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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】道路の安全性変化推定システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20250304BHJP
   G06Q 50/26 20240101ALI20250304BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G06Q50/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024129630
(22)【出願日】2024-08-06
【審査請求日】2024-09-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520124084
【氏名又は名称】ジェネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】笠原 一
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-124628(JP,A)
【文献】特開平8-292988(JP,A)
【文献】特開2022-74223(JP,A)
【文献】特開2023-87861(JP,A)
【文献】特開2023-124629(JP,A)
【文献】特開2018-142141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
G06Q 10/00 - 10/30
G06Q 30/00 - 30/08
G06Q 50/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の登録道路のそれぞれについて、各登録道路における変更が行われる前の第1の変更前道路情報と、各登録道路における変更が行われた後の第1の変更後道路情報と、前記第1の変更前道路情報から前記第1の変更後道路情報に変更が行われた前後における各登録道路での交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化と、を記憶した記憶部と、
ユーザにより、対象道路の現在の第2の変更前道路情報と、前記対象道路において変更が検討される第2の変更後道路情報と、が入力される入力部と、
前記第1の変更前道路情報が前記第2の変更前道路情報と第1の所定値以上一致し、かつ、前記第1の変更後道路情報が前記第2の変更後道路情報と第2の所定値以上一致する一又は複数の登録道路を前記複数の登録道路の中から抽出する抽出部と、
前記抽出された一又は複数の登録道路に関する前記交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化を出力する出力部と、
を備えたことを特徴とする道路の安全性変化推定システム。
【請求項2】
前記道路情報には、当該道路の種別、当該道路の長さ、当該道路の幅、当該道路で適用される交通ルール、及び、当該道路に接続される他の道路の道路情報のうちの少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項1に記載の道路の安全性変化推定システム。
【請求項3】
前記道路情報には、更に、当該道路に設置された信号のサイクル、当該道路の車線の数、当該道路の勾配、及び、当該道路の周辺の建築物情報のうちの少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項2に記載の道路の安全性変化推定システム。
【請求項4】
前記第1の変更前道路情報及び前記第2の変更前道路情報には、道路が存在しない状態も含まれることを特徴とする請求項1に記載の道路の安全性変化推定システム。
【請求項5】
前記記憶部には、前記交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化は、時間帯ごと、又は、気象ごとに記憶されており、
前記出力部は、前記交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化を、時間帯ごと、又は、気象ごとに出力可能であることを特徴とする請求項1に記載の道路の安全性変化推定システム。
【請求項6】
複数の登録道路のそれぞれについて、各登録道路における変更が行われる前の第1の変更前道路情報と、各登録道路における変更が行われた後の第1の変更後道路情報と、前記第1の変更前道路情報から前記第1の変更後道路情報に変更が行われた前後における各登録道路での交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化と、を記憶した記憶部と、ユーザにより、対象道路の現在の第2の変更前道路情報と、前記対象道路において変更が検討される第2の変更後道路情報と、が入力される入力部と、を有するコンピュータで実行されるプログラムであって、
前記第1の変更前道路情報が前記第2の変更前道路情報と第1の所定値以上一致し、かつ、前記第1の変更後道路情報が前記第2の変更後道路情報と第2の所定値以上一致する一又は複数の登録道路を前記複数の登録道路の中から抽出するステップと、
前記抽出された一又は複数の登録道路に関する前記交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化を出力するステップと、
