(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】取付具、及び取付具を備える基礎部
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20250304BHJP
E04G 5/08 20060101ALI20250304BHJP
B66C 23/26 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
E04G21/16
E04G5/08 P
B66C23/26 Z
(21)【出願番号】P 2024096092
(22)【出願日】2024-06-13
【審査請求日】2024-07-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523477691
【氏名又は名称】岸本無線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 敏彦
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3150645(JP,U)
【文献】登録実用新案第3243939(JP,U)
【文献】特開2018-204264(JP,A)
【文献】実開昭55-023339(JP,U)
【文献】特開2016-37815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G1/00-7/34、27/00
21/14-21/22
B66C23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の基礎を足場の天面に固定可能な取付具であって、
前記足場の天面を貫通可能な主杭部と、前記主杭部の一端を一方向に拡大する係止部と、を
共通して備える第一取付具と、第二取付具と、の組をなし、
前記第一取付具及び前記第二取付具は、前記係止部に、互いを接続可能な接続部を設け
ており、
前記接続部は、第一取付具においては突出部を含み、第二取付具においては貫通孔を含
み、
前記主杭部は、他端から軸方向周りに係合部を有する、取付具。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記係止部の長さ方向について複数設けられている、
請求項
1に記載の取付具。
【請求項3】
前記突出部及び前記貫通孔は、各々において、等間隔に二以上設けられている、
請求項
2に記載の取付具。
【請求項4】
前記主杭部の前記他端側において、前記軸方向と交わる方向に
線状部材を挿通可能な挿通部をさらに備える、
請求項1に記載の取付具。
【請求項5】
前記主杭部及び前記係止部は、規格化された形鋼を保持可能な大きさである、
請求項1に記載の取付具。
【請求項6】
請求項1から
5の何れかに記載の取付具を含む、仮設型の基礎部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所の作業場において、仮設の設備を安全に設置可能な取付具、及び取付具を備える基礎部に関する。
【背景技術】
【0002】
通信鉄塔や高層ビル等、高所に電気設備、通信設備等を設置する建造物においては、重量物を吊上げる仮設のクレーンが要求される。このような高所での作業においては、作業員のための足場が設けられている場合が多く、仮設のクレーンは、その足場に固定して使用される。このとき、クレーンの基礎部は、吊上げる重量物の加重に耐えられるように、足場や仮設架台の裏側にある鉄骨に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の仮設架台は、建造物の中腹に構築された架台に、タワークレーンの基礎部を取付ける構成が記載されている。ここで開示されている取付構造は、鉄骨の下側からボルト或いはナットで締結するものであるが、この構成では、足場となる鉄骨の下側に作業員が入り込まなくてはならず、さらに部品落下の可能性があるため、安全性に大きな課題があった。
【0005】
また、このような仮設クレーンについては、大掛かりなクレーンに限らず、金属製のポールを代用する小規模なものも存在するため、様々な作業条件に容易に適用可能な基礎部が提供されると好ましい。
【0006】
本発明は以上の課題に鑑み、足場の片側のみの作業で容易に基礎部を固定可能にする取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本願発明は、構造物の基礎を足場の天面に固定可能な取付具であって、該足場の天面を貫通可能な主杭部と、該主杭部の一端を一方向に拡大する係止部と、を備え、該主杭部は、他端から軸方向周りに係合部を有する。
