(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】キャパシタレスDRAMセル
(51)【国際特許分類】
H10B 12/00 20230101AFI20250304BHJP
【FI】
H10B12/00 631
H10B12/00 661
H10B12/00 671Z
(21)【出願番号】P 2022532562
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 IB2020060798
(87)【国際公開番号】W WO2021111222
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-04-24
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ゾタ、セザール
(72)【発明者】
【氏名】コンベルティーノ、クラリッサ
(72)【発明者】
【氏名】ツォーノマズ、ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】カーグ、ジークフリート
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524393(JP,A)
【文献】特開2003-068877(JP,A)
【文献】特開2009-033149(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102376715(CN,A)
【文献】米国特許第5500545(US,A)
【文献】特開2003-68877(JP,A)
【文献】特開平6-97461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の半導体チャネル層、および1つまたは複数の電気絶縁バリア層を備えるヘテロ構造であって、前記
半導体チャネル層および前記
電気絶縁バリア層は、第1の方向に交互に重ね合わされる、前記ヘテロ構造と、
前記第1の方向に前記ヘテロ構造に隣接するゲート構造であって、前記ゲート構造は、前記
電気絶縁バリア層に隣接するゲート絶縁体層を備える、前記ゲート構造と、
前記第1の方向に直交する第2の方向に前記ヘテロ構造に隣接するドレイン構造と、
前記第2の方向とは反対の方向に前記ヘテロ構造に隣接するソース構造と、
を備えるキャパシタレスDRAMセル。
【請求項2】
前記ヘテロ構造は、単一の
前記電気絶縁バリア層、および単一の
前記半導体チャネル層を備える、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項3】
前記ヘテロ構造は、2つの
前記電気絶縁バリア層、および単一の
前記半導体チャネル層を備える、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項4】
前記ヘテロ構造は、2つの
前記電気絶縁バリア層、および2つの
前記半導体チャネル層を備える、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項5】
前記ヘテロ構造は、3つの
前記電気絶縁バリア層、および2つの
前記半導体チャネル層を備える、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項6】
前記ヘテロ構造は、少なくとも2つの
前記電気絶縁バリア層を備え、各
前記電気絶縁バリア層は、異なる材料で作製される、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項7】
前記ヘテロ構造は、少なくとも2つの
前記半導体チャネル層を備え、各
前記半導体チャネル層は、異なる材料で作製される、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項8】
前記
半導体チャネル層の異なる材料は、少なくとも0.5電子ボルトだけバンド・ギャップ・エネルギーが異なる、請求項7に記載のDRAMセル。
【請求項9】
前記
半導体チャネル層の異なる材料は、少なくとも10倍だけ電子移動度が異なる、請求項7に記載のDRAMセル。
【請求項10】
前記ゲート構造は、前記
電気絶縁バリア層のうちの1つに隣接する、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項11】
前記
DRAMセルは、基板上に配設され、前記ヘテロ構造は、前記基板に隣接する、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項12】
前記基板は、基板絶縁体層を備え、前記ヘテロ構造は、前記基板絶縁体層に隣接する、請求項11に記載のDRAMセル。
【請求項13】
前記
電気絶縁バリア層のうちの1つは、前記基板に隣接する、請求項11に記載のDRAMセル。
【請求項14】
前記ゲート構造は、前記第1の方向にのみ前記ヘテロ構造に隣接する、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項15】
前記ゲート構造は、前記ヘテロ構造を埋める、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項16】
前記ゲート構造は、前記第2の方向に前記ヘテロ構造と整合される、請求項15に記載のDRAMセル。
【請求項17】
各前記
半導体チャネル層および各前記
電気絶縁バリア層は、前記ソース構造と前記ドレイン構造の両方に隣接する、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項18】
前記ヘテロ構造は、前記第2の方向に測定される1ナノメートルから75ナノメートルの全長を有する、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項19】
前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に測定される前記ヘテロ構造の全幅は、前記第2の方向に測定される前記ヘテロ構造の全長の20倍から200倍である、請求項1に記載のDRAMセル。
【請求項20】
前記第1の方向に測定される各
前記半導体チャネル層の厚さは、前記第1の方向に測定される各
前記電気絶縁バリア層の厚さの1.5倍から5倍である、請求項1に記載のDRAMセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積半導体メモリ・デバイスに関し、より具体的には、キャパシタレス・ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)セルに関する。
【背景技術】
【0002】