を前記コンピュータに実行させるための道路の安全性変化推定プログラム。
【請求項7】
複数の登録道路のそれぞれについて、各登録道路における変更が行われる前の第1の変更前道路情報と、各登録道路における変更が行われた後の第1の変更後道路情報と、前記第1の変更前道路情報から前記第1の変更後道路情報に変更が行われた前後における各登録道路での交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化と、を記憶した記憶部と、ユーザにより、対象道路の現在の第2の変更前道路情報と、前記対象道路において変更が検討される第2の変更後道路情報と、が入力される入力部と、を有するコンピュータで実行される方法であって、
前記コンピュータが、前記第1の変更前道路情報が前記第2の変更前道路情報と第1の所定値以上一致し、かつ、前記第1の変更後道路情報が前記第2の変更後道路情報と第2の所定値以上一致する一又は複数の登録道路を前記複数の登録道路の中から抽出するステップと、
前記コンピュータが、前記抽出された一又は複数の登録道路に関する前記交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化を出力するステップと、
を備えたことを特徴とする道路の安全性変化推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象道路の道路情報の変更を行った場合の安全性の変化を推定可能な道路の安全性変化推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、利便性の高い施設又は施設設置候補地点の選定を行うために、車両の速度、位置及び時刻の情報を含む走行情報に基づいて生成した施設設置候補地点の周辺の交通道路環境情報を抽出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-142141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、対象となる道路の道路情報(交通ルール、道路幅等)が変更された場合に、その道路の安全性(交通ルール違反の変化、交通事故の変化、交通量の変化等)がどのように変化するかを推定したいという要望がある。
【0005】
そこで、本発明は、対象道路の道路情報の変更を行った場合の安全性の変化を推定可能な道路の安全性変化推定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の登録道路のそれぞれについて、各登録道路における変更が行われる前の第1の変更前道路情報と、各登録道路における変更が行われた後の第1の変更後道路情報と、前記第1の変更前道路情報から前記第1の変更後道路情報に変更が行われた前後における各登録道路での交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化と、を記憶した第1の記憶部と、ユーザにより、対象道路の現在の第2の変更前道路情報と、前記対象道路において変更が検討される第2の変更後道路情報と、が入力される入力部と、前記第1の変更前道路情報が前記第2の変更前道路情報と第1の所定値以上一致し、かつ、前記第1の変更後道路情報が前記第2の変更後道路情報と第2の所定値以上一致する一又は複数の登録道路を前記複数の登録道路の中から抽出する抽出部と、前記抽出された一又は複数の登録道路に関する前記交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化を出力する出力部と、を備えたことを特徴とする道路の安全性変化推定システムを提供している。
【0007】
このような構成によれば、対象道路と同じような道路情報の変更が行われた登録道路において、どのような交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、又は、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化が生じたかを把握することが可能となるので、対象道路の道路情報の変更を行った場合の安全性の変化を推定することが可能となる。例えば、「抽出された登録道路では、道路幅を増加させた場合に、駐車違反が増えた」、「抽出された登録道路では、速度制限を下げたが、交通事故の件数はほとんど変わらなかった」、「抽出された登録道路では、接続される他の登録道路の道路幅を増加させた場合、交通量は増加したが、交通事故の件数はほとんど変わらなかった」等の安全性の変化に関する情報が得られるので、「道路情報を予定通りに変更する」、「他の道路情報に変更する」、「道路情報の変更を中止する」等の判断を行うが可能となる。
【0008】
また、本発明の別の観点では、上記道路の安全性変化推定システムに対応する道路の安全性変化推定プログラム及び道路の安全性変化推定方法を提供している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の安全性変化推定システムによれば、対象道路の道路情報の変更を行った場合の安全性の変化を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態による対象道路の道路情報の変更の説明図
図2】本発明の実施の形態による安全性変化推定システムのブロック図