このような構成によって、足場の片側のみの作業で容易に基礎部を固定することができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、第一取付具と、第二取付具と、の組をなし、該第一取付具及び該第二取付具は、該係止部に、互いを接続可能な接続部を設けている。
このような構成によって、一対の取付具で安定して足場に基礎部を固定することができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、該接続部は、第一取付具においては突出部を含み、第二取付具においては貫通孔を含む。
このような構成によって、簡便な操作で一対の取付具を接続することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、該貫通孔は、該係止部の長さ方向について複数設けられている。
このような構成によって、様々な取付条件に容易に対応することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、該突出部及び該貫通孔は、各々において、等間隔に二以上設けられている。
このような構成によって、一組の取付具の接続状態をより安定させることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、該主杭部の該他端側において、該軸方向と交わる方向に挿通部をさらに備える。
このような構成によって、別部材を挿通して、部品の落下を容易に防ぐことができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では該係止部は、該主杭部の側面と所定の距離だけ離間して対向する保持部を有する。
このような構成によって、係止する対象物が細い場合も、安定して係止状態を保つことができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では該主杭部及び該係止部は、規格化された形鋼を保持可能な大きさである。
このような構成によって、構造物の主たる骨格をなす柱や梁に容易に基礎部を固定することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態は、該取付具を含む、仮設型の基礎部である。
このような構成によって、高所の足場において多様な構造物を容易に設置することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記課題を解決する本発明は、足場の片側のみの作業で容易に基礎部を固定可能にする取付具を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る、取付具及び基礎部の構成、及び対象物への取付構造を示す説明図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る、取付具の構成を示す説明図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る、取付具によって対象物に基礎部を固定した状態を示す説明図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る、取付具によって支持される構造物の一例を示す説明図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態に係る、取付具の構成を示す説明図である。
【
図6】本発明の第二の実施形態に係る、取付具によって対象物に基礎部を固定した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る取付具X、及び基礎部Yについて説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施例の順に詳述する。
なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0019】
≪第一の実施形態≫
本実施形態に係る取付具Xは、
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)に示すように、第一取付具1と、第二取付具2と、の組をなし、その各々で主杭部11、21と、係止部12、22と、挿通部13、23と、をそれぞれ備える。また、第一取付具1及び第二取付具2は、基礎部Yと接続可能であり、基礎部Yを対象物に固定可能にする。ここでの対象物は、空中、特に高所に建設された足場であり、
図1(b)に示すように、プラットフォームSと、梁Bを含むものとする。
【0020】
プラットフォームSは、
