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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20250304BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20250304BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20250304BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
A61F13/56 110
A61F13/532 200
A61F13/47
A61F13/533 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021176393
(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公開番号】P2023065954
(43)【公開日】2023-05-15
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】栗原 涼子
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031668(WO,A1)
【文献】特開昭52-138398(JP,A)
【文献】特開2016-067507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収体とを備え、装着時に装着者の身体の前後方向に対応する前後方向と前記前後方向に直交する左右方向とを有する吸収性物品であって、
装着時に主として装着者の股間に対応させる中間領域と、前記中間領域の前方に隣接し且つ前記吸収性物品の前端までの領域である前方領域と、前記中間領域の後方に隣接し且つ前記吸収性物品の後端までの領域である後方領域とを有し、
前記バックシート側にズレ止め部を備え、
前記トップシート側に圧搾溝が形成されており、前記圧搾溝が、装着時に装着者の体液排出口に対向させる体液排出口対向部を前記前後方向で跨がるように前記前後方向に沿ってそれぞれ延在する対をなす左圧搾溝及び右圧搾溝を含み、
前記左圧搾溝が、前記左右方向の中央領域を通るように全体として右方に凸の形状を有し、前記右圧搾溝が、前記左右方向の中央領域を通るように全体として左方に凸の形状を有し、
前記左圧搾溝の一部及び前記右圧搾溝の一部が、前記左右方向の中央領域に形成された前記前後方向に沿った直線状の中央圧搾溝に含まれることにより、前記圧搾溝が、前記中央圧搾溝と、前記中央圧搾溝の前端から分岐する
前記右圧搾溝の前方部分及び前記左圧搾溝の前方部分と、前記中央圧搾溝の後端から分岐する前記右圧搾溝の後方部分及び前記左圧搾溝の後方部分とからなり、
前記右圧搾溝の前方部分及び前記左圧搾溝の前方部分、並びに前記右圧搾溝の後方部分及び前記左圧搾溝の後方部分は、前記前後方向に沿って延びる前後方向中心線に向かって凸弧状であり、
前記中央圧搾溝の幅は、前記右圧搾溝の前方部分及び前記左圧搾溝の前方部分、並びに前記右圧搾溝の後方部分及び前記左圧搾溝の後方部分の幅の3~5倍であり、
平面視で、前記左圧搾溝及び前記右圧搾溝が前記左右方向の中央領域で前記ズレ止め部に重ならず、前記左圧搾溝の前端及び後端、並びに前記右圧搾溝の前端及び後端が前記ズレ止め部に重なる、吸収性物品。
【請求項2】
前記ズレ止め部が、両側部にそれぞれ前記前後方向に沿って連続して形成された対をなす左ズレ止め部及び右ズレ止め部を少なくとも含み、
前記左圧搾溝の前記前端及び後端が前記左ズレ止め部に重なり、且つ前記右圧搾溝の前記前端及び後端が前記右ズレ止め部に重なる、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
平面視で、前記左ズレ止め部及び前記右ズレ止め部が、前記中央圧搾溝からそれぞれ離間している、請求項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
失禁用パッド、生理用ナプキン、パッドタイプのおむつ等のパット状の吸収性物品が知られている。このような吸収性物品の構成としては、透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に設けられた吸収体とを備え、さらにバックシート側に、吸収性物品の下着に対するズレを防止するためのズレ止め部が設けられているものが一般的である。
【0003】
吸収性物品は、装着時には装着者の身体に適合するように三次元的に変形させる。このような変形状態で、吸収性物品はさらに装着者の脚からの力を受けるので、装着者が身体を大きく動かした場合等には、ズレ止め部が下着から剥がれやすくなる場所が生じ得る。よって、吸収性物品の装着時の変形状態を考慮したズレ止め部の配置について、例えば、ズレ止め部と、吸収性物品の変形を促す圧搾溝(フィットエンボス)との配置関係について検討がなされている。
【0004】
特許文献1には、ズレ止め粘着層が、フィットエンボスと吸収性物品の厚み方向に重ならない領域に形成され、且つズレ止め粘着層が、フィットエンボスより幅方向外側において、股間部用粘着部と、当該股間部用粘着部の前後部にそれぞれ間隔を置いて形成された前後部用粘着部とを含む吸収性物品が記載されている。特許文献1には、装着状態で脚圧が作用した時に、フィットエンボスによる吸収体の収縮変形に伴ってズレ止め粘着層同士が接着することを防止でき、ズレ止め部と下着との接着が図れなくなるという問題を解消できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-42471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、吸収性物品の用途によって、所望される装着時の変形状態(変形後形状)も様々であり、その変形を誘導する圧搾溝(フィットエンボス)の形状も様々である。よって、圧搾溝の形状によっては、ズレ止め部(ズレ止め粘着層)が下着から剥がれてしまうことがあり、それにより吸収性物品にヨレが生じて、そのヨレが体液の漏れにつながる可能性がある。