図3】本発明の実施の形態による登録道路の説明図
図4】本発明の実施の形態によるルール適用位置の説明図
図5】本発明の実施の形態により抽出された登録道路の説明図
図6】本発明の実施の形態による安全性変化推定のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態による安全性変化推定システム1について、図1図6を参照して説明する。
【0012】
安全性変化推定システム1は、対象道路Xの道路情報の変更に伴う安全性の変化を推定するためのものであって(図1では、対象道路Xの道路幅を変更する例を示している)、図2に示すように、記憶部2と、取得部3と、判定部4と、入力部5と、抽出部6と、出力部7と、を備えている。
【0013】
記憶部2は、複数の登録道路Y(図3参照)のそれぞれについて、各登録道路Yにおける変更が行われる前の第1の変更前道路情報と、各登録道路Yにおける変更が行われた後の第1の変更後道路情報と、第1の変更前道路情報から第1の変更後道路情報に変更が行われた前後における各登録道路Yでの交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化と、を記憶している。
【0014】
登録道路Yとしては、できるだけ多くの道路を記憶しておくことが好ましく、例えば、日本中の道路を記憶しておくことが考えられる。また、本実施の形態では、図3に示すように、各リンクを登録道路Yとして取り扱うものとする。
【0015】
道路情報としては、当該道路の種別、当該道路の長さ、当該道路の幅、当該道路で適用される交通ルール、及び、当該道路に接続される他の道路の道路情報のうちの少なくとも1つを含むことが考えられる。なお、当該道路の種別と当該道路の幅は、同種の情報なので、いずれか一方のみを使用することも考えられる。
【0016】
また、道路情報としては、更に、当該道路に設置された信号のサイクル、当該道路の車線の数、当該道路の勾配、及び、当該道路の周辺の建築物情報のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0017】
なお、登録道路Yが新設された場合には、第1の変更前道路情報として、道路が存在しないことが記憶される。
【0018】
登録道路Yの種別としては、高速自動車国道、都市高速道路、一般国道、主要地方道、主要地方道(指定市道)、一般都道府県道、主要一般道、一般道、細道路等が考えられる。
【0019】
建築物情報としては、当該道路に近接した建物、トンネル、橋等の建築物の高さ、幅、奥行き、形状、色彩、当該道路からの距離等が考えられる。
【0020】
交通ルール違反情報の変化としては、交通ルール違反の種別ごとの件数の変化や、全交通ルール違反の件数の変化等が考えられる。
【0021】
交通事故情報の変化としては、交通事故の内容(重大さ等)ごとの件数の変化や、全交通事故の件数の変化等が考えられる。
【0022】
交通量情報の変化としては、車両区分(四輪、二輪、大型、小型、普通)ごとの走行車両数の変化や、全車両区分の走行車両数の変化等が考えられる。
【0023】
走行車両の走行情報の変化としては、車両区分(四輪、二輪、大型、小型、普通)ごとの平均速度や平均運転傾向の変化や、全車両区分の平均速度や平均運転傾向の変化等が考えられる。
【0024】
また、記憶部2には、交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化は、時間帯ごと、又は、気象ごとに記憶されていることが好ましい。
【0025】
交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化の記憶部2への記憶方法としては、自動であっても手動であっても良い。例えば、交通事故情報の変化に関しては、手動で記憶し、交通ルール違反情報の変化、交通量情報の変化、及び、走行情報の変化に関しては、記憶部2、取得部3、及び、判定部4を用いて取得されたものを自動的に記憶する構成が考えられる。
【0026】
記憶部2は、上記したものの他に、複数の登録道路Yの各位置に関する道路位置情報と、各登録道路Yを走行する車両に対して定められた複数の交通ルールと、を記憶している。
【0027】
道路位置情報としては、各登録道路Yの緯度・経度が考えられ、記憶部2には、各登録道路Yが含まれる範囲の緯度・経度を記憶しておくことが好ましい。
【0028】
交通ルールとしては、道路標識(規制標識、指示標識、補助標識)、道路標示(規制表示、指示表示)等で示されるルールが考えられ、これらのルールが適用されるルール適用位置の緯度・経度としては、例えば、公安委員会、警察署等が発行する意思決定のデータに記載されたものを用いることができる。当該意思決定のデータが住所で記載されている場合には、当該住所に含まれる範囲を予め緯度・軽度に変換した情報を記憶部2に記憶しておくことが好ましい。
【0029】
これらのルール適用位置は、データ上で取り扱えば済むので地図のように表示する必要はないが、理解容易のために、これらのルール適用位置の緯度・経度を表示した場合、図4に示すようなものとなる。図4では、所定の速度制限が適用される複数のルール適用位置の緯度・経度が点集合範囲Aを形成し、一時停止が適用される複数のルール適用位置の緯度・経度が点集合範囲Bを形成し、駐車禁止が適用される複数のルール適用位置の緯度・経度が点集合範囲Cを形成していることを示している。
【0030】
取得部3は、登録道路Yにおける登録車両Zの走行情報を取得する。
