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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】作業機械の収納構造
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20250304BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20250304BHJP
   E02F 9/08 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
E02F9/16 Z
E02F9/08 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020191809
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080625
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西口 哲生
(72)【発明者】
【氏名】松村 和昌
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-132078(JP,A)
【文献】特開2012-172332(JP,A)
【文献】特開2000-045332(JP,A)
【文献】特開2016-204880(JP,A)
【文献】特開2019-056252(JP,A)
【文献】米国特許第05316358(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/18
E02F 9/24-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の機体に設けられる作業機械の収納構造であって、
内部へとアクセス可能な開口をそれぞれ有し、順次隣接して配置された複数の収納部と、
複数の収納部のうちの互いに隣接するいずれか複数の内部に亘り連通する長手状に形成され、各開口と異なるアクセス開口からアクセス可能な収納空間部と、
を備えることを特徴とする作業機械の収納構造。
【請求項2】
複数の収納部は、機体の外縁部から機体の所定の被整備部側へと順次隣接して配置され、
所定の被整備部に近い収納部ほど高さが高く設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の作業機械の収納構造。
【請求項3】
複数の収納部は、機体の側部に配置され、
各開口は、機体の側方から各収納部の内部にアクセス可能に形成され、
収納空間部は、複数の収納部のうちの互いに隣接するいずれか複数の内部の少なくとも機体幅中央部側を連通して形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械の収納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の機体に設けられる作業機械の収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
林業の現場では、油圧ショベルなどをベースとした作業機械に林業用のアタッチメントを取り付けた車両が用いられる。林業用のアタッチメントとして知られるハーベスタは、例えば直立している樹木の根元にセットされ、内蔵されるチェンソーで切断した樹木を横倒しにし、枝を伐採、所定の長さに切断、などの作業が行われる。
【0003】
ハーベスタなどのアタッチメントに用いられるチェンソーは、摩耗した場合、あるいは破損した場合にガイドブレードを交換する必要がある。ガイドブレードは最大伐倒径、すなわちアタッチメントのサイズにもよるが、長いものでは1mを超えるものもある。
【0004】
従来、作業機械においては、工具などを収納するための収納構造であるツールボックスを備えているものがある(例えば、特許文献1および2参照。)。しかしながら、このようなツールボックスでは、ブレードのような長尺物を収納することが容易でない。そのため、予備のガイドブレードを現場で交換するためには、ガイドブレードを別途運搬する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-268807号公報