【0007】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、吸収性物品が変形した際に下着から剥がれにくくなり、これにより吸収性物品のヨレを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収体とを備え、装着時に装着者の身体の前後方向に対応する前後方向と前記前後方向に直交する左右方向とを有する吸収性物品であって、前記バックシート側にズレ止め部を備え、前記トップシート側に圧搾溝が形成されており、前記圧搾溝が、装着時に装着者の体液排出口に対向させる体液排出口対向部を前記前後方向で跨がるように前記前後方向に沿ってそれぞれ延在する対をなす左圧搾溝及び右圧搾溝を含み、前記左圧搾溝が、前記左右方向の中央領域を通るように全体として右方に凸の形状を有し、前記右圧搾溝が、前記左右方向の中央領域を通るように全体として左方に凸の形状を有し、平面視で、前記左圧搾溝及び前記右圧搾溝が前記左右方向の中央領域で前記ズレ止め部に重ならず、前記左圧搾溝の前端及び後端、並びに前記右圧搾溝の前端及び後端が前記ズレ止め部に重なる。
【0009】
上記第一の態様によれば、体液排出口対向部を前後方向で跨がるように前後方向に沿ってそれぞれ延在する対をなす圧搾溝、すなわち左圧搾溝及び右圧搾溝がトップシート側に形成されている。そして、左圧搾溝は左右方向の中央領域を通るように右方に凸の形状を有し、且つ右圧搾溝が左右方向の中央領域を通るように左方に凸の形状を有している。これにより、装着時に脚の力が両側部に掛かった場合、吸収性物品は、左右方向の中央領域において下着側(非肌側)へと落ち込むよう変形し得る。すなわち、吸収性物品の体液排出口対向部を含む中間領域に、前後方向中央に前後方向に沿った溝状の窪みが形成され得る。排出された体液はこのような窪みに少なくとも一時的に留まることができ、さらに体液を前後方向に誘導されるので、体液の急な排出が生じた場合や粘性の低い体液が多量に排出された場合でも、漏れを抑制できる。また、吸収性物品の前方及び後方では、対をなす左圧搾溝及び右圧搾溝が中央領域より左右方向外側の側部領域に形成され得るので、左圧搾溝と右圧搾溝との間の部分が窪むことなく身体の前側の面及び後ろ側の面に密着でき、前方及び後方の漏れを防止することができる。
【0010】
吸収性物品は、上述のように、脚からの力を受けた時に上記の圧搾溝の誘導によって変形せしめられた状態では、特に左右方向の側部領域の前方及び後方の部分、すなわち左圧搾溝及び右圧搾溝の前端及び後端が位置する場所及びその付近が、吸収性物品の前後方向の中央に且つ左右方向中央に向かう方向(若しくは体液排出口対向部に向かう方向)に引っ張られやすくなり。そのため、側部領域の前方及び後方は下着から離れやすくなり、吸収性物品の下着に対する固定が不安定になり得る。これに対し、本態様によれば、平面視で、左圧搾溝の前端及び後端、並びに右圧搾溝の前端及び後端がズレ止め部に重なっているので、側部領域の前方及び後方における吸収性物品の下着への固定をより確実にすることができ、吸収性物品が下着から離れにくくなる。よって、吸収性物品が下着から離れた状態で望ましくない形状に変形してシワ、ヨレ等が生じることを防止できる。よって、身体に適合させた吸収性物品の所望の変形状態を維持することができる。
【0011】
さらに、本態様では、平面視で、左圧搾溝及び右圧搾溝が左右方向の中央領域でズレ止め部に重なっていないので、脚の力の左右から受けて中央領域の幅が縮小するように吸収性物品が変形しても、ズレ止め部自身が互いに貼り付いてしまうことを防止できる。これにより、吸収性物品の左右方向の中央領域でのヨレを防止できる。
【0012】
本発明の第二の態様では、前記左圧搾溝及び前記右圧搾溝が、前記左右方向の前記中央領域において互いに接しているか又は重なっている。
【0013】
上記第二の態様によれば、左圧搾溝及び右圧搾溝が互いに接するか又は重なることでその部分の剛性が向上するので、吸収性物品の中間領域には、左右方向の中央領域における前後方向に沿った下着側への窪みをより確実に形成できる。このため、体液を少なくとも一時的に貯めることができ且つ前後方向に誘導できる、という上述の効果を得やすくなる。また、一旦形成された窪みの形状が安定することから、長時間装着しても吸収性物品のヨレ等も防止できる。
【0014】
本発明の第三の態様では、前記ズレ止め部が、両側部にそれぞれ前記前後方向に沿って連続して形成された対をなす左ズレ止め部及び右ズレ止め部を少なくとも含み、前記左圧搾溝の前記前端及び後端が前記左ズレ止め部に重なり、且つ前記右圧搾溝の前記前端及び後端が前記右ズレ止め部に重なる。
【0015】
上記第三の態様によれば、ズレ止め部が、両方の側部領域に前後方向に沿って連続して形成されているので、吸収性物品を前後方向に沿ってより確実に固定することができる。また、側部領域で、左ズレ止め部によって左圧搾溝の前端から後端までズレ止め部が連続するので、また右ズレ止め部によって右圧搾溝の前端から後端までズレ止め部が連続することになる。そのため、前後方向中心線を中心軸として吸収性物品の前方又は後方が捩じれた場合にも、吸収性物品が下着から剥がれにくく、所望の位置での固定及び所望の変形を得ることができる。
【0016】
本発明の第四の態様では、前記左右方向の前記中央領域に、前記前後方向に沿った直線状の中央圧搾溝が形成されており、前記左圧搾溝の一部及び前記右圧搾溝の一部が前記中央圧搾溝に含まれる。
【0017】
上記第四の態様によれば、直線状の中央圧搾溝によって、左右方向の中央領域において下着側に落ち込んで形成される前後方向に沿って延びる窪みが一層形成されやすくなるので、体液を少なくとも一時的に貯めることができ且つ前後方向に誘導できる、という上述の効果を得やすくなる。また、左圧搾溝の一部及び右圧搾溝の一部が中央圧搾溝に含まれていて、左圧搾溝及び右圧搾溝の両圧搾溝の前方部分及び後方部分が中央圧搾溝に連続することになるので、吸収性物品の変形が前後方向にわたって連続して形成されやすくなり、且つその変形が安定的に維持されやすい。
【0018】
本発明の第五の態様では、平面視で、前記左ズレ止め部及び前記右ズレ止め部が、前記中央圧搾溝からそれぞれ離間している。
【0019】
