実装する実装ツールと、フラックス転写後の電子部品の電極形成面、及び、フラックス転写後の転写ステージのうち、少なくとも一方の撮像画像を取得する撮像部と、撮像画像に基づいて、転写ステージに対する保持面の傾きを検出する検出部と、を備える。
【0032】
この態様によれば、例えば、転写ステージに対する保持面の傾きが略ゼロになるように試作を繰り返すことで、フラックスの転写不良に起因した実装不良を抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
本願発明によれば、転写不良を抑制することができるフラックス転写装置、フラックス転写方法及び実装装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第1実施形態に係るフラックス転写装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る姿勢制御ユニットの構成を概略的に示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るフラックス転写装置を用いたフラックス転写方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図5】電極形成面の撮像画像とサブエリアの一例を示す図である。
【
図6】電極形成面の撮像画像とサブエリアの別の一例を示す図である。
【
図7】第2実施形態に係る姿勢制御ユニットの構成を概略的に示す図である。
【
図8】第3実施形態に係る姿勢制御ユニットの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本願発明の実施形態について説明する。本実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0036】
<第1実施形態>
まず、
図1及び
図2を参照しつつ、本願発明の第1実施形態に係るフラックス転写装置1の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係るフラックス転写装置の構成を概略的に示す図である。
図2は、第1実施形態に係る姿勢制御ユニットの構成を概略的に示す図である。
【0037】
フラックス転写装置1は、搬送ユニット10と、転写ユニット20と、姿勢制御ユニット30と、実装ユニット40とを備えている。
【0038】
搬送ユニット10は、電子部品CPを搬送する。具体的には、搬送ユニット10は、転写ユニット20と姿勢制御ユニット30との間、及び、姿勢制御ユニット30と実装ユニット40との間で電子部品CPを搬送可能に構成されている。搬送ユニット10は、図示を省略したフィーダから取り出した電子部品CPを転写ユニット20に搬送し、フラックスFXが転写された電子部品CPを姿勢制御ユニット30に搬送し、電極形成面CPaが撮像された電子部品CPを実装ユニット40に搬送する。搬送ユニット10は、電極形成面CPaが撮像された電子部品CPを、再び転写ユニット20に搬送してもよく、図示を省略したトレイに開放してもよい。
【0039】
搬送ユニット10は、ボンディングヘッド11と、アクチュエータ17とを備えている。ボンディングヘッド11は、電子部品CPを保持する。アクチュエータ17は、ボンディングヘッド11を3軸方向に移動させる。
【0040】
ボンディングヘッド11は、保持ツール13と、傾き調整機構15とを備えている。
【0041】
保持ツール13は、保持面13aに電子部品CPを着脱可能に保持する。保持ツール13は、例えば、電子部品CPを真空吸着することで保持する吸着コレットである。吸着コレットの場合、例えば保持面13aは吸引穴が設けられた平面であり、電子部品CPは、保持面13aに接触して保持されてもよく、保持面13aから間隔を空けて保持されてもよい。但し、電子部品CPの電極形成面CPaを転写ステージ21のフラックスFXに浸漬させるように電子部品CPを保持できるのであれば、保持ツール13は吸着コレットに限定されるものではない。保持ツール13は、傾き調整機構15に取り付けられている。
【0042】
傾き調整機構15は、保持ツール13の姿勢を調整可能に構成されている。