【文献】特開2005-98013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、作業機械において、長尺物を収納可能なツールボックスを備えることが望まれている。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、長尺物を収納可能な作業機械の収納構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、作業機械の機体に設けられる作業機械の収納構造であって、内部へとアクセス可能な開口をそれぞれ有し、順次隣接して配置された複数の収納部と、複数の収納部のうちの互いに隣接するいずれか複数の内部に亘り連通する長手状に形成され、各開口と異なるアクセス開口からアクセス可能な収納空間部と、を備えるものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の作業機械の収納構造における複数の収納部が、機体の外縁部から機体の所定の被整備部側へと順次隣接して配置され、所定の被整備部に近い収納部ほど高さが高く設定されているものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の作業機械の収納構造における複数の収納部が、機体の側部に配置され、各開口が、機体の側方から各収納部の内部にアクセス可能に形成され、収納空間部が、複数の収納部のうちの互いに隣接するいずれか複数の内部の少なくとも機体幅中央部側を連通して形成されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、収納空間部を、複数の収納部の内部に亘る長さとすることができるため、アクセス開口を介して長尺物を収納空間部に収納可能となる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、収納部により、機体の外縁部から被整備部へとアクセスするステップを構成することができるため、これらを足場として用いることで、被整備部へと容易にアクセスして被整備部を整備可能となる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、収納空間部内に収納された長尺物が、各収納部の内部へのアクセスを妨げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本発明に係る作業機械の収納構造の一実施の形態を示す斜視図、(b)は(a)の横断面図である。
図2】同上収納構造を備える作業機械の機体の一部を示す斜視図である。
図3】同上収納構造を示す平面図である。
図4】同上収納構造に収納される長尺物の一例を示す斜視図である。
図5】同上作業機械の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、図1乃至図5に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0016】
図5は、作業機械10を示す。作業機械10は、フォレストリマシンなどとも呼ばれる林業用作業機械である。作業機械10としては、本実施の形態では、旋回型の作業機械である油圧ショベルをベースとしたものを例に挙げて説明する。図示される例では、作業機械10は、機体11と、この機体11に可動的に設けられた作業腕である作業装置12と、を備える。
【0017】
本実施の形態において、機体11は、履帯やタイヤなどにより走行可能な下部走行体13と、この下部走行体13上に旋回可能に設けられた上部旋回体14と、この上部旋回体14に設けられオペレータが着座する運転席を囲むキャブ15と、を有し、上部旋回体14の車幅方向中央部に作業装置12が配置され、作業装置12を基準として上部旋回体14の一側、図示される例では左側にキャブ15が位置する。なお、上下、左右、前後などの各方向は、オペレータの視点を基準とする。そして、作業機械10の各部は、流体圧アクチュエータにより動作される。流体圧アクチュエータは、例えば油圧シリンダ、油圧モータなどであり、機体11に搭載されたエンジンにより作動されるポンプから吐出される作動流体である作動油がオペレータの操作に応じてコントロールバルブにより流量制御および方向制御されて給排されることで各動作が可能となっている。
【0018】
作業装置12には、アタッチメント16が取り付けられる。アタッチメント16は、図示される例では、ハーベスタなどとも呼ばれる林業用のアタッチメントである。アタッチメント16は、作業装置12の先端に可動的に取り付けられるアタッチメント本体部20を備え、アタッチメント本体部20に、対をなす把持アーム21と、対をなすフィードローラ22と、カッタ23と、切断装置であるチェンソー24と、がそれぞれ可動的に配置される。そして、アタッチメント16は、例えば伐倒対象である樹木を一対の把持アーム21によって把持した状態でチェンソー24により切り倒し、伐倒された被加工材である木材の表面に一対のフィードローラ22を挟むように押し付け、木材を長手方向に送り出し、カッタ23によって枝払いし、チェンソー24によって所望の長さに切断(玉切り)する。