DRAMは、データを容量性構造に正または負の電荷として記憶する。キャパシタンス、およびそれへのアクセスを制御するトランジスタを提供する構造は、集合的にDRAMセルと呼ばれる。それらは、DRAMアレイ内の基本的なビルディング・ブロックである。複数のDRAMメモリ・セルの変形例が存在するが、最新のDRAMに最もよく使用される変形例は、1トランジスタ、1キャパシタ(1T1C)セルである。トランジスタは、書き込み動作中に電流をキャパシタに入れ、読み出し動作中にキャパシタを放電するために使用される。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本発明は、キャパシタレスDRAMセルに関する。セルは、ヘテロ構造と、第1の方向にヘテロ構造に隣接するゲート構造と、第1の方向に直交する第2の方向にヘテロ構造に隣接するドレイン構造と、第2の方向とは反対の方向にヘテロ構造に隣接するソース構造とを備える。ヘテロ構造は、1つまたは複数の半導体チャネル層、および1つまたは複数の電気絶縁バリア層を備え、チャネル層およびバリア層は、第1の方向に交互に重ね合わされる。
【0004】
キャパシタレスDRAMセル(要するに、「セル」)の実施形態は、伝統的なMOSFET型チャネルを置き換えるヘテロ構造から生じる利点を有し得る。各チャネル層は、隣接したソース構造、ゲート構造、およびドレイン構造に印加される電圧の設定に応じて、正または負の第2の方向に電荷キャリア(電子または正孔あるいはその両方)の貯蔵またはその輸送を可能にすることができるある体積の材料とさらにみなされ得るが、各バリア層は、電気絶縁であり、したがって、バリア層を越える、すなわち、正または負の第1の方向の電荷キャリアの輸送を防ぐことができる。結果として、各バリア層は、正または負の第1の方向の電荷キャリアの移動を伴う(例えば、ヘテロ構造の再結合またはトンネリング・アウト(tunneling out)による)損失効果を抑制するまたは妨げることによって、電子または正孔あるいはその両方の保持時間の増加に寄与することができる。
【0005】
一実施形態では、ヘテロ構造は、単一のバリア層、および2つのチャネル層を備える。ヘテロ構造におけるチャネル層およびバリア層の代替構成との組合せにおいて、これは、バリア層が、2つのチャネル層をゲート構造に向いている1つのチャネル層とゲート構造とは反対に向いている1つのチャネル層とに分離していることを意味する。例えば、負の電圧がゲート構造に印加される場合、ゲート構造は、正孔を引きつけ、電子を反発することになり、したがって、ゲート構造を向いているチャネル層を「正孔チャネル」と呼び、ゲート構造とは反対に向いているチャネル層を「電子チャネル」と呼ぶことができる。代わりに、正の電圧がゲート構造に印加される場合、ゲート構造は、電子を引きつけ、正孔を反発することになり、したがって、この場合には、ゲート構造に向いているチャネル層を「電子チャネル」と呼び、ゲート構造とは反対に向いているチャネル層を「正孔チャネル」と呼ぶことができる。
【0006】
さらなる態様では、本発明は、キャパシタレスDRAMセルを製造する方法に関する。この方法は、
1つまたは複数の半導体チャネル層および1つまたは複数の電気絶縁バリア層を備え、チャネル層およびバリア層は、第1の方向に交互に重ね合わされる、ヘテロ構造を形成することと、
第1の方向にヘテロ構造に隣接するゲート構造を形成することと、
第1の方向に直交する第2の方向にヘテロ構造に隣接するドレイン構造を形成することと、
第2の方向とは反対の方向にヘテロ構造に隣接するソース構造を形成することと、を含む。
【0007】
以下に、本発明の実施形態は、ほんの一例として、図面を参照することによってより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】論理状態「0」を記憶するキャパシタレスDRAMセルの概略断面図である。
【
図1B】論理状態「1」を記憶するキャパシタレスDRAMセルの概略断面図である。
【
図1C】キャパシタレスDRAMセルの2つのI-V曲線に関する図である。
【
図1D】論理状態「0」のための書き込み動作中のキャパシタレスDRAMセルの概略断面図である。
【
図1E】論理状態「1」のための書き込み動作中のキャパシタレスDRAMセルの概略断面図である。
【
図2】ゲート構造およびチャネル層を接続するバリア層を特徴として備えている例示的なキャパシタレスDRAMセルの概略断面図である。
【
図3】2つのチャネル層を接続するバリア層を特徴として備えている例示的なキャパシタレスDRAMセルの概略断面図である。
【
図4】基板およびチャネル層を接続するバリア層を特徴として備えている例示的なキャパシタレスDRAMセルの概略断面図である。
【
図5】2つのバリア層および1つのチャネル層を特徴として備えている例示的なキャパシタレスDRAMセルの概略断面図である。
【
図6】3つのバリア層および2つのチャネル層を特徴として備えている例示的なキャパシタレスDRAMセルの概略断面図である。
【
図7A】キャパシタレスDRAMセルをテストするための2つの入力信号に関する図である。
【
図7B】テストするための2つの入力信号の受信に応答するキャパシタレスDRAMセルの出力信号の図である。
【
図7C】テストするための2つの入力信号の受信に応答するキャパシタレスDRAMセルの出力信号の図である。
【
図7D】テストするための2つの入力信号の受信に応答するキャパシタレスDRAMセルの出力信号の図である。
【
図8】2つの入力信号を使用してテストされたキャパシタレスDRAMセルのドレイン電流応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この数10年間は、DRAMなどの揮発性メモリのメモリ・セル・サイズを減少させるためにかなりの研究努力を引き起こしてきた。今日現在、DRAMセルは、その外部キャパシタによってサイズが制限されることになっている。さらなる小型化を可能にするための有望な手法の1つは、情報を表す電荷キャリアを貯蔵するために、代わりに、キャパシタを除外し、トランジスタのブラインド・キャパシタンス(blind capacitance)を使用するものである。典型的には、DRAMセルに使用されるトランジスタ構造は、順に配置されたソース構造、チャネル構造、およびドレイン構造、ならびにチャネル構造に隣接するゲート構造を実現する金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の派生物である。
【0010】