【0031】
本実施の形態では、登録車両Z(図3参照)には、自らの位置を検出可能なGPS装置(図示せず)が搭載されており、登録車両Zの送信部(図示せず)が、GPS装置により検出された自らの位置に関する位置情報を、検出時刻である時刻情報と関連付けて安全性変化推定システム1に送信可能な構成になっているものとする。
【0032】
取得部3では、登録車両Zから送信された位置情報及び時刻情報を走行情報として取得する。走行情報は、短いスパンで順次取得していくことが好ましい。また、本実施の形態では、安全性変化推定システム1は、通信センター等に設置されており、登録車両Zとの間の通信は無線で行うものとする。
【0033】
このようにして、多数の登録車両Zから取得された走行情報に基づき、各登録道路Yでの交通量や走行車両の走行情報(速度等)を取得可能なので、第1の変更前道路情報であった時期と、第1の変更後道路情報であった時期と、の差異が交通量情報の変化や走行情報の変化として記憶部2に記憶される。
【0034】
判定部4は、走行情報に基づき登録道路Yにおける登録車両Zの各交通ルールの違反を判定する。
【0035】
詳細には、記憶部2に記憶された道路位置情報と、走行情報に含まれる位置情報と、に基づき、登録車両Zが走行した登録道路Yを決定し、決定された登録道路Yに適用される交通ルールを記憶部2から抽出し、抽出された交通ルール及び取得された走行情報に基づき登録車両Zの違反の有無を判定する。
【0036】
違反の有無を判定する方法として、例えば、速度違反であれば、制限速度区間(図4の場合、点集合範囲A)において所定以上速度超過していた場合に違反として判定し、一時停止違反であれば、一時停止位置(図4の場合、点集合範囲B)の前後数メートルで所定時間停止していない場合に違反として判定する等が考えられる。登録車両Zの速度は、対象とする2点の位置情報間の距離を、その間の時間で除算することで算出することが可能である。
【0037】
このようにして、多数の登録車両Zから取得された走行情報に基づき、各登録道路Yでの各交通ルールの違反を取得可能なので、第1の変更前道路情報であった時期と、第1の変更後道路情報であった時期と、の差異が交通ルール違反の変化として記憶部2に記憶される。
【0038】
入力部5には、ユーザにより、対象道路Xの現在の第2の変更前道路情報と、対象道路Xにおいて変更が検討される第2の変更後道路情報と、が入力される。
【0039】
例えば、図1は、対象道路Xの幅を変更する例を示しているが、この場合には、第2の変更前道路情報として現在の道路幅を、第2の変更後道路情報として変更後の道路幅を、ユーザが入力することとなる。
【0040】
また、例えば、対象道路Xの速度制限を60km/hから40km/hに変更することを検討している場合には、第2の変更前道路情報として速度制限:60km/hを、第2の変更後道路情報として速度制限:40km/hを、ユーザが入力することとなる。
【0041】
なお、道路情報の入力方法としては、数値以外にも画像で入力することが考えられる。例えば、図1に示すような対象道路Xの画像や形状を入力すると共に、当該道路の種別、当該道路の長さ、当該道路の幅、当該道路で適用される交通ルール、及び、当該道路に接続される他の道路の道路情報等を数値で入力することが考えられる。
【0042】
また、道路を新設する場合には、第2の変更前道路情報として、道路が存在しないことを入力することとなる。
【0043】
抽出部6は、第1の変更前道路情報が第2の変更前道路情報と第1の所定値以上一致し、かつ、第1の変更後道路情報が第2の変更後道路情報と第2の所定値以上一致する一又は複数の登録道路Yを複数の登録道路Yの中から抽出する。
【0044】
これは、対象道路Xと同じような道路情報の変更が行われた登録道路Yを抽出することを意味している。最も一致する登録道路Yのみを抽出しても良いし、一致率の高い複数の登録道路Yを抽出しても良い。
【0045】
この際、地図上では対象道路Xとは方角が異なっていても、回転や反転させることにより所定値以上一致する登録道路Yは、上記抽出する対象に含まれる。
【0046】
第1の所定値、及び、第2の所定値は、求める精度に応じてユーザが設定すれば良いが、例えば、当該道路の種別、当該道路で適用される交通ルール、当該道路の車線の数に関しては、選択肢が限られているので、完全一致する登録道路Yを抽出するように設定することが考えられる。
【0047】
一方、その他の道路情報に関しては、完全一致するケースは少ないので、ある程度幅をもたせて設定することが考えられる。
【0048】
但し、道路情報としては、1種類の道路情報だけでなく、複数種類の道路情報を考慮することが好ましいため、複数の道路情報が総合的に第1の所定値(第2の所定値)以上一致する登録道路Yを抽出することが好ましい。例えば、AIを用いて、複数の道路情報が総合的に第1の所定値(第2の所定値)以上一致する登録道路Yを抽出することが考えられる。
【0049】
また、複数の道路情報を総合的に考慮する場合には、各道路情報に重み付けをしても良い。例えば、建築物情報は、道路への日差しに影響するが、当該建築物が日差しへの影響の少ないものである場合、建築物情報の重みを下げることが考えられる。
【0050】
更に、「当該道路に接続される他の登録道路の道路情報」に関しては、他の登録道路Y1の道路情報まで考慮することとなるため、考慮する情報が無限に広がってしまう。従って、後段で接続される他の登録道路Y1、Y2、Y3・・・の道路情報の重みを徐々に下げることが考えられる。