【0019】
チェンソー24は、例えば流体圧アクチュエータにより進退可能なカッティングアタッチメント26を有し、このカッティングアタッチメント26が駆動源である電動モータにより駆動される。カッティングアタッチメント26は、図4に示される長尺物であるガイドブレード28の外周に無端状のソーチェン29が巻き掛けられて構成され、ソーチェン29が、電動モータにより発生された動力を受けてガイドブレード28の外周に沿って案内されつつ回転した状態で、図5に示されるフィードローラ22により送り出される木材の長手方向に対して交差する方向にカッティングアタッチメント26が進退されることにより、木材を伐倒あるいは切断可能となっている。
【0020】
図4に示されるガイドブレード28は、要求される最大伐倒径に応じて選択されたアタッチメント16(図5)のサイズに応じて長さが設定された長尺物である。ガイドブレード28は、アタッチメント16(図5)に対し着脱可能であり、摩耗や破損の際に交換可能となっている。
【0021】
本実施の形態において、交換用の予備のガイドブレード28は、図2に示される機体11の上部旋回体14に設けられた収納構造であるツールボックス30に収納可能である。ツールボックス30は、作業装置12(図5)を基準として上部旋回体14の他側、図示される例では右側、すなわちキャブ15(図5)とは反対側に配置される。図示される例では、ツールボックス30は、上部旋回体14の旋回フレーム14aの右縁部に形成された側部足場部31の左側に隣接して配置される。また、本実施の形態において、ツールボックス30の前方は、保護部材(ガード部材)32により覆われている。保護部材32は、例えば上部旋回体14の旋回フレーム14a上から上方に突出する板状に形成されている。保護部材32には、側部足場部31に対して昇降する際に把持される被把持部材であるハンドレール33が取り付けられている。
【0022】
そして、図1(a)、図1(b)、図2、および、図3に示されるように、ツールボックス30は、複数の収納部35と、これら複数の収納部35のうちの少なくとも隣接する複数の内部の空間部36を連通する収納空間部37と、を有する。収納空間部37に予備のガイドブレード28などの長尺物が収納される。
【0023】
収納部35は、それぞれ開口39を備え、これら開口39から内部の空間部36に対しアクセス可能となっている。また、開口39は、それぞれ開閉体40により開閉可能となっている。
【0024】
本実施の形態において、収納部35には、第一収納部35aと第二収納部35bとが設定されている。
【0025】
第一収納部35aは、ツールボックス30の最前部に位置している。本実施の形態において、第一収納部35aは、機体11の外縁部である上部旋回体14の右側前部に位置している。
【0026】
図示される例では、第一収納部35aは、箱状に形成されている。第一収納部35aは、左右一対の側板42,43と、前後一対の端板44,45と、天井板46と、を有し、上部旋回体14の旋回フレーム14a上に載置されて側部足場部31よりも上方に突出している。本実施の形態において、第一収納部35aは、前後方向に長手状となっている。そして、第一収納部35aは、一の開口である第一開口39aを有し、内部の一の空間部である第一空間部36aに対し第一開口39aを介してツールボックス30の外部からアクセス可能となっている。本実施の形態において、第一開口39aは、側板43および天井板46に亘り切り欠き形成されている。つまり、第一開口39aは、第一収納部35aの上方および側方に開口され、機体11の側方、本実施の形態では右側方の側部足場部31から第一空間部36aにアクセス可能となっている。図示される例では、第一開口39aは、第一収納部35aの前部に位置し、左右方向に長手状に形成されている。
【0027】
そして、第一開口39aは、一の開閉体である第一開閉体40aにより開閉可能となっている。第一開閉体40aは、任意の開閉構造としてよいが、本実施の形態においては、ヒンジ47により天井板46に取り付けられ、上下方向に開閉可能となっている。図示される例では、ヒンジ47は、第一開閉体40aの車幅方向中央部側である左側に位置しており、第一開閉体40aの右縁部が上下方向に回動することで第一開口39aを開閉するようになっている。また、天井板46は、第一開口39aの後方が、一の滑り止め部である第一滑り止め部48により覆われている。
【0028】