【0043】
傾き調整機構15は、例えば、転写ステージ21に貯留されたフラックスFXの表面と電子部品CPの電極形成面CPaとが略平行となるように、転写ステージ21に対する保持ツール13の姿勢を設定する。「転写ステージ21に対する保持ツール13の姿勢」は、例えば、「転写ステージ21の転写面21aに対する保持ツール13の保持面13aの傾き」として定義される。傾き調整機構15は、本願発明に係る「第1の調整部」の一例に相当する。
【0044】
傾き調整機構15は、例えば、電子部品CPの電極形成面CPaと基板BDの実装面BDaとが略平行となるように、実装ステージ41に対する保持ツール13の姿勢を設定する。「実装ステージ41に対する保持ツール13の姿勢」は、例えば、「実装ステージ41の載置面41aに対する保持ツール13の保持面13aの傾き」として定義される。
【0045】
転写ユニット20は、電子部品CPの電極形成面(バンプ電極が形成されている側の面)CPaにフラックスFXを転写する。
【0046】
転写ユニット20は、転写ステージ21を備えている。
【0047】
転写ステージ21の転写面21aには、浸漬エリア23が形成されている。浸漬エリア23は、所定の深さで形成された凹部である。例えば、転写ユニット20の転写面21aに塗布されたフラックスFXを第1のスキージで均した後に、第2のスキージで転写面21aから余分なフラックスFXを掻き取る。これにより、フラックスFXが浸漬エリア23に均一に貯留される。フラックスFXの表面は、転写ステージ21の転写面21aと略同一平面に設けられる。転写ユニット20の浸漬エリア23に貯留されたフラックスFXに対して、搬送ユニット10の保持ツール13に保持された電子部品CPの電極形成面PCaが浸漬される。
【0048】
姿勢制御ユニット30は、転写ステージ21に対する保持面13aの傾きを検知し、当該傾きが略ゼロとなるように保持ツール13の姿勢を制御する。言い換えると、検知した傾きに基づいて、転写ステージ21のフラックスFXの表面と電子部品CPの電極形成面CPaとが略平行となるように、保持ツール13の姿勢を変更する。
【0049】
姿勢制御ユニット30は、撮像部31と、照明33と、検出部35と、制御部37とを備えている。
【0050】
撮像部31は、保持ツール13に保持された電子部品CPを撮像し、フラックス転写後の電極形成面CPaの撮像画像を取得する。撮像部31は例えばCCDカメラであるが、フラックス転写後の電極形成面CPaの撮像画像を取得可能であればこれに限定されるものではない。
【0051】
照明33は、保持ツール13に保持された電子部品CPを撮像部31が撮像するとき、フラックス転写後の電極形成面CPaに光を照射する。つまり、撮像部31は、照明33によって照らされた状態の、フラックス転写後の電極形成面CPaを撮像する。照明33は例えばリング照明であるが、フラックス転写後の電極形成面CPaに光を照射可能であればこれに限定されるものではない。
【0052】
検出部35は、撮像部31で取得した撮像画像に基づいて、転写ステージ21に対する保持面13aの傾きを検出する。検出部35には、フラックスが正常に転写された後の電子部品の電極形成面から取得された基準画像が、予め登録されている。検出部35は、撮像部31で取得した撮像画像と、予め登録された基準画像とを比較する。そして、撮像画像と基準画像との差分を画像解析することで、電極形成面CPaへのフラックスFXの転写状況(転写の成否、転写量、転写分布、等)を評価する。
【0053】
検出部35は、例えば、撮像部31で取得した撮像画像から複数のサブエリアの画像を取得し、サブエリア毎に基準画像と比較する。つまり、検出部35は、サブエリア毎にフラックスFXの転写状況(転写の成否、転写量、転写分布、等)を判定する。例えば、検出部35は、複数のサブエリアのそれぞれの位置情報と、複数のサブエリアのそれぞれにおけるフラックスFXの転写の成否に関する情報とを関連付けることで、転写ステージ21に対する保持面13aの傾きの方向や角度を算出する。複数のサブエリアは、電子部品CPの電極形成面CPaよりも小さければ、その個数、面積及び形状は限定されるものではない。