ARAMおよびMSDRAMなどのそのようなキャパシタレス1トランジスタ(「1T」)DRAMセルについてのいくつかの候補が提案されている。これらのデバイスは、いわゆる基板浮遊効果を使用して、ゲートおよびドレインまたはゲートおよびソースが反対符号のバイアス電圧にかけられるときにバンド間トンネリングによって正孔および電子をチャネルに注入する。それに続く保持時間中、注入された電荷キャリアの十分な部分がチャネルに残り、セル状態は、トランジスタを通って流れるドレイン・ソース電流に関するメモリ効果を使用して読み出すことができる。この有望な概念は、機能的な1T DRAMセルを実証するためにすでに使用されており、DRAMスケーリングに向けて進めるいくつかのやり方の単に1つとみなされる。
【0011】
この技術についての重要な課題は、正孔保持時間を増加させること、およびドレイン・ソース電流を増加させること(または代替として、必要な駆動バイアス電圧の減少)を含む。別の課題は、スケーラビリティであり、総チャネル厚さは、典型的には再結合率が電荷キャリア密度に関して増加するので大きくスケール変更することができない。
【0012】
キャパシタレスDRAMセルのいくつかの設計が実証されている。今日現在、電荷キャリア保持時間およびドレイン・ソース電流の増加は、十分な市場実行可能性(market viability)に到達するために望ましい。
【0013】
明確にするために、使用されるいくつかの用語または本開示全体を通じて示唆される条件を以下に定義する。
【0014】
キャパシタレスDRAMセルのヘテロ構造に使用される材料は、やはり半導体および絶縁体を含む。各半導体チャネル層は、純粋な(非ドープ)半導体、真性半導体(等しい個数の励起された電子nおよび正孔pを有するドープまたは非ドープのi型)、または(1018cm-3以下のドーパント濃度を有する)ドープ半導体で作製され得る。各絶縁(非電導性)バリア層は、ドーピングまたはゲーティングなどの技術を使用して電気伝導性を増大できる材料で作製することができる。
【0015】
キャパシタレスDRAMセルは、第1の方向に交互に重ね合わされているチャネル層およびバリア層を備えるヘテロ構造を特徴として備えている。用語「重ね合わせる」、「重ね合わされる」などは、第1の方向が垂直と一致することを必ずしも示唆しない。実際には、水平方向を含む任意の第1の方向にヘテロ構造の層を互いに積み重ねることが可能であり得る。
【0016】
メモリ・セルは、半導体ウェハなどの基板上に形成することができるが、必ずしもそうでなくてもよい。詳細には、メモリ・セルは、セミコンダクタ・オン・インシュレータ(SOI)デバイスであり得る。基板上に形成される場合、基板には、バイアス電圧が供給されてもよく、すなわち、基板は、第2のゲートまたはバック・ゲートとして使用されてもよい。同様に、ソース構造、ゲート構造、ドレイン構造、および該当する場合、基板は、(バイアス)電圧の供給または電流の確立あるいはその両方を可能にするために電気接触を用いて実現することができ、電界効果トランジスタのソース、ゲート、ドレイン、および任意選択でバック・ゲートを実現するためにそれぞれ適合されるn型ドープ半導体、p型ドープ半導体、真性半導体、またはi型半導体、金属、high-kもしくはlow-k誘電体、または絶縁体、あるいはその組合せなどの材料の任意の適切な既知または将来の構造を含むことができる。
【0017】
キャパシタレスDRAMセルは、以下のように動作することができる。ヘテロ構造のチャネル層内に存在する電荷キャリアは、情報の1ビットの少なくとも2つの状態「1」および「0」をエンコードすることができる。非限定の純粋に例示的な例では、「1」を書き込み動作は、ゲート構造に負の電圧を与えるとともに、ドレイン構造に正の電圧を与えることを含むことができ、それによって正孔がバンド間トンネリングによってゲート構造に向いているチャネル層または領域に注入され、電子がバンド間トンネリングによってゲート構造とは反対に向いているチャネル層または領域に注入される。注入される電子の個数は、注入される正孔の個数に静電的に結合される。電荷キャリアは、基板浮遊効果によりいくらかの時間にわたってヘテロ構造に滞在する。例では、「0」を書き込み動作は、ほぼ平らなバンドのバイアス状態(すなわち、ゲート構造をわずかに正の電圧に設定し、ソース構造およびドレイン構造をゼロ電圧に設定すること)によってヘテロ構造から電荷キャリアを空にすることを含む。
【0018】
読み出し動作中、小さいドレイン・バイアスが適用され、ドレイン電流が測定される。「1」状態におけるヘテロ構造内部の電荷キャリアの過剰は、「0」状態における電流と比較して、ドレイン電流(の絶対値)が増加する結果となる。例では、状態「0」または「1」は、ゲート構造に負のバイアス電圧を供給することによってさらに保存される。セルがバック・ゲート上に実施される場合、それは例全体にわたって正のバック・ゲート・バイアス電圧に対して設定される。
【0019】
一実施形態によれば、ヘテロ構造は、単一のバリア層、および単一のチャネル層を備える。ヘテロ構造におけるチャネル層およびバリア層の代替構成との組合せにおいて、これは、バリア層が、ゲート構造、またはゲート構造とは反対に向いている側でヘテロ構造に隣接する任意の構造からチャネル層を絶縁することを意味する。これは、ヘテロ構造から外への電荷キャリアの自発的な移動もしくはトンネリングまたはその両方を抑圧することによって、ならびに/あるいは正または負の第1の方向にヘテロ構造に隣接する任意の構造からのさらなる電荷キャリアとのそれらの自発的な再結合を抑圧することによって、電荷キャリア保持時間の増加という利益をもたらすことができる。
【0020】
一実施形態によれば、ヘテロ構造は、2つのバリア層および2つのチャネル層を備える。ヘテロ構造におけるチャネル層およびバリア層の代替構成との組合せにおいて、これは、バリア層の一方が、互いから2つのチャネル層を分離しており、バリア層の他方が、ゲート構造に面しているバリア層をゲート構造から絶縁しているまたはゲート構造とは反対に向いているバリア層をヘテロ構造に隣接するさらなる構造から絶縁していることを意味する。これは、ヘテロ構造から外への電荷キャリアの自発的な移動またはトンネリングあるいはその両方を抑圧することによって、ならびに/あるいは正または負の第1の方向にヘテロ構造に隣接する任意の構造からのさらなる電荷キャリアとのそれらの自発的な再結合を抑圧することによって、2つのチャネル層を分離するバリア層、および電荷キャリア保持時間のさらなる増加により、電荷キャリア保持時間の増加または小型化の能力の改善あるいはその両方という利点を有することができる。バリア層の1つがゲート構造とは反対に向いている前記位置に配置される構成は、ゲート構造が、ヘテロ構造から外への電荷キャリア・マイグレーションの実質的な抑圧をすでにもたらしているヘテロ構造に隣接する酸化物層または他の絶縁層を含む場合に有用であり得る。
【0021】