本実施の形態において、第一収納部35aは、一の被収納物である第一被収納物としてのタンクを収納するタンク収納部である。例えば、第一収納部35aの内部の第一空間部36aには、被収納タンクである尿素タンク49が収納されている。尿素タンク49には、エンジンの排ガスを処理する排ガス処理装置と配管を介して接続され、この排ガス処理装置に用いられる尿素が貯留されている。尿素タンク49の少なくとも一部が第一開口39aに臨んで位置する。したがって、第一開閉体40aが開かれた第一開口39aから尿素タンク49に対してアクセス可能となっている。
【0029】
第二収納部35bは、ツールボックス30にて第一収納部35aの後側に隣接して位置している。第二収納部35bは、機体11の外縁部である上部旋回体14の右側部において、第一収納部35aと、後方に位置する被整備部であるパワーユニット部50と、の間に亘り配置されている。つまり、第二収納部35bは、第一収納部35aに対しパワーユニット部50側に隣接して位置している。
【0030】
パワーユニット部50には、例えばエンジン、ポンプ、発電機、電池、作動流体タンク、燃料タンク、冷却装置などが含まれ、開閉可能な蓋部51により覆われている。本実施の形態では、パワーユニット部50と第二収納部35bとの間に足場部52が形成されている。つまり、パワーユニット部50の前側に足場部52が隣接し、足場部52の前側に第二収納部35b(ツールボックス30)が隣接している。足場部52は、パワーユニット部50の蓋部51よりも低い位置に設定されている。
【0031】
図示される例では、第二収納部35bは、箱状に形成されている。第二収納部35bは、左右一対の側板53,54と、前後一対の端板55,56と、天井板57と、を有し、上部旋回体14の旋回フレーム14a上に載置されて側部足場部31よりも上方に突出している。また、本実施の形態では、パワーユニット部50に近い収納部35ほど高さが高く設定されている。すなわち、パワーユニット部50に近い第二収納部35bの高さが、パワーユニット部50から遠い第一収納部35aの高さよりも高い。本実施の形態においては、第二収納部35bの高さは、第一収納部35aより高く、足場部52より低くなっている。したがって、側部足場部31、第一収納部35aの天井板46、第二収納部35bの天井板57、足場部52、および、パワーユニット部50の蓋部51の順に階段状に高さが高くなっており、ツールボックス30の上部である天井板46,57が側部足場部31から足場部52に亘るステップを形成している。
【0032】
本実施の形態において、側板53,54は、第一収納部35aの側板42,43と一体に形成されている。側板54には、足場部52に亘り、足場部52への昇降時に把持される被把持体であるサイドレール59が形成されている。また、端板55は、第一収納部35aの端板45と一体に形成され、端板45よりも上方に延出している。
【0033】
そして、第二収納部35bは、他の開口である第二開口39bを有し、内部の他の空間部である第二空間部36bに対し第二開口39bを介してツールボックス30の外部からアクセス可能となっている。本実施の形態において、第二開口39bは、側板54に形成されている。つまり、第二開口39bは、第二収納部35bの側方に開口され、機体11の側方、本実施の形態では右側方の側部足場部31から第二空間部36bにアクセス可能となっている。図示される例では、第二開口39bは、第二収納部35bの後部に位置している。
【0034】
第二開口39bは、他の開閉体である第二開閉体40bにより開閉可能となっている。第二開閉体40bは、任意の開閉構造としてよいが、本実施の形態においては、ヒンジにより側板54に取り付けられ、左右方向に開閉可能となっている。図示される例では、ヒンジは、第二開閉体40bの後縁部側に位置しており、第二開閉体40bの前部が左右方向に回動することで第二開口39bを開閉するようになっている。また、天井板57は、他の滑り止め部である第二滑り止め部61により覆われている。
【0035】
本実施の形態において、第二収納部35bは、他の被収納物である第二被収納物としての工具などを収納する工具収納部である。例えば、第二収納部35bの内部の第二空間部36bには、メンテナンス用の工具類、油脂類を収容した缶などの容器、あるいは、交換用ピンなどの部品が収納可能となっている。
【0036】
そして、収納空間部37は、第一収納部35aの内部の第一空間部36aと第二収納部35bの内部の第二空間部36bとを前後方向に連通して形成されている。すなわち、収納空間部37は、第一収納部35aと第二収納部35bとの仕切りとなっている端板45の少なくとも一部に連通開口63が開口されていることにより形成されている。収納空間部37の前部は、第一空間部36aの一部であり、収納空間部37の後部は、第二空間部36bの一部である。したがって、収納空間部37は、第一空間部36aと第二空間部36bとの前後方向の長さを合計した長さを有する長手状に形成されている。