上記第五の態様によれば、左右方向の中央領域においてズレ止め部同士が互いに貼り付きにくくなるという作用を向上させることができる。よって、中央圧搾溝による、下着側への窪みの形成の誘導を促進できる。
【0020】
本発明の第六の態様では、前記左圧搾溝及び前記右圧搾溝の前記前端を含む前方部分及び/又は前記後端を含む後方部分が、前記前後方向に延びる前後方向中心線に向かって凸弧状に形成されている。
【0021】
上記第六の態様によれば、吸収性物品の前方及び/又は後方において、身体の形状に沿った、より自然な変形を可能にできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、装着時に所望の形に容易に変形させることができ、所望されない箇所でのシワやヨレの発生が低減された吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態による吸収性物品を肌側から見た平面図である。
図2図1のI-I線断面図である。
図3図1のII-II線断面図である。
図4】変形状態にある吸収性物品を示す、図2に対応する断面図である。
図5】一実施形態による吸収性物品の機能について説明するための図である。
図6図1の部分拡大図である。
図7】ズレ止め部の変形例を示す図である。
図8】ズレ止め部の別の変形例を示す図である。
図9】ズレ止め部のさらに別の変形例を示す図である。
図10】圧搾溝の変形例を示す図である。
図11】圧搾溝の別の変形例を示す図である。
図12】圧搾溝のさらに別の変形例を示す図である。
図13】圧搾溝のさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0025】
<吸収性物品の基本構造>
図1に、本発明の一実施形態による吸収性物品1の平面図を示す。本例は、失禁用パッドとする。図2に吸収性物品1のI-I線断面図を、図3に吸収性物品1のII-II線断面図を示す。図1図3に示すように、吸収性物品1は、透液性のトップシート3と、不透液性のバックシート2と、両シートの間に配置された吸収体4とが重ねられて構成されている。吸収性物品1は、装着前の状態では全体として概ね扁平形状となっている(図2及び図3)。吸収性物品1の装着時には、トップシート3側が肌に対向する側(肌側若しくは表側)となり、バックシート2側が下着に固定される側(下着側若しくは裏側)となる。よって、図1は、吸収性物品1を肌側から見た図である。
【0026】
吸収性物品1において、装着の際に装着者の身体の前後方向に対応する方向を前後方向D1とし、前後方向D1に直交する方向であり、装着者の身体の左右方向に対応する方向を左右方向D2とする。本形態では、吸収性物品1は平面視で細長形状を有しており、吸収性物品1の前後方向D1は長手方向であり、且つ左右方向D2は幅方向になる。図1に示す形態では、吸収性物品1は、平面視で、前後方向D1に沿って延びる中心線(前後方向中心線)CLに対して略線対称の形状を有しているが、形状は線対称でなくともよい。また、吸収性物品1の形状以外の構成(吸収体4の密度、材質、及び圧搾溝の大きさ、等を含む)も、中心線CLを対称軸として略対称であってもよいし、非対称であってもよい。
【0027】
バックシート2は、少なくとも遮水性を有するシートであってよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂製のシート等であってよい。また、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等を用いることができる。
【0028】
トップシート3は、尿、経血、おりもの等の体液を透過可能なシートとすることができる。トップシート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることもできる。
【0029】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))、及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
【0030】
吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用でき、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。
【0031】
吸収体4は、吸収体4の本体部分をクレープ紙又は不織布等からなる被包シートで包んだものであってよい。吸収体4が被包シートを備えていることで、吸収体4のよれや割れを防止でき、形状を保持できる。被包シートとしては、無着色(すなわち、白色)のクレープ紙や不織布を用いることもできるし、着色(例えば体液の色と同系色又は体液の色の補色に着色)されたものを用いることもできる。
【0032】
吸収体4は平面視形状は、図1に示すように、略一定の幅を有する細長形状であってよい。吸収体4の幅は前後方向D1に沿って変動していてもよいが、略一定幅の吸収体4は製造工程が複雑にならないため、好ましい。吸収体4は全体として、全面にわたり均一な厚みを有してもよいが、吸収体4の厚みは均一でなくともよく、局所的に薄く又は厚くしてもよい。
【0033】
吸収体4の前後方向D1の両端縁においては、バックシート2の縁部とトップシート3の縁部とが、接着剤、ヒートシール等によって接合されていてよい。また、吸収性物品1の両側部、すなわち左右方向D2の両側には、表側(トップシート3側)に、前後方向D1に沿って、一対のサイドシート7、7が配置されている。
【0034】
サイドシート7は、体液の浸透を防止する、或いは肌触りを高める等の目的に応じて、適切な撥水処理又は親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたものであってよい。サイドシート7の素材は、天然繊維、合成繊維、再生繊維等であってよい。また、サイドシート7が撥水処理されている場合、その処理には、シリコーン系、パラフィン系等の撥水剤を用いることができる。なお、吸収性物品は、サイドシート7を使用せずに、トップシート3が、吸収性物品1の左右方向D2の端部まで延在してバックシート2と接合された構成を有していてもよい。
【0035】