一実施形態によれば、ヘテロ構造は、異なるバリア層材料で作製された少なくとも2つのバリア層を備える。異なるバリア層材料の選択は、バリア層を作製するのに適したような本明細書中で述べた材料を含み得るが、それらに限定されない。異なるバリア層材料で作製されたバリア層を実現することは、正または負の第1の方向にヘテロ構造における電荷キャリアの移動を制限する能力の改善という利益をもたらすことができる。より正確には、バリア層の一部または全部は、電荷キャリア(すなわち、電子または正孔)の一方の種類について、他方についてよりも有効に前記移動を抑圧するバリア層材料から製造することができる。
【0022】
これは、セルの動作中、典型的には、所与のバリア層によって選択的に制限される電荷キャリアの一部の種類がバリア層の位置で局所化されることが期待できる場合に有用であり得る。例えば、セルが、ゲート構造に負の電圧を供給することによって、セルをそのプログラムされた状態に維持するように、すなわち、ヘテロ構造の内部の「0」または「1」状態を表す1セットの注入された電荷キャリアを維持するように設計されている場合、任意の注入された正孔がゲート構造の近くに、すなわちゲート構造に面しているチャネル層の近くに移動し、一方、対応する注入された電子が、ゲート構造と反対にあるヘテロ構造の側へ、すなわち、ゲート構造とは反対に向いているチャネル層へ移動することが期待され得る。この例では、ゲート構造と正孔チャネル層との間で正孔を選択的に通さないバリア層を用意することによって正孔をそれらの正孔チャネル層に閉じ込められたままにし、またはゲート構造の反対側でヘテロ構造に隣接する任意の構造と電子チャネル層との間で電子を選択的に通さないバリア層を用意することによって電子をそれらの電子チャネル層に閉じ込められたままにし、あるいはその両方をすることを可能にし得る。選択的に通さないバリア層材料の特定の選択は、絶縁されるそれぞれのチャネル層または所与のバリア層に隣接する任意の他の構造を作製する材料に依存することが可能であり得る。
【0023】
一実施形態によれば、ヘテロ構造は、異なるチャネル層材料で作製された少なくとも2つのチャネル層を備える。異なるチャネル層材料の選択は、チャネル層を作製するのに適したような本明細書中で述べた材料を含み得るが、それらに限定されない。異なるチャネル層材料で作製されたチャネル層を実現することは、電荷キャリア(すなわち、電子または正孔)の一方の種類にカスタマイズされている特定の特性を有するチャネル層の一部または全部を設計する可能性をもたらすことができる。
【0024】
例えば、各チャネル層における電荷キャリア移動度が増加する方へ2つのチャネル層を特徴として備えている、すなわちチャネル層の一方に、高い電子移動度を有するチャネル層材料を選び、他方のチャネル層に、明らかな正孔マイグレーションが高速であるチャネル層材料を選ぶ、ヘテロ構造を最適化することも可能であり得る。これは、正または負の第2の方向のヘテロ構造の伝導性を増加させ、したがってセルのドレイン・ソース電流を増加させることができる。しかしながら、隣接構造への適合性を助ける電荷キャリアまたは結晶格子特性に影響を及ぼすスピン特性などの電荷キャリアの一部の種類に特有または不特定であり得る他の基準が、適切な異なるチャネル層材料を選択するために考慮に入れられてもよい。
【0025】
電荷キャリア特有の特性を有する異なるチャネル層を実現することは、セルの動作中、典型的には、所与のチャネル層内に選択的に貯蔵される電荷キャリアの一部の種類が、チャネル層の位置で局所化されることが期待できる場合に有用であり得る。例えば、ゲート構造に負の電圧を供給することによって、セルがセルをそのプログラムされた状態に維持するように、すなわち、ヘテロ構造の内部の「0」または「1」状態を表す1セットの注入された電荷キャリアを維持するように設計されている場合、任意の注入された正孔がゲート構造の近くに、すなわちゲート構造に面しているチャネル層の近くに移動し、一方、対応する注入された電子が、ゲート構造と反対にあるヘテロ構造の側へ、すなわち、ゲート構造とは反対に向いているチャネル層へ移動することが期待され得る。この例では、正孔に対して所望の特性を有する材料をゲート構造に面しているチャネル層のためのチャネル層材料として選択することが可能であり得、または電子に対して所望の特性を有する材料をゲート構造とは反対に向いているチャネル層のためのチャネル層材料として選択することが可能であり得、あるいはその両方である。選択的に最適化されたチャネル層材料の特定の選択が、所与のチャネル層を絶縁する隣接バリア層、または所与のチャネル層に隣接する任意の他の構造を作製する材料に依存することが可能であり得る。
【0026】
一実施形態によれば、異なるチャネル層材料は、少なくとも0.5電子ボルトだけバンド・ギャップ・エネルギーが異なる。これは、バンド・ギャップ・エンジニアリングによってチャネル層の一部または全部を最適化することを可能にし得る。例えば、より狭いバンド・ギャップはトンネリングによって明らかな正孔輸送率を増加させることができるので、正孔輸送専用であるチャネル層を実現するために低いバンド・ギャップ・エネルギー(またはより一般的には、同程度に低いバンド・ギャップ・エネルギー、または言い換えれば、同程度に狭いバンド・ギャップ)を有するチャネル層材料を使用することができる。これにより、専用の正孔チャネル層から正孔を注入および一掃する時間をより短くすることができ、したがってセルの読み出し/書き込みサイクル時間を増加させる。
【0027】
一実施形態によれば、異なるチャネル層材料は、少なくとも10倍だけ電子移動度が異なる。これは、電子輸送専用であるチャネル層を実現するためにチャネル層のうちの1つまたは複数(すなわち、より高い電子移動度を有するもの)を捧げることを可能にし得る。これは、例えば、読み取り中にそれが使用できるときに、セルのドレイン・ソース電流を増加させることを可能にする。
【0028】
一実施形態によれば、ゲート構造は、バリア層の1つに隣接している。このようにして、ヘテロ構造のチャネル層は、ゲート電流の蓄積を防ぐことができるようにゲート構造から絶縁することができる。バリア層がゲート構造に隣接するこの場合には、典型的には、今日、これがFET製造全体を通して行われるとき、ゲート絶縁体層(例えば、酸化物層)を有するゲート構造を用意することは不必要であり得ることに留意されたい。これは、キャパシタレスDRAMセルの製造プロセスの単純化をもたらすことができる。さらに、これにより、ゲート構造への電荷キャリアの自発的な移動もしくはヘテロ構造のトンネリング・アウトを防ぐもしくは妨害することができ、またはゲート構造からの電荷キャリアとの自発的な再結合を防ぐもしくは妨害することができ、あるいはその両方をすることができる。
【0029】