【0037】
また、収納空間部37は、複数の収納部のうちの互いに隣接するいずれか複数の内部の少なくとも機体幅中央部側を連通して形成されている。本実施の形態において、収納空間部37は、第一収納部35aの第一空間部36aと、第二収納部35bの第二空間部36bと、の左側、すなわち作業装置12(図5)側を連通して形成されている。つまり、収納空間部37は、ツールボックス30において、作業装置12(図5)側またはキャブ15側に偏って位置している。
【0038】
収納空間部37には、アクセス開口65を介してツールボックス30の外部からアクセス可能となっている。アクセス開口65は、第一開口39aおよび第二開口39bとはそれぞれ異なる位置にある。本実施の形態において、アクセス開口65は、第一収納部35aの天井板46に形成されている。図示される例では、アクセス開口65は、天井板46の左側の縁部、つまり第一開口39aとは反対側の縁部に形成されている。好ましくは、アクセス開口65は、収納空間部37の長手方向である前後方向に沿って長手状に形成されている。アクセス開口65は、作業者がアクセス可能な任意の位置に形成してよいが、本実施の形態においては、天井板46の前後方向の略全体に亘り形成されている。そのため、アクセス開口65は、第一開口39aおよび第一滑り止め部48に対し、左側に隣接して位置している。
【0039】
アクセス開口65は、アクセス用開閉体66により開閉される。アクセス用開閉体66は、任意の開閉構造としてよいが、本実施の形態においては、折れ戸状に形成され、図1(a)の二点鎖線に示すように、天井板46に沿って前方にスライドしつつ折り畳まれながらアクセス開口65を開くようになっている。このように構成することで、アクセス用開閉体66の開閉スペースを確保している。また、本実施の形態において、アクセス用開閉体66には、開閉体滑り止め部67が形成されており、アクセス開口65を閉じた状態で開閉体滑り止め部67が第一滑り止め部48と隣接して一体的な滑り止め部を構成するようになっている。
【0040】
次に、図示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0041】
作業者は、第一収納部35aの第一空間部36aに収納された第一被収納物に対して、第一開閉体40aを開くことで第一開口39aからアクセス可能となる。本実施の形態では、作業者は、まず側部足場部31に昇り、第一開閉体40aを上方へと回動させることで第一開口39aを開くと、第一被収納物である尿素タンク49にアクセス可能となる。そこで、作業者は、尿素タンク49に対し尿素を供給したり、尿素タンク49の残量を確認したりするなどのメンテナンス作業が可能になる。
【0042】
同様に、作業者は、第二収納部35bの第二空間部36bに収納された第二被収納物に対して、第二開閉体40bを開くことで第二開口39bからアクセス可能となる。本実施の形態では、作業者は、まず側部足場部31に昇り、第二開閉体40bを後方へと回動させることで第二開口39bを開くと、第二被収納物である工具などにアクセス可能となる。そこで、作業者は、工具を取り出して各種作業が可能になる。
【0043】
ここで、林業用のアタッチメント16を用いる作業の場合、樹木などの伐倒や切断によりアタッチメント16のカッティングアタッチメント26のガイドブレード28が摩耗したり破損したりすることが懸念される。そのため、予備のガイドブレード28をツールボックス30に収納しておくことが望ましい。しかしながら、ガイドブレード28は、長尺物であるため、第一収納部35aの第一空間部36a、および、第二収納部35bの第二空間部36bには、それぞれ収納が困難な長さである。
【0044】
そこで、本実施の形態では、ツールボックス30において、複数の収納部35のうち、互いに隣接する第一収納部35aと第二収納部35bとの内部を連通して、各開口39と異なるアクセス開口65からアクセス可能な収納空間部37を設ける。したがって、収納空間部37を、複数の収納部35の内部に亘る長さ、本実施の形態では第一収納部35aの内部と第二収納部35bの内部とに亘る長さとすることができるため、アクセス開口65を介して長尺物を収納空間部37に収納可能および収納空間部37から取り出し可能となる。本実施の形態において、作業者は、天井板46に昇り、アクセス用開閉体66を開いてアクセス開口65から長尺物を収納空間部37に収納したり、収納空間部37から長尺物を取り出したりすることが可能になる。そのため、収納空間部37を利用して、予備のガイドブレード28や長尺の工具、例えば柄が長い斧などを作業機械10に搭載していることが可能であり、これらを別途運搬する必要がないとともに、作業現場においてガイドブレード28を迅速に交換したり、長尺の工具での作業を実施したりすることが可能になる。