吸収性物品1の両側部には、伸長状態のゴム紐等の弾性部材がシートに挟まれてシートに接合されてなるギャザーが形成されていてもよい。その場合、弾性部材を挟むシートとしてサイドシート7、7を利用することもできる。
【0036】
吸収性物品1は、装着時に主として装着者の股間に対応させる中間領域Mと、中間領域Mの前方に隣接し且つ吸収性物品1の前端までの領域である前方領域Fと、中間領域Mの後方に隣接し且つ吸収性物品1の後端までの領域である後方領域Bとを有していてよい。中間領域Mは、体液排出口対向部Qを含む。体液排出口対向部Qは、装着時に装着者の尿道口、膣口等の体液排出口に対向する領域であり、その中心が、前後方向中心線CL上にする。図1に示す例では、体液排出口対向部Qは、尿道口に対応する領域として楕円状に描かれているが、図示の体液排出口対向部Qの大きさ及び形状は、本形態による吸収性物品を説明するための例示にすぎない。
【0037】
なお、前方領域F及び後方領域Bは、吸収性物品が個装される際には、前後方向D1に肌側に折り返すことができる。図1の例では、前方領域Fの折返しは、前方領域Fと中間領域Mとの境界線に沿った折り線によって、また後方領域Bの折返しは、後方領域Bと中間領域Mとの境界線に沿った折り線にて行うことができる。これにより、吸収性物品1を3つ折り以上に折り畳むことができる。前方領域F及び後方領域Bはどちらを先に折り返してもよい。
【0038】
また、吸収性物品1は、左右方向D2で見て、前後方向中心線CLを含む中央領域Cと、中央領域Cの左右方向D2の外側に隣接し且つ吸収性物品1の左右方向D2の外端までの領域である側部領域S、Sとを有していてよい。中央領域Cは、前後方向中心線CL上にあり且つ吸収体4の幅の約3分の1の幅を有する領域とすることができる。
【0039】
吸収性物品1の全体の前後方向D1の長さ(全長)は、好ましくは170~360mmであり、より好ましくは230~270mmであってよい。吸収性物品1の左右方向D2の長さ(ウィングを備えている場合はウィング部分を除いた本体の幅)は、好ましくは50~150mm、より好ましくは70~120mmであってよい。また、トップシート3とバックシート2との間に挟まれている吸収体4の幅は、50~100mmであってよい。さらに、吸収性物品1の全体の厚みは、好ましくは1~30mm、より好ましくは5~20mmであってよい。
【0040】
本形態による吸収性物品1はウィングを備えていないが、吸収性物品1は、中間領域Mの両側縁から側方にそれぞれ延出する一対のウィングを有していてもよい。ウィングは、サイドシート7の延出部分とバックシート2の延出部分とが接合することによって形成できる。
【0041】
<ズレ止め部>
図1図3に示すように、吸収性物品1のバックシート2側には、装着時に吸収性物品1を下着により確実に固定して、吸収性物品1のズレを防止するためのズレ止め部が形成されている。本形態では、ズレ止め部は粘着性ズレ止め部であることが好ましい。粘着性のズレ止め部は、例えば流動物である粘着剤が塗布されるか、又は予め形成された粘着剤の層(粘着テープ等)が被着されることによって形成されている。ズレ止め部として用いられる粘着剤は、公知の粘着剤、例えばホットメルトタイプの粘着剤を用いることができる。その主成分としては、スチレン系ポリマー、粘着付与剤、及び可塑剤、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0042】
上記のスチレン系ポリマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。また、上記の粘着付与剤及び可塑剤として、常温で固体のものを用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステル等のポリマー可塑剤が挙げられる。
【0043】
ズレ止め部は、1つ又は複数設けられていてよい。そして、ズレ止め部には、図1に示すように、前後方向D1に沿って延在し且つ左右方向D2に離間する対をなす左ズレ止め部9L及び右ズレ止め部9Rが少なくとも含まれる。左ズレ止め部9L及び右ズレ止め部9Rはいずれも、左右方向D2の側部領域S、Sに設けられているので、吸収性物品1の側方をより確実に、前後方向D1に沿って下着に固定できるので、ズレ止め部としての固定機能を有効に発揮させることができる。また、左ズレ止め部9L及び右ズレ止め部9Rは、図1に示すように、平面視で吸収体4が配置されている範囲内に収まるように設けられていると、吸収体4が配置されている厚みの大きい部分を下着に確実に固定できるので、好ましい。さらに、左ズレ止め部9L及び右ズレ止め部9Rはそれぞれ前後方向D1に連続して形成されていると、側部領域S、Sを固定する機能が高まるため、両側部から脚の力が掛かってもヨレなどが生じにくく、好ましい。
【0044】
左ズレ止め部9L及び右ズレ止め部9Rの左右方向D2の長さ(幅)wはそれぞれ、5~20mmであってよい(図1)。
【0045】
<圧搾溝>
図1図3に示すように、吸収性物品1には、肌側から非肌側へと窪む(すなわちトップシート3側からバックシート2側へと窪む)圧搾溝が形成されている。圧搾溝は、少なくとも吸収体4とトップシート3とを重ね合せた積層物に対して、トップシート3側から所定箇所に所定の形状で圧力を掛けることによって形成される圧搾溝(フィットエンボス)であってよい。このような圧搾溝は、例えば、所定の圧搾溝の形状に対応する凸部を有するロールと、当該ロールに対向する表面に凹凸のないロールとの間に、吸収体4とトップシート3とを含む積層物を通過させることによって形成できる。圧搾溝が、トップシート3側からバックシート2側へと窪む溝になっていることで、吸収性物品1は、左右方向D2の両側から力を受けた場合に、圧搾溝の位置がバックシート2側(非肌側若しくは下着側)に凸となるように折れやすい。そのため、本形態による圧搾溝の形状では、吸収性物品1の中間領域Mにおいて、左右方向D2の中央領域Cが下着側に落ち込むように変形しやすくなっている。
【0046】