【0054】
検出部35によって取得されるサブエリアは、例えば、電極形成面CPaの角部に設けられる角部サブエリアを含んでもよい。転写ステージ21に対する保持ツール13の角度が変化した場合に最も変位する角部におけるフラックスFXの転写の成否を判定することで、電極形成面CPa全体におけるフラックスFXの転写の成否を迅速に判定することができる。また、検出部35によって取得されるサブエリアは、例えば、電極形成面CPaの長辺に沿って長辺方向の略全幅に亘って設けられた帯状サブエリア、及び、短辺に沿って長辺方向の略全幅に亘って設けられた帯状サブエリア、の少なくとも一方を含んでもよい。帯状サブエリアにおける転写不良の位置を判定することで、転写ステージ21に対する保持ツール13の角度の大きさが検出できる。
【0055】
なお、撮像部31で取得した撮像画像から取得されるサブエリアの個数は1つでもよい。検出部35によって取得されるサブエリアは、例えば、電極形成面CPaの端部に沿って枠状に設けられた枠状サブエリアを含んでもよく、帯状サブエリアを組み合わせた格子状サブエリア又は十字状サブエリアを含んでもよい。複数のサブエリアの画像は、サブエリア毎に用意した複数のカメラによって、個別に撮像されてもよい。
【0056】
制御部37は、検出部35で検出された傾きに基づいて、搬送ユニット10の傾き調整機構15を制御する。すなわち、制御部37は転写ステージ21に対する保持面13aの傾きを変更する。
【0057】
検出部35及び制御部37のそれぞれは、例えば、所定のプログラムがインストールされたコンピュータ、すなわちハードウェアとソフトウェハとが組み合わされたものである。検出部35及び制御部37の両方が1つのコンピュータにインストールされた個別のプログラムによって構成されてもよく、検出部35及び制御部37の両方が1つのコンピュータにインストールされた1つのプログラムによって構成されてもよい。
【0058】
実装ユニット40は、基板BDに電子部品CPを実装する。電子部品CPは、フリップチップボンディング方法によって、基板BDに半田付けされる。電子部品CPは本願発明に係る「実装物」の一例に相当し、基板BDは本願発明に係る「対象物」の一例に相当する。
【0059】
実装ユニット40は、実装ステージ41を備えている。実装ステージ41の載置面41aには、基板BDが載置される。実装ステージ41には、温度制御部(例えばヒータ等)が備えられている。搬送ユニット10によって実装ユニット40上の基板BDに電子部品CPが押し付けられ、基板BDの実装面BDaに電子部品CPの電極形成面CPaが半田付けされる。つまり、保持ツール13は、フリップチップボンディング方法において、電子部品CPを基板BDに実装するボンディングツールに相当する。
【0060】
次に、
図3~
図6を参照しつつ、第1実施形態に係るフラックス転写装置1を用いたフラックス転写方法について説明する。
図3は、第1実施形態に係るフラックス転写装置を用いたフラックス転写方法を概略的に示すフローチャートである。
図4は、工程S20の様子を概略的に示す図である。
図5は、電極形成面の撮像画像とサブエリアの一例を示す図である。
図6は、電極形成面の撮像画像とサブエリアの別の一例を示す図である。
【0061】
まず、転写ステージ21にフラックスFXを貯留する(S10)。転写ステージ21の転写面21aに第1のスキージでフラックスFXを塗布する。このとき、浸漬エリア23の内部にフラックスFXが充填される。次に、第2のスキージで、浸漬エリア23の外側に設けられた余分なフラックスFXを除去する。
【0062】
次に、電極形成面CPaをフラックスFXに浸漬させる(S20)。保持ツール13に保持させた電子部品CPをフラックスFXに押し付けて、電極形成面CPaをフラックスFXに浸漬させる。次に、電子部品CPを浸漬エリア23から引き上げる。電極形成面CPaにフラックスFXが転写されるとともに、転写ステージ21上のフラックスFXには、型押しされたように電極形成面CPaの形状が転写される。
【0063】
図4に示すように転写ステージ21に対して保持ツール13が角度θで傾いている場合、電子部品CPの電極形成面CPaにはフラックスFXが転写された領域と、転写されていない領域とが設けられる。