一実施形態によれば、ゲート構造は、バリア層に隣接するゲート絶縁体層を備える。ゲート絶縁体層は、酸化物などの電気絶縁体で作製することができ、ゲート構造がバイアスされるときに電界効果によるヘテロ構造における電荷キャリアの制御を可能にするためにヘテロ構造とゲート構造の間の電荷キャリアの交換を防ぐことができる。上述したように、ヘテロ構造がバリア層を用いてゲート構造に隣接している場合、ゲート絶縁体層を有するゲート構造を用意することは不要であり得るが、さらにゲート絶縁体層を有するゲート構造を実現することがやはり有用であり得、これは、ゲート構造を所望の電圧に設定することを可能にするために、ゲート構造に面しているチャネル層とゲート構造に実現される伝導性材料との間の総絶縁体厚さを増大させることができるからである。より高い総絶縁体厚さは、ゲートとヘテロ構造との間のリーク電流の確率を減少させることができ、またはゲート構造により高い電圧を供給することを可能にすることができ、あるいはその両方をすることができる。
【0030】
一実施形態によれば、セルは、基板上に配設され、ヘテロ構造は、基板に隣接する。これは、セルの機械的安定性を増加させ、バック・ゲート電圧をヘテロ構造に印加する可能性をもたらし、キャパシタレスDRAMセルをダブル・ゲート・デバイスにさせることができる。
【0031】
一実施形態によれば、バリア層の1つは、基板に隣接している。このようにして、ヘテロ構造のチャネル層は、バック・ゲート電流の蓄積を防ぐことができるように基板から絶縁することができる。バリア層が基板に隣接するこの場合には、今日これはセミコンダクタ・オン・インシュレータ(SOI)デバイスの製造においてしばしば行われるので、基板絶縁体層(例えば、埋められた酸化物層)を有する基板を用意することが不要であり得ることに留意されたい。これは、キャパシタレスDRAMセルの製造プロセスの単純化をもたらすことができる。さらに、これにより、ヘテロ構造への電荷キャリアの自発的な移動もしくは基板へのトンネリング・アウトを防ぐもしくは妨害することができ、または基板からの電荷キャリアとの自発的な再結合を防ぐもしくは妨害することができ、あるいはその両方をすることができる。
【0032】
一実施形態によれば、基板は、基板絶縁体層、および基板絶縁体層に隣接するヘテロ構造を備える。基板絶縁体層は、限定するものではないが、埋められた酸化物層を含む酸化物などの電気絶縁体で作製することができ、ヘテロ構造と基板の間の電荷キャリアの交換を防ぐことができる。これは、バック・ゲート構造がバイアスされるときに電界効果によるヘテロ構造における電荷キャリアの制御を可能にするために、バック・ゲート構造として基板を実現するのに有益であり得る。上述したように、ヘテロ構造がバリア層を用いて基板に隣接している場合、基板絶縁体層を有する基板を用意することは不要であり得るが、基板がバック・ゲート構造を実現する場合、さらにゲート絶縁体層を有するバック・ゲート構造を実現することがやはり有用であり得、これは、バック・ゲート構造を所望の電圧に設定することを可能にするために、バック・ゲート構造に面しているチャネル層とバック・ゲート構造に実現される伝導性材料との間の総絶縁体厚さを増大させることができるからである。より高い総絶縁体厚さは、バック・ゲートとヘテロ構造との間のリーク電流の確率を減少させることができ、またはバック・ゲート構造により高い電圧を供給することを可能にすることができ、あるいはその両方をすることができる。
【0033】
一実施形態によれば、ゲート構造は、第1の方向にのみヘテロ構造に隣接する。これは、電圧バイアスがゲート構造に印加される場合に、ヘテロ構造により均一な向けられた電場を及ぼすことを可能にし得る。したがって、これは、場の非対称性のためにバリア層を迂回する電荷キャリアにより、リーク電流の可能性を減少させることができる。
【0034】
一実施形態によれば、ゲート構造は、ヘテロ構造を埋める。これにより、ゲート構造がヘテロ構造をアンダーカットするのを防ぎ、したがって電荷キャリア注入、保持、および排出の効率を増大させることができる。言い換えれば、電荷キャリアの個数および速度は、注入中に増加することができ、ヘテロ構造における電荷キャリアの保持時間が増加することができ、ヘテロ構造からの電荷キャリアの排出は、ヘテロ構造をアンダーカットするゲート構造を有するセルと比較して加速することができる。
【0035】
一実施形態によれば、ゲート構造は、第2の方向に、およびこの第2の方向とは反対の方向にヘテロ構造と整合される。これは、ゲート構造が、ヘテロ構造をアンダーカットすることと、ソース構造またはドレイン構造あるいはその両方と一部重なることとの両方を防ぐことができる。アンダーカット・ゲート構造を避けることで、上述したように、電荷キャリア注入、保持、および排出の効率を増加させることができるが、一部重なるゲート構造を避けることで、電界効果によるソース領域またはドレイン領域あるいはその両方における電荷キャリアに影響を及ぼす確率を減少させることができ、したがって、ドレイン・ソース電流を増加させることができる。
【0036】
一実施形態によれば、各チャネル層および各バリア層、ソース構造とドレイン構造の両方に隣接する。これにより、バリア層を迂回するヘテロ構造における電荷キャリアによって引き起こされるリーク電流の確率を減少させることができる。
【0037】
一実施形態によれば、各バリア層は、バリア層ごとに、シリコン、酸化シリコン、酸化インジウム、およびリン化インジウムからなる群から選択されるバリア層材料で作製される。一実施形態によれば、各チャネル層は、チャネル層ごとに、ヒ化インジウム、ヒ化ガリウム、ヒ化インジウム・ガリウム、酸化インジウム・スズ、ゲルマニウム、およびシリコン・ゲルマニウムからなる群から選択されるチャネル層材料で作製される。
【0038】
これらの材料は、ヘテロ構造における電荷キャリアの効率的な貯蔵および輸送を可能にすることができる。結晶構造における欠陥の確率を減少させるために、化学的にまたは結晶学的にあるいはその両方でヘテロ構造における同様の材料に隣接することが有用であり得る。例示的な例では、ヘテロ構造は、ヒ化インジウムで作製されたチャネル層によって隣接された、酸化インジウムで作製されたバリア層によって隣接された、ヒ化インジウム・ガリウムで作製されたチャネル層を備える。本明細書中に開示されたキャパシタレスDRAMセルは、主に、セルの構造に関し、概して材料不可知論的(material-agnostic)であることが強調される。
【0039】
一実施形態によれば、ヘテロ構造は、第2の方向に測定される全長、1ナノメートルから75ナノメートルを有する。この寸法範囲は、より高い読み出し/書き込みサイクル・スピード、および/あるいはソース、ゲート、もしくはドレイン構造またはその組合せに印加されるより低い電圧を用いてセルを動作させることを可能にすることができ、ソースとドレインの間の静電誘導の確率を減少させることができる。
【0040】