圧搾溝内での圧搾度合(溝の深さ)は、全体として均一になっていてもよいし、場所により異なっていてもよい。圧搾溝は、低圧搾部と、低圧搾部よりも深く窪んだ高圧搾部とを含んでいて、高圧搾部が低圧搾部内に断続的に形成されていてもよい。本明細書においては、低圧搾部は白色で、高圧搾部は黒色で示されている(図1等)。圧搾溝が高圧搾部と低圧搾部とを組み合わせてなることで、圧搾溝が吸収性物品の変形を誘導する作用を有するとともに、圧搾溝が形成された部分が過度に硬くなることを回避して吸収性物品の柔軟性を確保することができる。
【0047】
図1に示すように、圧搾溝は、前後方向D1に沿ってそれぞれ延在する一対の圧搾溝、すなわち左圧搾溝12L及び右圧搾溝12Rを含んでいてよい。ここで、「前後方向D1に沿って延在する」形状とは、全体として左右方向D2でなく前後方向D1に沿っていることが認識される形状であって、前後方向D1に平行な部分のみならず、前後方向D1と45°以下の角度をなす方向に延在する部分を含んでいてもよい。図1に示すように、左圧搾溝12L及び右圧搾溝12Rは、いずれも体液排出口対向部Qを前後方向D1で跨がるように延在している。すなわち、左圧搾溝12L及び右圧搾溝12Rが設けられている範囲は、前方領域Fから中間領域Mを通って後方領域Bにわたる範囲であってよい。左圧搾溝12L及び右圧搾溝12Rはそれぞれ、前後方向D1に連続していても不連続になっていてもよいが、連続していることが好ましい。図1の例では、左圧搾溝12Lはその前端Lftから後端Lbtまで連続した部分であり、右圧搾溝12Rはその前端Rftから後端Rbaまで連続した部分であり、両者は、左右方向D2の中央で互いに接合している。また、この両者の接合は、中間領域Mに直線状に形成されていてよい。図1においては、左圧搾溝12Lと右圧搾溝12Rとの接合位置15を点線で示す。
【0048】
図1に示すように、左圧搾溝12Lは右方に凸の形状を有し、右圧搾溝12Rは左方に凸の形状を有している。図1に示す例では、左圧搾溝12L及び右圧搾溝12Rは、前後方向中心線CLに向かって凸の形状を有している。よって、前方領域Fにおいては、左圧搾溝12Lと右圧搾溝12Rとの間の間隔は、吸収性物品1の前後方向D1の前端部に近付くほど大きくなっている。また、後方領域Bにおいては、左圧搾溝12Lと右圧搾溝12Rとの間の間隔は、吸収性物品1の前後方向D1の後ろ端部に近付くほど大きくなっている。さらに、左圧搾溝12Lの前端Lft及び右圧搾溝12Rの前端Rftはいずれも左右方向D2の側部領域Sに配置され、左圧搾溝12Lの後端Lba及び右圧搾溝12Rの後端Rbtはいずれも左右方向D2の側部領域Sに配置されている。
【0049】
上述のように、図1の例では、左圧搾溝12Lと右圧搾溝12Rとは、左右方向D2の中央付近で若しくは左右方向D2の中央領域Cにおいて、且つ前後方向D1の中央付近で若しくは中間領域Mにおいて、接合されている。より具体的には、圧搾溝12Lと右圧搾溝12Rとは、中央領域C内で且つ中間領域M内で接合されている。そして、本例では、接合された部分にわたって、前後方向D1に沿った直線状の中央圧搾溝11が形成されている。よって、図1に示す圧搾溝について別の言い方をすると、圧搾溝は、中間領域Mに形成された前後方向D1に沿った直線状の中央圧搾溝11と、中央圧搾溝11の前方に続いて延びる左圧搾溝12Lの前方部分12Lf及び右圧搾溝12Rの前方部分12Rfと、中央圧搾溝11の後方に続いて延びる左圧搾溝12Lの後方部分12Lb及び右圧搾溝12Rの後方部分12Rbとを有している。図1に示す圧搾溝においては、対をなす左圧搾溝12Lの前方部分12Lf及び右圧搾溝12Rの前方部分12Rfが、中央圧搾溝11の前端から分岐し、対をなす左圧搾溝12Lの後方部分12Lb及び右圧搾溝12Rの後方部分12Rbが、中央圧搾溝11の後端から分岐しているとも言える。
【0050】
中央圧搾溝11の幅(左右方向D2の長さ)は、左圧搾溝12Lの前方部分12Lf及び後方部分12Lb、並びに右圧搾溝12Rの前方部分12Rf及び後方部分12Rbのそれぞれの幅よりも大きく、例えば前者は後者の2倍以上、好ましくは3~5倍であってよい。
【0051】
このように、圧搾溝が、体液排出口対向部Qを前後方向D1で跨るように前後方向D1に延在する対をなす左圧搾溝12L及び右圧搾溝12Rを含み、左圧搾溝12Lが中央領域Cを通るように右方に凸の形状を有し且つ右圧搾溝12Rが中央領域Cを通るように左方に凸の形状を有することで、圧搾溝は全体として、中間領域Mにおける左右方向D2の中央領域C内の前後方向D1に沿った直線部分(中央圧搾溝11)と、上記直線部分の前方に略V字若しくは略Y字形状に2股に分岐した部分(左圧搾溝12Lの前方部分12Lf及び右圧搾溝12Rの前方部分12Rf)と、並びに上記直線部分の後方に略V字若しくは略Y字形状に2股に分岐した部分(左圧搾溝12Lの後方部分12Lb及び右圧搾溝12Rの後方部分12Rb)とが連続してなる形状となっている。そのため、装着時に、中間領域Mの両側部に脚から圧力を受けた際には、吸収性物品1が圧搾溝に沿って容易に折れ曲がることができ、全体として三次元的な変形を誘導することができる。このような変形の誘導により、装着時の変形状態が使用者の装着の仕方、装着者の体形に大きく左右されることなく、所望の変形をより確実に前後方向D1にわたって得ることができる。
【0052】
上述の三次元的な変形によれば、吸収性物品1の中間領域Mにおいては、左右方向D2の中央領域C内で前後方向D1に沿って形成された圧搾溝部分によって、中央領域Cが下着側に落ち込み、前後方向D1に沿って延びる窪みが形成される。図4に、図2に対応する図であって、変形状態にある吸収性物品1の中間領域Mにおける断面図を示す。図4に示すように、吸収性物品1は、融合された左圧搾溝12L及び右圧搾溝12Rが形成されている場所(中央圧搾溝11が形成されている場所)が、バックシート2側に落ち込み、その左右の吸収体4が盛り上がるように変形する。さらに、吸収性物品1の前方及び後方は、身体の形状に合わせて中間領域Mよりもトップシート3側に持ち上がり、前方は身体の前方の恥骨付近の面に、後方は身体の後方の臀部の膨らみにそれぞれ当接できる。この際、2股に分岐した圧搾溝部分の形状によって、吸収性物品1の前方及び後方は、左右方向D2の中央付近で下着側に落ち込むことなく肌の面に密着させることができる。よって、体液が急な排出が起こった時、或いは粘性の低い体液が多量に排出された時には、上記の窪みに少なくとも一時的に体液を留めておくことができるとともに、体液を窪み沿って前後方向D1に迅速に拡散させることができる。そして、前方及び後方では、吸収性物品1のトップシート3側の面を身体の恥骨付近及び臀部に面で密着させることができるので、前後方向D1の漏れを防止し、また身体の前方及び後方での装着感も向上させることができる。