【0064】
次に、フラックス転写後の電極形成面CPaを撮像する(S30)。転写ユニット20の上方から、姿勢制御ユニット30の上方に、搬送ユニット10を移動させる。保持ツール13に保持させた電子部品CPの、電極形成面CPaに照明33から光を照射する。照明された電極形成面CPaを撮像部31で撮像し、少なくとも一部にフラックスFXが転写された電極形成面CPaの撮像画像を取得する。
【0065】
工程S30で取得した電極形成面CPaの撮像画像から、バンプ電極等の位置情報を取得してもよい。ここで取得したバンプ電極等の位置情報を利用して、基板BDへの電子部品CPの実装の際の位置合わせを行ってもよい。
【0066】
次に、サブエリアの撮像画像と基準画像とを比較する(S40)。工程S30で取得した撮像画像から、任意のサブエリアの撮像画像を取得する。予め登録しておいた基準画像(フラックスが正常に転写された後の電子部品の電極形成面)から、当該サブエリアの基準画像を取得する。当該サブエリアのそれぞれの撮像画像と基準画像とを比較し、当該サブエリアにおけるフラックスFXの転写量、転写位置を検出する。
【0067】
図5に示した例では、電極形成面CPa全体の撮像画像から、サブエリアR1a,R1bの撮像画像が取得される。サブエリアR1aは、電極形成面CPaの4つの角部のそれぞれに設けられた角部サブエリアである。サブエリアR1bは、電極形成面CPaの長辺に沿って短辺方向の略全幅に亘って設けられた帯状サブエリアである。例えば、角部サブエリアであるサブエリアR1aのそれぞれにおいてフラックスFXの転写の成否を判定することで、転写ステージ21に対する保持ツール13の傾きの方向を検出することができる。また、帯状サブエリアであるサブエリアR1bにおいてフラックスFXが転写された領域の端部の位置を判定することで、転写ステージ21に対する保持ツール13の傾きの角度θが算出できる。具体的には、浸漬エリア23の深さをY、フラックスFXが転写された領域の長さをXとしたとき、次式によって角度θが算出できる。
sinθ=Y/X
【0068】
なお、角部サブエリアにおける撮像画像と基準画像との比較は、帯状サブエリアにおける撮像画像と基準画像との比較と同時に行われてもよく、その前又は後に行われてもよい。具体的には、角部サブエリアにおける撮像画像と基準画像との比較によって、転写ステージ21に対する保持ツール13の傾きの有無を検出してから、帯状サブエリアを取得するか否か判定してもよい。例えば、角部サブエリアにおける撮像画像と基準画像との比較により許容範囲を超える傾きが検出されなかった場合には帯状サブエリアの取得は省略し、許容範囲を超える傾きが検出された場合には角度θを算出するのに適した方向に長手を有する帯状サブエリアを取得してもよい。また、角部サブエリアの取得を省略して、帯状サブエリアにおける撮像画像と基準画像との比較により、転写ステージ21に対する保持ツール13の傾きの有無、方向、角度、等を検出してもよい。
【0069】
図6に示した例のように、電極形成面CPa全体の撮像画像から、マトリクス状に並んだ複数のサブエリアR2を取得してもよい。
【0070】
次に、傾きが許容範囲を超えているかを判定する(S50)。
【0071】
工程S50において傾きが許容範囲を超えていると判定された場合、保持ツール13の姿勢を制御する(S60)。言い換えると、電極形成面CPaへのフラックスFXの転写不良が検出された場合、制御部37は、検出部35で検出された転写ステージ21に対する保持面13aの傾きに基づいて、搬送ユニット10の傾き調整機構15を制御する。例えば、制御部37は、搬送ユニット10の傾き調整機構15を自動的に制御してもよい。また、制御部37は、検出部35で検出された転写ステージ21に対する保持面13aの傾きの向きや大きさをディスプレイに表示し、手動で入力された制御パラメータに基づいて、搬送ユニット10の傾き調整機構15を制御してもよい。
【0072】
傾き調整機構15によって転写ステージ21に対する保持面13aの傾きを略ゼロに調整した後、電子部品CPを転写ユニット20に搬送し、電極形成面CPaを再び転写ステージ21に貯留されたフラックスFXに浸漬させる。このとき、フラックスFXは新たに貯留し直したものであるが、最初に貯留したフラックスFXを再利用してもよい。