図1(b)に示すように、金属材を網状に成型した部材(エキスパンドメタル等)であり、足場の天面(ステージメッシュ等)をなす。プラットフォームSの目の粗さは、人体を安定して支持するのに十分な程度、特に足裏から抜け落ちない程度で、且つ、取付具Xの各部が容易に貫通可能な程度の大きさである。このような構成によって、プラットフォームSは軽量かつ堅牢な足場を形成しつつ、取付具Xを用いて、その天面に容易に構造物を固定させることができる。
【0021】
梁Bは、プラットフォームSの下面に設けられ、プラットフォームSが撓まないように支持する部材であり、本実施形態においては、規格化された形鋼で構成されることが好ましい。このような構成によって、容易に足場を構成できるほか、取付具Xと面で接触しやすくなり、取付具Xを用いた基礎部Yの取付状態を安定させることができる。
【0022】
第一取付具1において、主杭部11は、取付具Xの中央部をなす柱状の部材であり、梁Bの断面幅よりも長く、基礎部Y、及びプラットフォームSを貫通可能である。ここで、
図2(a)に示すように、主杭部11の長さ方向に沿う中心線を軸線Aとし、以下の説明では、軸線Aの方向を軸方向、軸線Aに垂直な平面の方向を断面方向と呼称する(後述する第二取付具2でも同様)。
【0023】
主杭部11は、軸方向周り、換言すれば側面部に、係合部111を設けている。係合部111は、主杭部11の一の端部から、軸線Aの周りを螺旋状に囲んで設けられる凸部又は凹部であり、特に雄ねじであることが好ましい。第一取付具1の構成においては、主杭部11の一端に係止部12が設けられ、他端から所定の長さまで係合部111が設けられている構成である。このような構成によって、第一取付具1は、
図1(a)、
図1(b)に示すように、ボルト(又はナット3)の締結により、容易に基礎部Yと接続することができる。
【0024】
係止部12は、主杭部11の一端に設けられ、主杭部11の一端を軸線Aから遠ざかる一の方向に拡大する梁状の部材である。特に、係止部12は、長さ方向が軸線Aと略垂直である構成が好ましく、このような構成によって、規格化された形鋼に対応して係止しやすくなる。
【0025】
挿通部13は、主杭部11の他端側、すなわち係合部111が設けられている端部に設けられる環状の部材であり、線状部材を挿通可能にする。挿通部13において、線状部材が挿通可能な方向は、軸方向と交わる方向であり、そこに挿通された線状部材に支持されることによって、第一取付具1の落下を防ぐ。また、挿通部13の大きさは、主杭部11の断面方向の面積よりも小さい。このような構成によって、係合部111にナット3(後述)を取付ける場合に、ナット3を阻害しない。
【0026】
補助ワイヤWは、取付具X又は基礎部Yの重量に耐える強度をもつ線材(又は組紐)であり、本実施形態においては、挿通部13に挿通される。これにより、第一取付具1をプラットフォームSの上側から下側に貫通させるときに、第一取付具1の落下を防ぐ。補助ワイヤWは、後述する第二取付具2に対しても、同様に設けられる。
【0027】
第二取付具2は、第一取付具1と同様に、主杭部21と、係止部22と、挿通部23と、を有し、さらに主杭部21は、第一取付具1と同様の構成で係合部211を設けている。このような構成によって、第一取付具1と同様、プラットフォームS(足場の天面)を貫通し、梁Bに係止して容易に基礎部Yを固定することができる。また、挿通部23には、第一取付具1の挿通部13と同様、補助ワイヤWを挿通することで、作業中の落下を防ぐ。
【0028】
係止部12、22はそれぞれ、互いを接続可能な接続部Cを設けている。この接続部Cは、第一取付具1の係止部12と、第二取付具2の係止部22と、の相対的な位置及び姿勢を保持することができればどのような構成でもよいが、本実施形態においては、
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)に示すように、第一取付具1においては突出部121を含み、第二取付具2においては挿入孔221を含む。
【0029】
突出部121は、係止部12から一以上突出する柱状の部材であり、第一取付具1と、第二取付具2との位置決めを可能にする。また、突出部121は、主杭部11の軸方向、すなわち係合部111とナット3の締結方向と平行に突出する構成が好ましい。このような構成によって、係合部111とナット3との締結による動きが突出部121と連動し、簡便且つ安定して第二取付具2と接続することができる。
【0030】
挿入孔221は、係止部22を一方向について貫通する貫通孔、又は穴部であり、突出部121を貫入可能にする。挿入孔221の断面積は、突出部121と略同じか、僅かに大きい程度であり、また貫通する方向(深さの方向)は、突出部121と同様、主杭部21の軸方向、すなわち係合部211とナット3の締結方向と平行である構成が好ましい。このような構成によって、係合部211とナット3との締結による動きが挿入孔221と連動し、簡便且つ安定して突出部121と嵌合し、第一取付具1と接続することができる。