一実施形態によれば、第1の方向に測定される各チャネル層の厚さは、第1の方向に測定される各バリア層の厚さの1.5倍から5倍である。この寸法範囲は、電荷キャリアを貯蔵するさらなる体積を有するチャネル層をもたらすことができ、したがって、ヘテロ構造のキャパシタンスを増加させることができる。これにより、セルの「1」の状態および「0」の状態を表す読み取りドレイン電流の差または比あるいはその両方の増加という結果にもなり得る。
【0041】
次に、図面を見ると、
図1は、キャパシタレスDRAMセルの動作の一般的原理を示す。
図1A、
図1B、
図1D、および
図1Eは、キャパシタレスDRAMセル100の概略断面図をそれぞれ示す。セル100は、基板102上に形成され、ソース構造104、チャネル構造110、ドレイン構造108、およびゲート構造106、107を備える。ソース構造104およびドレイン構造108は、チャネル構造110に隣接する。ソース構造104、チャネル構造110、およびドレイン構造108は、基板102に隣接する。ゲート構造106、107は、ゲート電極106とチャネル構造110を接続するゲート電極106およびゲート絶縁体107を備える。ソース構造104、ゲート電極106、およびドレイン構造108、ならびに基板102は、ソース電圧V
Sをソース構造104に供給し、フロント・ゲート電圧V
FGをゲート電極106に供給し、ドレイン電圧V
Dをドレイン構造108に供給し、バック・ゲート電圧V
BGを基板102に供給するための端子によって電気接触される。
【0042】
セル100は、チャネル構造110内で(「+」と名付けられた小さい円として示される)正孔を捕獲することによって論理状態「0」および「1」をエンコードするために適合されている。
図1Aおよび
図1Bは、電圧V
S=0V(ボルト)、V
FG<0V、V
D=0V、およびV
BG>0Vの組合せがチャネル構造110に捕獲された正孔を維持するように印加される「ホールド」状態におけるセル100をそれぞれ示す。設定V
FG<0VおよびV
BG<0Vは、正孔がゲート絶縁体107の近くに集められることを確実にし、(「-」と名付けられた小さい円として示される)任意の電子は、基板102の近くに集められる。
図1Aおよび
図1Bは、捕獲された正孔の個数と比較してかなり大きい個数の捕獲された電子を共に示す。「0」状態(
図1A)において、正孔の個数は、電子の個数と比較して無視することができ、一方、「1」状態(
図1B)において、正孔および電子の個数は、共に増加する。
図1Bは、電子がチャネル構造110のかなりの量の体積を占め、したがって、電子および正孔の分布が一部重なり始めることも示す。
【0043】
図1Cは、印加されたバック・ゲート電圧V
BGの関数としてドレイン・ソース電流I
DSの2つの曲線130、131を有する図を示す。
図1Cは、V
BGであるときに観察されるそれぞれ測定された曲線が読み出し電圧V
Rに設定されることも示す。「0」状態を表す曲線130の測定された電流I
DS=I
0は、「1」状態を表す曲線131の測定された電流I
DS=I
1よりも著しく低い。
【0044】
図1Dおよび
図1Eは、
図1Aおよび
図1Bのセル100を示しているが、「0」状態(
図1D)または「1」状態(
図1E)のどちらかを有するセル100をプログラムするために、異なる電圧の組合せが印加されている。明確にするために、
図1Dおよび
図1Eにおいて、電子は省略されている。「0」状態は、V
S=0V、V
FG>0V、V
D=0V、およびV
BG>0Vを設定することによって書き込まれる。V
FG>0VとV
BG>0Vの組合せは、チャネル構造110内の電子について引力ポテンシャルをもたらし、電子がチャネル構造110の大部分を満たし、存在し得る任意の正孔と再結合することを可能にする。統計的には、これは、フロント・ゲート構造106、107とバック・ゲートとして働く基板102との間の電場の本質的に外側でチャネル構造110の境界におけるならびにソース構造104およびドレイン構造108における電子の欠如に対応する。結果として、正孔は、(
図1Dにおいて矢印によって示される)ソース構造104およびドレイン構造108に集中する。言い換えれば、チャネル構造110の内側に生成されたポテンシャルの影響は、正孔が自由電荷キャリアであった場合、反発ポテンシャルに等価である。最終的に、チャネル構造110が正孔から本質的に欠乏するときに、「0」状態に到達する。
【0045】
図1Eは、論理状態「1」のための書き込み動作中のチャネル構造110への正孔の注入を示す。この状態は、電圧をV
S=0V、V
FG<0V、V
D>0V、およびV
BG>0Vに設定することによってプログラムされる。自由電荷キャリアがない空乏領域は、図面の下部におけるドレイン構造108とチャネル構造110の間の境界と平行である2つの破線によって示される。V
FG<0VとV
D>0Vの組合せは、空乏領域内の束縛電子に、その担持原子(carrying atom)を残させ、V
D>0Vが電子を引きつけるポテンシャルを生成するドレイン構造108の伝導帯にトンネルさせる。類似的に、後に残された正孔は、フロント・ゲート電圧V
FG<0Vにより正孔が捕獲されるチャネル構造110に移る。キャリア生成プロセスは、図面における反対の矢印によって示される。最終的に、チャネル構造110内の正孔密度が飽和に到達し、動的平衡またはV
Dが0Vに戻るように設定されるときに、「1」状態に到達する。
【0046】
図2~
図6は、例示的なキャパシタレスDRAMセル200の概略断面図をそれぞれ示す。各図面において、示されたセル200は、ヘテロ構造と、第1の方向にヘテロ構造に隣接するゲート構造106、107と、第1の方向に直交する第2の方向にヘテロ構造に隣接するドレイン構造108と、第2の方向とは反対の方向にヘテロ構造に隣接するソース構造104とを備える。ヘテロ構造は、交互に重ね合わされた配置で1つまたは複数の半導体チャネル層210、310、312、410、510、610、612、および1つまたは複数の電気絶縁バリア層220、320、420、520、522、620、622、624を備える。限定することなく、
図2~
図6によって示される特定の例は、ゲート構造106、107がヘテロ構造に隣接するゲート電極106およびゲート絶縁体層107を備え、セル200の構成要素が基板102上に設けられることを示す。ヘテロ構造の詳細な実施は、図面間で変わり、以下に説明される。
【0047】
図2において、ヘテロ構造は、1つのチャネル層210と、チャネル層210およびゲート絶縁体層107を接続する1つのバリア層220とを備える。バリア層220の絶縁効果は、ゲート構造106、107に移動またはトンネルすることによって、チャネル層210中に存在し得る電荷キャリア(電子または正孔)がチャネル層210から離れるのを妨げるまたは防ぐことができる。したがって、ゲート構造106、107に隣接する1つのバリア層220を有する1つのチャネル層210の利用により、チャネル層210における電荷キャリアの保持時間の増加という結果になり得る。