【0073】
なお、傾き調整機構15によって転写ステージ21に対する保持面13aの傾きを略ゼロに調整した後の、フラックス転写装置1の動作は上記に限定されるものではない。電子部品CPを回収用トレイに搬送して保持ツール13から解放し、別の電子部品でフラックスの転写を再開してもよい。
【0074】
工程S50において傾きが許容範囲を超えていないと判定された場合、基板BDに電子部品CPを実装する(S70)。言い換えると、電極形成面CPaに略均一にフラックスFXが転写されていた場合、搬送ユニット10は、電子部品CPを実装ユニット40の上方に搬送し、電子部品CPを基板BDに押し付ける。基板BDは加熱され、電子部品CPが基板BDに半田付けされる。
【0075】
以上説明した通り、フラックス転写装置1は、フラックス転写後の電子部品CPの電極形成面CPaの撮像画像を取得する撮像部31を有し、電極形成面CPaの撮像画像に基づいて転写ステージ21に対する保持面13aの傾きを検出する検出部35と、を備えている。
【0076】
これによれば、例えば、転写ステージ21に対する保持面13aの傾きが略ゼロになるように試作を繰り返すことで、フラックスFXの転写不良を抑制することができる。特に、電子部品CPが大型化した場合、すなわち、転写ステージ21に対する保持面13aの傾きが、電極形成面CPaの端部におけるフラックスFXの転写不良に大きく影響する場合において、効果的に転写不良を抑制することができる。
【0077】
フラックス転写装置1は、保持ツール13の姿勢を調整可能に構成された傾き調整機構15を備えている。これによれば、転写ステージ21の姿勢を変更することによるフラックスFXの液面の変動を抑制することができる。したがって、転写ステージ21の姿勢変更に起因した転写不良の発生を抑制することができる。
【0078】
撮像部31は、フラックス転写後の電子部品CPの電極形成面CPaを下方から撮像する。これによれば、撮像部31が取得した撮像画像を基に、転写ステージ21に対する保持面13aの傾きの検出だけではなく、電極形成面CPaの面内方向における電子部品CPの位置ずれも検出することができる。したがって、基板BDに対する電子部品CPの位置ずれを補正することができる。
【0079】
検出部35は、撮像画像と、フラックスが正常に転写された後の電子部品の電極形成面から取得された基準画像とを比較する。これによれば、視認性が低く画像解析で検出し難いフラックスであっても、撮像画像と基準画像との差分の画像解析によって、精度良く検出することができる。
【0080】
検出部35は、少なくとも1つのサブエリアにおいて撮像画像と基準画像とを比較する。これによれば、電極形成面CPaの全体の撮像画像と基準画像とを比較する場合に比べて、検出にかかる時間を短縮することができる。
【0081】
検出部35で取得するサブエリアには角部サブエリアが含まれる。これによれば、転写ステージ21に対する保持ツール13の傾きが変化したときに、最も大きく変位する角部サブエリアにおけるフラックスFXの転写の成否を判定することで、迅速に電極形成面CPaの全体におけるフラックスFXの転写不良について評価することができる。
【0082】
検出部35で取得するサブエリアには帯状サブエリアが含まれる。これによれば、帯状サブエリアにおける転写不良の位置を特定することで、転写ステージ21に対する保持面13aの傾きの角度を算出することができる。
【0083】
上記したフラックス転写装置1を用いて電子部品CPの電極形成面CPaにフラックスFXを転写することで、フラックスFXの転写不良を抑制することができる。
【0084】
検出部35において転写ステージ21に対する保持面13aの傾きを検出した後、電子部品CPの電極形成面CPaを再び転写ステージ21に貯留されたフラックスFXに浸漬させる。これによれば、フラックスFXの転写が不十分な電子部品CPについても再利用することで、電子部品CPの損失を低減することができる。
【0085】