【0031】
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)に示すように、突出部121と、挿入孔221はそれぞれ、係止部12、22の長さ方向について複数設けられている構成が好ましい。また、隣り合う突出部121同士と、隣り合う挿入孔221同士は、すべて等間隔であるとより好ましい。このような構成によって、突出部121と挿入孔221の嵌合の組合せを変更することで、第一取付具1と第二取付具2の軸線A同士の間の距離を自在に変えることができ、取付具Xを取付ける対象物の大きさや幅について、様々な条件に対応することができる。
【0032】
突出部121の突出長さと、第二取付具2の係止部22の軸方向の厚み(係止部12を貫通する挿入孔221の深さ)は、略等しい構成が好ましい。このような構成によって、
図3(a)に示すように、複数設けられている突出部121と挿入孔221との一部が嵌合に使われない場合でも、係止部12のほぼ全体に亘って対象物(図面では梁B)に接触することができ、取付具Xの取付状態における歪みを抑えることができる。
【0033】
ナット3は、貫通孔と雌ねじを備える一般的な締結具であって、取付具Xの係合部111、211と係合し、取付具Xを所定の位置(高さ)に保持可能にする。
図1(a)、
図1(b)に示すように、ナット3(及び座金)によって、取付具Xは基礎部Yに接続および保持され、基礎部Yは、主杭部11、21と、係止部12、22と、で対象物を抱え上げるように取り囲んで固定される。
【0034】
図1(a)に示すように、基礎部Yは、取付具Xを接続及び保持可能なプレート4と、構造物の本体(主要部)を取付可能なマウント5と、を有する構造物であり、足場(プラットフォームS)の天面において、構造物を固定し、支持する。
【0035】
プレート4は、
図1(a)、
図1(b)に示すように、基礎部Yを対象物の天面に載置可能にする平板状の部材であって、取付具Xを取付可能な取付孔41を有する。取付孔41は、プレート4の厚み方向について貫通する貫通孔であり、プレート4の面方向に亘って、整列して複数設けられている。また、取付孔41は、少なくとも取付具Xの主杭部11、21が貫通可能である大きさ(又は幅)であり、これにより取付具Xは、取付孔41を貫通した鉛直上側において、ナット3の締結(及び座金)によってプレート4の面に係止し、所定の位置(高さ)に保持される。
【0036】
取付孔41は、
図1(b)に示すように、特定の方向について長手方向を有する長孔である構成が好ましい。このような構成によって、前述の接続部Cにおける取付具Xの軸線A間距離の調整に容易に対応でき、様々な大きさ又は幅の対象物に基礎部Yを固定することができる。
【0037】
図3(a)、
図3(b)には、取付具Xによって基礎部Yを、梁B付きのプラットフォームSに固定した状態を示す図である。この状態において、基礎部Yは、梁Bの直上において、プラットフォームSで形成される天面上に載置され、そのプレート4及びプラットフォームSを、取付具Xの主杭部11、21が貫通している。また、取付具Xは梁Bの下側に係止部12、22が潜り込んだ状態に配置され、梁Bの下側で突出部121と挿入孔221とが嵌合し、第一取付具1と第二取付具2とが接続されている。また、取付具Xの主杭部11、21には、プレート4の上面において、ナット3が締結され、(座金も含めて)プレート4の面に係止して保持されている。また、係止部12、22は梁Bに下から当接し、ナット3の締結力によって、梁Bは係止部12、とプレート4に鉛直方向について押さえつけられ、これにより基礎部YがプラットフォームSの天面に固定されている。
【0038】
図3(a)に示す本発明の例では、梁Bは断面がH型のH鋼材であり、
図3(b)では、梁Bは断面がコの字型の溝型鋼である。両者においては、水平方向、すなわちプラットフォームSの面方向の幅が異なるが、接続部Cにおける突出部121と挿入孔221の嵌合の態様や、取付孔41を貫通する主杭部11、21の軸線A間距離を変更することで、梁Bの断面の大きさに合わせて取付具Xを取付けることができ、基礎部Yを様々な取付条件に対応させることができる。例えば、
図3(a)の例では、接続部Cにおいて、軸線Aから最も離れた突出部121と、軸線Aから最も離れた挿入孔221とが嵌合しており、
図3(b)の例では、複数の突出部121及び挿入孔221が全て嵌合することで、第一取付具1と第二取付具2の各々の軸線A間の距離を短くしている。
【0039】