【0048】
図3において、ヘテロ構造は、2つのチャネル層310、312、ならびにチャネル層310およびチャネル層312を接続する1つのバリア層320を備える。バリア層320の絶縁効果は、チャネル層310中に存在し得る電荷キャリアがチャネル層312に移動することによってチャネル層310から離れるのを妨げるまたは防ぐことができ、チャネル層312中に存在し得る電荷キャリアがチャネル層310に移動することによってチャネル層312から離れるのを妨げるまたは防ぐことができ、したがって、チャネル層310中に存在し得る電荷キャリアがチャネル層312中に存在し得る反対電荷の電荷キャリアと再結合するのを妨げるまたは防ぐことができる。したがって、1つのバリア層320を有する2つのチャネル層310、312の利用により、チャネル層310、312中の電荷キャリアの保持時間の増加という結果になり得る。
【0049】
図4において、ヘテロ構造は、1つのチャネル層410と、チャネル層410および基板102を接続する1つのバリア層420とを備える。バリア層420の絶縁効果は、チャネル層410中に存在し得る電荷キャリアが基板102に移動またはトンネルすることによってチャネル層410から離れるのを妨げるまたは防ぐことができる。したがって、基板に隣接する1つのバリア層420を有する1つのチャネル層410の利用により、チャネル層410中の電荷キャリアの保持時間の増加という結果になり得る。
【0050】
概して、ヘテロ構造の内部の異なる隣り合わない位置で実現されたバリア層は、互いに組み合わせることができる。
図5および
図6は、そのような可能な組合せのうちの1つをそれぞれ示す。
【0051】
図5において、ヘテロ構造は、1つのチャネル層510と、チャネル層510およびゲート絶縁体層107を接続する1つのバリア層522と、チャネル層510および基板102を接続する1つのバリア層520とを備える。バリア層522の絶縁効果は、チャネル層510中に存在し得る電荷キャリアがゲート構造106、107に移動またはトンネルすることによってチャネル層510から離れるのを妨げるまたは防ぐことができる。同様に、バリア層520の絶縁効果は、そのような電荷キャリアが基板102に移動またはトンネルすることによってチャネル層510から離れるのを妨げるまたは防ぐことができる。したがって、2つのバリア層520、522を有する1つのチャネル層510の利用は、チャネル層510中の電荷キャリアの保持時間の増加という結果になり得る。
【0052】
図6において、ヘテロ構造は、2つのチャネル層610、612と、チャネル層612およびゲート絶縁体層107を接続する1つのバリア層624と、チャネル層610およびチャネル層612を接続する1つのバリア層622と、チャネル層610および基板102を接続する1つのバリア層620とを備える。バリア層624の絶縁効果は、チャネル層612中に存在し得る電荷キャリアがゲート構造106、107に移動またはトンネルすることによってチャネル層612から離れるのを妨げるまたは防ぐことができる。同様に、バリア層620の絶縁効果は、そのような電荷キャリアが基板102に移動またはトンネルすることによってチャネル層610から離れるのを妨げるまたは防ぐことができ、バリア層622の絶縁効果は、チャネル層610中に存在し得る電荷キャリアがチャネル層612に移動することによってチャネル層610から離れるのを妨げるまたは防ぐことができ、チャネル層612中に存在し得る電荷キャリアがチャネル層610に移動することによってチャネル層612から離れるのを妨げるまたは防ぐことができ、チャネル層610中に存在し得る電荷キャリアがチャネル層612中に存在し得る反対電荷の電荷キャリアと再結合するのを妨げるまたは防ぐことができる。したがって、3つのバリア層620、622、624を有する2つのチャネル層610、612の利用により、チャネル層610、612における電荷キャリアの保持時間の増加という結果になり得る。
【0053】
図7A~
図7Dは、異なる寸法のチャネル構造110を実現するプロトタイプに関して測定されたキャパシタレスDRAMセル100の性能に対するチャネル構造110の幅および長さの影響を示す。チャネル構造110の長さは、第2の方向のチャネル構造110の全体寸法として定められ、これは、ソース構造104とゲート構造108の間の距離に等価であり得る。チャネル構造110の幅は、チャネル構造110の長手方向の広がりの主方向のチャネル構造110の全体寸法として定められ、これは、第1の方向に直交し、第2の方向とは異なり、限定するものではないが、第2の方向に直交し得る。
【0054】
図7Aは、キャパシタレスDRAMセルをテストするための2つの入力信号700、702に関する図を示す。曲線700は、フロント・ゲート電圧V
FGを時間の関数として示し、曲線702は、ドレイン電圧V
Dを時間の関数として示す。曲線700と曲線702の両方は、約40マイクロ秒(μs)のサイクル時間を有する一連の矩形パルスを示す。各パルスは、約50%の時間デューティを用いてそれぞれの電圧を特定のバイアス・レベルから一時的な一定のパルス電圧レベルへ置き換える。バイアス・レベルは、V
FGについて-0.5V(ボルト)であり、V
Dについて0.0Vである。
【0055】
第1のサイクルにおいて、「書き込み0」が「W0」と名付けられ、VFGは+1.0Vへ上昇し、VDはバイアス・レベルに留まる。これにより、論理状態「0」が用意されるようにチャネル構造110からの正孔の排出が引き起こされる。Inサイクル2~6において、「読み込み」が「R」と名付けられ、VFGはバイアス・レベルに留まり、VDは+0.5Vに上昇する。これにより、ドレイン電流を測定することによってセル100の現在の状態の読み取りの5つのサイクルを可能にする。サイクル7において、「書き込み1」が「W1」と名付けられ、VFGは-1.0Vに低下し、VDは+1.0Vに上昇する。これによりチャネル構造110への正孔の注入を引き起こし、それによって論理状態「1」が用意される。サイクル8~12は、サイクル2~6と同じ特性を有する「R」と名付けられたさらなる5つの読み込みサイクルである。これは、プログラミング・サイクルW0およびW1に対するドレイン電流応答の時間展開の比較観察を可能にする。
【0056】
図7B~
図7Dは、信号700、702を入力信号として使用してテストされた特定のキャパシタレスDRAMセル・プロトタイプのドレイン電流応答をそれぞれ示す。全ての測定は、バック・ゲート電圧V
BG=2.0Vを用いて行われた。
【0057】