【0045】
また、アクセス開口65を収納空間部37の長手方向に沿って長手状に形成することで、長尺物を収納空間部37に挿入しやすくなる。
【0046】
なお、収納空間部37に対し、より長尺の長尺物を収納可能とするために、長尺物を収納空間部37に対して傾斜状に収納可能としてもよい。例えば、収納空間部37の内部に、長尺物を傾斜状に支持する支持体を配置することで、収納空間部37を斜めに用いて、より長い長尺物を収納空間部37に収納可能となるとともに、長尺物の一端部がアクセス開口65に近接するように傾斜させることで、アクセス開口65から長尺物を取り出しやすくなる。
【0047】
また、林業では、整地されていない山道を進むため、作業機械10の振動が大きいことが考えられるので、収納空間部37には、収納される長尺物を固定するための手段が形成されることが好ましい。例えば、バンド、あるいは紐状などの固定部材を用いて長尺物を収納空間部37に固定するために、固定部材を通す穴部、あるいは固定部材を引っ掛けるためのフックなどの固定補助具を収納空間部37に形成することで、収納された長尺物を安定的に固定しておくことが可能になる。
【0048】
また、第一収納部35aと第二収納部35bとを、機体11の外縁部からパワーユニット部50側へと順次隣接して配置するとともに、パワーユニット部50に近い第二収納部35bの高さをパワーユニット部50から遠い第一収納部35aの高さよりも高く設定することで、第一収納部35aと第二収納部35bとにより、機体11の外縁部からパワーユニット部50へとアクセスするステップを構成することができる。したがって、第一収納部35aおよび第二収納部35bを足場として用いることで、パワーユニット部50へと容易にアクセスしてパワーユニット部50を整備可能となる。
【0049】
しかも、ツールボックス30を機体11の上部旋回体14の前部に配置する構成において、相対的に前側に位置する第一収納部35aの高さを相対的に低く設定していることにより、キャブ15内部の運転席から見て、ツールボックス30の前部が視界を妨げにくく、オペレータの右前下方の視認性を確保できる。
【0050】
また、第一収納部35aと第二収納部35bとを機体11の側部に配置して、機体11の側方、本実施の形態では右側から第一開口39aおよび第二開口39bから内部にアクセス可能としているため、収納空間部37を、第一収納部35aの内部および第二収納部35bの内部の機体幅中央部側、つまり機体11の側方とは反対側の左側の位置を連通して形成することで、収納空間部37内に収納された長尺物が、第一収納部35aの内部に収納された第一被収納物や、第二収納部35bの内部に収納された第二被収納物へのアクセスを妨げることがない。特に、第一収納部35aの内部に収納された尿素タンク49へは、収納区間部37に収納された長尺物よりも頻繁にアクセスする必要があるため、収納空間部37内に収納された長尺物が尿素タンク49へのアクセスを妨げないことで、作業性を確保できる。
【0051】
なお、上記一実施の形態において、収納空間部37は、予め開口された連通開口63により複数の収納部35の内部が連通されて形成されているものとしたが、これに限らず、連通開口63を開閉可能な開閉部材を設けて、開閉部材を開いたときにのみ収納部35の内部が連通されて収納空間部37が形成されるようにしてもよい。
【0052】
また、ツールボックス30は、第一収納部35aと第二収納部35bとの二つの収納部35を備える構成としたが、これに限らず、三つ以上の収納部35を備える構成としてもよい。この場合、収納空間部37は、これらの収納部35のうち、少なくとも互いに隣接する二つの収納部35の内部を連通するように形成することで、上記の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
また、被整備部は、パワーユニット部50に限らず、その他の任意の被整備部を対象としてよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、林業用作業機械の製造業、販売業などに携わる事業者にとって産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0055】
10 作業機械
11 機体
30 収納構造であるツールボックス
35 収納部
37 収納空間部
39 開口
50 被整備部であるパワーユニット部
65 アクセス開口
図1
図2
図3
図4
図5