【0053】
なお、図1に示す例では、左圧搾溝12Lの前方部分12Lf及び右圧搾溝12Rの前方部分12Rfは、前後方向中心線CLを対称軸として線対称に形成されている。また、左圧搾溝12Lの後方部分12Lb及び右圧搾溝12Rの後方部分12Rbも、前後方向中心線CLを対称軸として線対称に形成されている。さらに、各部分12Lf、12Rf、12Lb、12Rbはいずれも、前後方向中心線CLに向かって凸の弧状となっている。前方部分12Lf、12Rf及び後方部分12Lb、12Rbが上記のように湾曲していることで、身体の前方及び後方の形状に沿った自然な変形状態を得ることができる。
【0054】
<圧搾溝とズレ止め部との関係>
吸収性物品1を装着する際には、上述のズレ止め部を利用して、吸収性物品1を下着に貼り付ける。その後、吸収性物品1を身体に装着させると、吸収性物品1は身体の形状に合わせて上述のように三次元的に変形する。装着中、吸収性物品1は、変形状態を維持しつつ下着に固定されていることが好ましいが、装着者が脚を大きく動かした場合等には、吸収性物品1が歪んで下着から剥がれることもあり得る。その場合、一旦剥がれた吸収性物品1が、望ましくない変形形状で再固定されてしまうことがある。特に、本形態のような所定の凸形状を有する対をなす左圧搾溝12L及び右圧搾溝12Rを有する構成では、吸収性物品1の、左圧搾溝12Lの前端Lft及び右圧搾溝12Rの前端Rft、並びに左圧搾溝12Lの後端Lbt及び右圧搾溝12Rの後端Rbt及びその周辺の部分に力が掛かりやすく、下着から剥がれやすい。この点について、さらに模式図(図5)を参照して説明する。
【0055】
図5には、図1の吸収性物品1の平面図を再掲し、説明を追加している。図5に示すように、装着時には、吸収性物品1の中間領域Mの側部には左右方向D2の外側から内方へと、装着者の脚TH、THからの力P、Pを受ける。この時、脚TH、THよりも前方及び後方の側部領域Sは、前後方向D1の中央に且つ左右方向D2の中央に向かう方向に引っ張られやすい(図5の矢印A)。特に、左圧搾溝12Lの前端Lft及び右圧搾溝12Rの前端Rft、並びに左圧搾溝12Lの後端Lbt及び右圧搾溝12Rの後端Rbt及びその周辺は、元々圧搾溝によって折り曲げられて歪みが生じている部分であるので、外力によって下着から剥がれやすい部分である。よって、吸収性物品1の(ズレ止め部の)下着からの剥がれは、圧搾溝の前端Lft、Rft及び後端Lbt、Rbt付近で生じやすい。
【0056】
これに対し、本形態では、左圧搾溝12Lの前端Lft及び後端Lbtが左ズレ止め部9Lに重なり、且つ右圧搾溝12Rの前端Rft及び後端Rbtが右ズレ止め部9Rに重なっている。そのため、吸収性物品1の四隅にそれぞれ延びている圧搾溝12L、12Rの端部(前端Lft、Rft及び後端Lbt、Rbt)が位置する部分及びその周辺部分をより確実に下着に固定させることができる。これにより、吸収性物品1全体が下着からズレたり、吸収性物品1の変形形状が不都合な形状に変わってしまったりすることを防止できる。
【0057】
また、図1図5に示すように、左圧搾溝12L及び右圧搾溝12Rは、左右方向D2の中央領域Cではズレ止め部に重なっていない。また、左圧搾溝12L及び右圧搾溝12Rが接合されてなる直線状の中央圧搾溝11には、ズレ止め部が重なっていない。ここで、左右方向D2の中央領域C内に延在する圧搾溝は、中間領域Mに形成されている。中間領域Mは装着時には、両脚TH、THから、吸収性物品1の幅が縮まるような力P、Pを受ける(図5)。そのため、バックシート2側でズレ止め部同士が左右方向D2に接触して貼り付く可能性が高い。よって、圧搾溝が延在する左右方向D2の中央領域Cでズレ止め部を形成しないことで、ズレ止め部同士が貼り付く可能性を低減できる。
【0058】
よって、中間領域Mにおいては、前後方向D1に沿って延在する左ズレ止め部9Lと右ズレ止め部9Rとの間には、他のズレ止め部が設けられていないことが好ましい。
【0059】
さらに、中間領域Mにおいては、左圧搾溝12L又は右圧搾溝12Rとズレ止め部とは左右方向D2で離間していると好ましい。左圧搾溝12L又は右圧搾溝12Rとズレ止め部との最大の離間距離は、好ましくは5~30mm、より好ましくは8~20mmであってよい。この離間距離は、図1に示す例では、直線状の中央圧搾溝11と右ズレ止め部9Rとの左右方向D2での離間距離dとして示す。また、この離間距離dは、中央圧搾溝11の左右方向D2の一方側の端縁から吸収体4の左右方向D2の当該一方側の端縁までの長さの35~50%であると好ましい。中央圧搾溝11と左ズレ止め部9L及び右ズレ止め部9Rとがそれぞれ上記の範囲で離間していることで、中央圧搾溝11とズレ止め部9L、9Rとの間に柔軟な領域を確保できる。そのため、装着時に吸収性物品1が左右から脚の力を受けた場合に、左右方向D2で見て中央圧搾溝11と左ズレ止め部9Lとの間の部分、及び中央圧搾溝11と右ズレ止め部9Rとの間の部分を肌側に盛り上げることができ、中央圧搾溝11の落ち込みをさらに促すことができる(図4)。
【0060】
中央圧搾溝11が形成されている場合、ズレ止め部の幅(左ズレ止め部9L又は右ズレ止め部9Rの左右方向D2の長さ)wは、中央圧搾溝11の左右方向D2の一方側の端縁から吸収体4の左右方向D2の上記一方側の端縁までの幅の35~50%とすることができる。
【0061】
なお、前方領域F及び後方領域Bにおいては、前後方向D1に沿って延在する左ズレ止め部9Lと右ズレ止め部9Rとの間に、ズレ止め部が設けられていてよい。例えば、図1に示すように、中央ズレ止め部9C、9Cが形成されていてよい。中央ズレ止め部9C、9Cは、前方領域F及び/又は後方領域Bに形成されており、中間領域Mには形成されていないことが好ましい。また、中央ズレ止め部9C、9Cは、中間領域Mにまで延びていてもよいが、中央圧搾溝11と重ならないことが好ましい。
【0062】