図4は、本実施形態に係る取付具Xおよび基礎部Yの使用例を示している。この例では、プラットフォームS及び梁Bに固定された基礎部Yに、簡易クレーン用のクレーンブームPが取り付けられている。このように、足場の天面(プラットフォームS上)に仮設の構造物を固定する際に、取付具X及び基礎部Yが適用可能である。
【0040】
本発明は、以下の構成を有してもよい。但し、以下の構成はあくまで一例であり、その有無は、特に従属の指定がない限り、任意に決定することができる。
【0041】
≪変更例≫
図4(c)には、接続部Cにおける接続状態の拡大図を示す。この接続部Cを構成する突出部121と挿入孔221において、第一取付具1の主杭部11から最も遠い突出部121と、第二取付具2の主杭部21に元も近い挿入孔221とは、他の突出部121及び挿入孔221よりも短い(浅い)構成でもよい。このような構成によって、第二取付具2において、主杭部21の直下に挿入孔221が位置する場合に、部材の厚み(主杭部21と係止部22との接続面積)を確保でき強度が損なわれない。
【0042】
以下、図面を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0043】
≪実施の方法≫
使用者はまず、基礎部YをプラットフォームSの天面に載置する。このとき、基礎部Yの位置が、凡そ梁Bの直上となる位置とし、更に、プレート4の取付孔41の長手方向を、梁Bの長さ方向と交わる方向に定めると好ましい。これにより、取付具Xの固定位置の変更に容易に対応することができる。
【0044】
次に使用者は、予め主杭部11に座金とナット3を通しておいた第一取付具1を、係止部12の先端から取付孔41、及びプラットフォームSの網目の隙間に挿入し、主杭部11の途中まで貫通させる。このとき、予め挿通部13に補助ワイヤWを挿通してから作業を行うことで、第一取付具1の落下を防止できる。また、使用者は、第二取付具2(及び座金とナット3)についても同様の方法で、取付孔41、及びプラットフォームSの網目の隙間を貫通させる。
【0045】
続いて使用者は、梁Bの幅に合わせて、第一取付具1の主杭部11と、第二取付具2の主杭部21との距離(軸線A間の距離)を調整し、接続部Cにおいて、第一取付具1と第二取付具2を接続する。このとき使用者は、突出部121と挿入孔221の嵌合する位置や個数を適切に決定して、梁Bの幅に合った接続状態とする。ここで、突出部121と挿入孔221は、各々の係止部12、22においては離散的な配置であるため、梁Bの幅に対し軸線A間の距離が長い場合が生じうる。この場合は、突出部121と挿入孔221を一ずつ嵌合させ、平面視で係止部12と係止部22が、嵌合位置でくの字に折れ曲がる配置とすることで、梁Bの幅に合わせることができる。
【0046】
その後使用者は、ナット3を締めて取付具Xの組とプレート4とで梁Bを抱え込むようにして押さえ、基礎部Yを取付ける。以上の作業を、使用者は、取付具Xの一組又は二組分(三組以上あってもよい)行い、基礎部YがプラットフォームS(足場の天面)からずれないように固定する。以上のような作業方法によって、使用者はすべての作業をプラットフォームSの上で行うことができ、安全性が向上する。
【0047】
更にその後使用者は、
図3(b)又は
図4に示すように、基礎部Yのマウント5に、構造物を取付ける。
図4に示す例は、マウント5に設けられた回動軸について向きを変更可能なポールを取付け、簡易クレーンとした構成である。このほか、仮設設備の脚などをマウント5に取付けて、高所(足場上)の作業を安全かつ低コストで行うことも可能である。
【0048】
使用者は、取付具X及び基礎部Yを撤去する場合は、上記と逆の手順で、取付具X及び基礎部Yを梁B及びプラットフォームSから取り外す。
【0049】
前述の実施の方法の応用例として、壁際に筐体状の設備を設置する方法が挙げられる。この例では、筐体状の設備を壁面に固定したい場合に、通常のアンカーボルトが機能しない低強度の壁(発泡コンクリートの壁やブロック壁等)に対し、取付具Xを水平方向に用いる。この構成では、主杭部11、21が壁を貫通し、係止部12、22が筐体を抱きかかえるように保持し、壁の反対側にてナット3等で主杭部11、21が固定されて、筐体が壁際に固定される。このような構成によって、壁面に設置する設備の設置場所の選択肢が増える。
【0050】
以下、図面を用いて、本発明の第二の実施形態に係る取付具X及び基礎部Yについて説明する。なお、第一の実施形態と同様の構成については、同じ符号を用いて説明を省略する。また、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
【0051】
≪第二の実施形態≫
本実施形態に係る取付具Xは、