【0051】
このようにして、例えば、図5に示すように、変更前の道路情報と、変更後の道路情報と、が、対象道路Xにそれぞれ類似する登録道路Yが抽出される。図5では、一部の道路情報(登録道路Yの長さ、及び、接続される他の道路Y1の幅)が対象道路Xとは少し異なるが、総合的に見て道路情報が類似し、かつ、同じような道路幅の変更が行われた登録道路Yが抽出された例を示している。
【0052】
出力部7は、抽出された一又は複数の登録道路Yに関する交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化を出力する。
【0053】
これにより、対象道路Xと同じような道路情報の変更が行われた登録道路Yにおいて、どのような交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、又は、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化が生じたかを把握することが可能となるので、対象道路Xの道路情報の変更を行った場合の安全性の変化を推定することが可能となる。例えば、「抽出された登録道路Yでは、道路幅を増加させた場合に、駐車違反が増えた」、「抽出された登録道路Yでは、速度制限を下げたが、交通事故の件数はほとんど変わらなかった」、「抽出された登録道路Yでは、接続される他の登録道路Y1の道路幅を増加させた場合、交通量は増加したが、交通事故の件数はほとんど変わらなかった」等の安全性の変化に関する情報が得られるので、「道路情報を予定通りに変更する」、「他の道路情報に変更する」、「道路情報の変更を中止する」等の判断を行うが可能となる。
【0054】
なお、出力部7は、交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化を、時間帯ごと、又は、気象ごとに出力可能であることが好ましい。
【0055】
これにより、例えば、人の多い時間帯(通学時間等)、日差し、天候の影響による変化まで考慮することができるので、より適切に安全性の変化を推定することが可能となる。
【0056】
また、出力結果を表示部(図示せず)に表示させる場合には、交通ルール違反の種別、交通事故の内容、車両区分、時間帯、気象ごとに色分け等で区別して表示させてもよい。
【0057】
続いて、図6のフローチャートを用いて、本実施の形態の安全性変化推定システム1における制御の流れについて説明する。
【0058】
本フローチャートでは、複数の登録道路Yのそれぞれについて、各登録道路Yにおける変更が行われる前の第1の変更前道路情報と、各登録道路Yにおける変更が行われた後の第1の変更後道路情報と、第1の変更前道路情報から第1の変更後道路情報に変更が行われた前後における各登録道路Yでの交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化と、が予め記憶部2に記憶されているものとする。
【0059】
まず、入力部5において、ユーザにより、対象道路Xの現在の第2の変更前道路情報と、対象道路Xにおいて変更が検討される第2の変更後道路情報と、が入力されると(S1)、第1の変更前道路情報が第2の変更前道路情報と第1の所定値以上一致し、かつ、第1の変更後道路情報が第2の変更後道路情報と第2の所定値以上一致する一又は複数の登録道路Yが複数の登録道路Yの中から抽出される(S2)。
【0060】
最後に、抽出された一又は複数の登録道路Yに関する交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化が出力される(S3)。
【0061】
これにより、ユーザは、対象道路Xと同じような道路情報の変更が行われた登録道路Yにおいて、どのような交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、又は、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化が生じたかを把握することが可能となる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態による安全性変化推定システム1では、第1の変更前道路情報が第2の変更前道路情報と第1の所定値以上一致し、かつ、第1の変更後道路情報が第2の変更後道路情報と第2の所定値以上一致する一又は複数の登録道路Yを複数の登録道路Yの中から抽出し、抽出された一又は複数の登録道路Yに関する交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化を出力する。
【0063】
このような構成によれば、対象道路Xと同じような道路情報の変更が行われた登録道路Yにおいて、どのような交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、又は、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化が生じたかを把握することが可能となるので、対象道路Xの道路情報の変更を行った場合の安全性の変化を推定することが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態による安全性変化推定システム1では、道路情報には、当該道路の種別、当該道路の長さ、当該道路の幅、当該道路で適用される交通ルール、及び、当該道路に接続される他の道路の道路情報のうちの少なくとも1つを含む。