図6に、図1の部分拡大図を示す。図6には、左圧搾溝12Lの前端Lft付近の部分を拡大した図である。上述したように、本形態では、左圧搾溝12Lの前端Lft及び後端Lbtは左ズレ止め部9Lに重なっており、且つ右圧搾溝12Rの前端Rft及び後端Rbtは右ズレ止め部9Rに重なっていて、これにより、吸収性物品1を安定的に下着に固定させ、装着中も圧搾溝により誘導された所望の変形を維持することができる。圧搾溝の先端とズレ止め部とは、前後方向D1で且つ左右方向D2で重なっていることが好ましい。図6に示すように、左圧搾溝12Lの前端Lftが左ズレ止め部9Lに重なる部分の前後方向D1の長さa1は、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上であってよい。また、左圧搾溝12Lの前端Lftが左ズレ止め部9Lに重なる部分の左右方向D2の長さa2は、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上であってよい。また、左圧搾溝12Lの前端Lftが左ズレ止め部9Lに重なる部分の面積は、5~25mm程度であると好ましい。上記範囲のような長さで或いは上記範囲のような面積で、圧搾溝が平面視でズレ止め部に重なっていることで、脚からの圧力を受けても、装着中に吸収性物品1が下着から剥がれてしまうことを防止でき、所望されない箇所での場所でのシワ、ヨレの発生を防止できる。
【0063】
図6を参照した上記説明における長さ及び面積の好ましい範囲は、図6には示されていない他の圧搾溝の先端、すなわち左圧搾溝12Lの後端Lbt、及び右圧搾溝12Rの前端Rft及び後端Rbtに関しても同じである。なお、この圧搾溝とズレ止め部との平面視での重なりの度合(重なり長さ、及び面積)は、圧搾溝の上記4つの先端で互いに異なっていてもよいが、前端Lft、Rft同士で同じであると、且つ/又は後端Lbt、Rbt同士で同じであると、左右のバランスがとれるので好ましい。また、圧搾溝とズレ止め部との平面視での重なりの度合(重なり長さ、及び面積)が、圧搾溝の先端Lft、Rft、Lbt、Rbtで全て同じであると、四隅における剥がれに対する抵抗力のバランスがとれるので、好ましい。
【0064】
<ズレ止め部の変形例>
図7図9に、変形例によるズレ止め部を備えた吸収性物品を示す。図7に示す例では、ズレ止め部以外の構成は図1に示す構成と同様である。図7に示すズレ止め部は、対をなす前後方向D1に沿って延在する左ズレ止め部9Lと右ズレ止め部9Rを含むが、前方領域Fにおいて、左ズレ止め部9Lと右ズレ止め部9Rとの間に中央ズレ止め部9Cが設けられており、左ズレ止め部9L、中央ズレ止め部9C、及び右ズレ止め部9Rが左右方向D2に連続して形成されている。また、後方領域Bにおいても、左ズレ止め部9Lと右ズレ止め部9Rとの間に中央ズレ止め部9Cが設けられており、左ズレ止め部9L、中央ズレ止め部9C、及び右ズレ止め部9Rが左右方向D2に連続して形成されている。これにより、吸収性物品1の前方及び後方でズレ止め部同士の左右方向D2での結合が強くなるので、ズレ止め部による吸収性物品1を下着に固定する機能が高まる。
【0065】
図7に示す例では、前方領域Fにおける左ズレ止め部9L、中央ズレ止め部9C、及び右ズレ止め部9Rの前端、並びに後方領域Bにおける左ズレ止め部9L、中央ズレ止め部9C、及び右ズレ止め部9Rの後端は揃っているので、全体で見ると、長方形環状の、連続したズレ止め部が形成されている。これにより、吸収性物品1の前後左右の周縁にわたって下着への固定が強化されるので、所望されない局所的なシワ、ヨレの発生を防止し、また吸収性物品1全体のズレも防止される。
【0066】
図8に示す例では、左ズレ止め部9L及び右ズレ止め部9Rはそれぞれ、前後方向D1に沿っているが、前後方向D1で見て途中で不連続になっている。すなわち、前後方向D1に不連続に延在する左ズレ止め部部分9L、9L、9Lと、前後方向D1に不連続に延在する右ズレ止め部部分9R、9R、9Rとが形成されている。ズレ止め部に不連続な箇所がある例は、前後方向D1の柔軟性を担保するという観点で好ましい。但し、前後方向D1に沿って延びる左ズレ止め部9L及び右ズレ止め部9Rのそれぞれにおいて、不連続部分の前後方向D1長さは、左ズレ止め部9L全体の延在長さ又は右ズレ止め部9R全体の延在長さの20%以下とすることが好ましい。
【0067】
さらに、前方領域Fにおいては、左ズレ止め部部分9Lと右ズレ止め部部分9Rとの間に中央ズレ止め部9Cが設けられ、後方領域Bにおいても、左ズレ止め部部分9Lと右ズレ止め部部分9Rとの間に中央ズレ止め部9Cが設けられている。さらに、前方領域Fでは、左ズレ止め部部分9Lと、中央ズレ止め部9Cと、右ズレ止め部部分9Rが、左右方向D2に連続して形成されている。後方領域Bでも同様に、左ズレ止め部部分9Lと、中央ズレ止め部9Cと、右ズレ止め部部分9Rとが左右方向D2に連続して形成されている。これにより、前方及び後方において、左右方向D2でのズレ止め部同士の結合が形成されるので、前方及び後方の(吸収体4の前端付近及び後端付近)で吸収性物品1を安定して下着に固定させることができ、不都合なヨレ、シワ等を防止できる。
【0068】
図9に示す例では、図8に示す例と同様に、左ズレ止め部9L及び右ズレ止め部9Rはそれぞれ、前後方向D1の途中で不連続になっており、同様の効果が得られる。また、図9に示す例では、前方領域Fにおいては、左右方向D2で左ズレ止め部部分9Lと右ズレ止め部部分9Rとの間に形成された中央ズレ止め部9Cは、左ズレ止め部部分9L及び右ズレ止め部部分9Rのそれぞれから離れている。また、後方領域Bにおいては、左右方向D2で左ズレ止め部部分9Lと右ズレ止め部部分9Rとの間に形成された中央ズレ止め部9Cは、左ズレ止め部部分9L及び右ズレ止め部部分9Rのそれぞれから離れている。よって、図9に示す例では、側部領域S、Sでの柔軟性と共に前方領域F及び後方領域Bにおける中央領域Cでの柔軟性も確保できるという観点で好ましい。
【0069】