図5(a)に示すように、単独で対象物を安定して保持可能な独立式取付具6であって、主杭部61と、係止部62と、挿通部63と、を備える。また、主杭部61は、第一の実施形態と同様に係合部611を有し、長さ方向を軸線Aとする。
【0052】
係止部62は、主杭部61の側面と所定の距離だけ離間して対向する保持部621を有する。保持部621は、係止部62の先端から折れ曲がるように立ち上がり、軸線方向に伸びる柱状の部材であり、主杭部61と対向することで、主杭部61と併せてフックの形状を形成する。保持部621が主杭部61の側面から離間する距離、すなわち係止部62が軸線Aから遠ざかる長さは、係止部62の撓みの影響が殆どない程度、より詳細には15cm以下が好ましく、更に好ましくは10cm以下である。このような構成によって、独立式取付具6が係止する対象物が細い柱体や板体(の厚み方向)であっても、安定した係止状態を保つことができる。
【0053】
図5(b)には、独立式取付具6によって基礎部Yを梁B及びプラットフォームSに固定した状態を示す。第一の実施形態と同様に、独立式取付具6は、主杭部61が基礎部Yのプレート4と、プラットフォームSとを貫通し、係止部62と、保持部621とが、梁Bの薄板部に係止しており、その状態でプレート4に接続、保持されている。
【0054】
図6(a)、
図6(b)には、独立式取付具6によって基礎部Yを梁B及びプラットフォームSに固定した状態の別方向視点を示す。これらの例では、梁Bは断面がL字型の形鋼であり、そのうちの片方のリブの先端、すなわち薄板状部材の厚み方向において、係止部62が保持部621も含めて係止している。この状態で、ナット3の締結によって係止部62とプレート4とで梁Bを抱え込み、押さえつけて基礎部YがプラットフォームSの天面に固定される。
【0055】
以上の構成でプラットフォームSの天面に固定される基礎部Yにおいて、
図6(a)に示すように、プレート4は、梁Bに対し斜めに、換言すれば、プレート4の面方向における対角線が、梁Bの長手方向と略平行になる向きに固定される構成が好ましい。このような構成によって、最小限の独立式取付具6の数で、基礎部Yを安定させてプラットフォームS(足場)の天面に固定することができる。
【0056】
以下、図面を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0057】
≪実施の方法≫
使用者はまず、基礎部YをプラットフォームSの天面に載置する。このとき、
図6(a)に示すように、基礎部Yの位置が、凡そ梁Bの直上となる位置とし、更に、プレート4を梁Bの長さ方向に対し斜めに載置すると好ましい。
【0058】
次に使用者は、予め主杭部61に座金とナット3を通しておいた独立式取付具6を、係止部62の先端(保持部621)から取付孔41、及びプラットフォームSの網目の隙間に挿入し、主杭部61の途中まで貫通させる。このとき、予め挿通部63に補助ワイヤWを挿通してから作業を行うことで、独立式取付具6の落下を防止できる。その後使用者は、係止部62を梁Bの下端部に係止させる。
【0059】
続いて使用者は、ナット3を締めて係止部62とプレート4とで梁Bを抱え込むようにして押さえ、基礎部Yを取付ける。以上の作業を、使用者は、必要な独立式取付具6の数だけ(少なくとも二以上が好ましい)行い、基礎部YがプラットフォームS(足場の天面)からずれないように固定する。以上のような作業方法によって、使用者はすべての作業をプラットフォームSの上で行うことができ、安全性が向上する。その後使用者は、
図6(a)、
図6(b)に示すように、基礎部Yのマウント5に、構造物を取付ける。
【0060】
使用者は、取付具X及び基礎部Yを撤去する場合は、上記と逆の手順で、取付具X及び基礎部Yを梁B及びプラットフォームSから取り外す。
【符号の説明】
【0061】
X 取付具
Y 基礎部
1 第一取付具
11 主杭部
111 係合部
12 係止部
121 突出部
13 挿通部
2 第二取付具
21 主杭部
211 係合部
22 係止部
221 挿入孔
23 挿通部
3 ナット
4 プレート
41 取付孔
5 マウント
6 独立式取付具
61 主杭部
611 係合部
62 係止部
621 保持部
63 挿通部
A 軸線
B 梁
C 接続部
P クレーンブーム
S プラットフォーム
W 補助ワイヤ
【要約】
【課題】足場の片側のみの作業で容易に基礎部を固定可能にする取付具を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、構造物の基礎を足場の天面に固定可能な取付具Xであって、該足場の天面を貫通可能な主杭部11、21、61と、主杭部11、21、61の一端を一方向に拡大する係止部12、22、62と、を備え、主杭部11、21、61は、他端から軸方向周りに係合部111、211、611を有する。
【選択図】
図1