図7Bの測定に使用されたプロトタイプは、90ナノメートル(nm)の(ゲート長さL
gに等しい)公称チャネル長さ、および2マイクロメートル(μm)のチャネル幅Wを実現した。「0」状態および「1」状態におけるドレイン電流I
D(曲線710)の応答は、Δ
I=I
1-I
0=0.7μA(マイクロアンペア)だけ異なり、比I
R=I
1/I
0=2.5を有する。
図7Cの測定に使用されたプロトタイプは、公称チャネル長さL
g=20nm、および1μmのチャネル幅Wを実現した。「0」状態および「1」状態におけるドレイン電流I
D(曲線712)の応答は、Δ
I=17μAだけ異なり、比I
R=7.9を有する。
図7Dの測定に使用されたプロトタイプは、公称チャネル長さL
g=10nm、および1μmのチャネル幅Wを実現した。「0」状態および「1」状態におけるドレイン電流I
D(曲線714)の応答は、Δ
I=17μAだけ異なり、比I
R=4.3を有する。
【0058】
図8は、信号700、702を入力信号として使用してテストされたキャパシタレスDRAMセル200のドレイン電流応答を示す。
図8の測定に使用されたプロトタイプは、1つのチャネル層410および2つのバリア層420、422を備えるヘテロ構造を実現した。各論理状態(すなわち、論理状態「0」におけるI
D=I
0、および論理状態「1」におけるI
D=I
1)における5回繰り替えした読み出しサイクル中のドレイン電流I
D(曲線800)の時間展開と
図7B~
図7Dで観察されたそれぞれの時間展開との比較は、曲線800の読み出し電流レベルが、曲線710、712、714のものよりも、それぞれ、自発的な電荷キャリアの捕獲または損失のより大きい緩和時間定数を有することを示す。
【0059】
本発明の様々な実施形態の説明が、例示のために示されてきたが、網羅的であることは意図されず、または開示された実施形態に限定されない。本発明の範囲および思想から逸脱することなく、多くの修正および変形が当業者に明らかである。本明細書中で使用される専門語は、実施形態の原理、市場で見られる技術を上回る実際的な応用または技術的改善を最もよく説明するために、あるいは当業者が本明細書中に開示された実施形態を理解することを可能にするように選ばれた。
【0060】
以下、本発明を、本明細書中に開示された特徴のいくつかの可能性のある排他的でない組合せを強調する条項のリストによって再び説明する。
1. ヘテロ構造と、第1の方向にヘテロ構造に隣接するゲート構造と、第1の方向に直交する第2の方向にヘテロ構造に隣接するドレイン構造と、第2の方向とは反対の方向にヘテロ構造に隣接するソース構造とを備え、ヘテロ構造は、1つまたは複数の半導体チャネル層、および1つまたは複数の電気絶縁バリア層を備え、チャネル層およびバリア層は、第1の方向に交互に重ね合わされる、キャパシタレスDRAMセル。
2. ヘテロ構造は、単一のバリア層、および単一のチャネル層を備える、条項1に記載のDRAMセル。
3. ヘテロ構造は、単一のバリア層、および2つのチャネル層を備える、条項1に記載のDRAMセル。
4. ヘテロ構造は、2つのバリア層、および単一のチャネル層を備える、条項1に記載のDRAMセル。
5. ヘテロ構造は、2つのバリア層、および2つのチャネル層を備える、条項1に記載のDRAMセル。
6. ヘテロ構造は、3つのバリア層、および2つのチャネル層を備える、条項1に記載のDRAMセル。
7. ヘテロ構造は、異なるバリア層材料で作製される少なくとも2つのバリア層を備える、条項1ないし条項6のいずれかに記載のDRAMセル。
8. ヘテロ構造は、異なるチャネル層材料で作製される少なくとも2つのチャネル層を備える、条項1ないし条項7のいずれかに記載のDRAMセル。
9. 異なるチャネル層材料は、少なくとも0.5電子ボルトだけバンド・ギャップ・エネルギーが異なる、条項8に記載のDRAMセル。
10. 異なるチャネル層材料は、少なくとも10倍だけ電子移動度が異なる、条項8または条項9に記載のDRAMセル。
11. ゲート構造は、バリア層のうちの1つに隣接している、条項1ないし条項10のいずれかに記載のDRAMセル。
12. ゲート構造は、バリア層に隣接するゲート絶縁体層を備える、条項11に記載のDRAMセル。
13. セルは、基板上に配設され、ヘテロ構造は、基板に隣接する、条項1ないし条項12のいずれかに記載のDRAMセル。
14. 基板は、基板絶縁体層を備え、ヘテロ構造は、基板絶縁体層に隣接する、条項13に記載のDRAMセル。
15. バリア層のうちの1つは、基板に隣接している、条項13または条項14に記載のDRAMセル。
16. ゲート構造は、第1の方向にのみヘテロ構造に隣接する、条項1ないし条項15のいずれかに記載のDRAMセル。
17. ゲート構造は、ヘテロ構造を埋める、条項1ないし条項16のいずれかに記載のDRAMセル。
18. ゲート構造は、第2の方向にヘテロ構造と整合され、上記方向は、第2の方向とは反対である、条項17に記載のDRAMセル。
19. 各チャネル層および各バリア層は、ソース構造とドレイン構造の両方に隣接する、条項1ないし条項18のいずれかに記載のDRAMセル。
20. 各バリア層は、バリア層材料で作製され、バリア層材料は、各バリア層のために、シリコン、酸化シリコン、酸化インジウム、およびリン化インジウムからなる群から選択される、条項1ないし条項19のいずれかに記載のDRAMセル。
21. 各チャネル層は、チャネル層材料で作製され、チャネル層材料は、各チャネル層のために、ヒ化インジウム、ヒ化ガリウム、ヒ化インジウム・ガリウム、酸化インジウム・スズ、ゲルマニウム、およびシリコン・ゲルマニウムからなる群から選択される、条項1ないし条項20のいずれかに記載のDRAMセル。
22. ヘテロ構造は、第2の方向に測定される1ナノメートルから75ナノメートルの全長を有する、条項1ないし条項21のいずれかに記載のDRAMセル。
23. 第1の方向および第2の方向に直交する第3の方向に測定されるヘテロ構造の全幅は、第2の方向に測定されるヘテロ構造の全長の20倍から200倍である、条項1ないし条項22のいずれかに記載のDRAMセル。
24. 第1の方向に測定される各チャネル層の厚さは、第1の方向に測定される各バリア層の厚さの1.5倍から5倍である、条項1ないし条項23のいずれかに記載のDRAMセル。
25. キャパシタレスDRAMセルを製造する方法であって、
1つまたは複数の半導体チャネル層および1つまたは複数の電気絶縁バリア層を備え、チャネル層およびバリア層は、第1の方向に交互に重ね合わされる、ヘテロ構造を形成することと、
第1の方向にヘテロ構造に隣接するゲート構造を形成することと、
第1の方向に直交する第2の方向にヘテロ構造に隣接するドレイン構造を形成することと、
第2の方向とは反対の方向にヘテロ構造に隣接するソース構造を形成することと、を含む方法。