【0065】
このような構成によれば、交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、又は、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化に特に大きく関与する要素が道路情報に含まれるので、より適切な登録道路Yが抽出され、もって、対象道路Xの道路情報の変更を行った場合の安全性の変化をより正確に推定することが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態による安全性変化推定システム1では、道路情報には、更に、当該道路に設置された信号のサイクル、当該道路の車線の数、当該道路の勾配、及び、当該道路の周辺の建築物情報のうちの少なくとも1つを含む。
【0067】
このような構成によれば、交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、又は、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化に大きく関与する要素が道路情報に更に含まれるので、より適切な登録道路Yが抽出され、もって、対象道路Xの道路情報の変更を行った場合の安全性の変化をより正確に推定することが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態による安全性変化推定システム1では、第1の変更前道路情報及び第2の変更前道路情報には、道路が存在しない状態も含まれる。
【0069】
このような構成によれば、道路を新設した場合の安全性まで推定することが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態による安全性変化推定システム1では、出力部7は、交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化を、時間帯ごと、又は、気象ごとに出力可能である。
【0071】
このような構成によれば、例えば、人の多い時間帯(通学時間等)、日差し、天候の影響による変化まで考慮することができるので、より適切に安全性の変化を推定することが可能となる。
【0072】
尚、本発明の安全性変化推定システムは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0073】
例えば、上記実施の形態では、安全性変化推定システム1は、取得部3、及び、判定部4を備えていたが、これらを備えず、他の方法等で別途取得した交通ルール違反情報の変化、交通事故情報の変化、交通量情報の変化、又は、走行車両の走行情報の変化を記憶部2に記憶する構成であっても良い。
【0074】
また、上記実施の形態では、本発明の“所定の交通ルールが適用されるルール適用位置の緯度・経度”として、公安委員会、警察署等が発行する意思決定のデータを用いたが、その他から取得したデータを用いてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態では、GPS装置により検出された位置情報を取得したが、例えば、画像等から位置情報を取得しても良い。
【0076】
また、本発明は、安全性変化推定システムが行う処理に相当するプログラムや、当該プログラムを記憶した記録媒体にも応用可能である。記録媒体の場合、コンピュータ等に当該プログラムがインストールされることとなる。ここで、当該プログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体としては、CD-ROM等が考えられるが、それに限定されるものではない。
【0077】
コンピュータはCPU、メモリ、ハードディスクからなり、当該プログラムは、ハードディスク上に記録され、実行時にメモリへ展開されCPU上で演算処理を行うことで処理を行うものである。なお、コンピュータのCPUは並列処理できるものであってもよいし、コンピュータ自体が分散処理できる形態であっても良い。処理の結果はネットワークを介して任意のディスプレイで表示することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 安全性変化推定システム
2 記憶部
3 取得部
4 判定部
5 入力部
6 抽出部
7 出力部
X 対象道路
Y 登録道路
Z 登録車両
【要約】
【課題】対象道路の道路情報の変更を行った場合の安全性の変化を推定可能な道路の安全性変化推定システムを提供する。
【解決手段】安全性変化推定システム1は、各登録道路Yにおける第1の変更前道路情報及び第1の変更後道路情報と、第1の変更前道路情報から第1の変更後道路情報に変更が行われた前後における各登録道路Yでの交通ルール違反情報の変化等を記憶している。対象道路Xの現在の第2の変更前道路情報と、対象道路Xにおいて変更が検討される第2の変更後道路情報と、が入力されると、第1の変更前道路情報が第2の変更前道路情報と第1の所定値以上一致し、かつ、第1の変更後道路情報が第2の変更後道路情報と第2の所定値以上一致する一又は複数の登録道路が複数の登録道路の中から抽出され、抽出された一又は複数の登録道路に関する交通ルール違反情報の変化等が出力される。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6