なお、図9に示す例では、左ズレ止め部9Lに含まれる左ズレ止め部部分9L、9L、9Lのうち、前方に位置する左ズレ止め部部分9L及び後方に位置する左ズレ止め部部分9Lは、前後方向D1中央の左ズレ止め部部分9Lよりも左右方向D2の長さ(幅)が大きい。同様に、右ズレ止め部9Rに含まれる右ズレ止め部部分9R、9R、9Rのうち、前方に位置する右ズレ止め部部分9R及び後方に位置する右ズレ止め部部分9Rは、前後方向D1中央の右ズレ止め部部分9R2よりも左右方向D2の長さ(幅)が大きい。左ズレ止め部部分9L、9L及び右ズレ止め部部分9R、9Rはいずれも、圧搾溝の先端(前端又は後端)と重なる部分であるので、幅が大きいことで、圧搾溝の先端付近の領域の下着への固定をより安定させることができる。
【0070】
このように、図7図9に示す例はいずれも、ズレ止め部の配置が異なっているが、平面視で、左圧搾溝12Lの前端Lft及び後端Lbt、並びに右圧搾溝12Rの前端Rft及び後端Rbtが、吸収性物品1の四隅の領域にてズレ止め部に重なっている。より具体的には、吸収性物品1に設けられている前後方向D1に沿った一対の圧搾溝の前端及び後端が全て、吸収性物品1の前方領域F及び後方領域Bの両側部領域S、Sにてズレ止め部に重なっている。これにより、装着中に吸収性物品1に歪みが生じやすい箇所が下着により確実に固定され、吸収性物品1が局所的に剥がれてその剥がれた位置で望ましくないシワ、ヨレ等が生じることを防止できる。そのため、吸収性物品1は所望の変形状態を維持でき、体液をより確実に吸収することができる。
【0071】
<圧搾溝の変形例>
図10図13に、変形例による圧搾溝を備えた吸収性物品1を示す。図10図13に示す例ではいずれにも、図1に示す例と同様に、中間領域Mにおいて左右方向D2の中央領域Cを通るように右方に凸の形状を有する左圧搾溝12Lと、中間領域Mにおいて左右方向D2の中央領域Cを通るように左方に凸の形状を有する右圧搾溝12Rとが形成されている。別の言い方をすると、側部領域S、Sに前端及び後端が配置され、且つ前後方向D1の中央付近、より具体的には中間領域Mにて互いが近付くような凸形状に形成された左圧搾溝12L及び右圧搾溝12Rが形成されている。また、図10図13に示された圧搾溝も、図1に記載されているような高圧搾部と低圧搾部との組み合わせてとして構成できるが、図10図13では高圧搾部の図示は省略する。
【0072】
図10に示す例では、右圧搾溝12Rと左圧搾溝12Lとは互いに接したり重なったりしておらず、互いに離間している。図10に示すように、右圧搾溝12Rと左圧搾溝12Lとが最も近づく位置は、前後方向D1で体液排出口対向部Q内となっている。図10に示す例でも、装着時に脚からの力を両側部に受けると、図1の例を参照して説明したように、前後方向D1の中央付近(中間領域M)で左右方向D2の中央領域Cが下着側に落ち込むような、また前方領域F及び後方領域Bが肌の面に密着するように肌側に持ち上がるような変形が生じる。図10に示す例では、右圧搾溝12Rと左圧搾溝12Lとが離間していることで、中央領域Cにおける溝状の窪みの底部の幅を広くすることができるので多量の体液を保持できるという観点で、また吸収性物品1全体の柔軟性が高まるという観点で好ましい。
【0073】
図11に示す例では、右圧搾溝12Rと左圧搾溝12Lとは互いに交差している。交点において剛性が高まるので、この交点は、装着時に前方部分及び後方部分を肌側に湾曲するよう変形した状態で、その湾曲形状を維持することに寄与できる。また、図10に示す例と同様、変形時に中央領域Cに形成される溝状の窪みの底部の幅を広くすることができるという観点で好ましい。さらに、中央領域Cに形成される圧搾溝に囲まれた領域は、前後方向D1の中心から前方に近付くほど狭く且つ後方に近付くほど狭くなっているので、体液を当該領域内に留めるよう機能でき、体液が溝状の窪みに沿って前後方向D1に移行した場合に前方及び後方で漏れる可能性を低減できる。
【0074】
図12に示す例では、右圧搾溝12R及び左圧搾溝12Lがそれぞれ直線状に形成されており、前後方向D1の中央付近で(中間領域Mで)接合線15にて接合し、中央領域Cにおいて直線状の中央圧搾溝11を形成している。よって、本例では、図1に示す例と同様に、中央圧搾溝11と、中央圧搾溝11の前端から分岐した一対の前方部分12Lf、12Rfと、中央圧搾溝11の後端から分岐した一対の後方部分12Lb、12Rbとを有する形状となっている。一対の前方部分12Lf、12Rfの間隔は吸収性物品1の前端に近付くほど大きくなり、一対の後方部分12Lb、12Rbの間隔は、吸収性物品1の後端に近付くほど大きくなる。そのため、一対の前方部分12Lf、12Rfの間の領域を身体の前方の恥骨付近に、一対の後方部分12Lb、12Rbの間の領域を臀部の膨らみに接触させ、密着させることができるので、前方及び後方での漏れを防止することができる。
【0075】
図13に示す例は、全体で見ると、右の側部領域Sの前方から左の側部領域Sの後方に延びる直線状の圧搾溝と、左の側部領域Sの前方から右の側部領域Sの後方に延びる直線状の圧搾溝とが、左右方向D2の中央で交差している形状となっている。そして、これらの圧搾溝のうち、前後方向中心線CLの左側に位置する圧搾溝が左圧搾溝12L、前後方向中心線CLの右側に位置する圧搾溝が右圧搾溝12Rとなっている。左圧搾溝12Lと右圧搾溝12Rとは接合位置15にて接合されていると言える。
【0076】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。また、上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0077】
1 吸収性物品
2 バックシート
3 トップシート
4 吸収体
7 サイドシート
9C 中央ズレ止め部
9L 左ズレ止め部
9R 右ズレ止め部
11 中央圧搾溝
12L 左圧搾溝
12R 右圧搾溝
12Lf 左圧搾溝の前方部分
12Lb 左圧搾溝の後方部分
12Rf 右圧搾溝の前方部分
12Rb 右圧搾溝の後方部分
C 左右方向の中央領域
CL 前後方向中心線
D1 前後方向(長手方向)
D2 左右方向(幅方向)
F 前方領域
B 後方領域
M 中間領域
Lbt 左圧搾溝の後端
Lft 左圧搾溝の前端
Rbt 右圧搾溝の後端
Rft 右圧搾溝の前端
S 左右方向の側部領域
Q 体液排出口対向部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13