検出部35において転写ステージ21に対する保持面13aの傾きを検出した後、電子部品CPを基板BDに実装せずに解放してもよい。
【0086】
以下に、その他の実施形態について説明する。なお、
図1から
図6に示した構成と同一又は類似の構成について同一又は類似の符号を付し、その説明を適宜省略する。また、同様の構成による同様の作用効果については、逐次言及しない。
【0087】
<第2実施形態>
次に、
図7を参照しつつ、第2実施形態に係るフラックス転写装置2の構造について説明する。
図7は第2実施形態に係る姿勢制御ユニットの構成を概略的に示す図である。
【0088】
第2実施形態において、転写ユニット20は、傾き調整機構25をさらに備えている。
【0089】
傾き調整機構25は、転写ステージ21の姿勢を調整可能に構成されている。傾き調整機構25は、例えば、転写ステージ21に貯留されたフラックスFXの表面と電子部品CPの電極形成面CPaとが略平行となるように、保持ツール13に対する転写ステージ21の姿勢を設定する。「保持ツール13に対する転写ステージ21の姿勢」は、例えば、「保持ツール13の保持面13aに対する転写ステージ21の転写面21aの傾き」として定義される。傾き調整機構25は、本願発明に係る「第2の調整部」の一例に相当する。
【0090】
姿勢制御ユニット30は、転写ステージ21に対する保持面13aの傾きを検知し、制御部37は、当該傾きが略ゼロとなるように、転写ユニット20の傾き調整機構25を制御する。搬送ユニット10の傾き調整機構15は、実装ステージ41に対する保持面13aの傾きが略ゼロとなるように設定されている。これによれば、保持ツール13の姿勢を調整することなく、転写ステージ21に対する保持ツール13の傾きを調整することができる。したがって、保持ツール13の姿勢を調整する時の変位誤差による、基板BDに対する電子部品CPの傾きの発生を抑制することができる。
【0091】
なお、姿勢制御ユニット30の制御部37は、搬送ユニット10の傾き調整機構15及び転写ユニット20の傾き調整機構25の両方を制御してもよい。
【0092】
<第3実施形態>
次に、
図8を参照しつつ、第3実施形態に係るフラックス転写装置3の構造について説明する。
図8は第3実施形態に係る姿勢制御ユニットの構成を概略的に示す図である。
【0093】
第3実施形態において、姿勢制御ユニット330は、転写ステージ21の上方に設けられた、照明333及び撮像部331を備えている。照明333は、フラックス転写後の転写ステージ21に光を照射し、撮像部331は、フラックス転写後の転写ステージ21上のフラックスFXの表面を撮像する。検出部35には、撮像部331が取得した撮像画像と、フラックスFXが正常に転写された後の転写ステージ21上のフラックスFXの表面の基準画像とを比較する。フラックス転写後の転写ステージ21上のフラックスFXには、電子部品CPの電極形成面CPaの形状に従った凹凸が形成されているため、転写ステージ21上のフラックスFXの撮像画像を取得し、画像解析を行うことで、電極形成面CPaへのフラックスFXの転写状況を検出することができる。制御部37は、転写ユニット20の傾き調整機構25を制御してもよく、搬送ユニット10の傾き調整機構15を制御してもよい。
【0094】
以上説明したように、本願発明の一態様によれば、転写不良を抑制することができるフラックス転写装置、フラックス転写方法、及び実装装置が提供できる。
【0095】
以上説明した実施形態は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、本願発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…フラックス転写装置、
10…搬送ユニット、
11…ボンディングヘッド、
13…保持ツール、
15…傾き調整機構、
17…アクチュエータ、
20…転写ユニット、
21…転写ステージ、
23…浸漬エリア、
25…傾き調整機構、
30…姿勢制御ユニット、
31…撮像部、
33…照明、
35…検出部、
37…制御部、
40…実装ユニット、
41…実装ステージ、
FX…フラックス、
CP…電子部品、
PCa…電極形成面、
BD…基板。